磁気刺激コイル
【課題】磁束の浸透度が深い経頭蓋刺激法における磁気刺激装置用の磁気刺激コイルを提供する。
【解決手段】導電体コアに一端のみが切り込まれて開口したT字型スリットを形成し、スリット分岐部をバイパスするブリッジを設ける。渦電流をブリッジに集中させることにより、深い浸透度を有する磁束を発生させる。十字型スリットに構成してもよい。この場合は一対のブリッジに流れる渦電流を同一方向とすることでさらに高集中を図れる。
【解決手段】導電体コアに一端のみが切り込まれて開口したT字型スリットを形成し、スリット分岐部をバイパスするブリッジを設ける。渦電流をブリッジに集中させることにより、深い浸透度を有する磁束を発生させる。十字型スリットに構成してもよい。この場合は一対のブリッジに流れる渦電流を同一方向とすることでさらに高集中を図れる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は磁気刺激コイル、詳しくは経頭蓋刺激法にて用いられる磁気刺激コイルに関する。
【背景技術】
【0002】
経頭蓋磁気刺激法(Transcranial magnetic stimulation)は、TMSとも略され、急激な磁場の変化によって (ファラデーの電磁誘導の法則により) 弱い電流を組織内に誘起させることで、脳内のニューロンを興奮させる非侵襲的な方法である。この方法により、最小限の不快感で脳活動を引き起こすことで、脳の回路接続の機能が調べられる。
反復経頭蓋磁気刺激法はrTMS (Repetitive transcranial magnetic stimulation) とも略され、脳に長期的な変化を与える。多くの小規模な先行研究により、この方法が多くの神経症状 (例えば、頭痛、脳梗塞、パーキンソン症候群、ジストニア、耳鳴り) や精神医学的な症状 (例えば うつ病、幻聴) に有効な治療法であることが示されている。
TMS は単純に言えばファラデーの電磁誘導の法則を応用して、頭皮や頭蓋骨などの絶縁組織を通過して電流を不快感無く流す装置である。コイルはプラスチック体の中に入れられ、頭部に当てられる。巨大なコンデンサからコイルに電圧が印加されると、その巻き線に急速な電流の変化が生まれる。それによりコイルの平面に直交するように磁場が生まれる。磁場は頭皮や頭蓋骨に妨げられることなく通過し、頭蓋骨に対する接線方向にコイルの電流と逆向きの電流を脳内で誘起する。脳内に生じた誘起電流は皮質表面への電気刺激と同様に付近の神経細胞を活性化させる。脳は一様な電気伝導体ではなく、不規則な形をしているため、この電流の経路はモデル化するには複雑である。MRIに基づく定位固定制御により、TMS 刺激の目標との誤差は数 mm 程度になるとされている(Hannula et al., Human Brain Mapping 2005)。
このようなTMSに用いられる可能性を有する従来技術としては、例えば特許文献1に開示された渦電流型交流磁場発生装置が知られている。
この装置では、円柱状の導電材ブロックの外周をコイルで囲繞して電磁石を構成し、コイル通電により、このブロック内に中心軸に直交する方向の渦電流を生じさせている。円柱ブロックには中心軸位置に微小ホールが形成されるとともに、一端が微小ホールに連通し他端が外周面に開口する半径位置のスリットが設けられている。これにより、コイルによる均一分布磁束が実効的に微小ホール内に収束され、微小ホール内の磁束密度を増大させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭63−84103号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示された磁場発生装置では、これを経頭蓋刺激法に採用した場合、その頭皮から頭蓋内部への磁束の浸透度が未だ不十分であるものと予測することができた。
【0005】
そこで、発明者は、鋭意研究の結果、直径位置に延びるメインスリットとこれから分岐して半径位置に延びるサブスリットとを導電体コアに設けるとともに、サブスリットの分岐部に短絡用のブリッジを形成することで、その磁束密度を高度に集中させることができることを知見してこの発明を完成させた。
【0006】
この発明は、頭蓋への浸透度が高くTMSに好適な磁気刺激コイルを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の発明は、軸線と垂直な断面が円形、楕円形または多角形であって所定軸長の柱状体からなる導電体コアと、この導電体コアの外周面を囲繞するようこの導電体コアに巻回されて導電体コアとともに電磁石を構成するコイルとを備え、上記導電体コアを端面視して、その端面の中心を含む横断線の位置にて、その一端が導電体コアの外周面に開口し、他端がその外周面近傍位置で閉じたメインスリットを、この導電体コアの中心軸を含む平面に沿って延びて、所定幅、所定軸線方向長さ、所定横断線方向長さを有して形成し、この導電体コアを端面視して、このメインスリットの途中から分岐して直線的に延びて導電体コアの外周面近傍位置にまで達してその先端が閉じ、所定幅、所定軸方向長さ、所定深さを有するサブスリットを形成し、上記導電体コアの一端面にあって上記サブスリットの分岐部においてこのサブスリットを跨いでこのサブスリットの両岸部を橋絡するブリッジを形成した磁気刺激コイルである。
【0008】
請求項1に記載の発明によれば、コイルへのパルス電流の通電により、導電体コアのブリッジ形成側の端面に発生したその導電体コアの外周方向の渦電流を、各スリットの壁沿いに集中させ、かつサブスリットの両岸部をブリッジで短絡させることでさらにその集中を高めることができる。よって、この磁気刺激コイルをTMS法に用いた場合、その磁束の浸透度を高めることができる。
