説明

磁気ディスク装置、信号処理回路及び信号処理方法

【課題】 隣り合うトラック間でのビット位置のずれを最小化する磁気ディスク装置、信号処理回路及び信号処理方法を提供すること。
【解決手段】 実施形態によれば、サーボアドレスマークを含むサーボ領域と、データセクタを含むユーザデータ領域とが形成された磁気ディスクから読み出した信号を処理する信号処理回路はカウンタ手段とゲート制御手段とを具備する。カウンタ手段は前記磁気ディスクから読み出した信号に基づいてサーボアドレスマークを検出すると、第1のクロックをカウントする。ゲート制御手段は前記カウンタ手段が第1の所定値をカウントすると、第2のクロックに同期して前記データセクタの位置決め用パルスを発生する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は磁気ディスク装置、その信号処理回路及び信号処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ハードディスク装置等の磁気ディスク装置において、従来よりもさらなる大容量化が切望されている。一つの解決方法として、瓦記録方式が注目されている。この方式では、ライト時にトラック間隔を詰めて隣接トラックの一部を上書きしながら記録していく。トラック間隔を詰めた結果、トラック間隔が一定以上狭くなると、リード時の隣接トラックからの磁界の漏れ(トラック間干渉)が大きくなりすぎて、再生信号の品質が著しく落ちてしまう。このトラック間干渉を軽減するため、隣接するトラックの信号情報を現行トラックの再生時のノイズキャンセル情報として利用する再生技術が提案されている(例えば、藤井正明「瓦記録用繰り返しトラック間干渉キャンセラ」2010年電子情報通信学会エレックトロニクスソサイエティ大会発表)。
【0003】
この技術では、隣接トラック情報から得たトラック間干渉をキャンセルするための情報を現行トラックの情報から減算する必要がある。適切に減算するためには、隣接トラックと現行トラックのビット位置を合わせてから減算する必要がある。
【0004】
しかし、瓦記録方式以前の磁気ディスク装置においては、隣り合うトラック間でのビット位置には大きなずれが発生しており、先行トラックと現行トラックのビット位置の位置あわせが困難であった。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】藤井正明等、「瓦記録用繰り返しトラック間干渉キャンセラ」、2010年電子情報通信学会エレクトロニクスソサエティ大会エレクトロニクス講演論文集2、2010年9月14日〜17日、p.21
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の磁気ディスク装置は隣り合うトラック間でのビット位置にずれが発生しているという課題があった。
【0007】
本発明の目的は隣り合うトラック間でのビット位置のずれを最小化する磁気ディスク装置、信号処理回路及び信号処理方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
実施形態によれば、サーボアドレスマークを含むサーボ領域と、データセクタを含むユーザデータ領域とが形成された磁気ディスクから読み出した信号を処理する信号処理回路はカウンタ手段とゲート制御手段とを具備する。カウンタ手段は前記磁気ディスクから読み出した信号に基づいてサーボアドレスマークを検出すると、第1のクロックをカウントする。ゲート制御手段は前記カウンタ手段が第1の所定値をカウントすると、第2のクロックに同期して前記データセクタの位置決め用パルスを発生する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】実施形態の磁気ディスク装置の構成の一例を示す回路図である。
【図2】同実施形態で適用されるサーボトラックのフォーマットと、当該サーボトラック上の各サーボ領域に書き込まれているサーボデータのフォーマットを示す図である。
【図3】図1のリード・ライトブロック32の主要部の構成を示す回路部である。
【図4】図3のシンクロナイザ56、58の構成の一例を示す回路部である。
【図5】図1のリード・ライトブロック32の主要部の動作の一例を示すタイミングチャートである。
