説明

磁気共鳴イメージング装置及び実数成分画像取得方法

【課題】 撮像時間を延長することなく、位相補正の精度を向上し、安定した実数成分画像を取得できるMRI装置及び実数成分画像取得方法を提供する。
【解決手段】 位相補正用エコーデータを取得するための第1シーケンス部と画像用エコーデータを取得するための第2シーケン部とを、時間間隔TIを空けて組み合わせた撮像シーケンスを用い、第1シーケンス部の最後に縦磁化調整RFパルスを照射する。そして、第1シーケンス部で計測されたエコー信号に基づいて、第2シーケンス部で計測されたエコー信号に基づいて再構成された複素画像データを位相補正し、位相補正後の複素画像データの内の実数成分を抽出して前記実数成分画像を作成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気共鳴イメージング装置(以下、MRI装置という)に係り、特に、実数成分画像の取得に関する。
【背景技術】
【0002】
MRI装置は、被検体、特に人体の組織を構成する原子核スピンが発生する核磁気共鳴(NMR)信号を計測し、その頭部、腹部、四肢等の形態や機能を2次元的に或いは3次元的に画像化する装置である。撮影においては、NMR信号には、傾斜磁場によって異なる位相エンコードが付与されるとともに周波数エンコードされて、時系列データとして計測される。計測されたNMR信号は、2次元又は3次元フーリエ変換されることにより画像に再構成される。
【0003】
このMRI装置において、各組織における原子核スピンの縦緩和時間(T1)の差異を画像のコントラストに反映させる撮像法として、反転回復(Inversion Recovery)法(IR法)が用いられる。
【0004】
IR法は、最初に核磁化を180度反転させるRFパルス(反転パルス)を照射し、反転時間(TI)経過後にエコー信号を取得し、TI経過時における各組織の縦磁化の大きさを画像のコントラストに反映させる。
【0005】
更に、取得されたエコー信号をフーリエ変換した後の実数成分のみを画像化した実数成分画像は、TIにおける各組織の縦磁化の符号が反映され、正確なT1コントラストを得ることが可能となる。
【0006】
しかし、IR法で計測されたエコー信号には、静磁場の空間的不均一や読み出し方向傾斜磁場の不良等のMRI装置の不完全性などに基づく空間的な位相変化が潜在する。各組織における縦磁化の符号は、画像化のために取得されるエコー信号に基づいて再構成された複素画像の位相として保持される。そのため、上記位相変化がある場合には、TIにおける各組織の縦磁化の符号が複素画像の位相に正しく反映されず、結果として所望の実数成分画像が得られない。したがって、複素画像の位相からこれらの位相変化を取り除く必要がある。
【0007】
特許文献1には、画像化のためのエコー信号を取得する本計測のパルス系列から、IRパルスを取り除き、さらに位相エンコードをゼロとしたテンプレートスキャンによって、基準位相データを取得する方法が開示されている。基準位相データは反転パルスによる位相の反転を含まず、上記の空間的な位相変化のみを含むため、この基準位相データを用いて本計測によって得られるエコー信号の位相変化を補正することにより、実数成分画像を得ている。
【0008】
また、特許文献2には、n個の180度パルスとその前後の1つずつの90度パルスを有して成る強制反転パルスの実行期間中にも画像データの収集を行い、FLAIR画像とは異なるコントラストの画像を得ている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2001-299724号公報
【特許文献2】特開2004-166751号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献1に記載の方法は、テンプレートスキャンをイメージングスキャンの間に挿入するため、たとえば、テンプレートスキャンを本計測の準備計測として行うプリスキャンにて行った場合、プリスキャンから本計測までの間に被検体の動きなどにより、位相変化が異なる状態になることが考えられる。また本計測の間にテンプレートスキャンを挿入すると、撮像時間が延長してしまう。
【0011】
特許文献2に記載の方法は、強制反転パルスの最後の90度パルスを用いて縦磁化を反転しているが、実数成分画像の取得及び位相補正の開示はない。
【0012】
そこで、本発明が解決すべき課題は、撮像時間を延長することなく、位相補正の精度を向上し、安定した実数成分画像を取得できるMRI装置及び実数成分画像取得方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するために本発明は、位相補正用エコーデータを取得するための第1シーケンス部と画像用エコーデータを取得するための第2シーケン部とを、時間間隔TIを空けて組み合わせた撮像シーケンスを用い、第1シーケンス部の最後に縦磁化調整RFパルスを照射する。そして、第1シーケンス部で計測されたエコー信号に基づいて、第2シーケンス部で計測されたエコー信号に基づいて再構成された複素画像データを位相補正し、位相補正後の複素画像データの内の実数成分を抽出して前記実数成分画像を作成する。
【0014】
具体的には、本発明のMRI装置は、被検体に照射するRFパルスを発生するRFパルス発生手段と、所定の撮像シーケンスに基づいて、RFパルス発生部を制御し、被検体からのエコー信号の計測を制御する計測制御部と、エコー信号のデータを演算処理して被検体の実数成分画像を取得する演算処理部と、を備え、撮像シーケンスは、第1シーケンス部と第2シーケンス部とを所定の時間間隔を空けて組み合わせて成り、第1シーケンス部は最後に縦磁化を所定の角度に回転するための縦磁化調整RFパルスを有し、演算処理部は、第1シーケンス部で計測されたエコー信号に基づいて、第2シーケンス部で計測されたエコー信号に基づいて再構成された複素画像データを位相補正し、位相補正後の複素画像データの内の実数成分を抽出して前記実数成分画像を作成することを特徴とする。
