説明

磁気ヘッドおよび情報記憶装置

【課題】製造コストの上昇や記録密度の低下を抑えて、ポールイレーズやサイドイレーズを抑制することができる磁気ヘッド、および情報記憶装置を提供する。
【解決手段】記録媒体の表面に対向した、表面に対して相対的に、表面に沿う方向に移動する、記録媒体の表面に交わる磁力線を発する磁極と、磁極を励磁するコイルとを備え、上記磁極が、記録媒体の表面に対する相対的な移動に沿った方向に2層以上積み重なった、移動の最前方に位置する第1の磁性層と、移動の最後方に位置する、第1の磁性層の飽和磁束密度より高い飽和磁束密度を有する第2の磁性層とを有する、保磁力が800A/m以下である積層体を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録媒体に磁場を印加する磁気ヘッド、および記録媒体に対して磁場を用いて情報アクセスを行う情報記憶装置に関する。
【背景技術】
【0002】
情報化社会の進展に伴い、情報量は増大の一途を辿っている。この情報量の増大に対応して、飛躍的に高い記録密度の情報記録方式や情報記憶装置の開発が待望されている。特に、磁場で情報アクセスが行われる磁気ディスクは、情報の書き換えが可能な高密度記録媒体として注目されており、さらなる高記録密度化などのために盛んに研究開発が行われている。
【0003】
磁気ディスクに情報を記録する磁気記録方式としては、記録媒体を表面に沿った方向(面内方向)に磁化する面内記録方式が広く利用されているが、近年では、記録媒体を表面に対して垂直な方向に磁化する垂直記録方式の開発がさかんに行われてきている。垂直記録方式によると、トラックの周方向における記録密度(線記録密度)を向上させることができるうえ、記録済みの情報が熱揺らぎによって破壊されてしまう不具合を軽減することができるという利点があり、今後は、この垂直記録方式が従来の面内記録方式に代えて広く適用されると予測されている。
【0004】
図1は、垂直記録方式の動作原理を説明するための図である。
【0005】
図1に示す磁気ヘッド10には、情報に応じた磁界を発生する薄膜コイル13と、薄膜コイル13で発生した磁界に応じた磁束を発する主磁極11と、主磁極11が発した磁束を拾って薄膜コイル13や主磁極11にフィードバックする補助磁極12が備えられており、さらに、再生素子14aによって磁界を検知して、磁気ディスク1に記録された情報を読み取る再生ヘッド14も備えられている。
【0006】
また、磁気ディスク1は、基板1C上に、情報が記録される記録層1Aと、軟磁性体で構成された軟磁性層1Bとが積層されている。この磁気ディスク1が矢印R方向に回転駆動されることによって、磁気ヘッド10は、磁気ディスク1上を矢印R方向とは逆の矢印R´方向に相対移動することとなる。
【0007】
情報の記録時には、薄膜コイル13に電気的な記録信号が入力されることにより、薄膜コイル13から情報に応じた向きの磁界が発生する。発生した磁界は主磁極11に供給され、主磁極11から磁極に応じた磁束が発せられる。この磁束は、磁気ディスク1に向けて印加されることによって磁気ディスク1の軟磁性層1Bを通過し、拡散されて補助磁極12に戻り、薄膜コイル13や主磁極11に供給される。軟磁性層1Bを経てU字の磁路を描いて回収される磁束の流れが記録磁界を形成し、記録層1Aが面に対して垂直方向に磁化されることにより、情報が記録される。
【0008】
ところで、図1に示す垂直記録方式の磁気ヘッド10に関する問題として、主磁極11中に残留している残留磁化が漏洩して磁気ディスク1に印加されてしまい、すでに磁気ディスク1に記録済みの情報が消去されてしまうポールイレーズや、磁気ヘッドの傾き(スキュー)によって隣接トラックに記録された情報を破壊してしまうサイドイレーズなどが知られている。磁気ヘッド10は、磁気ディスク1上を矢印R´方向に相対的に移動しているため、ポールイレーズやサイドイレーズが発生すると、磁気ディスク1に記録された情報が広範囲にわたって消去されてしまったり、磁気ディスク1上の位置などを表わすサーボ情報までも消去されてしまい、磁気ヘッド10の位置を制御することができなくなってしまう恐れがある。
【0009】
この点に関し、磁気ヘッドの主磁極を、ポールイレーズの抑制効果が高いFeNi合金などで作製する方法が知られているが、このFeNi合金は、従来から主磁極の材料として利用されているFeCo合金などと比べて飽和磁束密度が低いため、記録密度が低下してしまうという問題がある。
【0010】
ポールイレーズの抑制や高記録密度を実現するための技術として、特許文献1には、強磁性材料と非磁性材料とを磁気ヘッドの移動方向R´に交互に複数積み重ねた主磁極を適用する技術について記載されており、特許文献2には、主磁極の、磁気ディスクと対向する対向面を、磁気ディスクの流入側(磁気ヘッドの移動方向R´の前方)ほど幅が狭く、磁気ディスクの流出側(磁気ヘッドの移動方向R´の後方)ほど幅広な形状に形成する技術について記載されている。特許文献1に記載された技術によると、強磁性材料で構成された2つの強磁性層が、非磁性材料で構成された非磁性層を介して対向し、それらの磁化の向きが相互に逆方向となることによって、残留磁化を軽減することができ、特許文献2に記載された技術によると、主磁極先端に効率よく磁束を集中させることができ、記録密度を向上させることができる。したがって、これら特許文献1および特許文献2それぞれに記載された技術を合わせて適用することによって、ポールイレーズの抑制と高記録密度とを両立することができると考えられる。
【特許文献1】特開2004−281023号公報
【特許文献2】特開2003−242608号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかし、特許文献1に記載された技術では、主磁極を構成する強磁性材料(例えば、FeCo)と非磁性材料(例えば、Ru)との組み合わせがかなり限定されてしまう。例えば、FeCoとRuとの組み合わせで主磁極を作製する場合、それらを積層する積層方法として、コスト面および量産性に優れためっき法を利用することができず、スパッタ法にほぼ限定されてしまい、製造コストが上昇してしまうという問題がある。また、特許文献1および特許文献2に記載された技術を適用しても、サイドイレーズを十分には抑制することができないという問題がある。
【0012】
上記事情に鑑み、製造コストの上昇を抑えて、ポールイレーズおよびサイドイレーズの抑制と、高記録密度とを両立することができる磁気ヘッド、および情報記憶装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成する磁気ヘッドの基本形態は、
記録媒体の表面に対向した、表面に対して相対的に、表面に沿う方向に移動する、記録媒体の表面に交わる磁力線を発する磁極と、
磁極を励磁するコイルとを備え、
上記磁極が、記録媒体の表面に対する相対的な移動に沿った方向に2層以上積み重なった、移動の最前方に位置する第1の磁性層と、移動の最後方に位置する、第1の磁性層の飽和磁束密度より高い飽和磁束密度を有する第2の磁性層とを有する、保磁力が800A/m以下である積層体を備えたことを特徴とする。
【0014】
ポールイレーズは、磁極の保磁力との相関が高いことが知られており、ポールイレーズを抑制するためには、磁極の保磁力を800A/m以下程度にまで低下させることが求められる。一方、磁気ヘッドの記録密度を向上させるためには、磁極に対して高い飽和磁束密度が要求される。
