説明

磁気共鳴イメージング装置

【課題】被検体の広領域撮像と受信コイルの位置計測とを行う場合の検査時間を短縮する。
【解決手段】実施形態の磁気共鳴イメージング装置において、アレイコイルは、被検体から発生する磁気共鳴信号をそれぞれ受信する複数のコイルエレメントを配列して形成される。収集制御部は、前記アレイコイルが装着された前記被検体の選択励起する位置を変えながら磁気共鳴信号を収集する。広領域画像生成部は、前記収集制御部により収集された磁気共鳴信号に基づいて前記被検体の広領域画像を生成する。位置計測部は、前記広領域画像の生成に用いられる磁気共鳴信号の強度と該磁気共鳴信号が収集された際の前記天板の位置とに基づいて前記コイルエレメントの位置を計測する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、磁気共鳴イメージング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、磁気共鳴イメージング装置に関する技術として、被検体が置かれた天板を移動させながら天板の移動方向に垂直な断面を選択励起して磁気共鳴信号を繰り返し収集することで、被検体の体軸方向に広い範囲の画像を生成する方法があった。また、磁気共鳴信号を受信する受信コイルとして複数のコイルエレメントを有するアレイコイルが用いられる場合に、そのアレイコイルを用いて磁気共鳴信号を収集し、収集した磁気共鳴信号に基づいて受信コイルの位置を計測する方法があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−179551号公報
【特許文献2】米国特許第6794872号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来技術では、被検体の広領域撮像と受信コイルの位置計測とを行う場合には、それぞれを個別に実行する必要があり、検査時間が長くなっていた。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態の磁気共鳴イメージング装置は、アレイコイルと、収集制御部と、広領域画像生成部と、位置計測部とを備える。アレイコイルは、被検体から発生する磁気共鳴信号をそれぞれ受信する複数のコイルエレメントを配列して形成される。収集制御部は、前記アレイコイルが装着された前記被検体の選択励起する位置を変えながら磁気共鳴信号を収集する。広領域画像生成部は、前記収集制御部により収集された磁気共鳴信号に基づいて前記被検体の広領域画像を生成する。位置計測部は、前記広領域画像の生成に用いられる磁気共鳴信号の強度と該磁気共鳴信号が収集された際の前記天板の位置とに基づいて前記コイルエレメントの位置を計測する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】図1は、第1の実施形態に係るMRI装置の全体構成を示す図である。
【図2】図2は、第1の実施形態に係るアレイコイルの一例を示す図である。
【図3】図3は、第1の実施形態に係る計算機システムの詳細な構成を示す機能ブロック図である。
【図4】図4は、第1の実施形態に係るコイル位置情報記憶部によって記憶されるコイル位置情報の一例を示す図である。
【図5】図5は、第1の実施形態に係るデータ収集制御部により実行されるデータ収集を説明するための図である。
【図6】図6は、第1の実施形態に係る広領域画像生成部によって生成される広領域画像の一例を示す図である。
【図7】図7は、第1の実施形態に係るプロファイルデータ生成部によって生成されるコイルエレメントのプロファイルデータの一例を示す図である。
【図8】図8は、第1の実施形態に係るプロファイルデータ生成部によって生成されるWBコイルのプロファイルデータの一例を示す図である。
【図9】図9は、第1の実施形態に係るコイル位置計測部によるアレイコイルの位置計測を説明するための図である。
【図10】図10は、第1の実施形態に係るMRI装置による処理の流れを示すフローチャートである。
【図11】図11は、第2の実施形態に係る計算機システムの詳細な構成を示す機能ブロック図である。
【図12】図12は、第2の実施形態に係る画像データ生成部により生成されるコイルエレメント80のアレイコイル画像の一例を示す図である。
【図13】図13は、第2の実施形態に係る画像データ生成部により生成されるWBコイル画像の一例を示す図である。
【図14】図14は、第2の実施形態に係るMRI装置による処理の流れを示すフローチャートである。
【図15】図15は、第3の実施形態に係るデータ収集制御部により実行されるデータ収集を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下に、図面を参照して、磁気共鳴イメージング装置の実施形態を詳細に説明する。なお、以下に示す実施形態では、磁気共鳴イメージング装置をMRI(Magnetic Resonance Imaging)装置と呼ぶ。また、磁気共鳴信号をMR信号と呼ぶ。
【0008】
(第1の実施形態)
まず、第1の実施形態について説明する。図1は、第1の実施形態に係るMRI装置の全体構成を示す図である。図1に示すように、第1の実施形態に係るMRI装置100は、静磁場磁石1、傾斜磁場コイル2、傾斜磁場電源3、寝台4、寝台制御部5、全身用(Whole Body:WB)コイル6、送信部7、アレイコイル8a〜8e、受信部9、及び計算機システム10を備える。
【0009】
静磁場磁石1は、中空の円筒形状に形成され、内部の空間に一様な静磁場を発生する。この静磁場磁石1としては、例えば永久磁石、超伝導磁石等が使用される。
【0010】
傾斜磁場コイル2は、中空の円筒形状に形成され、静磁場磁石1の内側に配置される。この傾斜磁場コイル2は、互いに直交するX,Y,Zの各軸に対応する3つのコイルが組み合わされて形成される。これら3つのコイルは、後述する傾斜磁場電源3から個別に電流供給を受けて、X,Y,Zの各軸に沿って磁場強度が変化する傾斜磁場を発生させる。ここで、Z軸方向は、静磁場と同方向である。また、X軸方向は、Z軸方向に垂直かつ水平な方向である。Y軸方向は、Z軸方向に垂直な上下の方向である。
【0011】
ここで、傾斜磁場コイル2によって発生するX,Y,Z各軸の傾斜磁場は、例えば、リードアウト用傾斜磁場Gr、位相エンコード用傾斜磁場Ge及びスライス選択用傾斜磁場Gsにそれぞれ対応している。リードアウト用傾斜磁場Grは、空間的位置に応じてMR信号の周波数を変化させるために利用される。位相エンコード用傾斜磁場Geは、空間的位置に応じてMR信号の位相を変化させるために利用される。スライス選択用傾斜磁場Gsは、任意に撮像断面を決めるために利用される。
【0012】
傾斜磁場電源3は、計算機システム10による制御のもと、撮像部位や撮像目的に応じて設定されたパルスシーケンスにしたがって、傾斜磁場コイル2に電流を供給する。
【0013】
寝台4は、被検体Pが置かれる天板4aを備え、後述する寝台制御部5による制御のもと、被検体Pが載置された状態で天板4aを傾斜磁場コイル2の空洞(撮像口)内へ挿入する。通常、この寝台4は、天板4aの長手方向が静磁場磁石1の中心軸と平行になるように設置される。
【0014】
寝台制御部5は、計算機システム10による制御のもと、寝台4を駆動して天板4aを長手方向及び上下方向へ移動する。
【0015】
WBコイル6は、被検体Pの周りに配置され、被検体Pから発生するMR信号を受信する。例えば、WBコイル6は、傾斜磁場コイル2の内側に配置され、送信部7から高周波パルスの供給を受けて被検体Pに高周波磁場を印加することで、被検体Pの任意の断面を選択励起する。また、WBコイル6は、高周波磁場の影響で被検体Pから発生するMR信号を受信する。
【0016】
送信部7は、計算機システム10による制御のもと、撮像部位や撮像目的に応じて設定されたパルスシーケンスにしたがって、ラーモア周波数に対応する高周波パルスをWBコイル6に送信する。
【0017】
アレイコイル8a〜8eは、被検体に装着され、被検体Pから発生するMR信号を受信する。各アレイコイルは、被検体Pから発生するMR信号をそれぞれ受信する複数のコイルエレメントを配列して形成される。そして、各コイルエレメントは、MR信号を受信すると、受信したMR信号を受信部9へ出力する。
【0018】
なお、アレイコイル8a〜8eは撮像対象の部位ごとに用意されており、それぞれ撮像対象の部位に配置される。例えば、アレイコイル8aは、頭部撮像用であり、被検体Pの頭部に配置される。また、アレイコイル8b及び8cは、脊椎撮像用であり、被検体Pの背中と天板4aとの間に配置される。また、アレイコイル8d及び8eは、腹部撮像用であり、被検体の腹側に配置される。
【0019】
ここで、アレイコイル8a〜8eの一例について説明する。図2は、第1の実施形態に係るアレイコイル8bの一例を示す図である。なお、ここでは、脊椎用のコイルであるアレイコイル8bを例にあげて説明する。図2に示すように、例えば、アレイコイル8bは、3列×4行に配列された12個のコイルエレメント80を有する。なお、アレイコイルに含まれるコイルエレメントの数は12個に限られず、撮像対象の部位の大きさや形状に応じて、アレイコイルごとに適切な数のコイルエレメントが配列される。
【0020】