【0015】
また、本発明の実数成分画像取得方法は、位相補正用のエコー信号を計測するステップと、縦磁化を所定の角度回転させるための縦磁化調整RFパルスを照射するステップと、所定の時間間隔だけ時間を空けるステップと、画像用のエコー信号を計測するステップと、画像用のエコー信号に基づいて複素画像データを取得するステップと、複素画像データを位相補正用のエコー信号に基づく位相補正データを用いて位相補正するステップと、位相補正後の複素画像データの内から実数成分を抽出して実数成分画像を作成するステップと、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明のMRI装置及び実数成分画像取得方法によれば、撮像時間を延長することなく、位相補正の精度を向上し、安定した実数成分画像を取得できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明に係るMRI装置の全体構成を示すブロック図
【図2】実施例1の実数成分画像の取得に係る演算処理の各機能を表す機能ブロック図
【図3】実施例1の処理フローを表すフローチャート
【図4】実施例1の撮像シーケンスを表すシーケンスチャート
【図5】実施例2の撮像シーケンスを表すシーケンスチャート
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、添付図面に従って本発明のMRI装置の好ましい実施例について詳説する。なお、発明の実施例を説明するための全図において、同一機能を有するものは同一符号を付け、その繰り返しの説明は省略する。
【0019】
最初に、本発明に係るMRI装置を図1に基づいて説明する。図1は、本発明に係るMRI装置の一実施例の全体構成を示すブロック図である。
【0020】
このMRI装置は、NMR現象を利用して被検体101の断層画像を得るもので、図1に示すように、静磁場発生磁石102と、傾斜磁場コイル103及び傾斜磁場電源109と、RF送信コイル104及びRF送信部110と、RF受信コイル105及び信号検出部106と、信号処理部107と、計測制御部111と、全体制御部108と、表示・操作部113と、被検体101を搭載する天板を静磁場発生磁石102の内部に出し入れするベッド112と、を備えて構成される。
【0021】
静磁場発生磁石102は、垂直磁場方式であれば被検体101の体軸と直交する方向に、水平磁場方式であれば体軸方向に、それぞれ均一な静磁場を発生させるもので、被検体101の周りに永久磁石方式、常電導方式あるいは超電導方式の静磁場発生源が配置されている。
【0022】
傾斜磁場コイル103は、MRI装置の実空間座標系(静止座標系)であるX、Y、Zの3軸方向に巻かれたコイルであり、それぞれの傾斜磁場コイルは、それを駆動する傾斜磁場電源109に接続され電流が供給される。具体的には、各傾斜磁場コイルの傾斜磁場電源109は、それぞれ後述の計測制御部111からの命令に従って駆動されて、それぞれの傾斜磁場コイルに電流を供給する。これにより、X、Y、Zの3軸方向に傾斜磁場Gx、Gy、Gzが発生する。
【0023】
2次元スライス面の撮像時には、スライス面(撮像断面)に直交する方向にスライス傾斜磁場パルス(Gs)が印加されて被検体101に対するスライス面が設定され、そのスライス面に直交して且つ互いに直交する残りの2つの方向に位相エンコード傾斜磁場パルス(Gp)と周波数エンコード(リードアウト)傾斜磁場パルス(Gf)が印加されて、NMR信号(エコー信号)にそれぞれの方向の位置情報がエンコードされる。
【0024】
RF送信コイル104は、被検体101にRFパルスを照射するコイルであり、RF送信部110に接続され高周波パルス電流が供給される。これにより、被検体101の生体組織を構成する原子のスピンにNMR現象が誘起される。具体的には、RF送信部110が、後述の計測制御部111からの命令に従って駆動されて、高周波パルスが振幅変調され、増幅された後に被検体101に近接して配置されたRF送信コイル104に供給されることにより、RFパルスが被検体101に照射される。
【0025】
RF受信コイル105は、被検体101の生体組織を構成するスピンのNMR現象により放出されるエコー信号を受信するコイルであり、信号検出部106に接続されて受信したエコー信号が信号検出部106に送られる。
【0026】
信号検出部106は、RF受信コイル105で受信されたエコー信号の検出処理を行う。具体的には、後述の計測制御部111からの命令に従って、信号検出部106が、受信されたエコー信号を増幅し、直交位相検波により直交する二系統の信号に分割し、それぞれを所定数(例えば128、256、512等)サンプリングし、各サンプリング信号をA/D変換してディジタル量に変換し、後述の信号処理部107に送る。 従って、エコー信号は所定数のサンプリングデータからなる時系列のデジタルデータ(以下、エコーデータという)として得られる。
【0027】
信号処理部107は、エコーデータに対して各種処理を行い、処理したエコーデータを計測制御部111に送る。
【0028】
