磁気共鳴撮像法を用いた脳機能検出方法および装置
【課題】 脳内の組織間の信号の流れに関する情報を取得することができる磁気共鳴撮像法を用いた脳機能検出方法および装置を提供する。
【解決手段】 本件磁気共鳴撮像法を用いた脳機能検出方法は、刺激を与えて脳の活動状況を検出するためのものであって、ある刺激間隔(ISI)を有する二つの刺激を一つのペアとし、このペアを一定の刺激周期Tで、かつこのペアの刺激間隔(ISI)を変化させて、順次与えるようにする。このペアの刺激の刺激間隔(ISI)は、当初徐々に増加され、その後徐々に減少される。
【解決手段】 本件磁気共鳴撮像法を用いた脳機能検出方法は、刺激を与えて脳の活動状況を検出するためのものであって、ある刺激間隔(ISI)を有する二つの刺激を一つのペアとし、このペアを一定の刺激周期Tで、かつこのペアの刺激間隔(ISI)を変化させて、順次与えるようにする。このペアの刺激の刺激間隔(ISI)は、当初徐々に増加され、その後徐々に減少される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は磁気共鳴撮像法を用いた脳機能検出方法および装置に係り、特に脳内の組織間の信号の流れに関する情報を得ることができる磁気共鳴撮像法を用いた脳機能検出方法および装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
機能的MRI(fMRI)において、脳の機能部野を探索する時に使われる刺激または課題(以下、単に「刺激」という)としては、従来から、同じ刺激を長時間(数十秒から数分)与えるブロックデザインと、一回だけの刺激を与えるevent−relatedデザインとが知られている。ブロックデザイン的な刺激は、ある刺激内容に対して脳のどの部位が活動するかを調べることに有用である。また、event−relatedデザインでは刺激に対して各部野の信号の立ち上がり(潜時)を計測することができる。しかし、fMRIの信号応答は秒単位と遅いため、数十ミリ秒から数百ミリ秒で進む神経活動を、そのような短時間で検出することはほぼ不可能である。従って、今までのfMRIによる研究のほとんどは脳の静的特性を調べることにとどまっている(機能マップ)。しかし、脳の情報処理メカニズムを理解するためには各部野とそれらからなる機能ネットワークの時間的な働き、つまり、動特性を知ることは大事であるが、上記の方法では、機能組織の時間特性を測定することや、関連機能部野間の相互関係を測定することは困難である。
【0003】
脳のひとつの部野の賦活はその前後で起きる、その部野或いは他の部野での賦活に影響を与える。この影響は2つの賦活がある時間をおいて起きる時に現れる。例えば、ある二つの同じ視覚刺激を与えるときに刺激間隔を数十ミリ秒から数百ミリ秒まで変えながら刺激を与えると、短い時間では二つの刺激であるにも関わらす、一つに相当する応答しか出ない。これは、刺激間隔が短いときには刺激が二つであっても一つは無視されるからである(信号の抑制現象)。
【0004】
このように、脳機能検出において、ブロックデザイン的な刺激からもevent−relatedデザイン的な刺激からも機能組織の時間特性を得ることは困難である。一方、上記の信号抑制現象を利用すると、2つの同じ刺激の刺激間隔(inter stimulus interval:ISI)に対する神経活動変化をfMRIの信号強度の変化として捉えることが可能である。しかし、この方法はあくまでも2つの刺激に対して有効であって、例えば、同じ刺激間隔で幾つもの刺激を繰り返すと抑制効果はなくなってしまう。つまり、この刺激方法はインパルス的な刺激なので信号雑音比が低く、その差を信号の強度で評価することは困難であった。また、時間情報として、ある刺激間隔をもつ二つの刺激を一つのペアとして与えて機能組織の応答をみるということは、一つの時間情報しか得ることができないので情報量が少ない。仮に、刺激間隔の異なる沢山の刺激ペアを使うことは理論的には可能であるが、一つの刺激に対する応答は刺激後数秒の遅れを持って顕れることと、応答がもとの位置(ベースライン)にもどるまで10秒近くかかるので、測定時間の制限と信号雑音比などで事実上不可能である。さらに、機能組織のシステム的な特性(動特性)を調べる場合に、定常的な時間変化に対する応答を調べることは大事であるが、上記の方法ではこの情報を得ることは出来ない。また、脳内の組織間の信号の流れに関する情報を得ることもできない。ある刺激に対して得られる応答信号の中には刺激の有り無しに関わる情報と刺激内容を顕すものが混在しており、これを分けることもできない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
以上のように、従来、ある刺激に対して脳のどのような部分が働き、また時間的にどのような順序で処理が行われるかに関する情報を得ることができなかった。このような脳内の組織間の信号の流れに関する情報は、脳機能のネットワークの解明あるいは脳の情報処理メカニズムの解明に極めて有用なものであり、そのような情報を取得できる方法の提案が強く望まれていた。
【0006】
従って本発明の目的は、脳内の組織間の信号の流れに関する情報を取得することができる磁気共鳴撮像法を用いた脳機能検出方法および装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的は、刺激を与えて脳の活動状況を検出するための磁気共鳴撮像法を用いた脳機能検出方法であって、ある刺激間隔を有する二つの刺激を一つのペアとし、前記ペアを一定の周期で、かつ前記ペアの刺激間隔を変化させて、順次与えるようにした磁気共鳴撮像法を用いた脳機能検出方法により達成される。ここで、前記ペアの刺激間隔は当初徐々に増加され、その後徐々に減少されるようにすることができる。
【0008】
また、前記ペアの刺激間隔が当初徐々に増加され、その後徐々に減少される第1および第2のブロックを有し、前記第1のブロックの前記ペアの二つの刺激が互いに同じものとされ、前記第2のブロックの前記ペアの二つの刺激が互いに異なるものとされることができる。この場合、前記第1のブロックの前記ペアの一方の刺激と、前記第2のブロックの前記ペアの一方の刺激とは互いに同種のものとすることができる。また、前記第2のブロックの前記ペアの他方の刺激は前記一定の周期毎に異なるものとすることができる。さらに、前記ペアの刺激間隔が当初徐々に増加され、その後徐々に減少される第1および第2のブロックを有し、前記第1のブロックの前記ペアの一方の刺激と前記第2のブロックの前記ペアの一方の刺激とが互いに異種のものとされるようにすることができる。また、前記第1のブロックおよび前記第2のブロックが周期的にまたは規則的配列のもとで繰り返されるようにすることができる。
【0009】
また、本発明に係る、刺激を与えて脳の機能部野の特性を係数として定量化するための磁気共鳴撮像法を用いた脳機能の定量化方法は、ある刺激間隔を有する二つの刺激を一つのペアとし、前記ペアを一定の周期で、かつ前記ペアの刺激間隔を変化させ、さらに前記ペアの一方の刺激内容を周期的に変化させて、順次与えるようにしたものである。さらに、本発明に係る、刺激を与えて脳の活動状況を検出するための磁気共鳴撮像法を用いた脳機能検出装置は、ある刺激間隔を有する二つの刺激を一つのペアとし、前記ペアを一定の周期で、かつ前記ペアの刺激間隔を変化させて、順次出力する刺激発生装置を含む。また、本発明に係る、刺激を与えて脳の活動状況を検出するための磁気共鳴撮像法を用いた脳機能検出装置のための刺激発生装置は、ある刺激間隔を有する二つの刺激を一つのペアとし、前記ペアを一定の周期で、かつ前記ペアの刺激間隔を変化させて、順次出力するものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、脳内の組織間の信号の流れに関する情報を取得することができる磁気共鳴撮像法を用いた脳機能検出方法および装置を得ることができる。これにより、各機能要素の動特性を同定することが出来る。また、脳の応答をシステム的に計測、解析することができ、脳の信号処理メカニズムの解明、心理現象の解明などに利用することができる。また、信号の流れと各機能組織時間特性が分かるので、脳の機能に異常があるとき、どの部位に異常が有るかを非侵襲的に検索でき、fMRIの臨床へ応用を広げることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明に係る磁気共鳴撮像法を用いた脳機能検出方法および装置に関する実施例について説明する。
図1(a)は、本発明で用いられるMRI装置の一例を示すブロック図である。図示のように、MRI装置1は、静磁場発生磁石3、高周波送信用コイル4、高周波受信用コイル5、勾配磁場コイル6を備える。一方、コンピュータ7には制御装置8が接続されている。制御装置8は、高周波発生装置9からの高周波信号を変調器10にて所望の波形信号に変調するよう制御する。この変調信号は増幅器11を介して高周波送信用コイル4に付与される。また、制御装置8は、勾配磁場発生装置12を制御し、勾配磁場コイル6に所望の傾斜磁場を発生させる。測定時において、被験者13には、核磁気共鳴を起こさせるために高周波送信用コイル4から高周波パルスが照射される。これにより、核磁気共鳴によって被験者13に誘起されるエコー信号は、高周波受信用コイル5および増幅器14を介して位相検波器15で検波される。AD変換器16は、このアナログ検波信号をディジタル信号に変換する。コンピュータ7は、記憶装置17に格納したコンピュータプログラムによる処理手順にしたがってこのディジタル信号を処理し、その処理結果を表示装置18に画像として表示する。刺激発生装置19は、被験者13に光や音などの刺激を与えるためのものである。被験者13に付与される刺激が例えば画像の場合、刺激発生装置19は、図1(b)に示すように、画像を表示するモニター21を含む。MRI装置内に横たわる被験者13はミラー20を介してモニター21の画像を見ることで刺激が与えられる。また、例えば刺激が音や音声の場合は、被験者13にそれが聞こえる位置にスピーカーが置かれる。その他の構成については通常のMRI装置と同様である。
【0012】
