説明

磁気共鳴イメージング装置及びその制御装置

【課題】撮像シーケンスの実行可否を正確に判定する。
【解決手段】MRI装置の制御装置は、条件設定部と、判定部とを備える。条件設定部は、MRI装置で実行される撮像シーケンスの条件に基づいて、撮像シーケンスを設定する。判定部は、MRI装置の傾斜磁場コイルに供給される電流値を撮像シーケンスの条件に基づいて算出すると共に、傾斜磁場コイルとの間に相互誘導を生じる仮想コイルが存在するとの仮定の上で、傾斜磁場コイルと仮想コイルとの間の相互インダクタンスに基づいて、前記電流値を与えるように傾斜磁場コイルに印加されるべき電圧値を算出し、この電圧値に基づいて撮像シーケンスの実行可否を撮像シーケンスの実行前に判定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、磁気共鳴イメージングに関する。
【背景技術】
【0002】
MRIは、静磁場中に置かれた被検体の原子核スピンをラーモア周波数のRFパルスで磁気的に励起し、この励起に伴って発生するMR信号から画像を再構成する撮像法である。なお、上記MRIは磁気共鳴イメージング(Magnetic Resonance Imaging)の意味であり、RFパルスは高周波パルス(radio frequency pulse)の意味であり、MR信号は核磁気共鳴信号(nuclear magnetic resonance signal)の意味である。
【0003】
MRI装置の傾斜磁場発生システムは、被検体が置かれる撮像空間に傾斜磁場を印加することで、MR信号に空間的な位置情報を付加する傾斜磁場コイルを備える。この傾斜磁場コイルは、撮像中にパルス電流が繰り返して供給されることで大きく発熱する。傾斜磁場発生システムは、全チャンネル(X、Y、Zの各軸方向の各傾斜磁場コイル)に同時に最大電流を流し続けることが可能なものではなく、全体の電力上限値、各チャンネル毎の電力上限値等の様々な制約が存在する。
【0004】
そこで、特許文献1では、傾斜磁場コイルの残留熱量をアボートレベル以下に維持するために、撮像プロトコルの順番入替や、撮像停止時間の再設定を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−75753号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来技術では、傾斜磁場発生システムの電力的な使用限界を撮像シーケンスに応じて正確に予測することは困難であった。このため、傾斜磁場システムへの電流供給量がその使用限界値を確実に下回るように、即ち、実際の電流供給量と使用限界値との間に十分なマージンをとるように制御することで、傾斜磁場発生システムを安全に駆動していた。
【0007】
換言すれば、従来技術では、実際には傾斜磁場発生システムの使用限界まで余裕があるにも拘らず、より安全な条件で撮像していた場合もあった。傾斜磁場発生システムの使用限界までの余裕があった場合、本来、その余裕の分だけスライス枚数を増やす等の手段をとることで、より最適化した条件で撮像できたことになる。
【0008】
従って、より最適化した条件での撮像を行うためには、MRIの傾斜磁場発生システムの電気的負荷の観点から、設定された撮像シーケンスが実行可能か否かを撮像シーケンスの実行前に正確に判定することが望まれる。即ち、MRIの傾斜磁場発生システムの電気的負荷の観点から、撮像シーケンスの実行可否を正確に判定する技術が要望されていた。
【課題を解決するための手段】
【0009】
一実施形態では、MRI装置及びその制御装置は、条件設定部と、判定部とを備える。
条件設定部は、MRI装置で実行される撮像シーケンスの条件に基づいて、撮像シーケンスを設定する。
判定部は、MRI装置の傾斜磁場コイルに供給される電流値を撮像シーケンスの条件に基づいて算出すると共に、傾斜磁場コイルとの間に相互誘導を生じる仮想コイルが存在するとの仮定の上で、傾斜磁場コイルと仮想コイルとの間の相互インダクタンスに基づいて、前記電流値を与えるように傾斜磁場コイルに印加されるべき電圧値を算出し、前記電圧値に基づいて前記撮像シーケンスの実行可否を撮像シーケンスの実行前に判定する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本実施形態におけるMRI装置の全体構成を示すブロック図。
【図2】ガントリ内における温度センサの配置を示す模式的斜視図。
【図3】図1のコンピュータ58の機能ブロック図。
【図4】図1の傾斜磁場電源44の構成を示すブロック図。
【図5】撮像シーケンスの実行可否を判定する演算において用いられる傾斜磁場発生システムの等価回路モデルの一例を示す回路図。
【図6】傾斜磁場コイルのインピーダンスZの実部Re{Z}の周波数特性の測定値を模式的に表したグラフ。
【図7】傾斜磁場コイルのインピーダンスZの虚部Im{Z}を角周波数ωで割ったIm{Z}/ωの周波数特性の測定値を模式的に表したグラフ。
【図8】位相エンコード及び周波数エンコードのマトリクス数が256×256の場合に、k空間に配列されるMR信号のRAWデータの一例を示す模式図。
【図9】EPIにおける読み出し方向の傾斜磁場波形の一例を示す模式図。
【図10】図4における出力電圧Vout(t)の波形について、(33)式に従うものと仮定した場合の一例を示す模式図。
【図11】図4における出力電圧Vout(t)の波形について、図5の等価回路モデルに基づいて計算した場合の一例を示す模式図。
【図12】第1〜第3の判定アルゴリズムの実行前における、撮像シーケンスの条件の設定用の表示画面の一例を示す模式図
【図13】第1〜第3の判定アルゴリズムの少なくとも1つにおいて撮像シーケンスが実行不能と判定された場合における、撮像シーケンスの条件の設定用の表示画面の一例を示す模式図。
【図14】本実施形態に係るMRI装置の動作の流れを示すフローチャート。
【図15】ラインフィルタを考慮した場合における、傾斜磁場電源及び傾斜磁場コイルのブロック図。
【図16】撮像シーケンスの実行可否を判定する演算において用いられる傾斜磁場発生システムの等価回路モデルの別の一例を示す回路図。
【図17】撮像シーケンスの実行可否を判定する演算において用いられる傾斜磁場発生システムの等価回路モデルの別の一例を示す回路図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、MRI装置及びその制御装置と、MRI装置の制御方法(MRI方法)の実施形態について、添付図面に基づいて説明する。なお、各図において同一要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0012】
図1は、本実施形態におけるMRI装置20の全体構成を示すブロック図である。図1に示すように、MRI装置20は、静磁場を形成する筒状の静磁場用磁石22と、静磁場用磁石22の内側において軸を同じにして設けられた筒状のシムコイル24と、傾斜磁場コイル26と、RFコイル28と、制御装置30と、被検体QQが乗せられる寝台32とを備える。
【0013】
ここでは一例として、装置座標系の互いに直交するX軸、Y軸、Z軸を以下のように定義する。まず、静磁場用磁石22及びシムコイル24は、それらの軸方向が鉛直方向に直交するように配置されているものとし、静磁場用磁石22及びシムコイル24の軸方向をZ軸方向とする。また、鉛直方向をY軸方向とし、寝台32は、その天板の載置用の面の法線方向がY軸方向となるように配置されているものとする。
【0014】
制御装置30は、例えば、静磁場電源40と、シムコイル電源42と、傾斜磁場電源44と、RF送信器46と、RF受信器48と、シーケンスコントローラ56と、コンピュータ58とを含む。
【0015】
傾斜磁場電源44は、X軸傾斜磁場電源44xと、Y軸傾斜磁場電源44yと、Z軸傾斜磁場電源44zとで構成されている。また、コンピュータ58は、演算装置60と、入力装置62と、表示装置64と、記憶装置66とで構成されている。
【0016】
静磁場用磁石22は、静磁場電源40に接続され、静磁場電源40から供給された電流により撮像空間に静磁場を形成させる。シムコイル24は、シムコイル電源42に接続され、シムコイル電源42から供給される電流により、この静磁場を均一化する。静磁場用磁石22は、超伝導コイルで構成される場合が多く、励磁の際に静磁場電源40に接続されて電流が供給されるが、一旦励磁された後は非接続状態とされるのが一般的である。なお、静磁場電源40を設けずに、静磁場用磁石22を永久磁石で構成してもよい。
【0017】
傾斜磁場コイル26は、X軸傾斜磁場コイル26xと、Y軸傾斜磁場コイル26yと、Z軸傾斜磁場コイル26zとを有し、静磁場用磁石22の内側で筒状に形成されている。X軸傾斜磁場コイル26x、Y軸傾斜磁場コイル26y、Z軸傾斜磁場コイル26zはそれぞれ、X軸傾斜磁場電源44x、Y軸傾斜磁場電源44y、Z軸傾斜磁場電源44zに接続される。
【0018】
X軸傾斜磁場電源44x、Y軸傾斜磁場電源44y、Z軸傾斜磁場電源44zからX軸傾斜磁場コイル26x、Y軸傾斜磁場コイル26y、Z軸傾斜磁場コイル26zにそれぞれ供給される電流により、X軸方向の傾斜磁場Gx、Y軸方向の傾斜磁場Gy、Z軸方向の傾斜磁場Gzが撮像空間にそれぞれ形成される。
【0019】
即ち、装置座標系の3軸方向の傾斜磁場Gx、Gy、Gzを合成して、論理軸としてのスライス選択方向傾斜磁場Gss、位相エンコード方向傾斜磁場Gpe、及び、読み出し方向(周波数エンコード方向)傾斜磁場Groの各方向を任意に設定できる。スライス選択方向、位相エンコード方向、及び、読み出し方向の各傾斜磁場は、静磁場に重畳される。
【0020】
RF送信器46は、シーケンスコントローラ56から入力される制御情報に基づいて、核磁気共鳴を起こすためのラーモア周波数のRFパルス(RF電流パルス)を生成し、これを送信用のRFコイル28に送信する。RFコイル28には、ガントリに内蔵されたRFパルスの送受信用の全身用コイルや、寝台32又は被検体QQの近傍に設けられるRFパルスの受信用の局所コイルなどがある。
【0021】
送信用のRFコイル28は、RF送信器46からRFパルスを受けて被検体QQに送信する。受信用のRFコイル28は、被検体QQの内部の原子核スピンがRFパルスによって励起されることで発生したMR信号(高周波信号)を受信し、このMR信号は、RF受信器48により検出される。
【0022】
RF受信器48は、検出したMR信号に前置増幅、中間周波変換、位相検波、低周波増幅、フィルタリングなどの各種の信号処理を施した後、A/D(analog to digital)変換を施すことで、デジタル化された複素データである生データ(raw data)を生成する。RF受信器48は、生成したMR信号の生データをシーケンスコントローラ56に入力する。
【0023】
演算装置60は、MRI装置20全体のシステム制御を行うものであり、これについては後述の図3を用いて説明する。
【0024】
シーケンスコントローラ56は、演算装置60の指令に従って、傾斜磁場電源44、RF送信器46及びRF受信器48を駆動させるために必要な制御情報を記憶する。ここでの制御情報とは、例えば、傾斜磁場電源44に印加すべきパルス電流の強度や印加時間、印加タイミング等の動作制御情報を記述したシーケンス情報である。
【0025】
シーケンスコントローラ56は、記憶した所定のシーケンスに従って傾斜磁場電源44、RF送信器46及びRF受信器48を駆動させることにより、X軸傾斜磁場Gx、Y軸傾斜磁場Gy、Z軸傾斜磁場Gz及びRFパルスを発生させる。また、シーケンスコントローラ56は、RF受信器48から入力されるMR信号の生データを受けて、これを演算装置60に入力する。
【0026】
図2は、ガントリ内における温度センサの配置を示す模式的斜視図である。ガントリ21には、図1に示した静磁場磁石22、シムコイル24、傾斜磁場コイル26がそれぞれ円筒状の形状で配置されている(図2では煩雑となるので図示せず)。
【0027】
傾斜磁場コイル26は、例えば、内側から順にX軸傾斜磁場コイル26xの層、Y軸傾斜磁場コイル26yの層、Z軸傾斜磁場コイル26zの層、不図示のクーリング層などの各層を円筒状にモールドして形成される多層構造である。なお、クーリング層は、冷却チューブの配設層、及び、シムトレイの配設層を有する構造である。
【0028】
そして、X軸傾斜磁場コイル26xの層内には、前記装置座標系のZ軸方向に等間隔で離間して温度センサ70x1、70x2、70x3が埋設される。また、Y軸傾斜磁場コイル26yの層内には、Z軸方向に等間隔で離間して温度センサ70y1、70y2、70y3が埋設される。また、Z軸傾斜磁場コイル26zの層内には、Z軸方向に等間隔で離間して温度センサ70z1、70z2、70z3温度センサ72mzが埋設される。
