説明

磁気共鳴イメージング装置

【課題】磁気共鳴イメージング装置の強磁場に左右されずに、被検体に必要な情報を表示する。
【解決手段】磁場発生装置2の収容空間21の内壁22に、被検体11に所定の情報を表示する電子ペーパ5を取り付ける。電子ペーパ5は、ケーブル6によって、電子ペーパ5を制御する制御装置7に接続されている。電子ペーパ5は、ケーブル6を通じて制御装置7から信号を受け取り、制御装置7から受け取った信号に応答して、被検体11に所定の情報(例えば、スキャンの残り時間、撮影時の注意事項、被検体11の好みに合った画像)を表示する。電子ペーパ5としては、例えば、電気泳動式である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検体から磁気共鳴信号を収集する磁気共鳴イメージング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
磁気共鳴イメージング装置で被検体を撮影する場合、被検体はボア内に搬送される。しかし、ボアは狭い空間であるので、被検体が閉所恐怖症の場合、被検体が撮影に耐えられなくなり、撮影を続けることができなくなることがある。また、オペレータが撮影中に被検体に対して必要な指示をする場合、一般的には、音声で指示を伝えるが、被検体が聴覚障害者の場合、音声での指示をすることはできない。上記のような問題点を解決する方法として、ボア内に液晶ディスプレイ(LCD:Liquid
Crystal Display)を設置する方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003-190112号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の方法では、被検体が閉所恐怖症の場合は、被検体に安心感を与えるような映像をLCDに表示させている。また、被検体が聴覚障害者の場合は、必要な指示をLCDに表示させている。しかし、磁気共鳴イメージング装置のボアおよびその周辺には強磁場が発生しているので、LCDは、発生した強磁場の影響を受けて正常に動作することができず、実際には、被検体に必要な情報(例えば、映像、指示)を表示することは難しいという問題がある。したがって、磁気共鳴イメージング装置の強磁場に左右されずに、被検体に必要な情報を表示できるようにすることが望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
課題を解決するための発明は、被検体から磁気共鳴信号を収集する磁気共鳴イメージング装置であって、
磁場発生装置と、
前記磁場発生装置に設けられ、所定の情報を表示する電子ペーパと、
を有する磁気共鳴イメージング装置である。
【発明の効果】
【0006】
電子ペーパを使用することによって、被検体に情報を表示することが可能なる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】第1の実施形態の磁気共鳴イメージング装置の概略図である。
【図2】電子ペーパ5の説明図である。
【図3】シールドルーム101内に配置された磁場発生装置2およびテーブル3および4と、シールドルーム101の外に配置された制御装置7とを示す図である。
【図4】電子ペーパ5に表示される情報の例を示す図である。
【図5】実験結果の説明図である。
【図6】第2の実施形態のMRI装置200の概略図である。
【図7】シールドルーム101に配置された磁場発生装置2およびテーブル3および4の側面図である。
【図8】電子ペーパ5に表示される情報の例を示す図である。
【図9】第3の実施形態のMRI装置におけるケーブル6の説明図である。
【図10】フェライトを有するケーブルの一例を示す図である。
【図11】フェライトを有するケーブルの別の例を示す図である。
【図12】フェライトを有するケーブルの別の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、発明を実施するための形態について説明するが、本発明は、以下の形態に限定されることはない。
【0009】
(1)第1の実施形態
図1は、第1の実施形態の磁気共鳴イメージング装置の概略図である。
【0010】
磁気共鳴イメージング(MRI:Magnetic Resonance Imaging)装置100は、シールドルーム101内に、磁場発生装置2、テーブル3および4などを有している。
【0011】
磁場発生装置2は、被検体11が収容されるトンネル型の収容空間21を有している。磁場発生装置2の前側には、テーブル3が配置され、磁場発生装置2の後側には、テーブル4が配置されている。テーブル3は、被検体11を載置するためのクレードル31を有している。クレードル31がz方向に移動することによって、被検体11は収容空間21内に搬入される。