刺激発生装置19は、被験者に刺激を与えて脳の活動状況を検出するために、ある刺激間隔(ISI)をもつ二つの刺激を一つのペアとし、このペアを一定の周期で、かつペアのISIを変化させて、順次出力する。2つの刺激をISIが短いもの(例えば0〜数ミリ秒)から数百ミリ秒(例えば900ミリ秒)まで一定の周期でかえる。時間を横軸に、ISIを縦軸にした場合に、例えば正弦波または三角波の形でISIを変化させて刺激ペアの付与を周期的に繰り返す。そのときの応答波形をMRI装置1で検出する。その応答波形は各機能組織の処理時間と機能的な役割に依存する。例えば、同じ情報を処理する経路上の各機能組織では低次野から高次野まで、ステップごとにsuppression(抑制)が亢進するので時系列に位相の遅れが進んで行くことが期待される。また、異なる機能を処理する部野はその機能に依存して位相の遅れが生じる。これについて以下詳述する。
【0013】
図2は刺激付与の具体的なプロトコールの一例を示す図で、(a)は付与するペアの刺激の刺激間隔(ISI)の時間的変化を示す図、(b)はペアの刺激の組み合わせを示す図、(c)は刺激間隔(ISI)と刺激周期Tの関係を示す図である。図2(a)、(b)に示すように、時間0〜As間はペアでない刺激S0が一定の周期で与えられ、時間Asからの刺激ブロックA,B,Cでは常に2つの刺激S0とSiまたはS0とS0がペアとして与えられる。刺激周期Tは、ブロックA,B,Cに共通で例えば2秒とされる。被験者に与えられる刺激がモニターに表示される人の顔(写真)の場合、ブロックA,Cでは、2秒(刺激周期T)ごとにペアの一方の刺激(違う顔)(Si)が付与され、その刺激間隔(ISI)後にそのペアの他方の刺激(同じ顔)(S0)が付与される。ブロックA,Cでは、ペアの一方の刺激(違う顔)(Si)が毎回変わっていく。また、ブロックBでは、ペアの二つの刺激は同じ顔(S0)が付与される。各刺激ブロックのスタート時間は、As=41(秒),Bs=77(秒),Cs=113(秒)である。ここで、ブロックBの一方の刺激S0とブロックA,Cの一方の刺激S0は同じものである必要はなく、同類すなわち同種(同じものを含む)のものであればよい。例えば、ブロックBではS0とS0の刺激ペアとし、ブロックA,CではSiとS0’(S0’はS0と同種)の刺激ペアとすることができる。ここで、同種か否かについては、例えば、二つの刺激が違う二つの人の顔(写真)の場合、両者は共に人の顔であるから同種である。また同様に、二つの刺激が違う二つの建物(写真)の場合、両者は共に建物であるから同種である。これに該当しない場合、例えば、二つの刺激の一方が人の顔で他方が建物の場合、両者は異種である。
【0014】
ペアの二つの刺激(S0とSi、またはS0とS0)は、図2(c)に示すように、一定の周期(刺激周期T)で、かつ刺激間隔(ISI)をISI(1)、ISI(2)、ISI(3)のように変化させて、順次与えられる。本例の場合は、図2(a)に示すように、三角波の形でISIを変化させて何周期かを繰り返す。即ち、S0とSiの間隔(ISI)は当初は徐々に増加していき、刺激間隔の最大値ISImax(例えば900ms)に達すると、そこからは徐々に減少していく。各ブロックA,B,Cで同じ刺激を周期的に使うことも出来るし、他の刺激を混ぜることも出来る。S0は検索したい機能と関連する任意の刺激である。
【0015】
図3は、刺激に対するfMRI応答波形の一例を示すグラフである。図において、横軸は時間、縦軸は応答の大きさを示す。入力波形(ブロックA,B,C)との相関が0.7以上の出力波形(fMRI応答波形)が得られた。図示のように、同じ顔(S0)の刺激からなるブロックBでの応答の立ち上がりの位相は、顔の情報を処理する紡錘顔面領域(Fusiform Face Area:FFA)の方が視覚野より遅れている(α1)。これはペア刺激のもたらす2つの情報が、視覚野では同じなので、視覚野で、まず抑制のための応答低下が起き、FFAに至るまでこの抑制が亢進し、結果として、FFAでの信号応答の立ち上がり(位相)が遅れる。一方、同じ顔(S0)と違う顔(Si)の刺激からなるブロックAとCでは、視覚野での応答の立ち上がりの位相が、FFAより遅れている(α2)。これは、まず、視覚野は、空間情報として同様な情報の処理をしており、ペア刺激における抑制がおきる。顔の情報を処理するFFAでは、異なった情報処理として抑制が少ない応答、即ち、応答位相が視覚野よりすすんでいる。また、応答の立ち上がりからISIの最高値にいたる信号の大きさは、2秒毎の応答の加算として顕れる。ブロックA,CとBにおける視覚野での相対的応答の大きさをFFAと比べると視覚野よりもFFAの方が大きい。これはFFAが顔の情報を処理することに特化していることを示す。
【0016】
図4は、入力波形(ブロックA,B,C)と出力波形の相関が0.7以上の視覚野(図中の点線囲み部分)を示すMRI画像図である。図4に示す点線囲み部分はブロックA,B,Cからなる入力に対して活性化された場所で視覚野である。つまり、視覚野では顔が同じであるかどうかは区別しない。図5は、入力波形(A,C)と出力波形の相関が0.7以上のFFA(図中の点線囲み部分)を示すMRI画像図である。図5に示す点線囲み部分はブロックA,Cに対して主に活性化された場所でFFAである。つまり、このFFA域では異なる顔を見分け得て、同じ顔を見せるブロックBに対する信号応答は小さい。
【0017】
以上のように、本実施例では、ある刺激間隔を有する二つの刺激を一つのペアとし、このペアを一定の周期でかつペアの刺激間隔を変化させて順次与えることにより、fMRI応答波形の位相差及び信号応答の大きさから神経活動を検出しようとするものである。刺激は、例えば二つの画像をペアにしており、その間隔を変数として取っている。ペアの刺激は例えば2秒ごとに呈示される。脳の組織では信号を処理するのに数十ミリ秒から数百ミリ秒かかる場合が多い。二つの刺激がこのような処理時間より短い間隔で与えられた時、ペア刺激の処理が不完全になる。特に、その機能組織にとって2つの刺激が同一とみなされる時にはその処理度の回復が遅い(抑制が長びく)。そこで、連続的または段階的(以下、単に「連続的」という)にその間隔を変えながらペアの刺激を呈示するときに起きる、脳活動の位相のずれ(入力を基準にする)は、二つが同一種類または組織が二つを等価的に同一のものとして処理するときにおきる。ただし、二つの画像に対して、ある脳組織が独立なものとして処理すると位相の遅れは生じない。
【0018】
与えられた刺激に対して賦活する脳部位を検索する統計的な方法で今まで使われているのはブロックデザインやevent−relatedデザインであるが、これらは基本的には刺激がないときは0で刺激があるときは1のテストをしている。しかし、生理的な変動、機械的なノイズなどの外乱要素によって0の状態が変動するし、1の状態に対する応答でも同様である。そこで、上記のような周期的な刺激を与えていくと、その周期的な刺激パタンに相関する応答を示す部位を検索することができ、また、ISIで異なる刺激を連続的に与えることによって信号が積分されるので、信号の抽出パワーがより高くなる。また、ある一定の周期ごとにISIを連続的に変えていくので時間情報をより多く得ることが出来る。賦活される機能部野の定常的な動特性を得ることが出来る。
【0019】
また、ISIだけをパラメータにしないで、例えば、顔の認知メカニズムの解明であれば、顔の構成要素を単純なものから複雑なものへと複雑度を変えていき、これを周期的に繰り返すことによって顔の認知に関連する部野間の位相差を検出し、信号の流れやネットワークを検出することも出来る。ISIをゆっくり増加させるなど位相の遅れを調節することにより、数十ミリ秒の信号の遅れを数秒または数十秒の位相の遅れに変換することにより、計測を容易にすることができる。2つの刺激のうち一つに検出したい機能を持たせることによって、その機能に依存した信号応答を得ることが出来る。
【0020】
本実施例によれば、MRIによる脳機能計測において神経活動に係る機能検出方法(刺激提示方法)を提供することができる。本実施例に係る刺激方法は例えば次のように行われる。まず、刺激のある特定のパラメータpに対する刺激測度をV(p)とする。pを時間によって周期的に変化させていく。例えば、P(t)=k1*sin(t)に対してV(p(t))=f(k1*sin(t))となり、Vのプロファイルが周期的に繰り返される。これによって、線形システム理論の適用を可能とする。信号応答の解析方法としては、周期的な信号の入出力関係から機能部野の特性を抽出する。線形システム解析の諸手法の応用(入出力ゲイン、位相差、などの適用によって、脳の機能処理システムを伝達関数、多入出力系として記述するなど)を可能にする。また、刺激間隔の周期的な変化による各機能部野の応答特性の検出及び関連機能部野の相互作用(機能ネットワーク)の検出を行うことができる。脳の信号の処理プロセス(フロー)の検出を可能とする。外乱信号の影響を低減または除去し、周期的な刺激によって物理的及び生理的な外乱から目的とする信号を抽出することを容易にすることができる。
【0021】
ところで、脳の機能活動を定量的に評価することは病気の診断(行動的にその症状が顕れる前までも含めて)と、学習などの効果の確認において非常に重要である。また、ヒトの脳は歳とともに退化していくので、病気ではないにしてもその機能的な変化の度合いを知ることは大事である。しかし、このように脳の機能を定量化し、その変化を測定、評価することは、脳の機能活動の複雑さと計測技術などの面から見て、非常に難しいことである。脳電図(EEG)を使って誘発電位を測ることで、機能の異常を検査する方法はあるが、異常の原因の特定に限界があり、また、異常部位の同定は出来ない。機能的MRI(fMRI)は空間分解能が高く、機能の局在性など脳の機能を調べる上で有用な手段である。しかし、いままでの手法では脳機能の静的な側面(ある刺激とある部野とを関連づけること)に対しての研究が主に行われており、この種の手法では、その機能部野の動的な特性を調べることは出来なかった。つまり、機能部野は動的に働いていること、そして、ある機能を遂行するときに、常に、他の組織と相互作用をし、また、組織内の場合であっても、組織内の神経細胞は、刺激の種類に対して、細胞間の連結を変えたり応答の大きさを変えたりするので、脳の機能部野の特性を調べようとすると、刺激内容による変化と、刺激を処理するための相互作用と時間的な変化を計測しないといけない。さらに、診断など機能の変化の有り無しを判断するためには、そのような動的な特性を定量化しないといけない。
【0022】
以上のようにfMRIを使って脳の動的な活動を計測、定量的に評価し、機能の変化または異常を判別するためには、
1)脳活動に係る各機能部野の動的な特性に対する情報が計測できること、
2)ある刺激に対する処理をするときに、その部野が情報を処理する過程で、どの部分に位置しているか、どのような処理に係っているかを同定できること、さらに、
3)それを定量化できること、
