説明

磁気記録媒体の評価方法

【課題】磁気記録媒体における実際の使用に即した全く新規な評価方法を提供する。
【解決手段】磁気記録媒体の評価方法の代表的な構成は、磁気記録媒体に任意の試験信号を記録し(S202)、磁気記録媒体に磁気ヘッドを当接させ(S204)、磁気ヘッドが当接している状態で所定時間磁気記録媒体を回転させ(S206)、磁気記録媒体に記録されている試験信号を測定し(S208)、磁気記録媒体の熱減磁を評価(S210)する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気記録媒体の評価方法に関し、より詳細には磁気記録媒体の熱減磁の評価方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の情報処理の大容量化に伴い、各種の情報記録技術が開発されている。特に磁気記録技術を用いたHDDの面記録密度は年率100%程度の割合で増加し続けている。最近では、HDD等に用いられる2.5インチ径磁気ディスク(磁気記録媒体)にして、1枚あたり200GByteを超える情報記録容量が求められるようになってきており、このような要請にこたえるためには1平方インチあたり400GBitを超える情報記録密度を実現することが求められる。
【0003】
HDD等に用いられる磁気記録媒体において高記録密度を達成するために、近年、垂直磁気記録方式の磁気記録媒体が提案されている。従来の面内磁気記録方式は磁気記録層の磁化容易軸が基体面の平面方向に配向されていたが、垂直磁気記録方式は磁化容易軸が基体面に対して垂直方向に配向するよう調整されている。垂直磁気記録方式によれば、面内磁気記録方式の欠点であった、限られた範囲内での充分な磁区(1ビットの記録に用いる領域)の確保や、周囲の磁区同士による磁力の相殺といった問題を解消でき、高記録密度化に対して好適である。
【0004】
このような高記録密度化に伴い、円周方向の線記録密度(BPI:Bit Per Inch)、半径方向のトラック記録密度(TPI:Track Per Inch)のいずれも増加の一途を辿っている。そのため、磁気記録媒体に用いられる磁性粒子も微細化してきている。
【0005】
さらに、磁気記録媒体の表面と、磁気ヘッドの記録再生素子との間隙(クリアランス)を狭くしてS/N比(シグナルノイズ比)を向上させる技術も検討されている。近年求められる磁気ヘッドの浮上量は10nm(更なる目標としては6nm)以下である。
【0006】
クリアランスを狭くするための技術として、磁気ヘッド素子の動作時に、ヘッド素子を発熱させ、その熱によってヘッドスライダを熱膨張させ、ABS(the Air Bearing Surface)方向にわずかに突出させるDFH(Dynamic Flying Height)ヘッドが提案されている。これにより、磁気ヘッドと磁気記録媒体との間隙を調節し、狭い磁気的スペーシングで磁気ヘッドを安定して飛行させることができる。
【0007】
しかし、磁気ヘッドの低浮上量化に伴い、外部衝撃などによって磁気ヘッドが磁気記録媒体表面に接触してしまう可能性も同時に高まってきている。
【0008】
ところで、上述した高記録密度化に伴い、熱揺らぎと呼ばれる現象が問題視されている。熱揺らぎとは、外部エネルギー(特に熱エネルギー)の影響を受け減磁や消磁を引き起こしてしまう現象のことである。磁化容易軸を一方向に保持するエネルギーは、粒子体積に比例しているため、近年の磁性粒子の微細化に起因して、この問題は深刻化してきている。
【0009】
又、上述した熱揺らぎは、キュリー温度と密接に関係している。即ち、キュリー温度とは、強磁性体が常磁性体に変化する転移温度であるので、この温度により減磁や消磁が生じると考えられている。磁気記録媒体のキュリー温度は、概して、数百度程度であり、上述した磁気ヘッドと磁気記録媒体の接触により生じる摩擦熱によって、もたらされるおそれがある。加えて、磁気ヘッドと磁気記録媒体が接触すれば、当然、双方に物理的な衝撃が加わる。
【0010】
一方、従来から、磁気記録媒体の性能評価試験としては、加速劣化試験が行われている(例えば特許文献1)。この試験は、所定の温度において、磁気記録媒体の経過時間による劣化量を測定し、アレニウス法により経年劣化を評価するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2000−285446号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、従来の磁気記録媒体の性能評価試験(加速劣化試験)では、実際の使用に即した評価を行うことができなかった。より具体的には、例えば、上述した磁気ヘッドと磁気記録媒体が接触したときに発生する摩擦熱に対する耐性や物理的な衝撃に対する耐性を評価することができなかった。そのため、実際の使用には耐えられない磁気記録媒体を排除しきれないおそれがあった。
