説明

磁気ヘッド素子検査方法及びその装置

【課題】
磁気ヘッドのローバーに形成された個々の磁気ヘッド素子が形成する磁場の二次元分布を外部環境の影響を受けることなく測定することを可能にする。
【解決手段】
磁気ヘッドが多数形成されたローバーの各磁気ヘッドのライトトラックの実効トラック幅を検査する磁気ヘッド素子検査装置において、トレイ部とステージ部と試料受渡部と磁場計測部と実効トラック幅計測部とを外部からの振動を遮断する除振テーブル部に搭載し、トレイ部とステージ部と試料受渡部と磁場計測部と実効トラック幅計測部と除振テーブル部とを防音部で覆って外部の騒音を遮断する構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気ヘッド素子を検査する方法及びその装置に係り、特に磁気ヘッド素子製造工程の途中で、基板上に多数形成された磁気ヘッド素子が個々に分離される前のローバーの状態でライトトラックの実効トラック幅を測定するのに適した磁気ヘッド素子検査方法及びその装置に関する。
【背景技術】
【0002】
磁気ヘッドを非破壊で検査する装置としては、光学顕微鏡を用いる方法、走査型電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope: SEM)を用いる方法、原子間力顕微鏡(Atomic Force Microscope: AFM)を用いる方法、磁気力顕微鏡(Magnetic Force Microscope: MFM)を用いる方法などがある。
【0003】
上記した方法にはそれぞれ一長一短があるが、ハードディスクに書き込むために磁気ヘッドが発生する磁場を非破壊で検査できるという点においては、磁気力顕微鏡(MFM)を用いる方法が、他の方式の観察手段を用いる方法よりも優れている。
【0004】
この磁気力顕微鏡(MFM)を用いて磁気ヘッド素子が個々に分離される前のローバーの状態でライトトラックの実効トラック幅を測定することについては、例えば特開2010−175534号公報(特許文献1)に記載されている。即ち、特許文献1には、試料であるローバーの磁気ヘッド回路パターンに電流を印加することにより磁場を発生させ、この発生した磁場にカンチレバーに取付けた磁性探針を近づけてカンチレバーの探針の変位量を検出することをカンチレバーを2次元走査させて行うことにより試料の発生する磁場を2次元測定することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−175534号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1には、探針を持つカンチレバーを2次元走査することによって、磁気ヘッドのローバーに形成された個々の磁気ヘッド素子が形成する磁場の二次元分布を測定することが記載されているが、試料を計測位置に設定して周囲の環境の影響を受けずに高精度に測定するための構成及びその方法については触れられていない。
【0007】
本発明の目的は、上記した従来技術の課題を解決して、磁気ヘッドのローバーに形成された個々の磁気ヘッド素子が形成する磁場の二次元分布を測定することを可能にする磁気ヘッド素子検査方法及びその装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記した課題を解決するために、本発明では、磁気ヘッドが多数形成されたローバーの各磁気ヘッドのライトトラックの実効トラック幅を検査する磁気ヘッド素子検査装置を、検査前のローバーと検査後のローバーとを分離して収納するトレイ部と、検査位置と試料受渡位置との間を移動可能なステージ部と、トレイ部から検査前のローバーを取出して試料受渡位置で待機しているステージ部に受け渡す試料受渡部と、試料受渡位置で検査前のローバーを受け取ったステージが検査位置に移動した状態でローバーに形成された磁気ヘッドに交流電流を印加することにより発生する磁場を計測する磁場計測部と、この磁場計測部で計測して得たデータに基づいて磁気ヘッドに形成されたライトトラックの実効トラック幅の良否を判定する実効トラック幅計測部と、トレイ部とステージ部と試料受渡部と磁場計測部と実効トラック幅計測部とを搭載して外部からの振動を遮断する除振テーブル部とトレイ部とステージ部と試料受渡部と磁場計測部と実効トラック幅計測部と除振テーブル部とを覆って外部の騒音を遮断する防音部とを備えて構成した。
【0009】
