説明

磁気共鳴イメージング装置およびプログラム

【課題】スライス枚数をどの程度増減できるかを容易に認識することを提供する。
【解決手段】息止め時間T内でスキャンが可能なスライスの最大枚数mを求め、スライスの最大枚数mと、オペレータが設定したスキャン範囲Rのスライス枚数nとを比較する。m>nの場合、スキャン範囲Rの他に、息止め時間T内でスキャンが可能な別のスキャン範囲Rを表示する。m<nの場合、スキャン範囲Rの中に、息止め時間T内でスキャンができない範囲Rを表示する。m=nの場合、スキャン範囲Rのスライス枚数nは、スキャンの最大枚数mに等しいことを表す情報を表示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検体が息止めをした状態で前記被検体をスキャンする磁気共鳴イメージング装置、およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
磁気共鳴イメージング装置を用いて被検体を撮影する場合、呼吸による体動アーチファクトを低減するために、被検体に息止めをしてもらいスキャンを行う方法が知られている(特許文献1参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−094238号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
息止めスキャンのスキャン範囲を設定する場合、オペレータは、被検体の負担を軽減する観点から、被検体の息止め時間ができるだけ長くならないように、スライス枚数などのスキャン条件を設定する必要がある。そこで、オペレータは、スキャン条件によって決まるスキャン時間を参考にしながら、スキャン時間が長すぎるようであれば、スライス枚数を減らすなど、スキャン条件を調整している。しかし、スライス枚数を減らしすぎると、スキャンできる範囲が狭くなるので、関心領域の全体を覆うようにスライスを設定することができなくなる。したがって、スライス枚数をどの程度増減できるかをオペレータが認識できることは、スキャン条件を調整する上で重要である。しかし、実際には、オペレータが、スライス枚数をどの程度増減できるかを認識することは難しいという問題がある。したがって、スライス枚数をどの程度増減できるかを容易に認識できることが望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第1の態様は、被検体が息止めをした状態で前記被検体のスキャンを実行する磁気共鳴イメージング装置であって、
前記被検体の息止め時間内でスキャンが可能なスキャン可能範囲を求める手段と、
前記スキャン可能範囲を表示する表示手段と、
を有する、磁気共鳴イメージング装置である。
【0006】
本発明の第2の態様は、被検体が息止めをした状態で前記被検体をスキャンする磁気共鳴イメージング装置のプログラムであって、
前記被検体の息止め時間内でスキャンが可能なスキャン可能範囲を求める処理と、
前記スキャン可能範囲を表示部に表示させる表示制御処理と、
を計算機に実行させるプログラムである。
【発明の効果】
【0007】
本発明では、被検体の息止め時間内でスキャンが可能なスキャン可能範囲を表示しているので、スライス枚数をどの程度増減できるかを容易に認識することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の第1の形態の磁気共鳴イメージング装置の概略図である。
【図2】第1の形態で実行されるスキャンの説明図である。
【図3】MRI装置100の処理フローを示す図である。
【図4】表示部11に表示された位置決め用画像データDAを概略的に示す図である。
【図5】スライス位置を示す図である。
【図6】スペーシングの説明図である。
【図7】息止め時間Tの入力値の一例を示す図である。
【図8】スキャンが可能な別のスキャン範囲の表示方法の一例を示す図である。
【図9】別のスキャン範囲Rのスライス位置Q〜Qが実線に変化した様子を示す図である。
【図10】スライス位置Q〜Qが削除された様子を示す図である。
【図11】肝臓の上半分のスライス位置のみが残った様子を示す図である。
【図12】スキャン可能範囲Rm1を示す図である。
【図13】別のスキャン範囲Rのスライス枚数が変化したときのスキャン可能範囲Rm1の一例を示す図である。
【図14】スキャン可能範囲Rm0を調整したときの様子を示す図である。
【図15】スキャン可能範囲と、スキャンができない範囲とを表示させる方法の一例を示す図である。
【図16】スキャン可能範囲Rm1を示す図である。
【図17】ポップアップウィンドウを示す図である。
