説明

磁気共鳴イメージング装置、サンプリングパターン作成方法、およびプログラム

【課題】短いスキャン時間で、高品質の画像を取得するための磁気共鳴イメージング装置を提供する。
【解決手段】各被検体のk空間のデータDK〜DKを平均し、頭部のk空間の平均データDKmeanを求める。次に、k空間の平均データDKmeanを平滑化し、k空間の平滑化データDKを、頭部のk空間のデータの確率密度関数とする。このようにして求めた確率密度関数DKに基づいて、被検体をスキャンするときのk空間のデータのサンプリング点を発生させ、サンプリングパターンを作成する。そして、確率密度関数DKに基づいて作成されたサンプリングパターンに従って、被検体の頭部をスキャンする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サンプリングパターンに基づいて被検体を撮影する磁気共鳴イメージング装置、サンプリングパターン作成方法、およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
被検体をスキャンするときのスキャン時間を短縮する方法として、Compressed
Sensingという方法が知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009-268901号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の方法では、k空間のデータを部分的にサンプリングするので、スキャン時間を短縮することができるという利点があるが、一方で、サンプリングされないデータが存在するので、画質が劣化してしまうことがある。したがって、短いスキャン時間で、高品質の画像を取得できることが望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第1の態様は、複数の被検体の各々の所定の部位から収集されたk空間のデータに基づいて作成された確率密度関数を用いて、被検体の前記所定の部位を撮影するときのk空間のデータのサンプリングパターンを作成するサンプリングパターン作成手段を有する磁気共鳴イメージング装置である。
【0006】
本発明の第2の態様は、複数の被検体の各々の所定の部位から収集されたk空間のデータに基づいて作成された確率密度関数を用いて、被検体の前記所定の部位を撮影するときのk空間のデータのサンプリングパターンを作成するステップを有するサンプリングパターン作成方法である。
【0007】
本発明の第3の態様は、複数の被検体の各々の所定の部位から収集されたk空間のデータに基づいて作成された確率密度関数を用いて、被検体の前記所定の部位を撮影するときのk空間のデータのサンプリングパターンを作成する処理を計算機に実行させるプログラムである。
【発明の効果】
【0008】
確率密度関数を、複数の被検体の各々の所定の部位から収集されたk空間のデータに基づいて作成することによって、所定の部位の撮影に適した確率密度関数を求められるので、高品質な画像を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の一形態の磁気共鳴イメージング装置の概略図である。
【図2】確率密度関数作成手段91のブロック図の一例を示す図である。
【図3】確率密度関数を作成する手順を示すフロー図である。
【図4】各被検体SU〜SUの頭部のk空間のデータDK〜DKの一例を示す図である。
【図5】確率密度関数を求めるときの説明図である。
【図6】被検体12の頭部を撮影するときのフロー図である。
【図7】確率密度関数DKの中で、確率がしきい値THよりも大きくなる領域を示す図である。
【図8】k空間に設定されたサンプリング点を示す図である。
【図9】領域Routの中にもサンプリング点を発生させたときの様子を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、発明を実施するための形態を詳細に説明するが、本発明は、以下の形態に限定されることはない。
【0011】
図1は、本発明の一形態の磁気共鳴イメージング装置の概略図、図2は、確率密度関数作成手段91のブロック図の一例を示す図である。
【0012】
磁気共鳴イメージング装置(以下、MRI装置と呼ぶ。MRI(Magnetic Resonance Imaging))100は、磁場発生装置2、テーブル3、受信コイル4などを有している。
【0013】
磁場発生装置2は、被検体12が収容されるボア21、超伝導コイル22、勾配コイル23、および送信コイル24などを有している。超伝導コイル22は静磁場B0を印加し、勾配コイル23は勾配磁場を印加し、送信コイル24はRFパルスを送信する。尚、超伝導コイル22の代わりに、永久磁石を用いてもよい。