また、上記した課題を解決するために、本発明では、磁気ヘッドが多数形成されたローバーの各磁気ヘッドのライトトラックの実効トラック幅を検査する磁気ヘッド素子検査方法において、供給用トレイから検査前のローバーを取出して試料受渡位置で待機しているステージに受渡し、この検査前のローバーが受け渡されたステージを検査位置に移動させ、ステージが検査位置に移動した状態でローバーと磁気力顕微鏡のカンチレバーの先端部付近に取付けられた探針とのギャップが所定の量になるようにステージでローバーを上昇させ、このローバーを上昇させた状態でローバーに形成された多数の磁気ヘッド素子のうちの一つの磁気ヘッド素子に交流電流を印加してこの一つの磁気ヘッド素子により磁場を発生させてこの発生させた磁場の状態を磁気力顕微鏡で計測し、この計測した磁場の状態に基づいて一つの磁気ヘッド素子に形成されたライト実効トラック幅の良否を判定し、このライトトラックの実効トラック幅の良否の判定が終わったローバーをステージで下降させ、下降させたローバーをステージで検査位置から試料受渡位置へ搬送し、この試料受渡位置へ搬送されたローバーをライトトラックの実効トラック幅の良否の判定結果に基づいて、良品を収納するトレイ又は不良品を収納するトレイの何れかに収納することを外部の騒音を遮断する防音壁で覆われた環境で実行するようにした。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、磁気ヘッド素子の磁気特性を、周辺の雑音や振動を遮断した環境でローバーの状態で検査して、不良品を良品から分離して回収できるので、磁気ヘッドの製品歩留まりの向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施例における磁気ヘッド素子検査装置の全体の構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の実施例における磁気ヘッド素子検査装置の構成を示す平面図である。
【図3】本発明の実施例における磁気ヘッド素子検査装置の測定部の概略の構成を示す図2のA−A断面矢視図である。
【図4A】本発明で検査の対象とするローバーの斜視図である。
【図4B】本発明の実施例におけるローバーに形成された磁気ヘッド素子の電極にプローブの先端部分を接触させた状態を示す磁気ヘッド素子の平面図である。
【図5】本発明の実施例における磁気ヘッド素子検査装置の搬送部の概略の構成を示す図2のB−B断面矢視図である。
【図6】本発明の実施例における磁気ヘッド素子検査装置の測定部の制御系の概略の構成を示すブロック図である。
【図7】本発明の実施例における磁気ヘッド素子を検査する処理の流れを示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明の実施形態を、図を用いて説明する。
図1は、本発明の実施例における磁気ヘッド素子検査装置の全体の構成を示すブロック図である。磁気ヘッド素子検査装置は、測定部100、モニター部200、搬送部300、及び信号処理・制御部400を備えている。
【0013】
測定部100、モニター部200と搬送部300は、防音ボックス600で覆われており、外部からの音が測定に影響を与えないように遮音する構成になっている。
【0014】
図2は、本発明の実施例における磁気ヘッド素子検査装置の構成を示す平面図である。
磁気ヘッド素子検査装置は、防音ボックス600で覆われた除振テーブル500上に、測定部100と搬送部300を配置して構成されている。
【0015】
搬送部300は、搬送ロボット310と搬送ロボット310のX方向の移動をガイドするガイドレール320、検査前及び検査後のローバーを搭載する供給用トレイ331〜333を載置するトレイ載置部330を備えている。
Hは試料受渡ステーションで、Mは試料計測ステーションである。
【0016】
図3は、図2のA−A断面矢視図で、測定部100の詳細な構成を示す。測定部100は、XYZ粗動ステージユニット110、XYZ微動ステージユニット120、探針ユニット130、プローブユニット140、観察ユニット150、X軸ガイドレール160を備えている。
【0017】
XYZ粗動ステージユニット110は、X粗動ステージ111、Y粗動ステージ112、Z粗動ステージ113を備えている。X粗動ステージ111はリニアモータ161で駆動されてX軸ガイドレール160に沿ってX軸方向に移動可能で、試料受渡ステーションHと試料計測ステーションMとの間を移動する。
【0018】
XYZ微動ステージユニット120はX微動ステージ121、Y微動ステージ122、Z微動ステージ123を備え、それぞれ図示していないnm(ナノメータ)オーダの分解能をもつ駆動源(例えば、ピエゾ素子)で駆動される。
