説明

磁気ラベル及び磁気ラベルを用いて製造された磁気記録媒体

【課題】外部磁場に対するデータの信頼性が高く、かつ、意匠性の高い磁気ラベルを提供する。
【解決手段】高抗磁力を有する六方晶フェライト磁性体粉を使用した磁気記録層4を用いて、データの信頼性を高めると同時に、粒子径の大きい高抗磁力の六方晶磁性体粉によって磁気記録層の表面性が悪化することに伴う明度の低下や、帯電によって発生するブロッキングを、磁気記録層へのカーボンの添加、磁気記録層上へのプライマー層3の形成、蒸着層2の導入により改善したものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は磁気ラベル及びこれを用いて製造された磁気記録媒体に関するものであり、特に該磁気ラベルを用いて製造された通帳に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、取引情報を記録するために磁気ラベルを貼り付けた通帳が用いられている。これら通帳は、一般的にクロス紙と呼ばれる通帳読取装置の読取動作に対する耐久性に優れた繊維質状の基材の表面に所定の印刷層を設け、その基材の一部に磁気ラベルを貼り付けて得た磁気通帳表紙材料と、綴じ合わせた複数枚の記帳ページを貼り合わせて2つ折りにして作製している。
近年、このような通帳には取引情報の保存性に対して高い信頼性が求められている。これは、近年の携帯電話の普及や電気製品の小型化等によって、極めて強い磁場を発生する機器が通常の生活空間に多数存在するようになった事が原因で磁気ラベルに記録されている情報が消去され、使用できないケースが多発している事が理由の1つに挙げられる。
【0003】
また、通帳にはデザイン性の観点から、より高い意匠性、すなわち、高明度、高彩度の彩色を施した各種カラー色の磁気ラベルも求められている。
この通帳に求められている信頼性及び意匠性を両立するためには、磁気ラベルの磁気記録層を磁場に対する抵抗力を有している高い抗磁力を有する磁性材料を用いて形成し、その磁気記録層を蒸着層で隠蔽し、着色層で着色するのが最も効果的である。
【0004】
現にカード状基体上に隠蔽層付きの磁気ストライプが形成された磁気カードにおいては、該磁気ストライプの磁気記録層に六方晶フェライト磁性材料粉を用い、該磁気記録層上に金属蒸着層を介して着色層、模様層、及び保護層を有する磁気ストライプを、転写工程を経て形成することが行われている。(特許文献1参照)このような磁気ストライプを形成するための転写用積層体は、転写用仮支持体上に、保護層、模様層、着色層、金属蒸着層、及び磁気記録層、必要に応じて接着剤層をこの順に積層して製造される。ここでは前記磁気記録層は転写用積層体のほぼ最上部に形成される。
これに対して、同様の構成の磁気ストライプを磁気ラベルを用いて製造するには、基体上にまず磁気記録層を形成し金属蒸着層、着色層、必要に応じて模様層および保護層の順に積層した磁気ラベルを製造する必要がある。
【0005】
しかしながら、高抗磁力を有している六方晶フェライト磁性材料粉は、従来使用している酸化鉄系の磁性材料粉に比較して粒径が大きくなる為、磁気記録層の表面粗さが大きくなる。
その磁気記録層を従来の蒸着層で隠蔽しても磁気記録層の表面性が影響して蒸着層が散乱をおこし着色層を設けても明度が上がらない問題がある。
このような問題を解決する為、従来から磁気記録層の上部に0.1μm〜0.2μm程度プライマー層を設け、表面性を向上させて明度を高める方法を用いるのが一般的である。しかし、従来の手法でプライマー層を設けても磁気記録層の表面性粗さが非常に大きいため、従来品と同等の明度を得る事ができない問題がある。
一方、2μm程度の厚みにプライマー層を設けて、磁気記録層の凹凸を埋めることにより表面性を向上させる方法を用いると、磁気記録層の電気抵抗が大きく静電気を帯びやすい特徴のある六方晶フェライト磁性体粉を用いた磁気記録層が、プライマー層によって完全に遮蔽されてしまい静電気の放出が著しく阻害される為に静電気が蓄積されてブロッキングする問題がある。
