磁気ガイド装置
【課題】ガイドレールの形状等によりセンサ信号に乱れが生じても、常に安定した磁気制御を行って移動体を非接触で走行案内する。
【解決手段】磁気ガイド装置の磁気力を制御する制御装置に信号補正演算器32を設ける。この信号補正演算器32は、2つのギャップセンサの検出信号Ga,Gbをそれぞれ微分し、その絶対値の最も小さい微分信号を積分して出力する。この出力信号Gcを磁気制御に用いることで、ガイドレールの形状等によりセンサ信号に乱れが生じても、常に安定した磁気制御を行って移動体を非接触で走行案内することができる。
【解決手段】磁気ガイド装置の磁気力を制御する制御装置に信号補正演算器32を設ける。この信号補正演算器32は、2つのギャップセンサの検出信号Ga,Gbをそれぞれ微分し、その絶対値の最も小さい微分信号を積分して出力する。この出力信号Gcを磁気制御に用いることで、ガイドレールの形状等によりセンサ信号に乱れが生じても、常に安定した磁気制御を行って移動体を非接触で走行案内することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばエレベータの乗りかごをガイドレールに沿って非接触で走行案内するための磁気ガイド装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、エレベータの乗りかごは、昇降路内に垂直方向に設置された一対のガイドレールに支持され、巻上機に巻き掛けられたロープを介して昇降動作する。その際、負荷荷重の不均衡や乗客の移動によって生じる乗りかごの揺動は、ガイドレールによって抑制される。
【0003】
ここで、エレベータの乗りかごに用いられるガイド装置(案内装置とも呼ばれる)として、ガイドレールに接する車輪とサスペンションとで構成されたローラーガイド、もしくは、ガイドレールに対して摺動して案内するガイドシュー等が用いられる。しかし、このような接触型のガイド装置では、ガイドレールの歪みや継ぎ目などで振動や騒音が発生し、また、ローラーガイドが回転するときに騒音が発生する。このため、エレベータの快適性が損なわれるといった問題があった。
【0004】
このような問題点を解決するために、従来、例えば特許文献1,2に開示されているように、非接触で乗りかごを案内する方法が提案されている。
【0005】
特許文献1では、電磁石により構成されたガイド装置(案内装置)を乗りかごに搭載し、鉄製のガイドレールに対して磁気力を作用させて、乗りかごを非接触で案内する方法が提案されている。これは、乗りかごの四隅に配置された電磁石がガイドレールを3方向から囲み、ガイドレールとガイド装置との間の空隙の大きさに応じて電磁石を励磁制御して、乗りかごをガイドレールに対して非接触に案内するものである。
【0006】
特許文献2では、上記電磁石を用いた構造で問題となる制御性の低下および消費電力の増大等を解決する手段として、永久磁石を用いることが開示されている。このように永久磁石と電磁石を併用することにより、消費電力を抑えつつ、低剛性・長ストロークで乗りかごを支持するガイド装置を実現できる。
【0007】
このように、磁気力を利用したガイド装置では、通常、電磁石とガイドレールとの間の空隙を検出するためにギャップセンサが設けられている。このギャップセンサにて検出された空隙の大きさに応じて磁気力を制御し、乗りかごをガイドレールに接触しないように支持している。
【0008】
しかし、一般にガイドレールは所定の長さのレールをつなぎ合わせて設置されている。このため、ある間隔をもってレールに継ぎ目が存在する。このレールの継ぎ目の部分では、レール形状のずれや据え付け精度によって段差があり、その部分をギャップセンサが通過したときに検出信号が瞬間的に大きく乱れる。
【0009】
また、渦電流式センサのように、検出対象の物理特性を利用するギャップセンサでは、材料特性が不連続になる継ぎ目の部分で検出信号が実際の変位変動以上に大きく乱れることになる。
【0010】
このように、ギャップセンサの検出信号が乱れると、磁気制御も乱れるため、乗りかごに揺れが生じて、乗り心地に影響が出てしまう問題がある。
【0011】
従来、このような問題を解決する手段として、例えば特許文献3がある。この特許文献3では、ギャップセンサを複数設けておき、信号変化に応じて各センサ信号を切り替えて使用する手法が提案されている。
【特許文献1】特開平5−178563号公報
【特許文献2】特開2001−19286号公報
【特許文献3】特開平ll−71067号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、上記特許文献3のように、複数のセンサ信号を切り替えて使用すると、制御用として入力される信号が不連続になり、その結果、磁気力の制御が不安定になるといった問題がある。また、複数のセンサ信号にずれが生じている場合には、切り替え時にそのずれが信号変動として検出され、結果的に制御が乱れるといった問題もある。
【0013】
なお、センサ信号の変化率に上限を設ける方法や、ローパスフィルタによって各センサ信号の変動を抑制する方法もある。しかし、実際に乗りかごが外乱を受けて大きく振動した場合に、その動きを的確に検出できずに非接触状態を維持できなくなる問題がある。また、センサ信号の位相がずれると、制御系の安定性が損なわれるため、大きな遅れ要素を持つフィルタは用いることはできない。
【0014】
本発明は上記のような点に鑑みなされたものであり、ガイドレールの形状等によりセンサ信号に乱れが生じても、常に安定した磁気制御を行って移動体を非接触で走行案内することのできる磁気ガイド装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の磁気ガイド装置は、強磁性体からなるガイドレールと、このガイドレールに沿って移動する移動体と、この移動体の上記ガイドレールとの対向部に設置され、磁気力の作用により上記移動体を上記ガイドレールに対して非接触にて支持する磁石ユニットと、上記移動体の移動方向に所定の間隔を持って配設され、上記磁石ユニットと上記ガイドレールとの間の空隙を検出する少なくとも2つのギャップセンサと、これらのギャップセンサから出力される検出信号をそれぞれ微分し、その絶対値の最も小さい微分信号を積分して磁気制御用の信号として出力する信号補正演算手段と、この信号補正演算手段から出力された磁気制御用の信号に基づいて、上記磁石ユニットの磁気力を制御する制御手段とを具備したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、ガイドレールの形状等によりセンサ信号に乱れが生じても、常に安定した磁気制御を行って移動体を非接触で走行案内することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。
【0018】
(第1の実施形態)
図1は本発明の第1の実施形態に係る磁気ガイド装置をエレベータの乗りかごに適用した場合の斜視図である。
【0019】
図1に示すように、エレベータの昇降路1内には、鉄製で強磁性体からなる一対のガイドレール2が立設されている。乗りかご4は、図示せぬ巻上機に巻き掛けられたロープ3によって吊り下げられている。この乗りかご4は、上記巻上機の回転駆動に伴い、ガイドレール2に沿って昇降動作する。なお、図中の4aはかごドアであり、乗りかご4が各階に着床したときに開閉動作する。
【0020】
ここで、乗りかご4のかごドア4aを正面として見た場合に、そのかごドア4aの左右方向をx軸、前後方向をy軸、上下方向をz軸とする。
【0021】
乗りかご4の上下左右の四隅の連結部に、ガイドレール2に対向させて磁気ガイド装置5がそれぞれ取り付けられている。後述するように、この磁気ガイド装置5の磁気力を制御することで、乗りかご4がガイドレール2から浮上して非接触で走行する。
【0022】
図2は磁気ガイド装置5の構成を示す斜視図である。
【0023】
磁気ガイド装置5は、磁石ユニット6と、磁石ユニット6とガイドレール2との間の距離を検出するギャップセンサ7a〜7dと、それらを支持している台座8とで構成されている。なお、磁気ガイド装置5は、図1に示したように乗りかご4の上下左右の四隅の連結部に設けられており、それぞれに同様の構成である。
【0024】
ギャップセンサ7a〜7dのうち、センサ7aと7bはT字形状のガイドレール2の内側面2aに向けられており、ガイドレール2の長手方向に所定の間隔を持って配置されている。センサ7cと7bはT字形状のガイドレール2の側面2bに向けられており、ガイドレール2の長手方向に所定の間隔をもって配置されている。
【0025】
図3は磁気ガイド装置5に設けられた磁石ユニット6の構成を示す斜視図である。
【0026】
磁石ユニット6は、永久磁石9a,9bと、継鉄10a,10b,10cと、コイル11a,11b,11c,11dとからなる。継鉄10a,10b,10cは、ガイドレール2を3方向から囲む形で磁極を対向させている。コイル11a,11b,11c,11dは、その継鉄10a,10b,10cを鉄心として磁極部分の磁束を操作することのできる電磁石を構成する。
【0027】
このような構成において、ギャップセンサ7等によって検出された磁気回路中の状態量に基づいてコイル11が励磁される。これにより、ガイドレール2と磁石ユニット6とが磁気力の発生によって離間し、乗りかご4が浮上することになる。
【0028】
図4は磁気ガイド装置5を制御するための制御装置21の構成を示すブロック図である。
【0029】
制御装置21は、センサ部22と、演算器23と、パワーアンプ24とを備え、乗りかご4の四隅に設置された磁石ユニット6の吸引力を制御する。なお、図4では、便宜的にセンサ部22を含めて示されているが、実際にはセンサ部22は磁石ユニット6側に設けられている。
【0030】
演算器23は、センサ部22からの信号に基づいて乗りかご4を非接触案内させるべく各コイル11に印加する電圧を演算する。パワーアンプ24は、演算器23の出力に基づいて各コイル11に電力を供給する。
【0031】
ここで、上記センサ部22は、磁気ガイド装置5の磁石ユニット6とガイドレール2との間の空隙の大きさを検出するギャップセンサ7(7a〜7d)と、各コイル11に流れる電流値を検出する電流検出器25とで構成されている。
【0032】
このような構成において、磁石ユニット6とガイドレール2との間に所定のギャップ長を維持させるべく、各コイル11に励磁する電流を制御する。また、非接触で乗りかご4を支持した状態で、そのときに各コイル11に流れる電流値を積分器を介してフィードバックする。これにより、定常状態にあるときには、乗りかご4の重量および不平衡力の大きさに関わらず、永久磁石9の吸引力で乗りかご4が安定に支持される、いわゆる「ゼロパワー制御」が行われる。
【0033】
このゼロパワー制御によって、乗りかご4がガイドレール2に対して非接触で安定に支持される。そして、定常状態では、各コイル11に流れる電流は零に収束し、安定支持に必要となる力は永久磁石9の磁気力で済むようになる。
【0034】
これは、乗りかご4の重量やバランスが変化した場合でも同様である。すなわち、乗りかご4に何らかの外力が加えられた場合、磁石ユニット6とガイドレール2との間の空隙を所定の大きさに調整するために、過渡的にコイル11に電流が流れる。しかし、再度安定状態になった際には、上記制御手法を用いることにより、コイル11に流れる電流は零に収束する。そして、乗りかご4に加わる荷重と、永久磁石9の磁気力によって発生する吸引力とが釣り合う大きさの空隙が形成される。
【0035】
なお、磁気支持における磁石ユニットの構成およびゼロパワー制御については、特願2004−140763、特開2001−19286に詳細に示されているため、ここでは詳しい説明を省略する。
【0036】
(ギャップセンサ)
ここで、ギャップセンサ7は、磁力制御の各方向に対する距離を検出できるように複数設置される。また、このギャップセンサ7は、磁石ユニット6を挟んで乗りかご4の移動方向に沿って所定の間隔を持って設置される。
【0037】
本実施形態では、図2に示したように、乗りかご4の左右方向の距離を検出するためのギャップセンサ7a,7bが磁石ユニット6を挟んで上下に設置されている。また、乗りかご4の前後方向の距離を検出するためのギャップセンサ7c,7dが磁石ユニット6を挟んで上下に設置されている。これは、乗りかご4の四隅に設置された全ての磁気ガイド装置5について同様である。
【0038】
次に、乗りかご4に搭載された磁気ガイド装置5がガイドレール2の段差や継ぎ目を通過したときに、その磁気ガイド装置5に設置されたギャップセンサ7がどのように応答するのかを説明する。
【0039】
なお、以下では、ギャップセンサ7a,7bを例にして説明するが、他のギャップセンサ7b,7cについても同様である。今、ギャップセンサ7aから出力される検出信号をGa、ギャップセンサ7bから出力される検出信号をGbとする。上記検出信号とは、磁気ガイド装置5とガイドレール2との間の距離(空隙)を示す信号である。
【0040】
図5乃至図8は、乗りかご4がガイドレール2に沿って上方に走行している状態を示している。図中の2cはガイドレール2の継ぎ目である。図9はギャップセンサ7a,7bの信号波形を示している。
【0041】
図5に示すように、ギャップセンサ7a,7bがガイドレール2の連続部分に対向している場合には、ギャップセンサ7a,7bから出力される検出信号Ga,Gbは滑らかな応答特性を有する。この状態では、ギャップセンサ7a,7bによって磁石ユニット6とガイドレール2との間の空隙を正確に検出することができる。
【0042】
ここで、図6に示すように、乗りかご4がガイドレール2の継ぎ目2aに近づくと、まず、ギャップセンサ7aがガイドレール2の継ぎ目2cを通過する。その際、継ぎ目2cの部分での材料特性の変化等により、図9のA部に示すようにギャップセンサ7aの検出信号Gaが瞬間的に大きく乱れる。一方、ガイドレール2の継ぎ目2c部分に差し掛かっていないギャップセンサ7bは、この時点では滑らかに応答している。
【0043】
図7に示すように、ギャップセンサ7bが継ぎ目2cの近傍を通過すると、図9のB部に示すように、ギャップセンサ7bの検出信号Gbが瞬間的に大きく乱れる。一方、ギャップセンサ7aの検出信号Gaは滑らかな状態に戻る。
【0044】
図8に示すように、ギャップセンサ7a,7bがガイドレール2の継ぎ目2cを通過し終わった後には、ガイドレール2の連続部分が検出対象となる。この状態では、ギャップセンサ7a,7bは共に滑らかに応答しており、磁石ユニット6とガイドレール2との間の空隙を正確に検出することができる。
【0045】
