説明

磁気ディスクテープバニッシュ装置

【課題】高精度のバニッシュ処理を可能とするテープバニッシュ装置を提供する。
【解決手段】磁気ディスク10を厚さ方向に挟む配置に設けられた、一対のバニッシュ機構を備えるテープバニッシュ装置であって、前記バニッシュ機構16は、テープの供給機構12及びテープの巻き取り機構14と、前記テープの供給機構からテープの巻き取り機構へ、間欠的にテープを送るテープの送り機構と、磁気ディスク10の記録面から離間した退避位置と、前記記録面に前記テープ20を押圧してバニッシュ処理を施す押圧位置との間で進退動するヘッド161を備えるバニッシュヘッド機構16と、前記ヘッド161が前記退避位置から前記押圧位置に移動する際に、該ヘッド161に作用する前記テープのテンションを回避するテンションキャンセル機構18とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
テープを用いて磁気ディスクの表面の突起あるいは付着物を除去する磁気ディスクテープバニッシュ(burnish)装置に関する。
【背景技術】
【0002】
磁気ディスク装置に用いられる磁気ディスク(磁気記録媒体)の製造工程には、円盤状に形成した磁気ディスクの表面の凹凸を除去して表面を滑らかにしたり、表面に付着している付着物を除去したりする工程がある。テープバニッシュ装置はこの工程に用いられる装置であり、磁気ディスクを高速回転させた状態において、特定の表面粗さに形成されたポリエステルテープ等を磁気ディスクの記録面に押し当て、磁気ディスク表面の突起や付着物を除去する。テープには長尺状のテープが用いられ、1枚の磁気ディスクを処理するごとに定寸送りし、新しいテープ面を磁気ディスクの表面に押接して処理される。
【0003】
図7は、テープバニッシュ装置の従来の構成例を示す。このテープバニッシュ装置は、1回の処理操作により磁気ディスク10の両面を処理するため、磁気ディスク10を厚さ方向に挟む配置に一対のバニッシュ機構を備えている。
バニッシュ機構は、供給リール121を備えるテープの供給機構12、及び巻き取りリール141を備えるテープの巻き取り機構14と、テープ20を磁気ディスク10に押接するバニッシュヘッド機構16とを備える。バニッシュヘッド機構16は、テープ20を磁気ディスク10の記録面に押圧するヘッド161と、ヘッド161を磁気ディスク面に対して進退動させる駆動機構とを備える。
【0004】
テープバニッシュ装置は、バニッシュ機構とは別に、磁気ディスクをバニッシュ位置にロードしてバニッシュ処理を施すための磁気ディスクのロード・アンロード機構を備える。バニッシュ機構は、ロード・アンロード機構により磁気ディスクを高速回転させた状態において、ヘッド161を介して磁気ディスク10の記録面にテープ20を押接してバニッシュ操作を行う。磁気ディスク10を挟むようにして磁気ディスクの記録面にテープ20を押接し、バニッシュヘッド機構を磁気ディスクの外周縁側と内周側との間で往復させることによって磁気ディスクの両面の記録面の全面をバニッシュ処理することができる。
バニッシュ処理が完了した後、巻き取り機構14にテープ20が所定長さ分、巻き取られ、テープ20の新しい面を使用して次の磁気ディスク10についてのバニッシュ操作がなされる。
【特許文献1】特開2008−135091号公報
【特許文献2】特開平2−217837号公報
【特許文献3】特開昭59−153688号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
磁気ディスクの記録面の凹凸を除去したり、記録面に付着する付着物を除去したりするバニッシュ処理では、テープを磁気ディスクの記録面に押接する際の押圧力が、磁気ディスクの表面の仕上がり状態に影響を及ぼす。すなわち、テープによって磁気ディスクの記録面を押圧する際の押圧力(接触圧力)がばらつくと、処理結果にばらつきが生じて、磁気ディスクの仕上がり面が所定精度に仕上がらないといった問題が生じる。
【0006】
磁気ディスクの表面を精度よく仕上げるために、従来のテープバニッシュ装置においては、ヘッド161によりテープ20を磁気ディスク10に押圧する際の押圧力を検知するロードセル175を設け、ロードセル175の出力を検知してテープ20の押圧力を制御するといった方法を行っている。