【0013】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、磁気記録媒体における実際の使用に即した全く新規な評価方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するために、本発明にかかる磁気記録媒体の評価方法の代表的な構成は、磁気記録媒体に任意の試験信号を記録し、磁気記録媒体に磁気ヘッドを当接させ、磁気ヘッドが当接している状態で磁気記録媒体を回転させ、試験信号を測定し、磁気記録媒体の熱減磁を評価することを特徴とする。
【0015】
かかる構成によれば、経年劣化だけではなく、摩擦熱耐性や衝撃耐性を含めた磁気記録媒体の性能を評価することができる。測定した試験信号は、例えばビットエラーレートを用いて評価することができる。
【0016】
磁気ヘッドはDFH制御であって、ヒータ素子の発熱によりヘッドスライダを膨張させ、磁気ヘッドを磁気記録媒体に当接させるとよい。これにより、磁気ヘッドを微少単位(nm単位)で調節して、磁気記録媒体に当接させることができる。
【0017】
ヒータ素子にかける電力と試験信号の読出強度を監視し、電力の増加に対する読出強度の増加率が急激に低下したときの電力を変曲点電力として測定し、変曲点電力をヒータ素子にかけることにより、磁気ヘッドを磁気記録媒体に当接させるとよい。これにより、磁気ヘッドからの押圧力を一定にすることができるので、評価対象たる磁気記録媒体間で試験条件に差がでるおそれを排除できる。加えて、実際の使用状態において、想定外の強い力がかけられるおそれを無くし、より適切に性能を評価することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、磁気記録媒体における実際の使用に即した全く新規な評価方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】磁気ヘッドの例としてのDFHヘッドを説明する図である。
【図2】磁気記録媒体の例としての垂直磁気記録方式による磁気記録媒体の構成を説明する図である。
【図3】本実施形態にかかる磁気記録媒体の評価方法を示すフローチャートである。
【図4】本実施形態にかかる磁気記録媒体の評価方法におけるDFHヘッドの当接方法を説明する図である。
【図5】本実施形態にかかる磁気記録媒体の評価方法による効果を示す図である。
【図6】本実施形態にかかる磁気記録媒体の評価方法におけるDFHヘッドの当接方法を応用したキャリブレーション方法を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。係る実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値等は、発明の理解を容易とするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、又、本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0021】
まず、本実施形態の理解を容易にするために、本実施形態に用いられる磁気ヘッドの例としてのDFHヘッド130、磁気記録媒体の例としての垂直磁気記録方式による磁気記録媒体100を簡単に説明し、その後で、本実施形態の特長たる評価方法を説明する。
【0022】
〈磁気ヘッド〉
図1は、磁気ヘッドの例としてのDFHヘッド130を説明する図である。特に、図1(a)は、DFHヘッド130の全体構成を示す図であり、図1(b)は、図1(a)におけるA−A断面を模式的に示した図である。DFHヘッド130は、アーム132、ヘッドスライダ140より構成され、ヘッドスライダ140は、リード素子152、ライト素子154、ヒータ素子156を備えている。
【0023】
アーム132は、先端に配置されたヘッドスライダ140をディスク上の所定の位置に回転移動させる。そして、ヘッドスライダ140に設けられたリード素子152、ライト素子154が、再生、記録を行う。
【0024】
ヒータ素子156は、電力をかけられると発熱し、ヘッドスライダ140のABS面142を膨張させる(図1破線で示す)。この膨張は、ヒータ素子156の発熱量とほぼ比例関係にあるので、ヒータ素子156の電力を制御することで、磁気ヘッド130の突出量をnm単位で調節できる。