【図6】図3のシンクロナイザ56、58の構成の他の例を示す回路部である。
【図7】図6のシンクロナイザを用いた場合の図1のリード・ライトブロック32の主要部の動作の一例を示すタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、実施の形態について図面を参照して説明する。
【0011】
図1は一実施形態としてのハードディスクドライブ(HDD)2の回路構成を示す。ハードディスクドライブ2は、ホストシステムとしてのホストコントローラ6からの要求に応じて記録媒体(磁気ディスク)12の記録面上にデータ(誤り訂正符号化データを含む)を書込み、或いは当該記録面からデータを読み出すための記録装置である。
【0012】
ディスク12の各記録面には、複数のサーボ領域110がディスク12の半径方向に放射状に、且つディスク12の円周方向に等間隔で離散的に配置されている。ディスク12の記録面上の隣接するサーボ領域110の間は、ユーザデータ領域111に割り当てられている。ディスク12の各記録面には、同心円状の複数のサーボトラック112が配置されている。各サーボ領域110には、サーボトラック112毎に、サーボデータが予め書き込まれて(埋め込まれて)いる。図1では、作図の都合で、サーボ領域110の個数Nが12の場合が示されている。しかし、2.5インチHDDの場合を例にとると、Nは300程度である。
【0013】
図2は、サーボトラック112のフォーマットと当該サーボトラック112上の各サーボ領域110に書き込まれているサーボデータのフォーマットとを示す。
【0014】
サーボトラック112のサーボ領域110と当該サーボ領域110に後続するユーザデータ領域111とは、サーボセクタを構成する。ユーザデータ領域111にはデータセクタが複数個配置される。
【0015】
サーボ領域110に書き込まれているサーボデータは、プリアンブル201と、サーボアドレスマーク(SAM)202と、アドレスコード203と、バーストデータ204とを含む。
【0016】
プリアンブル201は一定の周波数の信号を含む。プリアンブル201は、サーボデータ再生用のクロック(サーボクロック)をディスク12の回転速度変動等により生ずる時間ズレに対して同期させるPLL(位相ロックループ)処理及び信号の振幅を安定化するためのAGC(自動利得制御)処理に用いられる。サーボアドレスマーク(SAM)202は、対応するサーボデータ(サーボ領域110)を識別するための特定のコード(ビットパターン信号)である。
【0017】
アドレスコード203は、シリンダアドレス(シリンダ番号)とセクタアドレス(セクタ番号)とを含む。シリンダアドレスは、対応するサーボデータが書き込まれているディスク12上のシリンダ(トラック)位置を示す。セクタアドレスは、同一シリンダ(トラック)上でのサーボ領域110の配列における、対応するサーボデータが書き込まれているサーボ領域110の順番を示す。バーストデータ204は、対応するサーボデータが書き込まれているシリンダにおけるヘッドの相対的な位置情報を示すバースト信号である。アドレスコード203(中のシリンダコード)及びバーストデータ204は、ヘッド16をディスク12上の目標位置に位置付ける制御に用いられる位置情報である。
【0018】
再び図1を参照すると、ディスク12はスピンドルモータ(SPM)14に固定されており、スピンドルモータ14が駆動されることにより一定の速度で回転する。ディスク12の例えば一方のディスク面は、データが磁気記録される記録面をなしている。ヘッド(磁気ヘッド)16はディスク12の記録面に対応して配置される。ヘッド16はアクチュエータ18の一端に固定されている。アクチュエータ18の他端はボイスコイルモータ(VCM)20に固定されている。ヘッド16は、ボイスコイルモータ20が駆動されることにより、ボイスコイルモータ20の軸を中心とした円弧軌道のうちディスク12の面に重なる範囲を移動する。
【0019】
