説明

磁気ディスク用基板固定用治具及び磁気ディスク用基板の製造方法

【課題】片面で面出しが不可能な片面加工品の磁気ディスク用基板においても従来の触針式測定機や光学式/干渉系測定機を使用した品質の測定を行うことができる磁気ディスク用基板固定用治具及び磁気ディスク用基板の製造方法を提供すること。
【解決手段】本発明の磁気ディスク用基板固定用治具は、片方の面のみ加工された磁気ディスク用基板30を検査する際に用いられる磁気ディスク用基板固定用治具1であって、磁気ディスク用基板30の加工面30aと接する面2aが加工面30aと同程度に研磨加工された支持部材2と、磁気ディスク用基板30の非加工面30b側で、磁気ディスク用基板30の穴部のテーパ状に形成された開口部と接するテーパ面3aが磁気ディスク用基板30の穴部と同程度に研磨加工された固定部材3とを具備し、支持部材2の面2aと固定部材3のテーパ面3aとで磁気ディスク用基板30を固定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハードディスクドライブ装置に搭載される磁気ディスク用基板の製造において用いられる磁気ディスク用基板固定用治具及び磁気ディスク用基板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ハードディスクドライブ装置(HDD装置)に搭載される磁気記録媒体として磁気ディスクがある。磁気ディスクは、アルミニウム−マグネシウム合金などで構成された金属板上にNiP膜を被着した基板、ガラス基板、セラミックス基板上に磁性層や保護層を積層したりして作製される。従来では、磁気ディスク用の基板としてアルミニウム合金基板が広く用いられていたが、近年の磁気ディスクの小型化、薄板化、高密度記録化に伴って、アルミニウム合金基板に比べて表面の平坦度や薄板での強度に優れたガラス基板が用いられるようになってきている。
【0003】
このような磁気ディスク用基板は、素材加工工程及び第1ラッピング工程;端部形状工程(穴部を形成するコアリング工程、端部(外周端部及び/又は内周端部)に面取り面を形成するチャンファリング工程(面取り面形成工程));端面研磨工程(外周端部及び内周端部);第2ラッピング工程;主表面研磨工程(第1及び第2研磨工程);化学強化工程;検査工程などの工程を経て製造される。
【0004】
上述した検査工程においては、光学的又は機械的に品質を測定する方法が採用されている。光学的測定には光学式/干渉系測定機と呼ばれる機器が用いられており、機械的測定には触針式測定機と呼ばれる機器が用いられている。これらの機器を用いて基板表面の粗さや端部形状などが測定される。
【0005】
これまで磁気ディスク用基板においては、表面と裏面の両面に対して加工を行い、両面で同品質な製品を製造してきているが、記録密度の増加とともに、コスト削減の点から、片面加工品の需要が高まり、加工技術として確立し始めている(特許文献1参照)。片面のみ記録面として使用することで、記録面として使用しない面に対する磁気記録層の形成を省くことができ、コスト削減が可能となる。
【0006】
磁気ディスク用基板の品質の測定においては、全てのサンプル品を両面加工品として考え、磁気ディスク用基板固定用治具(以下、”治具”と呼ぶ)に関してもサンプル品の測定面と反対側の加工面で平行/平坦をとり、該加工面を使用して測定面の品質の測定を行っている。図2は触針式測定機100を使用した磁気ディスク用基板の品質測定を模式的に示した図である。また、図3は光学式/干渉系測定機101を使用した磁気ディスク用基板の品質測定を模式的に示した図である。両面加工品の磁気ディスク用基板10は両面共研磨されているので、裏面10bを基準に測定することで表面10aの品質を把握することができる。
【0007】
触針式測定機100や光学式/干渉系測定機101を使用して磁気ディスク用基板10の品質を測定する際、磁気ディスク用基板10が治具により固定される。治具による磁気ディスク用基板10の固定においては、測定する面となる表面10aの反対側の面となる裏面10bを使用して測定面の面出しが行われる。図4は、両面加工品の磁気ディスク用基板10を治具20により固定する様子を示す図である。この場合、図4の(a)は磁気ディスク用基板10を治具20に置いた状態(チャック前)を示し、図4の(b)は磁気ディスク用基板10を治具20により固定した状態(チャック後)を示す。
