説明

磁気シールド構造。

【課題】採光、通風、眺望など悪化させることなく、沿線の磁場を低減すること。
【解決手段】導電材1に流れる電流によって発生する磁場を低減する磁気シールド構造において、磁場によって磁化するように導電材1の近くに磁化誘導材21を配置し、磁場を低減する付近に磁気シールド材2を配置し、磁化誘導材21と磁気シールド材2を磁気的に結合する、磁気シールド構造。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電線などの導電材を流れる電流で発生する磁場を低減するシールド構造に関するものであり、特に、送電線、鉄道のレール、き電線などに流れる電流によって発生する磁場を低減するシールド構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
最近、外部磁場により、テレビが大型化してテレビの色ずれ、また画面のゆがみなどの影響を受け易くなり、また、電子顕微鏡、計測器などの測定精度の悪化の問題が発生している。
引用文献1には、パネル全面に亘り強磁性体層を設けて線路の磁場を低減することが示されている。

【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−90031号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
<イ>本発明は、導電材に流れる電流による磁場を低減することにある。
<ロ>また、本発明は、従来のように空間を遮断して採光、通風、眺望などを悪化させることなく、磁場を低減することにある。
<ハ>また、本発明は、鉄道沿線に棒状の磁気シールド材を適切に配置して、沿線の磁場を効果的に低減することにある。

【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、線路の導電材に流れる電流によって発生する磁場を低減する磁気シールド構造において、導電材であるレールの下方で、レールと交差するように磁化誘導材を配置し、磁場を低減する場所に磁気シールド材を配置し、磁化誘導材と磁気シールド材を磁気的に結合することを特徴とする磁気シールド構造にある。
本発明は、また、線路の導電材に流れる電流によって発生する磁場を低減する磁気シールド構造において、導電材であるき電線と交差するように磁化誘導材を配置し、磁場を低減する場所に磁気シールド材を配置し、磁化誘導材と磁気シールド材を磁気的に結合することを特徴とする磁気シールド構造にある。

【発明の効果】
【0006】
本発明は、次のような効果を得ることができる。
<イ>本発明は、導電材に流れる電流による磁場を低減することができる。
<ロ>また、本発明は、従来のように空間を遮断して採光、通風、眺望などを悪化させることなく、磁場を低減することができる。
<ハ>また、本発明は、鉄道沿線に棒状の磁気シールド材を適切に配置して、沿線の磁場を効果的に低減することができる。

【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】導電材の周囲にT字型磁気シールド材を配置して磁場を低減する説明図
【図2】線路に流れる電流によって発生する磁場の方向を示す説明図
【図3】線路に流れる電流によって発生する磁場の強度を示す説明図
【図4】T字型磁気シールド材による磁場の低減を示す説明図
【図5】間隔を開けて配置されたT字型磁気シールド材による磁場の低減を示す説明図
【図6】I字型磁気シールド材(磁気シールド材のみ)による磁場の低減を示す説明図
【図7】T字型とI字型磁気シールド材の本数当たりの磁場低減率を示すグラフの図
【図8】T字型とI字型磁気シールド材の1本数当たりの磁場低減率を示すグラフの図
【図9】T字型とI字型磁気シールド材の設置間隔当たりの磁場低減率を示すグラフの図
【図10】磁気シールド材の種々の配置を示す説明図
【図11】T字型磁気シールド材の他の配置を示す説明図
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施の形態を説明する。