図1の構成では、単一枚のディスク12を備えたハードディスクドライブ2を想定している。しかし、複数のディスク12がある間隙をもった状態でスピンドルモータ14に固定された構成であっても構わない。この場合、複数のアクチュエータ18が、複数のディスク12の間隙に適合するように重なった状態でボイスコイルモータ20に固定される。複数のアクチュエータ18の一端にはそれぞれヘッド16が固定されている。したがってスピンドルモータ14が駆動されると、全てのディスク12は同時に回転し、ボイスコイルモータ20が駆動されると、全てのヘッド16は同時に移動する。また、図1の構成では、ディスク12の一方の面が記録面をなしている。しかし、ディスク12の両面がいずれも記録面をなし、両記録面にそれぞれ対応してヘッド16が配置されても構わない。
【0020】
CPU22はハードディスクドライブ2の主コントローラとして機能する。CPU22はモータドライバ24を介してスピンドルモータ14の起動・停止及び回転速度維持のための制御を行う。CPU22はまたモータドライバ24を介してボイスコイルモータ20を駆動制御することで、ヘッド16を目標とするトラックに移動させて、当該トラックの目標とする範囲内に整定するための制御を行う。
【0021】
ヘッド16の位置決めはスピンドルモータ14の起動後の定常回転状態で行われる。図2を参照して説明したように、ディスク12の円周方向に等間隔にサーボ領域110が配置されている。このため、ヘッド16によってディスク12から読み出され、ヘッドIC26で増幅されたアナログ信号中には、サーボ領域に記録されているサーボ信号が時間的に等間隔に現れることになる。リード・ライトIC28に含まれているサーボブロック30は、この状態を利用して上記アナログ信号を処理することにより、ヘッド16の位置決めのための信号を生成する。CPU22はこの信号をもとにモータドライバ24を制御することにより、当該モータドライバ24からボイスコイルモータ20に、ヘッド16の位置決めのための電流(VCM電流)をリアルタイムで供給させる。
【0022】
CPU22は、上述のようにモータドライバ24を介してスピンドルモータ14及びボイスコイルモータ20を制御する一方で、ハードディスクドライブ2内の他の要素の制御及びコマンド処理などを行う。CPU22はファームウェアを記録するROMを含む。CPU22はCPUバス36に接続されている。
【0023】
CPUバス36には、モータドライバ24、ヘッドIC26、リード・ライトIC28、ディスクコントローラ(HDC)38、RAM40が接続されている。RAM40は、例えばCPU22が使用する種々の変数を格納するのに用いられる。RAM40の記憶領域の一部は、CPU22のワーク領域として用いられる。
【0024】
リード・ライトIC28は、サーボブロック30とリード・ライトブロック32とを有する。サーボブロック30はヘッド16の位置決めに必要な信号処理(サーボ信号の抽出を含む)を行う。リード・ライトブロック32は、データの読み出し・書込みのための信号処理(誤り訂正符号化・復号化処理を含む)を行う。
【0025】
ハードディスクコントローラ38は、CPUバス36以外に、リード・ライトIC28に接続されている。ハードディスクコントローラ38はホストコントローラ6から転送されるコマンド(ライトコマンド、リードコマンド等)を受信し、且つホストとハードディスクコントローラ38との間のデータ転送を制御する、ホストインタフェース制御機能を有する。
【0026】
リード・ライトIC28及びハードディスクコントローラ38は、それぞれ制御用レジスタを有する。これらの制御用レジスタは、それぞれCPU22のメモリ空間の一部に割り当てられており、CPU22はこの一部の領域に対してアクセスすることで、制御用レジスタを介してリード・ライトIC28またはハードディスクコントローラ38を制御する。
【0027】
図3はリード・ライトブロック32内の再生信号の処理回路の主要部の構成を示す。ヘッド16によってディスク12から読み出され、ヘッドIC26で増幅されたアナログ信号がA/D変換され、図示しない波形等化回路、ビタビ復号器、復調器を介してビットパターンとされる。ビットパターンはサーボアドレスマーク(SAM)検出回路52に入力される。SAM検出回路52はサーボクロックに基づいて動作し、SAM検出回路52はサーボ領域110に書き込まれているサーボアドレスマークを検出すると、SAM検出パルスを出力する。このため、SAM検出パルスはサーボクロックに同期している。SAM検出パルスはカウンタ制御回路54に入力される。サーボクロックはサーボ情報を読み取るためのクロックであり、通常、内周・外周によらず一定の周波数に設定されている。
