説明

磁気ボール盤

【課題】モータの出力軸の軸方向の寸法を抑え、コンパクトで作業性を向上させた磁気ボール盤を提供する。
【解決手段】磁気ボール盤は、電磁石2の吸着力により被加工部材11に底面40で吸着するマグネット3と、マグネット3の上方に取り付けられるスタンド4と、スタンド4に対して上下動可能に、下方に向けて取り付けられるスチールコア9と、下方に向けて突出するモータ出力軸24を有する回転子と固定子とを備え、回転子はモータ出力軸24の軸30方向視においてモータ出力軸24を中心に円周方向に配列した略環状の複数のコイルが設けられた円板状のコイルディスク29を有し、固定子はコイルディスク29をモータ出力軸24の軸30方向に通過する磁束を発生させる磁石36を有する、スチールコア9を回転駆動するための扁平モータ5と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被加工物に電磁石等の吸着作用により本体を固定して被加工物に孔を開ける磁気ボール盤に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1に示すように、磁気ボール盤は、電磁石等を備えたマグネットの上方にモータを備えた電気ドリルを上下動可能にスタンドに取付けている。そして、作業者はマグネットの吸着作用により磁気ボール盤を被加工物に固定して被加工物に対して穴あけ作業を行う。磁気ボール盤では、出力軸の軸方向に円柱状に延びる鉄心にコイルを巻いた回転子と回転子を覆う円筒状の固定子とから構成される、出力軸の軸方向に長い寸法を有する直巻整流子モータが一般的に用いられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−254227号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述のような磁気ボール盤では、モータが出力軸方向に長いため、モータの出力軸方向の寸法を小さくすることが非常に難しい。このため、モータの出力軸方向の高さが制限される狭い空間内では磁気ボール盤を被加工物に取付けることが出来ないことや、取付けることが出来た場合であっても穴あけ作業が行い難いという課題があった。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、モータの出力軸の軸方向の寸法を抑え、コンパクトで作業性を向上させた磁気ボール盤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明に係る磁気ボール盤は、電磁石の吸着力により磁性体から成る被加工部材に底面で吸着する固定部と、該固定部の上方に取り付けられるスタンドと、該スタンドに対して上下動可能に、下方に向けて取り付けられる回転刃と、下方に向けて突出する出力軸を有する回転子と固定子とを備え、前記回転子と前記固定子とのいずれか一方は前記出力軸の軸方向視において前記出力軸を中心に円周方向に配列した略環状の複数のコイルが設けられた円板状のコイルディスクを有し、前記回転子と前記固定子とのいずれか他方は前記コイルディスクを前記出力軸の軸方向に通過する磁束を発生させる磁束発生手段を有する、前記回転刃を回転駆動するための扁平モータと、を備える、ことを特徴とする。
【0007】
また、前記コイルディスクは前記回転子に設けられ、前記固定子は、前記出力軸を回転可能に支持し、前記コイルディスクを覆うことが好ましい。
【0008】
さらに、前記出力軸は、前記回転刃の回転軸と同軸上に配置されてもよい。
【0009】
また、前記扁平モータと前記回転刃との間に、前記扁平モータの回転を減速して回転刃に伝達する、減速装置が設けられてもよい。
【0010】
さらに、前記扁平モータは、前記スタンドに対して前記回転刃とともに上下動可能に取付けられてもよい。
【0011】
また、前記扁平モータは前記スタンドに固定されてもよい。
【0012】
さらに、前記スタンドには、前記扁平モータの出力軸の軸方向において、前記固定部と前記扁平モータの上方の端部との間に、前記回転刃と前記被加工部材との間に送り込む切削材を貯蔵する切削材タンクが設けられる、ことが好ましい。
【0013】
