説明

磁気記録媒体

【課題】膜厚100nm以下の磁性層3を有する重層型の高密度磁気記録媒体において、優れた走行耐久性と、高い電磁変換特性の両立を図る。
【解決手段】非磁性支持体1上に、無機粒子と結合剤樹脂とを含有する下層非磁性層2と、磁性粉末と結合剤樹脂と研磨剤粒子とを含有する磁性層3とが積層形成された、いわゆるウェット・オン・ドライ方式による磁気記録媒体10において、磁性層3の膜厚Zは、100nm以下とし、研磨剤粒子の平均粒径Da(nm)と、磁性層3の膜厚Z(nm)とが、1.0≦Da/Z≦1.5の関係を満たし、かつ、研磨剤粒子の最大粒径Dm(nm)と、磁性層3の膜厚Z(nm)とが、Dm/Z≦1.8の関係を満たすものとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、極めて薄層の磁性層(記録層)を有する、高密度型磁気記録媒体に関するものであり、特に、良好な電磁変換特性と、優れた走行耐久性の両立を図る技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、デジタル記録等により、情報量の増大化が進行しており、磁気記録媒体の分野においては、更なる高密度化、短波長記録化へ向かうことが予想される。
これに伴い、特に高感度型の再生用磁気ヘッド(MRヘッドやGMRヘッド)を具備するシステムに供される磁気記録媒体においては、短波長出力、及び電磁変換特性(C/N特性)を向上させるために、磁気特性を改善し、かつスペーシングロスやモジュレーションノイズを低減化するべく、磁性層の薄層化、及び表面の平滑化が図られてきた。
このような薄層の磁性層(記録層)を有する磁気記録媒体として、支持体上に下層非磁性層と、磁性層とが積層された構成のものが開発、商品化されてきた。
【0003】
このような、いわゆる薄層重層型の磁気記録媒体の代表的な成膜方法としては、例えば、非磁性塗料を塗布することにより成膜した下層非磁性層が湿潤状態にあるうちに磁性分散液を同時または逐次に塗布する、いわゆるウェット・オン・ウェット方式が挙げられる(例えば、下記特許文献1参照。)。
この成膜方法は、生産性やコストの面から優れているが、下層非磁性層と、上層の磁性層の塗布液の粘弾性特性が近似していないと重層塗布が良好に実施できず、塗布欠陥や磁性層表面状態の劣化を招来し、優れた表面性を有する磁気記録媒体が得られないという問題を有している。
このような問題を解決するために、従来種々の検討が行われてきたが、下層非磁性層が湿潤状態において、上層を塗布するウェット・オン・ウェット塗布方式は、下層非磁性層と磁性層との間の界面の乱れによる塗布欠陥が不可避的に生じてしまうという課題が残されていた。塗布欠陥はノイズ発生の原因となり、電磁変化特性の劣化を招来し、今後、更なる記録層の薄層化を図る上での課題となっていた。
【0004】
一方、他の重層塗布方式として、下層非磁性層を塗布した後に乾燥処理を行い、記録層である磁性層を積層形成するという、いわゆるウェット・オン・ドライ方式が提案されている(例えば、特許文献2、3参照。)。
この方法は、上述したようなウェット・オン・ウェット方式と異なり、下層非磁性層を乾燥状態とした後に磁性塗料を塗布するので、下層非磁性層と磁性層との層間の界面の乱れによる塗布欠陥が生じにくく、磁性層の膜厚の変動が抑制できることから、特に極めて薄層の磁性層を有する超高密度型の磁気記録媒体において、優れた電磁変換特性が実現できるという利点を有している。
【0005】
しかしながら、上記のようなウェット・オン・ドライ方式により、上層の磁性層を極めて薄層に形成する場合、短波長記録における電磁変換特性の向上は図られるものの、走行耐久性が劣化してしまうという問題を生じた。これは、ウェット・オン・ウェット方式で重層成膜を行うと、下層非磁性層が湿潤状態のうちに、磁性層を積層塗布するため、磁性層中に添加されている研磨剤粒子のうちの一定量が下層非磁性層側に埋没するようになるが、上記ウェット・オン・ドライ方式で積層成膜を行うと、磁性層の表面に露出する研磨剤粒子の量や、実質的に磁性層中に含まれる研磨剤粒子の量がウェット・オン・ウェット方式で成膜した場合よりも多くなり、表面性に与える影響が大きくなるためである。
