説明

磁気吸着装置及び選別装置

【課題】被吸着物を含む被処理物内に生じている静電気を、被処理物にダメージを与えることなく確実に除去することができ、被吸着物を確実に吸着することができる磁気吸着装置及び選別装置を提供する。
【解決手段】磁性体である被吸着物2を吸着する磁気吸着装置10において、所定の磁界を発生する磁界発生部を備え、該磁界発生部は、磁界発生源11と、該磁界発生源11に固着してあり、接地電位13(基準電位)に電気的に接続されることで前記磁界発生源11に蓄積されている電荷を接地電位13(基準電位)に誘導する電気伝導体12とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁性体からなる被吸着物を含む被処理物から、被吸着物だけを確実に吸着して選別することができる磁気吸着装置及び選別装置に関する。
【背景技術】
【0002】
エレクトロニクス産業の発展に伴って、IC(集積回路)、LSI(大規模集積回路)等の電子部品を実装するプリント配線基板の需要が急増している。そして、電子部品の実装にはTAB(Tape Automated Bonding)テープ、T−BGA(Tape Ball Grid Array)テープ等のフィルムキャリアテープ(以下、キャリアテープと総称する)を用いることが多い。
【0003】
キャリアテープを用いて電子部品を実装する場合、キャリアテープを搬送するための金属製のリール、周辺の機械装置等から飛散する金属粉が、キャリアテープ表面に静電気が発生しやすいこととも相俟って、キャリアテープ表面に付着しやすいという問題点があった。すなわち、キャリアテープ表面に金属粉が付着した場合、インナーリードへの付着、ソルダーレジスト内への混入等に起因して、キャリアテープ表面に形成されている配線パターンの短絡等が発生し、製品不良の原因となるおそれがあった。
【0004】
斯かる問題を解決するため、特許文献1では、金属粉を含む被処理物の搬送途上に磁石部材を設けてあり、キャリアテープが磁石部材を通過する際にキャリアテープに付着した金属粉を磁石部材に吸着させることにより、キャリアテープから金属粉を除去する除去装置が開示されている。磁石部材を用いることで、従来のようにエアーを吹き付けて除去する場合に比べてインナーリード等に変形が生じるおそれがなく、他の異物の混入を回避しつつ金属粉を回収することができる。
【特許文献1】特開2002−217244号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に開示されている除去装置では、磁石部材の配置されている位置を通過した後にも金属粉が十分に除去できないという問題点があった。これは、キャリアテープに対して静電気で金属粉が固着している場合、静電気による付着力よりも磁石部材の磁力が強くなければ金属粉がキャリアテープから剥離できないことに起因する。特許文献1では磁石部材の磁力を高めることで解決しようとはしているが、静電気により付着している金属粉は外形が小さいことから磁力だけで静電気による付着力を上回るためには相当の磁力を要し、現実的な解決手段とはならない。
【0006】
したがって、被処理物から静電気を除電する方法も試行されている。例えばレーザを用いて静電気を除去することも考えられる。しかし、レーザを用いる場合、レーザ出力があまりに高いと被処理物自体にダメージを与えるおそれがある。したがって、レーザ出力を高めることができないことから、静電気の除去効果には限界があった。
【0007】
また、イオナイザを用いて静電気を除去することも考えられる。しかし、イオナイザを用いる場合、イオンを均等に発生させることは非常に困難であり、静電気分布にムラが生じるおそれがあり、除電効果には限界が生じる。また、場合によっては逆に帯電させるおそれも残されており、確実に静電気を除去できる方策が望まれていた。
【0008】
本発明は斯かる事情に鑑みてなされたものであり、被処理物内で生じている静電気を、被処理物にダメージを与えることなく確実に除去することができ、被吸着物を確実に吸着することができる磁気吸着装置及び選別装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために第1発明に係る磁気吸着装置は、磁性体である被吸着物を吸着する磁気吸着装置において、所定の磁界を発生する磁界発生部を備え、該磁界発生部は、磁界発生源と、該磁界発生源に固着してあり、基準電位に電気的に接続されることで前記磁界発生源に蓄積されている電荷を前記基準電位に誘導する電気伝導体とを備えることを特徴とする。
