説明

磁気共鳴イメージング装置

【課題】傾斜磁場コイルに電流を供給するケーブルを固定するための固定部品を大型化することなく、ケーブルに生じる振動を低減する。
【解決手段】MRI装置100が、低電位側導電体と高電位側導電体とを備える。低電位側導電体は、傾斜磁場電源20の低電位側端子に接続されたケーブルと傾斜磁場コイル13の低電位側端子とを接続する。高電位側導電体は、傾斜磁場電源20の高電位側端子に接続されたケーブルと傾斜磁場コイル13の高電位側端子とを接続する。そして、低電位側導電体及び高電位側導電体は、絶縁体を挟んで互いに一体化されたうえで傾斜磁場コイル13に固定される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気共鳴イメージング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
磁気共鳴イメージング装置は、静磁場内に置かれた被検体に高周波磁場を印加し、高周波磁場の印加により被検体から発せられる磁気共鳴信号をもとに被検体内の画像を生成する装置である。かかる磁気共鳴イメージング装置は、磁気共鳴信号に位置情報を付加するため、静磁場内に傾斜磁場を発生させる傾斜磁場コイルを備える。傾斜磁場コイルは、傾斜磁場電源から供給されるパルス電流を用いて傾斜磁場を発生させる。
【0003】
ここで、傾斜磁場電源によって供給されるパルス電流は、ケーブルを介して傾斜磁場コイルに伝達される。このケーブルは、静磁場内に配置されるためパルス電流が流れるとローレンツ力が作用して振動する。かかるケーブルの振動は、疲労によるケーブルの破断や騒音、装置全体の振動の原因となる。そのため、例えば、ケーブルは、専用の固定部品を用いて、静磁場を発生させるための静磁場磁石が収容される真空容器や、傾斜磁場コイルが収容される真空容器に固定される(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
図9は、従来の固定部品の一例を示す図である。図9は、概略円筒形状に形成された傾斜磁場コイルの端部を示している。図9に示すように、傾斜磁場コイル1に電流を供給するケーブル2は、一方の端部が傾斜磁場コイルの端子3に接続され、他方の端部が傾斜磁場電源(図示せず)に接続される。そして、例えば、ケーブル2は、クランプ等の固定ブロック4によって傾斜磁場コイル1の端部に固定され、さらに固定ブロック5によって静磁場磁石6に固定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−85370号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、近年では、撮像の高速化や画質の向上などを目的として、より強度が高い傾斜磁場が用いられるようになっており、それにともなってケーブルに生じる振動も増大している。このような振動の増大に対する対応策としては、例えば、前述した固定部品を大型化することによって、さらに強固にケーブルを固定することが考えられる。
【0007】
しかし、固定部品を大型化すると、磁気共鳴イメージング装置が大型化するという課題や、製造コストが増大するという課題などが生じる。また、固定部品を大型化することでケーブルをより強固に固定すればするほど、ケーブルの振動が装置全体に伝わることになり、それにともなって騒音が増大するという課題も生じる。
【0008】
そこで、ケーブルの固定部品を大型化することなく、ケーブルに生じる振動を低減することが求められている。
【0009】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、傾斜磁場コイルに電流を供給するケーブルを固定するための固定部品を大型化することなく、ケーブルに生じる振動を低減することができる磁気共鳴イメージング装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、請求項1記載の本発明は、磁気共鳴イメージング装置が、被検体が置かれる空間に静磁場を発生させる静磁場発生部と、前記静磁場内に傾斜磁場を発生させる傾斜磁場コイルと、前記傾斜磁場コイルに電流を供給する傾斜磁場電源と、前記傾斜磁場電源の低電位側端子に接続されたケーブルと前記傾斜磁場コイルの低電位側端子とを接続する第1の導電体と、前記傾斜磁場電源の高電位側端子に接続されたケーブルと前記傾斜磁場コイルの高電位側端子とを接続する第2の導電体とを備えており、前記第1の導電体及び前記第2の導電体は、絶縁体を挟んで互いに一体化されたうえで前記傾斜磁場コイルに固定されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