すなわち、両方式において、同量で同等の特性を有する研磨剤粒子を投入したとしても、ウェット・オン・ドライ方式で成膜を行った場合においては、特に研磨剤粒子が露出しやすくなり、走行耐久性が劣化したり、磁気ヘッドの偏摩耗によりヘッド寿命が短くなったり、ノイズの増大により電磁変換特性が悪化したりするという問題が生じるのである。
【0006】
研磨剤粒子について、走行耐久性の向上を図るための検討は、従来もなされているが(例えば、下記特許文献4、5参照。)、これらは、いわゆるウェット・オン・ウェット方式によって成膜を行った磁気記録媒体や、磁性層単層構成の磁気記録媒体を対象とした技術であるため、今後一層進行するであろう磁気記録媒体の高密度記録化に対応できないという問題がある。
【0007】
【特許文献1】特開昭63−1913115号公報
【特許文献2】特開2000−207732号公報
【特許文献3】特開2001−84553号公報
【特許文献4】特開平5−266464号公報
【特許文献5】特開平8−55330号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、本発明においては、ウェット・オン・ドライ方式により重層成膜を行う高記録密度型の磁気記録媒体において、磁性層膜厚と研磨剤粒子についての検討を行い、優れた走行耐久性と良好な電磁変換特性の両立を図ることとした。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明においては、非磁性支持体の少なくとも一主面上に、少なくとも無機粒子と結合剤樹脂とを含有する下層非磁性層と、少なくとも磁性粉末と結合剤樹脂と、研磨剤粒子とを含有する磁性層とが積層形成された磁気記録媒体において、磁性層は、前記下層非磁性層形成用の塗料を塗布し、乾燥処理を施した後に形成されたものとし、磁性層の膜厚Zは、100nm以下であるものとし、研磨剤粒子の平均粒径Da(nm)と、磁性層の膜厚Z(nm)とが、1.0≦Da/Z≦1.5の関係を満たし、かつ、研磨剤粒子の最大粒径Dm(nm)と、前記磁性層の膜厚Z(nm)とが、Dm/Z≦1.8の関係を満たすものとした磁気記録媒体を提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ウェット・オン・ドライ方式により成膜された極めて薄層の磁性層を有する、高密度記録型の磁気記録媒体について、優れた走行耐久性と、高い電磁変換特性の両立が図られた。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の磁気記録媒体について、図を参照しながら詳細に説明するが、本発明は以下の例に限定されるものではない。
本発明の磁気記録媒体は、図1の一例の概略構成図に示すように、非磁性支持体1の一主面上に、下層非磁性層2と磁性層3とが積層形成されており、他の主面にバックコート層4が形成された構成を有しているものとする。
以下、これら各層について説明する。
【0012】
非磁性支持体1は、従来公知の磁気記録媒体用の基体として使用される材料をいずれも適用できる。
具体的には、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル類、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン類、セルローストリアセテート、セルロースダイアセテート、セルロースアセテートブチレート等のセルロース誘導体、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン等のビニル系樹脂、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリアミド、ポリアミドイミド等のプラスチック、紙、アルミニウム、銅等の金属、アルミニウム合金、チタン合金等の軽合金、セラミックス、単結晶シリコン等が挙げられる。
