説明

磁気記録媒体の製造方法、磁気記録媒体および磁気記録再生装置

【課題】マスク層に、反応性プラズマに対して安定なものを使用して、ハロゲン等との化合物を形成しないようにし、これにより、マスク層からの化合物の拡散を防止し、優れた磁気記録パターン分離性能を有して隣接パターン間の信号干渉の影響を受けず、また高温高湿の環境下で使用しても、経時的な磁気記録再生特性低下を改善することができるようにする。
【解決手段】本発明は、磁気的に分離した磁気記録パターンを有する磁気記録媒体の製造方法において、非磁性基板1上に磁性体領域3を形成した後、この磁性体領域3の上にPt、Ru、Pdの群から選ばれた何れか1種以上の材料からなるマスク層を形成し、その後、磁性体領域3の表面でマスク層に覆われていない箇所を、反応性プラズマにさらし、該箇所の記録層を非晶質化して磁気特性を改質することにより、磁気的に分離した磁気記録パターンを形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
磁気的に分離した磁気記録パターンを有する磁気記録媒体の製造方法、その磁気記録媒体および磁気記録再生装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、磁気ディスク装置、フレキシブルディスク装置、磁気テープ装置等の磁気記録装置の適用範囲は著しく増大されその重要性が増すと共に、これらの装置に用いられる磁気記録媒体について、その記録密度の著しい向上が図られつつある。特にMRヘッド、およびPRML技術の導入以来面記録密度の上昇はさらに激しさを増し、近年ではさらにGMRヘッド、TMRヘッドなども導入され、1年に約100%ものペースで増加を続けている。これらの磁気記録媒体については、今後更に高記録密度を達成することが要求されており、そのために磁気記録層の高保磁力化と高信号対雑音比(SNR)、高分解能を達成することが要求されている。また、近年では線記録密度の向上と同時にトラック密度の増加によって面記録密度を上昇させようとする努力も続けられている。
【0003】
最新の磁気記録装置のトラック密度は110kTPIにも達している。しかし、トラック密度を上げていくと、隣接するトラック間の磁気記録情報が互いに干渉し合い、その境界領域の磁化遷移領域がノイズ源となりSNRを損なうという問題が生じやすくなる。このことはそのままBit Error rateの低下につながるため記録密度の向上に対して障害となっている。
【0004】
面記録密度を上昇させるためには、磁気記録媒体上の各記録ビットのサイズをより微細なものとし、各記録ビットに可能な限り大きな飽和磁化と磁性膜厚を確保する必要がある。しかし、記録ビットを微細化していくと、1ビット当たりの磁化最小体積が小さくなり、熱揺らぎによる磁化反転で記録データが消失するという問題が生じる。
【0005】
また、トラック間距離が近づくために、磁気記録装置は極めて高精度のトラックサーボ技術を要求されると同時に、記録を幅広く実行し、再生は隣接トラックからの影響をできるだけ排除するために記録時よりも狭く実行する方法が一般的に用いられている。この方法ではトラック間の影響を最小限に抑えることができる反面、再生出力を十分得ることが困難であり、そのために十分なSNRを確保することがむずかしいという問題がある。
【0006】
このような熱揺らぎの問題やSNRの確保、あるいは十分な出力の確保を達成する方法の一つとして、記録媒体表面にトラックに沿った凹凸を形成し、記録トラック同士を物理的に分離することによってトラック密度を上げようとする試みがなされている。このような技術を以下にディスクリートトラック法、それによって製造された磁気記録媒体をディスクリートトラック媒体と呼ぶ。
【0007】
ディスクリートトラック媒体の一例として、表面に凹凸パターンを形成した非磁性基板に磁気記録媒体を形成して、物理的に分離した磁気記録トラック及びサーボ信号パターンを形成してなる磁気記録媒体が知られている(例えば特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2004−164692号公報
【0008】
この磁気記録媒体は、表面に複数の凹凸のある基板の表面に軟磁性層を介して強磁性層が形成されており、その表面に保護膜を形成したものである。この磁気記録媒体では、凸部領域に周囲と物理的に分断された磁気記録領域が形成されている。
【0009】
この磁気記録媒体によれば、軟磁性層での磁壁発生を抑制できるため熱揺らぎの影響が出にくく、隣接する信号間の干渉もないので、ノイズの少ない高密度磁気記録媒体を形成できるとされている。
【0010】
ディスクリートトラック法には、何層かの薄膜からなる磁気記録媒体を形成した後にトラックを形成する方法と、あらかじめ基板表面に直接、あるいはトラック形成のための薄膜層に凹凸パターンを形成した後に、磁気記録媒体の薄膜形成を行う方法とがある(例えば特許文献2,3参照)。
【特許文献2】特開2004−178793号公報
【特許文献3】特開2004−178794号公報
【0011】