このように、ガイドレール2の継ぎ目2cで検出信号Ga,Gbが大きく乱れると、実際の乗りかご4の動きとは関係のない変位信号が制御装置21に与えられるため、磁気制御が不安定となり、乗りかご4を不要に揺らすことになる。
【0046】
つまり、図9のA部,B部のように検出信号Ga,Gbが乱れると、制御装置21では、乗りかご4が揺れたと誤認し、その揺れを抑える方向に磁気ガイド装置5を制御してしまい、その結果として乗りかご4を加振してしまうことになる。
【0047】
(信号補正処理)
上述したような問題を解決するため、例えば2つの検出信号Gaと検出信号Gbの平均値を用いて磁気力を制御することが考えられる。しかしながら、このような方法では、検出信号の乱れを小さく抑えられるが、乱れそのものは残ってしまうため、滑らかな制御を行うことはできない。
【0048】
そこで、本実施形態では、図10に示すような信号補正演算器32を用いる。この信号補正演算器32は、図4に示した演算器23に含まれる。この信号補正演算器32は、ギャップセンサ7aから出力される検出信号Gaと、ギャップセンサ7bから出力される検出信号Gbを入力とし、これらの検出信号Ga,Gbの乱れを補正した信号Gcを磁気制御用の信号として生成出力する。
【0049】
図10に示すように、この信号補正演算器32は、微分器33a,33b、比較器34、積分器35からなる。
【0050】
微分器32aは、ギャップセンサ7aの検出信号Gaを微分する。微分器32bは、ギャップセンサ7bの検出信号Gbを微分する。検出信号Ga,Gbを微分すると、それぞれの変化量が分かる。
【0051】
なお、現実的には正確な微分演算を行う「微分器」を作ることはできない。したがって、通常は、一定周波数以上をカットする「疑似微分器」が用いられる。ここで言う「微分器」とは、この「疑似微分器」のことも含んでいるものとする。
【0052】
比較器34は、微分器32aの出力信号と微分器32bの出力信号とを比較し、その信号の小さい方(つまり、微分の絶対値が最も小さい信号)を選択する。積分器35は、比較器34によって選択された信号を積分する。この積分器35から出力される信号Gcは、磁気制御用のセンサ検出信号として用いられる。
【0053】
このような構成において、ギャップセンサ7a,7bから出力された検出信号Ga,Gbは、それぞれ微分器32a,32bによって時間微分されて比較器34に与えられる。比較器34では、両者の微分値を比較して絶対値の小さい方を出力する。比較器34から出力された信号は積分器35に与えられて時間積分され、磁気制御用の信号Gcが生成される。
【0054】
この場合、センサ検出信号Ga,Gbを一度微分することにより、各センサの取り付け位置や歩留まりなどで微妙に異なるオフセット量を無視した状態にでき、その一方の微分信号を積分して使う場合に信号切替による急激な変化を抑えることができる。
【0055】
このように、センサ検出信号Ga,Gbをそれぞれ微分し、変動の少ない信号を積分して磁気制御用として出力することで、センサ検出信号Ga,Gbに図9のようなノイズが入った場合でも、他方のノイズの影響を受けない滑らかな信号を用いて安定して制御を行うことができる。
【0056】
図11は信号補正演算器332によって得られる各信号の応答特性を示す図である。今、ギャップセンサ7aから出力される検出信号をGa,ギャップセンサ7bから出力される検出信号をGbとし、それぞれの微分信号をGa′,Gb′とする。
【0057】
微分信号Ga′,Gb′は、それぞれガイドレール2の継ぎ目2cの部分で検出信号Ga,Gbが乱れたときに大きく変動する。一方、ガイドレール2の連続部分では大きな変動はない。したがって、図中のAの部分では、微分信号Ga′の絶対値が微分信号Gb′に比べて大きくなる。それを、比較器34で絶対値の小さい方の微分信号を選択し、その微分信号を積分器35にて積分することで、センサ検出信号Ga,Gbの変化量の少ない方に連続的に繋がるようなセンサ検出信号Gcを得ることができる。
【0058】
このようにして、最終的に乱れの少ない出力信号Gcが生成され、磁気制御用の信号として制御装置21に与えられる。したがって、ガイドレール2の継ぎ目2cの部分で検出信号Ga,Gbが乱れたとしても、乗りかご4を不要に揺らすことなく、常に安定した磁気制御を行って乗りかご4を非接触で走行案内することができる。
【0059】
また、センサ検出信号Ga,Gbを直接使うのではなく、これらの微分信号を積分して使うので、単にセンサ検出信号GaとGbを比較して切り替える方式と比べて、急激な信号変化を抑えて滑らかな制御を行うことができる。
【0060】
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。
【0061】
第2の実施形態では、センサ信号の前処理に関するものである。すなわち、上記第1の実施形態では、ギャップセンサ7aの検出信号Gaとギャップセンサ7bの検出信号Gbを信号補正演算器32に直接入力していた。これに対し、第2の実施形態では、上記2つの検出信号Ga,Gbの相対的な差を補正してから信号補正演算器32に入力する構成としている。
【0062】
以下に、その具体的な構成について説明する。
図12は本発明の第2の実施形態の構成を示すブロック図であり、信号補正演算器32の前段に定常差異補正器41が設けられている。なお、この定常差異補正器41は、上記信号補正演算器32と共に図4の演算器23に設けられる。また、磁気ガイド装置5の構成等は、上記第1の実施形態と同様である。
【0063】
図12に示すように、この定常差異補正器41は、減算器101、フィードバックゲイン乗算器42、積分器43、配分係数乗算器44、減算器102、加算器103からなる。
【0064】
減算器101は、ギャップセンサ7aの検出信号Gaとギャップセンサ7bの検出信号Gbとの差分を演算する。フィードバックゲイン乗算器42は、減算器101から出力されるGaとGbの差分信号に所定のフィードバックゲインKdを乗じて積分器43に出力する。積分器43は、フィードバックゲイン乗算器42の出力信号を時間積分して配分係数乗算器44に出力する。
【0065】
配分係数乗算器44は、積分器43の出力信号に配分係数として「1/2」を乗じて減算器102と加算器103に出力する。減算器101は、定常差異補正器41に入力された検出信号Gaとフィードバック信号との差分を取り、これを補正検出信号Gacとして信号補正演算器32に出力する。加算器103は、定常差異補正器41に入力された検出信号Gbにフィードバック信号を加え、これを補正検出信号Gbcとして信号補正演算器32に出力する。
【0066】
このような構成において、定常差異補正器41では、ギャップセンサ7aの検出信号Gaとギャップセンサ7bの検出信号Gbとの差分信号をフィードバックゲイン乗算器42および積分器43を介してGa,Gbにフィードバックする。
【0067】
ここで、フィードバックゲインKを適当に設定することにより、センサ信号の急峻な変動にはほとんど影響を受けずに、検出信号Ga,Gbの相対的な差を0に収束させることができる。
【0068】
その際、配分係数乗算器44の配分係数を「1/2」とし、同等の配分でGa,Gbにフィードバックすると、図13に示すように、補正検出信号Gac,Gbcを検出信号Ga,Gbの中央値付近に収束させることができる。すなわち、例えば検出信号Gaの値が「7」、検出信号Gbの値が「8」であったとすると、補正検出信号Gac,Gbcの値を「7.5」に収束させることができる。
【0069】
このように、事前に2つのセンサ信号Ga,Gbの相対的な差を補正してから信号補正演算器32に与えることで、より滑らかな出力信号Gcを生成出力することができ、その出力信号Gcを用いて高精度な制御を行うことができる。
【0070】
(第3の実施形態)
次に、本発明の第3の実施形態について説明する。
【0071】
上記第1の実施形態では、センサ検出信号Ga,Gbをそれぞれ微分し、その絶対値の小さい方を積分して出力信号Gcを生成する構成とした。しかし、センサ検出信号Ga,Gb信号を微分および積分すると、微小ながらも実際のギャップセンサ検出値との誤差が蓄積してしまう可能性がある。そこで、第3の実施形態では、微分および積分により蓄積される誤差を補正するために、センサ検出信号GaとGbの平均値を代表値として用いて出力信号を補正する構成としている。
【0072】
以下に、その具体的な構成について説明する。
図14は本発明の第3の実施形態に係る信号補正演算器32の構成を示すブロック図である。なお、上記第1の実施形態における図10の構成と同じ部分には同一符号を付して、その説明は省略するものとする。また、磁気ガイド装置5の構成等は、上記第1の実施形態と同様である。
【0073】
第3の実施形態において、上記第1の実施形態の構成(図10)と異なる点は、信号補正演算器32に加算器201、1/2演算器50、出力差異補正器53、フィルタ54が追加されていることである。
【0074】
加算器201は、ギャップセンサ7aの検出信号Gaとギャップセンサ7bの検出信号Gbとを加算する。1/2演算器50は、加算器201によって得られる加算値を1/2にして、センサ検出信号Gaとセンサ検出信号Gbとを平均化した信号を信号補正用の代表信号として生成する。
【0075】
出力差異補正器53は、積分器35の後段に設けられ、積分器35の出力信号(微分信号Ga′またはGb′を積分した信号)を上記1/2演算器50の出力信号(センサ検出信号GaとGbを平均化した代表信号)によって補正する。
【0076】
この出力差異補正器53は、減算器202、フィードバックゲイン乗算器51、積分器52、減算器203からなる。減算器202は、積分器35の出力信号と1/2演算器50の出力信号との差分を演算する。フィードバックゲイン乗算器51は、減算器202から出力される差分信号に所定のフィードバックゲインKcを乗じて積分器52に出力する。積分器52は、フィードバックゲイン乗算器51の出力信号を時間積分して減算器203に出力する。減算器203は、積分器35の出力信号と積分器52の出力信号との差分を取り、これを磁気制御用の信号Gcとして出力する。この信号Gcは、フィルタ54を介して制御系に出力される。
【0077】
このような構成において、上記第1の実施形態と同様に、ギャップセンサ7a,7bから出力された検出信号Ga,Gbは、それぞれ微分器32a,32bによって時間微分されて比較器34に与えられる。比較器34では、両者の微分値を比較して絶対値の小さい方を出力する。比較器34から出力された信号は積分器35に与えられて時間積分され、磁気制御用の信号Gcが生成される。
【0078】
ここで、第3の実施形態では、1/2演算器50からセンサ検出信号GaとGbを平均化した信号が信号補正用の代表信号として生成され、その代表信号が出力差異補正器53に与えられる。出力差異補正器53では、この代表信号と積分器35から出力された信号との差分を取り、これをフィードバックゲイン乗算器51と積分器52を介して積分器35の出力信号にフィードバックする。これにより、積分器35の出力信号がセンサ検出信号GaとGbを平均化した代表信号により補正され、その補正後の信号がフィルタ54を介して磁気制御用の信号Gcとして出力されることになる。
【0079】
このように、センサ検出信号GaとGbの平均値をフィードバックして出力信号を補正することで、センサ信号を微分・積分することによって生じる誤差を抑えて、良好な出力信号Gcを生成することができる。
【0080】
また、フィードバックゲイン乗算器51のゲインKcを適当な値に設定し、Gcの収束にかかる応答周波数をGaおよびGbから検出されるノイズ周波数よりも遅くすることで、ノイズによる影響を低くすることができる。
【0081】
なお、ここではGcの誤差を補正するための信号としてセンサ検出信号Ga,Gbの平均化した信号を用いたが、どちらか一方の信号を用いるか、もしくは、平均以外の方法で算出した信号を補正用としても良い。
【0082】
また、信号補正演算器32において、微分および積分の動作が介在するために、出力信号Gcに遅れが生じて、制御系に影響を及ぼす可能性があるが、補正用のフィルタ54を介して信号Gcを出力することで、その影響を軽減することができる。このフィルタ54の種類としては、主として信号Gcの位相を進ませるための位相進みフィルタが用いられるが、その他にノイズ低減を目的として、例えば位相遅れフィルタ、ローパスフィルタ、ハイパスフィルタ等を併用することでも良い。このフィルタ54は、上記第1の実施形態の構成にも適用可能である。
【0083】
なお、この第3の実施形態の構成に、上記第2の実施形態で説明した前処理用の定常差異補正器41を組み合わせるようにしても良い。
【0084】
(第4の実施形態)
次に、本発明の第4の実施形態について説明する。
【0085】
これまでの実施形態では、センサ信号の比較用として比較器34に与える微分信号と、センサ信号の出力用として積分器35に与える微分信号を同じ微分器33a,33bにて算出していた。これに対し、第4の実施形態では、比較用の微分信号を生成する微分器と最終的な出力信号を生成するための出力用微分器とに分けた構成としている。
【0086】
以下に、その具体的な構成について説明する。
図15は本発明の第4の実施形態に係る信号補正演算器32の構成を示すブロック図である。なお、上記第3の実施形態における図14の構成と同じ部分には同一符号を付して、その説明は省略するものとする。また、磁気ガイド装置5の構成等は、上記第1の実施形態と同様である。
【0087】
第4の実施形態において、上記第3の実施形態の構成(図14)と異なる点は、微分器33a,33bに代わって比較用微分器61a,61bと出力用微分器62a,62b、出力選択器63が設けられていることである。
【0088】
比較用微分器61a,61bは、それぞれに信号補正演算器32に入力されたセンサ検出信号Ga,Gbを微分して比較器34に出力する。この比較用微分器61a,61bの応答周波数帯域は比較的低く設定されており、低周波帯域の信号を微分可能な特性を有する。
【0089】
一方、出力用微分器62a,62bは、それぞれに信号補正演算器32に入力されたセンサ検出信号Ga,Gbを微分して出力選択器63に出力する。この出力用微分器62a,62bの応答周波数帯域は、比較用微分器61a,61bよりも高く設定されており、高周波帯域の信号を微分可能な特性を有する。
【0090】
出力選択器63は、比較器34による比較結果に基づいて、出力用微分器62aにて微分された信号または出力用微分器62bにて微分された信号を出力対象として選択し、これを積分器35に与える。
【0091】