【0010】
第1発明では、磁界発生源と、該磁界発生源に固着してあり、基準電位に電気的に接続されることで磁界発生源に蓄積されている電荷を基準電位に誘導する電気伝導体とを備える磁界発生部を被吸着物に接近させることより、被吸着物を含む被処理物に生じている静電気を効果的に除去することができる。したがって、被吸着物に関して静電気による付着力を弱めることができ、磁力により磁性体である被吸着物を確実に吸着することが可能となる。また、レーザによる熱、イオン等により被処理物の変形、被吸着物の変性等が生じるおそれがなく、安全に被吸着物のみを吸着することができる。
【0011】
また、第2発明に係る磁気吸着装置は、第1発明において、前記電気伝導体は金属材料で構成され、前記磁界発生部の前記被吸着物を吸着する吸着面側に配置してあることを特徴とする。
【0012】
第2発明では、電気伝導体を金属材料で構成することにより、電荷を確実に基準電位(例えば接地電位)まで誘導することができ、磁界発生部の被吸着物を吸着する吸着面側に電気伝導体を配置することにより、より確実に被吸着物を含む被処理物に生じている静電気を除去することができ、被吸着物に関して静電気による付着力を弱めることが可能となる。
【0013】
また、第3発明に係る磁気吸着装置は、第1又は第2発明において、前記磁界発生部は、複数の磁界発生源で構成され、隣接する磁界発生源のN極同士又はS極同士が互いに対向するよう配置してあることを特徴とする。
【0014】
第3発明では、磁界発生部を複数の磁界発生源で構成し、互いに隣接する磁界発生源のN極同士又はS極同士が互いに対向するよう配置することにより、磁界強度を部分的に高めることができ、磁界発生源の磁力を強めることなく被吸着物に関して静電気による付着力を弱めることが可能となる。
【0015】
また、第4発明に係る磁気吸着装置は、第3発明において、前記磁界発生源の間に磁性材料で構成された磁界集中体を挟持してあることを特徴とする。
【0016】
第4発明では、磁界発生源の間に磁性材料で構成された磁界集中体を挟持することにより、磁界強度を部分的により高めることができ、磁界発生源の磁力を強めることなく被吸着物に関して静電気による付着力を弱めることが可能となる。
【0017】
また、第5発明に係る磁気吸着装置は、第4発明において、前記磁界集中体は、金属材料で構成され、前記電気伝導体を兼ねるようにしてあることを特徴とする。
【0018】
第5発明では、磁界集中体を金属材料で構成し、電気伝導体を兼ねるようにすることにより、部品点数を増やすことなく、磁界強度を部分的に高めつつ、電荷を確実に基準電位(例えば接地電位)まで誘導することができる。
【0019】
また、第6発明に係る磁気吸着装置は、第1乃至第5発明のいずれか1つにおいて、前記磁界発生源は、永久磁石であることを特徴とする。
【0020】
第6発明では、磁界発生源を永久磁石とすることにより、電気伝導体による接地効果を高めるとともに構造を単純化することができる。
【0021】
次に、上記目的を達成するために第7発明に係る選別装置は、第1乃至第6発明のいずれか1つの磁気吸着装置を備える選別装置であって、前記磁気吸着装置と、前記被吸着物を含む被処理物とを、相対的に移動させる移動手段とを備え、前記被処理物から前記被吸着物を選別するようにしてあることを特徴とする。
【0022】
第7発明では、磁気吸着装置と、被吸着物を含む被処理物とを、相対的に移動させることにより、磁気吸着装置の吸着面を被処理物が通過した時点で被吸着物を吸着して選別することができる。
【0023】
また、第8発明に係る選別装置は、第7発明において、前記磁気吸着装置を複数備え、複数の磁気吸着装置が前記移動手段による前記被処理物の相対的な移動方向に連続的に配置してあることを特徴とする。
【0024】
第8発明では、複数の磁気吸着装置を被処理物の相対的な移動方向に連続的に配置することにより、吸着漏れを低減することができ、より精度良く被吸着物を選別することが可能となる。
【0025】
また、第9発明に係る選別装置は、第8発明において、前記磁気吸着装置と、該磁気吸着装置から電気伝導体を除いた他の磁気吸着装置とを備え、前記他の磁気吸着装置は、前記被処理物の相対的な移動方向の後方に配置してあることを特徴とする。
【0026】
第9発明では、電気伝導体を備えていない磁気吸着装置を、被処理物の相対的な移動方向の後方に配置することにより、被処理物は、まず電気伝導体を備えている磁気吸着装置を通過することで確実に静電気が除去され、次に電気伝導体を備えていない磁気吸着装置を通過することにより磁力によって被吸着物が吸着される。したがって、効率良く被吸着物を選別することが可能となる。