このうち、前者の方法は、しばしば磁気層加工型とよばれ、表面に対する物理的加工が媒体形成後に実施されるため、媒体が製造工程において汚染されやすいという欠点があり、かつ製造工程がたいへん複雑であった。一方、後者はしばしばエンボス加工型とよばれ、製造工程中の汚染はしにくいが、基板に形成された凹凸形状が成膜された膜にも引き継がれることになるため、媒体上を浮上しながら記録再生を行う記録再生ヘッドの浮上姿勢、浮上高さが安定しないという問題点があった。
【0012】
また、ディスクリートトラック媒体の磁気トラック間領域を、あらかじめ形成した記録層(磁性層)に窒素、酸素等のイオンを注入し、または、レーザを照射することにより、その部分の磁気的な特性を変化させて形成する方法が開示されている(特許文献4〜6参照)。
【特許文献4】特開平5−205257号公報
【特許文献5】特開2006−209952号公報
【特許文献6】特開2006−309841号公報
【0013】
しかしながら、この方法では、記録層がイオン注入やレーザー照射によってダメージを受け、記録層表面に凸凹が形成する場合があった。またこの方法では、注入するイオンやレーザのエネルギーは高いものの、メディア全面あたりのエネルギー密度が低く、メディア全面の磁性を変化させるまでの処理時間が長くなるという問題があった。
【0014】
また特許文献7には、磁気記録媒体の強磁性体層表面の露出部を、ハロゲンを含む活性な反応ガスに曝し、強磁性体をフッ化することにより、強磁性体を非強磁性体化する磁性体のパターニング方法が記載されている。
【特許文献7】特開2002−359138号公報
【0015】
特許文献7に記載の方法は、記録層の物理的な加工を伴わないため、記録層を加工する際の汚染を低減することが可能である。また、記録層の磁気特性の改質にイオンビーム等を用いる場合に比べ、記録層の磁気特性の改質を短時間で行うことが可能となった。
【0016】
しかしながら、特許文献7に記載の方法を用いた場合、磁気記録領域の周囲にフッ化コバルト等のフッ化物が形成し、このフッ化物が徐々に磁気記録領域の記録層を浸食することが明らかになった。特に、マスク層として反応性プラズマと化合物を形成しやすい物質を用いた場合、マスク層の化合物が磁気記録領域に拡散しやすいことが明らかになった。そして、この磁気記録媒体を用いたハードディスクドライブを高温高湿の環境下で使用した場合、経時的に磁気記録再生特性が低下することが明らかになった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、マスク層に、反応性プラズマに対して安定なものを使用して、ハロゲン等との化合物を形成しないようにし、これにより、マスク層からの化合物の拡散を防止し、優れた磁気記録パターン分離性能を有して隣接パターン間の信号干渉の影響を受けず、また高温高湿の環境下で使用しても、経時的な磁気記録再生特性低下を改善することができる磁気記録媒体の製造方法、磁気記録媒体および磁気記録再生装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記目的を達成するために、(1)第1の発明は、磁気的に分離した磁気記録パターンを有する磁気記録媒体の製造方法において、非磁性基板上に連続した記録層を形成した後、この記録層の上にPt、Ru、Pdの群から選ばれた何れか1種以上の材料からなるマスク層を形成し、その後、記録層の表面でマスク層に覆われていない箇所を、反応性プラズマ、もしくは当該反応性プラズマ中に生成した反応性イオンにさらし、該箇所の記録層を非晶質化して磁気特性を改質する磁気特性改質工程により、磁気的に分離した磁気記録パターンを形成する、ことを特徴としている。
【0019】
(2)第2の発明は、上記した(1)項に記載の発明において、上記磁気特性改質工程が、改質した記録層の磁化量を当初の75%以下とするものである。
【0020】
(3)第3の発明は、上記した(1)または(2)項に記載の発明において、上記反応性プラズマを、酸素ガスを導入して生成した酸素イオンを含有するプラズマとするものである。
【0021】
(4)第4の発明は、上記した(1)乃至(3)の何れか1項に記載の発明において、上記反応性プラズマは、ハロゲンおよびハロゲンイオンを含有するものである。
【0022】
(5)第5の発明は、上記した(4)項に記載の発明において、上記記録層でハロゲンおよびハロゲンイオンにさらした箇所が、記録層を構成する物質のハロゲン化物を実質的に含まないものである。
【0023】
(6)第6の発明は、上記した(4)または(5)項に記載の発明において、上記反応性プラズマは、酸素および酸素イオン、並びにハロゲンおよびハロゲンイオンを含有するものである。
【0024】
(7)第7の発明は、上記した(4)乃至(6)の何れか1項に記載の発明において、上記磁気特性改質工程は、記録層の表面でマスク層に覆われていない箇所を、酸素および酸素イオンを含有する反応性プラズマにさらす第1の工程と、その後その箇所をハロゲンおよびハロゲンイオンを含有する反応性プラズマにさらす第2の工程とを有するものである。
【0025】
(8)第8の発明は、上記した(1)乃至(7)の何れか1項に記載の発明において、上記磁気特性改質工程の前に、記録層の表面でマスク層に覆われていない箇所にイオン注入を行うものである。
【0026】
(9)第9の発明は、上記した(8)項に記載の発明において、上記イオン注入するイオンを、アルゴンイオンまたは窒素イオンとするものである。