これらは、単独で用いてもよく、あるいは二種以上を組み合わせて用いてもよい。
非磁性支持体の形態は、最終的に目的とする磁気記録媒体に応じて適宜選定することとし、フィルム、テープ、シート、ディスク、カード、ドラム等のいずれでも良い。
【0013】
次に、下層非磁性層2について説明する。
下層非磁性層2は、無機粒子、結合剤樹脂、その他各種添加剤を、有機溶剤を用いて混合、調製した塗料を塗布することによって形成されたものである。
【0014】
下層非磁性層2を構成する無機粒子としては、従来公知の磁気記録媒体において、磁性層の下層として形成する非磁性層用の無機微粒子粉末をいずれも使用できる。
具体的には、アルミナ、酸化鉄、炭化ケイ素、酸化クロム、酸化セリウム、ゲータイト、窒化珪素、チタンカ−バイト、酸化チタン、二酸化珪素、酸化スズ、酸化マグネシウム、酸化タングステン、酸化ジルコニウム、窒化ホウ素、酸化亜鉛、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、二硫化モリブデン等が挙げられ、これらを単独で用いてもよく、あるいは二種以上を組み合わせて用いてもよい。
無機粒子の形状は、針状、球状、板状、サイコロ状のいずれでもよい。
【0015】
また、最終的に得られる磁気記録媒体において、高感度型磁気ヘッド(MRヘッドやGMRヘッド)を適用する際、その静電破壊を抑制するため、導電剤を添加することが好ましい。導電剤は、従来公知の材料をいずれも使用可能であり、例えばカーボンブラックや導電性酸化チタン等が挙げられる。
【0016】
下層非磁性層2を構成する結合剤樹脂としては、従来公知のバインダー樹脂がいずれも適用可能である。
例えば、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル−ビニルアルコール共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル−マレイン酸共重合体、塩化ビニル−塩化ビニリデン共重合体、塩化ビニル−アクリロニトリル共重合体、アクリル酸エステル−アクリロニトリル共重合体、アクリル酸エステル−塩化ビニリデン共重合体、メタクリル酸−塩化ビニリデン共重合体、メタクリル酸エステル−スチレン共重合体、熱可塑性ポリウレタン樹脂、フェノキシ樹脂、ポリフッ化ビニル、塩化ビニリデン−アクリロニトリル共重合体、ブタジエン−アクリロニトリル共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン−メタクリル酸共重合体、ポリビニルブチラール、セルロース誘導体、スチレン−ブタジエン共重合体、ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、熱硬化性ポリウレタン樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、アルキド樹脂、尿素−ホルムアルデヒト樹脂またはこれらの混合物等が挙げられる。
特に、柔軟性を付与する効果のあるポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体等と、剛性を付与する効果のあるセルロース誘導体、フェノール樹脂、エポキシ樹脂等が好ましい。これらは、イソシアネート化合物を架橋剤としてより耐久性を向上させてもよい。
【0017】
塗料調整用の有機溶剤としては、従来公知の溶剤をいずれも適用可能である。例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸エチル、酢酸グリコールモノエチルエステル等のエステル系溶剤、グリコールモノエチルエーテル、ジオキサン等のグリコールエーテル系溶剤、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶剤、メチレンクロライド、エチレンクロライド、四塩化炭素、クロロホルム、エチレンクロロヒドリン、ジクロロベンゼン等の有機塩素化合物系溶剤が挙げられる。
【0018】
