説明

磁気ヘッドユニットの取付構造

【課題】 ヘッドユニットの取付けの作業性を向上させるとともに取付けに要する時間を短縮する。
【解決手段】 アッパーケース2にはスリット4が設けられ、スリット4を挟んで本体が部材10と先端側部材11とに分割され、両部材10,11は連結部12,13によって連結されている。連結部12,13にはスリット4を開口としたカード摺動溝15a,15bが設けられ、カード摺動溝15a,15bの端部にはカード挿入口12a,カード排出口13aが設けられている。アッパーケース2には、ヘッドユニット20の回動を規制する回動規制用リブ16がスリット4を挟んで一体に突設されている。ねじ26によってアッパーケース2に取り付けられたヘッドユニット20のカード摺動溝15cは、連結部12,13のカード摺動溝15a,15bと連通される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気カードを把持しカードの一部を筺体のカード摺動溝内を摺動させることにより、磁気ヘッドによって磁気カードの情報を処理する磁気カードリーダに関し、特に磁気ヘッドが設けられた磁気ヘッドユニットの取付構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の磁気ヘッドユニットの取付構造は、一端側にカードの一部を挿入するカード挿入口が設けられ他端側にカード排出口が設けられた断面がU字状のカード通路と、カード通路と連通するカード摺動溝が形成され磁気ヘッドが設けられたヘッドユニットとを備え、カード挿入口から挿入されたカードをカート通路内を摺動させ、ヘッドユニットのカード摺動溝内を通過させるときに磁気ヘッドによりカードの情報を処理し、カードをカード排出口から排出させるものがある(例えば、特許文献1参照)。なお、本出願人は、本明細書に記載した先行技術文献情報で特定される先行技術文献以外には、本発明に密接に関連する先行技術文献を出願時までに見付け出すことはできなかった。
【特許文献1】特開平6−223235号公報(段落「0011」、図2ないし図4)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上述した従来の磁気ヘッドユニットの取付構造においては、ヘッドユニットを筺体の支持板にねじ止めするだけの構造であるため、ヘッドユニットをねじ止めする際に、ヘッドユニットがわずかに回動してしまうことがある。ヘッドユニットが回動した状態で取り付けられると、ヘッドユニットのカード摺動溝と筺体のカード通路との位置がずれるため、磁気カードの円滑な摺動ができないばかりか、とともに磁気ヘッドでの読取り不良が発生するおそれもある。したがって、ヘッドユニットのカード摺動溝がカード通路から位置ずれしないように取り付けるために、組付け作業が煩雑になるばかりではなく細心の注意を払って組付けなければらず時間を要するという問題があった。
【0004】
本発明は上記した従来の問題に鑑みなされたものであり、その目的とするところは、ヘッドユニットの取付けの作業性を向上させるとともに取付けに要する時間を短縮することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この目的を達成するために、請求項1に係る発明は、磁気カードを摺動させるカード摺動溝が形成された筺体と、この筺体に取り付けられ前記カード摺動溝の一部を形成し、このカード摺動溝を摺動させる磁気カードの情報を処理する磁気ヘッドが設けられたヘッドユニットとを備えた磁気ヘッドユニットの取付構造において、前記筺体に、前記摺動溝を挟んで互いに対向し前記ヘッドユニットを挟持する少なくとも二対の回動規制用リブを一体に設けたものである。
【0006】
請求項2に係る発明は、請求項1に係る発明において、前記筺体を前記カード摺動溝を挟んで2つに分割し、これら2つの分割された筺体間を連結し前記カード摺動溝の一部を形成する断面U字状の一対の連結部を前記カード摺動溝の両端部において前記筺体に一体形成し、これら連結部間に前記ヘッドユニットを設けたものである。
【発明の効果】
【0007】
請求項1に係る発明によれば、筺体に取り付けられるヘッドユニットは、回動規制用リブによって回動が規制されるため取り付ける際の作業性が向上するとともに作業時間を短縮することができる。また、取り付けられたヘッドユニットのカード摺動溝が筺体のカード摺動溝に対して位置ずれすることなく取り付けられるため、カード摺動溝内のカードを円滑に摺動させることができるとともに磁気ヘッドによる情報処理不良を防止することができる。
【0008】
請求項2に係る発明によれば、仮に製造誤差によりカード摺動溝の幅にばらつきがあったとしても、筺体に取り付けられたヘッドユニットによって連結部のカード摺動溝の幅が矯正されるため、カード摺動溝内のカードを円滑に摺動させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態を図に基づいて説明する。図1は本発明に係る磁気ヘッドユニットの取付構造を採用した磁気カードリーダの正面図、図2は同じくアッパーケースの裏面側を示す正面図、図3は同じくアッパーケースの裏面側から見た斜視図、図4は同じくアッパーケースの裏面側の要部を拡大して示す正面図、図5は同じく磁気ヘッドユニットを取り付けた状態のアッパーケースの裏面側の要部を拡大して示す正面図、図6は同じく磁気ヘッドユニットの斜視図、図7は図5におけるVII-VII 線断面図、図8は図4におけるVIII-VIII 線断面図、図9は図5におけるIX-IX 線断面図である。
