説明

磁気ヘッドアッセンブリおよび磁気ディスク装置

【課題】磁気ディスクの記録面に対する傾きを調整し、トラックミスレジストレーションを低減する。
【解決手段】磁気ディスクのアクセス位置に応じて回動するロータの一端にサスペンションを介して磁気ヘッドを有するヘッドスライダ32が取り付けられ、ロータの一端とサスペンションとの間にアクチュエータ部84を設け、アクチュエータ部84に指令信号を与えてサスペンションの傾斜角を適切に変位させることによって、オフトラック量を改善する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気ディスク装置に用いる磁気ヘッドアッセンブリに関するものである。
【背景技術】
【0002】
まずは、一般的な磁気ディスク装置の構造と機能について、図を用いて説明する。
図13は、基台50にビス締めされて磁気ディスク装置の内部を密閉しているカバー(図示せず)を外した状態を示したものである。
【0003】
磁気ディスク60は、基台50に付属したスピンドルモータ(図示せず)にクランパ71で取り付けられ、回転自在に保持されている。先端に磁気ヘッドを有する磁気ヘッドアッセンブリ10の基端は、ロータ20の先端20aに連結されている。ロータ20の中間はピボットベアリング30によって基台50に回転自在に支持されている。ロータ20の他端と基台50との間には、ボイスコイルモータ72が構成されており、ロータ20は、ボイスコイルモータ72によって回動が可能で、前記磁気ヘッドを磁気ディスク60の任意の位置に移動させることにより、磁気信号の読み書きを可能としている。磁気ディスク60上には、磁気ディスク60の位置情報を示す磁気情報からなる複数のサーボトラック(図示せず)が、同心円状に配置されている。
【0004】
磁気ディスク装置の動作状態において、ロータ20は、磁気ヘッドアッセンブリ10の磁気ヘッドが磁気ディスク60上のサーボトラックを追従するように、ボイスコイルモータ72によって制御されている。なお、図13に示した状態の磁気ヘッドアッセンブリ10は、ランプ機構80に退避している。
【0005】
磁気ディスク装置を動作させるためには、前記スピンドルモータによって磁気ディスク60を回転させ、ロータ20を回動させる必要がある。ただしこれらの駆動要素は、振動の原因となり、スピンドルモータと磁気ディスク60の回転により生じる風乱も、さまざまな機構部を振動させる原因となっている。
【0006】
さらに詳しくは、これらの振動は磁気ヘッドとサーボトラックを、相対的に磁気ディスク60の半径方向にずらせる原因となる。この磁気ヘッドとサーボトラックの信号のずれは、トラック・ミス・レジストレーション( track miss-registration 以下、TMRと略す)として知られ、磁気ディスクの回転に同期した信号のずれ“リピータブル・ランアウト”と、回転に同期していない信号のずれ“ノン・リピータブル・ランアウト”の自乗平均として表現される。
【0007】
特に、回転数の高い磁気ディスク装置や、半径が大きい磁気ディスクを備えた装置ではTMRが大きくなる傾向がある。TMRは磁気ヘッドの位置制御に悪影響を及ぼし、磁気信号の読み書きにおいて失敗を助長する原因となる。この結果、TMRは磁気ディスク装置の転送速度やエラーレートに影響を及ぼす。
【0008】
このため、TMRを低減することは磁気ディスク装置の性能,信頼性を確保するために重要な技術のひとつとなっている。トラックピッチが0.213μmの磁気ディスク装置において、TMRはトラックピッチの9%以下に収めることが要求されている。これは0.021μmという微小な寸法である。サーボ技術や先読みの技術でTMRを軽減することも試みられるが、もともとのTMRを極力抑えることが重要となる。
【0009】
このように磁気ディスク装置の重要な性能であるTMRだが、TMRを悪化させる原因には様々な振動がある。磁気ディスク60の半径方向の振動はもちろんであるが、磁気ディスク60の平面に垂直な方向の振動も、TMRを悪化させる大きな要因となっている。
【0010】
以下に、磁気ディスク60に垂直な方向の振動が、TMRを悪化させる現象の例を、図を用いて説明する。
図14(a)は図13のAで囲んだ磁気ヘッドアッセンブリ10を拡大したものである。図14(b)は図14(a)のB−Bで示される断面図である。
【0011】
磁気ヘッドアッセンブリ10は、ロータ20の先端20aに連結された基端部81と、サスペンション11と、磁気ヘッドを有するヘッドスライダ32とで構成されている。13は基端部81とサスペンション11の基端とを接続するバネ部である。
【0012】
サスペンション11は、ロータ20の側に基端が接続されたロードビーム82と、ロードビーム82に比べ屈曲が容易でロードビーム82の先端に取り付けられたフレキシャ12とからなり、フレキシャ12にヘッドスライダ32が取り付けられている。
【0013】
図14(b)に示すように、振動83によって磁気ディスク60が仮想線位置から実線位置に変位し、磁気ヘッドアッセンブリ10が磁気ディスク60に追従して変位する場合には、ヘッドスライダ32による磁気ディスク60のトレース位置が変化する。
【0014】
図15(a)は図14(b)のC−C断面図である。図15(b)〜(d)は、図14(a)の方向からヘッドスライダ32と磁気ディスク60のサーボトラック61の位置関係を示した平面図であり、磁気ヘッドアッセンブリ10は傾斜していない。
【0015】
図15(b)の場合には、ヘッドスライダ32が仮想線位置から実線位置に矢印d1方向に変移してサーボトラック61に対するオフトラックがない場合を示している。図15(c)の場合には、ヘッドスライダ32が仮想線位置から実線位置に矢印d2方向に変移してサーボトラック61の外側にオフトラック量Δ1だけオフトラックした場合を示している。図15(d)の場合には、ヘッドスライダ32が仮想線位置から実線位置に矢印d3方向に変移してサーボトラック61の内側にオフトラック量Δ2だけオフトラックした場合を示している。
【0016】
振動83によって磁気ディスク60とロータ20の距離が変化しても、ヘッドスライダ32は、バネ部13との作用によりロードビーム82によって磁気ディスク60に加圧され、磁気ディスク60から離間することなく追従する。