なお、上述した下層非磁性層2に対しては、後述する磁性層3形成の前工程として、乾燥処理を施すものとする。
【0019】
次に、磁性層3について説明する。
磁性層3は、少なくとも磁性粉末と結合剤樹脂と、研磨剤粒子とを、有機溶剤を用いて、混合、調製した塗料を、塗布することによって形成される。
磁性粉末としては、従来塗布型の磁気記録媒体用に適用されている強磁性粒子をいずれも適用可能である。
例えば、強磁性酸化鉄粒子、強磁性二酸化クロム、強磁性バリウムフェライト、強磁性合金粉末、強磁性白金鉄、強磁性窒化鉄等が挙げられる。
【0020】
磁性層3形成用の結合剤は、塗布型の磁気記録媒体に適用されるバインダーであれば、いずれも適用することができる。具体的には、上述した下層非磁性層形成用の結合剤樹脂をいずれも適用できる。
【0021】
また、磁性塗料調製用の有機溶剤としては、従来、塗料調製用の溶剤として用いられているものをいずれも適用可能であり、上述した下層非磁性層形成用の有機溶剤をいずれも適用できる。
【0022】
研磨剤粒子は、従来公知の材料を適用することができる。
例えば、シリカ、アルミナ、酸化チタン、ZnO2等が挙げられる。
研磨剤粒子の平均粒径Da(nm)と磁性層の膜厚Z(nm)とは、1.0≦Da/Z≦1.5の関係を満たすものとし、かつ、研磨剤粒子の最大粒径Dm(nm)と、磁性層の膜厚Z(nm)とは、Dm/Z≦1.8の関係を満たすものとする。
このように、研磨剤粒子と磁性層の膜厚との関係を特定したことにより、特に、ウェット・オン・ドライ方式により成膜された重層構成の下層と記録層を有する高密度記録型の磁気記録媒体について、優れた走行耐久性が実現でき、かつノイズの低減化が図られ、さらには磁気ヘッドの摩耗が抑制され、高い電磁変換特性が得られることが確認された。
【0023】
また、研磨剤粒子は、pHが7.0以下のαアルミナであることが好ましい。
これにより、αアルミナの凝集に起因する表面性の劣化や、適用する磁気ヘッドの偏摩耗が効果的に防止できることが確認された。
【0024】
磁性層3の膜厚は100nm以下とする。
本発明は極めて高密度記録型の磁気記録媒体を得ることを目的とするものであり、磁性層3の膜厚が100nmを超えると、PW50(孤立再生波のピークの50%でのパルス幅)が大きくなり、高密度記録特性が低下してしまう。
また、高感度型の再生用磁気ヘッド(MRヘッド、GMRヘッド)を用いて信号再生をする場合、磁性層の膜厚が100nmを超えると、磁性層の飽和磁化Brが0.25T以上となり、再生ヘッドの諸元(MR素子の飽和磁束密度、膜厚、及びSAL(Soft-Adjacent-Layer)膜の飽和磁束密度、膜厚等)の条件によっては飽和してしまい、電磁変換特性(C/N)が劣化するためである。
【0025】
バックコート層4は、結合剤樹脂、無機粒子、潤滑剤、及び帯電防止剤等の各種添加剤により形成することができる。
なお、バックコート層4に代えて、上述した下層非磁性層2及び磁性層3を積層形成することにより、両主面に記録層を有する大容量型の磁気記録媒体を作製することもできる。
【0026】
次に、本発明の磁気記録媒体10の作製方法について説明する。
先ず、最終的に目的とする磁気記録媒体に応じた所定の非磁性支持体1を用意する。
次に、下層非磁性層2形成用の塗料、及び磁性層3形成用の塗料を調製する。
これらの塗料は、上述した各材料を所定の溶剤とともに混練分散して作製する。
混練分散方法は、公知の方法をいずれも適用でき、特に制限されるものではないが、例えば連続二軸混練機(エクストルーダー)、コニーダー、加圧ニーダー等を用いる方法が挙げられる。
【0027】
下層非磁性層2は、非磁性塗料を、例えばグラビアコート、押出コート、エアードクターコート、リバースロールコート等の従来の塗布方法により塗布し、その後、乾燥処理を施すことによって形成される。
【0028】
そして、下層非磁性層2の乾燥処理を行った後、磁性塗料を、例えばグラビアコート、押出コート、エアードクターコート、リバースロールコート等の従来の塗布方法により塗布する。
