説明

磁気共鳴イメージング装置および磁気共鳴イメージング方法

【課題】撮影対象部位によらず、本撮影のデータに適用する感度マップを精度よく取得し、高い品質の画像を得る技術を提供することを目的とする。
【解決手段】位置の整合性がとれる期間内に変位検出のためのナビゲーションエコーの取得、感度マップ作成のためのデータを取得する感度マップ撮影、本撮影を行う。感度マップ撮影と本撮影とは、ナビゲーションエコーで検出した変位分、励起位置を変位させて実行する。そして、同期間内に得たデータから生成した感度マップで、本撮影の結果得られた再構成画像に画像処理を施す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気共鳴イメージング技術に関する。特に、受信コイルにマルチエレメントコイルを用いる場合の撮影技術に関する。
【背景技術】
【0002】
磁気共鳴イメージング(MRI)装置は、被検体中の水素や燐等からの核磁気共鳴(以下、「NMR」という)信号を測定し、核の密度分布や緩和時間分布等を映像化する。これを撮影と呼ぶ。このNMR信号を検出する受信コイルとして、マルチエレメントコイル(マルチコイル)を用いる場合がある。マルチコイルは、相対的に高感度な小型のRFコイルを複数個並べたもので、各RFコイルで受信した信号を合成することにより、小型RFコイルの高い感度を保ったまま広い視野を得ることができる。
【0003】
マルチコイルは、高感度ではあるものの、感度の空間的な不均一性が大きい。この感度の不均一により、コイルの感度の低い部分に対応する画像が暗くなる、いわゆる、シェーディングが発生する。従って、マルチコイルを用いる検査では、診断に用いる画像取得(本撮影)に先立って、マルチコイルの感度分布(感度マップ)を取得し、画像再構成時にこの感度マップを用いてシェーディングの補正を行う。さらに、感度マップは、各エレメントの感度差を利用したPARALLEL再構成処理に用いられる。
【0004】
感度マップは、マルチコイルを構成する各小型RFコイルの受信信号から求める。例えば、マルチコイルで取得した位相画像の各画素の画素値を、1つのRFコイルからなるシングルエレメントコイル(以下、シングルコイル)で取得した位相画像の対応する画素の画素値で除算し、感度マップとする(例えば、非特許文献1参照。)。感度マップを作成する位相画像は、本撮影に先立ち、シングルコイルおよびマルチコイルそれぞれで同部位を同撮影条件で撮影し、取得する。この位相画像を取得する撮影を感度マップ撮影と呼ぶ。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Klaas P. Pruessmann et al.”Coil Sensitivity Maps for Sensitivity Encoding and Intensity Correction”,The proceedings of ISMRM 6th annual meeting、1998、p2087
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
撮影対象部位が、呼吸動の影響を大きく受ける部位のように、時間的に位置が変動する部位(変動部位)の場合、感度マップ撮影にあたり、シングルコイルでの撮影時とマルチコイルでの撮影時との間で、撮影対象部位の位置や形状が異なると、正確な感度マップが得られない。
【0007】
また、通常、シングルコイルは、MRI装置のガントリ内に固定されるコイルである一方、マルチコイルは、被検体に装着されるコイルである。このため、撮影対象部位が変動部位の場合、マルチコイルの空間的配置が撮影対象部位の変動に伴い変動し、シングルコイルの位置に対するマルチコイルの位置も変動する。感度マップ撮影時と本撮影時とで、撮影対象部位が変動、変形すると、再構成画像と感度マップとの間に不整合が生じ得る。
【0008】
さらに、マルチスライス撮影の場合、本撮像内でも、撮像対象部位の変動による位置の不整合が発生し得る。これは、再構成画像の品質を低下させる。
【0009】
このように、撮影対象部位が変動部位の場合、撮影位置と撮影対象部位位置の不整合、シングルコイルとマルチコイルとの位置間の不整合、両コイル位置と撮影対象部位位置の不整合など様々な組合せの不整合が生じる。その結果として、感度マップ、再構成画像自体の品質が低下するとともに、シェーディング補正やPARALLEL展開に不正が生じ、画質の劣化につながる。
【0010】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、撮影対象部位によらず、本撮影のデータに適用する感度マップを精度よく取得し、高い品質の画像を得る技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、位置の整合性がとれる期間内に変位検出のためのナビゲーションエコーの取得、感度マップ作成のためのデータを取得する感度マップ撮影、本撮影を行う。感度マップ撮影と本撮影とは、ナビゲーションエコーで検出した変位分、励起位置を変位させて実行する。そして、同期間内に得たデータから生成した感度マップで、本撮影の結果得られた再構成画像に画像処理を施す。
【0012】
具体的には、被検体に高周波パルスと傾斜磁場パルスとを印加するパルス印加手段と、被検体から発生する核磁気共鳴信号を検出する信号検出手段と、前記パルス印加手段および前記信号検出手段の動作を制御し、撮影を実行する計測制御手段と、前記信号検出手段で検出した核磁気共鳴信号から画像を再構成し、表示装置に表示する表示画像を生成する画像処理手段と、を備える磁気共鳴イメージング装置であって、所定の期間毎に、前記被検体の変位を検出する変位検出手段と、前記変位検出手段で検出した変位に応じて、予め設定された撮影領域の位置を変更する撮影位置変更手段と、を備え、前記信号検出手段は、互いに空間的に異なる検出感度分布を有する複数の受信コイルを備え、前記計測制御手段は、前記被検体が前記変位検出手段で検出した変位にある間に、前記変更後の撮影領域の本撮影を実行し、前記画像処理手段は、前記本撮影で検出された核磁気共鳴信号から再構成された画像に、当該本撮影実行時の被検体の変位に略一致する変位に前記被検体がある間に取得された核磁気共鳴信号である感度データから生成された前記複数の受信コイルの感度分布を用い、予め定められた画像処理を行うことを特徴とする磁気共鳴イメージング装置を提供する。