また、送りハンドルが、回転刃を前記スタンドに対して上下動可能に、少なくとも一方の回転方向において前記回転刃との連結を解除可能に設けられてもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、磁気ボール盤に扁平モータを用いることで、モータの出力軸の軸方向の寸法を抑えることが可能となり、コンパクトで作業性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の第1実施形態に係る磁気ボール盤の側面図である。
【図2】図1の磁気ボール盤の上面図である。
【図3】図1の磁気ボール盤の要部を断面で示した側面図である。
【図4】図1の磁気ボール盤のスチールコアを下げた状態を示す図3に対応する図である。
【図5】図1の電動刈込機の回転子の分解断面図である。
【図6】図5の回転子のコイル・コミュテータディスクの上面図である。
【図7】図5の回転子のコイルディスク部の上面図である。
【図8】本発明の第2実施形態に係る磁気ボール盤の側面図である。
【図9】図8の磁気ボール盤の上面図である。
【図10】図8の磁気ボール盤の要部を断面で示した側面図である。
【図11】図8の磁気ボール盤のスチールコアを下げた状態を示す図10に対応する図である。
【図12】本発明の第3実施形態に係る磁気ボール盤の要部を断面で示した側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の第1実施形態を添付の図1乃至図7に沿って説明する。図1乃至図4に示すように、磁気ボール盤1は、電磁石2を内蔵したマグネット(固定部)3と、マグネット3の上部に設けられたスタンド4と、スタンド4に固定された扁平モータ5と、スタンド4に上下動可能に取り付けられたスピンドル6と、スピンドル6に取付けられたセンタピン7およびセンタピンガイド8と、センタピンガイド8に取付けられたスチールコア(回転刃)9と、スピンドル6を上下動するための送りハンドル10と、を備えている。電磁石2に通電すると、鋼材等の磁性材料からなる被加工部材11がマグネット3の底面40に吸着し、マグネット3は被加工部材11に固定される。マグネット3とスタンド4との間には、マグネット3の底面40と平行な上面上にマグネット3に対してスタンド4を回転可能に取付けるターンテーブル12が設けられる。ターンテーブル12にはロックレバー13が設けられ、ロックレバー13を締めることによりスタンド4はターンテーブル12とともにマグネット3に固定され、ロックレバー13を緩めることでスタンド4はターンテーブル12とともにマグネット3に対して回転する。また、スタンド4にはマグネット3の上方にスチールコア9に切削剤を供給するための切削剤タンク14、切削剤タンク14の上方に位置するように取付けられた第1ハンドル15、切削剤タンク14の扁平モータ5およびスピンドル6に面する側と反対側の側部(図1の右側側部)に位置するように取付けられた第2ハンドル16が設けられる。さらに、スタンド4には電磁石2および扁平モータ3の作動を制御する図示しない制御回路に電力を供給するための電源ケーブル17が接続されている。また、スタンド4はマグネット3から斜め上方に延びる腕部18と、腕部18の端部に設けられて扁平モータ5を支持するモータ支持部19とを有している。なお、切削材タンク14は図2に示すようにスタンド4の2つの腕部18の間に挟まれるようにマグネット3上のスタンド4に取付けられる。また、図3に示すように、切削材タンク14の上端は扁平モータ5の上端より下方に位置し、例えばモータ支持部19の上端と略一致する。また、図3に示すように、切削材タンク14は、切削材タンク14の上面の左側の一部が部分的に扁平モータ5により覆われるように配置される。なお、切削材タンク14内の切削材はポンプ(図示せず)によりパイプ41から扁平モータ5の出力軸24の内部を経てスチールコア9の内側から切削部分に供給される。
【0017】