【図18】第2の形態のMRI装置を示す概略図である。
【図19】第2の形態における処理フローを示す図である。
【図20】息止め時間Tの入力値の一例を示す図である。
【図21】スキャン可能範囲Rmaxの一例を示す図である。
【図22】スキャン範囲Rを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
発明を実施するための形態について説明するが、本発明は以下の形態に限定されることはない。
【0010】
(1)第1の形態
図1は、本発明の第1の形態の磁気共鳴イメージング装置の概略図である。
【0011】
磁気共鳴イメージング装置(以下、「MRI装置」と呼ぶ。MRI:Magnetic Resonance Imaging)100は、マグネット2、テーブル3、受信コイル4などを有している。
【0012】
マグネット2は、被検体12が収容されるボア21を有している。また、マグネット2は、超伝導コイル22、勾配コイル23、およびRFコイル24を内蔵している。
【0013】
テーブル3は、被検体12を支持するクレードル3aを有している。
受信コイル4は、被検体12からの磁気共鳴信号を受信する。
【0014】
MRI装置100は、更に、シーケンサ5、送信器6、勾配磁場電源7、受信器8、中央処理装置9、操作部10、および表示部11を有している。
【0015】
シーケンサ5は、中央処理装置9の制御を受けて、送信器6および勾配磁場電源7に信号を送る。
【0016】
送信器6は、シーケンサ5からの信号に基づいて、RFコイル24を駆動する駆動信号を出力する。
【0017】
勾配磁場電源7は、シーケンサ5からの信号に基づいて、勾配コイル23を駆動する駆動信号を出力する。
【0018】
受信器8は、受信コイル4で受信された磁気共鳴信号を信号処理し、信号処理により得たれたデータを中央処理装置9に出力する。
【0019】
中央処理装置9は、シーケンサ5および表示部11に必要な情報を伝送したり、受信器8から受け取ったデータに基づいて画像を再構成するなど、MRI装置100の各部の動作を制御する。中央処理装置9は、例えばコンピュータ(computer)によって構成される。
【0020】
また、中央処理装置9は、画像データ作成手段90〜スキャン条件変更手段95などを有している。
【0021】
画像データ作成手段90は、受信器8から受け取ったデータに基づいて、画像データを作成する。
表示制御手段91は、表示部11の表示を制御する。
スライス最大枚数算出手段92は、被検体の息止め時間内で設定することが可能なスライスの最大枚数を算出する。
スライス枚数比較手段93は、スライスの最大枚数と、スキャン範囲のスライス枚数とを比較する。
スキャン範囲変更手段94は、スキャン範囲を変更する。
スキャン条件変更手段95は、スキャン条件を変更する。
【0022】
中央処理装置9は、画像データ作成手段90〜スキャン条件変更手段95の一例であり、所定のプログラムを実行することにより、これらの手段として機能する。また、スライス最大枚数算出手段92およびスライス枚数比較手段93を合わせたものが、スキャン可能範囲を求める手段に相当する。
【0023】
操作部10は、オペレータにより操作され、種々の情報を中央処理装置9に入力する。表示部11は種々の情報を表示する。
MRI装置100は、上記のように構成されている。
【0024】
図2は、第1の形態で実行されるスキャンの説明図である。
第1の形態では、位置決め用スキャンと、息止めスキャンとが実行される。
【0025】
位置決め用スキャンは、位置決め用画像データを取得するためのスキャンである。位置決め用画像データは、息止めスキャンにおけるスライス位置を決定するために使用されるデータである。息止めスキャンは、被検体が息止めをした状態で行われるスキャンである。
【0026】
図3は、MRI装置100の処理フローを示す図である。
ステップST1では、位置決め用スキャンを行う。位置決め用スキャンを行った後、ステップST2に進む。
【0027】
ステップST2では、画像データ作成手段90(図1参照)が、位置決め用スキャンにより得られたデータに基づいて、位置決め用画像データを作成する。位置決め用画像データを作成したら、表示制御手段91(図1参照)は、表示部11に、位置決め用画像データを表示させる。図4に、表示部11に表示された位置決め用画像データDAを概略的に示す。位置決め用画像データDAには、肝臓が含まれている。表示部11に、位置決め用画像データDAを表示させた後、ステップST3に進む。
【0028】