【0013】
また、被検体に高周波パルスと傾斜磁場パルスとを印加するパルス印加手段と、被検体から発生する核磁気共鳴信号を検出する、互いに空間的に異なる検出感度分布を有する複数の受信コイルを備える信号検出手段と、前記パルス印加手段および前記信号検出手段の動作を制御し、撮影を実行する計測制御手段と、前記信号検出手段で検出した核磁気共鳴信号から画像を再構成し、表示装置に表示する表示画像を生成する画像処理手段と、を備える磁気共鳴イメージング装置における磁気共鳴イメージング方法であって、所定の期間毎に被検体の変位を検出する変位検出ステップと、前記変位が検出される毎に前記検出した変位に応じて撮影領域の位置を変更する撮影位置変更ステップと、前記被検体が前記検出した変位にある間に、前記変更後の撮影領域の本撮影を実行する撮影ステップと、前記本撮影で検出された核磁気共鳴信号から画像を再構成する画像再構成ステップと、前記再構成された画像に、前記本撮影実行時の被検体の変位に略一致する変位に前記被検体がある間に取得された核磁気共鳴信号から生成された前記複数の受信コイルの感度分布を用い、予め定められた画像処理を行う画像処理ステップと、を備えることを特徴とする磁気共鳴イメージング方法を提供する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、撮影対象部位によらず、本撮影のデータに適用する感度マップを精度よく取得し、高い品質の画像を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】第一の実施形態のMRI装置のブロック図である。
【図2】(a)は、従来のマルチコイルを用いる撮影シーケンスを説明するための説明図であり、(b)は、感度マップ取得領域を、(c)〜(e)は、撮影領域と撮影スライスの位置とを、それぞれ説明するための説明図である。
【図3】(a)は、従来のマルチコイルを用いる撮影シーケンスであってナビゲータエコーを用いる撮影シーケンスを説明するための説明図であり、(b)は、感度マップ取得領域を、(c)〜(e)は、撮影領域と撮影スライスの位置とを、それぞれ説明するための説明図である。
【図4】(a)は、第一の実施形態の演算部の機能ブロック図であり、(b)は、第二の実施形態の演算部の機能ブロック図である。
【図5】(a)は、第一の実施形態の撮影シーケンスを説明するための説明図であり、(b)〜(d)は、撮影領域と感度マップと撮影スライスの位置とを、それぞれ説明するための説明図である。
【図6】(a)は、第一の実施形態の変形例の撮影シーケンスを説明するための説明図であり、(b)、(c)は、撮影領域と感度マップと撮影スライスの位置とを、それぞれ説明するための説明図である。
【図7】第二の実施形態の感度データ取得タイミングと感度マップとを説明するための説明図である。
【図8】第二の実施形態の撮影シーケンスを説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
<<第一の実施形態>>
以下、本発明を適用する第一の実施形態について説明する。以下、本発明の実施形態を説明するための全図において、同一機能を有するものは同一符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
【0017】
まず、本実施形態のMRI装置について説明する。図1は、本実施形態のMRI装置100のブロック図である。図1に示すMRI装置は、典型的なMRI装置であって、磁石102と、傾斜磁場コイル103と、RFコイル104と、RFプローブ105と、傾斜磁場電源106と、RF送信部107と、信号検出部108と、演算部109と、シーケンサ110と、表示部111と、操作部112と、記憶部113と、を備える。
【0018】
磁石102は、被検体101の周囲に静磁場を発生する。被検体101は、ベッド114に載置され、この静磁場空間に配置される。
【0019】
傾斜磁場コイル103は、X、Y、Zの3方向の傾斜磁場コイルで構成され、傾斜磁場電源106からの信号に応じて、磁石102が形成する静磁場空間に、各方向の傾斜磁場を発生する。
【0020】
RFコイル104は、送受信兼用コイルであり、RF送信部107からの信号に応じて高周波磁場を発生し、被検体101へ照射する送信コイルとして動作するとともに、被検体101が発生する核磁気共鳴信号(NMR信号;エコー信号)を受信する受信コイルとして動作する。受信したエコー信号は、信号検出部108で検出され、演算部109に送られる。本実施形態では、RFコイル104として、バードケージコイル等のシングルエレメントコイル(シングルコイル)を用いる。なお、RFコイル104を受信コイルとして動作させるのは、後述の感度マップ作成用の感度データを取得する際のシングルコイルとして用いる場合である。
【0021】
RFプローブ105は、被検体101が発生する核磁気共鳴信号(NMR信号;エコー信号)を受信する。受信したエコー信号は、信号検出部108で検出され、演算部109に送られる。本実施形態では、RFプローブ105に、複数のRFコイルからなるマルチエレメントコイル(マルチコイル)を用いる。なお、RFコイル104とRFプローブ105のいずれを受信コイルとして用いるかは、シーケンサ110を介して演算部109からの指示により決定される。
【0022】
演算部109は、MRI装置100全体の動作を制御する。演算部109には、シーケンサ110、表示部111、操作部112、記憶部114が接続される。演算部109は、予め記憶部114などに保持される制御のタイムチャートと操作部112を介して入力されるユーザからの指示(撮影条件)とに従って、シーケンサ110に、各部の動作を制御させ、計測を実行する。なお、制御のタイムチャートは、一般にパルスシーケンスと呼ばれる。また、演算部109は、信号検出部108から送られたエコー信号に対し、信号処理を施し、画像を再構成する。得られた画像は、表示部111に表示されるとともに、記憶部113に記憶される。