【0015】
この磁気ヘッドの基本形態によると、磁極の保磁力が800A/m以下であるため、ポールイレーズを確実に抑制することができる。また、サイドイレーズが発生しやすく、O/W(オーバーライト)特性への影響が小さい磁極の最前方が飽和磁束密度が低い第1の磁性層で構成され、O/W(オーバーライト)特性への影響が大きい磁極の最後方が飽和磁束密度が高い第2の磁性層で構成されているため、サイドイレーズを効率よく抑制して磁極の飽和磁束密度を高めることができる。
【0016】
また、上述した磁気ヘッドの基本形態に対して、第1の磁性層が、Ni100−xFe(15≦x wt%)の組成を有し、第2の磁性層が、FeCo100−x(65≦x≦75 wt%)の組成を有する応用形態は好ましい。
【0017】
Ni100−xFe(15>x wt%)の組成範囲を有する材料では、垂直異方性が発生することが知られている。垂直異方性を有する磁性層は、面内異方性を有する磁性層と比べて保磁力が大きいうえ、さらに、プロセス途中の熱ストレスなどによっても保磁力が増大するため、ポールイレーズが発生しやすくなるという問題がある。この好ましい応用形態によると、Ni100−xFe(15≦x wt%)の組成を有する第1の磁性層が面内異方性を有し、保磁力を十分に低減することができるため、ポールイレーズの発生を抑えることができる。また、第2の磁性層が、FeCo100−x(65≦x≦75 wt%)の組成を有することにより、磁極の飽和磁束密度を十分に高く(2.3T程度以上)維持することができる。
【0018】
また、上述した磁気ヘッドの基本形態に対して、上記第1の磁性層が、Ni100−xFe(18≦x≦70 wt%)の組成を有し、第2の磁性層が、FeCo100−x(65≦x≦75 wt%)の組成を有するという応用形態はさらに好ましい。
【0019】
Ni100−xFe(18≦x≦70 wt%)の組成範囲を有する第1の磁性層を適用することによって、保磁力を効率良く低減することができ、ポールイレーズの発生を確実に防止することができる。
【0020】
また、NiFe合金では、Feの割合が低下すると飽和磁束密度の値がリニアに減少するため、第1の磁性層がNi100−xFe(18≦x≦70 wt%)の組成範囲を有する場合、磁極全体の飽和磁束密度も低下してO/W特性が劣化してしまう恐れがある。しかし、今回、磁極全体に対する第1の磁性層の割合を増加させていくと保磁力が低下していくが、第1の磁性層の割合が所定値(約40%)を超えると保磁力の低下が飽和することがわかった。このため、Ni100−xFe(18≦x≦70 wt%)の組成範囲を有する第1の磁性層の割合を抑え、磁極全体の飽和磁束密度への影響が大きい第2の磁性層の割合を高めることによって、ポールイレーズの防止と、O/W特性の向上とを両立させることができる。
【0021】
また、上述した磁気ヘッドの基本形態に対して、上記第1の磁性層が、CoNiFe(x+y+z=100,0<y≦10,0<x≦33 wt%)の組成を有し、第2の磁性層が、FeCo100−x(65≦x≦75 wt%)の組成を有するという応用形態は好ましい。
【0022】
第1の磁性層がCoNiFe(x+y+z=100,0<y≦10,0<x≦33 wt%)の組成を有することによって、磁極の保磁力を800A/m以下にまで抑えることができ、ポールイレーズの発生を確実に防止することができる。
【0023】
また、上述した磁気ヘッドの基本形態に対して、上記第1の磁性層が、FeCo100−x(75≦x wt%)の組成を有し、上記第2の磁性層が、FeCo100−x(65≦x≦75 wt%)の組成を有するという応用形態は好適である。
【0024】
第1の磁性層が、FeCo100−x(75≦x wt%)の組成を有することによって、磁歪を抑えて保磁力を低減させることができ、ポールイレーズの発生を防止することができる。
【0025】
また、上述した磁気ヘッドの基本形態に対して、上記第1の磁性層が、CoNiFez(x+y+z=100,64≦x≦68,15≦z≦20 wt%)の組成を有し、上記第2の磁性層が、FeCo100−x(65≦x≦75 wt%)の組成を有するという応用形態は好ましい。
【0026】
第1の磁性層が、CoNiFez(x+y+z=100,64≦x≦68,15≦z≦20 wt%)の組成を有する場合にも、ポールイレーズの発生を効率良く防止することができる。
【0027】
また、上述した磁気ヘッドの基本形態に対して、上記磁極は、第1の磁性層および第2の磁性層がめっき処理によって形成されたものであるという応用形態は好ましい。
【0028】
磁気ヘッドの基本形態においては、第1の磁性層および第2の磁性層を構成する材料として、飽和磁束密度が相互に異なる磁性材料を組み合わせればよく、それらの両方が強磁性材料であってもよい。このため、材料の選択範囲が広がり、コスト面および量産性に優れためっき法で積層可能な材料を組み合わせることができる。
【0029】
また、上述した磁気ヘッドの基本形態に対して、上記磁極は、記録媒体の表面に沿った断面が、移動の前方が狭くて後方が広い形状のものであるという応用形態は好ましい。
【0030】
記録媒体の表面に沿った断面が、移動の前方が狭くて後方が広い形状を有する磁極を適用することによって、ヘッド駆動時スキュー角が発生した際に、磁極の前方側が隣のトラックにはみ出す不具合を防止することができ、記録情報を消去してしまうサイドイレーズの発生を抑制することができる。
【0031】
また、上述した磁気ヘッドの基本形態に対して、上記磁極が、第1の磁性層の、記録媒体の表面に対向する面の面積をS1、第2の磁性層の、記録媒体の表面に対向する面の面積をS2としたときに、S2/(S1+S2)>0.35の関係を満たすものであるという応用形態は好ましい。
【0032】
S2/(S1+S2)>0.35とすることによって、O/W特性を維持したままでライトコア幅を狭くすることができ、ポールイレーズも確実に抑えることができる。
【0033】
また、上述した磁気ヘッドの基本形態に対して、上記磁極が、複数の層の総体で、2.1Tよりも大きい飽和磁束密度と、800A/mよりも低い保磁力とを有するものであるという応用形態は好適である。
【0034】
2.1Tよりも大きい飽和磁束密度と、800A/mよりも低い保磁力とを有する磁極を適用することにより、ポールイレーズの抑制と高記録密度とを確実に両立させることができる。
【0035】
また、上述した磁気ヘッドの基本形態に対して、上記磁極は、下地層と第1の磁性層および第2の磁性層との間に、第1の磁性層および第2の磁性層の組成とは異なる合金膜が形成されたものであるという応用形態は好適である。
【0036】
また、上述した磁気ヘッドの基本形態に対して、上記磁極は、非磁性の下地層を有し、下地層上に、第1の磁性層および第2の磁性層がめっき処理によって形成されたものであるという応用形態は好ましく、
上記磁極は、下地層が、Ru,Pd,Pt,Rh、Au,Cu,NiP,NiMo,NiCrのうちの少なくとも1種類以上の元素を含という応用形態はさらに好ましい。
【0037】
