説明

磁気シールド体

【課題】大開口を備えることで入室者に対する圧迫感を一層低減することができるものであって、所要の磁気遮蔽性能を得ることができる、磁気シールド体を提供すること。
【解決手段】フレーム10を介して相互に間隔を空けて並設された複数の磁性角筒体20を備える磁気シールド体1であって、当該磁気シールド体1における領域の中で磁気発生源からの最も強い磁気が印加される印加領域から、当該磁気シールド体1における領域の中で外部への磁気漏洩を低減したい低減対象領域以外の領域に、磁気を誘導することにより、低減対象領域から外部への漏洩磁気を低減させる磁気誘導路40を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、磁界を遮蔽するための磁気シールド体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、磁界を遮蔽するため、磁界発生源を覆うことによって、当該磁界発生源にて形成された磁界が外部に漏洩することを防止する磁気シールドルームが提案されている。この磁気シールドルームは、例えば、医療施設で用いられるMRI(Magnetic Resonance Imaging)装置を設置するための部屋(以下「MRI室」)として実用化されている。この磁気シールドルームは、概略的には、壁、天井、及び床の全部又は一部に磁性材料を埋設することで構成されており、これら壁、天井、及び床に到達した磁束を磁性材料を介して迂回させることで、磁界が外部に漏洩することを防止している。
【0003】
このような磁気シールドルームは、磁界発生源を壁、天井、及び床によって囲繞しているので、この磁気シールドルームの内部空間が密閉され、入室者に圧迫感を与える可能性がある。この点を解消するため、開放型の磁気シールド体を用いて磁気シールドルームを構成することも提案されている(例えば特許文献1参照)。この開放型の磁気シールド体は、複数の筒体を枠体にて支持することで構成されている。この構造によれば、磁気シールドルームの内部と外部とが、筒体の内部空間を介して視覚的に開放されるので、入室者に対する圧迫感を低減することができる。
【0004】
しかしながら、特許文献1の磁気シールド体は、複数の筒体を相互に線状に接触させていたので、この接触部分に対して応力集中を生じさせる等の問題があった。この点を解消するため、本願発明者等は、複数の筒体を相互に間隔を空けて非接触状に配置して構成された磁気シールド体を提案した(特許文献2参照)。図54は従来の磁気シールドルームの平面図、図55は従来の磁気シールド体の斜視図(一部の磁性角筒体を分解斜視図として示す)である。これら図54、55において、磁気シールド体100は、MRI室から漏洩する磁気を遮蔽するためのものであって、フレーム101に形成された複数の貫通孔102に、透磁性を有する複数の角筒状の筒体(磁性体角筒)103を装着して構成されている。この構造によれば、磁性体角筒103への応力負荷を低減することができると共に、磁気シールド体100の組立てや解体が容易である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平6−13781号公報
【特許文献2】特開2008−160027号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献2の磁気シールド体は、所望の磁気シールド性能を維持するため、各磁性体角筒における幅寸法よりも奥行寸法を長くする必要があり、入室者が見る角度によっては、磁性体角筒によって視野が遮られ、入室者に対する圧迫感を十分に低減することができないという問題がある。
【0007】
この問題を、さらに詳細に示す。図56は、磁気シールド体100の解析モデルの縦断面図、図57は、この解析モデルの立面図であり、ここでは、磁気シールド体100の対称性を考慮して、1/4領域のみを表している。図58は、磁気シールド体100に用いた磁性体角筒103の解析モデルの斜視図である。磁場発生源としては、MRIの電磁石コイル(起磁力=40000AT)を想定し、この磁場発生源から2000mm離れた場所に磁気シールド体100を設置することを想定した。磁性体角筒103は、高さ=幅=296mm、奥行き=300mm、厚み=7mm、隣接する磁性体角筒103の相互の間隔=2mm、磁性体角筒103の比透磁率として、x方向に沿った比透磁率μx=10000、y方向に沿った比透磁率μy=10000、z方向に沿った比透磁率μz=1000とした。漏洩磁場の評価面は、磁気シールド体100を挟んで磁場発生源と反対側の位置であって、磁気シールド体100の側面から300mmの位置に設定した。
【0008】
このような解析モデルに対して磁場発生源から発生する磁界を印加した場合における評価面での漏洩磁束密度を、三次元磁界解析により求めた。この結果を図59に示す。この図59では、磁気シールド体100の各領域の漏洩磁束密度が大きくなる程、色が濃くなるものとして表示している(漏洩磁束密度を図示した他の図面においても同じ)。この評価面のうち、x方向及びy方向における中央領域(高さ=幅=2400mmの領域)における最大磁束密度は、8.24E−5(T)となった。
【0009】
次に、他の解析モデルを用いて行った解析の結果について説明する。図60は、磁気シールド体200の解析モデルの正面図である。ここでは、磁気シールド体200の対称性を考慮して、1/4領域のみを表している。この解析モデルでは、入室者に対する圧迫感を一層低減するために、x方向及びy方向における中央領域(高さ=幅=2400mmの領域)に大開口の磁性体角筒201を設けることを想定した。すなわち、この中央領域に配置される磁性体角筒201のみを、高さ=幅=2400mmで構成し、他の領域に配置される磁性体角筒202は、図57の解析モデルと同様に、高さ=幅=300mmとすることを想定した。その他の条件は、図57の場合と同じとした。
【0010】
このような解析モデルに対して磁場発生源から発生する磁界を印加した場合における評価面での漏洩磁束密度を、三次元磁界解析により求めた。この結果を図61に示す。この評価面の磁束密度分布は、図57の解析モデルの磁束密度分布とは異なり、中央領域における大開口の磁性体角筒201の最大磁束密度は、12.91E−5(T)となり、図57の解析モデルの場合より大幅に増加した。これは、高さ及び幅を大幅に大きくした磁性体角筒201においては、高さ及び幅を大きくしていない磁性体角筒202に比べて、磁気遮蔽性能が大幅に低下したためと考えられる。
【0011】
これら各解析結果から明らかなように、入室者に対する圧迫感を一層低減するために、単に一部の磁性体角筒を大開口化した場合には、磁性体角筒を大開口化していない場合に比べて磁気遮蔽性能が大幅に低下してしまう。
【0012】
本発明は、このような問題点に鑑みてなされたもので、大開口を備えることで入室者に対する圧迫感を一層低減することができるものであって、所要の磁気遮蔽性能を得ることができる、磁気シールド体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上述した課題を解決し、目的を達成するため、請求項1に記載の磁気シールド体は、支持手段を介して相互に間隔を空けて並設された複数の磁性筒体を備える磁気シールド体であって、当該磁気シールド体における領域の中で磁気発生源からの最も強い磁気が印加される印加領域から、当該磁気シールド体における領域の中で外部への磁気漏洩を低減したい低減対象領域以外の領域に、磁気を誘導することにより、前記低減対象領域から外部への漏洩磁気を低減させる磁気誘導路を備える。
【0014】
請求項2に記載の磁気シールド体は、請求項1に記載の磁気シールド体において、前記複数の磁性筒体の中の一部の磁性筒体の比透磁率であって、当該磁性筒体の筒軸方向であるz方向に沿った比透磁率、又は、当該z方向に直交する方向に沿った比透磁率の少なくとも一方を、前記複数の磁性筒体の中の他の磁性筒体における同一方向の比透磁率とは異なる比透磁率とすることにより、前記磁気誘導路を形成した。
【0015】
請求項3に記載の磁気シールド体は、請求項2に記載の磁気シールド体において、前記磁性筒体は、四角筒状の磁性角筒体であり、前記一部の磁性筒体の比透磁率のうち、前記z方向に沿った比透磁率、当該z方向に直交する方向であって前記磁性筒体の一側面に直交するx方向に沿った比透磁率、又は、当該z方向及び当該x方向に直交するy方向に沿った比透磁率の少なくとも一つを、前記他の磁性筒体における同一方向に沿った比透磁率とは異なる比透磁率とすることにより、前記磁気誘導路を形成した。
【0016】
請求項4に記載の磁気シールド体は、請求項2又は3に記載の磁気シールド体において、前記印加領域から前記低減対象領域に至る最短の経路上の最短領域に配置された前記磁性筒体の比透磁率を、他の磁性筒体の比透磁率より小さくすることにより、当該最短領域以外の領域に前記磁気誘導路を形成した。
【0017】
請求項5に記載の磁気シールド体は、請求項2から4のいずれか一項に記載の磁気シールド体において、前記低減対象領域に含まれる前記磁性筒体の前記z方向に沿った比透磁率に対して、前記低減対象領域の周囲の周囲領域に配置された他の磁性筒体における同一方向に沿った比透磁率を小さくすることにより、当該周囲領域以外の領域に前記磁気誘導路を形成した。
【0018】
請求項6に記載の磁気シールド体は、請求項2から5のいずれか一項に記載の磁気シールド体において、前記低減対象領域に含まれる前記磁性筒体の前記z方向に沿った比透磁率に対して、前記低減対象領域を挟んで、前記印加領域とは反対側に位置する反対領域に含まれる他の磁性筒体における同一方向に沿った比透磁率を大きくすることにより、当該反対領域に前記磁気誘導路を形成した。
【0019】
請求項7に記載の磁気シールド体は、請求項2から6のいずれか一項に記載の磁気シールド体において、前記磁性筒体には、当該磁性筒体の側面又は角部に形成された切り欠き部であって、当該切り欠き部に直交する方向に沿った比透磁率を、当該切り欠き部がない同一形状の磁性角筒体における同一方向の比透磁率より低減するための切り欠き部であり、当該比透磁率の所要の低減量に対応した長さ及び幅で形成された切り欠き部を設けることにより、前記磁性筒体の前記比透磁率を調整した。
【0020】
請求項8に記載の磁気シールド体は、請求項1に記載の磁気シールド体において、前記支持手段を介して相互に間隔を空けて並設された前記複数の磁性筒体により構成される筒状遮蔽体と、磁性板状体により構成された板状遮蔽体とを、相互に接するように配置して構成され、前記板状遮蔽体に前記磁気誘導路を設け、前記磁気誘導路により、当該板状遮蔽体における前記印加領域から、前記筒状遮蔽体以外の領域に、磁気を誘導する。
【0021】