なお、励磁用のコイルに大電流を流す場合に生じる発熱は、導電体コアを例えば銅,銀で構成することにより効率的に放熱することができる。
【0009】
また、上記導電体コアを軸線方向での断面積が一定の円柱体、楕円柱体または多角形の柱体として構成することができる。このとき、柱状体であるこの導電体コアにあっては、その一端面には上記ブリッジが形成されており、このブリッジを形成した側の一端面については、その面の半分を平坦面(導電体コアが円柱体であれば半円形の平面)で、残りの半分を円錐面(または角錐面)の半分で構成することができる。すなわち、導電体コアを円柱体とした場合、上記メインスリットを境界にしてその一端面の半分であって上記サブスリットを形成した側は、円錐をその軸線を含む平面で半分に切り欠いた形状に形成するとともに、残りの半分は半円形の平面で形成する。なお、スリット全体としては、一端面から端面視してT字形状を構成することとなる。換言すると、上記導電体コアの一端面は全体として段差付き形状であって、その最も突出した部分に上記ブリッジが形成されていることとなる。
【0010】
また、上記導電体コアの一端面には、上記メインスリットの途中から分岐してその端面の中心を含む横断線の方向に延びて、その両端が閉じた上記サブスリットが形成されて、これらのメインスリットとサブスリットとは十字状に交差した形状とすることができる。
そして、メインスリットから分岐したサブスリットの一方側に第1のブリッジを、他方側に第2のブリッジを対向して形成することもできる。ブリッジの一方をU字またはコの字形状とし、残りの他方をその脚部がねじられたU字またはコの字形状とすることもできる。これらのブリッジ同士をほぼ平行に配設することができる。
【0011】
請求項2に記載の発明は、上記導電体コアにあって上記ブリッジを形成したその一端面は、上記メインスリットを境界にしてその半分が円錐を半分に切り欠いた形状に形成されるとともに、この半円錐部分に上記サブスリットが形成されており、その一端面で残りの半分は半円形の平面で形成されており、上記導電体コアの一端面は全体として段差付き形状で、その最も突出した部分に上記ブリッジが形成された請求項1に記載の磁気刺激コイルである。
【0012】
この場合、柱状体である導電体コアの一端面で最も突出した位置にブリッジを形成し、かつ当該部位でのメインスリットの対岸部を低く抑えて段差を付けているため、渦電流の集中をより一層高めることができる。
【0013】
請求項3に記載の発明は、上記導電体コアの一端面に形成された上記サブスリットは、上記メインスリットの途中から分岐してその一端面の中心を含む横断線の方向に延びて、その両端が閉じることにより、これらのメインスリットとサブスリットとはこの一端面にて十字状に交差し、このサブスリットにてこのメインスリットより一方側でこのメインスリットとの分岐部に第1のブリッジが、このサブスリットのメインスリットより他方側でこのメインスリットとの分岐部に第1のブリッジに対向する第2のブリッジが形成され、これらの第1のブリッジおよび第2のブリッジのいずれか一方は上記導電体コアを側面視してU字またはコの字形状で上記サブスリットを跨ぐとともに、残りの他方は上記導電体コアを側面視してループ形状でこのサブスリットを跨ぎこのループの一端が上記サブスリットの一方側の岸部に、その他端が上記サブスリットの他方側の岸部にそれぞれ連結し、これらの第1のブリッジおよび第2のブリッジの上記導電体コアの上記一端面から最も突出した部分同士が平行に設けられた請求項1に記載の磁気刺激コイルである。
【0014】
この発明によれば、導電体コアにメインスリットおよびサブスリットを形成することにより、この導電体コアの端面にこれらのメインスリットおよびサブスリットが十文字形状に現れることとなる。そして、この端面にあってメインスリットとサブスリットとの2つの分岐部分にそれぞれブリッジを形成し対向させている。さらに、これらのブリッジについて渦電流の相殺を防ぐことができる構造としてある。よって、端面から突出したこれらのブリッジによりその磁束密度の集中化をより一層達成することができる。
【発明の効果】
【0015】
請求項1〜3に記載の発明によれば、ブリッジ部分に渦電流を集中させることができ、経頭蓋刺激に使用した場合、その頭蓋を経てより深くまで集中した磁束を浸透させることができる。
【0016】
また、この発明に係る磁気刺激コイルは、従来より知られている例えば8の字型に構成された磁気刺激コイルに比べて、数倍の深さ位置までの経頭蓋を刺激することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】この発明の実施例1に係る磁気刺激コイルの斜視図である。
【図2】この発明の実施例1に係る磁気刺激コイルの平面図である。
【図3】この発明の実施例1に係る磁気刺激コイルの正面図である。
【図4】この発明の実施例1に係る磁気刺激コイルの側面図である。
【図5】この発明の実施例1に係る磁気刺激コイルの主要部の拡大斜視図である。
【図6】この発明の実施例1に係る磁気刺激コイルの導電体コアを示す斜視図である。
【図7】この発明の実施例2に係る磁気刺激コイルの斜視図である。
【図8】この発明の実施例2に係る磁気刺激コイルの平面図である。
【図9】この発明の実施例2に係る磁気刺激コイルの正面図である。
【図10】この発明の実施例2に係る磁気刺激コイルの側面図である。
【図11】この発明の実施例2に係る磁気刺激コイルの導電体コアを示す斜視図である。
【図12】この発明の実施例2に係る磁気刺激コイルの導電体コアの主要部を拡大して示す斜視図である。
【図13】この発明の実施例1に係る磁気刺激コイルを用いて経頭蓋刺激を行った際の経頭蓋深さ位置と脳内電流密度との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、この発明の実施例を図面を参照して具体的に説明する。