【0008】
治具20は、磁気ディスク用基板10の穴部を通して磁気ディスク用基板10を支持する支持部材21と、磁気ディスク用基板10を支持部材21に固定するためのリング形状の固定部材22とからなる。支持部材21は、断面凸状に形成された円柱形状を成しており、磁気ディスク用基板10の内周端部と接触する部分21aが軸方向の所定範囲内で可動自在になっている。この可動部分21aは、常時、軸方向外側へ突出する向きに付勢されていて可動範囲内の上限で停止状態となる。この状態で、固定部材22を介して軸方向内側へ押し込むことによって、可動範囲内の下限手前で係止されて停止状態となる(所謂ロックがかかる)。この状態にすることで、磁気ディスク用基板10が治具20に強固に固定される。すなわち、磁気ディスク用基板10を治具20の支持部材21に置いた後、治具20の固定部材22を支持部材21の軸方向内側へ押し込むことで、磁気ディスク用基板10を治具20に固定できる。磁気ディスク用基板10の穴部の両方の開口部分にはテーパが形成されており、このテーパが形成された部分に固定部材21を密着させることができるように固定部材21の一方の端部分にもテーパが形成されている。
【0009】
一方、磁気ディスク用基板10を治具20から取り外すときは、治具20の可動部分21aをその可動範囲内の下限まで押し込んで係止状態を解除する。この係止状態を外すことで可動部分21aの規制が解除され、可動部分21aは可動範囲内の上限まで移動する。この状態になった後、固定部材22を外すことで、磁気ディスク用基板10を治具20から取り外すことができる。
【0010】
治具20の支持部材20の磁気ディスク用基板10の表面10aと接触する部分21bは、磁気ディスク用基板10を高精度で面出しすることができるように磁気ディスク用基板10の研磨と同程度で研磨されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2001−351229号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、上述した従来の治具は、両面加工品の磁気ディスク用基板については、裏面を使用して表面(測定面)の面出しを行うことはできるが、片面加工品の磁気ディスク用基板については、裏面を使用して表面の面出しを行うことはできない。すなわち、図5に示すように、片面加工品の磁気ディスク用基板30では、裏面30bが非加工面であるため、この裏面30bを使用して表面(加工面)30aの面出しを行うことはできない。このため、表面30aに対して直接測定を行うことになり、図2や図3に示す場合と逆に表面30aを上に向けることになる。即ち触針式測定機100側又は光学式/干渉系測定機101側に向けることになる。しかし、表面30aを上に向けることで、非加工面の裏面30bが治具20の支持部材20の部分21bと接することで面ぶれが生ずる。この面ぶれにより、磁気ディスク用基板30の平行をとることができなくなり、高精度の測定が不可能になる。なお、図5の(a)は磁気ディスク用基板30を治具20に置いた状態(チャック前)を示し、図5の(b)は磁気ディスク用基板30を治具20により固定した状態(チャック後)を示す。このように、片面加工品の磁気ディスク用基板については、裏面(非加工面)を使用して表面の面出しを行うことはできない。
