説明

磁気記録媒体およびその製造方法

【課題】 高記録容量を有し、特に、MRヘッドを使用した場合の再生出力、S/N比が高い高記録容量の磁気テープおよびその製造方法の提供。
【解決手段】 非磁性支持体上の少なくとも一面に、少なくとも一層の下塗層と、磁性層とがこの順に形成された磁気テープにおいて、前記磁性層の厚さが1〜200nm、かつその厚みむらが15%以下であって、1000巻き当たりの磁気記録媒体の95%以上が、1m長の磁気記録媒体を平面視して、磁気記録媒体の長手方向における中央部の下端が両下端を結ぶ基準線に対して+0.05〜3mmとなる湾曲を有することを特徴とする磁気テープおよびその製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気記録媒体およびその製造方法に関し、特に、高記録容量を有する磁気記録媒体およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、IT技術の進展等に伴って、情報を記録する記録媒体は、益々、高記録容量化、高記録密度化が求められている。例えば、コンピュータのデータバックアップ用の磁気テープは、コンピュータの処理速度の増大、処理する情報の大容量化、ハードディスクの高容量化等に伴って、益々、高記録容量および高記録密度化が必要となってきている。こうした磁気テープの高容量化および高記録密度化は、磁気テープ上の狭トラックピッチ化によるトラック数の増加、磁性層の薄層化、テープの全厚さの減少による1巻きあたりのテープ全長を増加させる等によって進められている。また、高記録容量の磁気テープでは、大量のデータを短時間で記録または再生するために、記録・再生ヘッドのアクセス速度、データの記録・読み出し速度を大きくすることも要求され、磁性層の薄層化によるデータ信号の記録波長の低減が求められる。
【0003】
一方、こうした狭トラックピッチ化および磁性層の薄層化に伴って磁性層からの漏れ磁束が小さくなるため、より感度が高く、微小磁束でも高い再生出力が得られる磁気抵抗効果型素子を用いた再生ヘッド(例えば、MRヘッド、GMRヘッド、TMRヘッド(トンネル磁気抵抗効果型素子を利用した再生ヘッド))が用いられるようになってきている。
【0004】
しかし、磁性層の厚みむらが大きい場合には、MRヘッドによる再生出力の変動が大きくなり、信号対ノイズ比(S/N比)が大きくなるという問題があった(特許文献1参照)。
【0005】
また、磁気テープをテープワインダ(磁気テープ巻取装置)、または、ドライブにおいて、テープリールに巻き取る際に、いわゆる巻き乱れが生じると、オフトラックによる出力変動の増加の原因となることがある。これは、巻き乱れを有する磁気テープは、保管中に悪い巻き癖が付き、ドライブ内でのテープ走行精度に悪影響を与えるためである。
【特許文献1】特開2002−133636号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明は、前記した問題を解決し、高記録容量を有し、特に、MRヘッドを使用した場合の再生出力、S/N比が高い高記録容量の磁気記録媒体およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するため、請求項1に係る発明は、非磁性支持体上の少なくとも一面に、少なくとも一層の下塗層と、磁性層とがこの順に形成された磁気記録媒体において、前記磁性層の厚さが1〜200nm、かつその厚みむらが15%以下であって、1000巻き当たりの磁気記録媒体の95%以上が、1m長の磁気記録媒体を平面視して、磁気記録媒体の長手方向における中央部の下端が両下端を結ぶ基準線に対して+0.05〜3mmとなる湾曲を有することを特徴とする磁気記録媒体を提供する。
【0008】
この磁気記録媒体では、磁性層の厚さおよびその厚みむらが特定の範囲であり、さらに、特有の湾曲形態を有することによって、高容量の磁気記録媒体が得られ、特に、MRヘッドを使用した場合の再生出力、出力対ノイズ比が高い磁気記録媒体が得られる。
【0009】
請求項2に係る発明は、前記請求項1に係る磁気記録媒体において、前記磁性層の厚さ(d1)と下塗層の厚さ(d2)との比(d2/d1)が5以上100以下であることを特徴とする。
【0010】
この磁気記録媒体では、前記磁性層の厚さ(d1)と下塗層の厚さ(d2)との比(d2/d1)が5以上100以下とすることによって、磁気記録媒体全体の厚さを薄く保つとともに、磁性層の厚みむらが抑制され、再生出力および出力対ノイズ比が高い磁気記録媒体を得ることができる。
【0011】
請求項3に係る発明は、請求項1または請求項2に記載の磁気記録媒体において、前記非磁性支持体上の少なくとも一面に、下塗層形成用塗布液を塗布・乾燥して前記下塗層を形成した後、その下塗層の上に磁性層形成用塗布液を塗布・乾燥して前記磁性層が形成されていることを特徴とする。
【0012】
この磁気記録媒体では、下塗層と磁性層を順次形成することによって、より均一な下塗層および磁性層を有する磁気記録媒体を得ることができる。
【0013】
請求項4に係る発明は、請求項1または請求項2に係る磁気記録媒体において、磁気抵抗効果型素子を利用した再生ヘッドによって磁気記録信号が再生されることを特徴とする。
【0014】
この磁気記録媒体では、前記のとおり、狭トラックピッチ化、磁性層の薄層化、磁気テープの巻き乱れ等によって生じる再生出力およびS/N比の低下が改善され、磁気抵抗効果型素子を利用した再生ヘッド(例えば、MRヘッド、GMRヘッド、TMRヘッド等)による磁気記録信号の再生に好適である。
【0015】
請求項5に係る発明は、前記磁気抵抗効果型素子が、トンネル磁気抵抗効果型素子(TMR)であることを特徴とする。