このような構成において、ギャップセンサ7a,7bから出力された検出信号Ga,Gbは、それぞれ比較用微分器61a,61bによって時間微分されて比較器34に与えられる。この場合、比較用微分器61a,61bの応答周波数帯域が比較的低く設定されているため、高周波数成分(ノイズ成分)が除去された比較的滑らかな微分信号が比較器34に与えられる。したがって、センサ検出信号Ga,Gbに含まれる微小なノイズ成分によって、比較器34にて選択される信号が頻繁に切り替わることを抑えることができる。
【0092】
一方、ギャップセンサ7a,7bから出力された検出信号Ga,Gbは出力用微分器62a,62bにも与えられており、これらの出力用微分器62a,62bの微分信号が出力選択器63に出力される。
【0093】
出力選択器63では、上記比較器34での比較結果に基づいて、出力用微分器62a,62bのどちらか一方の微分信号を出力対象として選択して積分器35に出力する。この場合、出力用の信号としては、乗りかご4の運動状態を十分に検出できるように高周波数領域までを含む応答特性が望ましい。したがって、出力用微分器62a,62bの応答周波数として比較的高周波数まで応答可能なものを用いることで、高精度な信号を生成することができる。以降の動作は上記第3の実施形態と同様であるため、ここではその説明を省略する。
【0094】
このように、比較用の微分信号を生成する比較用微分器61a,61bと最終的な出力信号を生成するための出力用微分器62a,62bとに分けて構成することで、滑らかで、かつ、高精度な信号Gcを磁気制御用の信号として生成出力することができる。
【0095】
なお、この第4の実施形態の構成に、上記第2の実施形態で説明した前処理用の定常差異補正器41を組み合わせるようにしても良い。
【0096】
また、ここでは、信号補正演算器32として、上記第3の実施形態の構成を例にして説明したが、上記第1の実施形態の構成でも適用可能であり、比較用の微分信号を生成する比較用微分器61a,61bと最終的な出力信号を生成するための出力用微分器62a,62bとに分けて構成することで上記同様の効果が得られる。
【0097】
(第5の実施形態)
次に、本発明の第5の実施形態について説明する。
【0098】
上記第2の実施形態では、ギャップセンサ7aの検出信号Gaとギャップセンサ7bの検出信号Gbとの相対的な誤差を前処理にて補正する構成とした。これに対し、第5の実施形態では、上記各実施形態のいずれかの信号補正演算器32の出力信号Gcに基づいてセンサ検出信号Ga,Gbを補正し、その補正後の信号Gac,Gbcから磁気制御用の最終的な信号Gccを生成出力する。
【0099】
以下に、その具体的な構成について説明する。
図16は本発明の第5の実施形態に係る信号補正演算器32を含む演算器23の構成を示すブロック図である。なお、上記第3の実施形態における図14の構成と同じ部分には同一符号を付して、その説明は省略するものとする。また、磁気ガイド装置5の構成等は、上記第1の実施形態と同様である。
【0100】
第5の実施形態において、演算器23には信号補正演算器32に加え、定常差異補正器71と出力演算器74が設けられる。信号補正演算器32は、ギャップセンサ7aから出力される検出信号Gaと、ギャップセンサ7bから出力される検出信号Gbを入力とし、これらの検出信号Ga,Gbの乱れを補正した信号Gcを生成出力する。この信号補正演算器32としては、例えば上記第3の実施形態の構成のものが用いられる。
【0101】
また、定常差異補正器71は、ギャップセンサ7aから出力される検出信号Gaと、ギャップセンサ7bから出力される検出信号Gbを入力とし、上記信号補正演算器32の出力信号Gcを基準信号として用いて、検出信号Ga,Gbの相対的な誤差を補正する。
【0102】
この定常差異補正器71は、減算器301,302、フィードバックゲイン乗算器72a,72b、積分器73a,73b、減算器303,304からなる。
【0103】
減算器301は、センサ検出信号Gaと信号補正演算器32の出力信号Gcとの差分を演算する。フィードバックゲイン乗算器72aは、減算器301から出力される差分信号に所定のフィードバックゲインKaを乗じて積分器73aに出力する。積分器73aは、フィードバックゲイン乗算器72aの出力信号を時間積分して減算器303に出力する。減算器303は、センサ検出信号Gaと積分器73aの出力信号との差分を取り、これを補正後の信号Gacとして出力演算器74に出力する。
【0104】
減算器302は、センサ検出信号Gbと信号補正演算器32の出力信号Gcとの差分を演算する。フィードバックゲイン乗算器72bは、減算器302から出力される差分信号に所定のフィードバックゲインKaを乗じて積分器73bに出力する。積分器73bは、フィードバックゲイン乗算器72bの出力信号を時間積分して減算器304に出力する。減算器304は、センサ検出信号Gbと積分器73bの出力信号との差分を取り、これを補正後の信号Gbcとして出力演算器74に出力する。
【0105】
出力演算器74は、定常差異補正器71から出力される信号Gac,Gbcを入力とし、これらに所定の係数を乗じて磁気制御用の最終的な信号Gccを生成出力する。この出力演算器74は、重み係数演算器75a,75b、微分器76a,76b、比較器77、加算器305からなる。
【0106】
微分器76aは、一方のセンサ検出信号Gaの補正信号であるGacを微分する。微分器76bは、他方のセンサ検出信号Gbの補正信号であるGbcを微分する。信号Gac,Gbcを微分すると、それぞれの変化量が分かる。
【0107】
なお、上述したように、現実的には正確な微分演算を行う「微分器」を作ることはできない。したがって、通常は、一定周波数以上をカットする「疑似微分器」が用いられる。ここで言う「微分器」とは、この「疑似微分器」のことも含んでいるものとする。
【0108】
比較器77は、微分器76aの出力信号と微分器76bの出力信号とを比較する。重み係数乗算器75aは、比較器77の比較結果に応じて信号Gacに重み係数αを乗じる。重み係数乗算器75bは、比較器77の比較結果に応じて信号Gbcに重み係数βを乗じる。加算器305は、重み係数αが乗じられた検出信号Gacと重み係数βが乗じられた検出信号Gbcとを加算し、磁気制御用の信号Gccとして出力する。
【0109】
このような構成において、信号補正演算器32では、上記第3の実施形態で説明したように、ギャップセンサ7a,7bから出力された検出信号Ga,Gbがそれぞれに微分器32a,32bによって時間微分されて比較器34に与えられる。比較器34では、両者の微分値を比較して絶対値の小さい方を出力する。比較器34から出力された信号は積分器35に与えられて時間積分されて出力差異補正器53に与えられる。
【0110】
一方、1/2演算器50からセンサ検出信号GaとGbを平均化した信号が信号補正用の代表信号として生成され、その代表信号が出力差異補正器53に与えられる。出力差異補正器53では、この代表信号と積分器35から出力された信号との差分を取り、これをフィードバックゲイン乗算器51と積分器52を介して積分器35の出力信号にフィードバックする。これにより、積分器35の出力信号がセンサ検出信号GaとGbを平均化した代表信号により補正され、その補正後の信号がフィルタ54を介して磁気制御用の信号Gcとして出力されることになる。
【0111】
ここで、第5の実施形態では、信号補正演算器32から出力される信号Gcが定常差異補正器71に与えられる。定常差異補正器71では、この出力信号Gcを標準値として用い、センサ検出信号Ga,Gbをこの出力信号Gcに近付けるように補正する。これにより、センサ検出信号Ga,Gbが持つ相対的な誤差を軽減でき、応答特性の良好な信号Gac,Gbcが補正後の信号として生成される。
【0112】
続いて、出力演算器74において、上記補正後の信号Gac,Gbcのそれぞれに重み係数α,βを乗じる。この重み係数α,βは、0〜1までの値を取り、比較器77の比較結果に応じて和が1になるように調整される。この場合、変化量が小さい信号に対しては重み係数を大きくし、変化量が大きい信号に対しては重み係数を小さくする。
【0113】
このようにして、信号Gac,Gbcの変化量に応じて重み係数α,βが決定される。出力演算器74は、この重み係数α,βを信号Gac,Gbcに乗じた後、これらを加算した信号Gccを生成する。この出力信号Gccは、下記の(1)式のように表される。
【0114】
Gcc=(α×Gac)+(β×Gbc) …(1)
α+β=1,0≦α≦1,0≦β≦1
この出力信号Gccは、Gac,Gbcのうちの変化量の小さい方の比率を大きくした信号である。したがって、この出力信号Gccを磁気制御用の信号として用いることにより、Gac,Gbcのどちらかに乱れが生じていても、安定している信号の方を優先して制御を行うことができる。
【0115】
また、信号Gac,Gbcに乗じる重み係数α,βを変化させる場合に、所定の時間をかけて連続的に変化させるものとする。これにより、急激な信号変化を抑えて、滑らかな制御を行うことができる。
【0116】
このように、信号補正演算器32の出力信号Gcを標準値として用いて、センサ検出信号Ga,Gbの相対的な誤差を補正すると共に、その補正後の信号Gac,Gbcに変化量に応じた重み係数α,βを乗じて加算する。これにより、最終的に乱れの少ない出力信号Gccを生成して、磁気制御用の信号として制御装置21に与えられることができる。したがって、ガイドレール2の継ぎ目2cの部分で検出信号Ga,Gbが乱れたとしても、乗りかご4を不要に揺らすことなく、常に安定した磁気制御を行って乗りかご4を非接触で走行案内することができる。
【0117】
なお、信号補正演算器32として、上記第3の実施形態の構成を例にして説明したが、上記第1の実施形態などの他の実施形態で示した構成を用いることでも良い。
【0118】
また、出力演算器74として、微分器76a,76bにて1階微分値を算出する構成を例に示したが、2階微分もしくは所定時間前の信号との差分値など、各信号の変化量を検出可能な値を算出できる演算器であれば、どのようなものを用いても良い。
【0119】
(第6の実施形態)
次に、本発明の第6の実施形態について説明する。
【0120】
第6の実施形態では、上記第5の実施形態と同様に信号補正演算器32の出力信号Gcを基準信号として用い、センサ検出信号Ga,Gbの相対的な誤差を補正してから磁気制御用の最終的な信号Gcを生成するものである。その際に、上記第5の実施形態のような定常差異補正器71を用いずに、出力演算器74の中で補正処理を行う構成としている。
【0121】
以下に、その具体的な構成について説明する。
図17は本発明の第6の実施形態に係る信号補正演算器32を含む演算器23の構成を示すブロック図である。なお、上記第3の実施形態における図14の構成と同じ部分には同一符号を付して、その説明は省略するものとする。また、磁気ガイド装置5の構成等は、上記第1の実施形態と同様である。
【0122】
第6の実施形態において、演算器23には信号補正演算器32に加え、出力演算器74が設けられる。信号補正演算器32は、ギャップセンサ7aから出力される検出信号Gaと、ギャップセンサ7bから出力される検出信号Gbを入力とし、これらの検出信号Ga,Gbの乱れを補正した信号Gcを生成出力する。この信号補正演算器32としては、例えば上記第3の実施形態の構成のものが用いられる。
【0123】
また、出力演算器74は、センサ検出信号Ga,Gbcを入力とし、これらに所定の係数を乗じて磁気制御用の最終的な信号Gccを生成出力する。この出力演算器74の構成は、上記第5の実施形態とは異なり、微分器76a,76bに代えて、減算器306,307が設けられる。
【0124】
すなわち、減算器306は、センサ検出信号Gaと信号補正演算器32の出力信号Gcとの差分を演算して比較器77に出力する。減算器307は、センサ検出信号Gbと信号補正演算器32の出力信号Gcとの差分を演算して比較器77に出力する。比較器77では、両者の差分値を比較して、その差分値の絶対値が小さい方の信号にかかる重み係数を増加させるように重み係数演算器75a,75bを調整する。
【0125】
このような構成において、信号補正演算器32では、上記第3の実施形態で説明したように、ギャップセンサ7a,7bから出力された検出信号Ga,Gbがそれぞれに微分器32a,32bによって時間微分されて比較器34に与えられる。比較器34では、両者の微分値を比較して絶対値の小さい方を出力する。比較器34から出力された信号は積分器35に与えられて時間積分されて出力差異補正器53に与えられる。
【0126】
一方、1/2演算器50からセンサ検出信号GaとGbを平均化した信号が信号補正用の代表信号として生成され、その代表信号が出力差異補正器53に与えられる。出力差異補正器53では、この代表信号と積分器35から出力された信号との差分を取り、これをフィードバックゲイン乗算器51と積分器52を介して積分器35の出力信号にフィードバックする。これにより、積分器35の出力信号がセンサ検出信号GaとGbを平均化した代表信号により補正され、その補正後の信号がフィルタ54を介して磁気制御用の信号Gcとして出力されることになる。
【0127】
ここで、第6の実施形態では、信号補正演算器32から出力される信号Gcが出力演算器74に設けられた減算器306,307にそれぞれ与えられる。すなわち、上記第5の実施形態では、信号補正演算器32の出力信号Gcをセンサ検出信号Ga,Gbの補正用に用いたが、ここでは、センサ検出信号Ga,Gbとの差分比較のために用いる。
【0128】
比較器77は、減算器306,307から得られる差分値を比較し、その絶対値の小さい方の重み付けを大きくするべく、重み係数α,βの値を0〜1の間で調整する。この重み係数α,βの和は1である。
【0129】
このようにして、信号Ga,Gbと出力信号Gcとの差分量に応じて重み係数α,βが決定される。出力演算器74は、この重み係数α,βを信号Ga,Gbに乗じた後、これらを加算した信号Gccを生成する。
【0130】
この出力信号Gccは、信号Ga,Gbのうちの信号Gcに近い方の比率を大きくした信号である。したがって、この出力信号Gccを磁気制御用の信号として用いることにより、信号Ga,Gbのどちらかに乱れが生じていても、常に安定した制御を行うことができる。
【0131】
また、信号Gac,Gbcに乗じる重み係数α,βを変化させる場合に、所定の時間をかけて連続的に変化させるものとする。これにより、急激な信号変化を抑えて、滑らかな制御を行うことができる。
【0132】
このように、信号補正演算器32の出力信号Gcを標準値として用いて、センサ検出信号Ga,Gbとの差分を求め、その差分量に応じた重み係数α,βを乗じて加算することでも、上記第5の実施形態と同様に、最終的に乱れの少ない出力信号Gccを生成して、磁気制御用の信号として制御装置21に与えられることができる。したがって、ガイドレール2の継ぎ目2cの部分で検出信号Ga,Gbが乱れたとしても、乗りかご4を不要に揺らすことなく、常に安定した磁気制御を行って乗りかご4を非接触で走行案内することができる。