しかしながら、ヘッド161を押圧位置に前進させた際にテープ20のテンションがヘッド161に作用すると、ロードセル175によって検知された押圧力がそのままテープ20に作用するとは限らなくなる。また、テープ20に作用するテンションのばらつきによってテープ20の押圧力がばらつく原因になる。
【0007】
近年の磁気ディスク装置においては、磁気記録媒体が高密度化するとともに、磁気ディスク表面からの磁気ヘッドスライダーの浮上量が従来よりも低くなってきており、磁気ディスクの表面精度により高精度が求められるようになってきた。このため、テープバニッシュ装置においても、仕上がり精度のばらつきを抑え、より高精度のバニッシュ処理を可能にすることが求められている。
【0008】
本発明は、磁気ディスクの記録面にバニッシュ処理を施すテープバニッシュ装置として、高精度の処理を可能にするテープバニッシュ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
テープバニッシュ装置についての実施形態の一観点によれば、磁気ディスクを厚さ方向に挟む配置に設けられた、一対のバニッシュ機構を備えるテープバニッシュ装置であって、前記バニッシュ機構は、テープの供給機構及びテープの巻き取り機構と、前記テープの供給機構からテープの巻き取り機構へ、間欠的にテープを送るテープの送り機構と、磁気ディスクの記録面から離間した退避位置と、前記記録面に前記テープを押圧してバニッシュ処理を施す押圧位置との間で進退動するヘッドを備えるバニッシュヘッド機構と、前記ヘッドが前記退避位置から前記押圧位置に移動する際に、該ヘッドに作用する前記テープのテンションを回避するテンションキャンセル機構とを備えるテープバニッシュ装置が提供される。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係るテープバニッシュ装置によれば、ヘッドによりテープを磁気ディスクの記録面に押圧してバニッシュ処理を施す際に、テンションキャンセル機構の作用によって、ヘッドに作用するテープのテンション(反力)が回避される。これにより、テープのテンションに左右されることなく、正確に押圧力を設定してバニッシュ処理することができ、高精度でばらつきのないバニッシュ処理が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明に係るテープバニッシュ装置についての実施の形態について説明する。
(テープバニッシュ装置の全体構成)
まず、図1にしたがって、本実施形態のテープバニッシュ装置の全体構成について説明する。本実施形態のテープバニッシュ装置も、図7に示したテープバニッシュ装置と同様に、磁気ディスクの記録面を厚さ方向に挟む配置に一対のバニッシュ機構を配置して形成されている。
【0012】
テープバニッシュ装置は、磁気ディスクの収納位置とバニッシュ処理を施す位置との間において磁気ディスクをロード・アンロードする機構を備える。バニッシュ処理を施す位置に磁気ディスクを高速回転(3000〜4000回転/分)するスピンドルが設けられる。
本実施形態においては、バニッシュ処理を施す状態において、磁気ディスクは記録面を鉛直方向に向けて回転支持される。ロード位置において、バニッシュヘッドを磁気ディスク外周縁と内周側との間で往復させることにより、磁気ディスクの記録面の全面をバニッシュ処理する。なお、バニッシュヘッドは、回転する磁気ディスクの外周部から内周部へ移動する機構(不図示)を有する。
【0013】
本実施形態のテープバニッシュ装置においては、バニッシュ機構として、テープの供給機構12と、テープの巻き取り機構14と、バニッシュヘッド機構16と、テンションキャンセル機構18とを備える。
磁気ディスクのセット位置を挟んで、左右に配されたバニッシュ機構を構成する各部は、まったく同一の対称配置に設けられている。以下の説明において、とくに断らない限り、バニッシュ機構についての説明は左右のバニッシュ機構に共通である。
【0014】