この磁気記録媒体では、前記のとおり、狭トラックピッチ化、磁性層の薄層化、磁気テープの巻き乱れ等によって生じる再生出力およびS/N比の低下が改善され、トンネル磁気抵抗効果型素子(TMR)を利用した再生ヘッド(例えば、MRヘッド、GMRヘッド、TMRヘッド等)による磁気記録信号の再生に好適である。
【0016】
請求項6に係る発明は、請求項1ないし請求項3に記載の磁気記録媒体において、前記磁性層における保磁力が160〜320kA/m、トラック長手方向の残留磁束密度と厚さとの積が5×10-10〜7.5×10-8T・mであることを特徴とする。
【0017】
この磁気記録媒体では、前記磁性層における保磁力が160〜320kA/m、トラック長手方向の残留磁束密度と厚さとの積が5×10-10〜7.5×10-8T・mであることによって、特に、磁気抵抗効果型素子を利用した再生ヘッド(例えば、MRヘッド、GMRヘッド、TMRヘッド等)による再生出力を大きくし、さらに再生出力の歪を低減して出力対ノイズ比を高くすることができる。
【0018】
請求項7に係る発明は、請求項1〜請求項4に記載の磁気記録媒体の製造方法であって、磁気記録媒体原反をスリットした後、熱処理によって湾曲を付与することを特徴とする磁気記録媒体の製造方法を提供する。
【0019】
この磁気記録媒体の製造方法では、磁気記録媒体原反をスリットした後、熱処理によって湾曲を付与することによって、前記特有の湾曲形態を有し、再生出力およびS/N比の高い磁気記録媒体を得ることができる。
【0020】
また、請求項8に係る発明は、請求項5に係る磁気記録媒体の製造方法において、前記湾曲の付与は、磁気記録媒体原反をスリットして得られる磁気記録媒体をテーパー状の巻き取りハブにパラボラ状に巻きつけて行うことを特徴とする。
【0021】
この磁気記録媒体の製造方法では、前記特有の湾曲形態を有し、再生出力およびS/N比の高い磁気記録媒体を得ることができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明の磁気記録媒体は、狭トラックピッチ化、磁性層の薄層化、磁気記録媒体の巻き乱れ等によって生じる再生出力およびS/N比の低下が改善され、磁気抵抗効果型素子を利用した再生ヘッドによる磁気記録信号の再生に好適である。
【0023】
また、本発明の磁気記録媒体の製造方法によれば、前記特有の湾曲形態、および磁性層の厚みむらが特定の範囲にある磁気記録媒体を製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明の磁気記録媒体およびその製造方法について詳細に説明する。
本発明の磁気記録媒体は、非磁性支持体上に設けられた磁性層に磁気的変化としてデータ信号を記録し、また、その磁気的変化を読み取ってデータ信号を再生することができる記録媒体である。この磁気記録媒体の形状は特に限定されるものではなく、テープ状、シート状等のいずれの形態であってもよい。シート状、テープ状の磁気記録媒体では、磁気記録再生方向がそれに直交する方向に比べて長い形態を有する。
【0025】
以下、本発明を実施するための最良の形態(以下、単に「実施形態」という)として、本発明を磁気テープに適用した場合について説明する。
【0026】
図1は、本発明の実施形態に係る磁気テープを示す模式断面図である。図2は、本発明の実施形態に係る磁気テープの磁性層の表面の厚みむらを示す概念図である。図3は、本発明の実施形態に係る磁気テープの湾曲値を説明する概念図である。
【0027】
図1に示す磁気テープ1は、例えば、コンピュータの記憶媒体として使用されるテープであり、主として、非磁性のベースフィルム(非磁性支持体)2と、ベースフィルム2の一面に形成された下塗層3と、下塗層3の上に形成された磁性層4と、ベースフィルム2の他面に形成されたバックコート層5とを有する。
【0028】
ベースフィルム2は、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)やポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル類、ポリオレフィン類、セルローストリアセテート、ポリカーボネート、ポリアミド(特に好ましくは芳香族ポリアミド)、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリスルフォン、アラミド、BPO(ポリベンゾオキサゾール)等からなる公知のフィルムが使用できる。これらのベースフィルムには、予めコロナ放電処理、プラズマ処理、易接着処理、熱処理、除塵処理等を施しても良い。なお、ベースフィルムは、加工性や機械特性および低コストが要求される場合には、ポリエステル類を用いることが望ましい。また、強度、剛性および耐熱性が要求される場合には、ポリエチレンテレフタレート(PET)よりもポリエチレンナフタレート(PEN)を用いることが望ましい。
【0029】
このベースフィルム2の長手方向および幅方向の100℃、30分での熱収縮率は好ましくは3%以下、さらに好ましくは1.5%以下であり、80℃、30分での熱収縮率は好ましくは1%以下、さらに好ましくは0.5%以下である。また、その破断強度は長手方向および幅方向ともに、好ましくは5〜100kg/mm2であり、その弾性率は、長手方向および幅方向ともに、好ましくは100〜2000kg/mm2である。
【0030】
また、このベースフィルム2の厚さは、1〜100μm、好ましくは4〜80μmである。特に、コンピュータの記憶媒体として使用される高記録容量の磁気テープの場合には、ベースフィルムの厚さを、5〜8μm程度とすることが、磁気テープの機械的強度、磁気テープ1巻き当たりの記録容量を向上するために有効である。
【0031】
