説明

磁気シールド装置、着磁装置、及び磁気シールド装置の製造方法

【課題】磁気シールド装置の特性が低下することを従来よりも抑制できるように、磁気シールド装置を構成する複数の磁性体を相互に接続できるようにする。
【解決手段】磁気シールド装置1を構成する複数のシールド板11、13を、永久磁石31、32、33を用いて相互に接続する。したがって、接続対象の複数のシールド板11、13が相互に接合するような吸引力(磁力)を、接続対象の複数のシールド板11、13に発生させることができる。よって、例えば、従来では空隙を狭めることが困難であった接続部分における空隙を低減することができ、磁気シールド装置1を構成する複数のシールド板を相互に接続することにより生じる空隙を従来よりも小さくすることができる。これにより、磁気シールド装置1の特性が低下することを従来よりも抑制できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気シールド装置、着磁装置、及び磁気シールド装置の製造方法に関し、特に、磁界をシールドするために用いて好適なものである。
【背景技術】
【0002】
MRI(Magnetic Resonance Imaging)等、例えば1[T]〜3[T]程度の強磁場を利用する電子機器は、人体や精密機器に悪影響を与える虞がある。そこで、従来から、そのような電子機器を磁気シールド装置の内部に設置し、電子機器から発生する磁界が磁気シールド装置の外部に漏洩することをシールド(低減)するようにしている。また、磁気シールド装置の近くに大電流が流れていたり、残留磁場のある磁性体があったりする場合には、そこから磁界が発生する。磁気シールド装置を用いれば、このような磁界が磁気シールド装置の内部に進入することを防止することもできる。このような磁気シールド装置は、一般に、磁性体からなるシールド板を相互に接続することにより構成される。そこで、従来は、ボルトを用いてシールド板を相互に接続するようにしていた(特許文献1を参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2003−142872号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、磁気シールド装置は、数[m]〜10[m]程度の大きさになるので、機械的にシールド板を接続する前述した従来の方法では、上面及び下面を構成するシールド板と、側面を構成するシールド板とを相互に接続した場合や、長手方向に長い2つのシールド板を長手方向が平行になるように相互に接続した場合に、その接続部分に空隙が生じてしまう。このようにシールド板の接続部分に空隙が生じると、その空隙での磁気抵抗が大きくなり、磁気シールド装置の特性が低下する虞がある。
また、機械的にシールド板を接続する前述した従来の方法では、シールド板の接続部分に機械的な応力が発生し、磁気シールド装置の特性が低下する虞がある。
【0005】
本発明はこのような問題点に鑑みてなされたものであり、磁気シールド装置の特性が低下することを従来よりも抑制できるように、磁気シールド装置を構成する複数の磁性体を相互に接続できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の磁気シールド装置は、磁界発生源から発生する磁界が外部に漏洩することをシールドするための複数のシールド用磁性体と、前記複数のシールド用磁性体の少なくとも2つを相互に接続するための磁性体であって、前記シールド用磁性体よりも大きな保磁力を有する接続用磁性体とを有し、前記接続用磁性体から発生する磁界によって、前記少なくとも2つのシールド用磁性体が相互に接続されるようにしたことを特徴とする。
【0007】
本発明の着磁装置は、前記磁気シールド装置が備える接続用磁性体を磁化させる着磁手段を有し、前記接続用磁性体が前記着磁手段により磁化されることによって、少なくとも2つのシールド用磁性体が相互に接続されるようにしたことを特徴とする。
【0008】
