説明

磁気媒体ディスク及びハードディスクドライブ

【課題】交換スプリングまたは交換結合複合ビットパターン化媒体の形状設計されたアイランド用のシステム、方法および装置を提供する。
【解決手段】ハードディスクドライブは、軸を有する基板と、その基板上において、複数のトラック内に配置される交換結合ビットパターン化媒体とを含む磁気媒体ディスクを有する。各トラックは、ディスクから軸方向に延びるアイランドのパターンを有する。各アイランドは、第1の異方性および第1層の半径方向の幅を有する第1層と、第1層の上にありかつ第1の異方性より低い第2の異方性を有する第2層とを含む。第2層の半径方向の幅は、第1層の半径方向の幅より小さい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般には、ハードディスクドライブに関し、具体的には、交換スプリングまたは交換結合複合ビットパターン化媒体の階層化されたアイランド用のシステム、方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来型の(垂直)磁気記録と、ビットパターン化媒体(bit patterned media:BPM)記録との間には重要な相違がある。例えば、従来型記録の線密度は、通常、トラック密度より約4〜6倍高いのに対して、BPMの場合は、線密度およびトラック密度が同等である。この相違は、いかなるタイプの適切なBPM製作法も、ダウントラック方向およびクロストラック方向の寸法が同等である場合にのみ、その完全な能力まで利用されるという事実に由来している。その結果、BPM記録の場合は、等価の面積密度を有する従来型の記録装置よりもかなり高いトラック密度が予期されるのである。特許文献1には、関連する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国公開特許2009/0169731
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
トラック密度が大幅に増大することによって、隣接トラックの干渉(adjacent track interference:ATI)または隣接トラックの消去(adjacent track erasure:ATE)の悪影響が、現在すでに従来型の記録構造において問題になっている以上に重要になるであろうことは明らかである。従って、ATI/ATEの問題を本質的に制限する方策を見出さねばならない。BPMにおけるATIを低減する何らかの技術的または製作上の方略が、面積密度を増大させながらビットの正確なアドレス指定能力を確保するためにきわめて重要である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
交換結合複合または交換スプリングビットパターン化媒体のための形状設計されたアイランド用のシステム、方法および装置の実施形態が開示される。いくつかの実施形態においては、磁気媒体ディスクが、軸を有する基板と、その基板上において、複数の円形トラック内に配置される交換結合ビットパターン化媒体とを含む。各トラックは、ディスク表面から軸方向に延びるアイランドのパターンを有する。各アイランドは、第1の異方性を有しかつ第1層の半径方向の幅を有する第1層と、第1層の上にありかつ第1の異方性より低い第2の異方性を有する第2層とを含む。第2層の半径方向の幅は、第1層の半径方向の幅より小さい。
【0006】
他のいくつかの実施形態においては、ハードディスクドライブが、エンクロージャと、そのエンクロージャに対して軸の回りを回転する磁気媒体ディスクとを含む。この磁気媒体ディスクは、アイランドのパターンを有する複数のトラック内に配置される交換結合ビットパターン化媒体を有する。各アイランドは、第1層の幅を有する第1層と、第1層の上にありかつ第1層の半径方向の幅より小さい半径方向の幅を有する第2層とを含む。アクチュエータがエンクロージャに取り付けられ、磁気媒体ディスクに対して可動である。アクチュエータは、データを磁気媒体ディスクのトラックに記録するためのヘッドの磁場輪郭を備えたヘッドを有する。このヘッドの磁場輪郭は、隣接トラックまで延びる磁場の幅を有するが、隣接トラックには最小の影響しか、あるいは全く影響を及ぼさない。
【0007】
これらの実施形態の他の目的および利点は、添付の請求項および添付の図面に関連付けてなされる以下の詳細説明を参照することによって当業者には明らかになるであろう。