【0028】
カウンタ制御回路54にはサーボクロック、所定のカウント値A、Bも入力される。カウント値A、Bはファームウェアで設定される。後述するように、カウント値Aはリタイミングパルスの生成タイミングを示し、カウント値Bはサーボアドレスマークからの相対的な距離(位置)として制御するユーザデータ領域の開始位置を示す。カウンタ制御回路54はSAM検出パルスが入力されると、サーボクロックのカウントを開始する。カウント値が所定のカウント値A、Bと一致すると、A検出パルス、B検出パルスを出力する。A検出パルス、B検出パルスもサーボクロックに同期している。A検出パルス、B検出パルスはシンクロナイザ56、58に入力される。
【0029】
シンクロナイザ56、58にはサーボクロックとデータクロックも入力される。データクロックはディスク12上に記録されたユーザデータを読み取る(または書き込む)ためのクロックであり、データのビット転送レートと一致する周波数に設定される。そのため、データクロックは一定の周波数ではなく、通常、内周側で低く、外周側で高く設定される。これにより、サーボクロックとデータクロックとの間には同期関係が存在しない。シンクロナイザ56、58はサーボクロックに同期するA検出パルス、B検出パルスが入力されると、データクロックと同期するA同期パルス、B同期パルスを出力する。A同期パルス、B同期パルスはゲートクロック生成回路60に入力される。ゲートクロック生成回路60にはデータクロックも入力される。
【0030】
ゲートクロック生成回路60はデータクロックに同期したゲートクロックと、所定のタイミングのリタイミングパルスを出力する。この例では、データクロックを分周してゲートクロックを生成する。ゲートクロック生成回路60はSAM検出パルスの出力タイミング以降にゲートクロックの出力を一旦停止しておき、B同期パルスの出力タイミング直後にゲートクロックの出力を再開する。リタイミングパルスはゲートクロックの出力が一旦停止した後に1レベルとされ、ゲートクロックの出力が再開した後に0レベルとされる。ゲートクロックは、リードゲート(RG)/ライトゲート(WG)を制御するためのRG/WG制御回路62に供給される。
【0031】
RG/WG制御回路62はゲートクロック、リタイミングパルスに応じてリードゲート(RG)パルス、ライトゲート(WG)パルスを生成する。具体的には、リタイミングパルスが1レベルである時、ゲートクロックの立ち上がりでリードゲートあるいはライトゲートを開くためのRGパルスあるいはWGパルスを生成し、後段のライトゲートあるいはライトゲートに供給される。リードゲートあるいはライトゲートが開いている期間がリード期間あるいはライト期間である。
【0032】
図4はシンクロナイザ56、58の構成の一例を示す。入力パルス(カウンタ制御回路54から出力されるA検出パルス、B検出パルス)がEX−ORゲート60の第1入力端子に供給され、EX−ORゲート60の出力信号がDフリップフロップ62のD入力端子に入力される。サーボクロックがDフリップフロップ62のクロック入力端子に入力される。Dフリップフロップ62の出力(Q出力)がEX−ORゲート60の第2入力端子にフィードバックされるとともに、Dフリップフロップ64、66、68を直列に介してEX−ORゲート70の第1入力端子に供給される。データクロックがDフリップフロップ64、66、68のクロック端子に供給される。Dフリップフロップ66の出力がEX−ORゲート70の第2入力端子に入力される。EX−ORゲート70の出力パルスがシンクロナイザ56、58から出力される同期パルスとなる。
【0033】
このようにシンクロナイザ56、58はサーボクロックに同期している入力パルス(A、B検出パルス)を入力し、入力パルスをDフリップフロップ62、64、66、68を経由して遅延するとともに、データクロックに同期するようにタイミング調整する。そのため、シンクロナイザ56、58は、サーボクロック1周期分のA、B検出パルスをデータクロックに同期化し、データクロック1周期分の出力パルス(A、B同期パルス)を出力する。