【実施例1】
【0019】
図1〜図6において、磁気刺激コイル100は、所定長さの円柱体で形成された導電体コア110と、この導電体コア110に螺旋状に巻回されたコイル120とを有している。これらの導電体コア110とこれに囲繞されたコイル120とにより電磁石を構成する。
導電体コア110は銅製(鉄、ニッケルなどでも良い)でその軸線方向に同一面積・形状の円断面で構成される円柱体(例えば直径70mm、高さ40mmとする。なお、楕円柱体・角柱体でもよい)であって、この導電体コア110にはこれを縦方向(軸線方向)にほぼ半割りとするメインスリット130が形成されている。すなわち、導電体コア110は、メインスリット130によって断面半円形の2つの半円柱部分(ハーフブロック)に等分割されることとなる。これらの2つのハーフブロックのうち一方のハーフブロックは、さらにサブスリット140により2等分に分割されている(図2参照)。
さらに、この導電体コア110の一方のハーフブロックの上端面(図1参照)は円錐をその中心軸を含む平面で2等分して残った片方の形状、すなわち円柱体の上端部が半円錐形状に突出して形成されている。残りの他方のハーフブロックは円柱体をその中心軸を含む平面で2等分した半割形状であり、その一端面(上端面)は平坦面で構成されている。したがって、導電体コア110の上端面は半分が半円錐形状とされて、段差付きで突出した形状に形成されている。170は三角形状の段差面を示す。
【0020】
詳しくは、上記メインスリット130は、上記導電体コア110を端面視(平面視)した場合、図2に示すように、その上端面の円中心を含む横断線(直径)の位置にて、その一端130Bが導電体コア110の外周面に開口し、その他端130Aがその外周面近傍位置(1mm程度の厚さの壁を残して)で閉じている。このように円柱体(導電体コア110)の直径とほぼ同じ長さのメインスリット130は、この導電体コア110の中心軸を含む平面(上記170で示される面を含む面)に沿って延びており、その幅(例えば1mm幅)は一定である。なお、160は上記ハーフブロックの上端面(半円形の平坦面)を示し、これに対して上記垂直な段差面170は頂点を底辺と平行にカットした略2等辺三角形を呈している。この面170はメインスリット130の一方側の内壁面と同一面で構成されている。
さらに、この導電体コア110を端面(平面)視した場合、メインスリット130の中間長さ位置から直角に分岐して所定幅(1mm幅)のサブスリット140が半径方向に直線的に延びて形成されている。メインスリット130とサブスリット140とによりT字型のスリット構造が形成されている。このサブスリット140は導電体コア110の外周面の近傍にその一端が達するがその一端は導電体コア110の一部(底壁)によって閉じられており、その分岐端はメインスリット130の中間(導電体コア110の断面中心)位置に連通している。
【0021】
ここで、図5に拡大して示すように、上記導電体コア110の一端面(上端面)にあっては、上記サブスリット140のメインスリット130との分岐部において、このサブスリット140を跨いでこのサブスリット140の両岸部(導電体コアでサブスリットで分離された部分)を橋絡するブリッジ150が形成されている。このブリッジ150は所定幅、所定長さ(溝幅と同じ)、所定高さであって、導電体コア110と同一材質で構成されている。なお、これらのスリット、ブリッジの加工は例えばワイヤカット放電加工などによる。
【0022】
以上のように構成された磁気刺激コイル100にあっては、図外の手段によりコイル120に対してパルス通電されると、コイル120により生じた磁束によって導電体コア110にその円周方向への渦電流が発生する。この場合、導電体コア110はスリット130,140によってその分離された部分同士は離間・絶縁されているため、渦電流の回路の一部は各スリットの延びる方向に沿って形成されることとなる。そして、この場合、ブリッジ150無しのときにはサブスリット140に沿って迂回する電流が、分岐部のブリッジ150を介して(サブスリット140をバイパスして)流れることとなる。すなわち、このブリッジ150部分の電流密度が増大される。この結果、この磁気刺激コイル100を磁気刺激装置に適用したとき、突出したブリッジ部分150での渦電流の電流密度が大となり、頭蓋を介しての磁束の浸透度が飛躍的に高まることとなる。
また、ブリッジ150形成部分は半円錐形状にて所定高さだけ突出しているため、これより低い位置で残り半分のコア上端面160を流れる渦電流の影響を低減することができる。すなわち、ブリッジ部分150を流れる渦電流に影響を与えることがない。
【実施例2】
【0023】
図8〜図12は、この発明の実施例2に係る磁気刺激コイル200を示す。
この実施例では、実施例1の場合とは異なり、サブスリット(240A,240B)を直径と略同じ長さに形成した例である。すなわち、メインスリット230に対してサブスリット240A,240Bは平面視(端面視)して直交して延びており、スリット全体として十文字形状を呈している(図8参照)。
そして、これらのスリット230,240同士が交差する部分、すなわち円柱体である導電体コア210の円形の上端面の中心部位置には、一対の突起であるブリッジ250,260が所定高さに突出して形成されている。
詳しくは、コイル220がその外周面に巻回された円柱体である導電体コア210は、この円柱体の中心軸線を含み、直交する2平面でほぼ4分割された構成とされている。すなわち、円柱体の軸長さ方向に延びるメインスリット230と、この中間位置でメインスリット230に直交する平面によって画成されるサブスリット240A,240Bとが、導電体コア210を4分割(縦方向に4つ割形状)としている。この場合、メインスリットの一端は導電体コア210の外周面に開口しており、その他端は外周面近傍位置まで延びて閉止(閉塞)されている。メインスリット230から分岐したサブスリット240A,240Bの両端はコア外周面近傍位置でそれぞれ閉止(閉塞)されている。なお、これらのスリット230,240A,240Bの溝幅は同一幅(例えば1mm)である。
