説明

磁気共鳴イメージング装置

【課題】歪みがある位置決め画像上でROIが設定された場合でも、操作者が意図した位置を正しく撮像する。
【解決手段】MRI装置100は、被検体Pが撮像された位置決め画像上に複数のROIを設定する。その後、MRI装置100は、磁場の不均一性による歪みを許容する範囲である歪み許容範囲内に収まるROIを1つのROIグループとして複数のROIを複数のROIグループに分割し、各ROIグループの代表位置を算出する。そして、MRI装置100は、複数のROIごとに、代表位置と磁場中心の位置とを合わせたのちにそのROIグループに含まれるROIが設定された位置の画像を撮像するよう制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気共鳴イメージング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
磁気共鳴イメージング(Magnetic Resonance Imaging:MRI)装置は、磁気共鳴現象を利用して被検体内を画像化する装置である。具体的には、MRI装置は、静磁場中に置かれた被検体の原子核スピンをラーモア周波数のRF(Radio Frequency)磁場で磁気的に励起する。そして、MRI装置は、所定のタイミングで被検体に傾斜磁場を印加したのちに、原子核スピンの励起に伴って発生するMR信号を検出し、検出したMR信号から画像を再構成する。
【0003】
かかるMRI装置による撮像では、通常、診断用の画像を撮像する本撮像の前に位置決め画像(親画像とも呼ばれる)の撮像が行われる。ここでいう位置決め画像とは、本撮像における撮像位置を設定するために用いられる画像である。MRI装置は、位置決め画像を撮像すると、その位置決め画像上に関心領域(Region Of Interest:ROI)を設定する操作を操作者から受け付ける。そして、MRI装置は、本撮像において、ROIが設定された位置の画像を診断用の画像として撮像する(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−118461号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来のMRI装置では、以下で説明するように、操作者が意図した位置が正しく撮像されない場合があった。
【0006】
例えば、MRI装置では、各種磁場の不均一性の影響によって、磁場中心から遠い位置の画像に歪みが生じることが知られている。ここでいう各種磁場の不均一性は、傾斜磁場の線形性や静磁場及びRF磁場の均一性が低下することにより生じる。そのため、例えば脊椎の撮像のように、被検体の体軸方向に広い範囲の画像が位置決め画像として設定される場合に、その位置決め画像上で画像中心から離れた位置に歪みが生じることがあった。さらに、その位置決め画像上で歪みがある位置にROIが設定されると、実際に撮像された画像の位置と操作者が意図した位置とが異なってしまう場合があった。
【0007】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、歪みがある位置決め画像上でROIが設定された場合でも、操作者が意図した位置を正しく撮像することができる磁気共鳴イメージング装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、請求項1記載の本発明は、MRI装置が、被検体が撮像された位置決め画像上に複数の関心領域を設定する設定手段と、磁場の不均一性による歪みを許容する範囲である歪み許容範囲内に収まる関心領域を1つの関心領域群として前記複数の関心領域を複数の関心領域群に分割する分割手段と、前記複数の関心領域群それぞれの代表位置を算出する算出手段と、前記複数の関心領域群ごとに、前記代表位置と磁場中心の位置とを合わせたのちに当該関心領域群に含まれる関心領域が設定された位置の画像を撮像するよう制御する撮像制御手段とを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
請求項1記載の本発明によれば、歪みがある位置決め画像上でROIが設定された場合でも、操作者が意図した位置を正しく撮像することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、本実施例に係るMRI装置の全体構成を示す図である。
【図2】図2は、本実施例に係るMRI装置の詳細な構成を示す機能ブロック図である。