請求項9に記載の磁気シールド体は、支持手段を介して相互に間隔を空けて並設された複数の磁性筒体を備える磁気シールド体であって、前記複数の磁性筒体のうち、一部の磁性筒体を、他の磁性筒体より大きな開口を有する大開口磁性筒体として形成し、当該磁気シールド体における領域の中で磁気発生源からの最も強い磁気が印加される印加領域から、当該磁気シールド体における領域の中で前記大開口磁性筒体以外の領域に、磁気を誘導することにより、前記大開口磁性筒体から外部への漏洩磁気を低減させる磁気誘導路を備える。
【0022】
請求項10に記載の磁気シールド体は、請求項1から9のいずれか一項に記載の磁気シールド体において、前記支持手段を、導電性材料にて形成した。
【発明の効果】
【0023】
請求項1に記載の磁気シールド体によれば、磁気シールド体における領域の中で磁気発生源からの最も強い磁気が印加される印加領域から、磁気シールド体における領域の中で外部への磁気漏洩を低減したい低減対象領域以外の領域に、磁気を誘導することにより、低減対象領域から外部への漏洩磁気を低減させる磁気誘導路を備えるので、磁気発生源から磁気シールド体に入射した磁気を、磁気誘導路を介して低減対象領域以外の領域に誘導でき、低減対象領域に伝わる磁気を低減できるので、低減対象領域から漏洩する磁気を低減することができる。従って、低減対象領域に大開口を設けた場合であっても、大開口から漏洩する磁気を低減することができ、大開口を設けることで入室者の圧迫感を低減できると同時に、所要の磁気遮蔽性能を確保することができる。
【0024】
請求項2に記載の磁気シールド体によれば、複数の磁性筒体の中の一部の磁性筒体の比透磁率であって、当該磁性筒体の筒軸方向であるz方向に沿った比透磁率、又は、当該z方向に直交する方向に沿った比透磁率の少なくとも一方を、複数の磁性筒体の中の他の磁性筒体における同一方向の比透磁率とは異なる比透磁率とすることにより、磁気誘導路を形成したので、印加領域と低減対象領域の位置関係に応じた所望の方向における比透磁率を調整することができ、様々な磁気シールド体において、低減対象領域から漏洩する磁気を低減することができる。
【0025】
請求項3に記載の磁気シールド体によれば、磁性筒体は、四角筒状の磁性角筒体であり、一部の磁性筒体の比透磁率のうち、z方向に沿った比透磁率、当該z方向に直交する方向であって磁性筒体の一側面に直交するx方向に沿った比透磁率、又は、当該z方向及び当該x方向に直交するy方向に沿った比透磁率の少なくとも一つを、他の磁性筒体における同一方向に沿った比透磁率とは異なる比透磁率とすることにより、磁気誘導路を形成ので、磁性筒体を磁性角筒体として形成した場合においても、印加領域と低減対象領域の位置関係に応じた所望の方向における比透磁率を調整することができ、様々な磁気シールド体において、低減対象領域から漏洩する磁気を低減することができる。
【0026】
請求項4に記載の磁気シールド体によれば、印加領域から低減対象領域に至る最短の経路上の最短領域に配置された磁性筒体の比透磁率を、他の磁性筒体の比透磁率より小さくすることにより、当該最短領域以外の領域に磁気誘導路を形成したので、印加領域から低減対象領域に至る最短の経路に誘導される磁気を低減でき、低減対象領域に誘導される磁気を低減することができる。
【0027】
請求項5に記載の磁気シールド体によれば、低減対象領域に含まれる磁性筒体のz方向に沿った比透磁率に対して、低減対象領域の周囲の周囲領域に配置された他の磁性筒体における同一方向に沿った比透磁率を小さくすることにより、当該周囲領域以外の領域に磁気誘導路を形成したので、周囲領域からz方向に沿って磁気シールド体の外部に漏洩する磁気を低減でき、低減対象領域からz方向に沿って漏洩する磁気を低減することができる。
【0028】
請求項6に記載の磁気シールド体によれば、低減対象領域に含まれる磁性筒体のz方向に沿った比透磁率に対して、低減対象領域を挟んで、印加領域とは反対側に位置する反対領域に含まれる他の磁性筒体における同一方向に沿った比透磁率を大きくすることにより、当該反対領域に磁気誘導路を形成したので、反対領域からz方向に沿って磁気シールド体の外部に漏洩する磁気を増加させることが、低減対象領域からz方向に沿って漏洩する磁気を低減することができる。
【0029】
請求項7に記載の磁気シールド体によれば、磁性筒体に、当該磁性筒体の側面又は角部に形成された切り欠き部であって、当該切り欠き部に直交する方向に沿った比透磁率を、当該切り欠き部がない同一形状の磁性角筒体における同一方向の比透磁率より低減するための切り欠き部であり、当該比透磁率の所要の低減量に対応した長さ及び幅で形成された切り欠き部を設けることにより、磁性筒体の比透磁率を調整したので、所要の方向(垂直方向、水平方向、及び奥行き方向の3方向の中から任意に選択した一つ以上の方向)の比透磁率を所要の低減量だけ低減させることができ、磁性角筒体毎の各方向の比透磁率を容易に調整することができる。特に、切り欠き部を形成することで比透磁率を調整できるので、磁性角筒体の相互の間隔、切り欠き部以外の形状、厚み等を一定にできるので、磁性角筒体の製造や管理の労力の増加を招くことがなく、磁気シールド体の組み立ても容易であり、かつ、磁気シールド体の意匠性も低下させることがない。例えば、MRI室の磁気シールド体において、MRIの入れ替えに伴って磁場の方向や角度が変わった場合であっても、各磁性角筒体の高さ、幅、奥行きが同一であるため、同一の支持手段に対して、切り欠き部のみが異なる磁性角筒体を入れ替えることで対応することができる。
【0030】
請求項8に記載の磁気シールド体によれば、複数の磁性筒体により構成される筒状遮蔽体と、磁性板状体により構成された板状遮蔽体とを、相互に接するように配置して構成され、板状遮蔽体に磁気誘導路を設け、磁気誘導路により、当該板状遮蔽体における印加領域から、筒状遮蔽体以外の領域に、磁気を誘導するので、磁気発生源から板状遮蔽体に入射した磁気を、磁気誘導路を介して、筒状遮蔽体以外の領域に誘導でき、筒状遮蔽体に伝わる磁気を低減できるので、筒状遮蔽体から漏洩する磁気を低減することができる。従って、筒状遮蔽体に大開口を設けた場合であっても、大開口磁性筒体から漏洩する磁気を低減することができる。
【0031】
請求項9に記載の磁気シールド体によれば、一部の磁性筒体を、他の磁性筒体より大きな開口を有する大開口磁性筒体として形成し、印加領域から大開口磁性筒体以外の領域に、磁気を誘導することにより、大開口磁性筒体から外部への漏洩磁気を低減させる磁気誘導路を備えるので、磁気発生源から磁気シールド体に入射した磁気を、磁気誘導路を介して、大開口磁性筒体以外の領域に誘導でき、大開口磁性筒体に伝わる磁気を低減できるので、大開口磁性筒体から漏洩する磁気を低減することができる。従って、大開口磁性筒体を設けた場合であっても、大開口磁性筒体から漏洩する磁気を低減することができ、大開口磁性筒体を設けることで入室者の圧迫感を低減できると同時に、所要の磁気遮蔽性能を確保することができる。
【0032】
請求項10に記載の磁気シールド体によれば、支持手段を、導電性材料にて形成したので、電磁波遮断効果を得ることができると共に、磁気発生源からの磁気が変動する場合においても、変動磁気を渦電流の効果により低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の実施の形態1に係る磁気シールド体の立面図である。
【図2】図2は図1の磁性角筒体の要部斜視図である。
【図3】磁気誘導路を概念的に説明するための説明図である。
【図4】実際の磁性角筒体の斜視図である。
【図5】均質化モデルの斜視図である。
【図6】比透磁率μxが調整された磁性角筒体の斜視図である。
【図7】図6のモデルに対する算定結果を示す図である。
【図8】比透磁率μyが調整された磁性角筒体の斜視図である。
【図9】図8のモデルに対する算定結果を示す図である。
【図10】比透磁率μzが調整された磁性角筒体の斜視図である。
【図11】図11のモデルに対する算定結果を示す図である。
【図12】比透磁率μy、μzが調整された磁性角筒体の斜視図である。
【図13】図13のモデルに対する算定結果を示す図である。
【図14】切り欠き部が形成されていない磁性角筒体に関する図である。
【図15】切り欠き部が形成された磁性角筒体に関する図である。
【図16】つなぎ長さWyを残さずに全て切った場合の磁性角筒体に関する図である。
【図17】比透磁率μxが調整された磁性角筒体の斜視図である。
【図18】図18のモデルに対する算定結果を示す図である。
【図19】比透磁率μyが調整された磁性角筒体の斜視図である。
【図20】図20のモデルに対する算定結果を示す図である。
【図21】比透磁率μx、μyが調整された磁性角筒体の斜視図である。
【図22】図22のモデルに対する算定結果を示す図である。
【図23】比透磁率μzが調整された磁性角筒体の斜視図である。
【図24】図24のモデルに対する算定結果を示す図である。
【図25】大開口を設けていない磁気シールド体の立面図である。
【図26】大開口を設けた磁気シールド体の立面図である。
【図27】図25、26の磁気シールド体に共通の縦断面図である。
【図28】図25の磁気シールド体の解析モデルの斜視図である。
【図29】図26の磁気シールド体の解析モデルの斜視図である。
【図30】図25、26の磁気シールド体を構成する磁性体角筒の斜視図である。
【図31】磁気誘導路を形成しない場合の三次元磁界解析結果を示す図である。
【図32】磁気誘導路を形成した場合の三次元磁界解析結果を示す図である。
【図33】磁気誘導路を形成しない場合の磁束分布の大きさと向きを示す図である。
【図34】磁気誘導路を形成した場合の磁束分布の大きさと向きを示す図である。
【図35】磁気誘導路を形成しない場合の三次元磁界解析結果を示す図である。
【図36】磁気誘導路を形成した場合の三次元磁界解析結果を示す図である。
【図37】磁気誘導路を形成しない場合の磁束分布の大きさと向きを示す図である。
【図38】磁気誘導路を形成した場合の磁束分布の大きさと向きを示す図である。
【図39】図25と同様の磁気シールド体の解析モデルの斜視図である。
【図40】磁気誘導路を形成しない場合の三次元磁界解析結果を示す図である。
【図41】磁気誘導路を形成した場合の三次元磁界解析結果を示す図である。
【図42】実施の形態2に係る磁気シールド体の立面図である。
【図43】磁気誘導路を概念的に説明するための説明図である。
【図44】磁気シールド体の立面図である。
【図45】図44の磁気シールド体の解析モデルの斜視図である。
【図46】図44の磁気シールド体を構成する磁性体角筒の斜視図である。
【図47】均質化モデルの斜視図である。
【図48】磁気誘導路を形成しない場合の三次元磁界解析結果を示す図である。
【図49】磁気誘導路を形成した場合の三次元磁界解析結果を示す図である。
