説明

磁気ヘッド、及び磁気ディスク装置

【課題】より容易に製造可能でサイドライトを抑制できる磁気ヘッドを提供すると共に、データを記録可能な容量をより容易に向上できる磁気ディスク装置を提供する。
【解決手段】磁気ヘッドを構成する主磁極61aの磁気ディスクと対向する面形状は、回転方向A上、つまり磁気ディスクの径方向の直交方向上で対向する2つの辺を底辺とする台形形状となっている。2つの底辺のうち、長さが長い底辺と直交する直線と、2つの側辺とがなすテーパー角はそれぞれ0度、α度としている。それにより、長さが短い底辺と2つの側辺とがなす2つの角度はそれぞれ90度、90度より大きい角度、という大小関係となっている。角度が90度となっている側辺は、磁気ディスクの径方向上、内側に位置している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転する磁気ディスク上にデータを書き込むための主磁極を備えた磁気ヘッド、及びそれを備えた磁気ディスク装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ハードディスク装置に代表される磁気ディスク装置は、記録密度の向上を続けている。その記録密度を向上させるために記録方式は、磁気ディスクの面内方向に磁化させる面内記録方式から、垂直方向に磁化する垂直磁気記録方式に移り変わりつつある。現在では、その垂直磁気記録方式を採用した磁気ディスク装置が製品化されている。
【0003】
図1は、一般的な磁気ディスク装置の構成を説明する図である。その磁気ディスク装置は、特許文献1に記載されたものである。図1に示すように磁気ディスク装置は、回転する磁気ディスク11の径方向上に磁気ヘッドを移動させることにより、データの記録、または再生を行う構成となっている。磁気ヘッドは、ボイスコイルモータ(VCM)によって中心13で回転されるサスペンションアーム12の端部14に、磁気ディスク11と対向させて取り付けられている。
【0004】
磁気ディスク装置では通常、サスペンションアーム12を回転させる回転アクチュエータが採用されるため、そのサスペンションアームのヨー角に起因する記録トラック接線方向と磁気ヘッドとのなす角であるスキュー角が存在する。そのスキュー角は、ヨー角に応じて或る範囲内で変化する。例えば最内周の記録トラックでのスキュー角をθ1、最外周の記録トラックでのスキュー角をθ2とすれば、θ1≦スキュー角≦θ2の範囲内でスキュー角は変化することになる。
【0005】
垂直磁気記録方式では、スキュー角によって磁気ヘッドの主磁極がトラックからはみ出して磁気ディスクを磁化するサイドライト(はみ出し記録)が、面内記録方式に比べて顕著に生じる。そのサイドライトによってトラックからはみ出して磁化された径方向上の幅(サイドライト幅)は、スキュー角によって変化するため、隣のトラックとの間隔であるトラックピッチの決定に影響を与える。それにより、最適なトラックピッチはヨー角によって、つまり径方向上の位置によって変化することになる。
【0006】
そのサイドライトを抑制できる磁気ヘッドとしては、例えば非特許文献1に記載されているように、主磁極の磁気ディスクと対向する面の形状を台形形状としたものが考えられる。図2は、非特許文献1に記載された主磁極の面の形状を説明する図である。図中の矢印Aは、磁気ディスクが回転する方向(磁気ディスクの径方向の直交方向、つまり記録トラックの接線方向のうちの一方に相当する)を示している。図2に示すように、その面の形状は、平行な2つの辺のうち長い方の辺である上底辺と直交する直線と、その上底辺と接する2つの側辺とがなす2つの角度(テーパー角)α、βはそれぞれ0度ではないものとなっている。それにより、上底辺と2つの側面とがなす2つの上底角α’、β’の大きさは90度より小さいものとなっている。
【0007】
磁気ヘッドの製造では、例えば非特許文献2、及び3に記載されているように、材料となる部材を削る加工を行うのが普通である。台形形状への加工では、矩形状の主磁極を製造する場合と比較すると、2方向から削る加工を更に行う必要がある。図2に示すような台形形状の面に加工するためには、例えば一方の幅がポール長L、他方の幅がコア幅W以上となっている部材にイオンビームを2方向から照射して、テーパー角α、βを形成させる必要がある。そのため、製造工程が煩雑なものとなる。特許文献2に記載されたように、6角形の形状をした主磁極を製造する場合には製造工程はより煩雑なものとなる。