【図3】図3は、本実施例に係るMRI装置の動作手順を示すフローチャートである。
【図4】図4は、本実施例に係るMRI装置による撮像の流れを説明するための図(1)である。
【図5】図5は、本実施例に係るMRI装置による撮像の流れを説明するための図(2)である。
【図6】図6は、本実施例に係るMRI装置による撮像の流れを説明するための図(3)である。
【図7】図7は、本実施例に係るMRI装置による撮像の流れを説明するための図(4)である。
【図8】図8は、本実施例に係るMRI装置による撮像の流れを説明するための図(5)である。
【図9】図9は、本実施例に係るMRI装置による撮像の流れを説明するための図(6)である。
【図10】図10は、本実施例に係るMRI装置による撮像の流れを説明するための図(7)である。
【図11】図11は、本実施例に係るMRI装置による撮像の流れを説明するための図(8)である。
【図12】図12は、本実施例に係るMRI装置による撮像の流れを説明するための図(9)である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明に係るMRI装置の実施例を図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下に示す実施例により本発明が限定されるものではない。
【実施例】
【0012】
まず、本実施例に係るMRI装置の全体構成について説明する。図1は、本実施例に係るMRI装置100の全体構成を示す図である。図1に示すように、このMRI装置100は、静磁場磁石1、傾斜磁場コイル2、傾斜磁場電源3、寝台4、寝台制御部5、送信RFコイル6、送信部7、受信RFコイル8、受信部9、シーケンス制御部10及び計算機システム20を備える。
【0013】
静磁場磁石1は、中空の円筒形状に形成された磁石であり、内部の空間に一様な静磁場を発生する。この静磁場磁石1としては、例えば永久磁石、超伝導磁石等が使用される。
【0014】
傾斜磁場コイル2は、中空の円筒形状に形成されたコイルであり、静磁場磁石1の内側に配置される。この傾斜磁場コイル2は、互いに直交するX,Y,Zの各軸に対応する3つのコイルが組み合わされて形成されており、これら3つのコイルは、後述する傾斜磁場電源3から個別に電流供給を受けて、X,Y,Zの各軸に沿って磁場強度が変化する傾斜磁場を発生させる。なお、Z軸方向は、静磁場と同方向とする。傾斜磁場電源3は、傾斜磁場コイル2に電流を供給する。
【0015】
ここで、傾斜磁場コイル2によって発生するX,Y,Zの各軸の傾斜磁場は、例えば、スライス選択用傾斜磁場Gs、位相エンコード用傾斜磁場Ge及びリードアウト用傾斜磁場Grにそれぞれ対応する。スライス選択用傾斜磁場Gsは、任意に撮像断面を決めるために利用される。位相エンコード用傾斜磁場Geは、空間的位置に応じて磁気共鳴信号の位相を変化させるために利用される。リードアウト用傾斜磁場Grは、空間的位置に応じて磁気共鳴信号の周波数を変化させるために利用される。
【0016】
寝台4は、被検体Pが載置される天板4aを備え、後述する寝台制御部5による制御のもと、被検体Pが載置された状態で天板4aを傾斜磁場コイル2の空洞(撮像口)内へ挿入する。通常、この寝台4は、長手方向が静磁場磁石1の中心軸と平行になるように設置される。寝台制御部5は、制御部26による制御のもと、寝台4を制御する装置であり、寝台4を駆動して、天板4aを長手方向及び上下方向へ移動する。
【0017】
送信RFコイル6は、傾斜磁場コイル2の内側に配置され、送信部7から高周波パルスの供給を受けて高周波磁場を発生する。送信部7は、ラーモア周波数に対応する高周波パルスを送信RFコイル6に送信する。
【0018】
受信RFコイル8は、傾斜磁場コイル2の内側に配置され、上記の高周波磁場の影響によって被検体Pから放射される磁気共鳴信号を受信する。この受信RFコイル8は、磁気共鳴信号を受信すると、その磁気共鳴信号を受信部9へ出力する。
【0019】
受信部9は、受信RFコイル8から出力される磁気共鳴信号に基づいてk空間データを生成する。具体的には、この受信部9は、受信RFコイル8から出力される磁気共鳴信号をデジタル変換することによってk空間データを生成する。このk空間データには、前述したスライス選択用傾斜磁場Gs、位相エンコード用傾斜磁場Ge及びリードアウト用傾斜磁場Grによって、PE(Phase Encode)方向、RO(Read Out)方向、SE(Slice Encode)方向の空間周波数の情報が対応付けられている。そして、k空間データを生成すると、受信部9は、そのk空間データをシーケンス制御部10へ送信する。
