説明

磁気共鳴イメージング装置、正中面決定方法、およびプログラム

【課題】短時間で正中面を求める。
【解決手段】重心決定用スキャンSを実行し、重心決定用スキャンSにより得られたデータに基づいて、重心Gを決定する。脳の重心Gを決定した後、スライス面HをAP回転軸およびSI回転軸を中心として回転させながら正中面決定用スキャンSを実行し、各回転角におけるスライス面Hのデータに基づいて、正中面MSPのφAP方向の角度と、φSI方向の角度とを求める。そして、正中面MSPにランドマークLMを設定し、ランドマークLMに基づいてスライス位置を設定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、正中面を決定する磁気共鳴イメージング装置、正中面決定方法、およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
被検体の脳のスライス位置を設定する方法として、正中面のデータに基づいてスライス位置を設定する方法が知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010-158334号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、ボリュームデータを取得するための3Dスキャンを行い、取得したボリュームデータから大脳縦裂の位置を検出し、その位置情報に基づいて、正中面を求めている。一般的に、3Dスキャンを行った場合、スキャン時間が長くなり、また、3Dスキャンにより得られたデータの処理時間も長くなる。したがって、特許文献1の方法では、正中面を求めるのに時間が掛かってしまうという問題がある。そこで、患者さんやオペレータの負担の軽減の観点などから、短時間で正中面を求めることが望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第1の態様は、
脳を横切るスライス面の断面位置を調整しながら、前記スライス面をスキャンするスキャン手段と、
前記スライス面から得られたデータに基づいて、正中面を決定する正中面決定手段とを有する、磁気共鳴イメージング装置である。
【0006】
本発明の第2の態様は、
脳を横切るスライス面の断面位置を調整しながら前記スライス面をスキャンすることにより得られたデータに基づいて、正中面を決定する正中面決定ステップ、を有する、正中面決定方法である。
【0007】
本発明の第3の態様は、
脳を横切るスライス面の断面位置を調整しながら前記スライス面をスキャンすることにより得られたデータに基づいて、正中面を決定する正中面決定処理、を計算機に実行させるためのプログラムである。
【発明の効果】
【0008】
スライス面の断面位置を調整しながらスライス面をスキャンするので、3Dスキャンを行わなくても脳のデータを取得することができ、正中面を短時間で決定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の第1の形態の磁気共鳴イメージング装置の概略図である。
【図2】第1の形態におけるスキャンの一例の説明図である。
【図3】図2に示すスキャンを実行するときのMRI装置100のフローの一例を示す図である。
【図4】重心決定用スキャンSにより得られた頭部の断面画像を概略的に示す図である。
【図5】正中面MSPを決定するときの方法の説明図である。
【図6】AP角度決定用スキャンSAPにおいてスキャンされるスライス面の説明図である。
【図7】回転角φAPの異なるスライス面Hを示す図である。
【図8】回転角φAPと、スライス面Hの上部領域のみの信号量との関係を概略的に示す図である。
【図9】SI角度決定用スキャンSSIのスライス面の説明図である。
【図10】回転角φSIの異なるスライス面Hを示す図である。
【図11】回転角φSIと、スライス面Hの上部領域のみの信号量との関係を概略的に示す図である。
【図12】正中面MSPを示す図である。
【図13】正中面MSPの画像データIDを概略的に示す図である。
【図14】正中面の画像データにランドマークを設定するときの説明図である。
【図15】設定されたスライス位置を示す図である。
【図16】第2の形態の重心決定手段91の説明図である。
【図17】第2の形態における重心Gの決定方法の一例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための形態について説明するが、本発明は、以下の形態に限定されることはない。
【0011】
(1)第1の形態
図1は、本発明の第1の形態の磁気共鳴イメージング装置の概略図である。
