説明

磁気ディスク、磁気ディスク装置、および磁気ディスクの製造方法

【課題】磁気記録を行う領域がドット状に配列された磁気ディスクにおいて、クロックドットを設けるにあたり、記録密度の低下を防止する。
【解決手段】非磁性層21と、非磁性層21におけるディスク周方向およびディスク径方向に沿ってドット状に配列された磁性領域からなる複数の記録ドット23aと、を備える磁気ディスクであって、ディスク径方向に隣接する記録ドット23a間には、記録ドット23aのディスク周方向への周期に対してずれた位置に磁性領域からなるクロックドット25aが設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気記録を行う領域がドット状に配列されたいわゆるパターンドメディアと呼称される磁気ディスク、この磁気ディスクを備える磁気ディスク装置、およびその磁気ディスクの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ハードディスクなどの記憶装置を構成するための記録媒体として、磁気ディスク(磁気記録媒体)が知られている。磁気ディスクは、ディスク基板と所定の磁性構造を有する記録層とを含む積層構造を有する。コンピュータシステムにおける情報処理量の増大に伴い、磁気ディスクについては高記録密度化の要求が高まっている。
【0003】
磁気ディスクへのデータ記録に際しては、磁気ディスクの記録面に対して記録用の磁気ヘッドが近接配置(浮上配置)され、当該磁気ヘッドにより、記録層に対し、その保磁力より強い記録磁界が印加される。磁気ディスクに対して磁気ヘッドを相対移動させつつ磁気ヘッドからの記録磁界の向きを順次反転させることにより、記録層のデータ記録領域において、磁化方向が順次反転する複数の記録マーク(磁区)がディスク周方向に連なって形成される。このとき、記録磁界方向を反転させるタイミングが制御されることにより、各々に所定の長さで記録マークが形成される。このようにして、記録層において、磁化方向の変化として所定のデータが記録される。
【0004】
磁気ディスクにおいて記録密度を高めるには、データ記録領域における磁性体の結晶粒(磁性粒子)を実質的に小さくする必要がある。しかしながら、当該磁性粒子の微細化が進むと、磁性粒子の磁化方向が熱エネルギーによって変化しやすくなり、いわゆる熱揺らぎと呼ばれるデータ消失の不具合を招く虞れがある。
【0005】
この熱揺らぎに対する耐性を高めるとともに高記録密度化を図るのに好ましい媒体として、パターンドメディア(PTM)が知られている。パターンドメディアにおいては、たとえば記録層となるべき非磁性層中に、磁性領域からなる複数の記録ドットがディスク周方向およびディスク径方向に沿ってドット状に配列された構成とされている。ここで、各記録ドットは、非磁性層によって物理的に分離されて磁気的に孤立している。したがって、パターンドメディアにおいては、従来型の磁気ディスクに比べて記録ドット間の磁気的干渉を低減することが可能となる。さらにパターンドメディアは記録単位が磁性ドット1つで構成されるため、熱ゆらぎ耐性を満足するところまで磁性ドットを縮小することができるので、高記録密度化を図るのに好ましい。
【0006】
一方、パターンドメディアでは、データが記録される記録ドットは、同一トラック内においても分離されており、その位置が絶対的に決まっている。このため、パターンドメディアにおけるデータ記録の際には、記録ドットに対して磁気ヘッドからの記録磁界の印加のタイミングを正確に同期させる必要がある。これに対し、たとえば同一トラック内の記録ドット列において磁気ヘッドの同期をとるためのクロックドット(同期ドット)を一定周期で設け、データ記録の際には、クロックドットの前後でデータリード動作を行い、同期ドットによる出力信号とクロック信号との同期をとることによって、その後に続く記録ドットへのデータ記録のタイミングを一致させる構成が提案されている(たとえば特許文献1を参照)。
【0007】
しかしながら、この特許文献1に開示された構成では、クロックドットはデータ記録に寄与しない部分であり、このクロックドットがディスク周方向に沿った記録ドット列の途中に設けられているため、記録密度の低下を招くこととなっていた。
【0008】
【特許文献1】特開2003−157507号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記した事情のもとで考え出されたものであって、磁気記録を行う領域がドット状に配列された磁気ディスクにおいて、同期信号用のドット(クロックドット)を設けるにあたり、記録密度の低下を防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、本発明では、次の技術的手段を講じている。