【0017】
しかしヘッドスライダ32は、この距離の変化に伴い、ロータ20の磁気ヘッドアッセンブリ10の取り付け部からヘッドスライダ32の方向に対して、前後に移動する。この時、ロータ20からヘッドスライダ32へ向かう方向がサーボトラック61の接線方向であれば、磁気ヘッドとサーボトラック61のずれは大きくならない。しかし、この方向がサーボトラック61と角度を持つとき、磁気ヘッドとサーボトラック61にずれが発生し、TMRを悪化させる要因となる。
【0018】
ただし、このようにロータ20からヘッドスライダ32へ向かう方向とサーボトラック61が角度を持つ場合でも、磁気ヘッドアッセンブリ10を、ロータ20からヘッドスライダ32に向かう軸を中心に、磁気ディスク60の面に対して傾斜させた場合、オフトラックを軽減することが可能な場合がある。
【0019】
図15(e)(g)は、図15(a)と同様に図14(b)のC−Cで示される断面の図であるが、図15(e)のようにロードビーム82が磁気ディスク60の平面に対してλだけ傾斜していると、磁気ヘッドとサーボトラック61のずれのオフトラック量が図15(f)に示すように“Δ3 < Δ1”に軽減される。また、図15(g)のようにロードビーム82が磁気ディスク60の平面に対して傾斜していると、磁気ヘッドとサーボトラック61のずれのオフトラック量が図15(h)に示すように“Δ4 < Δ2”軽減される。
【0020】
つまり、磁気ヘッドアッセンブリ10が傾斜している場合、振動でヘッドスライダ32が移動する方向は、ロータ20からヘッドスライダ32に向かう方向とは角度をなす。この現象によるヘッドスライダ32の移動方向が、上記起因のオフトラック方向と反対になるように磁気ヘッドアッセンブリ10を傾斜させれば、最終的なオフトラック量を軽減することが可能となる。
【0021】
図14,図15で示される移動量を数式を用いて説明する。
図16(a)は、磁気ディスク60の振動による磁気ヘッドアッセンブリ10の変形の様子を示し、
t1:ロータ20から磁気ディスク60の変位前のヘッドスライダ32までの距離
t2:ロータ20から磁気ディスク60の変位後のヘッドスライダ32までの距離
x1:バネ部13から磁気ディスク60の変位前のヘッドスライダ32までの距離
x2:バネ部13から磁気ディスク60の変位後のヘッドスライダ32までの距離
lはバネ部13からヘッドスライダ32までのロードビーム82の長さ
とした場合、
x1 = √( l− t1
x2 = √( l− t2
であって、磁気ディスク60の変位前後のヘッドスライダ32の移動量は、
x2 − x1 = √( l− t2 )−√( l − t1
図16(b)は、傾斜のないロードビーム82を用いた場合に、サーボトラック61の接線方向61aとヘッドスライダ32の移動方向とのなす角度をθとすると、ヘッドスライダ32のオフトラック量Δr1は、
Δr1 =(x2 − x1 )sinθ
図16(c)は、ロードビーム82を傾斜させたことによるヘッドスライダ32の変位量を示し、ロードビーム82の移動方向86と垂直方向の変位(t1 − t2 )の間のオフトラック量Δr2は、
Δr2 =(t1 − t2 )tanλ
ここで、図16(b)のオフトラック量Δr1と図16(c)のオフトラック量Δr2が等しくなるようにロードビーム82を傾斜させた場合、ヘッドスライダ32とサーボトラック61にずれが生じることを防ぐことができ、TMRを改善できる。
【0022】
そのため従来では、磁気ディスク60の材料に剛性の高いガラスを使用したり、ロータ20の風の上流部に整流板を備えたり、磁気ヘッドアッセンブリ10に吸振材料を貼り付けるなどによって振動83の原因を改善し、TMRを低減する対策がとられてきた。
【0023】
また別の従来例では、磁気ヘッドアセンブリ10を磁気メディア60に対して傾斜させて取り付け、前述のような磁気ヘッドアッセンブリ10の挙動を利用して、TMRを軽減する方法も考えられていた。この技術では、磁気ディスク60の振動や、ロータ20のベンディングモードなど、ロータ20の磁気ヘッドアッセンブリ10の取り付け面と磁気ディスク60の距離が、磁気ディスク60の平面に垂直な方向に変化する振動において、TMRを低減する効果がある。
【0024】
実際に磁気ヘッドアッセンブリ10を傾斜させる手段としては、幾つかの方法が考えられるが、磁気ヘッドアセンブリ10とロータ20の係合部を傾斜させ、磁気ヘッドアッセンブリ10全体を傾斜させて取り付ける方法がある(例えば、特許文献1を参照)。
【特許文献1】特表平11−514127号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0025】
TMRを軽減できる磁気ヘッドアッセンブリ10の傾斜の向きは、前述のように、ロータ20からヘッドスライダ32へ向かう方向と、サーボトラック61のなす角度に依存することがわかっている。しかし従来の構成では、磁気ヘッドアッセンブリ10を所定の傾斜でロータ20に取り付けているため、磁気ヘッドアッセンブリ10の傾斜を自在に変更することはできない。
【0026】
ロータ20の回動により、磁気ディスク60上でのヘッドスライダ32の位置が変化すると、ロータ20からヘッドスライダ32へ向かう方向とサーボトラック61がなす角度も変化してしまう。磁気ヘッドアッセンブリ10の傾斜が一定では、前記の角度がある角度ではTMRを減少させるように作用するが、別の角度ではTMRを増加させるという課題を有している。
【0027】
また、前記の角度が大きくなるところでは、磁気ヘッドアッセンブリ10に傾斜を持たせた場合、傾斜角による効果よりも風乱によるTMRの悪化の方が大きくなり、全体としてTMRを悪化させる要因になるという課題もある。
【0028】
従来の構成では、磁気ヘッドアッセンブリ10の傾斜角は、事前の設計によって決定されるものであったが、部品の交差や組み立ての影響で狂いが出やすいといった問題もある。
【0029】
また、傾斜角に狂いが生じた場合でも、個別の磁気ヘッドアッセンブリ10や個別の磁気ディスク装置に対して、調整を行うことができないといった課題もある。