【0020】
シーケンス制御部10は、計算機システム20から送信されるシーケンス情報に基づいて、傾斜磁場電源3、送信部7及び受信部9を駆動することによって各種撮像シーケンスを実行する。ここで、シーケンス情報とは、傾斜磁場電源3が傾斜磁場コイル2に供給する電源の強さや電源を供給するタイミング、送信部7が送信RFコイル6に送信するRF信号の強さやRF信号を送信するタイミング、受信部9が磁気共鳴信号を検出するタイミングなど、撮像シーケンスを実行するための手順を定義した情報である。
【0021】
なお、シーケンス制御部10は、傾斜磁場電源3、送信部7及び受信部9を駆動して撮像シーケンスを実行した結果、受信部9からk空間データが送信されると、そのk空間データを計算機システム20へ転送する。
【0022】
計算機システム20は、MRI装置100の全体制御を行う。例えば、計算機システム20は、上述した各部を駆動することで、データ収集や画像再構成などを行う。この計算機システム20は、インタフェース部21、画像再構成部22、記憶部23、入力部24、表示部25及び制御部26を有する。
【0023】
インタフェース部21は、シーケンス制御部10との間で授受される各種信号の入出力を制御する。例えば、このインタフェース部21は、シーケンス制御部10に対してシーケンス情報を送信し、シーケンス制御部10からk空間データを受信する。k空間データを受信すると、インタフェース部21は、各k空間データを被検体Pごとに記憶部23に格納する。
【0024】
画像再構成部22は、記憶部23によって記憶されたk空間データに対して、後処理、すなわちフーリエ変換等の再構成処理を施すことによって、被検体P内における所望核スピンのスペクトラムデータあるいは画像データを生成する。
【0025】
記憶部23は、インタフェース部21によって受信されたk空間データと、画像再構成部22によって生成されたスペクトラムデータや画像データなどを、被検体Pごとに記憶する。
【0026】
入力部24は、操作者からの各種指示や情報入力を受け付ける。この入力部24としては、マウスやトラックボールなどのポインティングデバイス、モード切替スイッチ等の選択デバイス、あるいはキーボード等の入力デバイスを適宜に利用可能である。
【0027】
表示部25は、制御部26による制御のもと、スペクトラムデータあるいは画像データ等の各種の情報を表示する。この表示部25としては、液晶表示器などの表示デバイスを利用可能である。
【0028】
制御部26は、図示していないCPUやメモリ等を有し、MRI装置100の全体制御を行う。例えば、制御部26は、入力部24を介して操作者から入力される撮像条件に基づいてシーケンス情報を生成し、そのシーケンス情報をシーケンス制御部10に送信することで、シーケンス制御部10に撮像シーケンスを実行させる。また、制御部26は、シーケンス制御部10からk空間データが送られると、そのk空間データから画像を再構成するよう画像再構成部22を制御する。
【0029】
以上、本実施例に係るMRI装置100の全体構成について説明した。このような構成のもと、MRI装置100は、被検体Pが撮像された位置決め画像上に複数のROI(関心領域)を設定する。その後、MR装置100は、磁場の不均一性による歪みを許容する範囲である歪み許容範囲内に収まるROIを1つのROIグループ(関心領域群)として複数のROIを複数のROIグループに分割し、各ROIグループの代表位置を算出する。そして、MRI装置100は、複数のROIごとに、代表位置と磁場中心の位置とを合わせたのちにそのROIグループに含まれるROIが設定された位置の画像を撮像するよう制御する。なお、ここでいう歪み許容範囲とは、静磁場磁石、傾斜磁場、及びRF磁場の空間的な配置や強度に応じて装置ごとに固有に定まる範囲である。
【0030】
すなわち、本実施例では、MRI装置100が、位置決め画像上に複数のROIが設定された場合に、各ROIを歪み許容範囲内に収まるように複数のROIグループに分割し、各ROIグループの代表位置を磁場中心に合わせながら複数回撮像を行う。このように、ROIグループの代表位置を磁場中心に合わせながら複数回に分けて撮像を行うことで、最初の位置決めでは歪み許容範囲の外に設定されたROIの画像が歪み許容範囲内で撮像されるようになる。したがって、本実施例によれば、歪みがある位置決め画像上でROIが設定された場合でも、操作者が意図した位置を正しく撮像することができる。