垂直ヘッドプロセスにおいて、めっき処理によって磁極を形成した後、不要なめっき下地層部分をイオンミリングなどにより除去するときに、磁極側壁に除去した下地層の一部が再付着することがある。めっき下地層を磁性膜で形成した場合、再付着層が磁性を持つため再付着層も磁極の一部として機能することになり、磁極の幅が増加して断面形状が悪化するという問題がある。めっき下地層を非磁性導電性膜で形成することによって、再付着層が非磁性となり、再付着層による磁極幅の増加、磁極断面形状の悪化を抑制することができる。また、下地層が非磁性である場合は下地が磁極の一部として機能することは無いため、下地を、先端ほど細く形成された磁極の幅と形状に精度良く合わせて、不要な部分だけを除去する手間を省くことが出来る。
【0038】
また、上述した磁気ヘッドの基本形態に対して、上記磁極は、下地層がRuで構成されたものであるという応用形態は好ましい。
【0039】
Feの割合が高く、飽和磁束密度が高い磁性膜の結晶構造は体心立方格子であるが、体心立方格子の磁性膜は、(110)配向に制御することによって保磁力を低減することができる。下地層としてRuを利用することにより、体心立方格子の磁性膜を(110)配向に制御することができ、保磁力を低減することが可能になる。また、面心立方格子の結晶構造を有する磁性膜は、下地層によらず保磁力が低下する傾向にあるが、下地層としてRuを利用する場合にも低い保磁力が得られる。
【0040】
下地層としてRuを利用する場合、表面に揮発性の酸化物を作りやすく、めっき処理時に不具合が発生しやすいため、Ru上にNiFeなどのような導電性膜を薄く形成することが好ましい。
【0041】
また、上述した磁気ヘッドの基本形態に対して、上記磁極は、磁性の下地層を有し、下地層上に、第1の磁性層および第2の磁性層がめっき処理によって形成されたものであるという応用形態は好ましく、
上記磁極は、下地層が、Ni,Fe,Coのうち少なくとも1種類以上の元素を含むものであるという応用形態はさらに好ましい。
【0042】
また、上記目的を達成する情報記憶装置の基本形態は、
記録媒体に対し、磁場を用いて情報アクセスを行う情報記憶装置において、
記録媒体の表面に対向した、記録媒体の表面に交わる磁力線を発する磁極と、
磁極を励磁するコイルと、
磁極を、記録媒体の表面に対して相対的に、表面に沿う方向に移動させる移動機構とを備え、
上記磁極が、記録媒体の表面に対する相対的な移動に沿った方向に2層以上積み重なった、移動の最前方に位置する第1の磁性層と、移動の最後方に位置する、第1の磁性層の飽和磁束密度より高い飽和磁束密度を有する第2の磁性層とを有する、保磁力が800A/m以下である積層体を備えたことを特徴とする。
【0043】
この情報記憶装置の基本形態によると、ポールイレーズを抑制するとともに、高い記録密度で情報を記録することができる。
【0044】
また、上述した情報記憶装置の基本形態に対して、上記第1の磁性層が、Ni100−xFe(15≦x wt%)の組成を有し、第2の磁性層が、FeCo100−x(65≦x≦75 wt%)の組成を有するという応用形態は好ましい。
【0045】
この好ましい情報記憶装置の応用形態によると、第1の磁性層が面内異方性を有するため、保磁力を低減してポールイレーズの発生を抑えることができる。また、第2の磁性層が、FeCo100−x(65≦x≦75 wt%)の組成を有することにより、高い飽和磁束密度を実現することができ、O/W特性を向上させることができる。
【0046】
また、上述した情報記憶装置の基本形態に対して、第1の磁性層が、CoNiFe(x+y+z=100,0<y≦10,0<x≦33 wt%)の組成を有し、第2の磁性層が、FeCo100−x(65≦x≦75 wt%)の組成を有するという応用形態は好適である。
【0047】
この好適な情報記憶装置の応用形態によると、磁極の保磁力を800A/m以下まで抑えることができ、ポールイレーズの発生を確実に防止することができる。
【0048】
また、上述した情報記憶装置の基本形態に対して、上記第1の磁性層が、FeCo100−x( 75≦x wt%)の組成を有し、第2の磁性層が、FeCo100−x(65≦x≦75 wt%)の組成を有するという応用形態は好ましい。
【0049】
この好ましい情報記憶装置の応用形態によると、第1の磁性層における磁歪を抑えて保磁力を低減させることができる。
【0050】
尚、情報記憶装置については、ここではその基本的な応用形態のみを示すのにとどめるが、情報記憶装置には、上記の応用形態のみではなく、前述した磁気ヘッドの各応用形態に対応する各種の応用形態が含まれる。
【発明の効果】
【0051】
以上説明したように、磁気ヘッドおよび情報記憶装置の基本形態によると、製造コストの上昇を抑えて、ポールイレーズおよびサイドイレーズの抑制と、高記録密度とを両立することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0052】
以下、図面を参照して、上記説明した基本形態および応用形態に対する具体的な実施形態を説明する。
【0053】
図2は、上述した情報記憶装置の具体的な実施形態であるハードディスク装置100の外観図である。
【0054】
図2に示すハードディスク装置100は、パーソナルコンピュータなどに代表されるホスト装置に接続され、あるいは内部に組み込まれて利用される。
【0055】
図2に示すように、ハードディスク装置100のハウジング101には、情報が記録される磁気ディスク1、磁気ディスク1を矢印R方向に回転させるスピンドルモータ102、磁気ディスク1の表面に近接して対向する浮上ヘッドスライダ104、アーム軸105、浮上ヘッドスライダ104を先端に固着して、アーム軸105を中心に磁気ディスク1上を面に沿って移動するキャリッジアーム106、キャリッジアーム106を駆動するボイスコイルモータ107、およびハードディスク装置100の動作を制御する制御回路108が収容されている。スピンドルモータ102とボイスコイルモータ107とを合わせたものは、上述した情報記憶装置の基本形態における移動機構の一例に相当する。
【0056】
浮上ヘッドスライダ104の先端には、上述した磁気ヘッドの具体的な実施形態であり、磁気ディスク1に磁場を印加する磁気ヘッド109が設けられており、ハードディスク装置100は、この磁場を使って磁気ディスク1に情報を記録したり、磁気ディスク1に記録された情報を読み取るものである。尚、ハードディスク装置100には、本来は複数枚の磁気ディスク1が備えられており、それら複数枚の磁気ディスクそれぞれに磁気ヘッド109が設けられている。しかし、説明を簡略化するため、本実施形態の説明においては、1枚の磁気ディスク1と、その磁気ディスク1に設けられた1つの磁気ヘッド109に着目して説明する。
【0057】
図3は、ハードディスク装置100の機能ブロック図であり、図4は、磁気ヘッド109の概略構成図である。
【0058】
図3に示すように、ハードディスク装置100には、図2にも示すスピンドルモータ102、ボイスコイルモータ107、制御回路108、および磁気ヘッド109などが備えられている。制御回路108は、ハードディスク装置100全体の制御を行うハードディスク制御部111、スピンドルモータ102やボイスコイルモータ107を制御するサーボ制御部112、ボイスコイルモータ107を駆動させるボイスコイルモータ駆動部113、スピンドルモータ102を駆動させるスピンドルモータ駆動部114、磁気ディスク1をフォーマットするフォーマッタ115、磁気ディスク1に書き込む書込情報を担持した書込電流の発生と、磁気ヘッド109で磁気ディスク1に記録された情報が読み取られて得られた再生信号のデジタルデータへの変換とを行うリード/ライトチャネル116、ハードディスク制御部111においてキャッシュとして使用されるバッファ117、およびハードディスク制御部111において作業領域として使用されるRAM118などで構成されている。