ここで、これらのサブスリット240A,240Bにあってメインスリット230より一方側のサブスリット240Aのメインスリット230との分岐部には、第1のブリッジ250が設けられている。また、メインスリット230より他方側のサブスリット240Bでこのメインスリット230との分岐部には、第1のブリッジ250に対向するように第2のブリッジ260が形成されている。この第1のブリッジ250は上記導電体コア210を側面視した場合にコの字形状に突出してこのサブスリット240Aを跨ぐように設けられている。
図12にて251は第1のブリッジ水平部であり、一対の脚252,253により分割されたコア(両岸部)同士を連結している。また、他方のサブスリット240Bは上記導電体コア210を側面視したときにループ形状(例えばねじれた輪形状)に形成され、その水平部261(第2のブリッジ水平部)は上記第1のブリッジ水平部251と平行に、同じ長さで同じ高さに設けられている。さらに、第2のブリッジ水平部261の両脚262,263は垂直線回りにねじられた形状とされるとともに、このサブスリット240Bを跨いでいる。すなわち、このループの一端である脚262は、上記サブスリット240Bの一方側の岸部271(4分割コアの一つ)に立設されるとともに、ループの他端を構成する脚263は、垂直線回りにねじられて上記サブスリット240Bの他方側の岸部272に立設されている。
これは同じ高さに突出したブリッジの平行な第1のブリッジ水平部251と第2のブリッジ水平部261とを流れる渦電流同士が流れ方向が互いに逆となることで打ち消し合うことを防止するものである。換言すると、第1のブリッジ水平部251、第2のブリッジ水平部261ではその電流の流れ方向を同一方向(平行部分にて同じ方向)とすることで、その電流密度を2倍としてこれにより磁束の集中を高めるものである。
その他の構成は上記実施例と同様である。
【0024】
ここで、この発明の実施例1に係る磁気刺激コイル200(ECコイル)と、従来公知の8の字型コイルとを用いて磁気刺激を行った際、それぞれのコイル中心部の頭部深さと脳内電流密度との関係を求めた。このコイル中心の頭部深さと脳内電流密度との関係は数値解析によって求めた。この数値解析の結果を図13に示す。なお、8の字型コイルの外径と磁気刺激コイル200の外径とは一致させている。
この結果より、この発明に係る磁気刺激コイル(ECコイル)は、従来の8の字型の磁気刺激コイルに比べて、数倍の深さの部位まで経頭蓋を刺激することができることが判明した。
【産業上の利用可能性】
【0025】
この発明は、例えばTMS法に用いられる磁気刺激装置に有用である。
【符号の説明】
【0026】
100 磁気刺激コイル、
110 導電体コア、
120 コイル、
130 メインスリット、
140 サブスリット、
150 ブリッジ。
【技術分野】
【0001】
この発明は磁気刺激コイル、詳しくは経頭蓋刺激法にて用いられる磁気刺激コイルに関する。
【背景技術】
【0002】
経頭蓋磁気刺激法(Transcranial magnetic stimulation)は、TMSとも略され、急激な磁場の変化によって (ファラデーの電磁誘導の法則により) 弱い電流を組織内に誘起させることで、脳内のニューロンを興奮させる非侵襲的な方法である。この方法により、最小限の不快感で脳活動を引き起こすことで、脳の回路接続の機能が調べられる。
反復経頭蓋磁気刺激法はrTMS (Repetitive transcranial magnetic stimulation) とも略され、脳に長期的な変化を与える。多くの小規模な先行研究により、この方法が多くの神経症状 (例えば、頭痛、脳梗塞、パーキンソン症候群、ジストニア、耳鳴り) や精神医学的な症状 (例えば うつ病、幻聴) に有効な治療法であることが示されている。
TMS は単純に言えばファラデーの電磁誘導の法則を応用して、頭皮や頭蓋骨などの絶縁組織を通過して電流を不快感無く流す装置である。コイルはプラスチック体の中に入れられ、頭部に当てられる。巨大なコンデンサからコイルに電圧が印加されると、その巻き線に急速な電流の変化が生まれる。それによりコイルの平面に直交するように磁場が生まれる。磁場は頭皮や頭蓋骨に妨げられることなく通過し、頭蓋骨に対する接線方向にコイルの電流と逆向きの電流を脳内で誘起する。脳内に生じた誘起電流は皮質表面への電気刺激と同様に付近の神経細胞を活性化させる。脳は一様な電気伝導体ではなく、不規則な形をしているため、この電流の経路はモデル化するには複雑である。MRIに基づく定位固定制御により、TMS 刺激の目標との誤差は数 mm 程度になるとされている(Hannula et al., Human Brain Mapping 2005)。
このようなTMSに用いられる可能性を有する従来技術としては、例えば特許文献1に開示された渦電流型交流磁場発生装置が知られている。
この装置では、円柱状の導電材ブロックの外周をコイルで囲繞して電磁石を構成し、コイル通電により、このブロック内に中心軸に直交する方向の渦電流を生じさせている。円柱ブロックには中心軸位置に微小ホールが形成されるとともに、一端が微小ホールに連通し他端が外周面に開口する半径位置のスリットが設けられている。これにより、コイルによる均一分布磁束が実効的に微小ホール内に収束され、微小ホール内の磁束密度を増大させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭63−84103号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示された磁場発生装置では、これを経頭蓋刺激法に採用した場合、その頭皮から頭蓋内部への磁束の浸透度が未だ不十分であるものと予測することができた。
