説明

磁気記録媒体

【課題】非磁性層の厚み寸法と、それに含まれる非磁性粉末の粒子径寸法との好適な関係を規定することにより、高記録密度特性に優れ、かつ、耐久性においても信頼性の高い磁気記録媒体を提供する。
【解決手段】非磁性層中の非磁性粉末を、少なくとも90nm以上、200nm以下の平均粒子径を有する粒状とする。加えて、非磁性粉末の平均粒子径Lと前記非磁性層平均厚さDを、L/D≦1/5の関係を満たすものとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、テープ形の磁気記録媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
磁気記録媒体は、オーディオテープ、ビデオテープ、コンピュータテープ、磁気ディスク、磁気カードなど種々の用途があるが、特にデータバックアップ用テープの分野では、バックアップの対象となるハードディスクの大容量化にともない、1巻当たり数100GB以上の記録容量を持つ磁気テープが商品化されている。また、今後1TBを超える大容量バックアップテープが提案されており、その高記録密度化は不可欠である。このような高記録密度化に対応した磁気テープの製造に際しては、磁性粉末(以下、磁性粒子ともいう)の微粒子化(以下、微粉末化ともいう)とそれらの塗膜中への高密度充填化、塗膜の平滑化、磁性層の薄層化などの高度な技術が用いられている。
【0003】
磁性粉末の改良に関しては、主として、短波長記録に対応するために、微粒子化とともに磁気特性の改善が図られており、平均粒子径が100nm以下の針状の金属磁性粉末、50nm以下の板状の六方晶フェライト磁性粉末、50nm以下の球状ないし楕円状の希土類−窒化鉄磁性粉末が提案されている。また、短波長記録時の減磁による出力低下を防止するために、年々、高保磁力化が図られている。
【0004】
一方、磁気記録媒体の製造技術の改良に関しては、近年の高記録密度化に伴い、記録波長が短波長化されているため、磁性層の厚さが厚いと、従来それほど問題とならなかった記録再生時の自己減磁損失や磁性層の厚さに起因する厚み損失の影響が大きくなり、出力が減少する問題が大きくなってきた。そのため、磁性層の厚さを低減することが必要となってきている。しかしながら、磁性層の厚さを低減すると、磁性層からの漏れ磁束の微弱化と非磁性支持体の表面粗さの影響が磁性層表面に大きく反映し、磁性層の表面性を劣化させやすいという問題がある。また、磁性層を薄層化する場合、磁性塗料の固形分濃度を低下するか、塗布量を低減する方法が考えられるが、これらの手法によっては、塗布時の欠陥や磁性粉末の充填性が向上せず、また塗膜強度を弱めるという問題がある。
【0005】
このため、媒体製造技術の改良により磁性層を薄層化する場合、非磁性支持体と磁性層との間に非磁性層を設け、該非磁性層が湿潤状態にあるうちに上層磁性層を塗布する、いわゆる同時重層塗布方式が提案されている(例えば特許文献1参照)。
【0006】
磁性層からの漏れ磁束の微弱化に対しては、これらの磁気記録媒体を使用するシステムにおいては、高感度なMR(磁気抵抗効果)型ヘッドを再生ヘッドに用いたものが主流になりつつある。MR型ヘッドは、誘導コイルを持たないために機器ノイズが小さく。磁気記録媒体のノイズを小さくすることで優れたC/Nを得ることが可能になる。ところが、このMRヘッドは磁気誘導型ではあまり問題にならなかった磁性層表面の微小な凹凸とMR素子との衝突によりノイズ(サーマルノイズ)が発生しやすいため、従来以上に磁性層表面の粗さを制御する必要がある。
【0007】
磁性層は極めて薄層に設計されるため、その表面粗さは、非磁性層の表面粗さに大きく影響される。この問題に対して、非磁性層の非磁性粉末の種類や大きさが検討されている(例えば、特許文献2〜4など)。
【0008】
【特許文献1】特開平5−197946号公報
【特許文献2】特開2001−67650号公報
【特許文献3】特開2001−184627号公報
【特許文献4】特開平8−263829号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
磁気記録媒体の高容量化の流れの中で、磁気記録媒体の単位体積当たりの記録容量を大きくするために、磁気記録媒体の厚さを薄くすることが検討されており、非磁性支持体や非磁性層の厚さを小さくする試みがなされている。特に、非磁性層の厚さを小さくすると、非磁性支持体の表面の突起、非磁性層に含まれる非磁性粉末の大きさが磁性層表面の粗さに大きく影響するようになってきた。
【0010】
前記従来技術では、特許文献1に磁性層中にモース硬度6以上でかつ磁性層の厚さよりも平均粒子径が大きい研磨剤を含有することが開示されているが、非磁性層の厚さと該非磁性層中に含まれる非磁性粉末の粒子径との関係の好ましい範囲については開示されておらず、加えて、非磁性層の厚さが1μm以下の場合についても具体的に検討されていない。特許文献2には、非磁性層の厚さと非磁性層中に含まれる針状の非磁性粉末の粒子径との好ましい関係と、50nm以下の粒状の非磁性粉末の添加量については開示されているものの、本発明で採用した平均粒子径が90nm以上の粒状の非磁性粉末の平均粒子径と非磁性層の厚さとの好ましい関係については開示されていない。特許文献3には、厚さが1.5μm以下(実施例では1.0μm以上)の下層に、粒径が0.01〜0.1μmのアルミナを含有させることが開示されているが、非磁性層厚さが1.0μm未満の場合の好適な非磁性粉末の粒子径寸法については具体的に開示されていない。特許文献4には、非磁性層に含まれる研磨剤の平均粒子径と磁性層の乾燥膜厚との比が、研磨剤の平均粒子径/磁性層乾燥膜厚で1.0〜5.0であることが開示されているが、非磁性粉末の平均粒子径と非磁性層の厚さとの好ましい関係については開示されていない。