【0027】
(10)第10の発明は、上記した(4)乃至(9)の何れか1項に記載の発明において、上記ハロゲンイオンを、CF4、SF6、CHF3、CCl4、KBrの群から選ばれた何れか1種以上のハロゲン化ガスを反応性プラズマ中に導入して形成したハロゲンイオンとするものである。
【0028】
(11)第11の発明は、上記した(4)乃至(9)の何れか1項に記載の発明において、上記ハロゲンイオンをFイオンとするものである。
【0029】
(12)第12の発明は、上記した(1)乃至(11)の何れか1項に記載の製造方法で製造したことを特徴とする磁気記録媒体である。
【0030】
(13)第13の発明は、磁気記録媒体と、該磁気記録媒体に情報を記録再生する磁気ヘッドとを備えた磁気記録再生装置であって、磁気記録媒体が上記した(12)項に記載の磁気記録媒体であることを特徴とする磁気記録再生装置である。
【発明の効果】
【0031】
本発明では、マスク層としてPt、Ru、Pdの群から選ばれた何れか1種以上の材料を用いたので、マスク層は、ハロゲンイオン等を含む反応性プラズマに対して安定となり、ハロゲン等との化合物を形成することもない。これにより、マスク層からの化合物の拡散が防止され、像ぼけのない磁気記録パターンを形成することが可能となる。したがって、優れた磁気記録パターン分離性能を有し、隣接パターン間の信号干渉の影響を受けず、高記録密度特性に優れた磁気記録媒体を生産性高く製造することができる。
【0032】
また、マスク層からの化合物の拡散を防止できるので、表面の平滑性に優れ、磁気ヘッドの低浮上化を実現した磁気記録再生装置に適用することが可能となる。
【0033】
また、高温高湿の環境下で使用しても、経時的な磁気記録再生特性低下を改善することができ、カーナビゲーション用途等の高温高湿の環境下でも安定して使用可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0035】
本発明は、磁気的に分離した磁気記録パターンを有する磁気記録媒体の製造方法において、非磁性基板上に連続した記録層を形成した後、この記録層の上にPt、Ru、Pdの群から選ばれた何れか1種以上の材料からなるマスク層を形成し、その後、記録層の表面でマスク層に覆われていない箇所を、反応性プラズマ、もしくは反応性プラズマ中に生成した反応性イオンにさらし、該箇所の記録層を非晶質化して磁気特性を改質する磁気特性改質工程により、磁気的に分離した磁気記録パターンを形成することを特徴とする。
【0036】
本発明では、磁気記録パターンを構成する周囲の記録層を反応性プラズマもしくは反応性プラズマ中のイオン化した成分にさらし、該箇所の記録層を非晶質化して製造する。記録層を反応性イオン等に晒した場合、該箇所には磁性合金のイオン化物が形成する。例えば、特許文献7に記載されているように、Co系磁性合金をフッ素イオンプラズマにさらした場合、Co系磁性合金はフッ化コバルトとなり非磁性となる。すなわち、反応性プラズマに含まれるイオンは反応性が高いため、容易に磁性合金等と反応するからである。本発明の磁気記録媒体の製造方法では、反応性イオン等にさらした記録層を、その記録層の磁性合金をイオンと反応させその反応物により非磁性化するのではなく、磁性合金を非晶質化して非磁性化することを特徴とする。
【0037】
また本発明では、磁気記録パターンを形成するのに際し、パターン部の周囲の領域を反応性プラズマもしくは反応性プラズマ中のイオン化した成分にさらし、該箇所の記録層を非晶質化するが、その際のパターン部のマスク層としてPt、Ru、Pdの群から選ばれた何れか1種以上の材料を用いることを特徴とする。その理由は前述した通りであるが、マスク層として反応性プラズマと化合物を形成しやすい物質を用いた場合、その化合物が磁気記録パターン部に拡散し、記録層とも化合物を形成してしまうからである。特に、反応性プラズマとしてハロゲンを含むプラズマを用いた場合、マスク層を構成する材料がハロゲン化物となり、そのハロゲン化物からハロゲンイオンが磁気記録パターン部に拡散し、記録層のハロゲン化物が形成することが明らかになった。本発明ではマスク層としてPt、Ru、Pdの群から選ばれた何れか1種以上の材料を用いるが、これらの物質はハロゲンイオン等を含む反応性プラズマに対して安定であり、また、ハロゲン等との化合物を形成することもない。これにより、マスク層からの化合物の拡散が防止され、像ぼけのない磁気記録パターンを形成することが可能となる。
【0038】
磁性合金と反応性プラズマとを反応させ、該箇所の磁性合金を非晶質化する方法としては、磁性合金に反応性プラズマ中のイオンを衝突させて、該箇所の構造を物理的に壊す方法を用いることができる。また、磁性合金と反応性プラズマ中のイオンとを反応させ、磁性合金のイオン化物を生成させ、その後、磁性合金のイオン化による化合物のみを脱離させる方法を用いることができる。例えば、Co系磁性合金を反応性フッ素イオンにさらして非磁性のフッ化コバルトを形成した後、このフッ化コバルトを加熱してフッ素のみを脱離させ、結晶構造が壊れた非晶質状態のCo系合金を形成させる。
【0039】