ステップST3では、オペレータは、位置決め用画像データDAを参照しながら、関心領域を覆うように、スライス位置を設定する。本形態では、関心領域は、肝臓とする。オペレータは、操作部10を操作して、スライス位置を設定する。表示制御手段91は、表示部11に、スライス位置を表示させる(図5参照)。
【0029】
図5は、スライス位置を示す図である。
図5では、位置決め用画像データDAに、n個のスライス位置P〜Pが設定されている。したがって、スライス枚数は、n枚である。尚、スライス厚やスペーシングの値は、ステップST3においてオペレータが設定してもよいし、初期値として事前に設定された値でもよい。尚、スペーシングとは、図6に示すように、隣接するスライスの間隔である。
【0030】
このようにして、息止めスキャンのスキャン範囲Rが設定される。スキャン範囲Rを設定したら、ステップST4に進む。
【0031】
ステップST4では、オペレータは、操作部10を操作し、被検体12の息止め可能な息止め時間Tを入力する。図7に、息止め時間Tの入力値の一例(15秒)が示されている。尚、オペレータが息止め時間Tを入力する代わりに、息止め時間Tを初期値として事前に設定しておいてもよい。息止め時間Tを入力した後、ステップST5に進む。
【0032】
ステップST5では、スライス最大枚数算出手段92(図1参照)が、息止めスキャンを実行するときのスキャン条件に基づいて、息止め時間T内で設定することが可能なスライスの最大枚数mを算出する。そして、スライス枚数比較手段93(図1参照)が、スライスの最大枚数mと、ステップST3で設定されたスライス枚数nとを比較し、m>n、m<n、又はm=nであるかを判定する。m>nの場合ステップST6に進み、m<nの場合ステップST11に進み、m=nの場合ステップST12に進む。以下に、m>n、m<n、m=nそれぞれの場合に分けて説明する。
【0033】
(A)m>nの場合
ステップST5において、m>nと判定された場合、ステップST6に進む。
【0034】
ステップST6では、表示制御手段91が、息止め時間T内でスキャンが可能なスキャン可能範囲Rm0を表示部11に表示させる。
【0035】
図8は、スキャン可能範囲Rm0の表示方法の一例を示す図である。
m>nの場合、息止め時間T内で設定することが可能なスライスの最大枚数mが、ステップST3でオペレータが設定したスキャン範囲Rのスライス枚数nよりも多いことを意味している。したがって、息止め時間T内でスキャンが可能なスキャン可能範囲Rm0は、スキャン範囲Rよりも広くなる。このため、スキャン可能範囲Rm0は、スキャン範囲Rと、スキャンが可能な別のスキャン範囲Rとの組み合わせで表示される。
【0036】
スキャン範囲R(スライス位置P〜P、スライス枚数n)は実線で表されおり、別のスキャン範囲R(スライス位置Q〜Q、スライス枚数x)は破線で表されている。別のスキャン範囲Rのスライス枚数xは、スキャン可能範囲Rm0のスライスの最大枚数mと、スキャン範囲Rのスライス枚数nとの差で表される。
【0037】
スキャン可能範囲Rm0には、スキャン範囲Rが含まれている。したがって、オペレータは、表示部11を見ることによって、スキャン範囲Rは息止め時間Tの間にスキャンできることがわかる。更に、スキャン可能範囲Rm0には、別のスキャン範囲Rも含まれている。したがって、オペレータは、表示部11を見ることによって、スライス枚数を、最大でx枚増やせることがわかる。尚、スキャン範囲Rと別のスキャン範囲Rとを、色によって区別してもよい。
別のスキャン範囲Rを表示した後、ステップST7に進む。
【0038】
ステップST7では、オペレータは、息止めスキャンを実行するときのスキャン条件(例えば、スライス厚tや繰り返し時間TRなどのスキャンパラメータ)を変更するか否かを判断する。オペレータが、どのスキャン条件も変更しないと判断した場合、ステップST9に進む。一方、オペレータが、スキャン条件を変更すると判断した場合、ステップST8に進む。以下では、先ず、オペレータがスキャン条件を変更しないと判断した場合について説明する。この場合、ステップST9に進む。
【0039】
ステップST9では、オペレータは、スキャン可能範囲Rm0を参考にしながら、息止めスキャンのスキャン範囲を決定する。オペレータは、スキャン可能範囲Rm0内であれば、任意の範囲を、息止めスキャンのスキャン範囲として決定することができる。例えば、オペレータは、別のスキャン範囲Rの画像データも被検体の診断の参考になると考えた場合は、操作部10を操作し、別のスキャン範囲Rも息止めスキャンのスキャン範囲Rに含めるためのスキャン範囲変更命令を入力する。スキャン範囲変更命令が入力されると、スキャン範囲変更手段94(図1参照)は、スキャン範囲変更命令に従って、別のスキャン範囲Rも息止めスキャンのスキャン範囲Rに含まれるように変更する。このとき、表示制御手段91は、別のスキャン範囲Rのスライス位置Q〜Qが破線から実線に変化するように制御する(図9参照)。したがって、オペレータは、スライス位置Q〜Qも息止めスキャンのスキャン範囲Rに含まれたことを視覚的に認識することができる。