【0011】
このように、上記各特許公報に係る磁気記録媒体には、高容量化に対応する非磁性層の厚さの小さい磁気記録媒体について、該非磁性層中に含める非磁性粉末の好適な粒子径寸法についての十分な検討はなされていない。
【0012】
本発明は、上記課題を達成するためになされたものであり、非磁性層の厚み寸法と、それに含まれる非磁性粉末の粒子径寸法との好適な関係を規定することにより、例えばテープ1巻当たり1TB以上の記録容量に対応しうる高記録密度特性に優れ、かつ、耐久性においても信頼性の高い磁気記録媒体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、非磁性支持体上に非磁性粉末と結合剤とを含有する非磁性層を備え、該非磁性層の上に磁性粉末と結合剤とを含有する磁性層を備える磁気記録媒体において、前記非磁性層中の非磁性粉末は、少なくとも90nm以上、200nm以下の平均粒子径を有する粒状とする。そして、前記非磁性粉末の平均粒子径Lと前記非磁性層平均厚さDとが、L/D≦1/5の関係を満たしていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、厚さの小さい非磁性層に対応した、好ましい範囲の平均粒子径の非磁性粉末を含んでいるので、高容量で、記録再生特性、耐久性に優れる磁気記録媒体を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
(非磁性粉末)
本発明において、非磁性層に含有される非磁性粉末は、その粒子径が90nm以上、200nm以下の範囲にある粒状であることが好ましい。粒状であるのが好ましいのは、粒状であるほうが、磁性層表面に適度な突起形状を形成せしめることができ、耐久性が良好になることに拠る。ここでいう「粒状」とは粉末粒子が針状である場合には、その長軸径(針状粒子の長手方向の最大径)と短軸径(長軸方向に垂直な面で粒子を輪切りにした時の最大径、輪切り面が楕円状の場合は楕円の短軸径の最大径)の比率、長軸径/短軸径の値が1〜2のものをいい、粉末粒子が板状の場合には、板径(板面の最大径)と板厚さとの比率、板径/板厚さの値が1〜2のものをいい、不定形の場合は粒子のさしわたし径の、最大径/最小径の値が1〜2のものをいう。
【0016】
非磁性粉末の形状が上記範囲内で、針状や板状の場合には、非磁性層の形成時(塗布時、乾燥時)のずり応力、膜厚収縮により長軸方向(または、板径方向)が塗布方向に配向する傾向があるので、磁性層の耐久性に影響を与えるのは、短軸径(板厚さ)となる。このため、上記平均粒子径は短軸径(板厚さ)で評価することが好ましい。該非磁性粉末の平均粒子径の範囲が、この範囲が好ましいのは、90nm未満では耐久性が不十分となり、200nmを越えると磁性層表面の形状が粗くなって、電磁変換特性が低下するからである。このような非磁性粉末としては例えば、カーボンブラック、炭酸カルシウム、硫酸バリウムなどの金属塩類粉末、酸化鉄、酸化クロム、酸化アルミニウムなどの金属酸化物粉末、ベンゾグアナミン、架橋ポリスチレン、ポリエチレン、シリコン樹脂、テフロン樹脂などの有機溶剤に不溶の有機粉末など、従来公知の非磁性粉末を用いることができる。より好ましくは、モース硬度6以上の非磁性粉末を用いることが出来る。また、上記非磁性粉末に加えて該非磁性粉末の平均粒子径以下の平均粒子径を有する他の非磁性粉末を併用してもよい。該非磁性粉末としては、前記の従来公知の非磁性粉末を用いることができ、形状は粒状の他に、板状、針状などの任意の形状の非磁性粉末を用いることができる。
【0017】
これらの非磁性文末の添加量としては、非磁性層の構成材料に全重量に対して1〜30重量%であることが好ましい。これは、1重量%未満では、非磁性粉末の量が少ないために十分な耐久性が得られないおそれがあり、30重量%を超えると、磁性層の表面形状が粗くなりすぎて、電磁変換特性が低下するおそれがあるからである。
【0018】
(非磁性層)
非磁性層の厚さDは0.5μm以上が好ましい。非磁性層の厚さが0.5μm未満になると、非磁性支持体の表面形状の影響が磁性層表面に大きく影響し、電磁変換特性の低下を招く。また、非磁性層から供給される潤滑剤の量が不十分となって、磁気記録媒体の耐久性低下を招くおそれもある。さらに、非磁性層の厚さDは、1μm以下が好ましく、これは、非磁性層の厚さが1μmを越えると、磁気記録媒体の全体厚さが大きくなって、記録媒体の体積当たりの記録容量が小さくなることに拠る。
【0019】
非磁性層には、上記の非磁性粉末の他に、導電性の付与など必要に応じて平均粒子径が上記の非磁性粉末より小さな非磁性粉末を含ませることができる。これらの非磁性粉末としては形状を問わず、粒状、針状、板状の非磁性粉末を用いることができる。非磁性粉末としては、上記と同様の従来公知の非磁性粉末を用いることができる。
【0020】
そのうえで、本発明においては、非磁性層の厚さDと非磁性層に含まれる非磁性粉末の平均粒子径Lとを、L/D≦1/5の関係を満たすものとしてある点が着目される。ここでいう平均粒子径Lとは、前述したように針状(板状)では短軸径(板厚さ)で評価したものとする。当該数値範囲が好ましいのは、L/Dの値が1/5を越えると、粉末粒子の粒度分布中の粒子径の大きい粒子が磁性層の表面形状を粗くさせるためか、電磁変換特性が低下するからである(表1および図3参照:下記に詳述)。その点、本発明のように、非磁性層の厚さDと非磁性層に含まれる非磁性粉末の平均粒子径Lとを、L/D≦1/5の関係を満たすものとしてあると、前述のように、非磁性粉末を粒子径が90nm以上、200nm以下の範囲にある粒状としたことと相俟って、高記録密度特性に優れ、かつ、耐久性においても信頼性の高い磁気記録媒体を得ることが可能となる。