このような非晶質状態の磁性合金の製造条件は、磁性合金の組成、反応性プラズマに含まれるイオンの種類、反応圧力、反応時間、温度等を適宜設定することにより定めることができる。
【0040】
例えば、図1は、70Co−5Cr−15Pt−10SiO2磁性合金と、CF4を用いて発生させた反応性プラズマとの反応生成物のX線回折結果である。図中、実線で示した(a)は、反応性プラズマとの反応前の記録層の回折結果である。回折角42度付近にある大きなシグナルは記録層の下にあるRu中間層の回折ピーク、43度付近にあるシグナルは磁性合金中のCoの回折ピークである。
【0041】
図中、点線で示した(b)は、この記録層を、フッ素イオンを含む反応性プラズマに60秒間さらした結果である。処理条件は、CF4を10cc/分、O2を90cc/分用い、プラズマ発生のための投入電力は200W、装置内の圧力は0.5Paとし、基板バイアスを200Wとした。なお、処理時の基板温度は約150℃である。この反応により43度付近のピークは消失したが、フッ化コバルトに起因するピークは現れていない。また、42度付近のRu中間層のピークはそのままである。この結果は、Co系磁性合金が結晶性を失い非晶質化したことを示している。
【0042】
さらに、図中、細い実線で示した(c)は、(a)の記録層をフッ素イオンを含む反応性プラズマにさらした場合であるが、(b)での条件に対し、基板バイアスを印加せず、また、処理ガスに酸素を添加せずにCF4のみを用いて処理した場合である。この場合、43度付近のピークは消失し、42度付近のRu中間層のピークはそのままであるが、35度、41度、44度付近にフッ化コバルトに起因するピークが現れている。
【0043】
本願発明者の研究によると、記録層を、ハロゲンイオンを含む反応性プラズマにより改質するに際し、磁性合金のハロゲン化またはアモルファス化を制御する方法としては下記がある。
【0044】
1)基板にバイアス電圧を印加すると非晶質化が進行しやすくなる。これは、記録層において、ハロゲンイオンによるハロゲン化反応に比べ、イオンの衝撃による結晶構造の破壊が進行しやすくなるためと考えられる。
【0045】
2)反応性プラズマ中のハロゲンがラジカル状態の場合は磁性粒のハロゲン化が進行しやすく、イオン状態の場合は磁性粒の非晶質化が進行しやすい。これはハロゲンが有する反応性に差が生ずるためと考えられる。
【0046】
3)ハロゲンを含むガスにCF4を用いると磁性粒のハロゲン化が進行しやすく、SF6を用いると非晶質化が進行しやすい。これはハロゲン化ガスの特質によるものと考えられる。
【0047】
4)反応性プラズマに酸素を加えると磁性粒の非晶質化が進行しやすい。磁性粒子のハロゲン化より酸化の方が進行し易いためと考えられる。
【0048】
5)記録層が、粒界に酸化物を有するグラニュラー構造の場合は、ハロゲンイオンによる反応が酸化物から進行するため、磁性粒子のハロゲン化が進行しにくくなる。
【0049】
本発明の磁気記録パターン部とは、磁気記録パターンが1ビットごとに一定の規則性をもって配置された、いわゆるパターンドメディアや、磁気記録パターンが、トラック状に配置されたメディアや、その他、サーボ信号パターン等を含んでいる。
【0050】
この中で本発明は、磁気的に分離した磁気記録パターンが、磁気記録トラック及びサーボ信号パターンである、いわゆる、ディスクリート型磁気記録媒体に適用するのが、その製造における簡便性から好ましい。
【0051】
本発明を、ディスクリート型磁気記録媒体を例にして詳細に説明する。
【0052】
図2に本発明に係るディスクリート型磁気記録媒体の断面構造を例示する。本発明の磁気記録媒体30は、非磁性基板1の表面に、軟磁性層および中間層2と、磁気的パターンを有する磁性体領域3と、非磁性化層4と、保護膜5とが形成されており、さらに最表面に図示省略の潤滑膜が形成された構造を有している。磁性体領域3の最表層が記録層となる。
【0053】
記録密度を高めるため、磁気的パターンを有する磁性体領域3の磁性部幅Wは200nm以下、非磁性化層4の非磁性部幅Lは100nm以下とすることが好ましい。従ってトラックピッチP(=W+L)は300nm以下の範囲で、記録密度を高めるためにはできるだけ狭くする。
【0054】
本発明で使用する非磁性基板1としては、Alを主成分とした例えばAl−Mg合金等のAl合金基板や、通常のソーダガラス、アルミノシリケート系ガラス、結晶化ガラス類、シリコン、チタン、セラミックス、各種樹脂からなる基板など、非磁性基板であれば任意のものを用いることができる。中でもAl合金基板や結晶化ガラス等のガラス製基板またはシリコン基板を用いることが好ましい。またこれら基板の平均表面粗さ(Ra)は、1nm以下、さらには0.5nm以下であることが好ましく、中でも0.1nm以下であることが好ましい。
【0055】
上記のような非磁性基板の表面に形成される磁性体領域3の最表層の記録層は、面内記録層でも垂直記録層でもかまわないが、より高い記録密度を実現するためには垂直記録層が好ましい。これら磁性体領域は主としてCoを主成分とする合金から形成するのが好ましい。
【0056】
例えば、面内磁気記録媒体用の磁性体領域としては、非磁性のCrMo下地層と、強磁性のCoCrPtTaからなる記録層からなる積層構造が利用できる。
【0057】