【0019】
探針ユニット130は、カンチレバー131と、探針132、加振器133、位置検出器134、加振器ベース135を備え、加振器133で振動を加えられたカンチレバー131の先端部付近に取付けられた探針132の振動によるカンチレバー131の振れを、位置検出器134で検出する。位置検出器134は、カンチレバー131に光ビームを照射してその反射光を検出し、その反射光を検出した位置からカンチレバーの傾き角を求め、探針132の変位量を求める。探針132は磁性材料で形成されており、計測対象の磁場の強さによってカンチレバー131の振幅が変化する。即ち、測定部100は、磁気力顕微鏡(Magnetic Force Microscope:MFM)として機能する。
【0020】
プローブユニット140は、プローブガード141と、プローブガード141に取付けられたプローブ142を備えている。一方、ローバー1は、図4Aに示すように磁気ヘッド素子が多数形成された角棒状の基板であり、図4Bに示したように磁気ヘッド素子のローバー1の内部に形成されたプローブ電極11と12とにプローブ142の先端部分1421と1422とを接触させた状態で交流電流143を印加することにより、書込み回路部13から磁界が発生する。ローバー1に印加する交流電流の周波数を、カンチレバー131の共振周波数とは異なる周波数とすることによって、ローバー1から発生する磁界の分布を高速に測定し、ライト実行トラック幅を測定することができる。
【0021】
プローブガード141は、図示していない構成によりY方向に移動可能な構成になっていて、プローブ142の先端部分1421及び1422とプローブ電極11及び12とが接触、離れの動作を行うように駆動する。
【0022】
観察ユニット150は、磁気ヘッド素子のローバー1とカンチレバー131とを観察する上方観察用カメラ151と、磁気ヘッド素子のローバー1とプローブ142の先端部分1421及び1422とが観察できる側方観察用カメラ152を備えている。153は上方観察用カメラ151を支持して除振テーブル500に固定するカメラ固定部材、154は側方観察用カメラを支持して除振テーブル500に固定するカメラ固定部材である。
【0023】
XYZ粗動ステージユニット110により、探針132の観察位置への粗いアプローチやローバー1測定後の探針132の退避、ローバー1の交換時または探針132の交換時のXYZ微動ステージユニット120の退避を実現できる。
【0024】
また、XYZ微動ステージユニット120は図示していないピエゾ素子を駆動源として備えており、サブナノメートルの水平分解能及び垂直分解能をもっている。これにより、探針132の先端とローバー1の表面の間隔及び探針132とローバー1の水平方向の相対的な位置をサブナノメートルのオーダーで変化させることができる。
【0025】
図5は、図2のB−B断面矢視図である。搬送ロボット310は、図5に示すように、ベース311、メインフレーム312、第1アーム313、第2アーム314、ワーク吸着ヘッド部315、ワーク吸着部316、第1関節部317、第2関節部318及び第3関節部319を備えており、検査前及び検査後のローバー1をワーク吸着ヘッド部315のワーク吸着部316で真空吸着してトレイ載置部330のトレイと測定部100との間を搬送する。
【0026】
なお、搬送ロボット310は、ワーク吸着ヘッド部315とワーク吸着部316を使用せずに、ローバー1の両端をフック部(図示せず)に引っかけて、持上げたり、あるいは下ろしたりするようにしてもよい。
【0027】
図6は、測定部100と信号処理制御部400に含まれる測定部100を制御し、検出信号を処理する回路構成の概略を示す。信号処理制御部400に含まれる測定部100を制御し、検出信号を処理する回路には、加振器133を励振させる発振器401、位置検出器134から出力された信号を増幅するアンプ402、XYZ微動ステージユニット120を制御するXYZ微動ステージ制御器411、XYZ粗動ステージユニット110を制御するXYZ粗動ステージ制御器412、プローブ142に直流電流を印加する定流電源421、プローブ142の先端部分1421及び1422との間の抵抗値を測定する抵抗測定器422、プローブガード141を上下方向に駆動してプローブ142の先端部分1421及び1422とをローバー1の電極11及び12への接触/非接触(ON/OFF)を制御するプローブガード制御部423、アンプ402に入力させる信号を発信器401からの信号と定電流源421からの信号との間で切替えるスイッチ431、信号処理・画像処理及び全体の制御を行う制御器440および表示器450を備えている。
