説明

磁気ブロック及び磁気ブロックを作製する方法

磁石が内部に配置されたブロックを作製する方法である。磁石の凹部は、木材などの押出成型不可能な材料に機械加工される。磁力の強い永久磁石が凹部に配置されることから、ブロックの表面は望ましい磁界極性を示す。凹部は、磁石を恒久的に保持するように密閉される。ブロックの外形は、凹部の機械加工及び密閉の前後のいずれに形成してもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、木製ブロックに関する。具体的には、本発明の実施形態は、永久磁石が内部に配置される木製ブロックに関する。
【背景技術】
【0002】
ブロックは、何世代にもわたって存在している典型的な玩具の1つである。長年にわたり、ブロックは木材や、様々なプラスチック及び他の材料で作製されてきた。従来のブロックは、ブロック間を実際に相互接続しないで積み上げるか配置するかして物を構築することができる、単なる幾何学形状である。このような従来のブロックは、重力の影響を利用して、構造体内で位置を保持する。多くの構造体は、そのようなブロックを用いて作製することができない。LEGO(登録商標)などの他のブロック状の玩具は、機械的に相互接続し、使用者は複雑な構造体を構築することができる。ブロックの制約のいくつかに対処するために、磁石を導入する取り組みが行われており、これにより、構造体内の隣接するブロック間で磁気連結が可能である。使用する基本材料が、プラスチックブロックなどのように押出成型可能であれば、このような磁石を導入することは、比較的容易であり、かつ、費用効果もある。しかし、木製などの押出成型不可能な材料では、押出成型可能な材料に対して用いる技術は適用できない。
【0003】
本発明の実施形態は、添付の図面において例示目的で説明するが、本発明を限定するものではなく、図面に示す類似の符号は同等の要素を示す。
【図面の簡単な説明】
【0004】
【図1】本発明の一実施形態に従って作製されるブロックの分解図である。
【図2】本発明の一実施形態に従って1対の基板で作製される複数のブロックの半部の概略図である。
【図3A】本発明の一実施形態に従って作製することが可能な代替のブロックの半部の図である。
【図3B】本発明の一実施形態に従って作製することが可能な代替のブロックの半部の図である。
【図3C】本発明の一実施形態に従って作製することが可能な代替のブロックの半部の図である。
【図4】本発明の一実施形態に従ってブロックを作製するプロセスのフローチャートである。
【図5】本発明の一実施形態に従って作製されるブロックの図である。
【図6】本発明の別の実施形態に従って形成されるブロックの図である。
【発明を実施するための形態】
【0005】
図1は本発明の一実施形態に従って作製されるブロックの分解図である。図1では、最終的な幾何学形状は、縁の丸い立方体であり、第1の半部102及び第2の半部104として形成される。第1の半部102及び第2の半部104は、以下に示すように個々に、あるいは基板から一括して形成してもよい。堅い木材は、製造に好適な材料である。木材には、成型合成物では得ることのできない温もりや手触りがある。しかし、その性質が押出成型不可能であることから、加工・製造に難点がある。
【0006】
凹部106が、上半部102及び下半部104に設けられ、これら凹部は、磁石108を収容し、立方体側面に内部から隣接するよう磁石を保持する。上半部102及び下半部104のそれぞれの中心穴110は、凹部を形成し、立体の上面及び底面の内部近傍に磁石108を収容する。ダボ112などのスペーサーは、上下の磁石108をそれぞれ外面の近傍に保持する。スペーサーは円筒形で示しているが、他の形状のスペーサーを使用してもよい。
【0007】
凹部106及び穴110に挿入した磁石108の向きを適切に合わせることによって、立方体の各面によって示す極性は制御可能となる。一般に、特定のブロックに等しい数のN極面とS極面を有することが好適であると考えられている。しかし、本発明のいくつかの実施形態は、4個のN極と2個のS極又はその逆などの様々な極構成であってもよい。特定のブロックが単極、つまり全面がN極あるいはS極を示す事例があってもよい。
【0008】
上半部102と下半部104を境界面116に沿って連結してもよい。一実施形態では、木工用ボンドなどの接着剤を使用して連結してもよい。境界面116の表面領域が比較的大きいため、接着性が強化され、ブロックが分解しにくい。特に、子供用玩具では、子供が磁石や他の小さい部品を口に入れ窒息を招く危険性があることから、分解し易いブロックはきわめて好ましくない。市販のタイトボンド(登録商標)IIやタイトボンドIIIなどの食品との間接接触が認められている木工用ボンドを使用することが好ましい。上半部102と下半部104の材料の木目を適切に合わせることによって、接着線を目立たないようにすることができる。
