説明

磁気記録媒体およびその製造方法

【課題】ヘッドスライダと磁気記録媒体間に接触が発生しても大きな摩擦力が発生することなく、ヘッドスライダまたは磁気記録媒体の摩耗の発生を回避できる磁気記録媒体を提供すること。
【解決手段】本発明の磁気記録媒体は、非磁性基板上に少なくとも磁性層、保護層および潤滑剤層からなり、該潤滑剤層上に水分吸着層を0.3nm以上設けたことを特徴とする。本発明は、この磁気記録媒体の製造方法を包含し、該製造方法は、(1)非磁性基板を準備し、該非磁性基板上に、少なくとも磁性層、保護層および潤滑剤層を形成し、磁気記録基板を作成する工程と、(2)前記磁気記録基板を高温高湿環境に放置し、次いで常温常湿環境に放置することで、前記潤滑剤層上に水分吸着層を0.3nm以上の膜厚で形成する工程を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気記録媒体、特にコンピュータの外部記憶装置などに用いられる磁気記録媒体に関する。更に、本発明は、該磁気記録媒体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
磁気ディスク装置の記録密度の向上に伴って、ヘッドスライダの浮上量が10nmを下回る値となっており、ヘッドスライダと磁気記録媒体との間欠的な接触は不可避な状態となっている。磁気記録媒体表面には、一般にヘッドスライダ−磁気記録媒体間の固体接触を防ぐため、磁性層上にカーボンからなる保護層を形成し、この上にPFPE(パーフルオロポリエーテル)と呼ばれるフッ素系潤滑剤層を1.0〜2.0nm程度の膜厚で塗布する。しかしながら、1.0〜2.0nmの膜厚では、カーボン層を完全に覆うことは不可能であり、ヘッドスライダと磁気記録媒体間の間欠接触時に生じる固体接触を回避することはできず、接触時に高い摩擦力が発生し、ヘッドスライダまたは磁気記録媒体に摩耗が生じる原因となる。
【0003】
一方、カーボン層を潤滑剤層で完全に被覆するためには、現行以上に潤滑剤層の膜厚を増大させることが必要となる。しかし、膜厚が2.0nm以上になると、潤滑剤分子とカーボン保護層表面との相互作用よりも、潤滑剤分子同士の相互作用が優先することになり、これは潤滑剤分子同士の凝集が起こる原因となる。このような潤滑剤分子同士の凝集は、ヘッドスライダの安定浮上を妨げることになる。
【0004】
潤滑剤層の膜厚を高めることなく、上記固体接触を回避する手段としては、例えば、特許文献1に、数平均分子量が一定以上で、特定分子量以下の低分子量分が少ない潤滑剤を用いる技術が開示され、高温高湿条件下で試験されている。
【0005】
【特許文献1】特開2000−235709号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、潤滑剤のみの改良では、ヘッドスライダと磁気記録媒体の間の接触を回避することには限界がある。
【0007】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、磁気ヘッドスライダと磁気記録媒体間に接触が発生しても大きな摩擦力が発生することなく、スライダまたは磁気記録媒体の摩耗の発生を回避できる磁気記録媒体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第一は、磁気記録媒体に関し、該磁気記録媒体は、非磁性基板上に少なくとも磁性層、保護層および潤滑剤層からなる磁気記録媒体であって、前記潤滑剤層上に、水分吸着層を0.3nm以上設けたことを特徴とする。
【0009】