【図50】磁気誘導路を形成しない場合の磁束分布の大きさと向きを示す図である。
【図51】磁気誘導路を形成した場合の磁束分布の大きさと向きを示す図である。
【図52】実施の形態3に係る磁気シールド体の立面図である。
【図53】磁気誘導路を概念的に説明するための説明図である。
【図54】従来の磁気シールドルームの平面図である。
【図55】従来の磁気シールド体の斜視図である。
【図56】磁気シールド体の解析モデルの縦断面図である。
【図57】解析モデルの立面図である。
【図58】磁気シールド体に用いた磁性体角筒の解析モデルの斜視図である。
【図59】三次元磁界解析結果を示す図である。
【図60】磁気シールド体の解析モデルの正面図である。
【図61】三次元磁界解析結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下に添付図面を参照して、本発明の各実施の形態を詳細に説明する。ただし、各実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0035】
〔実施の形態1〕
最初に、実施の形態1に係る磁気シールド体について説明する。この形態は、磁気シールド体の中央領域に大開口を形成した形態である。
【0036】
(構成)
まず、磁気シールド体の基本的な構成について説明する。図1は本実施の形態に係る磁気シールド体の立面図、図2は図1の磁性角筒体の要部斜視図(一部の磁性角筒体を分解斜視図として示す)である。以下、図1、2のZ方向の距離を「奥行き」、X方向の距離を「幅」、Y方向の距離を「高さ」と称する。これら図1、2に示すように、磁気シールド体1は、フレーム10により、複数の磁性角筒体20を相互に間隔を空けるように支持して構成されている。
【0037】
この磁気シールド体1は、磁界発生源(図示せず)の周囲に配置されることで、この磁界発生源にて発生された磁界の全部又は一部が当該磁気シールド体1を介して外部に漏洩することを防止するものである。磁界発生源は任意であり、MRI装置、永久磁石、電磁石コイル、超電導磁石を含む。磁気シールドルームは、その壁、天井、又は床に磁気シールド体1を配置することによって構成されるが、これら壁等の全面に磁気シールド体1を配置する構造以外に、これら壁等の一部のみに磁気シールド体1を配置する構造を含む。ただし、特に説明なき部分については、特許文献2と同様に構成することができる。
【0038】
フレーム10は、磁性角筒体20を支持する支持手段で、中空角筒形状に形成されており、上下及び左右に複数並設されている。これら複数のフレーム10は、別体に形成された後で並設されてもよく、あるいは一体に形成されてもよい。一体に形成する方法としては、例えば、複数の平板材を水平方向及び垂直方向に配置して相互に井桁状に組み合わせることで、各平板材の相互間にフレーム10を形成することができる。このフレーム10の内部には、貫通孔11が形成されており、この貫通孔11に磁性角筒体20を収容することができる。
【0039】
フレーム10の材料は、磁性体12よりも十分に磁気抵抗が大きく、かつ、磁性角筒体20を支持するための所望の強度を有する限りにおいて任意であり、例えば、木材や樹脂を用いることができる。特に、フレーム10の材料として導電性材料を用いることで、電磁波遮断効果を得ることができ、また、磁気発生源が移動等することで当該磁気発生源からの磁気が変動する場合においても、変動磁気を渦電流の効果により低減することができる。このフレーム10の中心軸に直交する縦断面(図2のZ−Y平面。以下、単に「縦断面」という場合において同じ)における、当該フレーム10の縦断面形状は任意であるが、ここでは高さ及び幅が等しい正方形状とされている。
【0040】
磁性角筒体20は、フレーム10の内部に形成された貫通孔11に配置されるもので、このフレーム10の内寸とほぼ合致する外寸を持つ中空の角筒形状に形成されている。この磁性角筒体20は、隣接する磁性角筒体20との間において、フレーム10の肉厚に対応する空間を隔てて配置されている。この磁性角筒体20は、磁性材料により形成される。この磁性材料の具体的種類は任意であるが、例えば珪素鋼板(方向性珪素鋼板、無方向性珪素鋼板)、パーマロイ、電磁鋼板、あるいは、アモルファス板を用いることができる。特に、磁性角筒体20を珪素鋼板から形成した場合には、パーマロイ等から形成する場合に比べて材料コストが安価であるため、磁性角筒体20の製造コストを低減することができる。例えば、磁性角筒体20は、1枚の珪素鋼板を曲げ加工したり、2枚の珪素鋼板を相互に溶接あるいは付き合わせにて接合することで製造される。なお、1枚の珪素鋼板を曲げ加工することにより磁性角筒体20を形成する場合には、この折り曲げ部分に焼き鈍し処理を施することで磁化特性を初期化することが好ましい。なお、磁性角筒体20の各側面には、錆び止め等のための塗装を行なってもよい。
【0041】
ここで、複数の磁性角筒体20としては、より詳細には、磁性角筒体20Aと磁性角筒体20Bが配置されている。磁性角筒体20Aは、従来と同様の高さ及び幅にて形成されたものであり、磁性角筒体20Bは、磁性角筒体20Aより大きな高さ及び幅で形成された大開口筒体である。ただし、これらを特に区別する必要がない場合には、単に磁性角筒体20と称する。
【0042】
ここで、複数の磁性角筒体20のうち、一部の磁性角筒体20には、切り欠き部30〜32が形成されている。この切り欠き部30〜32は、磁性角筒体20の比透磁率を調整するために形成されたもので、磁性角筒体20のx方向に沿った側部21、y方向に沿った側部22、又はx方向に沿った側部21とy方向に沿った側部22から形成される直角状の角部23のうち、少なくとも一つ(図2では、これら全て)において、スリット状の切り込み部として形成されている。ただし、切り欠き部30〜32の形状は、スリット状に限定されず、例えば、丸孔状や楕円孔状等の孔形状としてもよい。この他にも、磁性角筒体20の側部21、22や角部23の一部分を除外して磁性的な非連続空間を形成できる限りにおいて、任意の形状の切り欠き部30〜32を形成することができる。
【0043】
このように、磁気シールド体1を構成する複数の磁性角筒体20のうち、一部の磁性角筒体20に切り欠き部30〜32を形成し、その比透磁率を調整することで、磁気シールド体1の内部に比透磁率の差異を設けることができ、後述する磁気誘導路40を形成することができる。すなわち、切り欠き部30〜32を形成する領域と、切り欠き部30〜32を形成する部分、切り欠き部30〜32の幅(切り欠き部30〜32がスリット状である場合には、その形成方向に直交する方向の寸法)、及び切り欠き部30〜32の長さ(切り欠き部30〜32がスリット状である場合には、その切り欠き部30〜32の形成方向に沿った方向の寸法)を調整することで、比透磁率を所要の低減量だけ低減させることができ、所要の経路に磁気誘導路40を設けることが可能となる。以下、このように切り欠き部30〜32を形成することの意義等について、さらに詳細に説明する。なお、比透磁率は、x方向、y方向、z方向の3方向に分解されるため、以下では、x方向の比透磁率をμx、y方向の比透磁率をμy、z方向の比透磁率をμzとそれぞれ称する。
【0044】
(構成−磁気誘導路)
このように構成された磁気シールド体1は、磁気誘導路40を備えている。図3は、磁気誘導路40を概念的に説明するための説明図であり、ここでは、磁気シールド体1の対称性を考慮して1/4領域のみを示している。この磁気誘導路40は、印加領域E1から低減対象領域E2以外の領域に磁気を誘導することにより、低減対象領域E2から外部への漏洩磁気を低減させるものである。
【0045】
印加領域E1とは、磁気シールド体1における領域の中で、磁気発生源からの最も強い磁気が印加される領域である。例えば、印加領域E1は、磁気発生源から最短距離に位置する領域であるが、最短距離に位置する領域に限定されない。ここでは、図1の磁気シールド体1の上下及び左右の中心領域(図3の最左方の最下方領域)を印加領域E1としている。
【0046】
また、低減対象領域E2とは、磁気シールド体1における領域の中で、外部への磁気漏洩を低減したい領域である。例えば、磁気シールド体1からの漏洩磁気を評価する評価点が、磁気シールド体1を挟んで磁気発生源と反対側に設定されている場合には、この評価点から最短距離に位置する領域である。ここでは、大開口の磁性角筒体20Bに対応する領域を低減対象領域E2としている。
【0047】
図3において、印加領域E1から低減対象領域E2以外の領域に磁気を誘導するために、矢印で示した複数の磁気誘導路40を設けている。これら複数の磁気誘導路40の各々は、印加領域E1から出て、低減対象領域E2を回避しつつ、他の領域に至る経路となっている。このような磁気誘導路40を設けることで、磁気発生源から磁気シールド体1に入射した磁気が、印加領域E1から低減対象領域E2以外の領域に誘導され、低減対象領域E2に至る磁気が低減するので、低減対象領域E2から漏洩する磁気が低減し、評価点における漏洩磁気が低減することになる。
【0048】
このような磁気誘導路40の形成位置を特定する方法は、概略的には、各磁気誘導路40に対応する領域に配置される磁性角筒体20の比透磁率を大きくすること(磁気抵抗を小さくすること)、あるいは、各磁気誘導路40に対応する領域以外の領域に配置される磁性角筒体20の比透磁率を小さくすること(磁気抵抗を大きくすること)である。このような方法により磁気シールド体1の各磁性角筒体20の比透磁率の相対的な関係が決定されることで、比透磁率が大きくなるように決定された磁性角筒体20を結んで経路が、磁気誘導路40となる。
【0049】
さらに具体的に磁気誘導路40の形成位置の特定方法を説明すると、以下の第1の方法から第3の方法として表現することができる。これら第1の方法から第3の方法は、相互に独立した方法であり、いずれか一つの方法によって磁気誘導路40の形成位置を特定すればよい。ただし、これら第1の方法から第3の方法の各々により特定される形成位置は、相互に重複する位置ができることを妨げるものではない。
【0050】
第1の方法は、印加領域E1から低減対象領域E2に至る最短の経路上の最短領域E3に配置された磁性角筒体20の比透磁率を、他の磁性角筒体20の比透磁率より小さくすることにより、当該最短領域E3以外の領域に磁気誘導路40を形成する方法である。すなわち、図3の最短領域E3においては、磁性角筒体20の比透磁率が、他の磁性角筒体20の比透磁率より小さく設定されており、このことにより、最短領域E3以外の領域に磁気誘導路40が形成されている。このように磁気誘導路40を形成することで、印加領域E1から低減対象領域E2に至る最短の経路に誘導される磁気を低減でき、低減対象領域E2に誘導される磁気を低減することができる。なお、第1の方法は、換言すれば、印加領域E1から低減対象領域E2を経ることなく低減対象領域E2以外の領域に至る経路上の回避領域に配置された磁性角筒体20の比透磁率を、他の磁性角筒体20の比透磁率より大きくすることにより、当該回避領域に磁気誘導路40を形成する方法であると言える。