その他、磁気ヘッドアッセンブリ10は精巧な機構であるため、組み立てによるストレスや、取り扱いの不注意によって機械的なダメージを受け、そのダメージがTMRを悪化させるといった課題もある。この場合、従来では、磁気ヘッドアッセンブリ10の修理が難しいため、磁気ヘッドアッセンブリ10を交換するしかなかった。
【0030】
また、磁気ヘッドアッセンブリ10全体を、ロータ20,磁気ディスク60に対して傾斜させなくても、磁気ヘッドアッセンブリ10のロードビーム82を傾斜させれば、同様の効果が得られることがわかっている。
【0031】
このように、従来の技術は、
1.磁気ヘッドアッセンブリの傾斜角が一定であるため、磁気ディスクの半径位置によっては、傾斜角の効果がむしろTMRを悪化させる方向に働く。
【0032】
2.磁気ヘッドアッセンブリの傾斜角が一定であるため、ロータからヘッドスライダへ向かう方向と、サーボ信号のなす角度が大きいところでは、傾斜角による効果よりも風乱によるTMRの悪化が大きく、全体としてTMRを悪化させる場合がある。
【0033】
3.部品交差や組み立ての影響で、磁気ヘッドアッセンブリの傾斜角が狂いやすい。
4.磁気ヘッドアッセンブリの傾斜角は設計で決められるため、個別の磁気ディスク装置,個別の磁気ヘッドアッセンブリに対する調整ができない。
といった問題点を持っていたが、本発明は、これらの問題点を解決できる磁気ヘッドアッセンブリおよび磁気ディスク装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0034】
本発明の請求項1記載の磁気ヘッドアッセンブリは、磁気ディスクのアクセス位置に応じて回動するよう駆動されるロータの一端にサスペンションを介して磁気ヘッドを有するヘッドスライダが取り付けられた磁気ヘッドアッセンブリであって、ロータの前記一端と前記サスペンションとの間に、サスペンションの傾斜角を指令信号に応じて変位させるアクチュエータ部を設けたことを特徴とする。
【0035】
本発明の請求項2記載の磁気ヘッドアッセンブリは、請求項1において、前記サスペンションは、前記ロータの側に基端が接続されたロードビームと、前記ロードビームに比べ屈曲が容易でロードビームの先端に取り付けられたフレキシャとからなり、前記フレキシャに前記ヘッドスライダが取り付けられており、前記サスペンションの先端には、前記フレキシャに当接して前記ヘッドスライダを突き出す突起部を設けたことを特徴とする。
【0036】
本発明の請求項3記載の磁気ヘッドアッセンブリは、請求項1において、ロータの前記一端に前記アクチュエータ部の固定側を固定し、前記アクチュエータ部の可動側にバネ部を介して前記サスペンションを固定したことを特徴とする。
【0037】
本発明の請求項4記載の磁気ヘッドアッセンブリは、請求項1において、ロータの前記一端にバネ部を介して前記アクチュエータ部の固定側を固定し、前記アクチュエータ部の可動側に前記サスペンションを固定したことを特徴とする。
【0038】
本発明の請求項5記載の磁気ディスク装置は、磁気ディスクのアクセス位置に応じて回動するよう駆動されるロータの一端にサスペンションを介して磁気ヘッドを有するヘッドスライダが取り付けられた磁気ヘッドアッセンブリを備えた磁気ディスク装置であって、磁気ヘッドアッセンブリは、ロータの前記一端と前記サスペンションとの間に、サスペンションの傾斜角を指令信号に応じて変位させるアクチュエータ部を設け、磁気ディスクアッセンブリの磁気ディスク上の半径位置,トラックミスレジストレーションの大きさに応じて、前記サスペンションの傾斜角を変更するよう前記アクチュエータ部を駆動する制御部を設けたことを特徴とする。
【0039】
本発明の請求項6記載の磁気ディスク装置は、請求項5において、前記サスペンションは、前記ロータの側に基端が接続されたロードビームと、前記ロードビームに比べ屈曲が容易でロードビームの先端に取り付けられたフレキシャとからなり、前記フレキシャに前記ヘッドスライダが取り付けられており、前記サスペンションの先端には、前記フレキシャに当接して前記ヘッドスライダを突き出す突起部を設け、ヘッドスライダが前記磁気ディスク上を浮上している状態において前記突起部の中心点が、前記アクチュエータ部の断面の中立点からなる軸の延長上に位置していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0040】
本発明の磁気ヘッドアッセンブリによれば、磁気ディスクアッセンブリの磁気ディスク上の半径位置,TMRの大きさに応じて、サスペンションの傾斜角を変更することができるので、磁気ディスク装置のTMRを低減して、磁気ディスク装置の転送速度,エラーレートを改善できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0041】
以下、本発明を各実施の形態に基づいて説明する。
なお、従来例を示す図13,図14と同一の作用をなすものには同一の符号を付けて説明する。
【0042】
(実施の形態1)
図1〜図5は本発明の実施の形態1を示す。
図1(a)は、本発明の実施の形態における磁気ヘッドアッセンブリ10を上側から見た斜視図で、図1(b)は、図1(a)の下側(E方向)から見た斜視図を示す。図3(a)は図1(a)のD−D断面の拡大図、図3(b)は図1(a)のB−B断面の拡大図を示す。
【0043】
ロータ20の前記一端20aに連結されるこの磁気ヘッドアッセンブリ10は、ロードビーム82の基端との間に、ロードビーム82の傾斜角を指令信号に応じて変位させるアクチュエータ部84を有している。
【0044】
アクチュエータ部84は、図3(a)にも示すように、ロータ20の前記一端20aとロードビーム82の基端との間を結合する支持プレート16と、支持プレート16に貼り付けられた短冊状のアクチュエータ21a〜21dとで構成されている。ここではアクチュエータ21a〜21dは、印加された電圧により、支持プレート16の固定側14から支持プレート16の可動側15の方向に伸縮、もしくは支持プレート16の固定側14側を基準として、支持プレート16の可動側15の側がアクチュエータ21a〜21dの取り付け面と垂直な方向に屈曲駆動する。具体的には、屈曲変形する圧電素子や電歪素子などを使用できる。
