説明

磁気デバイスおよびその製造方法

【課題】小型、軽量でかつローコストに製造可能な、磁気素子を備えた磁気デバイスおよびその製造方法を提供する。
【解決手段】第一基板11には、第一基板11の一面11aから他面11bに向けて貫通し、第一導電層21と磁気素子14の電極パッド23a,23bとを電気的に接続する第一連結部25が形成されている。第三基板13は、磁気素子14を収容する第一収納部26aと、ドライバチップ15を収容する第二収納部26bとが形成されている。また、第三基板13の一面13aと他面13bとの間を貫通し、第一導電層21と第二導電層22とを電気的に接続する第二連結部27が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板にインダクタを備えた磁気デバイスおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、コスト低減やチップ部品の削減を目的に、磁気インピーダンス素子等のセンサ素子を、例えば半導体などの基板に集積化したものが提案されている。このような磁気インピーダンス素子を磁気センサとして利用する際には、インピーダンス変化の特性に起因して、磁気インピーダンス素子に対してバイアス磁界を印加することが必要である。
【0003】
磁気インピーダンス素子に対してバイアス磁界を印加する手段としては、例えば、磁気インピーダンス素子の近傍に磁石を配置することが考えられる(特許文献1)。しかし、こうした磁石によるバイアス磁界の印加は、個々の磁石によって磁界強度が一定せず、安定して一定値のバイアス磁界を印加することが困難なために、磁気センサに適用するには課題がある。
【0004】
一方、磁気インピーダンス素子に対して、一定の強度で安定してバイアス磁界を印加する手段として、磁気インピーダンス素子の近傍にスパイラル状やコイル状の導電層を形成し、この導電層に通電することによって、バイアス磁界を発生させる方法も知られている(特許文献2)。特に、コイル状の導電層の巻き線中心軸に沿って磁気インピーダンス素子を配置した磁気センサは、磁気インピーダンス素子に対して強いバイアス磁界を安定して印加できる特性から、高精度な磁気センサとして好適である。
【特許文献1】特開2002−43649号公報
【特許文献2】特開2001−221838号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、磁気インピーダンス素子に対してバイアス磁界を印加するために、コイル状の磁場印加手段を形成する場合、3次元的に広がる導電層を形成する必要があり、こうしたコイル状の磁場印加手段を、特に半導体などの基板に集積化して形成しようとすると、デバイス全体の外形が大きくなってしまったり、コイル状の導電層の基板内での実装形態が大きく制限されるといった課題があった。
【0006】
本発明は、本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、小型、軽量でかつローコストに製造可能な、磁気素子を備えた磁気デバイスおよびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の請求項1に記載の磁気デバイスは、第一導電層を有する第一基板と、第二導電層を有する第二基板と、前記第一基板と第二基板との間に配された磁気素子とを備えた磁気デバイスであって、前記第一導電層と前記磁気素子とを電気的に接続する、導電ペーストからなる第一連結部と、前記第一導電層と前記第二導電層とを電気的に接続する、導電ペーストからなる第二連結部とを備え、前記第一導電層、前記第二導電層および前記第二連結部により、前記磁気素子を包み込むようにコイル形状を構成したことを特徴とする。
本発明の請求項2に記載の磁気デバイスは、請求項1において、前記第一基板と前記第二基板との間に第三基板が配され、前記第三基板は、前記磁気素子を収める第一収納部を備えたことを特徴とする。
本発明の請求項3に記載の磁気デバイスは、請求項1において、前記磁気素子と電気的に接続されたドライバチップを更に備えたことを特徴とする。
本発明の請求項4に記載の磁気デバイスは、請求項3において、前記ドライバチップは、前記第一基板と第二基板との間に配されたことを特徴とする。
本発明の請求項5に記載の磁気デバイスは、請求項4において、前記第三基板は前記ドライバチップを収める第二収納部を更に備えたことを特徴とする。
本発明の請求項6に記載の磁気デバイスは、請求項3において、前記ドライバチップは、前記第一基板または第二基板の外側に、前記磁気素子と少なくとも一部が重なるように配されたことを特徴とする。