テープの供給機構12は、バニッシュ用のテープが巻回された供給リール121を脱着自在に装着する装着部を備える。図1は、装着部に供給リール121を装着した状態を示す。バニッシュ用のテープには、所定の粗さに形成されたポリエステルテープや、布製のテープが用いられる。本装置は、バニッシュ用として使用するテープの素材、厚さ、幅、長さ等が限定されるものではない。
テープの巻き取り機構14は、テープの巻き取りリール141を脱着可能に装着する装着部を備える。図1は巻き取りリール141を装着した状態を示す。
【0015】
バニッシュヘッド機構16は、テープ20を磁気ディスクの記録面(表面)に押圧するヘッド161と、ヘッド161を退避位置と押圧位置との間で進退駆動する駆動部と、テープ20による押圧力を調節する圧力調節部とを備える。ヘッド161の駆動部および圧力調節部については後述する。
【0016】
テンションキャンセル機構18は、ヘッド161が退避位置から磁気ディスクの記録面を押圧する位置まで前進する際に、テープ20のテンションがヘッド161に作用しないようにする機構である。ヘッド161が退避位置から押圧位置まで移動する際に、単にヘッド161を移動させると、ヘッド161はテープ20のテンション(反力)を受けながら移動することになり、テープ20の反力によってテープ20によって磁気ディスクを押圧する圧力が設定値からずれてしまう。
テンションキャンセル機構18は、ヘッド161によってテープ20を押圧する際にテープ20が移動する量(長さ)を補うことによって、ヘッド161にテープ20のテンションが作用することを解消する機構である。
【0017】
図2(a)は、ヘッド161が退避位置にある状態、図2(b)は、ヘッド161が押圧位置に前進した状態を拡大して示す。テープ20の送り方向にヘッド161を挟む配置に、固定ガイドローラ125、126が配置されている。
ヘッド161のテープ20の裏面に接触する部位には、テープ20を全幅にわたって押さえる押接部161aが設けられる。この押接部161aは、縦方向にはテープ幅、横方向には5mm程度の幅に設けられる。押接部161aはスポンジ等の軟らかい素材によって形成される。
【0018】
図2(a)に示すように、ヘッド161が退避位置にある状態においては、固定ガイドローラ125、126の間に直線的に掛け渡されたテープ20の裏面にヘッド161が位置する。これに対し、ヘッド161が磁気ディスクの記録面にテープ20を押圧する位置まで前進すると(図2(b))、押圧位置において、テープ20は、固定ガイドローラ125、126によって直線的に支持された位置よりも突出する。すなわち、ヘッド161はテープ20のテンションに抗してテープ20を押し出すことになるから、このテープ20の押し出し量を補充するように、ヘッド161にテープ20を供給すれば、テープ20のテンションの影響を受けることなく磁気ディスクにテープ20を押圧することができる。テンションキャンセル機構18はこのヘッド161を前進させる際のテープテンションをキャンセルするための機構である。
【0019】
図3に、図1に示したバニッシュ機構の一方の構造を拡大して示している。
テープの供給機構12の送り出し側位置に、可動ガイドローラ122が配置されている。この可動ガイドローラ122はテープ20のたるみを調節するためのガイドローラである。可動ガイドローラ122は、スライドガイドにより移動方向が規制され、モータによって進退動する。
可動ガイドローラ122と固定ガイドローラ125との間のテープ経路上に、ガイドローラ123と、テンションキャンセル機構18の一部材である真空吸着ヘッド181が配置されている。真空吸着ヘッド181は、真空吸着面181aをテープ20の裏面に向けて配置されている。テープ送りの際には、テープ20は真空吸着面181a上をすべりながら移動する。
【0020】
固定ガイドローラ126とテープ巻き取り機構14に装着される巻き取りリール141との間には、テンションキャンセル用のガイドローラ127と駆動ローラ129が配されている。ガイドローラ127は、バニッシュヘッド機構16のヘッド161が前進する際に、ヘッド161とともに前進し、テープ20を戻り方向に供給してテープ20のテンションをキャンセルするように作用する。ガイドローラ127はヘッド161を支持する移動板167上に支持され、ヘッド161とともに固定ガイドローラ125、126に対して相対的に移動する。