【0011】
本発明の第1の側面によって提供される磁気ディスクは、非磁性層と、当該非磁性層におけるディスク周方向およびディスク径方向に沿ってドット状に配列された磁性領域からなる複数の記録ドットと、を備える磁気ディスクであって、ディスク径方向に隣接する上記記録ドット間には、上記記録ドットのディスク周方向への周期に対してずれた位置に磁性領域からなるクロックドットが設けられていることを特徴としている。
【0012】
好ましくは、上記クロックドットは、上記記録ドットのディスク周方向への周期に対して実質的に半周期ずれた位置に形成されている。
【0013】
好ましくは、上記クロックドットは、ディスク周方向において上記記録ドットのディスク周方向への周期よりも大きい所定の周期で形成されている。
【0014】
好ましくは、上記クロックドットは、ディスク径方向に隣接する上記記録ドットに対して実質的に中間の位置に形成されている。
【0015】
好ましくは、上記クロックドットは、保磁力の値および飽和磁束密度の値が上記記録ドットよりも大とされている。
【0016】
本発明の第2の側面によって提供される磁気ディスク装置は、非磁性層と、当該非磁性層におけるディスク周方向およびディスク径方向に沿ってドット状に配列された磁性領域からなる複数の記録ドットとを備えた磁気ディスクを内部に備えた磁気ディスク装置であって、上記磁気ディスクのディスク径方向に隣接する上記記録ドット間には、上記記録ドットのディスク周方向への周期に対してずれた位置に磁性領域からなるクロックドットが設けられていることを特徴としている。
【0017】
本発明の第3の側面によって提供される磁気ディスクの製造方法は、非磁性層上に形成された第1のレジストに対し、本発明の第1の側面によって提供される磁気ディスクにおける上記記録ドットに対応する部位が凸部とされた所定の凹凸パターンを有する第1のスタンパを押圧することにより凹凸パターンを転写し、上記非磁性層を部分的に露出させる工程と、上記凹凸パターン転写後の上記第1のレジストをマスクとして上記非磁性層にエッチングを施すことにより上記非磁性層の露出部分に第1の凹部を形成する工程と、上記第1の凹部に第1の磁性材料を充填するとともに上記第1のレジストを除去して上記非磁性層の表面を平坦化する工程と、上記非磁性層上に第2のレジストを形成する工程と、上記第2のレジストに対し、本発明の第1の側面によって提供される磁気ディスクにおける上記クロックドットに対応する部位が凸部とされた所定の凹凸パターンを有する第2のスタンパを押圧することにより凹凸パターンを転写し、上記非磁性層を部分的に露出させる工程と、上記凹凸パターン転写後の上記第2のレジストをマスクとして上記非磁性層にエッチングを施すことにより上記非磁性層の露出部分に第2の凹部を形成する工程と、上記第2の凹部に第2の磁性材料を充填するとともに上記第2のレジストを除去して上記非磁性層の表面を平坦化する工程と、を有することを特徴としている。
【0018】
好ましくは、上記第2の凹部の深さは、上記第1の凹部の深さよりも大とされている。
【0019】
好ましくは、上記第1および第2の磁性材料はCoPtを含んで構成されており、上記第2の磁性材料におけるPtの組成比は、上記第1の磁性材料におけるPtの組成比よりも大とされている。
【0020】
本発明のその他の特徴および利点は、添付図面を参照して以下に行う詳細な説明によって、より明らかとなろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の好ましい実施の形態を、図面を参照して具体的に説明する。
【0022】
図1は、本発明に係る磁気ディスクXを含んで構成された磁気ディスク装置の一例を示している。磁気ディスク装置Aは、磁気ディスクX、磁気ヘッド1、スピンドルモータ2、スイングアーム3、アクチュエータ4、およびディスクコントローラ5を備えて構成されている。磁気ディスクXは、その複数枚が所定の間隔を空けて上下に重ねられており、各磁気ディスクXは、表裏両面が記録面とされている。磁気ヘッド1は、磁気ディスクXに対してデータを読み書きするものであり、磁気ディスクXの記録面と対向するように各スイングアーム3の先端に設けられている。スピンドルモータ2は、磁気ディスクXを高速回転させるためのものである。スイングアーム3は、磁気ヘッド1を磁気ディスクXの略径方向に往復移動させるものであり、アクチュエータ4によって敏速に動作させられる。アクチュエータ4は、たとえばボイスコイルモータなどからなる。ディスクコントローラ5は、磁気ヘッド1、スピンドルモータ2、ならびにアクチュエータ4を駆動制御するものであり、CPUやメモリなどを備えたマイクロコンピュータ、あるいはマイクロコンピュータと同等の機能を備えたワイヤードロジック回路で構成される。