【実施例】
【0009】
<イ>磁気シールド構造
磁気シールド構造は、導電材1に流れる電流によって発生する磁場を低減するものである。磁気シールド構造は、例えば図1に示すように、磁場により磁化される磁化誘導材21と、磁場を低減する場所に配置される磁気シールド材2とを備え、磁化誘導材21と磁気シールド材2とが磁気的に結合されている。このような磁気的な結合により、磁気シールド材2の磁化が磁化誘導材21により誘導される。これにより、磁場の低減をより効率よく行うことができる。そこで、磁化誘導材21を導電材1に近づけることにより、なるべく強く磁化することが好ましい。なお、磁化誘導材21と磁気シールド材2が磁気的に結合するとは、少なくとも一方から他方に磁化を引き起こす結合状態をいう。なお、電流は、直流電流でも、交流電流でも適用できる。
【0010】
<ロ>磁化誘導材
磁化誘導材21は、線路によって発生した磁場などにより磁化され、少なくとも、その磁化により磁気シールド材2の磁場低減効果を高めるものである。磁化誘導材21は、磁化し易いものがよく、例えば、珪素鋼板、パーマロイなど、磁性材を使用できる。磁化誘導材21は、棒状の材料を使用することができる。この棒状の磁化誘導材21は、例えば、所定の部材幅の珪素鋼板を重ね合わせて使用する。なお、棒状とは、部材幅が長さに比して狭く長いものであり、柱状、帯状を含み、その断面形状は、長方形、正方形、三角形、多角形、楕円、円などがある。磁化誘導材21は、直線状でも曲線状でも必要に応じた形状で使用できる。磁化誘導材21は、必要に応じて、耐候性、耐腐食性、又は高強度などを有する保護材料で被覆、包囲、又は、支持される。
【0011】
<ハ>磁気シールド材
磁気シールド材2は、線路によって発生した磁場などにより磁化され、少なくとも、その磁化により磁場を低減するものである。磁気シールド材2は、磁化誘導材21により磁場低減効果を高める。磁気シールド材2は、磁場の低減効果の高いものがよく、磁化誘導材21と同様の材料を使用できる。また、磁気シールド材2は、必要に応じて、磁化誘導材21と同様に、棒状にする。この棒状の磁気シールド材2は、例えば、所定の部材幅の珪素鋼板を重ね合わせて使用する。なお、棒状とは、部材幅が長さに比して狭く長いものであり、柱状、帯状を含み、その断面形状は、長方形、正方形、三角形、多角形、楕円、円などがある。磁気シールド材2は、直線状でも曲線状でも必要に応じた形状で使用できる。磁気シールド材2は、必要に応じて、耐候性、耐腐食性、又は高強度などを有する保護材料で被覆、包囲、又は、支持される。
【0012】
<ニ>磁化誘導材の設置
磁化誘導材21は、磁化し易いように導電材1の近くに配置する。「近く」とは、磁化誘導材21が磁化され易い範囲であり、磁化誘導材21は、磁気シールド材2よりも近くに配置するとよく、特に、強く磁化される近傍に配置するのが好ましい。磁化誘導材21は、導電材1に流れる電流によって発生する磁場の方向を考慮して、磁化され易いように配置するとよい。磁化誘導材21が棒状の場合、図1に示すように、棒の長さ方向と磁場の方向をなるべく合わせると、全体に磁化され易くなる。例えば、磁化誘導材21と導電材1が交差するように配置する。また、磁化誘導材21が棒状の場合、間隔を開けて配置すると、少ない材料で磁化の効率を高めることができる。例えば、複数の磁化誘導材21を導電材1と交差させ、導電材1に沿って間隔を開けて配置する。また、複数本の導電材1に電流が流れ、合成された磁場を低減する場合、合成された磁場に対して同様に扱うと良い。例えば合成された磁場の磁力線方向に沿って磁気シールド材2を配置すると、低減効果が高くなる。
【0013】
磁化誘導材21を網又は格子の少なくとも一部に組み込んで、網又は格子を形成する。このように磁化誘導材21を組み込むことにより、磁化誘導材21の取り扱いや敷設を容易にすることができる。その場合、磁化誘導材21は、なるべく、磁場に沿った位置に配置するとよい。
【0014】
<ホ>磁気シールド材の設置