【0009】
磁石108は、10,000〜13,500ガウスの磁界を生成する希土類磁石であってもよい。例えば、磁石108はネオジム鉄ホウ素(NdFeB)磁石であってもよく、互いに、かつ、強磁性物体に対してきわめて強い磁力があり、磁石の大きさ及び形状ならびに相対配向ならびに互いに、及び/又は、他の強磁性物体に対する近接度などの要素の支配を受ける。厚さ0.318cm(1/8インチ)、直径0.953cm(3/8インチ)のN40の円筒形磁石が、30mmの側面を有するブロックに適していることが明らかである。大きいブロックには、強い磁石が望ましい場合がある。より強い引力は、大きいか、あるいはグレードが高い磁石によって得ることが可能である。ブロック間の磁気連結が強いと、通常の非磁性ブロックでは得られない構造体を構築することができる。さらに、ブロック内の(ブロック内に完全に入れられている)磁石の隠された性質を考慮すると、ブロック間に生じる強い力(相対配向による引力及び斥力)によって、子供や大人を驚かせたり、喜ばせたりする。ブロック構造体自体で使用される基礎材料によって、ブロックの見た目、感触や、ブロックが磁力によって素早く連結する際の「カチッ」又は「カタッ」という音は、魅力的であり、楽しい遊戯体験をもたらす。ブロック内の磁石108が互いに引き合い、及び/又は、反発するので、2個のブロックが表面や空間で互いの近傍に配置されると、外見的には自発的に動いたり、回転したりすることがあり、見かけ上の「不思議な」現象を生じさせる。
【0010】
図2は、本発明の一実施形態に従って、1対の基板に作製される複数のブロックの半部の概略図である。最終的に望ましい形状は、コンピュータで決定してもよい。板材200及び220などの基板の機械加工は、コンピュータ制御によって行うことになる。機械加工によって、複数の半部202の凹部206及び中央の穴210を形成する。板材200及び220は、板材上に半部を任意に大きく機械加工することを可能にしてもよい。いくつかの実施形態では、板材200及び220の大きさや最終的に望ましい形状の大きさに応じて、半部の配列は2次元又は1次元であってもよい。
【0011】
経済的な理由から、板材に沿って半部間の空間を最小限にすることが好ましく、これにより、最終的な幾何学形状が他の部分から分離される時に生じる屑の量を最小限にする。ほぼ木目の合った(木目を合わせた)2つの板材200と220を選択することによって、半部間の境界を隠すことができる。両方の基板の木目が一致することから、板材220に対応する凹部226及び穴230を有するように、半部の第2のセットを機械加工し、板材200、220を接着することによって、図2に示す第1のセットに連結することができる。凹部206に挿入した磁石及び穴210に挿入したスペーサーは、それぞれの板材200、220を調整するのに有用であり、これらの板材を長手方向に沿って互いに接着でき、これにより接触領域216と236との間の接着が強固になる。個々の望ましい形状は、標準加工又はコンピュータ制御加工により分離してもよい。上の記載では、「半部」に言及しているが、厳密には、最終ブロックを形成する2個の部品は、同一又は対称である必要はない。ただし、対称であれば、加工が簡単になる。
【0012】
図3A〜3Cは、本発明の実施形態に従って作製可能な別のブロックの1つの半部の図である。図3Aは、2つの凹部306と境界面116が定義されている半部302を示す等角図である。図2を参照して記載するように、単一の基板に複数の半部を定義し、機械加工することができる。図3Bは、点線で示す凹部306を有する半部302の側面図を示す。凹部306は、好適な磁石を収容するよう定義される。凹部306は、円形で示され、これにより円筒形磁石を収容するが、矩形又は他の形状の凹部を定義することも可能である。磁石は凹部内に適合し、使用中に揺れ動かないことが望ましい。ブロック302は、図1の立方体などの立方体表面の長さの2倍となるように設定され、スペーサーとして製造工程で使用してもよい。一実施形態では、半部302は、厚さ3mmであり、端部の曲半径は3mmである。図3Cは、半部302の端面図を示す。半部302は、長さ60mmとなるように示しているが、類似の方法で作製される他の形状や寸法のブロックにも使用できるように設定している。例えば、ブロック半部302は、その長さが立方体表面の長さの任意の整数倍、例えば、立方体表面の長さが30mmの場合には、90mm、120mmなどであってもよい。磁石を収容する凹部の数は、長さとともに増加させてもさせなくてもよい。例えば、90mmの厚板には、磁石を3個又は2個のみ有してもよい。
