説明

磁気記録媒体

【課題】分散性、塗膜平滑性、電磁変換特性及び走行耐久性に優れた磁気記録媒体を提供すること。
【解決手段】磁性支持体上に、強磁性微粉末を結合剤中に分散した少なくとも1層の磁性層を有する磁気記録媒体であって、該強磁性微粉末が粒状又は回転楕円状の粒子形状を有し、粒子径が5〜50nmの窒化鉄系磁性粉末であり、該結合剤はポリオール、重量平均分子量500以下の短鎖ジオール及び有機ジイソシアネートを用いて得られたポリウレタン樹脂を含み、該短鎖ジオールが脂環族多環式構造及び/又はスピロ構造を有するジオールであり、該脂環族多環式構造及び該スピロ構造の濃度がウレタン基濃度に対して1.0〜2.0の比率で存在することを特徴とする磁気記録媒体、又、非磁性支持体と磁性層の間に非磁性粉末を結合剤中に分散した非磁性層を設けても良い。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は強磁性微粉末と結合剤とを分散させてなる一層以上の磁性層を非磁性支持体上に設けた磁気記録媒体であって、優れた電磁変換特性及び耐久性をもつ磁気記録媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
磁気記録技術は、媒体の繰り返し使用が可能であること、信号の電子化が容易であり周辺機器との組み合わせによるシステムの構築が可能であること、信号の修正も簡単にできること等の他の記録方式にはない優れた特長を有することから、ビデオ、オーディオ、コンピューター用途等を始めとして様々な分野で幅広く利用されてきた。
一般にコンピューター用等の磁気記録媒体への高密度記録化の要求に対して、より一層の電磁変換特性の向上が必要とされ、強磁性粉末の微粒子化、媒体表面の超平滑化などが重要となる。
【0003】
塗膜平滑性等を改良するために、有橋炭化水素構造又はスピロ構造を有するポリウレタン樹脂を含む結合剤中に針状強磁性体又は平板状磁性体を分散した磁性層を支持体上に有する磁気記録媒体が開示されている(特許文献1参照)。
【0004】
磁性体の微粒子化においては最近の磁性体では0.1μm以下の強磁性金属粉末や強磁性六方晶フェライト微粉末が使用されている。
粒子サイズに対してより大きな飽和磁化量と改良された電磁変換特性が望まれる。鉄と窒素を少なくとも構成元素とし、アルミニウム、シリコン又は希土類元素のうちの少なくともひとつの元素を含有し、かつFe162相を少なくとも含み、鉄に対する窒素の含有量が1.0〜20.0原子%であり、粒子の平均サイズが5〜30nmの範囲の粒状ないしは楕円状の磁性粉末と結合剤とを含む磁性層を非磁性支持体上に設けた磁気記録媒体が開示されている(特許文献2参照)。
しかし、微粒子の窒化鉄磁性体を使用しているが、磁性体の分散性が不十分であり、十分な電磁変換特性が得られないという問題点があった。
【0005】
【特許文献1】特開2005−129150号公報
【特許文献2】特開2005−310857号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、分散性、塗膜平滑性、電磁変換特性及び走行耐久性に優れた磁気記録媒体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、以下の(1)及び(2)に記載の発明及びその実施態様である(3)により達成された。
(1)磁性支持体上に、強磁性微粉末を結合剤中に分散した少なくとも1層の磁性層を有する磁気記録媒体であって、該強磁性微粉末が粒状又は回転楕円状の粒子形状を有し、粒子径が5〜50nm、飽和磁化が50〜150emu/g(50〜150A・m2/kg)の窒化鉄系磁性粉末であり、該結合剤はポリオール、重量平均分子量500以下の短鎖ジオール及び有機ポリイソシアネートを用いて得られたポリウレタン樹脂を含み、該短鎖ジオールが脂環族多環式構造及び/又はスピロ構造を有するジオールであり、該脂環族多環式構造及び該スピロ構造の濃度がウレタン基濃度に対して1.0〜2.0の比率で存在することを特徴とする磁気記録媒体、
(2)非磁性支持体上に少なくとも1層の非磁性微粉末を結合剤(1)中に分散した少なくとも1層の非磁性層を有し、該非磁性層の上に強磁性微粉末を結合剤(2)中に分散した少なくとも1層の磁性層を有する磁気記録媒体において、該強磁性微粉末が粒状又は回転楕円状の粒子形状を有し、粒子径が5〜50nm、飽和磁化が50〜150emu/g(50〜150A・m2/kg)の窒化鉄系磁性粉末であり、少なくとも結合剤(2)は、ポリオール、重量平均分子量500以下の短鎖ジオール及び有機ポリイソシアネートを用いて得られたポリウレタン樹脂を含み、該短鎖ジオールが脂環族多環式構造及び/又はスピロ構造を有するジオールであり、該脂環族多環式構造及び該スピロ構造の濃度がウレタン基濃度に対して1.0〜2.0の比率で存在することを特徴とする磁気記録媒体、
(3)該脂環族多環式構造又は該スピロ構造が下記の(1)〜(3)よりなる群から選ばれた少なくとも1種の構造を含む(1)又は(2)に記載の磁気記録媒体。
【0008】
【化1】

【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、塗膜表面及び異質の塗膜の界面を平滑にすることができた結果、電磁変換特性及び繰り返し走行耐久性が向上し、保存後の耐久性劣化を低減させた磁気記録媒体を得ることができた。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の磁気記録媒体は、非磁性支持体上に、強磁性微粉末を結合剤中に分散した少なくとも1層の磁性層を有する磁気記録媒体であって、該強磁性微粉末が粒状又は回転楕円状の粒子形状を有し、粒子径が5〜50nm、飽和磁化が50〜150emu/g(50〜150A・m2/kg)の窒化鉄系磁性粉末であり、該結合剤は重量平均分子量500以下の短鎖ジオールと有機ジイソシアネートを用いて得られたポリウレタン樹脂を含み、該短鎖ジオールが脂環族多環式構造又はスピロ構造を有するジオールであり、該脂環族多環式構造及び該スピロ構造の濃度がウレタン基濃度に対して1.0〜2.0の比率で存在することを特徴とする。
【0011】
本発明の磁気記録媒体は、以下のような作用に基づき技術的改良が図られたと推定される。しかし、この推定の真偽は本発明の特許性に影響を与えるものではない。
スピロ構造や脂環族多環式構造といった多環式構造を有するポリウレタンと微粒子メタル、六方晶バリウムフェライト磁性体を用いた従来技術としては特許文献1に挙げたように、ポリウレタンのポリオール構造としてスピロ構造や脂環族多環式構造を有するほか鎖延長剤として用いる短鎖ジオール、有機ジイソシアネート成分にも同様の構造をもたせている。この特許文献1で用いている磁性体は本願の磁性体と異なり粒子形状が針状あるいは平板状であるため、磁性層に磁性体を細密充填しにくく、単位体積あたりの磁性体粒子数を増やしにくく、電磁変換特性が不十分であった。
特許文献1と同様に短鎖ジオールやジイソシアネート成分としてトリシクロデカンジメタノールやスピログリコールといった脂環族多環式ジオ−ルを用いていることでウレタン結合の近傍にバルキ−な多環式骨格を導入できるので溶液中でのウレタン基同士の会合を立体障害的に防ぐ作用がある。すなわちポリウレタンの溶剤への溶解性を高める作用があり強磁性微粉末の分散性を向上させることも可能となったものの、粒子形状が針状あるいは平板状の磁性体では上層磁性層及び下層非磁性層を同時に塗布し、上層の磁性体を配向するときに、磁場による磁性体の回転運動のため上下層の界面での混合により界面に乱れを生じ、電磁変換特性の向上には不利であった。
【0012】
本発明で使用する粒状又は回転楕円状の磁性体を使用した場合、配向による上下層界面での混合が起こりにくくなるが、針状比が小さく、球状に近い磁性体では流動配向しにくく、塗布コーターでの剪断が解除されると上層の磁性体が下層液界面に沈降することで上下層界面での混合が起こり、均一な界面ひいては十分な電磁変換特性を得られない問題があった。
そのため、楕円状の粒子形状を有する粒子径が5〜50nm、飽和磁化が50〜150emu/g(50〜150A・m2/kg)の窒化鉄系磁性粉末を用いた上で均一な界面を確保することを狙って鋭意検討した結果、上記ポリウレタンのウレタン結合近傍に特定比率でバルキ−な多環式骨格を導入することで、磁性層分散液のチキソトロピー性を適正に制御し、剪断が解除されても上下層界面での混合が起こらず、均一な界面を形成できることが分かった。
【0013】
上記規定を達成するための具体的手段としては、上層磁性層に含まれる粉体のサイズ、飽和磁化、ポリウレタン樹脂に含まれるウレタン基濃度、ウレタン基同士の会合を防ぐ作用のあるスピロ骨格や脂環族の有橋炭化水素骨格といった多環式構造の濃度を規定して力学的に上層及び下層に混合領域が生じないように制御することである。一般に剪断の付与によって形成されていた3次元網目構造の軟凝集体がほぐされ、凝集体間にトラップされていた結合剤溶液が流動に寄与するようになり粘度低下を起こす。本発明では上記因子を制御することで適度な磁性体の分散性を確保しつつ軟凝集体を形成させ、かつ結合剤溶液の流動性を確保できることが分かった。ポリウレタンのウレタン結合近傍に導入したバルキーな多環式骨格の構造とその比率によってウレタン基間の会合を抑制し、磁性体の分散性及び結合剤溶液の流動性を制御できたものと考えられるが、その他のチキソトロピー性を関与する因子として、分散される磁性粉末に関しては、粉体表面の性質(pH、加熱減量等)等、結合剤に関しては、(1)分子量、(2)官能基の種類等、溶剤に関しては(1)種類(極性等)、(2)結合剤溶解性、(3)溶剤処方量等、含水率等が挙げられる。
【0014】
また、このような構造のポリウレタンではTgを高くでき、特に高温下での塗膜耐久性に優れている作用も合わせもつ。特に微粒子な磁性体を用いると従来の結合剤では十分な磁性層塗膜の力学強度が確保できないために耐久性が確保できなかったが本願の結合剤を用いる作用もある。
これは前述した磁性体を高度に分散させる作用と多環式骨格を有するで強度向上ができたことによると考えられる。
【0015】
I.磁性層
本発明の磁気記録媒体は、結合剤中に強磁性微粉末を分散した少なくとも1層の磁性層を非磁性支持体上に有する。
本発明の磁気記録媒体が、非磁性層及び磁性層をこの順に非磁性支持体上に有する場合には、少なくとも磁性層の結合剤(2)、好ましくは磁性層の結合剤(2)及び非磁性層の結合剤(1)は以下のポリウレタンを含む。
【0016】
1)結合剤(2)好ましくは結合剤(1)及び結合剤(2)
本発明で用いる結合剤(2)、好ましくは結合剤(1)及び結合剤(2)は、ポリオール及びポリイソシアネートを反応させて得られるポリウレタン樹脂を含む。
本発明において「ポリオール」とは、分子内に2個以上の水酸基を有する化合物又は化合物群を言う。本発明で使用するポリオールは分子内に2個の水酸基を有する2種類以上の化合物であることが好ましい。
【0017】
「脂環族多環式構造」とは複数の脂環式構造が2以上の炭素原子により共有されている構造をもつものを言う。脂環族多環式構造の中でも、3以上の脂環状構造が2以上の炭素原子により共有されている有橋炭化水素構造をもつものが好ましい。「スピロ構造」とは複数の環が1コの炭素原子を共有している構造をもつものを言う。