請求項1記載の本発明によれば、傾斜磁場コイルに電流を供給するケーブルを固定するための固定部品を大型化することなく、ケーブルに生じる振動を低減することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、本実施例に係るMRI装置の構成を示すブロック図である。
【図2】図2は、傾斜磁場コイルの周辺に発生する静磁場の様子を示す図である。
【図3】図3は、傾斜磁場コイルとケーブルとの接続部分を示す斜視図である。
【図4】図4は、ケーブル接続部の外観を示す斜視図である。
【図5】図5は、低電位側導電体、高電位側導電体及び導電体固定部の外観を示す斜視図である。
【図6】図6は、低電位側導電体及び高電位側導電体の形状と静磁場の磁束との関係を示す図である。
【図7】図7は、低電位側導電体及び高電位側導電体と静磁場の磁束との交差部分を示す図(1)である。
【図8】図8は、低電位側導電体及び高電位側導電体と静磁場の磁束との交差部分を示す図(2)である。
【図9】図9は、従来の固定部品の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本発明に係る磁気共鳴イメージング装置の実施例を図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下では、磁気共鳴イメージング装置をMRI(Magnetic Resonance Imaging)装置と呼ぶ。
【実施例】
【0014】
まず、本実施例に係るMRI装置の構成について説明する。図1は、本実施例に係るMRI装置の構成を示すブロック図である。図1に示すMRI装置100は、傾斜磁場コイルが真空容器内に封入されて配置された、いわゆる静音化型のMRI装置である。
【0015】
図1に示すように、MRI装置100は、架台10、傾斜磁場電源20、送信部30、受信部40、シーケンス制御部50及び計算機システム60を有する。また、架台10は、静磁場発生部11、真空容器12、傾斜磁場コイル13、RFコイル14、寝台天板15を有する。
【0016】
静磁場発生部11は、概略円筒状に形成されており、筒内部に形成された撮像空間Sに静磁場を発生させる。この静磁場発生部11は、概略円筒状に形成された真空容器と、真空容器内に収納された超電導磁石を有している。超電導磁石は、図示していない静磁場電源から供給される電流により、撮像空間Sに静磁場を発生させる。
【0017】
真空容器12は、概略円筒状に形成され、静磁場発生部11の内側に配置されている。かかる真空容器12において、円筒の外壁と内壁との間には密閉された内部空間が形成されている。この内部空間は、診断時には、図示していない真空ポンプによって実質的な真空となるように調整される。
【0018】
傾斜磁場コイル13は、概略円筒状に形成され、真空容器12の内部空間に配置されている。この傾斜磁場コイル13は、互いに直交するx,y,zの各軸に対応する3つのコイルを含んでいる。これら3つのコイルは、傾斜磁場電源20から供給される電流により、x,y,zの各軸に沿って磁場強度が変化する傾斜磁場を撮像空間Sに発生させる。
【0019】
RFコイル14は、傾斜磁場コイル13の内側で被検体Pに対向するように配設されている。このRFコイル14は、送信部30から高周波パルスの供給を受けて被検体Pに高周波磁場を印加する。また、RFコイル14は、励起によって被検体Pの水素原子核から放出される磁気共鳴信号を受信する。
【0020】
寝台天板15は、診断時に被検体Pを撮像空間S内へ移動する。この寝台天板15は、図示していない寝台装置によって駆動される。
【0021】
傾斜磁場電源20は、シーケンス制御部50によって駆動され、傾斜磁場コイル13にパルス電流を供給する。なお、傾斜磁場電源20は、図示していないケーブルを介して、傾斜磁場コイル13にパルス電流を供給する。このケーブルは、真空容器12を貫通して設けられている。