次に、下塗層3は、ベースフィルム2と磁性層4の間に形成され、ベースフィルム2と磁性層4との間の密着性を向上させる役割を有する。この下塗層3は、結合剤、カーボンブラック、酸化チタン、酸化鉄、アルミナ等の非磁性粒子などを用いて形成される。前記のカーボンブラック、非磁性粒子等は、導電性の改良、テープの剛性、磁性層4との密着性の向上、下塗層形成用塗料の塗布時の粘度調整などの各種の目的で、所定の組成に調整される。例えば、カーボンブラックとしては、アセチレンブラック、ファーネスブラック、サーマルブラック等を使用でき、分散性、導電性等を考慮してその粒径および粒径分布、さらに粒子形状、含有量等を選択することができる。また、非磁性粒子は、分散性、下塗層3の強度、下塗層3中での配向性、下塗層3と磁性層4との界面の凹凸等を考慮して、針状、粒状または無定形の粒子形状、粒径、含有量を選択することができる。
【0032】
また、下塗層に用いる結合剤は、磁性層4と同じく公知のものが用いられる。さらに、下塗層には、必要に応じて、帯電防止剤、潤滑剤等を含有させることができる。
【0033】
この下塗層3の厚さは、磁気テープの耐久性、および磁気テープ1巻き当たりの記録容量の観点から、通常、0.01〜2μm程度であり、好ましくは0.02〜0.8μmである。
【0034】
磁性層4は、磁性粉末と結合剤とを必須成分として形成され、磁気的変化としてデータ信号を記録し、また、その磁気的変化を再生ヘッドによって読み取ってデータ信号を再生することができるものである。
この磁性層4の構成成分である磁性粉末は、高密度記録を可能とするため、強磁性金属粉末または六方晶フェライト磁性粉末が好ましい。強磁性金属粉末は、例えば、Feを主体とした針状粉末であり、Co、Mn、Ni、Sm、Nb等が含まれる合金粉末が用いられる。また、Al、Y等の化合物を焼結防止剤として用いることができる。
【0035】
強磁性金属粉末の平均長軸長は10〜100nmであることが好ましく、20〜90nmであることがより好ましく、30〜80nmであることがさらに好ましい。平均長軸長を100nm以下とすることで、ノイズが低減でき、良好なサーボ信号およびデータ信号のSN比が得られる。また、平均長軸長を30nm以上とすることで良好な保持力Hcが確保できる。
また、強磁性金属粉末の平均針状比は3〜10であることが好ましく、3〜8であることがより好ましく、4〜8であることがさらに好ましい。
【0036】
強磁性金属粉末の長軸長の変動率[(長軸長の標準偏差)/(長軸長の平均値)]は30%以下であることが好ましく、25%以下であることがより好ましく、20%以下であることがさらに好ましい。長軸長の変動率を30%以下とすることで、長軸長の異なった磁性粒子が混在することによるノイズを低減して磁性層4に記録されるデータ信号のSN比を向上できる。
【0037】
強磁性金属粉末の飽和磁化量σsは70〜150A・m2/kgであることが好ましく、80〜140A・m2/kgであることがより好ましく、90〜125A・m2/kgであることがさらに好ましい。また、その保磁力Hcは127〜356kA/mであることが好ましく、142〜316kA/mであることがより好ましく、158〜177kA/mであることがさらに好ましい。
【0038】
強磁性金属粉末のBET法による比表面積(SBET)は、40〜80m2/gであることが好ましく、より好ましくは45〜70m2/gである。BET法による比表面積(SBET)が40m2/g以上であれば、ノイズが低減され、80m2/g以下であれば、良好な表面性を得ることができる。
【0039】
六方晶フェライト磁性粉末の場合は、Baフェライトが適している。また、置換元素としてTi等を含んでいても良い。六方晶フェライト磁性粉末の平均板径は10〜50nmであることが好ましく、20〜45nmであることがより好ましく、20〜40nmであることがさらに好ましい。強磁性金属粉末を用いる場合と同様、平均板径を50nm以下とすることで、ノイズが低減でき、良好なサーボ信号およびデータ信号のSN比が得られる。また、平均板径を15nm以上とすることで良好な保持力Hcが確保できる。
また、六方晶フェライト磁性粉末の平均板状比は2〜7であることが好ましく、3〜5であることがより好ましい。
【0040】
六方晶フェライト磁性粉末の板径の変動率[(板径の標準偏差)/(板径の平均値)]は30%以下であることが好ましく、25%以下であることがより好ましく、20%以下であることがさらに好ましい。板径の変動率を30%とすることで、板径の異なった磁性粒子が混在することによるノイズを低減して磁性層4に記録されるデータ信号のSN比を向上できる。
【0041】
六方晶フェライト磁性粉末の飽和磁化量σsは、40〜80A・m2/kgであることが好ましく、45〜75A・m2/kgであることがより好ましく、45〜65A・m2/kgであることがさらに好ましい。また、その保磁力Hcは127〜356kA/mであることが好ましく、142〜316kA/mであることがより好ましく、158〜177kA/mであることがさらに好ましい。
上記粒子サイズの範囲内におけるBET法による比表面積は10〜200m2/gである。この比表面積は、概ね粒子板径と板厚からの計算値と符合する。
【0042】
また、磁性層4に用いられる結合剤には公知のものを使用できる。例えば、塩化ビニル共重合体、ポリウレタン樹脂、アクリル樹脂等、またはこれらの混合物が挙げられる。また、これらの樹脂の数平均分子量は2万〜10万、好ましくは3万〜8万である。なお、これらの樹脂には磁性粉末の分散性を向上させるために極性基を導入すると良い。極性基としては−COOM、−SO3M、−P=O(OM)2(Mは水素原子またはアルカリ金属)が知られている。
【0043】