【特許文献1】特開2000−231711号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、取引情報を記録する磁気ラベルとして、外部磁場によって情報が消える事がなく、かつ、各種カラー色を付与する事ができる、高信頼性、高意匠性を有した磁気ラベルを提供することである。さらに本発明の他の目的は、該磁気ラベルを用いた高信頼性、高意匠性を有する磁気記録媒体を提供することであり、その中でも特に該磁気ラベルを用いた通帳を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そこで本発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意検討を行った結果、高抗磁力の六方晶フェライト磁性体粉を用いた磁気記録層にカーボン粒子を含有させ、更に磁気記録層の上部に所定の厚みでプライマー層を設ける事によって、上記の課題を解決する事を見いだした。
すなわち本発明は非磁性支持体の一方の面に、非磁性支持体に近い側から磁気記録層、プライマー層、蒸着層、及び着色層がこの順に積層され、非磁性支持体を挟んで反対側の面に粘着剤層が設けられた磁気ラベルにおいて、前記磁気記録層は抗磁力が2000〜4500Oeの六方晶フェライト磁性体粉とカーボンブラックを含有することを特徴とする磁気ラベルを提供する。
さらに本発明は上述の磁気ラベルを基体に貼り合わせることにより製造された磁気記録媒体を提供する。
さらに本発明は上述の磁気ラベルを通帳用基体に貼り合わせることにより製造された通帳を提供する。
【発明の効果】
【0008】
このような磁気ラベルは、高抗磁力を有していることから、携帯電話等の外部磁場によって情報が消去する事はなく、また、磁気記録層にカーボン粒子を含有する事によって磁気記録層の表面性も従来品と同等の平滑度にする事が可能であり、従来と同等の組成、膜厚のプライマー層を適用することができる。このため蒸着層、着色層を形成した後は、酸化鉄系の磁性粉を用いた従来品と同レベルの着色層の明度を得る事ができる。更に磁気記録層中にカーボンブラックを含有し、しかもプライマー層は従来通りの膜厚に抑えることが出来るため、六方晶フェライト磁性体粉を用いた磁気記録層の静電気の帯電を抑制することも可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下に本発明の磁気記録媒体の例として通帳を例にとりその通帳用表紙材料について、詳細に説明する。
図1に本発明における代表的な磁気ラベル、及びそれを用いた通帳等の磁気記録媒体の断面図を示す。以下図1をもとに本願発明の磁気ラベル、及び磁気記録媒体の構成について詳細な説明を行う。
【0010】
本発明において使用する基材フィルム5は、磁気記録層用の塗布液を乾燥する過程で、歪みや皺が生じないようなフィルムであれば特に制約なく使用することができる。具体的にはポリエチレンテレフタレート等のポリエステル類、ポリプロピレン等のポリオレフィン類、セルローストリアセテート等のセルロース誘導体、ポリアミド等のプラスチックフィルムが挙げられる。中でも抗張力や耐熱性を兼ね備えたポリエチレンテレフタレート等が好ましい。
また、基材フィルムの厚みには特に制限はないが、通常10〜100μm、好ましくは、20〜80μmである。
【0011】
磁気記録層4に使用される磁性粉としては抗磁力2000〜4500Oe(159〜358kA/m)の高抗磁力を有する六方晶フェライト磁性体粉を用いる。抗磁力としては2000Oe以上であれば、現在の300Oeや650Oeに比較して記録情報の消失に対する大幅な安全性向上が見込まれる。また現在の六方晶フェライト磁性体粉の特性や、記録再生装置の能力から考慮して4500Oe以下であれば磁気記録媒体として実現可能である。特に2750±250Oe(219±20kA/m)の抗磁力の磁性粉は、すでに転写型磁気カード分野で用いられており、このような特性の六方晶フェライト磁性体粉を用いて、安定した機能を有する磁気記録媒体が製造可能であり、また該磁気記録媒体を用いた情報システムが安定に稼働することが実証されている。