【0010】
図1に全体を符号1で示す磁気カードリーダは、共にプラスチックによって形成されたアッパーケース2とロアーケース(図示せず)とによって略密閉状態となる筺体が形成され、アッパーケース2には、磁気カード(以下、単にカードという)3をアッパーケース2内に挿入するために矢印A−B方向に延在するスリット4および表示器5ならびに複数の操作ボタン6が設けられている。アッパーケース2の裏面側には、図2に示すように、ロアーケースを取り付けるための複数のダボ7と、後述するヘッドユニット20を取り付けるための2本のダボ8とが一体に立設されている。
【0011】
アッパーケース2はスリット4を挟んで、矢印C−D方向に本体側部材10と先端側部材11とに分割されており、これら両部材10,11の矢印A−B方向の両端部において、これら両部材10,11を連結する2つの連結部12,13が両部材10,11に跨るように一体形成されている。これら連結部12,13は、図3および図8に示すように断面がU字状に形成され、スリット4を開口としたカード摺動溝15a,15bが設けられている。連結部12のカード摺動溝15aの矢印B方向の端部には、カード3を挿入するためのカード挿入口12aが設けられ、連結部13のカード摺動溝15bの矢印A方向の端部には、カード3を排出するためのカード排出口13aが設けられている。カード挿入口12a側はカード3を挿入しやすくするために、カード排出口13a側と比較して開口端縁が拡く形成されている。また、カード挿入口12a側に設けられた連結部12は、カード排出口13a側に設けられた連結部13よりも矢印A−B方向の長さが長く形成されている。
【0012】
図4に示すように、アッパーケース2の底部のダボ8,8の矢印A−B方向および矢印C−D方向の外側であって、スリット4を挟んで互いに対向する部位には、後述するヘッドユニット20の回動を規制する二対の回転規制用リブ16が一体に立設されている。また、アッパーケース2の底部のダボ8,8の矢印A−B方向の外側の部位には、矢印A−B方向において互いに対向するヘッドユニット20の矢印A−B方向の移動を規制する二対の移動規制用リブ17が一体に立設されている。
【0013】
図6において、20はヘッドユニットであって、ブラケット21とこれに取り付けられた磁気ヘッド25とからなる。ブラケット21は、挿通孔22aが設けられた底板22と、これに互いに対向するように立設された一対の摺動壁23,23と、これら摺動壁23,23の両端部が互いに対向するように形成された側部24とによって構成されている。一対の摺動壁23,23間には、カード摺動溝15cが形成され、一方の摺動壁23に取り付けられた磁気ヘッド25のヘッド読取り面は、この摺動壁23に設けられた窓からカード摺動溝15c内に臨んでいる。
【0014】
ブラケット21の幅方向の寸法、すなわち互いに並設された両側部24,24の端面24a,24a間の間隔W1は、互いに対向する一対の回動規制用リブ16,16間の間隔W2よりもやや大きく形成されている。また、ブラケット21の長手方向の寸法、すなわち互いに対向する両側部24,24の側面24b,24b間の間隔L1は、互いに対向する一対の移動規制用リブ17,17間の間隔L2と同じ長さに形成されている。
【0015】
このような構成において、図6に示すヘッドユニット20を天地方向を逆にした状態で、図4に示すアッパーケース2の互いに対向する回動規制用リブ16,16間に、ヘッドユニット20の両側部24,24の端面24a,24aを嵌合させる。このとき、ブラケット21の両側部24,24の端面24a,24a間の間隔W1が、回動規制用リブ16,16間の間隔W2よりもわずかに大きく形成されているため、連結部12,13が弾性変形してアッパーケース2のスリット4がわずかに押し拡げられ、スリット4は図7に示すようにヘッドユニット20のカード摺動溝15cの開口幅W3と一致する。
【0016】
したがって、アッパーケース2を成形加工した際にスリット4の幅にばらつきが発生したとしても、ヘッドユニット20をアッパーケース2に取り付けることにより、スリット4をヘッドユニット20のカード摺動溝15cの開口幅W3と一致するように矯正することができる。このため、連結部12,13のカード摺動溝15a,15bと、ヘッドユニット20のカード摺動溝15cとの間に段差を生じることがなく連通する。
【0017】
また、回動規制用リブ16,16間に両側部24,24の端面24a,24aを嵌合させたヘッドユニット20は、これら二対の回動規制用リブ16,16によって挟持されることにより回動が規制される。したがって、ブラケット21の挿通孔22aに挿通させたねじ26をアッパーケース2のダボ8に螺合させて、ヘッドユニット20をアッパーケース2に取り付ける際に、ヘッドユニット20とアッパーケース2との間で位置ずれを起こすようなことがない。このため、ヘッドユニット20のカード摺動溝15cの開口とアッパーケース2のスリット4とが一致した状態のままで取り付けられるから、カード摺動溝15a,15b,15c内のカード3を円滑に摺動させることができるとともに、磁気ヘッド25による情報処理不良を防止することができる。また、アッパーケース2に取り付けられるヘッドユニット20は、回動規制用リブ16によって回動が規制されるため、取り付ける際の作業性が向上するとともに取付時間を短縮することができる。
