説明

磁気記録媒体、磁気記録再生装置および磁気記録再生装置の信号処理方法

【課題】トラッキングサーボ情報としてトラッキングサーボパターンを高密度で形成することができ、磁気ヘッドを磁気記録トラックの中央に精度よく位置付けできるものとなるとともに、磁性層からなるパターン形状を形成する際に用いられるレジストパターンを高精度で形成することができ、歩留まりよく製造できる磁気記録媒体を提供する。
【解決手段】非磁性基板上に磁気的に分離された磁性層からなる環状の磁気記録パターン51aが備えられ、磁気記録パターン51aの一部に、前記磁気記録パターン51aの中央と側部との距離を片側のみ異ならせてなるトラッキングサーボパターン33がトラッキングサーボ情報として形成されている磁気記録媒体50とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハードディスク装置等に用いられる磁気記録媒体、磁気記録再生装置および磁気記録再生装置の信号処理方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、ハードディスク装置等の磁気記録装置の適用範囲は著しく増大され、その重要性が増すと共に、これらの装置に用いられる磁気記録媒体について、その記録密度の著しい向上が図られつつある。特に、MR(magnet resistive)ヘッドおよびPRML技術の導入以来、面記録密度の上昇はさらに激しさを増し、近年ではさらにGMR(giant magnet resistive)ヘッド、TMR(tunneling magnet resistive)ヘッドなども導入され、1年に約50%ものペースで増加を続けている。これらの磁気記録媒体については、今後更に高記録密度を達成することが要求されており、そのために磁性層の高保磁力化と高信号対雑音比(SNR)、高分解能を達成することが要求されている。また、近年では線記録密度の向上と同時にトラック密度の増加によって面記録密度を上昇させようとする努力も続けられている。
【0003】
最新の磁気記録装置において、トラック密度は110kTPIにも達している。しかし、トラック密度を上げていくと、隣接するトラック間の磁気記録情報が互いに干渉し合い、その境界領域の磁化遷移領域がノイズ源となりSNRを損なうという問題が生じやすくなる。このことはそのままBit Error rateの低下につながるため記録密度の向上に対して障害となっている。
面記録密度を上昇させるためには、磁気記録媒体上の各記録ビットのサイズをより微細なものとし、各記録ビットに可能な限り大きな飽和磁化と磁性膜厚を確保する必要がある。しかし、記録ビットを微細化していくと、1ビット当たりの磁化最小体積が小さくなり、熱揺らぎによる磁化反転で記録データが消失するという問題が生じる。
【0004】
また、トラック密度を上げていくと、トラック間距離が近づくため、磁気記録装置には極めて高精度のトラックサーボ技術が要求されている。また、隣接トラックからの影響をできるだけ排除するため、記録を幅広く実行し、再生を記録時よりも狭く実行する方法が一般的に用いられている。この方法では、トラック間の影響を最小限に抑えることができる反面、再生出力を十分得ることが困難である。そのため、十分なSN比(SNR)を確保することが難しいという問題がある。
【0005】
上述した熱揺らぎの問題を解決し、十分なSN比の確保、あるいは十分な出力の確保を達成する方法の一つとして、記録媒体表面にトラックに沿った凹凸を形成し、記録トラック同士を物理的または磁気的に分離することによってトラック密度を上げようとする試みがなされている。このような技術を以下にディスクリートトラック法、それによって製造された磁気記録媒体をディスクリートトラック媒体と呼ぶ。
【0006】
ディスクリートトラック媒体の一例として、複数の凸部と各凸部を囲む凹部とを有する非磁性基板上に、軟磁性層と強磁性層を積層し、非磁性基板の形状を反映した凹凸が軟磁性層および強磁性層に形成され、磁気的に分断された強磁性層の凸部のみを記録領域とする磁気記録媒体が知られている(例えば、特許文献1参照)。
この磁気記録媒体によれば、軟磁性層での磁壁発生を抑制できるため、熱揺らぎの影響が出にくく、隣接する信号間の干渉もないので、ノイズの少ない高密度磁気記録媒体を形成できるとされている。
【0007】
ディスクリートトラック媒体は、一般に、非磁性基板上に連続した磁性層を形成し、磁性層の上にパターニングしたレジスト層を形成し、これを用いて磁性層を磁気的に分離する方法を用いて形成されている。また、レジスト層をパターニングする方法としては、フォトリソグラフィー法や、液状のレジストにスタンプを用いてパターン転写するナノインプリント法がなど用いられている。
【0008】
また、ディスクリートトラック媒体の製造方法としては、何層かの薄膜からなる磁気記録媒体を形成した後にトラックを形成する方法や、あらかじめ基板表面に直接、あるいはトラック形成のための薄膜層に凹凸パターンを形成した後に、磁気記録媒体の薄膜形成を行う方法がある(例えば、特許文献2,特許文献3参照)。
【0009】
また、ディスクリート方式の磁気記録媒体の製造方法として、外部からのイオン注入あるいはレーザ照射などを行うことにより、非磁性基体上の連続した磁性層の所望の箇所の磁気的特性を局所的に変えて記録トラックを形成する方法もある(例えば、特許文献4参照)。
また、例えば、特許文献5には、磁性層に、ランド間のギャップ代わりに、イオン注入によって磁化されない領域のあるものが開示されている。
また、例えば、特許文献6には、基板上に、磁性層、イオンバッファ層をこの順に形成して、イオンバッファ層を介在させた状態で磁性層に対してイオンを注入し、熱処理することで、イオンの注入領域の磁気特性を改質する磁性パターン形成方法が開示されている。
【0010】
また、例えば、特許文献7には、第1、第2のサーボバースト群が2列に配列された第1サーボバーストエリアと、第3、第4のサーボバースト群が2列に配列された第2サーボバーストエリアとがデータエリアを挟んで交互に配置されている情報記録媒体が記載されている。
【特許文献1】特開2004−164692号公報
【特許文献2】特開2004−178793号公報
【特許文献3】特開2004−178794号公報
【特許文献4】特開平5−205257号公報
【特許文献5】特開2006−209952号公報
【特許文献6】特開2006−309841号公報
【特許文献7】特開2000−090609号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、従来のディスクリートトラック媒体の製造方法では、磁気的に分離された磁性層からなるパターン形状の精度が不十分で歩留まりが低いため、磁性層のパターン形状を精度よく形成することにより、歩留まりを向上させることが要求されていた。磁性層のパターン形状の精度を低下させる主な原因としては、磁性層からなるパターン形状を形成する際に用いられるレジストパターンの厚さのバラツキやエッジダレなどレジストパターンの形状不良が挙げられる。
【0012】
ここで従来の磁気記録媒体の課題について、図4を用いて説明する。図4は、従来のディスクリート型の磁気記録媒体の一例を説明するための平面図であり、図4(a)はディスクリート型の磁気記録媒体の全体を示した模式図であり、図4(b)は図4(a)において矩形で示したディスクリート型の磁気記録媒体の一部の領域のみを拡大して示した拡大模式図である。
【0013】
図4に示す磁気記録媒体40は、図4(a)および図4(b)に示すように、円盤状の基板の一方の表面に、データ領域41とサーボ情報領域42とが備えられたものである。なお、図4(a)においては、中心から放射状に延びる線で示された領域がサーボ情報領域42に該当し、放射状の線と線との間の領域がデータ領域41に該当する。