【0008】
煩雑な製造工程は、ヘッド製造における歩留まりの低下を招く。それにより、製造工程数はより抑えることが望ましい。しかし、記録密度をより向上させるためには、サイドライトは抑制する必要がある。このようなことから、サイドライトを抑制しつつ、磁気ヘッドをより容易に製造できるようにすることが望まれていた。
【0009】
ところで、サイドライトにより、径方向上の位置に応じて最小にできるトラックピッチは変化する。上述した理由から、そのトラックピッチはスキュー角によって変化する。また、記録トラックに記録可能な容量は、径方向上の位置によって変化する。このようなことから、装置全体での記憶容量の向上を図るためには、スキュー角が0度となる位置を考慮することも重要であると考えられる。
【非特許文献1】K. Ito et al. “Current Progress of Single-Pole-Type GMR Heads for Perpendicular Recording”、IEEE Trans. Magn.、VOL.38(1)、pp.175-180(2002)
【非特許文献2】T. Okada et al. “Fabricating Narrow and Trapezoidal Main Poles for Single-Pole-Type Heads”、IEEE Trans. Magn.、VOL.40、pp.2329-2331(2004)
【非特許文献3】Y. Ikegawa et al. “A New Single-Pole-Type Head Trimmed by Focused Ion Beam at Wafer Level”、IEEE Trans. Magn.、VOL.40、pp.2338-2340(2004)
【特許文献1】特開2002−237142号公報
【特許文献2】特開2005−183002号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、より容易に製造可能でサイドライトを抑制できる磁気ヘッドを提供することを目的とする。
また、本発明は、データを記録可能な容量をより容易に向上できる磁気ディスク装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の第1〜第3の態様の磁気ヘッドは共に、回転する磁気ディスク上にデータを記録するための主磁極を備えていることを前提とし、それぞれ以下のようなものとなっている。
【0012】
第1の態様の磁気ヘッドでは、磁気ディスクと対向する主磁極の面は、該磁気ディスクの径方向と直交する直交方向で該径方向上の幅が連続的に変化する四角形状の部分を有し、四角形状の部分は、直交方向上で対向する2つの辺を有し、該2つの辺のうちの一方と、該一方と接する2つの辺とでそれぞれ形成される2つの角度の大きさが異なり、該2つの角度のうちの一つは90度を含むその近傍内の大きさである。
【0013】
なお、上記四角形状は、直交方向上で対向する2つの辺が平行な台形の形状である、ことが望ましい。また、上記近傍内の角度は、径方向上、外側に位置させる辺によって形成される、ことが望ましい。
【0014】
第2の態様の磁気ヘッドでは、磁気ディスクと対向する主磁極の面は、該磁気ディスクの径方向と直交する直交方向で対向する2つの辺が平行な台形形状の部分を有し、台形形状の部分は、2つの辺のうちで短い方の辺である底辺と、該底辺と接する2つの側辺とでそれぞれ形成される2つの角度に、該2つの側辺のうち径方向上、内側に位置させる側辺によって形成される角度のほうが小さい大小関係が存在している。
【0015】
なお、上記外側に位置させる側辺によって形成される角度は、90度を含むその近傍内の大きさである、ことが望ましい。
第3の態様の磁気ヘッドは、磁気ディスクと対向する主磁極の面は、該磁気ディスクの径方向と直交する直交方向で対向する2つの辺が平行な台形形状の部分を有し、台形形状の部分は、2つの辺のうちで短い方の辺である底辺と、該底辺と接する2つの側辺とでそれぞれ形成される2つの角度のうちの一つが、90度を含むその近傍内の大きさである。
【0016】
なお、上記第1〜第3の態様では、主磁極の面全体は台形形状となっている、ことが望ましい。