【0051】
また、第2の方法は、低減対象領域E2に含まれる磁性角筒体20のz方向に沿った比透磁率に対して、低減対象領域E2の周囲の周囲領域E4に配置された他の磁性角筒体20における同一方向に沿った比透磁率を大きくすることにより、当該周囲領域E4に磁気誘導路40を形成する方法である。すなわち、図3の周囲領域E4においては、磁性角筒体20のz方向に沿った比透磁率μzが、低減対象領域E2に含まれる磁性角筒体20のz方向に沿った比透磁率μzより小さく設定されており、このことにより周囲領域E4以外の領域に磁気誘導路40が形成されている。このように周囲領域E4以外の領域に磁気誘導路40を形成することで、周囲領域E4からz方向に沿って磁気シールド体1の外部に漏洩する磁気を低減でき、低減対象領域E2からz方向に沿って漏洩する磁気を低減することができる。
【0052】
また、第3の方法は、低減対象領域E2に含まれる磁性角筒体20のz方向に沿った比透磁率に対して、低減対象領域E2を挟んで、印加領域E1とは反対側に位置する反対領域E5に含まれる他の磁性角筒体20における同一方向に沿った比透磁率を大きくすることにより、当該反対領域E5に磁気誘導路40を形成する方法である。すなわち、図3の反対領域E5においては、磁性角筒体20のz方向に沿った比透磁率μzが、低減対象領域E2に含まれる磁性角筒体20のz方向に沿った比透磁率μzより大きく設定されており、このことにより、反対領域E5に磁気誘導路40が形成されている。このように磁気誘導路40を形成することで、反対領域E5からz方向に沿って磁気シールド体1の外部に漏洩する磁気を増加させることが、低減対象領域E2からz方向に沿って漏洩する磁気を低減することができる。
【0053】
(磁気誘導路の形成方法−均質化モデル)
次に、このような磁気誘導路40を形成するための方法について説明する。この方法を説明するに際して、まず、磁性角筒体20の比透磁率を効率的に導出するための方法について説明する。本実施の形態では、実際の磁性角筒体20のモデル(以下、実モデル)を均質化手法にて均質化することによって作成された等価的なモデル(以下、均質化モデル)で置き換え、この均質化モデルの比透磁率を算定することにより、実際の磁性角筒体20の比透磁率を導出する。図4は、実際の磁性角筒体20の斜視図、図5は、均質化モデルの斜視図である。ここでは、概略的には、実モデルと均質化モデルのそれぞれに対して一様磁界を印加した場合における、これら実モデルと均質化モデルのそれぞれの磁気エネルギーを算定し、これらの磁気エネルギーが相互に一致することを条件として、均質化モデルの比透磁率の算定式を導出する。
【0054】
図4に示すように、実際の磁性角筒体20の寸法を、幅=高さ=296mm、奥行き=300mm、厚さ=3.5mm、隣接する他の実際の磁性角筒体20との隙間=2mmとし、磁界の大きさ=H、磁束密度=B、比透磁率=μ、実際の磁性角筒体20の単位体積当たりの磁気エネルギー=Xとすると、この磁気エネルギーXは、式(1)で表わされる。
【0055】
【数1】

【0056】
ここで、x方向の比透磁率=μxを導出すると、実モデルの全磁気エネルギーX(real)は、x方向に一様磁界Bxを印加した磁界解析を行い、得られた磁束分布から、式(2)のように表される。ここで、ne=実モデルの要素数、ie=要素ieの値、V=実モデルの体積である。
【0057】
【数2】

【0058】
一方、図5に示す体積Vhの均質化モデルにおける磁気エネルギーX(homo)は、式(3)のように表される。
【0059】
【数3】

【0060】
ここで、実モデルの全磁気エネルギーX(real)と、均質化モデルにおける磁気エネルギーX(homo)は、相互に等しいことから、均質化モデルのx方向の比透磁率=μxについては、以下の式(4)が成り立つ。均質化モデルのy方向の比透磁率=μyと、均質化モデルのz方向の比透磁率=μzについても、同様に導出することができる。
【0061】
【数4】

【0062】
(磁気誘導路の形成方法−x方向の比透磁率=μxの調整方法)
次に、x方向の比透磁率=μxの調整方法について説明する。図6は、比透磁率μxが調整された磁性角筒体20(実モデル)の斜視図である。この磁性角筒体20は、切り欠き部30を備えて構成されている。この切り欠き部30は、磁性角筒体20の側部21、22の中で、x方向に沿った2つの側部21の各々に形成されたもので、x方向に直交する方向に沿って形成されている。
【0063】
このように切り欠き部30を形成した場合の比透磁率の変化を、上述した均質化モデルを用いて算定した。図6に示す実モデルの寸法は、幅=高さ=奥行き=300mm、厚さ=7mm、隣接する他の実際の磁性角筒体20との隙間=2mmとし、切り欠き部30の間隙=5mmとした。また、切り欠き部30を形成する前の磁性角筒体20の比透磁率を、μx=μy=10000、μz=1000とした。そして、この実モデルを均質化した均質化モデル(図5と同様)について、比透磁率μx、μy、μzを算定した。ここでは、切り欠き部30を形成した側部21において、切り欠き部30に沿った方向の幅であって、切り欠き部30の延長線上において切り欠き部30が形成されることなく残った部分の幅(側部21の全長から切り欠き部30の長さを引いた長さ。以下、つなぎ長さ)をWxとし、このつなぎ長さWxを変化させた場合における、比透磁率μx、μy、μzを算定した。
【0064】
この算定結果を、図7に示す。この結果から分かるように、つなぎ長さWxが小さくなる程(切り欠き部30の長さが大きくなる程)、μxが小さくなることが確認された。また、つなぎ長さWxに関わらず、μy、μzは変化しないことが確認された。これらのことから、磁性角筒体20の側部21、22の中で、x方向に沿った側部21に、x方向に直交する方向に沿って切り欠き部30を形成することにより、x方向の比透磁率=μxのみを調整することができ、切り欠き部30の長さを変えることでμxを所望の値に調整できる。さらに、この図7の結果から分かるように、つなぎ長さWxと比透磁率μxは単なる比例関係ではなく、つなぎ長さWxが短くなるに伴って(切り欠き部30が長くなるに伴って)、比透磁率μxは2次曲線状に低下する。このような関係は、例えば、切り欠き部30を形成する個所数や幅と、比透磁率μxとの関係にも当てはまる。すなわち、個所数に関して、図6では、切り欠き部30を、x方向に沿った2つの側部21の各々に形成しているが、このように2つの側部21の各々に形成した場合の比透磁率μxは、一方の側部21のみに形成した場合の比透磁率μxに比べて、単純に半分にはならず、2〜3割の低減となる。また、幅に関して、図6では、切り欠き部30の幅=5mmとしているが、この幅を倍にしても、比透磁率μxは単純に半分にはならず、2次曲線状に低下する。ただし、切り欠き部30の総体積(切り欠き部30の長さ×幅×厚み)が一定であれば、切り欠き部30の長さを長くなるように変化させた場合に比べて、切り欠き部30の幅を太くなるように変化させた方が、比透磁率μxが滑らかに(小さい変化分で)低減されることが確認されており、後者の方が比透磁率μxを微妙に変化させることができる点で好ましい。なお、これら個所数や幅に関する傾向は、y方向やz方向に関しても同様である。
【0065】
(磁気誘導路の形成方法−y方向の比透磁率=μyの調整方法)
次に、y方向の比透磁率=μyの調整方法について説明する。図8は、比透磁率μyが調整された磁性角筒体20(実モデル)の斜視図である。この磁性角筒体20は、切り欠き部31を備えて構成されている。この切り欠き部31は、磁性角筒体20の側部21、22の中で、y方向に沿った2つの側部22の各々に形成されたもので、y方向に直交する方向に沿って形成されている。
【0066】
このように切り欠き部31を形成した場合の比透磁率の変化を、上述した均質化モデルを用いて算定した。図8に示す実モデルの寸法、切り欠き部31を形成する前の磁性角筒体20の比透磁率、及び比透磁率μx、μy、μzの算定条件は、図6に示す実モデルと同じであり、この実モデルを均質化した均質化モデル(図5と同様)について、比透磁率μx、μy、μzを算定した。ここでは、つなぎ長さWyを変化させた場合における、比透磁率μx、μy、μzを算定した。
【0067】
この算定結果を、図9に示す。この結果から分かるように、つなぎ長さWyが小さくなる程(切り欠き部31の長さが大きくなる程)、μyが小さくなることが確認された。また、つなぎ長さWyに関わらず、μx、μzは変化しないことが確認された。これらのことから、磁性角筒体20の側部21、22の中で、y方向に沿った側部22に、y方向に直交する方向に沿って切り欠き部31を形成することにより、y方向の比透磁率=μyのみを調整することができ、切り欠き部31の長さを変えることでμyを所望の値に調整できる。
【0068】
(磁気誘導路の形成方法−z方向の比透磁率=μzの調整方法)
次に、z方向の比透磁率=μzの調整方法について説明する。図10は、比透磁率μzが調整された磁性角筒体20(実モデル)の斜視図である。この磁性角筒体20は、切り欠き部32を備えて構成されている。この切り欠き部32は、磁性角筒体20の4つの角部23の各々に形成されたもので、z方向に直交する方向に沿って形成されている。
【0069】
このように切り欠き部32を形成した場合の比透磁率の変化を、上述した均質化モデルを用いて算定した。図10に示す実モデルの寸法、切り欠き部32を形成する前の磁性角筒体20の比透磁率、及び比透磁率μx、μy、μzの算定条件は、図6に示す実モデルと同じであり、この実モデルを均質化した均質化モデル(図5と同様)について、比透磁率μx、μy、μzを算定した。ここでは、つなぎ長さWzを変化させた場合における、比透磁率μx、μy、μzを算定した。
【0070】
この算定結果を、図11に示す。この結果から分かるように、つなぎ長さWzが小さくなる程(切り欠き部32の長さが大きくなる程)、μzが小さくなることが確認された。また、つなぎ長さWzに関わらず、μx、μyは変化しないことが確認された。これらのことから、磁性角筒体20の角部23に、z方向に直交する方向に沿って切り欠き部32を形成することにより、z方向の比透磁率=μzのみを調整することができ、切り欠き部32の長さを変えることでμzを所望の値に調整できる。
【0071】
(磁気誘導路の形成方法−複数方向の比透磁率の調整方法)
次に、複数方向の比透磁率を同時に調整する方法について説明する。図12は、比透磁率μy、μzが調整された磁性角筒体20(実モデル)の斜視図である。この磁性角筒体20は、図8、10にそれぞれ示したものと同じ切り欠き部31、32を備えて構成されている。