本発明の第二は、上記磁気記録媒体の製造方法である。この製造方法は、(1)非磁性基板を準備し、該非磁性基板上に、少なくとも磁性層、保護層および潤滑剤層を形成し、磁気記録基板を作成する工程と、(2)前記磁気記録基板を高温高湿環境に放置し、次いで常温常湿環境に放置することで、前記潤滑剤層上に水分吸着層を0.3nm以上の膜厚で形成する工程を含む。本発明では、高温高湿環境が、湿度70〜90%、温度65〜90℃の環境であり、この環境下への前記磁気記録基板の放置時間は40〜60時間であり、前記常温常湿環境が、湿度30〜50%、温度15〜25℃の環境であり、この環境下への磁気記録基板の放置時間は1〜240時間であることを特徴とする。好ましくは、高温高湿環境は、湿度80%、温度70℃の環境であり、この環境下への前記磁気記録基板の放置時間は50時間である。好ましくは、常温常湿環境は、湿度40%、温度25℃の環境であり、この環境下への磁気記録基板の放置時間は24時間である。本発明の製造方法では、前記工程(1)および(2)の間に、磁気記録基板を加熱処理する工程を更に含むことが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、潤滑剤(PFPE)が塗布された磁気記録基板を、高温高湿環境下に放置し、次いで常温常湿環境下に放置して、磁気記録基板表面上に水分吸着層を0.3nm以上形成させることで、従来の磁気記録媒体に比較し、ヘッドスライダ摺動時の摩擦力を低減させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の第一は、磁気記録媒体に関する。本発明の磁気記録媒体は、少なくとも非磁性基板上に設けられた磁性層、保護層および潤滑剤層からなり、潤滑剤層上に更に水分吸着層を所定の厚さで設けたこと特徴とする。
【0012】
次に、本発明の磁気記録媒体について詳述する。本発明の磁気記録媒体は、非磁性基板上に、少なくとも磁性層、保護層、潤滑剤層および水分吸着層が含まれる。一例を示せば、図1に示されるような構造を有する。すなわち、非磁性基板100上に、磁性層102、保護層104、潤滑剤層106、および水分吸着層108を有する。
【0013】
非磁性基板は、磁気記録媒体に従来から用いられているものであれば特に限定されない。例えば、図1に示したような従来から汎用的に使用されているアルミ合金などの基板110上に無電解メッキによりNi−Pなどの非磁性金属層(メッキ層)120を形成したものであってよく、あるいは、ガラス、セラミック、プラスチックなどの材料から構成されていてもよい。
【0014】
本発明の磁気記録媒体では、必要に応じて、非磁性基板と磁性層との間に、非磁性下地層、軟磁性層、シード層、中間層などを設けてもよい。
【0015】
任意選択的に設けてもよい非磁性下地層は、Ta、Ti、またはCrTi合金のようなCrを含む非磁性材料を用いて形成することができる。
【0016】
任意選択的に設けてもよい軟磁性層は、FeTaC、センダスト(FeSiAl)合金などの結晶性材料;FeTaC、CoFeNi、CoNiPなどの微結晶性材料;またはCoZrNd、CoZrNb、CoTaZrなどのCo合金を含む非晶質材料を用いて形成することができる。軟磁性層の膜厚は、磁性層に垂直方向磁界を集中させるための層であり、記録に使用する磁気ヘッドの構造や特性によって最適値が変化するが、おおむね10nm以上500nm以下であることが、生産性との兼ね合いから望ましい。
【0017】
任意選択的に設けてもよいシード層は、面心立方格子構造を有する金属または合金や、TaあるいはTa合金を用いて形成することができる。面心立方格子構造を有する金属または合金としては、Cu、Pd、Pt、Niまたはこれらのうち1つ以上を含む合金;NiFe、NiFeSi、NiFeNb、NiFeB、NiFeCrなどのようなパーマロイ系材料;CoNiFe、CoNiFeSi、CoNiFeB、CoNiFeNb、CoNiFeCrなどのようなパーマロイ系材料にCoをさらに添加した材料;Co;あるいはCoB、CoSi、CoNi、CoFeなどのCo基合金を用いて形成することができる。シード層は、磁性層の結晶構造を制御するのに充分な膜厚を有することが望ましく、通常の場合、3nm以上50nm以下の膜厚を有することが望ましい。
【0018】
任意選択的に設けてもよい中間層は、Ru、もしくはRuを主成分とする合金、またはCo、もしくはCoを主成分とする合金を用いて形成することができる。また、これらの金属あるいは合金は積層して用いることもできる。中間層は、通常0.1nm以上30nm以下の膜厚を有する。このような範囲内の膜厚とすることによって、磁性層の磁気特性や電磁変換特性を劣化させることなしに、高密度記録に必要な特性を磁性層に付与することが可能となる。
【0019】