本発明の磁気ディスク装置は、回転する磁気ディスク上にデータを記録するものであり、データを記録するための主磁極を有する磁気ヘッドと、磁気ヘッドを磁気ディスクの径方向上に移動させる移動手段と、を備え、磁気ヘッドの、磁気ディスクの径方向の直交方向となす角であるスキュー角が0度となる該磁気ヘッドの該径方向上の位置を、該磁気ディスクの最外周部分から中心に向かって1/3の領域内としている。
【0017】
なお、上記磁気ヘッドとしては、上記第1〜第3の態様の磁気ヘッドのうちの何れかを採用している、ことが望ましい。また、移動手段が有するモータから磁気ヘッドが取り付けられた位置までのサスペンションアームを折り曲がった形状とすることにより、スキュー角が0度となる該磁気ヘッドの径方向上の位置を、該磁気ディスクの最外周部分から中心に向かって1/3の領域内としている、ことが望ましい。
【発明の効果】
【0018】
本発明では、磁気ディスクと対向する主磁極の面として、その磁気ディスクの径方向と直交する直交方向でその径方向上の幅が連続的に変化する四角形状の部分を有するものを採用し、その四角形状の部分は、直交方向上で対向する2つの辺を有し、その2つの辺のうちの一方と、その一方と接する2つの辺とでそれぞれ形成される2つの角度の大きさが異なり、その2つの角度のうちの一つは90度を含むその近傍内の大きさとしている。その四角形状は、例えば磁気ディスクの径方向と直交する直交方向で対向する2つの辺が平行な台形形状であり、2つの辺のうちで短い方の辺である底辺と、その底辺と接する2つの側辺とでそれぞれ形成される2つの角度のうちの一つが、90度を含むその近傍内の大きさである。その2つの角度は、2つの側辺のうち径方向上、内側に位置させる側辺によって形成される角度のほうが小さい大小関係となっているものである。
【0019】
そのような面形状を主磁極に採用すると、非特許文献1に記載されたような台形形状を採用する場合とは異なり、1方向から削る加工を行えば済むようになって、製造工程が簡略化する。そのため、製造はより容易となる。サイドライトの抑制も同等のレベルで行うことができる。
【0020】
本発明では、データを記録するための主磁極を有する磁気ヘッドの、磁気ディスクの径方向の直交方向となす角であるスキュー角が0度となるその径方向上の位置を、磁気ディスクの最外周部分から中心に向かって1/3の領域内としている。
【0021】
径方向の位置によって、その位置(記録トラック)に記録可能な容量(線記憶容量)は異なる。その容量は、磁気ディスクの外側になる程、大きくなる。データの記録に必要な幅は、スキュー角によって変化する。そのスキュー角の絶対値が小さい程、その幅は小さくできるのが普通である。このようなことから、スキュー角が0度となるその径方向上の位置を、磁気ディスクの最外周部分から中心に向かって1/3の領域内とすると、より線記憶容量の大きい領域でトラック密度をより高くすることができる。それにより、データを記録可能な装置全体の容量はより容易に向上できることとなる。上述したような磁気ヘッドではサイドライトを抑制できるため、そのような磁気ヘッドを採用することにより、その容量は更に容易に向上できるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
図3は、本実施の形態による磁気ディスク装置の回路構成を説明する図である。
その磁気ディスク装置は、図3に示すように、装置全体の制御を行うコントローラ30と、そのコントローラ30によって駆動されるボイスコイルモータ(VCM)31と、磁気ヘッド32と、不図示のモータによって回転される磁気記録媒体(磁気ディスク)33と、を備えた構成となっている。
【0023】
コントローラ30は、ヘッド位置制御部30a、サイドライト特性評価部30b、サーボ情報書き込み制御部30c、及びトラックピッチ・レイアウト算出部30dを備えている。それらは以下のようなものである。
【0024】