【0029】
温度センサ70x1〜70x3は、それらの各配設箇所においてX軸傾斜磁場コイル26xの温度を検出して、シーケンスコントローラ56を介して判定部102(後述の図3参照)に検出温度をそれぞれ入力(送信)する。同様に、温度センサ70y1〜70y3は、それらの各配設箇所においてY軸傾斜磁場コイル26yの温度をそれぞれ検出して判定部102に入力する。同様に、温度センサ70z1〜70z3は、それらの各配設箇所においてZ軸傾斜磁場コイル26zの温度をそれぞれ検出して判定部102に入力する。
【0030】
なお、上記温度センサ70x1〜70x3、70y1〜70y3、70z1〜70z3の配置は一例にすぎない。例えば、X、Y、Z軸傾斜磁場コイル26x、26y、26zの各層内には、4個以上の温度センサを埋設し、それらの最大温度を判定部102が計算に用いるようにしてもよいし、X、Y、Z軸傾斜磁場コイル26x、26y、26zの各層内に配設する温度センサは1つでも2つでもよい。
また、温度センサ70x1〜70x3、70y1〜70y3、70z1〜70z3としては、赤外線放射温度計を用いてもよいし、X、Y、Z軸傾斜磁場コイル26x、26y、26zの温度をほぼ直接的に計測するサーミスタ、熱電対などを用いてもよい。赤外線放射温度計は、計測対象とは非接触で温度を計測できるので、熱伝導によって計測対象と温度センサとが同温になることが望まれる計測方法とは違い、短時間で温度を計測できる利点がある。
【0031】
図3は、図1に示すコンピュータ58の機能ブロック図である。図3に示すように、コンピュータ58の演算装置60は、MPU(Micro Processor Unit)86と、システムバス88と、画像再構成部90と、画像データベース94と、画像処理部96と、表示制御部98と、条件設定部100と、判定部102とを備える。
【0032】
MPU86は、撮像シーケンスの条件の設定、撮像動作及び撮像後の画像表示において、システムバス88等の配線を介してMRI装置20全体のシステム制御を行う。また、MPU86は、表示制御部98を制御して、撮像シーケンスの条件の設定用画面情報を表示装置64に表示させる。
入力装置62は、撮像シーケンスの条件や画像処理条件を設定する機能をユーザに提供する。
【0033】
画像再構成部90は、内部にk空間データベース92を有する。画像再構成部90は、k空間データベース92に形成されたk空間において、シーケンスコントローラ56から入力されるMR信号の生データをk空間データとして配置する。画像再構成部90は、k空間データに2次元フーリエ変換などを含む画像再構成処理を施して、被検体QQの各スライスの画像データを生成する。画像再構成部90は、生成した画像データを画像データベース94に保存する。
【0034】
画像処理部96は、画像データベース94から画像データを取り込み、これに所定の画像処理を施し、画像処理後の画像データを表示用画像データとして記憶装置66に記憶させる。
【0035】
記憶装置66は、上記の表示用画像データに対し、その表示用画像データの生成に用いた撮像シーケンスの条件や被検体QQの情報(患者情報)等を付帯情報として付属させて記憶する。
【0036】
表示制御部98は、MPU86の制御に従って、撮像シーケンスの条件の設定用画面や、撮像により生成された画像データが示す画像を表示装置64に表示させる。
【0037】
条件設定部100は、入力装置62を介して入力された情報に基づいて、撮像シーケンスの条件を設定する。設定した撮像シーケンスが判定部102により実行不能と判定された場合、条件設定部100は、実行可能な撮像シーケンスとするために、撮像シーケンスの条件の修正候補を算出する。
【0038】
判定部102は、条件設定部100によって設定された撮像シーケンスが実行可能か否かを、第1〜第3の判定アルゴリズムにより判定し、第1〜第3の判定アルゴリズムのどれにおいても実行不能と判定されなかった場合のみ、実行可能と判定する。第1〜第3の判定アルゴリズムでは、傾斜磁場発生システムの等価回路モデルに基づいて計算を行い、実行可否を判定する。
【0039】
以下、実際の傾斜磁場発生システムの回路構成の一例、等価回路モデルの構成の一例、判定部102による第1の判定アルゴリズム、第2の判定アルゴリズム、第3の判定アルゴリズム、条件設定部100による撮像シーケンスの条件の修正候補の算出方法、の順に本実施形態の原理を説明する。
【0040】
図4は、傾斜磁場電源44の構成の一例を示すブロック図である。図に示すように、傾斜磁場電源44は、ブレーカ122と、整流器123と、直流電源124と、電解コンデンサ126、126’、126”と、傾斜磁場アンプ128、128’128”と、電流検出器130、130’、130”とを有する。
【0041】
即ち、図1に示すX、Y、Z軸傾斜磁場電源44x、44y、44zは、ブレーカ122と、整流器123と、CV/CC特性を持つ直流電源124とを共有する。図5において、X軸傾斜磁場電源44xは、ブレーカ122と、整流器123と、直流電源124と、電解コンデンサ126と、傾斜磁場アンプ128と、電流検出器130とに対応する。
なお、CV/CC特性を持つ直流電源は、負荷が軽いときには定電圧を出力して負荷が重くなり、ある電流以上を流す必要が生じた際には、それ以上の電流を流さずに一定電流を負荷に供給する制御を行う電源である。即ち、CV/CCのCVは定電圧(Constant Voltage)の意味であり、CCは定電流(Constant Current)の意味である。
【0042】
同様に、Y軸傾斜磁場電源44yは、ブレーカ122と、整流器123と、直流電源124と、電解コンデンサ126’と、傾斜磁場アンプ128’と、電流検出器130’とに対応する。同様に、Z軸傾斜磁場電源44zは、ブレーカ122と、整流器123と、直流電源124と、電解コンデンサ126”と、傾斜磁場アンプ128”と、電流検出器130”とに対応する。
【0043】
ブレーカ122は、外部の交流電源120からの出力電流が定格電流値を超えた場合に、交流電源120と、整流器123との間を電気的に遮断する。
【0044】
整流器123は、交流電源120からの交流の供給電力を直流電力に変換して、この直流電力を直流電源124に供給する。
【0045】
直流電源124は、整流器123を介して供給される直流電流で電解コンデンサ126を充電し、また、傾斜磁場アンプ128に直流電流を供給する。直流電源124は、傾斜磁場アンプ128、128’、128”側の負荷が軽い場合には定電圧源として動作し、負荷が重い場合には定電流源として動作する。
【0046】
傾斜磁場アンプ128、128’、128”は、+側入力端子(図中の+IN)と、−側入力端子(図中の−IN)と、+側出力端子(図中の+OUT)と、−側出力端子(図中の−OUT)とをそれぞれ有する。
【0047】
また、傾斜磁場アンプ128、128’、128”は、直流電源124から電力供給をそれぞれ受けると共に、シーケンスコントローラ56からの制御信号(電圧信号)を+側入力端子においてそれぞれ受ける。シーケンスコントローラ56から傾斜磁場アンプ128、128’128”に入力される各制御信号は、撮像シーケンスに応じてX、Y、Z軸傾斜磁場コイル26x、26y、26zによってそれぞれ発生させたい理想の磁場波形に相似した波形を示す。
【0048】
電流検出器130、130’、130”はそれぞれ、傾斜磁場アンプ128、128’、128”の−側出力端子に流入する電流の電流値を検出するが、この検出電流の大きさは、傾斜磁場アンプ128の+側出力端子から出力される電流に等しい。傾斜磁場アンプ128、128’、128”の+側出力端子から出力される電流はそれぞれ、傾斜磁場コイル(26x、26y、26zのいずれか)を流れて傾斜磁場アンプ128、128’、128”の−側出力端子に戻るからである。
【0049】
電流検出器130、130’、130”はそれぞれ、検出した電流の電流値を示す電圧信号を生成して、生成した電圧信号を傾斜磁場アンプ128、128’、128”の−側入力端子に入力する。
【0050】
傾斜磁場アンプ128、128’、128”は、+/−側入力端子間の誤差信号が0になるように電流を出力する電流源として動作する。ここで、傾斜磁場アンプ128、128’、128”の出力電流が前述のように電流検出器130、130’、130”によって負帰還となっているので、+側入力端子への入力電圧に比例する電流を+側出力端子から出力するように、フィードバック制御が行われる。
【0051】
図5は、判定部102による撮像シーケンスの実行可否の判定演算において用いられる傾斜磁場発生システムの等価回路モデルの一例を示す回路図である。ここでの傾斜磁場発生システムとは、図1の傾斜磁場電源44、傾斜磁場コイル26、シーケンスコントローラ56のように、傾斜磁場発生に関わる構成要素全体を指す。
【0052】
判定部102は、傾斜磁場発生システムが図5の回路構成であるものと仮定して、計算によって撮像シーケンスの実行可否を判定する。即ち、実際のMRI装置20の傾斜磁場発生システムは、図4に示す構成となっており、図5の回路構成とは異なる。
【0053】
図5に示すように、等価回路モデル140xは、1次側として、X軸傾斜磁場電源44xと、X軸傾斜磁場コイル26xの抵抗成分に相当する抵抗26xRと、X軸傾斜磁場コイル26xのインダクタンス成分に相当するコイル26xLとを直列に接続した構成である。
【0054】
また、等価回路モデル140xは、抵抗141R及び仮想コイルとしてのコイル141Lの直列回路を第1の2次側回路として有する。さらに、等価回路モデル140xは、抵抗142R及び仮想コイルとしてのコイル142Lの直列回路を第2の2次側回路として有する。コイル26xLと、コイル141Lとが互いに磁気的に結合している。また、コイル26xLと、コイル142Lとが互いに磁気的に結合している。
【0055】
以下、上記構成の等価回路モデル140xとした意味について説明する。周波数が高くなると、X、Y、Z軸傾斜磁場コイル26x、26y、26zの各インピーダンスは、1つの抵抗成分及び1つのインダクタンス成分の和で表される簡単なモデルのように単純増加するわけではない。
【0056】
例えば、実際には、高周波電流が導体を流れる時、電流密度が導体の表面で高く、表面から離れると低くなる。即ち、表皮効果により、周波数が高くなるほど電流が表面へ集中するので、導体の交流抵抗は高くなる。この表皮効果等を考慮すると、多項式で表される傾斜磁場発生システムのインピーダンスにおいて、X軸傾斜磁場コイル26xの抵抗26xRの抵抗値が含まれる項も、周波数に依存して変化することが望ましい。
【0057】
従って、例えば、抵抗26xRの抵抗値にも角周波数ωが乗じられるような等価回路モデル、即ち、インピーダンスの虚部のみならず実部にも周波数依存性が反映された等価回路モデルで考えることが望ましい。
【0058】
また、実際には、X、Y、Z軸傾斜磁場コイル26x、26y、26zにパルス電流を供給すると渦電流が発生し、渦電流による磁場が各傾斜磁場Gx、Gy、Gzに加わって傾斜磁場分布の歪みが生じる。渦電流で発生する磁場を考慮すると、相互インダクタンスも含まれた等価回路モデルで考えることが望ましい。
【0059】
また、図には示していないが、実際の傾斜磁場発生システムには、所定周波数以上の高周波電流を遮断するチョークコイルが含まれる場合がある。そうすると、1つのみならず、複数の相互インダクタンスが含まれた等価回路モデルで考えることが望ましい。
【0060】
図5に示す等価回路モデル140xは、以上を考慮した等価回路モデルの一例であり、等価回路モデルは、図5の構成に限定されるものではない(後述の図16及び図17参照)。
【0061】
以下、判定部102による撮像シーケンスの実行可否の第1の判定アルゴリズムについて説明する。
【0062】
図5において、抵抗26xR、141R、142Rの各抵抗値をそれぞれ、Rload、R、Rとする。また、コイル26xL、141L、142Lの自己インダクタンス値をそれぞれLload、L、Lとする。さらに、コイル26xLと、コイル141Lとの相互インダクタンス値をMとする。また、コイル26xLと、コイル142Lとの相互インダクタンス値をMとする。
【0063】
また、1次側回路において図5の矢印方向に流れる電流値をIout(t)とする。また、第1の2次側回路において図5の矢印方向に流れる電流値をI(t)とする。また、第2の2次側回路において図5の矢印方向に流れる電流値をI(t)とする。また、コイル26xLの両端の電圧値を図5の矢印方向を正方向としてVout(t)とする。
これらの符号に含まれる(t)は、時間tの関数という意味であり、以下の説明で用いる他の符号についても同様である。このとき、1次側、2次側についてそれぞれ、以下の(1)式、(2)式、(3)式が成り立つ。
【0064】
【数1】