【0021】
駆動ローラ129はテープ20を間欠的に定寸送りするためのローラである。駆動ローラ129に対向してテープ20を挟む配置にピンチローラ130が設けられている。巻き取り機構14では、テープ20の巻径が変動することによって巻き取り量が変動する。テープの巻き取り機構14は一定のテンションによってテープ20を巻取るように設定されている。テープの巻き取り機構14に巻き取られるテープ20の巻き取り量は、駆動ローラ129とピンチローラ130の送り作用によって規定される。
可動ガイドローラ122、ガイドローラ123、固定ガイドローラ125、126、ガイドローラ127、駆動ローラ129及びピンチローラ130が、テープの送り機構を構成する。
【0022】
(ヘッド部の駆動機構)
ヘッド161は駆動機構によって磁気ディスク10から離間した退避位置と、磁気ディスク10にテープ20を押圧する押圧位置との間で進退駆動される。
図4にヘッド161を進退動させる駆動機構を示す。図4は、対向して配置されているバニッシュヘッド機構16を側面方向から見た状態を示している。
ヘッド161は、スライド板165上に起立して設けられ、スライド板165はスライドガイド166を介して移動板167上に支持される。移動板167は、スライドガイド168を介して、機枠に固定されている支持板30上に支持される。
【0023】
スライドガイド168は、支持板30上において移動板167を、ヘッド161が互いに対向する方向に進退動するようにガイドし、スライドガイド166は、移動板167上において、ヘッド161が互いに対向する方向に進退動するようにガイドする。
各々の移動板167の内端部には、支持板30の面と垂直に駆動ロッド169が鉛直下方に向けて立設されている。
支持板30の下面には駆動モータ170が取り付けられ、この駆動モータ170に設けられた一対のチャックアーム171に、それぞれ駆動ロッド169の下端部がチャックされる。
【0024】
駆動モータ170はチャックアーム171を互いに接離動させる向きに押動する作用をなす。すなわち、駆動モータ170が作動することにより、一対の駆動ロッド169は互いに対向する向きに接離動する。
駆動モータ170、駆動ロッド169、スライドガイド168、移動板167、スライドガイド166及びスライド板165が、ヘッド161を進退動させる駆動部162を形成する。一対の駆動部162により、ヘッド161は磁気ディスク10に対して接近する向きと離間する向きに移動されることになる。
【0025】
移動板167上にはエアベアリングシリンダ172が、押動軸173の突出入方向をヘッド161の進退動方向に平行として取り付けられている。押動軸173はポート174に接続されるエア源からのエア圧により、移動板167に対してスライド板165を前進させる向きに押動する。押動軸173はロードセル175を介してスライド板165の後端面に当接し、ロードセル175の出力が制御部(不図示)に入力されエアベアリングシリンダ172によって押動軸173を押圧する押圧力が制御される。
エアベアリングシリンダ172、押動軸173及びロードセル175が圧力調節部163を形成する。
【0026】
図5に、テープの供給機構12、テープの巻き取り機構14、バニッシュヘッド機構16等の構成を、ヘッド161に対向する面側から見た状態を示す。
支持板30上にスライドガイド168を介して移動板167が支持され、移動板167上に、ヘッド161、エアベアリングシリンダ172、テンションキャンセル用のガイドローラ127が支持されている。ヘッド161、エアベアリングシリンダ172、ガイドローラ127は、駆動ロッド169により一体的に進退駆動される。
【0027】
固定ガイドローラ125、126は、ヘッド161を挟む配置に機枠上に立設されている。可動ガイドローラ122は、駆動ロッド176によりスライドガイド177にガイドされて往復動する。駆動ロッド176は、駆動ロッド169を駆動する駆動モータ170とは別体に設けられた駆動モータ(不図示)によって押動される。
【0028】