【0023】
シーケンサ110は、演算部109からの指示に従って、傾斜磁場電源106、RF送信部107、および信号検出部108を動作させる。
【0024】
現在、MRIの撮影対象は、臨床で普及しているものとしては、被検体の主たる構成物質であるプロトンである。MRI装置100は、プロトン密度の空間分布や、励起状態の緩和現象の空間分布を画像化することで、人体頭部、腹部、四肢等の形態または、機能を2元もしくは3元的に撮影する。
【0025】
また、MRI装置100による撮影手順は以下のとおりである。まず、パルスシーケンスに従ってRF送信部107を駆動し、RFコイル104から被検体101に高周波磁場パルス(RFパルス)を照射する。これにより被検体101から発生するエコー信号に、傾斜磁場により異なる位相エンコードを与える。位相エンコードの数は通常1枚の画像あたり128、256、512等の値が選ばれる。各エコー信号を、通常128、256、512、1024個のサンプリングデータからなる時系列信号として検出する。これらのデータを2次元フーリエ変換して1のMR画像を作成する。
【0026】
本実施形態では、上述のようにRFプローブ105として、マルチコイルを用いる。マルチコイルを用いる撮影では、マルチコイルの感度分布(感度マップ)を用い、再構成画像にシェーディング補正やPARALLEL再構成処理を行い、最終的に表示部111に表示する表示画像を生成する。以下、感度分布を用いて再構成画像に対して行う画像処理を、一括して補正と呼ぶ。
【0027】
本実施形態の撮影シーケンスの説明に先立ち、従来の、マルチコイルを用いた撮影の撮影シーケンスを、図2を用いて説明する。図2(a)は、撮影の流れ(撮影シーケンス)を説明するための図である。ここでは、心臓のマルチスライスシネ撮影を例にあげて説明する。すなわち、撮影対象部位を心臓270とし、マルチスライス撮影で3次元領域を撮影する。このとき、複数回の息止めにおいて、息止め毎に1スライス分の撮影を行う。
【0028】
本図に示すように、従来のマルチコイルを用いる心臓のマルチスライスシネ撮影では、予め全撮影対象領域の感度マップを求め、それを用いて、本撮影で得た再構成画像を補正する。
【0029】
まず、本撮影に先立ち、感度マップ作成のための感度データを取得する感度マップ撮影(Map)200を行う。図2(b)は、感度マップ撮影(Map)200により得られる感度マップ201、感度マップ取得領域250、および撮影対象部位である心臓120を説明するための図である。感度マップ撮影(Map)200は、同計測条件でシングルコイルと、マルチコイルとをそれぞれ受信コイルとし、感度マップ取得領域250を撮影する。そして、感度マップ201は、それぞれのエコー信号を再構成して得た位相画像から作成される。なお、感度マップ取得領域250は、作成した感度マップ201をその後の全本撮影で得た再構成画像に適用するため、一般に、全撮影領域を含む3次元領域である。
【0030】
なお、感度マップ撮影200の直前に調息240を行い、感度マップ撮影200間は、息止めを行うことが望ましい。息止め間は、呼吸動による変位、変形がないため、これにより、感度マップ撮影200間に、シングルコイルとマルチコイルとの相対位置の変動を避けることができる。
【0031】
感度マップ201を作成後、調息240を行い、息止め毎に本撮影を行う。本図に示すように、各息止め210、220、230間に、それぞれ、本撮影211、221、231を行う。図2(c)〜(e)は、それぞれ、全撮影領域260と、本撮影211、221、231での撮影スライスを説明するための図である。図中、RLは被検体の左右方向、HFは頭足(体軸)方向を示す。以下、本明細書において同様とする。
【0032】
これらの図に示すように、各本撮影211、221、231で、それぞれ、第一スライス216、第二スライス226、第三スライス236のように、1スライス分ずつ撮影を行うことを繰り返し、全撮影領域260を撮影する。
【0033】
各本撮影211、221、231で得られた第一スライス216、第二スライス226、第三スライス236の再構成画像それぞれに対し、感度マップ201を適用し、補正を行い、表示画像を生成する。
【0034】
ここで、図2(c)〜(e)に示すように、呼吸動があると、MRI装置100の座標系に対する撮影対象部位120の位置が変位し、所望のスライスを撮像できないことがある。これは、撮像スライスは、MRI装置100の座標系に基づいて決定されるためである。これを回避するため、本撮影毎に、ナビゲータエコーを取得し、撮影位置を調整する手法がある。
【0035】
ナビゲータエコーにより撮影位置を調整する手法を図3を用いて説明する。図2同様、心臓120のマルチスライスシネ撮影を例にあげて説明する。図3(a)は、この場合の撮影の流れ(撮影シーケンス)を説明するための図である。
【0036】
まず、本撮影に先立ち、感度マップ作成のための感度データを取得する感度マップ撮影(Map)300を行う。感度マップ撮影(Map)300は、図2に示す例と同様である。図3(b)は、感度マップ撮影(Map)300により得られる感度マップ301、感度マップ取得領域350、および撮影対象部位(心臓)120を説明するための図である。
【0037】
感度マップ301を作成後、調息340毎に息止めを行い、息止め間にナビゲータエコーの取得および本撮影を行い、再構成画像を得る。
【0038】
1回目の息止め310時は、まず、ナビゲータエコー312を取得する。取得したナビゲータエコー312から、息止め310時における撮影対象部位120の変動量(変位)を検出(317)する。検出した変位分、励起位置を変更(318)するよう制御しながら、本撮影311を行い、図3(c)に示すように、第一スライス316の再構成画像を得る。
【0039】
次に、調息340を行い、2回目の息止め320の間に、ナビゲータエコー322を取得し、本撮影321を行う。本撮影321は、本撮影311同様、ナビゲータエコー322から変位を検出(327)し、その分、励起位置を変更(328)するよう制御しながら行う。これにより、図3(d)に示すように、第二スライス326の再構成画像を得る。