磁性層は、好適には、少なくともCoとPtを含む合金の強磁性材料を用いて形成することができる。垂直磁気記録を行うためには、磁性層の材料の磁化容易軸(六方最密充填(hcp)構造のc軸)が、記録媒体表面(すなわち磁気記録媒体用基板の主表面)に垂直方向に配向していることが必要である。磁性層は、たとえばCoPt、CoCrPt、CoCrPtB、CoCrPtTaなどの合金材料を用いて形成することができる。磁性層の膜厚は、特に限定されるものではない。しかしながら、生産性および記録密度向上の観点から、磁性層は、好ましくは30nm以下、より好ましくは15nm以下の膜厚を有する。
【0020】
別法として、非磁性酸化物または非磁性窒化物のマトリクス中に磁性結晶粒子が分散されているグラニュラー構造を有する材料を用いて、磁性層を形成してもよい。用いることができるグラニュラー構造を有する材料は、CoPt−SiO2、CoCrPtO、CoCrPt−TiO2、CoCrPt−SiO2、CoCrPt−Al23、CoPt−AlN、CoCrPt−Si34などを含むが、これらに限定されるものではない。グラニュラー構造を有する材料を用いた場合、磁性層内で近接する磁性結晶粒間の磁気的分離を促進し、ノイズの低減、SNRの向上および記録分解能の向上といった磁気記録特性の改善を図ることができる。
【0021】
保護層は、カーボン(ダイヤモンド状カーボン、アモルファスカーボンなど)、あるいは磁気記録媒体の保護層用の材料として知られている種々の薄層材料を用いて形成することができる。保護層は、その下にある磁性層以下の各構成層を保護するための層である。本発明の磁気記録媒体では、保護層はダイヤモンド状カーボンであることが好ましい。
【0022】
潤滑剤層の材料は、磁気記録媒体に通常使用されているものを用いることができる。例えば、パーフルオロポリエーテル系の潤滑剤を挙げることができる。潤滑剤層の膜厚等は、通常の垂直磁気記録媒体で用いられる膜厚等を適用することができる。
【0023】
水分吸着層は、潤滑剤が塗布された磁気記録基板を、高温高湿環境下へ放置し、基板表面に水分を吸着させ、水分の膜を形成させることにより得られる。水分吸着層は0.3nm以上、好ましくは0.3〜0.5nmの膜厚で形成させることが必要である。本発明では、水分吸着層を所定の膜厚以上で設けることにより、ヘッドスライダと磁気記録媒体表面間の摩擦を著しく低減することができる。
【0024】
次に、本発明の磁気記録媒体の製造方法について説明する。本発明の磁気記録媒体の製造方法は、以下の工程を含む。
【0025】
(1)非磁性基板を準備し、該非磁性基板上に、少なくとも磁性層、保護層および潤滑剤層を形成し、磁気記録基板を作成する工程と、
(2)前記磁気記録基板を高温高湿環境に放置し、次いで常温常湿環境に放置することで、前記潤滑剤層上に水分吸着層を0.3nm以上の膜厚で形成する工程。
【0026】
工程(1)は、磁気記録基板を製造する工程であり、従来の磁気記録媒体の製造方法を適用することができる。例えば、上述の任意要素である非磁性下地層、軟磁性層、シード層および中間層の形成は、スパッタ法(DCマグネトロンスパッタ法、RFマグネトロンスパッタ法などを含む)、真空蒸着法など当該技術において知られている任意の方法を用いて実施することができる。磁性層の形成は、スパッタ法(DCマグネトロンスパッタ法、RFマグネトロンスパッタ法などを含む)、真空蒸着法など当該技術において知られている任意の方法を用いて実施することができる。保護層は、一般的にスパッタ法(DCマグネトロンスパッタ法、RFマグネトロンスパッタ法などを含む)、真空蒸着法、CVD法などを用いて形成することができる。潤滑剤層は、ディップコート法、スピンコート法などの当該技術において知られている任意の塗布方法を用いて形成することができる。これらの各層の形成条件は、使用する材料により異なるが、従来の磁気記録媒体の製造方法に対して開示されている条件を適用すればよい。
【0027】
工程(2)は、水分吸着層を形成する工程である。本発明において、水分吸着層は、以下の手順による表面処理により形成される。
(i) 潤滑剤が塗布された磁気記録基板を高温高湿環境下へ放置し、磁気記録基板の表面に水分吸着層を0.3nm以上形成させる。