【0021】
〈非磁性支持体〉
磁性支持体の厚さは、用途によって異なるが、通常、1.5〜11.0μmのものが使用される。より好ましくは2.0〜7.0μm、最も好ましくは2.0〜6.0μmである。この範囲の厚さの非磁性支持体が使用されるのは、1.5μm未満では製膜が難しく、またテープ強度が小さくなり、11.0μmを越えるとテープ全厚が厚くなり、テープ1巻当りの記録容量が小さくなるためである。
【0022】
非磁性支持体の長手方向のヤング率は5.8GPa(590kg/mm2 )以上が好ましく、7.1GPa(720kg/mm2 )以上がより好ましく、7.8GPa(800kg/mm2 )以上が最も好ましい。非磁性支持体の長手方向のヤング率が5.8GPa(590kg/mm2 )以上がよいのは、長手方向のヤング率5.8GPa(590kg/mm2 )未満では、テープ走行が不安定になるためである。また、ヘリキャルスキャンタイプでは、長手方向のヤング率(MD)/幅方向のヤング率(TD)は、0.60〜0.80の特異的範囲が好ましく、0.65〜0.75の範囲がより好ましい。長手方向のヤング率/幅方向のヤング率が0.60〜0.80の特異的範囲がよいのは、0.60未満または0.80を越えると、メカニズムは現在のところ不明であるが、磁気ヘッドのトラックの入り側から出側間の出力のばらつき(フラットネス)が大きくなるためである。このばらつきは長手方向のヤング率/幅方向のヤング率が0.70付近で最小になる。さらに、リニアレコーディングタイプでは、長手方向のヤング率/幅方向のヤング率は、理由は明らかではないが、0.70〜1.30が好ましい。
【0023】
非磁性支持体の幅方向の温度膨張係数は、−10〜10×10-6、湿度膨張係数は、0〜10×10-6が好ましい。この範囲が好ましいのは、この範囲をはずれると温度・湿度の変化によりオフトラックが生じエラーレートが大きくなるからである。
【0024】
非磁性支持体は、磁性層を設ける側の面を平滑に、他の面に突起を形成して粗くすることが好ましい。このような構成にするためには、非磁性支持体を二層構造とし、磁性層を形成する側の層には、粉末粒子を添加しないか、ごく少量の添加とし、他側の層には粉末粒子を添加して突起を形成させるのがよい。このような二層構造とするためには、周知の方法、例えば、ダイ内での積層、複合ダイでの積層や、一旦1層を形成しておいてその上に他の層を形成する方法などがある。また、あらかじめ形成しておいた各層を張り合わせてもよい。
【0025】
このような特性を満足する非磁性支持体には二軸延伸のポリエチレンテレフタレートフイルム、ポリエチレンナフタレートフイルム、芳香族ポリアミドフィルム、芳香族ポリイミドフィルムなどがある。
【0026】
〈潤滑剤〉
磁性層、非磁性層には磁性層、非磁性層に含まれるそれぞれ全粉体に対して0.5〜3.0重量%の脂肪酸アミドを含有させ、0.5〜5.0重量%の高級脂肪酸を含有させ、0.2〜3.0重量%の高級脂肪酸のエステルを含有させることが好ましい。この範囲の脂肪酸アミドが好ましいのは、0.5重量%未満ではヘッド/磁性層界面での直接接触が起こりやすく焼付き防止効果が小さく、3.0重量%を越えるとブリードアウトしてしまいドロップアウトなどの欠陥が発生するおそれがあるからである。この範囲の高級脂肪酸添加が好ましいのは、0.5重量%未満では、摩擦係数低減効果が小さく、5.0重量%を越えると非磁性層が可塑化してしまい強靭性が失われるおそれがあるからである。また、この範囲の高級脂肪酸のエステル添加が好ましいのは、0.2重量%未満では、摩擦係数低減効果が小さく、3.0重量%を越えると磁性層への移入量が多すぎるため、テープとヘッドが貼り付く等の副作用を生じるおそれがあるためである。高級脂肪酸としては、炭素数10以上の脂肪酸を用いるのが好ましく、高級脂肪酸エステルは前記高級脂肪酸のエステルを用いるのが好ましい。炭素数10以上の脂肪酸としては、直鎖、分岐、シス・トランスなどの異性体のいずれでもよいが、潤滑性能にすぐれる直鎖型が好ましい。このような脂肪酸としては、たとえば、ラウリン酸、ミリスチン酸、ステアリン酸、パルミチン酸、ベヘン酸、オレイン酸、リノール酸などが挙げられる。これらの中でも、ミリスチン酸、ステアリン酸、パルミチン酸などが好ましい。なお、磁性層の潤滑剤と非磁性層の潤滑剤の相互移動を排除するものではなく、上記潤滑剤が非磁性層に含まれる場合には、磁性層に潤滑剤を含ませなくてもよい。また、逆に磁性層に含ませるだけで効果が発現する場合には、非磁性層に含ませなくてもよい。また、必要に応じて磁性層や非磁性層に用いる潤滑剤をカーボン層の上から塗布にて供給してもよい。
【0027】
〈分散剤〉
非磁性層や磁性層に含まれる非磁性粉末やカーボンブラック、磁性粉末は、分散剤としては、例えば、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、オレイン酸、エライジン酸、リノール酸、リノレン酸、ステアロール酸等の炭素数12〜18個の脂肪酸(RCOOH、Rは炭素数11〜17個のアルキル基、又はアルケニル基)、前記脂肪酸のアルカリ金属又はアルカリ土類金属からなる金属石けん、前記の脂肪酸エステルのフッ素を含有した化合物、前記脂肪酸のアミド、ポリアルキレンオキサイドアルキルリン酸エステル、レシチン、トリアルキルポリオレフィンオキシ第四級アンモニウム塩(アルキルは炭素数1〜5個、オレフィンは、エチレン、プロピレンなど)、硫酸塩、スルホン酸塩、りん酸塩、及び銅フタロシアニン等のような従来公知の分散剤で表面処理したり、分散剤とともに塗料製造工程を行ってもよい。これらは、単独でも組み合わせて使用しても良い。分散剤は、いずれの層においても結合剤100重量部に対して通常、0.5〜20重量部の範囲で添加される。