【0008】
実施形態の特徴および利点が読み取られかつ詳細に理解され得るように、添付の図面に表現された本発明の実施形態を参照して、さらに具体的な説明を以下に記述する。しかし、図面は、いくつかの実施形態のみを表現するものであり、従って、等しく有効な他の実施形態が存在するかもしれないので、範囲を限定するものと見做されるべきではない。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】従来型の2層の交換結合複合(exchange coupled composite:ECC)構造、3層のECC構造、および2層の交換スプリング構造の模式的な側面図である。
【図2】ECC構造の実施形態の模式的な側面図および上面図である。
【図3】ECC構造の他の実施形態の模式的な側面図および上面図である。
【図4】ビットパターン化媒体アイランドの交換スプリング式実施形態の模式的な側面図である。
【図5】ECC構造の他の実施形態の模式的な側面図である。
【図6】記録操作中のECC構造の実施形態の模式的な上面図及び側面図である。
【図7】ハードディスクドライブの実施形態の模式的な図解である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
交換結合複合または交換スプリングビットパターン化媒体を含む形状設計されたアイランド用のシステム、方法および装置の実施形態が開示される。図1は、それぞれ従来型の2層および3層の交換結合複合(ECC)薄膜構造21、23と、従来型の交換スプリング構造24との例を表現している。これらの構造は、軸方向(すなわち垂直に表現されている)に延びており、異なる異方性を備えた上層および底層25、27を有する。構造23は、上層および底層25、27の異方性の中間の異方性を有する中間層26をも有する。これらの構造の各層は、その軸に対してほぼ同一の半径方向寸法を有する。
【0011】
異なる図面において同じ参照符号を使用している場合があるが、それは、類似または同一の品目を示す。各構造の上層25は、異方性が高い底層27の反転磁場をその熱的な安定性を低下させることなく低減することを補助するために、低い異方性を有する。これは、異方性が低い上層25の磁化を可逆的に独立に傾けること、従って異方性が高い底層27の磁化に対してトルクを誘起することによって達成される。
【0012】
ECC構造の磁気層の間には、非磁性の層間層すなわち結合層29が配置される。交換スプリング構造24は非磁性の結合層を有しない。結合層29の厚さは、磁気層の間の交換結合が上層25の磁化の独立の傾きをなお可能にするように、十分に厚く選定される。しかし、結合層29の厚さは、完全な媒体層積層体全体としての連結非可逆的スイッチングをトリガするのに十分なように薄く選定される。異方性が低い上部層の磁化は、可逆的な態様で独立に傾き得ることが必要であるが、非可逆的なスイッチングが一旦生じると、異方性が低い上部層の磁化は、よりハードな層を引きずることなしに独立に反転することを許容されない。
【0013】
図2は、異方性が低い上層35と、異方性が高い底層37と、その間の結合層39とを包含する2層のECC薄膜構造を有するアイランド31の3つの異なる実施形態を模式的に表現している。他の実施形態においては、上層および底層35、37のそれぞれに、その層内で軸方向(すなわち図2A、CおよびEにおいて垂直方向)に変化する「段階的な」異方性を設けてもよい。例えば、媒体層を堆積する間に温度を変化させることによって、異方性における連続的な勾配を構造の各層内に形成してもよい。
【0014】
アイランドは、さらに他のECC構造をも含んでもよく、各層は複数の部分層を有してもよい。ハード層およびソフト層の相対的な横方向寸法は、例えば、アイランド製作およびエッチング過程において側壁角度を変化させることによって調整される。
【0015】
図2A、CおよびEは、傾斜した側壁または台形形状の側壁を示す断面形状を概略的に表現し、一方、図2B、DおよびFは、截頭円錐状の3次元形状を示すその各構造の上面図としての形状を概略的に表現している。側壁角度(例えばα、α、α)における変化を、アイランドのECC中核部および高異方性の端部の相対的な寸法を調整するのに用いることが可能である。例えば、図2AおよびBは最も急峻なまたは最小の側壁角度αを有し、図2EおよびFは最大の側壁角度αを有し、図2CおよびDの角度αはその中間である。図5に示すように、側壁角度は、別の層において同じである必要はない。