【0133】
また、上記第5の実施形態の場合、定常差異補正器71にてセンサ検出信号Ga,Gbを事前に補正するため、滑らかな信号を得ることができる。しかし、定常差異補正器71による補正処理の分だけ信号の遅延が生じやすい。これに対し、第6の実施形態では、信号補正演算器32の出力信号Gcを出力演算器74に入力して、磁気制御用の信号Gccを生成するため、補正処理による信号の遅延はない。
【0134】
なお、信号補正演算器32として、上記第3の実施形態の構成を例にして説明したが、上記第1の実施形態などの他の実施形態で示した構成を用いることでも良い。
【0135】
(第7の実施形態)
次に、本発明の第7の実施形態について説明する。
【0136】
上記第6の実施形態では、センサ検出信号Ga,Gbと信号補正演算器32の出力信号Gcとの直接的な差を求めていたが、第7の実施形態では、これらの信号を微分してから差分を求める構成としている。
【0137】
以下に、その具体的な構成について説明する。
図18は本発明の第7の実施形態に係る信号補正演算器32を含む演算器23の構成を示すブロック図である。なお、上記第3の実施形態における図14の構成と同じ部分には同一符号を付して、その説明は省略するものとする。また、磁気ガイド装置5の構成等は、上記第1の実施形態と同様である。
【0138】
第7の実施形態において、演算器23には信号補正演算器32に加え、出力演算器74が設けられる。信号補正演算器32は、ギャップセンサ7aから出力される検出信号Gaと、ギャップセンサ7bから出力される検出信号Gbを入力とし、これらの検出信号Ga,Gbの乱れを補正した信号Gcを生成出力する。この信号補正演算器32としては、例えば上記第3の実施形態の構成のものが用いられる。
【0139】
また、出力演算器74は、センサ検出信号Ga,Gbcを入力とし、これらに所定の係数を乗じて磁気制御用の最終的な信号Gccを生成出力する。この出力演算器74の構成は、上記第6の実施形態に微分器76a,76b,76cを加えたものである。
【0140】
すなわち、微分器76aは、一方のセンサ検出信号Gaを微分して減算器306に出力する。微分器76bは、他方のセンサ検出信号Gbを微分して減算器307に出力する。これらの減算器306,307には、それぞれに信号補正演算器32の出力信号Gcが微分器76cを介して入力されるようになっている。これにより、減算器306は、センサ検出信号Gaの微分信号と信号補正演算器32の出力信号Gcの微分信号との差分を演算して比較器77に出力する。
【0141】
減算器307は、センサ検出信号Gbの微分信号と信号補正演算器32の出力信号Gcの微分信号との差分を演算して比較器77に出力する。比較器77では、両者の差分値を比較して、その差分値の絶対値が小さい方の信号にかかる重み係数を増加させるように重み係数演算器75a,75bを調整する。
【0142】
このような構成において、信号補正演算器32では、上記第3の実施形態で説明したように、ギャップセンサ7a,7bから出力された検出信号Ga,Gbがそれぞれに微分器32a,32bによって時間微分されて比較器34に与えられる。比較器34では、両者の微分値を比較して絶対値の小さい方を出力する。比較器34から出力された信号は積分器35に与えられて時間積分されて出力差異補正器53に与えられる。
【0143】
一方、1/2演算器50からセンサ検出信号GaとGbを平均化した信号が信号補正用の代表信号として生成され、その代表信号が出力差異補正器53に与えられる。出力差異補正器53では、この代表信号と積分器35から出力された信号との差分を取り、これをフィードバックゲイン乗算器51と積分器52を介して積分器35の出力信号にフィードバックする。これにより、積分器35の出力信号がセンサ検出信号GaとGbを平均化した代表信号により補正され、その補正後の信号がフィルタ54を介して磁気制御用の信号Gcとして出力されることになる。
【0144】
ここで、第7の実施形態では、信号補正演算器32から出力される信号Gcが微分器76cを介して微分されて、出力演算器74に設けられた減算器306,307にそれぞれ与えられる。また、その一方でセンサ検出信号Gaが微分器76aにて微分されて減算器306に与えられ、センサ検出信号Gbが微分器76bにて微分されて減算器307に与えられる。
【0145】
減算器306,307では、それぞれに与えられた微分信号の差分を演算して、その結果を比較器77に与える。これにより、比較器77は、減算器306,307から得られる差分値を比較し、その絶対値の小さい方の重み付けを大きくするべく、重み係数α,βの値を0〜1の間で調整する。この重み係数α,βの和は1である。
【0146】
このようにして、信号Ga,Gbの微分値と出力信号Gcの微分値との差分量に応じて重み係数α,βが決定される。出力演算器74は、この重み係数α,βを信号Ga,Gbに乗じた後、これらを加算した信号Gccを生成する。
【0147】
この出力信号Gccは、Ga,GbのうちのGcに近い方の比率を大きくした信号である。したがって、この出力信号Gccを磁気制御用の信号として用いることにより、Ga,Gbのどちらかに乱れが生じていても、常に安定した制御を行うことができる。
【0148】
また、信号Gac,Gbcに乗じる重み係数α,βを変化させる場合に、所定の時間をかけて連続的に変化させるものとする。これにより、急激な信号変化を抑えて、滑らかな制御を行うことができる。
【0149】
このように、センサ検出信号Ga,Gbと信号補正演算器32の出力信号Gcをそれぞれに微分した結果を比較することでも、上記第6の実施形態と同様に、最終的に乱れの少ない出力信号Gccを生成して、磁気制御用の信号として制御装置21に与えられることができる。したがって、ガイドレール2の継ぎ目2cの部分で検出信号Ga,Gbが乱れたとしても、乗りかご4を不要に揺らすことなく、常に安定した磁気制御を行って乗りかご4を非接触で走行案内することができる。
【0150】
この場合、各信号Ga,Gb,Gcを微分することで、オフセット量をなくした状態で比較できるので、両者の差分を正確に求めることができ、その結果を受けて、より高精度な磁気制御用の信号Gccを生成することができる。
【0151】
なお、信号補正演算器32として、上記第3の実施形態の構成を例にして説明したが、上記第1の実施形態などの他の実施形態で示した構成を用いることでも良い。
【0152】
また、上記各実施形態では、1つの検出方向に設けられたギャップセンサの信号処理について説明したが、別の検出方向に設けられたギャップセンサ(図2の7c,7d)の信号についても同様である。
【0153】
さらに、上記各実施形態では、エレベータの乗りかごに設けられた磁気ガイド装置を例にしてギャップセンサの信号処理の手法について説明した。しかし、本発明の磁気ガイド装置は、エレベータに限られるものではなく、磁気を利用して非接触で支持する移動体であれば、その全て適用可能である。この場合、上記同様の信号処理を行うことにより、ギャップセンサの検出信号に重畳される不要な乱れを軽減し、滑らかな走行案内を実現できる。
【0154】
要するに、本発明は上記各実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記各実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の形態を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を省略してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0155】
【図1】図1は本発明の第1の実施形態に係る磁気ガイド装置をエレベータの乗りかごに適用した場合の斜視図である。
【図2】図2は上記第1の実施形態における磁気ガイド装置の構成を示す斜視図である。
【図3】図3は上記第1の実施形態における磁気ガイド装置に設けられた磁石ユニットの構成を示す斜視図である。
【図4】図4は上記第1の実施形態における磁気ガイド装置を制御するための制御装置の構成を示すブロック図である。
【図5】図5は上記第1の実施形態における磁気ガイド装置のギャップセンサとガイドレールとの位置関係を示す図である。
【図6】図6は上記第1の実施形態における磁気ガイド装置のギャップセンサとガイドレールとの位置関係を示す図である。
【図7】図7は上記第1の実施形態における磁気ガイド装置のギャップセンサとガイドレールとの位置関係を示す図である。
【図8】図8は上記第1の実施形態における磁気ガイド装置のギャップセンサとガイドレールとの位置関係を示す図である。
【図9】図9は上記第1の実施形態における磁気ガイド装置のギャップセンサの信号波形を示す図である。
【図10】図10は上記第1の実施形態における信号補正演算器の構成を示すブロック図である。
【図11】図11は上記第1の実施形態における信号補正演算器の各信号の応答特性を示す図である。
【図12】図12は本発明の第2の実施形態に係る定常差異補正器の構成を示すブロック図である。
【図13】図13は上記第2の実施形態における定常差異補正器の各信号の応答特性を示す図である。
【図14】図14は本発明の第3の実施形態に係る信号補正演算器の構成を示すブロック図である。
【図15】図15は本発明の第4の実施形態に係る信号補正演算器の構成を示すブロック図である。
【図16】図16は本発明の第5の実施形態に係る信号補正演算器を含む演算器の構成を示すブロック図である。
【図17】図17は本発明の第6の実施形態に係る信号補正演算器32を含む演算器23の構成を示すブロック図である。
【図18】図18は本発明の第7の実施形態に係る信号補正演算器32を含む演算器23の構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0156】
1…昇降路、2…ガイドレール、3…ロープ、4…乗りかご、5…磁気ガイド装置、6…磁石ユニット、7a〜7d…ギャップセンサ、8…台座、9a,9b…永久磁石、10a〜10c…継鉄、11a〜lld…コイル、21…制御装置、22…センサ部、23…演算器、24…パワーアンプ、25…電流検出器、32…信号補正演算器、33a,33b…微分器、34…比較器、35…積分器、41…定常差異補正器、42…フィードバックゲイン乗算器、43…積分器、44…配分係数乗算器、50…1/2演算器、51…フィードバックゲイン乗算器、52…積分器、53…出力差異補正器、61a,61b…比較用微分器、62a,62b…出力用微分器、63…出力選択器、71…定常差異補正器、72a,72b…フィードバックゲイン乗算器、73a,73b…積分器、74…出力演算器、75a,75b…重み係数演算器、76a,76b…微分器、77…比較器、101,102…減算器、103…加算器、201,202…減算器、301〜304…減算器、305…加算器、306,307…減算器。
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばエレベータの乗りかごをガイドレールに沿って非接触で走行案内するための磁気ガイド装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、エレベータの乗りかごは、昇降路内に垂直方向に設置された一対のガイドレールに支持され、巻上機に巻き掛けられたロープを介して昇降動作する。その際、負荷荷重の不均衡や乗客の移動によって生じる乗りかごの揺動は、ガイドレールによって抑制される。
【0003】
ここで、エレベータの乗りかごに用いられるガイド装置(案内装置とも呼ばれる)として、ガイドレールに接する車輪とサスペンションとで構成されたローラーガイド、もしくは、ガイドレールに対して摺動して案内するガイドシュー等が用いられる。しかし、このような接触型のガイド装置では、ガイドレールの歪みや継ぎ目などで振動や騒音が発生し、また、ローラーガイドが回転するときに騒音が発生する。このため、エレベータの快適性が損なわれるといった問題があった。
【0004】
このような問題点を解決するために、従来、例えば特許文献1,2に開示されているように、非接触で乗りかごを案内する方法が提案されている。
【0005】
特許文献1では、電磁石により構成されたガイド装置(案内装置)を乗りかごに搭載し、鉄製のガイドレールに対して磁気力を作用させて、乗りかごを非接触で案内する方法が提案されている。これは、乗りかごの四隅に配置された電磁石がガイドレールを3方向から囲み、ガイドレールとガイド装置との間の空隙の大きさに応じて電磁石を励磁制御して、乗りかごをガイドレールに対して非接触に案内するものである。
【0006】
特許文献2では、上記電磁石を用いた構造で問題となる制御性の低下および消費電力の増大等を解決する手段として、永久磁石を用いることが開示されている。このように永久磁石と電磁石を併用することにより、消費電力を抑えつつ、低剛性・長ストロークで乗りかごを支持するガイド装置を実現できる。
【0007】
このように、磁気力を利用したガイド装置では、通常、電磁石とガイドレールとの間の空隙を検出するためにギャップセンサが設けられている。このギャップセンサにて検出された空隙の大きさに応じて磁気力を制御し、乗りかごをガイドレールに接触しないように支持している。
【0008】
しかし、一般にガイドレールは所定の長さのレールをつなぎ合わせて設置されている。このため、ある間隔をもってレールに継ぎ目が存在する。このレールの継ぎ目の部分では、レール形状のずれや据え付け精度によって段差があり、その部分をギャップセンサが通過したときに検出信号が瞬間的に大きく乱れる。
【0009】
また、渦電流式センサのように、検出対象の物理特性を利用するギャップセンサでは、材料特性が不連続になる継ぎ目の部分で検出信号が実際の変位変動以上に大きく乱れることになる。
【0010】
このように、ギャップセンサの検出信号が乱れると、磁気制御も乱れるため、乗りかごに揺れが生じて、乗り心地に影響が出てしまう問題がある。
【0011】
従来、このような問題を解決する手段として、例えば特許文献3がある。この特許文献3では、ギャップセンサを複数設けておき、信号変化に応じて各センサ信号を切り替えて使用する手法が提案されている。
【特許文献1】特開平5−178563号公報
【特許文献2】特開2001−19286号公報
【特許文献3】特開平ll−71067号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、上記特許文献3のように、複数のセンサ信号を切り替えて使用すると、制御用として入力される信号が不連続になり、その結果、磁気力の制御が不安定になるといった問題がある。また、複数のセンサ信号にずれが生じている場合には、切り替え時にそのずれが信号変動として検出され、結果的に制御が乱れるといった問題もある。