【0014】
テーブル3は、クレードル31を有している。クレードル31は、ボア21に移動できるように構成されている。クレードル31によって、被検体14はボア21に搬送される。
【0015】
受信コイル4は、被検体12の頭部に取り付けられている。受信コイル4は、被検体12からの磁気共鳴信号を受信する。
【0016】
MRI装置100は、更に、シーケンサ5、送信器6、勾配磁場電源7、受信器8、中央処理装置9、操作部10、および表示部11を有している。
【0017】
シーケンサ5は、中央処理装置9の制御を受けて、被検体のスキャンを実行するための情報を送信器6および勾配磁場電源7に送る。
【0018】
送信器6は、シーケンサ5から送られた情報に基づいて、RFコイル24を駆動する駆動信号を出力する。
【0019】
勾配磁場電源7は、シーケンサ5から送られた情報に基づいて、勾配コイル23を駆動する駆動信号を出力する。
【0020】
受信器8は、受信コイル4で受信された磁気共鳴信号を信号処理し、信号処理により得られたデータを中央処理装置9に出力する。
【0021】
中央処理装置9は、シーケンサ5および表示部11に必要な情報を伝送したり、受信器8から受け取った信号に基づいて画像を再構成するなど、MRI装置100の各種の動作を実現するように、MRI装置100の各部の動作を制御する。中央処理装置9は、例えばコンピュータ(computer)によって構成される。中央処理装置9は、確率密度関数作成手段91およびサンプリング作成手段92などを有している。
【0022】
確率密度関数作成手段91は、複数の被検体SU〜SUの各々の頭部から収集されたk空間のデータDK〜DKに基づいて、頭部のk空間のデータの確率密度関数を作成する(図5参照)。確率密度関数作成手段91は、図2に示すように、平均手段91aおよび平滑化手段91bを有している。
【0023】
平均手段91aは、k空間のデータDK〜DK(図5(a)参照)を平均し、頭部のk空間の平均データDKmean(図5(b)参照)を求める。平滑化手段91bは、平均手段91aにより得られたk空間の平均データDKmeanを平滑化する。
【0024】
サンプリングパターン作成手段92は、確率密度関数DKを用いて、サンプリングパターンを作成する。
【0025】
中央処理装置9は、確率密度関数作成手段91およびサンプリングパターン作成手段92の一例であり、所定のプログラムを実行することにより、これらの手段として機能する。中央処理装置9は、課題を解決するための手段に記載された計算機の一例である。
【0026】
操作部10は、オペレータ13の操作に応じて、種々の命令を中央処理装置9に入力する。表示部11は種々の情報を表示する。
【0027】
MRI装置100は、上記のように構成されている。次に、MRI装置100を用いて、被検体12の所定の部位を撮影する場合の方法について説明する。尚、以下の説明では、被検体12の頭部を2Dスキャンを用いて撮影する場合について説明するが、本発明は、被検体12の頭部以外の別の部位を撮影する場合にも適用することができるし、2Dスキャンの代わりに3Dスキャンを用いて撮影する場合にも適用することができる。
【0028】
本形態では、被検体12の頭部を撮影する前に、頭部のk空間のデータの確率密度関数を作成する。以下に、確率密度関数を作成する方法の一例について説明する。
【0029】
図3は、確率密度関数を作成する手順を示すフロー図である。
ステップST1では、複数の被検体SU〜SUの各々の頭部をスキャンし、各被検体の頭部のk空間のデータを収集する(図4参照)。図4に、各被検体SU〜SUの頭部のk空間のデータDK〜DKの一例を示す。図4では、k空間のデータDK〜DKは、信号強度が大きいほど白色に近くなり、信号強度が小さいほど黒色に近くなるように、示されている。したがって、k空間の中心およびその周辺の信号強度が大きく、k空間の辺縁に近づくにつれて信号強度が小さくなっていることが分かる。
これらのデータを収集した後、ステップST2に進む。
【0030】
ステップST2では、k空間のデータDK〜DKに基づいて、頭部のk空間のデータの確率密度関数を求める(図5参照)。
【0031】
図5は、確率密度関数を求めるときの説明図である。
本形態では、確率密度関数を求めるために、ステップST2は、ステップST21およびST22を有している。以下に、各ステップST21およびST22について説明する。
【0032】
ステップST21では、平均手段91a(図2参照)が、ステップST1で得られたk空間のデータDK〜DK(図5(a)参照)を平均し、頭部のk空間の平均データDKmean(図5(b)参照)を求める。