【発明の効果】
【0027】
上記構成によれば、被処理物内に生じている静電気に起因する電荷を確実に接地することができ、被処理物内に生じている静電気を効果的に除去することができる。したがって、被吸着物に関して静電気による付着力を弱めることができ、磁力により磁性体である被吸着物を確実に吸着することが可能となる。また、レーザによる熱、イオン等により被処理物の変形、被吸着物の変性等が生じるおそれがなく、安全に被吸着物のみを吸着することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、本発明の実施の形態に係る磁気吸着装置について、キャリアテープに付着した金属粉を除去する場合を一例とし、図面に基づいて具体的に説明する。
【0029】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1に係る磁気吸着装置の構成を模式的に示す斜視図である。図1に示すように、本実施の形態1に係る磁気吸着装置10は、電子部品等の実装対象物を搬送するためのマークとしてキャビティ(図示せず)等を略等間隔で形成してある帯状の連続体であるキャリアテープ1を、搬送ローラ4、4にて矢印20の方向へ搬送することが可能となっている選別装置の一部品として用いられる。
【0030】
搬送ローラ4、4にて搬送されるキャリアテープ1には、キャリアテープ1の製造工程にてリール等の破片として剥離した金属粉、周辺に存在する製造機械等からの金属粉等の被吸着物2が多々付着している。電子部品の実装工程の前段階で被吸着物2を確実に除去するために、本実施の形態1に係る磁気吸着装置10は、被吸着物2がキャリアテープ1により移動する途上に配設されている。すなわち、搬送ローラ4、4は被吸着物2と磁気吸着装置10とを相対移動させる移動手段として機能する。
【0031】
本実施の形態1に係る磁気吸着装置10は、磁界を発生する磁界発生部30を備えている。磁界発生部30は、磁石からなる磁界発生源11、11と、接地電位13と接続するための電気伝導体12とで構成され、磁界発生源11、11は、同一の極同士、例えばN極同士が互いに対向するよう配設されている。図2は、磁束の様子を示す模式図である。図2(a)は、1個の磁石の周囲の磁束線を、図2(b)は、2個の磁石を、同じ極を対向させずに配置した場合の磁束線を、図2(c)は、2個の磁石を、同じ極を対向させて配置した場合の磁束線を、それぞれ示している。
【0032】
通常、図2(a)に示すように磁束線はN極を出てS極へと戻ってくる。両端部では、磁石本体に近い経路をたどってS極へ戻り、中央部分に近接するほど磁石本体から離れた経路をたどってS極へ戻ってくる。したがって、N極側端部及びS極側端部ほど磁束線の密度が高く、磁力が強くなっている。
【0033】
一方、図2(b)に示すように、2個の磁石を同じ極を対向させずに配置した場合、2個の磁石間では均等な磁束となり外側では、1個の磁石の場合と同様の磁束となる。それに対して、図2(c)に示すように、2個の磁石を、同じ極を対向させて配置した場合、互いに磁束線が反発しあうことにより、磁石本体近傍での磁束密度が他の場合と比べて高くなる傾向にある。したがって、磁界発生源11、11は、同一の極同士、例えばN極同士が互いに対向するよう配設することにより、発生する磁束密度を高めることができ、金属粉等の磁性体である被吸着物2をより吸着しやすくなる。
【0034】
磁界発生源11、11は、電磁石であっても良いし、永久磁石であっても良い。電磁石である場合、コイル線の巻数等により発生する磁力の強弱を調整することができる。一方、永久磁石である場合、簡易な構成で磁界発生源11、11を具現化することができ、電気伝導体12を接地することによる磁力低下等の影響が無い。また、永久磁石は、電磁石に比べてエネルギーを使用しない分、熱が発生しないため、熱による制約を受けることなく様々な用途に使用することができる。
【0035】
電気伝導体12は、金属材料で構成されており、磁界発生部30における被吸着物2を吸着する吸着面側に配置する。本実施の形態1では、磁界発生源11、11に挟持して設けてある。金属材料を磁界発生源11、11で挟持する場合、磁界集中体、いわゆるヨーク部材としても機能する。したがって、磁束密度を高める効果を奏するとともに、接地電位13(基準電位)と接続線を介して接続することにより、被処理物であるキャリアテープ1及び被吸着物2に生じている静電気を除去することができる。
【0036】