磁気シールド材2は、磁場を低減したい場所や付近に磁化し易いように配置する。磁気シールド材2は、導電材1に流れる電流によって発生する磁場の方向を考慮して、磁化され易いように配置するとよい。その場合、磁気シールド材1と磁気的に結合する磁化誘導材21は、なるべく磁場の強度が強い場所で、磁化され易いように配置するとよい。
【0015】
磁気シールド材1が棒状の場合、長さ方向がなるべく磁場の方向に沿って配置されると、磁場の低減効果を高めることができる。複数の棒状の磁気シールド材2を導電材1と交差するようにし、間隔を開けて導電材1に沿って配置すると、効率よく広い領域の磁場を低減できる。
【0016】
磁気シールド材2が直線の場合、磁場を特に低減したい場所の磁力線に接するように配置するとよい。また、導電材1の周囲の磁場全体を低減する場合、導電材1を包囲するように磁気シールド材2を配置するとよい。例えば、磁気シールド材2を磁力線の方向に沿って配置して閉ループを形成する。また、複数本の導電材1に電流が流れ、合成された磁場を低減する場合、合成された磁場に対して同様に扱うと良い。例えば合成された磁場の磁力線方向に沿って磁気シールド材2を配置すると、低減効果が高くなる。
【0017】
磁気シールド材2を網又は格子の少なくとも一部に組み込んで、網又は格子を形成するように配置することにより、磁気シールド材2の取り扱いや敷設が容易になる。その場合、磁気シールド材2は、なるべく、磁場の方向に沿った位置に配置するとよい。
【0018】
磁気シールド材2と磁化誘導材21を磁気的に結合する方法は、低減する磁場の状態や周囲の環境で決まるが、例えば図1に示すように、磁気シールド材2の中央部分に磁化誘導材21を磁気的に結合し、T字型(以下、T字型磁気シールド材と呼ぶ)にする方法がある。この場合、T字型磁気シールド材の磁化誘導材21を導電材1に接近させ、交差するように配置し、T字型磁気シールド材の磁気シールド材2は、磁場を低減する付近で、導電材1と交差するように配置するとよい。
【0019】
以下、磁気シールド構造を鉄道の線路脇に適用した実施例を説明する。
【0020】
<イ>線路の構造と磁場の分布
線路は、レール11、き電線12、トロリ線13などを備えており、図2〜図4に、1/10スケールの模型を示している。その模型による磁場のデータを図2〜図4の右側に示す。なお、以下の記載において、図面に関する距離の数値は模型の値の10倍として、実際に近い値に直して表わしてある。
【0021】
図2は、磁化誘導材21と磁気シールド材2を配置しないときの線路付近に発生する磁場の方向3のみを示している。図3は、図2の磁場を強度分布で表したもので、磁化誘導材21と磁気シールド材2を配置しない場合である。図2の右側の図は、主にレール11とき電線12に同時に反対方向に流れる直流電流により発生した合成磁場を示している。図3は、合成磁場の強度分布を示している。L0〜L9は磁場の強度範囲を示している。L0が弱く、L9が強い磁場を示している。図3において、レール11から水平方向に3m離れた測定位置の上下方向の強度分布は、き電線12付近が強く、下方に行くに従って弱くなっている。その理由は、き電線12がレール11より測定位置に近いからと考えられる。
【0022】
なお、この模型において、2本のレール11には30Aの電流を流し、き電線12には24Aの電流を流す。しかし、実際の線路では、レール11に概ね2500A、き電線12に概ね2000Aの電流が流れるので、模型に比べて電流は83倍となる。そして、模型のスケールが10分の1であるので、磁場の強度は、模型の8.3培となる。そこで、磁場の強度は、模型の値に8.3倍を掛けた値とし、それらを表1に示す。
【0023】
【表1】

【0024】
<ロ>T字型磁気シールド材を配置した際の磁場の分布