【0023】
磁気ディスクXは、図1および図2に表れているように、ディスク周方向に沿って周期的に配列された記録ドット23aによって同心円状に形成された複数のトラックTを有し、パターンドメディアとして構成されたものである。より具体的には、磁気ディスクXは、剛性のあるディスク基板の表面近傍にある記録層としての非磁性層21を備え、記録ドット23aは、この非磁性層21中に物理的に孤立した状態で設けられている。記録ドット23aは、所定の保磁力、および所定の飽和磁束密度を有する。記録ドット23aのディスク周方向における配列周期Cpは例えば25nm程度であり、ディスク径方向における配列周期(トラックピッチTp)は例えば25nm程度である。記録ドット23aにおいては、磁気ヘッド1からの記録磁界の印加によって磁化方向が制御されることにより、データが記録される。
【0024】
また、非磁性層21中における隣接するトラックTの間(すなわちディスク径方向に隣接する記録ドット23aの間)には、磁性領域からなるクロックドット25aが設けられている。このクロックドット25aは、所定の磁化方向が所定の強度をもって帯磁した領域であり、データ記録の際に必要となるクロック信号に対する同期信号(クロック同期信号)を得るためのものである。クロックドット25aは、径方向においてはトッラクT内の記録ドット23a列に対してトラックピッチTpの半分ずれて位置し、周方向においては記録ドット23aの周期に対して半周期ずれて位置する。また、クロックドット25aは、ディスク周方向において、記録ドット23aの周期よりも大きい周期で規則的に配置されている。クロックドット25aは、記録ドット23aに比べて、保磁力および飽和磁束密度の値が大とされている。なお、各トラックTには、磁気ヘッド1の位置決めに用いられる図示しないサーボ領域が設けられている。
【0025】
次に、上記構成の磁気ディスクXにおいて、クロック同期信号を検出する手順の一例を説明する。まず、図3(a)に示すように、磁気ヘッド1を記録ドット23a上に追従させ、磁気ヘッド1の読み取りヘッド部11により読み取り動作を行うことにより、図3(b)に示す再生波形が得られる。この再生波形は、記録ドット23aからの磁気信号とクロックドット25aからの磁気信号の合成波形となる。ここで、クロックドット25aは記録ドット23aよりも飽和磁束密度が大であり、また、同一トラックTを構成する記録ドット23a列を挟んで対をなして位置するため、クロックドット25aによる信号波形の振幅は、記録ドット23aによる信号波形の振幅よりも大きくなる。次いで、記録ドット23aによる再生波形の振幅よりも高い信号レベルにスライスレベルを設定し、クロックドット25aによる再生波形の2値化信号を検出する(図3(c)参照)。また、図3(b)の再生波形に対し、微分回路を用いて図3(d)に示す微分再生波形を得る。次いで、図3(d)の波形に対し、ゼロクロス検出回路を用いてゼロクロス点を検出する(図3(e)参照)。そして、上記のスライス2値化信号とゼロクロス点をアンドゲートで組み合わせることにより、図3(f)に示すクロック同期信号を得ることができる。
【0026】
このようにして得られたクロック同期信号は、PLL回路に基準信号として供給される。PLL回路は、電圧制御発振器、分周回路、位相比較器から構成されており、電圧制御発振器で生成されるクロック信号を上記基準信号に同期させる位相制御を行う。これにより、クロック信号の立ち上がりをクロック同期信号の立ち上がりに正確に一致させることが可能となり、記録ドット23aに対するデータ記録の際には、記録ドット23aの位置にクロック信号を正確に合わせることができる。
【0027】
次に、上記した磁気ディスクXの製造方法の一例を図4〜図6を参照して説明する。
【0028】
磁気ディスクXは、スタンパを用いたナノインプリント法を利用して製造される。ナノインプリント法においては、まず、スタンパを作製する。スタンパの作製においては、たとえば基板上のレジスト膜に電子ビーム描画装置によって所定パターンを露光形成した後、当該レジスト膜に現像処理を施してレジストパターンを形成する。次に、このレジストパターンをマスクとして上記基板にRIEなどのドライエッチングを施して凹部を形成し、レジストパターンを除去する。これにより、所定パターンの凹部を有する基板(スタンパの原盤)が得られる。次に、当該基板に対して電鋳処理を行うことにより、ニッケルなどの金属からなるスタンパが得られる。スタンパの表面には、上記基板の凹凸形状が転写されており、上記基板の凹部に対応する箇所において凸部が形成される。本実施形態においては、上記の方法により、磁気ディスクXの記録ドット23aとなるべき部位を凸部31aとする凹凸パターンを有する記録ドット用スタンパ31(図4(a)参照)と、磁気ディスクXのクロックドット25aとなるべき部位を凸部41aとする凹凸パターンを有するクロックドット用スタンパ41(図5(c)参照)とが作製される。