【0059】
図4には、磁気ヘッド109の一部の断面構造が示されている。この磁気ヘッド109は、磁気ディスク1上に位置決めされた状態で磁気ディスク1が矢印R方向に回転されることによって、見かけ上は、磁気ディスク1の回転方向とは逆の矢印R´方向へと移動する。
【0060】
磁気ヘッド109には、移動方向R´における後方から順に、磁束を発する主磁極210、磁界を発生するコイル250、および主磁極210が発した磁束を拾ってコイル250と主磁極210にフィードバックする補助磁極230、磁気ディスク1に記録された情報を読み取る再生ヘッド240の順に配置されており、主磁極210と補助磁極230とを連結するヨーク220も備えられている。主磁極210は、上述した情報記憶装置および磁気ヘッドの基本形態における磁極の一例にあたり、コイル250は、上述した情報記憶装置および磁気ヘッドの基本形態におけるコイルの一例に相当する。
【0061】
また、磁気ディスク1は、基板1C上に、情報が記録される記録層1Aと、軟磁性体で構成された軟磁性層1Bとが積層されている。磁気ディスク1は、上述した情報記憶装置および磁気ヘッドの基本形態における記録媒体の一例に相当する。
【0062】
以下では、図3および図4を使って、磁気ディスク1へのアクセス方法について説明する。
【0063】
磁気ディスク1に情報を書き込む際には、図3に示すホスト装置200からハードディスク装置100に向けて、磁気ディスク1に記録する書込情報と、書込位置の論理アドレスが送られてくる。ハードディスク制御部111は、論理アドレスを物理アドレスに変換し、物理アドレスをサーボ制御部112に伝える。
【0064】
サーボ制御部112は、スピンドルモータ駆動部114にスピンドルモータ102を回転させる指示を伝えるとともに、ボイスコイルモータ駆動部113にキャリッジアーム106(図2参照)を移動させる指示を伝える。スピンドルモータ駆動部114は、スピンドルモータ102を駆動して磁気ディスク1を回転させ、ボイスコイルモータ駆動部113は、ボイスコイルモータ107を駆動してキャリッジアーム106を移動させる。その結果、磁気ヘッド109が磁気ディスク1上に位置決めされる。
【0065】
磁気ヘッド109が位置決めされると、ハードディスク制御部111は、書込信号をリード/ライトチャネル116に伝え、リード/ライトチャネル116は、磁気ヘッド109に、書込情報を担持した書込電流を印加する。
【0066】
磁気ヘッド109では、図4に示すコイル250に書込信号が入力され、コイル250によって、書込信号に応じた向きの磁界が発生する。主磁極210では、コイル250によって発生した磁界に応じた磁束が磁気ディスク1に向けて発せられ、その結果、磁気ディスク1の記録層1Aに、情報に応じた向きの磁化が形成されて、磁気ディスク1に情報が記録される。尚、記録層1Aに磁化を形成した磁束は、軟磁性層1Bを経て補助磁極230に回収され、ヨーク220を介して主磁極210にフィードバックされる。
【0067】
また、磁気ディスク1に記録された情報を読み取る際には、図3に示すホスト装置200からハードディスク装置100に向けて、情報が記録された記録位置の論理アドレスが送られてくる。その後、情報書込時と同様にして、ハードディスク制御部111において論理アドレスが物理アドレスに変換され、スピンドルモータ102が回転駆動して磁気ディスク1が回転され、ボイスコイルモータ107が駆動してキャリッジアーム106が移動されることにより、磁気ヘッド109が磁気ディスク1上に位置決めされる。
【0068】
図4に示す磁気ヘッド109には、磁化から発生する磁界に応じた抵抗値を生じる再生素子240aが組み込まれており、再生素子240aに電流が流されることによって、磁化状態に応じた再生信号が生成される。尚、本実施形態では、再生素子1094の詳細なタイプについてはとくには限定しないが、この再生素子240aとしては、例えばGMR(巨大磁気抵抗)素子やTMR(トンネル磁気抵抗)素子などが採用可能である。
【0069】
再生信号は、図3に示すリード/ライトチャネル116でデジタルデータに変換された後、ハードディスク制御部111を介してホスト装置200に送られる。
【0070】
基本的には、以上のようにして磁気ディスク1に対して情報アクセスが行われる。
【0071】
次に、磁気ヘッド109についてさらに詳しく説明する。
【0072】
図5は、主磁極210の先端部分の概略図であり、図6は、主磁極210を磁気ディスク1側から見たときの図である。
【0073】
図5に示すように、主磁極210は、磁気ディスク1と対向する対向面211の形状が、磁気ディスク1の移動方向R´の前方ほど幅が狭く、移動方向R´の後方ほど幅広に形成されている。主磁極210が、移動方向R´の後方から前方に向けて先細りな形状を有することにより、ヘッド駆動時スキュー角が発生した際に、主磁極210の前方側が隣のトラックにはみ出す不具合を防止することができ、記録情報を消去してしまうサイドイレーズの発生を抑制することができる。
【0074】
また、図6に示すように、主磁極210は、磁気ディスク1の移動方向R´に沿って、相対的に飽和磁束密度が小さい第1の層211A(例えば、FeNi:飽和磁束密度Bsが2.1[T])と、相対的に飽和磁束密度が大きい第2の層211B(例えば、FeCo:飽和磁束密度Bsが2.3[T]以上)とが交互に計4層積み重ねられており、その結果、主磁極210全体の飽和磁束密度Bsが2.1[T]以上であり、保磁力Hcが800[A/m]以下に抑えられている。第1の層211Aは、上述した情報記憶装置および磁気ヘッドの基本形態における第1の磁性層の一例にあたり、第2の層211Bは、上述した情報記憶装置および磁気ヘッドの基本形態における第2の磁性層の一例に相当する。本実施形態では、主磁極210の保磁力Hcが800[A/m]以下であるため、ポールイレーズを確実に抑制することができる。また、サイドイレーズが発生しやすい移動方向R´の前方に、飽和磁束密度Bsが小さい第1の層211Aが配置され、サイドイレーズが発生しにくい移動方向R´の後方に、飽和磁束密度Bsが高い第2の磁性層が配置されるように、第1の層211Aと第2の層211Bとが交互に積み重ねられているため、サイドイレーズを効率よく抑制してO/W特性を高めることができる。
【0075】
また、第1の層211Aおよび第2の層211Bを構成する材料としては、飽和磁束密度が相互に異なる磁性材料を組み合わせればよく、コスト面および量産性に優れためっき法で積層可能な材料を組み合わせることができる。本実施形態においては、非磁性材料であるRuの下地層の上に導電性膜(NiFeなど)が薄く形成され、さらにその上に第1の層211Aおよび第2の層211Bがめっき処理によって形成される。
【0076】