磁性粉として本発明に用いられる六方晶フェライト磁性体粉としては、バリウムフェライト磁性粉、ストロンチウムフェライト磁性粉等があり、通常六角板状の粒子であり、その粒子径は六角板状の粒子の板の幅を意味し電子顕微鏡を使用して測定する。使用する磁性粉の平均粒子径は0.5μm〜1.5μmの粒子径が望ましく、更に0.7μm〜1.1μmがより好ましい。六方晶フェライト磁性体粉としてはBaO・6Feで表されるバリウムフェライト磁性粉が好ましい。
【0012】
本願発明の磁気ラベルの磁気記録層に用いるカーボンブラックは、六方晶フェライト磁性体粉の粒子間の空隙を効果的に充填するものであれば、特に限定なく使用することができる。カーボンブラックとしては、空隙を充填する必要性から粒子径が20nm〜50nmが好ましく、更に空隙の充填、電気抵抗から粒子径は30±10nmがより好ましい。
本発明のカーボンブラックは、磁性層中における六方晶フェライト磁性体粉の粒子間に形成された空孔を効果的に充填するため、磁気記録層用塗料の塗布、乾燥後の磁気記録層表面の平滑性が向上する。このためプライマー層を介して蒸着層を形成したときに蒸着層表面の光沢が向上し、その上に形成する着色層によって彩度、明度の高い色彩を付与することが可能である。
また、六方晶フェライト磁性体粉を用いた磁気記録層は、通常酸化鉄系の磁性粉末を用いた磁気記録層に比較して体積抵抗率が高くなる傾向にあり、静電気の蓄積によるブロッキングを起こす危険性があるが、カーボンブラックを磁気記録層に添加することによって体積抵抗率を低下させることができる。
【0013】
磁気記録層4に使用される磁気塗料用バインダー樹脂としては、一般塗料用のバインダー樹脂を広く使用する事が可能である。例えば、ブチラール樹脂、塩化−酢酸ビニル共重合体樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、セルロース系樹脂、アクリル樹脂、スチレン−マレイン酸共重合体樹脂等が挙げられ、特にスルホン酸金属塩基を含有する塩化ビニル系樹脂は分散性が優れる点で好ましい。磁気記録層は更にイソシアネート化合物を用いて熱硬化することもできる。
また、磁性粉が上記樹脂中に分散されてなる磁気記録層用の磁性塗料中には、必要に応じて、界面活性剤、シランカップリング剤、可塑剤、ワックス、シリコーンオイル等の助剤類、更にはアルミナ、ベンガラ等の無機フィラー類を添加することも出来る。
【0014】
磁気記録層を形成するためには上記成分を含有する磁性塗料を基材フィルム5上に塗布し乾燥して形成することができる。
磁性塗料は上記の磁性粉、バインダー樹脂及び公知溶剤等を公知の分散方法によって分散して作製することができる。該磁性塗料は、グラビア方式、リバース方式等の公知の塗工方法によって、基材フィルム5の上に塗工され、乾燥前または、乾燥中に磁場配向処理を施すことによって磁気記録層4が形成される。磁気記録層は通常5〜10μm程度に形成されるが、使用する磁性材料の磁気特性や隠蔽層である蒸着層の膜厚を考慮し充分な再生出力が得られる様、適宜設定することができる。
【0015】
本願発明の磁気ラベルに用いるプライマー層3は、磁気記録層の表面のさらなる平滑化を行い、その上に積層される蒸着層の接着強度を向上させる。該プライマー層の配合は、磁気記録層と蒸着層に対し接着する配合であれば特に際限なく使用することができる。例えば、酢酸ビニル、塩ビ−酢ビ共重合体、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂が挙げられる。特にポリエステル樹脂は蒸着層との相性が良くより好ましい。プライマー層の膜厚は0.8〜1.2μmであることが好ましい。膜厚が0.8μmより小さいと磁気記録層表面の凹凸が完全には平滑化できず、その上に蒸着層を形成したときに蒸着層表面の表面粗さが大きくなるため着色層の発色に悪影響を及ぼす傾向がある。膜厚が1.2μmより大きいと帯電電荷が逃げにくくブロッキングが発生しやすくなる。またスペーシングロスが増えるため再生出力も低下する傾向がある。