【0034】
図5のタイミングチャートを参照して図3、図4に示したリード・ライトブロック32内の再生信号の処理回路の主要部の動作を説明する。この処理回路は隣り合うトラック間でのビット位置のずれを最小化させるために、ユーザデータ領域の開始位置をサーボアドレスマークからの相対的な位置(距離)として制御するものである。
【0035】
図5の(a)、(f)はそれぞれサーボクロック、データクロックを示す。上述したように、これらの2つのクロックは互いに別個のクロックであり、同期していない。図5では、サーボクロックの方がデータクロックよりも周波数が低いが、これに限定されず、サーボクロックの方がデータクロックよりも周波数が高くても構わない。
【0036】
ヘッドIC26から出力されたビットパターンがSAM検出回路52に入力される。サーボアドレスマークは他には含まれない所定のビットパターンからなるので、サーボゲートが開くと、SAM検出回路52は入力ビットパターンが所定のビットパターンと一致するか否かを判断する。入力ビットパターンが所定のビットパターンと一致することを検出すると、図5の(b)に示すようにSAM検出パルスを出力する。実施形態では、SAM検出回路52はサーボクロックと同期して動作しているので、パルス幅はサーボクロックの1周期である。しかし、SAM検出パルスはサーボクロックと非同期でも良いし、同期の場合でも、立ち上がりあるいは立下がりのみが同期し、パルス幅は1周期よりも長くても良い。
【0037】
カウンタ制御回路54はSAM検出パルスが入力されると、サーボクロックのカウントを開始する。この例では、SAM検出パルスはサーボクロックと同期しているので、図5の(b)に示すように、SAM検出パルスの立下がりタイミングからサーボクロックをカウントする。カウンタ制御回路54はカウント値が所定のカウント値A、Bと一致すると、それぞれ図5の(d)、(e)に示すA検出パルス、B検出パルスを出力する。図5の例では、A検出パルス、B検出パルスもサーボクロックと同期しており、パルス幅はサーボクロックの1周期分である。
【0038】
A検出パルスが入力されるシンクロナイザ56は、図5の(g)に示すように、A検出パルスの立ち上がりタイミングをデータクロックの立ち上がりに同期化して同期パルスを出力する。図5の例では同期パルスのパルス幅はデータクロック1周期となっているが、これに限定されない。同期パルスの立ち上がりがデータクロックの立ち上がりに同期していれば良く、パルス幅はデータクロックの数周期でもよい。同様に、B検出パルスが入力されるシンクロナイザ58は、図5の(h)に示すように、B検出パルスの立ち上がりタイミングをデータクロックの立ち上がりに同期化してデータクロック1周期分の同期パルスを出力する。
【0039】
ゲートクロック生成回路60は、後段のリードゲート、ライトゲートを制御するためのゲートクロックをデータクロックに同期して出力する。この例では、ゲートクロック生成回路60は図5の(f)に示すデータクロックを分周(1/2分周)して図5の(i)に示すゲートクロックを生成する。図示しないが、ゲートクロック生成回路60はリード動作/ライト動作開始時に先ずサーボゲートを開くために、動作開始するとゲートクロックを生成する。SAM検出パルスが発生されてからユーザデータ領域の開始位置に到達するまでは、ゲートクロックは不要となるので、所定のタイミングでゲートクロックの発生を停止する。ここでは、A同期パルス(図5の(g))の発生に応じて(立ち上がりタイミングに同期して)、図5の(i)に示すようにゲートクロック生成回路60はゲートクロックの発生を停止する(0レベルを維持する)。しかし、SAM検出パルスの発生後、所定数のクロック(トグル)を発生させてからゲートクロックの発生を停止してもよく、さらにはSAM検出パルスの発生(立下り)に応じてゲートクロックの発生を停止してもよい。ゲートクロックの発生を停止させるタイミングは、後述する理由により、カウンタ制御回路54のカウント値がBと一致してB検出パルスを生成する前であればよい。
【0040】