4)変化の尺度を使い、変化の有り無しを判断できること、
などが要求される。
【0023】
このような要求に対しては次のように対応することができる。
A)周期的に二つの刺激間の間隔を変化させる。
B)刺激内容(例えば、顔、建物など)を周期的に、または、ある規則的配列をもって変化させる。すなわち、刺激内容の異なるあるブロックおよび別のブロックが周期的にまたは規則的配列のもとで繰り返されるようにする。例えば、顔のブロックを0、建物のブロックを1とした場合、0101・・・は周期的である。また、010、001、110、101の四つをセットとしてもつものは規則的配列である。
C)上記A)とB)からなる刺激を与えて、MRIの信号に刺激間隔と刺激内容を変数とした動的な情報を持たせる。つまり、各機能組織の特性をエンコード(encoding)して計測する。これは、得られるfMRIの信号がその二つの種類(刺激間隔と刺激内容)を変数として持つようにすることであり、今までの脳機能マッピングが静的なものであれば、これは脳機能の動的なマッピングといえる。
D)刺激内容と刺激間隔に係る部野、刺激内容に対して主に応答する部野などを同定する。これは、例えば、刺激間隔の変化だけを顕す入力と刺激内容だけを顕す入力を使って、fMRIのデータを処理することによって達成される。
【0024】
E)同定した各部野の特性を刺激入力とその部野のfMRI応答から、動的システムとしてモデリングし、その係数を推定することによって定量化する。刺激間隔による相互作用と刺激内容に対してエンコードされた情報は、その周期などを変化させることによって、外乱や雑音などに対してロバスト(robust)にすることができる。刺激内容と刺激間隔を任意に変えることによって、ある周期の応答パターン(sin波など)を得ることができるが、このような周期成分を、機械または生理的なノイズの持つ周波数成分と違うようにすればノイズの影響を受け難くなり、ノイズに強くなる。これは、振幅変調(AM)に比べ、周波数変調(FM)の方がよりロバストであることと同じである。
F)推定した係数の尺度を決めて(例えば、Euclidian norm)、その尺度で、特性の変化を評価する。これは、脳機能の診断、学習の評価、教育方法の開発および評価する装置などへ応用が可能である。
【0025】
図6は刺激付与の具体的なプロトコールの他の例を示す図で、(a)は付与するペアの刺激の刺激間隔(ISI)の時間的変化を示す図、(b)はペアの刺激の組み合わせを示す図、(c)は刺激間隔(ISI)と刺激周期Tの関係を示す図、(d)は刺激入力u1〜u3を示す図である。ここで、刺激付与は、上記図1で説明した刺激発生装置19を用いることができる。刺激発生装置19は、被験者に刺激を与えて脳の活動状況を検出するために、ある刺激間隔(ISI)をもつ二つの刺激を一つのペアとし、このペアを一定の周期で、かつペアのISIを変化させて、順次出力する。2つの刺激をISIが短いもの(0〜数ミリ秒)から数百ミリ秒(例えば900ミリ秒)まで一定の周期でかえる。時間を横軸に、ISIを縦軸にした場合に、例えば正弦波または三角波の形でISIを変化させて刺激ペアの付与を周期的に繰り返す。また、刺激の内容を交互に変える。脳の機能部野は、刺激間隔と刺激内容そして、その両方に依存して、応答の変化を表すことが予想される。例えば、喉頭葉の後方は一般的に刺激の内容によらないので、刺激間隔によって変化を表し、より先方は刺激内容によって応答が変化することが予想される。
【0026】
図6(a)、(b)に示すように、時間0〜As間はペアでない刺激S0が一定の周期で与えられ、時間Asからの刺激ブロックA,B,Cでは常に2つの刺激S0とSiがペアとして与えられる。刺激周期Tは、ブロックA,B,Cに共通で例えば2秒とされる。被験者に与えられる刺激がモニターに表示される人の顔(写真)の場合、ブロックA,Cでは、2秒(刺激周期T)ごとにペアの一方の刺激(違う顔)(Si)が付与され、その刺激間隔(ISI)後にそのペアの他方の刺激(同じ顔)(S0)が付与される。ブロックA,Cでは、ペアの一方の刺激として違う顔(Si)が毎回変わっていく。またブロックBでは例えば建物(写真)が一方の刺激(Si)として付与(モニターに表示)される。すなわち、ブロックA,Cは人の顔写真のセット(iごとに違う写真)を用い、AとCではブロック内の写真の配列が違う。また、ブロックBは建物の写真を含むものであり、2秒(刺激周期T)ごとにペアの一方の刺激(違う建物)(Si)(iごとに違う写真)が付与され、その刺激間隔(ISI)後にそのペアの他方の刺激(同じ顔)(S0)が付与される。すなわち、ブロックA,CとブロックBの各ペアの二つの刺激(Si,S0)は互いに異なり、また、ブロックA,Cの一方の刺激(Si)(人の顔)と、ブロックBの一方の刺激(Si)(建物)とは互いに異種のものとされる。各刺激ブロックのスタート時間は、As=41(秒),Bs=77(秒),Cs=113(秒)である。
【0027】
ペアの二つの刺激(S0とSi)は、図6(c)に示すように、一定の周期(刺激周期T)で、かつ刺激間隔(ISI)をISI(1)、ISI(2)、ISI(3)のように変化させて、順次与えられる。本例の場合は、図6(a)に示すように、三角波の形でISIを変化させて何周期かを繰り返す。即ち、S0とSiの間隔(ISI)は当初は徐々に増加していき、刺激間隔の最大値ISImax(例えば900ms)に達すると、そこからは徐々に減少していく。各ブロックA,B,Cで同じ刺激を周期的に使うことも出来るし、他の刺激を混ぜることも出来る。S0とSiは検索したい機能と関連する任意の刺激である。
【0028】
図7〜図9は、刺激に対するfMRI応答のマップの例を示す図である。図7中の点線囲み部分は、脳の後方にある視覚野(V1)を含む領域で、この領域は主に図6(d)で示すu1の刺激間隔(ISI)によって応答の変化を顕わす部分である。図8中の点線囲み部分は、紡錘顔面領域(FFA)といわれる部野で、この部野は図6(d)で示すu2の刺激内容(A,C)によって応答の変化を顕わす部分である。図9中の点線囲み部分は、PPA(Parahippocampal Area)といわれる部野で、この部野は図6(d)で示すu3の刺激内容(B)に対して主に応答の変化を顕わす部分である。これを次に応答波形で示す。
【0029】
図10(a)〜(c)は、それぞれ図7〜図9に対応した領域(各図中の点線囲み部分)の応答波形を示す図である。図10において、横軸は時間(秒)、縦軸は応答の大きさを示す(横軸の時間は、0秒が図6の入力波形のAs(41秒)に当たる)。図10(a)〜(c)に示す各部野の応答波形が刺激間隔と刺激内容による変化を顕しており、これにより各部野の特性が刺激間隔と刺激内容によってエンコードされていることが分かる。また、刺激マップによって、刺激処理過程の信号の流れも推測できる。信号は後方から前方へ進んで行くが、刺激内容によって、顔(AとC)に対しては脳の外側の方、建物(B)に対しては内側の方へ分かれる。
【0030】
各部野での応答特性を図10(a)〜(c)で示す出力とし、入力を図6(d)で示すu1〜u3(3入力)として、次のような3入力1出力の伝達関数G(z)としてモデリングし、係数の推定を行った。本例では、刺激入力u1はISIの変化、u2は顔(写真)、u3は建物(写真)である。
G(z)=D(z)^-1*[N1(z)+N2(z)+N3(z)]=G1(z)+G2(z)+G3(z)
D(z)=d1*z^4+d2*z^3+d3*z^2+d4*z^1+d5
D=[d1, d2, d3, d4, d5]
Ni(z)=ni1*z^3+ni2*z^2+ni3*z^1+ni4
Ni=[ni1, ni2, ni3, ni4]
ここで、Dはシステムを顕す伝達関数G(z)の分母多項式、Nは分子多項式であり、d(d1〜d5),n(ni1、ni2、ni3、ni4)はそれぞれD,Nの係数、i=1〜3である。これらの係数はシステムの特性を顕し、例えば遅れ時間、立ち上がり時間、安定性などである。
【0031】
各部野はそれぞれ違う特性をあらわしていることが分かる(DとNの係数の違いから)。特に、FFAとPPAとでは、機能部野の動的特性に係るDでの差は少なく、主に、入力u2,u3にかかわるN2、N3の係数が違っていることから、刺激内容による違いを示している。
(1)視覚野V1に対して推定された係数:
D=[1, -2.2232, 1.9998, -0.9850, 0.2290]
N1=[-5.74, 13.25, -3.80, -3.40]*10^-2
N2=[0.61, -0.26, -0.29, 0.07]*10^-2
N3=[0.20, 0.96, -1.10, 0.04]*10^-2
(2)FFAで推定された係数:
D=[1, -2.4413, 2.3603, -1.0631, 0.1723]
N1=[-4.31, 9.06, -0.36, -4.13]*10^-2
N2=[1.76, -0.70, -1.00, 0.67]*10^-2
N3=[-0.17, 0.25, -0.69, 0.76]*10^-2
(3)PPAで推定された係数:
D=[1, -2.4036, 2.3874, -1.1678. 0.2196]
N1=[-3.53, 8.45, -4.50, -0.40]*10^-2
N2=[0.67, -1.23, -0.37, 0.96]*10^-2
N3=[0.69, -0.07, -0.21, 0.22]*10^-2
【0032】
このように、各機能部野は与えられた刺激に対して異なる応答を示しており、その特性をモデルの係数として定量化することが出来る。各部野の応答の実測値と入力(u1,u2,u3)に対する上記で推定した伝達関数G(z)の出力は、図11〜図13に示すとおりである。図11は視覚野(V1)での実測値とG(z)の出力の一例を示す図、図12はFFAでの実測値とG(z)の出力の一例を示す図、図13はPPAでの実測値とG(z)の出力の一例を示す図である。図11〜図13において、横軸は時間(秒)、縦軸は応答の大きさを示す(横軸の時間は、20秒が図6の入力波形のAs(41秒)に当たる)。伝達関数G(z)の次数を最適化することによって、より厳密に実測値に一致するような推定もできるが、ここでは次数を4次にした。以上のように脳機能を定量化し、それを基準にして、それからの変化量を評価することによって、機能の変化を推測することが出来る。推測可能な機能変化は、例えば組織の中での処理に係る神経細胞の数の変化、神経細胞からなる神経回路の変化、あるいは組織間の連結の変化などがある。これらは、例えば、人の顔または建物に対する認知機能(顔や建物を見分けるなど)を失ったり(失認症、相貌失認など)、獲得したり、または、認知までの時間が遅くなったりすることに繋がる。実際は計測時のノイズなど変動量があって、組織の機能的な変化とノイズなどによる計測誤差とを区別しないといけない。そのために、誤差による変動量の上限を設けて、それをδとして機能的変動領域と誤差による変動領域を分けることが出来る。すなわち、測定によって得られるDの変動量||ΔD||がδより小さければ、それは単なる誤差で、測定を行うたびに変化する変動が原因であり、機能の変化によるものではないからである。