有橋炭化水素構造またはスピロ構造としては、式(1)〜(3)よりなる群から選ばれた少なくとも1種の構造であることが好ましい。
【0018】
【化2】

【0019】
(1)ポリウレタン樹脂中に有橋炭化水素構造またはスピロ構造を導入する方法
ポリウレタン樹脂中に脂環族多環式構造好ましくは有橋炭化水素構造、または、スピロ構造を導入する方法としては以下のものがあげられる。
脂環族多環式構造及びスピロ骨格は上述の通りであり、これらの構造のポリウレタンへの導入は鎖延長剤として用いる短鎖ジオール成分、有機ジイソシアネート成分として導入することができる。
【0020】
ポリオールの分子量は400〜5,000であることが好ましい。
(1−1)ポリオールとしては、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール等がある。
【0021】
有橋炭化水素構造を有する短鎖ジオールとして、以下の化合物が例示できる。
ビシクロ[1.1.0]ブタンジオ−ル、ビシクロ[1.1.1]ペンタンジオ−ル、ビシクロ[2.1.0]ペンタンジオ−ル、ビシクロ[2.1.1]ヘキサンジオール、ビシクロ[3.1.0]ヘキサンジオール、ビシクロ[2.2.1]ヘプタンジオール、ビシクロ[3.2.0]ヘプタンジオ−ル、ビシクロ[3.1.1]ヘプタンジオール、ビシクロ[2.2.2]オクタンジオール、ビシクロ[3.2.1]オクタンジオール、ビシクロ[4.2.0]オクタンジオール、ビシクロ[5.2.0]ノナンジオール、ビシクロ[3.3.1]ノナンジオール、ビシクロ[3.3.2]デカンジオール、ビシクロ[4.2.2]デカンジオール、ビシクロ[4.3.3]ドデカンジオール、ビシクロ[3.3.3]ウンデカンジオール、
【0022】
ビシクロ[1.1.0]ブタンジメタノ−ル、ビシクロ[1.1.1]ペンタンジメタノ−ル、ビシクロ[2.1.0]ペンタンジメタノール、ビシクロ[2.1.1]ヘキサンジメタノール、ビシクロ[3.1.0]ヘキサンジメタノール、ビシクロ[2.2.1]ヘプタンジメタノール、ビシクロ[3.2.0]ヘプタンジメタノール、ビシクロ[3.1.1]ヘプタンジメタノール、ビシクロ[2.2.2]オクタンジメタノール、ビシクロ[3.2.1]オクタンジメタノール、ビシクロ[4.2.0]オクタンジメタノール、ビシクロ[5.2.0]ノナンジメタノール、ビシクロ[3.3.1]ノナンジメタノール、ビシクロ[3.3.2]デカンジメタノール、ビシクロ[4.2.2]デカンジメタノール、ビシクロ[4.3.3]ドデカンジメタノール、ビシクロ[3.3.3]ウンデカンジメタノール、トリシクロ[2.2.1.0]ヘプタンジオール、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカンジオール、トリシクロ[4.2.1.27,9]ウンデカンジオール、トリシクロ[5.4.0.02,9]ウンデカンジオール、トリシクロ[5.3.1.1]ドデカンジオール、トリシクロ[4.4.1.1]ドデカンジオール、トリシクロ[7.3.2.05,13]テトラデカンジオール、トリシクロ[5.5.1.03,11]トリデカンジオール、トリシクロ[2.2.1.0]ヘプタンジメタノール、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカンジメタノール、トリシクロ[4.2.1.27,9]ウンデカンジメタノール、トリシクロ[5.4.0.02,9]ウンデカンジメタノール、トリシクロ[5.3.1.1]ドデカンジメタノール、トリシクロ[4.4.1.1]ドデカンジメタノール、トリシクロ[7.3.2.05,13]テトラデカンジメタノール、トリシクロ[5.5.1.03,11]トリデカンジメタノール。
【0023】
スピロ構造を有する短鎖ジオールの具体例としては、以下の化合物を例示できる。
スピロ[3.4]オクタンジメタノール、スピロ[3.4]ヘプタンジメタノール、スピロ[3.4]デカンジメタノール、ジスピロ[5.1.7.2]ヘプタデカンジメタノール、シクロペンタンスピロシクロブタンジメタノール、シクロヘキサンスピロシクロペンタンジメタノール、スピロビシクロヘキサンジメタノール、ビス(1,1−ジメチル−2−ヒドロキシエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカンなどがある。これらの中でも、ビス(1,1−ジメチル−2−ヒドロキシエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン。
【0024】
有橋炭化水素構造またはスピロ構造を有するポリオールとしては、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカンジメタノールを用いたポリエステルポリオール、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカンジメタノールのプロピレンオキサイド付加物のポリエーテルポリオール、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカンジメタノールを用いたポリカーボネートポリオールが好ましい。
【0025】
ポリエステルポリオールの二塩基酸成分としては公知の二塩基酸を用いることができる。二塩基酸としては、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、マロン酸、グルタル酸、ピメリン酸、スベリン酸等を例示できる。これらの中でも、イソフタル酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸が好ましい。
【0026】
ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオールには公知の短鎖ジオールを共重合してもよい。
併用できる短鎖ジオールとしては、以下のものが例示できる。
1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール等の脂肪族直鎖ジオール;
2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、3,3−ジメチル−1,5−ペンタンジオール、2−メチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、3−メチル−3−エチル−1,5−ペンタンジオール、2−メチル−2−プロピル−1,3−プロパンジオール、3−メチル−3−プロピル−1,5−ペンタンジオール、2−メチル−2−ブチル−1,3−プロパンジオール、3−メチル−3−ブチル−1,5−ペンタンジオール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール、3,3−ジエチル−1,5−ペンタンジオール、2−エチル−2−ブチル−1,3−プロパンジオール、3−エチル−3−ブチル−1,5−ペンタンジオール、2−エチル−2−プロピル−1,3−プロパンジオール、3−エチル−3−プロピル−1,5−ペンタンジオール、2,2−ジブチル−1,3−プロパンジオール、3,3−ジブチル−1,5−ペンタンジオール、2,2−ジプロピル−1,3−プロパンジオール、3,3−ジプロピル−1,5−ペンタンジオール、2−ブチル−2−プロピル−1,3−プロパンジオール、3−ブチル−3−プロピル−1,5−ペンタンジオール、2−エチル−1,3−プロパンジオール、2−プロピル−1,3−プロパンジオール、2−ブチル−1,3−プロパンジオール、3−エチル−1,5−ペンタンジオール、3−プロピル−1,5−ペンタンジオール、3−ブチル−1,5−ペンタンジオール、3−オクチル−1,5−ペンタンジオール、3−ミリスチル−1,5−ペンタンジオール、3−ステアリル−1,5−ペンタンジオール、2−エチル−1,6−ヘキサンジオール、2−プロピル−1,6−ヘキサンジオール、2−ブチル−1,6−ヘキサンジオール、5−エチル−1,9−ノナンジオール、5−プロピル−1,9−ノナンジオール、5−ブチル−1,9−ノナンジオール等の分岐側鎖を有する脂肪族ジオール;
ビスフェノールA、水素化ビスフェノールA等の環構造を有するジオール。
併用する短鎖ジオールは分子量400未満のものが好ましい。
【0027】
(1−2)脂環族多環式構造好ましくは有橋炭化水素構造またはスピロ構造を有する短鎖ジオールによる鎖延長剤
前記の有橋炭化水素構造またはスピロ構造を有する短鎖ジオールを鎖延長剤として用いても構わない。
好ましいものはトリシクロ[2.2.1.0]ヘプタンジメタノール、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカンジメタノール、ビシクロ[3.3.2]デカンジメタノール、ビシクロ[4.2.2]デカンジメタノール、スピロ[3,4]デカンジメタノール、ビス(1,1−ジメチル−2−ヒドロキシエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン。特に好ましくはトリシクロ[5.2.1.02,6]デカンジメタノール、ビス(1,1−ジメチル−2−ヒドロキシエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカンが例示できる。
【0028】
(1−3)有橋炭化水素構造またはスピロ構造を有するジイソシアネート
有橋炭化水素構造またはスピロ構造を有するジイソシアネートとしては、トリシクロ[2.2.1.0]ヘプタンジイソシアネート、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカンジイソシアネート、トリシクロ[4.2.1.27,9]ウンデカンジイソシアネート、トリシクロ[5.4.0.02,9]ウンデカンジイソシアネ−ト、トリシクロ[5.3.1.1]ドデカンジイソシアネート、トリシクロ[4.4.1.1]ドデカンジイソシアネート、トリシクロ[7.3.2.05,13]テトラデカンジイソシアネート、トリシクロ[5.5.1.03,11]トリデカンジイソシアネート、ノルボルネンジイソシアネート、スピロ[3,4]オクタンジイソシアネート、スピロ[3,4]ヘプタンジイソシアネート、スピロ[3,4]デカンジイソシアネート、ジスピロ[5,1,7,2]ヘプタデカンジイソシアネート、シクロペンタンスピロシクロブタンジイソシアネート、シクロヘキサンスピロシクロペンタンジイソシアネート、スピロビシクロヘキサンジイソシアネートが例示できる。好ましくは、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカンジイソシアネート、ノルボルネンジイソシアネートが使用できる。
【0029】
本発明で用いるウレタン樹脂は、触媒としてスズ化合物の存在下、上記のポリオール、ポリイソシアネート、及び必要に応じて鎖延長剤を重付加させることにより製造することができる。
【0030】
(2)ポリウレタン中の有橋炭化水素構造またはスピロ構造の含有量
ポリウレタン中の有橋炭化水素構造またはスピロ構造の含有量は、1〜5.5mmol/gが好ましく、有橋炭化水素構造又はスピロ骨格の濃度がウレタン基濃度に対して1.0〜2.0の比率で存在する。上記範囲よりも少ないとウレタン基同士の会合抑制効果が不十分で分散性、界面変動が劣化し、耐久性も十分でない。上記範囲よりも多くても平滑性が低下する。
【0031】
(3)ジイソシアネート