【0040】
一方、オペレータが、スライス位置Q〜Qをスキャン範囲に含める必要はないと決定した場合、スライス位置P〜Pのみをスキャン範囲として決定する。この場合、オペレータは、操作部10を操作し、スライス位置Q〜Qを削除する命令を入力する。この命令が入力されると、スライス位置Q〜Qが削除される(図10参照)。したがって、オペレータは、スライス位置Q〜Qはスキャン範囲Rに含まれないことを、視覚的に認識することができる。
【0041】
更に、オペレータが、肝臓の上半分のみをスキャンしたいと考えなおした場合は、肝臓の上半分のスライス位置のみを残し、他のスライス位置は削除する命令を入力する。この命令が入力されると、肝臓の上半分のスライス位置のみが残る(図11参照)。したがって、オペレータは、肝臓の上半分のスライス位置のみがスキャン範囲Rに含まれていることを、視覚的に認識することができる。
【0042】
上記のようにして、スキャン範囲を決定したら、ステップST10に進む。ステップST10では、オペレータは、息止めスキャンをスタートさせるためのスタートボタン11aをクリックする。このボタン11aがクリックされると、息止めスキャンが実行され、フローが終了する。
【0043】
表示部11には、息止め時間T内でスキャンが可能なスキャン可能範囲Rm0が表示される。スキャン可能範囲Rm0は、スキャン範囲Rの他に、スキャンが可能な別のスキャン範囲Rを含んでいる。したがって、オペレータは、表示部11を見ることによって、スキャン範囲Rは息止め時間Tの間にスキャンできることがわかる。更に、オペレータは、息止め時間Tの間に、スキャン範囲Rだけでなく、別のスキャン範囲Rもスキャンが可能であることがわかる。したがって、オペレータは、表示部11を見るだけで、スライス枚数を何枚増やせるかを視覚的に認識することができる。
【0044】
尚、上記の説明では、ステップST7において、オペレータがスキャン条件を変更しない場合について説明したが、オペレータは、必要に応じて、スキャン条件を変更してもよい。オペレータが、ステップST7において、スキャン条件を変更すると判断した場合、ステップST8に進む。
【0045】
ステップST8では、スキャン条件を変更する。オペレータは、操作部10を操作して、スキャン条件を変更するための命令を入力する。この命令が入力されると、スキャン条件変更手段95(図1参照)は、スキャン条件を変更する。スキャン条件が変更されると、表示制御手段91は、スキャン条件の変更に応じて、表示部11に表示されるスキャン可能範囲Rm0を変化させる。図12には、スキャン条件を変更させた一例としてスライス厚tを広げた(スライス位置の間隔を広げた)ときのスキャン可能範囲Rm1が示されている。スキャン条件を変更した場合、スキャン条件を変更させた後のスキャン可能範囲Rm1が表示されるので、オペレータは、スキャン条件を変更させた後のスキャン可能範囲Rm1も容易に確認することができる。尚、図12では、スキャン可能範囲Rm1のスライスの最大枚数はm枚である。しかし、ステップST8でオペレータがスキャン条件を変更した場合、変更後のスキャン条件によっては、スライスの最大枚数が変化することがある。この場合、表示制御手段91は、以下のように、スキャン可能範囲を変化させる(図13参照)。
【0046】
図13は、スライスの最大枚数が変化したときのスキャン可能範囲Rm1の一例を示す図である。
【0047】
図13では、スライスの最大枚数が、m枚からk枚に変化した場合について示されている。この場合、別のスキャン範囲Rのスライス枚数は、x枚からy枚に変化する。したがって、オペレータは、別のスキャン範囲Rのスライス枚数がy枚に変化したことを視覚的に容易に認識することができる。
スキャン条件を変更した後、ステップST9に進む。
【0048】
ステップST9では、オペレータは、スキャン条件を変更させた後のスキャン可能範囲Rm1を参照しながら、息止めスキャンのスキャン範囲を決定する。スキャン範囲の決定方法は、図8〜図11の方法と同じである。スライス位置を決定したら、ステップST10に進み、息止めスキャンを行い、フローを終了する。
【0049】
オペレータがスキャン条件を変更した場合は、スキャン条件を変更した後のスキャン可能範囲が表示されるので、オペレータは、スキャン条件を変更させた後のスキャン可能範囲も容易に確認することができる。