【0016】
本願発明の磁気ラベルに用いる蒸着層2は、磁気記録層を隠蔽する事が可能であれば特に制限なく使用する事ができる。特に蒸着が容易で安価であり、かつ、蒸着層表面の反射率が高いAl蒸着層が好ましい。
本発明の磁気ラベルに用いる着色層1は有機顔料、無機顔料、体質顔料等公知の顔料を結着剤樹脂及び溶剤等と共に公知の分散方法によって、分散して成る着色層用塗料を、グラビア方式、リバース方式等公知の塗工方式によって、蒸着層上に塗設することによって形成することができる。着色層は通常3〜5μmの膜厚に形成されるが、磁気記録層の再生出力を低減させずにかつ磁気記録層を充分に隠蔽し得るように、顔料の種類と膜厚を適宜設定することが好ましい。
【0017】
例えば磁気通帳により高い意匠性を付与するために、前記着色層の上に印刷層を形成することができる。印刷層は意匠性を高める為の層であり、例えばスクリーン印刷やオフセット印刷等の従来公知の印刷方式で絵柄を形成することができる。また、印刷層用のインキとしては、スクリーン印刷用やオフセット印刷用に加え、それ以外の従来公知の塗料、例えばUV硬化型インキや溶剤型インキ等も用いる事ができる。
【0018】
磁気通帳表面の耐擦過性向上のために、前記着色層上に、あるいは印刷層を付与したときには印刷層上に保護層を形成することができる。保護層は磁気ラベルの表面を保護するためのもので、着色層及び印刷層にその効果を求める事が可能な場合もあり、必要不可欠なものではない。保護層を設ける場合は、例えば、セルロース系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ビニル系樹脂、エポキシ系樹脂、アクリル系樹脂等の耐摩耗性の良好な樹脂を含有する保護層用塗料を塗布、乾燥することによって形成することができる。該保護層用塗料には、可塑剤としてフタル酸エステル、脂肪酸エステル、リン酸エステル等を添加することができ、また滑性を付与するものとして、低分子ポリエチレン、オレイルアマイド、ステアリアマイド、シリコーン等を添加することができる。
【0019】
保護層用塗料としては塗布する際に、特に印刷層が溶剤型インクで形成されているときには、印刷層を侵して図柄を乱すことの無い溶剤を使用することが好ましく、例えばグリコールエーテル系やアルコール系の溶剤から適宜選択するのが好ましい。尚、使用する溶剤の量を少なくするために、アクリル系、エポキシ系、ポリエステル系等の紫外線硬化型樹脂や電子線硬化型樹脂を用いることができる。この保護層の厚さは、例えば5μm以下、好ましくは1〜3μm程度である。
【0020】
プライマー層、蒸着層、着色層、印刷層、保護層等の合計の厚みは、磁気記録層用に情報を書き込み、また、磁気記録層から情報を読み取る際に、磁気記録層と磁気ヘッド間のスペーシングロスとなる。このスペーシングロスが大きくなると再生出力が低下し磁気的情報の読み取りの時にエラーを発生しやすくなる。この事から、プライマー層、蒸着層、着色層、印刷層、保護層等の総厚は7μm以下が好ましく、更に好ましくは3μm以下が好ましい。
但し、この総厚の問題は磁気ヘッドが読み取る場所、すなわち、磁気的な情報が記録されているトラック部分に印刷層を設けない事でトラック部分の膜厚を薄くして、トラック以外の場所に印刷による絵柄を形成して意匠性を付与することで回避する事ができる。
【0021】