図3、図4に示すように、扁平モータ5は、第1モータハウジング部20と第2モータハウジング部21とをネジ22で締結して組立てられる扁平円筒形状のモータハウジング23を有する。扁平モータ5は第2モータハウジング部21から下方に突出するモータ出力軸24を有し、モータ出力軸24は第1モータハウジング部20に取付けられた第1ベアリング25と第2モータハウジング部21に取付けられた第2ベアリング26と、モータ支持部19の下方に取り付けられた第3ベアリング27とにより回転可能に支持される。第1ベアリング25と第2ベアリング26との間のモータ出力軸24には、フランジ28を介して表面に複数のコイルパターンが形成された複数の円板を積層して構成された略円板状のコイルディスク29が固定される。そして、モータ出力軸24とフランジ28とコイルディスク29とは一体に回転する扁平モータ5の回転子60(図5参照)を構成する。モータ出力軸24は、突出側の端部から略第2ベアリング26の支持位置にかけて内周面にモータ出力軸24の軸線30方向に沿ってスプライン溝が形成されて貫通する中空部31を有する。中空部31の上端には切削材注入ノズル44を介して切削材タンク14に接続されたパイプ41が接続され、切削材が中空部31内を下方に向かって流れる。スピンドル6の外周面には、モータ出力軸24のスプライン溝に対応するスプライン溝が形成される。そして、スピンドル6はモータ出力軸24と一体に回転するとともに、モータ出力軸24の軸線30方向に摺動するようにモータ出力軸24の中空部31に嵌め合わされる。スピンドル6は外側で第4ベアリング32を介して回転可能に送り機構33に支持される。送り機構33は、送りハンドル10で駆動される図示しないピニオンの回転が伝達されるラック34(図4参照)を備え、送り機構33は送りハンドル10の操作に応じてスピンドル6をモータ出力軸24の軸線30方向に上下動させる。送りハンドル10は、ピニオンと連結している回転軸45とラチェット部46を介して接続されている。送りハンドル10とラチェット部46との連結は、任意に接続・解除することが可能に取り付けられており、例えば、図3に示す位置から図4に示す位置に向かって回転させる場合には、送りハンドル10の操作により送り機構33が下降し、図4に示す位置から図3に示す位置に向かって回転させる場合には、送りハンドル10とラチェット部46との連結を解除し、送りハンドル10の操作によって送り機構33が上下動しないようにすることができる。これにより、複数回送りハンドル10を操作して徐々に送り機構33を下降させるといった操作が可能となり、狭い作業環境における作業性が向上する。また、非作業時には送りハンドル10を任意の位置に配置することで、保管時にも場所をとらず取り回しが良い。スピンドル6は中空の多段円筒形状を有し、内部にはバネ42により下方に付勢されたセンタピン7が収容される。スピンドル6の下端にはセンタピンガイド8がスピンドル6とともに回転するように取付けられている。また、センタピンガイド8にはスチールコア9が刃先を軸線30方向下方に向けてスピンドル6とともに回転するように取付けられる。
【0018】
モータハウジング23の内部には、コイルディスク29のコイルを磁束がモータ出力軸24の軸線30方向に通過するように、コイルディスク29の図3中の下方の円板面35に対向し円周方向に離間して配置される複数の永久磁石または電磁石等の磁石(マグネット)36と環状の鉄ヨーク37が第2モータハウジング部21に取付けられる。また、第1モータハウジング部20には、コイルディスク29を挟んでコイルディスク29の図3中の上方の円板面38に対向し、モータ出力軸24の軸線30方向視において鉄ヨーク37に対応する位置には環状の鉄ヨーク39が取付けられる。これらの磁石36、鉄ヨーク37、39は磁束発生手段を構成するが、磁束発生手段はコイルディスク29のコイルを磁束がモータ出力軸24の軸線30方向に通過するものであれば、この構成に限られるものでは無く、例えば、複数の永久磁石、電磁石、またはコイルのみ等から構成されるものであってもよい。さらに、第1モータハウジング部20には、コイルディスク29の上方の円板面38に接触し、コイルディスク29のコイルに給電するためのブラシ43が取付けられる。これらの磁石36、鉄ヨーク37、39が設けられたモータハウジング23は扁平モータ5の固定子を構成する。そして、扁平モータ5は、回転子60としてのモータ出力軸24およびモータ出力軸24に固定されたコイルディスク29と、固定子としての磁石36および鉄ヨーク37、39と、ブラシ43とから、扁平の直流整流子モータとして構成される。