電気伝導体12を接地電位13と接続線を介して接続することにより、電気伝導体12の電位は限りなく0(ゼロ)になる。これにより、静電気が生じ帯電している被吸着物2が接近した場合、被処理物に帯電している電荷が基準電位へと誘導され、効果的に除電することができる。
【0037】
以上のように本実施の形態1によれば、キャリアテープ1及び被吸着物2に生じている静電気を効果的に除去することができる。したがって、キャリアテープ1と被吸着物2との静電気による付着力を弱めることができ、磁力により磁性体である被吸着物2を確実に吸着することが可能となる。また、レーザによる熱、イオン等により被処理物であるキャリアテープ1等の変形、被吸着物2の変性等が生じるおそれがなく、安全に被吸着物2のみを吸着することができる。
【0038】
なお、電気伝導体12が磁界集中体を兼ねる構成に限定されるものではなく、電気伝導体と磁界集中体とを別個に備えても良い。この場合、電気伝導体12は、磁気吸着装置10の被吸着物2を吸着する側の面に装着することが好ましい。より確実にキャリアテープ1及び被吸着物2の静電気を除去することができるからである。また、磁界発生源11、11の磁力が十分に強い場合、磁界集中体が必須ではないことは言うまでもない。さらに、磁界集中体は電気伝導性を有する金属材料等であることに限定されるものではない。例えば、合成樹脂に金属粉を混合した成形体等であっても磁束を集中させることができれば用いることができる。
【0039】
(実施の形態2)
図3は、本発明の実施の形態2に係る選別装置の構成を模式的に示す斜視図である。本実施の形態2に係る選別装置は、磁気吸着装置を複数用いており、電子部品等の実装対象物を搬送するためのマークとしてキャビティ(図示せず)等を略等間隔で形成してある帯状の連続体であるキャリアテープ1を、搬送ローラ4、4にて矢印20の方向へ搬送することが可能となっている。
【0040】
搬送ローラ4、4にて搬送されるキャリアテープ1には、キャリアテープ1の製造工程にてリール等の破片として剥離した金属粉、周辺に存在する製造機械等からの金属粉等の被吸着物2が多々付着している。電子部品の実装工程の前段階で被吸着物2を確実に除去するために、本実施の形態2に係る選別装置は、複数の磁石からなる磁界発生源11、11を有する複数の磁気吸着装置10、10’を備えている。
【0041】
被吸着物2は、キャリアテープ1の移動に沿って矢印20の方向へ移動する。被吸着物2は、まず第一の磁気吸着装置10の下を通過し、続いて第二の磁気吸着装置10’の下を通過する。
【0042】
第一の磁気吸着装置10は、実施の形態1と同様、磁界発生源11、11と接地電位13と接続するための電気伝導体12とで構成されている。磁界発生源11、11は、同一の極同士、例えばN極同士が互いに対向するよう配設されており、発生する磁束密度を高めることで、金属粉等の磁性体である被吸着物2をより吸着しやすくしている。
【0043】
もちろん磁界発生源11、11は、電磁石であっても良いし、永久磁石であっても良い。電磁石である場合、コイル線の巻数等により発生する磁力の強弱を調整することができる。一方、永久磁石である場合、簡易な構成で磁界発生源11、11を具現化することができ、電気伝導体12を接地することによる磁力低下等の影響が無い。また、永久磁石は、電磁石に比べてエネルギーを使用しない分、熱が発生しないため、熱による制約を受けることなく様々な用途に使用することができる。
【0044】
電気伝導体12は、金属材料で構成されており、磁界発生部30における被吸着物2を吸着する吸着面側に配置する。本実施の形態2でも実施の形態1と同様、磁界発生源11、11に挟持して設けてある。金属材料を磁界発生源11、11で挟持する場合、磁界集中体、いわゆるヨーク部材としても機能する。したがって、磁束密度を高める効果を奏するとともに、接地電位13(基準電位)と接続線を介して接続することにより、キャリアテープ1及び被吸着物2に生じている静電気を除去することができる。
【0045】
このように、第一の磁気吸着装置10では、磁力による被吸着物2の吸着効果を高めるとともに、キャリアテープ1及び被吸着物2に生じている静電気の除去効果を高めている。静電気さえ十分に除去することができていれば、図1のような構成以外の磁気吸着装置でも被吸着物2を除去することは容易である。そこで、本実施の形態2では、第二の磁気吸着装置10’を第一の磁気吸着装置10の後方に配設し、静電気が除去された被吸着物2を吸着するようにしてある。
【0046】