基体フィルムを挟んで磁気記録層と反対側には粘着剤層6を形成する。粘着剤層は磁気ラベルを貼り合わせるべき基体、例えば通帳用の基体である合成紙等と貼り合わせることが出来るものであれば特に制限なく使用できる。一般的にはアクリル系粘着剤が好ましい。
【0022】
以上のような各層の構成を有する磁気ラベルを製造するには、磁気記録層用塗料、プライマー層用塗料を用いて、広幅の基体フィルムの一方の面に磁気記録層、プライマー層をこの順に形成する。そしてプライマー層上に、蒸着工程を経て蒸着層を形成し、さらにその上に着色層用塗料で着色層を形成する。その後基体フィルムのもう一方の側に粘着剤を塗布して粘着剤層を形成する。該粘着剤層には離型紙を貼り合わせてもよい。このようにして製造された広幅の磁気ラベル用原反を所定の幅にスリットし、適宜長さを調整し切断して磁気ラベルとする。
以上のような各層の構成を用いて製造された磁気ラベルを用いて、磁気記録媒体たとえば通帳を製造するには、磁気記録媒体用の基体例えば通帳用の基体に前記磁気ラベルを該磁気ラベルの粘着層表面を介して重ね合わせ、着色層、模様層、または保護層上から加熱、加圧を行って磁気ラベルを基体例えば通帳用基体上に貼り合わせる。
本発明の磁気記録媒体としては通帳用基体の他にも磁気記録層を有する種々のカード類に適用できる。特にラベル用基体を介して磁気記録媒体用の基体に貼り合わされるため、磁気記録媒体用の基体の表面粗さによって電磁変換特性が直接的な影響を受けにくく、適用範囲が広い。また加工工程における取り扱いが容易であるという利点もある。
【実施例】
【0023】
以下に本発明を実施例により説明する。実施例中、「%」及び「部」は、各々「重量%」及び「重量部」を示す。
まず、磁気記録層用塗料、着色層用塗料1の調製方法について述べる。
<a−1:磁気記録層用磁性塗料の調整>
バリウムフェライト粉 MC−127 100部
(戸田工業社製磁性粉末 Hc:2750Oe 平均粒子径:0.8μm)
カーボンブラック バルカンXC−72 7部
(キャボット製カーボン 平均粒子径:30μm)
SOLBIN A 10部
(日信化学工業株式会社製塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体)
パンデックス T−5206 15部
(大日本インキ化学工業社製ウレタン樹脂)
トルエン 50部
メチルエチルケトン 50部
シクロヘキサノン 30部
以上をボールミルに入れ、12時間分散混合した。その後、塗工前に上記塗料100部に対してポリイソシアネートを2部添加して、分散撹拌機で30分間撹拌して磁気記録層用磁気塗料を得た。
【0024】
<a−2:磁気記録層用磁性塗料の調整>
バリウムフェライト粉 MC−127 100部
(戸田工業社製磁性粉末 Hc:2750Oe 平均粒子径:0.8μm
SOLBIN A 10部
(日信化学工業株式会社製塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体)
パンデックス T−5206 15部
(大日本インキ化学工業社製ウレタン樹脂)
トルエン 50部
メチルエチルケトン 50部
シクロヘキサノン 30部
以上をボールミルに入れ、12時間分散混合した。その後、塗工前に上記塗料100部に対してポリイソシアネートを2部添加して、分散撹拌機で30分間撹拌して磁気記録層用磁気塗料を得た。
【0025】
<b:着色層用塗料1の調製>
タイペーク R−830 (石原産業社製 酸化チタン) 30部
SOLBIN A 10部
(日信化学工業株式会社製塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体)
パンデックス T−5206 15部
(大日本インキ化学工業社製ウレタン樹脂)
トルエン 30部
酢酸エチル 30部
以上をビーズミルにて分散混合した。その後、塗工前に上記塗料100部に対してポリイソシアネートを2部添加して、分散攪拌機で30分間撹拌して着色層用塗料を得た。
【0026】
<c:プライマー層用塗料の調製>