さらに、磁性層には、必要に応じて、フィラー、研磨剤、カーボンブラック、潤滑剤等を含有させることができる。研磨剤を含有させる場合は、平均粒子サイズが10〜300nm、かつ、磁性層厚みの2倍以下のものが好ましい。
【0044】
磁性層4の厚さは、磁気テープの高記録密度化および高容量化の観点から、1〜200nm、好ましくは10〜180nm、さらに好ましくは30〜180nm、特に好ましくは40〜160nmである。
【0045】
この磁性層4の厚みむらは、15%以下、好ましくは10%以下に調整される。この磁性層4の厚みむらは、図2に示すように、磁性層4の厚さを測定し、厚さの最大値と最小値とから厚みむら=(|Mmax−Mmin|/d1)×100(%)で得られる。Mmaxは、厚さの最大値、Mminは厚さの最小値、d1は磁性層の平均厚みを示す。ここで、磁性層4の厚さは、磁性層4の断面を、直接、電子顕微鏡等によって観察してその厚さを測定してもよいし、磁性層4の他の特性を利用して測定してもよい。例えば、磁性層4の磁気特性を連続的に測定し、これを厚みd1に換算することで測定することができる。磁気特性によって磁性層4の厚さを連続的に測定する場合は、Mmax、Mmin、およびdlは、前記の磁気特性を示す曲線の極大値、極小値および平均値に対応する。
【0046】
また、磁性層4の厚さ(d1)と下塗層の厚さ(d2)との比(d2/d1)が5以上100以下であることが好ましく、さらに好ましくは10〜50である。この比(d2/d1)が、前記範囲にあることによって、磁気テープ全体の厚さを薄く保つとともに、磁性層の厚みむらが抑制され、再生出力および出力対ノイズ比が高い磁気テープを得ることができる。比(d2/d1)は、下塗層3の厚さおよび磁性層の厚さを、前記磁性層4の厚さと同様に、電子顕微鏡等を用いて測定することによって求めることができる。
【0047】
また、磁性層4の保磁力Hcは160〜320kA/m、好ましくは180〜240kA/mである。Hcをこの範囲とすることで、高い出力が得られ、記録波長が小さくなっても反磁界の影響を低減することができる。Hcが320kA/mを超えると磁気ヘッドでの記録が困難になるため、Hcを320kA/m以下とすることが好ましい。
【0048】
さらに、磁性層の残留磁化と厚みとの積(Mrt)は5×10-10〜7.5×10-8T・m、好ましくは5×10-10〜5×10-8T・m、さらに好ましくは5×10-10〜3×10-8T・mである。Mrtを5×10-10〜7.5×10-8T・mとすることで、MRヘッドによる再生出力を大きくし、さらに再生出力の歪を低減して出力対ノイズ比を高くすることができる。
【0049】
また、磁気テープ1は、下塗層3と磁性層4との間に、非磁性粉末と結合剤とを主要成分として形成される非磁性層を介設することが望ましい。
【0050】
この非磁性層の成分である非磁性粉末としては公知のものが使用可能で、例えば、TiO2、Fe23、Al23、CeO2、ZrO2、BaSO4、ZnO、カーボンブラック、グラファイト等が挙げられる。これらの中でもTiO2、α−Fe23が好ましく、これらとカーボンブラックを併用することがより好ましい。また、極性基が導入された樹脂を結合剤に用いる場合は、金属酸化物が分散性の点で優れる。これら非磁性粉末の平均粒子サイズ(針状の場合は平均長軸長)は10〜300nm、好ましくは30〜200nmであり、形状は粒状、針状、サイコロ状、板状、紡錘状等のいずれでも良い。また、非磁性粉末は必要に応じて複数種類用いられる。例えば導電性付与のために非磁性酸化物、カーボンブラック等を混合することも可能である。
【0051】
バックコート層5は、磁気テープ1の走行耐久性の向上のために、磁性層4が設けられた側と反対側のベースフィルム上に形成される。このバックコート層5は、結合剤、およびカーボンブラックを含有するものであることが好ましい。バックコート層は、微粒子で電気伝導性が優れたカーボンブラックを主なフィラーとし、平均粒子サイズの異なる二種類のカーボンブラックを含有させたり、必要により無機質粉末を含有してもよい。例えば、モース硬度5〜9の無機質粉末を含有させることができる。無機質粉末のバックコート層への配合量は、カーボンブラック100質量部に対して、通常、0.5〜150質量部であり、好ましくは0.5〜100質量部である。
【0052】
前述のように、バックコート層には、平均粒子サイズの異なる二種類のカーボンブラックを含有させることができる。例えば、平均粒子サイズが15〜50nmの微粒子状カーボンブラックと平均粒子サイズが80〜300nmの粗粒子状カーボンブラックを用いることができる。このように、二種類のカーボンブラックを使用することにより、バックコート層を粗面化しても磁性層への裏写りの少ない磁気テープを得ることができる。
【0053】
また、一般に、上記のような微粒子状のカーボンブラックの添加により、バックコート層の表面電気抵抗を低く設定でき、また光透過率も低く設定できる。磁気記録装置によっては、テープの光透過率を利用し、動作の信号に使用しているものが多くあるため、このような場合には特に微粒子状のカーボンブラックの添加は有効になる。また、微粒子状カーボンブラックは、一般に潤滑剤の保持力に優れ、潤滑剤併用時、摩擦係数の低減化に寄与する。
【0054】
一方、平均粒子サイズ80〜300nmの粗粒子状カーボンブラックは、固体潤滑剤としての機能を有しており、またバックコート層の表面に微小突起を形成し、接触面積を低減化して、摩擦係数の低減化に寄与する。
【0055】
微粒子状カーボンブラックの具体的な商品としては、以下のものを挙げることができる。括弧内は、平均粒子サイズを示す。REGAL 99R(38nm)、RAVEN2000B(18nm)、RAVEN1500B(17nm)(以上、コロンビアカーボン社製)、BP800(17nm)(キャボット社製)、PRINTEX90(14nm)、PRINTEX95(15nm)、PRINTEX85(16nm)、PRINTEX75(17nm)(以上、デグサ社製)、#3950(16nm)(三菱化学(株)製)。