計測制御部111は、被検体101の断層画像の再構成に必要なエコーデータ収集のための種々の命令を、主に、傾斜磁場電源109と、RF送信部110と、信号検出部106に送信してこれらを制御する制御部である。具体的には、計測制御部111は、後述する全体制御部108の制御で動作し、ある所定のシーケンスに基づいて、傾斜磁場電源109、RF送信部110及び信号検出部106を制御して、被検体101へのRFパルスの照射及び傾斜磁場パルスの印加と、被検体101からのエコー信号の検出と、を繰り返し実行し、被検体101の撮像領域についての画像の再構成に必要なエコーデータの収集を制御する。繰り返しの際には、2次元撮像の場合には位相エンコード傾斜磁場の印加量を、3次元撮像の場合には更にスライスエンコード傾斜磁場の印加量も、変えて行なう。位相エンコードの数は通常1枚の画像あたり128、256、512等の値が選ばれ、スライスエンコードの数は、通常16、32、64等の値が選ばれる。これらの制御により信号処理部107からのエコーデータを全体制御部108に出力する。
【0029】
全体制御部108は、計測制御部111の制御、及び、各種データ処理と処理結果の表示及び保存等の制御を行うものであって、CPU及びメモリを内部に有する演算処理部114と、光ディスク、磁気ディスク等の記憶部115とを有して成る。具体的には、計測制御部111を制御してエコーデータの収集を実行させ、計測制御部111からのエコーデータが入力されると、演算処理部114がそのエコーデータに印加されたエンコード情報に基づいて、メモリ内のk空間に相当する領域に記憶させる。以下、エコーデータをk空間に配置する旨の記載は、エコーデータをメモリ内のk空間に相当する領域に記憶させることを意味する。また、メモリ内のk空間に相当する領域に記憶されたエコーデータ群をk空間データともいう。そして演算処理部114は、このk空間データに対して信号処理やフーリエ変換による画像再構成等の処理を実行し、その結果である被検体101の画像を、後述の表示・操作部113に表示させると共に記憶部115に記録させる。
【0030】
表示・操作部113は、再構成された被検体101の画像を表示する表示部と、MRI装置の各種制御情報や上記全体制御部108で行う処理の制御情報を入力するトラックボール又はマウス及びキーボード等の操作部と、から成る。この操作部は表示部に近接して配置され、操作者が表示部を見ながら操作部を介してインタラクティブにMRI装置の各種処理を制御する。
【0031】
現在MRI装置の撮像対象核種は、臨床で普及しているものとしては、被検体の主たる構成物質である水素原子核(プロトン)である。プロトン密度の空間分布や、励起状態の緩和時間の空間分布に関する情報を画像化することで、人体頭部、腹部、四肢等の形態または、機能を2次元もしくは3次元的に撮像する。
【0032】
(本発明に係る撮像シーケンスについて)
本発明に係る撮像シーケンスは、位相補正用エコーデータを取得するための第1シーケンス部(位相補正データ取得シーケンス)部と画像用エコーデータを取得するための第2シーケンス部(本計測シーケンス、画像データ取得シーケンス)部とを、時間間隔TIを空けて組み合わせて成る。第2シーケンス部で取得する画像用エコーデータに潜在する位相変化と略同じ位相変化を第1シーケンス部で取得するために、第1シーケンス部のシーケンス形状を、第2シーケンス部のシーケンス形状と基本的に同じとする。ただし、第1シーケンス部にはその最後に縦磁化を所望角度に回転させるための縦磁化調整RFパルスを有し、このRFパルスが本発明の特徴の一つである。この縦磁化回転用RFパルスの照射タイミングで、横磁化の位相が収束状態である必要があることから、本発明に係る第1シーケンス部と第2シーケンス部の基本シーケンス形状は、FSEシーケンスやbalanced SSFPシーケンスが好ましい。以下、撮像シーケンスがFSEシーケンスである実施例とbalanced SSFPシーケンスである実施例をそれぞれ詳細に説明する。
【実施例1】
【0033】
次に、本発明のMRI装置及び実数成分画像取得方法の実施例1について説明する。本実施例は、第1シーケンス部と第2シーケンス部の基本シーケンス形状として、高速スピンエコーシーケンス(以下、FSEシーケンスという)を用いる。また、縦磁化回転用RFパルスとして90度RFパルスを用いて、IRパルスと同様に縦磁化を180度反転させる。そして、第1シーケンス部で位相補正用のエコー信号を計測して位相補正データを求め、第2シーケンス部で画像用のエコー信号を計測し、再構成して得た複素画像データを位相補正データで位相補正し、実数成分画像を取得する。図2〜4に基づいて本実施例を詳細に説明する。
【0034】
最初に本実施例のシーケンスを説明する。本実施例のシーケンスは、公知のFSEシーケンスに基づくシーケンス形状を有する第1シーケンス部と第2シーケンス部とを、間に時間間隔TIを空けて組み合わせた撮像シーケンスを用いる。以下、本実施例の撮像シーケンスを図4に示すシーケンスチャートに基づいて具体的に説明する。
【0035】
図4では、上から順に、RF送信コイル104より照射するRFパルス、傾斜磁場コイル103から印加するスライス選択傾斜磁場Gs、位相エンコード傾斜磁場Gp、周波数エンコード(リードアウト)傾斜磁場Gr、被検体101からのエコー信号Echoをそれぞれ示し、縦軸はそれらの強度を、横軸は時間を示している。これらの各RFパルス照射や各傾斜磁場パルス印加は、計測制御部111によって制御される。
【0036】
最初に、撮像シーケンスの内の第1シーケンス部を説明する。第1シーケンス部は位相補正用のエコー信号を計測するためのシーケンスであって、後述する第2シーケンス部と同様のシーケンス形状を有する。これにより、第2シーケンス部で計測されるエコー信号及び該エコー信号から再構成される画像に潜在する位相変化情報と略同じ位相変化情報を得ることができる。
【0037】