【0025】
〈磁気記録媒体〉
図2は、磁気記録媒体の例としての垂直磁気記録方式による磁気記録媒体100の構成を説明する図である。磁気記録媒体100は、ディスク基体110、付着層112、第1軟磁性層114、前下地層116、下地層118、非磁性グラニュラー層120、磁気記録層122、補助記録層124、媒体保護層126、潤滑層128によって構成される。
【0026】
ディスク基体110は、アモルファスのアルミノシリケートガラスをダイレクトプレスで円板状に成型したガラスディスクを用いることができる。なおガラスディスクの種類、サイズ、厚さ等は特に制限されない。このガラスディスクに研削、研磨、化学強化を順次施し、化学強化ガラスディスクからなる平滑な非磁性のディスク基体110を得ることができる。
【0027】
得られたディスク基体110に、DCマグネトロンスパッタリング法にて成膜を行い、付着層112、軟磁性層114、前下地層116、下地層118、非磁性グラニュラー層120、磁気記録層122、補助記録層124が形成される。又、保護層126はCVD法により成膜される。生産性が高いという点で、インライン型成膜方法を用いると好ましい。
【0028】
付着層112はTi合金層であり、Ti合金ターゲットを用いて成膜される。付着層112を形成することにより、ディスク基体110と軟磁性層114との間の付着性を向上させることができるので、軟磁性層114の剥離を防止することができる。
【0029】
軟磁性層114は、CoTaZrなどのコバルト系合金によって形成され、好適には、AFC(Antiferro-magnetic exchange coupling:反強磁性交換結合)を備える。AFCは、第1軟磁性層と第2軟磁性層の間に非磁性のスペーサ層を介在させることによって形成することができる(図示せず)。この構成によれば、軟磁性層114の磁化方向を高い精度で磁路(磁気回路)に沿って整列させることができ、軟磁性層114から生じるノイズを低減することができる。
【0030】
前下地層116は、軟磁性層114を防護する作用と、下地層118の結晶粒の配向の整列を促進する作用を備える。前下地層116の材質としては、具体的には、Ni、Cu、Pt、Pd、Zr、Hf、Nbから選択することができる。
【0031】
下地層118はhcp構造を有し、磁気記録層122のhcp構造の結晶をグラニュラー構造として成長させる。下地層118の材質としては、Ruの他に、RuCr、RuCoから選択することができる。Ruはhcp構造をとり、磁気記録層122を良好に配向させることができる。
【0032】
非磁性グラニュラー層120は、非磁性のCoCr−SiOなどによって構成され、下地層118のhcp結晶構造の上に更に非磁性のグラニュラー層を形成する。これにより、磁気記録層122のグラニュラー層を初期段階(立ち上がり)から分離させることができる。
【0033】
磁気記録層122は、情報を記録する中枢部であり、Co系合金、Fe系合金、Ni系合金から構成される。硬磁性体の磁性粒の周囲に、非磁性物質を偏析させて粒界を形成した、柱状のグラニュラー構造を有することで好適に性能を発揮できる。
【0034】
補助記録層124は、グラニュラー構造を有する磁気記録層122の上に形成される面内方向に磁気的に連続した層である。補助記録層124を設けることにより磁気記録層122の高密度記録性と低ノイズ性に加えて、逆磁区核形成磁界Hnの向上、耐熱揺らぎ特性の改善、オーバーライト特性の改善を図ることができる。
【0035】
媒体保護層126は、磁気ヘッドの衝撃から磁気記録層122を防護するための層である。媒体保護層126は、真空を保ったままカーボンをCVD法により成膜することで形成される。一般にCVD法によって成膜されたカーボンはスパッタ法によって成膜したものと比べて膜硬度が向上するので、磁気ヘッドからの衝撃に対してより有効に磁気記録層122を防護することができる。
【0036】
潤滑層128は、PFPE(パーフロロポリエーテル)をディップコート法により成膜することができる。PFPEは長い鎖状の分子構造を有し、媒体保護層126表面のN原子と高い親和性をもって結合する。この潤滑層128の作用により、磁気記録媒体100の表面に磁気ヘッドが接触しても、媒体保護層126の損傷や欠損を防止することができる。
【0037】
上述した構成により、表面の平滑性に優れた磁気記録媒体100を得ることができる。しかし、表面の凹凸を完全に排除することはできないので、実際の使用状態に即して性能を評価する磁気記録媒体の評価方法が求められる。