【0016】
図2B、DおよびFに示すように、これらの幾何学的形状によって、直径d、dおよびdが変化する上層35と、側壁の半径方向幅w、wおよびwが変化する底層37とが作り出される。図2AおよびBは、最大の上層直径dと最小の側壁の半径方向幅wとを有し、図2EおよびFは、最小の上層直径dと最大の側壁の半径方向幅wとを有し、図2CおよびDの上層直径dおよび側壁の半径方向幅wはその中間である。各実施形態において、底層37の全体直径は同じである。
【0017】
ECC中核部と高異方性の外側の層端部とを備えたこのような横方向リング構造は、中心から端部に反転する。すなわち、アイランドの製作中に惹起される端部の損傷によってトリガされ得る反転モードとは反対に回転する。この方式で形状設計されたECC−BPMアイランドは、パターン化処理の間におけるアイランドの端部の損傷または端部の粗さの影響を打ち消し、それによって良好なATI性能をもたらす。
【0018】
代わりの方式として、図3は、異方性が低い上層45と、異方性が高い底層47と、その間の結合層49とを包含する2層のECC薄膜構造を有するアイランド41の追加的な実施形態を模式的に表現している。これらの構造も、本明細書に記述したような段階的な異方性を含んでもよい。アイランドは、同様に、さらに他のECC構造を含んでもよく、各層は複数の部分層を有してもよい。ハード層およびソフト層の相対的な横方向寸法は、例えば、堆積処理中において、側壁角度を一定に維持しながらハード層およびソフト層の厚さを変化させることによって調整される。
【0019】
例えば、図3A、CおよびEは、傾斜した側壁または台形形状の側壁を示す断面形状を概略的に表現し、一方、図3B、DおよびFは、截頭円錐状の3次元形状を示すその各構造の上面図としての形状を概略的に表現している。上層45および底層47の軸方向の厚さ(それぞれ、例えばt、t、tおよびb、b、b)における変化を、アイランドのECC中核部および高異方性の端部の相対的な横方向または半径方向の寸法を調整するのに用いることが可能である。図3AおよびBは、最大の上層厚さtと最小の底層厚さbとを有し、図3EおよびFは、最小の上層厚さtと最大の底層厚さbとを有し、図3CおよびDの厚さtおよびbはその中間である。
【0020】
図2の実施形態の場合と同様に、これらの幾何学的形状によって、直径d、dおよびdが変化する上層45と、側壁の半径方向幅w、wおよびwが変化する底層47とが作り出される。図3AおよびBは、最大の上層直径dと最小の側壁の半径方向幅wとを有し、図3EおよびFは、最小の上層直径dと最大の側壁の半径方向幅wとを有し、図3CおよびDの直径dおよび幅wはその中間である。各実施形態において、底層47の全体直径は同じである。
【0021】
これらの例は、アイランドのECC中核部および高異方性の端部の相対的な寸法を、アイランドの所望の幾何学的形状を保持しながら各層の軸方向の相対的な厚さを変化させることによって調整する仕方を表している。ATIまたはATEを改善する、すなわち低減するためには、アイランドの傾斜の形状を変化させるよりも、層の相対的な厚さを制御された方法で変化させることの方が容易であるかもしれない。
【0022】
代わりの方式として、図4は交換スプリング構造71の実施形態を示す。交換スプリング構造71は、異方性が異なる上層および底層75、77を有するが中間層または結合層を有しない。ECC構造について記述したように、上層および底層75、77のそれぞれに、その層内で軸方向に変化する段階的な異方性を設けてもよい。このような交換スプリング構造は、同じ利点を得るために、前記の実施形態と同様の方法で幾何学的に形状化させてもよい。
【0023】
図5は、階層化または段階化された複数の層を有するECC構造81の他の実施形態を概略的に示す。層は、不規則なまたは非対称のドーム形とすることができるが、全体としては、半径方向寸法において底層87から上層85に先細になっている。各層は、例えば図5に示すように種々のタイプの材料を含んでもよい。この実施形態も、本明細書に記述する利点を提供する。
【0024】