【0019】
なお、扁平モータ5の回転子60は、図5に示すように、モータ出力軸24、フランジ28と、図5中で上からコイル・コミュテータディスク85と4つのコイルディスク部86の順に積層されたコイルディスク29と、から構成される。コイル・コミュテータディスク85とコイルディスク部86とは、絶縁体基板と導体パターンとから構成されたプリント配線板である。コイル・コミュテータディスク85の上面には、コミュテータ(整流子)の導体パターンが形成されたコミュテータ領域87と、コイルの導体パターンが形成されたコイル領域88aと、が設けられている。コミュテータ領域87とコイル領域88aとは、モータ出力軸24の軸線30方向視において、それぞれ軸線30を中心とする円環状に設けられ、コミュテータ領域87の外周側にコイル領域88aが配置される。また、コイル・コミュテータディスク85の下面には、コイルの導体パターンを形成するためのコイル領域88bが設けられている。コイル領域88bは、軸線30を中心とする円環状に設けられ、軸線30方向視においてコイル領域88aと重なり合うように配置される。
【0020】
図6に示すように、コイル・コミュテータディスク85上面のコミュテータ領域87には、導体パターンにより、ブラシ43と接触するコミュテータ89が形成される。コミュテータ89は、軸線30を中心として放射状に形成された複数のコミュテータ片90から構成される。なお、各コミュテータ片90の外側端部には、コイル・コミュテータディスク85を貫通するスルーホール91aが形成される。
【0021】
また、コイル・コミュテータディスク85上面のコイル領域88aには、導体パターンにより、軸線30を中心として放射状に形成された複数のコイル片92aが形成される。各コイル片92aの内側端部は、対応するコミュテータ片90に直接に接続されて形成される。また、各コイル片92aの外側端部は、軸線30回りの所定方向に曲折して形成される。なお、各コイル片92aの外側端部には、コイル・コミュテータディスク85を貫通する複数のスルーホール93aが形成される。
【0022】
コイル・コミュテータディスク85下面のコイル領域88bには、図6に示されたコイル領域88aと略同様の導体パターンにより、軸線30を中心として放射状に形成された図略の複数のコイル片が形成される。図略の各コイル片の外側端部は、スルーホール93aに充填された半田を介して、コイル領域88aの対応するコイル片92aに接続される。また、図略の各コイル片の内側端部は、スルーホール91aに充填された半田を介して、コミュテータ領域87の対応するコミュテータ片90に接続される。これにより、コイル領域88aの複数のコイル片92aとコイル領域88bの図略の複数のコイル片とは、軸線30方向視において略コ字状に形成された複数のコイル94aを構成している。複数のコイル94aは、軸線30を中心として周方向に配列される。また、各コイル94aの端末は、コミュテータ領域87の対応するコミュテータ片90に接続される。
【0023】
図5、図7に示すように、コイルディスク部86の上面及び下面には、コイルの導体パターンが形成されたコイル領域88c,88dが、それぞれ設けられている。コイル領域88c,88dは、それぞれ軸線30を中心とする円環状に設けられ、軸線30方向視においてコイル・コミュテータディスク85のコイル領域88a,88bと重なり合うように配置される。
【0024】
コイルディスク部86のコイル領域88c,88dには、コイル・コミュテータディスク85のコイル領域88a,88bと略同様の導体パターンが形成される。コイルディスク部86上面のコイル領域88cには、図7に示すように、軸線30を中心として放射状に形成された複数のコイル片92cが形成される。また、コイルディスク部86下面のコイル領域88dには、コイル領域88cと略同様の導体パターンにより、図略の複数のコイル片が形成される。コイル領域88cの複数のコイル片92cとコイル領域88dの図略の複数のコイル片とは、コイルディスク部86を貫通するスルーホール91c,93cに充填された半田を介してそれぞれ接続され、軸線30方向視において略コ字状に形成された複数のコイル94cを構成している。複数のコイル94cは軸線30を中心として周方向に配列される。また、各コイル94cの端末は、コイル・コミュテータディスク85のスルーホール91aに充填された半田を介して、コミュテータ領域87の対応するコミュテータ片90に接続される。