本発明の磁気シールド装置の製造方法は、前記磁気シールド装置の製造方法であって、複数のシールド用磁性体の少なくとも2つを相互に接続するための接続用磁性体であって、磁化していない接続用磁性体を取り付ける取り付けステップと、前記取り付けステップにより取り付けられた接続用磁性体を磁化させる着磁ステップとを有し、前記着磁ステップにより前記接続用磁性体が磁化されることによって、前記少なくとも2つのシールド用磁性体が相互に接続されるようにしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、シールド用磁性体よりも大きな保磁力を有する接続用磁性体から発生する磁界の作用を用いて、複数のシールド用磁性体を接続するようにした。したがって、それら複数のシールド用磁性体が相互に接合するような吸引力(磁力)を、それら複数のシールド用磁性体に発生させることができる。よって、複数のシールド用磁性体の接続部分に生じる空隙を従来よりも小さくすることができる。また、複数のシールド用磁性体を、磁力を用いて相互に接続するので、接続の際に生じる機械的な応力を低減することができる。以上のことから、磁気シールド装置の磁気シールド特性が低下することを従来よりも抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
(第1の実施形態)
以下、図面を参照しながら、本発明の第1の実施形態を説明する。
図1は、磁気シールド装置の概略構成の一例を示す図である。図1に示す磁気シールド装置1は、幅が約3[m]、奥行きが約4[m]、高さが約17[m]の大きさを有している。
図1に示すように、磁気シールド装置1の内部には、MRI17が設置される。
また、本実施形態では、磁気シールド装置1は、前面、上面、後面、及び底面で構成される面に沿って、相対的に内側に配設された内側シールド部15と、前面、左側面、後面、及び右側面で構成される面に沿って、相対的に外側に配設された外側シールド部14とを備える。
【0011】
具体的に、内側シールド部15は、前面、上面、後面、及び底面で構成される面の周方向と平行になるように長手方向が配設された複数のシールド板群を有している。これら複数のシールド板群は、所定の間隔で、前面、上面、後面、及び底面で構成される面の幅方向に並設されている。一方、外側シールド部74は、前面、左側面、後面、及び右側面で構成される面の周方向と平行になるように長手方向が配設された複数のシールド板群を有している。これら複数のシールド板群は、所定の間隔で、前面、左側面、後面、及び右側面で構成される面の幅方向に並設されている。
【0012】
図2は、磁気シールド装置1のガントリー面(外部シールド部14が設けられている面)からの距離と、磁束密度との関係を、電磁場解析により求めた結果の一例を示す図である。尚、磁気シールド装置1のガントリー面からの距離とは、磁気シールド装置1のガントリー面上の点であって、MRI17が備える励磁コイルの中心と正対する点から、磁気シールド装置1の外側に向けて延びる垂線上の任意の点までの距離である。
【0013】
図2において、グラフ21は、内側シールド部15の上面を構成するシールド板と、前面及び後面を構成するシールド板との接続(接合)部分に1[mm]の空隙があるとして電磁場解析を行った結果から得られたグラフである。一方、グラフ22は、その接続部分に空隙がないとして電磁場解析を行った結果から得られたグラフである。
尚、内側シールド部15の上面を構成するシールド板と、前面及び後面を構成するシールド板との接続部分の空隙の有無に着目しているのは、内側シールド部15の自重により、その接続部分に空隙が生じやすいからである。
【0014】
図2に示すように、磁気シールド装置1を構成するシールド板の接続部分に僅かな空隙があった場合でも、磁気シールド装置1の外部に漏洩する磁界は、空隙がない場合に比べて、数倍大きくなることが分かる。このように、本願発明者らは、磁気シールド装置1を構成するシールド板の空隙を出来るだけ0(ゼロ)に近づけなれければ、高い磁気シールド性能を磁気シールド装置1に持たせることが困難であるという知見を得た。そこで、本願発明者らは、従来のボルトを用いた接続方法とは全く異なる方法で、複数のシールド板を相互に接続(接合)することにより、磁気シールド装置1の磁気シールド特性が低下することを従来よりも抑制できることを見出した。以下に、シールド板の接続方法を説明する。