【0033】
機能部野の特性の変化の検出と診断の方法は例えば次のように行うことが出来る。
(4)PPAの係数の変化:PPAの応答を10秒遅延させたものを出力として使った。
D=[1, -2.0373, 1.5080, -0.3897, -0.0465]
N1=[2.86, -6.85, 4.28, 0.03]*10^-2
N2=[-0.79, 1.18, -0.08, -0.50]*10^-2
N3=[-039, 091, -028, -0.09]*^-2
【0034】
(5)PPAの係数の変化:PPAの応答の振幅を2倍にしたものを出力として使った。
D=[1, -2.4036, 2.3874, -1.1678, 0.2196]
N1=[-7.06, 16.89, -9.00, -0.81]*10^-2
N2=[1.34, -2.47, -0.74, 1.92]*10^-2
N3=[1.37, -0.13, -0.42, 0.43]*10^-2
【0035】
上記(3)の係数をノーマル状態とし、上記(4)と(5)の係数は、応答の遅延と応答の感度が原因として変化したものであるとする。また、異常検出の条件を||ΔD||>δとする。ここで、
ΔD= ||D||-||D’|| ; Dは(3)、D’は(4)または(5)の係数, ||・||はEuclidian normである。
なお、異常とは、例えば刺激に対する応答が通常と違うことを意味し、ここでは、反応が遅くなることである。
【0036】
例えば、上記(3)の場合、
||D||=[d1^2+d2^2+d3^2+d4^2]^(1/2)なので、
||D||=[1^2+(-2.4036)^2,+2.3874^2+(-1.1678)^2+0.2196^2)]^(1/2)=3.7268である。
上記(4)の場合は、
||D||=[1^2+(-2.0373)^2+(1.5080)^2+(-0.3897)^2+(-0.0465)^2]=2.7529である。
従って、(4)の場合、
ΔD=3.7268-2.7529=0.9739
である。よって、異常判別の閾値δが0.5であるとすると、これは異常有りの結果となる。このようにして異常有り無しの判断が出来る。また、Dの中のどの項が変化したか、そして、それは機能のどの側面に関連があるかをみると、d3,d4,d5の変化がノーマルから大きく変化していることが分かり、機能のどの側面に変化がおきているのかが診断できる。ここではこれらの項は応答の遅れに相当するものである。
【0037】
同様に、上記(5)の例からは、係数Nがほぼ2倍になっていることが分かり、応答の感度が上がっていることになる。学習など可塑性により、感度の変化が起きると同様な評価が出来る。ここで可塑性とは、学習により脳の組織の神経回路などが変化することを意味し、変化の仕方によっては応答が大きくなることもあるし、小さくなることもある。また、他の色々な形であらわれることもある。このように、刺激間隔の変化と刺激内容を変化させることにより、脳の各部野の特性をエンコードして、定量化し、また、その特性の変化の有無の判断と診断ができる。
【0038】
以上のように、本実施例では、ある刺激間隔を有する二つの刺激を一つのペアとし、このペアを一定の周期でかつペアの刺激間隔を変化させて順次与え、さらに前記ペアの一方の刺激内容を周期的に変化させることにより、各機能部野の特性をエンコードする。これによって、信号の流れが検出でき、また、各機能部野の特性をモデルの係数として定量化することが出来る。すなわち、刺激を与えて脳の機能部野の特性を係数として定量化するための磁気共鳴撮像法を用いた脳機能の定量化方法を得ることができ、脳の機能部野の特性に変化が起きた時に、その変化量の評価が出来る。また、この脳機能の定量化方法は、診断や学習の評価などへ応用できる。ここで示したモデルや尺度などは、目的によって色々な形態をとることが出来る。
【0039】
本実施例によれば、MRIにより脳機能を計測して、脳の機能的異常、特性の変化の有無の検出方法(刺激提示方法)を提供することができる。本実施例に係る刺激方法は例えば次のように行われる。まず、刺激間隔のパラメータをpと刺激の内容のパラメータをqとして、期待される応答をV(p、q)とする。p、qを時間によって周期的に変化させていく。例えば、p(t)=k1*sin(t)、q=h(k2*g(t))に対してV(p(t),q(t))=f(k1*sin(t),k2*g(t))(ここで、g(t)とはgate functionである)となり、Vのプロファイルが周期的に繰り返される。p、qによって各機能部野の特性をエンコードして、機能部野を同定する。また、同定した各部野での動特性をモデリングして、係数の推定を行う。推定した係数を決まった尺度で評価する。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明は磁気共鳴撮像法を用いた脳機能検出方法および装置に係り、特に脳内の組織間の信号の流れに関する情報を得ることができる磁気共鳴撮像法を用いた脳機能検出方法および装置関するものであり、産業上の利用可能性がある。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】(a)は本発明で用いられるMRI装置の一例を示すブロック図、(b)は(a)の刺激発生装置の構成例を示す図である。
【図2】刺激付与の具体的なプロトコールを示す図で、(a)は付与するペアの刺激の刺激間隔(ISI)の時間的変化を示す図、(b)はペアの刺激の組合わせを示す図、(c)は刺激間隔(ISI)と刺激周期Tの関係を示す図である。
【図3】刺激に対するfMRI応答波形の一例を示すグラフである。
【図4】入力波形と出力波形の相関が0.7以上の視覚野(図中の点線囲み部分)を示すMRI画像図である。
【図5】入力波形と出力波形の相関が0.7以上のFFA(図中の点線囲み部分)を示すMRI画像図である。
【図6】刺激付与の具体的なプロトコールの他の例を示す図で、(a)は付与するペアの刺激の刺激間隔(ISI)の時間的変化を示す図、(b)はペアの刺激の組み合わせを示す図、(c)は刺激間隔(ISI)と刺激周期Tの関係を示す図、(d)は刺激入力u1〜u3を示す図である。
【図7】刺激に対するfMRI応答のマップ(視覚野)の例を示す図である。
【図8】刺激に対するfMRI応答のマップ(FFA)の例を示す図である。
【図9】刺激に対するfMRI応答のマップ(PPA)の例を示す図である。
【図10】(a)〜(c)はそれぞれ図7〜図9に対応した領域(図中の点線囲み部分)の応答波形を示す図である。
【図11】視覚野(V1)での実測値とG(z)の出力の一例を示す図である。
【図12】FFAでの実測値とG(z)の出力の一例を示す図である。
【図13】PPAでの実測値とG(z)の出力の一例を示す図である。
【符号の説明】
【0042】
1 MRI装置
3 静磁場発生磁石
4 高周波送信用コイル
5 高周波受信用コイル
6 勾配磁場コイル
7 コンピュータ
8 制御装置
9 高周波発生装置
10 高周波信号を変調器
11、14 増幅器
12 勾配磁場発生装置
13 被験者
15 位相検波器
16 AD変換器
17 記憶装置
18 表示装置
19 刺激発生装置
20 ミラー
21 モニター
【技術分野】
【0001】
本発明は磁気共鳴撮像法を用いた脳機能検出方法および装置に係り、特に脳内の組織間の信号の流れに関する情報を得ることができる磁気共鳴撮像法を用いた脳機能検出方法および装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
機能的MRI(fMRI)において、脳の機能部野を探索する時に使われる刺激または課題(以下、単に「刺激」という)としては、従来から、同じ刺激を長時間(数十秒から数分)与えるブロックデザインと、一回だけの刺激を与えるevent−relatedデザインとが知られている。ブロックデザイン的な刺激は、ある刺激内容に対して脳のどの部位が活動するかを調べることに有用である。また、event−relatedデザインでは刺激に対して各部野の信号の立ち上がり(潜時)を計測することができる。しかし、fMRIの信号応答は秒単位と遅いため、数十ミリ秒から数百ミリ秒で進む神経活動を、そのような短時間で検出することはほぼ不可能である。従って、今までのfMRIによる研究のほとんどは脳の静的特性を調べることにとどまっている(機能マップ)。しかし、脳の情報処理メカニズムを理解するためには各部野とそれらからなる機能ネットワークの時間的な働き、つまり、動特性を知ることは大事であるが、上記の方法では、機能組織の時間特性を測定することや、関連機能部野間の相互関係を測定することは困難である。
【0003】
脳のひとつの部野の賦活はその前後で起きる、その部野或いは他の部野での賦活に影響を与える。この影響は2つの賦活がある時間をおいて起きる時に現れる。例えば、ある二つの同じ視覚刺激を与えるときに刺激間隔を数十ミリ秒から数百ミリ秒まで変えながら刺激を与えると、短い時間では二つの刺激であるにも関わらす、一つに相当する応答しか出ない。これは、刺激間隔が短いときには刺激が二つであっても一つは無視されるからである(信号の抑制現象)。
【0004】
このように、脳機能検出において、ブロックデザイン的な刺激からもevent−relatedデザイン的な刺激からも機能組織の時間特性を得ることは困難である。一方、上記の信号抑制現象を利用すると、2つの同じ刺激の刺激間隔(inter stimulus interval:ISI)に対する神経活動変化をfMRIの信号強度の変化として捉えることが可能である。しかし、この方法はあくまでも2つの刺激に対して有効であって、例えば、同じ刺激間隔で幾つもの刺激を繰り返すと抑制効果はなくなってしまう。つまり、この刺激方法はインパルス的な刺激なので信号雑音比が低く、その差を信号の強度で評価することは困難であった。また、時間情報として、ある刺激間隔をもつ二つの刺激を一つのペアとして与えて機能組織の応答をみるということは、一つの時間情報しか得ることができないので情報量が少ない。仮に、刺激間隔の異なる沢山の刺激ペアを使うことは理論的には可能であるが、一つの刺激に対する応答は刺激後数秒の遅れを持って顕れることと、応答がもとの位置(ベースライン)にもどるまで10秒近くかかるので、測定時間の制限と信号雑音比などで事実上不可能である。さらに、機能組織のシステム的な特性(動特性)を調べる場合に、定常的な時間変化に対する応答を調べることは大事であるが、上記の方法ではこの情報を得ることは出来ない。また、脳内の組織間の信号の流れに関する情報を得ることもできない。ある刺激に対して得られる応答信号の中には刺激の有り無しに関わる情報と刺激内容を顕すものが混在しており、これを分けることもできない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