【0040】
そして、調息340を行い、3回目の息止め330の間に、ナビゲータエコー332を取得し、本撮影331を行う。本撮影331は、本撮影311、321同様、ナビゲータエコー332から変位を検出し(337)、その分、励起位置を変更する(328)よう制御しながら行う。これにより、図3(e)に示すように、第三スライス336の再構成画像を得る。
【0041】
このように、マルチスライス撮影において、各本撮影の直前にナビゲータエコーを取得し、励起位置を調整することにより、呼吸動がある場合であっても、撮影対象部位を正確に撮影できる。しかし、感度マップ300取得時と、本撮影311、321、331時との、マルチコイル(RFプローブ105)の位置の不整合、撮影対象部位120の位置および形状の不整合は、依然解消されない。
【0042】
そこで、本実施形態では、これらの不整合を回避するため、ナビゲータエコーの取得に加え、感度マップ撮影を、各本撮影の直前、すなわち、体動状態が同じである間に行う。体動状態の変動が呼吸動によるものである場合、本実施形態では、1回の息止め期間内に、ナビゲータエコーの取得、感度マップ撮影、および本撮影を行う。
【0043】
これを実現するため、本実施形態の演算部109は、図4(a)に示すように、計測制御部710と、変位検出部720と、励起位置変更部730と、感度マップ生成部740と、画像処理部750と、を備える。演算部109は、CPUとメモリと記憶装置とを備え、記憶装置に格納されたプログラムをCPUがメモリにロードして実行することにより、これらの機能を実現する。
【0044】
計測制御部710は、予め保持するパルスシーケンスと入力された撮影条件とに従ってMRI装置100の各部の動作を制御し、所定の撮影を実行する。本実施形態では、ナビゲータエコーの取得、感度マップ作成用のデータ(感度データ)を取得する感度マップ撮影、本撮影(画像を再構成可能なエコー信号の取得)を実行する。
【0045】
ナビゲータエコーは、位相エンコードをかけずにリードアウト傾斜磁場のみの存在下で取得する。取得したエコーをフーリエ変換したものは、撮影領域(FOV)のリードアウト軸への投影像となり、この投影像のエッジ(信号強度が急変する部位)から被検体の変位を得ることができる。変位検出部720は、取得したナビゲータエコーから、本手法を用い、撮影対象部位の変位を得る。なお、変位は、撮影領域(FOV)が保持する位置情報に基づき、静磁場中心からの変位、すなわち、静磁場中心を原点とするMRI装置100の座標系上での、各軸方向の座標値として算出(検出)される。
【0046】
励起位置変更部730は、MRI装置100の座標系における撮影スライス位置を変更するため、変位検出部720で検出した撮影対象部位の変位分、その後の撮影時の励起位置を変更する。励起位置は、RF送信部107からの信号に応じて発生する高周波磁場の照射周波数を変更することにより変更される。従って、励起位置変更部730は、変更後の位置を励起する照射周波数を以後の撮影に用いる撮影パラメータとする。
【0047】
なお、撮影対象部位の変動、変形が呼吸動によるものである場合、本実施形態では、各息止め直後、感度マップ撮影および本撮影前にナビゲータエコーを取得し、励起位置を変更する。ナビゲータエコー取得後に行われる、感度マップ撮影と本撮影とは、変更された励起位置で実行される。
【0048】
本実施形態の感度マップ撮影では、予め定められたパルスシーケンスを用い、同撮影条件でシングルコイル(RFコイル104)およびマルチコイル(RFプローブ105)をそれぞれ受信コイルとした撮影を行い、感度データを取得する。感度データを取得する領域は、変更された励起位置により定まる領域とする。本実施形態では、生成される感度マップは、後続の本撮影で計測する領域にのみ適用するため、感度データは、当該領域を包含する領域のみから取得すればよい。
【0049】
感度マップ生成部740は、取得した感度データから、感度マップを生成する。感度マップは、RFプローブ105(マルチコイル)を受信コイルとして取得したエコー信号を再構成して得た位相画像の各画素値を、RFコイル104(シングルコイル)を受信コイルとして動作させて取得したエコー信号を再構成して得た位相画像の各画素値で除算することにより生成する。
【0050】
画像処理部750は、本撮影により得られたエコー信号から画像を再構成する。そして、同じ体動状態で取得した感度データから作成された感度マップを用い、再構成画像を補正し、表示画像を生成する。
【0051】
以下、本実施形態の撮影時の演算部109の各部の動作を具体例で説明する。図5(a)は、本実施形態の計測制御部710により実行される各撮影の流れ(撮影シーケンス)を説明するための説明図であり、(b)〜(d)は、本実施形態の撮影シーケンス内で実行される本撮影で得られる再構成画像を説明するための図である。なお、本実施形態の撮影シーケンスの説明においても、上記図2、図3の撮影シーケンスと同様に、心臓のマルチスライスシネ撮影を例にあげて説明する。すなわち、撮影対象部位120は心臓であり、撮影対象部位の変動、変形は呼吸動によるものであり、1回の息止め期間内に1スライス分の撮影を行う。
【0052】
まず、調息440後の1回目の息止め410間に、まず、計測制御部710は、ナビゲータエコー412を取得する。ここで、変位検出部720は、取得したナビゲータエコー412から変位を算出する(417)。また、励起位置変更部730は、算出された変位に基づき、励起位置を変更し(418)、撮影パラメータを更新する。
【0053】
次に、計測制御部710は、励起位置変更部730により変更された励起位置で感度マップ撮影413を行い、感度データを取得する。これにより、第一スライス416の感度データを得る。また、計測制御部710は、励起位置変更部730により変更された励起位置の本撮影411を行う。これにより、第一スライス416のエコー信号を得る。ここでは、感度マップ撮影413で得た感度データから生成する感度マップ414は、第一スライス416の画像にのみ適用するため、第一スライス416の範囲のみ感度データを取得する。
【0054】