データ領域41を構成する磁性層からなるデータ記録パターン41aは、磁気記録トラックを構成するものであり、図4(b)に示すように、円環状の規則的な形状とされている。
【0014】
また、図4(b)に示すように、サーボ情報領域42には、磁気ヘッドを磁気記録トラックの中央に位置付けさせるためのバースト情報として、バーストパターン43aが形成されている。バーストパターン43aは、サーボ情報領域42を構成する磁性層からなるものであり、隣接する磁気記録トラック間に設けられた細かなドット状の形状とされている。バーストパターン43aは、磁気記録媒体40の半径方向に、データ領域41を分割するように、通常255箇所設けられている。
そして、図4(a)に示す磁気記録媒体40では、磁気ヘッド(不図示)によりデータ記録パターン41aにデータを読み書きする際に、表面上を円周方向に移動する磁気ヘッドが、サーボ情報領域42においてバースト情報を読み込んでトラック位置の微調整を行うものとされている。
【0015】
しかしながら、図4に示す磁気記録媒体40では、磁気記録媒体40の回転に伴う振動や熱膨張によって、磁気ヘッドによりデータ記録パターン41aにデータを読み書きする際における磁気記録トラックに対する磁気ヘッドの相対位置が狂ってしまい、磁気ヘッドが磁気記録トラックの中央に精度よく位置付けされない場合があった。このため、図4に示す磁気記録媒体40では、磁気ヘッドによる磁気記録媒体40の読み込み不良や書き込み不良が生じる恐れがあった。特に、磁気記録トラックの半径方向の密度が高い磁気記録媒体では、磁気記録トラックに対する磁気ヘッドの相対位置が狂いやすいため、磁気ヘッドを磁気記録トラックの中央に精度よく位置付けできるようにすることが要求されていた。
【0016】
また、図4に示す磁気記録媒体40では、図4(b)に示すように、データ記録パターン41aとバーストパターン43aとの形状が異なっているため、磁性層の形状が、ピッチやパターン幅等の相違する複数のパターン形状が混在してなる複雑な形状とされている。このため、図4に示す磁気記録媒体40においては、以下に示すように、磁性層からなるパターン形状の全てを高精度で形成することは困難であった。
【0017】
図4に示す磁気記録媒体40の製造工程において、磁性層からなるパターン形状を形成する際に用いられるレジストパターンの形状不良の原因としては、レジストの粘度、レジストの硬化温度、硬化時間、湿度、露光時間、露光強度等のさまざまなパターニング条件が挙げられる。これらのパターニング条件は、磁性層のパターン形状に応じて適宜決定される。
【0018】
しかしながら、図4に示す磁気記録媒体40のように、磁性層が複数のパターン形状の混在している複雑な形状を有するものである場合、レジストパターンを形成するための最適なパターニング条件を、パターン形状が異なることに起因する精度のバラツキが生じないように最適化することは困難であった。
具体的には例えば、レジストパターンを形成するためのパターニング条件を、データ記録パターン41aのパターン形状に対応するように決定すると、バーストパターン43aのパターン形状が不完全となってしまう。また、レジストパターンを形成するためのパターニング条件を、バーストパターン43aのパターン形状に対応するように決定すると、データ記録パターン41aのパターン形状が不完全となってしまう。
【0019】
このように、磁性層が複雑な形状を有している場合には、レジストパターンを形成するためのパターニング条件を十分に最適化することができず、磁気記録媒体上に形成される磁性層からなるパターン形状の全てを十分に高い精度で形成しうる高精度のレジストパターンを形成することは困難である。したがって、図4に示す従来の磁気記録媒体40においては、磁性層からなるパターン形状の全てを高精度で形成することは困難であった。
【0020】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、磁気ヘッドを磁気記録トラックの中央に精度よく位置付けできるとともに、磁性層からなるパターン形状を形成する際に用いられるレジストパターンを高精度で形成することができ、高精度のレジストパターンを用いて磁性層からなるパターン形状の全てを高精度で形成できるものとすることにより歩留まりよく製造できる磁気記録媒体を提供することを課題とする。
また、本発明は、本発明の磁気記録媒体を備え、磁気ヘッドを磁気記録トラックの中央に精度よく位置付けできるとともに、歩留まりよく製造できる磁気記録再生装置を提供することを課題とする。
また、本発明は、磁気ヘッドを磁気記録トラックの中央に精度よく位置付けできる磁気記録再生装置の信号処理方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明者は、レジストパターンの形状不良を改善して、磁性層のパターン形状を精度よく形成するために、以下に示すように、鋭意研究した。
すなわち、本発明者は、磁気記録媒体の磁性層が複雑な形状を有していることが、レジストパターンの形状の精度を低下させる主な原因であることを考慮し、磁性層の形状に着目して検討を重ねた。その結果、本発明者は、情報の読み書きされる磁気的に分離された環状の磁気記録パターンの一部に、トラッキングサーボ情報として、磁気記録パターンの半径方向の幅を部分的に異ならせてなるトラッキングサーボパターンを形成することで、磁性層の形状を単純化すれば、磁性層からなるパターン形状を形成する際に用いられるレジストパターンを高精度で形成することができるとともに、トラッキングサーボパターンを高密度で形成でき、磁気ヘッドを磁気記録トラックの中央に精度よく位置付けできることを見出し、本発明を想到した。
【0022】
すなわち本発明は次の構成を採用する。
(1)非磁性基板上に磁気的に分離された磁性層からなる環状の磁気記録パターンが備えられ、前記磁気記録パターンの一部に、前記磁気記録パターンの中央と側部との距離を片側のみ異ならせてなるトラッキングサーボパターンがトラッキングサーボ情報として形成されていることを特徴とする磁気記録媒体。
(2)前記トラッキングサーボ情報が、バースト情報を含むことを特徴とする(1)に記載の磁気記録媒体。
(3)前記トラッキングサーボパターンが、前記磁気記録パターンの中央と内側部との距離を異ならせてなる内側パターンと、前記磁気記録パターンの中央と外側部との距離を異ならせてなる外側パターンとを含むものであることを特徴とする(1)または(2)に記載の磁気記録媒体。
【0023】
(4)前記トラッキングサーボパターンが、前記磁気記録パターンの中央と内側部との距離を異ならせてなる複数の内側パターンを有するものであり、隣接する前記内側パターンが、前記磁気記録パターンにおける1データビット長の100倍以上の間隔を空けて配置されていることを特徴とする(1)〜(3)のいずれかに記載の磁気記録媒体。
(5)前記トラッキングサーボパターンが、前記磁気記録パターンの中央と外側部との距離を異ならせてなる複数の外側パターンを有するものであり、隣接する前記外側パターンが、前記磁気記録パターンにおける1データビット長の100倍以上の間隔を空けて配置されていることを特徴とする(1)〜(3)のいずれかに記載の磁気記録媒体。
【0024】
(6)磁気記録媒体と、該磁気記録媒体に情報を記録再生する磁気ヘッドとを備えた磁気記録再生装置であって、前記磁気記録媒体が(1)〜(5)の何れかに記載の磁気記録媒体であることを特徴とする磁気記録再生装置。
【0025】