ゲートクロック生成回路60は、所定のタイミングでリタイミングパルスを出力する。リタイミングパルスとは、RG/WG制御回路62がリタイミングパルスが1レベルの時のゲートクロックの立ち上がりタイミングでリードゲートあるいはライトゲートを開くためのRGパルス、WGパルスを生成するためのものである。そのため、リタイミングパルスはB同期パルスの発生前に出力する(1レベルとする)必要がある。この例では、ゲートクロック生成回路60は、図5の(j)に示すようにゲートクロック(図5の(j))の発生停止に応じてリタイミングパルスを出力する。
【0041】
ゲートクロック生成回路60はB同期パルス(図5の(h))が発生すると(立ち下がりタイミングに同期して)、図5の(i)に示すようにゲートクロックの発生を再開する。ゲートクロックの発生が再開する時はリタイミングパルスは図5の(j)に示すように1レベルであるので、RG/WG制御回路62は再開したゲートクロックの立ち上がりタイミングで図5の(k)に示すようにRGパルスあるいはWGパルスを出力する。
【0042】
シンクロナイザ56、58は図4に示すものに限らず、種々の構成が利用可能である。例えば、図6はシンクロナイザ56、58の構成の他の例を示す。入力パルス(カウンタ制御回路54から出力されるA検出パルス、B検出パルス)がDフリップフロップ80のクロック入力端子に入力される。Dフリップフロップ80の出力(Q出力)がDフリップフロップ82、84、86を直列に介してANDゲート88の第1入力端子(反転入力端子)に供給される。データクロックがDフリップフロップ82、84、86のクロック端子に供給される。Dフリップフロップ84の出力がANDゲート88の第2入力端子に入力される。ANDゲート88の出力パルスがシンクロナイザ56、58から出力される同期パルスとなる。
【0043】
図6のシンクロナイザを用いた場合の図3、図4に示したリード・ライトブロック32内の再生信号の処理回路の主要部の動作を図7のタイミングチャートを参照して説明する。
【0044】
サーボクロックドメインの動作は図5の場合と同じである。そのため、図7の(a)、(b)、(c)、(d)、(e)は図5の(a)、(b)、(c)、(d)、(e)と同じである。図7の(f)に示すデータクロックも図5の(f)と同じである。
【0045】
A検出パルスが入力されるシンクロナイザ56は、図7の(g)に示すように、A検出パルスの立ち上がりタイミングをデータクロックの立ち上がりに同期化して同期パルスを出力する。同期パルスを出力するタイミングは図5の(g)に比べてデータクロックの1サイクル分早い。
【0046】
B検出パルスが入力されるシンクロナイザ58は、図7の(h)に示すように、B検出パルスの立ち上がりタイミングをデータクロックの立ち上がりに同期化して同期パルスを出力する。同期パルスを出力するタイミングは図5の(h)に比べてデータクロックの1サイクル分早い。
【0047】
ゲートクロック生成回路60は、A同期パルス(図7の(g))の発生後、図7の(i)に示すようにゲートクロックの発生を停止する(立ち下がり後、0レベルを維持する)。図5の場合と同様にゲートクロックの発生を停止させるタイミングは、カウンタ制御回路54のカウント値がBと一致してB検出パルスを生成する前であればよい。
【0048】
ゲートクロック生成回路60は図7の(j)に示すようにゲートクロック(図7の(j))の発生停止に応じてリタイミングパルスを出力する。
【0049】
ゲートクロック生成回路60はB同期パルス(図7の(h))が発生すると(立ち下がりタイミングに同期して)、図7の(i)に示すようにゲートクロックの発生を再開する。ゲートクロックの発生が再開する時はリタイミングパルスは図7の(j)に示すように1レベルであるので、RG/WG制御回路62は再開したゲートクロックの立ち上がりタイミングで図7の(k)に示すようにRGパルスあるいはWGパルスを出力する。
【0050】
以上説明したように、この実施形態によれば、ライト時には、サーボクロックに同期するカウンタ制御回路54がサーボアドレスマークをサーチし、サーボアドレスマークを検出すると、カウント開始する。カウント値が第1の所定値Aになると、サーボクロックドメインのパルスを生成し、このパルスをデータクロックに同期化し、データクロックドメインのパルスとする。このパルスの発生後、ゲートクロックのトグルを停止する(0レベルに保持する)。とともに、リタイミングパルスを1レベルにする。