第1シーケンス部では、まず、核磁化を90度励起するRFパルス401が照射されると同時に、Gsパルス404が印加されることにより、被検体の所望の部位において核磁化が励起される。そして、時間Ts経過後に、180度RFパルス402およびGs405が、時間間隔2Tsで連続して繰り返し照射されることにより、180度パルスによって再収束された複数のエコー信号410が計測される。180度RFパルス402によって選択励起されるスライスは、90度RFパルス401によって励起されたスライスと同じにする。このとき180度RFパルス402間に、Gpパルス407とGrパルス409が印加されることにより、位相エンコード方向および周波数エンコード方向のオフセットがエコー信号に与えられる。Gpパルス407による位相エンコードのオフセット量は印加の度に所定量ずつ変化させる。また、Gpパルス407の後には、Gpパルス407による位相分散が蓄積しないように、Gpパルス407と強度が同じで極性が逆のリワインダーパルス408が印加される。
【0038】
最後の180度RFパルス402照射後さらにTs経過(隣接180度RFパルス402間の時間間隔の半分)したタイミングで、90度RFパルス(縦磁化調整RFパルス)403とGsパルス406が印加される。90度RFパルス403照射の直前に、最後の180度RFパルスによって反転した横磁化の位相が揃うため、90度RFパルス403の照射によって、それらの横磁化は負の縦磁化へと回転される。この90度RFパルス403は、一般的なFSEシーケンスには無い本実施例の特徴的なRFパルスであって、縦磁化を反転するためのRFパルスである。縦磁化を180度反転するRFパルスとしてフリップ角が180度のIRパルスが周知であるが、本実施例では、このIRパルスではなく、最後の180度RFパルスによって再収束された横磁化を90度RFパルス403によりさらに90度倒すことで、IRパルスの代わりとしている。つまり、第1シーケンス部が、後述する第2シーケンス部と同様にFSEシーケンスに基づいて、複数の180度RFパルスを用いることで、最後の180度RFパルスの再収束効果を利用して、最後に90度RFパルス403を追加することで、従来のIRパルスによる縦磁化の180度反転と同様の効果を得るものである。
【0039】
上記第1シーケンス部から時間間隔TIを空けて後述する第2シーケンス部が実行される。
【0040】
次に、撮像シーケンスの内の第2シーケンス部を説明する。時間TI経過後、90度RFパルス411が照射されると同時に、Gsパルス413が印加されることにより、TIの間に縦緩和によって回復した縦磁化が励起される。このときに選択励起されるスライスは、90度RFパルス401によって励起されたスライスと同じにする。そして時間Ts経過後に、180度RFパルス412の照射およびGsパルス414の印加が間隔2Tsで連続して繰り返し行なわれることにより、180度パルスによって再収束された複数のエコー信号418が計測される。このときに選択励起されるスライスは、180度RFパルス402によって励起されたスライスと同じである。また、180度RFパルス412間に、Gpパルス415とGrパルス417が印加されることにより、位相エンコード方向および周波数エンコード方向のオフセットがエコー信号に与えられる。Gpパルス415による位相エンコードのオフセット量は印加の度に所定量ずつ変化させる。また、Gpパルス415の後には、Gpパルス415による位相分散が蓄積しないように、Gpパルス415と強度が同じで極性が逆のリワインダーパルス416が印加される。
【0041】
なお、以上の第1シーケンス部と第2シーケンス部とで計測されるエコー信号に潜在する位相情報を略同一とするために、第1シーケンス部と第2シーケンス部とでTsを同じ値にする。
【0042】
以上の撮像シーケンスで、第1シーケンス部で計測されたエコー信号410は位相変化を含むが、縦磁化の極性情報を含まない位相補正用のデータとして記憶部115に格納される。一方、第2シーケンス部で計測されたエコー信号418は、位相変化とともに、90度RFパルス403により反転されたことによる縦磁化の極性情報も含む画像用エコーデータとして、記憶部において位相補正用エコーデータとは別の領域に格納される。
【0043】
縦磁化の極性情報が第2シーケンス部で計測されるエコー信号418に含まれることを、図4の縦磁化ベクトルの模式図を用いて説明する。第1シーケンス部の90度RFパルス403照射直後では、縦緩和時間の異なる核種(例えば、水プロトンと脂肪プロトン)の縦磁化は共に180度反転されて負の最大縦磁化421となる。その後、核種毎にその縦緩和時間に応じて縦磁化が緩和して元の状態、つまり正の最大値に戻っていく。そこで、第2シーケンス部の90度RFパルス411の時点で、縦緩和時間の長い核種(例えば水プロトン)の縦磁化423は、縦緩和が遅いために極性が依然として負のままになっている。これに対して、縦緩和時間の短い別の核種(例えば脂肪プロトン)の縦磁化422は、縦緩和が早いために極性は正となっている。従って、第2シーケンス部で計測されるエコー信号418に基づいて得られる実数成分画像においては、理想的には、これら核種の縦磁化の極性が反映された画像となることが理解される。
【0044】
なお、図4は、4個のエコー信号410を計測する例を示しているが、この数は任意である。また、図4は、8個のエコー信号418を計測する例を示しているが、これは分かりやすく図を示すためのものであって、実際には、画像化のために必要な数分(たとえば256個)計測される。例えば、第1シーケンス部でエコー信号410をk空間の位相エンコード方向の中心(=周波数0)を含む位相エンコード方向に連続した4個のエコーデータだけ収集し、第2シーケンス部では画像化のために必要な数分(たとえば256個)のエコーデータを取得することができる。この場合、Gpパルス407の強度は、中心周波数0を含む位相エンコード方向に連続した4個のエコーデータを収集するように印加される。Gpパルス415はk空間の位相エンコード方向の全領域のエコーデータを収集するように印加される。