【0038】
〈磁気記録媒体の評価方法〉
図3は、本実施形態にかかる磁気記録媒体の評価方法を示すフローチャートである。以下、上述した磁気記録媒体100、DFHヘッド130を用いて、本実施形態にかかる磁気記録媒体の評価方法を説明する。
【0039】
まず、評価の対象となる磁気記録媒体100に試験信号を書き込む(S202)。試験信号は、後述する評価工程(S210)に呼応した試験信号を用いる。
【0040】
次に、磁気記録媒体100にDFHヘッド130を当接させる(S204)。本発明は、DFHヘッド130が当接している状態で磁気記録媒体100を回転させ、所定時間継続した後に(または継続的に)試験信号を測定し、磁気記録媒体100の熱減磁を評価することに特徴がある。当接物として本実施形態ではDFHヘッド130を用いるが、別途何らかの当接物を準備してもよい。DFHヘッド130を当接物として利用すれば従来の試験装置をそのまま利用できる利点があり、別途の当接物を準備すればDFHヘッド130の損耗を低減できる利点がある。
【0041】
DFHヘッド130の当接方法としては、単にDFHヘッド130を押圧して当接させてもよいが、それではDFHヘッド130からの押圧力が試験毎に変わり、評価対象たる磁気記録媒体間で条件に差がでるおそれがある。又、実際の使用状態において、かかり得ることのない強い力がかけられるおそれもある。そのため、本実施形態において、DFHヘッド130は以下の手順で当接される。
【0042】
図4は、本実施形態にかかる磁気記録媒体の評価方法におけるDFHヘッド130の当接方法を説明する図である。図4のグラフにおいて、実線はヒータ素子にかけられる電力と試験信号の読出強度を示す。図4のグラフにおいて、点線は比例増加している領域に対する近似直線である。図からわかるように、当初はDFHヘッド130の電力の増加に比例して読み出し強度が増加する。ところがある程度の電力に至ったところで、電力の増加に対する読出強度の増加率が急激に低下する。これは、DFHヘッド130が磁気記録媒体100に当接し始めることにより、それ以上近接できなくなり、読出強度の増加が鈍るためと考えられる。そこで、このときの変曲点を当接点と考えることができ、そのときのヒータ素子156の電力を変曲点電力として測定する。
【0043】
上述したように、DFHヘッド130は、ヒータ素子156の電力を制御することで突出量をnm単位で調節できる。故に、上記のようにして変曲点電力を求めれば、その変曲点電力を維持することにより、DFHヘッド130が磁気記録媒体100に過不足なく当接した状態を維持することができる。なお変曲点電力ではDFHヘッド130が磁気記録媒体100にかする程度であるとも考えられるが、評価試験として押圧力が弱すぎることはない。即ち、磁気記録媒体100上の凹凸に伴い、摩擦熱の発生やディスクとの衝突が確実に起きるので、実際の使用状態に即して、性能を好適に評価することができる。
【0044】
次に、磁気記録媒体100を回転させる(S206)。これにより、DFHヘッド130と磁気記録媒体100の間で摩擦熱が発生したり、衝突が起こったりする。本実施形態において、実際の使用状態に即した、性能評価を念頭に置いていることから、回転数は磁気記録媒体100に規定された回転数に設定されることが望ましい。
【0045】
次に、試験信号を測定する(S208)。試験信号は、連続的に測定してもよいし、一定の間隔で間欠的に測定し続けてもよいし、所定時間が経過した回転工程終了後に測定してもよい。
【0046】
最後に、得られた試験信号から磁気記録媒体100の性能を評価する(S210)。性能評価の指標としては、例えば、ビットエラーレートを用いることができる。これにより、好適に磁気記録媒体100の性能を評価することができる。
【0047】
(実施例)
実施例として、上述した評価方法を用いてある磁気記録媒体A(以下、媒体Aと称す)と、これとは異なる磁気記録媒体B(以下、媒体Bと称す)の評価を行った。
【0048】
図5は、本実施形態にかかる磁気記録媒体の評価方法による効果を示す図である。特に図5(a)は、実施例として、本実施形態にかかる磁気記録媒体の評価方法を用いて媒体Aと、媒体Bの評価を行った図、図5(b)は、比較例として、従来試験である加速劣化試験を用いて媒体Aと、媒体Bの評価を行った図である。
【0049】
図5に示すように、加速劣化試験では、媒体A、媒体B共に異常が見られない。いずれもビットエラーレートがある程度低下しているが、初期値が高いために性能基準線を下回ることがないためである。しかし、実施例では、媒体Aが異常を示す性能基準線に達してしまっている。