ヘッド位置制御部30aは、VCM31を駆動制御して、磁気ヘッド32を磁気ディスク33を径方向上、移動させる。サイドライト特性評価部30bは、磁気ヘッド32により磁気ディスク33上にデータを記録させ、その記録データを読み取って解析を行うことにより、サイドライト特性を評価(測定)するものである。記録データの読み取りは、ヘッド位置制御部30aにより、径方向上の位置を微少に移動させて行われる。トラックピッチ・レイアウト算出部30dは、サイドライト特性評価部30bからサイドライト特性の評価結果を入力し、径方向上の位置別に最適なトラックピッチを算出する。径方向上の位置別に算出したトラックピッチがトラックピッチ・レイアウトである。サーボ情報書き込み制御部30cは、トラックピッチ・レイアウト算出部30dが径方向上の位置別に算出したトラックピッチに従って、磁気ヘッド32により磁気ディスク33上にサーボ情報の書き込みを行う。
【0025】
上記サイドライト特性の評価(測定)やトラックピッチの算出、サーボ情報の書き込みは、磁気ディスク33を初期化するために行われる。図13は、その初期化のために実行されるサーボ信号形成処理のフローチャートである。ステップS1でのサイドライト特性の測定はサイドライト特性評価部30bによって行われ、ステップS2でのサイドライト特性に応じたトラックピッチ・レイアウトの決定はトラックピッチ・レイアウト算出部30dによって行われ、ステップS3のトラックピッチ・レイアウトに応じたサーボ情報(信号)の磁気ディスク33上の形成はサーボ情報書き込み制御部30cによって行われる。それらを含む各部30a〜dは、実際にはコントローラ30が内蔵のROMに格納されたプログラムを実行することで実現される。
【0026】
上記サーボ情報として、トラック番号やセクタ番号などが磁気ディスク33に書き込まれる。このことから、データの書き込み、或いは再生のために磁気ヘッド32を移動させるべき位置に移動させるための位置決めは、図14に示す位置決め処理の実行によって実現される。
【0027】
先ず、ステップS11では、磁気ヘッド32でサーボ信号を読み取る。次のステップS12では、読み取ったサーボ信号から磁気ヘッド32の現在位置を計算する。その次のステップS13では、磁気ヘッド32を現在位置から移動させるべき目標位置まで移動させるためのVCM31の回転制御を開始する。その後はステップS14に移行して、目標位置まで磁気ヘッド32を移動させる。その移動は目標位置のサーボ信号を読み取るまで行う。そのサーボ信号を読み取ると、磁気ヘッド32の移動(位置決め)が完了したとして、ここで一連の処理を終了する。
【0028】
図4は、磁気ヘッド32が取り付けられたサスペンションアームの形状を説明する図である。そのサスペンションアーム(以下「アーム」と略記)41は、VCM31によって中心42を軸に回転駆動される。磁気ヘッド32は、アーム41の端部43に取り付けられている。
【0029】
図5は、アーム41の端部に取り付けられたスライダを説明する図である。図5に示すように、磁気ヘッド32はスライダ50の端、磁気ディスク33の回転方向Aから見て奥側の端に取り付けられている。
【0030】
図6は、磁気ヘッド32の構成を説明する図である。磁気ヘッド32は、データを記録するための記録ヘッド61、及び記録されたデータを再生するための再生ヘッド62を備えた構成である。記録ヘッド61は、主磁極61a、補助磁極61b、及び磁界を発生させるためのコイル61cを備えた構成となっている。他方の再生ヘッド62は、2つのシールド62a、及びその間に配置された磁気抵抗素子62bを備えた構成となっている。磁気ディスク33に記録されたデータは、その抵抗素子62aによって読み取られる。
【0031】
図7は、上記主磁極61aの磁気ディスク33と対向する面の形状を説明する図である。その面形状は、図6に示す矢印B方向から見た場合のものである。
その面形状は、図7に示すように、回転方向A上、つまり磁気ディスク33の径方向の直交方向上で対向する2つの辺を底辺とする台形形状となっている。2つの底辺のうち、長さが長い底辺と直交する直線と、2つの側辺とがなすテーパー角はそれぞれ0度、α度としている。それにより、長さが短い底辺と2つの側辺とがなす2つの角度はそれぞれ90度、90度より大きい角度、という大小関係となっている。角度が90度となっている側辺は、磁気ディスク33の径方向上、内側に位置している。
【0032】
2つの角度のうちの一つが90度なのは、その側の側面を削る加工を行っていないからである。言い換えれば、通常、主磁極61aは矩形状の部材を加工して製造するからである。このことから、その角度は加工前の部材の形状に依存するものであって良い。その角度は90度とするのが普通であることから、実際の角度は90度か、或いはその近傍のものとなる。2つの角度のうち90度とさせる側面は、径方向上、外側に位置する側面、つまり本実施の形態と逆としても良い。