テンションキャンセル機構18の真空吸着ヘッド181は、可動板182上に立設された支持ブロック183の上部に取り付けられている。真空吸着ヘッド181のテープ20の裏面に対向する真空吸着面181aにはテープ20を真空吸着面181aに吸着する複数個の吸着孔が開口する。真空吸着ヘッド181はエア吸引機構に接続され、エア吸引機構は制御部によりエア吸引操作が制御される。
テープの供給機構12とテープの巻き取り機構14との間を連通するテープ20の移動高さ位置に合わせて固定ガイドローラ125、126、ヘッド161、真空吸着ヘッド181等の高さが設定されている。
【0029】
図3に示すように、真空吸着ヘッド181を支持する可動板182は、ガイド184により、ガイドローラ123と固定ガイドローラ125とを結ぶ直線に平行となる方向に可動に支持される。
移動板167の側面に対向する、可動板182のコーナー部には、円形ローラに形成されたカムフォロア185が取り付けられている。可動板182と支持板30との間には、カムフォロア185をカム167aに常時当接させる向きに可動板182を付勢する収縮スプリング186が設けられている。可動板182の後端縁からはアームが延出し、アームに収縮スプリング186の一端が係止され、アームに対向して可動板182の移動位置を規制するストッパ187が設けられている。
【0030】
(テープバニッシュ装置の作用)
続いて、本実施形態のテープバニッシュ装置の作用について説明する。
まず、図1に示すように、バニッシュヘッド機構16のヘッド161が退避位置にある状態において、ロード・アンロード機構により磁気ディスク10を支持し、対向して配置されているヘッド161の中間位置に磁気ディスク10をロードする。
ヘッド161が退避位置にある状態においては、固定ガイドローラ125、126に掛け渡されているテープ20の位置よりも後方にヘッド161の押接部161aが位置し、対向配置されているテープ20間に、磁気ディスク10を挿入するに十分な間隔が形成されている。
【0031】
対向配置されているテープ20の中間に磁気ディスク10をロードした状態において磁気ディスク10を回転させ、バニッシュ操作に移る。バニッシュ操作は、磁気ディスク10を回転させた状態でヘッド161によってテープ20を磁気ディスク10の外周縁にて押接させ、押接状態のままバニッシュヘッド機構を内周側との間で往復させることで磁気ディスク全面のバニッシュを行なう。
本実施形態のテープバニッシュ装置においては、ヘッド161によってテープ20を磁気ディスク10に押接する際に、テンションキャンセル機構18によりテープ20のテンション(反力)がヘッド161に作用しないようにしている。
【0032】
ヘッド161によってテープ20を磁気ディスク10の記録面に押接する操作は、駆動モータ170により駆動ロッド169を介して移動板167を磁気ディスク10に向けて移動させることによってなされる。
ヘッド161は、移動板167上に支持されているエアベアリングシリンダ172の押動軸173によりスライド板165を押動することによって前進する。このヘッド161が前進する操作により、磁気ディスク10を挟んで配置されている一対のヘッド161が互いに接近するように移動する。
【0033】
ヘッド161の端面に形成されている押接部161aはテープ20の裏面に接触し、磁気ディスク10の記録面にはテープ20の処理面が接触する。
テープ20を磁気ディスク10の記録面に押圧する際には、駆動部162によってヘッド161を移動させるストロークを、テープ20が磁気ディスク10の記録面に接触する位置よりも若干深くなるように設定し、テープ20を磁気ディスク10の記録面に接触させた状態において圧力調節部163の作用により押圧力が設定されるようにしている。
【0034】
圧力調節部163は、ロードセル175の出力を検知しながらエアベアリングシリンダ172に作用させるエア圧をコントロールして、磁気ディスク10に対するテープ20の押圧力を制御する。すなわち、磁気ディスク10に作用するテープ20の押圧力を最終的に制御するのは圧力制御部163である。圧力調節部163にエアベアリングシリンダ172を使用しているのは、高精度に押圧力を調節することが可能だからである。