(7)(5)に記載の磁気記録再生装置における信号処理方法であって、磁気ヘッドに、磁気記録媒体の磁気記録パターンから信号を読み出させる工程と、前記信号を周波数の差を用いて分離する工程と、前記信号を分離することにより前記信号からトラッキングサーボ情報が得られた場合、前記トラッキングサーボ情報の周波数に応じて、前記磁気ヘッドを前記磁気記録パターンの半径方向の中央に位置づけさせる工程とを備えることを特徴とする磁気記録再生装置の信号処理方法。
【発明の効果】
【0026】
本発明の磁気記録媒体は、非磁性基板上に磁気的に分離された磁性層からなる環状の磁気記録パターンが備えられ、前記磁気記録パターンの一部に、前記磁気記録パターンの中央と側部との距離を片側のみ異ならせてなるトラッキングサーボパターンがトラッキングサーボ情報として形成されているものであるので、サーボ情報領域にサーボ情報として磁性層からなるパターンを形成する場合のように、複雑な形状の磁性層を形成する必要がなく、磁性層の形状が単純なものとなる。したがって、磁性層からなるパターン形状を形成する際に用いられるレジストパターンを形成するためのパターニング条件を最適化して、高精度のレジストパターンを形成することができる。よって、本発明の磁気記録媒体においては、非磁性基板上に形成される磁性層からなるパターン形状の全てを、高精度のレジストパターンを用いて十分に高い精度で形成できる。その結果、本発明の磁気記録媒体は、歩留まりよく形成できる。
【0027】
また、本発明の磁気記録媒体では、磁気記録パターンの一部に、前記磁気記録パターンの中央と側部との距離を片側のみ異ならせてなるトラッキングサーボパターンがトラッキングサーボ情報として形成されているものであるので、トラッキングサーボパターンを高密度で形成することにより高密度でトラッキングサーボ情報を書き込むことができる。したがって、例えば、磁気記録媒体の半径方向に255箇所バーストパターンが設けられている従来の磁気記録媒体と比較して、トラッキングサーボ情報の情報量を増やすことができる。その結果、磁気ヘッドにより磁気記録パターンに情報を読み書きする際に、磁気ヘッドにトラッキングサーボ情報を読み込ませて、磁気記録再生装置のヘッド駆動部などに磁気記録トラックに対する磁気ヘッドの相対位置の微調整を行わせることにより、磁気ヘッドを磁気記録トラックの中央に精度よく位置付けできるものとなる。
【0028】
また、本発明の磁気記録再生装置は、本発明の磁気記録媒体を備えたものであるので、磁気ヘッドを磁気記録トラックの中央に精度よく位置付けできるとともに、歩留まりよく製造できるものとなる。
また、本発明の磁気記録再生装置の信号処理方法によれば、磁気ヘッドを磁気記録トラックの中央に精度よく位置付けできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
次に、本発明の磁気記録媒体およびその製造方法、磁気記録再生装置について、図面を参照して詳細に説明する。尚、以下の説明において参照する図面において、図示される各部の大きさや厚さや寸法等は、実際の磁気記録媒体および磁気記録再生装置の寸法関係とは異なっている場合がある。
【0030】
<磁気記録媒体>
まず、本発明の磁気記録媒体について例を挙げて説明する。
図1は、本発明の磁気記録媒体の一例を説明するための平面図であり、磁気記録媒体の一部の領域のみを拡大して示した拡大模式図である。なお、図1においては、上側が磁気記録媒体の外側であり、下側が磁気記録媒体の中心側(内側)である。
また、図2(i)は、図1に示す磁気記録媒体の断面構造を説明するための断面図であり、磁気記録媒体の一部を半径方向から見た拡大模式図である。なお、図2(i)においては、説明を容易にするために基板と磁性層と保護膜層のみを示す。また、図2(a)〜図2(h)は、図1に示す磁気記録媒体の製造工程の一部を説明するための工程図であり、図2(i)に示された領域と同じ領域のみを拡大して示した拡大断面図である。
【0031】
図1および図2(i)に示す磁気記録媒体50においては、円盤状の非磁性基板1上に、磁気的に分離された磁性層2からなる環状の複数の磁気記録パターン51aが備えられている。磁気記録パターン51aは、円盤状の磁気記録媒体50の回転中心に対して同心円状に規則的に複数形成されているものであり、50nm程度の幅の磁気記録トラックを構成するものである(図1においては、磁気記録媒体の一部を拡大して示しているため、磁気記録パターン51aが直線状に見える)。
【0032】
図2(i)に示すように、磁性層2には、凹部51cおよび凸部51bが形成されており、凹部51cを構成する磁性層2の磁気特性が改質されて非磁性化されていることにより、隣接する凸部51b間が磁気的に分離されている。凹部51cの幅は10nm〜100nm程度であることが好ましく、凸部51bの幅は20nm〜200nm程度であることが好ましい。なお、本実施形態において、磁気記録パターン51aの幅である凸部51bの幅は、磁気記録トラックの幅である。
ここで、磁性層2が「磁気的に分離されている」とは、少なくとも磁性層2の表面において磁気的に分離されていればよく、磁性層2の底部においては分離されていなくてもよい。
【0033】
図1に示すように、磁気記録パターン51aの一部には、トラッキングサーボ情報としてトラッキングサーボパターン33が設けられている。本実施形態におけるトラッキングサーボ情報は、バースト情報を含むものである。バースト情報とは、磁気ヘッドを磁気記録トラックの中央(磁気記録パターン51aの幅の中央)に位置付けさせるための情報である。
【0034】
トラッキングサーボパターン33は、図1に示すように、凸部33aが設けられていることによって、磁気記録パターン51aの中央と側部との磁気記録媒体50の半径方向の距離を片側のみ異ならせてなるものである。凸部33aは、磁気記録媒体50の半径方向を短軸、磁気記録媒体50の円周方向を長軸とする平面視半楕円状のものである。
なお、トラッキングサーボパターン33は、磁気記録パターン51aの中央と側部との距離を片側のみ異ならせてなるものであればよく、図1に示す例に限定されるものではない。具体的には、トラッキングサーボパターン33は、図1に示す例のように、磁気記録パターン51aの中央と側部との距離を広げるものであってもよいし、磁気記録パターン51aの中央と側部との距離を縮めるものであってもよい。また、トラッキングサーボパターン33を構成する凸部33aの形状は、例えば、平面視半円状や平面視多角形状であってもよい。
【0035】
また、トラッキングサーボパターン33は、図1に示すように、内側パターン33bと外側パターン33cとを含むものである。
内側パターン33bは、磁気記録パターン51aの内側に、磁気記録パターン51aの延在方向に沿って等間隔で設けられた複数の凸部33aを有するものであり、磁気記録パターン51aの中央と内側部との磁気記録媒体50の半径方向の距離を広げてなるものである。
また、外側パターン33cは、磁気記録パターン51aの外側に磁気記録パターン51aの延在方向に沿って等間隔で設けられた複数の凸部33aを有するものであり、磁気記録パターン51aの中央と外側部との磁気記録媒体50の半径方向の距離を広げてなるものである。
【0036】
本実施形態においては、図1に示すように、磁気記録パターン51aの一部にトラッキングサーボパターン33が形成されているので、磁気ヘッド(不図示)が磁気記録トラックの中央(磁気記録パターン51aの幅の中央)に位置付けされていない場合には、磁気ヘッドにより磁気記録トラック(磁気記録パターン51a)から信号を読み出させると、磁気ヘッドと磁気記録トラックとのずれ量に対応する周波数を有するトラッキングサーボ情報を含む信号が出力される。また、本実施形態においては、トラッキングサーボパターン33が、磁気記録パターン51aの円周方向に設けられた内側パターン33bと、磁気記録パターン51aの円周方向に設けられた外側パターン33cとを含むものであるので、磁気記録トラックに対する磁気ヘッドの相対位置が磁気記録トラックの内側にずれている場合でも外側にずれている場合でも、磁気ヘッドと磁気記録トラックとのずれ量に対応する周波数を有するトラッキングサーボ情報を含む信号が出力される。