下地層としてRuを利用することにより、Feの割合が高く、飽和磁束密度が高い体心立方格子の磁性層を(110)配向に制御することができ、保磁力Hcを低減することが可能になる。また、Ru上に導電性膜を薄く形成することによって、めっき処理の不具合を軽減することができる。
【0077】
図7は、下地層上に第1の層および第2の層が形成された主磁極を示す図である。
【0078】
図7(A)に示すように、めっき処理によって主磁極210´を形成した後、不要なめっき下地層部分をイオンミリングなどにより除去するときに、主磁極210´に除去した下地層211Cの一部が再付着することがある。下地層211Cが磁性材料で構成されている場合、この下地層211Cも主磁極210´の一部として機能してしまうため、図7(B)に示すように、下地層211Cを先端側ほど細く削る必要がある。本実施形態では、下地層211Cが非磁性材料で構成されているため、下地層211Cを精度良く主磁極の幅に削る手間を省くことができる。また、再付着層による磁極幅の増大や磁極断面形状の悪化も防止することが出来る。尚、非磁性の下地層211Cとしては、Ru,Pd,Pt,Rh、Au,Cu,NiP,NiMo,NiCrのうちの少なくとも1種類以上の元素を含んだものなどを好ましく用いることができる。また、磁性の下地層としては、Ni,Fe,Coのうち少なくとも1種類以上の元素を含むものなどを適用することができる。特にNiFeを下地としたときは、Ru下地同様、Feの割合が高く、飽和磁束密度が高い体心立方格子の磁性層を(110)配向に制御することができ、保磁力Hcを低減することが可能になる。
【0079】
以上のように、本実施形態によると、製造コストの上昇を抑え、ポールイレーズやサイドイレーズの抑制と、高記録密度とを両立することができる。
【0080】
ここで、上記では、第1の層と第2の層とが交互に計4層積み重ねられた主磁極の例について説明したが、「課題を解決するための手段」で説明した磁気ヘッドおよび情報記憶装置の基本形態における磁極は、第1の磁性層と第2の磁性層とが2層積み重ねられたものでよい。また、第1の磁性層と第2の磁性層とが4層以上積み重ねられたものであってもよく、第1の磁性層および第2の磁性層とは異なる第3の層も積み重ねられたものであってもよい。尚、この第3の層は、導電性を有する材料であれば、非磁性材料であってもよい。この第3の層が磁性材料である場合には、ポールイレーズやサイドイレーズ抑制の面から、保磁力がなるべく低いものであることが好ましい。
【0081】
また、第1の磁性層と第2の磁性層とを積層する場合、磁気ヘッド全体の飽和磁束密度Bsは各層における飽和磁束密度の総和となるが、磁気ヘッド全体の保磁力Hcは、各層を構成する材料の結晶性などによって変わるため、各層における保磁力から単純には決まらない。このため、飽和磁束密度が高い第2の磁性層の層厚をなるべく厚くすることによって(第1の磁性層の、記録媒体の表面に対向する面の面積をS1、第2の磁性層の、記録媒体の表面に対向する面の面積をS2としたときに、S2/(S1+S2)>0.35)、磁気ヘッド全体の飽和磁束密度を向上させることが好ましい。
【0082】
また、磁気ヘッドおよび情報記憶装置の基本形態における第2の磁性層としては、FeCo(60<Fe<80at%)、FeCoNi(55<Fe<80at%、20<Co<45at%、0<Ni<20at%)などを適用することができ、磁気ヘッドおよび情報記憶装置の基本形態における第1の磁性層としては、FeNi合金(Fe>75at%)、FeCo合金(Fe>75at%)などを好ましく適用することができる。また、それら第1の磁性層と第2の磁性層との間に第3の層を積層する場合、その第3の層としては、パーマロイ、50%ニッケルパーマロイ、NiP、NiFeMo、NiMo、Ru、Pd、Pt、Rh、Cuなどを用いることができる。
【実施例】
【0083】
以下、本発明の実施例について説明する。
【0084】
まずは、後でまとめて記述する各付記のうちの付記1(請求項1)に対応する実施例について説明する。
【0085】
図8は、主磁極の保磁力Hc[A/m]と、ポールイレーズ発生の有無との関係を示すグラフである。
【0086】
図8では、(1)NiFe合金のみで構成した第1の主磁極、(2)FeNi合金とFeCo合金とで構成した第2の主磁極、(3)FeNi合金とFeCo合金とで構成した第3の主磁極、(4)FeCo合金のみで構成した第4の主磁極、(5)FeNi合金とFeCo合金とで構成した第5の主磁極、(6)FeCo合金のみで構成した第6の主磁極それぞれにおける困難軸方向の保磁力Hc[A/m]が白抜きバーで示され、容易軸方向の保磁力Hc[A/m]が黒塗りバーで示されており、さらに、ポールイレーズ発生の確認結果も示されている。
【0087】
図8に示すように、容易軸方向保磁力Hcが800[A/m]よりも大きい第6の主磁極においてのみポールイレーズが発生している。このことから、主磁極全体の保磁力Hcを800[A/m]以下に調整することによって、ポールイレーズを抑制できることがわかった。
【0088】
図9は、従来、主磁極の材料として広く用いられている各種磁性材料、および複数の磁性材料の積層膜それぞれの飽和磁束密度および保磁力を示すグラフである。
【0089】
図9では、横軸に飽和磁束密度Bs[T]、縦軸に保磁力Hc[A/m]が対応付けられており、CoNiFe系の磁性材料は三角でプロットされており、NiFe系の材料は四角でプロットされており、FeCo系の材料はひし形でプロットされており、FeNiとFeCoの積層膜およびCoNiFeとFeCoの積層膜は丸でプロットされている。
【0090】
上述したように、ポールイレーズを抑制するためには、主磁極の保磁力Hcが800[A/m]以下であることが必要であり、さらに、高記録密度を実現するためには、主磁極の飽和磁束密度Bsが2.1[T]以上であることが要求される。図9に示すように、NiFe系材料(四角でプロットされている材料)は、保磁力Hcは800[A/m]以下であるものの、飽和磁束密度Bsが小さく、CoNiFe系の材料(三角でプロットされている材料)は、保磁力Hcが高すぎたり、飽和磁束密度Bsが小さすぎて、両方の条件を満たすものがなく、FeCo系材料(ひし形でプロットされている材料)は、1つだけ両方の条件を満たしているが、それ以外は保磁力Hcが高すぎるとう問題がある。このように、1層のみで高記録密度とポールイレーズの抑制とを確実に両立する材料は大変少ない。一方で、FeNiとFeCoの積層膜およびCoNiFeとFeCoの積層膜(丸でプロットされている材料)は、保磁力Hcと飽和磁束密度Bsの双方の条件を満たしている。このように、主磁極を複数層で構成することによって、高飽和磁束密度Bsで主磁極全体の保磁力Hcを抑制できることがわかった。
【0091】
続いて、付記2(請求項2)に対応する実施例について説明する。
【0092】
図10は、第2の磁性層として用いられるFeCo合金におけるFeの割合と飽和磁束密度Bsとの関係を示す図である。
【0093】
図10に示すように、FeCo合金におけるFeの割合が増加すると飽和磁束密度Bsも高くなり、さらに、Feの割合が75%を超えると徐々に飽和磁束密度Bsが低下していく。主磁極全体として2.1[T]以上の飽和磁束密度Bsを実現しO/Wを向上させるためには、第2の磁性層であるFeCo合金が2.1[T]より高ければ良いが、磁場勾配も急峻にし更に記録能力を良化させるためには、出来るだけ飽和磁束密度Bsが高いことが望ましく、2.3[T]程度以上の飽和磁束密度Bsが要求される。Feの割合が65%から75%の間であればこの条件を満たしており、本発明の有用性が実証された。