【0045】
図2に詳細を示すように、支持プレート16にはその中央に孔16aを設けてその両側に幅が狭くなったビーム17,18が形成されている。ビーム17,18は支持プレート16の固定側14と可動側15を連結しており、このビーム17の上面にアクチュエータ21aが貼り付けられている。ビーム18の上面にはアクチュエータ21bが貼り付けられている。ビーム18の下面にはアクチュエータ21cが貼り付けられている。ビーム17の下面にはアクチュエータ21dが貼り付けられている。さらに詳しくは、アクチュエータ21a〜21dは、支持プレート16の可動側15と固定側14,ビーム17,18に接触する全面で固着されるか、もしくは支持プレート16の可動側15と支持プレート16の固定側14の両端付近で固着される。ただし、アクチュエータ21a〜21d両端で固着する場合には、アクチュエータ21a〜21dの駆動によってビーム17,18を変形可能であるように、アクチュエータ21a〜21dの方がビーム17,18よりも剛性が高い必要がある。
【0046】
アクチュエータ21a〜21dが支持プレート16の固定側14に係合する周辺は、アクチュエータ21a〜21dが支持プレート16の可動側15に係合する周辺よりも、剛性が高い必要がある。これによりアクチュエータ21a〜21dの駆動による変形を、支持プレート16の可動側15からヘッドスライダ32側の要素の変位に、効率的に変換することが可能となる。ただし係合部周辺の剛性に関しては、磁気ヘッドアッセンブリ10の状態では低くても、ロータ20に係合された状態で高ければかまわない。
【0047】
支持プレート16の可動側15は、アクチュエータ21a〜21dを、ロードビーム82側に係合するための要素である。アクチュエータ21a〜21dの駆動によって生じた変形を受け止め、時には自分自身も一部変形するが、バネ部13よりヘッドスライダ32側へは応力を伝えない。
【0048】
ビーム17,18は、支持プレート16の固定側14と可動側15の架橋となる要素である。アクチュエータ21a〜21dの剛性を補強するほか、アクチュエータ21a〜21dの駆動によって変形し、アクチュエータ21a〜21dの駆動を、ロードビーム82,支持プレート16の可動側15を傾斜させる動きに変換する役目を担う。支持プレート16の固定側14は、アクチュエータ21a〜21dをロータ20の先端に固定する要素である。
【0049】
31はヘッドスライダ32に搭載されている磁気ヘッド(図示せず)とロータ20との信号授受を行うフレキシブル配線基板で、前記磁気ヘッドは、電気回路を備えたこのフレキシブル配線基板31を介して磁気信号の読み書きが可能となっている。また、アクチュエータ21a〜21dへの駆動信号も、このフレキシブル配線基板31を介して供給されている。
【0050】
この磁気ディスクアッセンブリ10を備えた磁気ディスク装置において、アクチュエータ21a〜21dには、磁気ディスク装置が組み上がった後に磁気ディスク上の半径位置,トラックミスレジストレーションの大きさに応じて、磁気ヘッドとサーボトラックのずれのオフトラック量が小さくするに必要なパラメータを測定して学習し、このパラメータに応じて制御部がアクチュエータ部84を駆動して傾斜角を変更するよう構成されている。
【0051】
図4は前記学習のフローチャートを示す。
なお、この学習のタイミングは、磁気ディスク装置を製造して出荷する際、または磁気ディスクが起動する際に実行する場合を具体例として挙げることができる。
【0052】
この学習に際しては、全てのトラックについて測定を行うことは現実的でないため、磁気ディスクを径方向に幾つかのゾーンに区切って、ゾーンごとに最適な傾斜角を求める。
ステップS1では、磁気ヘッドを測定ゾーンに移動する。初回は最小測定ゾーンへ移動する。
【0053】
ステップS2では、アクチュエータ部84に電圧を印加して傾斜角を変更する。初回は最小電圧値を印加する。
ステップS3では、ステップS2で傾斜角を変更したときのTMRを測定し、結果をメモリに記録する。
【0054】
ステップS4では、アクチュエータ部84への印加電圧が最大値になったかをチェックし、最大値になっていない場合にはステップS5で電圧値をΔVだけ高くしてステップS2〜ステップS4のルーチンを繰り返す。ステップS4において最大値になったことを検出するとステップS6を実行する。
【0055】
ステップS6では、ステップS3で収集した各印加電圧の時のTMRのうちで最小のTMRの時の印加電圧を、そのときの測定ゾーンの最良の印加電圧としてメモリに記録する。
【0056】
ステップS7では、全ての測定ゾーンについてステップS6が実行されたかをチェックする。測定ゾーンが残っている場合にはステップS7で次の測定ゾーンを指定してステップS1に戻る。ステップS7において全ての測定ゾーンについてステップS6が実行されたと判定されると、学習ルーチンが終了する。
【0057】
なお、前記制御部は磁気ディスク装置に内蔵されているマイクロコンピュータによって実現されており、時々の磁気ヘッドの位置が前記測定ゾーンの何れに位置しているのかに基づいて、ステップS6で収集した学習データから現在の磁気ヘッドの位置しているゾーンの最小のTMRの時の印加電圧をアクチュエータ部84に印加して傾斜角を変更する。
【0058】
ここでは各測定ゾーンでの最小のTMRの時の印加電圧を代表値として使用して制御する場合を説明したが、ステップS6で収集した学習データ各測定ゾーンの代表値の間を近似して測定ゾーン内のトラック位置の最適と思われる印加電圧を計算して、この近似で求めた印加電圧をアクチュエータ部84に印加してして傾斜角を変更することもできる。
【0059】
制御部によってアクチュエータ部84を駆動して傾斜角を変更する磁気ディスクアッセンブリ10の構成を、さらに詳しく説明する。
ロードビーム82の先端には、図3(b)に示すように突起部82aがフレキシャ12方向に突出している。82bは突起部82aの中心点である。バネ部13の作用により、この突起部82aがフレキシャ12に適切な荷重を与え、ヘッドスライダ32が回転する磁気ディスク60上で安定した浮上を維持できる。
【0060】