以上のように、従来、ある刺激に対して脳のどのような部分が働き、また時間的にどのような順序で処理が行われるかに関する情報を得ることができなかった。このような脳内の組織間の信号の流れに関する情報は、脳機能のネットワークの解明あるいは脳の情報処理メカニズムの解明に極めて有用なものであり、そのような情報を取得できる方法の提案が強く望まれていた。
【0006】
従って本発明の目的は、脳内の組織間の信号の流れに関する情報を取得することができる磁気共鳴撮像法を用いた脳機能検出方法および装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的は、刺激を与えて脳の活動状況を検出するための磁気共鳴撮像法を用いた脳機能検出方法であって、ある刺激間隔を有する二つの刺激を一つのペアとし、前記ペアを一定の周期で、かつ前記ペアの刺激間隔を変化させて、順次与えるようにした磁気共鳴撮像法を用いた脳機能検出方法により達成される。ここで、前記ペアの刺激間隔は当初徐々に増加され、その後徐々に減少されるようにすることができる。
【0008】
また、前記ペアの刺激間隔が当初徐々に増加され、その後徐々に減少される第1および第2のブロックを有し、前記第1のブロックの前記ペアの二つの刺激が互いに同じものとされ、前記第2のブロックの前記ペアの二つの刺激が互いに異なるものとされることができる。この場合、前記第1のブロックの前記ペアの一方の刺激と、前記第2のブロックの前記ペアの一方の刺激とは互いに同種のものとすることができる。また、前記第2のブロックの前記ペアの他方の刺激は前記一定の周期毎に異なるものとすることができる。さらに、前記ペアの刺激間隔が当初徐々に増加され、その後徐々に減少される第1および第2のブロックを有し、前記第1のブロックの前記ペアの一方の刺激と前記第2のブロックの前記ペアの一方の刺激とが互いに異種のものとされるようにすることができる。また、前記第1のブロックおよび前記第2のブロックが周期的にまたは規則的配列のもとで繰り返されるようにすることができる。
【0009】
また、本発明に係る、刺激を与えて脳の機能部野の特性を係数として定量化するための磁気共鳴撮像法を用いた脳機能の定量化方法は、ある刺激間隔を有する二つの刺激を一つのペアとし、前記ペアを一定の周期で、かつ前記ペアの刺激間隔を変化させ、さらに前記ペアの一方の刺激内容を周期的に変化させて、順次与えるようにしたものである。さらに、本発明に係る、刺激を与えて脳の活動状況を検出するための磁気共鳴撮像法を用いた脳機能検出装置は、ある刺激間隔を有する二つの刺激を一つのペアとし、前記ペアを一定の周期で、かつ前記ペアの刺激間隔を変化させて、順次出力する刺激発生装置を含む。また、本発明に係る、刺激を与えて脳の活動状況を検出するための磁気共鳴撮像法を用いた脳機能検出装置のための刺激発生装置は、ある刺激間隔を有する二つの刺激を一つのペアとし、前記ペアを一定の周期で、かつ前記ペアの刺激間隔を変化させて、順次出力するものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、脳内の組織間の信号の流れに関する情報を取得することができる磁気共鳴撮像法を用いた脳機能検出方法および装置を得ることができる。これにより、各機能要素の動特性を同定することが出来る。また、脳の応答をシステム的に計測、解析することができ、脳の信号処理メカニズムの解明、心理現象の解明などに利用することができる。また、信号の流れと各機能組織時間特性が分かるので、脳の機能に異常があるとき、どの部位に異常が有るかを非侵襲的に検索でき、fMRIの臨床へ応用を広げることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明に係る磁気共鳴撮像法を用いた脳機能検出方法および装置に関する実施例について説明する。
図1(a)は、本発明で用いられるMRI装置の一例を示すブロック図である。図示のように、MRI装置1は、静磁場発生磁石3、高周波送信用コイル4、高周波受信用コイル5、勾配磁場コイル6を備える。一方、コンピュータ7には制御装置8が接続されている。制御装置8は、高周波発生装置9からの高周波信号を変調器10にて所望の波形信号に変調するよう制御する。この変調信号は増幅器11を介して高周波送信用コイル4に付与される。また、制御装置8は、勾配磁場発生装置12を制御し、勾配磁場コイル6に所望の傾斜磁場を発生させる。測定時において、被験者13には、核磁気共鳴を起こさせるために高周波送信用コイル4から高周波パルスが照射される。これにより、核磁気共鳴によって被験者13に誘起されるエコー信号は、高周波受信用コイル5および増幅器14を介して位相検波器15で検波される。AD変換器16は、このアナログ検波信号をディジタル信号に変換する。コンピュータ7は、記憶装置17に格納したコンピュータプログラムによる処理手順にしたがってこのディジタル信号を処理し、その処理結果を表示装置18に画像として表示する。刺激発生装置19は、被験者13に光や音などの刺激を与えるためのものである。被験者13に付与される刺激が例えば画像の場合、刺激発生装置19は、図1(b)に示すように、画像を表示するモニター21を含む。MRI装置内に横たわる被験者13はミラー20を介してモニター21の画像を見ることで刺激が与えられる。また、例えば刺激が音や音声の場合は、被験者13にそれが聞こえる位置にスピーカーが置かれる。その他の構成については通常のMRI装置と同様である。
【0012】
刺激発生装置19は、被験者に刺激を与えて脳の活動状況を検出するために、ある刺激間隔(ISI)をもつ二つの刺激を一つのペアとし、このペアを一定の周期で、かつペアのISIを変化させて、順次出力する。2つの刺激をISIが短いもの(例えば0〜数ミリ秒)から数百ミリ秒(例えば900ミリ秒)まで一定の周期でかえる。時間を横軸に、ISIを縦軸にした場合に、例えば正弦波または三角波の形でISIを変化させて刺激ペアの付与を周期的に繰り返す。そのときの応答波形をMRI装置1で検出する。その応答波形は各機能組織の処理時間と機能的な役割に依存する。例えば、同じ情報を処理する経路上の各機能組織では低次野から高次野まで、ステップごとにsuppression(抑制)が亢進するので時系列に位相の遅れが進んで行くことが期待される。また、異なる機能を処理する部野はその機能に依存して位相の遅れが生じる。これについて以下詳述する。
【0013】
図2は刺激付与の具体的なプロトコールの一例を示す図で、(a)は付与するペアの刺激の刺激間隔(ISI)の時間的変化を示す図、(b)はペアの刺激の組み合わせを示す図、(c)は刺激間隔(ISI)と刺激周期Tの関係を示す図である。図2(a)、(b)に示すように、時間0〜As間はペアでない刺激S0が一定の周期で与えられ、時間Asからの刺激ブロックA,B,Cでは常に2つの刺激S0とSiまたはS0とS0がペアとして与えられる。刺激周期Tは、ブロックA,B,Cに共通で例えば2秒とされる。被験者に与えられる刺激がモニターに表示される人の顔(写真)の場合、ブロックA,Cでは、2秒(刺激周期T)ごとにペアの一方の刺激(違う顔)(Si)が付与され、その刺激間隔(ISI)後にそのペアの他方の刺激(同じ顔)(S0)が付与される。ブロックA,Cでは、ペアの一方の刺激(違う顔)(Si)が毎回変わっていく。また、ブロックBでは、ペアの二つの刺激は同じ顔(S0)が付与される。各刺激ブロックのスタート時間は、As=41(秒),Bs=77(秒),Cs=113(秒)である。ここで、ブロックBの一方の刺激S0とブロックA,Cの一方の刺激S0は同じものである必要はなく、同類すなわち同種(同じものを含む)のものであればよい。例えば、ブロックBではS0とS0の刺激ペアとし、ブロックA,CではSiとS0’(S0’はS0と同種)の刺激ペアとすることができる。ここで、同種か否かについては、例えば、二つの刺激が違う二つの人の顔(写真)の場合、両者は共に人の顔であるから同種である。また同様に、二つの刺激が違う二つの建物(写真)の場合、両者は共に建物であるから同種である。これに該当しない場合、例えば、二つの刺激の一方が人の顔で他方が建物の場合、両者は異種である。
【0014】
ペアの二つの刺激(S0とSi、またはS0とS0)は、図2(c)に示すように、一定の周期(刺激周期T)で、かつ刺激間隔(ISI)をISI(1)、ISI(2)、ISI(3)のように変化させて、順次与えられる。本例の場合は、図2(a)に示すように、三角波の形でISIを変化させて何周期かを繰り返す。即ち、S0とSiの間隔(ISI)は当初は徐々に増加していき、刺激間隔の最大値ISImax(例えば900ms)に達すると、そこからは徐々に減少していく。各ブロックA,B,Cで同じ刺激を周期的に使うことも出来るし、他の刺激を混ぜることも出来る。S0は検索したい機能と関連する任意の刺激である。
【0015】
図3は、刺激に対するfMRI応答波形の一例を示すグラフである。図において、横軸は時間、縦軸は応答の大きさを示す。入力波形(ブロックA,B,C)との相関が0.7以上の出力波形(fMRI応答波形)が得られた。図示のように、同じ顔(S0)の刺激からなるブロックBでの応答の立ち上がりの位相は、顔の情報を処理する紡錘顔面領域(Fusiform Face Area:FFA)の方が視覚野より遅れている(α1)。これはペア刺激のもたらす2つの情報が、視覚野では同じなので、視覚野で、まず抑制のための応答低下が起き、FFAに至るまでこの抑制が亢進し、結果として、FFAでの信号応答の立ち上がり(位相)が遅れる。一方、同じ顔(S0)と違う顔(Si)の刺激からなるブロックAとCでは、視覚野での応答の立ち上がりの位相が、FFAより遅れている(α2)。これは、まず、視覚野は、空間情報として同様な情報の処理をしており、ペア刺激における抑制がおきる。顔の情報を処理するFFAでは、異なった情報処理として抑制が少ない応答、即ち、応答位相が視覚野よりすすんでいる。また、応答の立ち上がりからISIの最高値にいたる信号の大きさは、2秒毎の応答の加算として顕れる。ブロックA,CとBにおける視覚野での相対的応答の大きさをFFAと比べると視覚野よりもFFAの方が大きい。これはFFAが顔の情報を処理することに特化していることを示す。