【0031】
以下では、かかるMRI装置100について詳細に説明する。図2は、本実施例に係るMRI装置100の詳細な構成を示す機能ブロック図である。図2は、図1に示したMRI装置100が有する各部のうち、寝台制御部5、シーケンス制御部10、及び計算機システム20を示している。また、ここでは、計算機システム20に含まれる記憶部23及び制御部26に関する機能を中心に説明する。
【0032】
図2に示すように、記憶部23は、画像記憶部23aを有する。画像記憶部23aは、画像再構成部22によって生成された画像データを記憶する。
【0033】
また、制御部26は、ROI設定部26a、追加撮像判定部26b、ROIグループ分割部26c、代表位置算出部26d、撮像制御部26e、画像表示制御部26f、及び撮像情報表示制御部26gを有する。
【0034】
ROI設定部26aは、被検体Pが撮像された位置決め画像上に複数のROIを設定する。例えば、ROI設定部26aは、入力部24を介して、表示部25に表示された位置決め画像上にROIを指定する操作を受け付ける。そして、ROI設定部26aは、操作者により指定されたROIの位置及び大きさを示す情報を生成し、生成した情報を位置決め画像に付帯させて画像記憶部23aに記憶させる。
【0035】
なお、本実施例では、ROI設定部26aが、操作者による操作に基づいてROIを設定する場合について説明する。しかし、例えば、ROI設定部26aは、撮像の対象となる部位の解剖学的な特徴に基づいて自動的にROIを設定してもよい。例えば、ROI設定部26aは、撮像の対象となる部位が脊椎であった場合には、位置決め画像から脊椎に沿った曲線を抽出し、抽出した曲線と垂直に交わるように所定の数のROIを設定する。
【0036】
追加撮像判定部26bは、ROI設定部26aによって設定された全てのROIが歪み許容範囲内に収まっているか否かを判定する。本実施例では、歪み許容範囲は、被検体Pが載置される天板4aの移動方向に所定の幅を有する範囲であることとする。そして、追加撮像判定部26bは、全てのROIが歪み許容範囲内に収まっていた場合には、後述する撮像制御部26eに対して本撮像を実行するよう指示する。一方、全てのROIが歪み許容範囲内に収まっていなかった場合には、後述するROIグループ分割部26cに対して、位置決め画像上に設定されたROIの分割を指示する。
【0037】
ROIグループ分割部26cは、追加撮像判定部26bからROIの分割を指示された場合に、歪み許容範囲内に収まるROIを1つのROIグループとして、位置決め画像上に設定された複数のROIを複数のROIグループに分割する。これにより、位置決め画像上に設定された複数のROIが、それぞれ歪み許容範囲内に収まるように分けられる。
【0038】
代表位置算出部26dは、ROIグループ分割部26cにより区分けされた複数のROIグループそれぞれの代表位置を算出する。なお、代表位置算出部26dは、各ROIグループの代表位置を算出すると、算出した代表位置に関する情報を後述する撮像制御部26eに通知する。ここでいう代表位置に関する情報とは、例えば、MRI装置100における空間的な位置を装置座標系で表した場合の代表位置の座標を示す情報である。
【0039】
なお、本実施例では、代表位置算出部26dが、ROIグループの中心位置を代表位置として算出する場合について説明する。しかし、ROIグループの代表位置は中心位置に限られない。例えば、磁場の均一性が磁場中心を中心にして対称でないような場合には、中心位置から所定量だけずらした位置を代表位置としてもよい。
【0040】
撮像制御部26eは、各種撮像シーケンスにしたがって撮像を行うようシーケンス制御部10を制御する。例えば、撮像制御部26eは、位置決め画像を撮影するための撮像シーケンスをシーケンス制御部10に実行させる。また、撮像制御部26eは、追加撮像判定部26bから本撮像を実行するよう指示された場合には、位置決め画像上でROIが設定された位置の画像を撮像するようシーケンス制御部10を制御する。
【0041】