【0013】
なお、センサ信号の変化率に上限を設ける方法や、ローパスフィルタによって各センサ信号の変動を抑制する方法もある。しかし、実際に乗りかごが外乱を受けて大きく振動した場合に、その動きを的確に検出できずに非接触状態を維持できなくなる問題がある。また、センサ信号の位相がずれると、制御系の安定性が損なわれるため、大きな遅れ要素を持つフィルタは用いることはできない。
【0014】
本発明は上記のような点に鑑みなされたものであり、ガイドレールの形状等によりセンサ信号に乱れが生じても、常に安定した磁気制御を行って移動体を非接触で走行案内することのできる磁気ガイド装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の磁気ガイド装置は、強磁性体からなるガイドレールと、このガイドレールに沿って移動する移動体と、この移動体の上記ガイドレールとの対向部に設置され、磁気力の作用により上記移動体を上記ガイドレールに対して非接触にて支持する磁石ユニットと、上記移動体の移動方向に所定の間隔を持って配設され、上記磁石ユニットと上記ガイドレールとの間の空隙を検出する少なくとも2つのギャップセンサと、これらのギャップセンサから出力される検出信号をそれぞれ微分し、その絶対値の最も小さい微分信号を積分して磁気制御用の信号として出力する信号補正演算手段と、この信号補正演算手段から出力された磁気制御用の信号に基づいて、上記磁石ユニットの磁気力を制御する制御手段とを具備したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、ガイドレールの形状等によりセンサ信号に乱れが生じても、常に安定した磁気制御を行って移動体を非接触で走行案内することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。
【0018】
(第1の実施形態)
図1は本発明の第1の実施形態に係る磁気ガイド装置をエレベータの乗りかごに適用した場合の斜視図である。
【0019】
図1に示すように、エレベータの昇降路1内には、鉄製で強磁性体からなる一対のガイドレール2が立設されている。乗りかご4は、図示せぬ巻上機に巻き掛けられたロープ3によって吊り下げられている。この乗りかご4は、上記巻上機の回転駆動に伴い、ガイドレール2に沿って昇降動作する。なお、図中の4aはかごドアであり、乗りかご4が各階に着床したときに開閉動作する。
【0020】
ここで、乗りかご4のかごドア4aを正面として見た場合に、そのかごドア4aの左右方向をx軸、前後方向をy軸、上下方向をz軸とする。
【0021】
乗りかご4の上下左右の四隅の連結部に、ガイドレール2に対向させて磁気ガイド装置5がそれぞれ取り付けられている。後述するように、この磁気ガイド装置5の磁気力を制御することで、乗りかご4がガイドレール2から浮上して非接触で走行する。
【0022】
図2は磁気ガイド装置5の構成を示す斜視図である。
【0023】
磁気ガイド装置5は、磁石ユニット6と、磁石ユニット6とガイドレール2との間の距離を検出するギャップセンサ7a〜7dと、それらを支持している台座8とで構成されている。なお、磁気ガイド装置5は、図1に示したように乗りかご4の上下左右の四隅の連結部に設けられており、それぞれに同様の構成である。
【0024】
ギャップセンサ7a〜7dのうち、センサ7aと7bはT字形状のガイドレール2の内側面2aに向けられており、ガイドレール2の長手方向に所定の間隔を持って配置されている。センサ7cと7bはT字形状のガイドレール2の側面2bに向けられており、ガイドレール2の長手方向に所定の間隔をもって配置されている。
【0025】
図3は磁気ガイド装置5に設けられた磁石ユニット6の構成を示す斜視図である。
【0026】
磁石ユニット6は、永久磁石9a,9bと、継鉄10a,10b,10cと、コイル11a,11b,11c,11dとからなる。継鉄10a,10b,10cは、ガイドレール2を3方向から囲む形で磁極を対向させている。コイル11a,11b,11c,11dは、その継鉄10a,10b,10cを鉄心として磁極部分の磁束を操作することのできる電磁石を構成する。
【0027】
このような構成において、ギャップセンサ7等によって検出された磁気回路中の状態量に基づいてコイル11が励磁される。これにより、ガイドレール2と磁石ユニット6とが磁気力の発生によって離間し、乗りかご4が浮上することになる。
【0028】
図4は磁気ガイド装置5を制御するための制御装置21の構成を示すブロック図である。
【0029】
制御装置21は、センサ部22と、演算器23と、パワーアンプ24とを備え、乗りかご4の四隅に設置された磁石ユニット6の吸引力を制御する。なお、図4では、便宜的にセンサ部22を含めて示されているが、実際にはセンサ部22は磁石ユニット6側に設けられている。
【0030】
演算器23は、センサ部22からの信号に基づいて乗りかご4を非接触案内させるべく各コイル11に印加する電圧を演算する。パワーアンプ24は、演算器23の出力に基づいて各コイル11に電力を供給する。
【0031】
ここで、上記センサ部22は、磁気ガイド装置5の磁石ユニット6とガイドレール2との間の空隙の大きさを検出するギャップセンサ7(7a〜7d)と、各コイル11に流れる電流値を検出する電流検出器25とで構成されている。
【0032】
このような構成において、磁石ユニット6とガイドレール2との間に所定のギャップ長を維持させるべく、各コイル11に励磁する電流を制御する。また、非接触で乗りかご4を支持した状態で、そのときに各コイル11に流れる電流値を積分器を介してフィードバックする。これにより、定常状態にあるときには、乗りかご4の重量および不平衡力の大きさに関わらず、永久磁石9の吸引力で乗りかご4が安定に支持される、いわゆる「ゼロパワー制御」が行われる。
【0033】
このゼロパワー制御によって、乗りかご4がガイドレール2に対して非接触で安定に支持される。そして、定常状態では、各コイル11に流れる電流は零に収束し、安定支持に必要となる力は永久磁石9の磁気力で済むようになる。
【0034】
これは、乗りかご4の重量やバランスが変化した場合でも同様である。すなわち、乗りかご4に何らかの外力が加えられた場合、磁石ユニット6とガイドレール2との間の空隙を所定の大きさに調整するために、過渡的にコイル11に電流が流れる。しかし、再度安定状態になった際には、上記制御手法を用いることにより、コイル11に流れる電流は零に収束する。そして、乗りかご4に加わる荷重と、永久磁石9の磁気力によって発生する吸引力とが釣り合う大きさの空隙が形成される。
【0035】
なお、磁気支持における磁石ユニットの構成およびゼロパワー制御については、特願2004−140763、特開2001−19286に詳細に示されているため、ここでは詳しい説明を省略する。
【0036】
(ギャップセンサ)
ここで、ギャップセンサ7は、磁力制御の各方向に対する距離を検出できるように複数設置される。また、このギャップセンサ7は、磁石ユニット6を挟んで乗りかご4の移動方向に沿って所定の間隔を持って設置される。
【0037】
本実施形態では、図2に示したように、乗りかご4の左右方向の距離を検出するためのギャップセンサ7a,7bが磁石ユニット6を挟んで上下に設置されている。また、乗りかご4の前後方向の距離を検出するためのギャップセンサ7c,7dが磁石ユニット6を挟んで上下に設置されている。これは、乗りかご4の四隅に設置された全ての磁気ガイド装置5について同様である。
【0038】
次に、乗りかご4に搭載された磁気ガイド装置5がガイドレール2の段差や継ぎ目を通過したときに、その磁気ガイド装置5に設置されたギャップセンサ7がどのように応答するのかを説明する。
【0039】
なお、以下では、ギャップセンサ7a,7bを例にして説明するが、他のギャップセンサ7b,7cについても同様である。今、ギャップセンサ7aから出力される検出信号をGa、ギャップセンサ7bから出力される検出信号をGbとする。上記検出信号とは、磁気ガイド装置5とガイドレール2との間の距離(空隙)を示す信号である。
【0040】
図5乃至図8は、乗りかご4がガイドレール2に沿って上方に走行している状態を示している。図中の2cはガイドレール2の継ぎ目である。図9はギャップセンサ7a,7bの信号波形を示している。
【0041】
図5に示すように、ギャップセンサ7a,7bがガイドレール2の連続部分に対向している場合には、ギャップセンサ7a,7bから出力される検出信号Ga,Gbは滑らかな応答特性を有する。この状態では、ギャップセンサ7a,7bによって磁石ユニット6とガイドレール2との間の空隙を正確に検出することができる。
【0042】
ここで、図6に示すように、乗りかご4がガイドレール2の継ぎ目2aに近づくと、まず、ギャップセンサ7aがガイドレール2の継ぎ目2cを通過する。その際、継ぎ目2cの部分での材料特性の変化等により、図9のA部に示すようにギャップセンサ7aの検出信号Gaが瞬間的に大きく乱れる。一方、ガイドレール2の継ぎ目2c部分に差し掛かっていないギャップセンサ7bは、この時点では滑らかに応答している。
【0043】
図7に示すように、ギャップセンサ7bが継ぎ目2cの近傍を通過すると、図9のB部に示すように、ギャップセンサ7bの検出信号Gbが瞬間的に大きく乱れる。一方、ギャップセンサ7aの検出信号Gaは滑らかな状態に戻る。
【0044】
図8に示すように、ギャップセンサ7a,7bがガイドレール2の継ぎ目2cを通過し終わった後には、ガイドレール2の連続部分が検出対象となる。この状態では、ギャップセンサ7a,7bは共に滑らかに応答しており、磁石ユニット6とガイドレール2との間の空隙を正確に検出することができる。
【0045】
このように、ガイドレール2の継ぎ目2cで検出信号Ga,Gbが大きく乱れると、実際の乗りかご4の動きとは関係のない変位信号が制御装置21に与えられるため、磁気制御が不安定となり、乗りかご4を不要に揺らすことになる。
【0046】
つまり、図9のA部,B部のように検出信号Ga,Gbが乱れると、制御装置21では、乗りかご4が揺れたと誤認し、その揺れを抑える方向に磁気ガイド装置5を制御してしまい、その結果として乗りかご4を加振してしまうことになる。
【0047】
(信号補正処理)
上述したような問題を解決するため、例えば2つの検出信号Gaと検出信号Gbの平均値を用いて磁気力を制御することが考えられる。しかしながら、このような方法では、検出信号の乱れを小さく抑えられるが、乱れそのものは残ってしまうため、滑らかな制御を行うことはできない。
【0048】
そこで、本実施形態では、図10に示すような信号補正演算器32を用いる。この信号補正演算器32は、図4に示した演算器23に含まれる。この信号補正演算器32は、ギャップセンサ7aから出力される検出信号Gaと、ギャップセンサ7bから出力される検出信号Gbを入力とし、これらの検出信号Ga,Gbの乱れを補正した信号Gcを磁気制御用の信号として生成出力する。
【0049】
図10に示すように、この信号補正演算器32は、微分器33a,33b、比較器34、積分器35からなる。
【0050】
微分器32aは、ギャップセンサ7aの検出信号Gaを微分する。微分器32bは、ギャップセンサ7bの検出信号Gbを微分する。検出信号Ga,Gbを微分すると、それぞれの変化量が分かる。
【0051】
なお、現実的には正確な微分演算を行う「微分器」を作ることはできない。したがって、通常は、一定周波数以上をカットする「疑似微分器」が用いられる。ここで言う「微分器」とは、この「疑似微分器」のことも含んでいるものとする。
【0052】
比較器34は、微分器32aの出力信号と微分器32bの出力信号とを比較し、その信号の小さい方(つまり、微分の絶対値が最も小さい信号)を選択する。積分器35は、比較器34によって選択された信号を積分する。この積分器35から出力される信号Gcは、磁気制御用のセンサ検出信号として用いられる。
【0053】
このような構成において、ギャップセンサ7a,7bから出力された検出信号Ga,Gbは、それぞれ微分器32a,32bによって時間微分されて比較器34に与えられる。比較器34では、両者の微分値を比較して絶対値の小さい方を出力する。比較器34から出力された信号は積分器35に与えられて時間積分され、磁気制御用の信号Gcが生成される。
【0054】
この場合、センサ検出信号Ga,Gbを一度微分することにより、各センサの取り付け位置や歩留まりなどで微妙に異なるオフセット量を無視した状態にでき、その一方の微分信号を積分して使う場合に信号切替による急激な変化を抑えることができる。
【0055】
このように、センサ検出信号Ga,Gbをそれぞれ微分し、変動の少ない信号を積分して磁気制御用として出力することで、センサ検出信号Ga,Gbに図9のようなノイズが入った場合でも、他方のノイズの影響を受けない滑らかな信号を用いて安定して制御を行うことができる。
【0056】
図11は信号補正演算器332によって得られる各信号の応答特性を示す図である。今、ギャップセンサ7aから出力される検出信号をGa,ギャップセンサ7bから出力される検出信号をGbとし、それぞれの微分信号をGa′,Gb′とする。
【0057】
微分信号Ga′,Gb′は、それぞれガイドレール2の継ぎ目2cの部分で検出信号Ga,Gbが乱れたときに大きく変動する。一方、ガイドレール2の連続部分では大きな変動はない。したがって、図中のAの部分では、微分信号Ga′の絶対値が微分信号Gb′に比べて大きくなる。それを、比較器34で絶対値の小さい方の微分信号を選択し、その微分信号を積分器35にて積分することで、センサ検出信号Ga,Gbの変化量の少ない方に連続的に繋がるようなセンサ検出信号Gcを得ることができる。
【0058】
このようにして、最終的に乱れの少ない出力信号Gcが生成され、磁気制御用の信号として制御装置21に与えられる。したがって、ガイドレール2の継ぎ目2cの部分で検出信号Ga,Gbが乱れたとしても、乗りかご4を不要に揺らすことなく、常に安定した磁気制御を行って乗りかご4を非接触で走行案内することができる。
【0059】
また、センサ検出信号Ga,Gbを直接使うのではなく、これらの微分信号を積分して使うので、単にセンサ検出信号GaとGbを比較して切り替える方式と比べて、急激な信号変化を抑えて滑らかな制御を行うことができる。
【0060】
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。
【0061】