【0025】
なお、コイル・コミュテータディスク85のコミュテータ領域87及びコイル領域88aの導体パターンは、同一のプリント配線上に形成される。また、コイル・コミュテータディスク85のコミュテータ領域87及びコイル領域88aの導体パターンは、ブラシ43との摩耗による損傷を防止するため、コイル領域88b及びコイルディスク部86のコイル領域88c,88dよりも、厚く形成される。
【0026】
上述のコイル・コミュテータディスク85とコイルディスク部86、及び複数のコイルディスク部86の間には、図略の絶縁層を介して、例えば、コイル94a,94cが軸線30方向視において重なり合うように、あるいはコイル94a,94cが軸線30回りに所定の角度を有して配列されるように、積層される。
【0027】
このように構成される磁気ボール盤1では、作業者は磁気ボール盤1を穴あけ作業を行う場所まで運んだ後、電磁石2を作動させてマグネット3の底面40を被加工部材11に吸着させる。そして、ロックレバー13を緩めてセンタピン7の先端が穴あけ部分の中心と一致するようにターンテーブル12を動かした後、ロックレバー13を締めてターンテーブル12を固定する。そして、扁平モータ5を駆動するためにスイッチを操作すると、ブラシ43に所定の電圧が印加され、コミュテータ89を介して、コイルディスク29に形成されたコイル94a,94cにも電圧が印加される。電圧が印加されたコイル94a,94cにはモータ出力軸24の軸線30方向と垂直にコイルディスク29の略半径方向に電流が流れ、電流の流れる向きはコミュテータ89により制御される。一方、磁石36により生じる磁束はコイルディスク29をモータ出力軸24の軸線30方向に電流と直交して通過する。このため、コイルディスク29には、軸線30を中心にコイルディスク29の周方向にトルクが発生し、コイルディスク29とともにモータ出力軸24が回転する。モータ出力軸24の回転はスピンドル6に伝達され、スピンドル6とともにセンタピンガイド8を介して固定されたスチールコア9が回転する。そして、作業者は送りハンドル10を回してスチールコア10を被加工物11に押付けて被加工物11に穴明けを行う。
【0028】
磁気ボール盤1は、モータ出力軸24がスチールコア9の刃先の向く方向と同方向に突出するように扁平モータ5を設けている。このため、磁気ボール盤1のモータ出力軸24の軸線30方向の寸法、つまり高さ方向の寸法を抑えてコンパクトにすることが可能となる。したがって、高さ方向に制限がある狭い場所に磁気ボール盤1を持ち込んで穴あけ作業を行うことが可能となり可搬性や作業性を大幅に向上できるうえ、収納スペースを抑制することもできる。また、切削材タンク14は、モータ出力軸24の軸線30方向視においてマグネット3上のスタンド4の腕部18に挟まれるとともに第2ハンドル16とモータハウジング23に挟まれるスペースに配置される。そして、切削材タンク14は、モータ出力軸24の軸線30方向には切削材タンク14の上端が扁平モータ5の上端より下方に位置するとともに、切削材タンク14の上面の左側の一部が部分的に扁平モータ5により覆われるように配置されている。このため、切削材タンク14が扁平モータ5の上方に突出することや軸線30方向視においてマグネット3を越えて突出することが無いうえ、切削材タンク14の容量を確保しながら切削材タンク14と扁平モータ5との間の距離を縮めることができ、切削材タンク14を備える場合であっても磁気ボール盤1をコンパクトに構成することが可能となり、可搬性、作業性、および収納性がより向上する。
【0029】
次に、本発明の第2実施形態に係る磁気ボール盤1001について、図8乃至図11に沿って説明する。本実施形態における磁気ボール盤1001では、第1実施形態の磁気ボール盤1に対して、扁平モータ1005の取付け位置を変更するとともに、扁平モータ1005の出力を減速してスピンドル6に伝達するように変更している。尚、第1実施形態と同様の構成要素には同一の符号を付することでその詳細な説明は省略する。