しかし、磁気ヘッドが磁気記録トラックの中央に位置付けされている場合には、磁気ヘッドにより磁気記録パターン51aから信号を読み出させても、トラッキングサーボ情報を含む信号が出力されない。
【0037】
したがって、本実施形態の磁気記録媒体50においては、磁気ヘッドにより磁気記録パターン51aから信号を読み込ませてトラッキングサーボ情報が出力されるか否かによって、磁気ヘッドが磁気記録トラックの中央に位置付けされているかどうかが検出されるようになっている。さらに、本実施形態の磁気記録媒体50においては、磁気ヘッドにより磁気記録パターン51aから信号を読み込ませて、トラッキングサーボ情報が出力された場合には、トラッキングサーボ情報の周波数の大きさによって、磁気ヘッドと磁気記録トラックとのずれ量を検出できるようになっている。
よって、本実施形態の磁気記録媒体50は、磁気ヘッドにより磁気記録パターン51aに情報を読み書きする際に、磁気ヘッドにトラッキングサーボ情報を読み込ませ、得られたトラッキングサーボ情報に基づいて、磁気記録再生装置のヘッド駆動部(図示略)に磁気記録トラックに対する磁気ヘッドの相対位置の微調整を行わせることにより、磁気ヘッドを磁気記録トラックの中央に位置付けできるものとされている。
【0038】
また、磁気記録パターン51aの延在方向において隣接する内側パターン33bおよび磁気記録パターン51aの延在方向に隣接する外側パターン33cは、それぞれ、以下に示すように、磁気記録パターン51aにおける1データビット長の100倍以上1000倍以下の間隔36、37(ピッチ)を空けて配置されていることが好ましい。
すなわち、本実施形態においては、磁気記録パターン51aの一部にトラッキングサーボパターン33が形成されているので、磁気ヘッドが磁気記録トラックの中央に位置付けされていない場合に、磁気ヘッドにより情報の書き込まれた磁気記録パターン51aから信号を読み出させると、出力された信号には、書き込みデータ信号とトラッキングサーボ情報とが含まれることになる。
【0039】
例えば、磁気ヘッドにより磁気記録媒体50の磁気記録パターン51aに100MHzの周波数で情報が書き込まれていて、磁気ヘッドが磁気記録トラックの中央に位置付けされていない場合、その磁気記録パターン51aから磁気ヘッドにより信号を読み出させると、100MHzの周波数で出力される書き込みデータ信号にトラッキングサーボ情報が混合されて混合信号として出力される。このとき、内側パターン33b間の間隔37および外側パターン33c間の間隔36が、1データビット長の100倍以上であると、トラッキングサーボパターン33から出力されるトラッキングサーボ情報が、トラッキングサーボ情報の書き込まれている間隔(言い換えると、内側パターン33b間の間隔37および外側パターン33c間の間隔36)によって1MHz以下の周波数(最大で書き込みデータ信号の1/100の周波数)で出力されるものとなる。
【0040】
このように、内側パターン33b間の間隔37および外側パターン33c間の間隔36が1データビット長の100倍以上である場合、書き込みデータ信号の周波数と、内側パターン33bおよび外側パターン33cから得られるトラッキングサーボ情報との周波数との間に、100倍以上の大きな差が生じることになる。したがって、磁気ヘッドにより磁気記録パターン51aから読み出された信号に、トラッキングサーボ情報が含まれている場合に、書き込みデータ信号とトラッキングサーボ情報との周波数の差を用いて、書き込みデータ信号とトラッキングサーボ情報との混合信号を分離することにより、容易にトラッキングサーボ情報が得られるものとなる。
【0041】
これに対し、内側パターン33b間の間隔37および外側パターン33c間の間隔36が1データビット長の100倍未満である場合、書き込みデータ信号の周波数とトラッキングサーボ情報の周波数との差が小さくなるので、書き込みデータ信号とトラッキングサーボ情報との混合信号からトラッキングサーボ情報を分離しにくくなる恐れや、トラッキングサーボ情報が書き込みデータ信号によって打ち消されてしまう恐れがある。
【0042】
また、内側パターン33b間の間隔37および外側パターン33c間の間隔36が1データビット長の1000倍を超える場合、書き込みデータ信号の周波数とトラッキングサーボ情報の周波数との差は大きくなるが、トラッキングサーボ情報の周波数が小さくなりすぎて、書き込みデータ信号とトラッキングサーボ情報との混合信号からトラッキングサーボ情報を取り出しにくくなる恐れがある。また、トラッキングサーボ情報に基づく磁気ヘッドの追従性が低下する恐れがある。
【0043】
ここで、書き込みデータ信号とトラッキングサーボ情報との混合信号を分離する方法としては、ローパスフィルターおよび/またはバンドパスフィルターを用いる方法などが挙げられる。ローパスフィルターおよび/またはバンドパスフィルターを用いる方法によれば、書き込みデータ信号とトラッキングサーボ情報との混合信号からトラッキングサーボ情報のみを容易に取り出すことができる。
【0044】
また、本実施形態においては、トラッキングサーボパターン33を構成する凸部33a間の距離が、図1に示すように、磁気記録パターン51aの外側(図1における上側)と内側(図1における下側)とで異なっており、内側パターン33b間の間隔37と外側パターン33c間の間隔36とが異なっている。このため、本実施形態においては、磁気記録パターン51aの外側のトラッキングサーボパターン33(外側パターン33c)の密度と、磁気記録パターン51aの内側のトラッキングサーボパターン33(内側パターン33b)の密度とが異なるものとなっている。
【0045】
また、本実施形態においては、外側パターン33c間の間隔36が、内側パターン33b間の間隔37よりも近くなっており、外側パターン33cの密度が、内側パターン33bの密度よりも高密度となっている。このように、トラッキングサーボパターン33の密度を、磁気記録パターン51aの外側と内側とで異ならせることで、磁気ヘッドから出力されたトラッキングサーボ情報により、磁気記録トラックに対する磁気ヘッドの相対位置が磁気記録トラックの内側にずれているか外側にずれているかを容易に検知できるものとなる。
【0046】
例えば、図1に示すトラッキングサーボパターン33において、外側パターン33cの密度を内側パターン33bの密度の2倍にすると、磁気ヘッドが磁気記録パターン51aの外側にずれている場合に、磁気ヘッドが磁気記録パターン51aの内側にずれている場合の2倍の周波数のトラッキングサーボ情報が出力されることになる。
具体的には、例えば、外側パターン33c間の間隔36が1データビット長の100倍であり、内側パターン33b間の間隔37が1データビット長の200倍である場合に、磁気ヘッドが磁気記録パターン51aの外側にずれていることにより、1MHzの周波数でトラッキングサーボ情報が出力された場合、磁気ヘッドと磁気記録トラックとのずれ量が同じで、磁気ヘッドが磁気記録パターン51aの内側にずれていると、0.5MHzの周波数のトラッキングサーボ情報が出力されることになる。
【0047】