【0012】
また、磁場発生装置2の収容空間21の内壁22には、被検体11に所定の情報(例えば、スキャンの残り時間、撮影時の注意事項、被検体11の好みに合った画像)を表示する電子ペーパ5が取り付けられている。電子ペーパ5については、後に詳しく説明する。
【0013】
MRI装置100は、シールドルーム101の外側に、電子ペーパ5を制御する制御装置7や、コンソール8などを備えている。電子ペーパ5と制御装置7は、ケーブル6によって接続されている。オペレータ12は、コンソール8を操作することによって、撮影に必要な情報などを入力することができる。
次に、電子ペーパ5について、図2を参照しながら説明する。
【0014】
図2は、電子ペーパ5の説明図である。
図2(a)は、磁場発生装置2を示す斜視図、図2(b)は、図2(a)のラインP1の位置で収容空間21の内壁22を分断し、二次元の平面に展開して示した図である。
【0015】
収容空間21の内壁22は、収容空間21に搬入されたクレードル31を支持するための支持面22a(図2(b)では、斜線で示されている)と、支持面22aに繋がる曲面22bとを有している。
【0016】
電子ペーパ5は、内壁22の曲面22bのほぼ全面を覆うように取り付けられている。電子ペーパ5の厚さは紙のように薄く、曲げて使用することができるので、内壁22の曲面22bに容易に取り付けることができる。
【0017】
図3は、シールドルーム101内に配置された磁場発生装置2およびテーブル3および4と、シールドルーム101の外に配置された制御装置7とを示す図である。
【0018】
尚、磁場発生装置2については、電子ペーパ5の位置を分かりやすくするため、yz面における断面が示されている。
【0019】
磁場発生装置2は、超伝導コイル23、勾配コイル24、および送信コイル25を内蔵している。超伝導コイル23は静磁場を印加し、勾配コイル24は勾配磁場を印加し、送信コイル25はRFパルスを送信する。尚、超伝導コイル23の代わりに、永久磁石を用いてもよい。
【0020】
収容空間21の内壁に取り付けられた電子ペーパ5は、ケーブル6によって、シールドルーム101の外に配置された制御装置7に接続されている。電子ペーパ5は、ケーブル6を通じて制御装置7から信号を受け取り、制御装置7から受け取った信号に応答して、被検体11に所定の情報(例えば、スキャンの残り時間、撮影時の注意事項、被検体11の好みに合った画像)を表示する。電子ペーパ5は収容空間21の内壁22に取り付けられているので、被検体11は、収容空間21の中で、電子ペーパ5に表示された情報を視覚的に容易に認識することができる。以下に、電子ペーパ5に表示される情報の例について説明する。
【0021】
図4は、電子ペーパ5に表示される情報の例を示す図である。図4には、収容空間21の前側から電子ペーパ5を見たときの様子が示されている。
【0022】
図4(a)では、電子ペーパ5は花畑と青空を表示しており、更に、青空の中に、スキャンの残り時間Tを表示している。また、図4(b)では、電子ペーパ5は森林を表示しており、更に、森林の中に、スキャンの残り時間Tを表示している。図4(a)および(b)では、スキャンの残り時間Tは、T=2分45秒の例が示されている。
【0023】
図4に示すように、花畑や森林を表示することによって、被検体が閉所恐怖症であっても、被検体11が感じる不安感を低減することができる。また、スキャンの残り時間Tを表示するので、被検体11が聴覚障害者であっても、スキャンの残り時間Tを視覚的に認識することができる。尚、電子ペーパ5に表示する情報は、図4に示す情報に限られない。例えば、息止めスキャンを実行する場合は、息止めのタイミング、息止めスキャンが終了するまでの残り時間などを表示してもよい。
【0024】
また、電子ペーパ5は、液晶ディスプレイと比較して、情報の書き換え時に必要となる電力は微量であるので、ノイズもほとんど発生しない。したがって、被検体11のスキャン中に情報を書き換えても、高品質なMR画像を得ることができる。
【0025】
尚、電子ペーパ5としては、電気泳動式の電子ペーパを用いることが好ましい。電気泳動式の電子ペーパは、強磁場中で使用しても、磁場の影響をほとんど受けないので、必要な情報を正しく表示することができる。電気泳動式の電子ペーパが、強磁場中でも必要な情報を正しく表示することができることを検証するため、電気泳動式の電子ペーパを用いて実験を行った。以下に、実験結果について説明する。
【0026】
図5は、実験結果の説明図である。