【0030】
図8乃至図11に示すように、扁平モータ1005はスタンド4の腕部18のモータ支持部1019に、第1実施形態の扁平モータ5に比べてマグネット3に近づく方向(図の右方向)にオフセットして取付けられている。扁平モータ1005は、第2モータハウジング部21から下方に突出するモータ出力軸1024を有し、モータ出力軸1024は第1モータハウジング部20に取付けられた第1ベアリング25と第2モータハウジング部21に取付けられた第5ベアリング1026とにより回転可能に支持される。また、モータ出力軸1024の突出部分には歯切り加工が施された平歯車状のピニオンギヤ部1124が形成される。図10に示すように、扁平モータ1005の下方には、モータ出力軸1024と略平行に中間軸1050が設けられ、中間軸1050は、モータ出力軸1024より図の左方のマグネット3から離れる方向にモータ出力軸1024とオフセットして配置されている。モータ出力軸1024の軸線1030方向視において、中間軸1050は扁平モータ1005のモータハウジング23と略重なるように配置される。中間軸1050の扁平モータ1050側の端部には、ピニオンギヤ部1124に噛み合うピニオンギヤ部1124の外径より大きい外径を有する被動ギヤ1051が取付けられ、中間軸1050はモータ支持部1019に第6ベアリング1052および第7ベアリング1053に回転可能に取付けられている。中間軸1050は、第7ベアリング1053の支持位置近傍の下方端部から第6ベアリング1052の支持位置近傍にかけて内周面に中間軸1050の軸方向に沿ってスプライン溝が形成された中空部1031を有する。中空部1031には、スピンドル6が中間軸1050と一体に回転するとともに、中間軸1050の軸線1060方向に摺動するように嵌め合わされる。また、中間軸1050の中空部1031には、上端から内部に向かって切削材注入ノズル1044が挿入され、切削材タンク14に接続されたパイプ41を通して切削材がポンプ(図示せず)により中空部1031内に送られ、切削材は中空部1031内を下方に向かって流れる。スピンドル6は第4ベアリング32を介して回転可能に送り機構1033に支持される。そして、スピンドル6は、ハンドル10の回転操作に連動する図示しないラックとピニオンから構成される送り機構1033により上下動する。なお、図10はスピンドル6が最も上に位置する状態を示し、図11はハンドル10を回転させてスピンドル6を下げた上体を示している。マグネット3の上方のスタンド4には、切削材タンク14が図9に示すように腕部18に挟まれるように取付けられている。図10に示すように、切削材タンク14の上端は扁平モータ1005の下方のモータ支持部1019のマグネット3側の下面1054より下に位置する。そして、扁平モータ1005は切削材タンク14に対して、扁平モータ1005の出力軸24より右側の部分が切削材タンク14の上面を部分的に覆うように配置される。
【0031】
このように構成された磁気ボール盤1001によれば、扁平モータ1005を用いたことにより、磁気ボール盤1001のモータ出力軸1024方向の寸法を抑制できる。また、モータ出力軸1024に対してオフセットして配置された中間軸1050を用いることにより、モータ出力軸1024の軸線1030方向視において、扁平モータ1005をマグネット3と部分的に重なるように、つまり、扁平モータ1005の出力軸24より右側の部分が切削材タンク14の上面を部分的に覆うように配置している。そして、中間軸1050は、モータ出力軸1024を挟んでマグネット3と反対側の扁平モータ1005の下方でモータハウジング23と重なるように配置される。このため、マグネット3とスピンドル6の先端に取付けられるスチールコア9との距離が短くできるうえ、磁気ボール盤1001のマグネット3からスピンドル6に向かう方向の寸法を短くすることができ、磁気ボール盤1001の寸法がよりコンパクトになる。したがって、特に壁際における穴あけ作業も容易に行うことが可能となり、狭い場所での作業性をより向上させることが可能となるうえ、可搬性、収納性もより向上する。また、扁平モータ1005の出力はモータ出力軸1024のピニオンギヤ部1124と被動ギヤ1051との間で減速されてスピンドル6およびスチールコア9に伝達されるので、高トルクの磁気ボール盤1001を提供することも可能となる。