【0013】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、片面で面出しが不可能な片面加工品の磁気ディスク用基板においても従来の触針式測定機や光学式/干渉系測定機を使用した品質の測定を行うことができる磁気ディスク用基板固定用治具及び磁気ディスク用基板の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の磁気ディスク用基板固定用治具は、片方の面のみ加工された磁気ディスク用基板を検査する際に用いられる磁気ディスク用基板固定用治具であって、前記磁気ディスク用基板固定用治具は、前記磁気ディスク用基板の加工面と接する面が前記加工面と同程度に研磨加工された支持部材と、前記磁気ディスク用基板の非加工面側で、前記磁気ディスク用基板の穴部のテーパ状に形成された開口部と接するテーパ面が前記磁気ディスク用基板の前記穴部と同程度に研磨加工された固定部材とを具備することを特徴とする。
【0015】
この構成によれば、支持部材の面と固定部材のテーパ面とで磁気ディスク用基板を固定するので、面ぶれが生じることなく磁気ディスク用基板を固定することができ、片面で面出しが不可能な片面加工品の磁気ディスク用基板においても従来の触針式測定機や光学式/干渉系測定機を使用した品質の測定を行うことが可能となる。
【0016】
本発明の磁気ディスク用基板の製造方法は、片方の面のみ加工された磁気ディスク用基板を検査する検査工程を含む磁気ディスク用基板の製造方法であって、前記検査工程において、前記磁気ディスク用基板の加工面の品質測定に触針式測定機及び光学式/干渉系測定機のいずれか一方を使用して行い、該品質測定の際に、前記磁気ディスク用基板の加工面と接する面が前記加工面と同程度に研磨加工された支持部材と、前記磁気ディスク用基板の非加工面側で、前記磁気ディスク用基板の穴部のテーパ状に形成された開口部と接するテーパ面が前記磁気ディスク用基板の前記穴部と同程度に研磨加工された固定部材とを具備する磁気ディスク用基板固定用治具を用いて、前記磁気ディスク用基板を、その加工面を前記測定機に向けて固定し、この状態で前記磁気ディスク用基板の前記加工面の品質を、前記加工面を基準として、前記測定機を使用して測定することを特徴とする。
【0017】
この方法によれば、片面加工された磁気ディスク用基板を検査する検査工程において、磁気ディスク用基板の加工面(表面)の品質を、該加工面を基準として、触針式測定機及び光学式/干渉系測定機のいずれか一方を使用して測定を行い、磁気ディスク用基板の固定においては、支持部材の面と固定部材のテーパ面とで磁気ディスク用基板を固定するので、片面で面出しが不可能な片面加工品の磁気ディスク用基板においても従来の触針式測定機や光学式/干渉系測定機を使用した品質の測定を行うことができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明の磁気ディスク用基板固定用治具は、支持部材の面と固定部材のテーパ面とで磁気ディスク用基板を固定するので、面ぶれが生じることなく磁気ディスク用基板を固定することができ、片面で面出しが不可能な片面加工品の磁気ディスク用基板においても従来の触針式測定機や光学式/干渉系測定機を使用した品質の測定を行うことが可能となる。
【0019】
磁気ディスク用基板の製造方法は、片面加工された磁気ディスク用基板を検査する検査工程において、磁気ディスク用基板の加工面(表面)の品質を、該加工面を基準として、触針式測定機及び光学式/干渉系測定機のいずれか一方を使用して測定を行い、磁気ディスク用基板の固定においては、支持部材の面と固定部材のテーパ面とで磁気ディスク用基板を固定するので、片面で面出しが不可能な片面加工品の磁気ディスク用基板においても従来の触針式測定機や光学式/干渉系測定機を使用した品質の測定を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施の形態に係る磁気ディスク用基板固定用治具にて、片面加工品の磁気ディスク用基板を固定する様子を示す図である。
【図2】触針式測定機を用いた磁気ディスク用基板の品質測定を模式的に示した図である。
【図3】光学式/干渉系測定機を用いた磁気ディスク用基板の品質測定を模式的に示した図である。
【図4】両面加工品の磁気ディスク用基板を従来の磁気ディスク用基板固定用治具にて固定する様子を示す図である。