図6A及びBは、記録操作中のECC構造の実施形態の模式的な上面図および側面図である。図6では、本明細書に記述する媒体の実施形態が、記録中に、隣接トラックの干渉(ATI)をどのように低減するかを表している。アイランド51は一連のトラックT、TおよびT内に配置される。各トラックは多数のアイランドを有する。ヘッドの磁場輪郭53を有する記録ヘッド52が、回転ディスク媒体上のアイランド51の単一のトラック(例えばT)の上部において動かされる。ヘッドの輪郭は、ソフトな核形成層の反転、従ってアイランド全体の反転の核を形成し得るヘッドの磁場領域を表す。輪郭の形状は大きく変化することがある。図6Bによく示されるように、トラックTに隣接するアイランド51の高異方性の外側の端部55は、記録ヘッド52の磁場輪郭53に対する感度が低く、従ってATIが低下する。反転は、各アイランドの端部においてよりも中心において核形成されることが望ましい。これは、中心がECCの核形成アシスト層を有し、従ってアイランドからアイランドへのヘッドに対する有効なスイッチング距離が増大するからである。これらの実施形態は、アイランド全体がより小さく作製された場合に生じる、磁気モーメント従ってリードバック信号におけるのと同じ損失を蒙ることはない。得られる媒体は、記録過程の間の位置ずれ誤差のトラッキングに対してより安定になり、かつ、リードバックの間にも良好な信号対ノイズ比を維持する。
【0025】
ビットの段階的なまたは階層化された形状は、物理的スパッタリングによって容易に得ることができる。媒体層は、媒体層積層体の上面にパターン化されたマスクを有する。このパターンは、インプリントリソグラフィーまたは他の非常に高い解像度のリソグラフィー(例えば超紫外線、光学、e−ビーム)によって周波数二倍化を伴ってまたはそれなしに、あるいは、自己組織化(self−assembly)によって生成することが可能である。
【0026】
マスクは、表面上に堆積されかつエッチングされるかあるいはリフトオフされた像形成層または1つ以上の層を含むことができる。パターン化されたマスクを有するサンプルは、真空装置の中に入れて、原子、分子またはイオンのビームのボンバードメントによってエッチングできる。磁性材料は、通常、入射ビームからの弾性反跳(elastic recoil)によって表面から離脱する。90°未満の垂直側壁を2つの方法によって設けられてもよい。第1の方法はビームの不完全な視準から生じるシャドウィングであり、第2の方法は、マスクおよび被エッチング層の間の不完全なエッチング選択性によるものである。
【0027】
ほとんどの場合、ビームは完全には視準されておらず、ビームには僅かな角度の広がりが存在する。例えば、入射ビームは約+/−5°の発散角度を有する場合がある。いくつかのシステムにおいては、約5°〜10°の発散角度に遭遇する場合が多い。磁気材料のエッチング速度は入射ビームの線束に比例する。20nm高さのマスクに対しては、5°以上の発散角度の部分の入射ビーム内に含まれる粒子は、パターン化端部にxtan(5°)よりいくらかでも近いか、または2nmより大きいサンプル部分には影響を及ぼさない。
【0028】
エッチングが継続されると、マスクおよび被エッチング材料の高さは増大し、台形の基礎部におけるシャドウの距離が増大する。実際には、角度の分布は、cosθまたはθのガウス関数となる可能性が高い。粒子の線束は、エッチングされたトレンチの深さに沿って、より高い形状部分によるビームのシャドウィングのために低下する。サンプルはビームに対して回転することができる。発散によるシャドウィングに加えて、追加的な領域がシャドウされる場合があり、あるいは、ハードおよびソフト層の積層体が異なるエッチング/ミリング速度を有していてもよい。これによって、台形の上部および底部の間の差が増大する可能性がある。両方の場合において、シャドウィングの量(すなわち垂直軸に対する傾斜壁面の角度)はマスクの厚さを増大することによって低減できる。
【0029】
シャドウィングの他に、マスクのコーナ部の侵食がある。コーナ部のエッチング速度は一般に材料のバルク部分より遥かに速い。マスクの侵食および形状は、マスクの材料、粒子種、粒子エネルギーおよび角度の選択によって調整することが可能である。さらに、側壁をミリングから保護するために、チャンバ内に化学種(例えばO、HCFなど)を導入できる。
【0030】