その後、磁性塗料中の磁性粒子が自由度を有する程度に未乾燥である状態で配向装置において磁場配向が行われ、続いて乾燥装置において乾燥処理が施される。
更に、カレンダー処理、及び表面硬化処理を施し、その後、必要に応じてバックコート層4を形成することにより、本発明の磁気記録媒体10が得られる。
【0029】
なお、磁性粉末、結合剤樹脂、無機粒子、分散剤、研磨剤、帯電防止剤、防錆剤等の添加剤、塗料調製用の有機溶剤は、従来公知のものがいずれも適用可能であり、何ら限定されるものではない。
【実施例】
【0030】
下記において、具体的なサンプル磁気テープを作製し、特性を測定し、評価を行ったが、本発明は以下の例に限定されるものではない。
【0031】
〔実施例1〜10〕、〔比較例1〜9〕
下記に示す組成の、磁性塗料を調製した。
磁性塗料は、下記表1に示す磁性粒子から所定のものを選定し、更に、下記表2に示す研磨剤粒子から所定のものを選定し、これらを用いて磁性層用の分散液を調製した。
【0032】
【表1】

【0033】
【表2】

【0034】
〔磁性塗料組成〕
磁性粉末(表1から任意のものを選定する):100重量部
第1の結合剤:9重量部
(塩化ビニル系共重合体(平均重合度300))
第2の結合剤:9重量部
(ポリエステル系ポリウレタン樹脂(量平均分子量41200、Tg40℃))
研磨剤粒子(表2から任意のものを選定する):5重量部
潤滑剤:ステアリン酸:1重量部
:ステアリン酸ブチル:2重量部
溶剤:メチルエチルケトン:20重量部
:トルエン:20重量部
:シクロヘキサノン:10重量部
【0035】
上記材料をニーダーで混練処理し、さらにメチルエチルケトン、トルエン、シクロヘキサノンで希釈した後、サンドミル分散し、分散液とした。
その後、ポリイソシアネート(日本ポリウレタン製硬化剤「コロネートL」)を4重量部添加し、攪拌して磁性層形成用の塗料を調整した。
【0036】
下記に示す下層非磁性層用の塗料を調製した。
〔下層非磁性層用の分散液組成〕
第1の無機粒子:α−酸化鉄(長軸長50nm、BET値87m2/g):100重量部
第2の無機粒子:カーボンブラック:24重量部
(粒径20nm、DBP吸油量120ml/100g)
第1の結合剤:塩化ビニル系共重合体(平均重合度300):9重量部
第2の結合剤:ポリエステル系ポリウレタン樹脂:9重量部
(量平均分子量41200、Tg40℃)
潤滑剤:ブチルステアレート:2重量部
:ステアリン酸:1重量部
有機溶剤:メチルエチルケトン:20重量部
:トルエン:20重量部
【0037】
上記材料を混練処理し、さらに有機溶剤で希釈した後、サンドミル分散し、下層非磁性層用の分散液とした。
その後、ポリイソシアネート(日本ポリウレタン製硬化剤「コロネートL」)を、上記第1の無機粒子100重量部に対して3重量部添加し、下層非記録層用の塗料を調製した。
【0038】
〔実施例1〜10〕、〔比較例1〜7〕の磁気テープの製造工程
非磁性支持体として、膜厚5.0μmのポリエチレンテレフタレートフィルムを用意し、この上に、上記下層非磁性層用の塗料を、膜厚1.0μmで塗布し、続いて乾燥処理を施した。
次に、上記磁性層形成用の塗料を所定の膜厚(下記表3参照。)となるように塗布した。
【0039】
その後、磁場配向処理を行い、さらに乾燥処理を行った後、巻取りを行った。続いて、カレンダー処理、硬化処理を行った。
その後、下記組成のバックコート層用分散液へポリイソシアネート(日本ポリウレタン製硬化剤「コロネートL」)10重量部を添加して作製したバックコート層用塗料を、磁性層形成面の反対側の主面に塗布して膜厚0.6μmのバックコート層を形成した。
【0040】
〔バックコート層用分散液組成〕
無機粉末(カーボンブラック):100重量部
(粒径40nm、DBP吸油量112.0ml/100g)
結合剤:ポリエステル系ポリウレタン樹脂:13重量部
(量平均分子量71200)
結合剤:フェノキシ樹脂(平均重合度100):43重量部
結合剤:ニトロセルロース樹脂(平均重合度90):10重量部
溶剤:メチルエチルケトン:500重量部
:トルエン:500重量部
【0041】