また、図1に示す磁気記録媒体50は、図2(i)に示すように、非磁性基板1上に磁性層2が形成され、磁性層2の上に保護膜層9が形成され、保護膜層9上に潤滑層(図2においては図示略)が形成されているものである。なお、本実施形態においては、保護膜層および潤滑層が設けられている磁気記録媒体を例に挙げて説明するが、保護膜層および潤滑層は設けられていなくてもよい。
【0048】
非磁性基板1としては、Alを主成分とした例えばAl−Mg合金等のAl合金基板や、通常のソーダガラス、アルミノシリケート系ガラス、結晶化ガラス類、シリコン、チタン、セラミックス、各種樹脂からなる基板など任意のものを用いることができる。これらの中でも、非磁性基板1として、Al合金基板や結晶化ガラス等のガラス製基板またはシリコン基板を用いることが好ましい。また、非磁性基板1の平均表面粗さ(Ra)は、1nm以下、さらには0.5nm以下であることが好ましく、0.1nm以下であることがより好ましい。
【0049】
磁性層2は、Coを主成分とする合金から形成することが好ましい。また、磁性層2は、面内磁性層であっても垂直磁性層であってもかまわないが、より高い記録密度を実現するためには垂直磁性層であることが好ましい。
例えば、面内磁性層用の磁性層2としては、非磁性のCrMo下地層と強磁性のCoCrPtTa磁性層とからなる積層構造などを用いることができる。
また、例えば、垂直磁性層用の磁性層2としては、軟磁性のFeCo合金(FeCoB、FeCoSiB、FeCoZr、FeCoZrB、FeCoZrBCuなど)、FeTa合金(FeTaN、FeTaCなど)、Co合金(CoTaZr、CoZrNB、CoBなど)等からなる裏打ち層と、必要に応じて設けられるPt、Pd、NiCr、NiFeCrなどの配向制御膜と、必要に応じて設けられるRu等の中間膜と、60Co−15Cr−15Pt合金や70Co−5Cr−15Pt−10SiO2合金などからなる磁性膜とからなる積層構造の磁性層などを用いることができる。
【0050】
磁性層2の膜厚は、磁性層2に用いられる磁性材料の種類や積層構造などに応じて、十分なヘッド出入力が得られる厚みとなるように決定される。磁性層2は、磁気記録媒体50から情報を再生する際に一定以上の出力を得るために、ある程度以上の膜厚が必要である。しかし、磁気記録再生装置の記録再生特性を表す諸パラメーターは、出力の上昇とともに劣化するのが通例であるため、磁性層2の膜厚を最適に設定する必要がある。具体的には、磁性層2の膜厚は、3nm以上20nm以下とされることが好ましく、5nm以上15nm以下とすることがより好ましい。
【0051】
保護膜層9としては、Diamond Like Carbonなどの炭素(C)、水素化炭素(HxC)、窒素化炭素(CN)、アルモファスカーボン、炭化珪素(SiC)等の炭素質層やSiO2、Zr23、TiNなど、通常用いられる保護膜層材料を用いることができる。また、保護膜層9は、2層以上の層から構成されていてもよい。
保護膜層9の膜厚は10nm以下とすることが好ましい。保護膜層9の膜厚が10nmを越えると磁気ヘッドと磁性層2との距離が大きくなり、十分な出入力信号の強さが得られなくなる恐れがある。
【0052】
また、保護膜層9の上には潤滑層(図示略)を形成することが好ましい。潤滑層に用いる潤滑剤としては、フッ素系潤滑剤、炭化水素系潤滑剤及びこれらの混合物等が挙げられる。潤滑層の厚みは、通常1〜4nmとされる。
【0053】
<磁気記録媒体の製造方法>
次に、本発明の磁気記録媒体の製造方法として、図1(a)および図2(i)に示す本実施形態の磁気記録媒体の製造方法を例に挙げて詳細に説明する。
まず、図2(a)に示すように、円盤状の非磁性基板1上に、スパッタ法などにより磁性層2を形成する。
次いで、図2(b)に示すように、磁性層2上にマスク層3を形成する。マスク層3は、スパッタリング法やCVD法などにより成膜することができる。
【0054】
マスク層3は、Ta、W、Ta窒化物、W窒化物、Si、SiO2、Ta25、Re、Mo、Ti、V、Nb、Sn、Ga、Ge、As、Niからなる群から選ばれた何れか一種以上を含む材料で形成することが好ましい。マスク層3の材料としては、上記の材料の中でも、As、Ge、Sn、Gaを用いることが好ましく、Ni、Ti、V、Nbを用いることがより好ましく、Mo、Ta、W、Cを用いることが最も好ましい。
マスク層3として、上記の材料からなるものを用いることにより、磁性層2の一部をイオンミリングなどによって除去する工程における磁性層2の遮蔽性に優れたものとなるとともに、マスク層3による磁気記録パターン51aの形成精度を向上させることができる。さらに、上記の材料は、酸素ガスなどの反応性ガスを用いたドライエッチング(反応性イオンエッチングまたは反応性イオンミリング)を容易に行うことができるものであるため、磁性層2上にマスク層3を設けることにより、後述するレジスト層を除去する工程における磁性層2上の残留物を減らすことができ、磁性層2の表面の汚染を減少させることができる。
【0055】
次に、図2(c)に示すように、マスク層3の上にレジスト層4を形成する。レジスト層4は、スピンコート法によりマスク層3上にレジストを塗布する方法などにより形成できる。
レジスト層4は、放射線照射により硬化するレジストからなるものであることが好ましい。なお、ここでの放射線とは、熱線、可視光線、紫外線、X線、ガンマ線等の広い概念の電磁波である。また、放射線照射により硬化するレジストとしては、例えば、熱線により硬化する熱硬化樹脂、紫外線により効果する紫外線硬化樹脂などが挙げられる。紫外線硬化樹脂としては、例えば、ノボラック系樹脂、アクリル酸エステル類、脂環式エポキシ類等が挙げられる。
【0056】
次に、マスク層3およびレジスト層4のパターニングを行う。マスク層3およびレジスト層4をパターニングするには、まず、図2(d)に示すように、非磁性基板1上に形成される磁性層2からなる磁気記録パターン51aのネガパターンを、レジスト層4に形成する。ここで形成するネガパターンとは、磁気記録パターン51a間に配置される分離領域(凹部51c)に対応する領域のレジスト層4に凹部を形成したものである。
【0057】
レジスト層4にネガパターンを形成する方法としては、通常のフォトリソグラフィー技術を用いてもよいが、レジスト層4にスタンプ5を用いて、パターンの形状を転写する方法を用いることが作業効率の点から好ましい。スタンプ5を用いてレジスト層4にパターンの形状を転写する方法としては、例えば、図2(d)における矢印で示すように、レジスト層4にスタンプ5を所定の圧力で押圧することによりパターンを転写した後、レジスト層4からスタンプ5を分離する方法が挙げられる。
【0058】
スタンプ5としては、中心に対して同心円状(複数の円環状)のパターンであって、磁気記録パターン51aに対応する形状を有するパターンの形成されたものが用いられる。スタンプ5の材料としては、パターンの形状を転写するために必要な硬度および耐久性を有するものであればよく、特に限定されないが、例えばガラスやNi、樹脂などを好ましく使用できる。具体的には、例えば、スタンプ5として、金属プレートに電子線描画などの方法を用いてパターンが形成されたものなどを使用できる。
【0059】
なお、本実施形態においては、レジスト層4に用いる材料を、放射線照射により硬化する材料とし、レジスト層4にスタンプ5を用いてパターンを転写する工程に際して、または、レジスト層4にパターンを転写する工程の後に、レジスト層4に放射線を照射して、レジスト層4を硬化させることが好ましい。
このような製造方法を用いることにより、レジスト層4に、スタンプ5の形状を精度良く転写することができる。また、後述するマスク層3の一部を除去する工程において、マスク層3のエッジの部分にダレが発生することを防止でき、図2(f)に示す磁性層2の一部を除去する工程や磁性層2の磁気特性を改質する工程におけるマスク層3の遮蔽性を向上させるとともに、磁気記録パターン51aの形成精度を向上させることができる。