【0016】
図4は、入力波形(ブロックA,B,C)と出力波形の相関が0.7以上の視覚野(図中の点線囲み部分)を示すMRI画像図である。図4に示す点線囲み部分はブロックA,B,Cからなる入力に対して活性化された場所で視覚野である。つまり、視覚野では顔が同じであるかどうかは区別しない。図5は、入力波形(A,C)と出力波形の相関が0.7以上のFFA(図中の点線囲み部分)を示すMRI画像図である。図5に示す点線囲み部分はブロックA,Cに対して主に活性化された場所でFFAである。つまり、このFFA域では異なる顔を見分け得て、同じ顔を見せるブロックBに対する信号応答は小さい。
【0017】
以上のように、本実施例では、ある刺激間隔を有する二つの刺激を一つのペアとし、このペアを一定の周期でかつペアの刺激間隔を変化させて順次与えることにより、fMRI応答波形の位相差及び信号応答の大きさから神経活動を検出しようとするものである。刺激は、例えば二つの画像をペアにしており、その間隔を変数として取っている。ペアの刺激は例えば2秒ごとに呈示される。脳の組織では信号を処理するのに数十ミリ秒から数百ミリ秒かかる場合が多い。二つの刺激がこのような処理時間より短い間隔で与えられた時、ペア刺激の処理が不完全になる。特に、その機能組織にとって2つの刺激が同一とみなされる時にはその処理度の回復が遅い(抑制が長びく)。そこで、連続的または段階的(以下、単に「連続的」という)にその間隔を変えながらペアの刺激を呈示するときに起きる、脳活動の位相のずれ(入力を基準にする)は、二つが同一種類または組織が二つを等価的に同一のものとして処理するときにおきる。ただし、二つの画像に対して、ある脳組織が独立なものとして処理すると位相の遅れは生じない。
【0018】
与えられた刺激に対して賦活する脳部位を検索する統計的な方法で今まで使われているのはブロックデザインやevent−relatedデザインであるが、これらは基本的には刺激がないときは0で刺激があるときは1のテストをしている。しかし、生理的な変動、機械的なノイズなどの外乱要素によって0の状態が変動するし、1の状態に対する応答でも同様である。そこで、上記のような周期的な刺激を与えていくと、その周期的な刺激パタンに相関する応答を示す部位を検索することができ、また、ISIで異なる刺激を連続的に与えることによって信号が積分されるので、信号の抽出パワーがより高くなる。また、ある一定の周期ごとにISIを連続的に変えていくので時間情報をより多く得ることが出来る。賦活される機能部野の定常的な動特性を得ることが出来る。
【0019】
また、ISIだけをパラメータにしないで、例えば、顔の認知メカニズムの解明であれば、顔の構成要素を単純なものから複雑なものへと複雑度を変えていき、これを周期的に繰り返すことによって顔の認知に関連する部野間の位相差を検出し、信号の流れやネットワークを検出することも出来る。ISIをゆっくり増加させるなど位相の遅れを調節することにより、数十ミリ秒の信号の遅れを数秒または数十秒の位相の遅れに変換することにより、計測を容易にすることができる。2つの刺激のうち一つに検出したい機能を持たせることによって、その機能に依存した信号応答を得ることが出来る。
【0020】
本実施例によれば、MRIによる脳機能計測において神経活動に係る機能検出方法(刺激提示方法)を提供することができる。本実施例に係る刺激方法は例えば次のように行われる。まず、刺激のある特定のパラメータpに対する刺激測度をV(p)とする。pを時間によって周期的に変化させていく。例えば、P(t)=k1*sin(t)に対してV(p(t))=f(k1*sin(t))となり、Vのプロファイルが周期的に繰り返される。これによって、線形システム理論の適用を可能とする。信号応答の解析方法としては、周期的な信号の入出力関係から機能部野の特性を抽出する。線形システム解析の諸手法の応用(入出力ゲイン、位相差、などの適用によって、脳の機能処理システムを伝達関数、多入出力系として記述するなど)を可能にする。また、刺激間隔の周期的な変化による各機能部野の応答特性の検出及び関連機能部野の相互作用(機能ネットワーク)の検出を行うことができる。脳の信号の処理プロセス(フロー)の検出を可能とする。外乱信号の影響を低減または除去し、周期的な刺激によって物理的及び生理的な外乱から目的とする信号を抽出することを容易にすることができる。
【0021】
ところで、脳の機能活動を定量的に評価することは病気の診断(行動的にその症状が顕れる前までも含めて)と、学習などの効果の確認において非常に重要である。また、ヒトの脳は歳とともに退化していくので、病気ではないにしてもその機能的な変化の度合いを知ることは大事である。しかし、このように脳の機能を定量化し、その変化を測定、評価することは、脳の機能活動の複雑さと計測技術などの面から見て、非常に難しいことである。脳電図(EEG)を使って誘発電位を測ることで、機能の異常を検査する方法はあるが、異常の原因の特定に限界があり、また、異常部位の同定は出来ない。機能的MRI(fMRI)は空間分解能が高く、機能の局在性など脳の機能を調べる上で有用な手段である。しかし、いままでの手法では脳機能の静的な側面(ある刺激とある部野とを関連づけること)に対しての研究が主に行われており、この種の手法では、その機能部野の動的な特性を調べることは出来なかった。つまり、機能部野は動的に働いていること、そして、ある機能を遂行するときに、常に、他の組織と相互作用をし、また、組織内の場合であっても、組織内の神経細胞は、刺激の種類に対して、細胞間の連結を変えたり応答の大きさを変えたりするので、脳の機能部野の特性を調べようとすると、刺激内容による変化と、刺激を処理するための相互作用と時間的な変化を計測しないといけない。さらに、診断など機能の変化の有り無しを判断するためには、そのような動的な特性を定量化しないといけない。
【0022】
以上のようにfMRIを使って脳の動的な活動を計測、定量的に評価し、機能の変化または異常を判別するためには、
1)脳活動に係る各機能部野の動的な特性に対する情報が計測できること、
2)ある刺激に対する処理をするときに、その部野が情報を処理する過程で、どの部分に位置しているか、どのような処理に係っているかを同定できること、さらに、
3)それを定量化できること、
4)変化の尺度を使い、変化の有り無しを判断できること、
などが要求される。
【0023】
このような要求に対しては次のように対応することができる。
A)周期的に二つの刺激間の間隔を変化させる。
B)刺激内容(例えば、顔、建物など)を周期的に、または、ある規則的配列をもって変化させる。すなわち、刺激内容の異なるあるブロックおよび別のブロックが周期的にまたは規則的配列のもとで繰り返されるようにする。例えば、顔のブロックを0、建物のブロックを1とした場合、0101・・・は周期的である。また、010、001、110、101の四つをセットとしてもつものは規則的配列である。
C)上記A)とB)からなる刺激を与えて、MRIの信号に刺激間隔と刺激内容を変数とした動的な情報を持たせる。つまり、各機能組織の特性をエンコード(encoding)して計測する。これは、得られるfMRIの信号がその二つの種類(刺激間隔と刺激内容)を変数として持つようにすることであり、今までの脳機能マッピングが静的なものであれば、これは脳機能の動的なマッピングといえる。
D)刺激内容と刺激間隔に係る部野、刺激内容に対して主に応答する部野などを同定する。これは、例えば、刺激間隔の変化だけを顕す入力と刺激内容だけを顕す入力を使って、fMRIのデータを処理することによって達成される。
【0024】
E)同定した各部野の特性を刺激入力とその部野のfMRI応答から、動的システムとしてモデリングし、その係数を推定することによって定量化する。刺激間隔による相互作用と刺激内容に対してエンコードされた情報は、その周期などを変化させることによって、外乱や雑音などに対してロバスト(robust)にすることができる。刺激内容と刺激間隔を任意に変えることによって、ある周期の応答パターン(sin波など)を得ることができるが、このような周期成分を、機械または生理的なノイズの持つ周波数成分と違うようにすればノイズの影響を受け難くなり、ノイズに強くなる。これは、振幅変調(AM)に比べ、周波数変調(FM)の方がよりロバストであることと同じである。
F)推定した係数の尺度を決めて(例えば、Euclidian norm)、その尺度で、特性の変化を評価する。これは、脳機能の診断、学習の評価、教育方法の開発および評価する装置などへ応用が可能である。
【0025】
図6は刺激付与の具体的なプロトコールの他の例を示す図で、(a)は付与するペアの刺激の刺激間隔(ISI)の時間的変化を示す図、(b)はペアの刺激の組み合わせを示す図、(c)は刺激間隔(ISI)と刺激周期Tの関係を示す図、(d)は刺激入力u1〜u3を示す図である。ここで、刺激付与は、上記図1で説明した刺激発生装置19を用いることができる。刺激発生装置19は、被験者に刺激を与えて脳の活動状況を検出するために、ある刺激間隔(ISI)をもつ二つの刺激を一つのペアとし、このペアを一定の周期で、かつペアのISIを変化させて、順次出力する。2つの刺激をISIが短いもの(0〜数ミリ秒)から数百ミリ秒(例えば900ミリ秒)まで一定の周期でかえる。時間を横軸に、ISIを縦軸にした場合に、例えば正弦波または三角波の形でISIを変化させて刺激ペアの付与を周期的に繰り返す。また、刺激の内容を交互に変える。脳の機能部野は、刺激間隔と刺激内容そして、その両方に依存して、応答の変化を表すことが予想される。例えば、喉頭葉の後方は一般的に刺激の内容によらないので、刺激間隔によって変化を表し、より先方は刺激内容によって応答が変化することが予想される。
【0026】