【0022】
送信部30は、シーケンス制御部50によって駆動され、RFコイル14にRFパルスを送信する。
【0023】
受信部40は、シーケンス制御部50によって駆動され、RFコイル14によって受信された磁気共鳴信号を検出し、検出した磁気共鳴信号をデジタル化して得られる生データをシーケンス制御部50に送信する。
【0024】
シーケンス制御部50は、計算機システム60による制御のもと、傾斜磁場電源20、送信部30及び受信部40を駆動することで被検体Pのスキャンを行う。また、シーケンス制御部50は、スキャンを行った結果として受信部40から生データが送信されると、その生データを計算機システム60に送信する。
【0025】
計算機システム60は、MRI装置100全体を制御する。例えば、撮像に関する制御としては、計算機システム60は、操作者から入力された撮像条件に基づいてシーケンス制御部50にスキャンを実行させる。そして、スキャンの結果としてシーケンス制御部50から生データが送信されると、その生データから画像を再構成する。
【0026】
以上、本実施例に係るMRI装置100の構成について説明した。このような構成によれば、傾斜磁場コイル13の周辺には、静磁場発生部11によって静磁場が発生する。
【0027】
図2は、傾斜磁場コイル13の周辺に発生する静磁場を示す図である。図2に示すように、静磁場発生部11によって発生する静磁場の磁束B0は、傾斜磁場コイル13の内側ではコイルの軸方向に沿って形成されるが、傾斜磁場コイル13の端部では、コイルの外側に向かって放射状に広がるように形成される。従来は、かかる静磁場の磁束B0が傾斜磁場コイル13に電流を供給するケーブルに交差することによって、ケーブルにローレンツ力が作用して振動が生じていた。
【0028】
そこで、本実施例では、MRI装置100が、傾斜磁場電源20の低電位側端子に接続されたケーブルと傾斜磁場コイル13の低電位側端子とを接続する第1の導電体を備える。また、MRI装置100は、傾斜磁場電源20の高電位側端子に接続されたケーブルと傾斜磁場コイル13の高電位側端子とを接続する第2の導電体を備える。そして、第1の導電体及び第2の導電体は、絶縁体を挟んで互いに一体化されたうえで傾斜磁場コイル13に固定される。
【0029】
ここで、第1の導電体及び第2の導電体には逆方向に電流が流れるので、静磁場の磁束B0によって各導電体に働くローレンツ力も逆方向に作用する。さらに、第1の導電体及び第2の導電体は絶縁体を挟んで一体化されているので、各導電体に作用するローレンツ力が相殺されて打ち消される。したがって、本実施例によれば、傾斜磁場コイルに電流を供給するケーブルを固定するための固定部品を大型化することなく、ケーブルに生じる振動を低減することが可能になる。以下では、かかる第1の導電体及び第2の導電体について具体的に説明する。
【0030】
図3は、傾斜磁場コイル13とケーブルとの接続部分を示す斜視図である。図3は、傾斜磁場コイル13の端部を示している。図3に示すように、傾斜磁場コイル13の端部には、傾斜磁場電源20から供給されるパルス電流を入力するための低電位側端子13a及び高電位側端子13bがそれぞれ設けられている。そして、低電位側端子13a及び高電位側端子13bには、第1の導電体及び第2の導電体を含むケーブル接続部70が取り付けられている。
【0031】
ケーブル接続部70は、一方の端部が低電位側端子13aおよび高電位側端子13bに固定され、他方の端部がケーブル81およびケーブル82に接続されている。ここで、ケーブル81は、傾斜磁場電源20の低電位側端子に接続されている。また、ケーブル82は、傾斜磁場電源20の高電位側端子に接続されている。
【0032】
なお、図3には示していないが、傾斜磁場コイル13の端部には、傾斜磁場コイル13が有する3つのコイルごとに、低電位側端子13a及び高電位側端子13bの組がそれぞれ設けられる。また、ケーブル接続部70も、3つのコイルごとに設けられる。
【0033】
図4は、ケーブル接続部70の外観を示す斜視図である。図4に示すように、ケーブル接続部70は、第1の導電体である低電位側導電体71、第2の導電体である高電位側導電体72、導電体固定部73、熱収縮チューブ74〜76を有する。
