説明

磁気ディスク装置におけるヘッド位置演算方法

【課題】トラックの位置に依存することなく高い精度でヘッドの位置を演算すること。
【解決手段】トラックTを構成するサブトラックtは、バーストデータA,Dが存在するサブトラック、バーストデータA,Cが存在するサブトラック、バーストデータB,Cが存在するサブトラック、バーストデータB,Dが存在するサブトラックが、この順にしたがって繰り返し配置されている場合、下記(1)式又は(2)式に従い、ディスク半径方向rにおける位置と、サブトラックt内におけるディスク半径方向rに沿ったヘッド位置Pとの間の線形性が得られるように定数nの値を1.2以上1.8以下の範囲で決定する。そして、決定した定数nと、下記(1)式又は(2)式を用いてヘッド位置Pを演算する。
P=(A−B)*|A−B|^(n−1)/(|A−B|^n+|C−D|^n)・・・(1)
P=(C−D)*|C−D|^(n−1)/(|A−B|^n+|C−D|^n)・・・(2)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばハードディスク装置等の磁気ディスク装置に関し、特に、ディスク上に予め記録されたバーストデータに基づいてヘッドの位置を演算する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えばハードディスク装置等の磁気ディスク装置10は、一般的に図5のような構成をしている。
【0003】
すなわち、この種の磁気ディスク装置10は、モータ13と、モータ13に取り付けられたメディア12と、キャリッジ15と、キャリッジ15に取り付けられたヘッド14と、ボイスコイルモータ16とで構成される。情報の読み書きはヘッド14を用いてメディア12に書き込まれ、またヘッド14を用いてメディア12上にあるデータが読み取られることによってなされる。また、ヘッド14の移動は、メディア12上に書き込まれているサーボ情報17をもとに、ボイスコイルモータ16にて駆動され、キャリッジ15を介して移動される。つまり、読み書き用のヘッド14はサーボ情報17よりメディア12上の現在位置に関する情報を得ることができる。
【0004】
また、メディア12には、ヘッド14の位置決め演算を行うために、各トラックT(・・・,T(N−1),T(N),T(N+1),・・・)には、図6に示すようなバーストデータパターンが予め記録されている。このバ−ストデータは、図6に示すように、バーストデータA,B,C,Dから構成されている。各トラックTは、円環状の複数のサブトラックt(例えばt〜t)を組み合わせて構成され、各サブトラックtには、バーストデータA,B,C,Dのうち必ず2つのみが存在し、かつバーストデータA,Dが存在するサブトラック、バーストデータA,Cが存在するサブトラック、バーストデータB,Cが存在するサブトラック、バーストデータB,Dが存在するサブトラックが、この順にしたがって繰り返し配置されている。そして、ヘッド14の位置決めを行う場合には、このようなバーストデータがヘッド14によって読み取られ、次に読み取られたバースト信号を用いてヘッド位置検出演算がなされることにより、サブトラックt内におけるディスク半径方向rに沿ったヘッド14の位置が検出されている。
【0005】
具体的には、例えば特許文献1に開示されているように、図7に示すように、位置決めすべき目標トラックTをシリンダコード(N)と想定している。そして、まず、位置決め範囲(0)の場合において、シリンダコード(N)のビット(bit)0が確認される。そして、ビット0が“0”であれば、偶数シリンダと判定され、(B−A)/(B+A)の演算式を用いてバースト演算が実行される。一方、ビット0が“1”であれば、奇数シリンダと判定され、(D−C)/(D+C)の演算式を用いてバースト演算が実行される。
【特許文献1】特開平9−282818号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、このような従来のヘッド位置決め演算では、以下のような問題がある。
【0007】
すなわち、上記特許文献1で開示されているヘッド位置決め演算は、ヘッド位置が偶数シリンダであるか奇数シリンダであるかによって2種類の演算式を使い分けねばならず面倒である。
【0008】
また、バーストデータは、図8に示すように、X軸に示すディスク半径方向(トラック方向)に対して、Y軸に示すバースト信号が三角波を形成するような出力特性であることが理想である。
【0009】
しかしながら、実際の磁気ディスク装置においては、さまざまな要因で、図9に示すような、飽和Sや歪みMの出力特性を持ってしまう。このような出力特性を持つバースト信号を用いてヘッド14の位置決め演算を行うと、飽和Sや歪みMの影響を受けしまい、図10のように、オフトラック位置において、X軸に示すディスク半径方向rと、Y軸に示すヘッド位置との間の線形性が保持できなくなる場合がある。
【0010】
このため、トラックTの位置によっては、ヘッド位置の演算精度が低下してしまい、ヘッド14の位置を誤認識してしまう恐れがあるという問題がある。
【0011】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、1つの演算式のみを用い、かつ、トラックの位置に依存することなく高い精度でヘッドの位置を演算することが可能なヘッド位置演算方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の目的を達成するために、本発明では、以下のような手段を講じる。