【0005】
そこで、発明者は、鋭意研究の結果、直径位置に延びるメインスリットとこれから分岐して半径位置に延びるサブスリットとを導電体コアに設けるとともに、サブスリットの分岐部に短絡用のブリッジを形成することで、その磁束密度を高度に集中させることができることを知見してこの発明を完成させた。
【0006】
この発明は、頭蓋への浸透度が高くTMSに好適な磁気刺激コイルを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の発明は、軸線と垂直な断面が円形、楕円形または多角形であって所定軸長の柱状体からなる導電体コアと、この導電体コアの外周面を囲繞するようこの導電体コアに巻回されて導電体コアとともに電磁石を構成するコイルとを備え、上記導電体コアを端面視して、その端面の中心を含む横断線の位置にて、その一端が導電体コアの外周面に開口し、他端がその外周面近傍位置で閉じたメインスリットを、この導電体コアの中心軸を含む平面に沿って延びて、所定幅、所定軸線方向長さ、所定横断線方向長さを有して形成し、この導電体コアを端面視して、このメインスリットの途中から分岐して直線的に延びて導電体コアの外周面近傍位置にまで達してその先端が閉じ、所定幅、所定軸方向長さ、所定深さを有するサブスリットを形成し、上記導電体コアの一端面にあって上記サブスリットの分岐部においてこのサブスリットを跨いでこのサブスリットの両岸部を橋絡するブリッジを形成した磁気刺激コイルである。
【0008】
請求項1に記載の発明によれば、コイルへのパルス電流の通電により、導電体コアのブリッジ形成側の端面に発生したその導電体コアの外周方向の渦電流を、各スリットの壁沿いに集中させ、かつサブスリットの両岸部をブリッジで短絡させることでさらにその集中を高めることができる。よって、この磁気刺激コイルをTMS法に用いた場合、その磁束の浸透度を高めることができる。
なお、励磁用のコイルに大電流を流す場合に生じる発熱は、導電体コアを例えば銅,銀で構成することにより効率的に放熱することができる。
【0009】
また、上記導電体コアを軸線方向での断面積が一定の円柱体、楕円柱体または多角形の柱体として構成することができる。このとき、柱状体であるこの導電体コアにあっては、その一端面には上記ブリッジが形成されており、このブリッジを形成した側の一端面については、その面の半分を平坦面(導電体コアが円柱体であれば半円形の平面)で、残りの半分を円錐面(または角錐面)の半分で構成することができる。すなわち、導電体コアを円柱体とした場合、上記メインスリットを境界にしてその一端面の半分であって上記サブスリットを形成した側は、円錐をその軸線を含む平面で半分に切り欠いた形状に形成するとともに、残りの半分は半円形の平面で形成する。なお、スリット全体としては、一端面から端面視してT字形状を構成することとなる。換言すると、上記導電体コアの一端面は全体として段差付き形状であって、その最も突出した部分に上記ブリッジが形成されていることとなる。
【0010】
また、上記導電体コアの一端面には、上記メインスリットの途中から分岐してその端面の中心を含む横断線の方向に延びて、その両端が閉じた上記サブスリットが形成されて、これらのメインスリットとサブスリットとは十字状に交差した形状とすることができる。
そして、メインスリットから分岐したサブスリットの一方側に第1のブリッジを、他方側に第2のブリッジを対向して形成することもできる。ブリッジの一方をU字またはコの字形状とし、残りの他方をその脚部がねじられたU字またはコの字形状とすることもできる。これらのブリッジ同士をほぼ平行に配設することができる。
【0011】
請求項2に記載の発明は、上記導電体コアにあって上記ブリッジを形成したその一端面は、上記メインスリットを境界にしてその半分が円錐を半分に切り欠いた形状に形成されるとともに、この半円錐部分に上記サブスリットが形成されており、その一端面で残りの半分は半円形の平面で形成されており、上記導電体コアの一端面は全体として段差付き形状で、その最も突出した部分に上記ブリッジが形成された請求項1に記載の磁気刺激コイルである。
【0012】
この場合、柱状体である導電体コアの一端面で最も突出した位置にブリッジを形成し、かつ当該部位でのメインスリットの対岸部を低く抑えて段差を付けているため、渦電流の集中をより一層高めることができる。
【0013】
請求項3に記載の発明は、上記導電体コアの一端面に形成された上記サブスリットは、上記メインスリットの途中から分岐してその一端面の中心を含む横断線の方向に延びて、その両端が閉じることにより、これらのメインスリットとサブスリットとはこの一端面にて十字状に交差し、このサブスリットにてこのメインスリットより一方側でこのメインスリットとの分岐部に第1のブリッジが、このサブスリットのメインスリットより他方側でこのメインスリットとの分岐部に第1のブリッジに対向する第2のブリッジが形成され、これらの第1のブリッジおよび第2のブリッジのいずれか一方は上記導電体コアを側面視してU字またはコの字形状で上記サブスリットを跨ぐとともに、残りの他方は上記導電体コアを側面視してループ形状でこのサブスリットを跨ぎこのループの一端が上記サブスリットの一方側の岸部に、その他端が上記サブスリットの他方側の岸部にそれぞれ連結し、これらの第1のブリッジおよび第2のブリッジの上記導電体コアの上記一端面から最も突出した部分同士が平行に設けられた請求項1に記載の磁気刺激コイルである。