磁気共鳴イメージング装置(以下、「MRI装置」と呼ぶ。MRI:Magnetic Resonance Imaging)100は、磁場発生装置2、テーブル3、受信コイル4などを有している。
【0012】
磁場発生装置2は、被検体12が収容されるボア21と、超伝導コイル22と、勾配コイル23と、送信コイル24とを有している。超伝導コイル22は静磁場B0を印加し、勾配コイル23は勾配磁場を印加し、送信コイル24はRFパルスを送信する。尚、超伝導コイル22の代わりに、永久磁石を用いてもよい。
【0013】
テーブル3は、クレードル31を有している。クレードル31は、ボア21内に移動できるように構成されている。クレードル31によって、被検体12はボア21に搬送される。
【0014】
受信コイル4は、被検体12の頭部に取り付けられている。受信コイル4は、被検体12からの磁気共鳴信号を受信する。
【0015】
MRI装置100は、更に、シーケンサ5、送信器6、勾配磁場電源7、受信器8、中央処理装置9、操作部10、および表示部11を有している。
【0016】
シーケンサ5は、中央処理装置9の制御を受けて、被検体12を撮影するための情報を送信器6および勾配磁場電源7に送る。
【0017】
送信器6は、シーケンサ5から送られた情報に基づいて、RFコイル24を駆動する駆動信号を出力する。
【0018】
勾配磁場電源7は、シーケンサ5から送られた情報に基づいて、勾配コイル23を駆動する駆動信号を出力する。
【0019】
受信器8は、受信コイル4で受信された磁気共鳴信号を信号処理し、信号処理により得たれたデータを中央処理装置9に出力する。尚、磁場発生装置2、受信コイル4、シーケンサ5、送信器6、勾配磁場電源7、および受信器8を合わせたものが、課題を解決するための手段に記載されたスキャン手段の一例に相当する。
【0020】
中央処理装置9は、シーケンサ5および表示部11に必要な情報を伝送したり、受信器8から受け取ったデータに基づいて画像を再構成するなど、MRI装置100の各種の動作を実現するように、MRI装置100の各部の動作を制御する。中央処理装置9は、例えばコンピュータ(computer)によって構成される。
【0021】
中央処理装置9は、重心決定手段91、正中面決定手段92、およびスライス位置設定手段93などを有している。
【0022】
重心決定手段91は、重心決定用スキャンS(図2参照)により得られたデータに基づいて、脳の重心を決定する。
【0023】
正中面決定手段92は、正中面決定用スキャンS(図2参照)により得られたデータに基づいて、正中面を決定する。
【0024】
スライス位置設定手段93は、正中面の画像データに対してスライス位置を設定する。
【0025】
中央処理装置9は、重心決定手段91、正中面決定手段92、およびスライス位置設定手段93の一例であり、所定のプログラムを実行することにより、これらの手段として機能する。中央処理装置9は、課題を解決するための手段に記載された計算機の一例に相当する。
【0026】
操作部10は、オペレータ13により操作され、種々の情報を中央処理装置9に入力する。表示部11は種々の情報を表示する。
MRI装置100は、上記のように構成されている。
【0027】
図2は、第1の形態におけるスキャンの一例の説明図である。
第1の形態では、重心決定用スキャンS、正中面決定用スキャンS、および正中面スキャンSMSPが実行される。
【0028】
重心決定用スキャンSは、脳の重心Gを決定するためのスキャンである。
正中面決定用スキャンSは、正中面を決定するためのスキャンである。正中面決定用スキャンSは、AP角度決定用スキャンSAPおよびSI角度決定用スキャンSSIを有している。AP角度決定用スキャンSAPおよびSI角度決定用スキャンSSIについては、後述する。
正中面スキャンSMSPは、正中面の画像データを収集するためのスキャンである。
【0029】
次に、図2に示すスキャンを実行するときのMRI装置100のフローについて説明する(図3参照)。
【0030】
図3は、図2に示すスキャンを実行するときのMRI装置100のフローの一例を示す図である。
ステップST1では、重心決定用スキャンSが実行される。(図4参照)。
【0031】
図4は、重心決定用スキャンSにより得られた頭部の断面画像を概略的に示す図である。
【0032】