【0013】
図4は、本発明の一実施形態によってブロックを作製するプロセスのフローチャートである。ボックス402では、望ましいブロックの形状を決める。この決定は、コンピュータファイルの形式をとってもよく、このファイルを基板からブロックの次の機械加工に使用してもよい。別の実施形態では、最終的に望ましい幾何学形状を定義段階で形成し、以下に示すように個々に加工してもよい。
【0014】
ボックス404では、凹部を押出成型不可能な材料で出来た第1の部品に形成する。例えば、この凹部は、図3Aに示す凹部306又は図1に示す凹部106及び穴110に対応させてもよい。磁石に適合する大きさの凹部を形成することにより、完成したブロックの磁石が揺れ動かないようにしてもよい。あるいは、凹部内に磁石を接着してもよい。ボックス406では、押出成型不可能な材料の第2の部品を第1の部品と木目を合わせる。木目を合わせることによって、この材料の第1の部品と第2の部品とを連結し、最終的な望ましい形状を形成すると、部品間の差異は実質的に視認することができなくなる(ブロックは、1つの固体材料から形成されているように見える)。ボックス408では、押出成型不可能な材料の第2の部品に凹部を形成する。そのような凹部は、ボックス404で第1の部品に形成した凹部に対応し、これにより、2つの部品を連結して望ましい幾何学形状の全部又は主な部分を形成する。
【0015】
ボックス410では、対応する隣接面によって望ましい極性を示すように、磁石をそれぞれの凹部に挿入する。上の記載のように、いくつかの実施形態では、磁石が凹部内で動かないように、凹部に磁石を接着させてもよい。いくつかの実施形態では、各極性の面の数が等しくなることを確実にすることが望ましい。ボックス412では、押出成型不可能な材料の第1の部品と第2の部品とを連結し、凹部を密閉し、磁石を恒久的に閉じ込める。一実施形態では、この連結は、例えば、木工用ボンドによる接着で得られる。
【0016】
ボックス414では、望ましいブロック形状がボックス402で定義されている場合か、あるいは、(図2を参照して記載するように)ブロックが、例えば、1対の大きな基板の一部として形成されている場合などに、望ましいブロックが別個に作製されているかどうかを経験的に判定する。ブロックが未だに形成されていない場合は、ボックス416で、この材料の第1の部品と第2の部品とを連結した後に定義した形状を切り取る。望ましいブロック形状を得ると、ボックス418でブロックの仕上げを実施する。いくつかの実施形態では、仕上げは、ブロックの研磨、着色及び光沢仕上げのいずれか、あるいはブロックのコーティングを含んでもよい。
【0017】
図5は、本発明の一実施形態に従って作製されるブロックの図である。凹部が、各面のほぼ中心に深さNの穴を開けることによって形成される。さらに、材料は、領域510から、Nから磁石の厚さを差し引いた深さまで機械加工される。栓508は、凹部内に配置される磁石506を覆うのに使用される。接着面510が比較的大きいことから、磁石と同じ寸法の栓の端部のみを使用した場合に比して、分解の危険性は低くなる。そのように端部のみを接着することは、本発明で使用する磁力の強い永久磁石には不適切であることが明らかである。栓508は矩形として示しているが、領域510は任意の形状に形成することができることから、栓508も任意の形状に形成することができる。重要なことは、通常使用時に栓が外れないように、接着力を磁石の反発力より強くすることである。
【0018】
図6は、本発明の別の実施形態に従って形成されたブロックの図である。本実施形態では、立方体は、上側部品604、下側部品602及び中間層612の3つの部品から形成される。上側及び下側の凹部は、それぞれ下側部品602及び上側部品604に穴610として形成される。側面磁石の凹部606は、中間層612に形成される。上側部分604及び下側部分602は、中間層612を挟持する。スペーサー622及び632は、それぞれの面の近傍に、上側及び下側の磁石608を保持する。図4及び図2を参照して記載する方法と同じ方法で、本実施形態を作製することができることを理解する必要がある。
【0019】
上記の詳述では、本発明の実施形態は、特定の実施形態に基づいて記載している。しかし、本願の特許請求の範囲に記載するように、本発明の広範にわたる精神と範囲とから逸脱することなく様々な修正又は変更を実施することができることは明白である。従って、明細書及び図面は、限定的意味よりむしろ例示的意味でとらえるべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