【0014】
この発明によれば、導電体コアにメインスリットおよびサブスリットを形成することにより、この導電体コアの端面にこれらのメインスリットおよびサブスリットが十文字形状に現れることとなる。そして、この端面にあってメインスリットとサブスリットとの2つの分岐部分にそれぞれブリッジを形成し対向させている。さらに、これらのブリッジについて渦電流の相殺を防ぐことができる構造としてある。よって、端面から突出したこれらのブリッジによりその磁束密度の集中化をより一層達成することができる。
【発明の効果】
【0015】
請求項1〜3に記載の発明によれば、ブリッジ部分に渦電流を集中させることができ、経頭蓋刺激に使用した場合、その頭蓋を経てより深くまで集中した磁束を浸透させることができる。
【0016】
また、この発明に係る磁気刺激コイルは、従来より知られている例えば8の字型に構成された磁気刺激コイルに比べて、数倍の深さ位置までの経頭蓋を刺激することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】この発明の実施例1に係る磁気刺激コイルの斜視図である。
【図2】この発明の実施例1に係る磁気刺激コイルの平面図である。
【図3】この発明の実施例1に係る磁気刺激コイルの正面図である。
【図4】この発明の実施例1に係る磁気刺激コイルの側面図である。
【図5】この発明の実施例1に係る磁気刺激コイルの主要部の拡大斜視図である。
【図6】この発明の実施例1に係る磁気刺激コイルの導電体コアを示す斜視図である。
【図7】この発明の実施例2に係る磁気刺激コイルの斜視図である。
【図8】この発明の実施例2に係る磁気刺激コイルの平面図である。
【図9】この発明の実施例2に係る磁気刺激コイルの正面図である。
【図10】この発明の実施例2に係る磁気刺激コイルの側面図である。
【図11】この発明の実施例2に係る磁気刺激コイルの導電体コアを示す斜視図である。
【図12】この発明の実施例2に係る磁気刺激コイルの導電体コアの主要部を拡大して示す斜視図である。
【図13】この発明の実施例1に係る磁気刺激コイルを用いて経頭蓋刺激を行った際の経頭蓋深さ位置と脳内電流密度との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、この発明の実施例を図面を参照して具体的に説明する。
【実施例1】
【0019】
図1〜図6において、磁気刺激コイル100は、所定長さの円柱体で形成された導電体コア110と、この導電体コア110に螺旋状に巻回されたコイル120とを有している。これらの導電体コア110とこれに囲繞されたコイル120とにより電磁石を構成する。
導電体コア110は銅製(鉄、ニッケルなどでも良い)でその軸線方向に同一面積・形状の円断面で構成される円柱体(例えば直径70mm、高さ40mmとする。なお、楕円柱体・角柱体でもよい)であって、この導電体コア110にはこれを縦方向(軸線方向)にほぼ半割りとするメインスリット130が形成されている。すなわち、導電体コア110は、メインスリット130によって断面半円形の2つの半円柱部分(ハーフブロック)に等分割されることとなる。これらの2つのハーフブロックのうち一方のハーフブロックは、さらにサブスリット140により2等分に分割されている(図2参照)。
さらに、この導電体コア110の一方のハーフブロックの上端面(図1参照)は円錐をその中心軸を含む平面で2等分して残った片方の形状、すなわち円柱体の上端部が半円錐形状に突出して形成されている。残りの他方のハーフブロックは円柱体をその中心軸を含む平面で2等分した半割形状であり、その一端面(上端面)は平坦面で構成されている。したがって、導電体コア110の上端面は半分が半円錐形状とされて、段差付きで突出した形状に形成されている。170は三角形状の段差面を示す。
【0020】
詳しくは、上記メインスリット130は、上記導電体コア110を端面視(平面視)した場合、図2に示すように、その上端面の円中心を含む横断線(直径)の位置にて、その一端130Bが導電体コア110の外周面に開口し、その他端130Aがその外周面近傍位置(1mm程度の厚さの壁を残して)で閉じている。このように円柱体(導電体コア110)の直径とほぼ同じ長さのメインスリット130は、この導電体コア110の中心軸を含む平面(上記170で示される面を含む面)に沿って延びており、その幅(例えば1mm幅)は一定である。なお、160は上記ハーフブロックの上端面(半円形の平坦面)を示し、これに対して上記垂直な段差面170は頂点を底辺と平行にカットした略2等辺三角形を呈している。この面170はメインスリット130の一方側の内壁面と同一面で構成されている。
さらに、この導電体コア110を端面(平面)視した場合、メインスリット130の中間長さ位置から直角に分岐して所定幅(1mm幅)のサブスリット140が半径方向に直線的に延びて形成されている。メインスリット130とサブスリット140とによりT字型のスリット構造が形成されている。このサブスリット140は導電体コア110の外周面の近傍にその一端が達するがその一端は導電体コア110の一部(底壁)によって閉じられており、その分岐端はメインスリット130の中間(導電体コア110の断面中心)位置に連通している。
【0021】
ここで、図5に拡大して示すように、上記導電体コア110の一端面(上端面)にあっては、上記サブスリット140のメインスリット130との分岐部において、このサブスリット140を跨いでこのサブスリット140の両岸部(導電体コアでサブスリットで分離された部分)を橋絡するブリッジ150が形成されている。このブリッジ150は所定幅、所定長さ(溝幅と同じ)、所定高さであって、導電体コア110と同一材質で構成されている。なお、これらのスリット、ブリッジの加工は例えばワイヤカット放電加工などによる。