また、本実施形態では、各アレイコイルについて、アレイコイルの任意の位置に代表位置が定義される。この代表位置は、アレイコイルが有する各コイルエレメントの位置を相対位置として設定するために用いられる。例えば、図2に示すアレイコイル8bでは、アレイコイルの中心位置に代表位置81が定義される。
【0021】
受信部9は、計算機システム10による制御のもと、操作者によって撮像部位や撮像目的に応じて設定されたパルスシーケンスにしたがって、WBコイル6及びアレイコイル8a〜8eから出力されるMR信号を検出する。そして、受信部9は、検出したMR信号をデジタル化して生データを生成し、生成した生データを計算機システム10に送信する。
【0022】
なお、受信部9は、WBコイル6と、アレイコイル8a〜8eが有する各コイルエレメントとから出力されるMR信号を受信するための複数の受信チャンネルを有する。そして、受信部9は、撮像に用いるコイルエレメントが計算機システム10から通知された場合には、通知されたコイルエレメントから出力されたMR信号が受信されるように、通知されたコイルエレメントに対して受信チャンネルを割り当てる。これにより、例えば、受信部9は、WBコイル6とアレイコイル8a〜8eとを切り換えてMR信号を受信することができる。
【0023】
また、受信部9は、1つのアレイコイルが有する複数のコイルエレメントの中で、操作者により選択された2つ以上のコイルエレメントによって受信されたMR信号を合成する機能も有する。
【0024】
計算機システム10は、MRI装置100の全体制御やデータ収集、画像再構成などを行う。この計算機システム10は、インタフェース部11、データ収集部12、データ処理部13、記憶部14、表示部15、入力部16及び制御部17を有する。
【0025】
インタフェース部11は、傾斜磁場電源3、寝台制御部5、送信部7及び受信部9に接続されており、これらの接続された各部と計算機システム10との間で授受される信号の入出力を制御する。
【0026】
データ収集部12は、インタフェース部11を介して、受信部9から送信される生データを収集する。そして、データ収集部12は、収集した生データを記憶部14に格納する。
【0027】
データ処理部13は、記憶部14に記憶された生データに対して後処理すなわちフーリエ変換等の再構成処理を施すことによって、被検体P内における所望核スピンのスペクトラムデータあるいは画像データを生成する。また、データ処理部13は、生成した各種データを記憶部14に格納する。なお、このデータ処理部13については、後に詳細に説明する。
【0028】
記憶部14は、データ収集部12によって収集された生データやデータ処理部13によって生成されたデータなどを被検体Pごとに記憶する。なお、この記憶部14については、後に詳細に説明する。
【0029】
表示部15は、データ処理部13によって生成されたスペクトラムデータあるいは画像データ等の各種の情報を表示する。この表示部15としては、液晶表示器などの表示デバイスを利用可能である。
【0030】
入力部16は、操作者から各種操作や情報入力を受け付ける。この入力部16としては、マウスやトラックボールなどのポインティングデバイス、モード切替スイッチ等の選択デバイス、あるいはキーボード等の入力デバイスを適宜に利用可能である。
【0031】
制御部17は、図示していないCPU(Central Processing Unit)やメモリ等を有し、上述した各機能部を制御することによってMRI装置100を総括的に制御する。なお、この制御部17については、後に詳細に説明する。
【0032】
以上、本実施形態に係るMRI装置100の全体構成について説明した。このような構成のもと、本実施形態では、計算機システム10が、アレイコイル8a〜8eが装着された被検体Pが置かれた天板4aを連続的に移動しながら、天板4aの移動方向に垂直な断面を繰り返し選択励起してMR信号を収集する。また、計算機システム10は、収集したMR信号に基づいて被検体Pの広領域画像を生成するとともに、広領域画像の生成に用いられるMR信号の強度とMR信号が収集された際の天板4aの位置とに基づいてコイルエレメント8a〜8eの位置を計測する。
【0033】
すなわち、本実施形態に係るMRI装置100は、1回の天板移動で収集された同じMR信号を用いて、被検体の広領域撮像と受信コイルの位置計測とをそれぞれ行う。したがって、本実施形態によれば、被検体の広領域撮像と受信コイルの位置計測とをそれぞれ行う場合に、寝台を移動させる回数が減るので、検査時間を短縮することができる。
【0034】
以下では、計算機システム10の機能を中心に、かかるMRI装置100の詳細について説明する。なお、本実施形態では、アレイコイル8bを用いて広領域撮像及びコイルエレメントの位置計測を行う場合を例にあげて説明するが、他のアレイコイルを用いた場合でも、広領域撮像及びコイルエレメントの位置計測を同様に行うことが可能である。
【0035】
図3は、第1の実施形態に係る計算機システム10の詳細な構成を示す機能ブロック図である。なお、図3は、図1に示した計算機システム10が有するデータ処理部13、記憶部14及び制御部17の構成を示している。
【0036】
図3に示すように、記憶部14は、生データ記憶部14aと、アレイコイルデータ記憶部14bと、WBコイルデータ記憶部14cと、補正データ記憶部14dと、コイル位置情報記憶部14eとを有する。
【0037】
生データ記憶部14aは、データ収集部12によって収集された生データを被検体Pごとに記憶する。
【0038】
アレイコイルデータ記憶部14bは、アレイコイル8a〜8eによって受信されたMR信号に基づいて生成されるプロファイルデータを記憶する。このプロファイルデータは、後述するプロファイルデータ生成部13bによって生成される。
【0039】
WBコイルデータ記憶部14cは、WBコイル6によって受信されたMR信号に基づいて生成されるプロファイルデータを記憶する。このプロファイルデータは、後述するプロファイルデータ生成部13bによって生成される。
【0040】
補正データ記憶部14dは、WBコイル6により受信されたMR信号の強度に基づいて、各コイルエレメントにより収集されたMR信号における被検体Pの部分的な性状の違いによる信号強度の変動を補正した補正データを記憶する。この補正データは、後述するデータ補正部13cによって生成される。
【0041】
コイル位置情報記憶部14eは、アレイコイル8a〜8eにそれぞれ設定された代表位置を基準にした各コイルエレメントの物理的な位置を示すコイル位置情報を記憶する。図4は、第1の実施形態に係るコイル位置情報記憶部14eによって記憶されるコイル位置情報の一例を示す図である。図4に示すように、例えば、コイル位置情報記憶部14eは、「コイル名」と、「アレイコイル外寸」と、「エレメント番号」と、「エレメント外寸」と、「相対位置」とを対応付けた情報をコイル位置情報として記憶する。
【0042】
コイル名は、アレイコイルの種類を一意に識別するための識別情報である。例えば、図4の例では、「アレイコイルA」が、頭部撮像用のアレイコイル8aを示している。また、「アレイコイルB」が、脊椎撮像用のアレイコイル8b及び8cを示している。また、「アレイコイルC」が、腹部撮像用のアレイコイル8d及び8eを示している。
【0043】
アレイコイル外寸は、アレイコイルの外寸を示す情報である。アレイコイルの外寸は、x,y,z軸方向それぞれの長さで表される。例えば、図4の例では、アレイコイルBのx軸方向の外寸が520mmであり、y軸方向の外寸が50mmであり、z軸方向の外寸が420mmであることを示している。
【0044】
エレメント番号は、アレイコイルが有するコイルエレメントをアレイコイルごとに一意に識別するための番号である。例えば、図4の例では、アレイコイルBが、「1」〜「12」の12個のコイルエレメントを有することを示している。
【0045】
エレメント外寸は、各アレイコイルが有する各コイルエレメントの外寸を示す情報である。各コイルエレメントの外寸は、x,y,z軸方向それぞれの長さで表される。例えば、図4の例では、アレイコイルBが有する各コイルエレメントのx軸方向の外寸が110mmであり、y軸方向の外寸が10mmであり、z軸方向の外寸が120mmであることを示している。
【0046】
相対位置は、アレイコイルに設定された代表位置を基準にしたコイルエレメントの物理的な位置を示す情報である。例えば、相対位置は、アレイコイルの任意の位置に設定された代表位置を原点とした場合のx,y,z軸方向の相対座標(x,y,z)で表される。例えば、図4の例では、アレイコイルBが有するコイルエレメント番号:「1」のコイルエレメントの相対位置が(−140,0,195)であり、同じくアレイコイルBが有するコイルエレメント番号:「2」のコイルエレメントの相対位置が(0,0,195)であることを示している。
【0047】
図3の説明にもどって、制御部17は、データ収集制御部17aを有する。
【0048】
データ収集制御部17aは、操作者により設定された撮像条件に基づいてパルスシーケンスを生成し、生成したパルスシーケンスにしたがって傾斜磁場電源3、寝台制御部5、送信部7、及び受信部9を制御することで、被検体PからMR信号を収集する。なお、ここでいうパルスシーケンスとは、傾斜磁場電源3が傾斜磁場コイル2に供給する電源の強さや電源を供給するタイミング、送信部7がWBコイル6に送信する高周波パルスの強さや送信タイミング、受信部9がMR信号を検出するタイミングなど、被検体Pのスキャンを実行するための手順を示す情報である。