上述のようにして作製した広幅の磁気テープを8mm幅にスリットし、これを実施例1〜10、比較例1〜7のサンプル磁気記録テープとした。
【0042】
〔比較例8、9〕の磁気テープの製造工程
上記下層非磁性層用の塗料を膜厚1.0μmで塗布し、これが湿潤状態である間に、上記磁性塗料を、いわゆるウェット・オン・ウェット方式により、所定の膜厚(下記表3参照。)に塗布した。
その後、磁場配向処理を行い、さらに乾燥処理を行った後、巻取りを行った。続いて、カレンダー処理、及び硬化処理を行った。
その後、上記組成のバックコート層用分散液へポリイソシアネート(日本ポリウレタン製硬化剤「コロネートL」)10重量部を添加して作製したバックコート層用塗料を、磁性層形成面の反対側の主面に塗布して膜厚0.6μmのバックコート層を形成した。
その他の工程は、上記実施例1〜10と同様としてサンプル磁気記録テープを作製した。
【0043】
上述のようにして作製した〔実施例1〜10〕、及び〔比較例1〜9〕の各サンプル磁気記録テープについて、それぞれ、磁性層の膜厚について精密に測定し、研磨剤粒子の平均粒径Da(nm)と磁性層の膜厚Z(nm)との比(Da/Z)、及び研磨剤粒子の最大粒径Dm(nm)と磁性層の膜厚Z(nm)との比(Dm/Z)を算出した。
また、電磁変換特性、及び走行耐久性についての測定評価を行った。
各測定方法を下記に示す。
【0044】
〔磁性層の膜厚の測定〕
各サンプル磁気テープに対し、それぞれ長手方向に10枚のサンプリングを行い、サンプリングされた各サンプル磁気テープのそれぞれの試料片を、ミクロトーム法を用いて、それぞれ長手方向に平行に切断した。
次に、磁気テープの切断面を、日本電子製−透過型電子顕微鏡(TEM)JEM−200CXにて60000倍以上の倍率で観察し、各試料片の切断面上、20点以上のそれぞれの位置における磁性層の膜厚を測定した。
各試料片それぞれから測定した20点以上の磁性層の膜厚の平均値を算出し、その磁気テープサンプルの磁性層膜厚とした。磁性層の膜厚は下記表3に示す。
【0045】
〔電磁変換特性〕
各サンプル磁気テープに対し、記録用ヘッド(MIG、ギャップ0.15μm)と、再生用ヘッド(GMR、ギャップ0.15μm)を装着した固定電特機を用い、評価を行った。
波長0.25μmの信号を記録後、再生出力とノイズを、スペクトラムアナライザーを用いて測定した。
また、再生信号から±2MHzの周波数成分の大きさをノイズレベルと定義し、ノイズ出力の再生信号出力比をC/N特性(走行前C/N特性)とした。
比較例6のサンプル磁気テープにおけるC/N特性の基準値(0.0dB)とし、これとの相対値を、それぞれのC/N特性とし、下記表3に示した。
【0046】
〔走行耐久性〕
各サンプル磁気テープを、8mmデータカートリッジに組み込み、測定サンプルとした。
各測定サンプルを8mm走行装置を用いて走行させ、温度25℃、湿度50%の環境下で、波長0.25μmの信号を10分間記録した。
その後、上記のように10分間記録した部分を、40℃80%RHの環境下で200回再生・巻き戻しを繰り返し、その後、再生出力とノイズを、スペクトラムアナライザーを用いて測定した。再生信号から±2MHzの周波数成分の大きさをノイズレベルと定義し、このノイズ出力の再生信号出力比を、C/N特性(走行後C/N特性)とし、走行前C/N特性からの劣化量をC/N劣化量とした。
C/N劣化量が、0〜−0.5dBのものは○、−0.5〜−1.0dBのものは△、−1.0dB以下のものは×と評価し、下記表3に示した。
【0047】
【表3】

【0048】
表3に示すように、ウェット・オン・ドライ方式により、作製した磁気記録媒体において、磁性層3の膜厚Zが100nm以下であって、研磨剤粒子の平均粒径Da(nm)と、前記磁性層の膜厚Z(nm)とが、1.0≦Da/Z≦1.5の関係を満たし、かつ、研磨剤粒子の最大粒径Dm(nm)と、前記磁性層の膜厚Z(nm)とが、Dm/Z≦1.8の関係を満たすものとした実施例1〜10においては、良好な電磁変換特性を示し、かつ優れた走行耐久性も実現できた。