【0045】
また、第1シーケンス部で取得するエコー信号410数と第2シーケンス部で取得するエコー信号418数とを同数(たとえば256個)とすることも可能である。この場合Gpパルス407とGpパルス415は同じパターンで印加され、位相補正用のエコーデータおよび画像用のエコーデータいずれもk空間の全領域について収集される。これは位相補正の精度が向上する利点がある。また、この場合もTsは第1シーケンス部と第2シーケンス部とで同じ値にする必要がある。
【0046】
このように図4のシーケンスを所定の回数繰り返すことにより、位相補正用エコーデータおよび画像用エコーデータがそれぞれ別領域に格納される。
【0047】
また、上記撮像シーケンスの説明では、縦磁化調整RFパルス403として90度RFパルスを用いる例を説明したが、励起角度は90度でなくてもよく、縦磁化を0度以上90度以下に回転させる励起角度であれば良い。その励起角度に応じて空き時間TIを調整する。例えば、励起角度を大きくして縦磁化の反転角度を180度に近づけるほどTIを長くし、逆に励起角度を小さくして縦磁化の反転角度を90度に近づけるほどTIを短くする。
【0048】
以上までが本実施例の撮像シーケンスの説明である。
【0049】
次に、上記撮像シーケンスを用いた、本実施例の実数成分画像の取得について説明する。
【0050】
本実施例の実数成分画像の取得に係る演算処理の各機能を、図2に示す演算処理部114の機能ブロック図に基づいて説明する。本実施例に係る演算処理部114は、図2に示す様に、撮像パラメータ設定部201と、撮像シーケンス生成部202と、撮像シーケンス実行部203と、位相補正部204と、画像再構成部205と、実数成分画像取得部206と、を有して成る。以下、各機能の概要を説明する。
【0051】
撮像パラメータ設定部201は、実数成分画像を撮像するための最適な撮像パラメータ値の設定入力を受け付ける。撮像パラメータとしては、例えば、繰り返し時間TRやエコー時間TE、待ち時間(空き時間)TI等である。撮像パラメータ設定部201は、記憶部115から実数成分画像を撮像するための最適な撮像パラメータ値を読み込み、表示部の撮像パラメータ値設定画面に表示させ、操作者の設定又は変更入力を受け付ける。そして、入力設定された撮像パラメータ値を撮像条件として設定する。或いは、記憶部115に記憶された撮像パラメータ値をそのまま撮像条件として設定しても良い。
【0052】
撮像シーケンス生成部202は、設定された撮像パラメータに基づいて、本実施例の撮像シーケンスのRFパルス照射や傾斜磁場パルス印加及びエコー信号のサンプリング等を制御する制御データを生成して、撮像シーケンスを具体的に生成する。
【0053】
撮像シーケンス実行部203は、撮像シーケンス生成部202で生成された撮像シーケンスの制御データを計測制御部111に通知して、計測制御部111に撮像シーケンスを実行させる。そして、撮像シーケンスの実行により計測されたエコーデータが計測制御部111から通知される。
【0054】
位相補正部204は、撮像シーケンスの内の第1シーケンス部で計測されたエコー信号に基づいて位相補正データを取得すると共に、取得した位相補正データを用いて、第2シーケンス部で計測されたエコー信号に基づいて再構成された複素画像データを位相補正する。
【0055】
画像再構成部205は、第1シーケンス部及び第2シーケンス部で取得されたエコーデータにフーリエ変換を施して画像データに変換する。
【0056】
実数成分画像取得部206は、位相補正された複素画像データの内から実数成分を抽出して、実数成分画像を生成する。
【0057】
次に、上記演算処理部114の各機能部が連携して行なう、本実施例の処理フローを図3に示すフローチャートに基づいて説明する。本フローチャートは実数成分画像取得プログラムとして予め記憶部115に記憶されており、必要に応じて演算処理部114のメモリにロードされてCPU等により実行されることで実施される。以下、各ステップの処理を説明する。
【0058】
ステップ301で、撮像パラメータ設定部201は、操作者による撮像パラメータの設定入力を受け付けるインターフェースを表示部に表示させ、操作者が入力した撮像パラメータの設定を受け付ける。
【0059】
ステップ302で、撮像パラメータ設定部201は、撮像パラメータにおいて取得画像に実数成分画像が設定されたか否かを判定し、設定された場合(Yes)にはステップ303に移行し、設定されなかった場合(No)は、通常の撮像シーケンスに移行する。
【0060】
ステップ303で、撮像パラメータ設定部201は、記憶部115から実数成分画像を撮像するための最適な撮像パラメータ値を読み込み、表示部の撮像パラメータ値設定画面に表示させ、操作者による撮像パラメータ値の入力・変更を受け付ける。この撮像パラメータとは、第1シーケンス部の90度RFパルス403から第2シーケンス部までの空き時間TIなどが含まれる。TIなどの撮像パラメータの具体的値は、あらかじめ撮像する部位などによって区別されて記憶部115に登録されており、部位毎に最適撮像パラメータ値を使い分けられるようにすることが望ましい。
【0061】
ステップ304で、撮像パラメータ設定部201は、操作者が表示部に表示された撮像パラメータ値で撮像を実行するかどうかの判断を受け付ける。撮像すると判断された場合(Yes)には、ステップ305に移行する。撮像しないと判断された場合(No)には、ステップ303に戻り、操作者の撮像パラメータ値の入力・変更を受け付ける。
【0062】