また、例えば、撮像制御部26eは、代表位置算出部26dから各ROIグループの代表位置に関する情報が通知された場合には、ROIグループごとに、代表位置算出部26dにより算出された代表位置と磁場中心の位置とを合わせたのちにROIグループに含まれるROIの画像を撮像するようシーケンス制御部10を制御する。このとき、撮像制御部26eは、代表位置算出部26dから通知された代表位置に関する情報に基づいて、寝台制御部5を制御して寝台4の天板4aを移動させることで、各ROIグループの代表位置と磁場中心の位置とを合わせる。
【0042】
なお、例えば、撮像制御部26eは、後述する画像表示制御部26fによって追加位置決め画像上に重畳されたROIの位置を承認する操作を操作者から受け付けた場合に、ROIが設定された位置の画像を撮像するようシーケンス制御部10を制御する。また、撮像制御部26eは、ROIグループの代表位置と磁場中心の位置とを合わせるごとに、新たな位置決め画像である追加位置決め画像を撮像するようシーケンス制御部10を制御する。そして、撮像制御部26eは、撮像された追加位置決め画像に対して、その追加位置決め画像に対応するROIグループのROIに関する情報を付帯させる。
【0043】
また、MRI装置の種類によっては、位置決め画像が撮像される際に、撮像された位置決め画像に各種の付帯情報が付与されることもある。ここでいう付帯情報は、例えば、パラレルイメージングのためのマップデータや、脂肪抑制のためのシミングデータ、中心周波数データなどである。そこで、撮像制御部26eは、追加位置決め画像が撮像される際に、各種の付帯情報を追加位置決め画像に付帯させるようにしてもよい。
【0044】
画像表示制御部26fは、画像再構成部22によって生成された各種画像を表示部25に表示させる。例えば、画像表示制御部26fは、画像再構成部22によって生成された位置決め画像を表示部25に表示させる。また、例えば、画像表示制御部26fは、追加位置決め画像が撮像された場合には、複数のROIグループごとに、ROIグループに含まれるROIとそのROIグループに対応する追加位置決め画像とを重畳させて表示部25に表示させる。
【0045】
また、画像表示制御部26fは、撮像制御部26eによってROIが設定された位置の画像が撮像されたのちに、参照表示を要求する操作を操作者から受け付けた場合には、位置決め画像とその位置決め画像に設定されたROIの画像とを並べて表示部25に表示させる。このとき、画像表示制御部26fは、追加位置決め画像に関する参照表示を要求する操作を受け付けた場合には、操作者から要求された追加位置決め画像と、その追加位置決め画像に対応するROIグループに含まれるROIの画像とを並べて表示部25に表示させる。
【0046】
撮像情報表示制御部26gは、位置決め画像の撮像や本撮像などの各種撮像に関する情報を表示部25に表示させる。ここでいう撮像に関する情報とは、例えば、実行予定の撮像や実行中の撮像に関する撮像条件や実行状態などを示す情報である。例えば、撮像情報表示制御部26gは、撮像制御部26eによって追加位置決め画像が撮像された場合には、操作者からの要求に応じて、各撮像に関する情報をリスト表示する。または、撮像情報表示制御部26gは、最初から予定されていた撮像に関する情報をリスト表示し、追加位置決め画像に関する情報については、操作者からの要求に応じてツリー表示してもよい。
【0047】
次に、図3〜12を参照して、本実施例に係るMRI装置100の動作手順について説明する。図3は、本実施例に係るMRI装置100の動作手順を示すフローチャートである。また、図4〜12は、本実施例に係るMRI装置100による撮像の流れを説明するための図である。
【0048】
図3に示すように、MRI装置100では、撮像制御部26eが、位置決め画像の撮像を開始する指示を操作者から受け付けた場合に(ステップS101,Yes)、位置決め画像を撮像するための撮像シーケンスをシーケンス制御部10に実行させる(ステップS102)。
【0049】
そして、画像再構成部22によって位置決め画像が生成されたのちに、画像表示制御部26fが、生成された位置決め画像を表示部25に表示させる(ステップS103)。例えば、画像表示制御部26fは、図4に示すように、被検体Pのサジタル像を位置決め画像30として表示部25に表示させる。
【0050】
続いて、ROI設定部26aが、表示部25に表示された位置決め画像上に複数のROIを設定する(ステップS104)。例えば、ROI設定部26aは、図5に示すように、位置決め画像30上に複数のROI41〜44を設定する。
【0051】