また、粗粒子カーボンブラックの具体的な商品の例としては、旭#51(91nm)(旭カーボン社製)、サーマルブラック(270nm)(カーンカルブ社製)、RAVENMTP(275nm)(コロンビアカーボン社製)を挙げることができる。平均粒子サイズ80〜300nmの粗粒子状カーボンブラックは、ゴム用カーボンブラックや、カラー用カーボンブラックより選択することができる。
【0056】
バックコート層5における微粒子状カーボンブラックと粗粒子状カーボンブラックの含有比率(質量比)は、前者:後者=98:2〜75:25の範囲とすることが好ましく、さらに好ましくは、95:5〜85:15である。また、バックコート層におけるカーボンブラックの含有量(二種類のカーボンブラックを使用する場合は、微粒子状カーボンブラックと粗粒子状カーボンブラックの合計量)は、結合剤100質量部に対して、通常30〜80質量部の範囲とすることができ、好ましくは、45〜65質量部の範囲である。
【0057】
バックコート層5に添加することができる無機質粉末としては、平均粉体サイズが80〜250nmでモース硬度が5〜9の無機質粉末が挙げられる。無機質粉末としては、上述した下塗層に使用される非磁性粉末や研磨剤などと同様のものを使用することができ、中でもα−酸化鉄、α−アルミナ等を用いることが好ましい。無機質粉末のバックコート層への添加量は、結合剤100質量部に対して、好ましくは0.5〜40質量部の範囲であり、さらに好ましくは1〜30質量部の範囲である。
【0058】
バックコート層5に使用する結合剤は、従来公知の熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、反応型樹脂等を用いることができる。好ましい結合剤は、塩化ビニル樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル樹脂、ニトロセルロース等の繊維素系樹脂、フェノキシ樹脂、ポリウレタン樹脂である。その中でも、塩化ビニル樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル樹脂、ポリウレタン樹脂を用いるのがより好ましい。
【0059】
バックコート層には、前述の成分以外に、他の任意の成分として、分散剤、潤滑剤を添加することもできる。分散剤としては、例えば、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、オレイン酸、エライジン酸、リール酸、リノレン酸、ステアロール酸等の炭素数12〜18個の脂肪酸(RCOOH;Rは炭素数11〜17個のアルキル基、またはアルケニル基)、前記脂肪酸のアルカリ金属またはアルカリ土類金属からなる金属石けん、前記の脂肪酸エステルのフッ素を含有した化合物、前記脂肪酸のアミド、ポリアルキレンオキサイドアルキルリン酸エステル、レシチン、トリアルキルポリオレフィンオキシ第四級アンモニウム塩(アルキルは炭素数1〜5個、オレフィンは、エチレン、プロピレンなど)、硫酸エステル、銅フタロシアニン、沈降性硫酸バリウム等を使用することができる。分散剤は、結合剤樹脂100質量部に対して、0.5〜20質量部の範囲で添加することができる。
【0060】
バックコート層5は、その平均表面粗さRaが、10〜30nmであることが好ましく、より好ましくは15〜28nmである。バックコート層の表面粗さは、テープが巻かれた状態でバックコート層の表面が磁性層の表面に転写されることで、再生出力に影響を与えたり、ガイドポールに対する摩擦係数に影響を与えるため、上記の範囲に調整することが好ましい。なお、この表面粗さRaの調整は、バックコート層を形成後、カレンダーによる表面処理工程において、用いるカレンダーロールの材質、その表面性、圧力等の調整により行うことができる。このバックコート層の厚さは0.1〜2μm、好ましくは0.3〜1.0μm、さらに好ましくは0.3〜0.6μmである。
【0061】
また、磁気テープ1には、前記の下塗層3、磁性層4、バックコート層5以外の層が含まれていても良い。例えば、第2の磁性層、クッション層、オーバーコート層、接着層、保護層を有していても良い。これらの層は、その機能を有効に発揮することができるように適切な位置に設けることができる。
【0062】
この磁気テープ1は、テープ1m長に対して、テープ中央部の下端が両下端を結ぶ基準線に対して+0.05〜3mmとなる湾曲を有する。この磁気テープ1の湾曲は、図3に示すように、巻き解いた磁気テープ1を平面視して、長手方向(矢印A方向)の長さの1mの任意地点E,Fにおいて、任意地点Eと任意地点Fとを結ぶ基準線gから磁気テープ1の短い方のエッジ1cまでの距離dが+0.05〜3mmであることをいう。このような湾曲を有することによって、巻き乱れによって生じるオフトラックを抑制し、再生出力および出力対ノイズ比の高い磁気テープを得ることができる。さらに、1m長に巻き解いた磁気テープにおいて、磁気テープの中央部の下端が両下端を結ぶ基準線に対して+0.05〜3mmとなる湾曲量を有する割合が、1000巻き当たり95%以上である湾曲を有することが、巻き乱れによって生じるオフトラックを抑制し、再生出力および出力対ノイズ比の高い磁気テープを得るために有効である。
【0063】
この磁気テープは、狭トラックピッチ化、磁性層の薄層化、磁気テープの巻き乱れ等によって生じる再生出力およびS/N比の低下が改善され、特に、磁気抵抗効果型素子を利用した再生ヘッド(例えば、MRヘッド、GMRヘッド、TMRヘッド等)による磁気記録信号の再生に好適である。