重心決定用スキャンSは、頭部のアキシャル断面、サジタル断面、およびコロナル断面の画像データを取得するためのスキャンである。重心決定用スキャンSは、例えば、SSFSE(Single Shot Fast Spin Echo) Heavy T2 のスキャンとすることができる。SSFSE HeavyT2スキャンで頭部のデータを収集すると、脳表を流れている脳脊髄液(CSF)を高信号で描出させることができる。したがって、脳全体の大まかな輪郭を求めることができるので、収集した頭部のデータに基づいて、脳の重心Gを決定することができる。重心決定手段91(図1参照)は、重心決定用スキャンSにより得られたデータに基づいて、重心G(記号「×」で示されている)を決定する。ただし、SSFSE HeavyT2スキャンでは、眼球も高信号で描出される。したがって、頭部のデータの中に眼球のデータを残したままで脳の重心Gを求めると、眼球の信号強度の影響を受けて、脳の重心Gの検出誤差が大きくなる恐れがある。そこで、脳の重心Gを求める前に、頭部のデータから眼球のデータを除去しておくことが望ましい。眼球のデータを除去する方法としては、形状フィルタを使用する方法がある。眼球は円の形状を有しているので、円の形状を除去する形状フィルタを用いれば、頭部のデータから、眼球のデータを除去することができる。
【0033】
尚、SSFSE Heavy T2スキャンを実行すると、脳室が高信号で描出される。したがって、頭部のデータから脳室の位置を検出し、検出した脳室の近傍の領域を探索することにより脳の重心Gを決定してもよい。
脳の重心Gを決定した後、ステップST2に進む。
【0034】
ステップST2では、正中面決定用スキャンSを実行し、正中面を決定する。
図5は、正中面を決定するときの方法の説明図である。
【0035】
正中面MSPは、被検体12の頭部を左右に分断する面である。したがって、正中面MSPは、大脳縦裂LFCに(実質的に)一致する面、又は大脳縦裂LFCの近傍を横切る面と考えることができる。そこで、第1の形態では、被検体12の大脳縦裂LFCの位置に基づいて、正中面MSPを決定している。正中面MSPの決定に必要なデータを収集するために、正中面決定用スキャンSは、AP角度決定用スキャンSAPおよびSI角度決定用スキャンSSIを有している。以下に、AP角度決定用スキャンSAPおよびSI角度決定用スキャンSSIについて、順に説明する。
【0036】
(1)AP角度決定用スキャンSAPについて
図6〜図8は、AP角度決定用スキャンSAPの説明図である。
【0037】
図6は、AP角度決定用スキャンSAPにおいてスキャンするときのスライス面の説明図である。
【0038】
先ず、重心Gを通りAP方向に延在するAP回転軸LAPを定め、AP回転軸LAPを中心として回転させるスライス面Hを考える。そして、AP回転軸LAPを中心として、スライス面Hを所定の回転角度範囲RAの間で回転させながら、各回転角φAPにおけるスライス面Hをスキャンし、磁気共鳴信号を収集する(図7参照)。
【0039】
図7は、回転角φAPの異なるスライス面Hを示す図である。図7では、代表して、回転角φAP=φAP1、φAPJ、φAPK、φAPZのスライス面Hが示されている。回転角φAPは、基準面Hrefとスライス面Hとの成す角として規定されている。尚、図7では、スライス面Hと大脳縦裂LFCとの交差領域は、符号「RLFC」で示されており、スライス面Hと副鼻腔NSとの交差領域は、符号「RNS」で示されている。
【0040】
正中面決定手段92(図1参照)は、各回転角φAPのスライス面Hから得られたデータに基づいて、正中面MSPのφAP方向の角度を決定する。大脳縦裂LFCは、脳の白質や灰白質などの組織よりも、信号値が小さくなるので、スライス面Hと大脳縦裂LFCとの交差領域RLFCの面積が大きくなるほど、スライス面Hから得られる磁気共鳴信号の信号量が小さくなる傾向がある。したがって、信号量が小さくなるときのスライス面Hの角度φAPを特定することができれば、大脳縦裂のφAP方向の角度を特定することができるので、正中面MSPのφAP方向の角度を決定することができる。
【0041】
ただし、鼻の周囲には副鼻腔NSが存在している(図6参照)。副鼻腔NSは、大脳縦裂LFCと同様に信号値が小さくなるので、スライス面Hと副鼻腔NSとの交差領域RNSの面積が大きくなるほど、信号量が小さくなる傾向がある。したがって、大脳縦裂LFCの他に、副鼻腔NSも、スライス面Hの信号量を小さくする原因となるので、スライス面Hの信号量を求める場合は、副鼻腔NSによる影響をできるだけ除去することが望ましい。そこで、第1の形態では、スライス面Hの上部領域(AP回転軸LAPの上側の領域)の信号量を算出している(図8参照)。
【0042】
図8は、回転角φAPと、スライス面Hの上部領域の信号量との関係を概略的に示す図である。
【0043】