これらの実施形態は付加的な利点を有する。端部領域は、製造中に損傷を受け、アイランド反転に対する核形成中心として作用する可能性があるが、これは、ATIおよびATEを増大する。しかし、本明細書に記載するようなハードおよびソフト層の間のコントラストが大きいECC構造を用いると、反対の効果が実現され、アイランドの中心の中核部よりもハードな端部を作製することが可能になる。このような構成は、当初の完全な膜からエッチングまたはイオンミリングされるアイランド断面形状であって、BPM構造において自然に得られる台形のアイランド断面形状を利用するものであり、これらの構造におけるATIおよびATEを低減する。
【0031】
図7は、ハードディスクドライブアセンブリ100の実施形態の模式的な図解である。ハードディスクドライブアセンブリ100は、一般に、本明細書に記述するようなディスクを1枚以上備えたハウジングまたはエンクロージャを含んでいる。ディスクは、作動中スピンドルモータ(図示せず)によって高速で回転される磁気記録媒体111を含む。ディスクの片面または両面には、情報を磁気的に受け入れ保存する同一中心のデータトラック113が形成される。
【0032】
具現化される読み取りまたは読み取り/書き込みヘッド110は、アクチュエータアセンブリ106によってディスク表面を横断して動くことができ、ヘッド110が磁気データを特定のトラック113から読み取ることまたはそれに書き込むことを可能にする。アクチュエータアセンブリ106は、ピボット114上に旋回することができる。アクチュエータアセンブリ106は、サーボ制御として知られる閉ループのフィードバックシステムの一部分を形成することができるが、このサーボ制御によって、読み取り/書き込みヘッド110が、磁気記録媒体111の熱膨張と振動および他の外乱とを補正するように動的に位置決めされる。サーボ制御システムには、関連するコンピュータからデータのアドレス情報を受け取り、それを磁気記録媒体111上の位置に変換し、それによって読み取り/書き込みヘッド110を動かすマイクロプロセッサ、デジタル信号プロセッサまたはアナログ信号プロセッサ116によって実行される複雑な計算アルゴリズムも包含される。
【0033】
ハードディスクドライブシステムのいくつかの実施形態においては、読み取り/書き込みヘッド110が、正確なヘッド110の位置決めを確実にするために、ディスク上に記録されるサーボパターンを周期的に参照する。サーボパターンは、読み取り/書き込みヘッド110が特定のトラックに正確に追随することを確実にするために、そして、1つのトラック113から他のトラックへのヘッド110の移動を制御しかつ監視するために用いてもよい。サーボパターンが参照されると、読み取り/書き込みヘッド110は、制御回路116が引き続いてあらゆる検出誤差を修正するようにヘッド110を再調整することを可能にするヘッドの位置情報を得る。
【0034】
いくつかの実施形態においては、ディスク駆動性能を改善するためにサーボパターンの頻繁なサンプリングを可能にするように、サーボパターンを、複数のデータトラック113の内部に組み込まれる設計サーボセクター112内に含むことができる。典型的な磁気記録媒体111においては、組み込まれるサーボセクター112は、車輪の中心からのスポークのように、磁気記録媒体111の中心から実質的に半径方向に延びている。しかし、サーボセクター112は、スポークの場合と異なって、読み取り/書き込みヘッド110の動きの範囲にほぼ合致するように設定される巧妙なアーチ形状の径路を形成する。
【0035】
ハードディスクドライブシステムのいくつかの実施形態においては、磁気媒体ディスクが、軸を有する基板と、その基板上において複数のトラック内に配置される交換結合ビットパターン化媒体とを含んでいる。各トラックは、ディスクの表面から軸方向に延びるアイランドのパターンを有する。各アイランドは、第1の異方性と第1層の半径方向の幅とを有する第1層、および、第1層の上にありかつ第1の異方性より低い第2の異方性を有する第2層を含む。第2層は、第1層の半径方向の幅より小さい第2層の半径方向の幅を有する。
【0036】
交換結合ビットパターン化媒体は、交換結合複合体または交換スプリングを含むことができる。さらに、このパターン化媒体は、第1層および第2層の間に結合層を含むことができ、この結合層は、第2層の半径方向の幅より大きくかつ第1層の半径方向の幅より小さい結合層の半径方向の幅を有する。各アイランドは、第1層および第2層によって形成される階層化された構造を有することができる。各アイランドは、略截頭円錐状の3次元形状と、略台形状の側面形状とを有することができる。