【0028】
アンプ402としてロックインアンプを用い、スイッチ431を発振器401の側に接続し、発振器401の発振周波数にロックすることで、カンチレバー131の振動に起因する信号成分だけを選択的に取得することができる。
【0029】
また、スイッチ431を定流電源421の側に切替えて、ロックインアンプであるアンプ402を定流電源421の交流電流の周波数にロックすることにより、位置検出器134の出力信号からローバー1の磁気ヘッド素子を励磁したことによるカンチレバー131の応答を選択的に検出することができる。
【0030】
このような構成で、トレイ載置部330の供給用トレイ331に収納されたローバー1を搬送ロボット310で取出して測定部100に搬送し、測定部100で測定を終えたローバー1を、測定の結果に応じてトレイ載置部330の良品収納用トレイ332又は不良品収納用トレイ333に収納するまでの一連の動作を、図7を用いて説明する。
【0031】
まず、トレイ載置部330の供給用トレイ331に収納されたローバー1を、搬送ロボット310によりワーク吸着ヘッド315のワーク吸着部316で真空吸着して取出す。搬送ロボット310は、ワーク吸着ヘッド部315とワーク吸着部316を使用せずに、フック部を使用するときは、このフック部がローバー1の両端を引っかけて取出す(S701)。次に、搬送ロボット310はガイドレール320に沿って移動してワーク受渡位置Hまで移動して試料受渡ステーションHで待機している測定部100のXYZ粗動ステージユニット110上のXYZ微動ステージユニット120上に搭載する(S702)。XYZ微動ステージユニット120上にローバー1が搭載された状態で、XYZ粗動ステージユニット110はXYZ粗動ステージ制御器412で制御されてX軸ガイドレール160に沿って移動して試料計測ステーションMへ移動する(S703)。
【0032】
測定位置Mへの移動が完了した状態で、XYZ微動ステージユニット120のZ微動ステージ123はXYZ微動ステージ制御器411で制御されて上昇して、ローバー1の上面とカンチレバー131の先端部付近に取付けられた探針132とのギャップが所定の量になるようにする(S704)。
【0033】
ローバー1をこのような状態にセットした後、上方観察系151でカンチレバー131とローバー1とを撮像し、撮像して得た画像を制御器440処理して探針132とローバー1の表面の観察対象面との位置ずれ量を算出し、XYZ粗動ステージ制御器412を介してXYZ粗動ステージユニット110又はXYZ微動ステージ制御器411を介してXYZ微動ステージユニット120を制御して探針132を観察対象領域へ粗アプローチさせる(S705)。
【0034】
次に、側方観察系152でローバー1の電極が形成されている面(図3又は図6で、ローバー1の左側の面)とプローブ142の先端を撮像し、撮像して得た画像を制御器440では画像処理してプローブ142とローバー1との接近の具合、ローバー1の端面の位置、ローバー1のシリアルナンバー等を検知し、XYZ粗動ステージ制御器412を介してXYZ粗動ステージユニット110又はXYZ微動ステージ制御器411を介してXYZ微動ステージユニット120を制御してローバー1が所定の測定位置に位置するように補正する(S706)。また、側方観察系152で撮像して得た画像を、表示器450の画面上に表示してもよい。
【0035】
つぎに、プローブ142の先端部分1421と1422とをローバー1に形成された素子の電極面11と12とに接触させ(S707)、探針132を所望の振幅で振動させている状態で、プローブ142から電極面11と12とを介して書込み回路部12に交流電流を流して磁界を発生させる(S708)。この状態で、発振器401で加振器133を励振させてカンチレバー131を振動させることにより、カンチレバー131の先端部付近に取付けた探針132を振動させ、XYZ微動ステージ制御器411でX微動ステージ121とY微動ステージ122とを駆動してローバー1をX−Y方向に移動させることにより探針132で書込み回路部12の上面の領域を走査する(S709)。
【0036】
このとき、検査装置全体が防音ボックス600で覆われているために、外部の騒音によるカンチレバー131や探針132にノイズが載るのを防止することができる。また、除振テーブル500により外部の振動を遮断することができるので、カンチレバー131や探針132にノイズが載るのを防止することができ、より高精度な測定を行うことが可能になる。