【0022】
以上のように構成された磁気刺激コイル100にあっては、図外の手段によりコイル120に対してパルス通電されると、コイル120により生じた磁束によって導電体コア110にその円周方向への渦電流が発生する。この場合、導電体コア110はスリット130,140によってその分離された部分同士は離間・絶縁されているため、渦電流の回路の一部は各スリットの延びる方向に沿って形成されることとなる。そして、この場合、ブリッジ150無しのときにはサブスリット140に沿って迂回する電流が、分岐部のブリッジ150を介して(サブスリット140をバイパスして)流れることとなる。すなわち、このブリッジ150部分の電流密度が増大される。この結果、この磁気刺激コイル100を磁気刺激装置に適用したとき、突出したブリッジ部分150での渦電流の電流密度が大となり、頭蓋を介しての磁束の浸透度が飛躍的に高まることとなる。
また、ブリッジ150形成部分は半円錐形状にて所定高さだけ突出しているため、これより低い位置で残り半分のコア上端面160を流れる渦電流の影響を低減することができる。すなわち、ブリッジ部分150を流れる渦電流に影響を与えることがない。
【実施例2】
【0023】
図8〜図12は、この発明の実施例2に係る磁気刺激コイル200を示す。
この実施例では、実施例1の場合とは異なり、サブスリット(240A,240B)を直径と略同じ長さに形成した例である。すなわち、メインスリット230に対してサブスリット240A,240Bは平面視(端面視)して直交して延びており、スリット全体として十文字形状を呈している(図8参照)。
そして、これらのスリット230,240同士が交差する部分、すなわち円柱体である導電体コア210の円形の上端面の中心部位置には、一対の突起であるブリッジ250,260が所定高さに突出して形成されている。
詳しくは、コイル220がその外周面に巻回された円柱体である導電体コア210は、この円柱体の中心軸線を含み、直交する2平面でほぼ4分割された構成とされている。すなわち、円柱体の軸長さ方向に延びるメインスリット230と、この中間位置でメインスリット230に直交する平面によって画成されるサブスリット240A,240Bとが、導電体コア210を4分割(縦方向に4つ割形状)としている。この場合、メインスリットの一端は導電体コア210の外周面に開口しており、その他端は外周面近傍位置まで延びて閉止(閉塞)されている。メインスリット230から分岐したサブスリット240A,240Bの両端はコア外周面近傍位置でそれぞれ閉止(閉塞)されている。なお、これらのスリット230,240A,240Bの溝幅は同一幅(例えば1mm)である。
ここで、これらのサブスリット240A,240Bにあってメインスリット230より一方側のサブスリット240Aのメインスリット230との分岐部には、第1のブリッジ250が設けられている。また、メインスリット230より他方側のサブスリット240Bでこのメインスリット230との分岐部には、第1のブリッジ250に対向するように第2のブリッジ260が形成されている。この第1のブリッジ250は上記導電体コア210を側面視した場合にコの字形状に突出してこのサブスリット240Aを跨ぐように設けられている。
図12にて251は第1のブリッジ水平部であり、一対の脚252,253により分割されたコア(両岸部)同士を連結している。また、他方のサブスリット240Bは上記導電体コア210を側面視したときにループ形状(例えばねじれた輪形状)に形成され、その水平部261(第2のブリッジ水平部)は上記第1のブリッジ水平部251と平行に、同じ長さで同じ高さに設けられている。さらに、第2のブリッジ水平部261の両脚262,263は垂直線回りにねじられた形状とされるとともに、このサブスリット240Bを跨いでいる。すなわち、このループの一端である脚262は、上記サブスリット240Bの一方側の岸部271(4分割コアの一つ)に立設されるとともに、ループの他端を構成する脚263は、垂直線回りにねじられて上記サブスリット240Bの他方側の岸部272に立設されている。
これは同じ高さに突出したブリッジの平行な第1のブリッジ水平部251と第2のブリッジ水平部261とを流れる渦電流同士が流れ方向が互いに逆となることで打ち消し合うことを防止するものである。換言すると、第1のブリッジ水平部251、第2のブリッジ水平部261ではその電流の流れ方向を同一方向(平行部分にて同じ方向)とすることで、その電流密度を2倍としてこれにより磁束の集中を高めるものである。
その他の構成は上記実施例と同様である。
【0024】
ここで、この発明の実施例1に係る磁気刺激コイル200(ECコイル)と、従来公知の8の字型コイルとを用いて磁気刺激を行った際、それぞれのコイル中心部の頭部深さと脳内電流密度との関係を求めた。このコイル中心の頭部深さと脳内電流密度との関係は数値解析によって求めた。この数値解析の結果を図13に示す。なお、8の字型コイルの外径と磁気刺激コイル200の外径とは一致させている。
この結果より、この発明に係る磁気刺激コイル(ECコイル)は、従来の8の字型の磁気刺激コイルに比べて、数倍の深さの部位まで経頭蓋を刺激することができることが判明した。
【産業上の利用可能性】
【0025】
この発明は、例えばTMS法に用いられる磁気刺激装置に有用である。
【符号の説明】
【0026】
100 磁気刺激コイル、
110 導電体コア、
120 コイル、
130 メインスリット、
140 サブスリット、
150 ブリッジ。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸線と垂直な断面が円形、楕円形または多角形であって所定軸長の柱状体からなる導電体コアと、