有橋炭化水素構造またはスピロ構造を有するポリオール、短鎖ジオールと併用するジイソシアネート成分としては公知のものが用いられる。TDI(トリレンジイソシアネート),MDI(ジフェニルメタンジイソシアネート),p−フェニレンジイソシアネート、o−フェニレンジイソシアネート、m−フェニレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、水素化キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートなどが好ましい。
【0032】
(4)ウレタン基濃度
ポリウレタン中のウレタン基濃度は2.0mmol/g〜6.0mmol/gであることが好ましく、2.5mmol/g〜5.5mmol/gであることがさらに好ましい。
上記範囲であると、塗膜のガラス転移温度(Tg)が低下しないため耐久性が良好となる。また、溶剤溶解性も確保できるので分散性が低下しない。分散性が低下しないとポリオールを含有させることができるため、分子量コントロールがしやすくなる等、合成上有利となる。
【0033】
(5)重量平均分子量
本発明で用いるポリウレタン樹脂の重量平均分子量は4万〜10万が好ましく、5万〜9万がさらに好ましい。上記範囲であると塗膜強度が低下しないため、耐久性が良好となる。また溶剤への溶解性が低下しないため、分散性が良好となる。
【0034】
(6)ガラス転移温度
本発明で用いるポリウレタン樹脂のガラス転移温度(Tg)は40〜200℃が好ましく、70〜180℃がより好ましく、80〜170℃がさらに好ましい。上記範囲であると高温での塗膜強度が低下せず、耐久性、保存性が良好となる。また、カレンダー成型性がよく、電磁変換特性が良好となる。
【0035】
(7)ポリウレタン中の極性基
本発明に使用するポリウレタン樹脂は極性基を含んでいてもよい。極性基としては、−SO3M、−OSO3M、−PO32、−COOMが好ましい。この中でも、−SO3M、−OSO3Mがさらに好ましい。Mは、水素原子又は1価のカチオンを表す。1価のカチオンとしては、アルカリ金属またはアンモニウムが例示できる。極性基は、ポリウレタン樹脂中に1×10-5eq/g〜2×10-4eq/g含有することが好ましい。極性基の含有量が上記範囲であると磁性体への吸着や溶剤への溶解性が十分となるので、分散性が良好となる。
【0036】
(8)ポリウレタン中の水酸基
本発明に使用するポリウレタン樹脂には、水酸基(OH基)が含まれていてもよい。OH基は1分子あたり2〜20個が好ましく、3〜15個がより好ましい。OH基の個数が上記範囲であると、イソシアネート硬化剤との反応性が向上するために塗膜強度、及び耐久性が向上し、また、溶剤への溶解性が向上するので分散性が良好となる。
【0037】
2)強磁性微粉末
本発明の磁気記録媒体に使用する強磁性微粉末としては、窒化鉄粒子が好ましい。窒化鉄粒子は、少なくともFe162相を含むことが望ましく、他の窒化鉄の相を含まないことが好ましい。これは、窒化鉄(Fe4NやFe3N相)の結晶磁気異方性は1×105erg/cc程度であるのに対し、Fe162相は2〜7×106erg/ccの高い結晶磁気異方性を有するからである。これにより、微粒子化した際にも高い保磁力を維持することができる。
この高い結晶磁気異方性は、Fe162相の結晶構造に起因する。結晶構造は、N原子がFeの八面体格子間位置に規則的に入った体心正方晶であり、N原子が格子に入る際の歪が、高い結晶磁気異方性の発生原因と考えられる。Fe162相の磁化容易軸は窒化により伸びたC軸である。
【0038】
Fe162相を含む粒子の形状は粒状ないし回転楕円状であることが好ましい。さらに好ましくは球状である。これは、立方晶であるα−Feの等価な3方向のうち一方向が窒化により選ばれc軸(磁化容易軸)となるため、粒子形状が針状であれば、磁化容易軸が短軸方向、長軸方向にある粒子が混在することになり好ましくないからである。一つの粒子の最大径を長軸長、最小径を短軸長として、長軸長/短軸長の軸比の平均値は好ましくは、1〜2であり、より好ましくは1〜1.5であり、粒径と記載されたものは長軸長を表すものとする。
【0039】
磁性体であるFe162相の粒径は5〜50nmであり、5〜20nmが好ましい。これは、粒径が小さくなると熱揺らぎの影響が大きくなり、超常磁性化し、磁気記録媒体に適さなくなるからである。また、磁気粘性のためヘッドで高速記録する際の保磁力が高くなり、記録しづらくなるからである。一方、粒径が大きいと、飽和磁化を小さくすることが出来ないため、記録時の保磁力が高くなりすぎ、記録をすることが困難となるからである。また、粒子サイズが大きいと、磁気記録媒体としたときの粒子性のノイズが高くなるからである。
粒径分布は、単分散であることが好ましくい。これは一般的には、単分散の方が、媒体ノイズが下がるためである。粒径の変動係数は好ましくは20%以下(1〜20%)であり、より好ましくは15%以下(2〜15%)であり、さらに好ましくは、10%以下(2〜10%)である。
なお、本発明において「粒径の変動係数」とは、円相当径での粒径分布の標準偏差を求め、これを平均粒径で除したものを意味する。また「組成の変動係数」とは、粒径の変動係数と同様に、合金ナノ粒子の組成分布の標準偏差を求め、これを平均組成で除したものを意味する。本発明においては、これらの値を100倍して%表示とする。
【0040】
粒径及び粒径の変動係数は、カーボン膜を貼り付けたCu200メッシュに希釈した合金ナノ粒子を載せて乾燥させ、TEM(日本電子製1200EX)で10万倍で撮影したネガを粒径測定器(カールツァイス製KS−300)で測定される算術平均粒径から算出することができる。
【0041】
Fe162相を含む粒子において、鉄に対する窒素の含有量は、1.0〜20.0at%が好ましく、さらに好ましくは5.0〜18.0at%、より好ましくは8.0〜15.0at%であるのがより好ましい。これは、窒素が少なすぎると、Fe162相の形成量が少なくなるからであり、保磁力増加は窒化による歪に起因しており、窒素が少なくなると保磁力が低くなるからである。窒素が多すぎると、Fe162相は準安定相であるため、分解して安定相である他の窒化物となり、この結果、飽和磁化が過度に低下するからである。
【0042】
微粒子のFe162相は酸化安定性に乏しく、表面化合物相が無ければ発火する懸念があるためである。そこで、酸化物、窒化物、炭化物からなる表面化合物層を有するコア/シェル構造とすることが好ましく、酸化安定性の観点から、表面化合物層は酸化物であることが好ましい。
表面化合物層は、Fe162相を徐酸化して形成することも出来るが、希土類元素あるいはホウ素、シリコン、アルミニウム、リンの中から選ばれた少なくとも1種の元素を含む表面化合物層を用いることが好ましい。
表面化合物層の厚さは1〜5nmが好ましい。これは、1nmより薄いと、酸化安定性に劣り、5nmより厚いと、磁性粉末中に占める表面化合物層の割合が増加して、粒子サイズが小さくなるにつれて、適度な飽和磁化量を維持できなくなるからである。
表面化合物層の組成は、鉄に対する希土類元素あるいはホウ素、シリコン、アルミニウム、リンの総含有量は、0.1〜40.0at%が好ましく、さらに好ましくは1.0〜30.0at%、より好ましくは3.0〜25.0at%であるのがよい。これらの元素が少なすぎると、表面化合物層の形成が困難となり、磁性粉末の磁気異方性が減少するだけでなく、酸化安定性に劣る。またこれらの元素が多すぎると、飽和磁化の過度な低下が起こりやすい。
【0043】
Fe162相の飽和磁化は50emu/g〜150emu/g(50〜150A・m2/kg)であることが好ましい。飽和磁化が高いと記録時の保磁力が高くなり、記録ヘッドで記録できなくなるからである。また、再生においても、飽和磁化を高くしてもMRヘッドが飽和し出力の向上が望めないからである。一方、低すぎると、再生出力が低くなることから好ましくない。
【0044】
また、この磁性粉末は、BET比表面積が40〜100m2/gであることが好ましい。これは、BET比表面積が小さすぎると、粒子サイズが大きくなり、磁気記録媒体に適用すると粒子性ノイズが高くなり、また磁性層の表面平滑性が低下して、再生出力が低下しやすい。
また、BET比表面積が大きすぎると、Fe162相を含む粒子が凝集しやすくなり均一な分散物を得ることが難しく、平滑な表面を得ることが難しくなるからである。
【0045】
(α−Feの合成)
Fe162相を含む粒子の製造方法について、説明する。Fe162相はα−Feを窒化することにより得られる。α−Feを得るには鉄系酸化物または水酸化物(たとえば、ヘマタイト、マグネタイト、ゲータイトなど)を気相中で還元して得る方法と、液相中で合成する方法がある。まず、気相中で還元する方法について説明する。鉄系酸化物または水酸化物の平均粒子サイズは、とくに限定されないが、通常は、5〜100nm程度であるのが望ましい。粒子サイズが小さすぎると、還元処理時に粒子間焼結が生じやすく、また粒子サイズが大きすぎると、還元処理が不均質となりやすく、粒子径や磁気特性の制御が困難となる。
【0046】
そこで、鉄系酸化物または水酸化物に対して、希土類元素あるいはホウ素、シリコン、アルミニウム、リンなどの中から選ばれた少なくとも1種の元素を含む化合物を被着させ、焼結を防止することが好ましい。希土類元素の被着は、アルカリまたは酸の水溶液中に出発原料を分散させ、これに希土類元素の塩を溶解させ、中和反応などにより原料粉末に希土類元素を含む水酸化物や水和物を沈殿析出することにより行うことができる。ホウ素、シリコン、アルミニウム、リンなどの中から選ばれた少なくとも1種の元素を含む化合物を被着させる場合は、原料粉末を浸漬した溶液にこれらの化合物を溶解させ、吸着により被着させるか、沈澱析出を行うことにより被着させる。
水酸化物や水和物に対して、希土類元素とホウ素、シリコン、アルミニウム、リンなどの中から選ばれた少なくとも1種の元素を同時にあるいは交互に被着させてもよい。また、これらの被着処理を効率良く行うために、還元剤、pH緩衝剤、粒径制御剤などの添加剤を混入させることも好ましく行われる。
【0047】
つぎに、化合物を被着させた水酸化物や水和物を、還元性ガス気流中で加熱した。還元ガスは、水素ガス、一酸化炭素ガスを用いることができる。処理後H2Oとなる水素が環境適性の観点から好ましく用いられる。
還元温度としては、250〜600℃とするのが望ましい。より好ましくは300〜500℃である。この温度範囲では、還元温度が十分に進み、粒子の焼結も防止できる。
【0048】
気相還元での粒子の焼結を避ける方法として、α−Feを液相中で合成する方法が好ましく用いられる。鉄ナノ粒子の製造法としては、沈殿法で分類すると、1級アルコールを用いるアルコール還元法、2級アルコール、3級アルコール、2価または3価の多価アルコールを用いるポリオール還元法、熱分解法、超音波分解法、強力還元剤還元法が知られている。さらに、前記製造法は、反応系で分類すると、高分子存在法、高沸点溶媒法、正常ミセル法、逆ミセル法などが知られている。
【0049】
まず、粒径の制御が容易で単分散の分産物を得やすく、本発明において好ましく用いられる逆ミセル法について説明を行う。
<鉄ナノ粒子の逆ミセル合成法>
次に本発明の合金ナノ粒子の製造方法を説明する。