【0034】
低電位側導電体71は、傾斜磁場電源20の低電位側端子に接続されたケーブル81と、傾斜磁場コイル13の低電位側端子13aとを接続する。また、高電位側導電体72は、傾斜磁場電源20の高電位側端子に接続されたケーブル82と、傾斜磁場コイル13の高電位側端子13bとを接続する。
【0035】
導電体固定部73は、絶縁体で形成された部材であり、ケーブル接続部70が傾斜磁場コイル13に取り付けられる際に、低電位側導電体71及び高電位側導電体72とともに傾斜磁場コイルに固定される。
【0036】
熱収縮チューブ74〜76は、それぞれ、絶縁体で形成されている。熱収縮チューブ74は、低電位側導電体71を被覆することで、低電位側導電体71を電気的に絶縁する。熱収縮チューブ75は、高電位側導電体72を被覆することで、高電位側導電体72を電気的に絶縁する。
【0037】
熱収縮チューブ76は、低電位側導電体71と高電位側導電体72との間に導電体固定部73を挟んだ状態で、低電位側導電体71、高電位側導電体72及び導電体固定部73を被覆している。この熱収縮チューブ76によって、低電位側導電体71及び高電位側導電体72が、熱収縮チューブ74、熱収縮チューブ75及び導電体固定部73からなる絶縁層を挟んで互いに一体化される。
【0038】
なお、本実施例1では、低電位側導電体71と高電位側導電体72とを絶縁するための絶縁手段として熱収縮チューブ74〜76を用いる場合について説明するが、各導電体を絶縁するための絶縁手段はこれに限られない。例えば、熱収縮チューブの代わりに、各導電体にガラス繊維を巻きつけ、そのガラス繊維にエポキシなどの樹脂を含浸させることで形成した絶縁材構造を用いてもよい。
【0039】
図5は、低電位側導電体71、高電位側導電体72及び導電体固定部73の外観を示す斜視図である。図5に示すように、低電位側導電体71、高電位側導電体72及び導電体固定部73は、それぞれ、細長い平板状に形成されている。
【0040】
低電位側導電体71は、一方の端部が平板に垂直な方向に折り曲げられており、折り曲げられた端部に孔71aが形成されている。この孔71aは、ケーブル接続部70が傾斜磁場コイル13に取り付けられる際に、ネジ又はボルトなどの固定部材で傾斜磁場コイル13の低電位側端子13aに固定される。また、低電位側導電体71の他方の端部には、孔71bが形成されている。この孔71bは、低電位側導電体71とケーブル81とを接続する際に、ネジ又はボルトなどの固定部材でケーブル81の端子に接続される。
【0041】
また、高電位側導電体72は、一方の端部が低電位側導電体71の端部とは反対の方向に折り曲げられており、折り曲げられた端部に孔72aが形成されている。この孔72aは、ケーブル接続部70が傾斜磁場コイル13に取り付けられる際に、ネジ又はボルトなどの固定部材で傾斜磁場コイル13の高電位側端子13bに固定される。また、高電位側導電体72の他方の端部には、孔72bが形成されている。この孔72bは、高電位側導電体72とケーブル82とを接続する際に、ネジ又はボルトなどの固定部材でケーブル82の端子に接続される。
【0042】
ここで、低電位側導電体71及び高電位側導電体72は、それぞれ、少なくとも一部が静磁場の磁束B0に沿うように形成されている。例えば、図5に示す例では、低電位側導電体71及び高電位側導電体72は、それぞれ、傾斜磁場コイル13に接続された際に傾斜磁場コイル13に近い側に位置する範囲Rの部分が、静磁場の磁束B0に沿っている。
【0043】
図6は、低電位側導電体71及び高電位側導電体72の形状と静磁場の磁束B0との関係を示す図である。図6に示すように、低電位側導電体71及び高電位側導電体72それぞれは、傾斜磁場コイル13に固定された状態で、範囲Rの部分が静磁場の磁束B0に沿って湾曲するように形成されている。これにより、低電位側導電体71及び高電位側導電体72にパルス電流が流れたとしても、各導電体にはローレンツ力が作用しないようになる。
【0044】
なお、図6に示すように、低電位側導電体71及び高電位側導電体72において、範囲Rを除いた部分には静磁場の磁束B0が交差することになる。しかし、低電位側導電体71及び高電位側導電体72には逆方向に電流が流れるので、静磁場の磁束B0によって各導電体に働くローレンツ力も逆方向に作用する。さらに、低電位側導電体71及び高電位側導電体72は、絶縁層を挟んで互いに一体化されているので、各導電体に作用するローレンツ力が相殺されて打ち消される。