【0028】
〈磁性層〉
磁性層の厚さは、10nm以上100nm未満とする。10nm未満では得られる出力が小さいのと、均一な磁性層を塗布するのが困難であり、100nmを超えると自己減磁や厚み損失が大きくなりすぎて短波長記録再生特性が悪くなるからである。
【0029】
磁性層の粗さは、中心線平均粗さRaで3〜7nmであることが好ましく、3〜6nmであることがより好ましい。この範囲が好ましいのは、Raが3nm未満では、磁性層の摩擦係数が大きくなりすぎて走行安定性、耐久性に問題が出る場合があるからであり、7nmを越えると、短波長記録再生特性が悪くなるからである。
【0030】
磁性層の保磁力は、80〜320kA/mが好ましく、100〜320kA/mがより好ましく、120〜320kA/mがさらに好ましい。この範囲が好ましいのは、80kA/m未満では記録波長を短くすると反磁界減磁で出力低下が起こり、320kA/mを越えると磁気ヘッドによる記録が困難になるためである。
【0031】
磁性層(非磁性層の場合も同様)に用いるバインダ樹脂としては、塩化ビニル樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体樹脂、塩化ビニル−ビニルアルコール共重合体樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル−ビニルアルコール共重合体樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸共重合体樹脂、塩化ビニル−水酸基含有アルキルアクリレート共重合体樹脂、ニトロセルロースなどのセルロース系樹脂の中から選ばれる少なくとも1種と、ポリウレタン樹脂とを組み合わせたものなどが挙げられる。中でも、塩化ビニル−水酸基含有アルキルアクリレート共重合体樹脂とポリウレタン樹脂を併用するのが好ましい。ポリウレタン樹脂には、ポリエステルポリウレタン樹脂、ポリエーテルポリウレタン樹脂、ポリエーテルポリエステルポリウレタン樹脂、ポリカーボネートポリウレタン樹脂、ポリエステルポリカーボネートポリウレタン樹脂などがある。
【0032】
官能基として−COOH、−SO3 M、−OSO3 M、−P=O(OM)3 、−O−P=O(OM)2 [これらの式中、Mは水素原子、アルカリ金属塩基又はアミン塩を示す]、−OH、−NR' R''、−N+ R''' R''''R''''' [これらの式中、R' 、R''、R''' 、R''''、R''''' は水素または炭化水素基を示す]、エポキシ基を有する高分子からなるウレタン樹脂等のバインダ樹脂が使用される。このようなバインダ樹脂を使用するのは、上述のように磁性粉末などの分散性が向上するためである。2種以上の樹脂を併用する場合には、官能基の極性を一致させるのが好ましく、中でも−SO3 M基同士の組み合わせが好ましい。
【0033】
これらのバインダ樹脂は、磁性粉100重量部に対して、7〜50重量部、好ましくは10〜35重量部の範囲で用いられる。特に、バインダ樹脂として、塩化ビニル系樹脂5〜30重量部と、ポリウレタン樹脂2〜20重量部とを、複合して用いるのが最も好ましい。
【0034】
これらのバインダ樹脂とともに、バインダ樹脂中に含まれる官能基などと結合させて架橋する熱硬化性の架橋剤を併用するのが好ましい。この架橋剤としては、トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートなどや、これらのイソシアネート類とトリメチロールプロパンなどの水酸基を複数個有するものとの反応生成物、上記イソシアネート類の縮合生成物などの各種のポリイソシアネートが好ましい。これらの架橋剤は、バインダ樹脂100重量部に対して、通常1〜30重量部の割合で用いられる。より好ましくは5〜20重量部である。しかし、非磁性層の上にウエット・オン・ウエットで磁性層が塗布される場合には非磁性塗料からある程度のポリイソシアネートが拡散供給されるので、ポリイソシアネートを併用しなくても磁性層はある程度架橋される。
【0035】
上記のような、熱硬化性のバインダ樹脂の代わりに、放射線硬化性樹脂を用いてもよい。放射線硬化性樹脂としては、上記熱硬化性樹脂をアクリル変性し放射線感応性二重結合を持たせたものや、アクリルモノマー、アクリルオリゴマーが用いられる。磁性層中に含ませる磁性粉の平均粒子径は、10〜100nmの範囲にあるのが好ましく、15〜80nmの範囲がより好ましい。この範囲が好ましいのは、平均粒子径が10nm未満では、粒子の表面エネルギーが大きくなって分散が困難になり、平均粒子径が100nmを越えるとノイズが大きくなるためである。磁性粉としては、強磁性鉄系金属磁性粉や窒化鉄磁性粉,板状の六方晶Ba−フェライト磁性粉等が好ましい。
【0036】