【0050】
尚、ステップST6において、スキャン可能範囲Rm0を表示させた後、ステップST7に進む前に、必要に応じて、スキャン可能範囲Rm0の位置を調整してもよい(図14参照)。
【0051】
図14は、スキャン可能範囲Rm0を調整したときの様子を示す図である。
図14(a)は調整前のスキャン可能範囲Rm0を示し、図14(b)は調整後のスキャン可能範囲Rm0を示している。
【0052】
オペレータは、スキャン可能範囲Rm0の位置を調整したい場合は、操作部10を操作して、スキャン可能範囲Rm0の位置を調整する。このように、スキャン可能範囲Rm0の位置を調整することによって、オペレータは、スキャン可能範囲Rm0を最適な位置に位置決めすることができる。
次に、ステップST5において、m<nと判定された場合について説明する。
【0053】
(B)m<nの場合
ステップST5において、m<nと判定された場合、ステップST11に進む。
【0054】
ステップST11では、表示制御手段91が、息止め時間T内で息止めスキャンが可能なスキャン可能範囲Rm0を表示部11に表示させる。
【0055】
図15は、スキャン可能範囲Rm0の表示方法の一例を示す図である。
m<nの場合、息止め時間T内で設定することが可能なスライスの最大枚数mが、ステップST3でオペレータが設定したスキャン範囲Rのスライス枚数nよりも少ないことを意味している。したがって、息止め時間T内でスキャンが可能なスキャン可能範囲Rm0は、スキャン範囲Rよりも狭くなる。このため、スキャン範囲Rは、スキャン可能範囲Rm0と、スキャンができない範囲Rに分けられる。
【0056】
スキャン可能範囲Rm0(スライス位置P〜P、スライス枚数m)は実線で表されており、スキャンができない範囲R(スライス位置Pm+1〜P、スライス枚数x)は一点鎖線で表されている。スキャンができない範囲Rのスライス枚数xは、スキャン範囲Rのスライス枚数nと、スキャン可能範囲Rm0のスライスの最大枚数mとの差で表される。
【0057】
スキャン可能範囲Rm0は、オペレータが設定したスキャン範囲Rよりも狭いので、オペレータは、表示部11を見ることによって、スキャン範囲Rは息止め時間Tの間にスキャンできないことがわかる。尚、スキャン可能範囲Rm0とスキャンができない範囲Rとを、色によって区別してもよい。
スキャンができない範囲Rを表示した後、ステップST7に進む。
【0058】
ステップST7では、オペレータは、息止めスキャンを実行するときのスキャン条件(例えば、スライス厚tや繰り返し時間TRなどのスキャンパラメータ)を変更するか否かを判断する。図15を参照すると、スキャン可能範囲Rm0は関心領域(肝臓)の一部を覆っていないので、このままでは、関心領域の全体をスキャンすることができない。そこで、オペレータは、スキャン可能範囲Rm0が関心領域の全体を覆うようにするため、スキャン条件を変更すると判断する。したがって、ステップST8に進む。
【0059】
ステップST8では、スキャン条件を変更する。オペレータは、操作部10を操作して、スキャン条件を変更するための命令を入力する。この命令が入力されると、スキャン条件変更手段95(図1参照)は、スキャン条件を変更する。スキャン条件が変更されると、表示制御手段91は、スキャン条件の変更に応じて、表示部11に表示されるスキャン可能範囲Rm0を変化させる。図16には、スキャン条件を変更させた一例としてスライス厚tを広げた(スライス位置の間隔を広げた)ときのスキャン可能範囲Rm1が示されている。スライス厚tを広げることによってスキャン可能範囲Rm1が広がるので、関心領域の全体をスキャン可能範囲Rm1に含めることができる。スキャン条件を変更したら、ステップST9に進む。
【0060】
ステップST9では、オペレータは、操作部10を操作し、スキャン可能範囲Rm1を息止めスキャンのスキャン範囲とするための命令を入力する。したがって、スキャン可能範囲Rm1が息止めスキャンのスキャン範囲として決定される。スキャン範囲を決定した後、ステップST10に進み、スタートボタン11aをクリックする。これによって、息止めスキャンが実行され、フローが終了する。
【0061】
表示部11には、息止め時間T内でスキャンが可能なスキャン可能範囲Rm0(図15参照)が示される。したがって、オペレータは、表示部11を見ることによって、オペレータが設定したスキャン範囲Rが息止め時間T内にスキャンできないことを視覚的に認識することができる。また、オペレータは、スキャン条件を変更した場合、スキャン条件が変更された後のスキャン可能範囲Rm1(図16参照)を見ることができるので、スキャン可能範囲Rm1が関心領域を覆っているかどうかを視覚的に確認することができる。