本発明の請求項7に記載の磁気デバイスの製造方法は、第一基板に第一導電層を形成する工程と、第二基板に第二導電層を形成する工程と、前記第一基板と第二基板の間に磁気素子を配し、この磁気素子と前記第一導電層とを導電ペーストからなる第一連結部によって電気的に接続する工程と、前記第一導電層と第二導電層とを導電ペーストからなる第二連結部によって電気的に接続する工程とを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明の磁気デバイスによれば、第一基板と第二基板との間に磁気素子を収め、かつ、この磁気素子の周りにコンパクトなコイル形状の導電層を形成することができる。よって、磁気素子に対して安定して強いバイアス磁界を印加でき、小型、軽量でかつローコストに製造可能な磁気デバイスを実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明に係る磁気デバイスの一実施形態を図面に基づいて説明する。なお、本発明はこのような実施形態に限定されるものではない。図1は、本発明の磁気デバイスの一例を示す分解斜視図である。また、図2(a)は図1に示す鎖線a−aでの断面図、図2(b)は図1に示す鎖線b−bでの断面図である。磁気デバイス10は、第一基板11と、第二基板12と、この第一基板11と第二基板12との間に配された磁気素子14とを有する。また、第一基板11と第二基板12との間には、ドライバチップ15が更に配されるとともに、これら磁気素子14やドライバチップ15を収容する第三基板13が更に配されていれば良い。
【0010】
第一基板11の一面11aには、第一導電層21が形成されている。また、第二基板12の一面12aには、第二導電層22が形成されている。磁気素子14は、例えば非磁性基板14aの表面に、軟磁性膜14bをメアンダ状に形成したものであり、軟磁性膜14bの両端には、電極パッド23a,23bが形成されている。このような磁気素子14は、バイアス磁界が印加された際に、磁界の大きさに応じて、出力信号が変化する。
ドライバチップ15は、磁気素子14を制御する集積回路であり、表面に電極パッド24a,24bが形成されている。
【0011】
第一基板11には、第一基板11の一面11aから他面11bに向けて貫通し、第一導電層21と磁気素子14の電極パッド23a,23bとを電気的に接続する、導電ペーストからなる第一連結部25が形成されている。
【0012】
第三基板13は、磁気素子14を収容する第一収納部26aと、ドライバチップ15を収容する第二収納部26bとが形成されている。また、第三基板13の一面13aと他面13bとの間を貫通し、第一導電層21と第二導電層22とを電気的に接続する、導電ペーストからなる第二連結部27が形成されている。
【0013】
このような第一導電層21と第二導電層22とが第二連結部27によって電気的に接続されることで、図3の模式図に示すように、磁気素子14の周囲を包み込むコイル形状のバイアス磁界発生回路28が形成される。こうしたバイアス磁界発生回路28の両端の電極パッド28a,28bに通電することで、バイアス磁界発生回路28に磁界が生じ、バイアス磁界発生回路28のコイル形状の中心に配された磁気素子14に対してバイアス磁界が印加される。
【0014】
このような構成の磁気デバイス10によれば、第一基板11と第二基板12との間に磁気素子14を収め、かつ、この磁気素子14の周りにコンパクトなコイル形状のバイアス磁界発生回路28を形成することができる。よって、磁気素子に対して安定して強いバイアス磁界を印加でき、小型、軽量でかつローコストに製造可能な磁気デバイスを実現できる。
【0015】
第一基板11には、第一基板11の一面11aから他面11bに向けて貫通し、第一導電層21とドライバチップ15の電極パッド24a,24bとを電気的に接続する第三連結部29が更に形成されていてもよい。また、第一導電層21の端部を第二基板12に向けて導く第四連結部31が更に形成されていてもよい。
【0016】
第一基板11は、例えばポリイミドなどの絶縁性樹脂から形成されていれば良い。第一基板11に形成される第一導電層21は、第一基板11の一面11aとは反対側の他面11bに形成されていても良い。第一導電層21は、例えば、銅、アルミニウム、金などの導電性に優れた材料から形成されていれば良い。
【0017】
磁気素子14を構成する軟磁性膜14bは、例えば、アモルファス軟磁性であればよい。また、こうした軟磁性膜14bの形状は、メアンダ形状以外にも、磁場を高精度に検出可能な形状であれば、どのような形状に形成されていても良い。第一連結部25や第二連結部27は、導電性金属の微粉末を接着性のある媒体に分散させた導電ペーストであればよい。
【0018】
上述した実施形態では、第三基板13を挟んで第一基板11と第二基板12とは、こうした接着性のある導電ペーストからなる第一連結部25や第二連結部27によって接合されているが、これ以外にも、第一基板11と第三基板13との間、および第三基板13と第二基板12との間に接着剤などによる接着層を形成することによって、各基板間を接合する構成であっても良い。
【0019】
第二基板12は、例えばポリイミドなどの絶縁性樹脂から形成されていれば良い。第二基板12に形成される第二導電層22は、第二基板12の一面12aとは反対側の他面12bに形成されていても良い。第二導電層22は、例えば、銅、アルミニウム、金などの導電性に優れた材料から形成されていれば良い。
【0020】