【0015】
図3は、磁気シールド装置1におけるシールド板の接続方法の一例を示す図である。尚、図3では、シールド板が、20枚の磁性体の板を積み重ねることにより構成されたものである場合を例に挙げて示している。
図3に示すように、本実施形態では、2つのシールド板を相互に接続する接続部分に永久磁石を取り付け、この永久磁石から発生する磁界の作用によって、2つのシールド板を相互に接続するようにしている。
具体的に図3(a)及び図3(b)は、2つのシールド板の接続部分の形状がT字状になる領域における接続方法の一例を示している。
【0016】
図3(a)では、シールド板11と、シールド板13との接続部分において、それらの間に永久磁石31を取り付ける。そして、このようにして取り付けられた永久磁石31を介して、2つのシールド板11、13が相互に接続されるようにしている。図3(a)に示す例では、シールド板11側の面がN極、シールド板13側の面がS極となるように、永久磁石31を磁化させる。このようにすることによって、それら2つのシールド板11、13が相互に引き付け合う力が、それら2つのシールド板11、13の接続部分に発生する。
更に、図3(a)に示す例では、永久磁石31から発生する磁界に基づく磁束密度Bと、シールド板11、13の飽和磁束密度Bsとの関係が、以下の(1)式を満足するように、永久磁石31を磁化させるようにしている。
0<B≦0.5Bs ・・・(1)
このようにすれば、永久磁石31から発生する磁界によって、磁気シールド装置1における磁気シールド性能が低下するのを確実に防止することができる。
【0017】
尚、図3(a)では、シールド板11、13の間に永久磁石31を取り付ける場合を例に挙げて説明したが、必ずしもこのようにする必要はない。すなわち、一方のシールド板の板面に対して、他方のシールド板の板面が垂直になるように、2つのシールド板を相互に接続する(例えば、2つのシールド板をT字状又はL字状に相互に接続する)場合に、その接続部分において一方のシールド板と他方のシールド板との間に永久磁石31を取り付けるようにしていれば、どのようにしてシールド板を取り付けてもよい。
【0018】
図3(b)では、シールド板13と、シールド板11との接続部分において、シールド板13を両側から挟むように2つの永久磁石32、33を取り付ける。そして、このようにして取り付けられた永久磁石32、33から発生する磁界の作用により、シールド板11、13が相互に接続されるようにしている。図3(b)に示す例では、シールド板11側の面がN極、反対側の面がS極となるように、永久磁石32、33を磁化させることによって、永久磁石32、33から発生する磁界が、接続対象の2つのシールド板11、13の内部を通る閉磁路を形成するようにし、それら2つのシールド板11、13が相互に引き付け合う力が、それら2つのシールド板11、13の接続部分に発生するようにしている。
また、図3(b)に示す例でも、永久磁石32、33から発生する磁界に基づく磁束密度Bと、シールド板11、13の飽和磁束密度Bsとの関係が、前記(1)式を満足するように、永久磁石32、33を磁化させるようにしている。
【0019】
尚、図3(b)では、シールド板13を両側から挟むように2つの永久磁石32、33を取り付ける場合を例に挙げて説明したが、必ずしもこのようにする必要はない。すなわち、一方のシールド板の板面に対して、他方のシールド板の板面が垂直になるように、2つのシールド板を相互に接続する場合に、その接続部分において、他方のシールド板を介して相互に対向するように、2つの永久磁石32、33を取り付けるようにしていれば、どのようにしてシールド板を取り付けてもよい。
【0020】
また、図3(c)及び図3(d)は、2つのシールド板の接続部分の形状が直線状になる領域における接続方法の一例を示している。
図3(c)では、2つのシールド板16a、16bの接続部分において、それらの間に永久磁石34を取り付ける。そして、このようにして取り付けられた永久磁石34を介して、2つのシールド板16a、16bが相互に接続されるようにしている。図3(c)に示す例では、永久磁石34のシールド板16a側の面がN極、シールド板16b側の面がS極となるように、永久磁石34を磁化させることによって、それら2つのシールド板16a、16bが相互に引き付け合う力が、それら2つのシールド板16a、16bの接続部分に発生するようにしている。