【0051】
カウント値が第2の所定値Bになると、サーボクロックドメインのパルスを生成し、このパルスをデータクロックに同期化し、データクロックドメインのパルスとする。このデータクロックドメインのパルスを受けて、ゲートクロックのトグルを再開する(立ち上がりエッジを作る)。
【0052】
リタイミングパルスが1レベルであるので、このゲートクロックの立ち上がりに同期してWGパルスを立ち上げ、ユーザデータの書込み開始の基準位置とする。この基準位置からゲートクロックに同期したカウンタ(図示せず)でシンクマーク書込み位置を決定し、シンクマーク書込みの後、ユーザデータパターンを記録する。
【0053】
このように制御することで、ユーザデータパターンの書込み先頭位置は、サーボアドレスマークを起点として、「サーボクロックドメインでのカウント値A」+「データクロックドメインでのシンクマーク書込み位置」+「シンクロナイザによる同期化の際の不確からしさ(=データクロックの1周期)」となる。
【0054】
すなわち、ユーザデータパターンの書込み先頭位置の制御誤差は、同期化による不確からしさのみに抑えることができる。このため、非常に高精度でライトゲート位置、およびユーザデータパターン書込み位置を制御できる。その結果、隣接する2つのトラック間において、相対的なユーザデータパターンの開始位置がデータクロック1周期分のずれ以下で制御でき、瓦記録方式において干渉キャンセルする際の位置あわせが容易になり、トラック間干渉を高精度に除去でき、トラックピッチを狭くすることができ、高密度記録が可能となる。
【0055】
なお、データセクタ開始位置はサーボクロック数で制御しているので、ユーザデータの書込み開始の基準位置となるカウント値Bはディスクの内外周によらず不変であり、ゾーン毎に値を変更する必要がない。
【0056】
上述の説明ではゲートクロックのトグルを停止させるタイミングはカウント値Bの検出タイミングとしたが、SAMが検出された時に停止させてもよいし、サーボゲートが開いた時に停止させてもよいし、SAM検出後一定回数トグルした後に停止させる方式でもよい。
【0057】
上述の説明ではライトゲートやリードゲートの生成位置はカウント値Bの検出タイミングに基づいて制御したが、カウント値Bの検出タイミングに基づいて制御してもよい。
【0058】
さらに、カウント値Aは、リード時とライト時で異なる値を持つようにしてもよい。
【0059】
また、ここではサーボクロックは、サーボデータを復調するためのクロックを想定しているが、サーボデータを復調するためのクロックの分周クロックであってもよい。また同様にデータクロックは、ユーザデータをライトリードするためのクロックを想定しているが、ユーザデータをリードライトするためのクロックの分周クロックであってもよい。
【0060】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0061】
12…ディスク、16…ヘッド、26…ヘッドIC、28…リード・ライトIC、32…リード・ライトブロック、52…SAM検出回路、54…カウンタ制御回路、56,58…シンクロナイザ、60…ゲートクロック生成回路、62…RG/WG制御回路。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
サーボアドレスマークを含むサーボ領域とデータセクタを含むユーザデータ領域とが形成された磁気ディスクから読み出した信号を処理する信号処理回路であって、
前記磁気ディスクから読み出した信号に基づいてサーボアドレスマークを検出すると、第1のクロックをカウントするカウンタ手段と、
前記カウンタ手段が第1の所定値をカウントすると、第2のクロックに同期して前記データセクタの位置決め用パルスを発生するゲート制御手段と、
を具備する信号処理回路。
【請求項2】
前記第2のクロックに同期するゲートクロックを生成するゲートクロック生成手段をさらに具備し、
前記ゲートクロック生成手段は、前記カウンタ手段が前記第1の所定値より小さい第2の所定値をカウントすると、ゲートクロックの生成を停止し、前記カウンタ手段が第1の所定値をカウントすると、ゲートクロックの生成を再開する請求項1記載の信号処理回路。