【0033】
その磁気ヘッド32は、スキュー角が0度なる位置で、磁気ディスク33の径方向の直交方向と主磁極61aのテーパー角がαの側辺とが平行になるか、或いはその位置より外側の位置で直交方向がその側面と平行となる角度に取り付ける。後者は、図7において、直交方向とコア幅Wの底辺と直交する直線となる角度がテーパー角αより大きいことに相当する。そのように取り付けることにより、スキュー角が0度となる位置の外側では、径方向上、外側に位置する側辺がコア幅Wの底辺より外側に位置するのを回避することができる。内側に位置する側面では、コア幅Wの底辺より内側に位置するのを回避できるか、或いはそれより突出する幅を最小限に抑えることができる。スキュー角が0度となる位置の内側では、外側に位置する側辺がコア幅Wの底辺より外側に位置するのを回避できるか、或いはそれより突出する幅を最小限に抑えることができる。内側に位置する側面では、コア幅Wの底辺より内側に位置するのを回避することができる。このようなことから、径方向全体でサイドライトを抑制することができる。
【0034】
主磁極61aは、部材の一方の側面側のみを削ることで製造することができる。このため、部材を2方向で削る場合と比較して、より容易に製造することができる。それにより、磁気ヘッド32の製造上の歩留まりもより向上できることとなる。
【0035】
本実施の形態では、図4に示すように、アーム41は中心42から端部43までの間が折れ曲がった形状となっている。「へ」の字形となっている。これは、磁気ディスク33の外側部分でスキュー角が0度になるようにするためである。そのような形状を採用することにより、中心41と磁気ヘッド32までの距離が短くとも、磁気ディスク33の外側部分でスキュー角を0度とすることが確実に行えるようになる。そのスキュー角が0度となる径方向上の位置は、磁気ディスク33の最外周部分から中心(回転軸)に向かって1/3の領域内とさせている。その1/3の領域内とは、より具体的には、データを記録するデータゾーンにおける外側1/3の領域内、或いは最外周の記録トラックから数えた記録トラック数が全体の1/3となる位置までの領域内、である。そのような領域内でスキュー角を0度とさせた理由について、図8〜図12に示す説明図を参照して詳細に説明する。
【0036】
図8は、最適なトラックピッチのヨー角依存性例を説明するグラフである。横軸はヨー角、左側の縦軸は任意単位(Arbitary Unit)のトラックピッチ、右側の縦軸は規格化したトラックピッチをそれぞれ示している。上側に位置する折れ線は右側の縦軸、その下に位置する折れ線は左側の縦軸によりヨー角(スキュー角)による最適なトラックピッチの変化を表している。トラックピッチの規格化は、ヨー角が0度のときのトラックピッチを1として行っている。
【0037】
図10は、径方向上の位置によるシリンダ当たりの記憶容量(線記憶容量)の変化を説明するグラフである。横軸は径方向上の位置、縦軸は記憶容量を示している。
ヨー角の範囲は、図10に示す、径方向上の位置とシリンダ当たりの記憶容量の関係を基にして決定する。最適なトラックピッチは、図8に示すように、ヨー角の絶対値が大きくなるにつれてトラックピッチが増加している。つまり、ヨー角が0度のときに最小、つまりトラック密度は最大となる。一方、線記憶容量は、径方向上の位置が外側になるほど増大する。このため、トラック密度が最大となるヨー角(スキュー角)が0度となる位置は、径方向上の外側にしている。線記憶容量がより高い領域でのトラック密度をより高くさせることにより、装置全体の記憶容量をより効果的に向上することができる。
【0038】
図11は、径方向上の位置によるトラックピッチの違いを説明するグラフである。横軸は径方向上の位置、縦軸はトラックピッチ(相対値)を示している。その相対値は、ヨー角(スキュー角)が0度となる位置でのトラックピッチを1として規格化したものである。トラックピッチの径方向上の変化は、本実施の形態は実線、そのトラックピッチを一定とする従来技術は破線でそれぞれ表している。
【0039】