図6(a)、(b)に示すように、時間0〜As間はペアでない刺激S0が一定の周期で与えられ、時間Asからの刺激ブロックA,B,Cでは常に2つの刺激S0とSiがペアとして与えられる。刺激周期Tは、ブロックA,B,Cに共通で例えば2秒とされる。被験者に与えられる刺激がモニターに表示される人の顔(写真)の場合、ブロックA,Cでは、2秒(刺激周期T)ごとにペアの一方の刺激(違う顔)(Si)が付与され、その刺激間隔(ISI)後にそのペアの他方の刺激(同じ顔)(S0)が付与される。ブロックA,Cでは、ペアの一方の刺激として違う顔(Si)が毎回変わっていく。またブロックBでは例えば建物(写真)が一方の刺激(Si)として付与(モニターに表示)される。すなわち、ブロックA,Cは人の顔写真のセット(iごとに違う写真)を用い、AとCではブロック内の写真の配列が違う。また、ブロックBは建物の写真を含むものであり、2秒(刺激周期T)ごとにペアの一方の刺激(違う建物)(Si)(iごとに違う写真)が付与され、その刺激間隔(ISI)後にそのペアの他方の刺激(同じ顔)(S0)が付与される。すなわち、ブロックA,CとブロックBの各ペアの二つの刺激(Si,S0)は互いに異なり、また、ブロックA,Cの一方の刺激(Si)(人の顔)と、ブロックBの一方の刺激(Si)(建物)とは互いに異種のものとされる。各刺激ブロックのスタート時間は、As=41(秒),Bs=77(秒),Cs=113(秒)である。
【0027】
ペアの二つの刺激(S0とSi)は、図6(c)に示すように、一定の周期(刺激周期T)で、かつ刺激間隔(ISI)をISI(1)、ISI(2)、ISI(3)のように変化させて、順次与えられる。本例の場合は、図6(a)に示すように、三角波の形でISIを変化させて何周期かを繰り返す。即ち、S0とSiの間隔(ISI)は当初は徐々に増加していき、刺激間隔の最大値ISImax(例えば900ms)に達すると、そこからは徐々に減少していく。各ブロックA,B,Cで同じ刺激を周期的に使うことも出来るし、他の刺激を混ぜることも出来る。S0とSiは検索したい機能と関連する任意の刺激である。
【0028】
図7〜図9は、刺激に対するfMRI応答のマップの例を示す図である。図7中の点線囲み部分は、脳の後方にある視覚野(V1)を含む領域で、この領域は主に図6(d)で示すu1の刺激間隔(ISI)によって応答の変化を顕わす部分である。図8中の点線囲み部分は、紡錘顔面領域(FFA)といわれる部野で、この部野は図6(d)で示すu2の刺激内容(A,C)によって応答の変化を顕わす部分である。図9中の点線囲み部分は、PPA(Parahippocampal Area)といわれる部野で、この部野は図6(d)で示すu3の刺激内容(B)に対して主に応答の変化を顕わす部分である。これを次に応答波形で示す。
【0029】
図10(a)〜(c)は、それぞれ図7〜図9に対応した領域(各図中の点線囲み部分)の応答波形を示す図である。図10において、横軸は時間(秒)、縦軸は応答の大きさを示す(横軸の時間は、0秒が図6の入力波形のAs(41秒)に当たる)。図10(a)〜(c)に示す各部野の応答波形が刺激間隔と刺激内容による変化を顕しており、これにより各部野の特性が刺激間隔と刺激内容によってエンコードされていることが分かる。また、刺激マップによって、刺激処理過程の信号の流れも推測できる。信号は後方から前方へ進んで行くが、刺激内容によって、顔(AとC)に対しては脳の外側の方、建物(B)に対しては内側の方へ分かれる。
【0030】
各部野での応答特性を図10(a)〜(c)で示す出力とし、入力を図6(d)で示すu1〜u3(3入力)として、次のような3入力1出力の伝達関数G(z)としてモデリングし、係数の推定を行った。本例では、刺激入力u1はISIの変化、u2は顔(写真)、u3は建物(写真)である。
G(z)=D(z)^-1*[N1(z)+N2(z)+N3(z)]=G1(z)+G2(z)+G3(z)
D(z)=d1*z^4+d2*z^3+d3*z^2+d4*z^1+d5
D=[d1, d2, d3, d4, d5]
Ni(z)=ni1*z^3+ni2*z^2+ni3*z^1+ni4
Ni=[ni1, ni2, ni3, ni4]
ここで、Dはシステムを顕す伝達関数G(z)の分母多項式、Nは分子多項式であり、d(d1〜d5),n(ni1、ni2、ni3、ni4)はそれぞれD,Nの係数、i=1〜3である。これらの係数はシステムの特性を顕し、例えば遅れ時間、立ち上がり時間、安定性などである。
【0031】
各部野はそれぞれ違う特性をあらわしていることが分かる(DとNの係数の違いから)。特に、FFAとPPAとでは、機能部野の動的特性に係るDでの差は少なく、主に、入力u2,u3にかかわるN2、N3の係数が違っていることから、刺激内容による違いを示している。
(1)視覚野V1に対して推定された係数:
D=[1, -2.2232, 1.9998, -0.9850, 0.2290]
N1=[-5.74, 13.25, -3.80, -3.40]*10^-2
N2=[0.61, -0.26, -0.29, 0.07]*10^-2
N3=[0.20, 0.96, -1.10, 0.04]*10^-2
(2)FFAで推定された係数:
D=[1, -2.4413, 2.3603, -1.0631, 0.1723]
N1=[-4.31, 9.06, -0.36, -4.13]*10^-2
N2=[1.76, -0.70, -1.00, 0.67]*10^-2
N3=[-0.17, 0.25, -0.69, 0.76]*10^-2
(3)PPAで推定された係数:
D=[1, -2.4036, 2.3874, -1.1678. 0.2196]
N1=[-3.53, 8.45, -4.50, -0.40]*10^-2
N2=[0.67, -1.23, -0.37, 0.96]*10^-2
N3=[0.69, -0.07, -0.21, 0.22]*10^-2
【0032】
このように、各機能部野は与えられた刺激に対して異なる応答を示しており、その特性をモデルの係数として定量化することが出来る。各部野の応答の実測値と入力(u1,u2,u3)に対する上記で推定した伝達関数G(z)の出力は、図11〜図13に示すとおりである。図11は視覚野(V1)での実測値とG(z)の出力の一例を示す図、図12はFFAでの実測値とG(z)の出力の一例を示す図、図13はPPAでの実測値とG(z)の出力の一例を示す図である。図11〜図13において、横軸は時間(秒)、縦軸は応答の大きさを示す(横軸の時間は、20秒が図6の入力波形のAs(41秒)に当たる)。伝達関数G(z)の次数を最適化することによって、より厳密に実測値に一致するような推定もできるが、ここでは次数を4次にした。以上のように脳機能を定量化し、それを基準にして、それからの変化量を評価することによって、機能の変化を推測することが出来る。推測可能な機能変化は、例えば組織の中での処理に係る神経細胞の数の変化、神経細胞からなる神経回路の変化、あるいは組織間の連結の変化などがある。これらは、例えば、人の顔または建物に対する認知機能(顔や建物を見分けるなど)を失ったり(失認症、相貌失認など)、獲得したり、または、認知までの時間が遅くなったりすることに繋がる。実際は計測時のノイズなど変動量があって、組織の機能的な変化とノイズなどによる計測誤差とを区別しないといけない。そのために、誤差による変動量の上限を設けて、それをδとして機能的変動領域と誤差による変動領域を分けることが出来る。すなわち、測定によって得られるDの変動量||ΔD||がδより小さければ、それは単なる誤差で、測定を行うたびに変化する変動が原因であり、機能の変化によるものではないからである。
【0033】
機能部野の特性の変化の検出と診断の方法は例えば次のように行うことが出来る。
(4)PPAの係数の変化:PPAの応答を10秒遅延させたものを出力として使った。
D=[1, -2.0373, 1.5080, -0.3897, -0.0465]
N1=[2.86, -6.85, 4.28, 0.03]*10^-2
N2=[-0.79, 1.18, -0.08, -0.50]*10^-2
N3=[-039, 091, -028, -0.09]*^-2
【0034】
(5)PPAの係数の変化:PPAの応答の振幅を2倍にしたものを出力として使った。
D=[1, -2.4036, 2.3874, -1.1678, 0.2196]
N1=[-7.06, 16.89, -9.00, -0.81]*10^-2
N2=[1.34, -2.47, -0.74, 1.92]*10^-2
N3=[1.37, -0.13, -0.42, 0.43]*10^-2
【0035】
上記(3)の係数をノーマル状態とし、上記(4)と(5)の係数は、応答の遅延と応答の感度が原因として変化したものであるとする。また、異常検出の条件を||ΔD||>δとする。ここで、
ΔD= ||D||-||D’|| ; Dは(3)、D’は(4)または(5)の係数, ||・||はEuclidian normである。
なお、異常とは、例えば刺激に対する応答が通常と違うことを意味し、ここでは、反応が遅くなることである。
【0036】
例えば、上記(3)の場合、
||D||=[d1^2+d2^2+d3^2+d4^2]^(1/2)なので、
||D||=[1^2+(-2.4036)^2,+2.3874^2+(-1.1678)^2+0.2196^2)]^(1/2)=3.7268である。
上記(4)の場合は、
||D||=[1^2+(-2.0373)^2+(1.5080)^2+(-0.3897)^2+(-0.0465)^2]=2.7529である。
従って、(4)の場合、
ΔD=3.7268-2.7529=0.9739
である。よって、異常判別の閾値δが0.5であるとすると、これは異常有りの結果となる。このようにして異常有り無しの判断が出来る。また、Dの中のどの項が変化したか、そして、それは機能のどの側面に関連があるかをみると、d3,d4,d5の変化がノーマルから大きく変化していることが分かり、機能のどの側面に変化がおきているのかが診断できる。ここではこれらの項は応答の遅れに相当するものである。
【0037】
同様に、上記(5)の例からは、係数Nがほぼ2倍になっていることが分かり、応答の感度が上がっていることになる。学習など可塑性により、感度の変化が起きると同様な評価が出来る。ここで可塑性とは、学習により脳の組織の神経回路などが変化することを意味し、変化の仕方によっては応答が大きくなることもあるし、小さくなることもある。また、他の色々な形であらわれることもある。このように、刺激間隔の変化と刺激内容を変化させることにより、脳の各部野の特性をエンコードして、定量化し、また、その特性の変化の有無の判断と診断ができる。
【0038】