【0072】
このように切り欠き部31、32を形成した場合の比透磁率の変化を、上記比透磁率μy、μzをそれぞれ個別的に調整した場合と同様の方法で算定した。
【0073】
この算定結果を、図13に示す。この結果から分かるように、切り欠き部31と切り欠き部32を同時に形成した場合においても、比透磁率μyの特性については、切り欠き部31のみを形成した場合と同じであり、比透磁率μzの特性については、切り欠き部32のみを形成した場合と同じであり、つなぎ長さWyは、μx、μzに影響を与えず、つなぎ長さWzは、μx、μyに影響を与えないことが確認された。これらのことから、磁性角筒体20に切り欠き部31と切り欠き部32を同時に形成した場合には、y方向の比透磁率=μyとz方向の比透磁率=μzのみを調整することができ、切り欠き部31、32の長さを変えることでμy、μzを所望の値に調整できる。
【0074】
また、結果の図示は省略するが、図6、8、10にそれぞれ示したものと同じ切り欠き部30〜32を同時に形成した場合においても、同様の結果が確認された。すなわち、この場合においても、比透磁率μxの特性については、切り欠き部30のみを形成した場合と同じであり、比透磁率μyの特性については、切り欠き部31のみを形成した場合と同じであり、比透磁率μzの特性については、切り欠き部32のみを形成した場合と同じであり、つなぎ長さWxは、μy、μzに影響を与えず、つなぎ長さWyは、μx、μzに影響を与えず、つなぎ長さWzは、μx、μyに影響を与えないことが確認された。これらのことから、磁性角筒体20に切り欠き部30〜32を同時に形成した場合には、x方向の比透磁率=μx、y方向の比透磁率=μy、及びz方向の比透磁率=μzを調整することができ、切り欠き部30〜32の長さを変えることでμx、μy、μzを所望の値に調整できる。
【0075】
(磁気誘導路の形成方法−比透磁率調整の原理)
以上のように切り欠き部30〜32を形成することにより、比透磁率を調整することができる原理を説明する。一例として、y方向に沿った2つの側部22の各々において、y方向に直交する方向に沿って形成された切り欠き部31が形成された磁性角筒体20の内部における磁束の流れについて説明する。図14〜16は、切り欠き部31の形成状態が異なる複数の磁性角筒体20と、これら複数の磁性角筒体20の各々内部における磁束の流れを模式的に示した図であり、図14は、切り欠き部31が形成されていない磁性角筒体20に関する図、図15は、切り欠き部31が形成された磁性角筒体20に関する図、図16は、つなぎ長さWyを残さずに全て切った場合の磁性角筒体20に関する図である。ここでは、図示下方から上方に向かう磁束が入射した状態を想定する。
【0076】
図14(a)に示すように、切り欠き部31が形成されていない磁性角筒体20においては、図14(b)に示すように、磁束は、y方向に沿った側部22の全域を伝って流れる。これに対して、図15(a)に示すように、切り欠き部31が形成された磁性角筒体20においては、図15(b)に示すように、磁束は、y方向に沿った側部22のうち、空気があり磁気抵抗が高い切り欠き部31には流れず、磁気抵抗の低い磁性体部分(切り欠き部以外の部分)のみを伝って流れる。さらに、図16(a)に示すように、全て切った磁性角筒体20においては、図16(b)に示すように、磁束は、y方向に沿った側部22のうち、磁気抵抗の低い磁性体部分(切り欠き部31以外の部分)がないため、空気があり磁気抵抗が高い切り欠き部31を介して減衰して流れる。これらのことから、切り欠き部30〜32の幅が広い程、また、切り欠き部30〜32の長さが長い程、磁束が流れにくくなり、磁気抵抗が高くなるため、比透磁率を低減できることが判る。換言すれば、比透磁率の所望の低減量に合致した幅及び長さで、特定方向及び特定箇所に切り欠き部30〜32を形成することで、所望の方向の比透磁率を所望の低減量だけ低減できることが判る。
【0077】
(磁性角筒体の比透磁率調整方法)
次に、このような磁性角筒体20の比透磁率調整方法について説明する。磁性角筒体20は、例えば、従来と同様の方法により、磁性材料の板状体を折り曲げて形成する(準備工程)。そして、この折り曲げ前の段階において、あるいは、折り曲げ後の段階において、板状体や磁性角筒体20の側部21、22や角部23にカッターを押し当てることで、スリット状の切り欠き部(切り込み部)30〜32を入れる(切り欠き部形成工程)。ただし、切り欠き部30〜32の形成は、この他の方法で行うこともでき、例えば、磁性角筒体20を鋳造で形成する場合には、切り欠き部30〜32も鋳造時に形成することができる。あるいは、磁性材料の板状体を折り曲げる前の段階や、磁性角筒体20を形成した後の段階で、打ち抜き加工を施すことで、切り欠き部30〜32を形成してもよい。また、切り欠き部30〜32の形成後に焼鈍を行うことで、切り欠き時に生じた歪みによる磁気特性の劣化を改善し、磁性角筒体20の各部の比透磁率を均質化することが好ましい。
【0078】
(磁気誘導路の形成方法−比透磁率調整の変形例1)
次に、比透磁率調整の変形例1について説明する。x方向の比透磁率=μxと、y方向の比透磁率=μyの調整は、切り欠き部を形成する以外にも、磁性角筒体20の相互間の間隔を調整することで行うことができる。
【0079】
まず、x方向の比透磁率=μxの調整方法について説明する。図17は比透磁率μxが調整された磁性角筒体20(実モデル)の斜視図である。ここでは、x方向の比透磁率μxを、x方向に沿って隣接する磁性角筒体20の相互間の間隔(ギャップ寸法Gx)により調整する。なお、y方向に沿って隣接する磁性角筒体20の相互間の間隔は一定値(ここでは2mm)に固定とする。図17に示す実モデルでは、磁性角筒体20の幅=高さ=奥行き=300mm、厚み=7mmとし、比透磁率μx=μy=10000、μz=1000としている。そして、この実モデルに対する均質化モデル(図5と同様)における、ギャップ寸法Gxを変化させた場合の3方向の比透磁率を算定した。
【0080】
この算定結果を、図18に示す。この結果から分かるように、ギャップ寸法Gxが大きくなる程、μxが小さくなることが確認された。また、ギャップ寸法Gxに関わらず、μy、μzは変化しないことが確認された。これらのことから、x方向に沿って隣接する磁性角筒体20の相互間の間隔を変えることでμxを所望の値に調整できる。
【0081】
次に、y方向の比透磁率=μyの調整方法について説明する。図19は比透磁率μyが調整された磁性角筒体20(実モデル)の斜視図である。ここでは、y方向の比透磁率μyを、y方向に沿って隣接する磁性角筒体20の相互間の間隔(ギャップ寸法Gy)により調整する。なお、x方向に沿って隣接する磁性角筒体20の相互間の間隔は一定値(ここでは2mm)に固定とする。その他の条件は、図17と同じである。そして、この実モデルに対する均質化モデル(図5と同様)における、ギャップ寸法Gyを変化させた場合の3方向の比透磁率を算定した。
【0082】
この算定結果を、図20に示す。この結果から分かるように、ギャップ寸法Gyが大きくなる程、μyが小さくなることが確認された。また、ギャップ寸法Gyに関わらず、μx、μzは変化しないことが確認された。これらのことから、y方向に沿って隣接する磁性角筒体20の相互間の間隔を変えることでμyを所望の値に調整できる。
【0083】
次に、複数方向の比透磁率を同時に調整する方法について説明する。図21は、比透磁率μx、μyが調整された磁性角筒体20(実モデル)の斜視図である。ここでは、x方向の比透磁率μxを、x方向に沿って隣接する磁性角筒体20の相互間の間隔(ギャップ寸法Gx)により調整すると同時に、y方向の比透磁率μyを、y方向に沿って隣接する磁性角筒体20の相互間の間隔(ギャップ寸法Gy)により調整する。その他の条件は、図17と同じである。そして、この実モデルに対する均質化モデル(図5と同様)における、ギャップ寸法Gx、Gyを変化させた場合の3方向の比透磁率を算定した。
【0084】
この算定結果を、図22に示す。この結果から分かるように、ギャップ寸法Gxとギャップ寸法Gyを同時に大きくした場合においても、比透磁率μxの特性については、ギャップ寸法Gxのみを大きくした場合と同じであり、比透磁率μyの特性については、ギャップ寸法Gyのみを大きくした場合と同じであり、ギャップ寸法Gxは、μy、μzに影響を与えず、ギャップ寸法Gyは、μx、μzに影響を与えないことが確認された。これらのことから、磁性角筒体20のギャップ寸法Gxとギャップ寸法Gyを同時に大きくした場合には、x方向の比透磁率=μxとy方向の比透磁率=μyのみを調整することができ、ギャップ寸法Gx、Gyを変えることでμx、μyを所望の値に調整できる。
【0085】
なお、このようにギャップ寸法Gxとギャップ寸法Gyを調整するための具体的構造としては、例えば、各フレーム10の厚みを変えたり、各フレーム10と磁性角筒体20の間に非磁性材料を挟んだ構造を採用することができる。
【0086】
このような変形例2に係る方法によれば、磁気シールド体1を構成する複数の磁性角筒体20の相互間におけるギャップ寸法を調整することで、x方向及びy方向に所望の程度の比透磁率を持った磁気シールド体1を構成することができ、磁気シールド体1の特定領域に誘導させる磁気を低減し、磁気シールド体1の特定領域から漏洩する磁気を低減することができる。
【0087】
(磁気誘導路の形成方法−比透磁率調整の変形例2)
次に、比透磁率調整の変形例2について説明する。z方向の比透磁率=μzの調整は、切り欠き部を形成する以外にも、磁性角筒体20の厚みを調整することで行うことができる。
【0088】
図23は比透磁率μzが調整された磁性角筒体20(実モデル)の斜視図である。ここでは、z方向の比透磁率μzを、磁性角筒体20の厚みにより調整する。図23に示す実モデルでは、磁性角筒体20の幅=高さ=奥行き=300mm、厚み=tmmとし、x方向に沿って隣接する磁性角筒体20の相互間の間隔(ギャップ寸法Gx)=y方向に沿って隣接する磁性角筒体20の相互間の間隔(ギャップ寸法Gy)=2mm、比透磁率μx=μy=10000、μz=1000としている。そして、この実モデルに対する均質化モデル(図5と同様)における、厚みtを変化させた場合の3方向の比透磁率を算定した。
【0089】
この算定結果を、図24に示す。この結果から分かるように、厚みtが大きくなる程、μzが大きくなることが確認された。また、厚みtに関わらず、μy、μzは変化しないことが確認された。これらのことから、磁性角筒体20の厚みtを変えることでμzを所望の値に調整できる。
【0090】
なお、磁性角筒体20の厚みtを調整するための具体的構造としては、例えば、磁性角筒体20を形成する際に、厚みtが異なる磁性板材を用いて磁性角筒体20を形成する際、鋳造時に厚みtを変えたり、標準的な厚みtの磁性角筒体20を形成した後にその側面や内面に磁性体を貼付等する構造を採用することができる。