【0065】
(1)〜(3)式において、Mは以下の(4)式で表され、Mは以下の(5)式で表される。
【0066】
【数2】

【0067】
(4)式におけるKはコイル26xLとコイル141Lとの結合係数であり、(5)式におけるKはコイル26xLとコイル142Lとの結合係数である。ここで、虚数の単位をjで表す。即ち、jの二乗は−1である。交流の場合、時間微分d/dtをj×ωに置き換えることで、(2)式を変形すれば以下の(6)式が得られ、(3)式を変形すれば以下の(7)式が得られる。
【0068】
【数3】

【0069】
等価回路モデル140xにおいて、X軸傾斜磁場電源44xから見たX軸傾斜磁場コイル26xのインピーダンスをZとする。(1)式の両辺をIout(t)で割って、さらに時間微分d/dtをj×ωに置き換え、(6)式及び(7)式を(1)式に代入することで、インピーダンスZは以下の(8)式で表される。
【0070】
【数4】

【0071】
(8)式により、X軸傾斜磁場電源44xから見たインピーダンスZの実部Re{Z}及び虚部Im{Z}はそれぞれ、以下の(9)式及び(10)式で表される。
【0072】
【数5】

【0073】
なお、(9)式及び(10)式における定数A、B、C、Dはそれぞれ、以下の(11)式、(12)式、(13)式、(14)式で表される。
【0074】
【数6】

【0075】
図6は、X軸傾斜磁場コイル26xのインピーダンスZの実部Re{Z}の周波数特性の測定値を模式的に表したグラフである。図6において、横軸は周波数を示し、縦軸はインピーダンスZの実部Re{Z}を示す。
【0076】
図7は、X軸傾斜磁場コイル26xのインピーダンスZの虚部Im{Z}をωで除したIm{Z}/ωの周波数特性の測定値を模式的に表したグラフである。図7において、横軸は周波数を示し、縦軸はIm{Z}/ωを示す。
【0077】
(9)式等における抵抗値Rloadは、例えば、X軸傾斜磁場コイル26xに直流電流を流した場合のX軸傾斜磁場コイル26xの両端の電圧を測定することで、予め決定し、判定部102に記憶させておく。ここで、測定には、例えばLCRメータを用いればよい(LCRのLはInductance、CはCapacitance、RはResistanceを指す)。
【0078】
また、(10)式等における自己インダクタンス値Lloadは、例えば直流電流をX軸傾斜磁場コイル26xに流した場合にX軸傾斜磁場コイル26xが発生する磁束を測定することで、計算により算出できる。
【0079】
或いは、自己インダクタンス値Lloadは、等価回路モデル140xにおいて2次側の影響を受けない低周波数(例えば1〜10ヘルツ)において、LCRメータで測定することで決定してもよい。
【0080】
或いは、自己インダクタンス値Lloadは、X軸傾斜磁場コイル26xの形状(コイルの巻き方)、材質等に基づいて理論値を計算し、これを用いてもよい。このように予め決定した自己インダクタンス値Lloadを、判定部102に記憶させておく。
【0081】
抵抗値Rload、自己インダクタンス値Lloadが上記のように定まれば、(4)式の結合係数Kと、(5)式の結合係数Kと、時定数τ=L/Rと、時定数τ=L/Rとは、例えば以下のようなフィッティングにより決定できる。
【0082】
具体的には、(9)式で表されるインピーダンスZの実部Re{Z}の周波数特性と、X軸傾斜磁場コイル26xのインピーダンスの実部の周波数特性の測定値とをフィッティングさせる。また、(10)式で表されるインピーダンスZの虚部Im{Z}を角周波数ωで除したIm{Z}/ωの周波数特性と、傾斜磁場コイル26xのインピーダンスの虚部を角周波数ωで割った値の周波数特性の測定値とをフィッティングさせる。
【0083】
なお、上記のフィッティングにおいて、実部Re{Z}と、虚部を角周波数ωで割ったIm{Z}/ωとを用いたが、(9)式及び(10)式の和であるインピーダンスZ(の振幅と位相)の計算値及び測定値をフィッティングに用いてもよい。或いは、インピーダンスZの実部Re{Z}と虚部Im{Z}の位相差の計算値及び測定値をフィッティングに用いてもよい。
【0084】
結合係数K及び結合係数Kと、時定数τ及び時定数τ=が定まれば、(4)式及び(5)式によって相互インダクタンスM、Mが定まり、(11)〜(14)式によって定数A、B、C、Dが定まる。
【0085】
以上のように求めた各定数Rload、Lload、A、B、C、Dは、判定部102内に予め記憶されている。これにより、任意の周波数におけるインピーダンスZの実部Re{Z}及び虚部Im{Z}を(9)式及び(10)式によって算出できる。
【0086】
次に、X軸傾斜磁場コイル26xに出力電流Iout(t)を流すために必要な電圧Vout(t)を導くために、(1)式において、I(t)及びI(t)を消去した式を導く。I(t)及びI(t)は、あくまで等価回路モデル140xを流れる意図しない電流であって、実際の傾斜磁場発生システムの出力電流Iout(t)によって誘起される電流である。
【0087】
まず、(1)〜(3)式において、両辺を時間微分すると、以下の(15)式、(16)式、(17)式が得られる。
【0088】
【数7】

【0089】
次に、I(t)の時間微分、及び、I(t)の2階時間微分を消去するために、(15)式を変形すると以下の(18)式が得られ、(1)式を変形すると以下の(19)式が得られる。
【0090】
【数8】

【0091】
上記の(18)式及び(19)式を(17)式に代入後、Mを両辺に乗じれば、I(t)が消去された以下の(20)式が得られる。
【0092】
【数9】

【0093】
次に、I(t)の2階時間微分を消去する。具体的には、(16)式を変形すると以下の(21)式が得られ、(21)式を(20)式に代入すると以下の(22)式が得られ、(22)式の両辺にLを乗じて、dI/dtに関する項のみを左辺に移動すると以下の(23)式が得られる。
【0094】
【数10】

【0095】
次に、(23)式の両辺を時間微分すると以下の(24)式が得られ、(16)式の両辺にM×(L×R−L×R)を乗じると以下の(25)式が得られる。
【0096】
【数11】

【0097】
次に、両辺をM×(L×R−L×R)で割ることで(23)式をdI/dt=の形に変形して(25)式に代入し、同様に(24)式をd/dt=の形に変形して(25)式に代入すれば、以下の(26)式が得られる。
【0098】
【数12】

【0099】
(26)式においてVout(t)に関する項のみを左辺に移動後、両辺を(−L×L)で割れば、I(t)及びI(t)が消去された以下の(27)式が得られる。
【0100】
【数13】