【0037】
ハードディスクドライブシステムの他のいくつかの実施形態においては、ハードディスクドライブが、エンクロージャと、そのエンクロージャに取り付けられかつエンクロージャに対して軸の回りを回転可能な磁気媒体ディスクとを含む。この磁気媒体ディスクは、複数のトラック内に配置される交換結合ビットパターン化媒体を有し、各トラックは、軸方向に延びるアイランドのパターンを有する。各アイランドは、第1層の半径方向の幅を有する第1層と、第1層の上にあり、かつ第1層の半径方向の幅より小さい第2層の半径方向の幅を有する第2層とを含む。アクチュエータがエンクロージャに取り付けられ、磁気媒体ディスクに対して可動である。アクチュエータは、データを磁気媒体ディスクのトラックに記録するためのヘッドの磁場輪郭を備えたヘッドを有する。このヘッドの磁場輪郭は、先に書き込まれた1つ以上の隣接トラックまで延びる磁場の幅を有する。この磁場の幅は、隣接トラック上のアイランドの第1層における第1層の半径方向の幅まで延びるだけで、第2層の半径方向の幅までは延びない。
【0038】
ハードディスクドライブシステムのいくつかの実施形態においては、交換結合複合(ECC)−BPMアイランドまたは構造が、ATI/ATEを低減する独自の形状を有する。この形状は、略截頭円錐状の3次元形状のような先細の形態と、側面形状としてみた場合に略台形の形状とを包含することができる。また、アイランドは、上層が底層よりも小さくなるように棚型の構造を有してもよい。各BPMアイランドには、非磁性の層間層を介して、幾分低減された層間層交換において結合される多重磁気層を設けることができる。アイランドの上層は、段階的な異方性構造を形成するために、底層よりも低い異方性を有するように構成することができる。
【0039】
異方性が異なる層の間の層間層結合は、アイランド全体の同時非可逆スイッチングをトリガするのに十分な強さを有する。しかし、異方性が異なる層の間の層間層結合は、上層の低異方性の可逆的な独立の傾きを可能にする程度に十分に弱いものである。このため、上層は下部層の高異方性に対するトルクを生成する。この構成は、下部層の高異方性に対する核形成アシスト層として作用し、全媒体積層体の全反転磁場を、熱安定性を減退させることなく低下させる。
【0040】
本明細書に記述するECC−BPM構造の実施形態は、アイランドの中心部分のみに存在する核形成アシスト層を有する。前記の点から見ると、アイランドの外側端部は、形状設計されたアイランドの側壁角度のために下部層の高異方性材料のみを含むことになる。その結果、アイランドは、低異方性の核形成アシスト層が存在するために容易に反転する中心部分を有する。アイランドの外側端部は、核形成アシスト層が欠如しているので、反転がより困難である。このような構造においては、反転は、低異方性の核形成アシスト層が存在するアイランドの中心部から生起する。この効果はATIの低減に寄与する。それは、アイランドの端部からアイランド反転の核形成をすることが遥かに困難になるからである。従って、各個別アイランドの高異方性の端部と、反転が、核形成アシスト層が存在するアイランドの中心部において開始される必要があるという事実とのために、隣接トラック上のアイランドの反転が生起する可能性は大きく低下する。
【0041】
本明細書は、発明の最良の形態を包含する実施形態を開示する例であって、当業者に本発明の作製および利用を可能ならしめるような例を用いている。特許の範囲は、請求項によって規定されており、当業者が思い至る他の例を包含する可能性がある。このような他の例は、それが、請求項の文字通りの表現と異ならない構造要素を有する場合には、あるいは、それが、請求項の文字通りの表現から非実質的な差異しか有しない同等の構造要素を包含する場合には、請求項の範囲内にあることが意図されている。
【0042】
上記の一般的な記述または例において述べた構成要件のすべてが必要であるとは限らないこと、特定の構成要件の一部分は必要でない可能性があること、および、記述された構成要件に1つ以上の別の構成要件を付加し得る場合があることに留意されたい。なお、さらに、列挙された構成要件の順序は、必ずしもそれらが遂行される順序ではない。
【0043】