【0064】
この磁気テープ1の製造は、前記特有の形態(厚みむらおよび湾曲)を有する磁気テープを製造できる方法であれば、特に制限されず、いずれの方法にしたがって行ってもよい。例えば、(1)広幅のベースフィルム原反の一面に、下塗層3および磁性層4を形成し、さらに、ベースフィルム原反の他面にバックコート層5を形成する工程、(2)ベースフィルム原反を所定の幅に裁断(スリット)して所定の幅の磁気テープ原反を製造する工程、(3)磁気テープ原反の磁性層4の表面を前記の特有の形態に形成する工程を含む方法によって、磁気テープ1を製造することができる。得られた磁気テープは、所定の長さでテープリールに巻き取られ、カートリッジ等の所定の筐体に、リール駆動機構、テープ取り出し機構等とともに収納されて使用に供される。
【0065】
この製造方法の(1)の工程において、下塗層3の形成は、ベースフィルム原反の表面に、結合剤、非磁性粒子等の下塗層3の構成成分を、有機溶媒等の適当な溶媒に分散または溶解させて調製された塗布液を塗布・乾燥して行うことができる。また、バックコート層5の形成も、同様に、結合剤、カーボンブラックおよびその他の成分を、溶媒に文さまたは溶解させて調製された塗布液を塗布・乾燥して行うことができる。さらに、非磁性層を、下塗層と磁性層との間に設ける場合、その非磁性層の形成も同様にして行うことができる。
【0066】
また、磁性層4は、磁性粉末、結合剤等を含む塗布液を下塗層3の上に塗布することにより形成される。また、磁性層4は、金属、合金等の強磁性材を、真空蒸着やスパッタリングなどの手段で下塗層3に被着させることにより形成することもできる。
【0067】
磁性層を塗布液の塗布によって形成する場合、塗布の方法には、ベースフィルム原反に下塗層3を形成した後に磁性層用塗布液を塗布する方法、ベースフィルム原反上に下塗層用塗布液と磁性層用塗布液とを同時に塗布する方法等がある。下塗層3の乾燥後、磁性層用塗布液を塗布する前にカレンダ工程を設けてもよい。
【0068】
次に、図4および図5を参照して、磁気テープ1の製造方法について説明する。
前記のとおり、図示しない塗布工程、配向工程、乾燥工程、カレンダ処理工程を経て製造された幅広の磁気テープ原反を、巻芯に巻き取る。
【0069】
次に、この磁気テープ原反をスリッタ装置(図示せず)によって、図4に示すように、この磁気テープ原反6が最終的に製品化されるその製品(磁気テープカートリッジ)の規格で定められたテープ幅に裁断される。このスリット工程で所定寸法のテープ幅に裁断された各磁気テープ1は、次に、パンケーキ巻取工程で、各ハブにそれぞれ巻き取り、パンケーキにする。このパンケーキに巻き取られた磁気テープ1は、幅方向の厚さにムラがある形状で、ばらつきがあるため、もともと磁気テープ原反6のどこに位置していたかによって湾曲極性が異なる。
【0070】
次に、(3)磁気テープ原反の磁性層4の表面を前記の特有の形態に形成する工程が行われる。この工程によって、磁性層4の表面が特有の形態(厚みむらおよび湾曲)に形成された磁気テープを得ることができる。この(3)の工程は、次のいずれかの方法に従って行うことができる。
(i)前記磁性層4の形成に際して、磁性層形成用塗布液を均一に塗布した直後に、急速に乾燥を行って固形分濃度を上昇させる工程、例えば、固形分濃度を15〜30質量%に調製した磁性層形成用塗布液を無脈動送液ポンプを使用して供給し、塗布用ロールを用いて塗布した後、塗布直後、例えば、塗布用ロールから1m以内の地点で、半固化状態の磁性層の固形分濃度が40〜75質量%になるように急速に乾燥する工程と、磁気テープをテーパー状のハブに巻き取って熱処理して前記磁気テープに湾曲を付与する工程を含む方法
(ii)前記磁性層4の形成に際して、下塗層3を形成した後、その下塗層3が乾燥する前に、ウエット・オン・ウエットで磁性層形成用塗布液を塗布して磁性層4を形成し、遠赤外線を照射して乾燥して、下塗層3と磁性層4を形成する工程と、磁気テープをテーパー状のハブに巻き取って熱処理して前記磁気テープに湾曲を付与する工程を含む方法
【0071】
前記の(i)および(ii)の方法において、湾曲を付与する工程は、スリッタ装置で所定のテープ幅に裁断されて、湾曲極性が正または負のいずれか一方向になるように巻き取られたパンケーキ7を、熱処理工程(図示せず)で湾曲する巻き癖を付けた後、磁気テープ巻取装置によってテープリールに巻き取ることによって行うことができる。
【0072】
ここで、パンケーキ7および磁気テープ1への湾曲の付与について、図5を参照しながらその一例を説明する。
まず、図5に示すように、テーパー状のハブ7aにパラボラ状に巻きつける。パンケーキ7のハブ7aの直径Dは、例えば、115mm以上とし、パンケーキ7の直径Cに対するハブ7aの直径Dの比は、0.3〜0.99(望ましくは、0.50〜0.99)とする。
そして、パンケーキ7の大きい方のエッジ(上側のエッジ)7bの半径C1と、小さい方のエッジ(下側のエッジ)7cの半径C2との上下エッジ半径の比Rは、磁気テープ1に付与する湾曲値Bに対して表1に示すような値とする。
ここで、表1は、磁気テープに湾曲値と磁気テープの上下エッジ半径の比を示す表である。
【0073】
【表1】

【0074】
表1に示すように、湾曲値Bが0.5mm/mのときには、パンケーキ7の上下エッジ半径の比Rが1.00007であり、湾曲値Bが1.0mm/mのときには、上下エッジ半径の比Rが1.00010であり、湾曲値Bが2.0mm/mのときには、上下エッジ半径の比Rが1.00030であり、湾曲値Bが4.0mm/mのときには、上下エッジ半径の比Rが1.00060であり、湾曲値Bが8.0mm/mのときには、上下エッジ半径の比Rが1.00120である。