第2の実施形態では、センサ信号の前処理に関するものである。すなわち、上記第1の実施形態では、ギャップセンサ7aの検出信号Gaとギャップセンサ7bの検出信号Gbを信号補正演算器32に直接入力していた。これに対し、第2の実施形態では、上記2つの検出信号Ga,Gbの相対的な差を補正してから信号補正演算器32に入力する構成としている。
【0062】
以下に、その具体的な構成について説明する。
図12は本発明の第2の実施形態の構成を示すブロック図であり、信号補正演算器32の前段に定常差異補正器41が設けられている。なお、この定常差異補正器41は、上記信号補正演算器32と共に図4の演算器23に設けられる。また、磁気ガイド装置5の構成等は、上記第1の実施形態と同様である。
【0063】
図12に示すように、この定常差異補正器41は、減算器101、フィードバックゲイン乗算器42、積分器43、配分係数乗算器44、減算器102、加算器103からなる。
【0064】
減算器101は、ギャップセンサ7aの検出信号Gaとギャップセンサ7bの検出信号Gbとの差分を演算する。フィードバックゲイン乗算器42は、減算器101から出力されるGaとGbの差分信号に所定のフィードバックゲインKdを乗じて積分器43に出力する。積分器43は、フィードバックゲイン乗算器42の出力信号を時間積分して配分係数乗算器44に出力する。
【0065】
配分係数乗算器44は、積分器43の出力信号に配分係数として「1/2」を乗じて減算器102と加算器103に出力する。減算器101は、定常差異補正器41に入力された検出信号Gaとフィードバック信号との差分を取り、これを補正検出信号Gacとして信号補正演算器32に出力する。加算器103は、定常差異補正器41に入力された検出信号Gbにフィードバック信号を加え、これを補正検出信号Gbcとして信号補正演算器32に出力する。
【0066】
このような構成において、定常差異補正器41では、ギャップセンサ7aの検出信号Gaとギャップセンサ7bの検出信号Gbとの差分信号をフィードバックゲイン乗算器42および積分器43を介してGa,Gbにフィードバックする。
【0067】
ここで、フィードバックゲインKを適当に設定することにより、センサ信号の急峻な変動にはほとんど影響を受けずに、検出信号Ga,Gbの相対的な差を0に収束させることができる。
【0068】
その際、配分係数乗算器44の配分係数を「1/2」とし、同等の配分でGa,Gbにフィードバックすると、図13に示すように、補正検出信号Gac,Gbcを検出信号Ga,Gbの中央値付近に収束させることができる。すなわち、例えば検出信号Gaの値が「7」、検出信号Gbの値が「8」であったとすると、補正検出信号Gac,Gbcの値を「7.5」に収束させることができる。
【0069】
このように、事前に2つのセンサ信号Ga,Gbの相対的な差を補正してから信号補正演算器32に与えることで、より滑らかな出力信号Gcを生成出力することができ、その出力信号Gcを用いて高精度な制御を行うことができる。
【0070】
(第3の実施形態)
次に、本発明の第3の実施形態について説明する。
【0071】
上記第1の実施形態では、センサ検出信号Ga,Gbをそれぞれ微分し、その絶対値の小さい方を積分して出力信号Gcを生成する構成とした。しかし、センサ検出信号Ga,Gb信号を微分および積分すると、微小ながらも実際のギャップセンサ検出値との誤差が蓄積してしまう可能性がある。そこで、第3の実施形態では、微分および積分により蓄積される誤差を補正するために、センサ検出信号GaとGbの平均値を代表値として用いて出力信号を補正する構成としている。
【0072】
以下に、その具体的な構成について説明する。
図14は本発明の第3の実施形態に係る信号補正演算器32の構成を示すブロック図である。なお、上記第1の実施形態における図10の構成と同じ部分には同一符号を付して、その説明は省略するものとする。また、磁気ガイド装置5の構成等は、上記第1の実施形態と同様である。
【0073】
第3の実施形態において、上記第1の実施形態の構成(図10)と異なる点は、信号補正演算器32に加算器201、1/2演算器50、出力差異補正器53、フィルタ54が追加されていることである。
【0074】
加算器201は、ギャップセンサ7aの検出信号Gaとギャップセンサ7bの検出信号Gbとを加算する。1/2演算器50は、加算器201によって得られる加算値を1/2にして、センサ検出信号Gaとセンサ検出信号Gbとを平均化した信号を信号補正用の代表信号として生成する。
【0075】
出力差異補正器53は、積分器35の後段に設けられ、積分器35の出力信号(微分信号Ga′またはGb′を積分した信号)を上記1/2演算器50の出力信号(センサ検出信号GaとGbを平均化した代表信号)によって補正する。
【0076】
この出力差異補正器53は、減算器202、フィードバックゲイン乗算器51、積分器52、減算器203からなる。減算器202は、積分器35の出力信号と1/2演算器50の出力信号との差分を演算する。フィードバックゲイン乗算器51は、減算器202から出力される差分信号に所定のフィードバックゲインKcを乗じて積分器52に出力する。積分器52は、フィードバックゲイン乗算器51の出力信号を時間積分して減算器203に出力する。減算器203は、積分器35の出力信号と積分器52の出力信号との差分を取り、これを磁気制御用の信号Gcとして出力する。この信号Gcは、フィルタ54を介して制御系に出力される。
【0077】
このような構成において、上記第1の実施形態と同様に、ギャップセンサ7a,7bから出力された検出信号Ga,Gbは、それぞれ微分器32a,32bによって時間微分されて比較器34に与えられる。比較器34では、両者の微分値を比較して絶対値の小さい方を出力する。比較器34から出力された信号は積分器35に与えられて時間積分され、磁気制御用の信号Gcが生成される。
【0078】
ここで、第3の実施形態では、1/2演算器50からセンサ検出信号GaとGbを平均化した信号が信号補正用の代表信号として生成され、その代表信号が出力差異補正器53に与えられる。出力差異補正器53では、この代表信号と積分器35から出力された信号との差分を取り、これをフィードバックゲイン乗算器51と積分器52を介して積分器35の出力信号にフィードバックする。これにより、積分器35の出力信号がセンサ検出信号GaとGbを平均化した代表信号により補正され、その補正後の信号がフィルタ54を介して磁気制御用の信号Gcとして出力されることになる。
【0079】
このように、センサ検出信号GaとGbの平均値をフィードバックして出力信号を補正することで、センサ信号を微分・積分することによって生じる誤差を抑えて、良好な出力信号Gcを生成することができる。
【0080】
また、フィードバックゲイン乗算器51のゲインKcを適当な値に設定し、Gcの収束にかかる応答周波数をGaおよびGbから検出されるノイズ周波数よりも遅くすることで、ノイズによる影響を低くすることができる。
【0081】
なお、ここではGcの誤差を補正するための信号としてセンサ検出信号Ga,Gbの平均化した信号を用いたが、どちらか一方の信号を用いるか、もしくは、平均以外の方法で算出した信号を補正用としても良い。
【0082】
また、信号補正演算器32において、微分および積分の動作が介在するために、出力信号Gcに遅れが生じて、制御系に影響を及ぼす可能性があるが、補正用のフィルタ54を介して信号Gcを出力することで、その影響を軽減することができる。このフィルタ54の種類としては、主として信号Gcの位相を進ませるための位相進みフィルタが用いられるが、その他にノイズ低減を目的として、例えば位相遅れフィルタ、ローパスフィルタ、ハイパスフィルタ等を併用することでも良い。このフィルタ54は、上記第1の実施形態の構成にも適用可能である。
【0083】
なお、この第3の実施形態の構成に、上記第2の実施形態で説明した前処理用の定常差異補正器41を組み合わせるようにしても良い。
【0084】
(第4の実施形態)
次に、本発明の第4の実施形態について説明する。
【0085】
これまでの実施形態では、センサ信号の比較用として比較器34に与える微分信号と、センサ信号の出力用として積分器35に与える微分信号を同じ微分器33a,33bにて算出していた。これに対し、第4の実施形態では、比較用の微分信号を生成する微分器と最終的な出力信号を生成するための出力用微分器とに分けた構成としている。
【0086】
以下に、その具体的な構成について説明する。
図15は本発明の第4の実施形態に係る信号補正演算器32の構成を示すブロック図である。なお、上記第3の実施形態における図14の構成と同じ部分には同一符号を付して、その説明は省略するものとする。また、磁気ガイド装置5の構成等は、上記第1の実施形態と同様である。
【0087】
第4の実施形態において、上記第3の実施形態の構成(図14)と異なる点は、微分器33a,33bに代わって比較用微分器61a,61bと出力用微分器62a,62b、出力選択器63が設けられていることである。
【0088】
比較用微分器61a,61bは、それぞれに信号補正演算器32に入力されたセンサ検出信号Ga,Gbを微分して比較器34に出力する。この比較用微分器61a,61bの応答周波数帯域は比較的低く設定されており、低周波帯域の信号を微分可能な特性を有する。
【0089】
一方、出力用微分器62a,62bは、それぞれに信号補正演算器32に入力されたセンサ検出信号Ga,Gbを微分して出力選択器63に出力する。この出力用微分器62a,62bの応答周波数帯域は、比較用微分器61a,61bよりも高く設定されており、高周波帯域の信号を微分可能な特性を有する。
【0090】
出力選択器63は、比較器34による比較結果に基づいて、出力用微分器62aにて微分された信号または出力用微分器62bにて微分された信号を出力対象として選択し、これを積分器35に与える。
【0091】
このような構成において、ギャップセンサ7a,7bから出力された検出信号Ga,Gbは、それぞれ比較用微分器61a,61bによって時間微分されて比較器34に与えられる。この場合、比較用微分器61a,61bの応答周波数帯域が比較的低く設定されているため、高周波数成分(ノイズ成分)が除去された比較的滑らかな微分信号が比較器34に与えられる。したがって、センサ検出信号Ga,Gbに含まれる微小なノイズ成分によって、比較器34にて選択される信号が頻繁に切り替わることを抑えることができる。
【0092】
一方、ギャップセンサ7a,7bから出力された検出信号Ga,Gbは出力用微分器62a,62bにも与えられており、これらの出力用微分器62a,62bの微分信号が出力選択器63に出力される。
【0093】
出力選択器63では、上記比較器34での比較結果に基づいて、出力用微分器62a,62bのどちらか一方の微分信号を出力対象として選択して積分器35に出力する。この場合、出力用の信号としては、乗りかご4の運動状態を十分に検出できるように高周波数領域までを含む応答特性が望ましい。したがって、出力用微分器62a,62bの応答周波数として比較的高周波数まで応答可能なものを用いることで、高精度な信号を生成することができる。以降の動作は上記第3の実施形態と同様であるため、ここではその説明を省略する。
【0094】
このように、比較用の微分信号を生成する比較用微分器61a,61bと最終的な出力信号を生成するための出力用微分器62a,62bとに分けて構成することで、滑らかで、かつ、高精度な信号Gcを磁気制御用の信号として生成出力することができる。
【0095】
なお、この第4の実施形態の構成に、上記第2の実施形態で説明した前処理用の定常差異補正器41を組み合わせるようにしても良い。
【0096】
また、ここでは、信号補正演算器32として、上記第3の実施形態の構成を例にして説明したが、上記第1の実施形態の構成でも適用可能であり、比較用の微分信号を生成する比較用微分器61a,61bと最終的な出力信号を生成するための出力用微分器62a,62bとに分けて構成することで上記同様の効果が得られる。
【0097】
(第5の実施形態)
次に、本発明の第5の実施形態について説明する。
【0098】
上記第2の実施形態では、ギャップセンサ7aの検出信号Gaとギャップセンサ7bの検出信号Gbとの相対的な誤差を前処理にて補正する構成とした。これに対し、第5の実施形態では、上記各実施形態のいずれかの信号補正演算器32の出力信号Gcに基づいてセンサ検出信号Ga,Gbを補正し、その補正後の信号Gac,Gbcから磁気制御用の最終的な信号Gccを生成出力する。
【0099】
以下に、その具体的な構成について説明する。
図16は本発明の第5の実施形態に係る信号補正演算器32を含む演算器23の構成を示すブロック図である。なお、上記第3の実施形態における図14の構成と同じ部分には同一符号を付して、その説明は省略するものとする。また、磁気ガイド装置5の構成等は、上記第1の実施形態と同様である。
【0100】
第5の実施形態において、演算器23には信号補正演算器32に加え、定常差異補正器71と出力演算器74が設けられる。信号補正演算器32は、ギャップセンサ7aから出力される検出信号Gaと、ギャップセンサ7bから出力される検出信号Gbを入力とし、これらの検出信号Ga,Gbの乱れを補正した信号Gcを生成出力する。この信号補正演算器32としては、例えば上記第3の実施形態の構成のものが用いられる。
【0101】
また、定常差異補正器71は、ギャップセンサ7aから出力される検出信号Gaと、ギャップセンサ7bから出力される検出信号Gbを入力とし、上記信号補正演算器32の出力信号Gcを基準信号として用いて、検出信号Ga,Gbの相対的な誤差を補正する。
【0102】
この定常差異補正器71は、減算器301,302、フィードバックゲイン乗算器72a,72b、積分器73a,73b、減算器303,304からなる。
【0103】
減算器301は、センサ検出信号Gaと信号補正演算器32の出力信号Gcとの差分を演算する。フィードバックゲイン乗算器72aは、減算器301から出力される差分信号に所定のフィードバックゲインKaを乗じて積分器73aに出力する。積分器73aは、フィードバックゲイン乗算器72aの出力信号を時間積分して減算器303に出力する。減算器303は、センサ検出信号Gaと積分器73aの出力信号との差分を取り、これを補正後の信号Gacとして出力演算器74に出力する。
【0104】
減算器302は、センサ検出信号Gbと信号補正演算器32の出力信号Gcとの差分を演算する。フィードバックゲイン乗算器72bは、減算器302から出力される差分信号に所定のフィードバックゲインKaを乗じて積分器73bに出力する。積分器73bは、フィードバックゲイン乗算器72bの出力信号を時間積分して減算器304に出力する。減算器304は、センサ検出信号Gbと積分器73bの出力信号との差分を取り、これを補正後の信号Gbcとして出力演算器74に出力する。