サイドライト特定を抑制できることから、図11に示すように、本実施の形態ではトラックピッチを径方向上の位置で最適なものとして、径方向上の位置によってトラックピッチを異ならせている。それにより、トラックピッチを一定とする従来技術と比較すると、ヨー角(スキュー角)が0度なる位置、及びその周辺でトラックピッチをより狭くさせている。このため、装置全体の記憶容量も大幅に向上させることができる。上述したように、トラックピッチ(トラックピッチ・レイアウト)の決定は図3のトラックピッチ・レイアウト算出部30dによって行われる。
【0040】
図12は、スキュー角が0度となる位置と装置の記憶容量の関係を説明するグラフである。横軸はスキュー角が0度となる径方向上の位置、縦軸は装置全体の記憶容量を示している。この図12から明らかなように、その位置を外側とすることで装置全体の記憶容量をより大きくすることができる。
【0041】
上述したようなことから、スキュー角が0度となる径方向上の位置は、磁気ディスク33の最外周部分から中心(回転軸)に向かって1/3の領域内とさせることが望ましい。その領域内でスキュー角が0度となるようにすることにより、装置の記憶容量を向上させるのがより容易に実現できる。図7に示すような面形状の主磁極61aを採用すると、サイドライトを効果的に抑制できるため、装置の記憶容量はより容易に向上できることとなる。
【0042】
図9は、最適なトラックピッチの他のヨー角依存性例を説明するグラフである。横軸、及び左右の縦軸が示すものは図8と同じである。また、2つの折れ線は、上側に位置するものは右側の縦軸、その下に位置するものは左側の縦軸によりヨー角(スキュー角)による最適なトラックピッチの変化を表している。
【0043】
大部分の磁気ヘッドは、図8に示すような特性となっている。しかし、一部には、図9に示すような特性を有するものがある。図9に示すような特性では、径方向上の位置によるトラックピッチは、図11に示すグラフを、その中間となる半径位置で左右を逆にしたようなもの、つまりその半径位置で縦軸と平行な線を仮定して線対称とさせたようなものとなる。スキュー角が0度となる位置と装置の記憶容量の関係は図12に示すグラフの傾きを逆にしたもの、つまり負の傾きのものとなる。このことから、図9に示すような特性では、スキュー角が0度となる径方向上の位置は、磁気ディスク33の最内周部分から外側に向かって1/3の領域内とさせれば良い。
【0044】
なお、本実施の形態では、主磁極61aの面形状を台形形状としているが、その面形状は台形形状を含むものであっても良い。例えばテーパー角αとしている側辺の傾きが途中で変化するような形状であっても良い。
【0045】
(付記1)
回転する磁気ディスク上にデータを記録するための主磁極を備えた磁気ヘッドにおいて、
前記磁気ディスクと対向する前記主磁極の面は、該磁気ディスクの径方向と直交する直交方向で該径方向上の幅が連続的に変化する四角形状の部分を有し、
前記四角形状の部分は、前記直交方向上で対向する2つの辺を有し、該2つの辺のうちの一方と、該一方と接する2つの辺とでそれぞれ形成される2つの角度の大きさが異なり、該2つの角度のうちの一つは90度を含むその近傍内の大きさである、
ことを特徴とする磁気ヘッド。
【0046】
(付記2)
前記四角形状は、前記直交方向上で対向する2つの辺が平行な台形の形状である、
ことを特徴とする付記1記載の磁気ヘッド。
【0047】
(付記3)
前記近傍内の角度は、前記径方向上、外側に位置させる辺によって形成される、
ことを特徴とする付記1記載の磁気ヘッド。
【0048】
(付記4)
回転する磁気ディスク上にデータを記録するための主磁極を備えた磁気ヘッドにおいて、
前記磁気ディスクと対向する前記主磁極の面は、該磁気ディスクの径方向と直交する直交方向で対向する2つの辺が平行な台形形状の部分を有し、
前記台形形状の部分は、前記2つの辺のうちで短い方の辺である底辺と、該底辺と接する2つの側辺とでそれぞれ形成される2つの角度に、該2つの側辺のうち前記径方向上、外側に位置させる側辺によって形成される角度のほうが小さい大小関係が存在している、
ことを特徴とする磁気ヘッド。
【0049】
(付記5)
前記外側に位置させる側辺によって形成される角度は、90度を含むその近傍内の大きさである、
ことを特徴とする付記4記載の磁気ヘッド。
【0050】
(付記6)
回転する磁気ディスク上にデータを記録するための主磁極を備えた磁気ヘッドにおいて、