すなわち、第二の磁気吸着装置10’は、磁界発生源11、11で構成されている。磁界発生源11、11は、同一の極同士、例えばN極同士が互いに対向するよう配設されており、発生する磁束密度を高めることで、金属粉等の磁性体である被吸着物2をより吸着しやすくしている。なお、十分な磁束密度があれば、第二の磁気吸着装置10’の磁界発生源は一つでも良い。
【0047】
もちろん磁界発生源11、11は、電磁石であっても良いし、永久磁石であっても良い。電磁石である場合、コイル線の巻数等により発生する磁力の強弱を調整することができる。一方、永久磁石である場合、簡易な構成で磁界発生源11、11を具現化することができる。また、永久磁石は、電磁石に比べてエネルギーを使用しない分、熱が発生しないため、熱による制約を受けることなく様々な用途に使用することができる。
【0048】
また、第二の磁気吸着装置10’には、電気伝導体12が装着されていない。したがって、第二の磁気吸着装置10’には、キャリアテープ1及び被吸着物2に生じている静電気の除去効果は、電気伝導体12が装着されている第一の磁気吸着装置10よりも小さい。ただし、金属材料を磁界発生源11、11で挟持して、磁界集中体、いわゆるヨーク部材として機能させても良い。より磁束密度を高める効果を奏するからである。なお、第二の磁気吸着装置10’において、さらに静電気の除去効果を必要とする場合には、第二の磁気吸着装置10’に電気伝導体12を装着しても良い。
【0049】
以上のように本実施の形態2によれば、電気伝導体12を備えていない第二の磁気吸着装置10’を、被吸着物2の相対的な移動方向の後方に配置することにより、キャリアテープ1及び被吸着物2は、まず電気伝導体12を備えている第一の磁気吸着装置10を通過することで確実に静電気が除去され、次に電気伝導体12を備えていない第二の磁気吸着装置10’を通過することにより被吸着物2が磁力によって吸着される。したがって、効率良く被吸着物2を選別することが可能となる。
【0050】
なお、第一の磁気吸着装置10では、電気伝導体12が磁界集中体を兼ねる構成に限定されるものではなく、電気伝導体と磁界集中体とを別個に備えても良い。この場合、電気伝導体12は、磁気吸着装置10の被吸着物2を吸着する側の面に装着することが好ましい。より確実にキャリアテープ1及び被吸着物2の静電気を除去することができるからである。また、磁界発生源11、11の磁力が十分に強い場合、磁界集中体が必須ではないことは言うまでもない。
【0051】
本願発明に係る磁気吸着装置の効果を確認するために、キャリアテープ1を停止させた状態でキャリアテープ1上に磁性異物を付着させた。そして、キャリアテープ1の移動方向に略直交する方向に磁気吸着装置を移動させて残留磁性異物の量を比較した。図4は、磁気吸着装置の移動方向を示す模式平面図である。
【0052】
図4に示すように、磁界発生部30は、第一の磁気吸着装置10aと第二の磁気吸着装置10bとの間に隙間部15を設けてあり、キャリアテープ1上の所定の位置を、第一の磁気吸着装置10aが通過した後に第二の磁気吸着装置10bが通過するようにしてある。第一の磁気吸着装置10aは、1個のネオジム磁石の周囲に電気伝導体となる金属体を配置した構成の磁気発生源を有しており、金属体から接地電位に接続する構成としている。第二の磁気吸着装置10bは1個のネオジム磁石とした。第一の磁気吸着装置10aと第二の磁気吸着装置10bとを組み合わせた場合(二)と効果を比較するため、磁石を用いない場合(イ)、1個のネオジム磁石(第二の磁気吸着装置10b)を用いる場合(ロ)、2個のネオジム磁石(第二の磁気吸着装置10b)を用いる場合(ハ)についても、それぞれ同様にキャリアテープ1上を移動させ、キャリアテープ1上に残留する磁性異物の単位面積当たりの個数を求めた。
【0053】
キャリアテープ1には幅100mmのPIフィルムを用い、キャリアテープ1と磁界発生部30aに備えた磁界発生源である磁石との距離は0.3mmとした。
【0054】
磁石の磁束密度は0.3Tであり、磁石がキャリアテープ1上を移動する長さは50mm、磁石の幅は60mm、磁石の移動速度は30mm/sと設定した。
【0055】
図5は、残留する磁性異物の単位面積当たりの個数を比較した結果を示すグラフである。磁石を用いない場合(イ)には、多くの磁性異物が残留している。(ロ)、(ハ)の場合には、ある程度の除去は可能であるものの、細かい磁性異物については静電気による吸着力の方が磁力による吸着力よりも強く、一定量の磁性異物が残留することがわかる。
【0056】