【0032】
次に、本発明の第3実施形態に係る磁気ボール盤2001について、図12に沿って説明する。本実施形態における磁気ボール盤2001では、第1実施形態における磁気ボール盤1に対して、扁平モータ2005をスピンドル2006と一体に移動するように変更している。尚、第1または第2実施形態と同様の構成要素には同一の符号を付することでその詳細な説明は省略する。
【0033】
図12に示すように、磁気ボール盤2001は、マグネット3の上部に図の上下方向に伸びるコラム2050を有するスタンド2004を備えている。コラム2050には、コラム2050の長手方向に沿ってスライド可能な支持体2051が取付けられる。支持体2051は作業者による図示しないハンドルの回転操作に連動する図示しないスタンド2004内に設けられる駆動装置によりコラム2050に沿って上下動する。支持体2051には、モータ支持部2019がコラム2050からスタンド2004と離れる方向に突出して取付けられている。そして、モータ支持部2019にはモータハウジング2023が固定されるとともにスピンドル2006が回転可能に取付けられている。扁平モータ2005は、第2モータハウジング部2021から下方に突出するモータ出力軸2024を有し、モータ出力軸2024は第1モータハウジング部2020に取付けられた第1ベアリング25と第2モータハウジング部2021に取付けられた第8ベアリング2026とにより回転可能に支持される。また、モータ出力軸2024の突出部分には歯切り加工が施された平歯車状のピニオンギヤ部2124が形成される。図12に示すように、扁平モータ2005の下方には、モータ出力軸1024と略平行に、モータ支持部2019内を下方に向かって伸びる中空部2031を有するスピンドル2006が設けられている。スピンドル2006は、モータ出力軸2024より図の左方のマグネット3およびスタンド2004から離れる方向にモータ出力軸2024とオフセットして配置されている。モータ出力軸2024の軸線2030方向視において、スピンドル2006は扁平モータ2005のモータハウジング2023と略重なるように配置される。スピンドル2006には、ピニオンギヤ部2124に噛み合うピニオンギヤ部2124の外径より大きい外径を有する被動ギヤ2051が取付けられる。そして、スピンドル2006は、第9ベアリング2052、第10ベアリング2053、および第10ベアリング2054により回転可能にモータ支持部2019に支持されている。また、マグネット3の上方のスタンド4には切削材タンク14が取付けられ、切削材タンク14に接続されたパイプ41を通して切削材がポンプ(図示せず)によりスピンドル2006の中空部2031に送られ、中空部2031の上端に接続された切削材注入ノズル2044を経て中空部2031内を下方に向かって流れる。
【0034】
このように構成された磁気ボール盤2001によれば、モータ出力軸2024がスチールコア9の刃先の向く方向と同方向の下方に突出するように扁平モータ2005を設けているため、磁気ボール盤2001のモータ出力軸2024の軸線2030方向の寸法、つまり高さ方向の寸法を抑えてコンパクトにすることが可能となる。また、支持体2051がコラム2050の上端まで移動した場合でも扁平モータ2005がスタンド2004の上端部を越えて上方に突出することも抑えられる。したがって、高さ方向に制限がある狭い場所に磁気ボール盤2001を持ち込んで穴あけ作業を行うことが可能となり可搬性や作業性を大幅に向上できるうえ、収納スペースを抑制することもできる。また、扁平モータ2005の出力はモータ出力軸2024のピニオンギヤ部2124と被動ギヤ2051との間で減速されてスピンドル2006およびスチールコア9に伝達されるので、高トルクの磁気ボール盤2001を提供することも可能となる。
【0035】