垂直磁気記録媒体用の磁性体領域としては、例えば軟磁性のFeCo合金(FeCoB、FeCoSiB、FeCoZr、FeCoZrB、FeCoZrBCuなど)、FeTa合金(FeTaN、FeTaCなど)、Co合金(CoTaZr、CoZrNB、CoBなど)等からなる裏打ち層と、Pt、Pd、NiCr、NiFeCrなどの配向制御膜と、必要によりRu等の中間膜、及び60Co−15Cr−15Pt合金や70Co−5Cr−15Pt−10SiO2合金からなる記録層を積層したものを利用することがきる。
【0058】
最表層の記録層の厚さは、3nm以上20nm以下、好ましくは5nm以上15nm以下とする。記録層は使用する磁性合金の種類と積層構造に合わせて、十分なヘッド出入力が得られるように形成すればよい。記録層の膜厚は再生の際に一定以上の出力を得るにはある程度以上の膜厚が必要であり、一方で記録再生特性を表す諸パラメーターは出力の上昇とともに劣化するのが通例であるため、最適な膜厚に設定する必要がある。
【0059】
通常、記録層はスパッタ法により薄膜として形成する。
【0060】
本発明では、磁気記録トラック及びサーボ信号パターン部を磁気的に分離する領域を、すでに成膜された記録層を反応性プラズマにさらして該箇所の記録層を非晶質化し、該箇所の磁気特性を改質することにより形成することを特徴とする。
【0061】
記録層の磁気特性の改質とは、具体的には、記録層の保磁力、残留磁化等を変化させることを指し、その変化とは、保磁力を下げ、残留磁化を下げることを指す。
【0062】
本発明では特に、磁気特性の改質として、反応性プラズマにさらした箇所の記録層の磁化量または保磁力を、磁化量は当初の75%以下、より好ましくは50%以下、保磁力は当初の50%以下、より好ましくは20%以下とする方法を採用するのが好ましい。このような方法を用いてディスクリートトラック型磁気記録媒体を製造することにより、マスク層からの化合物の拡散が防止され、本媒体に磁気記録を行う際の書きにじみをなくし、高い面記録密度の磁気記録媒体を提供することが可能となる。
【0063】
本発明では、磁気記録トラック及びサーボ信号パターン部を磁気的に分離する箇所を、すでに成膜された記録層を反応性プラズマにさらして記録層を非晶質化することにより実現する。
【0064】
本発明で、記録層を非晶質化するとは、記録層の原子配列を、長距離秩序を持たない不規則な原子配列の形態とすることを指し、より具体的には、2nm未満の微結晶粒がランダムに配列した状態とすることを指す。そしてこの原子配列状態を分析手法により確認する場合は、X線回折または電子線回折により、結晶面を表すピークが認められず、ハロー(ブロードなシグナル)のみが認められる状態とする。
【0065】
本発明の反応性プラズマとしては、誘導結合プラズマ(ICP;Inductively Coupled Plasma)や反応性イオンプラズマ(RIE;Reactive Ion Plasma)が例示できる。
【0066】
誘導結合プラズマとは、気体に高電圧をかけることによってプラズマ化し、さらに高周波数の変動磁場によってそのプラズマ内部に渦電流によるジュール熱を発生させることによって得られる高温のプラズマである。誘導結合プラズマは電子密度が高く、従来のイオンビームを用いてディスクリートトラックメディアを製造する場合に比べ、広い面積の記録層において、高い効率で磁気特性の改質を実現することができる。
【0067】
反応性イオンプラズマとは、プラズマ中にO2、SF6、CHF3、CF4、CCl4等の反応性ガスを加えた反応性の高いプラズマである。このようなプラズマを本発明の反応性プラズマとして用いることにより、記録層の磁気特性の改質をより高い効率で実現することが可能となる。
【0068】
本発明では、成膜された記録層を反応性プラズマにさらすことにより記録層を改質するが、この改質は、記録層を構成する磁性金属と反応性プラズマ中の原子またはイオンとの反応により実現するのが好ましい。反応とは、磁性金属に反応性プラズマ中の原子等が侵入し、磁性金属の結晶構造が変化すること、磁性金属の組成が変化すること、磁性金属が酸化すること、磁性金属が窒化すること、磁性金属が珪化すること等が例示できる。
【0069】
本発明では特に、反応性プラズマとして酸素原子を含有させ、記録層を構成する磁性金属と、反応性プラズマ中の酸素原子や酸素イオンとを反応させることにより、記録層を酸化させるのが好ましい。記録層を部分的に酸化させることにより、酸化部分の残留磁化及び保磁力等を効率よく低減させることが可能となるため、短時間の反応性プラズマ処理により、磁気的に分離した磁気記録パターンを有する磁気記録媒体を製造することが可能となるからである。また反応性プラズマ中に酸素原子また酸素イオンを含有させることにより、記録層の非晶質化を促進することが可能となる。
【0070】
本発明では、反応性プラズマに、ハロゲン原子およびハロゲンイオンを含有させるのが好ましい。ハロゲン原子としてはF原子を用いるのが特に好ましい。ハロゲン原子は、酸素原子と一緒に反応性プラズマ中に添加して用いても良いし、また酸素原子を用いずに反応性プラズマ中に添加しても良い。前述のように、反応性プラズマに酸素原子等を加えることにより、記録層を構成する磁性金属と酸素原子等が反応して記録層の磁気特性を改質させることが可能となる。この際、反応性プラズマにハロゲン原子およびハロゲンイオンを含有させることにより、この反応性をさらに高めることが可能となる。