また、図3(a)に示したようにビーム17,18の断面形状は、支持プレート16の固定側14と可動側15の断面の中立点を通り断面の長辺に垂直な軸に対して軸対称であり、支持プレート16の固定側14と可動側15の断面の中立点に対し点対称となっている。中立点とは、軸にねじりモーメントが作用しても、せん断応力が発生しない点である。単一材料からなる軸の場合には、断面の重心と一致する。
【0061】
図9(b)は図3(a)模式図で、突起部82aの中心点82bは、ヘッドスライダ32が磁気ディスク60上を浮上してアクセスしている状態において、支持プレート16の固定側14と可動側15の断面の中立点85に位置している。
【0062】
突起部82aは、半球状の一部であるため、ロータ20や磁気ディスク60の振動でロードビーム82が磁気ディスク60の平面に対し傾斜しても、フレキシャ12に正しく当接し、適切な荷重を与えることができる。フレキシャ12は、ロードビーム82に比べ厚みが薄く屈曲が容易であり、ロードビーム82が傾斜されても、フレキシャ12に固着されたヘッドスライダ32は、磁気ディスク60の平面に追従できる。
【0063】
また逆に、歪んだ磁気ディスク60上をヘッドスライダ32が浮上しながら追従する場合でも、フレキシャ12はヘッドスライダ32の姿勢の変化を吸収することができ、ロードビーム82やその他の部分に悪影響を及ぼさない。
【0064】
アクチュエータ21a〜21dの断面形状も、支持プレート16の固定側14と可動側15の断面の中立点を通り断面の長辺に垂直な軸に対して軸対称であり、支持プレート16の固定側14と可動側15の断面の中立点に対し点対称となっている。ここでいう各要素の断面とは、支持プレート16からヘッドスライダ32の側へ向かう方向に垂直な断面であり、要素の主たる平面に垂直な断面である。
【0065】
このように、ビーム17,18,アクチュエータ21a〜21dの断面の中立点からなる軸は、ロードビーム82の突起部82aの中心点82bを通るように配置されており、この軸のまわりにねじれのモーメントが発生しても、中心点82bの位置は変化しない。
【0066】
したがって、磁気ヘッドとサーボトラックのずれのオフトラック量が小さくするに必要なパラメータに応じて制御部がアクチュエータ部84を駆動して傾斜角を変更し、磁気ヘッドアッセンブリ10がこの軸の周りに傾斜しても、ロードビーム82がフレキシャ12,ヘッドスライダ32を磁気ディスク60に加圧する荷重が変化しない。
【0067】
アクチュエータ21a〜21dに、伸縮型のアクチュエータを用いる場合には、支持プレート16の可動側15,固定側14の断面に対して対角な位置にあるアクチュエータ21a,21cを同位相で駆動させ、アクチュエータ21b,21dは、アクチュエータ21a,21cとは逆位相で駆動させる。
【0068】
これは、アクチュエータ21a,21cを伸長させた場合、アクチュエータ21bと,21dを収縮させることを意味する。
このようにアクチュエータ21a〜21dを駆動させた場合、支持プレート16の可動側15からヘッドスライダ32側の要素は、支持プレート16の固定側14,支持プレート16に対し、ロードビーム82の突起部82aの中心点82bを通り、ビーム17,18とアクチュエータ21a〜21dの断面の中立点からなる軸を中心に回動することになる。
【0069】
このとき、アクチュエータ21a〜21dに印加する電圧をコントロールすることにより、ロードビーム82,支持プレート16の可動側15は、任意の傾斜に回動可能で、また任意の傾斜に保持することが可能となっている。
【0070】
このようにロードビーム82,支持プレート16の可動側15を回動させた場合、ロードビーム82の突起部82aの中心点82bは、磁気ディスク60の平面からの距離が変化しない。これはロードビーム82,支持プレート16の可動側15を傾斜させても、フレキシャ12,ヘッドスライダ32への荷重は変化しないということであり、ヘッドスライダ32の浮上に悪影響を及ぼさないことを意味する。
【0071】
アクチュエータ21a〜21dに、屈曲型のアクチュエータを用いる場合には、支持プレート16の可動側15支持プレート16の固定側14,ビーム17,18を挟んで対向するアクチュエータを同位相に、同じ平面状に配置されるアクチュエータを逆位相に駆動することにより、同様の効果を得ることができる。これは、アクチュエータ21aとアクチュエータ21dをヘッドスライダ32側に屈曲させた場合、アクチュエータ21bとアクチュエータ21cをヘッドスライダ32とは逆側に屈曲させることを意味する。
【0072】
図5(a)(b)は、アクチュエータ21a〜21dの駆動によるロードビーム82,支持プレート16の可動側15の傾斜の様子をシミュレーションした結果である。
図5(a)は、磁気ディスク60の平面に垂直な方向の変位を示し、図5(b)は、ロータ20の回動に対し接線となる方向の変位を示している。ロードビーム82,支持プレート16の可動側15を傾斜させても、中心部は、垂直方向にほとんど変化していないことがわかる。また、ロードビーム82,支持プレート16の可動側15を傾斜させても、接線方向にもほとんど変位していない。
【0073】
ロードビーム82,支持プレート16の可動側15を傾斜させることによるオフトラック量の改善を、実際の一例で参考に示す。トラックピッチが0.213μm,図16(a)のt1=0.30mm,l=8.3mmの磁気ディスク装置において、支持プレート16からヘッドスライダ32に向かう方向とサーボトラック61の接線方向が10°の角度をなす位置において、磁気ディスク60とロータ20のアーム部の高さが、5μm変位した場合を考える。この場合、図16から、オフトラック量は0.031μmであり、トラックピッチの14.6%となる。
【0074】
これに対して、サスペンションを0.357°傾斜させれば、オフトラック量を相殺できる。なお、支持プレート16からヘッドスライダ32に向かう方向が磁気ディスクの外周方向である場合は、サスペンションを傾斜させる向きは、サスペンションの外周側が磁気ディスクに近く、サスペンションの内周側が磁気ディスクから遠ざかる方向となる。
【0075】