【0101】
(27)式において、X軸傾斜磁場電源44xから出力される出力電流Iout(t)、即ち、X軸傾斜磁場コイル26xに流れる電流は、撮像シーケンスの条件によって定まる。撮像シーケンスの条件を定めれば、発生させるべきX軸傾斜磁場Gxの傾斜磁場強度の時間波形が定まり、X軸傾斜磁場Gxの傾斜磁場波形は、X軸傾斜磁場コイル26xに流れる電流波形で決まるからである。
【0102】
従って、出力電流Iout(t)の初期値を定めれば、出力電流Iout(t)の3階時間微分である(27)式の右辺の値を計算できる。(27)式において、Lload、L、L2、Rload、R、R、M、Mは前述のように予め定められているからである。
【0103】
このように(27)式の右辺を定めれば、(27)式は出力電圧Vout(t)の2階時間微分方程式となる。これを解くことで、X軸傾斜磁場コイル26xに出力電流Iout(t)を流すために必要な出力電圧Vout(t)を算出できる。
【0104】
従来のように傾斜磁場コイルをコイル抵抗の直列回路で表したモデルで計算すると、X軸傾斜磁場コイル26xに出力電流Iout(t)を流すために必要な出力電力が過小評価され、撮像シーケンスの実行中に出力電圧が足りないという事態が生じうる。
しかし、本実施形態のように(27)式に基づいて計算すれば、X軸傾斜磁場コイル26xに出力電流Iout(t)を流すために必要な出力電圧Vout(t)ひいては必要な出力電力を正確に算出できるので、撮像シーケンスの実行中に電圧が足りないということは生じない。
【0105】
次に、X軸傾斜磁場コイル26xでの消費電力Pxcoil(t)は、以下の(28)式で算出できる。
【0106】
Pxcoil(t)=Iout(t)×Vout(t) …(28)
【0107】
X軸傾斜磁場コイル26xの発熱量ΔHeatは、撮像シーケンスの開始時刻から終了時刻までの消費電力Pxcoil(t)の時間積分値として算出できる。X軸傾斜磁場コイル26xの熱抵抗値をRHXとすれば、X軸傾斜磁場コイル26xの上昇温度ΔTempxは、次式で与えられる。
【0108】
ΔTempx=RHX×ΔHeat …(29)
【0109】
(29)式において、X軸傾斜磁場コイル26xの熱抵抗値RHXは、測定値を用い、予め判定部102に記憶させておけばよい。
【0110】
具体的には例えば、X軸傾斜磁場コイル26xに一定の直流電流を流すと共に、そのときのX軸傾斜磁場コイル26xの両端の電圧を測定することで、X軸傾斜磁場コイル26xに与えた電力を算出する。この直流電流を流し始め直前と、直後において各温度センサ70x1〜70x3によりX軸傾斜磁場コイル26xの温度上昇分を測定する。以上の測定によって、X軸傾斜磁場コイル26xに与えた電力と、その温度上昇分が決まれば、熱抵抗値RHXを算出できる。
【0111】
このように等価回路モデル140xに基づいて算出した上昇温度ΔTempxを、撮像シーケンス実行直前のX軸傾斜磁場コイル26xの測定温度に加算すれば、撮像シーケンス実行直後のX軸傾斜磁場コイル26xの温度Tempxを算出できる。
【0112】
判定部102は、以上の(1)式〜(29)式及びこれらの数式における定数(A、B等)を予め記憶している。従って、撮像シーケンス実行直後のX軸傾斜磁場コイル26xの温度が予め設定した閾値よりも高い場合、その撮像シーケンスは実行不能であると判定部102は判定する。
【0113】
判定部102は、撮像シーケンス実行直後のY軸傾斜磁場コイル26yの温度を上記同様に算出し、算出した温度が閾値より高い場合、その撮像シーケンスは実行不能であるとは判定する。判定部102は、撮像シーケンス実行直後のZ軸傾斜磁場コイル26zの温度も同様に算出し、それが閾値より高い場合、その撮像シーケンスは実行不能であると判定する。
【0114】
撮像シーケンス実行直後におけるX、Y、Z軸傾斜磁場コイル26x、26y、26zの各温度がどれも閾値以下である場合、第2及び第3の判定アルゴリズムにおいても実行不能と判定されなければ、撮像シーケンスは実行可能であると判定部102は判定する。
【0115】
また、以上が第1の判定アルゴリズムの説明であるが、これに付随して、画像再構成におけるリグリッディングの精度向上手法について説明する。ここで、リグリッディングとは、k空間に配列されたマトリクス状のRAWデータ(マトリクスデータ)の再配列を指し、以下、具体的に説明する。
【0116】
図5において、メインコイルであるコイル26xLの電流感度をα、コイル141Lの電流感度をβ、コイル142Lの電流感度をγとする。ここで、上記の電流感度は、コイルに電流を流すことで発生する傾斜磁場強度(テスラ/メートル)を、当該コイルに流す電流値(アンペア)で割った定数である。この場合、渦電流などの磁場を足し合わせたX軸傾斜磁場波形Gx(t)は、次式のような合算磁場波形として算出できる。
【0117】
Gx(t)=α×Iout(t)+β×I(t)+γ×I(t) …(30)
【0118】
(30)式の右辺の第2項および第3項は、仮想コイルとしてのコイル141L、142Lが発生する磁場波形(仮想磁場波形)の一例である。
前述のように、X軸傾斜磁場コイル26xに流れる出力電流Iout(t)は撮像シーケンスの条件で決まる。従って、(2)式及び(3)式において電流I(t)の初期値と、電流I(t)の初期値とを決めれば、(30)式において2次側のコイル141Lに流れる電流I(t)、及び、コイル142Lに流れる電流I(t)を決定できる。電流I(t)の初期値と、電流I(t)の初期値は、例えば、前の撮像シーケンスの実行から十分な時間が経過していると仮定すれば、双方ともゼロとすることができる。
【0119】
そうすると、(30)式において未知数はなくなり、磁場波形Gx(t)を算出できる。ここでは一例として、(30)式で示される磁場波形Gx(t)に基づいて、受信サンプリングの間隔を変更することで、再構成のリグリッディングの精度を向上する。以下、より具体的に説明する。
【0120】
図8は、位相エンコード及び周波数エンコードのマトリクス要素数が256×256の場合に、k空間に配列されるMR信号のRAWデータの一例を示す模式図である。図8において、TRは繰り返し時間(Repetition Time)であり、横方向のTsはサンプリング時間(Sampling Time)であり、縦方向は位相エンコードステップ(Phase Encode Step)である。
【0121】
この場合、原則的には、位相エンコードを256回変えて、収集した256ラインのMR信号からそれぞれ、搬送周波数の余弦関数又は正弦関数を引いた後、図8のように位相エンコードステップ毎に並べる。これにより、256×256のマトリクス要素からなるマトリクスデータ、即ち、k空間のRAWデータの実数部分又は虚数部分を得る。
【0122】
但し、例えばシングルショットのEPI(エコープラナーイメージング:echo planar imaging)では、実効エコー時間まで5ライン分しか収集できなければ、収集数は(256/2)+5=133ラインとなる。この場合、収集されなかった123ラインは、k空間上では例えばデータとしてゼロが入る。
【0123】
ここで、図8の横方向では、各MR信号のサンプリング時間Tsを256で等間隔に割ったΔTs毎に、MR信号の強度をマトリクス値にする。これにより、実数と虚数についてそれぞれ、256行256列のマトリクスデータが求まる。これをk空間のRAWデータとする。
【0124】
図9は、EPIにおける読み出し方向の傾斜磁場波形の一例を示す模式図である。図9において、縦軸は読み出し方向の磁場強度(Amplitude Of Magnetic Field In Readout Direction)を示し、横軸は経過時間tを示す。図9に示すように、実際の読み出し方向の傾斜磁場の反転は、時間軸に対して垂直とみなせる傾きで瞬間的に磁場強度の極性が反転するわけではなく、ある程度の時間幅をもって傾斜磁場強度が+から−へ、或いは−から+に急峻に変化する。
【0125】
即ち、1つのサンプリング時間Tsの始めの時期では、傾斜磁場強度は例えば図9のG1、G2と上昇し、さらに上昇する。この後、一定期間において、傾斜磁場強度はGfで一定となり、その後下がる。
【0126】
サンプリング時間Tsの始めの時期では、傾斜磁場強度の絶対値の増大に伴い、MR信号の周波数が次第に大きくなるので、この周波数上昇に伴ってサンプリング間隔ΔTsを次第に短くすれば、見かけ上、サンプリング時間Ts全体を通して一定周波数のMR信号を検出したことと等価になる。同様に、サンプリング時間Tsの終わり時期では、傾斜磁場強度の絶対値の減少に伴い、MR信号の周波数が次第に小さくなるので、この周波数減少に伴って、サンプリング間隔ΔTsを次第に長くすれば、サンプリング時間Ts全体を通して一定周波数のMR信号を検出したことと等価になる。
【0127】
換言すれば、サンプリング時間Tsにおいて、中央の傾斜磁場強度が一定の期間では、サンプリング間隔ΔTsを小さくし、サンプリング時間Tsの始め及び終わりの期間では、サンプリング間隔ΔTsを大きくすることが望ましい。
【0128】
画像再構成部90は、各サンプリング間隔ΔTsの長さが、各サンプリング間隔ΔTsに含まれるMR信号の受信時刻での傾斜磁場強度に応じた長さとなるように、マトリクスデータのサンプリング間隔ΔTsの長さを変更する。このようにして、マトリクスデータの再配列を行う。
【0129】
例えば装置座標系のX軸方向を読み出し方向に合致させる場合、読み出し方向の傾斜磁場波形を(30)式に基づいて算出後、各サンプリング間隔ΔTsが、各サンプリング間隔ΔTsに含まれるMR信号の受信時刻での傾斜磁場強度に応じた長さとなるように、リグリッディングを行う。特にEPIのように短い時間間隔で各ラインのMR信号を受信する場合には、上記のリグリッディングを行うことで、画像再構成の精度を向上できる結果、画質を向上できる。なお、装置座標系のY軸又はZ軸を読み出し方向に合致させる場合も、上記同様にリグリッディングを行うことができる。
【0130】
次に、撮像シーケンスの実行可否の第2の判定アルゴリズムについて説明する。図4において、各傾斜磁場アンプ128、128’、128”は、例えばIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)、MOSFET(Metal−Oxide−Semiconductor Field−Effect Transistor)、ダイオードなどのスイッチング素子を有する。
【0131】
傾斜磁場アンプ128の消費電力Pampx(t)は、スイッチング素子での消費電力が主たるものであるため、一般的には次式で近似できる。
【0132】
Pampx(t)=Wa×{Iout(t)}+Wb×Iout(t)+Wc
…(31)
【0133】
(31)式において、Wa、Wb、Wcは、スイッチング素子の特性で決まる定数であり、予め測定して、判定部102に記憶させておく。但し、Wa、Wb、Wcは、シミュレーションによって理論値として予め算出し、判定部102に記憶させてもよい。
【0134】
傾斜磁場アンプ128への入力電力Pinx(t)は、およそ傾斜磁場アンプ128内の消費電力Pampx(t)と、X軸傾斜磁場コイル26xでの消費電力Pxcoilとの和である。即ち、以下の近似式が成り立つ。
【0135】
Pinx(t)=Pampx(t)+Pxcoil(t) …(32)
【0136】
(32)式において、X軸傾斜磁場コイル26xの消費電力Pxcoil(t)は前記(28)式で算出でき、傾斜磁場アンプ128の消費電力Pampx(t)は(31)式で算出できるから、傾斜磁場アンプ128への入力電力Pinx(t)を算出できる。
【0137】
Yチャネルについても同様の手法によって、Y軸傾斜磁場コイル26yの消費電力Pycoil(t)と、傾斜磁場アンプ128’の消費電力Pampy(t)と、傾斜磁場アンプ128’への入力電力Piny(t)を算出する。
【0138】
Zチャネルについても同様の手法によって、Z軸傾斜磁場コイル26zの消費電力Pzcoil(t)と、傾斜磁場アンプ128”の消費電力Pampz(t)と、傾斜磁場アンプ128”への入力電力Pinz(t)を算出する。
【0139】
そして、3つのチャネルへの各入力電力Pinx(t)、Piny(t)、Pinz(t)の合算値を合計入力電力Pin(t)として算出する。
【0140】
そうすると、交流電源120からの出力電圧と、交流電源120の出力電力の力率とを一定と仮定すれば、合計入力電力Pin(t)を力率で割った値を、交流電源120の出力電圧の実効値で割ることで、ブレーカ122に流れる電流値の時間変化を算出できる。なお、交流電源120の出力電圧の実効値は、所定値で一定であると仮定して、それを判定部102に記憶させておく。また、その都度測定した値を用いてもよい。
【0141】
撮像シーケンスの全期間を通して、ブレーカ122を流れる電流が、ブレーカ122の定格電流値を超える時間帯がある場合、撮像シーケンスに必要な電力が傾斜磁場アンプ128の定格を超える。この場合、設定されている撮像シーケンスは実行不能であると、判定部102は判定する。以上が第2の判定アルゴリズムの説明である。
ブレーカ122を流れる電流が前記定格電流値を超えない場合、第1及び第3の判定アルゴリズムにおいても実行不能と判定されなければ、撮像シーケンスは実行可能であると判定される。
【0142】
次に、撮像シーケンスの実行可否の第3の判定アルゴリズムについて説明する。第3の判定アルゴリズムでは、撮像シーケンスの実行時における直流電源124の出力電圧Vbus(t)の降下を考慮する。即ち、直流電源124の定格出力電力Ppsよりも傾斜磁場アンプ128の消費電力Pamp(t)と、X軸傾斜磁場コイル26xの消費電力Pxcoil(t)との和が大きい場合、足りない電力は電解コンデンサ126から放電電流として傾斜磁場アンプ128に供給される。
【0143】
直流電源124の出力電圧Vbus(t)は電解コンデンサ126の充電電圧に等しいので、電解コンデンサ126から放電電流が流れてその充電電圧が下がれば、出力電圧Vbus(t)は降下する。この出力電圧Vbus(t)が所定値を下回る場合、判定部102は、撮像シーケンスが実行不能と判定する。そこで、電圧降下後の出力電圧Vbus(t)の値Vfinを算出するため、各部の電流波形及び電圧波形の一例(図10参照)を参考に、第3の判定アルゴリズムを説明する。
【0144】
図4のX軸傾斜磁場電源44x及びX軸傾斜磁場コイル26xの回路における出力電圧Vout(t)は、図5の1次側のみを考慮する場合、以下の(33)式で表される。
【0145】
【数14】

【0146】
図10は、図4、図5における出力電圧Vout(t)の波形について、(33)式に従うものと仮定して単純化した場合の一例を示す模式図である。なお、(27)式等に基づいて正確に計算した場合の波形については、図11として後述する。図4及び図10において、直流電源124の出力電流をIps(t)としている。以下、回路動作を簡単に説明する。
【0147】
図4において傾斜磁場電源44への電源投入後、電解コンデンサ126はすぐに充電完了電圧まで充電される。このため、撮像シーケンスの開始時刻をt=t1とすれば、t=0以降、少なくとも時刻t1までの暫くの期間、直流電源124の出力電圧Vbus(t)は一定となり、直流電源124の出力電流Ips(t)はゼロで一定となる。
【0148】
この後、時刻t=t1において、シーケンスコントローラ56からの制御電圧信号(図示せず)が一定の傾きで上昇し始める。前述のように、傾斜磁場アンプ128は、+側入力端子(+in)への入力電圧に比例する電流を出力端子からIout(t)として出力するため、図10におけるIout(t)の時間波形は、上記制御電圧信号にほぼ等しい。
【0149】
これに同期して、(33)式の左辺第2項のIout(t)の時間微分は、時刻t1より前ではゼロであるが、時刻t1以降、一定の傾きで上昇している期間では一定の正の値となる。このため、時刻t1において、傾斜磁場アンプ128の出力電圧Vout(t)は、(33)式の左辺第2項の分だけ瞬間的に上昇する。
【0150】
一方、時刻t1において(33)式の左辺第1項(R×Iout(t))はゼロであるが、時刻t1以降、Iout(t)の上昇に伴って(33)式の左辺第1項も上昇するため、出力電圧Vout(t)も上昇する。
【0151】
また、時刻t1以降、傾斜磁場アンプ128から出力電流Iout(t)が供給され始めるので、その電流供給源として、直流電源124及び電解コンデンサ126から傾斜磁場アンプ128に電流が供給される。このため、時刻t1において直流電源124の出力電流Ips(t)も立ち上がり、その後、一定値となる。
【0152】
また、時刻t1以降、直流電源124の出力電圧Vbus(t)、即ち、電解コンデンサ126の充電電圧は減少する。これは、直流電源124のXチャネルに対する定格出力電力Ppsよりも、傾斜磁場アンプ128の消費電力Pamp(t)と、X軸傾斜磁場コイル26xの消費電力Pxcoil(t)との和(Pinx(t))が大きい場合である。
【0153】
時刻t2において、一定の傾きで上昇していた出力電流Iout(t)が一定電圧に切り替わる。出力電流Iout(t)が上昇から一定値に切り替わるため、その時間微分はゼロに切り替わるから、(33)式の左辺第2項はゼロとなる。このため、出力電圧Vout(t)は、時刻t2において瞬間的に下がり、出力電流Iout(t)が一定値である時刻t3までの期間において一定値を保つ。
【0154】
時刻t3において、一定であった出力電流Iout(t)が一定の傾きで下がり始める。これにより、(33)式の左辺第2項において出力電流Iout(t)の時間微分はゼロから負の一定値に切り替わるから、出力電流Iout(t)は、時刻t3において瞬間的に下がる。一方、(33)式の左辺第1項は、時刻t3以降、Iout(t)の下降に伴って下降するため、出力電圧Vout(t)も時刻t3以降では下降する。
【0155】
時刻t4以降、減少していた出力電流Iout(t)がゼロで一定に切り替わると、(33)式に従って出力電圧Vout(t)もゼロで一定となる。この出力電流Iout(t)がゼロで一定の期間では、直流電源124の出力電圧Vbus(t)は、電解コンデンサ126が直流電源124の出力電流Ips(t)で充電されるため、上昇する。
【0156】
時刻t5において、ゼロで一定だった出力電流Iout(t)が一定の傾きで下がり始め、直流電源124の出力電圧Vbus(t)も再び下降し始める。これにより、(33)式の左辺第2項において出力電流Iout(t)の時間微分はゼロから負の一定値に切り替わるから、出力電流Iout(t)は、時刻t5において瞬間的に下がる。一方、(33)式の左辺第1項は、時刻t5以降、Iout(t)の下降に伴って下降するため、出力電圧Vout(t)も時刻t5以降では下降する。
【0157】
時刻t6において、下降していた出力電流Iout(t)が負の値で一定に切り替わる。これにより、出力電流Iout(t)の時間微分は負の値からゼロに切り替わるから、出力電流Iout(t)は、時刻t6において瞬間的に上昇する。このように、(33)式及び出力電流Iout(t)に従って、出力電圧Vout(t)が変化する。
【0158】
時刻t7において、出力電流Iout(t)の供給が停止すると、下降していた直流電源124の出力電圧Vbus(t)は、上昇し始める。これは、時刻t7以降、傾斜磁場アンプ128への供給電流が不要となるために、電解コンデンサ126の充電電圧が直流電源124の出力電流Ips(t)によって充電されて上昇し始めるからである。
【0159】
直流電源124の出力電流Ips(t)は、電解コンデンサ126の充電完了に近づくと下がり始め、時刻t8において電解コンデンサ126の充電が完了すると直流電源124の出力電流Ips(t)は0となる。以上が回路動作の説明である。
【0160】
直流電源124の定格出力電力Ppsよりも傾斜磁場アンプ128の消費電力Pampx(t)と、X軸傾斜磁場コイル26xの消費電力Pxcoil(t)との和(Pinx(t))が大きい場合、足りない電力は電解コンデンサ126から放電電流として傾斜磁場アンプ128に供給される。この場合、電解コンデンサ126の充電電圧、即ち、直流電源124の出力電圧Vbus(t)は低下する。
【0161】
前記したように直流電源124は、負荷が軽い場合には定電圧源として動作し、負荷が重い場合には定電流源として動作する。このように、(電解コンデンサ126からの放電電流が必要な程度に)負荷が重い場合、即ち、傾斜磁場アンプ128の電源が定電流源である場合について、直流電源124のXチャネルに対する定格出力電力Ppsの値と、直流電源124の出力に接続される電解コンデンサ126の容量値Cbankとを、判定部102に予め記憶させておく。
【0162】
電圧低下前における直流電源124の出力電圧をViniとし、電圧低下前における直流電源124の出力電圧をVfinとし、電圧降下の傾きを直線に近似すると、直流電源124及び電解コンデンサ126から傾斜磁場アンプ128に供給されるエネルギーEsupは、以下の(34)式で表現される。
【0163】
【数15】