【0045】
図7及び8は、低電位側導電体71及び高電位側導電体72と静磁場の磁束B0との交差部分を示す図である。図7及び8は、低電位側導電体71及び高電位側導電体72と静磁場の磁束B0とが交差する位置におけるケーブル接続部70の断面を示している。ここで、低電位側導電体71及び高電位側導電体72は、互いの平面部が対向し、かつ、対向する部分の面積が最も大きくなるように配置されている。
【0046】
そして、図7に示すように、低電位側導電体71と静磁場の磁束B0とが交差する位置では、パルス電流ILが流れた場合に、磁束B0の垂直成分BLにより、高電位側導電体72に向かう方向のローレンツ力FLが生じる。一方、低電位側導電体71と静磁場の磁束B0とが交差する位置では、パルス電流ILとは逆方向のパルス電流IHが流れた場合に、磁束B0の垂直成分BHにより、低電位側導電体71に向かう方向のローレンツ力FHが生じる。
【0047】
一方、パルス電流が負方向に流れる場合には、図8に示すように、低電位側導電体71と静磁場の磁束B0とが交差する位置では、パルス電流ILが流れた場合に、磁束B0の垂直成分BLにより、高電位側導電体72から離れる方向のローレンツ力FLが生じる。一方、低電位側導電体71と静磁場の磁束B0とが交差する位置では、パルス電流ILとは逆方向のパルス電流IHが流れた場合に、磁束B0の垂直成分BHにより、低電位側導電体71から離れる方向のローレンツ力FHが生じる。
【0048】
ここで、ローレンツ力FHとローレンツ力FLとは、力の向きが逆であり、かつ、力の大きさが同じであるので、互いに相殺されて打ち消される。したがって、低電位側導電体71及び高電位側導電体72は、パルス電流が流れても相対的な位置関係が変化しない。この結果、低電位側導電体71及び高電位側導電体72に接続されたケーブルに生じる振動が低減する。また、低電位側導電体71及び高電位側導電体72は、互いの平面部が対向し、かつ、対向する部分の面積が最も大きくなるように配置されているので、ローレンツ力が効率よく相殺される。
【0049】
図5にもどって、導電体固定部73は、低電位側導電体71及び高電位側導電体72と同じ形状に形成され、一方の端部に、平板に沿う方向に突出した突部73aを有する。そして、突部73aの先端部には、孔73bが形成されている。この孔73bは、低電位側導電体71及び高電位側導電体72が傾斜磁場コイル13に取り付けられる際に、ネジ又はボルトなどの固定部材によって傾斜磁場コイルの端部に固定される。すなわち、導電体固定部73は、低電位側導電体71及び高電位側導電体72と一体化されたうえで、傾斜磁場コイル13に固定される。
【0050】
例えば、静磁場の分布が不均一である場合や、低電位側導電体71及び高電位側導電体72の取り付け位置に誤差がある場合には、低電位側導電体71に作用するローレンツ力の大きさと高電位側導電体72に作用するローレンツ力との大きさが同じにならない場合もある。そのような場合には、ローレンツ力が完全に打ち消されず、その結果、低電位側導電体71及び高電位側導電体72に微少な振動が生じる可能性がある。このような場合でも、傾斜磁場コイル13に固定された導電体固定部73が低電位側導電体71及び高電位側導電体72と一体化されることで、各導電体に生じる振動が抑制されるので、ケーブルに生じる振動を低減することができる。
【0051】
上述してきたように、本実施例では、低電位側導電体71は、傾斜磁場電源20の低電位側端子に接続されたケーブル81と、傾斜磁場コイル13の低電位側端子13aとを接続する。また、高電位側導電体72は、傾斜磁場電源20の高電位側端子に接続されたケーブル82と、傾斜磁場コイル13の高電位側端子13bとを接続する。そして、低電位側導電体71及び高電位側導電体72は、絶縁体を挟んで互いに一体化されたうえで傾斜磁場コイル13に固定されている。この構成によれば、低電位側導電体71及び高電位側導電体72に作用するローレンツ力が相殺される。したがって、本実施例によれば、傾斜磁場コイルに電流を供給するケーブルを固定するための固定部品を大型化することなく、ケーブルに生じる振動を低減することができる。