【0071】
また、反応性プラズマ中に酸素原子を添加していない場合においても、ハロゲン原子が磁性合金と反応して、記録層の磁気特性を改質させることが可能となる。この理由の詳細は明らかではないが、反応性プラズマ中のハロゲン原子が、記録層の表面に形成している異物をエッチングし、これにより記録層の表面が清浄化し、記録層の反応性が高まることが考えられる。また、清浄化した記録層表面とハロゲン原子とが高い効率で反応することが考えられる。このような効果を有するハロゲン原子としてF原子を用いるのが特に好ましい。
【0072】
本発明では、記録層の表面を部分的に反応性プラズマにさらし、該箇所の記録層の磁気特性を改質する工程(磁気特性改質工程)を、記録層を、酸素を含有するプラズマにさらす第1の工程と、その後、記録層を、ハロゲンを含有するプラズマにさらす第2の工程により行うのが好ましい。このような工程を採用することにより、記録層の磁気特性の改質速度を高め、また、記録層の残留磁化及び保磁力等を効率よく低減させることが可能となる。その理由は、本願発明者らの研究によると、記録層を酸素含有プラズマにさらすことにより、磁性粒子の粒界部分が優先的に酸化し、その酸化領域が粒界に沿って膜厚方向に進行し、その後、記録層をハロゲン含有プラズマにさらすと、その磁性粒子の粒界における酸化領域が優先的にハロゲンと反応して該箇所の結晶構造を破壊し、その反応領域が粒界から磁性粒子に向けて進行するためである。これにより、単に記録層を酸素プラズマやハロゲンプラズマにさらした場合に比べ、記録層の磁気特性の改質が高速となり、また、磁性粒子とハロゲンとの反応も効率良く進行するため、記録層の残留磁化及び保磁力等を効率よく低減させることが可能となるのである。
【0073】
本発明では、磁気特性改質工程の前に、記録層の表面に、部分的にイオン注入する工程を設けるのが好ましい。このような工程を設けることにより、記録層の磁気特性の改質をさらに高速に行うことが可能となる。その理由は、本願発明者らの研究によると、記録層の表面に部分的にイオン注入することにより、記録層の表面が活性となり、その後に行う記録層を反応性プラズマにさらす工程において、記録層とプラズマとの反応性がより高まるためである。
【0074】
本発明では、記録層に注入するイオンとして、アルゴンまたは窒素等の不活性のイオンを用いるのが好ましい。このような不活性なイオンは、その後に行う、記録層と反応性プラズマとの反応に悪影響することが少ないからである。
【0075】
本発明では、記録層の表面に、磁気記録パターンに合致させたマスク層を形成後、その表面を反応性プラズマにより処理し、その後、マスク層を除去して保護層を再形成後、潤滑材を塗布して磁気記録媒体を製造する工程を採用するのが好ましい。このような方法を採用することにより記録層と反応性プラズマとの反応性をより高めることが可能となるからである。
【0076】
さらに本発明では、記録層の上に保護層を形成し、その表面に、磁気記録パターンに合致させたマスク層を形成し、その後、反応性プラズマによる記録層の改質処理を行う工程も採用できる。このような工程を採用することにより、反応性プラズマ処理の後に保護膜を形成する必要がなくなり、製造工程が簡便になり、生産性の向上および磁気記録媒体の製造工程における汚染の低減の効果が得られる。本願発明者らは、記録層の表面に保護膜を形成した後においても、記録層と反応性プラズマとの反応を生じさせることが可能であることを実験により確認している。保護膜で覆われているはずの記録層において反応性プラズマとの反応が生じている理由は、本願発明者らの考えによると、保護膜に空隙等が存在し、その空隙からプラズマ中の反応性イオンが侵入し、反応性イオンが磁性金属と反応することがある。また、保護膜中を反応性イオンが拡散し、反応性イオンが記録層まで到達することも考えられる。
【0077】
なお、マスク層形成には、記録層もしくは記録層に続いて製膜される保護膜の上に連続したマスク層を形成し、その上にレジストを塗布し、その上から直接スタンパーを密着させ高圧でプレスすることにより、レジストにパターンを形成し、マスク層でレジストに覆われていない箇所を除去し、パターン化したマスク層を形成する方法が採用できる。また、通常のフォトリソグラフィー技術を適用してパターン形成を行うこともできる。レジストとしては、熱硬化型樹脂、UV硬化型樹脂、SOG等を用いることができる。
【0078】
前記のプロセスで用いられるスタンパーは、例えば、金属プレートに電子線描画などの方法を用いて微細なトラックパターンを形成したものが使用でき、材料としてはプロセスに耐えうる硬度、耐久性が要求される。たとえばNiなどが使用できるが、前述の目的に合致するものであれば材料は問わない。スタンパーには、通常のデータを記録するトラックの他にバーストパターン、グレイコードパターン、プリアンブルパターンといったサーボ信号のパターンも形成できる。
【0079】
反応性プラズマ処理を行った後のレジストの除去は、ドライエッチング、反応性イオンエッチング、イオンミリング、湿式エッチング等の手法を用いることができる。
【0080】