【0029】
次いで、図4(a)に示すように、所定の非磁性材料からなるディスク基板20上にレジスト22を形成する。ディスク基板20の表面近傍は、非磁性層21に相当する部分である。レジスト22は、たとえばPMMA(ポリメチルメタクリレート)などの熱可塑性樹脂からなる。
【0030】
次に、レジスト22をガラス転移点以上の温度に加熱したうえで、図4(b)に示すように、記録ドット用スタンパ31を当該レジスト22に押圧することにより、当該スタンパ31の凹凸パターンが転写される。次いで、図4(c)に示すように、レジスト残渣をたとえば酸素プラズマを利用したアッシングにより除去し、非磁性層21表面を部分的に露出させて、レジストパターン22Aを形成する。次いで、図4(d)に示すように、レジストパターン22Aをマスクとして非磁性層21にドライエッチングを施すことにより、非磁性層21の露出部が除去されて凹部21aが形成される。ここで、凹部21aの深さが10nm程度となるように制御される。
【0031】
次いで、図5(a)に示すように、スパッタリング法により、凹部21aないしレジストパターン22A上に磁性材料からなる磁性膜23を積層形成する。当該磁性材料としては、たとえばCoPtを挙げることができ、Ptの組成比はたとえば10%程度である。次に、図5(b)に示すように、レジストパターン22Aを除去し、非磁性層21の表面を平坦化する。このようにして上記凹部21aに充填された磁性材料が記録ドット23aとなる。
【0032】
次に、図5(c)に示すように、非磁性層21上にレジスト24を形成する。レジスト24の材質は、上述のレジスト22と同様である。次いで、レジスト24をガラス転移点以上の温度に加熱したうえで、図5(d)に示すように、クロックドット用スタンパ41を当該レジスト24に押圧することにより、当該スタンパ41の凹凸パターンが転写される。次いで、図6(a)に示すように、レジスト残渣をたとえば酸素プラズマを利用したアッシングにより除去し、非磁性層21表面を部分的に露出させて、レジストパターン24Aを形成する。次いで、図6(b)に示すように、レジストパターン24Aをマスクとして非磁性層21にドライエッチングを施すことにより、非磁性層21の露出部が除去されて凹部21bが形成される。ここで、凹部21bの深さが20nm程度となるように制御される。
【0033】
次いで、図6(c)に示すように、スパッタリング法により、凹部21bないしレジストパターン24A上に磁性材料からなる磁性膜25を積層形成する。当該磁性材料としては、たとえばCoPtを挙げることができ、Ptの組成比はたとえば20%程度である。次いで、図6(d)に示すように、レジストパターン24Aを除去し、非磁性層21の表面を平坦化する。このようにして上記凹部21bに充填された磁性材料がクロックドット25aとなる。次いで、たとえば非磁性層21上に保護膜を形成することにより、磁気ディスクXを得ることができる。
【0034】
本実施形態に係る磁気ディスクXにおいて、クロックドット25aは、ディスク周方向に隣接する記録ドット23aの中間で、かつ、ディスク径方向に隣接する記録ドット23aの中間に位置して設けられている。このような構成によれば、記録ドット23aの配列に何ら影響を与えることはない。このため、磁気ディスクXにおいては、記録密度を実質的に低下させることなく、クロックドット25aを設けることができる。また、記録密度(ディスク周方向の記録密度)が低下しないため、転送速度が低下することもない。
【0035】
また、磁気ディスクXにおけるクロックドット25aは、記録ドット23aに対し保磁力が大きくされている。このため、記録ドット23aへのデータ記録に際し、漏れ磁場の影響でクロックドット25aの磁化が失われるといった不都合が生じることもない。
【0036】
本実施形態に係る磁気ディスクXの製造においては、記録ドット用スタンパ31およびクロックドット用スタンパ41の2種類のスタンパを用い、2段階の工程を経ることにより、磁気特性の異なる記録ドット23aとクロックドット25aとを適切に形成することができる。ここでは、クロックドット25aを構成する磁性材料におけるPtの組成比を、記録ドット23aを構成する磁性材料におけるPtの組成比よりも大とすることにより、クロックドット25aの保磁力を記録ドット23aの保磁力よりも高めることができる。また、クロックドット25aの厚みは、記録ドット23aの厚みよりも大とされている。このような構成は高保磁力、高飽和磁束密度を確保するうえで好適である。