【0052】
また、本実施例では、低電位側導電体71及び高電位側導電体72それぞれは、傾斜磁場コイル13に固定された状態で、少なくとも一部が静磁場の磁束B0に沿って湾曲するように形成されている。したがって、本実施例によれば、低電位側導電体71及び高電位側導電体72の一部にはローレンツ力が作用しないようになるので、ケーブルに生じる振動をより小さくすることができる。
【0053】
また、本実施例では、低電位側導電体71及び高電位側導電体72は、それぞれ平板状に形成され、互いの平面部が対向し、かつ、対向する部分の面積が最も大きくなるように配置される。したがって、本実施例によれば、低電位側導電体71及び高電位側導電体72に作用するローレンツ力が効率よく相殺されるので、ケーブルに生じる振動をさらに小さくすることができる。
【0054】
また、本実施例では、導電体固定部73は、低電位側導電体71及び高電位側導電体72と一体化され、各導電体を一体化したうえで傾斜磁場コイル13に固定する。したがって、静磁場の分布が不均一である場合や、低電位側導電体71及び高電位側導電体72の取り付け位置に誤差がある場合でも、各導電体に生じる振動が抑制され、ケーブルに生じる振動を低減することができる。
【0055】
さらに、本実施例によれば、ケーブルに生じる振動を低減することができるので、ケーブルの耐久性を向上させることができる。また、本実施例によれば、傾斜磁場コイル13が収容される真空容器12において、ケーブルが貫通する箇所が少なくなるので、真空の漏れを小さくすることができる。
【符号の説明】
【0056】
100 MRI装置
11 静磁場発生部
13 傾斜磁場コイル
13a 低電位側端子
13b 高電位側端子
20 傾斜磁場電源
70 ケーブル接続部
71 低電位側導電体(第1の導電体)
72 高電位側導電体(第2の導電体)
81,82 ケーブル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体が置かれる空間に静磁場を発生させる静磁場発生部と、
前記静磁場内に傾斜磁場を発生させる傾斜磁場コイルと、
前記傾斜磁場コイルに電流を供給する傾斜磁場電源と、
前記傾斜磁場電源の低電位側端子に接続されたケーブルと前記傾斜磁場コイルの低電位側端子とを接続する第1の導電体と、
前記傾斜磁場電源の高電位側端子に接続されたケーブルと前記傾斜磁場コイルの高電位側端子とを接続する第2の導電体とを備え、
前記第1の導電体及び前記第2の導電体は、絶縁体を挟んで互いに一体化されたうえで前記傾斜磁場コイルに固定されていることを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
【請求項2】
前記第1の導電体及び前記第2の導電体それぞれは、前記傾斜磁場コイルに固定された状態で、少なくとも一部が前記静磁場の磁束に沿うように形成されていることを特徴とする請求項1に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項3】
前記第1の導電体及び前記第2の導電体は、それぞれ平板状に形成され、互いの平面部が対向し、かつ、対向する部分の面積が最も大きくなるように配置されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項4】
前記第1の導電体及び前記第2の導電体と一体化され、各導電体を一体化したうえで前記傾斜磁場コイルに固定するための固定部をさらに備えたことを特徴とする請求項1、2又は3に記載の磁気共鳴イメージング装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−143033(P2011−143033A)
【公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−5327(P2010−5327)
【出願日】平成22年1月13日(2010.1.13)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(594164542)東芝メディカルシステムズ株式会社 (4,066)
【出願人】(594164531)東芝医用システムエンジニアリング株式会社 (892)
【Fターム(参考)】