本発明の合金ナノ粒子は、1種以上の金属化合物を含む逆ミセル溶液(I)と還元剤を含む逆ミセル溶液(II)とを混合して還元処理を施す還元工程と、必要に応じて前記還元処理後に熟成処理を施す熟成工程とにより製造できる。かかる製造方法により、鉄ナノ粒子が製造される。以下、各工程について説明する。
【0050】
(還元工程)
まず、界面活性剤を含有する非水溶性有機溶媒と1種以上の金属化合物を含む水溶液とを混合した逆ミセル溶液(I)を調製する。逆ミセル溶液(I)は、鉄ナノ粒子を形成するのに用いられる鉄塩が含有される。
【0051】
前記界面活性剤としては、油溶性界面活性剤が用いられる。具体的には、スルホン酸塩型(例えば、エーロゾルOT(和光純薬製))、4級アンモニウム塩型(例えば、セチルトリメチルアンモニウムブロマイド)、エーテル型(例えば、ペンタエチレングリコールドデシルエーテル)などが挙げられる。
【0052】
前記界面活性剤を溶解する非水溶性有機溶媒として好ましいものは、アルカン及びエーテルである。アルカンは、炭素数7〜12のアルカン類であることが好ましい。具体的には、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、ウンデカン、ドデカンが挙げられる。一方、エーテルは、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジブチルエーテルが好ましい。
非水溶性有機溶媒中の界面活性剤の添加量は、20〜200g/lであることが好ましい。
【0053】
金属化合物の水溶液に含有される金属化合物としては、硝酸塩、硫酸塩、塩酸塩、酢酸塩、塩素イオンを配位子とする金属錯体の水素酸、塩素イオンを配位子とする金属錯体のカリウム塩、塩素イオンを配位子とする金属錯体のナトリウム塩、シュウ酸イオンを配位子とする金属錯体のアンモニウム塩などが挙げられ、本発明の製造方法では、これらを任意に選択して使用することができる。
【0054】
各々の金属化合物水溶液中の金属化合物としての濃度は、0.1〜2,000μモル/mlであることが好ましく、1〜500μモル/mlであることがより好ましい。
【0055】
得られる粒子が均一な組成を有するよう、金属化合物水溶液中にキレート剤を添加することが好ましい。具体的には、DHEG(二ヒドロキシエチルグリシン)、IDA(イミノ二酢酸)、NTP(ニトリロ三プロピオン酸)、HIDA(二ヒドロキシエチルイミノ二酢酸)、EDDP(エチレンジアミン二プロピオン酸二塩酸塩)、BAPTA(二アミノフェニルエチレングリコール四酢酸四カリウム塩水和物)などをキレート剤として使用することが好ましい。また、キレート安定度定数(logK)は、10以下であることが好ましい。
キレート剤の添加量は、金属化合物1モル当たり、0.1〜10モルであることが好ましく、0.3〜3モルであることがより好ましい。
【0056】
次に、還元剤を含む逆ミセル溶液(II)を調製する。逆ミセル溶液(II)は、界面活性剤を含有する非水溶性有機溶媒と還元剤水溶液とを混合させて調製することができる。2種以上の還元剤を用いる場合、これらを一緒に混合して逆ミセル溶液(II)としてもよいが、溶液の安定性や作業性等を考慮し、それぞれ別々に非水溶性有機溶媒に混合して、別々の逆ミセル溶液((II’)、(II”)等)として調製し、これらを適宜混合等して使用することが好ましい。
【0057】
還元剤水溶液は、例えば、アルコール類;ポリアルコール類;H2;HCHO、S262-、H2PO2-、BH4-、N25+、H2PO3-等と水とからなり、これらの還元剤を単独または2種以上を併用することが好ましい。
水溶液中の還元剤量は、金属塩1モルに対して3〜50モルであることが好ましい。
【0058】
逆ミセル溶液(II)で用いられる界面活性剤及び非水性有機溶媒としては、逆ミセル溶液(I)で用いたものを挙げることができる。
【0059】
逆ミセル溶液(I)及び(II)のそれぞれに含有される水及び界面活性剤の質量比(水/界面活性剤)は、20以下とすることが好ましい。質量比が20以下であれば、沈殿が発生しにくく、かつ均一の粒子を得ることができる。質量比は、15以下であることがより好ましく、0.5〜10であることがさらに好ましい。
【0060】
逆ミセル溶液(I)と(II)の水及び界面活性剤の質量比は同一でも異なっていてもかまわないが、系を均一にするために質量比は同一であることが好ましい。
【0061】
以上のようにして調製した逆ミセル溶液(I)と(II)とを混合する。混合方法は特に限定されるものではないが、還元の均一性を考慮して、逆ミセル溶液(I)を撹拌しながら、この中に逆ミセル溶液(II)を添加して混合することが好ましい。混合終了後、還元反応を進行させることになるが、その際の温度は−5〜30℃の範囲で一定の温度とする。還元温度が−5℃以上であれば、水相が凝結することもなく還元反応を均一にすることができ、また30℃以下であれば、凝集または沈殿が起こりにくく、系を安定化させることができる。好ましい還元温度は0〜25℃であり、さらに好ましくは5〜25℃である。
ここで、前記「一定温度」とは、設定温度をT(℃)とした場合、温度がT±3℃の範囲にあることをいう。なお、このようにした場合であっても、当該Tの上限及び下限は、上記還元温度(−5〜30℃)の範囲にあるものとする。
【0062】
還元反応の時間は、逆ミセル溶液(I)及び(II)の量等により適宜設定する必要があるが、1〜30分とすることが好ましく、5〜20分とすることがより好ましい。
【0063】
還元反応は、合金の粒径分布の単分散性に大きな影響を与えるため、できるだけ高速攪拌(例えば約3000rpm以上)しながら行うことが好ましい。
好ましい攪拌装置は高剪断力を有する攪拌装置であり、詳しくは攪拌羽根が基本的にタービン型あるいはパドル型の構造を有し、さらに、その羽根の端または羽根と接する位置に鋭い刃を付けた構造であり、羽根をモーターで回転させる攪拌装置である。具体的には、ディゾルバー(特殊機化工業製)、オムニミキサー(ヤマト科学製)、ホモジナイザー(SMT製)などの装置が有用である。これらの装置を用いることにより、単分散なナノ粒子を安定な分散液として合成することができる。
【0064】
前記逆ミセル溶液(I)及び(II)の反応後に、アミノ基またはカルボキシ基を1〜3個有する少なくとも1種の分散剤を、作製しようとする合金ナノ粒子1モル当たりに0.001〜10モル添加することが好ましい。分散剤の添加量は、0.001〜10モルであれば、合金ナノ粒子の単分散性をより向上させることができ、かつ凝集も起こらない。
【0065】
前記分散剤としては、合金ナノ粒子表面に吸着する基を有する有機化合物が好ましい。具体的には、アミノ基、カルボキシ基、スルホン酸基またはスルフィン酸基を1〜3個有するものであり、これらを単独または併用して用いることができる。
構造式としては、R−NH2、H2N−R−NH2、H2N−R(NH2)−NH2、R−COOH、HOCO−R−COOH、HOCO−R(COOH)−COOH、R−SO3H、HOSO2−R−SO3H、HOSO2−R(SO3H)−SO3H、R−SO2H、HOSO−R−SO2H、HOSO−R(SO2H)−SO2Hで表される化合物であり、式中のRは直鎖、分岐または環状の飽和または不飽和の炭化水素残基である。
【0066】
分散剤として特に好ましい化合物はオレイン酸である。オレイン酸はコロイドの安定化において周知の界面活性剤であり、鉄ナノ粒子を保護するのに用いられる。オレイン酸の比較的長い鎖は粒子間の強い磁気相互作用を打ち消す重要な立体障害を与える(オレイン酸は18炭素鎖を有し、長さは2nm程度(20オングストローム程度)であり、二重結合を1つ有する)。オレイン酸は、例えばオリーブ油などから容易に入手できる安価な天然資源であるため好ましい。また、オレイン酸から誘導されるオレイルアミンもオレイン酸同様有用な分散剤である。
その他、エルカ酸やリノール酸など類似の長鎖カルボン酸もオレイン酸と同様に用いることができる(例えば、8〜22の炭素原子を有する長鎖有機酸を単独または組み合わせて用いることができる。)。
【0067】
分散剤の添加時期は、特に限定されるものではないが、還元反応直後から下記の熟成工程開始までの間であることが好ましい。かかる分散剤を添加することで、より単分散で、凝集のない鉄ナノ粒子を得ることができる。
【0068】
(熟成工程)
本発明の製造方法は、前記還元反応が終了した後、さらに反応後の溶液を熟成温度まで昇温させる熟成工程を有する。
熟成温度は、30〜90℃の間で一定の温度とすることが好ましく、その温度は、前記還元反応の温度より高くすることが適当である。また、熟成時間は、5〜180分とすることが好ましい。熟成温度及び熟成時間が上記範囲内であれば、凝集や沈殿が起こり難く、かつ反応を完結させ、組成を一定にすることができる。より好ましい熟成温度及び熟成時間は40〜80℃、10〜150分であり、さらに好ましい熟成温度及び熟成時間は40〜70℃、20〜120分である。
【0069】
ここで、前記「一定温度」とは、還元反応の温度の場合と同義(但し、この場合、「還元温度」は「熟成温度」となる)であるが、特に、上記熟成温度の範囲(30〜90℃)内で、前記還元反応の温度より5℃以上高いことが好ましく、10℃以上高いことがより好ましい。当該温度を5℃以上高くすることにより、処方通りの組成を得ることができる。
【0070】
以上のような熟成工程では、熟成時の温度で撹拌速度を適宜調整することにより、所望の粒径を有する鉄ナノ粒子を作製することができる。
【0071】
前記熟成を行った後は、水と1級アルコールとの混合溶液で前記熟成後の溶液を洗浄し、その後、1級アルコールで沈殿化処理を施して沈殿物を生成させ、該沈殿物を有機溶媒で分散させる洗浄・分散工程を設けることが好ましい。かかる洗浄・分散工程を設けることにより、不純物が除去され、磁気記録媒体の磁性層形成時の塗布性をより向上させることができる。
上記洗浄及び分散は、少なくともそれぞれ1回、好ましくは、それぞれ2回以上行う。
【0072】
洗浄で用いられる1級アルコールは、特に限定されるものではないが、メタノール、エタノール等が好ましい。水と1級アルコールの体積混合比(水/1級アルコール)は、10/1〜2/1の範囲にあることが好ましく、5/1〜3/1の範囲にあることがより好ましい。水の比率が高いと、界面活性剤が除去されにくくなることがあり、逆に1級アルコールの比率が高いと、凝集を起こしてしまうことがある。
【0073】
鉄を還元析出あるいは熱析出させる際に保護コロイドを存在させる事でナノ粒子を安定して調製することができる。熱析出には鉄カルボニルを熱分解して鉄を得る方法が知られている。保護コロイドとしてはポリマーや界面活性剤を使用することが好ましい。前記ポリマーとしては、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリN−ビニル−2ピロリドン(PVP)、ゼラチン等が挙げられる。なかでも、特に好ましくはPVPである。また、分子量は2万〜6万が好ましく、より好ましくは3万〜5万である。ポリマーの量は生成する硬磁性ナノ粒子の質量の0.1〜10倍であることが好ましく、0.1〜5倍がより好ましい。
【0074】