次に、調息440後、2回目の息止め420間も、上記同様、ナビゲータエコー422を取得し、算出された変位(427)に基づいて定められた励起位置に変更(428)する。そして、変更された励起位置で、第二スライス426の感度データを取得する感度マップ撮影423と本撮影421とを行う。
【0055】
そして、調息440後、3回目の息止め430間も、上記同様、ナビゲータエコー432を取得し、算出された変位(437)に基づいて定められた励起位置に変更(438)する。そして変更された励起位置で、第三スライス436の感度データを取得する感度マップ撮影433と本撮影431とを行う。
【0056】
なお、感度マップ生成部740は、感度マップ撮影413、423、433実行後、所定のタイミングで、取得した感度データから感度マップ414、424、434を生成する。また、画像処理部750は、本撮影411、421、431実行後、所定のタイミングで、各撮影により得たエコー信号から、それぞれ第一スライス416の画像(第一画像)、第二スライス426の画像(第二画像)、第三スライス436の画像(第三画像)を再構成する。そして、画像処理部750は、再構成された第一画像、第二画像、第三画像を、それぞれ、感度マップ414、424、434で補正し、表示画像を生成する。
【0057】
例えば、感度マップ生成部740は、各感度マップ撮影413、423、433実行直後にそれぞれ感度マップ414、424、434を生成し、画像処理部750は、各本撮影411、421、431実行直後に画像をそれぞれ再構成する。しかし、このタイミングに限られない。
【0058】
このように、本実施形態によれば、心臓のマルチスライスシネ撮影において、息止め毎にナビゲーションエコーにより変位を検出して励起位置を調整しているため、息止め毎の撮影スライスの不整合は発生しない。また、1回の息止め間に、感度マップ撮影と本撮影とを実行しているため、シングルコイル、マルチコイル、撮影対象部位の位置、形状の不整合も発生しない。
【0059】
以上説明したように、本実施形態によれば、息止め間、すなわち、被検体の形状が一定の間に、ナビゲータエコーの取得、感度マップ撮影および本撮影を行う。また、感度マップ撮影および本撮影は、ナビゲータエコーにより検出された変位に従って変更された励起位置で行う。従って、呼吸動の影響を受けない期間に、正確な撮影スライスのエコー信号と、補正に必要十分な感度データとを得ることができる。
【0060】
従って、本実施形態によれば、1回の息止め間に取得する再構成画像に対し、高精度で最適な感度マップを用いてシェーディング補正およびPARALLEL展開といった画像処理を施すことができる。従って、感度マップの不整合による画質の低下を防ぐことができ、高品質の画像を得ることができる。
【0061】
また、息止め毎の、撮影対象部位の位置変動による撮影スライス位置の不整合は、ナビゲータエコーによる変位の検出および励起位置の調整で回避している。従って、マルチスライス撮影においても、画質が低下しない。
【0062】
以上より、本実施形態によれば、撮影対象が体動の影響の大きい部位であっても、マルチスライス撮影であっても、高品質の画像を得ることができる。
【0063】
なお、上記実施形態では、各息止め期間410、420、430において、本撮影411、421、431として、それぞれ1スライスのみ撮影する場合を例にあげて説明しているが、息止め可能な時間(通常15−20sec程度)内に取得可能であれば、複数スライス、または、3Dスラブデータを取得するよう構成してもよい。
【0064】
この場合の撮影シーケンスを図6に示す。ここでは、撮影領域全体を、2スラブに分割して計測する例である。撮影シーケンスの流れは、上記実施形態と基本的に同様である。
【0065】
すなわち、まず、第一回目の息止め510中に、計測制御部710は、ナビゲータエコー511の取得、感度マップ撮影513、本撮影511を行う。このとき、変位検出部720は、ナビゲータエコー511から、撮影対象部位の変位を検出(517)する。そして、励起位置変更部730は、検出された変位に応じて励起位置を変更(518)する。計測制御部710は、変更後の励起位置で感度マップ撮影513および本撮影511を実行する。
【0066】
なお、感度マップ撮影513では、後続の本撮影511で撮影する領域に合致する領域分、感度データを取得する。ここでは、後続の本撮影では、第一スラブ516分、撮影を行うため、感度データも、第一スラブ516分取得する。本撮影511では、第一スラブ516に相当する領域分、1スライス毎(slice#1、slice#2、slice#3)に、複数スライス、撮影を実行する。
【0067】
そして、調息540を行い、第二回目の息止め520に入る。第二回目の息止め520中も、上記第一の息止め510同様、ナビゲータエコー521の取得、ナビゲータエコー521により検出された変位(527)に従って変更された励起位置(528)での感度マップ撮影523および本撮影521を行う。また、感度データは、第二スラブ526分取得し、本撮影521では、第二スラブ526分、1スライス毎(slice#4、slice#5、slice#6)に複数スライス、撮影を実行する。
【0068】
なお、本変形例においても、感度マップ生成部740は、各感度マップ撮影512、522後、所定のタイミングで感度マップ514、524を生成する。また、画像処理部750は、本撮影511、521において各スライス分のエコー信号取得後、所定のタイミングで各スライスの再構成画像を生成する。また、画像処理部750は、生成された各再構成画像を、同息止め期間内に取得した感度データから生成された各感度マップ514、524で、それぞれ補正する。
【0069】
なお、本変形例によれば、感度マップを作成するために取得する感度データが2Dのシングルスライスから3Dスラブに増える。従って、その分、データ取得時間は長くなる。しかし、感度マップ撮影には、空間分解能が低く、かつ、TRの短いシーケンスを用いるため、本撮影とともに息止め期間内に十分実行可能である。
【0070】
例えば、感度マップ撮影における感度データの取得条件の典型的な例は、面内マトリックスが32×32で、TRが3ms程度である。1スラブ内のスライス数を16とすると、1スラブデータあたりの取得時間は、32×16×3=1.5sec程度である。