【0091】
この変形例2に係る方法によれば、磁気シールド体1を構成する複数の磁性角筒体20の厚みを調整することで、z方向に所望の程度の比透磁率を持った磁気シールド体1を構成することができ、磁気シールド体1の特定領域に誘導させる磁気を低減し、磁気シールド体1の特定領域から漏洩する磁気を低減することができる。
【0092】
(磁気シールド体における磁気誘導路の効果)
次に、磁気シールド体1に対して磁気誘導路40を形成することの効果を、三次元磁気解析により検証した結果について説明する。ここでは、大開口を設けていない磁気シールド体1と、入室者の圧迫感を低減するために大開口を設けた磁気シールド体1について、それぞれ解析モデルを作成し、この解析モデルを用いて、磁気発生源から発生する磁気を印加した場合の評価面における漏洩磁束密度を、磁気誘導路40を形成しない場合(磁性体角筒の比透磁率を最適化しない場合)と、磁気誘導路40を形成した場合(磁性体角筒の比透磁率を最適化した場合)とについて、それぞれ求めた。
【0093】
図25は、大開口を設けていない磁気シールド体1の立面図、図26は、大開口を設けた磁気シールド体1の立面図、図27は、これらの磁気シールド体1に共通の縦断面図である。これら磁気シールド体1は、対称性を考慮して1/4領域のみを示している。図25の磁気シールド体1は、高さ=幅=奥行き=300mmの磁性角筒体20のみで構成されており、図26の磁気シールド体1は、高さ=幅=奥行き=300mmの磁性角筒体20Aに加えて、高さ=幅=2400mm、奥行き=300mmの大開口の磁性体角筒20Bを用いて構成されている。ここでは、図27に示すように、磁気発生源(40000ATの起磁力の電磁石コイル)から2300mm隔てて磁気シールド体1が配置されており、磁気シールド体1を挟んで磁気発生源と反対側に300mm離れた位置に評価面を設定している。
【0094】
図28は、図25の磁気シールド体1の解析モデルの斜視図、図29は、図26の磁気シールド体1の解析モデルの斜視図である。これら解析モデルは、対称性を考慮して1/4領域モデルとして作成されている。ここでは、低減対象領域E2として、評価面における各領域の中で、図25の大開口の磁性体角筒20Aに対応する領域を設定した。
【0095】
また、磁性体角筒20の3方向の比透磁率μx、μy、μzは、上述した均質化手法により導出している。図30は、図25、26の磁気シールド体1を構成する磁性体角筒(実モデル)の斜視図である。
【0096】
具体的には、均質化モデル(図5と同様)を用いて均質化手法により導出した3方向の比透磁率を、図28、29の解析モデルの各磁性体角筒20の各方向の比透磁率における初期値に設定する。そして、この各部の比透磁率を最大値として、低減対象領域E2における漏洩磁束密度が小さくなるように、各磁性体角筒の比透磁率を最適化(最小化)する反復解析を行った。
【0097】
図28の解析モデルに対して磁場発生源から発生する磁界を印加した場合における評価面での漏洩磁束密度を、三次元磁界解析により求めた。磁気誘導路40を形成しない場合の結果を図31、磁気誘導路40を形成した場合の結果を図32に、それぞれ示す。これら図31、32から明らかなように、磁気誘導路40を形成した場合の低減対象領域E2における最大漏洩磁束密度(約5E−5(T))は、磁気誘導路40を形成しない場合の低減対象領域E2における最大漏洩磁束密度(約8E−5(T))に比べて、小さくなっている。
【0098】
さらに、図33には、磁気誘導路40を形成しない場合の磁束分布の大きさと向き、図34には、磁気誘導路40を形成した場合の磁束分布の大きさと向きを、それぞれ示す。これら図33、34では、磁束分布の大きさを矢印の長さ、磁束分布の向きを矢印の向きにより表示している(以下、磁束分布の大きさと向きを示す図において同じ)。これら図33、34から明らかなように、磁気誘導路40を形成した場合には、磁気誘導路40を形成しない場合に比べて、磁場発生源から発生して磁気シールド体1に入射した磁束が、低減対象領域E2を避けるように流れているのが分かる。このことから、磁気誘導路40を形成することで、低減対象領域E2に流れる磁束の密度を低減でき、低減対象領域E2における最大漏洩磁束密度を低減できることが確認された。
【0099】
また、図29の解析モデルに対して磁場発生源から発生する磁界を印加した場合における評価面での漏洩磁束密度を、三次元磁界解析により求めた。磁気誘導路40を形成しない場合の結果を図35、磁気誘導路40を形成した場合の結果を図36に、それぞれ示す。これら図35、36から明らかなように、大開口を形成した場合であっても、磁気誘導路40を形成した場合の低減対象領域E2における最大漏洩磁束密度(約7E−5(T))は、磁気誘導路40を形成しない場合の低減対象領域E2における最大漏洩磁束密度(約13E−5(T))に比べて、小さくなっている。
【0100】
さらに、図37には、磁気誘導路40を形成しない場合の磁束分布の大きさと向き、図38には、磁気誘導路40を形成した場合の磁束分布の大きさと向きを、それぞれ示す。これら図37、38から明らかなように、大開口を形成した場合であっても、磁気誘導路40を形成した場合には、磁気誘導路40を形成しない場合に比べて、磁場発生源から発生して磁気シールド体1に入射した磁束が、大開口の磁性角筒体20Bを避けるように流れているのが分かる。このことから、磁気誘導路40を形成することで、大開口の磁性角筒体20Bに流れる磁束の密度を低減でき、低減対象領域E2における最大漏洩磁束密度を低減できることが確認された。
【0101】
また、大開口を設けていない磁気シールド体1における印加領域E1の漏洩磁気についても解析を行った。図39は、図25と同様の磁気シールド体1の解析モデルの斜視図であり、高さ=幅=1200mmの印加領域E1を低減対象領域E2として設定した状態を示す図である。この解析モデルに対して磁場発生源から発生する磁界を印加した場合における評価面での漏洩磁束密度を、三次元磁界解析により求めた。磁気誘導路40を形成しない場合の結果を図40、磁気誘導路40を形成した場合の結果を図41に、それぞれ示す。これら図40、41から明らかなように、磁気誘導路40を形成した場合の印加領域E1における最大漏洩磁束密度(約14E−5(T))は、磁気誘導路40を形成しない場合の印加領域E1における最大漏洩磁束密度(約24E−5(T))に比べて、約4割程度小さくなっている。このことから、磁気誘導路40を形成することで、印加領域E1の最大漏洩磁束密度を低減できることが確認された。
【0102】
(実施の形態1の効果)
このように実施の形態1によれば、磁気シールド体1における領域の中で磁気発生源からの最も強い磁気が印加される印加領域E1から、磁気シールド体1における領域の中で外部への磁気漏洩を低減したい低減対象領域E2以外の領域に、磁気を誘導することにより、低減対象領域E2から外部への漏洩磁気を低減させる磁気誘導路40を備えるので、磁気発生源から磁気シールド体1に入射した磁気を、磁気誘導路40を介して低減対象領域E2以外の領域に誘導でき、低減対象領域E2に伝わる磁気を低減できるので、低減対象領域E2から漏洩する磁気を低減することができる。従って、低減対象領域E2に大開口を設けた場合であっても、大開口から漏洩する磁気を低減することができ、大開口を設けることで入室者の圧迫感を低減できると同時に、所要の磁気遮蔽性能を確保することができる。
【0103】
また、複数の磁性角筒体20の中の一部の磁性角筒体20の比透磁率であって、当該磁性角筒体20の筒軸方向であるz方向に沿った比透磁率、又は、当該z方向に直交する方向に沿った比透磁率の少なくとも一方を、複数の磁性角筒体20の中の他の磁性角筒体20における同一方向の比透磁率とは異なる比透磁率とすることにより、磁気誘導路40を形成したので、印加領域E1と低減対象領域E2の位置関係に応じた所望の方向における比透磁率を調整することができ、様々な磁気シールド体1において、低減対象領域E2から漏洩する磁気を低減することができる。
【0104】
また、一部の磁性角筒体20の比透磁率のうち、z方向に沿った比透磁率、当該z方向に直交する方向であって磁性角筒体20の一側面に直交するx方向に沿った比透磁率、又は、当該z方向及び当該x方向に直交するy方向に沿った比透磁率の少なくとも一つを、他の磁性角筒体20における同一方向に沿った比透磁率とは異なる比透磁率とすることにより、磁気誘導路40を形成ので、磁性角筒体20を磁性角筒体20として形成した場合においても、印加領域E1と低減対象領域E2の位置関係に応じた所望の方向における比透磁率を調整することができ、様々な磁気シールド体1において、低減対象領域E2から漏洩する磁気を低減することができる。
【0105】
また、印加領域E1から低減対象領域E2に至る最短の経路上の最短領域E3に配置された磁性角筒体20の比透磁率を、他の磁性角筒体20の比透磁率より小さくすることにより、当該最短領域E3以外の領域に磁気誘導路40を形成したので、印加領域E1から低減対象領域E2に至る最短の経路に誘導される磁気を低減でき、低減対象領域E2に誘導される磁気を低減することができる。
【0106】
また、低減対象領域E2に含まれる磁性角筒体20のz方向に沿った比透磁率に対して、低減対象領域E2の周囲の周囲領域E4に配置された他の磁性角筒体20における同一方向に沿った比透磁率を小さくすることにより、当該周囲領域E4以外の領域に磁気誘導路40を形成したので、周囲領域E4からz方向に沿って磁気シールド体1の外部に漏洩する磁気を低減でき、低減対象領域E2からz方向に沿って漏洩する磁気を低減することができる。
【0107】
また、低減対象領域E2に含まれる磁性角筒体20のz方向に沿った比透磁率に対して、低減対象領域E2を挟んで、印加領域E1とは反対側に位置する反対領域E5に含まれる他の磁性角筒体20における同一方向に沿った比透磁率を大きくすることにより、当該反対領域E5に磁気誘導路40を形成したので、反対領域E5からz方向に沿って磁気シールド体1の外部に漏洩する磁気を増加させることが、低減対象領域E2からz方向に沿って漏洩する磁気を低減することができる。
【0108】