【0060】
また、本実施形態の製造方法におけるレジスト層4にスタンプ5を用いてパターンを転写する工程においては、レジスト層4の流動性が高い状態で、レジスト層4にスタンプ5を押圧し、レジスト層4にスタンプ5を押圧した状態でレジスト層4に放射線を照射することによりレジスト層4を硬化させ、その後、スタンプ5をレジスト層4から分離する方法を用いてもよい。このような製造方法とした場合、スタンプ5の形状をより一層精度良く、レジスト層4に転写することができ、好ましい。
また、このような製造方法を用いた場合、スタンプ5の形状を精度良くレジスト層4に転写でき、高精度のレジストパターンを形成することができるので、後述する磁性層2の磁気特性を改質する工程において、磁性層2の保磁力、残留磁化を極限まで低減させることが可能となり、磁気記録の際の書きにじみがなく、高い面記録密度を有する磁気記録媒体を提供することが可能となる。
【0061】
レジスト層4にスタンプ5を押圧した状態で、レジスト層4に放射線を照射する方法としては、例えば、スタンプ5の反対側、すなわち非磁性基板1側から放射線を照射する方法や、スタンプ5の材料として放射線を透過できる物質を選択し、スタンプ5側から放射線を照射する方法、スタンプ5の側面から放射線を照射する方法、熱線のように固体に対して伝導性の高い放射線を用いて、スタンプ材料または非磁性基板1からの熱伝導により放射線を照射する方法などを用いることができる。
中でも特に、レジスト材料として紫外線硬化樹脂を用いるとともに、スタンプ材料として紫外線の透過性に優れたガラスや樹脂を用い、レジスト層4にスタンプ5を押圧した状態で、スタンプ5側から紫外線を照射することにより、レジスト層4を硬化させることが好ましい。
【0062】
次に、図2(d)に示すネガパターンを形成した後に残ったレジスト層8と、磁気記録パターン51a間に配置される凹状の分離領域(凹部51c)に対応する領域のマスク層3とを除去する。このことにより、図2(e)に示すように、磁性層2上の凸部51bとなる領域に残存するマスク層3と、パターニングされたレジスト層4であるレジストパターン4aとからなるマスクが形成される。
【0063】
スタンプ5を用いてネガパターンを形成した後に残ったレジスト層8は、反応性イオンエッチング、イオンミリングなどのドライエッチングにより除去できる。
ネガパターンを形成した後に残ったレジスト層8の厚みは0〜10nmの範囲内であることが好ましい。レジスト層8の厚みを上記範囲とすることで、磁気記録パターン51aの凹状の分離領域(凹部51c)に対応する領域のマスク層3を除去する工程において、マスク層3のエッジの部分にダレが発生することを防止でき、図2(f)に示す磁性層2の一部を除去する工程におけるマスク層3の遮蔽性を向上させるとともに、磁気記録パターン51aの形成精度を向上させることができる。
また、磁気記録パターン51a間に配置される凹状の分離領域(凹部51c)に対応する領域のマスク層3は、例えば、反応性イオンエッチング、イオンミリングなどのドライエッチングにより除去できる。
【0064】
次に、図2(f)に示すように、マスク層3が除去されて露出した磁気記録パターン51a間に配置される凹状の分離領域(凹部51c)となる領域の磁性層2の表層部を0.1nm〜15nmの範囲内の深さdで、例えばイオンミリングのミリングイオン6などによって除去する。ここで、磁性層2の表層の一部を除去する深さdは、0.1nm〜15nmの範囲内とすることが好ましく、1〜10nmの範囲内とすることがより好ましい。磁性層2の表層を除去する深さdが0.1nmより小さいと、磁性層2を除去する効果が十分に得られない恐れがある。また、磁性層2の表層を除去する深さdが15nmより大きいと、磁気記録媒体50の表面の平滑性が悪化して、磁気記録媒体50を用いた磁気記録再生装置における磁気ヘッドの浮上特性を低下させてしまう恐れがある。
【0065】
本実施形態のように、マスク層3が除去されて露出した磁性層2の磁気特性を改質する工程の前に、磁性層2の表層の一部を除去した場合、磁性層2の表層の一部を除去しないで磁性層2の磁気特性を改質した場合と比較して、磁気記録パターン51aのコントラストがより鮮明になるとともに、磁気記録媒体50のS/Nを向上させることができる。この理由は、磁性層2の表層の一部を除去することにより、マスク層3が除去されて露出した磁性層2の表面の清浄化・活性化が図られて、磁性層2の磁気特性を改質する際における反応性プラズマや反応性イオンと磁性層2との反応性が高められるとともに、磁性層2の表層に空孔等の欠陥が導入されて、磁性層2の磁気特性を改質する際に表層の欠陥を通じて磁性層2に反応性イオンが侵入しやすくなったためと考えられる。
【0066】
次に、図2(f)に示すように、表層部の除去された領域7の磁性層2を反応性プラズマや反応性イオンにさらして、磁性層2の磁気特性を改質する。磁性層2の磁気特性の改質された領域は、磁気記録パターン51aからなる複数の磁気記録トラックをそれぞれ磁気的に分離する領域となる。
ここで、磁気記録パターン51aを形成するための磁性層2の改質とは、磁性層2をパターン化するために、磁性層2の保磁力や残留磁化等の磁気特性を部分的に変化させることを意味する。本実施形態においては、磁性層2を改質することにより、磁性層2の保磁力を低下させるととともに、残留磁化を低下させる。
【0067】
磁性層2の磁気特性を改質する際に用いられる反応性プラズマとしては、誘導結合プラズマ(ICP;Inductively Coupled Plasma)や反応性イオンプラズマ(RIE;Reactive Ion Plasma)などが例示できる。
誘導結合プラズマは、気体に高電圧をかけることによってプラズマ化し、そのプラズマ内部に高周波数の変動磁場によって渦電流によるジュール熱を発生させることによって得られる高温のプラズマである。誘導結合プラズマは電子密度が高く、従来のイオンビームを用いる場合と比較して、広い面積の磁性膜の磁気特性の改質を高い効率で実現できる。
【0068】
反応性イオンプラズマは、プラズマ中にO2、SF6、CHF3、CF4、CCl4等の反応性ガスを加えた反応性の高いプラズマである。反応性イオンプラズマを用いることにより、磁性膜2の磁気特性の改質をより高い効率で実現することができる。
また、磁性層2の磁気特性を改質する反応性イオンとしては、前述の誘導結合プラズマや反応性イオンプラズマ内に存在する反応性のイオンなどが挙げられる。
【0069】
なお、本発明の磁気記録媒体の製造方法は、上述した実施形態に限定されるものではない。例えば、上述した実施形態においては、磁性層2の表層の一部を改質することにより磁気的に分離された磁性層を形成したが、磁性層を物理的に加工して磁性層に凹部を形成し、凹部内を非磁性材料で埋めた後、磁気記録媒体の表面を平滑化する方法によって磁気的に分離された磁性層を形成してもよい。
【0070】
このようにして磁性層2の一部の磁気特性を改質した後、図2(g)に示すように、磁性層2の上に設けられているレジストパターン4aおよびマスク層3を除去する。レジストパターン4aおよびマスク層3は、ドライエッチング、反応性イオンエッチング、イオンミリング、湿式エッチングなどの手法を用いて除去することが好ましい。
【0071】
レジストパターン4aおよびマスク層3を除去した後、図2(h)に示すように、磁性層2にArなどの不活性ガス11を照射して、磁性層2の表層部を1〜2nmの範囲内でエッチング除去することが好ましい。このことにより、磁性層2の一部の磁気特性を改質することによって磁性層2の表面が粗面化されている場合であっても、粗面化された磁性層2の表面を除去することができる。