T字型磁気シールド材(T字型の磁化誘導材21と磁気シールド材2)をレール11から離間して、磁化誘導材21を横方向に、磁気シールド材2を縦方向に配置した合成磁場の強度分布を図4に示す。図4の磁化誘導材21と磁気シールド材2は、部材幅10cm、厚さ0.35mmの珪素鋼板を50枚重ね合わせたものであり、磁気シールド材2はレールから200cm離れている。図4のT字型磁気シールド材は、図5(A)に示すように80cmの所定間隔で配置され、レール11に沿って配置してある。磁化誘導材21は、レール11の下方32cmに水平方向に配置され、磁気シールド材2は、鉛直方向(縦方向)に配置される。磁気シールド材2の上下の中心位置より少し下方位置にレール11の水平面が対応している。図4の磁場は、6本の磁気シールド材2の左右両端の中心位置で、レール11に直交する平面上のデータである。図4の磁場強度は、図3と同一の条件で得られたものである。なお、磁化誘導材21をレール11の下方近傍に配置すると磁化の誘導が強くなり、例えば、数cm〜数10cmに配置する。
【0025】
T字型磁気シールド材を配置することにより、図4の磁場の強度分布は、図3の磁場の強度分布に比較して、効率よく低減していることが分かる。T字型磁気シールド材を配置しない場合(配置前)では、レール11から3m離れ、高さ1m〜3m付近の磁場の強度は、L7であったが、磁化誘導材21と磁気シールド材2を配置すると、強度はL2となり、極めて有効に低減していることを示している。また、レール11から7m離れた付近でもL2からL1に低減していることを示している。
【0026】
磁化誘導材21が無く、磁気シールド材2のみ(I字型磁気シールド材)を同じように配置した場合の磁場を図6に示す。磁化誘導材21を用いた図4のデータと比較すると、磁化誘導材による低減効果が高いことが分かる。特に、レール11から3m〜5m離れ、高さ1m〜3m付近の磁場の強度は、磁化誘導材21を配置した場合(図4)、強度はL2であるのに対して、磁化誘導材21を配置しない場合(図6)、強度はL3であり、磁化誘導材21により有効に低減していることが分かる。
【0027】
<ハ>間隔を開けて配置した場合の磁場の影響
図5(A)は、図4の左側の線路図を図面の右方から見たT字型磁気シールド材の配置図(磁化誘導材21は示されていない)である。図5(B)は、磁場(磁気)の低減率を示したものであり、横軸は、レール11に沿った方向(6本のT字型磁気シールド材の配置方向)であり、縦軸は、T字型磁気シールド材の無い場合に対する低減率(磁場の低減量/T字型磁気シールド材を配置しないときの磁力×100%)を示している。なお、磁場の低減量=(T字型磁気シールド材を配置しないときの磁力−T字型磁気シールド材を配置したときの磁力)である。磁気シールド材2は、レール11から2m離れ、磁場の測定位置は、レール11の水平位置(磁気シールド材2の下端から328cmの位置)であり、レール11から5m離れた位置である。
【0028】
6本の磁気シールド材の左右両端の中央付近(横軸が0付近)は、低減率43%付近であり、端部(横軸が225cm付近)は、低減率31%付近にある。磁気シールド材2から外れていくと(横軸が225cm以上)、低減率が急激に低下する。このように、磁気シールド材2の間隔80cm(磁気シールド材2の端部間の距離)が、シールド材の部材幅10cmより8倍も大きく、磁気シールド材2が存在していない場所でも、磁場の低減率が大きいことを示している。この測定結果は、線路の脇を全面に面状の磁気シールド材で覆わなくても、磁場を十分に低減できることを示している。
【0029】
I字型磁気シールド材を図5(A)と同じように配置した場合の磁場の低減率を図5(C)に示す。センター(中心)で16.76%、中心から45mmで17.28%、中心から90mmで15.98%、中心から135mmで15.26%、中心から180mmで13.31%、中心から225mmで12.03%、中心から270mmで11.16%、中心から315mmで10.17%、中心から360mmで7.76%である。この値と図5(B)とを対比すると、磁化誘導材による低減率の効果が優れていることが分かる。
【0030】
<ニ>同じ総横幅にT字型磁気シールド材の本数を変化させた場合の磁場の低減率の変化