また、磁性角筒体20に、当該磁性角筒体20の側面21、22又は角部23に形成された切り欠き部30〜32であって、当該切り欠き部30〜32に直交する方向に沿った比透磁率を、当該切り欠き部30〜32がない同一形状の磁性角筒体20における同一方向の比透磁率より低減するための切り欠き部30〜32であり、当該比透磁率の所要の低減量に対応した長さ及び幅で形成された切り欠き部30〜32を設けることにより、磁性角筒体20の比透磁率を調整したので、所要の方向(垂直方向、水平方向、及び奥行き方向の3方向の中から任意に選択した一つ以上の方向)の比透磁率を所要の低減量だけ低減させることができ、磁性角筒体20毎の各方向の比透磁率を容易に調整することができる。特に、切り欠き部30〜32を形成することで比透磁率を調整できるので、磁性角筒体20の相互の間隔、切り欠き部30〜32以外の形状、厚み等を一定にできるので、磁性角筒体20の製造や管理の労力の増加を招くことがなく、磁気シールド体の組み立ても容易であり、かつ、磁気シールド体1の意匠性も低下させることがない。
【0109】
また、一部の磁性角筒体20を、他の磁性角筒体20より大きな開口を有する大開口磁性角筒体20Bとして形成し、印加領域E1から大開口磁性角筒体20B以外の領域に、磁気を誘導することにより、大開口磁性角筒体20Bから外部への漏洩磁気を低減させる磁気誘導路40を備えるので、磁気発生源から磁気シールド体1に入射した磁気を、磁気誘導路40を介して、大開口磁性角筒体20B以外の領域に誘導でき、大開口磁性角筒体20Bに伝わる磁気を低減できるので、大開口磁性角筒体20Bから漏洩する磁気を低減することができる。従って、大開口磁性角筒体20Bを設けた場合であっても、大開口磁性角筒体20Bから漏洩する磁気を低減することができ、大開口磁性角筒体20Bを設けることで入室者の圧迫感を低減できると同時に、所要の磁気遮蔽性能を確保することができる。
【0110】
また、フレーム10を、導電性材料にて形成したので、電磁波遮断効果を得ることができると共に、磁気発生源からの磁気が変動する場合においても、変動磁気を渦電流の効果により低減することができる。
【0111】
〔実施の形態2〕
次に、実施の形態2に係る磁気シールド体について説明する。この形態は、大開口を連続的に形成した形態である。ただし、特に説明なき構成については、実施の形態1の構成と同じであり、実施の形態1と同じ構成については、必要に応じて実施の形態1で使用したものと同じ符号を用いて、その説明を省略する。
【0112】
(構成)
図42は、本実施の形態に係る磁気シールド体の立面図である。この磁気シールド体2は、大開口化された磁性角筒体20Bを幅方向(x方向)に沿って連続的に並設して構成されている。
【0113】
(構成−磁気誘導路40)
このように構成された磁気シールド体2は、磁気誘導路40を備えている。図43は、磁気誘導路40を概念的に説明するための説明図であり、ここでは、磁気シールド体2の対称性を考慮して1/4領域のみを示している。この磁気誘導路40は、印加領域E1から低減対象領域E2以外の領域に磁気を誘導することにより、低減対象領域E2から外部への漏洩磁気を低減させるものである。
【0114】
ここでも、上記第1から第3の方法により、磁気誘導路40の形成位置を特定している。すなわち、印加領域E1から低減対象領域E2に至る最短の経路上の最短領域E3に配置された磁性角筒体20の比透磁率を、他の磁性角筒体20の比透磁率より小さくしている。また、印加領域E1から低減対象領域E2を経ることなく低減対象領域E2以外の領域に至る経路上の回避領域に配置された磁性角筒体20の比透磁率を、他の磁性角筒体20の比透磁率より大きくしている。また、低減対象領域E2に含まれる磁性角筒体20のz方向に沿った比透磁率μzに対して、低減対象領域E2の周囲の周囲領域E4に配置された他の磁性角筒体20における同一方向に沿った比透磁率μx、μyを小さくしている。さらに、低減対象領域E2に含まれる磁性角筒体20のz方向に沿った比透磁率μzに対して、に対して、低減対象領域E2を挟んで、印加領域E1とは反対側に位置する反対領域E5に含まれる他の磁性角筒体20における同一方向に沿った比透磁率を大きくしている。
【0115】
(磁気シールド体における磁気誘導路の効果)
次に、磁気シールド体2に対して磁気誘導路40を形成することの効果を、三次元磁気解析により検証した結果について説明する。図44は、磁気シールド体2の立面図である。この磁気シールド体2は、対称性を考慮して1/4領域のみを示している。この磁気シールド体2は、高さ=幅=奥行き=300mmの磁性体角筒に加えて、高さ=幅=600mm、奥行き=300mmの大開口の磁性体角筒を用いて構成されている。その他の条件は、図27と同じである。
【0116】
図45は、図44の磁気シールド体2の解析モデルの斜視図である。この解析モデルは、対称性を考慮して1/4領域モデルとして作成されている。ここでは、低減対象領域E2として、評価面における各領域の中で、図44の大開口の磁性体角筒20Bに対応する領域を設定した。
【0117】
また、磁性体角筒20の3方向の比透磁率μx、μy、μzは、上述した均質化手法により導出している。図46は、図44の磁気シールド体2を構成する磁性体角筒20(実モデル)の斜視図、図47は、均質化モデルの斜視図である。
【0118】
具体的には、図47の均質化モデルを用いて均質化手法により導出した3方向の比透磁率を、図45の解析モデルの各磁性体角筒20の各方向の比透磁率における初期値に設定する。そして、この各部の比透磁率を最大値として、低減対象領域E2における漏洩磁束密度が小さくなるように、各磁性体角筒20の比透磁率を最適化(最小化)する反復解析を行った。
【0119】
図47の解析モデルに対して磁場発生源から発生する磁界を印加した場合における評価面での漏洩磁束密度を、三次元磁界解析により求めた。磁気誘導路40を形成しない場合の結果を図48、磁気誘導路40を形成した場合の結果を図49に、それぞれ示す。これら図48、49から明らかなように、磁気誘導路40を形成した場合の低減対象領域E2における最大漏洩磁束密度(約6E−5(T))は、磁気誘導路40を形成しない場合の低減対象領域E2における最大漏洩磁束密度(約11E−5(T))に比べて、小さくなっている。
【0120】
さらに、図50には、磁気誘導路40を形成しない場合の磁束分布の大きさと向き、図51には、磁気誘導路40を形成した場合の磁束分布の大きさと向きを、それぞれ示す。これら図50、51から明らかなように、磁気誘導路40を形成した場合には、磁気誘導路40を形成しない場合に比べて、磁場発生源から発生して磁気シールド体2に入射した磁束が、低減対象領域E2を避けるように流れているのが分かる。このことから、磁気誘導路40を形成することで、低減対象領域E2に流れる磁束の密度を低減でき、低減対象領域E2における最大漏洩磁束密度を低減できることが確認された。なお、図51からは、低減対象領域E2にも一部の磁束が低減対象領域E2に流れているようにも見えるが、ここでは、低減対象領域E2における磁性体角筒20のz方向の比透磁率を小さくしているので、低減対象領域E2に流れた磁束が、z方向に流れることなく、さらに反対領域E5(低減対象領域E2より上方の領域)に向かって流れており、低減対象領域E2から漏洩する磁気を低減できることが確認された。
【0121】
(実施の形態2の効果)
このように実施の形態2によれば、実施の形態1と同様の効果を得ることができる。特に、大開口化された磁性角筒体20を幅方向に沿って連続的に並設して磁気シールド体2を構成しているので、実施の形態1の磁気シールド体1よりもさらに圧迫感を低減した磁気シールド体2を提供することができる。
【0122】
〔実施の形態3〕
次に、実施の形態3に係る磁気シールド体について説明する。この形態は、磁性筒体により構成される筒状遮蔽体と、磁性板状体により構成された板状遮蔽体とを、相互に接するように配置した形態である。ただし、特に説明なき構成については、実施の形態1の構成と同じであり、実施の形態1と同じ構成については、必要に応じて実施の形態1で使用したものと同じ符号を用いて、その説明を省略する。
【0123】
(構成)
図52は、本実施の形態に係る磁気シールド体の立面図である。この磁気シールド体3は、フレーム10を介して相互に間隔を空けて並設された複数の磁性角筒体20により構成される筒状遮蔽体50と、磁性板状体51により構成された板状遮蔽体52とを、相互に接するように配置して構成されている。筒状遮蔽体50については、実施の形態1の磁気シールド体1と同様に構成できるので、その基本的な説明を省略する。板状遮蔽体52とは、x方向を長手方向とする横長状の方向性ケイ素鋼板を複数並設して構成されている。これら複数の方向性ケイ素鋼板は、相互に溶接等にて接続されている。なお、意匠性を高めるために、この複数の方向性ケイ素鋼板の外側に、化粧板を固定してもよい。
【0124】
(構成−磁気誘導路)
このように構成された磁気シールド体3は、磁気誘導路40を備えている。図53は、磁気誘導路40を概念的に説明するための説明図であり、ここでは、磁気シールド体3の対称性を考慮して1/2領域のみを示している。この磁気誘導路40は、印加領域E1から低減対象領域E2以外の領域に磁気を誘導することにより、低減対象領域E2から外部への漏洩磁気を低減させるものである。
【0125】
ここでも、上記第1から第3の方法により、磁気誘導路40の形成位置を特定している。すなわち、印加領域E1から低減対象領域E2に至る最短の経路上の最短領域E3に配置された磁性角筒体20の比透磁率を、他の磁性角筒体20の比透磁率より小さくしている。また、印加領域E1から低減対象領域E2を経ることなく低減対象領域E2以外の領域に至る経路上の回避領域に配置された磁性角筒体20の比透磁率を、他の磁性角筒体20の比透磁率より大きくしている。また、低減対象領域E2に含まれる磁性角筒体20のz方向に沿った比透磁率に対して、低減対象領域E2の周囲の周囲領域E4に配置された他の磁性角筒体20における同一方向に沿った比透磁率を小さくしている。ただし、この磁気シールド体3においては、減対象領域E2を挟んで、印加領域E1とは反対側に位置する反対領域E5が存在しないため、反対領域E5に関する比透磁率の設定は省略されている。
【0126】
ただし、本実施の形態における磁気誘導路40は、実施の形態1、2とは異なり、板状遮蔽体52に形成されている。具体的には、磁気誘導路40は、方向性ケイ素鋼板を使用することで形成されている。すなわち、方向性ケイ素鋼板は、圧延条件と熱処理条件を調整することで結晶粒の軸方向を揃えて形成されたものであり、特定方向に大きな比透磁率を有する。そして、この比透磁率が大きい方向がx方向に沿うように、方向性ケイ素鋼板を配置することで、磁気誘導路40を形成している。このような構成によれば、磁気発生源から板状遮蔽体52に入射した磁気が、x方向に沿って誘導されるので、板状遮蔽体52から筒状遮蔽体50に伝わる磁気を低減でき、低減対象領域E2から漏洩する磁気を低減できる。
【0127】
(実施の形態3の効果)