【0049】
本実施形態では、データ収集制御部17aは、アレイコイル8bが装着された被検体Pが置かれた天板4aを連続的に移動しながら、天板4aの移動方向に垂直な断面を繰り返し選択励起してMR信号を収集する。
【0050】
図5は、第1の実施形態に係るデータ収集制御部17aにより実行されるデータ収集を説明するための図である。図5に示すように、具体的には、データ収集制御部17aは、アレイコイル8bが装着された被検体Pが置かれた天板4aをZ軸方向に連続的に移動する。ここで、被検体Pは、体軸がZ軸方向に沿うように天板4aに置かれる。そして、データ収集制御部17aは、天板4aを移動しながら、天板4aの移動方向に垂直なアキシャル断面AXを選択励起してMR信号を収集するパルスシーケンスを繰り返し実行する。
【0051】
また、本実施形態では、データ収集制御部17aは、天板4aの移動方向に垂直な1次元の方向(RO(Read Out)方向)に対応するMR信号を収集する。例えば、データ収集制御部17aは、1次元のラインスキャンのパルスシーケンスを繰り返し実行することで、X軸方向に対応するMR信号を収集する。また、データ収集制御部17aは、MR信号を収集するごとに、受信部9を制御して、アレイコイル8bとWBコイル6とを交互に切り替えながらデータ収集を繰り返す。
【0052】
図3の説明にもどって、データ処理部13は、広領域画像生成部13aと、プロファイルデータ生成部13bと、データ補正部13cと、コイル位置計測部13dとを有する。
【0053】
広領域画像生成部13aは、データ収集制御部17aにより収集されたMR信号に基づいて被検体Pの広領域画像を生成する。具体的には、広領域画像生成部13aは、アレイコイル8bが有する各コイルエレメントによって受信されたMR信号に基づく生データを生データ記憶部14aから読み出し、読み出した生データからZ軸方向に広い範囲の被検体Pの画像を生成する。
【0054】
より具体的には、広領域画像生成部13aは、データ収集制御部17aにより時系列に収集されたMR信号に基づく生データそれぞれを時系列に順番に読み出し、読み出した生データそれぞれに1次元フーリエ変換処理を施すことで、1次元方向の実空間を表す複数のデータを生成する。そして、広領域画像生成部13aは、1次元フーリエ変換処理により生成したデータを実空間上で時系列順に配置することで、被検体Pの広領域画像を生成する。このとき、広領域画像生成部13aは、MR信号を収集した時間間隔の間に天板4aを移動した量に合わせて、実空間上でのデータの配置間隔を決める。このように、天板4aの移動量に合わせて実空間のデータを配置することで、被検体の形状を正しく表した広領域画像を生成することができる。
【0055】
図6は、第1の実施形態に係る広領域画像生成部13aによって生成される広領域画像の一例を示す図である。図6に示すように、例えば、データ収集制御部17aは、広領域画像60として、被検体Pの体軸方向に広い範囲の画像を生成する。
【0056】
図3の説明にもどって、プロファイルデータ生成部13bは、アレイコイル8a〜8eが有する複数のコイルエレメント80それぞれによって受信されたMR信号に基づいて、天板4aの移動方向に垂直な1次元の方向におけるMR信号の強度の分布を示すプロファイルデータをコイルエレメント80ごとに生成する。
【0057】
具体的には、プロファイルデータ生成部13bは、アレイコイル8bが有する各コイルエレメントにより収集されたMR信号に基づく生データを生データ記憶部14aから読み出す。このとき、プロファイルデータ生成部13bは、広領域画像生成部13aが広領域画像の生成に用いる生データを読み出す。ここで、プロファイルデータ生成部13bが広領域画像の生成と同じ生データを用いることで、1回の天板移動で収集されたMR信号に基づいて、広領域撮像とコイルエレメントの位置計測とを両方行うことができるようになる。
【0058】
そして、プロファイルデータ生成部13bは、読み出した生データから、コイルエレメントごとに、X軸方向におけるMR信号の強度の分布を示すプロファイルデータを生成する。例えば、プロファイルデータ生成部13bは、生データに対して1次元フーリエ変換処理を施すことで、コイルエレメントのプロファイルデータを生成する。そして、プロファイルデータ生成部13bは、生成した各コイルエレメントのプロファイルデータをそれぞれアレイコイルデータ記憶部14bに格納する。
【0059】
図7は、第1の実施形態に係るプロファイルデータ生成部13bによって生成されるコイルエレメント80のプロファイルデータの一例を示す図である。図7において、S軸は、MR信号の強度を示している。また、X軸は、X軸方向の空間的な位置を示している。また、Z軸は、Z軸方向の空間的な位置を示している。なお、ここでいうX軸方向及びZ軸方向の空間的な位置は、天板4a上の所定の位置を原点とした寝台座標系で表される。例えば、寝台座標系の原点は、天板4aの中央に設定される。この寝台座標系は、天板4aの移動とともに座標系全体がZ軸方向へ移動することになる。
【0060】
図7に示すように、プロファイルデータ生成部13bは、プロファイルデータのもとになったMR信号が収集された時点でのZ軸方向における天板4aの位置ごとに、コイルエレメントのプロファイルデータを生成する。例えば、プロファイルデータ生成部13bは、プロファイルデータを生成するごとに、そのプロファイルデータのもとになるMR信号が収集された際の天板4aの移動量を制御部17から取得し、取得した移動量から天板4aの位置を算出してプロファイルデータに関連付けておく。
【0061】
さらに、プロファイルデータ生成部13bは、WBコイル6により収集されたMR信号に基づく生データを生データ記憶部14aから読み出し、読み出した生データからX軸方向におけるMR信号の強度の分布を示すプロファイルデータを生成する。例えば、プロファイルデータ生成部13bは、コイルエレメントに関するプロファイルデータと同様に、生データに対して1次元フーリエ変換処理を施すことで、WBコイルのプロファイルデータを生成する。そして、プロファイルデータ生成部13bは、生成したWBコイル6のプロファイルデータをWBコイルデータ記憶部14cに格納する。
【0062】
図8は、第1の実施形態に係るプロファイルデータ生成部13bによって生成されるWBコイル6のプロファイルデータの一例を示す図である。図8において、S軸は、MR信号の強度を示している。また、X軸は、X軸方向の空間的な位置を示している。また、Z軸は、Z軸方向の空間的な位置を示している。なお、ここでいうX軸方向及びZ軸方向の空間的な位置は、エレメントコイルのプロファイルデータと同様に、前述した寝台座標系で表される。
【0063】
図8に示すように、プロファイルデータ生成部13bは、プロファイルデータのもとになったMR信号が収集された時点でのZ軸方向における天板4aの位置ごとに、WBコイルのプロファイルデータを生成する。例えば、プロファイルデータ生成部13bは、プロファイルデータを生成するごとに、そのプロファイルデータのもとになるMR信号が収集された際の天板4aの移動量を制御部17から取得し、取得した移動量から天板4aの位置を算出してプロファイルデータに関連付けておく。
【0064】
図3の説明にもどって、データ補正部13cは、WBコイル6により受信されたMR信号の強度に基づいて、各コイルエレメントにより収集されたMR信号における被検体Pの部分的な性状の違いによる信号強度の変動を補正する。
【0065】
具体的には、データ補正部13cは、アレイコイル8bが有する各コイルエレメントのプロファイルデータをアレイコイルデータ記憶部14bから読み出し、WBコイル6のプロファイルデータをWBコイルデータ記憶部14cから読み出す。そして、データ補正部13cは、各コイルエレメントのプロファイルデータにおけるMR信号の強度をWBコイル6のプロファイルデータにおけるMR信号の強度で除算することで、各コイルエレメントのプロファイルデータを補正した補正データを生成する。そして、データ補正部13cは、生成した補正データを補正データ記憶部14dに格納する。
【0066】
コイルエレメントは、被検体の一部分から発生するMR信号を受信するものである。そのため、各コイルエレメントによって受信されるMR信号の強度は、同じ感度のコイルエレメントであっても、それぞれが置かれた箇所における被検体の性状によって信号強度が異なる。これに対し、WBコイルは、被検体全体から発生するMR信号を受信するものである。そのため、WBコイルによって受信されるMR信号は、被検体P全体から発生するMR信号の空間的な分布を表すことになる。したがって、各コイルエレメントのプロファイルデータをWBコイル6のプロファイルデータに基づいて補正することで、被検体の部分的な性状の違いによるMR信号の強度のばらつきが補正される。
【0067】
コイル位置計測部13dは、広領域画像の生成に用いられるMR信号の強度とMR信号が収集された際の天板4aの位置とに基づいて、コイルエレメントの位置を計測する。
【0068】