【0013】
すなわち、本発明は、ディスク上に円環状に構成された各トラックを記録エリアの単位とし、各トラックに予め記録された4つのバーストデータA,B,C,Dに基づいてヘッドをトラックの範囲内に位置決め制御し、トラックに対してヘッドによりデータの記録又は再生を行なう磁気ディスク装置におけるヘッドの位置を演算する方法である。ここでは、各トラックが、円環状の複数のサブトラックを組み合わせて構成されている。また、各サブトラックには、バーストデータA,B,C,Dのうち必ず2つのみが存在し、かつバーストデータA,Dが存在するサブトラック、バーストデータA,Cが存在するサブトラック、バーストデータB,Cが存在するサブトラック、バーストデータB,Dが存在するサブトラックが、この順にしたがって繰り返し配置されている。
【0014】
このような場合、以下の(1)式又は(2)式にしたがって、ディスクの半径方向における位置と、サブトラック内におけるディスクの半径方向に沿ったヘッドの位置Pとの間の線形性が得られるように定数nの値を1.2以上1.8以下の範囲で決定する。そして、この決定した定数nと、以下の(1)式又は(2)式とを用いて前記ヘッドの位置Pを演算する。
P=(A−B)*|A−B|^(n−1)/(|A−B|^n+|C−D|^n)・・・(1)
P=(C−D)*|C−D|^(n−1)/(|A−B|^n+|C−D|^n)・・・(2)
なお、定数nは、ディスク面に平行であり、かつヘッドのディスク半径方向成分の長さ毎に決定する。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、1つの演算式のみを用い、かつ、トラックの位置に依存することなく高い精度でヘッドの位置を演算することが可能なヘッド位置演算方法を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下に、本発明を実施するための最良の形態について図面を参照しながら説明する。
【0017】
なお、以下の形態の説明に用いる図中の符号は、図5乃至図10と同一部分については同一符号を付して示すことにする。
【0018】
すなわち、本発明の実施の形態に係るヘッド位置演算方法は、図1に示すように、メディア12上に円環状に構成された各トラックT(T(1),T(2),・・・,T(N−1),T(N),T(N+1),・・・)を記録エリアの単位としている。そして、図6に示すように、各トラックTに予め記録された4つのバーストデータA,B,C,Dに基づいてヘッド14をトラックTの範囲内に位置決め制御し、トラックTに対してヘッド14によりデータの記録又は再生を行なう磁気ディスク装置におけるヘッド14の位置を演算する方法である。
【0019】
ここでは、各トラックTが、図6に示すように、円環状の複数のサブトラックt,t,tを組み合わせて構成されている。図6は、トラックTがディスクの中心側から3つのサブトラックt,t,tを組み合わせて構成されている例を示しているが、これに限定されるものではなく、3以外のサブトラックtから構成されていても構わない。
【0020】
そして、各サブトラックtには、バーストデータA,B,C,Dのうち必ず2つのみが存在し、かつバーストデータA,Dが存在するサブトラックt(例えば、サブトラックt(N+1))、バーストデータA,Cが存在するサブトラックt(例えば、サブトラックt(N+1))、バーストデータB,Cが存在するサブトラックt(例えば、サブトラックt(N+1))、バーストデータB,Dが存在するサブトラックt(例えば、サブトラックt(N))が、この順にしたがってディスクの中心側から繰り返し配置されている。
【0021】
そして、以下の(1)式又は(2)式にしたがって、ディスク半径方向rにおける位置と、サブトラックt内におけるディスク半径方向rに沿ったヘッド位置Pとの間の線形性が得られるように定数nの値を1.2以上1.8以下の範囲で決定する。そして、この決定した定数nと、以下の(1)式又は(2)式とを用いてヘッド14の位置Pを演算する。
P=(A−B)*|A−B|^(n−1)/(|A−B|^n+|C−D|^n)・・・(1)
P=(C−D)*|C−D|^(n−1)/(|A−B|^n+|C−D|^n)・・・(2)
なお、定数nは、ディスク面に平行であり、かつヘッド14のディスク半径方向rの成分の長さ(ヘッド有効長)毎に決定する。定数nをこのようにヘッド有効長毎に決定する理由は以下の通りである。すなわち、図8に示すような理想的なバースト信号出力特性を得るためには、ヘッド有効長hは、図2(a)に示すように、1つのサブトラックtの幅tよりも長くなければならない。例えば図2(b)に示すように、ヘッド有効長hが1つのサブトラックtの幅tよりも狭くなると、単一のサブトラックtに存在するバーストデータしか読み取れなくなる領域が発生するので、図9に示すように、ディスク半径方向rが変わっても、バースト信号の出力値が変化せず、飽和Sや歪みMが生じてしまうからである。
【0022】
一方、ヘッド有効長hは、トラックTの幅Tよりも長くなければよいが、ただし、トラックTの幅Tに近くなるほど隣接するトラックTに存在するバーストデータの影響を受けるようになり、位置演算精度が低下してしまう。
【0023】