磁気ディスクにはいろいろな製品があり、製品によって、バニッシュ処理におけるテープ20の押圧力を調節する必要がある。その場合には、圧力調節部163を調節してテープ20の押圧力を調節する。なお、移動板167の移動ストロークを調節する場合は、ストッパ等により移動板167の移動位置を規制する等の方法によることができる。
【0035】
(テンションキャンセル機構の作用)
図3において、テープの供給機構12の送り出し位置に設けられている可動ガイドローラ122は、テープ20を送り出し操作する際においては突出位置にあり、ヘッド161によりテープ20を磁気ディスク10に向けて押し出す際に、引き込み位置に移動する。図3においては、可動ガイドローラ122が引き込み位置に移動した状態を破線によって示す。この可動ガイドローラ122の動作は、図5に示す駆動ロッド176をモータ駆動することによってなされる。
可動ガイドローラ122が引き込み位置に移動することにより、テープの供給機構12から送り出されたテープ20にたるみ(余裕)が 生じる。このたるみがヘッド161が前進する際にヘッド161側に供給される。
【0036】
テープの供給機構12からテープ20を送り出した際に、真空吸着ヘッド181に接続するエア吸引機構を作動させ、テープ20を真空吸着ヘッド181の真空吸着面181aに真空吸着する。
ヘッド161を支持する移動板167と真空吸着ヘッド181を支持する可動板182とはカム機構によって連繋している。すなわち、テープ20を磁気ディスク10に押圧するためにヘッド161が前進すると、移動板167に設けたカム167aと、真空吸着ヘッド181を支持する可動板182に設けたカムフォロア185との作用によって、真空吸着ヘッド181がテープ20をヘッド161に送る位置まで移動する。
移動板167、可動板182、カム167a、カムフォロア185等が真空吸着ヘッド181を吸着位置と供給位置との間で移動させる移動機構を構成する。
【0037】
図6にこの真空吸着ヘッド181の作用を図示した。
図6(a)は、ヘッド161が退避位置にある状態、図6(b)は、ヘッド161が前進し、テープ20を磁気ディスク10の記録面に押圧する状態である。
図6(c)に示すように、ヘッド161が退避位置にある状態においては、可動板182に設けられているカムフォロア185はカム167aのカム面の頂部近傍に当接する。この位置が真空吸着ヘッド181がテープ20を真空吸着する吸着位置である。
【0038】
ヘッド161が前進すると、カムフォロア185はカム167aのカム面の中途位置まで移動し、これとともに、可動板182が移動する。図6(d)に移動板167が移動することによって可動板182が移動する状態を矢印によって示した。可動板182の移動方向はガイドローラ123と固定ローラ125とを結ぶ線に平行となる方向である。真空吸着ヘッド181が移動した位置がテープ20の送り位置である。
【0039】
このカム167aとカムフォロア185によるカム作用により、ヘッド161が前進するとともに真空吸着ヘッド181がヘッド161側にわずかに移動し、ヘッド161側にテープ20が供給される。テープ20は真空吸着ヘッド181に真空吸着されているから、真空吸着ヘッド181が吸着位置から送り位置まで移動することにより、その移動量に応じてヘッド161側にテープ20が供給される。
【0040】
こうして、真空吸着ヘッド181によりヘッド161側にテープ20を供給することにより、ヘッド161が退避位置から押圧位置に移動する際にヘッド161に作用するテープ20のテンションを回避することができる。
真空吸着ヘッド181によってテープ20を補充する量は、ヘッド161の移動量等に応じて、カム等の設計により適宜調節することが可能である。本実施形態における真空吸着ヘッド181の移動量は0.5〜1mm程度である。
【0041】
テープ20を真空吸着ヘッド181によって真空吸着している理由は、処理前においては、テープ20を清浄に維持するため、テープ20の裏面を支持してテープ20の処理面に部材が接触しないようにするためである。可動ガイドローラ122についても、テープ20の裏面にローラが接触する配置としている。