具体的には、コイル位置計測部13dは、アレイコイル8bが有する各コイルエレメントの補正データを補正データ記憶部14dから読み出し、読み出した補正データに含まれる信号のうち信号値が所定の閾値を超える信号のみを抽出する。ここで、コイル位置計測部13dが、信号値すなわち信号強度が所定の閾値を超える信号のみを用いることで、各コイルエレメントによって受信されたMR信号の中からノイズとしてみなされる信号が除外される。これにより、信頼度が高い信号のみを用いて受信コイルの代表位置の位置が算出されるので、コイルエレメントの位置をより精度よく計測することができるようになる。
【0069】
そして、例えば、コイル位置計測部13dは、抽出した信号における信号値の重心位置を求めることで、コイルエレメントの位置を算出する。ここで、例えば、X軸方向の空間的な位置をXi、MR信号が収集された時点でのZ軸方向における天板4aの位置をZj、点(Xi,Zj)における信号値をSijとすると、Z軸方向の重心位置Wzは、以下の式(1)で求められる。
【0070】
Wz=Σ(Sij×Zi)/ΣSij ・・・(1)
【0071】
また、X軸方向の重心位置Wxは、以下の式(2)で求められる。
【0072】
Wx=Σ(Sij×Xi)/ΣSij ・・・(2)
【0073】
コイル位置計測部13dは、上記式(1)及び(2)を用いて、アレイコイル8bが有する全てのコイルエレメントについて、Z軸方向の位置Wz及びX軸方向の位置Wxを算出する。ここで、前述したように、コイルエレメント及びWBコイルのプロファイルデータにおいて空間的な位置は寝台座標系で表されることから、各コイルエレメントの位置も寝台座標系で表されることになる。
【0074】
そして、各コイルエレメントの位置を計測した後に、コイル位置計測部13dは、計測した各コイルエレメントの位置とコイル位置計測部13dに記憶されたコイル位置情報とを用いて、アレイコイル8bの位置を計測する。
【0075】
図9は、第1の実施形態に係るコイル位置計測部13dによるアレイコイルの位置計測を説明するための図である。例えば、アレイコイル8bが有するコイルエレメントのうちZ軸方向に並ぶ4つのコイルエレメントについて、算出された計測位置がそれぞれP1、P2、P3、P4であったとする。また、コイル位置計測部13dに記憶されているコイル位置計測情報において、それら4つのコイルエレメントの相対位置がそれぞれR1、R2、R3、R4であったとする。この場合には、例えば図9に示すように、コイル位置計測部13dは、コイル位置情報における各コイルエレメントの相対位置を説明変数E、各コイルエレメントの計測位置を目的変数Oとして定義される1次関数E=O+Iとし、最小二乗法により切片Iの値を算出する。
【0076】
ここで、コイル位置計測部13dは、アレイコイル8bが有するZ軸方向に並ぶ全てのコイルエレメントの組について、切片Iの値を算出する。図2に示したように、アレイコイル8bはZ軸方向に並ぶ4つのコイルエレメントの組を3つ有している。したがって、コイル位置計測部13dは、それら3つの組それぞれについて、切片Iの値を算出する。そして、例えば、コイル位置計測部13dは、算出した3つの値の平均値を算出し、算出した値をアレイコイル8bのZ軸方向における位置とする。
【0077】
なお、ここでは、Z軸方向に並ぶコイルエレメントの計測位置からアレイコイル8bのZ軸方向における位置を求める場合について説明した。しかし、実施形態はこれに限られず、同様の方法で、X軸方向に並ぶコイルエレメントの計測位置からアレイコイル8bのX軸方向における位置を求めてもよい。または、X軸方向及びZ軸方向それぞれにおける位置を求めることで、アレイコイル8bの2次元の位置を計測するようにしてもよい。
【0078】
また、ここでは、最小二乗法を用いてアレイコイル8bの位置を算出する場合について説明したが、実施形態はこれに限られず、回帰分析で一般的に用いられる他の統計的手法を用いるようにしてもよい。例えば、ここでは1次関数E=O+Iを用いて回帰分析を行う場合について説明したが、2次関数や指数関数などの他の関数を用いて回帰分析を行うようにしてもよい。この場合には、例えば、コイル位置計測部13dは、各コイルエレメントの計測位置と相対位置とを標本データとして、所定の関数に含まれる係数の値を推計する。これにより、アレイコイルの代表位置を基準にした各コイルエレメントの相対位置Oと、各コイルエレメントの計測位置との関係を表す近似式E=f(O)が得られる。そして、コイル位置計測部13dは、得られた近似式E=f(O)を用いてO=0とした場合のEを求めることで、アレイコイル8bのZ軸方向の位置を算出する。
【0079】
そして、コイル位置計測部13dは、上述した方法で各コイルエレメント及びアレイコイルの位置を算出すると、例えば、算出した位置を示す情報を表示部15に出力する。例えば、コイル位置計測部13dは、撮像条件の設定に用いられるユーザインタフェース上に各コイルエレメント及びアレイコイルのいずれか一方または両方の位置を表示させる。
【0080】
次に、第1の実施形態に係るMRI装置100による処理の流れについて説明する。図10は、第1の実施形態に係るMRI装置100による処理の流れを示すフローチャートである。なお、ここでは、アレイコイル8a〜8eのうちアレイコイル8bが用いられる場合について説明する。
【0081】
図10に示すように、第1の実施形態に係るMRI装置100では、まず、データ収集制御部17aが、天板4aを移動しながらアレイコイル8bとWBコイル6とを交互に用いて、1次元方向に対応するMR信号を繰り返し収集する(ステップS101)。
【0082】
続いて、広領域画像生成部13aが、アレイコイル8bにより収集されたMR信号の生データから広領域画像を生成する(ステップS102)。
【0083】
また、プロファイルデータ生成部13bが、アレイコイル8bの各コイルエレメントにより収集されたMR信号の生データからプロファイルデータを生成する(ステップS103)。さらに、プロファイルデータ生成部13bは、WBコイル6により収集されたMR信号の生データからプロファイルデータを生成する(ステップS104)。
【0084】
続いて、データ補正部13cが、WBコイル6のプロファイルデータを用いてアレイコイル8bのプロファイルデータを補正する(ステップS105)。
【0085】
その後、コイル位置計測部13dが、データ補正部13cによって生成された補正データに基づいて、アレイコイル8bが有する各コイルエレメントの位置を計測する(ステップS106)。さらに、コイル位置計測部13dは、計測された各コイルエレメントの位置からアレイコイルの位置を計測する(ステップS107)。
【0086】
その後、データ収集制御部17aが、コイル位置計測部13dによって計測された位置に基づいて、撮像用のエレメントコイルを選択する(ステップS108)。例えば、データ収集制御部17aは、コイル位置計測部13dによって計測された位置に基づいて、磁場中心を中心とした所定の大きさの有効範囲内に入るエレメントコイルを特定し、特定したエレメントコイルを撮像用のエレメントコイルとして選択する。
【0087】
続いて、データ収集制御部17aは、広領域画像生成部13aによって生成された広領域画像を位置決め画像として、操作者から撮像条件を受け付ける(ステップS109)。例えば、データ収集制御部17aは、広領域画像生成部13aによって生成された広領域画像を表示部15に位置決め画像として表示させ、その位置決め画像に対して関心領域(Region Of Interest:ROI)を設定する操作を操作者から受け付ける。そして、データ収集制御部17aは、位置決め画像に設定された関心領域によって示される被検体の撮像領域からMR信号を収集するためのパルスシーケンスを生成する。
【0088】
そして、計算機システム10が、操作者から受け付けた撮像条件に基づいて、本撮像を実施する(ステップS110)。具体的には、データ収集制御部17aが、生成したパルスシーケンスにしたがって傾斜磁場電源3、寝台制御部5、送信部7、及び受信部9を制御することで、被検体PからMR信号を収集する。また、データ処理部13が、データ収集制御部17aによって収集されたMR信号に基づく生データから被検体Pの画像を再構成する。
【0089】
なお、上記処理手順において、データ補正部13cによってアレイコイル8bのプロファイルデータが補正された後に、データ処理部13が、補正されたプロファイルデータを用いて、広領域画像生成部13aによって生成された広領域画像を補正するようにしてもよい。この場合には、例えば、データ処理部13は、広領域画像生成部13aによって生成された広領域画像に(WBコイル6のプロファイルデータにおけるMR信号の強度)/(各コイルエレメントのプロファイルデータにおけるMR信号の強度)を乗ずることで、広領域画像を補正する。この補正は、広領域画像に対して、データ補正部13cが各コイルエレメントのプロファイルデータにおけるMR信号の強度を補正した結果として得られた信号値の逆数を乗ずることに該当する。この補正により、広領域画像において信号値が小さい箇所が強調されることになるので、より精度が高い広領域画像が得られる。
【0090】
また、ここでは、広領域画像生成部13aが広領域画像を生成した後に、コイル位置計測部13dが各コイルエレメント及びアレイコイルの位置を計測する場合について説明したが、MRI装置100による処理の順序はこれに限られない。例えば、コイル位置計測部13dが各コイルエレメント及びアレイコイルの位置を計測した後に、広領域画像生成部13aが広領域画像を生成してもよい。また、例えば、広領域画像生成部13aとコイル位置計測部13dとが並列に処理を行ってもよい。