強磁性鉄系金属磁性粉には、Mn、Zn、Ni、Cu、Coなどの遷移金属を合金として含ませてもよい。その中でも、Co、Niが好ましく、とくにCoは飽和磁化を最も向上できるので、好ましい。上記の遷移金属元素の量としては、鉄に対して、5〜50原子%とするのが好ましく、10〜30原子%とするのがより好ましい。また、イツトリウム、セリウム、イツテルビウム、セシウム、プラセオジウム、サマリウム、ランタン、ユ―ロピウム、ネオジム、テルビウムなどから選ばれる少なくとも1種の希土類元素を含ませても良い。その中でも、セリウム、ネオジムとサマリウム、テルビウム、イツトリウムを用いたときに、高い保磁力が得られ好ましい。希土類元素の量は鉄に対して0.2〜20原子%、好ましくは0.3〜15原子%、より好ましくは0.5〜10原子%である。強磁性鉄系金属磁性粉は、通常針状ないし紡錘状、米粒状であるが、平均粒子径(長軸径)は10nm以上100nm未満であることが好ましい。平均粒子径が、10nm未満であると、保磁力が好ましい範囲からはずれたり、比表面積が大きくなるために分散が不安定になったりして好ましい記録再生特性が得られない。強磁性鉄系金属磁性粉の軸比(長軸径/短軸径)は2以上10未満が好ましく、2以上5以下がより好ましい。
【0037】
強磁性鉄系金属磁性粉にホウ素を含ませてもよい。ホウ素を含ませることにより、平均粒子径が25nm未満の粒状ないし楕円状の超微粒子が得られる。また同ホウ素の量は、磁性粉末全体中、鉄に対して0.5〜30原子%、好ましくは1〜25原子%、より好ましくは2〜20原子%である。上記両原子%は、蛍光X線分析により測定される値である(参考特許:特開2001−181754号公報)。この磁性粉末の軸比は1以上2以下が好ましい。
【0038】
窒化鉄磁性粉は,公知のものを用いることができ,形状は針状の他に球状や立方体形状などの不定形のものを用いることができる。平均粒子径は、20nm以下であることが好ましい。磁性粉末の軸比は1以上2以下が好ましい。(参考特許:WO03079333A1号公報)
【0039】
強磁性鉄系金属磁性粉および窒化鉄磁性粉の保磁力は、80〜320kA/mが好ましく、飽和磁化量は、80〜200A・m2 /kg(80〜200emu/g)が好ましく、100〜180A・m2 /kg(100〜180emu/g)がより好ましい。また、これらの強磁性粉末のBET比表面積は、35m2 /g以上が好ましく、40m2 /g以上がより好ましく、50m2 /g以上が最も好ましい。通常100m2 /g以下である。また、前記強磁性鉄系金属時性粉、窒化鉄磁性粉をAl,Si,P,Y,Zr、または、これらの酸化物で表面処理して使用してもかまわない。
【0040】
六方晶Ba−フェライト磁性粉の保磁力は、120〜320kA/mが好ましく、飽和磁化量は、40〜70A・m2 /kg(40〜70emu/g)が好ましい。また,粒径(板面方向の大きさ)は10〜25nmが好ましく、10〜20nmがより好ましい。粒径が10nm未満となると、粒子の表面エネルギーが増大するため塗料中への分散が困難になり、25nmを越えると、粒子の大きさに基づく粒子ノイズが大きくなる。また、板状比(板径/板厚)は2〜5が好ましく、2〜4がより好ましい。また、六方晶Ba−フェライト磁性粉のBET比表面積は、1〜100m2 /gが好ましく用いられる。なお、これらの強磁性粉末の磁気特性は、いずれも試料振動形磁束計で外部磁場1273.3kA/m(16kOe)での測定値をいうものである。また、上記の平均粒子径は、透過型電子顕微鏡(TEM)にて撮影した写真から各粒子の最大径(針状粉では長軸径、板状粉では板径)を実測し、100個の平均値により求めたものである。
【0041】
非磁性粉末としては、従来公知のものが用いられるが、α−アルミナ、β−アルミナ、炭化ケイ素、酸化クロム、酸化セリウム、α−酸化鉄、コランダム、人造ダイアモンド、窒化珪素、炭化珪素、チタンカーバイト、酸化チタン、二酸化珪素、窒化ホウ素、など主としてモース硬度6以上のものが単独または組み合わせて好ましく使用される。非磁性粉末の粒子サイズとしては、厚さが0.01〜0.1μmの磁性層に対して、上記の関係を満たす平均粒子径が9nm〜250nmの非磁性粉末が用いられる。
【0042】
さらに、必要に応じて、導電性向上と表面潤滑性向上を目的に従来公知のカーボンブラックを添加してもよい。カーボンブラックとしては、アセチレンブラック、ファーネスブラック、サーマルブラックなどを使用できる。なお、平均粒子径が10nm〜100nmのものが好ましい。この範囲が好ましいのは、平均粒子径が10nm以下になるとカーボンブラックの分散が難しく、100nm以上では多量のカーボンブラックを添加することが必要になり、何れの場合も表面が粗くなり、出力低下の原因になるためである。また、必要に応じて、異なる平均粒子径のカーボンブラックを2種類以上用いてもかまわない。なおカーボンブラックの平均粒子径も上記の関係の範囲内であることが好ましい。
【0043】
〈バック層〉
本発明の磁気テープを構成する非磁性支持体の他方の面(磁性層が形成されている面とは反対側の面)には、走行性の向上等を目的としてバック層を設けることができる。バック層は、通常、カーボンブラックを主成分とする非磁性粉末と結合剤樹脂とを含むバック層として設けられる。
【0044】
バック層の厚さは0.2〜0.8μmが好ましい。この範囲が良いのは、0.2μm未満では、走行性向上効果が不充分で、0.8μmを越えるとテープ全厚が厚くなり、1巻当たりの記録容量が小さくなるためである。カーボンブラックとしては、アセチレンブラック、ファーネスブラック、サーマルブラック等を使用できる。通常、小粒子径カーボンブラックと大粒子径カーボンブラックを使用する。小粒子径カーボンブラックには、平均粒子径が5nm〜200nmのものが使用されるが、平均粒子径10nm〜100nmのものがより好ましい。この範囲がより好ましいのは、平均粒子径が10nm以下になるとカーボンブラックの分散が難しく、平均粒子径が100nm以上では多量のカーボンブラックを添加することが必要になり、何れの場合も表面が粗くなり、磁性層への裏移り(エンボス)原因になるためである。大粒子径カーボンブラックとして、小粒子径カーボンブラックの5〜15重量%、平均粒子径200〜400nmの大粒子径カーボンブラックを使用すると、表面も粗くならず、走行性向上効果も大きくなる。小粒子径カーボンブラックと大粒子径カーボンブラック合計の添加量は無機粉体重量を基準にして60〜98重量%が好ましく、70〜95重量%がより好ましい。中心線平均表面粗さRaは3〜8nmが好ましく、4〜7nmがより好ましい。バック層に磁性があると磁気記録層の磁気信号が乱れる場合があるので、通常、バック層は非磁性である。