UE−3600 100部
(ユニチカ製 ポリエステル樹脂)
MEK 150部
トルエン 150部
以上を攪拌機にて混合溶解した。その後、塗工前に上記塗料100部に対してポリイソシアネートを4部添加して、攪拌機で30分間撹拌してプライマー層用塗料を得た。
【0027】
(実施例1)
厚み50μmのポリエチレンテレフタレートの片面に上記a−1の磁気記録層用塗料を残留磁束が1.3μwb/mになるような膜厚に塗布し、磁気記録層を形成した。その上部に上記cのプライマー層用塗料を乾燥膜厚1.0μmになるように塗布し、プライマー層を形成した。その後、プライマー層の上にAl蒸着を施し、更にその上に上記bの着色層用塗料を乾燥後膜厚が2μmになるように塗布し着色層を形成した。その後、ポリエチレンテレフタレートの反対面にアクリル系の粘着剤を30g/mの塗布量で塗布して粘着剤層を形成し、その上に離型紙を貼り合わせて通帳用磁気ラベルを得た。
(実施例2)
プライマー層用塗料の塗布膜厚を乾燥膜厚0.7μmになるように塗布してプライマー層を形成する他は、実施例1と同様にして通帳用磁気ラベルを得た。
(実施例3)
プライマー層用塗料の塗布膜厚を乾燥膜厚1.3μmになるように塗布してプライマー層を形成する他は、実施例1と同様にして通帳用磁気ラベルを得た。
(実施例4)
プライマー層の上にAl蒸着に換えてSn蒸着する他は、実施例1と同様にして通帳用磁気ラベルを得た。
【0028】
(比較例1)
厚み50μmのポリエチレンテレフタレートの片面に上記a−1の磁気記録層用塗料を残留磁束が1.3μwb/mになるような膜厚に塗布し、磁気記録層を形成した。その上部にプライマー層を形成することなくAl蒸着を施し、更に上記bの着色層用塗料を乾燥後膜厚が2μmになるように塗布して着色層を形成した。その後、ポリエチレンテレフタレートの反対面にアクリル系の粘着剤を塗布して、粘着剤層を形成し、その上に離型紙を貼り合わせて通帳用磁気ラベルを得た。
(比較例2)
磁気記録層用塗料a−1に換えて磁気記録層用塗料a−2を用いる他は、実施例1と同様にして通帳用磁気ラベルを得た。
(比較例3)
厚み50μmのポリエチレンテレフタレートの片面に上記a−1の磁気記録層用塗料を残留磁束が1.3μwb/mになるように塗布し、その上部に上記cのプライマー層用塗料を乾燥膜厚1.0μmになるように塗布した。その後、プライマー層上に金属蒸着を施すことなく、上記bの着色層用塗料を乾燥後膜厚が2μmになるように塗布した。その後、ポリエチレンテレフタレートの反対面にアクリル系の粘着剤及び離型紙を貼り合わせて通帳用磁気ラベルを得た。
【0029】
<磁気通帳の作製>
磁気通帳の基体である表紙用用紙(クロス紙)を記帳頁用紙三枚(このうち、1枚は見返し用紙である)と丁合した後、中央部をミシン綴じを行った。その後、実施例1〜4及び比較例1〜3で得られた通帳用の磁気ラベルを通帳の表紙用用紙のクロス紙に貼り合わせ、所定のサイズに裁断して通帳を得た。
こうして得られた実施例及び比較例の通帳について、着色層の白色度、明度、再生出力電圧、蒸着後のブロッキング性について、評価した。
なお、各評価項目の測定方法、評価方法は以下の通りである。
【0030】
(着色層の白色度)
色差計 シグマ80(日本電色社製)を用いてWB値(白色度)を測定した。
(着色層の明度)
色差計 シグマ80(日本電色社製)を用いてL値(明度)を測定した。
【0031】
(再生出力電圧)
記録ヘッド(7.0mm幅50μmギャップ)、再生ヘッド(2.0mm幅20μmギャップ)、および消去ヘッド(9.0mm幅50μmギャップ)を用いた磁気カードリードライタ(アポロメック社製 使用ヘッド サンエテック社製 ヘッド番号CH−NE72S3H)を用いて、記録電流600mA、記録密度210FCIにて再生出力電圧の測定を行った。
【0032】
(ブロッキング性)
磁気ラベル加工時において、蒸着工程を終了して巻き取られた長尺原反に対し、次工程である着色層塗布を行う時に、原反の巻き出しが円滑に行われるか否かを観察した。