ステップ305で、撮像シーケンス生成部202は、ステップ304で操作者により撮像すると判断されて撮像開始が入力されると、ステップ303で設定された撮像パラメータ値に基づいて、図4に示す撮像シーケンスを具体的に規定するRFパルス、傾斜磁場パルス、及びエコー信号のサンプリングについての具体的な制御データを生成することで、撮像シーケンスを実行するための制御データを生成する。そして、撮像シーケンス実行部203は、生成された制御データを計測制御部111に通知して、計測制御部111に撮像シーケンスを実行させる。そして、計測制御部111は、図4の撮像シーケンスの内第1シーケンス部を実行する。
【0063】
ステップ306で、計測制御部111は、第1シーケンス部の実行により、計測された位相補正用のエコー信号のデジタルデータ(エコーデータ)を撮像シーケンス実行部203に通知する。撮像シーケンス実行部203は、通知されたエコーデータを位相補正用エコーデータとして、演算処理部114のメモリ又は記憶部115に記憶させる。なお、第1シーケンス部終了後は、各組織の縦磁化は負の方向を向いている。
【0064】
ステップ307で、計測制御部111は、実行した第1シーケンス部から時間間隔TIを空けて、図4の撮像シーケンスの内の第2シーケンス部を実行する。
【0065】
ステップ308で、計測制御部111は、第2シーケンス部の実行により、計測された画像用のエコー信号のデジタルデータ(エコーデータ)を撮像シーケンス実行部203に通知する。撮像シーケンス実行部203は、通知されたエコーデータを画像用エコーデータとして、演算処理部114のメモリ又は記憶部115に記憶させる。
【0066】
ステップ309で、撮像シーケンス実行部203は、位相補正用エコーデータ及び画像用エコーデータを全て取得したか否か判定し、取得していなければ(No)、ステップ305へ移行する。ステップ305からステップ308までを1回実行された場合、取得されるデータセットは1スライス分あるいは、1スライスを複数のブロック(セグメント)に分割して取得する場合には1セグメント分となる。このため、複数スライスあるいは複数セグメントを計測する場合は、それに応じた回数分ステップ305からステップ308を繰り返す。
【0067】
ステップ310で、位相補正部204は、演算処理部114のメモリ又は記憶部115に記憶された位相補正用エコーデータを読み出して2次元フーリエ変換により2次元複素画像データに変換する。位相補正用のエコー信号410がk空間の一部分しか計測されていない場合には、位相補正部204は、そのエコーデータが充填されるk空間における残りの領域をゼロで充填することにより、画像用エコーデータのk空間領域とサイズを合わせて、2次元フーリエ変換を実施する。
【0068】
ステップ311で、位相補正部204は、ステップ310で得られた2次元複素画像データの位相を画素毎に求めることにより、実空間(x-y空間)の位相分布、すなわち2次元位相マップを生成する。そして、作成した2次元位相マップを演算処理部114のメモリ又は記憶部115に記憶する。位相値Фは、画素値の実数成分Vrと虚数成分Viとからそのアークタンジェントにより求めることができる。即ち、
位相値:Ф = arctan(Vi/Vr) (1)
と計算して求める。この2次元位相マップは、縦磁化の極性は保持していないため、第1シーケンス部における位相変化のみを包含している。
【0069】
ステップ312で、画像再構成部205は、演算処理部114のメモリ又は記憶部115に記憶された画像用エコーデータを読み出して2次元フーリエ変換により2次元複素画像データに変換する。このフーリエ変換後の画像は、縦磁化の極性による信号の位相反転のほかに、MRI装置や環境に起因する位相変化を含むため、その実数成分は所望の画像とはならない。
【0070】
ステップ313で、位相補正部204は、ステップ311で作成された2次元位相マップを演算処理部114のメモリ又は記憶部115から読み出して、この2次元位相マップを用いてステップ312で得られた2次元複素画像データを画素毎に位相補正する。すなわち、2次元複素画像データの各画素の位相を、2次元位相マップの同一画素の位相値を用いて位相補正する。位相補正は、画素値である複素数の位相回転により行う。具体的には、複素画素値Vを位相値Фで位相補正する計算は、次のように行なう。
【0071】
位相補正後の画素値V = V・exp(-iФ) (2)
そして、画素毎に(2)式に基づいた位相補正を行い、位相補正後の2次元複素画像データを得る。或いは、(1)式に基づいて、ステップ312で得られた2次元複素画像データの2次元位相マップを求め、この2次元位相マップからステップ311で作成された2次元位相マップを画素毎に差分して、差分位相マップを求める。そして、差分位相マップの位相値のコサイン又はサインをステップ312で得られた2次元複素画像の絶対値に掛けて、位相補正された2次元複素画像データの実数成分と虚数成分をそれぞれ求めることができる。以上の位相補正により、ステップ312で得られた2次元複素画像データの位相を、MRI装置や環境に起因する位相変化が除去されて、90度RFパルス411の照射直前の縦磁化の極性のみが反映された値とすることができる。
【0072】
ステップ314で、実数成分画像取得部206は、ステップ313で取得された位相補正後の2次元複素画像データの内の実数成分を画素毎に抽出して2次元の実数成分画像データを作成し、演算処理部114のメモリ又は記憶部115に記憶する。ステップ313で2次元複素画像データの位相が、90度RFパルス411の照射直前の縦磁化の極性のみが反映されるように補正されたので、得られた実数成分画像は、90度RFパルス411の照射直前の縦磁化の極性を正確に反映した精度の良い実数成分画像となる。
【0073】
ステップ315で、実数成分画像取得部206は、ステップ314で取得された2次元実数成分画像データを表示部に実数成分画像として表示する。
【0074】
以上までが、本実施例の実数成分画像を取得する処理フローの説明である。