保護コロイドとして好ましく用いられる界面活性剤は、一般式:R−X、で表される長鎖有機化合物である「有機安定剤」を含むことが好ましい。上記一般式中のRは、直鎖または分岐ハイドロカーボンまたはフルオロカーボン鎖である「テール基」であり、通常8〜22個の炭素原子を含む。また、上記一般式中のXは、ナノ粒子表面に特定の化学結合を提供する部分(X)である「ヘッド基」であり、スルフィネート(−SOOH)、スルホネート(−SO2OH)、ホスフィネート(−POOH)、ホスホネート(−OPO(OH)2)、カルボキシレート、及びチオールのいずれかであることが好ましい。
【0075】
前記有機安定剤としては、スルホン酸類(R−SO2OH)、スルフィン酸類(R−SOOH)、ホスフィン酸類(R2POOH)、ホスホン酸類(R−OPO(OH)2)、カルボン酸類(R−COOH)、チオール類(R−SH)等のいずれかであることが好ましい。これらのなかでも、オレイン酸が特に好ましい。
【0076】
オレイン酸はコロイドの安定化において周知の界面活性剤であり、鉄系ナノ粒子の保護に好適である。オレイン酸は18炭素鎖を有し、その長さは〜20オングストローム(〜2nm)である。また、オレイン酸には脂肪族ではなく二重結合が1つ存在する。そして、オレイン酸の比較的長い鎖は粒子間の強い磁気相互作用を打ち消す重要な立体障害を与える。エルカ酸やリノール酸など類似の長鎖カルボン酸もオレイン酸同様に(たとえば、8〜22の間の炭素原子を有する長鎖有機酸を単独でまたは組み合わせて用いることができる)用いられてきが、オレイン酸は(オリーブ油など)容易に入手できる安価な天然資源であるので、特に好ましい。
【0077】
前記ホスフィンと有機安定剤との組合せ(トリオルガノホスフィン/酸等)は、粒子の成長及び安定化に対する優れた制御性を提供することができる。ジデシルエーテル及びジドデシルエーテルも用いることができるが、フェニルエーテルまたはn−オクチルエーテルはその低コスト及び高沸点のため溶媒として好適に用いられる。
【0078】
反応は必要なナノ粒子及び溶媒の沸点により80℃〜360℃の範囲の温度で行うことが好ましく、80℃〜240℃がより好ましい。温度がこの温度範囲より低いと粒子が成長しないことがある。温度がこの範囲より高いと粒子は制御されないで成長し、望ましくない副産物の生成が増加することがある。
【0079】
粒子サイズを大きくするため、種晶法を用いることが好ましい。その際、種晶の鉄粒子の酸化が懸念されるため、予め粒子を水素化処理することが好ましい。
【0080】
鉄ナノ粒子合成後に溶液から塩類を除くことは、ナノ粒子の分散安定性を向上させる意味から好ましい。脱塩にはアルコールを過剰に加え、軽凝集を起こし、自然沈降あるいは遠心沈降させ塩類を上澄みと共に除去する方法があるが、このような方法では凝集が生じやすいため、限外濾過法を採用することが好ましい。
【0081】
(窒化処理)
窒化処理に先立ち、鉄ナノ粒子の酸化が懸念される場合には、水素あるいは水素と不活性ガス(H2、Ar、He等)との混合ガス気流中還元処理を行うことができる。この場合、温度が高すぎると粒子が融着してしまい望ましくなく、低いと十分に還元されない。よって温度としては200℃〜300℃が好ましく、より好ましくは250℃〜300℃である。
【0082】
鉄ナノ粒子を窒素含有ガス気流中で加熱することでFe162相を得ることができる。
窒化ガスについては,窒素ガス,窒素+水素の混合ガス,アンモニアガス等が使用できるが,アンモニアガスが使用に便宜である。
NH3雰囲気中での窒化処理は、アンモニア(NH3)気流中あるいはアンモニアガスを含んだ混合ガス気流中(例えばアルゴン、水素、窒素のいずれか一つ以上のガスを含んだ、アンモニアガスとの混合ガス)で行うのが良く、しかも100〜250℃の比較的低温度域で行うのが望ましい。窒化処理温度が高くなると、Fe162相が得られ難くなる。また逆に低過ぎるとFe162相生成の進行が遅くなる傾向にある。尚、これらのガスは高純度(5N以上)もしくは酸素量が数ppm以下であることが望ましい。
100〜250℃の温度範囲で0.5〜48時間の範囲が工業的に好ましく、処理時間は粒径にも依存するが、0.5〜24時間で処理することが好ましい。
【0083】
このような窒化処理にあたり、得られる磁性粉末中の鉄に対する窒素の含有量が1.0〜20原子%となるように、窒化処理の条件を選択することが望ましい。上記窒素の量が少なすぎると、Fe162の生成量が少ないため、保磁力向上の効果が少なくなる。また上記窒素の量が多すぎると、Fe4NやFe3N相などが形成されやすくなり、保磁力がむしろ低下し、さらに飽和磁化の過度な低下を引き起こしやすい。
【0084】
(酸化皮膜)
酸化皮膜を形成するには酸素濃度1〜5%の不活性ガス(N2、Ar、He、Ne等)の雰囲気下で0〜100℃の温度で1〜10時間処理することにより前述の厚みの酸化皮膜を形成することができる。
【0085】
希土類元素を被着するには、通常は、アルカリまたは酸の水溶液中に出発原料を分散させ、これに希土類元素の塩を溶解させ、中和反応などにより、Fe162を主に含む粒子に希土類元素を含む水酸化物や水和物を沈殿析出させるようにすればよい。
【0086】
また、シリコンやアルミニウムさらに必要によりホウ素やリンなどの元素で構成された化合物を溶解させ、これにFe162を主に含む粒子を浸漬して、Fe162を主に含む粒子に対して、シリコンやアルミニウムなどを被着させるようにしてもよい。これらの被着処理を効率良く行うため、還元剤、pH緩衝剤、粒径制御剤などの添加剤を混入させてもよい。
これらの被着処理として、希土類元素とシリコン、アルミニウムなどを同時にあるいは交互に被着させるようにしてもよい。
【0087】
3)その他の成分
本発明における磁性層には、必要に応じて添加剤を加えることができる。添加剤としては、研磨剤、潤滑剤、分散剤・分散助剤、防黴剤、帯電防止剤、酸化防止剤、溶剤、カーボンブラックなどを挙げることができる。
これら添加剤としては、例えば、二硫化モリブデン、二硫化タングステン、グラファイト、窒化ホウ素、フッ化黒鉛、シリコーンオイル、極性基を持つシリコーン、脂肪酸変性シリコーン、フッ素含有シリコーン、フッ素含有アルコール、フッ素含有エステル、ポリオレフィン、ポリグリコール、ポリフェニルエーテル、フェニルホスホン酸、ベンジルホスホン酸基、フェネチルホスホン酸、α−メチルベンジルホスホン酸、1−メチル−1−フェネチルホスホン酸、ジフェニルメチルホスホン酸、ビフェニルホスホン酸、ベンジルフェニルホスホン酸、α−クミルホスホン酸、トルイルホスホン酸、キシリルホスホン酸、エチルフェニルホスホン酸、クメニルホスホン酸、プロピルフェニルホスホン酸、ブチルフェニルホスホン酸、ヘプチルフェニルホスホン酸、オクチルフェニルホスホン酸、ノニルフェニルホスホン酸等の芳香族環含有有機ホスホン酸及びそのアルカリ金属塩、オクチルホスホン酸、2−エチルヘキシルホスホン酸、イソオクチルホスホン酸、イソノニルホスホン酸、イソデシルホスホン酸、イソウンデシルホスホン酸、イソドデシルホスホン酸、イソヘキサデシルホスホン酸、イソオクタデシルホスホン酸、イソエイコシルホスホン酸等のアルキルホスホン酸及びそのアルカリ金属塩、リン酸フェニル、リン酸ベンジル、リン酸フェネチル、リン酸α−メチルベンジル、リン酸1−メチル−1−フェネチル、リン酸ジフェニルメチル、リン酸ビフェニル、リン酸ベンジルフェニル、リン酸α−クミル、リン酸トルイル、リン酸キシリル、リン酸エチルフェニル、リン酸クメニル、リン酸プロピルフェニル、リン酸ブチルフェニル、リン酸ヘプチルフェニル、リン酸オクチルフェニル、リン酸ノニルフェニル等の芳香族リン酸エステル及びそのアルカリ金属塩、リン酸オクチル、リン酸2−エチルヘキシル、リン酸イソオクチル、リン酸イソノニル、リン酸イソデシル、リン酸イソウンデシル、リン酸イソドデシル、リン酸イソヘキサデシル、リン酸イソオクタデシル、リン酸イソエイコシル等のリン酸アルキルエステル及びそのアルカリ金属塩、アルキルスルホン酸エステル及びそのアルカリ金属塩、フッ素含有アルキル硫酸エステル及びそのアルカリ金属塩、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、ステアリン酸ブチル、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、エライジン酸、エルカ酸等の炭素数10〜24の不飽和結合を含んでも分岐していてもよい一塩基性脂肪酸及びこれらの金属塩、またはステアリン酸ブチル、ステアリン酸オクチル、ステアリン酸アミル、ステアリン酸イソオクチル、ミリスチン酸オクチル、ラウリル酸ブチル、ステアリン酸ブトキシエチル、アンヒドロソルビタンモノステアレート、アンヒドロソルビタンジステアレート、アンヒドロソルビタントリステアレート等の炭素数10〜24の不飽和結合を含んでも分岐していてもよい一塩基性脂肪酸と炭素数2〜22の不飽和結合を含んでも分岐していてもよい1〜6価アルコール、炭素数12〜22の不飽和結合を含んでも分岐していてもよいアルコキシアルコールまたはアルキレンオキサイド重合物のモノアルキルエーテルのいずれか一つとからなるモノ脂肪酸エステル、ジ脂肪酸エステルまたは多価脂肪酸エステル、炭素数2〜22の脂肪酸アミド、炭素数8〜22の脂肪族アミンなどが使用できる。また、上記炭化水素基以外にもニトロ基及びF、Cl、Br、CF3、CCl3、CBr3等の含ハロゲン炭化水素等炭化水素基以外の基が置換したアルキル基、アリール基、アラルキル基を持つものでもよい。
【0088】
また、アルキレンオキサイド系、グリセリン系、グリシドール系、アルキルフエノールエチレンオキサイド付加体等のノニオン界面活性剤、環状アミン、エステルアミド、第四級アンモニウム塩類、ヒダントイン誘導体、複素環類、ホスホニウムまたはスルホニウム類等のカチオン系界面活性剤、カルボン酸、スルホン酸、硫酸エステル基等の酸性基を含むアニオン界面活性剤、アミノ酸類、アミノスルホン酸類、アミノアルコールの硫酸またはリン酸エステル類、アルキルベタイン型等の両性界面活性剤等も使用できる。これらの界面活性剤については、「界面活性剤便覧」(産業図書株式会社発行)に詳細に記載されている。
【0089】
上記分散剤、潤滑剤等は必ずしも純粋ではなく主成分以外に異性体、未反応物、副反応物、分解物、酸化物等の不純分が含まれても構わない。これらの不純分は30重量%以下が好ましく、さらに好ましくは10重量%以下である。
これらの添加物の具体例としては、例えば、日本油脂社製:NAA−102、ヒマシ油硬化脂肪酸、NAA−42、カチオンSA、ナイミーンL−201、ノニオンE−208、アノンBF、アノンLG、竹本油脂社製:FAL−205、FAL−123、新日本理化社製:エヌジエルブOL、信越化学社製:TA−3、ライオンアーマー社製:アーマイドP、ライオン社製:デュオミンTDO、日清製油社製:BA−41G、三洋化成社製:プロフアン2012E、ニューポールPE61、イオネットMS−400等が挙げられる。
【0090】
本発明の磁性層で用いられる有機溶剤は、公知のものが使用できる。有機溶剤は、任意の比率でアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノン、イソホロン、テトラヒドロフラン、等のケトン類、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、イソブチルアルコール、イソプロピルアルコール、メチルシクロヘキサノールなどのアルコール類、酢酸メチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸イソプロピル、乳酸エチル、酢酸グリコール等のエステル類、グリコールジメチルエーテル、グリコールモノエチルエーテル、ジオキサンなどのグリコールエーテル系、ベンゼン、トルエン、キシレン、クレゾール、クロルベンゼンなどの芳香族炭化水素類、メチレンクロライド、エチレンクロライド、四塩化炭素、クロロホルム、エチレンクロルヒドリン、ジクロルベンゼン等の塩素化炭化水素類、N,N−ジメチルホルムアミド、ヘキサン等を使用することができる。