なお、上述の実施形態ではいずれの場合も、コイルディスク29が回転子の一部構成として回転し、磁石36がモータハウジング23に固定される固定子として構成された扁平モータ5、1005、2005が用いられているが、本発明の磁気ボール盤1、1001,2001はこれに限定されるものではない。例えば、磁石が出力軸と一体に回転する固定子を構成し、コイルディスクがモータハウジングに固定される固定子を構成する扁平ブラシレスモータを用いるものでも良い。さらに、コイルディスクは、必ずしもプリント配線板から構成されたコイルディスクを備える必要はなく、扁平かつ小型な形状を有する形状を構成することができれば、例えば、円板状に配列された複数のコイルから構成されたコイルディスクを備えるモータであっても良い。
【符号の説明】
【0036】
1、1001、2001 磁気ボール盤
2 電磁石
3 マグネット
4 スタンド
5、1005、2005 扁平モータ
6 スピンドル
7 センタピン
8 センタピンガイド
9 スチールコア
10 送りハンドル
11 被加工部材
12 ターンテーブル
14 切削剤タンク
18 腕部
19 モータ支持部
23 モータハウジング
24 モータ出力軸
28 フランジ
29 コイルディスク
36 磁石
37、39 鉄ヨーク
43 ブラシ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電磁石の吸着力により磁性体から成る被加工部材に底面で吸着する固定部と、
該固定部の上方に取り付けられるスタンドと、
該スタンドに対して上下動可能に、下方に向けて取り付けられる回転刃と、
下方に向けて突出する出力軸を有する回転子と固定子とを備え、前記回転子と前記固定子とのいずれか一方は前記出力軸の軸方向視において前記出力軸を中心に円周方向に配列した略環状の複数のコイルが設けられた円板状のコイルディスクを有し、前記回転子と前記固定子とのいずれか他方は前記コイルディスクを前記出力軸の軸方向に通過する磁束を発生させる磁束発生手段を有する、前記回転刃を回転駆動するための扁平モータと、を備える、
ことを特徴とする磁気ボール盤。
【請求項2】
前記コイルディスクは前記回転子に設けられ、
前記固定子は、前記出力軸を回転可能に支持し、前記コイルディスクを覆う、
ことを特徴とする請求項1に記載の磁気ボール盤。
【請求項3】
前記出力軸は、前記回転刃の回転軸と同軸上に配置される、
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の磁気ボール盤。
【請求項4】
前記扁平モータと前記回転刃との間に、前記扁平モータの回転を減速して回転刃に伝達する、減速装置が設けられる、
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の磁気ボール盤。
【請求項5】
前記扁平モータは、前記スタンドに対して前記回転刃とともに上下動可能に取付けられる、
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の磁気ボール盤。
【請求項6】
前記扁平モータは前記スタンドに固定される、
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の磁気ボール盤。
【請求項7】
前記スタンドには、前記扁平モータの出力軸の軸方向において、前記固定部と前記扁平モータの上方の端部との間に、前記回転刃と前記被加工部材との間に送り込む切削材を貯蔵する切削材タンクが設けられる、
ことを特徴とする請求項6に記載の磁気ボール盤。
【請求項8】
送りハンドルが、回転刃を前記スタンドに対して上下動可能に、少なくとも一方の回転方向において前記回転刃との連結を解除可能に設けられる、
ことを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の磁気ボール盤。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2011−177818(P2011−177818A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−43201(P2010−43201)
【出願日】平成22年2月26日(2010.2.26)
【出願人】(000005094)日立工機株式会社 (1,861)
【Fターム(参考)】