【0075】
以上説明したように、本発明のMRI装置及び実数成分画像取得方法は、位相補正のためのエコー信号を計測する第1のシーケンス部と、画像用のエコー信号を計測する第2のシーケンス部とを、略同一のシーケンス形状として時間間隔TIを空けて実行する。その際、第1のシーケンス部の最後で縦磁化調整RFパルスとして90度RFパルスを照射して縦磁化を反転し、この90度RFパルスからTI後に第2シーケンス部の90度RFパルスを照射する。そして、第1シーケンス部で計測されたエコー信号に基づいて、第2シーケンス部で計測されたエコー信号に基づいて再構成された複素画像データを位相補正し、位相補正後の複素画像データの内の実数成分を抽出して前記実数成分画像を作成する。第1のシーケンス部で得た位相補正データを用いた第2シーケンス部で得た複素画像データの位相補正により、複素画像データの位相をMRI装置や環境に起因する位相変化が除去されて、90度RFパルス411の照射直前の縦磁化の極性のみが反映された値とする。これにより、撮像時間の延長を少なくして、90度RFパルス411の照射直前の縦磁化の極性を正確に反映した精度の良い実数成分画像を得ることができる。
【実施例2】
【0076】
次に、本発明のMRI装置及び実数成分画像取得方法についての実施例2を説明する。実施例2の撮像シーケンスはbalanced SSFPシーケンスに基づく。それ以外は、前述の実施例1と同じである。
【0077】
以下、本実施例の撮像シーケンスを図5に基づいて説明し、同じ箇所の説明は省略する。
【0078】
図5は本実施例の撮像シーケンスを表すシーケンスチャートである。RF,Gs,Gp,Gr,及びEchoの意味は、図4と同じである。本実施例の撮像シーケンスも、前述の実施例1の撮像シーケンスと同様に、第1シーケンス部と第2シーケンス部とを間に時間間隔TIを空けて組み合わせたシーケンスであり、第1シーケンス部と第2シーケンス部の目的は、前述の実施例1と同様である。そして、第1シーケンス部と第2シーケンス部は、共に、磁化の定常状態への移行を短時間で行なう公知技術の一つであるα/2法を用いたbalanced SSFPシーケンスを基本とする。また、各RFパルスの照射位相の極性を照射毎に反転する。つまり、RFパルスの照射毎に位相を180度回転させる。以下、各シーケンス部を説明する。
【0079】
第1シーケンス部では、α/2度法に基づくRFパルスであって励起角度が-α/2度のRFパルス501が照射されると同時にGsパルス504が印加されることにより、被検体の所望の部位において核磁化が励起される。そして、時間Ts経過後に、α度RFパルス502の照射およびGsパルス505の印加が、時間間隔2Tsで連続して繰り返し行なわれ、被検体の同一部位の磁化が短時間で繰り返し励起されることで、該被検体の同一部位の磁化が定常状態(SSFP)に到達する。なお、α度RFパルス502の照射位相の極性は照射毎に反転される。これにより、定常状態に到達したエコー信号510が計測される。
【0080】
また、α度RFパルス502間に、Gpパルス507とGrパルス509が印加されることにより、位相エンコード方向および周波数エンコード方向のオフセットがエコー信号510に与えられる。Gpパルス507による位相エンコードのオフセット量は印加の度に所定量ずつ変化させる。また、Gpパルス507の後には、Gpパルス507による位相分散が蓄積しないように、Gpパルス507と強度が同じで極性が逆のリワインダーパルス508が印加される。同様に、α度RFパルス間で位相分散が蓄積しないように、各Gsパルス505と各Grパルス509は、それぞれ両端にリワインダーパルス部が付加される。最後のα度RFパルス502照射後さらにTs経過したタイミング(隣接α度RFパルス502間の時間間隔の半分)で、(180-α/2)度RFパルス(縦磁化調整RFパルス)503の照射とGsパルス506の印加が行なわれる。(180-α/2)度RFパルス503照射の直前に、最後のα度RFパルスによって横磁化の位相が揃うため、(180-α/2)度RFパルス503の照射によって、それらの横磁化は負の縦磁化へと回転される。この(180-α/2)度RFパルス503は、一般的なbalanced SSFPシーケンスには無い本実施例の特徴的なRFパルスであって、縦磁化を反転するためのRFパルスである。
【0081】
なお、縦磁化調整RFパルス503として(180-α/2)度RFパルスを用いる例を説明したが、励起角度は(180-α/2)度でなくてもよく、縦磁化を(90-α/2)度以上(180-α/2)度以下に反転させる励起角度であれば良い。その励起角度に応じて空き時間TIを調整する。例えば、励起角度を大きくして縦磁化の反転角度を180度に近づけるほどTIを長くし、逆に励起角度を小さくして縦磁化の反転角度を90度に近づけるほどTIを短くする。
【0082】
上記第1シーケンス部から時間間隔TIを空けて後述する第2シーケンス部が実行される。
【0083】
次に、撮像シーケンスの内の第2シーケンス部を説明する。時間TI経過後、 -α/2度RFパルス511が照射されると同時に、Gsパルス513が印加されることにより、TIの間に縦緩和によって回復した縦磁化が励起される。このときに選択励起されるスライスは、-α/2度RFパルス501によって励起されたスライスと同じにする。そして時間Ts経過後に、α度RFパルス512の照射およびGsパルス514の印加が間隔2Tsで連続して繰り返し行なわれることにより、被検体の同一部位の磁化が短時間で繰り返し励起されることで、該被検体の同一部位の磁化が定常状態(SSFP)に到達する。なお、α度RFパルス512の照射位相の極性は照射毎に反転される。これにより、定常状態に到達したエコー信号518が計測される。このときに選択励起されるスライスは、α度RFパルス502によって励起されたスライスと同じである。また、α度RFパルス512間に印加される、Gpパルス515、Grパルス517、及びリワインダーパルス516は第1シーケンス部と同じである。