【0094】
図11は、第1の磁性層として用いられるNiFe合金におけるFeの割合と飽和磁束密度Bsとの関係を示す図である。
【0095】
図11に示すように、NiFe合金において、Feの割合が増加すると飽和磁束密度Bsが向上している。しかし、第1の磁性層は、O/W特性への影響が小さいため、高い飽和磁束密度Bsよりも低い保磁力Hcが求められる。
【0096】
図12は、NiFe合金におけるFeの割合と保磁力Hcとの関係を示す図であり、図13は、NiFe合金におけるNiの割合、特に図12のFe組成が低い領域でHcが急激に悪化しているNi組成領域付近のNiの割合と保磁力Hcとの関係を示す図である。黒塗りのプロットが容易軸方向保磁力を、白抜きのプロットが困難軸方向保磁力を示す。
【0097】
図12および図13に示すように、NiFe合金において、Feの割合が15%よりも小さく、Niの割合が85%を超えたあたりから、保磁力Hcが急激に増加している。この原因は、Feの割合が15%よりも高いNiFe合金(すなわち、Niが85%以上)では、垂直異方性が発生するためであると考えられる。
【0098】
図14は、垂直異方性が生じていないNiFe合金のB−Hカーブを示す図であり、図15は、垂直異方性が生じているNiFe合金のB−Hカーブを示す図である。
【0099】
図14には、Niの割合が79.27%のNiFe合金におけるB−Hカーブが示されており、図15には、Niの割合が88.6%のNiFe合金におけるB−Hカーブが示されている。図14に示すように、Niの割合が79.27%のNiFe合金では垂直異方性が生じておらず、保磁力Hcが抑えられている。しかし、図15に示すように、Niの割合が88.6%のNiFe合金には垂直異方性が生じており、保磁力Hcが悪化していることがわかる。以上のことから、NiFe合金において、Feの割合は15%以上が好ましいことがわかった。
【0100】
続いて、付記3に対応する実施例について説明する。
【0101】
図16は、主磁極全体に対する第1の磁性層の厚さと保磁力Hcとの関係を示す図であり、図17は、主磁極全体に対する第1の磁性層の厚さと飽和磁束密度Bsとの関係を示す図である。
【0102】
図16および図17では、(1)NiFe合金(Niが10%)の第1の磁性層とFeCo合金の第2磁性層が積層された第1の主磁極の結果がひし形でプロットされ、(2)NiFe合金(Niが35%)の第1の磁性層とFeCo合金の第2磁性層が積層された第2の主磁極の結果が四角でプロットされ、(3)NiFe合金(Niが50%)の第1の磁性層とFeCo合金の第2磁性層が積層された第3の主磁極の結果が三角でプロットされ、(4)NiFe合金(Niが80%)の第1の磁性層とFeCo合金の第2磁性層が積層された第4の主磁極の結果が丸でプロットされ、(5)CoNiFe合金の第1の磁性層とFeCo合金の第2磁性層が積層された第5の主磁極の結果がばつ印でプロットされている。
【0103】
図16に示すように、NiFe合金においてFeの割合が90%である第1の磁極では、他の磁極と比較して保磁力Hcの低減が少ない。図17に示すように、NiFe合金においてFeの割合が20%である第4の磁極では、他の磁極と比較して飽和磁束密度Bsが大きく低下している。これらのことから、図16および図17中の実施例においては、Feの割合が65%である第2の磁極、およびFeの割合が50%である第3の磁極が好ましい。主磁極全体に対する第1の磁性層の厚さが薄いところでは、Feの割合が65%である第2の磁極、およびFeの割合が50%である第3の磁極に加え、Feの割合が20%である第4の磁極も好適である。以上より、Feの割合が18%から70%であれば、保磁力Hcと飽和磁束密度Bsの条件を両立できることがわかる。また、主磁極全体に対するNiFe合金の厚さの割合を40%程度にまで抑え、磁極全体の飽和磁束密度への影響が大きいFeCo合金の割合を高めることによって、ポールイレーズの防止と、O/W特性の向上とを両立させることができることがわかる。
【0104】
続いて、付記4(請求項3)に対応する実施例について説明する。
【0105】
図18は、CoNiFe合金におけるCo,Ni,Feそれぞれの割合と飽和磁束密度Bsとの関係を示す図であり、図19は、CoNiFe合金におけるCo,Ni,Feそれぞれの割合と保磁力Hcとの関係を示す図である。
【0106】
図18では、飽和磁束密度Bsが2.3[T]以上であるCoNiFe合金の組成が丸でプロットされており、飽和磁束密度Bsが2.2[T]以上かつ2.3[T]よりも小さいCoNiFe合金の組成が三角でプロットされており、飽和磁束密度Bsが2.1[T]以上かつ2.2[T]よりも小さいCoNiFe合金の組成が四角でプロットされており、飽和磁束密度Bsが2[T]以上かつ2.1[T]よりも小さいCoNiFe合金の組成がひし形でプロットされている。この図18に示すように、飽和磁束密度Bsが2.1よりも大きいCoNiFe合金では、Feの割合が高いことがわかる。
【0107】
また、図19では、保磁力Hcが240[A/m]以上かつ480[A/m]よりも小さいCoNiFe合金の組成が丸でプロットされており、保磁力Hcが480[A/m]以上かつ720[A/m]よりも小さいCoNiFe合金の組成が三角でプロットされており、保磁力Hcが720[A/m]以上かつ960[A/m]よりも小さいCoNiFe合金の組成が四角でプロットされている。図19に示すように、保磁力Hcを720[A/m]以下に抑えるためには、Coの割合が33%以下で、Niの割合が10%以下でにする必要があることがわかった。
【0108】
続いて、付記5(請求項4)に対する実施例について説明する。
【0109】
この付記5については、第1の磁性層および第2の磁性層がともにFeCo合金で構成されているが、Feの割合が相互に異なっている。第1の磁性層は、FeCo100−x(75≦x wt%)の組成を有し、第2の磁性層が、FeCo100−x(65≦x≦75 wt%)の組成を有する。図10に示すように、Feの割合が75%を超えると飽和磁束密度Bsが低下するため、FeCo合金を使って飽和磁束密度Bsが相互に異なる複数の磁性層を積層することができる。
【0110】
図20は、FeCo合金におけるFeの割合と磁歪λとの関係を示す図であり、図21は、FeCo合金における磁歪λと保磁力Hcとの関係を示す図である。
【0111】
図20に示すように、FeCo合金におけるFeの割合が75%以上であれば磁歪λが「3」以下に抑えられ、図21に示すように、磁歪λが「3」以下であれば保磁力Hcを800[A/m]程度に抑えられることがわかった。
【0112】
図22は、FeCo合金におけるFeの割合と保磁力Hcの関係を下地層ごとに示す図である。
【0113】