(ii) 水分吸着層が形成された後、磁気記録基板の環境を、高温高湿環境から常温常湿環境へ移行させる。
【0028】
本発明では、高温高湿環境は、例えば、湿度70〜90%、温度65〜90℃の環境である。また、常温常湿環境は、例えば、湿度30〜50%、温度15〜25℃の環境である。磁気記録基板は、上記高温高湿環境に40〜60時間放置されることが好ましく、常温常湿環境下へ1〜240時間放置されることが好ましい。特に好ましい高温高湿環境は、湿度80%、温度70℃の環境であり、この環境下への前記磁気記録基板の放置時間は50時間である。特に好ましい常温常湿環境は、湿度40%、温度25℃の環境であり、この環境下への磁気記録基板の放置時間は24時間である。
【0029】
本発明では、次の手順により、上記磁気記録媒体の表面処理を実施し、磁気記録基板表面に水分吸着層を0.3nm以上形成する。本発明では、水分吸着層は0.3nm〜0.5nmの範囲であることが特に好ましい。
【0030】
水分吸着層は、水分以外の不純物が混入しないように所定のチャンバー(例えば、VENA社製VC−10チャンバー)内で形成されることが好ましい。
【0031】
本発明の磁気記録媒体では、その表面に存在する水分吸着層の水分が磁気記録媒体内部の磁性層まで浸透すると、腐食の原因となりうる。そこで、本発明の磁気記録媒体は、極力、保護層に対する潤滑剤層の被覆性を高め、水分の下層への浸透を抑制する必要がある。
【0032】
そこで、本発明の磁気記録媒体には、潤滑剤を塗布した後に100℃以上、好ましくは、100℃〜150℃の範囲の温度で、加熱処理を行うことが好ましい。加熱処理を行うことによって、潤滑剤の粘性を一時的に低下させ、磁気記録媒体表面に潤滑剤の再拡散を促すことができる。これにより磁気記録媒体上で潤滑剤が被覆されていない部分に、潤滑剤が拡散・吸着し、結果として潤滑剤の被覆性が向上する。
【実施例】
【0033】
以下に本発明の実施例を説明するが、以下の実施例は、本発明を説明するための代表例に過ぎず、本発明をなんら限定するものではない。
【0034】
(1)磁気記録基板の作製
以下の手順で磁気記録基板を作製した。
非磁性基体として表面が平滑な化学強化ガラス基板(HOYA社製、N−5ガラス基板)を用い、これを洗浄後にスパッタ装置内に導入し、Co85Zr10Nb5ターゲットを用いてDCマグネトロンスパッタ法によりCoZrNb非晶質軟磁性裏打ち下層を110nm成膜し、引き続きRuターゲットを用いてDCマグネトロンスパッタ法によりRu非磁性金属層をArガス圧4.0Paの下、0.8nmで成膜した。
次に、10at%窒素ガスを含有するArガス(Ar−10%N2ガス)を用い、10mTorrの雰囲気下でRu非磁性金属層の表面を3秒間窒素暴露処理した。そして再び、Co85Zr10Nb5ターゲットを用いてDCマグネトロンスパッタ法によりCoZrNb非晶質軟磁性裏打ち上層をArガス圧1.2Paの下、90nm成膜した。
【0035】
引続きカーボン保護層をCVD法により膜厚3.0nmで形成した後、真空装置から取り出した。その後、得られた基板上に、磁気記録媒体用に一般に用いられているパーフルオロポリエーテル(PFPE)潤滑剤(製品名:Z−tetraol)を、CVD成膜法により形成されたカーボン保護層上に1.2nm塗布した。上記手順より磁気記録基板を用意した。
【0036】
次いで、得られた磁気記録基板の表面処理を以下手順で実施した。
上記プロセスで作製した磁気記録基板を、VENA社製VC−10チャンバー内において、高温高湿(70℃、80%)環境にて長時間放置(放置時間は図2参照)を行った。
【0037】
磁気記録基板表面に形成される水分吸着層の膜厚と放置時間との関係を図2に示す。高温高湿環境放置の時間が長くなるほど、水分吸着層の膜厚は増大する傾向となった。本実施例に用いた磁気記録基板では、50時間の放置で膜厚0.3nmに達した。なお、水分吸着層の膜厚は、走査型エリプソメータ(OSA5100)を用いて測定した。
【0038】
また、チャンバーから取り出した直後の水分吸着層の膜厚と、チャンバーから取り出した後、常温常湿(25℃、40%)環境に放置した場合の水分吸着層の膜厚の経時変化を図3に示す。放置直後から1週間経過しても、水分吸着層の膜厚はほとんど変化しないことが示された。