また、図3(c)に示す例でも、永久磁石34から発生する磁界に基づく磁束密度Bと、シールド板16a、16bの飽和磁束密度Bsとの関係が、前記(1)式を満足するように、永久磁石34を磁化させるようにしている。
【0021】
尚、図3(c)では、シールド板16a、16bの間に永久磁石34を取り付ける場合を例に挙げて説明したが、必ずしもこのようにする必要はない。すなわち、一方のシールド板の板面と、他方のシールド板の板面とが、同じ高さ位置で相互に平行になるように、それら2つのシールド板を相互に接続する場合に、その接続部分において一方のシールド板と他方のシールド板との間に永久磁石34を取り付けるようにしていれば、どのようにしてシールド板を取り付けてもよい。
【0022】
図3(d)では、2つのシールド板16a、16bの接続部分において、それらの接続部分を両側から挟むように2つの永久磁石35、36を取り付ける。そして、このようにして取り付けられた永久磁石35、36から発生する磁界の作用により、シールド板16a、16bが相互に接続されるようにしている。図3(d)に示す例では、永久磁石35のシールド板16a側の面がN極、シールド板16b側の面がS極になるように、永久磁石35を構成(磁化)すると共に、永久磁石36のシールド板16b側の面がN極、シールド板16a側の面がS極になるように、永久磁石36を磁化させることによって、接続対象の2つのシールド板16a、16bの内部を通る閉磁路を形成するようにし、それら2つのシールド板16a、16bが相互に引き付け合う力が、それら2つのシールド板16a、16bの接続部分に発生するようにしている。
また、図3(d)に示す例でも、永久磁石35、36から発生する磁界に基づく磁束密度Bと、シールド板16a、16bの飽和磁束密度Bsとの関係が、前記(1)式を満足するように、永久磁石35、36を磁化させるようにしている。
【0023】
以上のように本実施形態では、磁気シールド装置1を構成する複数の磁性体(シールド板)を、永久磁石を用いて相互に接続するようにした。したがって、接続対象の複数の磁性体(シールド板)が相互に接合するような吸引力(磁力)を、接続対象の複数の磁性体(シールド板)に発生させることができる。よって、例えば、従来では空隙を狭めることが困難であった接続部分における空隙を低減することができ、磁気シールド装置1を構成する複数の磁性体(シールド板)を相互に接続することにより生じる空隙を従来よりも小さくすることができる。また、複数の磁性体(シールド板)を、磁力を用いて相互に接続するので、接続の際に生じる機械的な応力を低減することができる。以上のことから、磁気シールド装置1の磁気シールド特性が低下することを従来よりも抑制することができる。
【0024】
また、永久磁石を用いるようにしているので、穴を開ける等して、磁気シールド装置1を構成する複数の磁性体(シールド板)を加工する必要がなくなる。更に、永久磁石を消磁することにより、磁気シールド装置1を容易に分解することができる。
【0025】
尚、複数のシールド板を接続する方法は、図3に示すものに限定されない。図4は、シールド板の接続方法の他の一例を示す図である。
図4(a)、図4(b)に示すように、永久磁石41〜44を、図3(b)、図3(d)に示した永久磁石32、33、35、36と逆向きに磁化させるようにしてもよい。すなわち、永久磁石から発生する磁界によって、接続対象の複数のシールド板の内部を通る閉磁路が形成されるようにしていれば(接続対象の複数のシールド板の接続部分に吸引力が発生するようにしていれば)、永久磁石を磁化する方向は、図3に示したものに限定されない。
【0026】
また、図4(c)に示すように、例えば、2つのシールド板16a、16bの板面が相互に平行になるように、それら2つのシールド板16a、16bの板面同士を相互に接続することもできる。このようにする場合には、例えば、それら2つのシールド板16a、16bの接続部分において、それら2つのシールド板16a、16bを両側から挟むように2つの永久磁石45、46を取り付け、取り付けた永久磁石45、46から発生する磁界の作用により、シールド板16a、16bが相互に接続されるようにすることができる。