可動ガイドローラ122を引き込み位置に移動させるタイミングは、ヘッド161が前進するタイミング、すなわち真空吸着ヘッド181が移動するタイミングに一致させる。テープ20は真空吸着ヘッド181によって吸着支持しているが、タイミングを調節せず、単に可動ガイドローラ122を動かしてしまうと、テープ20が垂れ下がってしまうおそれがあるからである。
【0042】
上述したテープ20のテンションがヘッド161に作用することを回避する作用は、ヘッド161の上流側における作用である。ヘッド161の下流側においては、固定ガイドローラ126と駆動ローラ129との間に配置されたガイドローラ127によってテンションキャンセル作用がなされる。
図5に示したように、ガイドローラ127は移動板167上に支持されている。ヘッド161を移動させるために移動板167が前進すると、これに伴ってガイドローラ127も前進する。固定ガイドローラ126及び駆動ローラ129の設置位置は固定されているから、ガイドローラ127が移動することにより、その移動量に応じてヘッド161側にテープ20が戻される。
【0043】
こうして、ヘッド161の下流側においては、ガイドローラ127がヘッド161とともに移動することにより、ヘッド161が前進する際にヘッド161側にテープ20を供給してテープ20のテンションをキャンセルする作用がなされる。
ヘッド161の下流側においては、テープ20の処理面にローラが接触してもなんら問題はない。ガイドローラ127をテープ20の処理面に接触する配置としているのは、この理由である。
仮に、ヘッド161の上流側であってもテープ20の処理面に部材が接触してかまわない場合には、ヘッド161の上流側におけるテンションキャンセル機構をガイドローラ127による構造と同一構造に形成することも可能である。ガイドローラ127を用いるテンションキャンセル機構の方が、真空吸着ヘッド181を用いる機構よりも構造は簡単化される。
【0044】
ヘッド161によりテープ20を磁気ディスク10の記録面に押圧しながら磁気ディスク10の全面についてバニッシュ処理を施した後は、テープの巻き取り機構14にテープ20を巻き取る操作になる。
ヘッド161を退避位置に移動させ、真空吸着ヘッド181によるテープ20の真空吸着を解除し、可動ガイドローラ122を突出位置に移動させる。その際に、駆動ローラ129を駆動してテープ20を定寸長さ分、前送りし、テープの巻き取り機構14の巻き取りリール141にテープ20を巻き取る。
【0045】
ヘッド161を退避位置に移動させる操作は、駆動モータ170により駆動ロッド169を介して移動板167を開き位置に移動させる操作となる。移動板167が離間位置に移動することにより、ヘッド161は中間に磁気ディスク10を挿入する間隔をあけて対向する配置に戻り、次回の磁気ディスク10をバニッシュ処理する状態に復帰する。こうして、次々と、磁気ディスク10のバニッシュ処理を施すことができる。
【0046】
本実施形態のバニッシュ機構によれば、テンションキャンセル機構16を備えていることにより、ヘッド161によってテープ20を処理位置まで押し出す際に、ヘッド161に作用するテープ20からのテンション(反力)を完全にキャンセルして押し出すことができる。したがって、テープ20を磁気ディスク10の記録面に押圧する際の押圧力として、圧力調節部163によって設定された押圧力がそのまま作用することになる。
こうして、本実施形態のテープバニッシュ装置によれば、磁気ディスク10をバニッシュ処理する際のテープ20の押圧力を正確に制御することが可能となり、磁気ディスク10のバニッシュ処理を高精度に、ばらつきなく行うことができる。本実施形態のテープバニッシュ装置は、高密度記録用の磁気ディスクのように、高精度のバニッシュ処理が求められる製品について好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】テープバニッシュ装置の全体構成を示す平面図である。
【図2】ヘッドが退避位置にある状態と前進位置にある状態を示す平面図である。
【図3】テープバニッシュ装置の一方のバニッシュ機構を示す平面図である。
【図4】バニッシュヘッド機構の側面図である。
【図5】バニッシュヘッド機構及びテンションキャンセル機構の側面図である。