【0045】
また、バック層には、強度、温度・湿度寸法安定性向上等を目的に、平均粒子径が10nm〜100nmの非磁性板状粉末を添加することができる。非磁性板状粉末の成分は、酸化アルミニウムに限らず、セリウムなどの希土類元素、ジルコニウム、珪素、チタン、マンガン、鉄等の元素の酸化物または複合酸化物が用いられる。導電性改良の目的で、平均粒子径が10nm〜100nmの板状炭素性粉末や平均粒子径が10nm〜100nmの板状ITO粉末などを添加してもよい。また、必要に応じて、平均粒子径が0.1μm〜0.6μmの粒状酸化鉄粉末を添加してもよい。添加量はバック層中の全無機粉体の重量を基準にして2〜40重量%が好ましく、5〜30重量%がより好ましい。また、平均粒子径が0.1μm〜0.6μmのアルミナを添加すると、耐久性がさらに向上するので好ましい。
【0046】
バック層には、バインダ樹脂として、前述した磁性層や非磁性層に用いる樹脂と同じものを使用できるが、これらの中でも摩擦係数を低減し走行性を向上させるため、セルロース系樹脂とポリウレタン系樹脂とを複合して併用することが好ましい。バインダ樹脂の含有量は、通常、前記カーボンブラックと前記無機非磁性粉末との合計量100重量部に対して40〜150重量部、好ましくは50〜120重量部、より好ましくは60〜110重量部、さらに好ましくは70〜110重量部である。前記範囲が好ましいのは、50重量部未満では、バック層の強度が不十分であり、120重量部を越えると摩擦係数が高くなりやすいためである。セルロース系樹脂を30〜70重量部、ポリウレタン系樹脂を20〜50重量部使用することが好ましい。また、さらにバインダ樹脂を硬化するために、ポリイソシアネート化合物などの架橋剤を用いることが好ましい。
【0047】
バック層には、前述した磁性層や非磁性層に用いる架橋剤と同様の架橋剤を使用する。架橋剤の量は、バインダ樹脂100重量部に対して、通常、10〜50重量部の割合で用いられ、好ましくは10〜35重量部、より好ましくは10〜30重量部である。前記範囲が好ましいのは、10重量部未満ではバック層の塗膜強度が弱くなりやすく、35重量部を越えるとSUSに対する動摩擦係数が大きくなるためである。バック層には、塗膜を架橋硬化させるために、磁性層や非磁性層と同様の電子線硬化性樹脂を架橋剤として使用することができる。
【0048】
非磁性層の厚さが0.5μm以下になると、非磁性層から供給される潤滑剤成分が不足する場合がある。その場合には、バック層に潤滑剤を含ませ、バック層から磁性層側の表面に潤滑剤を供給するのが好ましい。潤滑剤の種類は、磁性層、非磁性層に用いるものと同様のものが用いられる。添加量はバック層中の全非磁性粉末に対して0.5〜3.0重量%の脂肪酸アミド、0.2〜3.0重量%の高級脂肪酸エステル、0.5〜5.0重量%の高級脂肪酸を含有させることが好ましい。
【0049】
〈有機溶剤〉
磁性塗料、非磁性塗料、バック層用塗料、非磁性層に使用する有機溶剤としては、例えば、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、メチルイソブチルケトンなどのケトン系溶剤、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどのエーテル系溶剤、酢酸エチル、酢酸ブチルなどの酢酸エステル系溶剤等が挙げられる。これらの溶剤は、単独で又は混合して使用され、さらにトルエンなどと混合して使用される。
【実施例】
【0050】
以下の実施例によって本発明を詳しく説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。なお、以下において実施例、比較例の部は重量部を示す。また、実施例および比較例の平均粒子径は、数平均粒子径を示す。
【0051】
(実施例1)
《非磁性塗料成分》
(1)
・非磁性針状酸化鉄粉末(平均長軸径:50nm、軸比5) 68部
・粒状アルミナ粉末(平均粒子径:100nm) 12部
・カーボンブラック(平均粒子径:25nm) 20部
・ステアリン酸 2.0部
・塩化ビニル−ヒドロキシプロピルアクリレート共重合体 8.8部
(含有−SO3 Na基:0.7×10-4当量/g)
・ポリエステルポリウレタン樹脂 4.4部
(Tg:40℃、含有−SO3 Na基:1×10-4当量/g)
・シクロヘキサノン 25部
・メチルエチルケトン 40部
・トルエン 10部
(2)
・ステアリン酸 1部
・ステアリン酸ブチル 1部
・シクロヘキサノン 70部
・メチルエチルケトン 50部
・トルエン 20部
(3)
・ポリイソシアネート 1.4部
・シクロヘキサノン 10部
・メチルエチルケトン 15部
・トルエン 10部
《磁性塗料成分》
(1)混練工程
・磁性粉末 (Co−Fe−Al−Y) 100部
(Co/Fe:24at%、
Al/(Fe+Co):4.7wt%
Y/(Fe+Co):7.9at%
σs:119A・m2 /kg(119emu/g)、