以上の明細書においては、概念を、特定の実施形態を参照して記述してきた。しかし、当業者は、添付の請求項に述べる本発明の範囲から逸脱することなく種々の修正および変更をなし得ることを認めるであろう。従って、明細書の記述および図面は、制限する趣旨のものであるよりは例示的なものと見做されるべきであり、このような修正は、すべて、本発明の範囲内に包含されることが意図されている。
【0044】
本明細書において用いる用語としての「含む(comprises/comprising)」、「包含する(includes/including)」、「有する(has/having)」、あるいはこれらの任意の変形句は、非排他的な包摂を意味するように意図されている。例えば、特徴のリストを含むプロセス、方法、製品または装置は、それらの特徴のみに必ずしも限定されるのではなく、明示的に列挙されていない他の特徴、あるいは、そのようなプロセス、方法、製品または装置には本来固有の他の特徴を包含することができる。さらに、明示的に逆に規定しない限り、「または、あるいは(or)」は、「排他的なまたは、あるいは」ではなく「包含的なまたは、あるいは」を意味する。例えば、「条件AまたはB」は、次のいずれかによって満足される。すなわち、「Aが真であり(または存在し)かつBが偽である(または存在しない)」、「Aが偽であり(または存在せず)かつBが真である(または存在する)」、および、「AおよびBが共に真である(または存在する)」のいずれかである。
【0045】
また、本明細書における要素および構成要素の記述に、不定冠詞「a」または「an」を用いている。これは単に便宜上のためであり、本発明の範囲の一般的な意味を与えるためである。この記述は、「1つの」または「少なくとも1つの」を包含するように読まれるべきであり、また、単数は、それが複数を含意しないことが明らかでない限り、複数をも包含する。
【0046】
以上においては、利益、他の利点、および問題に対する解決策を、特定の実施形態に関連付けて説明してきた。しかし、この利益、利点、問題に対する解決策、および、あらゆる利益、利点または解決策を生じさせるかあるいはより顕著にする可能性がある任意の特徴は、任意の請求項またはすべての請求項の決定的に重要な、必要な、あるいは必須の特徴と見做されるべきではない。
【0047】
当業者は、本明細書読了後、特定の特徴は、本明細書において、明確化のために、別個のいくつかの実施形態に関連付けて記述されているが、単一の実施形態における組合せにおいても用いることができることを認めるであろう。逆に、簡潔さのために、単一の実施形態に関連付けて記述されている種々の特徴を、別個にまたは任意のサブコンビネーションにおいて用いることも可能である。さらに、範囲で表現される値への言及は、その範囲内のそれぞれのかつあらゆる値を包含する。
【符号の説明】
【0048】
21、23、31、41、51、81 ECC構造アイランド
24、71 交換スプリング構造アイランド
25、35、45、75、85 上層
26 中間層
27、37、47、77、87 底層
29、39、49 結合層
52 ヘッド
53 磁場輪郭
55 外側端部
106 アクチュエータアセンブリ
110 ヘッド
111 記録媒体
112 サーボセクター
113 トラック
114 ピボット
116 プロセッサ
、b、b 底層の厚さ
、d、d 直径
、t、t 上層の厚さ
、T、T トラック
、w、w 側壁の半径方向幅
α、α、α 側壁角度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸を有する基板と、
前記基板上において、複数のトラック内に配置される交換結合ビットパターン化媒体であって、各トラックは、前記基板から軸方向に延びるアイランドのパターンを有し、各アイランドは、
第1の異方性および第1層の半径方向の幅を有する第1層と、
前記第1層の上の第2層であり、前記第1の異方性より低い第2の異方性、および前記第1層の半径方向の幅より小さい第2層の半径方向の幅を有する第2層と、
を含む交換結合ビットパターン化媒体と、
を含む磁気媒体ディスク。
【請求項2】
前記交換結合ビットパターン化媒体が、交換結合複合構造または交換スプリング構造を含む、請求項1に記載の磁気媒体ディスク。
【請求項3】
前記第1層および第2層の間に結合層をさらに含み、この結合層は、前記第2層の半径方向の幅より大きく、かつ前記第1層の半径方向の幅より小さい結合層の半径方向の幅を有する、請求項1に記載の磁気媒体ディスク。
【請求項4】