この導電体コアの外周面を囲繞するようこの導電体コアに巻回されて導電体コアとともに電磁石を構成するコイルとを備え、
上記導電体コアを端面視して、その端面の中心を含む横断線の位置にて、その一端が導電体コアの外周面に開口し、他端がその外周面近傍位置で閉じたメインスリットを、この導電体コアの中心軸を含む平面に沿って延びて、所定幅、所定軸線方向長さ、所定横断線方向長さを有して形成し、
この導電体コアを端面視して、このメインスリットの途中から分岐して直線的に延びて導電体コアの外周面近傍位置にまで達してその先端が閉じ、所定幅、所定軸方向長さ、所定深さを有するサブスリットを形成し、
上記導電体コアの一端面にあって上記サブスリットの分岐部においてこのサブスリットを跨いでこのサブスリットの両岸部を橋絡するブリッジを形成した磁気刺激コイル。
【請求項2】
上記導電体コアにあって上記ブリッジを形成したその一端面は、上記メインスリットを境界にしてその半分が円錐を半分に切り欠いた形状に形成されるとともに、この半円錐部分に上記サブスリットが形成されており、その一端面で残りの半分は半円形の平面で形成されており、
上記導電体コアの一端面は全体として段差付き形状で、その最も突出した部分に上記ブリッジが形成された請求項1に記載の磁気刺激コイル。
【請求項3】
上記導電体コアの一端面に形成された上記サブスリットは、上記メインスリットの途中から分岐してその一端面の中心を含む横断線の方向に延びて、その両端が閉じることにより、これらのメインスリットとサブスリットとはこの一端面にて十字状に交差し、
このサブスリットにてこのメインスリットより一方側でこのメインスリットとの分岐部に第1のブリッジが、このサブスリットのメインスリットより他方側でこのメインスリットとの分岐部に第1のブリッジに対向する第2のブリッジが形成され、これらの第1のブリッジおよび第2のブリッジのいずれか一方は上記導電体コアを側面視してU字またはコの字形状で上記サブスリットを跨ぐとともに、残りの他方は上記導電体コアを側面視してループ形状でこのサブスリットを跨ぎこのループの一端が上記サブスリットの一方側の岸部に、その他端が上記サブスリットの他方側の岸部にそれぞれ連結し、これらの第1のブリッジおよび第2のブリッジの上記導電体コアの上記一端面から最も突出した部分同士が平行に設けられた請求項1に記載の磁気刺激コイル。
【請求項1】
軸線と垂直な断面が円形、楕円形または多角形であって所定軸長の柱状体からなる導電体コアと、
この導電体コアの外周面を囲繞するようこの導電体コアに巻回されて導電体コアとともに電磁石を構成するコイルとを備え、
上記導電体コアを端面視して、その端面の中心を含む横断線の位置にて、その一端が導電体コアの外周面に開口し、他端がその外周面近傍位置で閉じたメインスリットを、この導電体コアの中心軸を含む平面に沿って延びて、所定幅、所定軸線方向長さ、所定横断線方向長さを有して形成し、
この導電体コアを端面視して、このメインスリットの途中から分岐して直線的に延びて導電体コアの外周面近傍位置にまで達してその先端が閉じ、所定幅、所定軸方向長さ、所定深さを有するサブスリットを形成し、
上記導電体コアの一端面にあって上記サブスリットの分岐部においてこのサブスリットを跨いでこのサブスリットの両岸部を橋絡するブリッジを形成した磁気刺激コイル。
【請求項2】
上記導電体コアにあって上記ブリッジを形成したその一端面は、上記メインスリットを境界にしてその半分が円錐を半分に切り欠いた形状に形成されるとともに、この半円錐部分に上記サブスリットが形成されており、その一端面で残りの半分は半円形の平面で形成されており、
上記導電体コアの一端面は全体として段差付き形状で、その最も突出した部分に上記ブリッジが形成された請求項1に記載の磁気刺激コイル。
【請求項3】
上記導電体コアの一端面に形成された上記サブスリットは、上記メインスリットの途中から分岐してその一端面の中心を含む横断線の方向に延びて、その両端が閉じることにより、これらのメインスリットとサブスリットとはこの一端面にて十字状に交差し、
このサブスリットにてこのメインスリットより一方側でこのメインスリットとの分岐部に第1のブリッジが、このサブスリットのメインスリットより他方側でこのメインスリットとの分岐部に第1のブリッジに対向する第2のブリッジが形成され、これらの第1のブリッジおよび第2のブリッジのいずれか一方は上記導電体コアを側面視してU字またはコの字形状で上記サブスリットを跨ぐとともに、残りの他方は上記導電体コアを側面視してループ形状でこのサブスリットを跨ぎこのループの一端が上記サブスリットの一方側の岸部に、その他端が上記サブスリットの他方側の岸部にそれぞれ連結し、これらの第1のブリッジおよび第2のブリッジの上記導電体コアの上記一端面から最も突出した部分同士が平行に設けられた請求項1に記載の磁気刺激コイル。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2012−341(P2012−341A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−139784(P2010−139784)
【出願日】平成22年6月18日(2010.6.18)
【出願人】(000196565)西日本電線株式会社 (57)
【出願人】(508324433)財団法人大分県産業創造機構 (17)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年6月18日(2010.6.18)
【出願人】(000196565)西日本電線株式会社 (57)
【出願人】(508324433)財団法人大分県産業創造機構 (17)
【Fターム(参考)】
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