【0084】
以上までが本実施例の撮像シーケンスの説明である。上述の第1シーケンス部で計測されたエコー信号510と第2シーケンス部で計測されたエコー信号518の処理については、前述の実施例1と同様なので詳細な説明は省略する。
【0085】
以上説明したように、本発明のMRI装置及び実数成分画像取得方法は、balanced SSFPシーケンスに基づく撮像シーケンスを用いる。撮像シーケンス以外は前述の実施例1と同じである。従って、balanced SSFPシーケンスに基づく撮像シーケンスを用いた場合にも、前述の実施例1と同様の効果を得ることができる。
【0086】
以上、本発明の各実施例を述べたが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。例えば、前述の各実施例は2次元実数成分画像を得る場合を説明したが、3次元実数成分画像を得る場合にも、本発明を適用できる。
【符号の説明】
【0087】
101 被検体、102 静磁場発生磁石、103 傾斜磁場コイル、104 送信RFコイル、105 受信RFコイル、106 信号検出部106、107 信号処理部、108 全体制御部、109 傾斜磁場電源、110 RF送信部、111 計測制御部、112 ベッド、113 表示・操作部、114 演算処理部、115 記憶部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体に照射するRFパルスを発生するRFパルス発生手段と、
所定の撮像シーケンスに基づいて、前記RFパルス発生部を制御し、前記被検体からのエコー信号の計測を制御する計測制御部と、
前記エコー信号のデータを演算処理して前記被検体の実数成分画像を取得する演算処理部と、
を備えた磁気共鳴イメージング装置において、
前記撮像シーケンスは、第1シーケンス部と第2シーケンス部とを所定の時間間隔を空けて組み合わせて成り、
前記第1シーケンス部は最後に縦磁化を所定の角度に回転するための縦磁化調整RFパルスを有し、
前記演算処理部は、前記第1シーケンス部で計測されたエコー信号に基づいて、前記第2シーケンス部で計測されたエコー信号に基づいて再構成された複素画像データを位相補正し、位相補正後の複素画像データの内の実数成分を抽出して前記実数成分画像を作成することを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
【請求項2】
請求項1記載の磁気共鳴イメージング装置において、
前記第1シーケンス部は、前記第2シーケンス部と同じシーケンス形状に基づいていることを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
【請求項3】
請求項2記載の磁気共鳴イメージング装置において、
前記第1シーケンス部と前記第2シーケンス部とは、FSEシーケンスに基づいていることを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
【請求項4】
請求項1記載の磁気共鳴イメージング装置において、
前記所定の角度は180°であることを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
【請求項5】
請求項3記載の磁気共鳴イメージング装置において、
前記計測制御部は、前記縦磁化調整RFパルスとして、縦磁化を180°反転するための90°RFパルスを、前記FSEシーケンスにおける最後の180°RFパルスの後に、180°RFパルス間の時間間隔の半分の時間空けて照射することを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
【請求項6】
請求項2記載の磁気共鳴イメージング装置において、
前記第1シーケンス部と前記第2シーケンス部とは、balanced SSFPシーケンスに基づいていることを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
【請求項7】
請求項6記載の磁気共鳴イメージング装置において、
前記計測制御部は、前記balanced SSFPシーケンスの励起角度をα°の場合に、前記縦磁化調整RFパルスとして、縦磁化を180°反転するための(180−α/2)°RFパルスを、前記balanced SSFPシーケンスにおける最後のα°RFパルスの後に、α°RFパルス間の時間間隔の半分の時間空けて照射することを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
【請求項8】
磁気共鳴イメージング装置が作動して実数成分画像を取得するための実数成分画像取得方法であって、
位相補正用のエコー信号を計測するステップと、
縦磁化を所定の角度回転させるための縦磁化調整RFパルスを照射するステップと、
所定の時間間隔だけ時間を空けるステップと、
画像用のエコー信号を計測するステップと、
前記画像用のエコー信号に基づいて複素画像データを取得するステップと、
前記複素画像データを前記位相補正用のエコー信号に基づく位相補正データを用いて位相補正するステップと、
前記位相補正後の複素画像データの内から実数成分を抽出して実数成分画像を作成するステップと、
を有することを特徴とする実数成分画像取得方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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