例えば、厚み18mmのハブ7aのテーパ量は、表1に従い、直径が250mmで、テーパ量は、18μmとすればよい。
【0075】
次に、前記の工程によって湾曲が付与された磁気テープ1からなるパンケーキ7を、例えば、恒温槽(図示せず)などに所定時間置いて、熱処理工程(図示せず)で、湾曲値Bの湾曲形状を付ける。このようにして得られる磁気テープの長さ670m分をテープリールに巻き取って作製される磁気テープ製品において、通常、前記所望の湾曲形状(1m長に巻き解いた磁気テープにおいて、磁気テープの中央部の下端が両下端を結ぶ基準線に対して+0.05〜3mmとなる湾曲)は、1000巻き当たり995巻き以上の割合である。
【0076】
なお、この熱処理工程での熱処理条件は、熱処理するときの温度をT(℃)、熱処理する時間をt(H)、kを定数とすると、
t=k×1010×T-5
であることが好ましい。PETの場合は、k≧1が好ましい。熱処理の温度Tの範囲は、ベースフィルムのガラス転移温度直下の温度であり、例えば、PETやPENであれば、40〜69℃で、好ましくは55〜65℃であり、熱処理する時間tは、3〜72時間とする。また、この熱処理温度を、磁性層の成分である結合剤のガラス転移温度Tgの近傍の温度にすれば、熱処理後の結合剤の復元によって、凹部によるミッシングパルスの発生を低減できる。
【0077】
なお、熱処理工程(図示せず)を行う装置は、例えば、恒温槽(図示せず)が利用されるが、磁気テープ1を所定の温度で一定時間熱処理することができれば、特に限定しない。また、熱処理の温度T(℃)や熱処理時間t(H)は、磁気テープ1のベースフィルムの材料によって相違するため、その材料に合わせて適宜に設定すればよい。
【0078】
以上のようにして、得られる磁気テープ1は、サーボライタによってサーボ信号が書き込まれる等の所定の処理が施された後、テープワインダと呼ばれる専用の磁気テープ巻取装置によって、テープリールに所定量巻き取り、切断される。
【0079】
以上、本発明の磁気記録媒体の実施形態として、べースフィルム(非磁性支持体)上に下塗層と磁性層とを、この順で1層ずつ形成した形態の磁気テープを例にして説明したが、本発明の磁気記録媒体は、非磁性支持体上に下塗層と磁性層をこの順で交互に複数層を積層して、複数の下塗層と磁性層とを有する形態であってもよい。これによって、金属蒸着による磁性層を有する磁気記録媒体と同等の高出力を確保できる。また、1組の下塗層と磁性層と、他の組の下塗層と磁性層との間に、必要に応じて、非磁性層、潤滑層、磁性層、保護層等の層を設けてもよい。
【実施例】
【0080】
以下、実施例によって本発明を詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例、比較例の部は質量部を示す。
【0081】
実施例1
《下塗層用塗料成分》
(1)成分A1
酸化鉄粉末(粒径:0.15×0.02μm) 70部
アルミナ(α化率:50%、粒径:0.05μm) 8部
カーボンブラック(粒径:15nm) 25部
ステアリン酸/ステアリン酸ブチル(50/50) 3.0部
塩化ビニル共重合体(含有-SO3Na基:1.2×10-4当量/g) 10部
ポリエステルポリウレタン樹脂(Tg:40℃、含有−SO3Na基:1×10-4当量/g)
4.4部
シクロヘキサノン 30部
メチルエチルケトン 60部
【0082】
(2)成分A2
ステアリン酸イソブチル 3部
オレイン酸オレイル 5部
シクロヘキサノン 40部
メチルエチルケトン 60部
トルエン 15部
ポリイソシアネート 1.5部
シクロヘキサノン 8部
メチルエチルケトン 18部
トルエン 8部
【0083】
《磁性層用塗料成分》
(1)成分B1
強磁性鉄系金属粉(Co/Fe:30原子%、Y/(Fe+Co):3原子%、Al/(Fe+Co):5wt%、Ca/Fe:0.002、σs:155A・m2/Kg、Hc:188.2kA/m、pH:9.4、長軸長:0.10μm) 100部
塩化ビニル-ヒドロキシプロピルアクリレート共重合体(含有−SO3Na基:0.7×10-4当量/g) 13.0部
ポリエステルポリウレタン樹脂(含有−SO3Na基:1.0×10-4当量/g)
5.5部
α−アルミナ(平均粒径:0.15μm) 12部
α−アルミナ(平均粒径:0.05μm) 4部
カーボンブラック(平均粒径:50nm、DBP吸油量:72cc/100g)
4.0部
メチルアシッドホスフェート 2部
ステアリン酸 1.5部
オレイン酸オレイル 5部
シクロヘキサノン 70部
メチルエチルケトン 250部
【0084】
(2)成分B2
ポリイソシアネート 2.0部
メチルエチルケトン 167部
【0085】
上記の下塗層用塗料成分において成分A1をニーダで混練したのち、成分A2を加えて攪拌の後サンドミルで滞留時間を90分として分散処理を行い、これを攪拌・濾過した後、下塗層用塗料とした。これとは別に、上記の磁性層用塗料成分B1をニーダで混練したのち、サンドミルで滞留時間を60分として分散し、これに磁性層用塗料成分B2を加え攪拌・濾過後、磁性塗料とした。上記の下塗層用塗料を、厚さ6.0μmのポリエチレンテレフタレートフィルムからなる支持体上に、乾燥、カレンダ後の厚さが片面で1.1μmとなるように塗布し、この下塗層上に、さらに上記の磁性塗料をランダム配向処理、乾燥、カレンダー処理後の磁性層の厚さが片面で0.05μmとなるようにドライ・オン・ウエットで塗布し、ランダム配向処理後、ドライヤおよび遠赤外線を用いて乾燥し、磁気テープを得た。このとき、磁性塗料の塗布は、塗布用ロールの駆動ロールのギアーからベルト伝達で駆動される無脈流送液ポンプを使用し、さらに、塗布直後の液濃度固形分を15−30質量%とし、塗布直後に(塗布用ロールから1m以内の地点で)固形分濃度40〜75質量%に乾燥することによって行った。