Hc:181.4kA/m(2280Oe)、
平均粒子径:60nm、軸比:5)
・塩化ビニル−ヒドロキシプロピルアクリレート共重合体 13部
(含有−SO3 Na基:0.7×10-4当量/g)
・ポリエステルポリウレタン樹脂(PU) 4.5部
(含有−SO3 Na基:1.0×10-4当量/g)
・メチルアシッドホスフェート(MAP) 2部
・テトラヒドロフラン(THF) 20部
・メチルエチルケトン/シクロヘキサノン(MEK/A) 9部
(2)希釈工程
・パルミチン酸アミド(PA) 1.5部
・ステアリン酸n−ブチル(SB) 1部
・メチルエチルケトン/シクロヘキサノン(MEK/A) 350部
(3)配合工程
・ポリイソシアネート 1.5部
・メチルエチルケトン/シクロヘキサノン(MEK/A) 29部
【0052】
上記の非磁性塗料成分において(1)を回分式ニーダで混練したのち、(2)を加えて攪拌の後サンドミルで滞留時間を60分として分散処理を行い、これに(3)を加え攪拌・濾過した後、非磁性塗料(非磁性層塗料)とした。
【0053】
これとは別に、上記の磁性塗料の成分において(1)混連工程成分を予め高速混合しておき、その混合粉末を連続式2軸混練機で混練し、さらに(2)希釈工程成分を加え連続式2軸混練機で少なくとも2段階以上に分けて希釈を行い、サンドミルで滞留時間を45分として分散し、これに(3)配合工程成分を加え攪拌・ろ過後、磁性塗料とした。さらに、上記の非磁性塗料成分を攪拌混合し非磁性塗料とした。
【0054】
上記の非磁性塗料を、芳香族ポリアミドフィルム(厚さ6.0μm、MD=7.8GPa、MD/TD=1.23、商品名:テオネックス、帝人デュポン社製)からなる非磁性支持体(ベースフィルム)上に、乾燥、カレンダ後の厚さが0.9μmとなるように塗布し、この非磁性層上に、さらに上記の磁性塗料を磁場配向処理、乾燥、カレンダ処理後の磁性層の厚さが0.06μmとなるようにエクストルージョン型コータにてウエット・オン・ウエットで塗布し、磁場配向処理後、ドライヤおよび遠赤外線を用いて乾燥し、磁気シートを得た。
【0055】
《バック層用塗料成分》
・カーボンブラック(平均粒子径:25nm) 80部
・カーボンブラック(平均粒子径:350nm) 10部
・非磁性粒状酸化鉄粉末(平均粒子径:100nm) 10部
・ニトロセルロース 45部
・ポリウレタン樹脂(−SO3 Na基含有) 30部
・シクロヘキサノン 260部
・トルエン 260部
・メチルエチルケトン 525部
【0056】
上記バック層用塗料成分をサンドミルで滞留時間45分として分散した後、ポリイソシアネート15部を加えてバック層用塗料を調整しろ過後、上記で作製した磁気シートの磁性層の反対面に、乾燥、カレンダ後の厚みが0.5μmとなるように塗布し、乾燥した。
【0057】
このようにして得られた磁気シートを金属ロールからなる7段カレンダで、温度100℃、線圧196kN/mの条件で鏡面化処理し、磁気シートをコアに巻いた状態で70℃にて72時間エージングし、バック層付き磁気シートを得た。得られたカーボン層付き磁気シートをスリットマシンにより1/2インチ幅に裁断した。
【0058】
スリットマシン(磁気テープ原反を所定幅の磁気テープに裁断する装置)は、構成している各種要素を下記のように改良したものを用いた。巻き出し原反からスリット刃物群に至るウェブ経路中にテンションカットローラを設け、このテンションカットローラをサクションタイプとし、吸引部は多孔質金属を埋め込んだメッシュサクションとした。刃物駆動部に動力を伝達する機構を持たないモータ直結のダイレクトドライブとした。その後、バック層にレーザスポットによりサーボ信号を書き込み磁気テープとした。上記のようにして得られた磁気テープを、カートリッジに組み込み、コンピュータ用テープを作製した。
【0059】
(実施例2)
非磁性塗料成分中の粒状アルミナ粉末(平均粒子径:100nm)を粒状アルミナ粉末(平均粒子径:150nm)に、非磁性層の厚さを0.9μmから0.75μmに変更した以外は、実施例1と同様にして実施例2のコンピュータ用テープを作製した。
【0060】
(実施例3)
非磁性塗料成分中の粒状アルミナ粉末(平均粒子径:100nm)を粒状アルミナ粉末(平均粒子径:200nm)に、非磁性層の厚さを0.9μmから1.0μmに変更した以外は、実施例1と同様にして実施例3のコンピュータ用テープを作製した。
【0061】
(実施例4)
非磁性層の厚さを0.9μmから0.5μmに変更した以外は、実施例1と同様にして実施例4のコンピュータ用テープを作製した。
【0062】
(比較例1)
非磁性層の厚さを0.9μmから0.4μmに変更した以外は、実施例1と同様にして比較例1のコンピュータ用テープを作製した。
【0063】
(比較例2)
非磁性塗料成分中の粒状アルミナ粉末(平均粒子径:100nm)を粒状アルミナ粉末(平均粒子径:150nm)に、非磁性層の厚さを0.9μmから0.7μmに変更した以外は、実施例1と同様にして比較例2のコンピュータ用テープを作製した。
【0064】
(比較例3)
非磁性塗料成分中の粒状アルミナ粉末(平均粒子径:100nm)を粒状アルミナ粉末(平均粒子径:80nm)に、非磁性層の厚さを0.9μmから0.4μmに変更した以外は、実施例1と同様にして比較例3のコンピュータ用テープを作製した。
【0065】
(比較例4)
非磁性層の厚さを0.4μmから0.8μmに変更した以外は、比較例3と同様にして比較例4のコンピュータ用テープを作製した。
【0066】
(比較例5)