【図5】片面加工品の磁気ディスク用基板を従来の磁気ディスク用基板固定用治具にて固定する様子を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態について添付図面を参照して詳細に説明する。
ここで、磁気ディスク用基板の材料としては、アルミノシリケートガラス、ソーダライムガラス、ボロシリケートガラスなどを用いることができる。特に、化学強化を施すことができ、また主表面の平坦性及び基板強度において優れた磁気ディスク用基板を提供することができるという点で、アルミノシリケートガラスを好ましく用いることができる。
【0022】
磁気ディスクの製造工程は、素材加工工程及び第1ラッピング工程;端部形状工程(穴部を形成するコアリング工程、端部(外周端部及び/又は内周端部)に面取り面を形成するチャンファリング工程(面取り面形成工程));端面研磨工程(外周端部及び内周端部);第2ラッピング工程;主表面研磨工程(第1及び第2研磨工程);化学強化工程;検査工程などの工程を含む。
【0023】
以下に、磁気ディスクの製造工程の各工程について説明する。
(1)素材加工工程及び第1ラッピング工程
まず、素材加工工程においては、例えば溶融ガラスを材料として、プレス法やフロート法、ダウンドロー法、リドロー法、フュージョン法など、公知の製造方法を用いて製造することができる。これらの方法うち、プレス法を用いれば、板状ガラスを廉価に製造することができる。
【0024】
第1ラッピング工程においては、板状ガラスをラッピング加工し、ディスク状のガラス基材とする。このラッピング加工は、遊星歯車機構を利用した両面ラッピング装置により、アルミナ系遊離砥粒を用いて行うことができる。具体的には、板状ガラスの両面に上下からラップ定盤を押圧させ、遊離砥粒を含む研削液を板状ガラスの主表面上に供給し、これらを相対的に移動させてラッピング加工を行う。このラッピング加工により、平坦な主表面を有するガラス基板を得ることができる。
【0025】
(2)端部形状工程(穴部を形成するコアリング工程、端部(外周端部及び内周端部)に面取り面を形成するチャンファリング工程(面取り面形成工程))
コアリング工程においては、例えば、円筒状のダイヤモンドドリルを用いて、このガラス基板の中心部に内孔を形成し、円環状のガラス基板とする。チャンファリング工程においては、内周端面及び外周端面をダイヤモンド砥石によって研削し、所定の面取り加工を施す。
【0026】
(3)第2ラッピング工程
第2ラッピング工程においては、得られたガラス基板について、第1ラッピング工程と同様に、第2ラッピング加工を行う。この第2ラッピング工程を行うことにより、前工程である切り出し工程や端面研磨工程において主表面に形成された微細な凹凸形状を予め除去しておくことができ、後続の主表面に対する研磨工程を短時間で完了させることができるようになる。
【0027】
(4)端面研磨工程
端面研磨工程においては、ガラス基板の外周端面及び内周端面について、ブラシ研磨方法により、鏡面研磨を行う。このとき、研磨砥粒としては、例えば、酸化セリウム砥粒を含むスラリー(遊離砥粒)を用いることができる。この端面研磨工程により、ガラス基板の端面は、ナトリウムやカリウムの析出の発生を防止できる鏡面状態になる。
【0028】
(5)主表面研磨工程(第1研磨工程)
主表面研磨工程として、まず第1研磨工程を施す。第1研磨工程は、前述のラッピング工程で主表面に残留したキズや歪みの除去を主たる目的とする工程である。この第1研磨工程においては、遊星歯車機構を有する研磨装置により、硬質樹脂ポリッシャを用いて、主表面の研磨を行う。研磨剤としては、酸化セリウム砥粒を用いることができる。ここでは、記録層を形成する主表面のみに対して研磨加工を行う。
【0029】
(6)化学強化工程
化学強化工程においては、前述のラッピング工程及び研磨工程を終えたガラス基板に化学強化を施す。化学強化に用いる化学強化液としては、例えば、硝酸カリウム(60%)と硝酸ナトリウム(40%)の混合溶液などを用いることができる。化学強化においては、化学強化液を300℃〜400℃に加熱し、洗浄済みのガラス基板を200℃〜300℃に予熱し、化学強化溶液中に3時間〜4時間浸漬することによって行う。この浸漬の際には、ガラス基板の両表面全体が化学強化されるようにするため、複数のガラス基板が端面で保持されるように、ホルダに収納した状態で行うことが好ましい。