スライス面Hの上部領域Hupperの信号量を算出するためには、AP回転軸LAPに対して垂直方向A1に、周波数エンコーディングを行えばよい。垂直方向A1に周波数エンコーディングすることによって、垂直方向A1の位置情報がわかるので、スライス面Hの上部領域Hupperの信号量を算出することができる。この場合、位相エンコーディングは不要であるので、スライス面Hのスキャンを短時間で行うことができる。
【0044】
スライス面Hの上部領域Hupperの信号量を算出することによって、スライス面Hの下半分の領域に位置する副鼻腔NSの影響を除去することができる。したがって、信号量は、副鼻腔NSの影響をあまり受けないので、信号量が最小値になるときの回転角φAPKが、大脳縦裂LFCのφAP方向の角度を表していると考えることができる。つまり、回転角φAPKを、正中面MSPのφAP方向の角度として決定することができる。
【0045】
尚、AP角度決定用スキャンSAPにおいて、スライス面Hを回転させるときの回転角度範囲RA(図6参照)は、例えば、−45°<RA<+45°とすることができる。
【0046】
次に、正中面MSPのφSI方向の角度を決定するためのSI角度決定用スキャンSSIについて説明する。
【0047】
(2)SI角度決定用スキャンSSIについて
図9〜図11は、SI角度決定用スキャンSSIの説明図である。
【0048】
図9は、SI角度決定用スキャンSSIのスライス面の説明図である。
先ず、重心Gを通りSI方向に延在するSI回転軸LSIを定め、SI回転軸LSIを中心として回転させるスライス面Hを考える。そして、SI回転軸LSIを中心として、スライス面Hを所定の回転角度範囲RAの間で回転させながら、各回転角φSIにおけるスライス面Hをスキャンし、磁気共鳴信号を収集する(図10参照)。
【0049】
図10は、回転角φSIの異なるスライス面Hを示す図である。図10では、代表して、回転角φSI=φSI1、φSIJ、φSIK、φSIZのスライス面Hが示されている。回転角φSIは、基準面Hrefとスライス面Hとの成す角として規定されている。尚、図10では、スライス面Hと大脳縦裂LFCとの交差領域は、符号「RLFC」で示されており、スライス面Hと副鼻腔NSとの交差領域は、符号「RNS」で示されている。
【0050】
正中面決定手段92は、各回転角φSIのスライス面Hから収集されたデータに基づいて、正中面MSPのφSI方向の角度を決定する。上記のように、大脳縦裂LFCは、脳の白質や灰白質などの組織よりも、信号値が小さくなるので、スライス面Hと大脳縦裂LFCとの交差領域RLFCの面積が大きくなるほど、スライス面Hから得られる磁気共鳴信号の信号量が小さくなる傾向がある。したがって、信号量が小さくなるときのスライス面Hの角度φSIを特定することができれば、大脳縦裂のφSI方向の角度を特定することができるので、正中面MSPのφSI方向の角度を決定することができる。
【0051】
ただし、副鼻腔NSによる影響を除外するため、正中面MSPのφAP方向の角度を決定する場合と同様に、スライス面Hの上部領域の信号量を算出している。
【0052】
図11は、回転角φSIと、スライス面Hの上部領域の信号量との関係を概略的に示す図である。
【0053】
スライス面Hの上部領域Hupperの信号量を算出するためには、SI回転軸LSIに対して平行方向A2に、周波数エンコーディングを行えばよい。平行方向A2に周波数エンコーディングすることによって、平行方向A2の位置情報がわかるので、スライス面Hの上部領域Hupperの信号量を算出することができる。この場合、位相エンコーディングは不要であるので、スライス面Hのスキャンを短時間で行うことができる。
【0054】
スライス面Hの上部領域Hupperの信号量を算出することによって、スライス面Hの下半分の領域に位置する副鼻腔NSの影響を除去することができる。したがって、信号量は、副鼻腔NSの影響をあまり受けないので、信号量が最小値になるときの回転角φSIJが、大脳縦裂LFCのφSI方向の角度を表していると考えることができる。つまり、回転角φSIJを、正中面MSPのφSI方向の角度として決定することができる。
【0055】
このようにして、正中面MSPのφAP方向およびφSI方向の角度を決定することができるので、正中面MSPを決定することができる(図12参照)。
【0056】
図12は、正中面MSPを示す図である。
基準面Hrefを、φAP方向に角度φAPKだけ回転させ、φSI方向に角度φSIJだけ回転させることによって、正中面MSPを決定することができる。尚、基準面Hrefを回転させる場合、φAP方向に回転させた後にφSI方向に回転させてもよいし、逆に、φSI方向に回転させた後にφAP方向に回転させてもよい。正中面MSPを決定した後、ステップST3に進む。