それに対して、本発明に係る第一の磁気吸着装置10aと第二の磁気吸着装置10bとを組み合わせた場合(二)は、他の場合と比べて残留する磁性異物が存在しないことがわかる。これは、静電気を除去してから磁力による吸着を行った結果によるものであると推測することができる。
【0057】
なお、上述した実施例では、第一の磁気吸着装置10aとして磁界発生源を薄い金属体で覆う構成のものを用いたが、さらに磁束密度を高める必要がある場合には、実施の形態1及び2で説明した第一の磁気吸着装置10の構成を用いることができる。
【0058】
また、上述した実施の形態1及び2は、電子部品を搬送するキャリアテープ1を例に挙げて説明しているが、紙テープ等の他の素材からなるフィルム素材からの金属粉の除去にも効果を奏する。また、薬品からの金属片の除去、食品からの金属片の除去等、その適用範囲は広い。すなわち、被処理物が粉体、液体等であっても同様の効果が期待できる。
【0059】
さらに、上述した実施の形態1及び2は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で変更することができる。例えば磁気吸着装置では、磁界発生源11を薄い金属体で覆うことで電気伝導体12を形成しても良いし、キャリアテープ1と磁気吸着装置10との相対的な移動方向は、キャリアテープ1の搬送方向に沿っても良いし、搬送方向に略直交する方向であっても良い。後者の場合、移動手段は磁気吸着装置10側に設けてあることは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明の実施の形態1に係る磁気吸着装置の構成を模式的に示す斜視図である。
【図2】磁束の様子を示す模式図である。
【図3】本発明の実施の形態2に係る選別装置の構成を模式的に示す斜視図である。
【図4】磁気吸着装置の移動方向を示す模式平面図である。
【図5】残留する磁性異物の単位面積当たりの個数を比較した結果を示すグラフである。
【符号の説明】
【0061】
1 キャリアテープ(被処理物)
2 被吸着物
4 搬送ローラ(移動手段)
10 磁気吸着装置
11 磁界発生源
12 電気伝導体(磁界集中体)
13 接地電位(基準電位)
30 磁界発生部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁性体である被吸着物を吸着する磁気吸着装置において、
所定の磁界を発生する磁界発生部を備え、
該磁界発生部は、
磁界発生源と、
該磁界発生源に固着してあり、基準電位に電気的に接続されることで前記磁界発生源に蓄積されている電荷を前記基準電位に誘導する電気伝導体と
を備えることを特徴とする磁気吸着装置。
【請求項2】
前記電気伝導体は金属材料で構成され、前記磁界発生部の前記被吸着物を吸着する吸着面側に配置してあることを特徴とする請求項1記載の磁気吸着装置。
【請求項3】
前記磁界発生部は、複数の磁界発生源で構成され、隣接する磁界発生源のN極同士又はS極同士が互いに対向するよう配置してあることを特徴とする請求項1又は2記載の磁気吸着装置。
【請求項4】
複数の前記磁界発生源の間に磁性材料で構成された磁界集中体を挟持してあることを特徴とする請求項3記載の磁気吸着装置。
【請求項5】
前記磁界集中体は、金属材料で構成され、前記電気伝導体を兼ねるようにしてあることを特徴とする請求項4記載の磁気吸着装置。
【請求項6】
前記磁界発生源は、永久磁石であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の磁気吸着装置。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか一項に記載の磁気吸着装置を備える選別装置であって、
前記磁気吸着装置と、前記被吸着物を含む被処理物とを、相対的に移動させる移動手段とを備え、
前記被処理物から前記被吸着物を選別するようにしてあることを特徴とする選別装置。
【請求項8】
前記磁気吸着装置を複数備え、
複数の磁気吸着装置が前記移動手段による前記被処理物の相対的な移動方向に連続的に配置してあることを特徴とする請求項7記載の選別装置。
【請求項9】
前記磁気吸着装置と、該磁気吸着装置から電気伝導体を除いた他の磁気吸着装置とを備え、
前記他の磁気吸着装置は、前記被処理物の相対的な移動方向の後方に配置してあることを特徴とする請求項8記載の選別装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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