図22では、下地層がRuであるFeCo合金の保磁力Hcがひし形でプロットされており、下地層がNiFeであるFeCo合金の保磁力Hcがばつ印でプロットされており、下地層がRuおよびNiFe以外であるFeCo合金の保磁力Hcが四角でプロットされている。図22に示すように、下地層が磁性材料であるNiFeや非磁性材料であるRuを使い、FeCo合金におけるFeの割合が75%以上である場合、保磁力Hcを800[A/m]以下にまで抑制できている。このように、第1の磁性層が、FeCo100−x(75≦x wt%)の組成を有することによって、磁歪を抑えて保磁力を低減させることができ、ポールイレーズの発生を防止することができることがわかった。
【0114】
続いて、付記6に対応する実施例について説明する。
【0115】
図16および図17には、CoNiFez(x+y+z=100,64≦x≦68,15≦z≦20 wt%)の組成を有するCoNiFe合金の保磁力Hcおよび飽和磁束密度Bsの値がばつ印でプロットされている。第1の磁性層として、CoNiFez(x+y+z=100,64≦x≦68,15≦z≦20 wt%)の組成を有するCoNiFe合金を用いることによって、第1の磁性層の厚さに関わらず、効率良く保磁力Hcを低減し、かつ高い飽和磁束密度Bsを実現できることがわかった。
【0116】
続いて、付記9(請求項7)に対応する実施例について説明する。
【0117】
図23は、O/W特性とライトコア幅との関係を示す図である。
【0118】
図23では、NiFe合金の結果が四角でプロットされており、第1の磁性層であるNiFe合金と第2の磁性層であるFeCo合金との積層(ただし、FeCo合金の断面積が35%よりも大きい)の結果が小さい丸でプロットされており、第1の磁性層であるNiFe合金と第2の磁性層であるFeCo合金との積層(ただし、FeCo合金の断面積が35%以下)の結果が大きい丸でプロットされており、FeCo合金の結果がひし形でプロットされている。
【0119】
図23に示すように、小さい丸でプロットされた積層(FeCo合金の断面積が35%より大きい)は、広いコア幅から狭いコア幅までNiFe合金より高く、FeCo合金と同等のO/Wであり、高いO/W特性を有することがわかる。一方、大きい丸でプロットされた積層(FeCo合金の断面積が35%以下)は、同じコア幅で比べたとき、FeCo合金及び積層(FeCo合金の断面積が35%より大きい)よりプロットが上方に集まりO/W特性が劣ることがわかる。このように、第1の磁性層の、記録媒体の表面に対向する面の面積をS1、第2の磁性層の、記録媒体の表面に対向する面の面積をS2としたときに、S2/(S1+S2)>0.35の関係を満たすことによって、ポールイレーズの抑制と高記録密度とを確実に両立させることができることがわかった。
【0120】
以下、本発明の各種形態について付記する。
【0121】
(付記1)
記録媒体の表面に対向した、該表面に対して相対的に、該表面に沿う方向に移動する、該記録媒体の表面に交わる磁力線を発する磁極と、
前記磁極を励磁するコイルとを備え、
前記磁極が、前記記録媒体の表面に対する相対的な移動に沿った方向に2層以上積み重なった、移動の最前方に位置する第1の磁性層と、前記移動の最後方に位置する、該第1の磁性層の飽和磁束密度より高い飽和磁束密度を有する第2の磁性層とを有する、保磁力が800A/m以下である積層体を備えたことを特徴とする磁気ヘッド。
【0122】
(付記2)
前記第1の磁性層が、Ni100−xFe(15≦x wt%)の組成を有し、前記第2の磁性層が、FeCo100−x(65≦x≦75 wt%)の組成を有することを特徴とする付記1記載の磁気ヘッド。
【0123】
(付記3)
前記第1の磁性層が、Ni100−xFe(18≦x≦70 wt%)の組成を有し、前記第2の磁性層が、FeCo100−x(65≦x≦75 wt%)の組成を有することを特徴とする付記1または2記載の磁気ヘッド。
【0124】
(付記4)
前記第1の磁性層が、CoNiFe(x+y+z=100,0<y≦10,0<x≦33 wt%)の組成を有し、前記第2の磁性層が、FeCo100−x(65≦x≦75 wt%)の組成を有することを特徴とする付記1記載の磁気ヘッド。
【0125】
(付記5)
前記第1の磁性層が、FeCo100−x(75≦x wt%)の組成を有し、前記第2の磁性層が、FeCo100−x(65≦x≦75 wt%)の組成を有することを特徴とする付記1記載の磁気ヘッド。
【0126】
(付記6)
前記第1の磁性層が、CoNiFez(x+y+z=100,64≦x≦68,15≦z≦20 wt%)の組成を有し、前記第2の磁性層が、FeCo100−x(65≦x≦75 wt%)の組成を有することを特徴とする付記1記載の磁気ヘッド。
【0127】
(付記7)
前記磁極は、前記第1の磁性層および前記第2の磁性層がめっき処理によって形成されたものであることを特徴とする付記1から6のうちのいずれか1項記載の磁気ヘッド。
【0128】
(付記8)
前記磁極は、前記記録媒体の表面に沿った断面が、前記移動の前方が狭くて後方が広い形状のものであることを特徴とする付記1から7のうちのいずれか1項記載の磁気ヘッド。
【0129】
(付記9)
前記磁極が、前記第1の磁性層の、前記記録媒体の表面に対向する面の面積をS1、前記第2の磁性層の、該記録媒体の表面に対向する面の面積をS2としたときに、S2/(S1+S2)>0.35の関係を満たすものであることを特徴とする付記1から8のうちのいずれか1項記載の磁気ヘッド。
【0130】
(付記10)
前記磁極が、前記複数の層の総体で、2.1Tよりも大きい飽和磁束密度と、800A/mよりも低い保磁力とを有するものであることを特徴とする付記1から9のうちのいずれか1項記載の磁気ヘッド。
【0131】
(付記11)
前記磁極は、非磁性の下地層を有し、該下地層上に、前記第1の磁性層および前記第2の磁性層がめっき処理によって形成されたものであることを特徴とする付記1から10のうちのいずれか1項記載の磁気ヘッド。
【0132】
(付記12)
前記磁極は、前記下地層が、Ru,Pd,Pt,Rh、Au,Cu,NiP,NiMo,NiCrのうちの少なくとも1種類以上の元素を含むものであることを特徴とする付記11記載の磁気ヘッド。
【0133】
(付記13)
前記磁極は、前記下地層がRuで構成されたものであることを特徴とする付記11記載の磁気ヘッド。
【0134】
(付記14)
前記磁極は、前記非磁性下地層と前記第1の磁性層との間に、少なくともNiを含む2種類以上の元素で構成された合金膜が形成されたものであることを特徴とする付記11記載の磁気ヘッド。
【0135】
(付記15)
前記磁極は、磁性の下地層を有し、該下地層上に、前記第1の磁性層および前記第2の磁性層がめっき処理によって形成されたものであることを特徴とする付記1から10のうちのいずれか1項記載の磁気ヘッド。
【0136】
(付記16)
前記磁極は、前記下地層が、Ni,Fe,Coのうち少なくとも1種類以上の元素を含むものであることを特徴とする付記15記載の磁気ヘッド。
【0137】
(付記17)
記録媒体に対し、磁場を用いて情報アクセスを行う情報記憶装置において、
前記記録媒体の表面に対向した、該記録媒体の表面に交わる磁力線を発する磁極と、
前記磁極を励磁するコイルと、
前記磁極を、前記記録媒体の表面に対して相対的に、該表面に沿う方向に移動させる移動機構とを備え、
前記磁極が、前記記録媒体の表面に対する相対的な移動に沿った方向に2層以上積み重なった、移動の最前方に位置する第1の磁性層と、前記移動の最後方に位置する、該第1の磁性層の飽和磁束密度より高い飽和磁束密度を有する第2の磁性層とを有する、保磁力が800A/m以下である積層体を備えたことを特徴とする情報記憶装置。