【0037】
この書込み回路部12に磁界を発生させた状態で振動している探針132によるカンチレバー131の先端部付近の変位量を位置検出器134で検出し、検出信号をアンプ402で増幅して制御器440に入力し、この入力した信号を処理して磁気ヘッドのライトトラックの実効トラック幅を求め、この求めたライトトラックの実効トラック幅を予め設定しておいた基準幅範囲と比較して合否判定を行う(S710)。すなわち、計測して求めたライトトラックの実効トラック幅が基準幅の範囲内であるならば合格、基準幅の範囲から外れていれば不合格と判定する。この判定の結果は制御器440に入力されて記憶される。
【0038】
検出信号をアンプ402へ送った後、カンチレバー132に振動を停止させ、プローブ142の先端部分1421と1422とをローバー1に形成された素子の電極面11と12とから離し(S711)、Z微動ステージ制御器411で制御してローバー1と探針132との間に十分なギャップができるまでZ微動ステージ123を下降させる(S712)。
【0039】
次に、ローバー1に未測定の箇所があるかをチェックし(S713)、未測定の箇所がある場合(NO)には、XYZ粗動ステージ制御器412でX粗動ステージ111を駆動して、又は、XYZ微動ステージ制御器411でX微動ステージ121を駆動して、ローバー1の次のヘッド素子の電極11および12がプローブ142の先端部分1421と1422との位置に来るように1ピッチ分移動し(S714)、S704からS712までを繰返す。
【0040】
ローバー1の全てのヘッド素子の測定を終わった後(S713でYESの場合)、XYZ粗動ステージ制御器412でX粗動ステージ111を駆動して、測定済みのローバー1を試料計測ステーションMから試料受渡ステーションHまで移動させ(S715)、搬送ロボット310で測定済みのローバー1をXYZ微動ステージ120から搬出し(S716)、測定結果に応じて、良品は良品収納用トレイ332に収納し、不良品は不良品収納用トレイ333に収納する(S717)。
【0041】
この一連の動作S701からS717までを、トレイ載置部330の供給用トレイ331に収納されたローバー1がなくなるまで繰返して行う(S718)。
【0042】
測定が終了して良品収納用トレイ332に収納された良品と判定されたローバーは、磁気ヘッド製造の次工程に搬送さて処理される。一方、不良品収納用トレイ333に収納された不良と判定されたローバー1は、次工程に送られずに廃棄されるか、又は不良原因究明のために不良解析工程に搬送される。
【0043】
上記に説明した実施例においては、プローブ142からローバー1に形成された素子の電極11と12とに交流電流を印加して、書込み回路部13から磁場を発生させた状態で探針132を振動させてその振動の状態を計測する方式、即ちMFM(Magnetic Force Microscope:磁気力顕微鏡)方式でローバー1に形成されたヘッド素子の状態を計測する方法について説明したが、プローブ142からローバー1に形成された素子の電極11と12とに交流電流を印加せず、書込み回路部13による磁場が発生していない状態で探針132を振動させてローバー1に接触させ、その振動の状態を計測する方式、即ちAFM(Atomic Force Microscope:原子間力顕微鏡)方式でローバー1の表面形状を計測する場合にも適用することができる。
【符号の説明】
【0044】
1…ローバー 100…測定部 110…XYZ粗動ステージユニット 120…XYZ微動ステージユニット 130…探針ユニット 140…プローブユニット 150…観察ユニット 310…搬送ロボット 330…トレイ載置部 400…信号処理制御部 500…除振テーブル 600…防音ボックス。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁気ヘッドが多数形成されたローバーの各磁気ヘッドのライトトラックの実効トラック幅を検査する磁気ヘッド素子検査装置であって、
検査前のローバーと検査後のローバーとを分離して収納するトレイ部と、
検査位置と試料受渡位置との間を移動可能なステージ部と、
前記トレイ部から検査前のローバーを取出して前記試料受渡位置で待機している前記ステージ部に受け渡す試料受渡部と、