【0091】
上述したように、第1の実施形態では、データ収集制御部17aは、アレイコイル8bが装着された被検体Pが置かれた天板4aを連続的に移動しながら、天板4aの移動方向に垂直な断面を繰り返し選択励起してMR信号を収集する。また、広領域画像生成部13aは、データ収集制御部17aにより収集されたMR信号に基づいて、被検体Pの広領域画像を生成する。また、コイル位置計測部13dは、広領域画像の生成に用いられるMR信号の強度とMR信号が収集された際の天板4aの位置とに基づいて、アレイコイル8bが有する各コイルエレメントの位置を計測する。したがって、第1の実施形態によれば、1回の寝台移動で被検体の広領域撮像と受信コイルの位置計測とをそれぞれ行うことができるので、寝台を移動させる回数を減らすことが可能になる。これにより、被検体の広領域撮像と受信コイルの位置計測とをそれぞれ行う場合に、検査時間を短縮することができる。
【0092】
また、第1の実施形態では、データ収集制御部17aは、アレイコイル8bとWBコイル6とを交互に切り替えながらMR信号を収集する。そして、データ補正部13cは、WBコイル6により受信されたMR信号の強度に基づいて、各コイルエレメントにより収集されたMR信号における被検体Pの部分的な性状の違いによる強度の変動を補正する。また、コイル位置計測部13dは、データ補正部13cにより生成された補正データを用いて、各コイルエレメントの位置を計測する。したがって、第1の実施形態によれば、被検体の部分的な性状の違いによるMR信号の強度のばらつきが補正されるので、コイルエレメントの位置を精度よく計測することができる。
【0093】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態について説明する。第1の実施形態では、天板4aの移動方向に垂直な1次元の方向に対応するMR信号を収集して、被検体の広領域撮像及び受信コイルの位置計測を行う場合について説明した。以下に示す第2の実施形態では、天板4aの移動方向に垂直な2次元の方向に対応するMR信号を収集することで、被検体の広領域撮像及び受信コイルの位置計測を行うとともに、コイルエレメントの感度分布を表す感度マップを生成する場合について説明する。
【0094】
なお、第2の実施形態に係るMRI装置の全体構成は図1に示したものと同じであり、計算機システムの構成が異なるのみである。そこで、本実施形態では、計算機システムの機能を中心に説明する。また、本実施形態でも、アレイコイル8bを用いて広領域撮像及びコイルエレメントの位置計測を行う場合を例にあげて説明するが、他のアレイコイルを用いた場合でも、同様に広領域撮像及びコイルエレメントの位置計測を行うことが可能である。
【0095】
図11は、第2の実施形態に係る計算機システム20の詳細な構成を示す機能ブロック図である。なお、図11は、本実施形態に係る計算機システム20が有するデータ処理部23、記憶部24及び制御部27の構成を示している。また、以下では、図3に示した機能部と同じ役割を果たす機能部については、同じ符号を付すこととして詳細な説明を省略する。
【0096】
図11に示すように、記憶部24は、生データ記憶部14aと、アレイコイル画像記憶部24bと、WBコイル画像記憶部24cと、補正データ記憶部24dと、コイル位置情報記憶部24eとを有する。
【0097】
アレイコイル画像記憶部24bは、アレイコイル8a〜8eによって受信されたMR信号に基づいて生成される断面画像を記憶する。なお、以下では、アレイコイル8a〜8eによって受信されたMR信号に基づいて生成される断面画像をアレイコイル画像と呼ぶ。このアレイコイル画像は、後述する画像データ生成部23bによって生成される。
【0098】
WBコイル画像記憶部24cは、WBコイル6によって受信されたMR信号に基づいて生成される断面画像を記憶する。なお、以下では、WBコイル6によって受信されたMR信号に基づいて生成される断面画像をWBコイル画像と呼ぶ。このWBコイル画像は、後述する画像データ生成部23bによって生成される。
【0099】
補正データ記憶部24dは、WBコイル6により受信されたMR信号の強度に基づいて、各コイルエレメントにより収集されたMR信号における被検体Pの部分的な性状の違いによる信号強度の変動を補正した補正画像を記憶する。この補正画像は、後述するデータ補正部23cによって生成される。
【0100】
制御部27は、データ収集制御部27aを有する。
【0101】
データ収集制御部27aは、アレイコイル8bが装着された被検体Pが置かれた天板4aを連続的に移動しながら、天板4aの移動方向に垂直な断面を繰り返し選択励起してMR信号を収集する。具体的には、データ収集制御部27aは、第1の実施形態と同様に、アレイコイル8bが装着された被検体Pが置かれた天板4aをZ軸方向に連続的に移動する。また、被検体Pは、体軸がZ軸方向に沿うように天板4aに置かれる。そして、データ収集制御部27aは、天板4aを移動しながら、天板4aの移動方向に垂直なアキシャル断面AXを選択励起してMR信号を収集するパルスシーケンスを繰り返し実行する。
【0102】
そして、本実施形態では、データ収集制御部27aは、天板4aの移動方向に垂直な2次元の方向に対応するMR信号を収集する。例えば、データ収集制御部27aは、シングルショットFSE(Fast Spin Echo)のパルスシーケンスを繰り返し実行することで、X軸方向に対応するMR信号を収集する。ここで、シングルショットFSEとは、被検体に対して励起用のパルスを印加した後にリフォーカス用のパルスを繰り返し印加することで、1回の励起で複数のMR信号(エコー信号)を収集する撮像法である。また、データ収集制御部27aは、MR信号を収集するごとに、受信部9を制御して、アレイコイル8bとWBコイル6とを交互に切り替えながらデータ収集を繰り返す。
【0103】
なお、データ収集制御部27aがMR信号の収集に用いる撮像法は、1回の励起で複数のMR信号を収集するものに限られない。例えば、データ収集制御部27aは、FE系の撮像法を用いてMR信号を収集してもよい。その場合には、例えば、データ収集制御部27aは、1つの信号取得を開始してから次の信号取得を開始するまでの時間であるTR(Repetition Time)ごとに、アレイコイル8bとWBコイル6とを交互に切り替えながらデータ収集を繰り返す。
【0104】
データ処理部23は、広領域画像生成部23aと、画像データ生成部23bと、データ補正部23cと、コイル位置計測部23dと、感度マップ生成部23eとを有する。
【0105】
広領域画像生成部23aは、データ収集制御部27aにより収集されたMR信号に基づいて被検体Pの広領域画像を生成する。具体的には、広領域画像生成部23aは、アレイコイル8bが有する各コイルエレメントによって受信されたMR信号に基づく生データを生データ記憶部14aから読み出し、読み出した生データからZ軸方向に広い範囲の被検体Pの画像を生成する。
【0106】
より具体的には、広領域画像生成部23aは、データ収集制御部27aにより収集されたMR信号に基づく生データを時系列に順番に読み出し、読み出した生データそれぞれに2次元フーリエ変換処理を施すことで、2次元方向の実空間を表す複数の画像データを生成する。そして、広領域画像生成部23aは、2次元フーリエ変換処理により生成した画像データを実空間上で時系列順に配置することで、被検体Pの3次元画像データを生成する。このとき、広領域画像生成部23aは、MR信号を収集した時間間隔の間に天板4aを移動した量に合わせて、実空間上での画像データの配置間隔を決める。このように、天板4aの移動量に合わせて実空間のデータを配置することで、被検体の形状を正しく表した広領域画像を生成することができる。そして、広領域画像生成部23aは、生成された3次元画像データに対してMIP(Maximum Intensity Projection)処理やMPR(Multi-Planar Reconstruction)処理などの2次元化処理を施すことで、被検体Pの画像を生成する。
【0107】
画像データ生成部23bは、アレイコイル8a〜8eが有する複数のコイルエレメント80それぞれによって受信されたMR信号に基づいて、天板4aの移動方向に垂直な2次元の方向におけるMR信号の強度の分布を示す画像データをコイルエレメント80ごとに生成する。
【0108】
具体的には、画像データ生成部23bは、アレイコイル8bが有する各コイルエレメントにより収集されたMR信号に基づく生データを生データ記憶部14aから読み出す。このとき、画像データ生成部23bは、広領域画像生成部23aが広領域画像の生成に用いる生データを読み出す。ここで、画像データ生成部23bが、広領域画像の生成と同じ生データを用いることで、1回の天板移動で収集されたMR信号に基づいて、広領域撮像とコイルエレメントの位置計測とを両方行うことができるようになる。
【0109】
そして、画像データ生成部23bは、読み出した生データから、コイルエレメント80ごとに、X−Y軸方向におけるMR信号の強度の分布を示す画像データをアレイコイル画像として生成する。例えば、画像データ生成部23bは、生データに対して2次元フーリエ変換処理を施すことでアレイコイル画像を生成する。そして、画像データ生成部23bは、生成した各コイルエレメントのアレイコイル画像をアレイコイル画像記憶部24bに格納する。