【図6】テンションキャンセル機構の作用を示す説明図である。
【図7】テープバニッシュ装置の従来の構成を示す平面図である。
【符号の説明】
【0048】
10 磁気ディスク
12 テープの供給機構
14 テープの巻き取り機構
16 バニッシュヘッド機構
18 テンションキャンセル機構
20 テープ
30 支持板
121 供給リール
122 可動ガイドローラ
125、126 固定ガイドローラ
127 ガイドローラ
129 駆動ローラ
141 巻き取りリール
161 ヘッド
161a 押接部
162 駆動部
163 圧力調節部
165 スライド板
167 移動板
167a カム
170 駆動モータ
172 エアベアリングシリンダ
181 真空吸着ヘッド
181a 真空吸着面
182 可動板
185 カムフォロア

【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁気ディスクを厚さ方向に挟む配置に設けられた、一対のバニッシュ機構を備えるテープバニッシュ装置であって、
前記バニッシュ機構は、
テープの供給機構及びテープの巻き取り機構と、
前記テープの供給機構からテープの巻き取り機構へ、間欠的にテープを送るテープの送り機構と、
磁気ディスクの記録面から離間した退避位置と、前記記録面に前記テープを押圧してバニッシュ処理を施す押圧位置との間で進退動するヘッドを備えるバニッシュヘッド機構と、
前記ヘッドが前記退避位置から前記押圧位置に移動する際に、該ヘッドに作用する前記テープのテンションを回避するテンションキャンセル機構と、
を備えることを特徴とするテープバニッシュ装置。
【請求項2】
前記テンションキャンセル機構として、
前記ヘッドが配置された位置よりも前記テープの上流側において、前記テープの裏面を真空吸着する真空吸着ヘッドと、
前記ヘッドが前記退避位置から前記押圧位置に向けて移動する際に、前記真空吸着ヘッドを、前記テープを真空吸着する吸着位置から該テープを前記ヘッド側に供給する送り位置に移動させる移動機構とを備えることを特徴とする請求項1記載のテープバニッシュ装置。
【請求項3】
前記移動機構は、
前記ヘッドを前記退避位置と前記押圧位置との間において移動可能に支持する移動板と、前記真空吸着ヘッドを支持する可動板とを備え、
前記移動板と前記可動板とに、前記移動板が退避位置から前記押圧位置に移動する際に、前記可動板を前記吸着位置から前記送り位置に移動させるカム機構が設けられていることを特徴とする請求項2記載のテープバニッシュ装置。
【請求項4】
前記テンションキャンセル機構として、
前記ヘッドが前記退避位置から押圧位置に移動する際に、前記ヘッドとともに移動し、ヘッド側にテープを供給するテンションキャンセル用のガイドローラを備えることを特徴とする請求項1記載のテープバニッシュ装置。
【請求項5】
前記ヘッドが、前記退避位置と前記押圧位置との間において前記ヘッドを移動可能に支持する移動板上に支持され、
前記ガイドローラが、前記移動板上に支持されていることを特徴とする請求項4記載のテープバニッシュ装置。
【請求項6】
前記バニッシュヘッド機構は、前記ヘッドを前記退避位置と前記押圧位置との間で進退動させる駆動部と、
前記押圧位置において、前記ヘッドにより前記テープを押圧する押圧力を調節する圧力調節部とを備えることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項記載のテープバニッシュ装置。
【請求項7】
前記圧力調節部は、エア圧によって押動圧力を調節するエアベアリングシリンダと、前記ヘッドによる押圧力を検知するロードセルとを備えることを特徴とする請求項6記載のテープバニッシュ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−79955(P2010−79955A)
【公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−244450(P2008−244450)
【出願日】平成20年9月24日(2008.9.24)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】