前記磁気ディスクと対向する前記主磁極の面は、該磁気ディスクの径方向と直交する直交方向で対向する2つの辺が平行な台形形状の部分を有し、
前記台形形状の部分は、前記2つの辺のうちで短い方の辺である底辺と、該底辺と接する2つの側辺とでそれぞれ形成される2つの角度のうちの一つが、90度を含むその近傍内の大きさである、
ことを特徴とする磁気ヘッド。
【0051】
(付記7)
前記主磁極の面全体は前記台形形状となっている、
ことを特徴とする付記1、4、または6記載の磁気ヘッド。
【0052】
(付記8)
回転する磁気ディスク上にデータを記録する磁気ディスク装置において、
前記データを記録するための主磁極を有する磁気ヘッドと、
前記磁気ヘッドを前記磁気ディスクの径方向上に移動させる移動手段と、を備え、
前記磁気ヘッドの、前記磁気ディスクの径方向の直交方向となす角であるスキュー角が0度となる該磁気ヘッドの該径方向上の位置を、該磁気ディスクの最外周部分から中心に向かって1/3の領域内としている、
ことを特徴とする磁気ディスク装置。
【0053】
(付記9)
前記磁気ヘッドとして、付記1、4、及び6記載の磁気ヘッドのうちの何れかを採用している、
ことを特徴とする付記8記載の磁気ディスク装置。
【0054】
(付記10)
前記磁気ディスクの最外周部分から中心に向かって1/3の領域内とは、前記データを書き込む前記径方向上の範囲の最外周部分から該範囲の最内周部分に向かって1/3の領域内である、
ことを特徴とする付記8、または9記載の磁気ディスク装置。
【0055】
(付記11)
前記磁気ディスクの最外周部分から中心に向かって1/3の領域内とは、前記データを書き込む記録トラックの最外周から数えた数が全体の1/3となるまでの領域内である、
ことを特徴とする付記8、または9記載の磁気ディスク装置。
【0056】
(付記12)
前記移動手段が有するモータから前記磁気ヘッドが取り付けられた位置までのサスペンションアームを折り曲がった形状とすることにより、前記スキュー角が0度となる該磁気ヘッドの前記径方向上の位置を、該磁気ディスクの最外周部分から中心に向かって1/3の領域内としている、
ことを特徴とする付記8記載の磁気ディスク装置。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】特許文献1に記載された一般的な磁気ディスク装置の構成を説明する図である。
【図2】非特許文献1に記載された主磁極の面の形状を説明する図である。
【図3】本実施の形態による磁気ディスク装置の回路構成を説明する図である。
【図4】磁気ヘッド32が取り付けられたサスペンションアームの形状を説明する図である。
【図5】アーム41の端部に取り付けられたスライダを説明する図である。
【図6】磁気ヘッド32の構成を説明する図である。
【図7】主磁極61aの磁気ディスク33と対向する面の形状を説明する図である。
【図8】最適なトラックピッチのヨー角依存性例を説明するグラフである。
【図9】最適なトラックピッチの他のヨー角依存性例を説明するグラフである。
【図10】径方向上の位置によるシリンダ当たりの記憶容量(線記憶容量)の変化を説明するグラフである。
【図11】径方向上の位置によるトラックピッチの違いを説明するグラフである。
【図12】スキュー角が0度となる位置と装置の記憶容量の関係を説明するグラフである。
【図13】サーボ信号形成処理のフローチャートである。
【図14】位置決め処理のフローチャートである。
【符号の説明】
【0058】
30 コントローラ
30a ヘッド位置制御部
30b サイドライト特性評価部
30c サーボ情報書き込み制御部
30d トラックピッチ・レイアウト算出部
31 VCM
32 磁気ヘッド
33 磁気ディスク(磁気記録媒体)
41 サスペンションアーム
42 中心
43 端部
50 スライダ
61 記録ヘッド
61a 主磁極
61b 補助磁極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転する磁気ディスク上にデータを記録するための主磁極を備えた磁気ヘッドにおいて、
前記磁気ディスクと対向する前記主磁極の面は、該磁気ディスクの径方向と直交する直交方向で該径方向上の幅が連続的に変化する四角形状の部分を有し、