本発明で目的とする機能は、ヘッドスライダ32が磁気ディスク60を加圧する荷重を変化させることなく、ロードビーム82,支持プレート16の可動側15を、支持プレート16からヘッドスライダ32方向に向かう軸を中心に、磁気ディスク60の平面に対して任意に傾斜させることである。このためには、アクチュエータの駆動により生じるねじれのモーメントが、ロードビーム82の突起部82aの中心点82bを通る前記方向の軸を中心に働き、その軸部が、磁気ディスク60の平面からの距離を変化させないことである。
【0076】
この発明による磁気ヘッドアッセンブリ10を使用すれば、磁気ディスク60上の磁気ヘッドの半径位置に応じて、それぞれ個別の磁気ヘッドアッセンブリ10ごとに、ロードビーム82の傾斜を、TMRを最も低減できる角度に調整することが可能となる。
【0077】
また事前に、磁気ディスク60を半径位置ごとに幾つかのゾーン(図示せず)に区切り、ロードビーム82の傾斜を変化させながらTMRを測定することにより、それぞれの磁気ヘッドアッセンブリ10とゾーンに最適なロードビーム82の傾斜を、パラメータとして磁気ディスク装置に持たせることができ、応答時間のロスを発生しない磁気ディスク装置を実現できる。
【0078】
また、磁気ヘッドアッセンブリ10は、精巧な部品であるため、組み立て時のストレスや不適切な取り扱いでダメージを受けやすい。磁気ヘッドアッセンブリ10に、ねじれや荷重の増減などがあっても、今までは修理が難しく、交換するしかなかったが、サスペンション82の姿勢を調整することができるので、今まで廃棄されていた磁気ヘッドアッセンブリ10であっても、幾分救済できる。
【0079】
また、それぞれのアクチュエータに2本の電気配線が必要となる。ただし、アクチュエータを同じ電圧で駆動する場合には、それぞれのアクチュエータを並列に接続し、端子数を低減できる。
【0080】
また、逆符号の絶対値が同じ電圧で使用するアクチュエータがある場合は、電気配線を逆方向から接続し、同様に端子数を低減できる。
このように電気配線,端子数を低減することが可能な場合でも、あえてそれぞれを別回路で形成した場合、コストやスペースの面で不利ではあるが、それぞれのアクチュエータを個別に調整し、微妙なサスペンションの姿勢を制御できるといったメリットがある。
【0081】
(実施の形態2)
実施の形態1のアクチュエータは、ビーム17,18の上面と下面にアクチュエータ21a〜21dを貼り付けたが、アクチュエータは、ビーム17またはビーム18の上にのみ配置されたのでもかまわない。
【0082】
図6と図7は本発明の実施の形態2を示す。
図6(a)は、実施の形態2における磁気ヘッドアッセンブリ10を上側から見た斜視図で、図6(b)は、図6(a)の下側(E方向)から見た斜視図を示す。図7(a)は要部の拡大断面、図7(b)は図6(a)のD−Dの拡大断面を示す。図7(a)の模式図を図10(g)に示す。
【0083】
アクチュエータ21a,21dは、支持プレート16の可動側15と固定側14,ビーム17,18に接触する全面で固着されるか、もしくは支持プレート16の可動側15と支持プレート16の固定側14の両端付近で固着される。
【0084】
ただし両端で固着する場合には、アクチュエータ21a,21dの駆動によってビーム17,18を変形可能であるように、アクチュエータ21a,21dの方がビーム17,18よりも剛性が高い必要がある。
【0085】
ビーム17,18の剛性がより低い方が、アクチュエータ21a,21dの駆動によるロードビーム82の変位量を大きくできる。アクチュエータ21a,21d,ビーム17,18、全体としては、支持プレート16の可動側15よりヘッドスライダ32側の要素が、ロータ20の回動に追従し、かつバネ部13の荷重に抗しえる程度に、剛性が高い必要がある。
【0086】
アクチュエータ21a,21dが支持プレート16の固定側14に係合する周辺は、アクチュエータ21a,21dが支持プレート16の可動側15に係合する周辺よりも、剛性が高い必要がある。これによりアクチュエータ21a,21dの駆動による変形を、支持プレート16の可動側15からヘッドスライダ32側の要素の変位に、効率的に変換することが可能となる。ただし係合部周辺の剛性に関しては、磁気ヘッドアッセンブリ10の状態では低くても、ロータ20に係合された状態で剛性が高ければかまわない。
【0087】
(実施の形態3)
図8は本発明の実施の形態3を示す。
実施の形態1を示す図1の磁気ヘッドアッセンブリ10では、アクチュエータ部84とロードビーム82との間にバネ部13を配置したが、図8に示すようにバネ部13を、アクチュエータ部84と、磁気ヘッドアッセンブリ10の前記ロータ20に取り付けられる基端16cとの間に配置した場合でも、同様の機能を果たすことができる。
【0088】
この実施の形態3は、実施の形態2の場合でも同様に実施できる。
(実施の形態4)
図9(b)〜(f)と図10(g)〜(q)はそれぞれ別の具体例を示す。
【0089】
図9と図10は実施の形態1を示す図9(a)と同じところで断面にした磁気ヘッドアッセンブリ10を示している。
図9(a)では、二本のビーム17,18で可動側15を支持してこのビーム17,18の上面と下面にアクチュエータ21a〜21dを貼り付けた場合であるのに対して、図9(b)では、孔16が形成されていない幅広のビーム17aで可動側を支持している点が図9(a)とは異なっている。
【0090】
図9(c)では、複数のビーム17b,17c,17d,18b,18c,18dによって可動側を支持し、ビーム17b,17c,17d,18b,18c,18dの上面と下面にアクチュエータ21a〜21dを貼り付けた点が図9(a)とは異なっている。
【0091】
図9(d)では、可動側15を一本のビーム17eだけで支持し、アクチュエータ21a〜21dの両端を可動部14と固定側15に固定した点が図9(a)とは異なっている。この場合は、ビーム,アクチュエータの断面形状が、断面の中立点に対して点対称であり、断面の中立点からなる軸が突起部82aを通ればよい。
【0092】
図9(a)ではビーム17,18が同一平面に位置していたが、図9(e)では、前記条件を満たせば、ビームが同一平面状に無い場合でも機能の実現が可能である。アクチュエータの剛性が十分であれば、図9(f)のようにビームを無くしてアクチュエータ21a〜21dだけで可動側15を支持して構成することもできる。