実験では、電気泳動式の電子ペーパ50を、MRI装置の収容空間21の内壁22に取り付け、電子ペーパ50に数字「7」を表示させた。図5を参照すると、電子ペーパ50には、数字「7」がきれいに表示されており、電気泳動式の電子ペーパが、強磁場中でも必要な情報を正しく表示することができることがわかる。また、実質的に磁場の影響を受けないのであれば、電気泳動式とは別の方式の電子ペーパを用いてもよい。ただし、磁気ツイストボールや磁気感熱式などのデバイスを利用している電子ペーパは、磁場発生装置2の磁場の影響を受けて正常に動作しない可能性が高いので、使用しないことが望ましい。
【0027】
尚、第1の実施形態では、被検体を収容する収容空間21がトンネル型の場合について説明されているが、本発明は、収容空間がオープン型の場合であっても適用することができる。
【0028】
(2)第2の実施形態
第1の実施形態では、電子ペーパ5が収容空間21の内壁22に取り付けられたMRI装置100について説明されているが、第2の実施形態では、電子ペーパが磁場発生装置の外面に取り付けられたMRI装置について説明する。
【0029】
図6は、第2の実施形態のMRI装置200の概略図、図7は、シールドルーム101に配置された磁場発生装置2およびテーブル3および4の側面図である。
である。
【0030】
第2の実施形態のMRI装置200は、電子ペーパ5が磁場発生装置2の外面に取り付けられているが、その他の構成については、第1の実施形態のMRI装置100と同じである。
【0031】
図8は、電子ペーパ5に表示される情報の例を示す図である。
第2の実施形態では、電子ペーパ5は、被検体11の個人情報(例えば、名前、生年月日、体重)を表示している。被検体11の個人情報を表示することによって、被検体11がシールドルーム101に入室したときに、被検体11が自分自身で本人確認をすることができ、検査対象者の取り違えを未然に防止することができる。また、電子ペーパ5を磁場発生装置2の外面に取り付けることによって、オペレータ12も、電子ペーパ5に表示された被検体11の個人情報を容易に確認することができる。被検体11の個人情報の中でも、被検体11の体重は、SAR(Specific Absorption rate)などの観点から非常に重要な情報であるので、オペレータ12が、被検体11の体重を容易に確認できることは、安全管理の面からも好ましい。更に、被検体11が、例えば、小さな子供の場合は、電子ペーパ5に、被検体11の好みに合った画像(アニメのキャラクターなど)を表示してもよい。被検体11が小さな子供の場合は、電子ペーパ5に、被検体11の好みに合った画像を表示させておくことによって、子供の不安感を軽減することができる。
【0032】
(3)第3の実施形態
図3に示すように、ケーブル6は、送信コイル25の近くに配設されている。したがって、送信コイル25が送信するRFパルスが、高周波ノイズとなり、ケーブル6を介して制御装置7に到達する可能性がある。高周波ノイズが制御装置7に到達すると、制御装置7が故障する恐れがあるので、制御装置7は、高周波ノイズから保護されることが望ましい。そこで、第3の実施形態のMRI装置では、制御装置7を高周波ノイズから保護できるように、ケーブル6が構成されている。以下に、第3の実施形態のMRI装置におけるケーブル6について説明する。尚、第3の実施形態のMRI装置は、ケーブル以外は、第1の実施形態のMRI装置100と同じである。したがって、第3の実施形態の説明に当たっては、主に、ケーブルについて説明する。
【0033】
図9は、第3の実施形態のMRI装置におけるケーブル6の説明図である。
ケーブル6は、n本の信号線S1〜Sn、内側シールド61、外側シールド62、絶縁体63、およびコンデンサCを有している。
【0034】
内側シールド61は、電子ペーパ5の位置から制御装置7の近くの位置まで、信号線S1〜Snを覆うように設けられている。外側シールド62は、内側シールド61よりも短く、電子ペーパ5側に設けられている。内側シールド61と外側シールド62との間には、絶縁体63が設けられている。コンデンサCは、内側シールド61と各信号線S1〜Snとの間に設けられている。
【0035】
第3の実施形態のケーブル6は、内側シールド61によるシングルシールド構造だけでなく、内側シールド61および外側シールド62によるダブルシールド構造を有している。したがって、RFパルスによる高周波ノイズの大部分はシールドされ、信号線S1〜Snに混入することが防止される。尚、内側シールド61および外側シールド62の長さは、図9に示されている長さに限定されることはなく、必要に応じて、適宜変更してもよい。例えば、外側シールド62の長さを、内側シールド61と同じ長さにしてもよい。
【0036】
また、ケーブル6はコンデンサCを有しているので、高周波ノイズが信号線S1〜Snに混入しても、信号線S1〜Snに混入した高周波ノイズの大部分はコンデンサCで除去することができる。このため、高周波ノイズが信号線S1〜Snに混入しても、信号線S1〜Snに混入した高周波ノイズの大部分は、制御装置7に到達する前に除去することができ、制御装置7が高周波ノイズによって故障することを防止できる。