【0091】
これら有機溶媒は必ずしも100%純粋ではなく、主成分以外に異性体、未反応物、副反応物、分解物、酸化物、水分等の不純分が含まれてもかまわない。これらの不純分は30%以下が好ましく、さらに好ましくは10%以下である。本発明で用いる有機溶媒は磁性層と非磁性層でその種類は同じであることが好ましい。その添加量は変えてもかまわない。非磁性層に表面張力の高い溶媒(シクロヘキサノン、ジオキサンなど)を用い塗布の安定性を上げる、具体的には上層溶剤組成の算術平均値が非磁性層溶剤組成の算術平均値を下回らないことが肝要である。分散性を向上させるためにはある程度極性が強い方が好ましく、溶剤組成の内、誘電率が15以上の溶剤が50%以上含まれることが好ましい。また、溶解パラメータは8〜11であることが好ましい。
【0092】
本発明の磁性層で用いられるこれらの分散剤、潤滑剤、界面活性剤は磁性層及び後述する非磁性層でその種類、量を必要に応じ使い分けることができる。例えば、無論ここに示した例のみに限られるものではないが、分散剤は極性基で吸着もしくは結合する性質を有しており、磁性層においては主に強磁性粉末の表面に、また後述する非磁性層においては主に非磁性粉末の表面に前記の極性基で吸着もしくは結合し、一度吸着した有機リン化合物は金属あるいは金属化合物等の表面から脱着しがたいと推察される。したがって、本発明の強磁性粉末表面あるいは後述する非磁性粉末表面は、アルキル基、芳香族基等で被覆されたような状態になるので、強磁性粉末あるいは非磁性粉末の結合剤樹脂成分に対する親和性が向上し、さらに強磁性粉末あるいは非磁性粉末の分散安定性も改善される。また、潤滑剤としては遊離の状態で存在するため非磁性層、磁性層で融点の異なる脂肪酸を用い表面へのにじみ出しを制御する、沸点や極性の異なるエステル類を用い表面へのにじみ出しを制御する、界面活性剤量を調節することで塗布の安定性を向上させる、潤滑剤の添加量を非磁性層で多くして潤滑効果を向上させるなどが考えられる。また本発明で用いられる添加剤のすべてまたはその一部は、磁性層あるいは非磁性層用塗布液の製造時のいずれの工程で添加してもよい。例えば、混練工程前に強磁性粉末と混合する場合、強磁性粉末と結合剤と溶剤による混練工程で添加する場合、分散工程で添加する場合、分散後に添加する場合、塗布直前に添加する場合などがある。
【0093】
II.非磁性層
本発明の磁気記録媒体は、非磁性支持体と磁性層との間に、非磁性粉末を結合剤(2)に分散させた少なくとも一層の非磁性層を有していてもよい。
結合剤(2)としては、上記の結合剤(1)と同じく、重量平均分子量500以下の短鎖ジオールと有機ジイソシアネートを用いて得られたポリウレタン樹脂を含み、該短鎖ジオールが脂環族多環式構造又はスピロ構造を有するジオールであり、該脂環族多環式構造、好ましくは有橋炭化水素構造及び該スピロ構造の濃度がウレタン基濃度に対して1.0〜2.0の比率で存在することが好ましい。
非磁性層に使用する非磁性粉末は、無機物質でも有機物質でもよい。また、非磁性層には非磁性粉末と共に、必要に応じてカーボンブラックを混合してもよい。
【0094】
非磁性層には、非磁性層が実質的に非磁性である範囲で磁性粉末を使用してもよいが、非磁性粉末を用いることが好ましい。
非磁性層に使用できる非磁性粉末は、無機物質でも有機物質でもよい。また、カーボンブラック等も使用できる。無機物質としては、例えば金属、金属酸化物、金属炭酸塩、金属硫酸塩、金属窒化物、金属炭化物、金属硫化物などが挙げられる。
【0095】
具体的には二酸化チタン等のチタン酸化物、酸化セリウム、酸化スズ、酸化タングステン、ZnO、ZrO2、SiO2、Cr23、α化率90〜100%のα−アルミナ、β−アルミナ、γ−アルミナ、α−酸化鉄、ゲータイト、コランダム、窒化珪素、チタンカーバイト、酸化マグネシウム、窒化ホウ素、2硫化モリブデン、酸化銅、MgCO3、CaCO3、BaCO3、SrCO3、BaSO4、炭化珪素、炭化チタンなどが単独又は2種類以上を組み合わせて使用される。好ましいのは、α−酸化鉄、酸化チタンである。
【0096】
非磁性粉末の形状は、針状、球状、多面体状、板状のいずれでもあってもよい。
非磁性粉末の結晶子サイズは、4nm〜1μmが好ましく、40〜100nmがさらに好ましい。結晶子サイズが4nm〜1μmの範囲であれば、分散が困難になることもなく、また好適な表面粗さを有するため好ましい。
これら非磁性粉末の平均粒径は、5nm〜2μmが好ましいが、必要に応じて平均粒径の異なる非磁性粉末を組み合わせたり、単独の非磁性粉末でも粒径分布を広くしたりして同様の効果をもたせることもできる。とりわけ好ましい非磁性粉末の平均粒径は、10〜200nmである。5nm〜2μmの範囲であれば、分散も良好で、かつ好適な表面粗さを有するため好ましい。
【0097】
非磁性粉末の比表面積は、好ましくは1〜100m2/gであり、より好ましくは5〜70m2/gであり、さらに好ましくは10〜65m2/gである。比表面積が1〜100m2/gの範囲内にあれば、好適な表面粗さを有し、かつ、所望の結合剤量で分散できるため好ましい。
ジブチルフタレート(DBP)を用いた吸油量は、好ましくは5〜100ml/100g、より好ましくは10〜80ml/100g、さらに好ましくは20〜60ml/100gである。
比重は好ましくは1〜12、より好ましくは3〜6である。タップ密度は好ましくは0.05〜2g/ml、より好ましくは0.2〜1.5g/mlである。タップ密度が0.05〜2g/mlの範囲であれば、飛散する粒子が少なく操作が容易であり、また装置にも固着しにくくなる傾向がある。
【0098】
非磁性粉末のpHは2〜11であることが好ましいが、pHは6〜9の間が特に好ましい。pHが2〜11の範囲にあれば、高温、高湿下又は脂肪酸の遊離により摩擦係数が大きくなることはない。
非磁性粉末の含水率は、好ましくは0.1〜5重量%、より好ましくは0.2〜3重量%、さらに好ましくは0.3〜1.5重量%である。含水量が0.1〜5重量%の範囲であれば、分散も良好で、分散後の塗料粘度も安定するため好ましい。
強熱減量は、20重量%以下であることが好ましく、強熱減量が小さいものが好ましい。
【0099】
また、非磁性粉末が無機粉末である場合には、モース硬度は4〜10のものが好ましい。モース硬度が4〜10の範囲であれば耐久性を確保することができる。非磁性粉末のステアリン酸吸着量は、1〜20μmol/m2であり、さらに好ましくは2〜15μmol/m2である。
非磁性粉末の25℃での水への湿潤熱は、20〜60μJ/cm2(200〜600erg/cm2)の範囲にあることが好ましい。また、この湿潤熱の範囲にある溶媒を使用することができる。
100〜400℃での表面の水分子の量は1〜10個/100Åが適当である。水中での等電点のpHは、3〜9の間にあることが好ましい。
【0100】
これらの非磁性粉末の表面にはAl23、SiO2、TiO2、ZrO2、SnO2、Sb23、ZnOで表面処理することが好ましい。特に分散性に好ましいのはAl23、SiO2、TiO2、ZrO2であるが、さらに好ましいのはAl23、SiO2、ZrO2である。これらは組み合わせて使用してもよいし、単独で用いることもできる。また、目的に応じて共沈させた表面処理層を用いてもよいし、先ずアルミナで処理した後にその表層をシリカで処理する方法、またはその逆の方法を採ることもできる。また、表面処理層は目的に応じて多孔質層にしても構わないが、均質で密である方が一般には好ましい。
【0101】
本発明の非磁性層に用いられる非磁性粉末の具体的な例としては、例えば、昭和電工製ナノタイト、住友化学製HIT−100、ZA−G1、戸田工業社製DPN−250、DPN−250BX、DPN−245、DPN−270BX、DPB−550BX、DPN−550RX、石原産業製酸化チタンTTO−51B、TTO−55A、TTO−55B、TTO−55C、TTO−55S、TTO−55D、SN−100、MJ−7、α−酸化鉄E270、E271、E300、チタン工業製STT−4D、STT−30D、STT−30、STT−65C、テイカ製MT−100S、MT−100T、MT−150W、MT−500B、T−600B、T−100F、T−500HDなどが挙げられる。堺化学製FINEX−25、BF−1、BF−10、BF−20、ST−M、同和鉱業製DEFIC−Y、DEFIC−R、日本アエロジル製AS2BM、TiO2P25、宇部興産製100A、500A、チタン工業製Y−LOP及びそれを焼成したものが挙げられる。特に好ましい非磁性粉末は二酸化チタンとα−酸化鉄である。
【0102】
非磁性層には非磁性粉末と共に、カーボンブラックを混合し表面電気抵抗を下げ、光透過率を小さくすると共に、所望のμビッカース硬度を得ることができる。非磁性層のμビッカース硬度は、通常25〜60kg/mm2、好ましくはヘッド当りを調整するために、30〜50kg/mm2であり、薄膜硬度計(日本電気製 HMA−400)を用いて、稜角80度、先端半径0.1μmのダイヤモンド製三角錐針を圧子先端に用いて測定することができる。光透過率は一般に波長900nm程度の赤外線の吸収が3%以下、たとえばVHS用磁気テープでは0.8%以下であることが規格化されている。このためにはゴム用ファーネス、ゴム用サーマル、カラー用ブラック、アセチレンブラック等を用いることができる。
【0103】
本発明の非磁性層に用いられるカーボンブラックの比表面積は100〜500m2/g、好ましくは150〜400m2/g、DBP吸油量は20〜400ml/100g、好ましくは30〜200ml/100gである。カーボンブラックの粒子径は5〜80nm、好ましく10〜50nm、さらに好ましくは10〜40nmである。カーボンブラックのpHは2〜10、含水率は0.1〜10%、タップ密度は0.1〜1g/mlが好ましい。
【0104】
本発明の非磁性層に用いることができるカーボンブラックの具体的な例としては、キャボット社製BLACKPEARLS 2000、1300、1000、900、800、880、700、VULCAN XC−72、三菱化成工業社製#3050B、#3150B、#3250B、#3750B、#3950B、#950、#650B、#970B、#850B、MA−600、コロンビアカーボン社製CONDUCTEX SC、RAVEN8800、8000、7000、5750、5250、3500、2100、2000、1800、1500、1255、1250、アクゾー社製ケッチェンブラックECなどが挙げられる。
【0105】
また、カーボンブラックを分散剤などで表面処理したり、樹脂でグラフト化して使用しても、表面の一部をグラファイト化したものを使用してもかまわない。また、カーボンブラックを塗料に添加する前にあらかじめ結合剤で分散してもかまわない。これらのカーボンブラックは上記無機質粉末に対して50重量%を越えない範囲、非磁性層総重量の40%を越えない範囲で使用できる。これらのカーボンブラックは単独、または組み合せで使用することができる。本発明の非磁性層で使用できるカーボンブラックは例えば「カーボンブラック便覧」カーボンブラック協会編、を参考にすることができる。