同じ総横幅(左右両端間の距離)にT字型磁気シールド材の本数を変化させた場合の磁場の低減率の変化を図7に示す。図7は、シールド構造の総横幅が460cmの間にT字型磁気シールド材を2〜16本と変化して配置した際の低減率の変化を示している。測定点は、レールの高さで、レールから500cm離れ、T字型磁気シールド材の設置個所の中心である。T字型磁気シールド材の重ね合わせ枚数は50枚で、部材幅は10cmである。図8は、図7において、磁場の低減に寄与した1本当たりの低減率を示している。図9は、シールド構造の総横幅が460cmの間にT字型磁気シールド材の本数を変えて、磁気シールド材の部材間距離(部材中心から部材中心までの中心間距離)に対する低減率の変化を示している。なお、図7〜図9には、磁化誘導材21を設けない磁気シールド材2だけのI字型磁気シールド材をT字型の磁気シールド材2と同様に配置した場合の磁場低減率の変化を示している。
【0031】
図7は、同じ総横幅の場合、T字型磁気シールド材の本数が増加するに対応して磁場低減率が増加することを示している。T字型磁気シールド材の本数が6本を越えるとグラフの傾きが緩やかになることを示している。グラフの傾きはT字型磁気シールド材が1本増えることによる磁場低減率の増加分を表しているため、6本を超えると磁気シールド材の本数を増やしても低減率に大きな改善効果が期待できないことが分かる。図8は、磁気シールド材1本当たりが寄与している減少率をグラフに示したものであり、T字型磁気シールド材が2〜4本の場合にピークとなり、本数が増加するに従って、低減率が減少していることを示したものである。図9は、T字型磁気シールド材の設置間隔が狭くなることにより、設置本数が増加するため、設置間隔が狭くなるにつれて、磁場低減率も増加していることが分かる。この実験から、部材幅の2〜20倍の幅でT字型磁気シールド材を配置することにより、30%を超える磁場低減率が得られることが分かる。
【0032】
T字型磁気シールド材の低減率をI字型磁気シールド材(磁化誘導材21を設けない磁気シールド材)と比較すると、図7〜図9から磁化誘導材21の効果が優れていることが分かる。
【0033】
磁場の低減をどの程度にするかは、設置場所の条件など現場のニーズも考慮する必要がある。しかし、図7〜図9の結果からすると、設置本数2〜8本が効果的に磁場を低減できる。T字型磁気シールド材の設置間隔では、部材幅の2〜20倍の設置間隔において効果的に磁場が低減されているため、この範囲にT字型磁気シール材を設置することが好ましく、特に、部材幅の2〜10倍が好ましいと考えられる。また、40%を超える高い磁場低減率を必要としない設置場所では、磁気シールド材料の費用対効果の最も高い設置間隔を、条件に応じて設計することができる。
【0034】
<ホ>磁気シールド材の他の配置
線路脇への磁化誘導材21と磁気シールド材2の配置は、磁場の低減場所により種々のパターンを有している。き電線により発生する磁場を低減するためには、例えば、磁化誘導材21と磁気シールド材2を図10(A)〜図10(F)のようにき電線付近に配置する。図10(A)は、き電線の上部の磁化誘導材21と側部に磁気シールド材2を配置し、磁気シールド材2は、レール11付近まで延ばしておく。磁化誘導材21と磁気シールド材2は、接続してあり、磁気的に結合している。図10(B)は、図10(A)と類似した配置であり、磁化誘導材21はき電線12を包囲する特徴を有している。図10(C)は、き電線12の上部の磁化誘導材21、側部の磁気シールド材2と、レール11下方の磁化誘導材21を配置し、これらの磁性材を磁気的に結合した形状にしている。図10(D)は、き電線12の上部の磁化誘導材21と、側部の磁気シールド材2を磁気的に結合した形状にし、磁気シールド材2を上部に突出している。磁気シールド材2は、レール下方の磁化誘導材21と磁性材を磁気的に結合した形状にしていない。図10(E)は、き電線12の上部の磁化誘導材21と、き電線用の側部の磁気シールド材2を磁気的に結合した形状にし、磁気シールド材2を上方に突出している。また、レール11の磁化誘導材21と、レール11の磁気シールド材2を磁気的に結合した形状にし、磁気シールド材2を下方に突出している。き電線12用の磁気シールド材2とレール11用の磁気シールド材2とは、離間しておく。図10(F)は、レール11の磁化誘導材21と、側部の磁気シールド材2を斜めの磁化誘導材21で磁気的に結合する。磁気シールド材2は、き電線12付近まで延ばしておく。