【0027】
更に、図4(d)に示すように、例えば、先端部分(接続部分)の厚さを、その他の部分の厚さの0.5倍にした2つのシールド板18a、18bを用意する。そして、それら2つのシールド板18a、18bの板面が同じ高さ位置で相互に平行になるように、それら2つのシールド板18a、18bの先端部分同士を相互に接続することもできる。このようにする場合にも、例えば、それら2つのシールド板18a、18bの接続部分において、それら2つのシールド板18a、18bを両側から挟むように2つの永久磁石47、48を取り付け、取り付けた永久磁石47、48から発生する磁界の作用により、シールド板18a、18bが相互に接続されるようにすることができる。
以上のように、永久磁石から発生する磁界を用いて複数の磁性体(シールド板)を接続していれば、接続対象の磁性体(シールド板)の形状や、永久磁石の個数や配設位置等は、図3に示したものに限定されない。また、相互に接続する磁性体(シールド板)の数は2つに限定されず、3つ以上であってもよい。
尚、図3、図4に示す例では、シールド板11、13、16、18によりシールド用磁性体が構成され、永久磁石31〜36、41〜48により接続用磁性体が構成される。
【0028】
また、本実施形態のように、永久磁石から発生する磁界に基づく磁束密度Bと、接続対象の磁性体(シールド板)の飽和磁束密度Bsとの関係が、前記(1)式の関係を満たすようにすれば、永久磁石から発生する磁界によって磁気シールド装置1における磁気シールド性能が低下するのを確実に防止することができ好ましいが、必ずしも前記(1)式の関係を満たすようにする必要はない。例えば、永久磁石から発生する磁界に基づく磁束密度Bと、接続対象の磁性体(シールド板)の飽和磁束密度Bsとの関係が、以下の(2)式を満足するようにしてもよい。
0<B≦0.7Bs ・・・(2)
また、永久磁石から発生する磁界に基づく磁束密度Bと、接続対象の磁性体(シールド板)の飽和磁束密度Bsとの関係が、以下の(3)式を満足するようにすれば、より好ましい。
0.1Bs<B≦0.5Bs ・・・(3)
【0029】
また、本実施形態のように永久磁石を用いた場合、一度着磁(磁化)すれば、外部から励磁する必要がない。このため、安定した吸引力を接続対象の複数の磁性体(シールド板)に付与することができる。しかしながら、接続対象の磁性体よりも保磁力が大きな磁性体を用いていれば、必ずしも永久磁石を用いる必要はない。例えば、常時電流を流して外部から励磁する必要はあるが、電磁石を永久磁石の代わりに用いてもよい。
【0030】
また、磁気シールド装置1を構成する磁性体(シールド板)の全ての接続部分を、永久磁石を用いて接続する必要はなく、磁気シールド装置1を構成する磁性体(シールド板)の接続部分のうち、少なくとも1つを、永久磁石を用いて接続していればよい。この場合、少なくとも従来の方法(ボルトを用いて接続する方法)では空隙を低減させることが困難な箇所(例えば、シールド板11とシールド板群13、14を構成するシールド板との接続部分)を、永久磁石を用いて接続するのが好ましい。
【0031】
また、本実施形態では、開放型と密閉型とのハイブリッド型の磁気シールド装置を例に挙げて説明したが、磁性体(シールド板)を相互に接続して構成される磁気シールド装置であれば、どのような磁気シールド装置にも、本実施形態で説明した手法を適用することができる。例えば、上面及び下面のシールド板11、12を設けない開放型の磁気シールド装置に、本実施形態で説明した手法を適用してもよい。また、上面、下面、前面、後面、及び両側面をシールド板で覆った密閉型の磁気シールド装置に、本実施形態で説明した手法を適用してもよい。
【0032】
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。本実施形態では、磁化(着磁)していない永久磁石を接続部分に置いて位置決めを行ってから、その永久磁石を磁化(着磁)させる場合を例に挙げて説明する。