保護膜5の形成は、一般的にはDiamond Like Carbonの薄膜をP−CVDなどを用いて成膜する方法が行われるが特に限定されるものではない。
【0081】
保護膜としては、炭素(C)、水素化炭素(HxC)、窒素化炭素(CN)、アルモファスカーボン、炭化珪素(SiC)等の炭素質層やSiO2、Zr23、TiNなど、通常用いられる保護膜材料を用いることができる。また、保護膜が2層以上の層から構成されていてもよい。
【0082】
保護膜5の膜厚は10nm未満とする必要がある。保護膜の膜厚が10nmを越えるとヘッドと記録層との距離が大きくなり、十分な出入力信号の強さが得られなくなるからである。
【0083】
保護膜の上には潤滑層を形成することが好ましい。潤滑層に用いる潤滑剤としては、フッ素系潤滑剤、炭化水素系潤滑剤及びこれらの混合物等が挙げられ、通常1〜4nmの厚さで潤滑層を形成する。
【0084】
次に、本発明の磁気記録再生装置の構成を図3に示す。本発明に係る磁気記録再生装置Bは、上面側が開口した矩形箱状の筐体21と、筐体21の開口を塞ぐ図示略のトップカバーを有する。筐体21内には、上述の構成を有する磁気記録媒体30、この磁気記録媒体30を支持および回転させる駆動手段としてのスピンドルモータ23、磁気記録媒体22に対して磁気信号の記録および再生を行う磁気ヘッド24、磁気ヘッド24を先端に搭載したサスペンションを有しかつ磁気ヘッド24を磁気記録媒体22に対して移動自在に支持するヘッドアクチュエータ25、ヘッドアクチュエータ25を回転自在に支持する回転軸26、回転軸26を介してヘッドアクチュエータ25を回転および位置決めするボイスコイルモータ27、ヘッドアンプ回路28が収納されている。磁気記録媒体の記録トラックを磁気的に不連続に加工したことによって、従来はトラックエッジ部の磁化遷移領域の影響を排除するために再生ヘッド幅を記録ヘッド幅よりも狭くして対応していたものを、両者をほぼ同じ幅にして動作させることができる。これにより十分な再生出力と高いSNRを得ることができるようになる。
【0085】
さらに上述の磁気ヘッドの再生部をGMRヘッドあるいはTMRヘッドで構成することにより、高記録密度においても十分な信号強度を得ることができ、高記録密度を持った磁気記録装置を実現することができる。またこの磁気ヘッドの浮上量を0.005μm〜0.020μmと従来より低い高さで浮上させると、出力が向上して高い装置SNRが得られ、大容量で高信頼性の磁気記録装置を提供することができる。また、最尤復号法による信号処理回路を組み合わせるとさらに記録密度を向上でき、例えば、トラック密度100kトラック/インチ以上、線記録密度1000kビット/インチ以上、1平方インチ当たり100Gビット以上の記録密度で記録・再生する場合にも十分なSNRが得られる。
【実施例】
【0086】
(実施例1〜4、比較例1〜15)
HD用ガラス基板をセットした真空チャンバをあらかじめ1.0×10-5Pa以下に真空排気した。ここで使用したガラス基板はLi2Si25、Al23−K2O、Al23−K2O、MgO−P25、Sb23−ZnOを構成成分とする結晶化ガラスを材質とし、外径65mm、内径20mm、平均表面粗さ(Ra)は2オングストローム(単位:Å、0.2nm)である。
【0087】
該ガラス基板にDCスパッタリング法を用いて、軟磁性層としてFeCoB、中間層としてRu、記録層として70Co−5Cr−15Pt−10SiO2合金を積層した。それぞれの層の膜厚は、FeCoB軟磁性層は600Å、Ru中間層は100Å、記録層は150Åとした。この表面にマスク層を形成した。マスク層の材料は、表1に示すように、実施例1にPtを用いた。また、実施例2にRu、実施例3にPd、実施例4にPt50Ru、比較例1にTa、比較例2にW、比較例3にSi、比較例4にSiO2、比較例5にTa2O5、比較例6にRe、比較例7にMo、比較例8にTi、比較例9にV、比較例10にNb、比較例11にSn、比較例12にGa、比較例13にGe、比較例14にAs、比較例15にNi層をそれぞれ用い、膜厚は何れも50Åとした。
【表1】

【0088】
この表面にUV硬化性樹脂を200nmの厚さで塗布し、この上に、あらかじめ用意していたNi製スタンパーを用いてインプリントを施した。スタンパーはトラックピッチが100nm、溝の深さは20nmとした。この表面についてイオンミリングを施し、マスク層でUV硬化性樹脂に覆われていない箇所を除去し、マスク層をパターニングした。
【0089】
この表面を反応性プラズマにさらして、マスク層で覆われていない箇所の記録層の改質を行った。記録層の反応性プラズマ処理は、アルバック社の誘導結合プラズマ装置NE550を用いた。プラズマの発生に用いるガスおよび条件としては、CF4を10cc/分、O2を90cc/分とし、プラズマ発生のための投入電力は200W、装置内の圧力は0.5Paとし、基板バイアス200Wにて磁気記録媒体の表面を60秒間処理した。反応性プラズマ処理を行った箇所の記録層をX線回折法により調べたところ、Coに起因するシグナルは消失し、一方でフッ化コバルトに起因するシグナルは観察されず、該箇所は非晶質構造となったことが確認された。
【0090】