【0164】
(34)式の右辺の第2項は、電圧降下前の電解コンデンサ126の蓄積エネルギーから、電圧降下後の電解コンデンサ126の蓄積エネルギーを引いた値である。即ち、(34)式の右辺の第2項は、電解コンデンサ126の蓄積エネルギーの減少量を示し、この減少エネルギー分が電解コンデンサ126の放電電流として傾斜磁場アンプ128に供給される。
【0165】
(34)式の右辺の第1項は、Δtの期間に直流電源124から傾斜磁場アンプ128に供給されるエネルギー量を示す。ここで、Δtの期間において、直流電源124の出力電圧Vbus(t)が1次関数的に下がると仮定しているため、Δtの期間の直流電源124の出力電圧Vbus(t)の平均値は、(Vini+Vfin)/2となる。
【0166】
この電圧低下前後(Δtの期間)において、(34)式における直流電源124からのXチャネルに対する出力電流Ips(t)は、直流電源124の諸特性で決まる一定値であり、予め判定部102に記憶させておく。直流電源124は、(電解コンデンサ126からの放電電流が必要な程度に)負荷が重い場合には、前述のように定電流源として動作するからである。
【0167】
従って、傾斜磁場アンプ128と、X軸傾斜磁場コイル26xとで消費されるエネルギーは、次式で表される。
【0168】
Ediss(t)=Pinx(t)×Δt …(35)
【0169】
ここで、エネルギー保存則により、Esup(t)=Ediss(t)であるので、以下の(36)式が成り立つ。
【0170】
【数16】