【0110】
図12は、第2の実施形態に係る画像データ生成部23bにより生成されるコイルエレメント80のアレイコイル画像の一例を示す図である。図12において、X軸は、X軸方向の空間的な位置を示している。また、Y軸は、Y軸方向の空間的な位置を示している。また、Z軸は、Z軸方向の空間的な位置を示している。なお、ここでいうX軸方向、Y座標及びZ軸方向の空間的な位置は、天板4a上の所定の位置を原点とした寝台座標系で表される。例えば、寝台座標系の原点は、天板4aの中央に設定される。この寝台座標系は、天板4aの移動とともに座標系全体がZ軸方向へ移動することになる。
【0111】
図12に示すように、画像データ生成部23bは、アレイコイル画像のもとになったMR信号が収集された時点でのZ軸方向における天板4aの位置ごとに、コイルエレメントのアレイコイル画像を生成する。例えば、画像データ生成部23bは、アレイコイル画像を生成するごとに、そのアレイコイル画像のもとになるMR信号が収集された際の天板4aの移動量を制御部27から取得し、取得した移動量から天板4aの位置を算出してアレイコイル画像に関連付けておく。
【0112】
さらに、画像データ生成部23bは、WBコイル6により収集されたMR信号に基づく生データを生データ記憶部14aから読み出し、読み出した生データからX−Y軸方向におけるMR信号の強度の分布を示す画像データをWBコイル画像として生成する。例えば、画像データ生成部23bは、コイルエレメントに関するアレイコイル画像と同様に、生データに対して2次元フーリエ変換処理を施すことでWBコイル画像を生成する。そして、画像データ生成部23bは、生成したWBコイル画像をWBコイル画像記憶部24cに格納する。
【0113】
図13は、第2の実施形態に係る画像データ生成部23bにより生成されるWBコイル画像の一例を示す図である。図13において、X軸は、X軸方向の空間的な位置を示している。また、Y軸は、Y軸方向の空間的な位置を示している。また、Z軸は、Z軸方向の空間的な位置を示している。なお、ここでいうX軸方向、Y軸方向及びZ軸方向の空間的な位置は、エレメントコイルのアレイコイル画像と同様に、前述した寝台座標系で表される。
【0114】
図13に示すように、画像データ生成部23bは、WBコイル画像のもとになったMR信号が収集された時点でのZ軸方向における天板4aの位置ごとに、WBコイル画像を生成する。例えば、画像データ生成部23bは、WBコイル画像を生成するごとに、そのWBコイル画像のもとになるMR信号が収集された際の天板4aの移動量を制御部27から取得し、取得した移動量から天板4aの位置を算出してWBコイル画像に関連付けておく。
【0115】
図11の説明にもどって、データ補正部23cは、WBコイル6により受信されたMR信号の強度に基づいて、各コイルエレメントにより収集されたMR信号における被検体Pの部分的な性状の違いによる信号強度の変動を補正する。
【0116】
具体的には、データ補正部23cは、アレイコイル8bが有する各コイルエレメントのアレイコイル画像をアレイコイル画像記憶部24bから読み出し、WBコイル画像をWBコイル画像記憶部24cから読み出す。そして、データ補正部23cは、各コイルエレメントのアレイコイル画像におけるMR信号の強度をWBコイル画像におけるMR信号の強度で除算することで、各コイルエレメントのアレイコイル画像を補正した補正画像を生成する。そして、データ補正部23cは、生成した補正画像を補正データ記憶部24dに格納する。ここで、データ補正部23cが各コイルエレメントのアレイコイル画像をWBコイル画像に基づいて補正することで、被検体の部分的な性状の違いによるMR信号の強度のばらつきが補正される。
【0117】
コイル位置計測部23dは、広領域画像の生成に用いられるMR信号の強度とMR信号が収集された際の天板4aの位置とに基づいて、コイルエレメントの位置を計測する。
【0118】
具体的には、コイル位置計測部23dは、アレイコイル8bが有する各コイルエレメントの補正画像を補正データ記憶部24dから読み出し、読み出した補正画像に含まれる信号の信号値をY軸方向に加算する。その後、コイル位置計測部23dは、加算した信号値が所定の閾値を超える信号のみを抽出する。ここで、コイル位置計測部23dが、信号値すなわち信号強度が所定の閾値を超える信号のみを用いることで、各コイルエレメントによって受信されたMR信号の中からノイズとしてみなされる信号が除外される。これにより、信頼度が高い信号のみを用いて受信コイルの代表位置の位置が算出されるので、より精度よくコイルエレメントの位置を計測することができるようになる。
【0119】
そして、例えば、コイル位置計測部23dは、抽出した信号における信号値の重心位置を求めることで、コイルエレメントの位置を算出する。例えば、コイル位置計測部23dは、第1の実施形態と同様に、式(1)及び(2)を用いて、アレイコイル8bが有する全てのコイルエレメントについて、Z軸方向の位置Wz及びX軸方向の位置Wxを算出する。ここで、前述したように、アレイコイル画像及びWBコイル画像において空間的な位置は寝台座標系で表されることから、各コイルエレメントの位置も寝台座標系で表されることになる。
【0120】
そして、各コイルエレメントの位置を計測した後に、コイル位置計測部23dは、計測した各コイルエレメントの位置とコイル位置計測部23dに記憶されたコイル位置情報とを用いて、第1の実施形態と同様にアレイコイル8bの位置を計測する(図9を参照)。そして、コイル位置計測部23dは、上述した方法で各コイルエレメント及びアレイコイルの位置を算出すると、例えば、算出した位置を示す情報を表示部15に出力する。例えば、コイル位置計測部23dは、撮像条件の設定に用いられるユーザインタフェース上に各コイルエレメント及びアレイコイルのいずれか一方または両方の位置を表示させる。
【0121】
感度マップ生成部23eは、アレイコイル画像及びWBコイル画像を用いて、コイルエレメントの感度分布を表す感度マップを生成する。具体的には、感度マップ生成部23eは、画像データ生成部23bによってアレイコイル画像が生成されると、生成されたアレイコイル画像をコイルエレメントごとにアレイコイル画像記憶部24bから読み出す。また、感度マップ生成部23eは、画像データ生成部23bによってWBコイル画像が生成されると、生成されたWBコイル画像をWBコイル画像記憶部24cから読み出す。そして、感度マップ生成部23eは、読み出した各アレイコイル画像それぞれとWBコイル画像とを比較して、コイルエレメントごとに感度マップを生成する。
【0122】
次に、第2の実施形態に係るMRI装置による処理の流れについて説明する。図14は、第2の実施形態に係るMRI装置による処理の流れを示すフローチャートである。なお、ここでは、アレイコイル8a〜8eのうちアレイコイル8bが用いられる場合について説明する。
【0123】
図14に示すように、第2の実施形態に係るMRI装置100では、まず、データ収集制御部27aが、天板4aを移動しながらアレイコイル8bとWBコイル6とを交互に用いて、2次元方向に対応するMR信号を繰り返し収集する(ステップS201)。
【0124】
続いて、広領域画像生成部23aが、アレイコイル8bにより収集されたMR信号の生データから広領域画像を生成する(ステップS202)。
【0125】
また、画像データ生成部23bが、アレイコイル8bの各コイルエレメントにより収集されたMR信号の生データからアレイコイル画像を生成する(ステップS203)。さらに、画像データ生成部23bは、WBコイル6により収集されたMR信号の生データからWBコイル画像を生成する(ステップS204)。
【0126】
続いて、データ補正部23cが、WBコイル画像を用いて、各コイルエレメントのアレイコイル画像を補正する(ステップS205)。
【0127】
その後、コイル位置計測部23dが、データ補正部23cによって生成された補正画像に基づいて、アレイコイル8bが有する各コイルエレメントの位置を計測する(ステップS206)。さらに、コイル位置計測部23dは、計測された各コイルエレメントの位置からアレイコイルの位置を計測する(ステップS207)。
【0128】
そして、感度マップ生成部23eが、アレイコイル画像とWBコイル画像とを用いて、コイルエレメントの感度分布を表す感度マップを生成する(ステップS208)。
【0129】
その後、データ収集制御部27aが、コイル位置計測部23dによって計測された位置に基づいて、撮像用のエレメントコイルを選択する(ステップS208)。例えば、データ収集制御部27aは、コイル位置計測部23dによって計測された位置に基づいて、磁場中心を中心とした所定の大きさの有効範囲内に入るエレメントコイルを特定し、特定したエレメントコイルを撮像用のエレメントコイルとして選択する。
【0130】
続いて、データ収集制御部27aは、広領域画像生成部23aによって生成された広領域画像を位置決め画像として、操作者から撮像条件を受け付ける(ステップS209)。例えば、データ収集制御部27aは、広領域画像生成部23aによって生成された広領域画像を表示部15に位置決め画像として表示させ、その位置決め画像に対して関心領域(Region Of Interest:ROI)を設定する操作を操作者から受け付ける。そして、データ収集制御部27aは、位置決め画像に設定された関心領域によって示される被検体の撮像領域からMR信号を収集するためのパルスシーケンスを生成する。