k空間の平均データDKmeanを求めた後、ステップST22に進む。
【0033】
ステップST22では、平滑化手段91b(図2参照)が、ステップST21で得られたk空間の平均データDKmeanを平滑化する。平滑化の方法としては、例えば移動平均法を用いることができる。図5(c)に、平滑化により得られたk空間の平滑化データDKを示す。k空間の平滑化データDKが、頭部のk空間のデータの確率密度関数として用いられる。確率密度関数DKを参照すると、k空間の中心およびその周辺の信号強度が大きく、k空間の辺縁に近づくにつれて信号強度が小さくなっていることが分かる。図5(d)には、確率密度関数DKのビュー番号0のライン上の確率分布の一例が示されている。
【0034】
上記のようにして、確率密度関数DKを算出する。本形態では、図3に示すフローに従って作成された確率密度関数DKに基づいて、被検体12の頭部を撮影する。以下に、被検体12の頭部を撮影するときのフローについて説明する。
【0035】
図6は、被検体12の頭部を撮影するときのフロー図である。
ステップST1では、被検体12の撮影条件を設定する。撮影条件を設定した後、ステップST2に進む。
【0036】
ステップST2では、サンプリングパターン作成手段92(図1参照)が、確率密度関数DK(図5(c)参照)を用いて、サンプリングパターンを作成する。以下に、サンプリングパターンの作成手順について説明する。
【0037】
サンプリングパターン作成手段92は、確率密度関数DKの中で、確率がしきい値THよりも大きくなる領域を特定する(図7参照)。
【0038】
図7は、確率密度関数DKの中で、確率がしきい値THよりも大きくなる領域を示す図である。
【0039】
しきい値THは、確率が小さいか大きいかを表す基準となる値である。k空間の中心およびその周辺では、確率が大きくなるので、確率がしきい値TH以上になる領域Rが得られる。サンプリングパターン作成手段92は、領域R内に位置する格子点を、サンプリング点とする(図8参照)。
【0040】
図8は、k空間に設定されたサンプリング点を示す図である。
図8では、サンプリング点を黒丸で示してある。サンプリング点P〜Pは、確率がしきい値TH以上となる領域Rに含まれている。領域Rは、k空間の中心部を囲んでいるので、サンプリング点P〜Pに従って被検体12からデータを収集することによって、高コントラストの画像を得ることができる。しかし、領域Rは、k空間の辺縁部は含んでいないので、サンプリング点P〜Pのデータしか収集しない場合、撮影部位に含まれる各組織の輪郭を強調して描出することができない可能性がある。そこで、本形態では、サンプリングパターン作成手段92は、領域Rの外側の領域Routの中にも、サンプリング点も発生させる(図9参照)。
【0041】
図9は、領域Routの中にもサンプリング点を発生させたときの様子を示す図である。図9では、領域Routの中のサンプリング点を黒丸で示してある。
【0042】
領域Routの中にサンプリング点を発生させる方法としては、例えば、一様乱数を用いる方法などがある。領域Routの中に含まれる格子点をサンプリング点とすることによって、k空間の辺縁部側の格子点をサンプリング点とすることができるので、撮影部位に含まれる各組織の輪郭を強調して描出することが可能となる。
【0043】
上記のようにして、サンプリングパターンが作成される。サンプリングパターンを作成したら、ステップST3に進み、作成されたサンプリングパターンに従って、本スキャンを実行し、フローを終了する。
【0044】
本形態では、複数の被検体SU〜SUのから収集された頭部のk空間のデータDK〜DKを平均し、頭部のk空間の平均データDKmeanを平滑化することにより、頭部のk空間のデータの確率密度関数DKを求めている。確率密度関数DKの確率は、k空間の信号強度の大きさを表しているので、確率密度関数DKに従ってサンプリングパターンを作成させることによって、k空間の中で信号強度が大きくなる領域のデータを効率よくサンプリングすることができる。したがって、短い撮影時間で、高品質のMR画像を得ることが可能となる。
【0045】
本形態では、各被検体SU〜SUのk空間のデータDK〜DKを平均し、頭部のk空間の平均データDKmeanを平滑化することによって、確率密度関数DKを求めている。しかし、別の方法で、確率密度関数DKを求めてもよい。例えば、k空間の平均データDKmeanを平滑化する前に、k空間の平均データDKmeanに一定の重み付けをし、重み付けされた後のk空間の平均データDKmean′を平滑化することにより、確率密度関数DKを求めてもよい。