次に、ステップST5においてm=nと判定された場合について説明する。
【0062】
(C)m=nの場合
ステップST5において、m=nと判定された場合、ステップST12に進む。
【0063】
ステップST12では、表示制御手段91は、「スキャン範囲Rのスライス枚数は、息止め時間T内で設定することが可能なスライスの最大枚数に一致している」旨を表す情報を表示させる。例えば、図17に示すように、「スキャン範囲Rのスライス枚数は、息止め時間T内で設定することが可能なスライスの最大枚数に一致しています」と記載されたメッセージを表示する。したがって、オペレータは、スキャン範囲Rは息止め時間T内にスキャンできることがわかる。メッセージを表示させた後、ステップST10に進み、オペレータは、息止めスキャンをスタートさせるためのスタートボタン11aをクリックする。このボタン11aがクリックされると、息止めスキャンが実行され、フローが終了する。
【0064】
以上説明したように、本形態では、表示部11にスキャン可能範囲Rm0が表示されるので、オペレータは、表示部11を見ることによって、オペレータが設定したスキャン範囲Rが息止め時間T内にスキャンできるか否かを容易に認識することができる。したがって、オペレータは、必要に応じて、スライス枚数の増減を容易に行うことができる。
【0065】
(2)第2の形態
図18は、第2の形態のMRI装置を示す概略図である。
第2の形態のMRI装置200は、スライス枚数比較手段93を備えていないが、その他の構成は、第1の形態のMRI装置100と同じである。
【0066】
図19は、第2の形態における処理フローを示す図である。
ステップST1およびST2は、第1の形態と同じであるので、説明は省略する。表示部11に位置決め用画像データDAを表示させた後(図4参照)、ステップST3に進む。
【0067】
ステップST3では、オペレータは、操作部10を操作し、被検体12の息止め時間Tを入力する。図20に、息止め時間Tの入力値の一例(15秒)が示されている。尚、オペレータが息止め時間Tを入力する代わりに、息止め時間Tを初期値として事前に設定しておいてもよい。息止め時間Tを入力した後、ステップST4に進む。
【0068】
ステップST4では、オペレータは、スキャン可能範囲表示ボタン11bをクリックする。スキャン可能範囲表示ボタン11bは、息止め時間T内でスキャンすることが可能なスキャン可能範囲を表示させるためのボタンである。このボタン11bがクリックされると、スライス最大枚数算出手段92(図1参照)は、息止め時間T内で設定することが可能なスライスの最大枚数mを算出する。尚、スライス枚数を算出するための必要な条件(例えば、スライス厚t、スペーシングSP、繰り返し時間TR)は、事前に設定されているとする。スライスの最大枚数mを算出したら、ステップST5に進む。
【0069】
ステップST5では、表示制御手段91が、息止め時間T内でスキャンすることが可能なスキャン可能範囲Rを表示部11に表示させる。
【0070】
図21は、スキャン可能範囲Rの一例を示す図である。図21では、スキャン可能範囲Rは、実線(スライス位置P〜P)で表されている。スキャン可能範囲Rを表示させた後、ステップST6に進む。
【0071】
ステップST6では、オペレータは、操作部10を操作し、息止めスキャンのスキャン範囲Rを決定するための情報を入力する。この情報が入力されることによって、図22に示すように、スキャン範囲Rを決定することができる。スライス位置Rを決定したら、ステップST7に進み、オペレータは、息止めスキャンをスタートさせるためのスタートボタン11aをクリックする。このボタン11aがクリックされると、息止めスキャンが実行され、フローが終了する。
【0072】
第2の形態では、オペレータは、スキャン可能範囲Rを視覚的に認識することができる。したがって、スキャン可能範囲Rに収まるように、スキャン範囲Rを容易に決定することができる。
【0073】
尚、スキャン可能範囲Rが関心領域(肝臓)より狭くなる場合もあり得る。この場合は、オペレータは、スキャン条件を調整すればよい。スキャン条件を調整することによって、スキャン可能範囲Rを、関心領域よりも広くすることができるので、オペレータは、関心領域全体を覆うように、スライス位置を決定することができる。
【符号の説明】
【0074】
2 マグネット
3 テーブル
3a クレードル
4 受信コイル
5 シーケンサ
6 送信器
7 勾配磁場電源
8 受信器