【0030】
このように、化学強化溶液に浸漬処理することによって、ガラス基板の表層のリチウムイオン及びナトリウムイオンが、化学強化溶液中の相対的にイオン半径の大きなナトリウムイオン及びカリウムイオンにそれぞれ置換され、ガラス基板が強化される。
【0031】
(7)主表面研磨工程(最終研磨工程)
次に、最終研磨工程として、第2研磨工程を施す。第2研磨工程は、主表面を鏡面状に仕上げることを目的とする工程である。第2研磨工程においては、遊星歯車機構を有する研磨装置により、軟質発泡樹脂ポリッシャを用いて、主表面の鏡面研磨を行う。スラリーとしては、第1研磨工程で用いた酸化セリウム砥粒よりも微細な酸化セリウム砥粒やコロイダルシリカなどを用いることがきる。ここでも、記録層を形成する主表面のみに対して研磨加工を行う。
【0032】
(8)検査工程
検査工程においては、片面のみ研磨された片面加工品の磁気ディスク用基板を触針式計測機及び光学式/干渉系測定機のいずれか一方の機器を用いて加工面(表面)の品質を測定する。この測定においては、これまで使用していた測定面(即ち加工面)と反対面を使用して測定面の面出しを行うのではなく、直接測定面において面出しを行う。測定の際に用いられる治具としては、図4に示す従来の治具20では面ぶれが生じるので、本発明では図1に示す治具1を用いた。治具1は、片面加工品の磁気ディスク用基板30の表面30aと接する面2aが該磁気ディスク用基板30の加工面と同程度に研磨加工された支持部材2と、磁気ディスク用基板30を支持部材2に固定するための固定部材3とからなる。なお、図1の(a)は磁気ディスク用基板30を治具1に置いた状態(チャック前)を示し、図1の(b)は磁気ディスク用基板30を治具1により固定した状態(チャック後)を示す。
【0033】
支持部材2は、断面略H字状に形成されるとともに、固定部材3を取り付ける部分の径が他の部分の径より小さく形成されている。また、支持部材2の両端部分の形状はそれぞれ円盤状となっており、また両端部分を繋ぐ部分の形状は円柱形状となっている。支持部材2は、その下端部分を図1の(a)に示すように矢印A方向即ち軸方向に押すことで全体が縮まり、また矢印Aと反対方向に引くことで全体が延びる伸縮構造(図示略)を有している。この伸縮構造では、止めた位置でロックがかかり、ロックを解除できる力で押すことで、所定の可動範囲内でさらに縮めることができ、またロックを解除できる力で引くことで、所定に範囲内でさらに延ばすことができる。図1の(a)に示すように、治具1に磁気ディスク用基板30を置いた状態で支持部材2は、その下端を矢印A方向に押すことで図1の(b)に示すように磁気ディスク用基板30を治具1に固定することができる。
【0034】
固定部材3は、リング状に形成されており、その上端部分が磁気ディスク用基板30の穴部のテーパ状に形成された開口部と密着するようにテーパ状に形成されている。また、固定部材3のテーパ状に形成された上端部分のテーパ面3aは鏡面状態に仕上げられている。図1に示すように、磁気ディスク用基板30の裏面30bは固定部材3の上端部分のテーパ面3aとのみ接するので、磁気ディスク用基板30の裏面30bが非加工面であっても面ぶれすることなく固定することができる。特に、磁気ディスク用基板30の穴部の内周端面は、端面研磨工程で鏡面状態に仕上げられているので、固定部材3の上端部分のテーパ面3aと寸分の隙間も無く密着する。
【0035】
図1は触針式測定機100を用いた場合であり、触針100aを下向きにして設置し、接触圧を下向きにかけて磁気ディスク用基板30の加工面である表面30aの品質を測定する。このように、片面加工された磁気ディスク用基板30の表面(加工面)30aを基準にして、表面30aの粗さや端部形状などの品質の測定を行う。この測定においては、従来の触針式測定機100や光学式/干渉系測定機101をそのまま使用することができる。
【0036】