【0106】
また非磁性層には目的に応じて有機質粉末を添加することもできる。このような有機質粉末としては、例えば、アクリルスチレン系樹脂粉末、ベンゾグアナミン樹脂粉末、メラミン系樹脂粉末、フタロシアニン系顔料が挙げられるが、ポリオレフィン系樹脂粉末、ポリエステル系樹脂粉末、ポリアミド系樹脂粉末、ポリイミド系樹脂粉末、ポリフッ化エチレン樹脂も使用することができる。その製法は、特開昭62−18564号公報、特開昭60−255827号公報に記されているようなものが使用できる。
【0107】
非磁性層の結合剤樹脂、潤滑剤、分散剤、添加剤、溶剤、分散方法その他は、磁性層のそれが適用できる。特に、結合剤樹脂量、種類、添加剤、分散剤の添加量、種類に関しては磁性層に関する公知技術が適用できる。
【0108】
III.非磁性支持体
本発明に用いることのできる非磁性支持体としては、二軸延伸を行ったポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリアミド、ポリアミドイミド、芳香族ポリアミド等の公知のものが挙げられる。これらの中でもポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリアミドが好ましい。
これらの支持体はあらかじめコロナ放電、プラズマ処理、易接着処理、熱処理などを行ってもよい。また、本発明に用いることのできる非磁性支持体の表面粗さはカットオフ値0.25mmにおいて中心平均粗さRa3〜10nmが好ましい。
【0109】
IV.平滑化層
本発明の磁気記録媒体には、平滑化層を設けてもよい。平滑化層とは、非磁性支持体表面の突起を埋めるための層であり、非磁性支持体上に磁性層を設けた磁気記録媒体の場合は非磁性支持体と磁性層の間、非磁性支持体上に非磁性層及び磁性層をこの順に設けた磁気記録媒体の場合には非磁性支持体と非磁性層の間に設けられる。
平滑化層は、放射線硬化型化合物を放射線照射により硬化させて形成することができる。放射線硬化型化合物とは、紫外線または電子線などの放射線を照射すると重合または架橋を開始し、高分子化して硬化する性質を有する化合物をいう。
【0110】
V.バックコート層
一般に、コンピュータデータ記録用の磁気テープは、ビデオテープ、オーディオテープに比較して繰り返し走行性が強く要求される。このような高い保存安定性を維持させるために、非磁性支持体の非磁性層及び磁性層が設けられた面とは反対の面にバックコート層を設けることもできる。バックコート層用塗料は、研磨剤、帯電防止剤などの粒子成分と結合剤とを有機溶媒に分散させる。粒状成分として各種の無機顔料やカーボンブラックを使用することができる。また、結合剤としては、例えば、ニトロセルロース、フェノキシ樹脂、塩化ビニル系樹脂、ポリウレタン等の樹脂を単独またはこれらを混合して使用することができる。
【0111】
VI.層構成
本発明で用いられる磁気記録媒体の構成において、非磁性支持体の乾燥後の好ましい厚さは、3〜80μmである。また、非磁性支持体と非磁性層または磁性層の間に下塗層を設けた場合、下塗層の乾燥後の厚さは0.01〜0.8μm、好ましくは0.02〜0.6μmである。また、非磁性支持体の非磁性層及び磁性層が設けられた面とは反対側の面に設けられたバックコート層の乾燥後の厚さは、0.1〜1.0μm、好ましくは0.2〜0.8μmである。
【0112】
<<磁気記録媒体>>
当該磁気記録媒体としては、ビデオテープ、コンピュータテープ等の磁気テープ;フロッピー(登録商標)ディスク、ハードディスク等の磁気ディスク;等が挙げられる。
【0113】
支持体上に主にFe162粒子からなる層を塗布し磁性層とすることができる。支持体上に塗布する方法としては、エアードクターコート、ブレードコート、ロッドコート、押出しコート、エアナイフコート、スクイズコート、含浸コート、リバースロールコート、トランスファーロールコート、グラビヤコート、キスコート、キャストコート、スプレイコート、スピンコート等が利用できる。
【0114】
形成される磁性層の厚さは、適用される磁気記録媒体の種類にもよるが、4nm〜1μmであることが好ましく、4nm〜100nmであることがより好ましい。
【0115】
本発明の磁気記録媒体は、磁性層のほかに必要に応じて他の層を有していてもよい。例えば、ディスクの場合、磁性層の反対側の面にさらに磁性層や非磁性層を設けることが好ましい。テープの場合、磁性層の反対側の不溶性支持体面上にバック層を設けることが好ましい。
【0116】
また、磁性層上に非常に薄い保護膜を形成することで、耐磨耗性を改善し、さらにその保護膜上に潤滑剤を塗布して滑り性を高めることによって、十分な信頼性を有する磁気記録媒体とすることができる。
【0117】
保護膜の材質としては、シリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア、酸化コバルト、酸化ニッケルなどの酸化物;窒化チタン、窒化ケイ素、窒化ホウ素などの窒化物;炭化ケイ素、炭化クロム、炭化ホウ素等の炭化物;グラファイト、無定型カーボンなどの炭素(カーボン);等があげられるが、特に好ましくは、一般に、ダイヤモンドライクカーボンと呼ばれる硬質の非晶質のカーボンである。
【0118】
カーボンからなるカーボン保護膜は、非常に薄い膜厚で十分な耐磨耗性を有し、摺動部材に焼き付きを生じ難いため、保護膜の材料としては好適である。
カーボン保護膜の形成方法として、ハードディスクにおいては、スパッタリング法が一般的であるが、ビデオテープ等の連続成膜を行う必要のある製品ではより成膜速度の高いプラズマCVDを用いる方法が多数提案されている。従って、これらの方法を適用することが好ましい。
中でもプラズマインジェクションCVD(PI−CVD)法は成膜速度が非常に高く、得られるカーボン保護膜も硬質かつピンホールが少ない良質な保護膜が得られると報告されている(例えば、特開昭61−130487号公報、特開昭63−279426号公報、特開平3−113824号公報等)。
【0119】
このカーボン保護膜は、ビッカース硬度で1000kg/mm2以上であることが好ましく、2000kg/mm2以上であることがより好ましい。また、その結晶構造はアモルファス構造であり、かつ非導電性であることが好ましい。
そして、カーボン保護膜として、ダイヤモンド状炭素(ダイヤモンドライクカーボン)膜を使用した場合、この構造はラマン光分光分析によって確認することができる。すなわち、ダイヤモンド状炭素膜を測定した場合には、1520〜1560cm-1にピークが検出されることによって確認することができる。炭素膜の構造がダイヤモンド状構造からずれてくるとラマン光分光分析により検出されるピークが上記範囲からずれるとともに、保護膜としての硬度も低下する。
【0120】
このカーボン保護膜を形成するための炭素原料としては、メタン、エタン、プロパン、ブタン等のアルカン;エチレン、プロピレン等のアルケン;アセチレン等のアルキン;をはじめとした炭素含有化合物を用いることが好ましい。また、必要に応じてアルゴンなどのキャリアガスや膜質改善のための水素や窒素などの添加ガスを加えることができる。
【0121】
カーボン保護膜の膜厚が厚いと、電磁変換特性の悪化や磁性層に対する密着性の低下が生じ、膜厚が薄いと耐磨耗性が不足する。従って、膜厚は、2.5〜20nmとすることが好ましく、5〜10nmとすることがより好ましい。
また、この保護膜と基板となる磁性層の密着性を改善するために、あらかじめ磁性層表面を不活性ガスでエッチングしたり、酸素等の反応性ガスプラズマに曝して表面改質する事が好ましい。
【0122】
磁性層は電磁変換特性を改善するため重層構成としたり、磁性層の下に公知の非磁性下地層や中間層を有していてもよい。走行耐久性及び耐食性を改善するため、既述のように、上記磁性層もしくは保護膜上に潤滑剤や防錆剤を付与することが好ましい。添加する潤滑剤としては公知の炭化水素系潤滑剤、フッ素系潤滑剤、極圧添加剤などが使用できる。
【0123】
炭化水素系潤滑剤としては、ステアリン酸、オレイン酸等のカルボン酸類;ステアリン酸ブチル等のエステル類;オクタデシルスルホン酸等のスルホン酸類;リン酸モノオクタデシル等のリン酸エステル類;ステアリルアルコール、オレイルアルコール等のアルコール類;ステアリン酸アミド等のカルボン酸アミド類;ステアリルアミン等のアミン類;などが挙げられる。
【0124】
フッ素系潤滑剤としては、上記炭化水素系潤滑剤のアルキル基の一部または全部をフルオロアルキル基もしくはパーフルオロポリエーテル基で置換した潤滑剤が挙げられる。
パーフルオロポリエーテル基としては、パーフルオロメチレンオキシド重合体、パーフルオロエチレンオキシド重合体、パーフルオロ−n−プロピレンオキシド重合体(CF2CF2CF2O)n、パーフルオロイソプロピレンオキシド重合体(CF(CF3)CF2O)nまたはこれらの共重合体等である。
【0125】
また、炭化水素系潤滑剤のアルキル基の末端や分子内に水酸基、エステル基、カルボキシル基などの極性官能基を有する化合物が、摩擦力を低減する効果が高く好適である。
さらに、この分子量は、500〜5,000、好ましくは1,000〜3,000である。500未満では揮発性が高く、また潤滑性が低いなることがある。また、5,000を超えると、粘度が高くなるため、スライダーとディスクが吸着しやすく、走行停止やヘッドクラッシュなどを発生しやすくなることがある。このパーフルオロポリエーテルは、具体例的には、アウジモンド社製のFOMBLIN、デュポン社製のKRYTOXなどの商品名で市販されている。
【0126】
極圧添加剤としては、リン酸トリラウリル等のリン酸エステル類;亜リン酸トリラウリル等の亜リン酸エステル類;トリチオ亜リン酸トリラウリル等のチオ亜リン酸エステルやチオリン酸エステル類;二硫化ジベンジル等の硫黄系極圧剤;などが挙げられる。
【0127】
前記潤滑剤は単独もしくは複数を併用して使用される。これらの潤滑剤を磁性層もしくは保護膜上に付与する方法としては、潤滑剤を有機溶剤に溶解し、ワイヤーバー法、グラビア法、スピンコート法、ディップコート法等で塗布するか、真空蒸着法によって付着させればよい。
【0128】
防錆剤としては、ベンゾトリアゾール、ベンゾイミダゾール、プリン、ピリミジン等の窒素含有複素環類及びこれらの母核にアルキル側鎖等を導入した誘導体;ベンゾチアゾール、2−メルカプトンベンゾチアゾール、テトラザインデン環化合物、チオウラシル化合物等の窒素及び硫黄含有複素環類及びこの誘導体;等が挙げられる。
【0129】
既述のように、磁気記録媒体が磁気テープ等の場合は、非磁性支持体の磁性層が形成されていない面にバックコート層(バッキング層)が設けられていてもよい。バックコート層は、非磁性支持体の磁性層が形成されていない面に、研磨材、帯電防止剤などの粒状成分と結合剤とを公知の有機溶剤に分散したバックコート層形成塗料を塗布して設けられる層である。
粒状成分として各種の無機顔料やカーボンブラックを使用することができ、また結合剤としてはニトロセルロース、フェノキシ樹脂、塩化ビニル系樹脂、ポリウレタン等の樹脂を単独またはこれらを混合して使用することができる。
また、合金粒子含有液の塗布面及びバックコート層が形成される面には、公知の接着剤層が設けられていてもよい。
【0130】