【0072】
次いで、図2(i)に示すように、磁性層2上に保護膜層9を形成することが好ましい。通常、保護膜層9はスパッタ法もしくはCVD法により形成される。
さらに、保護膜層9の上には潤滑層(図示略)を形成することが好ましい。
以上のようにして、図1〜図3に示すディスクリート型磁気記録媒体40が製造される。
【0073】
本実施形態の磁気記録媒体50は、非磁性基板1上に磁気的に分離された磁性層2からなる環状の磁気記録パターン51aが備えられ、磁気記録パターン51aの一部に、磁気記録パターン51aの中央と側部との距離を片側のみ異ならせてなるトラッキングサーボパターン33がトラッキングサーボ情報として形成されているものであるので、サーボ情報領域にサーボ情報として磁性層からなるパターンが形成されている場合のように、複雑な形状の磁性層を形成する必要がなく、磁性層2の形状を単純なものとすることができる。
したがって、磁性層2からなるパターン形状を形成する際に用いられるレジストパターン4aを形成するためのパターニング条件を最適化して、高精度のレジストパターン4aを形成することができる。よって、本実施形態の磁気記録媒体50においては、非磁性基板1上に形成される磁性層2からなるパターン形状の全てを、高精度のレジストパターン4aを用いて十分に高い精度で形成でき、歩留まりよく形成できる。
【0074】
また、本実施形態の磁気記録媒体50では、磁気記録パターン51aの一部に、磁気記録パターン51aの中央と側部との距離を片側のみ異ならせてなるトラッキングサーボパターン33がトラッキングサーボ情報として形成されているものであるので、磁気記録媒体50上の情報の読み書きされる領域を減少させることなく、トラッキングサーボパターン33を高密度で形成することにより高密度でトラッキングサーボ情報を書き込むことができる。したがって、例えば、磁気記録媒体の半径方向に255箇所バーストパターンが設けられている従来の磁気記録媒体と比較して、トラッキングサーボ情報の情報量を増やすことができ、磁気ヘッドを磁気記録トラックの中央に精度よく位置付けできるものとなる。
【0075】
<磁気記録再生装置>
次に、本発明の磁気記録再生装置について例を挙げて説明する。
図3は、本発明の磁気記録再生装置の一例であるハードディスクドライブを示した概略斜視図である。図3に示すハードディスクドライブは、図1に示すディスクリート型の磁気記録媒体50と、磁気記録媒体50を記録方向に駆動する媒体駆動部34と、記録部と再生部とを備える磁気ヘッド27と、磁気ヘッド27を磁気記録媒体50に対して相対運動させるヘッド駆動部28と、磁気ヘッド27への信号入力と磁気ヘッド27からの出力信号再生を行うための記録再生信号系29(記録再生信号処理手段)とを具備するものである。
【0076】
図3に示すハードディスクドライブでは、磁気ヘッドにより磁気記録媒体50の磁気記録パターン51aに情報を読み書きする際に、磁気ヘッド27にトラッキングサーボ情報を読み込ませ、得られたトラッキングサーボ情報を用いて、随時、磁気記録トラックに対する磁気ヘッドの相対位置の微調整を行いながら、磁気ヘッドを磁気記録トラックの中央に位置付けさせている。
【0077】
次に、図3に示すハードディスクドライブにおける信号処理方法として、磁気ヘッド27を磁気記録パターン51aの半径方向の中央に位置づけさせる際における信号処理方法について説明する。
まず、磁気ヘッド27に、磁気記録媒体50の磁気記録パターン51aから信号を読み出させる。次いで、磁気ヘッド27により磁気記録パターン51aから読み出された信号を、ローパスフィルターおよび/またはバンドパスフィルターなどにより周波数の差を用いて分離する。そして、磁気記録パターン51aから読み出された信号を分離することにより信号からトラッキングサーボ情報が得られた場合(すなわち、磁気ヘッドが磁気記録トラックの中央に位置付けされていない場合)、トラッキングサーボ情報の周波数に応じて、磁気ヘッド27と磁気記録トラックとのずれ量を検出させ、検出されたずれ量に基づいてヘッド駆動部28により磁気ヘッド27を磁気記録媒体50に対して相対移動させ、磁気ヘッド27を磁気記録パターン51aの半径方向の中央に位置づけさせる。
【0078】
図3に示すハードディスクドライブは、図1に示すディスクリート型の磁気記録媒体50を備えたものであるので、磁気ヘッド27を磁気記録トラックの中央に精度よく位置付けできるとともに、歩留まりよく製造できるものとなる。
また、本実施形態のハードディスクドライブの信号処理方法によれば、磁気ヘッド27を磁気記録トラックの中央に精度よく位置付けできる。
【実施例】
【0079】
以下、実施例を示して本発明を具体的に説明する。
(実施例)
まず、真空チャンバ内に、円盤状のハードディスク(HD)用のガラス基板を設置して、1.0×10―5Pa以下に真空排気した。なお、ガラス基板としては、Li2Si25、Al23−K2O、Al23−K2O、MgO−P25、Sb23−ZnOを構成成分とする結晶化ガラスからなり、外径65mm、内径20mm、平均表面粗さ(Ra)2オングストロームのものを用いた。
【0080】
該ガラス基板にDCスパッタリング法を用いて、FeCoB軟磁性膜からなる裏打ち層と、Ruからなる中間層と、70Co−5Cr−15Pt−10SiO2合金からなる磁性膜とをこの順で積層してなる磁性層を形成した。続いて、スパッタ法を用いて、磁性層上にTaからなるマスク層を積層し、マスク層の上にスピンコート法によりレジストを塗布し、紫外線硬化樹脂であるノボラック系樹脂からなるレジスト層を形成した。
それぞれの層の膜厚は、裏打ち層60nm、中間層10nm、磁性膜15nm、マスク層60nm、レジスト層100nmとした。
【0081】
次いで、磁気記録媒体の磁気記録パターンに対応するパターンの形成された紫外線透過率95%以上のガラスからなるスタンプを、レジスト層に1MPa(約8.8kgf/cm2)の圧力で押圧することによりパターンを転写した。続いて、波長250nmの紫外線をスタンプの上部から10秒間照射して、レジスト層を硬化させた。その後、レジスト層からスタンプを分離した。
【0082】
次に、ネガパターンを形成した後に凹部に残っていたレジスト層をドライエッチングにより除去した。ドライエッチング条件は、O2ガスを40sccm、圧力0.3Paで高周波プラズマ電力300W、DCバイアス30W、エッチング時間10秒とした。
その後、レジスト層を除去して露出した磁気記録パターン間に配置される凹状の分離領域に対応する領域のマスク層をドライエッチングにより除去した。ドライエッチング条件は、CF4ガスを50sccm、圧力0.6Pa、高周波プラズマ電力500W、DCバイアス60W、エッチング時間30秒とした。このことにより、磁性層上の凸部となる領域に残存するマスク層と、パターニングされたレジスト層であるレジストパターンとからなるマスクを形成した。
【0083】
その後、マスク層が除去されて露出した磁性層の表層部をイオンミリングにより除去した。イオンミリングにはArイオンを用いた。イオンミリングにおけるイオンの量は5×1016原子/cm2、加速電圧は20keVとした。また、イオンミリングにより除去された磁性層の表層の深さは0.1nmであった。
【0084】
次に、表層部の除去された領域の磁性層を反応性プラズマにさらして磁性層の磁気特性を改質した。ここでの反応性プラズマ処理には、アルバック社の誘導結合プラズマ装置NE550を用いた。また、プラズマの発生に用いるガスおよび条件としては、O2を90cc/分を用い、プラズマ発生のための投入電力は200W、装置内の圧力は0.5Paとし、磁性層を300秒間処理した。