○・・・・・円滑に巻きだしが行われた。異音発生せず。
△・・・・・巻き出し時に原反がブロッキング状態からはがれる時の異音が発生したが、
原反の走行が不安定となることはなかった。
×・・・・・巻きだし時に大きな異音が発生し、原反の走行が不安定となった。
結果を下記の表1に示す。
【0033】
【表1】

【0034】
白色度の差は目視でも明確に認識でき、実施例、比較例における測定値の範囲ではWB値にして1の違いも識別できた。目視では白色度55程度より低い着色層表面は「白色」と認識し難い。
表1の結果から、実施例1のサンプルはWB、L値共に大きい。この事から、実施例1は磁気記録層を高隠蔽しており、その結果、高白色度、高明度である事が判る。また、磁気層再生出力電圧も十分であり、通帳用磁気ラベルに求められる特性を十分満たしている。実施例2はWB、L値共に実施例1は及ばないが良好である。実施例3は実施例1より帯電によるブロッキングがわずかに発生しているが特性は良好である。実施例4はSn蒸着であり、Al蒸着と比較してWB,L値が小さい。
比較例1はプライマー層が無いため、被蒸着面の表面粗さが大きく、蒸着後の蒸着面の散乱が大きい。また大きな表面粗さのため蒸着層によって良好な被覆ができず、その上に形成された着色層の白色度、明度は低くなる。比較例3は蒸着層が無いため、磁気層が隠蔽できない。このため着色層の白色度、明度ともに比較例1よりさらに低下する。比較例2はカーボンを添加していない為、カーボン色による影響が無く、着色層の白色度、明度むしろ実施例4より大きい。しかし帯電防止性能が低下するため、帯電によるブロッキングが顕著に発生し安定生産を行うことが難しい。また、カーボンによって磁気記録層の凹凸が充填されないため、磁気記録層の表面性も若干悪化しており、WB、L値も低くなっている。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の磁気ラベルを通帳用の基体である通帳表紙に貼り合わせた時の断面を表す概略図である。
【符号の説明】
【0036】
1 着色層
2 蒸着層(隠蔽層)
3 プライマー層
4 磁気記録層
5 基体フィルム
6 粘着剤層
7 通帳表紙(クロス紙)




【特許請求の範囲】
【請求項1】
非磁性支持体の一方の面に、非磁性支持体に近い側から磁気記録層、プライマー層、蒸着層、及び着色層がこの順に積層され、非磁性支持体を挟んで反対側の面に粘着剤層が設けられた磁気ラベルにおいて、前記磁気記録層は抗磁力が2000〜4500Oeの六方晶フェライト磁性体粉とカーボンブラックを含有することを特徴とする磁気ラベル。
【請求項2】
前記六方晶フェライト磁性体粉が抗磁力2750±250のバリウムフェライト磁性粉である請求項1に記載の磁気ラベル。
【請求項3】
前記プライマー層の膜厚は0.8〜1.2μmである請求項1又は2に記載の磁気ラベル。
【請求項4】
前記磁気ラベルの蒸着層の金属がAlである請求項1または2に記載の磁気ラベル。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の磁気ラベルを基体に貼り合わせることにより製造された磁気記録媒体。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の磁気ラベルを通帳用基体に貼り合わせることにより製造された通帳。




【図1】
image rotate


【公開番号】特開2007−35219(P2007−35219A)
【公開日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−221001(P2005−221001)
【出願日】平成17年7月29日(2005.7.29)
【出願人】(000002886)大日本インキ化学工業株式会社 (2,597)
【Fターム(参考)】