【0086】
このようにして得られた磁気テープを金属ロールからなる5段カレンダで、温度80℃、線圧200kg/cmの条件で鏡面化処理し、磁気テープをパラボラ状にコアに巻いた状態で60℃で24時間エージングして湾曲を付与した後、1/2吋幅に裁断した。これを酸化クロム研磨テープ(KX20000:酸化クロム平均粒子径0.6μm、表面粗さ0.07μm)による表面研磨処理(エアー圧0.25MPa、研磨時間0.1秒)を施し、さらに70℃で24時間エージング処理したのちカセットに巻き込み磁気テープを作製した。
【0087】
実施例2〜5
一部条件を表2の条件に変更したことを除き、実施例1と同様にして実施例2〜5の磁気テープを作製した。
【0088】
比較例1〜4
一部条件を表2の条件に変更したことを除き、実施例1と同様にして比較例1〜4の磁気テープを作製した。
【0089】
上記の実施例1〜5および比較例1〜4の各磁気テープについて、以下の測定を行った。測定結果を表2に示す。
【0090】
磁性層の厚みむら
磁性層の磁気特性を連続的に測定し、これを厚みdlに換算することでムラの大きさが得られる。このとき、ムラ=(|Mmax−Mmin|/d1)×100(%)で得られる。Mmaxは、厚さの最大値、Mminは厚さの最小値を示し、これは、磁気特性を示す曲線の極大値および極小値に対応する。
【0091】
再生出力変動
各磁気テープを磁気テープカートリッジ(LTO用カートリッジ)に組み込んで、LTO用ドライブ(IBM(株)製)に装填してデータ信号の記録および再生を行った。再生出力のmax値を100%としその値からの落ち込みの最大値を出力変動としてdBで表示した。ドライブは、トラック幅3μmインダクティブヘッドを用い、リードヘッドとしてトラック幅1.5μmMRヘッドを用いて記録(記録波長0.37μm)・再生を行った。
【0092】
+湾曲
磁気テープを23℃、50%の室内に24時間放置したあと、直線定規上で測定した。測定は幅方向、長手方向1000本行い+湾曲テープの比率を求めた。
【0093】
(エッジ傷み)
LTO用ドライブに装填して、磁気テープを1000回繰り返し走行させた後、200本の磁気テープの下側エッジにおけるダメージを調べ、傷みが総数の50%を超える場合××、30%を超える場合×、15%を超える場合△、5%を超える場合△○、1%以上の場合○、1%未満の場合◎とした。
【表2】

【図面の簡単な説明】
【0094】
【図1】本発明の実施形態に係る磁気テープを示す模式断面図である。
【図2】本発明の実施形態に係る磁気テープの磁性層の表面の厚みむらを説明する概念図である。
【図3】本発明の実施形態に係る磁気テープの湾曲率を説明する概念図で図である。
【図4】本発明の実施形態に係る磁気テープの製造方法におけるスリット工程を説明する図である。
【図5】本発明の実施形態に係る磁気テープの製造方法における磁気テープに巻き癖を付与する工程を説明する図である。
【符号の説明】
【0095】
1 磁気テープ
2 ベースフィルム
3 下塗層
4 磁性層
5 バックコート層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
非磁性支持体上の少なくとも一面に、少なくとも一層の下塗層と、磁性層とがこの順に形成された磁気記録媒体において、前記磁性層の厚さが1〜200nm、かつその厚みむらが15%以下であって、1000巻き当たりの磁気記録媒体の95%以上が、1m長の磁気記録媒体を平面視して、磁気記録媒体の長手方向における中央部の下端が両下端を結ぶ基準線に対して+0.05〜3mmとなる湾曲を有することを特徴とする磁気記録媒体。
【請求項2】
前記磁性層の厚さ(d1)と前記下塗層の厚さ(d2)との比(d2/d1)が5以上100以下である請求項1に記載の磁気記録媒体。
【請求項3】
前記非磁性支持体上の少なくとも一面に、下塗層形成用塗布液を塗布・乾燥して前記下塗層を形成した後、その下塗層の上に磁性層形成用塗布液を塗布・乾燥して前記磁性層が形成されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の磁気記録媒体。
【請求項4】
磁気抵抗効果型素子を利用した再生ヘッドによって磁気記録信号が再生される請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の磁気記録媒体。
【請求項5】
前記磁気抵抗効果型素子が、トンネル磁気抵抗効果型素子であることを特徴とする請求項3に記載の磁気記録媒体。
【請求項6】
前記磁性層における保磁力が160〜320kA/m、トラック長手方向の残留磁束密度と厚さとの積が5×10-10〜7.5×10-8T・mである、請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載の磁気記録媒体。
【請求項7】
請求項1〜請求項6に記載の磁気記録媒体の製造方法であって、磁気記録媒体原反をスリットした後、熱処理によって湾曲を付与することを特徴とする磁気記録媒体の製造方法。
【請求項8】
前記湾曲の付与は、磁気記録媒体原反をスリットして得られる磁気記録媒体をテーパー状の巻き取りハブにパラボラ状に巻きつけて行うことを特徴とする請求項7に記載の磁気記録媒体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−286098(P2006−286098A)
【公開日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−104733(P2005−104733)
【出願日】平成17年3月31日(2005.3.31)
【出願人】(000005201)富士写真フイルム株式会社 (7,609)
【Fターム(参考)】