このような観点から、実際の設計では、ヘッド有効長hは、サブトラックの幅tより長く、サブトラックの幅tの1.5倍よりも短い範囲にあるようにしている。なお、ディスクは円盤状である一方、ヘッド14は方形であるために、どのトラックTにおいても、図2に示すように、ディスク半径方向rに対してヘッド14の正面が平行になるようになるとは限らず、図3に示すように、あるトラックTにおいては、ヘッド14は、ディスク半径方向rに対して傾いてしまい、ヘッド有効長hが短くなってしまう。したがって、実際の設計においては、このような傾きを考慮して、どのトラックTにおいても、ヘッド有効長hが、サブトラックの幅tより長く、サブトラックの幅tの1.5倍よりも短い範囲にあるようにしている。
【0024】
このようなヘッド有効長hの範囲においては、上記(1)式及び(2)式における定数nの値として1.2以上1.8以下とし、この範囲で定数nを変化させてディスク半径方向r(トラック方向)と、サブトラックt内におけるディスク半径方向rに沿ったヘッド位置Pとの間の関係を得ると、図4に示すように、X軸に示すディスク半径方向rと、Y軸に示すサブトラックt内におけるディスク半径方向rに沿ったヘッド位置Pとの間の線形性が保持できる特性が得られる。なお、図4に示すような特性は、サブトラックの幅をtとしたとき、ヘッド有効長hが4/3t、定数n=√2のときに得られた結果である。
【0025】
そして、このように、ディスク半径方向rと、サブトラックt内におけるディスク半径方向rに沿ったヘッド位置Pとの間の線形性が得られることにより、どのトラックTにヘッド14があっても安定したヘッド位置検出が行えるようになり、ヘッド位置(オントラック、オフトラック)に関わらず安定した位置決めを行うことが可能となる。
【0026】
上述したように、同実施の形態に係るヘッド位置演算方法においては、上記(1)式及び(2)式を用いて、ヘッド位置検出結果の線形性が得られるような定数nを決定し、この定数nを上記(1)式及び(2)式に用いてヘッド位置を演算することにより、ヘッド位置(オントラック、オフトラック)に関わらず、高い精度でヘッド位置を演算することができるので、安定したヘッド位置決めを行うことが可能となる。
【0027】
以上、本発明を実施するための最良の形態について、添付図面を参照しながら説明したが、本発明はかかる構成に限定されない。特許請求の範囲の発明された技術的思想の範疇において、当業者であれば、各種の変更例及び修正例に想到し得るものであり、それら変更例及び修正例についても本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】メディア上に円環状に構成されたトラックを示す概念図。
【図2】トラック幅とヘッド有効長との関係を示す図。
【図3】トラック幅とヘッド有効長との関係を示す図。
【図4】ディスク半径方向と、サブトラック内におけるディスク半径方向に沿ったヘッド位置との線形性が保持された関係を示す図。
【図5】磁気ディスク装置の構成例を示す模式図。
【図6】バーストパターンを示す図。
【図7】従来技術による位置決めを説明するためのトラックフォーマットの概念図。
【図8】理想的なバースト信号の出力特性を示す図。
【図9】飽和や歪みのあるバースト信号の出力特性を示す図。
【図10】ディスク半径方向と、サブトラック内におけるディスク半径方向に沿ったヘッド位置との線形性が保持されていない一例を示す図。
【符号の説明】
【0029】
A,B,C,D…バーストデータ、h…ヘッド有効長、M…歪み、P…ヘッド位置、R…ディスク回転方向、r…ディスク半径方向、S…飽和、T…トラック、t…サブトラック、10…磁気ディスク装置、12…メディア、13…モータ、14…ヘッド、15…キャリッジ、16…ボイスコイルモータ、17…サーボ情報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ディスク上に円環状に構成された各トラックを記録エリアの単位とし、前記各トラックに予め記録された4つのバーストデータA,B,C,Dに基づいてヘッドをトラックの範囲内に位置決め制御し、前記トラックに対して前記ヘッドによりデータの記録又は再生を行なう磁気ディスク装置における前記ヘッドの位置を演算する方法であって、
前記各トラックは、円環状の複数のサブトラックを組み合わせて構成され、前記各サブトラックには、前記バーストデータA,B,C,Dのうち必ず2つのみが存在し、かつバーストデータA,Dが存在するサブトラック、バーストデータA,Cが存在するサブトラック、バーストデータB,Cが存在するサブトラック、バーストデータB,Dが存在するサブトラックが、この順にしたがって繰り返し配置されている場合、以下の(1)式又は(2)式にしたがって、前記ディスクの半径方向における位置と、前記サブトラック内における前記ディスクの半径方向に沿ったヘッドの位置Pとの間の線形性が得られるように定数nの値を1.2以上1.8以下の範囲で決定し、この決定した定数nと、以下の(1)式又は(2)式とを用いて前記ヘッドの位置Pを演算する方法。
P=(A−B)*|A−B|^(n−1)/(|A−B|^n+|C−D|^n)・・・(1)
P=(C−D)*|C−D|^(n−1)/(|A−B|^n+|C−D|^n)・・・(2)
【請求項2】
ディスク面に平行であり、かつ前記ヘッドの、前記ディスクの半径方向成分の長さ毎に前記定数nを決定するようにした請求項1に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−277875(P2006−277875A)
【公開日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−98264(P2005−98264)
【出願日】平成17年3月30日(2005.3.30)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】