その後、マスク層をドライエッチングにより除去し、その表面にカーボン保護膜を成膜し、最後にフッ素系潤滑膜を塗布し、磁気記録媒体の製造を完了した。
【0091】
以上の方法で製造した磁気記録媒体の電磁変換特性(保磁力、SNR)を測定した。電磁変換特性の評価はスピンスタンドを用いて実施した。このとき評価用のヘッドには、記録には垂直記録ヘッド、読み込みにはTuMRヘッドを用いたて、750kFCIの信号を記録したときのSNR値を測定した。表1に評価結果を示す。
【0092】
(磁気記録媒体の電磁変換特性の経時変化評価)
実施例および比較例で製造した磁気記録媒体を80℃、湿度80%の環境下のオーブンに720時間保持した後の保磁力とSNRの変化を調べた。表1に評価結果を示す。
【0093】
表1から分かるように、本発明により製造した実施例1〜4の磁気記録媒体は、比較例1〜15と比較し、高温高湿の環境下で使用しても、その優れた電磁変換特性が経時的に低下することが少ないことが明らかになった。
【図面の簡単な説明】
【0094】
【図1】70Co−5Cr−15Pt−10SiO2磁性合金と、CF4を用いて発生させた反応性プラズマとの反応生成物のX線回折結果を示す図である。
【図2】本発明に係るディスクリート型磁気記録媒体の断面構造を例示する図である。
【図3】本発明に係る磁気記録再生装置の一例を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0095】
1 非磁性基板
2 軟磁性層および中間層
3 磁性体領域
4 非磁性化層
5 保護膜
21 筐体
22 磁気記録媒体
23 スピンドルモータ
24 磁気ヘッド
25 ヘッドアクチュエータ
26 回転軸
27 ボイスコイルモータ
28 ヘッドアンプ回路
30 磁気記録媒体
L 非磁性部幅
W 磁性部幅
B 磁気記録再生装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁気的に分離した磁気記録パターンを有する磁気記録媒体の製造方法において、
非磁性基板上に連続した記録層を形成した後、この記録層の上にPt、Ru、Pdの群から選ばれた何れか1種以上の材料からなるマスク層を形成し、その後、記録層の表面でマスク層に覆われていない箇所を、反応性プラズマ、もしくは当該反応性プラズマ中に生成した反応性イオンにさらし、該箇所の記録層を非晶質化して磁気特性を改質する磁気特性改質工程により、磁気的に分離した磁気記録パターンを形成する、ことを特徴とする磁気記録媒体の製造方法。
【請求項2】
上記磁気特性改質工程は、改質した記録層の磁化量を当初の75%以下とする、請求項1に記載の磁気記録媒体の製造方法。
【請求項3】
上記反応性プラズマは、酸素ガスを導入して生成した酸素イオンを含有するプラズマである、請求項1または2に記載の磁気記録媒体の製造方法。
【請求項4】
上記反応性プラズマは、ハロゲンおよびハロゲンイオンを含有する、請求項1から3の何れか1項に記載の磁気記録媒体の製造方法。
【請求項5】
上記記録層でハロゲンおよびハロゲンイオンにさらした箇所は、記録層を構成する物質のハロゲン化物を実質的に含まない、請求項4に記載の磁気録媒体の製造方法。
【請求項6】
上記反応性プラズマは、酸素および酸素イオン、並びにハロゲンおよびハロゲンイオンを含有する、請求項4または5に記載の磁気記録媒体の製造方法。
【請求項7】
上記磁気特性改質工程は、記録層の表面でマスク層に覆われていない箇所を、酸素および酸素イオンを含有する反応性プラズマにさらす第1の工程と、その後その箇所をハロゲンおよびハロゲンイオンを含有する反応性プラズマにさらす第2の工程とを有する、請求項4から6の何れか1項に記載の磁気記録媒体の製造方法。
【請求項8】
上記磁気特性改質工程の前に、記録層の表面でマスク層に覆われていない箇所にイオン注入を行う、請求項1から7の何れか1項に記載の磁気記録媒体の製造方法。
【請求項9】
上記イオン注入するイオンは、アルゴンイオンまたは窒素イオンである、請求項8に記載の磁気記録媒体の製造方法。
【請求項10】
上記ハロゲンイオンは、CF4、SF6、CHF3、CCl4、KBrの群から選ばれた何れか1種以上のハロゲン化ガスを反応性プラズマ中に導入して形成したハロゲンイオンである、請求項4から9の何れか1項に記載の磁気記録媒体の製造方法。
【請求項11】
上記ハロゲンイオンはFイオンである、請求項4から9の何れか1項に記載の磁気記録媒体の製造方法。
【請求項12】
請求項1から11の何れか1項に記載の製造方法で製造したことを特徴とする磁気記録媒体。
【請求項13】
磁気記録媒体と、該磁気記録媒体に情報を記録再生する磁気ヘッドとを備えた磁気記録再生装置であって、磁気記録媒体が請求項12に記載の磁気記録媒体である、ことを特徴とする磁気記録再生装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−277296(P2009−277296A)
【公開日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−127816(P2008−127816)
【出願日】平成20年5月15日(2008.5.15)
【出願人】(000002004)昭和電工株式会社 (3,251)
【Fターム(参考)】