【0085】
磁性層の磁気特性を改質した後、磁性層の上に設けられているレジストパターンおよびマスク層をドライエッチングにより除去し、磁気記録パターンを露出させた。
このようにして得られた磁気記録パターンは、凸部の幅(磁気記録トラックの幅)が120nm、凹部の幅が60nmの円環状であり、磁気記録パターンの一部には、トラッキングサーボ情報として、磁気記録媒体の半径方向を短軸、磁気記録媒体の円周方向を長軸とし、短軸20nm、長軸30nmの平面視半楕円状の凸部を有するトラッキングサーボパターンが形成されていた。また、磁気記録媒体の平均のビット長は100nmであり、磁気記録パターンの中央と側部との距離を外側に向かって広げる外側パターン間の間隔(ピッチ)は1データビット長の200倍、磁気記録パターンの中央と側部との距離を内側に向かって広げる内側パターン間の間隔(ピッチ)は1データビット長の300倍であった。
【0086】
なお、本実施例の磁気記録媒体は約5000rpmの回転数で使用されるものであり、磁気ヘッドによる磁気記録媒体への情報の読み書きは約100MHzで行われるものである。したがって、外側パターンから得られるトラッキングサーボ情報は最大約0.5MHzで出力され、内側パターンから得られるトラッキングサーボ情報は最大約0.3MHzで出力される。
【0087】
その後、磁気記録パターンの露出された表面上に、CVD法によりカーボンからなる厚み5nmの保護膜層を形成した。続いて、保護膜層の上に、潤滑材を塗布して潤滑層を形成した。
【0088】
その後、磁気記録媒体をサーボライターに設置し、サーボライターの磁気ヘッドにトラッキングサーボ情報を読み込ませ、得られたトラッキングサーボ情報を用いて、随時、磁気記録トラックに対する磁気ヘッドの相対位置の微調整を行いながら、磁気ヘッドを磁気記録トラックの中央に位置付けさせ、磁気記録パターンに磁気的に、プリアンブル情報(幅約0.5μm)、およびアドレス情報(幅約1μm)をこの順で書き込んだ。
【0089】
以上の方法で製造した磁気記録媒体について、電磁変換特性(SNRおよび3T−squash)を測定した。
電磁変換特性の評価はスピンスタンドを用いて実施した。なお、評価用の磁気ヘッドには、記録用として垂直記録ヘッド、読み込み用としてTuMRヘッド(Tunneling Magneto Resistive head)を用い、750kFCIの信号を記録したときのSNR値および3T−squashを測定した。ここで、3T−squash(3トラックスカッシュ)とは、センタートラックに信号を記録した後、センターの両隣に信号を記録し、両隣に信号を記録する前と後とにおけるセンタートラックの信号強度(割合(%))である。
【0090】
その結果、上記の方法により製造された磁気記録媒体は、SNRが13.6dB、3T−squashが87%であり、電磁変換特性に優れていた。
【産業上の利用可能性】
【0091】
本発明によれば、高い製造歩留まりで磁気記録パターンを有する磁気記録媒体を製造することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0092】
【図1】図1は、本発明の磁気記録媒体の一例を説明するための平面図であり、磁気記録媒体の一部の領域のみを拡大して示した拡大模式図である。
【図2】図2(i)は、図1に示す磁気記録媒体の断面構造を説明するための断面図であり、磁気記録媒体の一部を半径方向から見た拡大模式図である。また、図2(a)〜図2(h)は、図1に示す磁気記録媒体の製造工程の一部を説明するための工程図であり、図2(i)に示された領域と同じ領域のみを拡大して示した拡大断面図である。
【図3】図3は、本発明の磁気記録再生装置の一例であるハードディスクドライブを示した概略斜視図である。
【図4】図4は、従来のディスクリート型の磁気記録媒体の一例を説明するための平面図であり、図4(a)はディスクリート型の磁気記録媒体の全体を示した模式図であり、図4(b)は図4(a)において矩形で示したディスクリート型の磁気記録媒体の一部の領域のみを拡大して示した拡大模式図である。
【符号の説明】
【0093】
1…非磁性基板、2…磁性層、3…マスク層、4…レジスト層、4a…レジストパターン、5…スタンプ、6…ミリングイオン、8…レジスト層、9…保護膜層、11…不活性ガス、27…磁気ヘッド、28…ヘッド駆動部、29…記録再生信号系、34…媒体駆動部、33…トラッキングサーボパターン、33a…凸部、40、50…磁気記録媒体、41…データ領域、41a…データ記録パターン、42…サーボ情報領域、43a…バーストパターン、51a…磁気記録パターン、51b…凸部、51c…凹部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
非磁性基板上に磁気的に分離された磁性層からなる環状の磁気記録パターンが備えられ、
前記磁気記録パターンの一部に、前記磁気記録パターンの中央と側部との距離を片側のみ異ならせてなるトラッキングサーボパターンがトラッキングサーボ情報として形成されていることを特徴とする磁気記録媒体。
【請求項2】
前記トラッキングサーボ情報が、バースト情報を含むことを特徴とする請求項1に記載の磁気記録媒体。
【請求項3】
前記トラッキングサーボパターンが、前記磁気記録パターンの中央と内側部との距離を異ならせてなる内側パターンと、前記磁気記録パターンの中央と外側部との距離を異ならせてなる外側パターンとを含むものであることを特徴とする請求項1または2に記載の磁気記録媒体。
【請求項4】
前記トラッキングサーボパターンが、前記磁気記録パターンの中央と内側部との距離を異ならせてなる複数の内側パターンを有するものであり、
隣接する前記内側パターンが、前記磁気記録パターンにおける1データビット長の100倍以上の間隔を空けて配置されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の磁気記録媒体。
【請求項5】
前記トラッキングサーボパターンが、前記磁気記録パターンの中央と外側部との距離を異ならせてなる複数の外側パターンを有するものであり、
隣接する前記外側パターンが、前記磁気記録パターンにおける1データビット長の100倍以上の間隔を空けて配置されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の磁気記録媒体。
【請求項6】
磁気記録媒体と、該磁気記録媒体に情報を記録再生する磁気ヘッドとを備えた磁気記録再生装置であって、
前記磁気記録媒体が請求項1〜5の何れか1項に記載の磁気記録媒体であることを特徴とする磁気記録再生装置。
【請求項7】
請求項5に記載の磁気記録再生装置における信号処理方法であって、
磁気ヘッドに、磁気記録媒体の磁気記録パターンから信号を読み出させる工程と、
前記信号を周波数の差を用いて分離する工程と、
前記信号を分離することにより前記信号からトラッキングサーボ情報が得られた場合、前記トラッキングサーボ情報の周波数に応じて、前記磁気ヘッドを前記磁気記録パターンの半径方向の中央に位置づけさせる工程とを備えることを特徴とする磁気記録再生装置の信号処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−146603(P2010−146603A)
【公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−319807(P2008−319807)
【出願日】平成20年12月16日(2008.12.16)
【出願人】(000002004)昭和電工株式会社 (3,251)
【Fターム(参考)】