【0057】
ステップST3では、正中面スキャンSMSP(図2参照)を実行する。正中面スキャンSMSPでは、ステップST2で決定された正中面MSPのスキャンを実行する。図13に、正中面MSPの画像データIDを概略的に示す。正中面スキャンSMSPを実行した後、ステップST4に進む。
【0058】
ステップST4では、正中面MSPの画像データに、スライス位置を設定するためのランドマークを設定する(図14参照)。
【0059】
図14は、正中面の画像データにランドマークを設定するときの説明図である。
図14(a)は、被検体12の正中面の画像データIDと、スライス位置のランドマークを設定するために使用されるテンプレートTLとを示す図である。
【0060】
スライス位置設定手段93(図1参照)は、正中面の画像データにランドマークLMを設定するためのテンプレートTLを有している。テンプレートTLは、正中面の基準となる基準データであり、被検体12を撮影する前に事前に作成されている。テンプレートTLは、例えば、複数人の被検体(例えば数人〜数十人の被検体)の正中面の画像データを参考にして作成することができる。テンプレートTLには、スライス位置を設定するためのランドマークLMが規定されている。スライス位置設定手段93は、被検体12の正中面の画像データIDの脳BRとテンプレートTLの脳BR′との位置ずれが最小になるように、マッチングを行う。
【0061】
図14(b)は、マッチングした後の様子を示す図である。
マッチングによって、テンプレートTLに規定されたランドマークLMを、被検体12の正中面の画像データIDに設定することができる。ランドマークLMを設定した後、ステップST5に進む。
【0062】
ステップST5では、スライス位置設定手段93が、ランドマークLMに基づいて、被検体12の正中面の画像データIDに、スライス位置を設定する(図15参照)。
【0063】
図15は、設定されたスライス位置を示す図である。
ランドマークLMに基づいてスライス位置SP〜SPを設定したら、スライス位置SP〜SPに従ってスキャンを行い、フローを終了する。
【0064】
第1の形態では、各回転角φAPにおけるスライス面Hの信号強度に基づいて、正中面MSPのφAP方向の角度を求め、更に、各回転角φSIにおけるスライス面Hの信号強度に基づいて、正中面MSPのφSI方向の角度を求めている。したがって、正中面MSPを決定することができる。
【0065】
第1の形態では、スライス面Hをスキャンする場合、位相エンコードディングを行う必要はなく、垂直方向A1(図8参照)および平行方向A2(図11参照)に周波数エンコーディングを行えばよい。したがって、3Dスキャンを行わなくても、正中面MSPのφAP方向およびφSI方向の角度を求めるためのデータを収集することができるので、スキャン時間を短縮することができ、更に正中面MSPの角度を求めるときの計算時間も短縮することができる。尚、スキャン時間がそれほど長くならないのであれば、位相エンコーディングを行ってもよい。
【0066】
第1の形態では、各回転角におけるスライス面Hの上部領域Hupperの信号量を算出し、算出した信号量に基づいて、正中面MSPのφAP方向およびφSI方向の角度を求めている。しかし、スライス面Hの上部領域Hupperよりも広い領域(又は狭い領域)の信号量を算出し、算出した信号量に基づいて、正中面MSPのφAP方向およびφSI方向の角度を求めてもよい。
【0067】
第1の形態では、大脳縦裂の位置を求める場合に、ラドン変換を行う必要がないので、脳に腫瘍などが存在していても、大脳縦裂の位置の検出誤差を小さくすることができる。したがって、正中面MSPの検出精度を向上させることができる。
【0068】
第1の形態では、スライス位置のランドマークLMを設定するためにテンプレートTLを用いている。しかし、テンプレートTLを用いずに、ASP(Active Shape Model)法などを用いて画像データIDをセグメンテーションし、ランドマークLMを設定してもよい。
【0069】
第1の形態では、正中面MSPのφAP方向の角度と、φSI方向の角度とを求めて、正中面MSPを決定している。しかし、正中面MSPを精度よく求めることができるのであれば、φAP方向の角度のみを求めて正中面MSPを決定してもよいし、φSI方向の角度のみをを求めて正中面MSPを決定してもよい。また、φAP方向およびφSI方向とは別の角度方向の角度を求めて正中面MSPを決定してもよい。