その後、本撮像を開始するよう操作者から指示された場合に(ステップS105,Yes)、追加撮像判定部26bが、ROI設定部26aによって設定された全てのROIが歪み許容範囲内に収まっているか否かを判定する(ステップS106)。例えば、追加撮像判定部26bは、図6に示すように、ROI設定部26aによって設定されたROI41〜44の全てが、被検体Pの体軸方向に所定の幅を有する歪み許容範囲A内に収まっているか否かを判定する。
【0052】
ここで、設定された全てのROIが歪み許容範囲内に収まっていた場合には(ステップS106,Yes)、撮像制御部26eが、位置決め画像上でROIが設定された位置の画像を撮像するようシーケンス制御部10を制御する(ステップS113)。
【0053】
一方、設定された全てのROIが歪み許容範囲内に収まっていなかった場合には(ステップS106,No)、ROIグループ分割部26cが、歪み許容範囲内に収まるROIを1つのROIグループとして、位置決め画像上に設定された複数のROIを複数のROIグループに分割する(ステップS107)。例えば、ROIグループ分割部26cは、図7に示すように、ROI41及び42をROIグループ51とし、ROI43及び44をROIグループ52とする。
【0054】
続いて、代表位置算出部26dが、ROIグループ分割部26cによりROIが分割された複数のROIグループそれぞれの代表位置を算出する(ステップS108)。例えば、代表位置算出部26dは、図8の(a)に示すように、ROIグループ51の代表位置として、ROIグループ51の中心位置61を算出する。また、代表位置算出部26dは、図8の(b)に示すように、ROIグループ52の代表位置として、ROIグループ52の中心位置62を算出する。
【0055】
その後、撮像制御部26eが、ROIグループごとに追加位置決め画像を撮像する(ステップS109)。このとき、撮像制御部26eは、寝台制御部5及びシーケンス制御部10を制御することで、ROIグループごとに、代表位置算出部26dにより算出された代表位置と磁場中心の位置とを合わせたのちに追加位置決め画像を撮像する。例えば、撮像制御部26eは、図9の(a)に示すように、ROIグループ51の中心位置61を磁場中心に合わせた場合の追加位置決め画像71を撮像する。また、撮像制御部26eは、図9の(b)に示すように、ROIグループ52の中心位置62を磁場中心に合わせた場合の追加位置決め画像72を撮像する。
【0056】
そして、追加位置決め画像が撮像されたのちに、画像表示制御部26fが、複数のROIグループごとに、ROIグループに含まれるROIとそのROIグループに対応する追加位置決め画像とを重畳させて表示部25に表示させる(ステップS110)。例えば、画像表示制御部26fは、図10の(a)に示すように、ROIグループ51に含まれるROI41及び42と追加位置決め画像71とを重畳させて表示部25に表示させる。また、例えば、画像表示制御部26fは、図10の(b)に示すように、ROIグループ52に含まれるROI43及び44と追加位置決め画像72とを重畳させて表示部25に表示させる。
【0057】
その後、ROIの位置を承認する操作を撮像制御部26eが受け付けるまでの間は(ステップS111,No)、ROI設定部26aが、操作者による操作に応じて、ROIの位置を変更する(ステップS112)。そして、撮像制御部26eが、追加位置決め画像上に重畳されたROIの位置を承認する操作を操作者から受け付けた場合には(ステップS111,Yes)、ROIグループごとに、代表位置算出部26dにより算出された代表位置と磁場中心の位置とを合わせたのちにROIグループに含まれるROIの画像を撮像するようシーケンス制御部10を制御する(ステップS113)。
【0058】
そして、ROIが設定された位置の画像が撮像されたのちに、画像表示制御部26fが、追加位置決め画像に関する参照表示を要求する操作を操作者から受け付けた場合に(ステップS114,Yes)、追加位置決め画像とその追加位置決め画像に対応するROIの画像とを並べて表示部25に表示させる(ステップS115)。例えば、画像表示制御部26fは、図11に示すように、追加位置決め画像71と、追加位置決め画像71に対応するROI42の画像81とを並べて表示させる。
【0059】
なお、ここでは、操作者から参照表示を要求された場合に画像表示制御部26fが1つの位置決め画像を表示させる例について説明した。しかし、例えば、画像表示制御部26fが、ROIグループごとに撮像された複数の追加位置決め画像を合成した合成位置決め画像を生成し、生成した合成位置決め画像と複数の追加位置決め画像に対応するROIの画像とを並べて表示部25に表示させるようにしてもよい。