【請求項3】
前記カウンタ手段が第1の所定値をカウントすると出力される第1の検出パルスと、第2の所定値をカウントすると出力される第2の検出パルスとを入力し、前記第2のクロックに同期する第1の同期パルスと第2の同期パルスとを出力する同期化手段をさらに具備し、
前記ゲートクロック生成手段は前記第2の同期パルスに同期してゲートクロックの生成を停止し、前記第1の同期パルスに同期してゲートクロックの生成を再開する請求項2記載の信号処理回路。
【請求項4】
前記ゲートクロック生成手段は前記ゲートクロックの生成再開タイミングまでにリタイミングパルスを発生し、リタイミングパルスのレベルを1レベルに維持し、前記ゲートクロックの生成再開タイミング後にリタイミングパルスのレベルを0レベルに設定する請求項3記載の信号処理回路。
【請求項5】
前記ゲート制御手段は、前記リタイミングパルスのレベルが1レベルの場合、前記ゲートクロックの立ち上がりに応じて前記データセクタの位置決め用パルスを発生する請求項4記載の信号処理回路。
【請求項6】
サーボアドレスマークを含むサーボ領域とデータセクタを含むユーザデータ領域とが形成された磁気ディスクと、
前記磁気ディスクへ信号を書き込む、あるいは前記磁気ディスクから信号を読み出すヘッドと、
前記ヘッドを介して前記磁気ディスクから読み出した信号、あるいは前記ヘッドを介して前記磁気ディスクへ書き込む信号を処理する信号処理手段と、を具備する磁気ディスク装置であって、前記信号処理手段は、
前記磁気ディスクから読み出した信号に基づいてサーボアドレスマークを検出すると、第1のクロックをカウントするカウンタ手段と、
前記カウンタ手段が第1の所定値をカウントすると、第2のクロックに同期して前記データセクタの位置決め用パルスを発生するゲート制御手段と、
を具備する磁気ディスク装置。
【請求項7】
前記第2のクロックに同期するゲートクロックを生成するゲートクロック生成手段をさらに具備し、
前記ゲートクロック生成手段は、前記カウンタ手段が前記第1の所定値より小さい第2の所定値をカウントすると、ゲートクロックの生成を停止し、前記カウンタ手段が第1の所定値をカウントすると、ゲートクロックの生成を再開する請求項6記載の磁気ディスク装置。
【請求項8】
前記カウンタ手段が第1の所定値をカウントすると出力される第1の検出パルスと、第2の所定値をカウントすると出力される第2の検出パルスとを入力し、前記第2のクロックに同期する第1の同期パルスと第2の同期パルスとを出力する同期化手段をさらに具備し、
前記ゲートクロック生成手段は前記第2の同期パルスに同期してゲートクロックの生成を停止し、前記第1の同期パルスに同期してゲートクロックの生成を再開する請求項7記載の磁気ディスク装置。
【請求項9】
前記ゲートクロック生成手段は前記ゲートクロックの生成再開タイミングまでにリタイミングパルスを発生し、リタイミングパルスのレベルを1レベルに維持し、前記ゲートクロックの生成再開タイミング後にリタイミングパルスのレベルを0レベルに設定する請求項8記載の磁気ディスク装置。
【請求項10】
前記ゲート制御手段は、前記リタイミングパルスのレベルが1レベルの場合、前記ゲートクロックの立ち上がりに応じて前記データセクタの位置決め用パルスを発生する請求項9記載の磁気ディスク装置。
【請求項11】
サーボアドレスマークを含むサーボ領域とデータセクタを含むユーザデータ領域とが形成された磁気ディスクから読み出した信号を処理する信号処理方法であって、
前記磁気ディスクから読み出した信号に基づいてサーボアドレスマークを検出すると、第1のクロックをカウントし、
カウント値が第1の所定値に達すると、第2のクロックに同期して前記データセクタの位置決め用パルスを発生する信号処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−119028(P2012−119028A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−267491(P2010−267491)
【出願日】平成22年11月30日(2010.11.30)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】