【0071】
なお、図6では、1スラブの感度データ、および、本撮像データを1回の息止めで取り終える例を示しているが、息止め可能な時間、空間分解能など様々な要因でスラブ内を更に複数の計測に分割するなど、計測パターンはこの限りではない。
【0072】
<<第二の実施形態>>
次に、本発明を適用する第二の実施形態について説明する。第一の実施形態は、感度マップ撮影と本撮影とを、体動状態が一定に保たれている間に実行し、感度データと本撮影データとを取得する。これにより、感度マップ撮影時および本撮影時の、撮影対象部位の位置の不整合およびマルチコイル位置の不整合を防ぐ。本実施形態では、事前に複数の体動状態で感度マップを取得し、本撮影毎に、最も不整合の少ない感度マップを採用し、それを用いて補正等を行う。
【0073】
以下、本実施形態について、第一の実施形態と異なる構成に主眼をおいて説明する。
【0074】
本実施形態のMRI装置100の構成は、基本的に第一の実施形態と同様である。本実施形態の演算部109は、図4(b)に示すように、計測制御部711と、変位検出部720と、励起位置変更部730と、感度マップ生成部740と、画像処理部751とを備える。そして、本実施形態の演算部109は、さらに、感度マップ保持部760を備える。
【0075】
計測制御部711は、第一の実施形態の計測制御部710と基本的に同様で、予め保持するパルスシーケンスと入力された撮影条件とに従ってMRI装置100の各部の動作を制御し、所定の撮影を実行する。本実施形態では、ナビゲータエコーの取得、感度マップ作成用のデータ(感度データ)を取得する感度マップ撮影、本撮影を実行する。ナビゲータエコーの取得、本撮影は、第一の実施形態と同様である。
【0076】
本実施形態の計測制御部711は、ナビゲータエコーの取得および本撮影に先立ち、感度マップ撮影を実行する。そして、この感度マップ撮影において、体動状態に応じた複数の感度データを取得する。例えば、撮影対象部位が周期的な体動により変形および/または変動する場合、各時相(フェーズ)の感度データを、少なくとも1周期分、取得する。
【0077】
なお、計測制御部711は、体動状態毎の感度マップ撮影実行直前に、ナビゲータエコーを取得する。以下、予め定めた体動状態毎に、ナビゲータエコーと感度データとを取得する計測をマルチフェーズ感度マップ撮影と呼ぶ。
【0078】
計測制御部711は、マルチフェーズ感度マップ撮影として、例えば、撮影対象部位が呼吸により変動する部位である場合、1呼吸周期を、複数に分割し、少なくとも1呼吸周期分、それぞれのタイミングで、感度データを取得する。呼吸波形(変位)は、圧力センサなどを被検体に装着し、モニタする。計測制御部711は、圧力センサからの入力に基づき、マルチフェーズ感度マップ撮影を行う。
【0079】
変位検出部720は、取得したナビゲータエコーから、その時点の変位を算出する。また、感度マップ生成部740は、取得した各感度データから感度マップを生成する。そして、感度マップ保持部760は、体動状態毎に、検出した変位と感度マップとを対応づけて記憶部113に感度マップデータとして記憶する。
【0080】
図7に、心臓のマルチスライスシネ撮影において、1呼吸周期を5つ(5フェーズ)に分割し、各フェーズプラス1回の6回、感度データを取得する場合を例示する。なお、呼吸動による撮影対象部位である心臓の変位(呼吸変位)を690で示す。
【0081】
本図に示すように、計測制御部711は、5分割したそれぞれのタイミング(t1、t2、t3、t4、t5、t6)で、各フェーズのナビゲータエコーと感度データとを取得する。そして、変位検出部720はそれぞれのナビゲータエコーからそのフェーズの変位を算出し、感度マップ作成部は、それぞれの感度データから、各フェーズの感度マップ(第一フェーズの感度マップ(第一の感度マップ)601と、第二の感度マップ602と、第三の感度マップ603と、第四の感度マップ605と、第五の感度マップ606と、第一フェーズの感度マップ(第六の感度マップ)606)を生成する。そして、感度マップ保持部760は、フェーズ毎に、変位と感度マップとを対応づけて記憶部113に感度マップデータとして記憶する。
【0082】
なお、1呼吸周期で取得する感度マップの数、すなわち、分割するフェーズ数に制約はないが、呼吸による変動が感度マップに反映されるよう、感度マップの空間分解能に応じて決定する。一般に呼吸による変位は、20mm程度である。例えば、300mmの視野(FOV)を64マトリックスで取得する場合、空間分解能は4.7mmである。従って、変位が20mm程度の場合、5フェーズ以上の感度マップを取得すればよい。
【0083】
本実施形態の画像処理部751は、本撮影の直前に変位検出部720が検出した変位に最も近い変位に対応づけて保持される感度マップを感度マップデータから選択し、その感度マップを用いて再構成画像を補正する。すなわち、本撮影時の呼吸レベルに最も近い呼吸レベルで取得した感度データで作成された感度マップを用いて再構成画像を補正する。
【0084】
以下、本実施形態の撮影時の演算部109の各部の動作を説明する。図8は、本実施形態の撮影シーケンスを説明するための説明図である。ここでも、心臓のマルチスライスシネ撮影を例にあげて説明する。すなわち、撮影対象部位は、呼吸動によって位置が変動する心臓部とする。
【0085】
まず、計測制御部711は、マルチフェーズ感度マップ撮影600を行う。マルチフェーズ感度マップ撮影600では、上述したように、予め定めたフェーズ毎に、ナビゲータエコーと感度データとを取得する。ここでは、1呼吸周期を5フェーズに分割し、6(5+1)回、ナビゲータエコーと感度データとを取得する。
【0086】
なお、変位検出部720は、取得したナビゲータエコーから、それぞれの変位を検出し、感度マップ生成部740は、取得した感度データからそれぞれ第一の感度マップ601と、第二の感度マップ602と、第三の感度マップ603と、第四の感度マップ605と、第五の感度マップ606と、第六の感度マップ606を生成する。そして、感度マップ保持部760は、フェーズ毎に変位と感度マップとを対応づけて保持する。
【0087】