このように実施の形態3によれば、複数の磁性角筒体20により構成される筒状遮蔽体50と、磁性板状体51により構成された板状遮蔽体52とを、相互に接するように配置して構成され、板状遮蔽体52に磁気誘導路40を設け、磁気誘導路40により、当該板状遮蔽体52における印加領域E1から、筒状遮蔽体50以外の領域に、磁気を誘導するので、磁気発生源から板状遮蔽体52に入射した磁気を、磁気誘導路40を介して、筒状遮蔽体50以外の領域に誘導でき、筒状遮蔽体50に伝わる磁気を低減できるので、筒状遮蔽体50から漏洩する磁気を低減することができる。従って、筒状遮蔽体50に大開口を設けた場合であっても、大開口磁性角筒体20から漏洩する磁気を低減することができる。
【0128】
〔III〕各実施の形態に対する変形例
以上、本発明の各実施の形態について説明したが、本発明の具体的な構成及び手段は、特許請求の範囲に記載した各発明の技術的思想の範囲内において、任意に改変及び改良することができる。以下、このような変形例について説明する。
【0129】
(解決しようとする課題や発明の効果について)
また、発明が解決しようとする課題や発明の効果は、前記した内容に限定されるものではなく、本発明によって、前記に記載されていない課題を解決したり、前記に記載されていない効果を奏することもでき、また、記載されている課題の一部のみを解決したり、記載されている効果の一部のみを奏することがある。
【0130】
(形状や数値について)
上記各実施の形態で示した形状や数値は例示であり、各寸法値は任意に変更することができる。例えば、磁気シールド体を構成するための磁性筒体としては、四角筒状の磁性角筒体20に代えて、特許文献1に記載されているような円筒状の磁性円筒体を使用してもよい。この場合、複数の磁性筒体の中の一部の磁性筒体の比透磁率であって、当該磁性筒体の筒軸方向であるz方向に沿った比透磁率、又は、当該z方向に直交する方向に沿った比透磁率の少なくとも一方を、複数の磁性筒体の中の他の磁性筒体における同一方向の比透磁率とは異なる比透磁率とすることにより、磁気誘導路40を形成すればよい。同様に、磁性筒体を角筒状とする場合であっても、三角筒状や六角筒状、様々な形状の磁性角筒体20を使用することもできる。
【0131】
(各実施の形態の相互の関係について)
各実施の形態で説明した構成は相互に組み合わせてもよい。例えば、実施の形態3のように筒状遮蔽体50と板状遮蔽体52とから構成された磁気シールド体において、板状遮蔽体52には実施の形態3で説明したように磁気誘導路40を形成すると共に、筒状遮蔽体50には実施の形態1、2のように磁気誘導路40を形成してもよい。また、筒状遮蔽体50に磁気誘導路40を形成する場合、実施の形態1のように一部の磁性角筒体20に切り欠き部を設けることに加えて、実施の形態1の変形例1のように一部の磁性角筒体20の相互の間隔を変えたり、実施の形態1の変形例2のように一部の磁性角筒体20の厚みを変えることを組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0132】
1、2、3 磁気シールド体
10 フレーム
11 貫通孔
20、20A、20B 磁性角筒体
21、22 側部
23 角部
30〜32 切り欠き部
40 磁気誘導路
50 筒状遮蔽体
51 磁性板状体
52 板状遮蔽体
E1 印加領域
E2 低減対象領域
E3 最短領域
E4 周囲領域
E5 反対領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持手段を介して相互に間隔を空けて並設された複数の磁性筒体を備える磁気シールド体であって、
当該磁気シールド体における領域の中で磁気発生源からの最も強い磁気が印加される印加領域から、当該磁気シールド体における領域の中で外部への磁気漏洩を低減したい低減対象領域以外の領域に、磁気を誘導することにより、前記低減対象領域から外部への漏洩磁気を低減させる磁気誘導路を備える、
磁気シールド体。
【請求項2】
前記複数の磁性筒体の中の一部の磁性筒体の比透磁率であって、当該磁性筒体の筒軸方向であるz方向に沿った比透磁率、又は、当該z方向に直交する方向に沿った比透磁率の少なくとも一方を、前記複数の磁性筒体の中の他の磁性筒体における同一方向の比透磁率とは異なる比透磁率とすることにより、前記磁気誘導路を形成した、
請求項1に記載の磁気シールド体。
【請求項3】
前記磁性筒体は、四角筒状の磁性角筒体であり、
前記一部の磁性筒体の比透磁率のうち、前記z方向に沿った比透磁率、当該z方向に直交する方向であって前記磁性筒体の一側面に直交するx方向に沿った比透磁率、又は、当該z方向及び当該x方向に直交するy方向に沿った比透磁率の少なくとも一つを、前記他の磁性筒体における同一方向に沿った比透磁率とは異なる比透磁率とすることにより、前記磁気誘導路を形成した、
請求項2に記載の磁気シールド体。
【請求項4】
前記印加領域から前記低減対象領域に至る最短の経路上の最短領域に配置された前記磁性筒体の比透磁率を、他の磁性筒体の比透磁率より小さくすることにより、当該最短領域以外の領域に前記磁気誘導路を形成した、
請求項2又は3に記載の磁気シールド体。
【請求項5】
前記低減対象領域に含まれる前記磁性筒体の前記z方向に沿った比透磁率に対して、前記低減対象領域の周囲の周囲領域に配置された他の磁性筒体における同一方向に沿った比透磁率を小さくすることにより、当該周囲領域以外の領域に前記磁気誘導路を形成した、
請求項2から4のいずれか一項に記載の磁気シールド体。
【請求項6】
前記低減対象領域に含まれる前記磁性筒体の前記z方向に沿った比透磁率に対して、前記低減対象領域を挟んで、前記印加領域とは反対側に位置する反対領域に含まれる他の磁性筒体における同一方向に沿った比透磁率を大きくすることにより、当該反対領域に前記磁気誘導路を形成した、
請求項2から5のいずれか一項に記載の磁気シールド体。
【請求項7】
前記磁性筒体には、当該磁性筒体の側面又は角部に形成された切り欠き部であって、当該切り欠き部に直交する方向に沿った比透磁率を、当該切り欠き部がない同一形状の磁性角筒体における同一方向の比透磁率より低減するための切り欠き部であり、当該比透磁率の所要の低減量に対応した長さ及び幅で形成された切り欠き部を設けることにより、前記磁性筒体の前記比透磁率を調整した、
請求項2から6のいずれか一項に記載の磁気シールド体。
【請求項8】
前記支持手段を介して相互に間隔を空けて並設された前記複数の磁性筒体により構成される筒状遮蔽体と、磁性板状体により構成された板状遮蔽体とを、相互に接するように配置して構成され、
前記板状遮蔽体に前記磁気誘導路を設け、
前記磁気誘導路により、当該板状遮蔽体における前記印加領域から、前記筒状遮蔽体以外の領域に、磁気を誘導する、
請求項1に記載の磁気シールド体。
【請求項9】
支持手段を介して相互に間隔を空けて並設された複数の磁性筒体を備える磁気シールド体であって、
前記複数の磁性筒体のうち、一部の磁性筒体を、他の磁性筒体より大きな開口を有する大開口磁性筒体として形成し、
当該磁気シールド体における領域の中で磁気発生源からの最も強い磁気が印加される印加領域から、当該磁気シールド体における領域の中で前記大開口磁性筒体以外の領域に、磁気を誘導することにより、前記大開口磁性筒体から外部への漏洩磁気を低減させる磁気誘導路を備える、
磁気シールド体。
【請求項10】
前記支持手段を、導電性材料にて形成した、
請求項1から9のいずれか一項に記載の磁気シールド体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【図39】
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【図40】
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【図41】
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【図42】
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【図43】
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【図44】
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【図45】
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【図46】
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【図47】
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【図48】
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【図49】
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【図50】
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【図51】
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【図52】
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【図53】
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【図54】
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【図55】
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【図56】
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【図57】
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【図58】
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【図59】
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【図60】
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【図61】
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【公開番号】特開2011−249692(P2011−249692A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−123579(P2010−123579)
【出願日】平成22年5月28日(2010.5.28)
【出願人】(000003621)株式会社竹中工務店 (1,669)
【Fターム(参考)】