なお、検査工程では、磁気ディスク用基板30の加工面の品質を測定する以外に、光学式自動外観検査(AOI;Automated Optical Inspection)による外観検査装置(図示略)を用いた磁気ディスク用基板30の欠陥検出を行うのが望ましい。
【0037】
このように、本発明によれば、片面加工品の磁気ディスク用基板30を検査する検査工程において、触針式測定機100及び光学式/干渉系測定機101のいずれか一方を使用し、磁気ディスク用基板30の加工面である表面30aが測定機側に向くように磁気ディスク用基板30を治具1で固定し、その後、磁気ディスク用基板30の加工面(表面30a)の品質を、該加工面を基準として触針式測定機100又は光学式/干渉系測定機101で測定する。治具1は、磁気ディスク用基板30の表面30aと接する面2aが磁気ディスク用基板30の表面30aと同程度に研磨加工された支持部材2と、磁気ディスク用基板30の裏面30b側で、磁気ディスク用基板30の穴部のテーパ状に形成された開口部と接するテーパ面3aが磁気ディスク用基板30の穴部の内周端面と同程度に研磨加工された固定部材3とからなり、支持部材2の面2aと固定部材3のテーパ面3aで磁気ディスク用基板30に接するので、面ぶれが生じることなく片面加工品の磁気ディスク用基板30を固定することができる。
【0038】
次に、本発明の効果を明確にするために行った実施例について説明する。
(実施例)
まず、溶融させたアルミノシリケートガラスを上型、下型、胴型を用いたダイレクトプレスによりディスク形状に成型し、アモルファスの板状ガラス素材(ブランクス)を得た。この時点でブランクスの直径は66mmである。次に、このブランクスの両主表面を第1ラッピング加工して後、円筒状のコアドリルを用いて、このガラス基板の中心部に穴部を形成し円環状のガラス基板に加工(コアリング)を実施、そして端部(外周端部及び内周端部)に面取り面を形成するチャンファリング工程(面取り面形成工程))を施し、その後第2ラッピング加工を行った。
【0039】
次いで、ガラス基板の外周端部について、ブラシ研磨方法により、鏡面研磨を行った。このとき、研磨砥粒としては、酸化セリウム砥粒を含むスラリー(遊離砥粒)を用いた。
【0040】
そして、鏡面研磨工程を終えたガラス基板を水洗浄した。これにより、ガラス基板の直径は65mmとなり、2.5インチ型磁気ディスクに用いる基板とすることができた。
【0041】
次いで、主表面研磨工程として、ガラス基板に対して第1研磨工程を施した。この研磨装置における研磨パッドとしては、軟質スウェードパッドを用いた。また、研磨剤としては、セリウム研磨剤を用いた。また、研磨条件としては、加工面圧を130g/cmとし、加工回転数を22rpmとした。これにより、ガラス基板の算術平均粗さRaは約1.5nmとなった。
【0042】
次いで、第2研磨処理を施した。この研磨装置における研磨パッドとしては、軟質スウェードパッド(アスカーC硬度:54、圧縮変形量:476μm以上、密度:0.53g/cm以下)を用いた。また、研磨剤としては、平均粒径100nmのセリウム研磨剤を用いた。また、研磨条件としては、加工面圧を60g/cmとし、加工回転数を20rpmとした。ガラス基板の記録面として使用する主表面の算術平均粗さRaは約0.30nmとなった。
【0043】
この第2研磨工程を終えたガラス基板を、KOH溶液に浸漬して、超音波を印加して120秒洗浄し、アルカリ洗浄液を用いてスクラブ洗浄を4秒行い、極微量に希釈した希硫酸及び前記アルカリ洗浄液で洗浄を行った後に、IPA(イソプロピルアルコール)の蒸気乾燥を行った。
【0044】
次いで、上述した第2研磨工程を終えたガラス基板に、化学強化を施した。化学強化は、硝酸カリウム(60%)と硝酸ナトリウム(40%)を混合した化学強化溶液を用意し、この化学強化溶液を380°Cに加熱し、その中に洗浄済みのガラス基板を約4時間浸漬することによって行った。そして、この化学強化を終えたガラス基板に対して、酸洗浄、アルカリ洗浄、及び純水洗浄を順次行った。このようにして磁気ディスク用ガラス基板を作製した。