図5は、永久磁石を磁化する方法の一例を説明する図である。尚、図5では、図3(b)に示したように、シールド板11と、シールド板13とを接続する場合を例に挙げて示している。
図5(a)に示すように、着磁していない永久磁石51a、51bに対して着磁を行うための着磁装置は、直流電源V、スイッチS1、S2、及びコンデンサCを備えた電力供給回路と、着磁コイル53とを有している。
図5に示すように、本実施形態では、直流電源Vの正極とスイッチS1の一端とが相互に接続され、スイッチS1の他端とコンデンサCの一端及びスイッチS2の一端とが相互に接続される。また、スイッチS2の他端と着磁コイル53の一端とが相互に接続され、着磁コイル53の他端とコンデンサCの他端及び直流電源Vの負極とが相互に接続される。着磁コイル53は、例えば、着磁対象の永久磁石51a、52aを囲う位置(着磁対象の永久磁石51a、52aの外周部)に設置される。
【0033】
このような構成の着磁装置において、まず、スイッチS2を開いた状態でスイッチS1を閉じてコンデンサCを充電させる。そして、スイッチS1を開くと共にスイッチS2を閉じて、コンデンサCに充電させた電荷を放電させる。このような動作を繰り返し行うことにより、着磁コイル53にパルス状の電力を供給する(パルス状の電流を流す)。その後、着磁装置を取り外す。
以上のようにすることにより、永久磁石51a、52aが磁化され、例えば、図5(b)に示したようにして磁化された永久磁石51b、52bが形成される。そして、この永久磁石51b、52bから発生する磁界の作用によりシールド板11、13が相互に接続される。
【0034】
以上のように本実施形態では、磁化(着磁)していない永久磁石を接続部分に取り付けて位置決めを行ってから、その永久磁石を磁化(着磁)させるようにした。したがって、磁化(着磁)した状態の永久磁石を取り付けるよりも、磁気シールド装置1の施工を容易に行うことができる。例えば、永久磁石とシールド板との位置決めを容易に行うことができる。
また、本実施形態では、パルス状の電流を着磁コイルに付与するようにしたので、より効率よく永久磁石を磁化することができる。
【0035】
尚、本実施形態では、図3(b)に示したようにして複数の磁性体(シールド板)を接続する場合を例に挙げて説明したが、その他のようにして複数の磁性体(シールド板)を接続する場合にも、磁化していない永久磁石と接続対象のシールド板との位置決めを行ってから、その永久磁石を磁化させることができるということは勿論である。
また、本実施形態においても、前述した第1の実施形態における種々の変形例を採ることができる。
【0036】
尚、前述した各実施形態は、何れも本発明を実施するにあたっての具体化の例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその技術思想、またはその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の第1の実施形態を示し、磁気シールド装置の概略構成の一例を示す図である。
【図2】本発明の第1の実施形態を示し、磁気シールド装置のガントリー面からの距離と、磁束密度との関係を、電磁場解析により求めた結果の一例を示す図である。
【図3】本発明の第1の実施形態を示し、シールド板の接続方法の一例を示す図である。
【図4】本発明の第1の実施形態を示し、シールド板の接続方法の他の一例を示す図である。
【図5】本発明の第2の実施形態を示し、永久磁石に対して着磁を行う方法の一例を説明する図である。
【符号の説明】
【0038】
1 磁気シールド装置
11、13、16、18 シールド板
14 外側シールド部
15 内側シールド部
17 MRI
31〜36、41〜48 永久磁石
53 着磁コイル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁界発生源から発生する磁界が外部に漏洩することをシールドするための複数のシールド用磁性体と、
前記複数のシールド用磁性体の少なくとも2つを相互に接続するための磁性体であって、前記シールド用磁性体よりも大きな保磁力を有する接続用磁性体とを有し、