【0171】
(36)式において、Pinx(t)は(32)式から算出できるので、電圧降下前の直流電源124の出力電圧Viniを定めれば、電圧降下後の直流電源124の出力電圧Vfinを算出できる。以下、Δtの期間の定め方、及び、電圧降下前の直流電源124の出力電圧Viniの定め方について説明する。
【0172】
Δtとしては、撮像シーケンスの開始時刻から終了時刻までの期間を例えば一定の間隔でn等分することにより、Δt1、Δt2・・・Δtnを定める。ここでは撮像シーケンスの開始時刻から終了時刻までの期間を等間隔で分けるとしたが、等間隔である必要はなく、間隔を変えてもよい。
【0173】
このようにΔtを定めれば、時間的に最初のΔt1の終了時刻が、次のΔt2の開始時刻に合致する。即ち、Δt1の期間において、電圧降下後の、即ち、Δt1の最終時刻の直流電源124の出力電圧Vfinを算出すれば、これが次のΔt2の電圧降下前の直流電源124の出力電圧Viniに等しくなる。
【0174】
そして、最初のΔt1における電圧降下前の直流電源124の出力電圧Viniは、電解コンデンサ126の充電完了時の電圧であり、既知の値として判定部102に予め記憶させておく。そうすると、(36)式によって、Δt1の期間における電圧降下後の直流電源124の出力電圧Vfinを算出できる。
【0175】
この出力電圧Vfinを、次のΔt2の期間における電圧降下前の直流電源124の出力電圧Viniとすることで、(36)式によって、次のΔt2の期間における電圧降下後の直流電源124の出力電圧Vfinを算出できる。以下、同様にして、Δtnの期間まで、電圧降下前後の直流電源124の出力電圧Vini、Vfinを算出できる。
【0176】
ここで、Δt1〜Δtnの各期間の長さの最小値及び最大値について補足する。
Δt1〜Δtnの各期間の長さは、その期間の逆数(1/Δt)が、傾斜磁場アンプ128の最大動作周波数よりも十分大きくなる程度に、短い期間に設定することが望ましい。電解コンデンサ126からの1回の放電は、傾斜磁場アンプ128の最大動作周波数の逆数の時間内に行われるので、上記のようにΔt1〜Δtnの各期間の長さを設定すれば、十分正確に計算できるからである。例えば、1/Δtが傾斜磁場アンプ128の最大動作周波数の2倍、又は、3倍、又は、5倍となるように、Δtを設定することができる。
【0177】
また、Δt1〜Δtnの各期間の長さは、判定部102の計算負荷の観点から、許容される時間内に演算が終わる程度に、大きく設定することが望ましい。Δt1〜Δtnの期間が短いほど、分割数nが多くなり、計算負荷が増大するからである。
【0178】
ここでは一例として、傾斜磁場アンプ128がPWMアンプ(Pulse Width Modulation Amplifier:パルス幅変調増幅器)であるものとする。この場合、判定部102は、Δt1〜Δtnの各期間に対してそれぞれ、以下の判定対象値を算出する。即ち、判定対象値は、Δt1〜Δtnの各期間における電圧降下後の直流電源124の出力電圧Vfinに、傾斜磁場アンプ128内のスイッチング素子の最大デューティ比(1周期におけるオン期間の割合)を乗じた値である。
【0179】
判定部102は、判定対象値が、「出力電流Iout(t)の時間変化dIout(t)/dtの実現に必要な電圧Vout(t)」より小さくないという判定条件を満たすか否かをΔt1〜Δtnの各期間に対してそれぞれ判定する。上記の「出力電流Iout(t)の時間変化dIout(t)/dtの実現に必要な電圧Vout(t)」は、撮像シーケンスの条件によって定まる出力電流Iout(t)を前記(27)式に代入して解くことで、第1の判定アルゴリズムで述べたように得られる出力電圧Vout(t)を指す。
【0180】
Δt1〜Δtnの各期間の内、上記判定条件を満たさないものが1つでもある場合、判定部102は、撮像シーケンスが実行不能であると判定する。実行不能と判定される場合、出力電流Iout(t)の波形がオーバーシュートし、画質が低下する可能性があるためである。
【0181】
判定部102は、Yチャネル、Zチャネルについても、上記のXチャネルの場合と同様に(36)式等に基づいて、Δt1〜Δtnの各期間において上記判定条件を満たすか否かを判定する。
【0182】
X、Y、Zの各チャネルにおいて、Δt1〜Δtnのどの期間に対しても、上記判定条件を満たす場合、判定部102は、撮像シーケンスが第3の判定アルゴリズムの判定条件を満たすと判定する。
撮像シーケンスが第3の判定アルゴリズムの判定条件を満たす場合、前記第1及び第2の判定アルゴリズムのいずれにおいても撮像シーケンスが実行不能と判定されなければ、撮像シーケンスが実行可能と判定される。
【0183】
なお、上記では「出力電流Iout(t)の時間変化dIout(t)/dtの実現に必要な電圧Vout(t)」との比較により判定したが、判定対象値が予め設定した閾値より低い場合、撮像シーケンスが実行不能であると判定してもよい。
【0184】
また、上記では傾斜磁場アンプ128がPWMアンプであると仮定して、電圧降下後の直流電源124の出力電圧Vfinに、スイッチング素子の最大デューティ比を乗じた値を判定の比較対象としたが、これは一例に過ぎない。傾斜磁場アンプ128、128’、128”がPWMアンプ以外の増幅器である場合、当該増幅器に関して「PWMアンプにおけるスイッチング素子の最大デューティ比」に相応する値を代わりに用いればよい。
【0185】
また、ここでは計算の簡単化のため、図10の時刻t1近辺における直流電源124の出力電流Ips(t)の立ち上がり時間Triseをゼロとして計算したが、これは一例に過ぎない。実際には、一定値になるまでの立ち上がり時間Triseはゼロではない。立ち上がり時間Triseを考慮して出力電流Ips(t)を正確に算出することで、上記判定対象値を算出してもよい。
【0186】
図11は、図4における出力電圧Vout(t)の波形について、図5の等価回路モデル140x及び前記(1)式〜(27)式に基づいて計算した場合の一例を示す模式図である。図11に示すように、出力電流Iout(t)の波形は、曲線的になる(なまる)ことはなく、シーケンスコントローラ56から傾斜磁場アンプ128の+側入力端子に入力される制御電圧波形と殆ど同じになる。シーケンスコントローラ56と、傾斜磁場アンプ128との間の配線において、大きな容量成分やインダクタンス成分は存在しないからである。
【0187】
一方、出力電圧Vout(t)の波形は、最終的には(27)式で算出できる。出力電圧Vout(t)の波形は、(33)式のように抵抗とコイルの直列回路で簡単化して図10に示した波形(複数の直線を連結した波形)よりも、曲線的になる(なまる)。
【0188】
例えば、時刻t1〜時刻t2の期間において、図10では(33)式の左辺第1項(R×Iout(t))がゼロからIout(t)の上昇に伴って直線的に増加するため、出力電圧Vout(t)の波形も直線的となっている。
【0189】
しかし、実際には、周波数が高いと、表皮効果などの影響により、X軸傾斜磁場コイル26xの抵抗成分26xRの抵抗値も変化する。その抵抗値の変化分や、渦電流で発生する磁場の影響、チョークコイルなどの影響が(1)式左辺の第3項(M×dI/dt)、第4項(M×dI/dt)として、抵抗とコイルの直列回路で簡単化した(33)式に対して追加されている。このため、図11の出力電圧Vout(t)では、各部において波形がなまり、これが実際のX軸傾斜磁場コイル26xに対する出力電圧にほぼ等しい。
【0190】
次に、撮像シーケンスが実行不能と判定された場合の撮像シーケンスの条件の再設定方法について、以下のケース1〜3に分けて説明する。
なお、「撮像シーケンス」とは、例えば、静磁場、傾斜磁場を撮像空間でどのように印加して、スピンエコーやEPIなどの内のどのような種類のパルスシーケンスにより、どのような条件でRF信号等を送信して、被検体からMR信号を収集するシーケンスであるか、の意味である。
「撮像シーケンスの条件」としては、例えば、フリップ角、繰り返し時間TR(Repetition Time)、スライス数、撮像領域であるFOV(Field Of View)、位相エンコード方向及び周波数エンコード方向のステップ数、EPIやスピンエコー法などのパルスシーケンスの種類、などが挙げられる。
【0191】
[ケース1]まず、第1の判定アルゴリズムにおいて撮像シーケンスが実行不能と判定された場合について説明する。例えば、繰り返し時間TRを長くする、スライス数を減らす、撮像領域であるFOVを広げる、位相エンコード方向及び周波数エンコード方向のステップ数を減らす、の少なくとも1つにより、傾斜磁場電源44に対する電気的負荷を軽減できる。
【0192】
即ち、上記のいずれかに従って撮像シーケンスの条件を修正することで、傾斜磁場コイル26の上昇温度を減らすことができ、第1の判定アルゴリズムにおいて実行不能と判定されないようになる。なお、第2及び第3の判定アルゴリズムについても、上記のいずれかに従って撮像シーケンスの条件を修正することで、実行不能と判定されないようになる。
【0193】
第1の判定アルゴリズムでは、撮像シーケンスの実行直後におけるX軸傾斜磁場コイル26xの推定温度が閾値よりも例えば5℃高くなった場合、条件設定部100は、例えば(29)式を以下のように逆算する。即ち、撮像シーケンスの実行後におけるX軸傾斜磁場コイル26xの推定温度が閾値になるように、撮像シーケンスの開始時刻から終了時刻までの消費電力Pxcoil(t)の時間積分値を算出する。
【0194】
次に、条件設定部100は、消費電力Pxcoil(t)の時間積分値が上記の算出値となるように、(28)式等に基づいて、出力電流Iout(t)及び出力電圧Vout(t)の各振幅をどの程度の割合で下げればよいかを逆算する。このような逆算結果に基づいて、撮像シーケンスの実行直後におけるX軸傾斜磁場コイル26xの推定温度が閾値となるように撮像シーケンスの条件の修正候補を算出することで、傾斜磁場発生システムの電力的使用限界近くまで撮像シーケンスの条件を設定可能にする。
【0195】
具体的には、条件設定部100は、繰り返し時間TRをどの程度の割合で長くすればよいか、スライス数を何%減らせばよいか、FOVをどの程度広げればよいか、位相エンコード方向及び周波数エンコード方向のステップ数をどの程度減らせばよいかを算出する。撮像シーケンス実行後におけるY軸傾斜磁場コイル26y又はZ軸傾斜磁場コイル26zの温度が閾値を超えた場合に関しても、上記同様である。
【0196】
ここで、画像再構成時の2次元フーリエ変換に際しては、位相エンコード方向及び周波数エンコード方向のステップ数は、nを自然数として、2のn乗であることが望ましい。従って、位相エンコード方向及び周波数エンコード方向のステップ数については、上記のステップ数をどの程度減らせばよいかの算出結果を満たすように、半分にする、1/4にする、1/8にする、といった修正をすることが望ましい。
【0197】
なお、撮像シーケンスの実行直後におけるX軸傾斜磁場コイル26xの推定温度が閾値となるように撮像シーケンスの条件の修正候補を算出するとしたが、これは一例に過ぎない。撮像シーケンスの実行後におけるX軸傾斜磁場コイル26xの推定温度が閾値より例えば1℃あるいは3℃低くなるように、傾斜磁場電源44に対して電気的負荷の観点から余裕を含ませた撮像シーケンスの条件の修正候補を算出してもよい。
【0198】
また、温度センサ70x1〜70x3、70y1〜70y3、70z1〜70z3から送信されるX、Y、Z軸傾斜磁場コイル26x、26y、26zの温度が、(例えば室温に設定される)所定値よりも十分高い場合、条件設定部100は、撮像シーケンスの条件の修正候補の表示指令に代えて、必要な冷却期間を算出して表示させてもよい。
【0199】
具体的には、例えば、温度センサから送信されるZ軸傾斜磁場コイル26zの温度が所定値よりも10℃高く、第1のアルゴリズムの判定の結果、撮像シーケンスの実行後におけるZ軸傾斜磁場コイル26zの温度算出値が閾値よりも5℃高い場合を考える。この場合、Z軸傾斜磁場コイル26zの温度が5℃以上下がるのを待ってから、撮像シーケンスを実行すれば、第1のアルゴリズムにおいて実行不能とは判定されない。
【0200】
[ケース2]次に、第2の判定アルゴリズムにおいて撮像シーケンスが実行不能と判定された場合について説明する。条件設定部100は、判定部102の算出結果に基づいて、撮像シーケンスの全期間を通してブレーカ122に流れる電流値が最大の時間帯において、当該電流値がブレーカ122の定格電流をどの程度の割合で超過しているかを算出する。
【0201】
条件設定部100は、上記算出結果に基づいて、ブレーカ122に流れる電流値が最大の時間帯において、合計入力電力Pin(t)をどの程度の割合で減らせば、当該時間帯にブレーカ122に流れる電流値が定格電流に等しくなるかを算出する。
【0202】
この算出結果に基づいて、条件設定部100は、(32)式、(31)式、(28)式、(27)式等から、出力電流Iout(t)及び出力電圧Vout(t)の各振幅をどの程度の割合で下げればよいかを逆算する。条件設定部100は、このような逆算結果に基づいて、ブレーカ122に流れる電流値が最大の時間帯において、当該電流値がブレーカ122の定格電流となるように、撮像シーケンスの条件の修正候補を算出する。
【0203】
なお、ブレーカ122に流れる電流値が最大の時間帯において、当該電流値がブレーカ122の定格電流に等しくなるように撮像シーケンスの条件の修正候補を算出するとしたが、これは一例に過ぎない。ブレーカ122に流れる電流値が最大の時間帯において、当該電流値がブレーカ122の定格電流の例えば95%或いは90%となるように、撮像シーケンスの条件の修正候補を算出してもよい。
【0204】
[ケース3]次に、第3の判定アルゴリズムにおいて撮像シーケンスが実行不能と判定された場合について説明する。まず、Xチャネルにおいて、前記判定条件を満たさなかった場合を考える。条件設定部100は、判定部102の算出結果に基づいて、判定対象値が最大の割合で出力電圧Vout(t)を下回った期間(Δt)を判定し、どの程度の割合で下回ったかを算出する。
【0205】
この算出結果と、傾斜磁場アンプ128内のスイッチング素子の最大デューティ比と、(36)式、(34)式、(28)式、(27)式等に基づいて、条件設定部100は、出力電流Iout(t)及び出力電圧Vout(t)の各振幅をどの程度の割合で下げればよいかを逆算する。
【0206】
条件設定部100は、このような逆算結果に基づいて、前記判定対象値が、X軸傾斜磁場コイル26xへの出力電圧Vout(t)を下回らないように、撮像シーケンスの条件の修正候補を算出する。条件設定部100は、Yチャネル又はZチャネルについて前記判定条件を満たさなかった場合についても、上記同様にして撮像シーケンスの条件の修正候補を算出する。
【0207】
条件設定部100は、以上のようにして撮像シーケンスの条件の修正候補を算出し、これを表示制御部98に入力し、表示装置64(モニタ)に表示させる。
【0208】
図12は、第1〜第3の判定アルゴリズムの実行前における、撮像シーケンスの条件の設定用の表示画面の一例を示す模式図である。図12に示すように、位置決め画像180上には、現在設定されている本スキャンのFOVの太枠182が重畳表示される。
【0209】
図12において、ボックス184の表示内容は、FOVの縦横のサイズ(ミリメートル)を示す。ボックス190の表示内容は、本スキャンのスライス数を示す。ボックス192の表示内容は、本スキャンの繰り返し時間の長さを示す。ボックス194の表示内容は、本スキャンの位相エンコード方向のステップ数を示す。ボックス196の表示内容は、本スキャンの周波数エンコード方向のステップ数を示す。ボックス198の表示内容は、本スキャンのフリップ角を示す。
【0210】
また、ボタン208は、これをクリックすることで、撮像シーケンスの条件についての複数の設定画面の内の前の画面を表示させるものである。ボタン210は、これをクリックすることで、撮像シーケンスの条件についての複数の設定画面の内の次の画面を表示させるものである。
【0211】
図13は、第1〜第3の判定アルゴリズムの少なくとも1つにおいて撮像シーケンスが実行不能と判定された場合における、撮像シーケンスの条件の設定用の表示画面の一例を示す模式図である。
【0212】
撮像シーケンスが実行不能と判定部102が判定した場合、条件設定部100は、撮像シーケンスの各条件の内、変更すべき条件の表示態様を変え、識別表示にする。具体的に例えば、変更すべき撮像シーケンスの条件のボックス184、190、192、194、196の表示色を赤色などの周囲とは異なる有彩色にするか、それらボックス内の数値を点滅表示させるか、図13のようにそれらボックスの枠を太く表示する。
【0213】
図13の例では、ボックス184において、FOVを125mm×125mmから250mm×250mmにすることが、撮像シーケンスの条件の一修正候補として表示されている。また、ボックス190において、スライス数を100枚から50枚に減らすことが、撮像シーケンスの条件の一修正候補として表示されている。
【0214】
また、ボックス192において、繰り返し時間TRを500msから1000msに延長することが、撮像シーケンスの条件の一修正候補として表示されている。また、ボックス194及び196において、位相エンコードステップ数及び周波数エンコードステップ数をそれぞれ256から128に減らすことが、撮像シーケンスの条件の一修正候補として表示されている。
【0215】
ユーザは、入力装置62を介して、表示装置64に表示されている撮像シーケンスの条件の修正候補のいずれか又は複数を選択することで、当該撮像シーケンスの条件を変更し、当該撮像シーケンスを実行可能にすることができる。
【0216】
図14は、本実施形態におけるMRI装置20の動作の流れを示すフローチャートである。以下、前述した各図を適宜参照しながら、図14に示すステップ番号に従って、MRI装置20の動作を説明する。
【0217】