【0138】
(付記18)
前記第1の磁性層が、Ni100−xFe(15≦x wt%)の組成を有し、前記第2の磁性層が、FeCo100−x(65≦x≦75 wt%)の組成を有することを特徴とする付記17記載の情報記憶装置。
【0139】
(付記19)
前記第1の磁性層が、CoNiFe(x+y+z=100,0<y≦10,0<x≦33 wt%)の組成を有し、前記第2の磁性層が、FeCo100−x(65≦x≦75 wt%)の組成を有することを特徴とする付記17記載の情報記憶装置。
【0140】
(付記20)
前記第1の磁性層が、FeCo100−x( 75≦x wt%)の組成を有し、前記第2の磁性層が、FeCo100−x(65≦x≦75 wt%)の組成を有することを特徴とする付記17記載の情報記憶装置。
【図面の簡単な説明】
【0141】
【図1】垂直記録方式の動作原理を説明するための図である。
【図2】ハードディスク装置100の外観図である。
【図3】ハードディスク装置の機能ブロック図である。
【図4】磁気ヘッドの概略構成図である。
【図5】主磁極の先端部分の概略図である。
【図6】主磁極を磁気ディスク側から見たときの図である。
【図7】下地層上に第1の層および第2の層が形成された主磁極を示す図である。
【図8】主磁極の保磁力Hc[A/m]と、ポールイレーズ発生の有無との関係を示すグラフである。
【図9】従来、主磁極の材料として広く用いられている各種磁性材料、および複数の磁性材料の積層膜それぞれの飽和磁束密度および保磁力を示すグラフである。
【図10】第2の磁性層として用いられるFeCo合金におけるFeの割合と飽和磁束密度Bsとの関係を示す図である。
【図11】第1の磁性層として用いられるNiFe合金におけるFeの割合と飽和磁束密度Bsとの関係を示す図である。
【図12】NiFe合金におけるFeの割合と保磁力Hcとの関係を示す図である。
【図13】NiFe合金におけるNiの割合と保磁力Hcとの関係を示す図である。
【図14】垂直異方性が生じていないNiFe合金のB−Hカーブを示す図である。
【図15】垂直異方性が生じているNiFe合金のB−Hカーブを示す図である。
【図16】主磁極全体に対する第1の磁性層の厚さと保磁力Hcとの関係を示す図である。
【図17】主磁極全体に対する第1の磁性層の厚さと飽和磁束密度Bsとの関係を示す図である。
【図18】図18は、CoNiFe合金におけるCo,Ni,Feそれぞれの割合と飽和磁束密度Bsとの関係を示す図である。
【図19】CoNiFe合金におけるCo,Ni,Feそれぞれの割合と保磁力Hcとの関係を示す図である。
【図20】FeCo合金におけるFeの割合と磁歪λとの関係を示す図である。
【図21】FeCo合金における磁歪λと保磁力Hcとの関係を示す図である。
【図22】FeCo合金におけるFeの割合と保磁力Hcの関係を下地層ごとに示す図である。
【図23】O/W特性とライトコア幅との関係を示す図である。
【符号の説明】
【0142】
1 磁気ディスク
1A 記録層
1B 軟磁性層
1C 基板
10 磁気ヘッド
11 主磁極
12 補助磁極
13 薄膜コイル
14 再生ヘッド
100 ハードディスク装置
101 ハウジング
102 スピンドルモータ
104 浮上ヘッドスライダ
105 アーム軸
106 キャリッジアーム
107 ボイスコイルモータ
108 制御回路
109 磁気ヘッド
111 ハードディスク制御部
112 サーボ制御部
113 ボイスコイルモータ駆動部
114 スピンドルモータ駆動部
115 フォーマッタ
116 リード/ライトチャネル
117 バッファ
118 RAM
210 主磁極
220 ヨーク
230 補助磁極
240 再生ヘッド
250 コイル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体の表面に対向した、該表面に対して相対的に、該表面に沿う方向に移動する、該記録媒体の表面に交わる磁力線を発する磁極と、
前記磁極を励磁するコイルとを備え、
前記磁極が、前記記録媒体の表面に対する相対的な移動に沿った方向に2層以上積み重なった、移動の最前方に位置する第1の磁性層と、前記移動の最後方に位置する、該第1の磁性層の飽和磁束密度より高い飽和磁束密度を有する第2の磁性層とを有する、保磁力が800A/m以下である積層体を備えたことを特徴とする磁気ヘッド。
【請求項2】
前記第1の磁性層が、Ni100−xFe(15≦x wt%)の組成を有し、前記第2の磁性層が、FeCo100−x(65≦x≦75 wt%)の組成を有することを特徴とする請求項1記載の磁気ヘッド。
【請求項3】
前記第1の磁性層が、CoNiFe(x+y+z=100,0<y≦10,0<x≦33 wt%)の組成を有し、前記第2の磁性層が、FeCo100−x(65≦x≦75 wt%)の組成を有することを特徴とする請求項1記載の磁気ヘッド。
【請求項4】
前記第1の磁性層が、FeCo100−x(75≦x wt%)の組成を有し、前記第2の磁性層が、FeCo100−x(65≦x≦75 wt%)の組成を有することを特徴とする請求項1記載の磁気ヘッド。
【請求項5】
前記磁極は、前記第1の磁性層および前記第2の磁性層がめっき処理によって形成されたものであることを特徴とする請求項1から4のうちのいずれか1項記載の磁気ヘッド。
【請求項6】
前記磁極は、前記記録媒体の表面に沿った断面が、前記移動の前方が狭くて後方が広い形状のものであることを特徴とする請求項1から5のうちのいずれか1項記載の磁気ヘッド。
【請求項7】
前記磁極が、前記第1の磁性層の、前記記録媒体の表面に対向する面の面積をS1、前記第2の磁性層の、該記録媒体の表面に対向する面の面積をS2としたときに、S2/(S1+S2)>0.35の関係を満たすものであることを特徴とする請求項1から6のうちのいずれか1項記載の磁気ヘッド。
【請求項8】
前記磁極は、非磁性の下地層を有し、該下地層上に、前記第1の磁性層および前記第2の磁性層がめっき処理によって形成されたものであることを特徴とする請求項1から7のうちのいずれか1項記載の磁気ヘッド。
【請求項9】
前記磁極は、磁性の下地層を有し、該下地層上に、前記第1の磁性層および前記第2の磁性層がめっき処理によって形成されたものであることを特徴とする請求項1から8のうちのいずれか1項記載の磁気ヘッド。
【請求項10】
記録媒体に対し、磁場を用いて情報アクセスを行う情報記憶装置において、
前記記録媒体の表面に対向した、該記録媒体の表面に交わる磁力線を発する磁極と、
前記磁極を励磁するコイルと、
前記磁極を、前記記録媒体の表面に対して相対的に、該表面に沿う方向に移動させる移動機構とを備え、
前記磁極が、前記記録媒体の表面に対する相対的な移動に沿った方向に2層以上積み重なった、移動の最前方に位置する第1の磁性層と、前記移動の最後方に位置する、該第1の磁性層の飽和磁束密度より高い飽和磁束密度を有する第2の磁性層とを有する、保磁力が800A/m以下である積層体を備えたことを特徴とする情報記憶装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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