【0037】
加えて、上記2段階の工程を経ることにより、クロックドット25aを、ディスク周方向およびディスク径方向に隣接する記録ドット23aの中間位置といった狭いスペースに設けることができる。
【0038】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明の技術的範囲は上記した実施形態に限定されるものではない。
【0039】
たとえば、上記実施形態では、記録ドットおよびクロックドットの平面視形状は略円形とされているが、これに限定されるものではなく、たとえば楕円形など他の形状を採用してもよい。これらのドットの形状としては、高記録密度化や製造における歩留りなどの観点から適切なものを採用すればよい。
【0040】
上記実施形態においては、ディスク基板の表面近傍を非磁性層とする構成にしたが、これに代えて、ディスク基板上に非磁性材料からなる非磁性層を別途形成した積層構造としてもよい。また、必要に応じて、ディスク基板上に他の中間層を設けてもよい。
【0041】
以上のまとめとして、本発明の構成およびそのバリエーションを以下に付記として列挙する。
【0042】
(付記1)非磁性層と、当該非磁性層におけるディスク周方向およびディスク径方向に沿ってドット状に配列された磁性領域からなる複数の記録ドットと、を備える磁気ディスクであって、
ディスク径方向に隣接する上記記録ドット間には、上記記録ドットのディスク周方向への周期に対してずれた位置に磁性領域からなるクロックドットが設けられていることを特徴とする、磁気ディスク。
(付記2)上記クロックドットは、上記記録ドットのディスク周方向への周期に対して実質的に半周期ずれた位置に形成されている、付記1に記載の磁気ディスク。
(付記3)上記クロックドットは、ディスク周方向において上記記録ドットのディスク周方向への周期よりも大きい所定の周期で形成されている、付記1または2に記載の磁気ディスク。
(付記4)上記クロックドットは、ディスク径方向に隣接する上記記録ドットに対して実質的に中間の位置に形成されている、付記1ないし3のいずれかに記載の磁気ディスク。
(付記5)上記クロックドットは、保磁力の値および飽和磁束密度の値が上記記録ドットよりも大とされている、付記1ないし4のいずれかに記載の磁気ディスク。
(付記6)非磁性層と、当該非磁性層におけるディスク周方向およびディスク径方向に沿ってドット状に配列された磁性領域からなる複数の記録ドットとを備えた磁気ディスクを内部に備えた磁気ディスク装置であって、上記磁気ディスクのディスク径方向に隣接する上記記録ドット間には、上記記録ドットのディスク周方向への周期に対してずれた位置に磁性領域からなるクロックドットが設けられていることを特徴とする、磁気ディスク装置。
(付記7)非磁性層上に形成された第1のレジストに対し、付記1ないし5のいずれかに記載の磁気ディスクにおける上記記録ドットに対応する部位が凸部とされた所定の凹凸パターンを有する第1のスタンパを押圧することにより凹凸パターンを転写し、上記非磁性層を部分的に露出させる工程と、
上記凹凸パターン転写後の上記第1のレジストをマスクとして上記非磁性層にエッチングを施すことにより上記非磁性層の露出部分に第1の凹部を形成する工程と、
上記第1の凹部に第1の磁性材料を充填するとともに上記第1のレジストを除去して上記非磁性層の表面を平坦化する工程と、
上記非磁性層上に第2のレジストを形成する工程と、
上記第2のレジストに対し、付記1ないし5のいずれかに記載の磁気ディスクにおける上記クロックドットに対応する部位が凸部とされた所定の凹凸パターンを有する第2のスタンパを押圧することにより凹凸パターンを転写し、上記非磁性層を部分的に露出させる工程と、
上記凹凸パターン転写後の上記第2のレジストをマスクとして上記非磁性層にエッチングを施すことにより上記非磁性層の露出部分に第2の凹部を形成する工程と、
上記第2の凹部に第2の磁性材料を充填するとともに上記第2のレジストを除去して上記非磁性層の表面を平坦化する工程と、
を有することを特徴とする、磁気ディスクの製造方法。
(付記8)上記第2の凹部の深さは、上記第1の凹部の深さよりも大とされている、付記7に記載の磁気ディスクの製造方法。
(付記9)上記第1および第2の磁性材料はCoPtを含んで構成されており、上記第2の磁性材料におけるPtの組成比は、上記第1の磁性材料におけるPtの組成比よりも大とされている、付記7または8に記載の磁気ディスクの製造方法。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明に係る磁気ディスクを含んで構成された磁気ディスク装置の一例を示す全体斜視図である。