【0131】
そして、計算機システム20が、操作者から受け付けた撮像条件に基づいて、本撮像を実施する(ステップS210)。具体的には、データ収集制御部27aが、生成したパルスシーケンスにしたがって傾斜磁場電源3、寝台制御部5、送信部7、及び受信部9を制御することで、被検体PからMR信号を収集する。また、データ処理部23が、データ収集制御部27aによって収集されたMR信号に基づく生データから被検体Pの画像を再構成する。その後、データ処理部23は、感度マップ生成部23eによって生成された感度マップを用いて、本撮像により得られた画像の輝度補正を行う(ステップS222)。
【0132】
なお、上記処理手順において、感度マップ生成部23eによって感度マップを生成された後に、データ処理部13が、生成された感度マップを用いて、広領域画像生成部23aによって生成された広領域画像の輝度補正を行うようにしてもよい。これにより、広領域画像の信号レベルを均一化することができるので、広領域化画像に生じる輝度ムラを低減させることができる。
【0133】
また、ここでは、広領域画像生成部23aが広領域画像を生成した後に、コイル位置計測部23dが各コイルエレメント及びアレイコイルの位置を計測する場合について説明したが、MRI装置100による処理の順序はこれに限られない。例えば、コイル位置計測部23dが各コイルエレメント及びアレイコイルの位置を計測した後に、広領域画像生成部23aが広領域画像を生成してもよい。また、例えば、広領域画像生成部23aとコイル位置計測部23dとが並列に処理を行ってもよい。また、アレイコイル画像及びWBコイル画像が生成された後であれば、コイル位置計測部23dによってコイルエレメントの位置計測が行われる前に、感度マップ生成部23eが感度マップを生成してもよい。
【0134】
上述したように、第2の実施形態では、データ収集制御部27aは、アレイコイル8bが装着された被検体Pが置かれた天板4aを連続的に移動しながら、天板4aの移動方向に垂直な断面を繰り返し選択励起してMR信号を収集する。また、広領域画像生成部23aは、データ収集制御部27aにより収集されたMR信号に基づいて、被検体Pの広領域画像を生成する。また、コイル位置計測部23dは、広領域画像の生成に用いられるMR信号の強度とMR信号が収集された際の天板4aの位置とに基づいて、アレイコイル8bが有する各コイルエレメントの位置を計測する。したがって、第2の実施形態によれば、1回の寝台移動で被検体の広領域撮像と受信コイルの位置計測とをそれぞれ行うことができるので、寝台を移動させる回数を減らすことが可能になる。これにより、被検体の広領域撮像と受信コイルの位置計測とをそれぞれ行う場合に、検査時間を短縮することができる。
【0135】
また、第2の実施形態では、データ収集制御部27aは、アレイコイル8bとWBコイル6とを交互に切り替えながらMR信号を収集する。そして、データ補正部23cは、WBコイル6により受信されたMR信号の強度に基づいて、各コイルエレメントにより収集されたMR信号における被検体Pの部分的な性状の違いによる強度の変動を補正する。また、コイル位置計測部23dは、データ補正部23cにより生成された補正データを用いて、各コイルエレメントの位置を計測する。したがって、第2の実施形態によれば、被検体の部分的な性状の違いによるMR信号の強度のばらつきが補正されるので、コイルエレメントの位置を精度よく計測することができる。
【0136】
また、第2の実施形態では、画像データ生成部23bは、アレイコイル8bにより収集されたMR信号に基づいてアレイコイル画像を生成し、WBコイルにより収集されたMR信号に基づいてWBコイル画像を生成する。また、感度マップ生成部23eは、アレイコイル画像及びWBコイル画像を用いて、コイルエレメントの感度分布を表す感度マップを生成する。したがって、第2の実施形態によれば、1回の寝台移動で、被検体の広領域撮像と、受信コイルの位置計測と、感度マップ生成とをそれぞれ行うことができる。これにより、被検体の広領域撮像と、受信コイルの位置計測と、感度マップ生成とをそれぞれ行う場合に、検査時間を短縮することができる。
【0137】
また、上記第2の実施形態では、データ収集制御部27aが、天板4aをZ軸方向に連続的に移動しながら、X−Y軸方向に対応するMR信号を収集する場合について説明した。この場合には、同じ断面についてMR信号を収集している間も天板4aが移動することになるので、生成された1つの断面の画像データにおいて、X軸方向のライン間でZ軸方向のずれが生じることになる。
【0138】
そこで、例えば、データ収集制御部27aが、1つの断面の画像を再構成するために必要な複数のMR信号を収集している間は、選択励起する位置を天板4aの移動に追従して移動させるようにしてもよい。この場合には、一例として、データ収集制御部27aは、リフォーカス用のパルスの搬送周波数オフセットを制御することで、選択励起の位置を移動させる。
【0139】
例えば、データ収集制御部27aは、以下に示す式(3)に基づいて、k番目に印加されるリフォーカス用のパルスの搬送周波数オフセットΔfk(k≧1)を制御する。
【0140】
Δfk=Δf0+{γ・Gs・V・ETS・(k−1/2)}/2π [Hz] ・・・(3)
【0141】
ここで、γは磁気回転比、Gsはスライス方向の傾斜磁場パルスの強度[T/m]、Vは天板4aの移動速度[m/s]、Δf0は最初に印加される励起用のパルスの搬送周波数オフセット、ETSはMR信号(エコー信号)の間隔[s]である。
【0142】
このように、データ収集制御部27aが、1つの断面の画像を再構成するために必要な複数のMR信号を収集している間は、選択励起する位置を天板4aの移動に追従して移動させることによって、受信コイルの位置をより精度よく計測することができる。
【0143】
なお、WBコイル画像は、ペアとなるアレイコイル画像と選択励起の位置が同じであるのが望ましい。そこで、データ収集制御部27aは、WBコイル画像に関するMR信号を収集している間も、天板4aの移動に追従して選択励起の位置を移動させる。例えば、データ収集制御部27aは、以下に示す式(4)に基づいて、WBコイルを用いた収集でk番目に印加されるリフォーカス用のパルスの搬送周波数オフセットΔfkWB(k≧1)を制御する。
【0144】
ΔfkWB=Δf0PAC+[γ・Gs・V・{ETS・(k−1/2)+ΔT}]/2π [Hz] ・・・(4)
【0145】
ここで、Δf0PACは、アレイコイルを用いた収集で最初に印加されるリフォーカス用のパルスの搬送周波数オフセット、ΔTは、アレイコイルを用いた収集の開始時刻とWBコイルを用いた収集の開始時刻との差である。
【0146】
このように、アレイコイルを用いた収集及びWBコイルを用いた収集において、選択励起の位置を天板4aの移動に追従して移動させることによって、より精度の高い感度マップを生成することができるようになる。
【0147】
また、上記第1及び第2の実施形態では、アレイコイル8bが有するコイルエレメントごとにプロファイルデータ又はアレイコイル画像を生成する場合について説明したが、実施形態はこれに限られない。例えば、2つ以上のコイルエレメントによって受信されたMR信号を合成して、合成したMR信号ごとにプロファイルデータ又はアレイコイル画像を生成してもよい。
【0148】
この場合には、例えば、受信部9が、複数のコイルエレメントのうち天板4aの移動方向に垂直な方向に並ぶ複数のコイルエレメントにより受信されたMR信号を合成する。そして、コイル位置計測部13dが、受信部9により合成されたMR信号を用いて、天板4aの移動方向に垂直な方向に並ぶ複数のコイルエレメントからなるコイルエレメント群の位置を計測する。
【0149】
(第3の実施形態)
なお、上記第1及び第2の実施形態では、データ収集制御部は、アレイコイルが装着された被検体の選択励起する位置を変えながら磁気共鳴信号を収集する。具体的には、上記第1及び第2の実施形態では、データ収集制御部は、被検体が置かれた天板を連続的に移動しながら、天板の移動方向に垂直な断面を繰り返し選択励起してMR信号を収集する例について説明した。
【0150】
しかしながら、MR信号を収集する方法は、第1及び第2の実施形態で説明したものに限られない。例えば、データ収集制御部は、被検体が置かれた天板を断続的に移動しながら、天板の移動方向に垂直な断面を繰り返し選択励起してMR信号を収集してもよい。このような方法は、ステップアンドシュートとも呼ばれる。そこで、以下では、ステップアンドシュートを用いた例を第3の実施形態として説明する。
【0151】
第3の実施形態に係るデータ収集制御部は、被検体が置かれた天板の移動と停止とを交互に繰り返し、天板を停止している間に、被検体の選択励起する位置を天板の移動方向に沿って変えながらMR信号を収集する。
【0152】
図15は、第3の実施形態に係るデータ収集制御部により実行されるデータ収集を説明するための図である。図15の左から右に順に示すように、第3の実施形態に係るデータ収集制御部は、例えば、アレイコイル8bが装着された被検体Pが置かれた天板4aのZ軸方向への移動と停止とを交互に繰り返す。ここで、図15に示す左、中央、右の図は、それぞれ天板4aが停止した状態を示している。また、図15に示すように、被検体Pは、体軸がZ軸方向に沿うように天板4aに置かれる。