【0070】
(2)第2の形態
第2の形態は、第1の形態と比較して、重心Gの決定方法が異なるが、その他の点については、第1の形態と同じである。したがって、第2の形態では、主に、重心Gの決定方法について説明する。
【0071】
図16は、第2の形態の重心決定手段91の説明図である。
第2の形態では、重心決定手段91は、重心初期位置決定手段91aと、重心位置調整手段91bとを有している。
【0072】
重心初期位置決定手段91aは、重心決定用スキャンS(図2参照)により得られたデータに基づいて、脳の重心の初期位置を決定する。
重心位置調整手段91bは、脳の重心の位置を調整する。
【0073】
重心決定手段91は、上記のように構成されている。尚、その他の構成は、第1の形態と同じであるので、説明は省略する。
【0074】
図17は、第2の形態における重心Gの決定方法の一例を説明する図である。
第2の形態では、重心初期位置決定手段91aが、重心決定用スキャンSにより収集されたデータに基づいて、重心Gの初期位置を決定する。図17では、重心Gの初期位置を記号「×」で示してある。重心決定用スキャンSは、第1の形態と同様に、SSFSE Heavy T2スキャンを使用することができる。
【0075】
重心Gの初期位置を決定した後、重心位置調整手段91bが、重心Gの初期位置の近傍の領域Rを探索し、探索した領域Rの中で、信号強度が最も小さくなる位置(黒丸「●」で示されている)に、脳の重心Gを移動させる。信号強度が最も小さくなる位置は、大脳縦裂が横切っている位置(又は、大脳縦裂に近い位置)と考えることができるので、信号強度が最も小さくなる位置に脳の重心Gを移動させることにより、脳の重心Gを大脳縦裂(又は、大脳縦裂に近い位置)に位置決めすることができる。
【0076】
脳の重心Gを決定した後は、第1の形態と同様の方法で、正中面MSPを決定し、スライス位置を設定し、スキャンが行われる。
【0077】
第2の形態でも、第1の形態と同様に、スキャン時間を短縮することができ、更に正中面MSPの角度を求めるときの計算時間も短縮することができる。
【0078】
また、第2の形態では、重心Gの初期位置を決定した後、重心Gの初期位置の近傍の領域Rを探索し、探索した領域Rの中で、信号強度が最も小さくなる位置に重心Gを移動させている。したがって、重心Gを大脳縦裂に更に近い位置に位置決めすることができるので、正中面MSPの検出精度を更に向上させることができる。
【符号の説明】
【0079】
2 磁場発生装置
3 テーブル
4 受信コイル
5 シーケンサ
6 送信器
7 勾配磁場電源
8 受信器
9 中央処理装置
10 操作部
11 表示部
12 被検体
13 オペレータ
21 ボア
22 超伝導コイル
23 勾配コイル
24 送信コイル
31 クレードル
91 重心決定手段
92 正中面決定手段
93 スライス位置設定手段
100 MRI装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
脳を横切るスライス面の断面位置を調整しながら、前記スライス面をスキャンするスキャン手段と、
前記スライス面から得られたデータに基づいて、正中面を決定する正中面決定手段と、
を有する、磁気共鳴イメージング装置。
【請求項2】
前記スキャン手段は、
第1の回転軸を中心としてスライス面を回転させながら、各回転角における前記スライス面をスキャンする第1の角度決定用スキャンを実行し、
前記正中面決定手段は、
前記第1の角度決定用スキャンを実行することにより得られた前記スライス面の信号量に基づいて、前記正中面の第1の角度方向の角度を決定する、請求項1に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項3】
前記正中面決定手段は、
前記第1の角度決定用スキャンを実行することにより得られた前記スライス面の一部の領域の信号量に基づいて、前記正中面の第1の角度方向の角度を決定する、請求項2に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項4】
前記正中面決定手段は、
前記信号量が最小になるときの前記スライス面の回転角を、前記正中面の第1の角度方向の角度として決定する、請求項3に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項5】
前記第1の角度決定用スキャンは、周波数エンコーディングを実行し、位相エンコーディングは実行しない、請求項3又は4に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項6】