以上のように、本実施例では、ある刺激間隔を有する二つの刺激を一つのペアとし、このペアを一定の周期でかつペアの刺激間隔を変化させて順次与え、さらに前記ペアの一方の刺激内容を周期的に変化させることにより、各機能部野の特性をエンコードする。これによって、信号の流れが検出でき、また、各機能部野の特性をモデルの係数として定量化することが出来る。すなわち、刺激を与えて脳の機能部野の特性を係数として定量化するための磁気共鳴撮像法を用いた脳機能の定量化方法を得ることができ、脳の機能部野の特性に変化が起きた時に、その変化量の評価が出来る。また、この脳機能の定量化方法は、診断や学習の評価などへ応用できる。ここで示したモデルや尺度などは、目的によって色々な形態をとることが出来る。
【0039】
本実施例によれば、MRIにより脳機能を計測して、脳の機能的異常、特性の変化の有無の検出方法(刺激提示方法)を提供することができる。本実施例に係る刺激方法は例えば次のように行われる。まず、刺激間隔のパラメータをpと刺激の内容のパラメータをqとして、期待される応答をV(p、q)とする。p、qを時間によって周期的に変化させていく。例えば、p(t)=k1*sin(t)、q=h(k2*g(t))に対してV(p(t),q(t))=f(k1*sin(t),k2*g(t))(ここで、g(t)とはgate functionである)となり、Vのプロファイルが周期的に繰り返される。p、qによって各機能部野の特性をエンコードして、機能部野を同定する。また、同定した各部野での動特性をモデリングして、係数の推定を行う。推定した係数を決まった尺度で評価する。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明は磁気共鳴撮像法を用いた脳機能検出方法および装置に係り、特に脳内の組織間の信号の流れに関する情報を得ることができる磁気共鳴撮像法を用いた脳機能検出方法および装置関するものであり、産業上の利用可能性がある。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】(a)は本発明で用いられるMRI装置の一例を示すブロック図、(b)は(a)の刺激発生装置の構成例を示す図である。
【図2】刺激付与の具体的なプロトコールを示す図で、(a)は付与するペアの刺激の刺激間隔(ISI)の時間的変化を示す図、(b)はペアの刺激の組合わせを示す図、(c)は刺激間隔(ISI)と刺激周期Tの関係を示す図である。
【図3】刺激に対するfMRI応答波形の一例を示すグラフである。
【図4】入力波形と出力波形の相関が0.7以上の視覚野(図中の点線囲み部分)を示すMRI画像図である。
【図5】入力波形と出力波形の相関が0.7以上のFFA(図中の点線囲み部分)を示すMRI画像図である。
【図6】刺激付与の具体的なプロトコールの他の例を示す図で、(a)は付与するペアの刺激の刺激間隔(ISI)の時間的変化を示す図、(b)はペアの刺激の組み合わせを示す図、(c)は刺激間隔(ISI)と刺激周期Tの関係を示す図、(d)は刺激入力u1〜u3を示す図である。
【図7】刺激に対するfMRI応答のマップ(視覚野)の例を示す図である。
【図8】刺激に対するfMRI応答のマップ(FFA)の例を示す図である。
【図9】刺激に対するfMRI応答のマップ(PPA)の例を示す図である。
【図10】(a)〜(c)はそれぞれ図7〜図9に対応した領域(図中の点線囲み部分)の応答波形を示す図である。
【図11】視覚野(V1)での実測値とG(z)の出力の一例を示す図である。
【図12】FFAでの実測値とG(z)の出力の一例を示す図である。
【図13】PPAでの実測値とG(z)の出力の一例を示す図である。
【符号の説明】
【0042】
1 MRI装置
3 静磁場発生磁石
4 高周波送信用コイル
5 高周波受信用コイル
6 勾配磁場コイル
7 コンピュータ
8 制御装置
9 高周波発生装置
10 高周波信号を変調器
11、14 増幅器
12 勾配磁場発生装置
13 被験者
15 位相検波器
16 AD変換器
17 記憶装置
18 表示装置
19 刺激発生装置
20 ミラー
21 モニター
【特許請求の範囲】
【請求項1】
刺激を与えて脳の活動状況を検出するための磁気共鳴撮像法を用いた脳機能検出方法であって、ある刺激間隔を有する二つの刺激を一つのペアとし、前記ペアを一定の周期で、かつ前記ペアの刺激間隔を変化させて、順次与えるようにしたことを特徴とする磁気共鳴撮像法を用いた脳機能検出方法。
【請求項2】
前記ペアの刺激間隔が当初徐々に増加され、その後徐々に減少されることを特徴とする請求項1記載の磁気共鳴撮像法を用いた脳機能検出方法。
【請求項3】
前記ペアの刺激間隔が当初徐々に増加され、その後徐々に減少される第1および第2のブロックを有し、前記第1のブロックの前記ペアの二つの刺激が互いに同じものとされ、前記第2のブロックの前記ペアの二つの刺激が互いに異なるものとされることを特徴とする請求項1記載の磁気共鳴撮像法を用いた脳機能検出方法。
【請求項4】
前記第1のブロックの前記ペアの一方の刺激と、前記第2のブロックの前記ペアの一方の刺激とが互いに同種のものとされることを特徴とする請求項3記載の磁気共鳴撮像法を用いた脳機能検出方法。
【請求項5】
前記第2のブロックの前記ペアの他方の刺激が前記一定の周期毎に異なるものとされることを特徴とする請求項3または4記載の磁気共鳴撮像法を用いた脳機能検出方法。
【請求項6】
前記ペアの刺激間隔が当初徐々に増加され、その後徐々に減少される第1および第2のブロックを有し、前記第1のブロックの前記ペアの一方の刺激と前記第2のブロックの前記ペアの一方の刺激とが互いに異種のものとされることを特徴とする請求項1記載の磁気共鳴撮像法を用いた脳機能検出方法。
【請求項7】
前記第1のブロックおよび前記第2のブロックが周期的にまたは規則的配列のもとで繰り返されることを特徴とする請求項6記載の磁気共鳴撮像法を用いた脳機能検出方法。
【請求項8】
刺激を与えて脳の機能部野の特性を係数として定量化するための磁気共鳴撮像法を用いた脳機能の定量化方法であって、ある刺激間隔を有する二つの刺激を一つのペアとし、前記ペアを一定の周期で、かつ前記ペアの刺激間隔を変化させ、さらに前記ペアの一方の刺激内容を周期的に変化させて、順次与えるようにしたことを特徴とする磁気共鳴撮像法を用いた脳機能の定量化方法。
【請求項9】
刺激を与えて脳の活動状況を検出するための磁気共鳴撮像法を用いた脳機能検出装置であって、ある刺激間隔を有する二つの刺激を一つのペアとし、前記ペアを一定の周期で、かつ前記ペアの刺激間隔を変化させて、順次出力する刺激発生装置を含むことを特徴とする磁気共鳴撮像法を用いた脳機能検出装置。
【請求項10】
刺激を与えて脳の活動状況を検出するための磁気共鳴撮像法を用いた脳機能検出装置のための刺激発生装置であって、ある刺激間隔を有する二つの刺激を一つのペアとし、前記ペアを一定の周期で、かつ前記ペアの刺激間隔を変化させて、順次出力することを特徴とする刺激発生装置。
【請求項1】
刺激を与えて脳の活動状況を検出するための磁気共鳴撮像法を用いた脳機能検出方法であって、ある刺激間隔を有する二つの刺激を一つのペアとし、前記ペアを一定の周期で、かつ前記ペアの刺激間隔を変化させて、順次与えるようにしたことを特徴とする磁気共鳴撮像法を用いた脳機能検出方法。
【請求項2】
前記ペアの刺激間隔が当初徐々に増加され、その後徐々に減少されることを特徴とする請求項1記載の磁気共鳴撮像法を用いた脳機能検出方法。
【請求項3】
前記ペアの刺激間隔が当初徐々に増加され、その後徐々に減少される第1および第2のブロックを有し、前記第1のブロックの前記ペアの二つの刺激が互いに同じものとされ、前記第2のブロックの前記ペアの二つの刺激が互いに異なるものとされることを特徴とする請求項1記載の磁気共鳴撮像法を用いた脳機能検出方法。
【請求項4】
前記第1のブロックの前記ペアの一方の刺激と、前記第2のブロックの前記ペアの一方の刺激とが互いに同種のものとされることを特徴とする請求項3記載の磁気共鳴撮像法を用いた脳機能検出方法。
【請求項5】
前記第2のブロックの前記ペアの他方の刺激が前記一定の周期毎に異なるものとされることを特徴とする請求項3または4記載の磁気共鳴撮像法を用いた脳機能検出方法。
【請求項6】
前記ペアの刺激間隔が当初徐々に増加され、その後徐々に減少される第1および第2のブロックを有し、前記第1のブロックの前記ペアの一方の刺激と前記第2のブロックの前記ペアの一方の刺激とが互いに異種のものとされることを特徴とする請求項1記載の磁気共鳴撮像法を用いた脳機能検出方法。
【請求項7】
前記第1のブロックおよび前記第2のブロックが周期的にまたは規則的配列のもとで繰り返されることを特徴とする請求項6記載の磁気共鳴撮像法を用いた脳機能検出方法。
【請求項8】
刺激を与えて脳の機能部野の特性を係数として定量化するための磁気共鳴撮像法を用いた脳機能の定量化方法であって、ある刺激間隔を有する二つの刺激を一つのペアとし、前記ペアを一定の周期で、かつ前記ペアの刺激間隔を変化させ、さらに前記ペアの一方の刺激内容を周期的に変化させて、順次与えるようにしたことを特徴とする磁気共鳴撮像法を用いた脳機能の定量化方法。
【請求項9】
刺激を与えて脳の活動状況を検出するための磁気共鳴撮像法を用いた脳機能検出装置であって、ある刺激間隔を有する二つの刺激を一つのペアとし、前記ペアを一定の周期で、かつ前記ペアの刺激間隔を変化させて、順次出力する刺激発生装置を含むことを特徴とする磁気共鳴撮像法を用いた脳機能検出装置。
【請求項10】
刺激を与えて脳の活動状況を検出するための磁気共鳴撮像法を用いた脳機能検出装置のための刺激発生装置であって、ある刺激間隔を有する二つの刺激を一つのペアとし、前記ペアを一定の周期で、かつ前記ペアの刺激間隔を変化させて、順次出力することを特徴とする刺激発生装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2007−190352(P2007−190352A)
【公開日】平成19年8月2日(2007.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−48370(P2006−48370)
【出願日】平成18年2月24日(2006.2.24)
【出願人】(502177369)財団法人濱野生命科学研究財団 (14)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年8月2日(2007.8.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年2月24日(2006.2.24)
【出願人】(502177369)財団法人濱野生命科学研究財団 (14)
【Fターム(参考)】
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