9 中央処理装置
10 操作部
11 表示部
12 被検体
21 ボア
22 超伝導コイル
23 勾配コイル
24 送信コイル
100、200 MRI装置


【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体が息止めをした状態で前記被検体のスキャンを実行する磁気共鳴イメージング装置であって、
前記被検体の息止め時間内でスキャンが可能なスキャン可能範囲を求める手段と、
前記スキャン可能範囲を表示する表示手段と、
を有する、磁気共鳴イメージング装置。
【請求項2】
前記スキャン可能範囲を求める手段は、
前記被検体の息止め時間内で設定することが可能なスライスの最大枚数を算出するスライス最大枚数算出手段を有する、請求項1に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項3】
前記表示手段は、
前記被検体をスキャンするときのスキャン範囲を表示する、請求項2に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項4】
前記スキャン可能範囲を求める手段は、
前記スライスの最大枚数と、前記スキャン範囲のスライス枚数とを比較するスライス枚数比較手段を有する、請求項3に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項5】
前記表示手段は、
前記スライスの最大枚数が、前記スキャン範囲のスライス枚数よりも多い場合、前記スキャン可能範囲を、前記スキャン範囲と、スキャンが可能な別のスキャン範囲との組合せで表示する、請求項4に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項6】
前記表示手段は、
前記スライスの最大枚数が、前記スキャン範囲のスライス枚数よりも少ない場合、前記スキャン範囲を、前記スキャン可能範囲と、スキャンができない範囲とに分けて表示する、請求項4又は5に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項7】
スキャン条件を変更するスキャン条件変更手段を有し、
前記表示手段は、前記スキャン条件を変更した後の前記スキャン可能範囲を表示する、請求項1〜6のうちのいずれか一項に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項8】
前記表示手段は、
スライス位置を決定するために使用される位置決め用画像データを表示し、
前記位置決め用画像データ上に、前記スキャン可能範囲を表示する、請求項1〜7のうちのいずれか一項に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項9】
前記位置決め用画像データを取得するための位置決め用スキャンを実行する、請求項8に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項10】
前記スキャン可能範囲の位置は、調整可能である、請求項1〜9のうちのいずれか一項に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項11】
前記表示手段は、
表示部と、
前記表示部の表示を制御する表示制御手段と、
を有する、請求項1〜10のうちのいずれか一項に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項12】
被検体が息止めをした状態で前記被検体をスキャンする磁気共鳴イメージング装置のプログラムであって、
前記被検体の息止め時間内でスキャンが可能なスキャン可能範囲を求める処理と、
前記スキャン可能範囲を表示部に表示させる表示制御処理と、
を計算機に実行させるプログラム。
【請求項13】
前記スキャン可能範囲を求める処理は、
前記被検体の息止め時間内で設定することが可能なスライスの最大枚数を算出するスライス最大枚数算出処理を含む、請求項12に記載のプログラム。
【請求項14】
前記表示制御処理は、
前記表示部に、前記被検体をスキャンするときのスキャン範囲を表示させる処理を含む、請求項13に記載のプログラム。
【請求項15】
前記スキャン可能範囲を求める処理は、
前記スライスの最大枚数と、前記スキャン範囲のスライス枚数とを比較するスライス枚数比較処理を含む、請求項14に記載のプログラム。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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