【0037】
また、ケーブル6は、フェライトを備えてもよい(図10参照)。
図10は、フェライトを有するケーブルの一例を示す図である。
【0038】
図10に示すケーブル6は、n本の信号線S1〜Sn、内側シールド61、外側シールド62、絶縁体63、およびコンデンサCの他に、フェライトFを有している。フェライトFは、内側シールド61に取り付けられている。フェライトFを備えることによって、信号線S1〜Snに混入した高周波ノイズを更に除去することが可能となる。
【0039】
尚、図10では、フェライトFは、内側シールド61に取り付けられているが、信号線S1〜Snに取り付けてもよいし(図11参照)、内側シールド61と信号線S1〜Snとの両方に取り付けてもよい(図12参照)。
【0040】
また、第3の実施形態では、信号線S1〜Snに混入したノイズを除去するノイズ除去フィルタとして、コンデンサC(図9参照)、又はコンデンサCおよびフェライトF(図10〜図12)が示されている。しかし、コンデンサCやフェライトFとは別の部品(例えば、バラン)を、ノイズ除去フィルタとして使用してもよい。
【符号の説明】
【0041】
2 磁場発生装置
3、4 テーブル
5 電子ペーパ
6 ケーブル
7 制御装置
8 コンソール
11 被検体
21 収容空間
22 内壁
22a 支持面
22b 曲面
23 超伝導コイル
24 勾配コイル
25 送信コイル
31 クレードル
100、200 MRI装置
101 シールドルーム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体から磁気共鳴信号を収集する磁気共鳴イメージング装置であって、
磁場発生装置と、
前記磁場発生装置に設けられ、所定の情報を表示する電子ペーパと、
を有する磁気共鳴イメージング装置。
【請求項2】
前記磁場発生装置は、前記被検体が収容される収容空間を有しており、
前記電子ペーパは、前記収容空間の内壁に取り付けられている、請求項1に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項3】
前記電子ペーパは、前記磁場発生装置の外面に取り付けられている、請求項1に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項4】
前記電子ペーパを制御する制御装置と、
前記電子ペーパと前記制御装置とを接続するケーブルと、
を有する、請求項1〜3のうちのいずれか一項に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項5】
前記ケーブルは、ダブルシールド構造を有している、請求項4に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項6】
前記ケーブルは、
信号線と、
前記信号線を覆う内側シールドと、
前記内側シールドの外側に位置する外側シールドと、
を有し、
前記ケーブルは、
前記内側シールドおよび前記外側シールドによって、ダブルシールド構造が得られている、請求項5に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項7】
前記ケーブルは、
前記内側シールドと前記外側シールドとの間に絶縁体を有している、請求項6に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項8】
前記ケーブルは、
前記信号線に混入したノイズを除去するノイズ除去フィルタを有する、請求項6又は7に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項9】
前記ノイズ除去フィルタは、コンデンサ、フェライト、又はバランである、請求項8に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項10】
前記電子ペーパは、電気泳動式である、請求項1〜9のうちのいずれか一項に記載の磁気共鳴イメージング装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2012−5684(P2012−5684A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−144807(P2010−144807)
【出願日】平成22年6月25日(2010.6.25)
【出願人】(300019238)ジーイー・メディカル・システムズ・グローバル・テクノロジー・カンパニー・エルエルシー (1,125)
【Fターム(参考)】