ドライバチップ15は、上述した実施形態においては第三基板13に形成された第二収納部26bに配されているが、ドライバチップ15の配置位置はこうした第一基板11と第二基板12との間に限定されるものではない。例えば、図4(a)に示すように、ドライバチップ41を第一基板42の一面42a上に、絶縁層43を介して配し、少なくとも一部を磁気素子45と重なるようにすれば、第三基板44にドライバチップ41の収納部を形成する必要がなくなる。
【0021】
このため、図4(b)に示すように、第三基板13にドライバチップ15を収容する第二収納部26bを形成し、この第二収納部26bにドライバチップ15を配した磁気デバイス10の幅D2と比べて、図4(a)に示すように、ドライバチップ41を第一基板42の一面42aの上に配した磁気デバイス40の幅D1は、ドライバチップ15の第二収納部26bに相当する面積分だけ小さくすることができる。
【0022】
次に、本発明に係る磁気デバイスの製造方法の一例を図1を参照して説明する。まず、第一基板11の第一連結部25や第三連結部29が形成される位置にレーザーなどによって貫通孔を形成する。また、第一基板11や第三基板13の第二連結部27が形成される位置にも、レーザーなどによって貫通孔を形成する。なお、第三基板13には、予め、磁気素子14を収容する第一収納部26aや、ドライバチップ15を収容する第二収納部26bを開口として形成しておけばよい。
【0023】
そして、これら貫通孔を埋めるように、第一基板11や第三基板13に導電ペーストを印刷し、第1〜3の連結部25,27,29を形成する。また、第一基板11の1面11aに所定の形状に導電ペーストを塗布し、第一導電層21を形成する。更に、第二基板12にも、所定の形状に導電ペーストを印刷し、第二導電層22を形成する。
【0024】
そして、磁気素子14やドライバチップ15を第一基板11と第二基板12との間に配置して、第三基板13を挟んで第一基板11と第二基板12とを加熱プレスにより接合することによって、簡易な工程でローコストに本発明の磁気デバイス10を製造することができる。なお、第1〜第三基板11〜13どうしは、導電ペーストに含まれている接着性の媒質によって接合されていれば良く、また、各基板間に特に接着剤を塗布するなどして接着層を形成して接合しても良い。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の磁気デバイスの一例を示す分解斜視図である。
【図2】(a)は図1に示す鎖線a−aでの断面図、(b)は図1に示す鎖線b−bでの断面図である。
【図3】コイル形状のバイアス磁界発生回路を示す模式図である。
【図4】本発明の磁気デバイスの他の一例を示す断面図である。
【符号の説明】
【0026】
10 磁気デバイス、11 第一基板、12 第二基板、13 第三基板、14磁気素子、15 ドライバチップ、21 第一導電層、22 第二導電層、25 第一連結部、27 第二連結部。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一導電層を有する第一基板と、第二導電層を有する第二基板と、前記第一基板と第二基板との間に配された磁気素子とを備えた磁気デバイスであって、
前記第一導電層と前記磁気素子とを電気的に接続する、導電ペーストからなる第一連結部と、前記第一導電層と前記第二導電層とを電気的に接続する、導電ペーストからなる第二連結部とを備え、前記第一導電層、前記第二導電層および前記第二連結部により、前記磁気素子を包み込むようにコイル形状を構成したことを特徴とする磁気デバイス。
【請求項2】
前記第一基板と前記第二基板との間に第三基板が配され、前記第三基板は、前記磁気素子を収める第一収納部を備えたことを特徴とする請求項1記載の磁気デバイス。
【請求項3】
前記磁気素子と電気的に接続されたドライバチップを更に備えたことを特徴とする請求項1記載の磁気デバイス。
【請求項4】
前記ドライバチップは、前記第一基板と第二基板との間に配されたことを特徴とする請求項3に記載の磁気デバイス。
【請求項5】
前記第三基板は前記ドライバチップを収める第二収納部を更に備えたことを特徴とする請求項4に記載の磁気デバイス。
【請求項6】
前記ドライバチップは、前記第一基板または第二基板の外側に、前記磁気素子と少なくとも一部が重なるように配されたことを特徴とする請求項3に記載の磁気デバイス。
【請求項7】
第一基板に第一導電層を形成する工程と、第二基板に第二導電層を形成する工程と、前記第一基板と第二基板の間に磁気素子を配し、この磁気素子と前記第一導電層とを導電ペーストからなる第一連結部によって電気的に接続する工程と、前記第一導電層と第二導電層とを導電ペーストからなる第二連結部によって電気的に接続する工程とを備えたことを特徴とする磁気デバイスの製造方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−281337(P2007−281337A)
【公開日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−108501(P2006−108501)
【出願日】平成18年4月11日(2006.4.11)
【出願人】(000005186)株式会社フジクラ (4,463)
【Fターム(参考)】