【図2】図1に示す磁気ディスクのトラック構造を示す部分拡大平面図である。
【図3】クロック同期信号の検出手順の一例を説明するための図である。
【図4】本発明に係る磁気ディスクの製造方法における一部の工程を示す部分拡大断面図である。
【図5】図4の後に続く工程を示す部分拡大断面図である。
【図6】図5の後に続く工程を示す部分拡大断面図である。
【符号の説明】
【0044】
A 磁気ディスク装置
X 磁気ディスク
T トラック
1 磁気ヘッド
2 スピンドルモータ
3 スイングアーム
4 アクチュエータ
5 ディスクコントローラ
11 読み取りヘッド部
21 非磁性層
21a 凹部(第1の凹部)
21b 凹部(第2の凹部)
22 レジスト(第1のレジスト)
23a 記録ドット
24 レジスト(第2のレジスト)
25a クロックドット
31 記録ドット用スタンパ(第1のスタンパ)
41 クロックドット用スタンパ(第2のスタンパ)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
非磁性層と、当該非磁性層におけるディスク周方向およびディスク径方向に沿ってドット状に配列された磁性領域からなる複数の記録ドットと、を備える磁気ディスクであって、
ディスク径方向に隣接する上記記録ドット間には、上記記録ドットのディスク周方向への周期に対してずれた位置に磁性領域からなるクロックドットが設けられていることを特徴とする、磁気ディスク。
【請求項2】
上記クロックドットは、上記記録ドットのディスク周方向への周期に対して実質的に半周期ずれた位置に形成されている、請求項1に記載の磁気ディスク。
【請求項3】
上記クロックドットは、ディスク周方向において上記記録ドットのディスク周方向への周期よりも大きい所定の周期で形成されている、請求項1または2に記載の磁気ディスク。
【請求項4】
上記クロックドットは、保磁力の値および飽和磁束密度の値が上記記録ドットよりも大とされている、請求項1ないし3のいずれかに記載の磁気ディスク。
【請求項5】
非磁性層と、当該非磁性層におけるディスク周方向およびディスク径方向に沿ってドット状に配列された磁性領域からなる複数の記録ドットとを備えた磁気ディスクを内部に備えた磁気ディスク装置であって、
上記磁気ディスクのディスク径方向に隣接する上記記録ドット間には、上記記録ドットのディスク周方向への周期に対してずれた位置に磁性領域からなるクロックドットが設けられていることを特徴とする、磁気ディスク装置。
【請求項6】
非磁性層上に形成された第1のレジストに対し、請求項1ないし4のいずれかに記載の磁気ディスクにおける上記記録ドットに対応する部位が凸部とされた所定の凹凸パターンを有する第1のスタンパを押圧することにより凹凸パターンを転写し、上記非磁性層を部分的に露出させる工程と、
上記凹凸パターン転写後の上記第1のレジストをマスクとして上記非磁性層にエッチングを施すことにより上記非磁性層の露出部分に第1の凹部を形成する工程と、
上記第1の凹部に第1の磁性材料を充填するとともに上記第1のレジストを除去して上記非磁性層の表面を平坦化する工程と、
上記非磁性層上に第2のレジストを形成する工程と、
上記第2のレジストに対し、請求項1ないし4のいずれかに記載の磁気ディスクにおける上記クロックドットに対応する部位が凸部とされた所定の凹凸パターンを有する第2のスタンパを押圧することにより凹凸パターンを転写し、上記非磁性層を部分的に露出させる工程と、
上記凹凸パターン転写後の上記第2のレジストをマスクとして上記非磁性層にエッチングを施すことにより上記非磁性層の露出部分に第2の凹部を形成する工程と、
上記第2の凹部に第2の磁性材料を充填するとともに上記第2のレジストを除去して上記非磁性層の表面を平坦化する工程と、
を有することを特徴とする、磁気ディスクの製造方法。
【請求項7】
上記第2の凹部の深さは、上記第1の凹部の深さよりも大とされている、請求項6に記載の磁気ディスクの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−15946(P2009−15946A)
【公開日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−175224(P2007−175224)
【出願日】平成19年7月3日(2007.7.3)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】