前記第1の回転軸は、
AP方向に延在するAP回転軸、又はSI方向に延在するSI回転軸である、請求項2〜5のうちのいずれか一項に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項7】
脳の重心を決定する重心決定手段を有し、
前記第1の回転軸は、前記重心を通る軸である、請求項2〜6のうちのいずれか一項に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項8】
前記スキャン手段は、
第2の回転軸を中心としてスライス面を回転させながら、各回転角における前記スライス面をスキャンする第2の角度決定用スキャンを実行し、
前記正中面決定手段は、
前記第2の角度決定用スキャンを実行することにより得られた前記スライス面の信号量に基づいて、前記正中面の第2の角度方向の角度を決定する、請求項2〜5のうちのいずれか一項に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項9】
前記正中面決定手段は、
前記第2の角度決定用スキャンを実行することにより得られた前記スライス面の一部の領域の信号量に基づいて、前記正中面の第2の角度方向の角度を決定する、請求項8に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項10】
前記正中面決定手段は、
前記信号量が最小になるときの前記スライス面の回転角を、前記正中面の第2の角度方向の角度として決定する、請求項9に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項11】
前記第2の角度決定用スキャンは、周波数エンコーディングを実行し、位相エンコーディングは実行しない、請求項9又は10に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項12】
前記第1の回転軸は、AP方向に延在するAP回転軸であり、
前記第2の回転軸は、SI方向に延在するSI回転軸である、請求項8〜11のうちのいずれか一項に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項13】
脳の重心を決定する重心決定手段を有し、
前記第1の回転軸および前記第2の回転軸は、前記重心を通る軸である、請求項8〜12のうちのいずれか一項に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項14】
前記重心決定手段は、
脳の重心の初期位置を決定する重心初期位置決定手段と、
前記重心の初期位置を調整する重心位置調整手段と、
を有する、請求項7又は13に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項15】
前記スキャン手段は、
脳の重心を決定するための重心決定用スキャンを実行する、請求項7、13、又は14に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項16】
前記重心決定手段は、
前記重心決定用スキャンにより得られたデータから、眼球のデータを除去する、請求項15に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項17】
前記スキャン手段は、
前記正中面決定手段によって決定された正中面の画像データを収集するための正中面スキャンを実行する、請求項1〜16のうちのいずれか一項に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項18】
前記正中面のスキャンによって得られた正中面の画像データに基づいてスライス位置を設定するスライス位置設定手段を有する、請求項17に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項19】
脳を横切るスライス面の断面位置を調整しながら前記スライス面をスキャンすることにより得られたデータに基づいて、正中面を決定する正中面決定ステップ、を有する、正中面決定方法。
【請求項20】
脳を横切るスライス面の断面位置を調整しながら前記スライス面をスキャンすることにより得られたデータに基づいて、正中面を決定する正中面決定処理、を計算機に実行させるためのプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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