前記四角形状の部分は、前記直交方向上で対向する2つの辺を有し、該2つの辺のうちの一方と、該一方と接する2つの辺とでそれぞれ形成される2つの角度の大きさが異なり、該2つの角度のうちの一つは90度を含むその近傍内の大きさである、
ことを特徴とする磁気ヘッド。
【請求項2】
前記四角形状は、前記直交方向上で対向する2つの辺が平行な台形の形状である、
ことを特徴とする請求項1記載の磁気ヘッド。
【請求項3】
前記近傍内の角度は、前記径方向上、内側に位置させる辺によって形成される、
ことを特徴とする請求項1記載の磁気ヘッド。
【請求項4】
回転する磁気ディスク上にデータを記録するための主磁極を備えた磁気ヘッドにおいて、
前記磁気ディスクと対向する前記主磁極の面は、該磁気ディスクの径方向と直交する直交方向で対向する2つの辺が平行な台形形状の部分を有し、
前記台形形状の部分は、前記2つの辺のうちで短い方の辺である底辺と、該底辺と接する2つの側辺とでそれぞれ形成される2つの角度に、該2つの側辺のうち前記径方向上、内側に位置させる側辺によって形成される角度のほうが小さい大小関係が存在している、
ことを特徴とする磁気ヘッド。
【請求項5】
前記内側に位置させる側辺によって形成される角度は、90度を含むその近傍内の大きさである、
ことを特徴とする請求項4記載の磁気ヘッド。
【請求項6】
回転する磁気ディスク上にデータを記録するための主磁極を備えた磁気ヘッドにおいて、
前記磁気ディスクと対向する前記主磁極の面は、該磁気ディスクの径方向と直交する直交方向で対向する2つの辺が平行な台形形状の部分を有し、
前記台形形状の部分は、前記2つの辺のうちで短い方の辺である底辺と、該底辺と接する2つの側辺とでそれぞれ形成される2つの角度のうちの一つが、90度を含むその近傍内の大きさである、
ことを特徴とする磁気ヘッド。
【請求項7】
前記主磁極の面全体は前記台形形状となっている、
ことを特徴とする請求項1、4、または6記載の磁気ヘッド。
【請求項8】
回転する磁気ディスク上にデータを記録する磁気ディスク装置において、
前記データを記録するための主磁極を有する磁気ヘッドと、
前記磁気ヘッドを前記磁気ディスクの径方向上に移動させる移動手段と、を備え、
前記磁気ヘッドの、前記磁気ディスクの径方向の直交方向となす角であるスキュー角が0度となる該磁気ヘッドの該径方向上の位置を、該磁気ディスクの最外周部分から中心に向かって1/3の領域内としている、
ことを特徴とする磁気ディスク装置。
【請求項9】
前記磁気ヘッドとして、請求項1、4、及び6記載の磁気ヘッドのうちの何れかを採用している、
ことを特徴とする請求項8記載の磁気ディスク装置。
【請求項10】
前記移動手段が有するモータから前記磁気ヘッドが取り付けられた位置までのサスペンションアームを折り曲がった形状とすることにより、前記スキュー角が0度となる該磁気ヘッドの前記径方向上の位置を、該磁気ディスクの最外周部分から中心に向かって1/3の領域内としている、
ことを特徴とする請求項8記載の磁気ディスク装置。

【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図7】
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【図13】
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【図14】
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【図1】
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【図5】
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【図6】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2007−293977(P2007−293977A)
【公開日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−119198(P2006−119198)
【出願日】平成18年4月24日(2006.4.24)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】