以後は、調息640ごとに、息止めを行い、ナビゲータエコーの取得および本撮影を行う。
【0088】
調息640後の1回目の息止め610間に、まず、計測制御部711は、ナビゲータエコー612を取得する。ここで、変位検出部720は、取得したナビゲータエコー612から変位を検出する(617)。また、励起位置変更部730は、検出された変位に基づき、励起位置を変更し(618)、撮影パラメータを更新する。次に、計測制御部711は、励起位置変更部730により変更された励起位置で本撮影を実行し、第一スライスのエコー信号を得る。
【0089】
次に、調息640後、2回目の息止め620間も、上記同様、ナビゲータエコー622を取得し、検出された変位(627)に基づいて変更された励起位置(628)で本撮影621を実行し、第二スライスのエコー信号を得る。
【0090】
画像処理部751は、本撮影611により得たエコーから第一スライスの画像(第一画像)を再構成する。そして、画像処理部751は、ナビゲータエコー612から検出される変位617に最も近い変位に対応づけて保持される感度マップを、感度マップデータから選択し、当該感度マップを用い、第一画像を補正し、表示画像を生成する。同様に、本撮影621により得たエコーから第二スライスの画像(第二画像)をそれぞれ再構成する。そして、ナビゲータエコー622から検出される変位627に最も近い変位に対応づけて保持される感度マップを、感度マップデータから選択し、当該感度マップを用い、第二画像を補正し、表示画像を生成する。
【0091】
以上説明したように、本実施形態によれば、事前に呼吸変位に応じたマルチフェーズの感度データを取得し、呼吸レベル毎の感度マップを生成する。そして、本撮影実行時の呼吸レベルに最も近い呼吸レベルで取得した感度マップを用い、再構成画像にシェーディング補正やPARALLEL展開といった画像処理を施す。
【0092】
従って、本実施形態によれば、本撮影時と略同じ呼吸レベルで取得した感度マップを補正に用いるため、感度マップ撮影時と本撮影時との間に、マルチコイル位置と撮影対象部位の位置および形状との不整合を抑えることができる。また、各補正に用いる感度マップは、本撮影時と略同じマルチコイル位置で取得したものとなる。すなわち、感度マップ撮影時と本撮影時との間のマルチコイル位置そのものの不整合も抑えることができる。従って、再構成画像に対し高精度な感度マップを得ることができる。
【0093】
従って、本実施形態によれば、1回の息止め間に取得する再構成画像を、最適な感度マップでシェーディング補正およびPARALLEL展開を行うことができる。従って、感度マップの不整合による画質の低下を防ぐことができ、高品質の画像を得ることができる。
【0094】
また、第一の実施形態同様、息止め毎の、撮影対象部位の位置変動による撮影スライス位置の不整合は、ナビゲータエコーによる変位の検出および励起位置の調整で回避している。従って、マルチスライス撮影においても、画質が低下しない。
【0095】
以上より、本実施形態によれば、第一の実施形態同様、撮影対象が体動の影響の大きい部位であっても、マルチスライス撮影であっても、高品質の画像を得ることができる。
【0096】
なお、本実施形態においても第一の実施形態同様、本撮影611、621内では、複数スライスの撮影を行うよう構成してもよい。
【0097】
なお、上記各実施形態では、感度データから感度マップの作成は、感度データ取得後、画像処理前であれば、どのタイミングで行ってもよい。
【0098】
また、上記各実施形態では、撮影対象部位として、呼吸動により変動、変形する心臓部を例にあげて説明しているが、撮影対象部位はこれに限られない。呼吸動、拍動などの体動により、被検体の位置、形状が周期的に変化する部位であって、所定期間、位置の不整合が問題にならない程度の動きに抑制可能な部位であればよい。さらに、本実施形態では、撮影対象部位は、非周期的に、被検体の位置、形状が変化する部位であってもよい。もちろん、撮影対象部位は、体動による変化のない部位であってもよい。
【0099】
また、上記各実施形態では、ナビゲータエコーから、MRI装置100の座標系での位置(座標値)を算出し、変位(変動量)としているが、変位(変動量)の算出手法はこれに限られない。例えば、最初に取得するナビゲータエコーを基準エコーとし、以降の各ナビゲータエコーを比較エコーとする。そして、基準エコーと比較エコーとの間で相互相関を計算し、変位を算出するよう構成してもよい。
【符号の説明】
【0100】
100:MRI装置、101:被検体、102:磁石、103:傾斜磁場コイル、104:RFコイル、105:RFプローブ、106:傾斜磁場電源、107:RF送信部、108:信号検出部、109:演算部、110:計測制御部、111:表示部、112:操作部、113:記憶部、114:ベッド、120:撮影対象部位、200:感度マップ撮影、201:感度マップ、210:1回目の息止め、211:1回目の本撮影、216:第一スライス、220:2回目の息止め、221:2回目の本撮影、226:第二スライス、230:3回目の息止め、231:3回目の本撮影、236:第三スライス、240:調息、250:感度マップ取得領域、260:全撮影領域、270:撮影対象部位、300:感度マップ撮影、310:息止め、311:本撮影、312:ナビゲータエコー、316:第一スライス、317:変動量検出、318:励起位置変更、320:息止め、321:本撮影、322:ナビゲータエコー、326:第二スライス、327:変動量検出、328:励起位置変更、330:息止め、331:本撮影、332:ナビゲータエコー、336:第三スライス、337:変動量検出、338:励起位置変更、340:調息、350:感度マップ取得領域、360:全撮影領域、410:息止め、411:本撮影、412:ナビゲータエコー、413:感度マップ撮影、416:第一スライス、417:変動量検出、418:励起位置変更、420:息止め、421:本撮影、422:ナビゲータエコー、423:感度マップ撮影、426:第二スライス、427:変動量検出、428:励起位置変更、430:息止め、431:本撮影、432:ナビゲータエコー、433:感度マップ撮影、436:第三スライス、437:変