【0018】
このヘッドユニット20の取付けの際には、ブラケット21の両側部24,24の側面24b,24bが互いに対向する移動規制用リブ17,17に係合し、ヘッドユニット20がこれら移動規制用リブ17,17によって挟持され矢印A−B方向への移動が規制されている。このため、より確実にヘッドユニット20のカード摺動溝15cの開口とアッパーケース2のスリット4とが一致した状態のままで取り付けられるとともに、取り付ける際の作業性が向上し作業時間を短縮することができる。
【0019】
このように取り付けられたヘッドユニット20は連結部12,13間に位置付けられ、図1に示すように、カード挿入口12aから連結部12のカード摺動溝15aに挿入したカード3を矢印A方向に移動させ、カード摺動溝15a内からヘッドユニット20のカード摺動溝15c内を摺動させ、このカード摺動溝15c内を摺動させる際に、磁気ヘッド25によってカード3の情報が読み取られる。さらに、カード3を矢印A方向に移動させ、連結部13のカード摺動溝15b内を摺動させることにより、カード排出口13aからカード3が排出される。
【0020】
このとき、カード挿入口12aがカード3を挿入しやすいようにカード排出口13a側と比較して開口端縁が拡く形成されているため、カード挿入口12aから挿入された直後のカード3はカード3の厚み方向に傾きやすい。しかしながら、カード挿入口12a側に設けた連結部12の矢印A−B方向の長さを、カード排出口13a側に設けた連結部13よりも長く形成したことにより、この連結部12のカード摺動溝15a内を摺動している間にカード3の厚み方向への傾きは矯正されるから、ヘッドユニット20の磁気ヘッド25による読取り不良を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明に係る磁気ヘッドユニットの取付構造を採用した磁気カードリーダの正面図である。
【図2】本発明に係る磁気ヘッドユニットの取付構造を採用した磁気カードリーダのアッパーケースの裏面側を示す正面図である。
【図3】本発明に係る磁気ヘッドユニットの取付構造を採用した磁気カードリーダのアッパーケースの裏面側から見た斜視図である。
【図4】本発明に係る磁気ヘッドユニットの取付構造を採用した磁気カードリーダのアッパーケースの裏面側の要部を拡大して示す正面図である。
【図5】本発明に係る磁気ヘッドユニットの取付構造を採用した磁気カードリーダの磁気ヘッドユニットを取り付けた状態のアッパーケースの裏面側の要部を拡大して示す正面図である。
【図6】本発明に係る磁気ヘッドユニットの取付構造を採用した磁気カードリーダの磁気ヘッドユニットの斜視図である。
【図7】図5におけるVII-VII 線断面図である。
【図8】図4におけるVIII-VIII 線断面図である。
【図9】図5におけるIX-IX 線断面図である。
【符号の説明】
【0022】
1…磁気カードリーダ、2…アッパーケース、3…磁気カード、4…スリット、8…ダボ、10…本体側部材、11…先端側部材、12,13…連結部、12a…カード挿入口、13a…カード排出口、15a,15b,15c…カード摺動溝、16…回動規制用リブ、17…移動規制用リブ、20…ヘッドユニット、21…ブラケット、24…側部、25…磁気ヘッド。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁気カードを摺動させるカード摺動溝が形成された筺体と、この筺体に取り付けられ前記カード摺動溝の一部を形成し、このカード摺動溝を摺動させる磁気カードの情報を処理する磁気ヘッドが設けられたヘッドユニットとを備えた磁気ヘッドユニットの取付構造において、
前記筺体に、前記摺動溝を挟んで互いに対向し前記ヘッドユニットを挟持する少なくとも二対の回動規制用リブを一体に設けたことを特徴とする磁気ヘッドユニットの取付構造。
【請求項2】
請求項1記載の磁気ヘッドユニットの取付構造において、
前記筺体を前記カード摺動溝を挟んで2つに分割し、これら2つの分割された筺体間を連結し前記カード摺動溝の一部を形成する断面U字状の一対の連結部を前記カード摺動溝の両端部において前記筺体に一体形成し、これら連結部間に前記ヘッドユニットを設けたことを特徴とする磁気ヘッドユニットの取付構造。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−139457(P2006−139457A)
【公開日】平成18年6月1日(2006.6.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−327530(P2004−327530)
【出願日】平成16年11月11日(2004.11.11)
【出願人】(304020498)サクサ株式会社 (678)
【Fターム(参考)】