【0093】
上記の(b)〜(f)では4枚のアクチュエータ21a〜21dを使用していたが、図10(g)〜(m)では2枚のアクチュエータ21a,21dを用いている。図10(g)は図6の場合の例である。伸縮型のアクチュエータを使用する場合には、図10(g)〜(j)のように、ビーム断面の対角位置にアクチュエータを配置して、同位相でアクチュエータを駆動する形態が考えられる。
【0094】
図10(h)では、可動側15の上面に端部が固定されたビーム17と、可動側15の下面で中立点85についてビーム17と対角位置に端部が固定されたビーム18と、ビーム17と平行に可動側15の下面に端部が固定されたアクチュエータ21dと、ビーム18と平行に可動側15の上面に端部が固定されたアクチュエータ21bとで、可動側15を支持している。
【0095】
図10(i)(k)では、屈曲型のアクチュエータ21b,21dをビーム17,18の断面の対角位置に配置して可動側15を支持している。
図10(j)では、屈曲型のアクチュエータ21b,21dをビーム17,18の断面の対角位置にビーム17,18と平行に配置して可動側15を支持している。
【0096】
図10(l)では、端部が可動側15の下面に固定されたビーム17,18で支持するとともに、端部が可動側15の上面に固定されビーム17,18と平行な屈曲型のアクチュエータ21b,21dによって可動側15を支持し、アクチュエータ21b,21dを逆位相で駆動する。
【0097】
図10(m)では、可動側15の下面に端部が固定されたアクチュエータ21dと、可動側15の上面に端部が固定されたアクチュエータ21bとで、可動側15を支持している。
【0098】
伸縮型,屈曲型のアクチュエータをビームの対角に配置する場合は、4枚のアクチュエータを使用する場合と同様、ビーム,アクチュエータの断面が、断面の中立点に対して点対称であり、中立点からなる軸が中心点82bを通っていればよい。屈曲型のアクチュエータを、ビームの同一側面両端に配置する場合は、アクチュエータの駆動によって生じるねじれの軸が、ビーム,アクチュエータの断面の中立点から若干ずれるため、中心点82bがねじれの軸上に配置されるよう、配置に留意する必要がある。
【0099】
なお、屈曲型のアクチュエータを用いる場合には、アクチュエータが十分な剛性を備えれば、図10(m)のようにビームを設けないことも可能だが、伸縮型のアクチュエータを使用する場合には、何らかのビームが必要となる。
【0100】
これまでに述べたアクチュエータとビームの配置は、アクチュエータに絶対値が同じ電圧をかけ駆動させる場合の断面形状の条件である。それぞれのアクチュエータに異なる電圧を印加してコントロールする場合には、ビームの配置や断面形状が上記条件を満たさない場合でも、目的とする機能を実現可能な場合がある。
【0101】
その例としては、図10(n)のように3枚のアクチュエータ21a,21b,21dを使用する場合、図10(o)のようにビーム,アクチュエータ断面の中立点からなる軸が、ロードビーム82の突起部82aの中心点82bを通っていない場合、図10(q)のように断面形状が左右で異なる場合、図10(p)のようにアクチュエータの配置がずれている場合などが挙げられる。図10(k)(l)で、伸縮型のアクチュエータを同一面に取り付け、逆位相で駆動させる場合も、この例である。
【0102】
このような場合には、ロードビーム82を、ビーム断面の中立点からなる軸の周りに回動させることが難しい場合も多い。しかし、ロードビーム82を、支持プレート16からヘッドスライダ32方向への軸を中心に回動させ、磁気ディスク60の平面に対して傾斜させることができ、中心点82bと磁気ディスク60の距離が変化しないのであれば、機能の実現に支障は無い。また、この場合にはアクチュエータの駆動により、ロードビーム82,フレキシャ12,ヘッドスライダ32が、ロータ20の回動方向に幾分変位することもありうるが、磁気ヘッドで磁気ディスク60上の位置信号を認識できるため、信号への追従に問題は発生しない。
【0103】
このように、各アクチュエータを異なる電圧で動作させなければいけない場合、アクチュエータの配置においては、求める傾斜角のためそれぞれのアクチュエータに印加すべき電圧は、ビームとアクチュエータの形態に依存する。このため、このような形態で使用する場合には、事前に電圧と傾斜の関係を確認しておき、傾斜角調整のためのパラメータとして使用することが必要である。
【0104】
4枚のアクチュエータを用いた場合、2枚の場合よりもロードビーム82の傾斜範囲を大きく取れ、同じ傾斜であれば低い電圧で実現が可能である。一方、2枚のアクチュエータを使用した場合のした方が、コストや実装面では優位性がある。また、2枚のアクチュエータを使用する場合には、断面の対角な位置に配置した方が設計の容易さで優位であるが、同一面側に配置した方が製造の面で容易であり、サスペンションの左右が対称であるため振動の悪影響が発生しにくいといった点で優位である。
【0105】
また、上記のような形態に準じて、5枚のアクチュエータを使用した場合でも、同様の機能を実現できることは言うまでも無い。ちなみに、ここでは断面の四隅、両端という表現をしているが、必ずしも断面の最端でなくとも問題が無い。回動させたい断面の軸からなるべく距離が離れていた方が変位量を大きく取れるが、そうでない場合でも機能は実現できる。
【0106】
(実施の形態5)
上記の各実施の形態では、アクチュエータを支持プレート16の固定側14から支持プレート16の可動側15の方向に伸縮、もしくは支持プレート16の固定側14側を基準として、アクチュエータの支持プレート16の可動側15の側が、主たる平面と垂直な方向に屈曲する場合を例に挙げて説明したが、本機能を実現するためには、そのほかにもアクチュエータ部84の構成は考えられる。
【0107】
具体的には図11または図12に示すように構成しても実現できる。