動量検出、438:励起位置変更、440:調息、460:全撮影領域、510:息止め、511:本撮影、512:ナビゲータエコー、513:感度マップ撮影、514:感度マップ、516:第一スラブ、517:変動量検出、518:励起位置変更、520:息止め、521:本撮影、522:ナビゲータエコー、523:感度マップ撮影、524:感度マップ、526:第二スラブ、527:変動量検出、528:励起位置変更、540:調息、560:全撮影領域、600:マルチフェーズ感度マップ撮影、601:第一感度マップ、602:第二感度マップ、603:第三感度マップ、604:第四感度マップ、605:第五感度マップ、606:第六感度マップ、610:息止め、611:本撮影、612:ナビゲータエコー、617:変動量算出、618:励起位置算出、620:息止め、621:本撮影、622:ナビゲータエコー、627:変動量算出、628:励起位置変更、640:調息、690:呼吸変位、710:計測制御部、711:計測制御部、720:変位検出部、730:励起位置変更部、740:感度マップ生成部、750:画像処理部、751:画像処理部、760:感度マップ保持部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体に高周波パルスと傾斜磁場パルスとを印加するパルス印加手段と、被検体から発生する核磁気共鳴信号を検出する信号検出手段と、前記パルス印加手段および前記信号検出手段の動作を制御し、撮影を実行する計測制御手段と、前記信号検出手段で検出した核磁気共鳴信号から画像を再構成し、表示装置に表示する表示画像を生成する画像処理手段と、を備える磁気共鳴イメージング装置であって、
所定の期間毎に、前記被検体の変位を検出する変位検出手段と、
前記変位検出手段で検出した変位に応じて、予め設定された撮影領域の位置を変更する撮影位置変更手段と、を備え、
前記信号検出手段は、互いに空間的に異なる検出感度分布を有する複数の受信コイルを備え、
前記計測制御手段は、
前記被検体が前記変位検出手段で検出した変位にある間に、前記変更後の撮影領域の本撮影を実行し、
前記画像処理手段は、
前記本撮影で検出された核磁気共鳴信号から再構成された画像に、当該本撮影実行時の被検体の変位に略一致する変位に前記被検体がある間に取得された核磁気共鳴信号である感度データから生成された前記複数の受信コイルの感度分布を用い、予め定められた画像処理を行うこと
を特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
【請求項2】
請求項1記載の磁気共鳴イメージング装置であって、
前記感度データは、前記本撮影を実行する直前に、前記変更後の撮影領域を含む領域から取得すること
を特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
【請求項3】
請求項1記載の磁気共鳴イメージング装置であって、
前記感度分布は、前記変位検出手段が検出し得る被検体の変位毎に取得した感度データから予め作成され、当該感度データ取得時の前記被検体の変位毎に保持されること
を特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
【請求項4】
請求項1から3いずれか1項記載の磁気共鳴イメージング装置であって、
前記撮影領域は2次元領域であること
を特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
【請求項5】
請求項1から3いずれか1項記載の磁気共鳴イメージング装置であって、
前記撮影領域は3次元領域であること
を特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
【請求項6】
請求項1から5いずれか1項記載の磁気共鳴イメージング装置であって、
前記変位検出手段は、被検体の息止め毎に前記変位を検出すること
を特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
【請求項7】
請求項1から6いずれか1項記載の磁気共鳴イメージング装置であって、
前記変位検出手段は、ナビゲータエコーを取得することにより、前記被検体の変位を検出すること
を特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
【請求項8】
請求項1から7いずれか1項記載の磁気共鳴イメージング装置であって、
前記撮影位置変更手段は、前記パルス印加手段が印加する高周波パルスの照射周波数を変更し、前記撮影領域の位置を変更すること
を特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
【請求項9】
被検体に高周波パルスと傾斜磁場パルスとを印加するパルス印加手段と、被検体から発生する核磁気共鳴信号を検出する、互いに空間的に異なる検出感度分布を有する複数の受信コイルを備える信号検出手段と、前記パルス印加手段および前記信号検出手段の動作を制御し、撮影を実行する計測制御手段と、前記信号検出手段で検出した核磁気共鳴信号から画像を再構成し、表示装置に表示する表示画像を生成する画像処理手段と、を備える磁気共鳴イメージング装置における磁気共鳴イメージング方法であって、
所定の期間毎に被検体の変位を検出する変位検出ステップと、
前記変位が検出される毎に前記検出した変位に応じて撮影領域の位置を変更する撮影位置変更ステップと、
前記被検体が前記検出した変位にある間に、前記変更後の撮影領域の本撮影を実行する撮影ステップと、
前記本撮影で検出された核磁気共鳴信号から画像を再構成する画像再構成ステップと、
前記再構成された画像に、前記本撮影実行時の被検体の変位に略一致する変位に前記被検体がある間に取得された核磁気共鳴信号から生成された前記複数の受信コイルの感度分布を用い、予め定められた画像処理を行う画像処理ステップと、を備えること
を特徴とする磁気共鳴イメージング方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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