[ステップS1]MPU86(図3参照)は、入力装置62を介してMRI装置20に対して入力された撮像シーケンスの条件(前述したように、例えば、パルスシーケンスの種類や、フリップ角、FOVなど)に基づいて、MRI装置20の初期設定を行う。また、プレスキャンなどによってRFパルスの中心周波数等が設定される。この後、ステップS2に進む。
【0218】
[ステップS2]位置決め画像の撮像が行われる。具体的には、寝台32(図1参照)に被検体QQがセットされ、静磁場電源40により励磁された静磁場用磁石22によって撮像空間に静磁場が形成される。また、シムコイル電源42からシムコイル24に電流が供給されて、撮像空間に形成された静磁場が均一化される。
【0219】
そして、入力装置62からMPU86に撮像開始指示が入力されると、MPU86は、傾斜磁場の印加などがパルスシーケンスとして含まれる撮像シーケンスの条件をシーケンスコントローラ56に入力する。シーケンスコントローラ56は、入力されたパルスシーケンスに従って傾斜磁場電源44、RF送信器46及びRF受信器48を駆動させることで、撮像領域に傾斜磁場を形成させると共に、RFコイル28からRF信号を発生させる。
【0220】
このため、被検体QQの内部の核磁気共鳴により生じたMR信号がRFコイル28により受信されて、RF受信器48により検出される。RF受信器48は、検出したMR信号に所定の信号処理を施した後、これをA/D変換することで、デジタル化したMR信号である生データ(RAWデータ)を生成する。RF受信器48は、生成した生データをシーケンスコントローラ56に入力する。シーケンスコントローラ56は、生データを画像再構成部90に入力し、画像再構成部90は、k空間データベース92に形成されたk空間において、生データをk空間上のマトリクスデータとして配列する。
【0221】
画像再構成部90は、k空間データベース92からk空間上のマトリクスデータを取り込み、これにフーリエ変換を含む画像再構成処理を施すことで画像データを再構成し、得られた画像データを画像データベース94に保存する。
【0222】
画像処理部96は、画像データベース94から画像データを取り込み、これに所定の画像処理を施すことで2次元の表示用画像データを生成し、この表示用画像データを記憶装置66に保存する。この後、ステップS3に進む。
【0223】
[ステップS3]MPU86は、位置決め画像の表示用画像データを記憶装置66から表示制御部98に転送させ、表示装置64に位置決め画像を表示させる。
【0224】
この後、入力装置62を介してMRI装置20に対して入力された撮像シーケンスの条件(前述したように、例えば、パルスシーケンスの種類や、フリップ角、FOVなど)に基づいて、条件設定部100は、本スキャンの撮像シーケンスの各条件を設定する。
ここで設定する「本スキャンの撮像シーケンス」とは、静磁場の印加が含まれると共に、前記した装置座標系の傾斜磁場Gx、Gy、Gzの印加がパルスシーケンスとして含まれるMRIのシーケンスである。なお、傾斜磁場Gxは、X軸傾斜磁場コイル26xを流れる出力電流Iout(例えば図11参照)により定まり、傾斜磁場Gy、Gzはそれぞれ、Y、Z軸傾斜磁場コイル26y、26zを流れる電流により定まる。
即ち、後述のステップS11の本スキャンでは、上記の傾斜磁場Gx、Gy、Gzの合成により、論理軸としてのスライス選択方向傾斜磁場Gss、位相エンコード方向傾斜磁場Gpe、及び、読み出し方向傾斜磁場Gro(例えば図9参照)が撮像空間に形成される。この後、ステップS4に進む。
【0225】
[ステップS4]温度センサ70x1〜70x3(図2参照)は、X軸傾斜磁場コイル26xの温度をそれぞれ検出し、シーケンスコントローラ56を介して判定部102に検出温度をそれぞれ入力する。同様に、温度センサ70y1〜70y3は、Y軸傾斜磁場コイル26yの温度を、温度センサ70z1〜70z3はZ軸傾斜磁場コイル26zの温度を、それぞれ検出して判定部102に入力する。
【0226】
ここでは一例として、判定部102は、温度センサ70x1〜70x3の各検出温度の内、最大の温度をX軸傾斜磁場コイル26xのシーケンス前温度TBxとして記憶する。また、判定部102は、温度センサ70y1〜70y3の各検出温度の内、最大の温度をY軸傾斜磁場コイル26yのシーケンス前温度TByとして記憶する。また、判定部102は、温度センサ70z1〜70z3の各検出温度の内、最大の温度をZ軸傾斜磁場コイル26zのシーケンス前温度TBzとして記憶する。
このように制御装置30内の判定部102は、シーケンス前温度TBx、TBy、TBzを(MRI装置20の各温度センサから)取得する。この後、ステップS5に進む。
【0227】
[ステップS5]判定部102は、ステップS3で設定された本スキャンの撮像シーケンスの各条件に基づいて、第1の判定アルゴリズムを実行する。即ち、判定部102は、等価回路モデル140xと、シーケンス前温度TBx、TBy、TBzとに基づいて、本スキャンを実行したと仮定した場合における本スキャン実行直後のX、Y、Z軸傾斜磁場コイル26x、26y、26zの各推定温度TAx、TAy、TAzをシーケンス後温度として算出する。
【0228】
算出した推定温度TAx、TAy、TAzの内、閾値を超えるものがある場合、判定部102は、現在設定されている撮像シーケンスを実行不能と判定する。なお、第1の判定アルゴリズムの詳細は、前述した通りである。この後、ステップS6に進む。
【0229】
[ステップS6]判定部102は、ステップS3で設定された本スキャンの撮像シーケンスの各条件に基づいて、第2の判定アルゴリズムを実行する。即ち、判定部102は、等価回路モデル140xと、傾斜磁場アンプ128、128’、128”及びX、Y、Z軸傾斜磁場コイル26x、26y、26zの各消費電力に基づいて、ブレーカ122に流れる電流を算出する。
【0230】
ブレーカ122に流れる電流が、ブレーカ122の定格電流を超える時間帯がある場合、判定部102は、現在設定されている撮像シーケンスを実行不能と判定する。なお、第2の判定アルゴリズムの詳細は、前述した通りである。この後、ステップS7に進む。
【0231】
[ステップS7]判定部102は、ステップS3で設定された本スキャンの撮像シーケンスの各条件に基づいて、第3の判定アルゴリズムを実行する。即ち、判定部102は、等価回路モデル140xに基づいて、X、Y、Zの各チャネル毎に、撮像シーケンスの実行した場合における直流電源124の電圧降下後の出力電圧Vfinを算出し、これが傾斜磁場コイルに印加されるべき出力電圧Vout(t)を下回る時間帯Δtがあるか否かを判定する。
【0232】
X、Y、Zの各チャネルの内、1つでも下回ると判定された時間帯Δtがあれば、判定部102は、現在設定されている撮像シーケンスを実行不能と判定する。なお、第3の判定アルゴリズムの詳細は、前述した通りである。
【0233】
なお、便宜上、ステップS5〜S7において第1、第2、第3の判定アルゴリズムの順に実行する例を述べたが、これは一例にすぎず、ステップS5〜S7の順番は順不同である。また、例えば判定部102内に演算処理機構として第1判定部、第2判定部、第3判定部の3つを設けて、第1〜第3の判定アルゴリズムを第1〜第3判定部にそれぞれ同時に並行して実行させてもよい。この後、ステップS8に進む。
【0234】
[ステップS8]判定部102は、第1、第2、第3の判定アルゴリズムのどれにおいても撮像シーケンスが実行不能と判定されなかった場合のみ、撮像シーケンスを実行可能と判定し、それ以外の場合には撮像シーケンスを実行不能と判定する。撮像シーケンスが実行可能と判定された場合、ステップS11に進み、撮像シーケンスが実行不能と判定された場合、ステップS9に進む。
【0235】
[ステップS9]条件設定部100は、判定部102の演算結果に基づいて、ここでは一例として以下の第1〜第7の場合に分けて撮像シーケンスの条件の修正候補を算出する。
【0236】
第1に、第1の判定アルゴリズムにおいてのみ、撮像シーケンスが実行不能と判定された場合、条件設定部100は、第1の判定アルゴリズムにおいて撮像シーケンスが実行不能と判定されないように、撮像シーケンスの条件の修正候補を算出する(ケース1参照)。
【0237】
第2に、第2の判定アルゴリズムにおいてのみ、撮像シーケンスが実行不能と判定された場合、条件設定部100は、第2の判定アルゴリズムにおいて撮像シーケンスが実行不能と判定されないように、撮像シーケンスの条件の修正候補を算出する(ケース2参照)。
【0238】
第3に、第3の判定アルゴリズムにおいてのみ、撮像シーケンスが実行不能と判定された場合、条件設定部100は、第3の判定アルゴリズムにおいて撮像シーケンスが実行不能と判定されないように、撮像シーケンスの条件の修正候補を算出する(ケース3参照)。
【0239】
第4に、第1及び第2の判定アルゴリズムにおいて実行不能と判定された場合、条件設定部100は、例えばまず、第1の判定アルゴリズムにおいて撮像シーケンスが実行不能と判定されないように、撮像シーケンスの条件の修正候補を算出する。次に、条件設定部100は、修正候補に従って修正された撮像シーケンスの条件に基づいて、第2の判定アルゴリズムを実行し、修正された撮像シーケンスの実行可否を判定する。実行不能と判定された場合のみ、条件設定部100は、修正された撮像シーケンスの条件に対し、さらに第2の判定アルゴリズムにおいて実行不能と判定されないように、撮像シーケンスの条件の修正候補を再算出する(次のステップS10では再算出後の修正候補が表示される)。
【0240】
第5に、第1及び第3の判定アルゴリズムにおいて実行不能と判定された場合、条件設定部100は、同様に第1の判定アルゴリズムで実行不能と判定されないように、撮像シーケンスの条件の修正候補を算出する。次に、条件設定部100は、この修正候補に従って修正された撮像シーケンスの条件に基づいて、第3の判定アルゴリズムにより実行可否を判定する。実行不能と判定された場合のみ、条件設定部100は、修正された撮像シーケンスの条件に対して、第3の判定アルゴリズムにおいて実行不能と判定されないように撮像シーケンスの条件の修正候補を再算出する。
【0241】
第6に、第2及び第3の判定アルゴリズムにおいて実行不能と判定された場合、条件設定部100は、同様に第2の判定アルゴリズムで実行不能と判定されないように、撮像シーケンスの条件の修正候補を算出する。次に、条件設定部100は、この修正候補に従って修正された撮像シーケンスの条件に基づいて、第3の判定アルゴリズムにより実行可否を判定する。実行不能と判定された場合のみ、条件設定部100は、修正された撮像シーケンスの条件に対して、第3の判定アルゴリズムにおいて実行不能と判定されないように撮像シーケンスの条件の修正候補を再算出する。
【0242】
第7に、第1〜第3の全判定アルゴリズムにおいて実行不能と判定された場合、条件設定部100は、第1の判定アルゴリズムにおいて実行不能と判定されないように、撮像シーケンスの条件の修正候補を算出する。次に、条件設定部100は、修正候補に従って修正された撮像シーケンスの条件に基づいて、第2の判定アルゴリズムにより、その実行可否を判定する。実行可能と判定された場合、そのままステップS10に移行するが、実行不能と判定された場合、条件設定部100は、修正された撮像シーケンスの条件に対し、さらに第2の判定アルゴリズムにおいて実行不能と判定されないように、撮像シーケンスの条件の修正候補を再算出する。
【0243】
この後、条件設定部100は、再算出後の修正候補に従って再修正された撮像シーケンスの条件に基づいて、第3の判定アルゴリズムを実行し、その実行可否を判定する。実行可能と判定された場合、そのままステップS10に移行するが、実行不能と判定された場合、条件設定部100は、再修正された撮像シーケンスの条件に対し、さらに第3の判定アルゴリズムにおいて実行不能と判定されないように、撮像シーケンスの条件の修正候補を再度算出する。
【0244】
条件設定部100は、以上のように第1〜第7の場合に分けて、第1〜第3の全判定アルゴリズムにおいて実行不能と判定されないように、撮像シーケンスの条件の修正候補を算出する。この後、ステップS10に進む。
【0245】
[ステップS10]条件設定部100は、ステップS9で最終的に算出された撮像シーケンスの条件の修正候補を表示制御部98に入力し、表示装置64上で識別表示させる(図13参照)。
【0246】
この後、ユーザにより撮像シーケンスの条件が再設定される。このとき、入力装置62及び表示装置64の表示態様は、ユーザが撮像シーケンスの条件の修正候補のいずれを選択することも、任意の撮像シーケンスの条件を入力することもできるように構成される。この後、ステップS5に戻る。
【0247】
[ステップS11]設定された本スキャンの撮像シーケンスの条件に従って、位置決め画像の撮像時と同様にデータ収集が行われ、シーケンスコントローラ56は、生データを画像再構成部90に入力する。この後、画像再構成部90は、k空間データベース92に形成されたk空間において、生データをk空間上のマトリクスデータとして配列する。マトリクスデータの生成後、撮像シーケンスがEPIの場合のみ、画像再構成部90は、図8及び図9を用いて説明したリグリッディングを行う。
【0248】
次に、画像再構成部90は、k空間データベース92からk空間データを取り込み、以下、位置決め画像の場合と同様に表示用画像データが生成されて記憶装置66に保存される。この後、MPU86は、表示用画像データを記憶装置66から表示制御部98に転送させ、表示装置64に本スキャンの撮像画像を表示させる。
以上が本実施形態のMRI装置20の動作説明である。
【0249】
このように本実施形態では、表皮効果や渦電流などの影響を加味して、1次側との相互誘導を生じる2次側回路を備えた等価回路モデル140xを用いる。傾斜磁場コイルへの出力電圧Vout(t)の算出に際しては、等価回路モデル140xにより導出された(27)式を用い、(27)式におけるRload等の各定数の値を予め求めて判定部102に記憶させておく。従って、撮像シーケンスにより規定される傾斜磁場波形を与える出力電流Iout(t)と、(27)式等に基づいて、その出力電流Iout(t)の実現に必要な出力電圧Vout(t)を正確に算出できる。
【0250】
上記のように正確に算出された出力電圧Vout(t)に基づいて、第1〜第3の判定アルゴリズムを実行し、3つの観点から撮像シーケンスの実行可否を判定する。即ち、撮像シーケンス実行直後の傾斜磁場コイル26の温度が閾値を超えないか、ブレーカ122を流れる電流がブレーカ122の定格電流を超えないか、直流電源124の電圧降下後の電圧Vfinが出力電圧Vout(t)を下回らないか、の3つの観点から判定する。このため、撮像シーケンスが実行可能か否かを正確に判定できる(ステップS5〜S8)。
【0251】
上記の判定結果に基づいて、第1〜第3の判定アルゴリズムにおいて実行不能と判定されないように撮像シーケンスの条件の修正候補を算出し、表示する(ステップS9、S10)。このため、ユーザは、撮像シーケンスの条件の修正候補を選択するだけで、その撮像シーケンスを実行可能にすることができる。即ち、極めて利便性のよい撮像シーケンスの設定用コンソールを提供することができる。
【0252】
傾斜磁場コイル26への出力電流Iout(t)の実現に必要な出力電圧Vout(t)を正確に算出できるため、傾斜磁場発生システムの電力的使用限界近くまでの撮像シーケンスの条件を設定可能にすることができる。
【0253】
具体的には例えば、第1の判定アルゴリズムにおいて実行不能と判定された場合、撮像シーケンスの実行直後の傾斜磁場コイルの推定温度が閾値となるように撮像シーケンスの条件の修正候補を算出する。これにより、傾斜磁場発生システムの電力的使用限界近くまでの負荷がかかる撮像シーケンスの条件を設定可能にすることができる。第2又は第3の判定アルゴリズムにおいて実行不能と判定された場合も同様である(前記ケース2、ケース3参照)。
【0254】
さらに、撮像シーケンスがEPIの場合、各サンプリング間隔ΔTsの長さが、各サンプリング間隔ΔTsに含まれるMR信号の受信時刻での傾斜磁場強度に応じた長さとなるように、サンプリング間隔ΔTsの長さを変更し、リグリッディングを行う。EPIのように短い時間間隔で各ラインのMR信号を受信する場合、上記リグリッディングを行うことで、画像再構成の精度を向上できる結果、画質を向上できる。
以上説明した実施形態によれば、MRIの傾斜磁場発生システムの電気的負荷の観点から、撮像シーケンスの実行可否を正確に判定できる。
【0255】
傾斜磁場コイル26のインピーダンスの測定値としては、傾斜磁場コイル26だけに対する測定値ではなく、ラインフィルタや出力ケーブルなどを含めた測定値を使用してもよい。その場合、図5の等価回路モデル140xとは別の回路モデルに基づいて、上記第1〜第3の判定アルゴリズムを実行してもよい。
【0256】
図15は、ラインフィルタを考慮した場合における、傾斜磁場電源44及び傾斜磁場コイル26のブロック図である。即ち、X、Y、Z軸傾斜磁場コイル26x、26y、26zと、傾斜磁場アンプ128、128’、128”との間にそれぞれ、ノイズ除去用のラインフィルタ250、250’、250”が挿入される。その他の点は、図4に示した回路構成と同様である。
【0257】
図16は、撮像シーケンスの実行可否を判定する演算において用いられる傾斜磁場発生システムの等価回路モデルの別の一例を示す回路図である。
【0258】
図16に示す等価回路モデル140x’は、第3の2次側回路を図5の等価回路モデル140xに追加した構成である。第3の2次側回路は、ラインフィルタ(250、250’、250”のいずれか)の容量成分に相当するコンデンサ143Cと、ラインフィルタのインダクタンス成分に相当する仮想コイルとしてのコイル143Lと、ラインフィルタの抵抗成分に相当する抵抗143Rとを直列に接続した構成である。コイル143Lは、コイル26xLと磁気的に結合している。
【0259】
コンデンサ143Cの容量値をC、コイル143Lの自己インダクタンス値をL、抵抗143Rの抵抗値をR、第3の2次側回路内で図の矢印方向に流れる電流値をI(t)、コイル143L−コイル26xL間の相互インダクタンス値をMとする。このとき、以下の(37)式、(38)式、(39)式、(40)式が成り立つ。
【0260】
【数17】