【0050】
これは、上述したように、加速劣化試験では磁気記録媒体と磁気ヘッドが接触した場合に生じる摩擦熱や物理的衝撃に対する耐性を評価することができないためである。換言すれば、媒体Aは、摩擦熱や物理的衝撃に対する耐性を持ち合わせていない。
【0051】
従来の加速劣化試験は、アレニウス法に従って物質を所定温度にして経年劣化耐性を評価するものである。一方、本実施形態にかかる評価方法では、磁気ヘッドと評価対象たる磁気記録媒体の摩擦により終始発熱が起こるので、加速劣化試験をも包含している。即ち、本実施形態にかかる評価方法は加速劣化試験を更に発展させたものということができる。このように、磁気記録媒体における実際の使用に即した全く新規な評価方法を提供することができる。
【0052】
なお、性能基準線は、所定の性能を発揮させるため評価者が任意で定める基準であり、本実施例中の性能基準線はあくまで一例である。
【0053】
〈キャリブレーション〉
なお、上述した当接方法を応用して、極めて容易にDFHヘッド130のキャリブレーション(突出量規定)を行うことができる。具体的には、上述したように、ヒータ素子156にかけられる電力と試験信号の読出強度を監視して、図4に示すような電力と読み取り強度の関係および変曲点電力を求める。そして当業者にとって周知であるウォーレンス空間損失方程式を用いて、読取強度をクリアランスに変換する。
【0054】
図6は、本実施形態にかかる磁気記録媒体の評価方法におけるDFHヘッド130の当接方法を応用したキャリブレーション方法を説明する図である。上述した手順によれば、図6に示すようにDFHヘッド130の電力とクリアランスの関係を求めることができる。これにより、所望のクリアランスにおける電力を容易に取得し、ドライブごとに任意の浮上高さについて極めて容易にキャリブレーションを行うことができる(例えば図6の例では、クリアランス2.5nmの時、48mW)。
【0055】
以上、詳述した構成により、本実施形態によれば磁気記録媒体における実際の使用に即した全く新規な評価方法を提供できる。
【0056】
なお、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例又は修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明は、磁気記録媒体の評価方法に関し、より詳細には磁気記録媒体の熱減磁の評価方法に利用可能である。
【符号の説明】
【0058】
100…磁気記録媒体
110…ディスク基体
112…付着層
114…軟磁性層
116…前下地層
118…下地層
120…非磁性グラニュラー層
122…磁気記録層
124…補助記録層
126…媒体保護層
128…潤滑層
130…DFHヘッド
132…アーム
140…ヘッドスライダ
152…リード素子
154…ライト素子
156…ヒータ素子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁気記録媒体に任意の試験信号を記録し、
前記磁気記録媒体に磁気ヘッドを当接させ、
前記磁気ヘッドが当接している状態で所定時間前記磁気記録媒体を回転させ、
前記磁気記録媒体に記録されている前記試験信号を測定し、
前記磁気記録媒体の熱減磁を評価することを特徴とする磁気記録媒体の評価方法。
【請求項2】
前記磁気ヘッドはDFH制御であって、ヒータ素子の発熱によりヘッドスライダを膨張させ、該磁気ヘッドを前記磁気記録媒体に当接させることを特徴とする請求項1に記載の磁気記録媒体の評価方法。
【請求項3】
前記ヒータ素子にかける電力と前記試験信号の読出強度を監視し、
該電力の増加に対する該読出強度の増加率が急激に低下したときの電力を変曲点電力として測定し、
前記変曲点電力を前記ヒータ素子にかけることにより、前記磁気ヘッドを前記磁気記録媒体に当接させることを特徴とする請求項2に記載の磁気記録媒体の評価方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−238290(P2010−238290A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−83613(P2009−83613)
【出願日】平成21年3月30日(2009.3.30)
【出願人】(000113263)HOYA株式会社 (3,820)
【出願人】(501259732)ホーヤ マグネティクス シンガポール プライベートリミテッド (124)
【Fターム(参考)】