【0039】
上記プロセスで作製した磁気記録媒体サンプルの表面に対し、30%サイズ(1.2mm×1.0mm)のヘッドスライダを用いて摺動試験(Drag試験)を実施した。摺動試験の条件を以下に示す。
測定した磁気記録媒体:
− サイズ 直径95mm (3.5インチサイズ)
− 保護層 カーボン保護層(厚さ3.0nm)
− 潤滑剤層 Z−tetraol(厚さ1.2nm)
− 高温高湿環境(70℃、80%)下に以下の時間放置した磁気記録媒体
放置時間:0, 2, 10, 30, 50, 63 時間(6条件)
【0040】
磁気記録媒体の回転数:7200rpm→700 rpm(10sec間にて減少)→7200rpm(10秒間で上昇)
試験半径位置:25 mm
スライダ荷重:2.5 gf
測定項目:摩擦力(Strainセンサによる測定)
【0041】
摺動試験の結果、水分吸着層の膜厚が0.3nm(放置時間50時間)以上の磁気記録媒体では、ヘッドスライダ−磁気記録媒体表面間に摩擦力はほとんど測定されなかった。一方、水分吸着層の膜厚が0.3nm未満(放置時間50時間未満)の磁気記録媒体では、摺動動作によって最大5gf程度の摩擦力が発生することが分かる。
【0042】
水分吸着層の膜厚をパラメータとしたときの摺動試験中の摩擦力(磁気記録媒体の回転数700rpm時)を示した結果を図4に示す。水分吸着層の膜厚が0.3nmを下回ると、高い摩擦力が検出されることが分かる。すなわち、ヘッドスライダ−磁気記録媒体表面間の摩擦力低減に効果が見られるのは、水分吸着層の膜厚が0.3nm以上である。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の磁気記録媒体の構成を示す概略図である。
【図2】本発明に係る磁気記録基板表面に形成される水分吸着層の膜厚と放置時間との関係を示すグラフである。
【図3】本発明の磁気記録基板を常温常湿環境下に放置した場合の、走査型エリプロメータにより測定した、水分吸着層の膜厚の経時変化を示すグラフである。
【図4】摺動動作時における水分吸着層の膜厚と摩擦力(磁気記録媒体の回転数700rpm時)との関係を示すグラフである。
【符号の説明】
【0044】
100 非磁性基板
102 磁性層
104 保護層
106 潤滑剤層
108 水分吸着層
110 基板
120 非磁性金属層(メッキ層)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
非磁性基板上に少なくとも磁性層、保護層および潤滑剤層からなる磁気記録媒体であって、前記潤滑剤層上に、水分吸着層を0.3nm以上設けたことを特徴とする磁気記録媒体。
【請求項2】
(1)非磁性基板を準備し、該非磁性基板上に、少なくとも磁性層、保護層および潤滑剤層を形成し、磁気記録基板を作成する工程と、
(2)前記磁気記録基板を高温高湿環境に放置し、次いで常温常湿環境に放置することで、前記潤滑剤層上に水分吸着層を0.3nm以上の膜厚で形成する工程
を含むことを特徴とする、磁気記録媒体の製造方法。
【請求項3】
前記高温高湿環境が、湿度70〜90%、温度65〜90℃の環境であり、この環境下への前記磁気記録基板の放置時間は40〜60時間であり、前記常温常湿環境が、湿度30〜50%、温度15〜25℃の環境であり、この環境下への磁気記録基板の放置時間は1〜240時間であることを特徴とする請求項2に記載の磁気記録媒体の製造方法。
【請求項4】
前記工程(1)および(2)の間に、磁気記録基板を加熱処理する工程を更に含むことを特徴とする請求項2または3に記載の磁気記録媒体の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2009−283099(P2009−283099A)
【公開日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−136768(P2008−136768)
【出願日】平成20年5月26日(2008.5.26)
【出願人】(503361248)富士電機デバイステクノロジー株式会社 (1,023)
【Fターム(参考)】