【0046】
本形態では、領域Routの中にも、サンプリング点を発生させている。しかし、高品質の画像を得ることができるのであれば、必ずしも領域Routの中にサンプリング点を発生させる必要はない。
【0047】
本形態では、被検体12の頭部を撮影するので、頭部の確率密度関数DKを作成しているが、被検体12の頭部以外の別の部位を撮影する場合には、撮影する別の部位に関する確率密度関数を作成すればよい。
【0048】
本形態では、MRI装置100は、確率密度関数DKを作成するための確率密度関数作成手段91を有している。しかし、MRI装置100には確率密度関数作成手段91を備えずに、MRI装置100とは別のMRI装置を用いて確率密度関数DKを作成し、別のMRI装置を用いて作成された確率密度関数DKをMRI装置100に記憶させてもよい。
【符号の説明】
【0049】
2 磁場発生装置
3 テーブル
4 受信コイル
5 シーケンサ
6 送信器
7 勾配磁場電源
8 受信器
9 中央処理装置
10 操作部
11 表示部
12 被検体
13 オペレータ
21 ボア
22 超伝導コイル
23 勾配コイル
24 送信コイル
31 クレードル
91 確率密度関数作成手段
91a 平均手段
91b 平滑化手段
92 サンプリングパターン作成手段
100 MRI装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の被検体の各々の所定の部位から収集されたk空間のデータに基づいて作成された確率密度関数を用いて、被検体の前記所定の部位を撮影するときのk空間のデータのサンプリングパターンを作成するサンプリングパターン作成手段を有する磁気共鳴イメージング装置。
【請求項2】
前記確率密度関数を作成する確率密度関数作成手段を有する、請求項1に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項3】
前記確率密度関数作成手段は、
前記複数の被検体の各々の前記所定の部位から収集されたk空間のデータを平均する平均手段と、
前記平均手段により得られたk空間の平均データを平滑化する平滑化手段と、
を有する、請求項2に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項4】
複数の被検体の各々の所定の部位から収集されたk空間のデータに基づいて作成された確率密度関数を用いて、被検体の前記所定の部位を撮影するときのk空間のデータのサンプリングパターンを作成するステップを有するサンプリングパターン作成方法。
【請求項5】
前記確率密度関数を作成する確率密度関数作成ステップを有する、請求項4に記載のサンプリングパターン作成方法。
【請求項6】
前記確率密度関数作成ステップは、
前記複数の被検体の各々の前記所定の部位から収集されたk空間のデータを平均する平均ステップと、
前記平均ステップにより得られたk空間の平均データを平滑化する平滑化ステップと、
を有する、請求項5に記載のサンプリングパターン作成方法。
【請求項7】
複数の被検体の各々の所定の部位から収集されたk空間のデータに基づいて作成された確率密度関数を用いて、被検体の前記所定の部位を撮影するときのk空間のデータのサンプリングパターンを作成する処理を計算機に実行させるプログラム。
【請求項8】
前記確率密度関数を作成する確率密度関数作成処理を計算機に実行させる、請求項7に記載のプログラム。
【請求項9】
前記確率密度関数作成処理は、
前記複数の被検体の各々の前記所定の部位から収集されたk空間のデータを平均する平均処理と、
前記平均処理により得られたk空間の平均データを平滑化する平滑化処理と、
を有する、請求項8に記載のプログラム。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図6】
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【図8】
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【図9】
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【図4】
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【図5】
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【図7】
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