各アイランドが、前記第1層および第2層によって形成される階層化された構造を有する、請求項1に記載の磁気媒体ディスク。
【請求項5】
各アイランドが、略截頭円錐状の3次元形状と、略台形状の側面形状とを有する、請求項1に記載の磁気媒体ディスク。
【請求項6】
前記第1層および第2層の少なくともいずれかが、前記第1層および第2層の前記少なくともいずれかの層内で軸方向に変化する段階的な異方性を有する、請求項1に記載の磁気媒体ディスク。
【請求項7】
軸を有する基板と、
前記基板上において、複数のトラック内に配置される交換結合複合ビットパターン化媒体であって、各トラックは、前記基板から軸方向に延びるアイランドのパターンを有し、各アイランドは、
第1の異方性および第1層の半径方向の幅を有する第1層と、
前記第1層の上の結合層と、
前記結合層の上の第2層であり、前記第1の異方性より低い第2の異方性、および前記第1層の半径方向の幅より小さい第2層の半径方向の幅を有する第2層と、
を含む交換結合複合ビットパターン化媒体と、
を含む磁気媒体ディスク。
【請求項8】
前記結合層が、前記第2層の半径方向の幅より大きく、かつ前記第1層の半径方向の幅より小さい結合層の半径方向の幅を有する、請求項7に記載の磁気媒体ディスク。
【請求項9】
各アイランドが、前記第1層、結合層および第2層によって形成される階層化された構造を有する、請求項7に記載の磁気媒体ディスク。
【請求項10】
各アイランドが、略截頭円錐状の3次元形状と、略台形状の側面形状とを有する、請求項7に記載の磁気媒体ディスク。
【請求項11】
前記第1層および第2層が、軸方向に変化する段階的な異方性を有する、請求項7に記載の磁気媒体ディスク。
【請求項12】
エンクロージャと、
前記エンクロージャに取り付けられかつ前記エンクロージャに対して軸の回りを回転可能な磁気媒体ディスクであり、複数のトラック内に配置される交換結合ビットパターン化媒体を有する磁気媒体ディスクであって、各トラックは、前記ディスクから軸方向に延びるアイランドのパターンを有し、各アイランドは、
第1層の半径方向の幅を有する第1層と、前記第1層の上にあり、かつ前記第1層の半径方向の幅より小さい第2層の半径方向の幅を有する第2層と、
を含む磁気媒体ディスクと、
前記エンクロージャに取り付けられかつ前記磁気媒体ディスクに対して可動なアクチュエータであり、データを前記磁気媒体ディスクのトラックに記録するためのヘッドの磁場輪郭を備えたヘッドを有するアクチュエータであって、
前記ヘッドの磁場輪郭は、隣接トラックまで延びる磁場の幅を有し、この磁場の幅は、隣接トラック上のアイランドの第1層における第1層の半径方向の幅まで延びるだけで、その第2層の半径方向の幅までは延びないアクチュエータと、
を含むハードディスクドライブ。
【請求項13】
前記交換結合ビットパターン化媒体が、交換結合複合体または交換スプリングを含む、請求項12に記載のハードディスクドライブ。
【請求項14】
前記第1層が第1の異方性を有し、前記第2層が、前記第1の異方性より低い第2の異方性を有する、請求項12に記載のハードディスクドライブ。
【請求項15】
前記第2層の半径方向の幅より大きく、かつ前記第1層の半径方向の幅より小さい結合層の半径方向の幅を有する結合層をさらに含む、請求項12に記載のハードディスクドライブ。
【請求項16】
各アイランドが、前記第1層および第2層によって形成される階層化された構造を有する、請求項12に記載のハードディスクドライブ。
【請求項17】
各アイランドが、略截頭円錐状の3次元形状と、略台形状の側面形状とを有する、請求項12に記載のハードディスクドライブ。
【請求項18】
前記第1層および第2層の少なくともいずれかが、その第1層および第2層の少なくともいずれかの層内で軸方向に変化する段階的な異方性を有する、請求項12に記載のハードディスクドライブ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2012−74127(P2012−74127A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−210854(P2011−210854)
【出願日】平成23年9月27日(2011.9.27)
【出願人】(503116280)ヒタチグローバルストレージテクノロジーズネザーランドビーブイ (1,121)
【Fターム(参考)】