【0261】
(37)式〜(40)式に基づいて、上記実施形態と同様に第1〜第3の判定アルゴリズムを実行してもよい。
【0262】
図17は、撮像シーケンスの実行可否を判定する演算において用いられる傾斜磁場発生システムの等価回路モデルのさらに別の一例を示す回路図である。図17の等価回路モデル140x”は、第3の2次側回路のコンデンサ143C、仮想コイルとしてのコイル143L、抵抗143Rの接続を並列接続に変更した点を除き、上記等価回路モデル140x’と同様である。
【0263】
この場合、第3の2次側回路においてコイル143Lを図の矢印方向に流れる電流値をI(t)とし、同方向にコンデンサ143Cを流れる電流値をI31(t)とし、同方向に抵抗143Rを流れる電流値をI32(t)とする。これにより、I(t)は、I31(t)と、I32(t)との和になる。そうすると、以下の(41)式、(42)式、(43)式、(44)式、(45)式、(46)式が成り立つ。
【0264】
【数18】

【0265】
(41)式〜(46)式に基づいて、上記実施形態と同様に第1〜第3の判定アルゴリズムを実行してもよい。
【0266】
撮像シーケンスがEPIの場合に限って、図8、図9を用いて説明したリグリッディングを行う例を述べた。本発明の実施形態は、かかる態様に限定されるものではない。EPIではない撮像シーケンスの場合にリグリッディングを行ってもよい。
【0267】
撮像シーケンスの実行前に充電されて、撮像シーケンスの実行時に傾斜磁場アンプ128、128’、128”に放電電流を流す電力供給源として、電解コンデンサ126、126’、126”を用いる例を述べた。本発明の実施形態は、かかる態様に限定されるものではない。
【0268】
電解コンデンサ126、126’、126”の代わりに、2次電池や電気二重層コンデンサなどの充放電素子を用いてもよい。ここでの充放電素子とは、コンデンサや2次電池などのように、充電及び放電の繰り返しが可能な回路素子の意味である。
【0269】
ステップS9において、撮像シーケンスの条件の修正候補を算出して表示する例を述べた。本発明の実施形態は、かかる態様に限定されるものではない。撮像シーケンスの条件の修正候補を算出は、必須ではなく、省略してもよい。
【0270】
例えば、ステップS8において、撮像シーケンスが実行不能と判定された場合、表示装置64において、修正すべき撮像シーケンスの条件のパラメータのボックス(184、190、192、194、196)の表示態様を変化させ、識別的にしてもよい。この後、撮像シーケンスの条件が修正された場合には、ステップS5に戻ればよい。そのように撮像シーケンスの条件の修正と、撮像シーケンスの実行可否の判定とを繰り返し、ステップS8において撮像シーケンスが実行可能と判定された時点で始めて、本スキャンの実行に処理を移行できるようにすればよい。
【0271】
MRI装置20では、例えば、静磁場用磁石22、シムコイル24、傾斜磁場コイル26などが図2に記載のガントリ21と呼ばれる円筒状の構造体の中に収納される。図1では、静磁場用磁石22、シムコイル24、傾斜磁場コイル26の外側に、即ち、ガントリ21の外にRF受信器48が存在する例を述べた。本発明の実施形態は、かかる態様に限定されるものではない。RF受信器48がガントリ21内に含まれる態様でもよい。
具体的には例えば、RF受信器48に相当する電子回路基盤をガントリ21内に配設する。そして、受信用RFコイルによって電磁波からアナログの電気信号に変換されたMR信号を、当該電子回路基盤内のプリアンプによって増幅し、デジタル信号としてガントリ21外に出力し、シーケンスコントローラ56に入力してもよい。
【0272】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0273】
20 MRI装置
26 傾斜磁場コイル
30 制御装置
100 条件設定部
102 判定部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁気共鳴イメージング装置で実行される撮像シーケンスの条件に基づいて、前記撮像シーケンスを設定する条件設定部と、
前記磁気共鳴イメージング装置の傾斜磁場コイルに供給される電流値を前記撮像シーケンスの条件に基づいて算出すると共に、前記傾斜磁場コイルとの間に相互誘導を生じる仮想コイルが存在するとの仮定の上で、前記傾斜磁場コイルと前記仮想コイルとの間の相互インダクタンスに基づいて、前記電流値を与えるように前記傾斜磁場コイルに印加されるべき電圧値を算出し、前記電圧値に基づいて前記撮像シーケンスの実行可否を前記撮像シーケンスの実行前に判定する判定部と
を備えることを特徴とする磁気共鳴イメージング装置の制御装置。
【請求項2】
前記判定部は、前記電流値及び前記電圧値に基づいて前記傾斜磁場コイルの消費電力を算出し、前記消費電力の時間積分値に基づいて前記撮像シーケンスを実行した場合における前記傾斜磁場コイルの上昇温度を算出し、前記上昇温度に基づいて前記撮像シーケンスの実行可否を判定する
ことを特徴とする請求項1に記載の磁気共鳴イメージング装置の制御装置。
【請求項3】
前記判定部は、前記撮像シーケンスの実行前の前記傾斜磁場コイルの温度をシーケンス前温度として前記磁気共鳴イメージング装置から取得し、前記シーケンス前温度及び前記上昇温度に基づいて前記撮像シーケンスの実行後の前記傾斜磁場コイルの温度をシーケンス後温度として算出し、前記シーケンス後温度が所定値を上回る場合には前記撮像シーケンスを実行不能と判定する
ことを特徴とする請求項2に記載の磁気共鳴イメージング装置の制御装置。
【請求項4】
前記傾斜磁場コイルに電力供給をする傾斜磁場アンプと、外部電源から前記傾斜磁場アンプへの電力供給経路に挿入されたブレーカとを有し、
前記判定部は、前記電流値及び前記電圧値に基づいて、前記傾斜磁場コイルの消費電力と、前記傾斜磁場アンプ内の消費電力とを算出して合算し、この合算した消費電力に基づいて前記ブレーカを流れる電流値を算出し、前記ブレーカを流れる電流値と、前記ブレーカの定格電流値とに基づいて前記撮像シーケンスの実行可否を判定する
ことを特徴とする請求項1に記載の磁気共鳴イメージング装置の制御装置。
【請求項5】
前記傾斜磁場コイルに電力供給をする傾斜磁場アンプと、前記傾斜磁場アンプに電力供給をする直流電源と、前記直流電源により充電されると共に放電電流として前記傾斜磁場アンプに電力供給をする充放電素子とを有し、
前記判定部は、前記電流値及び前記電圧値に基づいて、前記傾斜磁場コイルの消費電力と、前記傾斜磁場アンプの消費電力とを算出して合算し、この合算した消費電力と、前記直流電源及び前記充放電素子の各供給電力とに基づいて、前記撮像シーケンスを実行した場合における前記直流電源の出力電圧を算出し、前記傾斜磁場コイルに印加されるべき電圧値よりも前記直流電源の出力電圧が小さい時間帯がある場合には前記撮像シーケンスを実行不能と判定する
ことを特徴とする請求項1に記載の磁気共鳴イメージング装置の制御装置。
【請求項6】
前記撮像シーケンスの実行により複数のサンプリング期間においてそれぞれ受信された複数の磁気共鳴信号のラインを、サンプリング間隔で周波数エンコードステップ数に分けることで、k空間上のマトリクスデータを生成する画像再構成部をさらに備え、
前記画像再構成部は、前記仮想コイルに流れる電流値を算出することにより、前記仮想コイルが発生する仮想磁場波形と、前記傾斜磁場コイルが発生する磁場波形との合算磁場波形を算出後、各々の前記サンプリング間隔の各長さが、各々の前記サンプリング間隔に含まれる前記磁気共鳴信号の各受信時刻での前記合算磁場強度に応じた長さとなるように、前記サンプリング間隔の長さを変更することで、前記マトリクスデータの再配列を行う
ことを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の磁気共鳴イメージング装置の制御装置。
【請求項7】
前記撮像シーケンスを実行不能と前記判定部が判定した場合に、前記条件設定部は、前記判定部により実行可能と判定されるように前記撮像シーケンスの条件の修正候補を算出し、前記修正候補を表示装置に表示させる
ことを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれか1項に磁気共鳴イメージング装置の制御装置。
【請求項8】
前記撮像シーケンスを実行不能と前記判定部が判定した場合に、前記撮像シーケンスの各条件の内、修正すべき条件の表示態様を変更して前記表示装置に表示させる
ことを特徴とする請求項7に記載の磁気共鳴イメージング装置の制御装置。
【請求項9】
前記条件設定部は、繰り返し時間の延長、画像化する領域であるFOVの拡大、スライス数の削減、位相エンコード方向及び周波数エンコード方向のマトリクスサイズの縮小の少なくとも1つを前記修正候補として算出する
ことを特徴とする請求項7に記載の磁気共鳴イメージング装置の制御装置。
【請求項10】
請求項1乃至請求項9のいずれか1項に記載の制御装置と、
前記制御装置の制御によって被検体が置かれる撮像空間に傾斜磁場を印加する傾斜磁場コイルと
を備えることを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2013−173(P2013−173A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−131388(P2011−131388)
【出願日】平成23年6月13日(2011.6.13)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(594164542)東芝メディカルシステムズ株式会社 (4,066)
【Fターム(参考)】