前記接続用磁性体から発生する磁界によって、前記少なくとも2つのシールド用磁性体が相互に接続されるようにしたことを特徴とする磁気シールド装置。
【請求項2】
前記接続用磁性体は、上面に設けられたシールド用磁性体と、周方向の面に設けられたシールド用磁性体との接続と、下面に設けられたシールド用磁性体と、周方向の面に設けられたシールド用磁性体との接続とのうち、少なくとも何れかの接続を行うためのものであることを特徴とする請求項1に記載の磁気シールド装置。
【請求項3】
前記シールド用磁性体は、複数の磁性体の板が積み重ねられて構成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の磁気シールド装置。
【請求項4】
前記接続用磁性体は、その接続用磁性体により接続される2つのシールド用磁性体の間に設けられていることを特徴とする請求項3に記載の磁気シールド装置。
【請求項5】
前記接続用磁性体は、一方のシールド用磁性体の板面に対して、他方のシールド用磁性体の板面が垂直になるように、前記一方及び他方のシールド用磁性体を相互に接続するための2つの接続用磁性体を有し、
前記2つの接続用磁性体は、前記一方及び他方のシールド用磁性体の接続部分において、前記他方のシールド用磁性体を介して対向する位置に設けられていることを特徴とする請求項3に記載の磁気シールド装置。
【請求項6】
前記接続用磁性体は、一方のシールド用磁性体の板面と、他方のシールド用磁性体の板面とが平行になるように、前記一方及び他方のシールド用磁性体を相互に接続するための2つの接続用磁性体を有し、
前記2つの接続用磁性体は、前記一方及び他方のシールド用磁性体の接続部分において、前記一方及び他方のシールド用磁性体を介して対向する位置に設けられていることを特徴とする請求項3に記載の磁気シールド装置。
【請求項7】
前記接続用磁性体は、永久磁石を有することを特徴とする請求項1〜6の何れか1項に記載の磁気シールド装置。
【請求項8】
前記接続用磁性体から発生する磁界に基づく磁束密度Bと、前記シールド用磁性体の飽和磁束密度Bsとの関係が、
0<B≦0.5Bs
を満足することを特徴とする請求項1〜7の何れか1項に記載の磁気シールド装置。
【請求項9】
請求項1〜8の何れか1項に記載の磁気シールド装置が備える接続用磁性体を磁化させる着磁手段を有し、
前記接続用磁性体が前記着磁手段により磁化されることによって、少なくとも2つのシールド用磁性体が相互に接続されるようにしたことを特徴とする着磁装置。
【請求項10】
前記着磁手段は、前記接続用磁性体を磁化するためのコイルであって、その接続用磁性体を囲うようにして設けられたコイルと、
前記コイルにパルス状の電力を供給する電力供給手段とを有することを特徴とする請求項9に記載の着磁装置。
【請求項11】
請求項1〜8の何れか1項に記載の磁気シールド装置の製造方法であって、
複数のシールド用磁性体の少なくとも2つを相互に接続するための接続用磁性体であって、磁化していない接続用磁性体を取り付ける取り付けステップと、
前記取り付けステップにより取り付けられた接続用磁性体を磁化させる着磁ステップとを有し、
前記着磁ステップにより前記接続用磁性体が磁化されることによって、前記少なくとも2つのシールド用磁性体が相互に接続されるようにしたことを特徴とする磁気シールド装置の製造方法。
【請求項12】
前記着磁ステップは、前記接続用磁性体を磁化するためのコイルであって、その接続用磁性体を囲うようにして設けられたコイルにパルス状の電力を供給することを特徴とする請求項11に記載の磁気シールド装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−111031(P2009−111031A)
【公開日】平成21年5月21日(2009.5.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−279390(P2007−279390)
【出願日】平成19年10月26日(2007.10.26)
【出願人】(306022513)新日鉄エンジニアリング株式会社 (897)
【Fターム(参考)】