【0153】
そして、データ収集制御部は、天板4aを停止している間に、被検体Pの選択励起する位置を天板4aの移動方向に沿って変えながらMR信号を収集する。例えば、データ収集制御部は、天板4aが停止している間に、選択励起するアキシャル断面AXを天板4aの移動間隔と同じ距離だけ天板4aの移動方向とは逆方向に移動させる(図15に示す太い実線の矢印を参照)。
【0154】
また、データ収集制御部は、天板4aを移動させたときには、選択励起するアキシャル断面AXの位置を天板4aの移動間隔と同じ距離だけ天板4aの移動方向に戻す(図15に示す破線の矢印を参照)。データ収集制御部は、こうして天板4aの移動と停止とを繰り返し、天板4aを停止している間に、選択励起するアキシャル断面AXの位置を移動させながら、MR信号を収集するパルスシーケンスを繰り返し実行する。
【0155】
そして、ここでは説明を省略するが、第3の実施形態でも、広領域画像生成部が、データ収集制御部により収集されたMR信号に基づいて被検体の広領域画像を生成し、コイル位置計測部が、広領域画像の生成に用いられるMR信号の強度とそのMR信号が収集された際の天板の位置とに基づいてコイルエレメントの位置を計測する。したがって、第3の実施形態でも、被検体の広領域撮像と受信コイルの位置計測とをそれぞれ行うことができ、寝台を移動させる回数を減らすことが可能になる。
【0156】
なお、上記第3の実施形態では、天板4aが停止した状態で被検体の選択励起する位置を移動させる。そのため、第3の実施形態では、撮像空間内における磁場の不均一性によって画像に生じる歪みを補正するための処理を併用するのが望ましい。
【0157】
以上説明したとおり、第1、第2及び第3の実施形態によれば、被検体の広領域撮像と受信コイルの位置計測とを行う場合に、検査時間を短縮することができる。
【0158】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0159】
100 磁気共鳴イメージング装置(MRI装置)
4a 天板
8a〜8e アレイコイル
10 計算機システム
13a 広領域画像生成部
13d コイル位置計測部
17 制御部
17a データ収集制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体から発生する磁気共鳴信号をそれぞれ受信する複数のコイルエレメントを配列して形成されたアレイコイルと、
前記アレイコイルが装着された前記被検体の選択励起する位置を変えながら磁気共鳴信号を収集する収集制御部と、
前記収集制御部により収集された磁気共鳴信号に基づいて前記被検体の広領域画像を生成する広領域画像生成部と、
前記広領域画像の生成に用いられる磁気共鳴信号の強度と該磁気共鳴信号が収集された際の前記天板の位置とに基づいて前記コイルエレメントの位置を計測する位置計測部と
を備える、磁気共鳴イメージング装置。
【請求項2】
被検体が置かれる天板をさらに備え、
前記収集制御部は、前記被検体が置かれた前記天板を連続的に移動しながら、該天板の移動方向に垂直な断面を繰り返し選択励起して磁気共鳴信号を収集する、
請求項1に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項3】
被検体が置かれる天板をさらに備え、
前記収集制御部は、前記被検体が置かれた前記天板の移動と停止とを交互に繰り返し、前記天板を停止している間に、前記被検体の選択励起する位置を前記天板の移動方向に沿って変えながら磁気共鳴信号を収集する、
請求項1に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項4】
前記被検体の周りに配置され、前記被検体から発生する磁気共鳴信号を受信する全身用コイルをさらに備え、
前記収集制御部は、前記アレイコイルと前記全身用コイルとを交互に切り替えながら前記磁気共鳴信号を収集する、
請求項1、2又は3に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項5】
前記全身用コイルにより受信された磁気共鳴信号の強度に基づいて、各コイルエレメントにより収集された磁気共鳴信号における前記被検体の部分的な性状の違いによる強度の変動を補正する補正部をさらに備え、
前記位置計測部は、前記補正部により生成された補正データを用いて、前記コイルエレメントの位置を計測する、
請求項4に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項6】
前記収集制御部は、前記天板の移動方向に垂直な1次元の方向に対応する磁気共鳴信号を収集する、
請求項1〜5のいずれか一つに記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項7】
前記広領域画像生成部は、前記収集制御部により時系列に収集された磁気共鳴信号に基づく生データそれぞれに1次元フーリエ変換処理を施すことで、1次元方向の実空間を表す複数のデータを生成し、生成したデータを実空間上で時系列順に配置することで、前記広領域画像を生成する、
請求項6に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項8】
前記収集制御部は、前記天板の移動方向に垂直な2次元の方向に対応する磁気共鳴信号を収集する、
請求項1〜5のいずれか一つに記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項9】
前記コイルエレメントにより収集された磁気共鳴信号に基づいて第1の画像データを生成し、前記全身用コイルにより収集された磁気共鳴信号に基づいて第2の画像データを生成する画像データ生成部と、
前記第1の画像データ及び前記第2の画像データを用いて、前記コイルエレメントの感度分布を表す感度マップを生成する感度マップ生成部と、
をさらに備える、請求項4に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項10】
前記感度マップ生成部により生成された前記感度マップを用いて、前記広領域画像生成部により生成された前記広領域画像の輝度補正を行う画像補正部をさらに備える、
請求項9に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項11】
前記収集制御部は、1つの断面の画像を再構成するために必要な複数の磁気共鳴信号を収集している間は、選択励起する位置を前記天板の移動に追従して移動させることを特徴とする、
請求項8に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項12】
前記広領域画像生成部は、前記収集制御部により時系列に収集された磁気共鳴信号に基づく生データそれぞれに2次元フーリエ変換処理を施すことで、2次元方向の実空間を表す複数の画像データを生成し、生成した画像データを実空間上で時系列順に配置することで前記被検体の3次元画像データを生成し、生成した3次元画像データに対して2次元化処理を施すことで、前記広領域画像を生成する、
請求項8に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項13】
前記複数のコイルエレメントのうち前記天板の移動方向に垂直な方向に並ぶ複数のコイルエレメントにより受信された磁気共鳴信号を合成する合成部をさらに備え、
前記位置計測部は、前記合成部により合成された磁気共鳴信号を用いて、前記天板の移動方向に垂直な方向に並ぶ複数のコイルエレメントからなるコイルエレメント群の位置を計測する、
請求項1〜12のいずれか一つに記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項14】
前記全身用コイルにより受信された磁気共鳴信号の強度に基づいて、各コイルエレメントにより収集された磁気共鳴信号における前記被検体の部分的な性状の違いによる強度の変動を補正する補正部と、
前記補正部により生成された補正データを用いて、前記広領域画像生成部により生成された前記広領域画像を補正する画像補正部と、
をさらに備える、請求項4に記載の磁気共鳴イメージング装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図14】
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【図15】
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【図6】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−61306(P2012−61306A)
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−177950(P2011−177950)
【出願日】平成23年8月16日(2011.8.16)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(594164542)東芝メディカルシステムズ株式会社 (4,066)
【Fターム(参考)】