前記試料受渡位置で前記検査前のローバーを受け取った前記ステージが前記検査位置に移動した状態で前記ローバーに形成された磁気ヘッドに交流電流を印加することにより発生する磁場を計測する磁場計測部と、
該磁場計測部で計測して得たデータに基づいて前記磁気ヘッドに形成されたライトトラックの実効トラック幅の良否を判定する実効トラック幅計測部と、
前記トレイ部と前記ステージ部と前記試料受渡部と前記磁場計測部と前記実効トラック幅計測部とを搭載した外部からの振動を遮断する除振テーブル部と、
前記トレイ部と前記ステージ部と前記試料受渡部と前記磁場計測部と前記実効トラック幅計測部と前記除振テーブル部とを覆って外部の騒音を遮断する防音部と
を備えたことを特徴とする磁気ヘッド素子検査装置。
【請求項2】
前記ステージ部はリニアモータを備え、前記ステージ部の検査位置と試料受渡位置との間の移動をガイドするガイドレール部を更に備え、前記ステージ部は前記リニアモータに駆動されて前記検査位置と試料受渡位置との間を前記ガイドレールに沿って移動することを特徴とする請求項1記載の磁気ヘッド素子検査装置。
【請求項3】
前記試料受渡部は前記ローバーを真空吸着する真空吸着ヘッドを有し、前記トレイに収納されている検査前のローバーを前記真空吸着ヘッドで真空吸着して取出して前記試料受渡位置で待機している前記ステージ部に受け渡すことを特徴とする請求項1記載の磁気ヘッド素子検査装置。
【請求項4】
前記試料受渡部は前記ローバーの端部を引っかけるフック部を有し、前記トレイに収納されている検査前のローバーを前記フック部で前記ローバーを引っかけて取出して前記試料受渡位置で待機している前記ステージ部に受け渡すことを特徴とする請求項1記載の磁気ヘッド素子検査装置。
【請求項5】
前記磁場計測部は、前記ステージ部に載置されたローバーを観察するための観察ユニットを備え、該観察ユニットで観察した前記ローバーの位置情報に基づいて前記ステージ部で前記ローバーの位置を調整することを特徴とする請求項1記載の磁気ヘッド素子検査装置。
【請求項6】
磁気ヘッドが多数形成されたローバーの各磁気ヘッドのライト実効トラック幅を検査する磁気ヘッド素子検査方法であって、
供給用トレイから検査前のローバーを取出して試料受渡位置で待機しているステージに受渡し、
該検査前のローバーが受け渡された前記ステージを検査位置に移動させ、
該ステージが検査位置に移動した状態で前記ローバーと磁気力顕微鏡のカンチレバーの先端部付近に取付けられた探針とのギャップが所定の量にあるように前記ステージで前記ローバーを上昇させ、
該ローバーを上昇させた状態で該ローバーに形成された多数の磁気ヘッド素子のうちの一つの磁気ヘッド素子に交流電流を印加して該一つの磁気ヘッド素子により磁場を発生させて前記磁気力顕微鏡で該発生させた磁場の状態を計測し、
該計測した磁場の状態に基づいて前記一つの磁気ヘッド素子に形成されたライトトラックの実効トラック幅の良否を判定し、
該ライトトラックの実効トラック幅の良否の判定が終わった前記ローバーを前記ステージで下降させ、
該下降させたローバーを前記ステージで前記検査位置から前記試料受渡位置へ搬送し、
該試料受渡位置へ搬送された前記ローバーを前記ライトトラックの実効トラック幅の良否の判定結果に基づいて良品を収納するトレイ又は不良品を収納するトレイの何れかに収納する
ことを外部の振動を遮断する除振テーブル上で外部の騒音を遮断する防音壁で覆われた環境で実行することを特徴とする磁気ヘッド素子検査方法。
【請求項7】
前記ステージはリニアモータに駆動されて前記検査位置と試料受渡位置との間をガイドレールに沿って移動することを特徴とする請求項6記載の磁気ヘッド素子検査方法。
【請求項8】
前記トレイに収納されている検査前のローバーを真空吸着ヘッドで真空吸着して取出して前記試料受渡位置で待機している前記ステージに受け渡すことを特徴とする請求項6記載の磁気ヘッド素子検査方法。
【請求項9】
前記トレイに収納されている検査前のローバーをフック部で前記ローバーを引っかけて取出して前記試料受渡位置で待機している前記ステージに受け渡すことを特徴とする請求項6記載の磁気ヘッド素子検査方法。
【請求項10】
前記ステージに載置されたローバーを観察ユニットで観察し、該観察した前記ローバーの位置情報に基づいて前記ステージで前記ローバーの位置を調整することを特徴とする請求項6記載の磁気ヘッド素子検査方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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