【0060】
この場合には、例えば、画像表示制御部26fは、図12に示すように、追加位置決め画像71と追加位置決め画像72とを合成した合成位置決め画像を生成する。そして、画像表示制御部26fは、生成した合成位置決め画像から図4に示した位置決め画像30と同じ範囲の画像73を切り出し、切り出した画像73にROI41〜44を重畳させて表示部25に表示させる。
【0061】
上述したように、本実施例では、ROI設定部26aが、被検体Pが撮像された位置決め画像上に複数のROIを設定する。また、ROIグループ分割部26cが、磁場の不均一性による歪みを許容する範囲である歪み許容範囲内に収まるROIを1つのROIグループとして、設定された複数のROIを複数のROIグループに分割する。また、代表位置算出部26dが、複数のROIグループそれぞれの代表位置を算出する。そして、撮像制御部26eが、複数のROIグループごとに、前記代表位置と磁場中心の位置とを合わせたのちにそのROIグループに含まれるROIが設定された位置の画像を撮像するよう制御する。このように、ROIグループの代表位置を磁場中心に合わせながら複数回に分けて撮像を行うことで、最初の位置決めでは歪み許容範囲の外に設定されたROIの画像がいずれも歪み許容範囲内で撮像されるようになる。したがって、本実施例によれば、歪みがある位置決め画像上でROIが設定された場合でも、操作者が意図した位置を正しく撮像することができる。
【0062】
また、本実施例では、歪み許容範囲は、被検体Pが載置される寝台4の移動方向に所定の幅を有する範囲である。そして、撮像制御部26eは、寝台4の天板4aを移動させることで、ROIグループの代表位置と磁場中心の位置とを合わせる。したがって、本実施例によれば、寝台の移動方向に沿った磁場の不均一性の影響で歪みが生じた位置決め画像上でROIが設定された場合でも、操作者が意図した位置を正しく撮像することができる。
【0063】
また、本実施例では、撮像制御部26eは、ROIグループの代表位置と磁場中心の位置とを合わせるごとに新たな位置決め画像である追加位置決め画像を撮像する。そして、画像表示制御部26fは、複数のROIグループごとに、ROIグループに含まれるROIをそのROIグループに対応する追加位置決め画像上に重畳させて表示部25に表示させる。したがって、本実施例によれば、新たな位置決め画像として撮像された追加位置決め画像と、最初の位置決めで用いられた位置決め画像に設定された関心領域との位置関係を操作者が容易に確認することができる。
【0064】
また、本実施例では、撮像制御部26eは、追加位置決め画像上に重畳されたROIの位置を承認する操作を操作者から受け付けた場合に、そのROIが設定された位置の画像を撮像するよう制御する。したがって、本実施例によれば、操作者によってROIの位置が確認されたのちに撮像が行われるので、操作者が意図した位置をより精度よく撮像することができる。
【0065】
また、本実施例では、画像表示制御部26fは、ROIが設定された位置の画像が撮像されたのちに、追加位置決め画像と、その追加位置決め画像に対応するROIグループに含まれるROIの画像とを並べて表示部25に表示させる。したがって、本実施例によれば、歪みの少ない範囲にROIが設定された追加位置決め画像を用いて、撮像された画像の位置を確認することができるので、撮像された画像の位置を操作者がより正確に把握することができる。
【0066】
また、本実施例では、画像表示制御部26fが、ROIグループごとに撮像された複数の追加位置決め画像を合成した合成位置決め画像を生成し、生成した合成位置決め画像と複数の追加位置決め画像に対応するROIの画像とを並べて表示部25に表示させる。したがって、本実施例によれば、最初の位置決めで設定された複数のROIの位置を1つの合成位置決め画像上で確認することができるので、撮像された画像の位置を操作者がより容易に把握することができる。
【0067】
また、本実施例では、撮像情報表示制御部26gが、追加位置決め画像の撮像に関する情報を表示部25に表示させる。したがって、本実施例によれば、最初に予定されていた撮像に追加位置決め画像の撮像が追加された場合でも、追加された撮像に関する情報を操作者が容易に確認することができる。
【0068】