【0035】
レール11の磁化誘導材21の他の配置は、図11(A)〜(C)に示す。図11(A)は、レール11の下方の磁化誘導材21を長くして他の一対のレール11まで延ばして配置する。その端部は、レール用の磁気シールド材2と結合する。図11(B)は、レールの下方の磁化誘導材21とレール用の磁気シールド材2と結合する。磁気シールド材2は、上部でより外側にある磁気シールド材2と結合し、上部をレールからより少し側方に離した位置に配置する。図11(C)は、レール11の下方の磁化誘導材21とレール用の磁気シールド材2と結合する。磁化誘導材21は、磁気シールド材2と結合するために、結合用の短い磁化誘導材21を用いる。この場合、磁化誘導材21と磁気シールド材2は一部平行になっている。
【0036】
<ヘ>線路への適用の効果
磁化誘導材21と磁気シールド材2の対を複数個使用して、線路脇に配置すると、磁場を効率よく低減できる。特に、複数の磁化誘導材21と磁気シールド材2の対を線路に沿って間隔を開けて配置すると、採光、通風、眺望などの環境を悪化させることなく、線路によって発生する磁場を低減できる。なお、線路とは、レール11、き電線12、トロリ線13など、車輌を運行するものを言い、主に磁場を発生するものとしては、き電線12とレール11がある。

【符号の説明】
【0037】
1・・・導電材
11・・レール
12・・き電線
13・・トロリ線
2・・・磁気シールド材
21・・磁化誘導材
3・・・磁場の方向
4・・・柱

【特許請求の範囲】
【請求項1】
線路の導電材に流れる電流によって発生する磁場を低減する磁気シールド構造において、
導電材であるレールの下方で、
レールと交差するように磁化誘導材を配置し、
磁場を低減する場所に磁気シールド材を配置し、
磁化誘導材と磁気シールド材を磁気的に結合することを特徴とする、
磁気シールド構造。
【請求項2】
線路の導電材に流れる電流によって発生する磁場を低減する磁気シールド構造において、
導電材であるき電線と交差するように磁化誘導材を配置し、
磁場を低減する場所に磁気シールド材を配置し、
磁化誘導材と磁気シールド材を磁気的に結合することを特徴とする、
磁気シールド構造。
【請求項3】
請求項又は請求項に記載の磁気シールド構造において、
磁気シールド材は、
レールの側方に縦方向に配置されることを特徴とする、
磁気シールド構造。
【請求項4】
請求項に記載の磁気シールド構造において、
磁化誘導材と磁気シールド材は、棒状であり、
相互に磁気的に結合しており、
隣接する複数対の磁化誘導材と磁気シールド材を、レールに沿って間隔を開けて配置することを特徴とする、
磁気シールド構造。
【請求項5】
請求項又は請求項に記載の磁気シールド構造において、
磁気シールド材の少なくとも一端部は、
該端部付近の磁気シールド材と磁場の方向とがほぼ直交する付近に配置されることを特徴とする、
磁気シールド構造。
【請求項6】
請求項に記載の磁気シールド構造において、
磁化誘導材は、
き電線の周囲を包囲するように配置され、
磁気シールド材と磁気的に結合することを特徴とする、
磁気シールド構造。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate


【公開番号】特開2009−246387(P2009−246387A)
【公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−170967(P2009−170967)
【出願日】平成21年7月22日(2009.7.22)
【分割の表示】特願2002−381205(P2002−381205)の分割
【原出願日】平成14年12月27日(2002.12.27)
【出願人】(303056368)東急建設株式会社 (225)
【Fターム(参考)】