押出成型不可能な材料で形成された幾何形体の、複数の面の各面の中心部に近いところに凹部を形成し、
永久磁石を、N極を示す面の数がS極を示す面の数と等しくなるように、各凹部に挿入して、これら凹部を密閉して永久磁石を恒久的に保持する
ことを含むことを特徴とする磁気ブロックの作成方法。
【請求項2】
前記凹部を形成するステップは、
挿入される前記磁石の直径と一致する直径と深さn(nは、前記磁石の厚さよりも大きい)の穴を各面の中心部に開け、
前記深さ約nから磁石の厚さを差し引いた厚さを前記材料の面を削り取る
ことを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記密閉することは、前記材料を除去した領域と同延の面に、栓を接着連結することを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記凹部を形成することは、前記凹部が前記定義した幾何形体の各面に内部から隣接し、外部からは不可視となるように、前記幾何形体に組み立てられる複数の補助部品の内部に前記凹部を機械加工することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記密閉することは、前記補助部品を組み立てて接着して、前記幾何形体を完成させることを含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
望ましい最終的な幾何学形状を定義し、
押出成型不可能な材料の第1の部品に、少なくとも1つの凹部を形成し、該凹部は最終的な幾何学形状の外面の内部近傍に存在し、
押出成型不可能な材料の第2の部品に、少なくとも1つの凹部を形成し、該凹部は最終的な幾何学形状の外面の内部近傍に存在し、
永久磁石を各凹部に配置し、前記材料の第1の部品と前記材料の第2の部品とを連結する
ことを含むことを特徴とする磁気ブロックの作成方法。
【請求項7】
前記連結後に前記材料の第1の部品及び前記材料の第2の部品から前記最終的な幾何学形状を切り取ることをさらに含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記連結することは、前記材料の第1の部品と前記材料の第2の部品とを接着することを含む、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
前記材料の第1の部品と前記材料の第2の部品の木目を合わせることをさらに含む、請求項6に記載の方法。
【請求項10】
前記最終的な幾何学形状に仕上げを施すことをさらに含む、請求項6に記載の方法。
【請求項11】
前記最終的な幾何学形状を研磨することと、コーティングすることとをさらに含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記配置することは、前記接着後に、外面の内部近傍のN極の総数が外面の内部近傍のS極の総数と等しくなるような極性配向で、前記永久磁石を前記凹部に挿入することを含む、請求項6に記載の方法。
【請求項13】
望ましい代替の幾何学形状は立方体であり、前記形成することは、
前記第1の部品及び前記第2の部品で定義される前記代替の幾何学形状の各側面に隣接して、対応する凹部を機械加工し、
第1の部品及び第2の部品のそれぞれに中央の穴を機械加工し、該中央の穴は、上面及び底面の内部近傍にそれぞれ終端する
ことをさらに含む、請求項6に記載の方法。
【請求項14】
前記中央の穴にスペーサーを挿入して、前記穴のそれぞれの端部に磁石を保持することをさらに含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記永久磁石は、NdFeB円筒形磁石を含む、請求項6に記載の方法。
【請求項16】
前記連結することは、前記第1の部品と前記第2の部品との間の接触面の実質的に全領域に接着剤を塗布することを含む、請求項6に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2012−521271(P2012−521271A)
【公表日】平成24年9月13日(2012.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−502148(P2012−502148)
【出願日】平成22年3月22日(2010.3.22)
【国際出願番号】PCT/US2010/028171
【国際公開番号】WO2010/111189
【国際公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【出願人】(511231780)
【Fターム(参考)】