【0045】
次いで、ガラス基板の加工面である主表面について、品質を検査する検査工程を施した。検査工程においては、ガラス基板を図1に示すような治具1に固定した後、図2に示す触針式測定機100又は図3に示す光学式/干渉系測定機101のいずれか一方の機器を用いて主表面の品質を測定した。図2に示す触針式測定機100の場合は、触針100aを下向きにして設置し、接触圧を下向きにかけてガラス基板の主表面の品質を測定した。図3に示す光学式/干渉系測定機101の場合は、測定用レーザをファイバ110にてガラス基板の上部より照射してガラス基板の主表面の品質を測定した。このように、片面加工されたガラス基板の主表面を基準にして、該主表面の粗さや端部形状などの品質の測定を行った。
【0046】
このように本発明の方法によれば、ガラス基板の加工面(表面)の品質を、該加工面を基準として、触針式測定機100及び光学式/干渉系測定機101のいずれか一方を使用して測定を行い、治具1を使用したガラス基板の固定においては、治具1の支持部材2の面2aと固定部材3のテーパ面3aとでガラス基板を固定するので、片面で面出しが不可能な片面加工品のガラス基板においても従来の触針式測定機100や光学式/干渉系測定機101を使用した品質の測定を行うことができる。
【0047】
本発明は上記実施の形態に限定されず、適宜変更して実施することができる。また、上記実施の形態における材質、個数、サイズ、処理手順などは一例であり、本発明の効果を発揮する範囲内において種々変更して実施することが可能である。その他、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施することが可能である。
【符号の説明】
【0048】
1 磁気ディスク用基板固定用治具
2 支持部材
2a 面
3 固定部材
3a テーパ面
30 片面加工品の磁気ディスク用基板
30a 片面加工品の磁気ディスク用基板の表面
30b 片面加工品の磁気ディスク用基板の裏面
100 触針式測定機
101 光学式/干渉系測定機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
片方の面のみ加工された磁気ディスク用基板を検査する際に用いられる磁気ディスク用基板固定用治具であって、前記磁気ディスク用基板固定用治具は、前記磁気ディスク用基板の加工面と接する面が前記加工面と同程度に研磨加工された支持部材と、前記磁気ディスク用基板の非加工面側で、前記磁気ディスク用基板の穴部のテーパ状に形成された開口部と接するテーパ面が前記磁気ディスク用基板の前記穴部と同程度に研磨加工された固定部材とを具備することを特徴とする磁気ディスク用基板固定用治具。
【請求項2】
片方の面のみ加工された磁気ディスク用基板を検査する検査工程を含む磁気ディスク用基板の製造方法であって、前記検査工程において、前記磁気ディスク用基板の加工面の品質測定に触針式測定機及び光学式/干渉系測定機のいずれか一方を使用して行い、該品質測定の際に、前記磁気ディスク用基板の加工面と接する面が前記加工面と同程度に研磨加工された支持部材と、前記磁気ディスク用基板の非加工面側で、前記磁気ディスク用基板の穴部のテーパ状に形成された開口部と接するテーパ面が前記磁気ディスク用基板の前記穴部と同程度に研磨加工された固定部材とを具備する磁気ディスク用基板固定用治具を用いて、前記磁気ディスク用基板を、その加工面を前記測定機に向けて固定し、この状態で前記磁気ディスク用基板の前記加工面の品質を、前記加工面を基準として、前記測定機を使用して測定することを特徴とする磁気ディスク用基板の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−28816(P2011−28816A)
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−175003(P2009−175003)
【出願日】平成21年7月28日(2009.7.28)
【出願人】(000113263)HOYA株式会社 (3,820)
【Fターム(参考)】