【0105】
出力演算器74は、定常差異補正器71から出力される信号Gac,Gbcを入力とし、これらに所定の係数を乗じて磁気制御用の最終的な信号Gccを生成出力する。この出力演算器74は、重み係数演算器75a,75b、微分器76a,76b、比較器77、加算器305からなる。
【0106】
微分器76aは、一方のセンサ検出信号Gaの補正信号であるGacを微分する。微分器76bは、他方のセンサ検出信号Gbの補正信号であるGbcを微分する。信号Gac,Gbcを微分すると、それぞれの変化量が分かる。
【0107】
なお、上述したように、現実的には正確な微分演算を行う「微分器」を作ることはできない。したがって、通常は、一定周波数以上をカットする「疑似微分器」が用いられる。ここで言う「微分器」とは、この「疑似微分器」のことも含んでいるものとする。
【0108】
比較器77は、微分器76aの出力信号と微分器76bの出力信号とを比較する。重み係数乗算器75aは、比較器77の比較結果に応じて信号Gacに重み係数αを乗じる。重み係数乗算器75bは、比較器77の比較結果に応じて信号Gbcに重み係数βを乗じる。加算器305は、重み係数αが乗じられた検出信号Gacと重み係数βが乗じられた検出信号Gbcとを加算し、磁気制御用の信号Gccとして出力する。
【0109】
このような構成において、信号補正演算器32では、上記第3の実施形態で説明したように、ギャップセンサ7a,7bから出力された検出信号Ga,Gbがそれぞれに微分器32a,32bによって時間微分されて比較器34に与えられる。比較器34では、両者の微分値を比較して絶対値の小さい方を出力する。比較器34から出力された信号は積分器35に与えられて時間積分されて出力差異補正器53に与えられる。
【0110】
一方、1/2演算器50からセンサ検出信号GaとGbを平均化した信号が信号補正用の代表信号として生成され、その代表信号が出力差異補正器53に与えられる。出力差異補正器53では、この代表信号と積分器35から出力された信号との差分を取り、これをフィードバックゲイン乗算器51と積分器52を介して積分器35の出力信号にフィードバックする。これにより、積分器35の出力信号がセンサ検出信号GaとGbを平均化した代表信号により補正され、その補正後の信号がフィルタ54を介して磁気制御用の信号Gcとして出力されることになる。
【0111】
ここで、第5の実施形態では、信号補正演算器32から出力される信号Gcが定常差異補正器71に与えられる。定常差異補正器71では、この出力信号Gcを標準値として用い、センサ検出信号Ga,Gbをこの出力信号Gcに近付けるように補正する。これにより、センサ検出信号Ga,Gbが持つ相対的な誤差を軽減でき、応答特性の良好な信号Gac,Gbcが補正後の信号として生成される。
【0112】
続いて、出力演算器74において、上記補正後の信号Gac,Gbcのそれぞれに重み係数α,βを乗じる。この重み係数α,βは、0〜1までの値を取り、比較器77の比較結果に応じて和が1になるように調整される。この場合、変化量が小さい信号に対しては重み係数を大きくし、変化量が大きい信号に対しては重み係数を小さくする。
【0113】
このようにして、信号Gac,Gbcの変化量に応じて重み係数α,βが決定される。出力演算器74は、この重み係数α,βを信号Gac,Gbcに乗じた後、これらを加算した信号Gccを生成する。この出力信号Gccは、下記の(1)式のように表される。
【0114】
Gcc=(α×Gac)+(β×Gbc) …(1)
α+β=1,0≦α≦1,0≦β≦1
この出力信号Gccは、Gac,Gbcのうちの変化量の小さい方の比率を大きくした信号である。したがって、この出力信号Gccを磁気制御用の信号として用いることにより、Gac,Gbcのどちらかに乱れが生じていても、安定している信号の方を優先して制御を行うことができる。
【0115】
また、信号Gac,Gbcに乗じる重み係数α,βを変化させる場合に、所定の時間をかけて連続的に変化させるものとする。これにより、急激な信号変化を抑えて、滑らかな制御を行うことができる。
【0116】
このように、信号補正演算器32の出力信号Gcを標準値として用いて、センサ検出信号Ga,Gbの相対的な誤差を補正すると共に、その補正後の信号Gac,Gbcに変化量に応じた重み係数α,βを乗じて加算する。これにより、最終的に乱れの少ない出力信号Gccを生成して、磁気制御用の信号として制御装置21に与えられることができる。したがって、ガイドレール2の継ぎ目2cの部分で検出信号Ga,Gbが乱れたとしても、乗りかご4を不要に揺らすことなく、常に安定した磁気制御を行って乗りかご4を非接触で走行案内することができる。
【0117】
なお、信号補正演算器32として、上記第3の実施形態の構成を例にして説明したが、上記第1の実施形態などの他の実施形態で示した構成を用いることでも良い。
【0118】
また、出力演算器74として、微分器76a,76bにて1階微分値を算出する構成を例に示したが、2階微分もしくは所定時間前の信号との差分値など、各信号の変化量を検出可能な値を算出できる演算器であれば、どのようなものを用いても良い。
【0119】
(第6の実施形態)
次に、本発明の第6の実施形態について説明する。
【0120】
第6の実施形態では、上記第5の実施形態と同様に信号補正演算器32の出力信号Gcを基準信号として用い、センサ検出信号Ga,Gbの相対的な誤差を補正してから磁気制御用の最終的な信号Gcを生成するものである。その際に、上記第5の実施形態のような定常差異補正器71を用いずに、出力演算器74の中で補正処理を行う構成としている。
【0121】
以下に、その具体的な構成について説明する。
図17は本発明の第6の実施形態に係る信号補正演算器32を含む演算器23の構成を示すブロック図である。なお、上記第3の実施形態における図14の構成と同じ部分には同一符号を付して、その説明は省略するものとする。また、磁気ガイド装置5の構成等は、上記第1の実施形態と同様である。
【0122】
第6の実施形態において、演算器23には信号補正演算器32に加え、出力演算器74が設けられる。信号補正演算器32は、ギャップセンサ7aから出力される検出信号Gaと、ギャップセンサ7bから出力される検出信号Gbを入力とし、これらの検出信号Ga,Gbの乱れを補正した信号Gcを生成出力する。この信号補正演算器32としては、例えば上記第3の実施形態の構成のものが用いられる。
【0123】
また、出力演算器74は、センサ検出信号Ga,Gbcを入力とし、これらに所定の係数を乗じて磁気制御用の最終的な信号Gccを生成出力する。この出力演算器74の構成は、上記第5の実施形態とは異なり、微分器76a,76bに代えて、減算器306,307が設けられる。
【0124】
すなわち、減算器306は、センサ検出信号Gaと信号補正演算器32の出力信号Gcとの差分を演算して比較器77に出力する。減算器307は、センサ検出信号Gbと信号補正演算器32の出力信号Gcとの差分を演算して比較器77に出力する。比較器77では、両者の差分値を比較して、その差分値の絶対値が小さい方の信号にかかる重み係数を増加させるように重み係数演算器75a,75bを調整する。
【0125】
このような構成において、信号補正演算器32では、上記第3の実施形態で説明したように、ギャップセンサ7a,7bから出力された検出信号Ga,Gbがそれぞれに微分器32a,32bによって時間微分されて比較器34に与えられる。比較器34では、両者の微分値を比較して絶対値の小さい方を出力する。比較器34から出力された信号は積分器35に与えられて時間積分されて出力差異補正器53に与えられる。
【0126】
一方、1/2演算器50からセンサ検出信号GaとGbを平均化した信号が信号補正用の代表信号として生成され、その代表信号が出力差異補正器53に与えられる。出力差異補正器53では、この代表信号と積分器35から出力された信号との差分を取り、これをフィードバックゲイン乗算器51と積分器52を介して積分器35の出力信号にフィードバックする。これにより、積分器35の出力信号がセンサ検出信号GaとGbを平均化した代表信号により補正され、その補正後の信号がフィルタ54を介して磁気制御用の信号Gcとして出力されることになる。
【0127】
ここで、第6の実施形態では、信号補正演算器32から出力される信号Gcが出力演算器74に設けられた減算器306,307にそれぞれ与えられる。すなわち、上記第5の実施形態では、信号補正演算器32の出力信号Gcをセンサ検出信号Ga,Gbの補正用に用いたが、ここでは、センサ検出信号Ga,Gbとの差分比較のために用いる。
【0128】
比較器77は、減算器306,307から得られる差分値を比較し、その絶対値の小さい方の重み付けを大きくするべく、重み係数α,βの値を0〜1の間で調整する。この重み係数α,βの和は1である。
【0129】
このようにして、信号Ga,Gbと出力信号Gcとの差分量に応じて重み係数α,βが決定される。出力演算器74は、この重み係数α,βを信号Ga,Gbに乗じた後、これらを加算した信号Gccを生成する。
【0130】
この出力信号Gccは、信号Ga,Gbのうちの信号Gcに近い方の比率を大きくした信号である。したがって、この出力信号Gccを磁気制御用の信号として用いることにより、信号Ga,Gbのどちらかに乱れが生じていても、常に安定した制御を行うことができる。
【0131】
また、信号Gac,Gbcに乗じる重み係数α,βを変化させる場合に、所定の時間をかけて連続的に変化させるものとする。これにより、急激な信号変化を抑えて、滑らかな制御を行うことができる。
【0132】
このように、信号補正演算器32の出力信号Gcを標準値として用いて、センサ検出信号Ga,Gbとの差分を求め、その差分量に応じた重み係数α,βを乗じて加算することでも、上記第5の実施形態と同様に、最終的に乱れの少ない出力信号Gccを生成して、磁気制御用の信号として制御装置21に与えられることができる。したがって、ガイドレール2の継ぎ目2cの部分で検出信号Ga,Gbが乱れたとしても、乗りかご4を不要に揺らすことなく、常に安定した磁気制御を行って乗りかご4を非接触で走行案内することができる。
【0133】
また、上記第5の実施形態の場合、定常差異補正器71にてセンサ検出信号Ga,Gbを事前に補正するため、滑らかな信号を得ることができる。しかし、定常差異補正器71による補正処理の分だけ信号の遅延が生じやすい。これに対し、第6の実施形態では、信号補正演算器32の出力信号Gcを出力演算器74に入力して、磁気制御用の信号Gccを生成するため、補正処理による信号の遅延はない。
【0134】
なお、信号補正演算器32として、上記第3の実施形態の構成を例にして説明したが、上記第1の実施形態などの他の実施形態で示した構成を用いることでも良い。
【0135】
(第7の実施形態)
次に、本発明の第7の実施形態について説明する。
【0136】
上記第6の実施形態では、センサ検出信号Ga,Gbと信号補正演算器32の出力信号Gcとの直接的な差を求めていたが、第7の実施形態では、これらの信号を微分してから差分を求める構成としている。
【0137】
以下に、その具体的な構成について説明する。
図18は本発明の第7の実施形態に係る信号補正演算器32を含む演算器23の構成を示すブロック図である。なお、上記第3の実施形態における図14の構成と同じ部分には同一符号を付して、その説明は省略するものとする。また、磁気ガイド装置5の構成等は、上記第1の実施形態と同様である。
【0138】
第7の実施形態において、演算器23には信号補正演算器32に加え、出力演算器74が設けられる。信号補正演算器32は、ギャップセンサ7aから出力される検出信号Gaと、ギャップセンサ7bから出力される検出信号Gbを入力とし、これらの検出信号Ga,Gbの乱れを補正した信号Gcを生成出力する。この信号補正演算器32としては、例えば上記第3の実施形態の構成のものが用いられる。
【0139】
また、出力演算器74は、センサ検出信号Ga,Gbcを入力とし、これらに所定の係数を乗じて磁気制御用の最終的な信号Gccを生成出力する。この出力演算器74の構成は、上記第6の実施形態に微分器76a,76b,76cを加えたものである。
【0140】
すなわち、微分器76aは、一方のセンサ検出信号Gaを微分して減算器306に出力する。微分器76bは、他方のセンサ検出信号Gbを微分して減算器307に出力する。これらの減算器306,307には、それぞれに信号補正演算器32の出力信号Gcが微分器76cを介して入力されるようになっている。これにより、減算器306は、センサ検出信号Gaの微分信号と信号補正演算器32の出力信号Gcの微分信号との差分を演算して比較器77に出力する。
【0141】
減算器307は、センサ検出信号Gbの微分信号と信号補正演算器32の出力信号Gcの微分信号との差分を演算して比較器77に出力する。比較器77では、両者の差分値を比較して、その差分値の絶対値が小さい方の信号にかかる重み係数を増加させるように重み係数演算器75a,75bを調整する。
【0142】
このような構成において、信号補正演算器32では、上記第3の実施形態で説明したように、ギャップセンサ7a,7bから出力された検出信号Ga,Gbがそれぞれに微分器32a,32bによって時間微分されて比較器34に与えられる。比較器34では、両者の微分値を比較して絶対値の小さい方を出力する。比較器34から出力された信号は積分器35に与えられて時間積分されて出力差異補正器53に与えられる。
【0143】
一方、1/2演算器50からセンサ検出信号GaとGbを平均化した信号が信号補正用の代表信号として生成され、その代表信号が出力差異補正器53に与えられる。出力差異補正器53では、この代表信号と積分器35から出力された信号との差分を取り、これをフィードバックゲイン乗算器51と積分器52を介して積分器35の出力信号にフィードバックする。これにより、積分器35の出力信号がセンサ検出信号GaとGbを平均化した代表信号により補正され、その補正後の信号がフィルタ54を介して磁気制御用の信号Gcとして出力されることになる。
【0144】
ここで、第7の実施形態では、信号補正演算器32から出力される信号Gcが微分器76cを介して微分されて、出力演算器74に設けられた減算器306,307にそれぞれ与えられる。また、その一方でセンサ検出信号Gaが微分器76aにて微分されて減算器306に与えられ、センサ検出信号Gbが微分器76bにて微分されて減算器307に与えられる。
【0145】
減算器306,307では、それぞれに与えられた微分信号の差分を演算して、その結果を比較器77に与える。これにより、比較器77は、減算器306,307から得られる差分値を比較し、その絶対値の小さい方の重み付けを大きくするべく、重み係数α,βの値を0〜1の間で調整する。この重み係数α,βの和は1である。