非磁性塗料成分中の粒状アルミナ粉末(平均粒子径:100nm)を針状非磁性酸化鉄粉末(平均長軸径:230nm、平均短軸径:30nm)に変更した以外は、実施例1と同様にして比較例5のコンピュータ用テープを作製した。
【0067】
評価の方法は、以下のように行った。
〈C/N測定〉
テープの電磁変換特性測定には、ドラムテスターを用いた。ドラムテスターには電磁誘導型ヘッド(トラック幅25μm、ギャップ0.2ミクロン)とMRヘッド(トラック幅8μm)を装着し、誘導型ヘッドで記録、MRヘッドで再生を行った。両ヘッドは回転ドラムに対して異なる場所に設置されており、両ヘッドを上下方向に操作することで、トラッキングを合わせることができる。磁気テープはカートリッジに巻き込んだ状態から適切な量を引き出して廃棄し、更に60cmを切り出し、更に4mm幅に加工して回転ドラムの外周に巻き付けた。
【0068】
出力及びノイズは、ファンクションジェネレータにより矩形波を記録電流電流発生器に入力制御し、波長0.2μmの信号を書き込み、MRヘッドの出力をプリアンプで増幅後、スペクトラムアナライザーに読み込んだ。0.2μmのキャリア値を媒体出力Cとした。また0.2μmの矩形波を書き込んだときに、記録波長0.2μm以上に相当するスペクトルの成分から、出力及びシステムノイズを差し引いた値の積分値をノイズ値Nとして用いた。更に両者の比をとってC/Nとし、C、C/Nともに比較例1のテープの値との相対値を求めた。
【0069】
〈エラーレート〉
カンタム社製DLT7000ドライブを使用して、室温環境下で全長かつ全トラックを300時間連続で走行させ、走行後のドライブが出力するエラー情報をRS−232Cインターフェース経由で読みとり、記録容量1MB当たりのエラー数として評価した。
【0070】
〈非磁性層厚さ〉
試料の磁気記録媒体を樹脂埋めし、それを集束イオンビーム加工装置で厚さ方向の断面を切り出し、その断面を走査型電子顕微鏡(SEM)で1万倍にて10視野の写真撮影を行い、磁性層−非磁性層界面、非磁性層−非磁性支持体の境界を縁取りする。つぎに、写真1視野当り、界面に非磁性粉末のかかっていない任意の5個所(計50個所)を選び、それぞれ縁取りした線間の距離を非磁性層の厚さとして計測し、それらを平均して非磁性層厚さとした。
【0071】
〈粒状の非磁性粉末粒子径〉
上記した磁性層厚さを求める場合と同様にして、非磁性層断面を走査型電子顕微鏡(SEM)で1万倍にて、連続した視野で必要枚数の写真撮影を行い、非磁性層中に含まれる粒状の非磁性粉末の外形を縁取りする。その外径の最小さしわたしを粒子径として計測する。50個の非磁性粉末を計測し、その平均値を平均粒子径とした。
【0072】
表1に各コンピュータ用テープの評価結果を示した。表1から明らかなように、本発明に係る実施例1〜4の各コンピュータ用テープは、請求項1を満たさない比較例1〜5の各コンピュータ用テープに比較してC/Nが良好で、耐久性も大きい。
【0073】
【表1】

【0074】
次に、図1乃至図3を用いて、本発明の各種数値の臨界的意義等を明らかにする。まず図1にL,Dの値と、C/Nとの関係を示す。実施例1を基本組成とし、非磁性粉末の平均粒子径を80〜200nm、非磁性層厚さを300〜1200nmの範囲で変化させて実験を行った。得られたコンピュータテープのC/Nの値(dB)を各ポイントに添えて示した。図から明らかなように、L/Dが1/5のライン(実線で示す)よりも図中で上の領域になるとC/Nが低下することがわかる。
【0075】
図2にL,Dの値と、耐久走行試験後のエラーレート(ER)との関係を示す。実施例1を基本組成とし、非磁性粉末の平均粒子径を80〜200nm、非磁性層厚さを300〜1200nmの範囲で変化させて実験を行った。得られたコンピュータテープのエラーレートの値(個/MB)を各ポイントに添えて示した。図から明らかなように、L/DがDが1/5のライン(実線で示す)よりも図中で上の領域になると耐久走行試験後のエラーレートが増加することがわかる。また、非磁性粉末の平均粒子径が90nm未満になると耐久走行試験後のエラーレートが増加することがわかる。
【0076】
図3に、図1および図2の結果をまとめて示した。L/D=1/5、L=90nmの各ラインで囲まれたL,Dの範囲が、C/N、耐久性の良好な範囲を示していることがわかる。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】L/Dと磁気テープ特性(C/N)との関係を示す図
【図2】L/Dと磁気テープ特性(走行後エラーレート)との関係を示す図
【図3】L/Dと磁気テープ特性との関係を示す図

【特許請求の範囲】
【請求項1】
非磁性支持体上に非磁性粉末と結合剤とを含有する非磁性層を備え、該非磁性層の上に磁性粉末と結合剤とを含有する磁性層を備える磁気記録媒体において、
前記非磁性層中の非磁性粉末が、少なくとも90nm以上、200nm以下の平均粒子径を有する粒状であり、
前記非磁性粉末の平均粒子径Lと前記非磁性層平均厚さDとが、L/D≦1/5の関係を満たしていることを特徴とする磁気記録媒体。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2006−107669(P2006−107669A)
【公開日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−295691(P2004−295691)
【出願日】平成16年10月8日(2004.10.8)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(000005810)日立マクセル株式会社 (2,366)
【Fターム(参考)】