また、本実施例では、代表位置は、ROIグループの中心位置である。したがって、本実施例によれば、磁場の均一性が磁場中心を中心にして対称である場合に、磁場の不均一性の影響で歪みが生じた位置決め画像上でROIが設定されたときでも、操作者が意図した位置を正しく撮像することができる。
【符号の説明】
【0069】
100 MRI装置
20 計算機システム
26 制御部
26a ROI設定部
26b 追加撮像判定部
26c ROIグループ分割部
26d 代表位置算出部
26e 撮像制御部
26f 画像表示制御部
26g 撮像情報表示制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体が撮像された位置決め画像上に複数の関心領域を設定する設定手段と、
磁場の不均一性による歪みを許容する範囲である歪み許容範囲内に収まる関心領域を1つの関心領域群として前記複数の関心領域を複数の関心領域群に分割する分割手段と、
前記複数の関心領域群それぞれの代表位置を算出する算出手段と、
前記複数の関心領域群ごとに、前記代表位置と磁場中心の位置とを合わせたのちに当該関心領域群に含まれる関心領域が設定された位置の画像を撮像するよう制御する撮像制御手段と
を備えたことを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
【請求項2】
前記歪み許容範囲は、前記被検体が載置される寝台の移動方向に所定の幅を有する範囲であって、
前記撮像制御手段は、前記寝台を移動させることで前記代表位置と磁場中心の位置とを合わせることを特徴とする請求項1に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項3】
前記撮像制御手段は、前記代表位置と前記磁場中心の位置とを合わせるごとに新たな位置決め画像である追加位置決め画像を撮像し、
前記複数の関心領域群ごとに、関心領域群に含まれる関心領域を当該関心領域群に対応する追加位置決め画像上に重畳させて表示部に表示させる画像表示制御手段をさらに備えたことを特徴とする請求項1又は2に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項4】
前記撮像制御手段は、前記追加位置決め画像上に重畳された関心領域の位置を承認する操作を操作者から受け付けた場合に、当該関心領域が設定された位置の画像を撮像するよう制御することを特徴とする請求項3に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項5】
前記画像表示制御手段は、前記関心領域が設定された位置の画像が撮像されたのちに、前記追加位置決め画像と、当該追加位置決め画像に対応する関心領域群に含まれる関心領域の画像とを並べて表示部に表示させることを特徴とする請求項3又は4に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項6】
前記画像表示制御手段は、前記関心領域群ごとに撮像された複数の追加位置決め画像を合成した合成位置決め画像を生成し、生成した合成位置決め画像と前記複数の追加位置決め画像に対応する関心領域の画像とを並べて表示部に表示させることを特徴とする請求項5に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項7】
前記追加位置決め画像の撮像に関する情報を表示部に表示させる情報表示制御手段をさらに備えたことを特徴とする請求項3〜6のいずれか一つに記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項8】
前記代表位置は、前記関心領域群の中心位置であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一つに記載の磁気共鳴イメージング装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2011−200409(P2011−200409A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−70168(P2010−70168)
【出願日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(594164542)東芝メディカルシステムズ株式会社 (4,066)
【出願人】(594164531)東芝医用システムエンジニアリング株式会社 (892)
【Fターム(参考)】