【0146】
このようにして、信号Ga,Gbの微分値と出力信号Gcの微分値との差分量に応じて重み係数α,βが決定される。出力演算器74は、この重み係数α,βを信号Ga,Gbに乗じた後、これらを加算した信号Gccを生成する。
【0147】
この出力信号Gccは、Ga,GbのうちのGcに近い方の比率を大きくした信号である。したがって、この出力信号Gccを磁気制御用の信号として用いることにより、Ga,Gbのどちらかに乱れが生じていても、常に安定した制御を行うことができる。
【0148】
また、信号Gac,Gbcに乗じる重み係数α,βを変化させる場合に、所定の時間をかけて連続的に変化させるものとする。これにより、急激な信号変化を抑えて、滑らかな制御を行うことができる。
【0149】
このように、センサ検出信号Ga,Gbと信号補正演算器32の出力信号Gcをそれぞれに微分した結果を比較することでも、上記第6の実施形態と同様に、最終的に乱れの少ない出力信号Gccを生成して、磁気制御用の信号として制御装置21に与えられることができる。したがって、ガイドレール2の継ぎ目2cの部分で検出信号Ga,Gbが乱れたとしても、乗りかご4を不要に揺らすことなく、常に安定した磁気制御を行って乗りかご4を非接触で走行案内することができる。
【0150】
この場合、各信号Ga,Gb,Gcを微分することで、オフセット量をなくした状態で比較できるので、両者の差分を正確に求めることができ、その結果を受けて、より高精度な磁気制御用の信号Gccを生成することができる。
【0151】
なお、信号補正演算器32として、上記第3の実施形態の構成を例にして説明したが、上記第1の実施形態などの他の実施形態で示した構成を用いることでも良い。
【0152】
また、上記各実施形態では、1つの検出方向に設けられたギャップセンサの信号処理について説明したが、別の検出方向に設けられたギャップセンサ(図2の7c,7d)の信号についても同様である。
【0153】
さらに、上記各実施形態では、エレベータの乗りかごに設けられた磁気ガイド装置を例にしてギャップセンサの信号処理の手法について説明した。しかし、本発明の磁気ガイド装置は、エレベータに限られるものではなく、磁気を利用して非接触で支持する移動体であれば、その全て適用可能である。この場合、上記同様の信号処理を行うことにより、ギャップセンサの検出信号に重畳される不要な乱れを軽減し、滑らかな走行案内を実現できる。
【0154】
要するに、本発明は上記各実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記各実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の形態を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を省略してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0155】
【図1】図1は本発明の第1の実施形態に係る磁気ガイド装置をエレベータの乗りかごに適用した場合の斜視図である。
【図2】図2は上記第1の実施形態における磁気ガイド装置の構成を示す斜視図である。
【図3】図3は上記第1の実施形態における磁気ガイド装置に設けられた磁石ユニットの構成を示す斜視図である。
【図4】図4は上記第1の実施形態における磁気ガイド装置を制御するための制御装置の構成を示すブロック図である。
【図5】図5は上記第1の実施形態における磁気ガイド装置のギャップセンサとガイドレールとの位置関係を示す図である。
【図6】図6は上記第1の実施形態における磁気ガイド装置のギャップセンサとガイドレールとの位置関係を示す図である。
【図7】図7は上記第1の実施形態における磁気ガイド装置のギャップセンサとガイドレールとの位置関係を示す図である。
【図8】図8は上記第1の実施形態における磁気ガイド装置のギャップセンサとガイドレールとの位置関係を示す図である。
【図9】図9は上記第1の実施形態における磁気ガイド装置のギャップセンサの信号波形を示す図である。
【図10】図10は上記第1の実施形態における信号補正演算器の構成を示すブロック図である。
【図11】図11は上記第1の実施形態における信号補正演算器の各信号の応答特性を示す図である。
【図12】図12は本発明の第2の実施形態に係る定常差異補正器の構成を示すブロック図である。
【図13】図13は上記第2の実施形態における定常差異補正器の各信号の応答特性を示す図である。
【図14】図14は本発明の第3の実施形態に係る信号補正演算器の構成を示すブロック図である。
【図15】図15は本発明の第4の実施形態に係る信号補正演算器の構成を示すブロック図である。
【図16】図16は本発明の第5の実施形態に係る信号補正演算器を含む演算器の構成を示すブロック図である。
【図17】図17は本発明の第6の実施形態に係る信号補正演算器32を含む演算器23の構成を示すブロック図である。
【図18】図18は本発明の第7の実施形態に係る信号補正演算器32を含む演算器23の構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0156】
1…昇降路、2…ガイドレール、3…ロープ、4…乗りかご、5…磁気ガイド装置、6…磁石ユニット、7a〜7d…ギャップセンサ、8…台座、9a,9b…永久磁石、10a〜10c…継鉄、11a〜lld…コイル、21…制御装置、22…センサ部、23…演算器、24…パワーアンプ、25…電流検出器、32…信号補正演算器、33a,33b…微分器、34…比較器、35…積分器、41…定常差異補正器、42…フィードバックゲイン乗算器、43…積分器、44…配分係数乗算器、50…1/2演算器、51…フィードバックゲイン乗算器、52…積分器、53…出力差異補正器、61a,61b…比較用微分器、62a,62b…出力用微分器、63…出力選択器、71…定常差異補正器、72a,72b…フィードバックゲイン乗算器、73a,73b…積分器、74…出力演算器、75a,75b…重み係数演算器、76a,76b…微分器、77…比較器、101,102…減算器、103…加算器、201,202…減算器、301〜304…減算器、305…加算器、306,307…減算器。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
強磁性体からなるガイドレールと、
このガイドレールに沿って移動する移動体と、
この移動体の上記ガイドレールとの対向部に設置され、磁気力の作用により上記移動体を上記ガイドレールに対して非接触にて支持する磁石ユニットと、
上記移動体の移動方向に所定の間隔を持って配設され、上記磁石ユニットと上記ガイドレールとの間の空隙を検出する少なくとも2つのギャップセンサと、
これらのギャップセンサから出力される検出信号をそれぞれ微分し、その絶対値の最も小さい微分信号を積分して磁気制御用の信号として出力する信号補正演算手段と、
この信号補正演算手段から出力された磁気制御用の信号に基づいて、上記磁石ユニットの磁気力を制御する制御手段と
を具備したことを特徴とする磁気ガイド装置。
【請求項2】
上記信号補正演算手段は、
上記各ギャップセンサの検出信号から信号補正のための代表信号を生成する代表信号生成手段と、
この代表信号生成手段によって生成された代表信号に基づいて、上記微分信号を積分して得られる信号を補正する出力差異補正手段とを備え、
上記出力差異補正手段によって補正された信号を磁気制御用の信号として出力することを特徴とする請求項1記載の磁気ガイド装置。
【請求項3】
上記代表信号生成手段は、上記各ギャップセンサの検出信号を平均化した信号を信号補正のための代表信号として生成することを特徴とする請求項2記載の磁気ガイド装置。
【請求項4】
上記信号補正演算手段の前段に、上記各ギャップセンサの検出信号の相対的な差を補正するための定常差異補正手段を設け、
この定常差異補正手段によって補正された各検出信号を上記信号補正手段に入力することを特徴とする請求項1または2記載の磁気ガイド装置。
【請求項5】
上記信号補正演算手段は、
上記各ギャップセンサの検出信号をそれぞれ微分する第1の微分手段と、
この第1の微分手段よりも高周波帯域の信号を微分可能な特性を有し、上記第1の微分手段とは別に上記各ギャップセンサの検出信号をそれぞれ微分する第2の微分手段とを備え
上記第1の微分手段によって得られた微分信号を比較用として用い、その比較結果を受けて上記第2の微分手段によって得られた微分信号を出力用として積分することを特徴とする請求項1記載の磁気ガイド装置。
【請求項6】
上記信号補正演算手段の出力信号を基準信号として用い、その基準信号に基づいて上記各ギャップセンサの検出信号の相対的な誤差を補正する定常差異補正手段と、
この定常差異補正手段によって補正された各検出信号の変化量を検出し、その変化量に応じて重み係数を相対的に変化させ、上記重み係数を乗じた上記各検出信号を加算した信号を磁気制御用の信号として最終的に出力する出力演算手段と
をさらに具備したことを特徴とする請求項1記載の磁気ガイド装置。
【請求項7】
上記信号補正演算手段の出力信号を基準信号として用い、その基準信号と上記各ギャップセンサの検出信号との誤差を検出し、その誤差に応じて重み係数を相対的に変化させ、上記重み係数を乗じた上記各検出信号を加算した信号を磁気制御用の信号として最終的に出力する出力演算手段をさらに具備したことを特徴とする請求項1記載の磁気ガイド装置。
【請求項8】
上記信号補正演算手段の出力信号を基準信号として用い、その基準信号と上記各ギャップセンサの検出信号をそれぞれに微分した状態で誤差を検出し、その誤差に応じて重み係数を相対的に変化させ、上記重み係数を乗じた上記各検出信号を加算した信号を磁気制御用の信号として最終的に出力する出力演算手段をさらに具備したことを特徴とする請求項1記載の磁気ガイド装置。
【請求項9】
上記信号補正演算手段は、
上記微分信号を積分して得られる信号の位相遅れを補正するためのフィルタ手段を備えたことを特徴とする請求項1記載の磁気ガイド装置。
【請求項1】
強磁性体からなるガイドレールと、
このガイドレールに沿って移動する移動体と、
この移動体の上記ガイドレールとの対向部に設置され、磁気力の作用により上記移動体を上記ガイドレールに対して非接触にて支持する磁石ユニットと、
上記移動体の移動方向に所定の間隔を持って配設され、上記磁石ユニットと上記ガイドレールとの間の空隙を検出する少なくとも2つのギャップセンサと、
これらのギャップセンサから出力される検出信号をそれぞれ微分し、その絶対値の最も小さい微分信号を積分して磁気制御用の信号として出力する信号補正演算手段と、
この信号補正演算手段から出力された磁気制御用の信号に基づいて、上記磁石ユニットの磁気力を制御する制御手段と
を具備したことを特徴とする磁気ガイド装置。
【請求項2】
上記信号補正演算手段は、
上記各ギャップセンサの検出信号から信号補正のための代表信号を生成する代表信号生成手段と、
この代表信号生成手段によって生成された代表信号に基づいて、上記微分信号を積分して得られる信号を補正する出力差異補正手段とを備え、
上記出力差異補正手段によって補正された信号を磁気制御用の信号として出力することを特徴とする請求項1記載の磁気ガイド装置。
【請求項3】
上記代表信号生成手段は、上記各ギャップセンサの検出信号を平均化した信号を信号補正のための代表信号として生成することを特徴とする請求項2記載の磁気ガイド装置。
【請求項4】
上記信号補正演算手段の前段に、上記各ギャップセンサの検出信号の相対的な差を補正するための定常差異補正手段を設け、
この定常差異補正手段によって補正された各検出信号を上記信号補正手段に入力することを特徴とする請求項1または2記載の磁気ガイド装置。
【請求項5】
上記信号補正演算手段は、
上記各ギャップセンサの検出信号をそれぞれ微分する第1の微分手段と、
この第1の微分手段よりも高周波帯域の信号を微分可能な特性を有し、上記第1の微分手段とは別に上記各ギャップセンサの検出信号をそれぞれ微分する第2の微分手段とを備え
上記第1の微分手段によって得られた微分信号を比較用として用い、その比較結果を受けて上記第2の微分手段によって得られた微分信号を出力用として積分することを特徴とする請求項1記載の磁気ガイド装置。
【請求項6】
上記信号補正演算手段の出力信号を基準信号として用い、その基準信号に基づいて上記各ギャップセンサの検出信号の相対的な誤差を補正する定常差異補正手段と、
この定常差異補正手段によって補正された各検出信号の変化量を検出し、その変化量に応じて重み係数を相対的に変化させ、上記重み係数を乗じた上記各検出信号を加算した信号を磁気制御用の信号として最終的に出力する出力演算手段と
をさらに具備したことを特徴とする請求項1記載の磁気ガイド装置。
【請求項7】
上記信号補正演算手段の出力信号を基準信号として用い、その基準信号と上記各ギャップセンサの検出信号との誤差を検出し、その誤差に応じて重み係数を相対的に変化させ、上記重み係数を乗じた上記各検出信号を加算した信号を磁気制御用の信号として最終的に出力する出力演算手段をさらに具備したことを特徴とする請求項1記載の磁気ガイド装置。
【請求項8】
上記信号補正演算手段の出力信号を基準信号として用い、その基準信号と上記各ギャップセンサの検出信号をそれぞれに微分した状態で誤差を検出し、その誤差に応じて重み係数を相対的に変化させ、上記重み係数を乗じた上記各検出信号を加算した信号を磁気制御用の信号として最終的に出力する出力演算手段をさらに具備したことを特徴とする請求項1記載の磁気ガイド装置。
【請求項9】
上記信号補正演算手段は、
上記微分信号を積分して得られる信号の位相遅れを補正するためのフィルタ手段を備えたことを特徴とする請求項1記載の磁気ガイド装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公開番号】特開2009−161303(P2009−161303A)
【公開日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−144(P2008−144)
【出願日】平成20年1月4日(2008.1.4)
【出願人】(390025265)東芝エレベータ株式会社 (2,543)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年1月4日(2008.1.4)
【出願人】(390025265)東芝エレベータ株式会社 (2,543)
【Fターム(参考)】
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