これは、ウェット・オン・ドライ方式による成膜により、下層非磁性層と磁性層との層間の界面の乱れによる塗布欠陥が生じず、磁性層の膜厚の変動が抑制でき、特に極めて薄層の磁性層が形成でき、さらには、磁性層表面に露出する研磨剤粒子の数、形状、大きさについても好適に制御したため、ノイズの低減化が図られ、かつ良好な走行性についても確保できたためである。
【0049】
一方において、Da/Zの値が1.0未満である比較例1、4〜6においては、研磨剤粒子の平均粒子径及び最大粒子径が記録波長に比較して小さいため、ノイズについては問題とならず、電磁変換特性については実用上問題とならない範囲であったが、磁性層表面に露出する研磨剤粒子の数が極めて少なくなったため、磁気ヘッドの過剰摩擦により発生した付着物を研磨する効果が充分に得られず、特に長時間走行において、良好な走行耐久性が確保できなかった。
【0050】
また、研磨剤粒子の最大粒径Dm(nm)と、前記磁性層の膜厚Z(nm)との比、Dm/Zが、1.8を超える比較例2、3においては、磁性層の最表面の荒れが大きくなり、再生用のGMRヘッドに偏磨耗を招来し、電磁変換特性及び走行耐久性のいずれにおいても、実用上良好な評価は得られなかった。
【0051】
また、研磨剤として使用したαアルミナのpHが、7.0よりも大きい場合である比較例7においては、分散が不充分となり、αアルミナの凝集体に起因すると思われる表面性の劣化が生じ、GMRヘッドの偏磨耗を招来し、電磁変換特性及び走行耐久性のいずれにおいても、実用上良好な評価は得られなかった。
【0052】
また、ウェット・オン・ウェット方式により、下層非磁性層と磁性層との重層塗布を行った比較例8、9においては、いずれも、上下層界面のゆらぎによって塗布欠陥や磁性層表面状態の劣化を招来し、ノイズの増加により電磁変換特性が劣化した。
特に、磁性層が極めて薄層であるものとした比較例9においては、上下層界面のゆらぎによる磁性層表面状態への劣化の影響が大きく、走行耐久性及び電磁変換特性の双方において、実用上満足な評価が得られなかった。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明の磁気記録媒体の概略断面図を示す。
【符号の説明】
【0054】
1……非磁性支持体、2……下層非記録層、3……磁性層、4……バックコート層、10……磁気記録媒体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
非磁性支持体の少なくとも一主面上に、少なくとも無機粒子と結合剤樹脂とを含有する下層非磁性層と、少なくとも磁性粉末と結合剤樹脂と研磨剤粒子とを含有する磁性層とが積層形成された磁気記録媒体であって、
前記磁性層は、前記下層非磁性層形成用の塗料を塗布し、乾燥処理を施した後に形成されたものであり、
前記磁性層の膜厚Zは、100nm以下であり、
前記研磨剤粒子の平均粒径Da(nm)と、前記磁性層の膜厚Z(nm)とが、
1.0≦Da/Z≦1.5の関係を満たし、
かつ、前記研磨剤粒子の最大粒径Dm(nm)と、前記磁性層の膜厚Z(nm)とが、
Dm/Z≦1.8の関係を満たすことを特徴とする磁気記録媒体。
【請求項2】
前記研磨剤粒子が、pHが7.0以下のαアルミナであることを特徴とする請求項1に記載の磁気記録媒体。
【請求項3】
磁気抵抗効果型磁気ヘッド(MRヘッド)、又は巨大磁気抵抗効果型磁気ヘッド(GMRヘッド)を、再生用磁気ヘッドに適用することを特徴とする請求項1に記載の磁気記録媒体。

【図1】
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【公開番号】特開2006−294082(P2006−294082A)
【公開日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−109614(P2005−109614)
【出願日】平成17年4月6日(2005.4.6)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】