図11(a)は分解図、図11(b)は完成したアクチュエータ部84を示す。アクチュエータ21a,21bを、支持プレート16の可動側15から支持プレート16の固定側14の方向に対して垂直方向と斜め方向に配置し、伸縮もしくは屈曲動作させる。図12(a)(b)も同様である。
【0108】
上記の各実施の形態では、アクチュエータとして圧電素子や電歪素子を例に挙げて説明したが、磁歪素子,ボイスコイルモータ,ソレノイド等を用いても、本発明が目的とするサスペンションの変位を実現できるように設計すれば、アクチュエータの種類を限定するものではない。
【0109】
上記の各実施の形態において、支持プレート16の固定側14と可動側15,ビーム17,18は、一部もしくは全てが一体構造でもかまわない。また、バネ部13,ロードビーム82,支持プレート16も含めて、一部もしくは全体が一体構造でもかまわない。
【産業上の利用可能性】
【0110】
本発明は、磁気ディスク装置のトラックミスレジストレーション(TMR)を低減することができるので、磁気ディスク装置の転送速度やエラーレートの改善などに寄与することができ、この磁気ディスク装置を搭載した各種情報機器などの信頼性向上を期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0111】
【図1】本発明の実施の形態1の磁気ヘッドアッセンブリの外観図
【図2】同実施の形態の分解図
【図3】図1におけるD−D断面拡大図とB−B断面拡大図
【図4】パラメータ学習のフローチャート図
【図5】同実施の形態の磁気ヘッドアッセンブリの変形シュミレーションと比較図
【図6】本発明の実施の形態1の磁気ヘッドアッセンブリの外観図
【図7】同実施の形態の分解図と図6におけるD−D断面拡大図
【図8】本発明の実施の形態3の磁気ヘッドアッセンブリの外観図
【図9】(a)〜(f)は本発明の実施の形態4の各実施例の断面拡大図
【図10】(g)〜(q)は本発明の実施の形態4の各実施例の断面拡大図
【図11】本発明の実施の形態5の磁気ヘッドアッセンブリの分解図と外観図
【図12】同実施の形態の別の分解図と外観図
【図13】磁気ディスク装置の上カバーを取り外した外観斜視図
【図14】磁気ヘッドアッセンブリの部分の平面図と磁気ディスクの振動により磁気ヘッドアッセンブリが変位する様子の説明図
【図15】振動によるTMR悪化の仕組みを示す図
【図16】振動によるTMR悪化量と磁気ヘッドアッセンブリ10を傾斜させて固定した場合のTMR改善量を示す図
【符号の説明】
【0112】
10 磁気ヘッドアッセンブリ
11 サスペンション
12 フレキシャ
13 バネ部
14 支持プレート16の固定側
15 支持プレート16の可動側
16 支持プレート
17,18 ビーム
20 ロータ
21a,21b,21c,21d アクチュエータ
30 ピボットベアリング
31 フレキシブル配線基板
32 ヘッドスライダ
50 基台(ベース)
60 磁気ディスク
61 サーボトラック
71 クランパ
72 ボイスコイルモータ(VCM)
84 アクチュエータ部
82 ロードビーム
82a 突起部
82b 突起部82aの中心点
85 支持プレート16の固定側14と可動側15の断面の中立点

【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁気ディスクのアクセス位置に応じて回動するよう駆動されるロータの一端にサスペンションを介して磁気ヘッドを有するヘッドスライダが取り付けられた磁気ヘッドアッセンブリであって、
ロータの前記一端と前記サスペンションとの間に、サスペンションの傾斜角を指令信号に応じて変位させるアクチュエータ部を設けた
磁気ヘッドアッセンブリ。
【請求項2】
前記サスペンションは、
前記ロータの側に基端が接続されたロードビームと、前記ロードビームに比べ屈曲が容易でロードビームの先端に取り付けられたフレキシャとからなり、前記フレキシャに前記ヘッドスライダが取り付けられており、前記サスペンションの先端には、前記フレキシャに当接して前記ヘッドスライダを突き出す突起部を設けた
請求項1記載の磁気ヘッドアッセンブリ。
【請求項3】
ロータの前記一端に前記アクチュエータ部の固定側を固定し、
前記アクチュエータ部の可動側にバネ部を介して前記サスペンションを固定した
請求項1記載の磁気ヘッドアッセンブリ。
【請求項4】
ロータの前記一端にバネ部を介して前記アクチュエータ部の固定側を固定し、
前記アクチュエータ部の可動側に前記サスペンションを固定した
請求項1記載の磁気ヘッドアッセンブリ。
【請求項5】
磁気ディスクのアクセス位置に応じて回動するよう駆動されるロータの一端にサスペンションを介して磁気ヘッドを有するヘッドスライダが取り付けられた磁気ヘッドアッセンブリを備えた磁気ディスク装置であって、
磁気ヘッドアッセンブリは、ロータの前記一端と前記サスペンションとの間に、サスペンションの傾斜角を指令信号に応じて変位させるアクチュエータ部を設け、
磁気ディスクアッセンブリの磁気ディスク上の半径位置,トラックミスレジストレーションの大きさに応じて、前記サスペンションの傾斜角を変更するよう前記アクチュエータ部を駆動する制御部を設けた
磁気ディスク装置。
【請求項6】
前記サスペンションは、
前記ロータの側に基端が接続されたロードビームと、前記ロードビームに比べ屈曲が容易でロードビームの先端に取り付けられたフレキシャとからなり、前記フレキシャに前記ヘッドスライダが取り付けられており、前記サスペンションの先端には、前記フレキシャに当接して前記ヘッドスライダを突き出す突起部を設け、
ヘッドスライダが前記磁気ディスク上を浮上している状態において前記突起部の中心点が、前記アクチュエータ部の断面の中立点からなる軸の延長上に位置している
請求項5記載の磁気ディスク装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2008−310912(P2008−310912A)
【公開日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−159619(P2007−159619)
【出願日】平成19年6月18日(2007.6.18)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】