以上のようにして製造される磁気記録媒体は、表面の中心線平均粗さが、カットオフ値0.25mmにおいて、好ましくは0.1〜5nm、より好ましくは1〜4nmの範囲とする。このように、極めて優れた平滑性を有する表面とすることが、高密度記録用の磁気記録媒体として好ましいからである。
このような表面を得る方法として、磁性層を形成した後にカレンダー処理を施す方法が挙げられる。また、バーニッシュ処理を施してもよい。
【0131】
得られた磁気記録媒体は、適宜、打ち抜き機で打ち抜いたり、裁断機などを使用して所望の大きさに裁断して使用することができる。
【実施例】
【0132】
以下に本発明を実施例によりさらに具体的に説明する。なお、ここに示す成分、割合、操作、順序等は本発明の精神から逸脱しない範囲で変更し得るものであり、下記の実施例に制限されるべきものではない。また、実施例中の「部」は、特に示さない限り重量部を示す。
【0133】
<測定方法>
(1)塗膜平滑性
Digital Instrument社製NanoscopeIIを用い、トンネル電流10nA、バイアス電流400mVで30μm×30μmの範囲を走査して10nm以上の突起数を求めた比較例1を10としたときの相対値で示した。
(2)上層厚みdの変動の平均値△d
テープ断面を透過型電子顕微鏡(TEM)にて撮影(倍率20,000倍)し、下式より求めた。
Δd=(Δd1+Δd2+… +Δdm)/m (m=10〜20)
比較例1を10としたときの相対値で示した。
(3)電磁変換特性
DDS3ドライブにて4.7MHzの単一周波数信号を最適記録電流で記録し、その再生出力を測定した。比較例1の再生出力を0dBとした相対値で示した。
【0134】
(4)耐sus汚れ
テ−プを40℃80%環境下で磁性層面をDDS3ドライブに使用されているsus製ガイドポールに接触させて荷重100g(T1)をかけ、14mm/secになるように張力(T2)をかけ引っ張りながら繰り返し5,000パスまで摺動を行ったあとのテープダメージを以下のランクで評価した。
優秀:ややキズが見られるが、キズのない部分の方が多い。
良好:キズがない部分よりもキズがある部分の方が多い。
不良:磁性層が完全に剥離している。
【0135】
(5)保存性
60℃90%RH環境下に60日間保存したテープを40℃80%RH環境下で磁性層面をDDS3ドライブに使用されているガイドポールに接触させて荷重50g(T1)をかけ、14mm/secになるように張力(T2)をかけ引っ張りT2/T1よりガイドポールに対する磁性面の摩擦係数を求めた。
測定は繰り返し500パスまで行い、1パス目の摩擦係数を1としたときの500パス目の摩擦係数を求めた。
測定後のガイドポールの汚れを微分干渉光学顕微鏡で観察し以下のランクで評価した。
優秀:汚れが全くみられない。
良好:汚れが見られるが、汚れのない部分の方が多い。
不良:汚れがない部分よりも汚れがある部分の方が多い。
【0136】
<ポリウレタン合成例>
表1に示した組成のポリオール及び鎖延長剤を、還流式冷却器及び撹拌機を具備し、予め窒素置換した容器に、シクロヘキサノン30%の溶液となるように窒素気流下60℃で溶解した。次いで触媒として、ジブチルスズジラウレート60ppmを加え更に15分間溶解した。更に表1に示した有機ジイソシアネートを加え90℃にて6時間加熱反応し、ポリウレタン樹脂溶液A〜Kを得た。
得られたポリウレタンの重量平均分子量を表1に示す。
なおポリウレタンの重量平均分子量はDMF溶媒を用いて標準ポリスチレン換算で求めた。
【0137】
【表1】

【0138】
なお、表1において使用した鎖延長剤及び有機ジイソシアネート並びにポリオール組成は表2及び表3に記すとおりである。
【0139】
【表2】

【0140】
【化3】

【0141】
【化4】

【0142】
【化5】

【0143】
【表3】

【0144】
以下の実施例に使用した磁性粉体1は以下のようにして調製した。
高純度N2ガス中で下記の操作を行った。
三シュウ酸三アンモニウム鉄(Fe(NH43(C243)(和光純薬製)0.35gをH2O(脱酸素処理済み)24mlに溶解した金属塩水溶液に、エーロゾルOTを5mlでデカン80mlに溶解したアルカン溶液を添加、混合して逆ミセル溶液(I)を調製した。
NaBH4(和光純薬製)0.57gをH2O(脱酸素処理済み)12mlに溶解した還元剤水溶液に、エーロゾルOT(和光純薬製)を2.5mlでデカン(和光純薬製)40mlに溶解したアルカン溶液を添加、混合して逆ミセル溶液(II)を調製した。
逆ミセル溶液(I)を22℃の温度でオムニミキサー(ヤマト科学製)で高速撹拌しながら、この逆ミセル溶液(I)の中に逆ミセル溶液(II)を瞬時に添加した。添加終了5分後に、マグネチックスターラー攪拌に変更して、40℃に昇温した後、120分間熟成した。室温に冷却後、オレイン酸(和光純薬製)2mlを添加、混合した。
ミセルを破壊するために、H2O(脱酸素処理済み)200mlとメタノール200mlとの混合液を添加して水相と油相とに分離した。油相側に金属ナノ粒子が分散した状態が得られた。油相側をH2O600ml+メタノール200mlで5回洗浄した。その後、メタノールを1300ml添加して合金ナノ粒子にフロキュレーションを起こさせて沈降させた。上澄み液を除去して、ヘプタン(和光純薬製)20mlを添加して再分散した後、メタノール100ml添加で沈降させた。これを2回繰り返して、最後にヘプタン(和光純薬製)5mlを添加して、粒径13nmの鉄ナノ粒子分散液を得た。
当該鉄ナノ粒子分散物を真空脱気し、分散助剤(オレイン酸、オレイルアミン)中で分散された鉄ナノ粒子分散物を得た。
その後、H2気流中280℃1hの還元処理を行ない、NH3100cc/min、Ar50cc/min混合ガス流中で、130℃×24時間窒化処理を行った。
その後、室温に戻し、O21%、N299%の雰囲気下で25℃5時間保持して除酸化処理を行った。
形状が粒状であり、粒子径が13nm、飽和磁化が90emu/g(90A・m2/kg)の窒化鉄系磁性粉末が得られた。
【0145】
非磁性支持体上に単層の磁性層を有する磁気記録媒体の実施例を示す。
<実施例1>
(磁性塗料の調液)
以下の配合処方において、「部」の表示は「重量部」を示す。
粒状強磁性粉末(Hc211kA/m、粒子径13nm、σs90emu/g(90A・m2/kg))100部をオープンニーダーで10分間粉砕し、次いでポリウレタン樹脂溶液A20部(固形分)、シクロヘキサノン60部で60分間混練し、次いで
研磨剤(Al23、粒子サイズ0.3μm) 2部
カーボンブラック(粒子サイズ 40μm) 2部
メチルエチルケトン/トルエン=1/1 200部
を加えてサンドミルで120分間分散した。これに
ブチルステアレート 2部
ステアリン酸 1部
メチルエチルケトン 50部
を加え、さらに20分間撹拌混合したあと、1μmの平均孔径を有するフィルターを用いて濾過し、磁性塗料を調製した。
【0146】
(磁気テープの作製)
次いで接着層としてスルホン酸含有ポリエステル樹脂を乾燥後の厚さが0.1μmになるようにコイルバーを用いて厚さ7μmのポリエチレンテレフタレート支持体の表面に塗布した。
次いで得られた磁性塗料を乾燥後の厚さが1.0μmになるように、リバースロールを用いて塗布した。磁性塗料が塗布された非磁性支持体を、磁性塗料が未乾燥の状態で5,000ガウスのCo磁石と4,000ガウスのソレノイド磁石で磁場配向を行ない、塗布したものを金属ロール−金属ロール−金属ロール−金属ロール−金属ロール−金属ロール−金属ロールの組み合せによるカレンダー処理を(速度100m/min、線圧300kg/cm、温度90℃)で行なった後3.8mm幅にスリットし、磁気テープを作製した。
【0147】
<実施例2〜8及び比較例1〜3>
ポリウレタン樹脂Aを表4に示したものに変更した以外は実施例1と同様の方法で実施例2〜8、及び比較例1〜3の各磁気テープを作製した。
【0148】
実施例及び比較例に使用したポリウレタンの種類、並びに作製した磁気テープの評価結果を表4に示す。
【0149】
非磁性支持体上に1層の非磁性層を有し、更にその上に1層の磁性層を有する磁気記録媒体の実施例を示す。
<実施例9>
上層用磁性塗料としては、実施例1と同様の磁性塗料を用いた。
下層用非磁性塗料の調液
α−Fe23(平均粒径0.15μm、SBET52m2/g、表面処理Al23、SiO2、pH6.5〜8.0)85部をオープンニーダーで10分間粉砕し、次いで塩化ビニル/酢酸ビニル/グリシジルメタクリレート=86/9/5の共重合体にヒドロキシエチルスルフォネートナトリウム塩を付加した化合物(SO3Na=6×10-5eq/g、エポキシ=10-3eq/g、Mw 30,000)を7.5部、ポリウレタン樹脂A10部(固形分)及びシクロヘキサノン60部と60分間混練し、次いで
メチルエチルケトン/シクロヘキサノン=6/4 200部
を加えてサンドミルで120分間分散した。これに
ブチルステアレート 2部
ステアリン酸 1部
メチルエチルケトン 50部
を加え、さらに20分間撹拌混合したあと、1μmの平均孔径を有するフィルターを用いて濾過し、下層用塗料を調製した。
【0150】
次いで接着層としてスルホン酸含有ポリエステル樹脂を乾燥後の厚さが0.1μmになるようにコイルバーを用いて厚さ7μのポリエチレンテレフタレート支持体の表面に塗布した。
次いで得られた下層用塗料を乾燥膜厚が1.5μmになるように塗布し、さらにその塗布直後に上層磁性塗料を乾燥後の厚さが0.1μmになるように、リバースロールを用いて同時重層塗布した。磁性塗料塗布された非磁性支持体を、磁性塗料が未乾燥の状態で5,000ガウスのCo磁石と4,000ガウスのソレノイド磁石で磁場配向を行ない、塗布したものを金属ロール−金属ロール−金属ロール−金属ロール−金属ロール−金属ロール−金属ロールの組み合せによるカレンダー処理を(速度100m/min、線圧300kg/cm、温度90℃)で行なった。この後、他方の支持体面に厚み0.3μmのバック層を下記バック層処方の塗布液を用いて塗布した。3.8mm幅にスリットしてデジタル記録用テ−プを作製した。
【0151】
バック層処方
混練物(1)
カーボンブラック BP−800 キャボット製 100部
ニトロセルロース (旭化成(株)製RS1/2) 30部
ポリウレタン樹脂 A 100部
分散剤 オレイン酸銅 5部
銅フタロシアニン 5部
沈降性硫酸バリウム 5部
メチルエチルケトン 500部
トルエン 500部
上記をロールミルで予備混練した後、
混練物(2)
カーボンブラック 100部
(SBET:8.5m2/g、平均粒径:270nm、DBP吸油量:36ml/100g、pH:10)
ポリウレタン樹脂A 100部
メチルエチルケトン 300部
トルエン 300部
を混練した。
【0152】
上記混練物(1)と同(2)とをサンドグラインダーで分散し、分散完成後、下記を加えて、バック層用塗布液とした。
ポリエステル樹脂(東洋紡製バイロン300) 5部
ポリイソシアナート(日本ポリウレタン社製コロネートL) 5部
【0153】
(比較例4)
上層磁性層及び下層非磁性層のポリウレタン樹脂を比較例1に示したものに変更した以外は実施例9と同様の方法で磁気テープを作製した。
【0154】
【表4】

【0155】
表4の結果から明らかなように、本発明の磁気テープは表面粗さが小さく、重層構成における界面変動が少なく、500パス後の摩擦係数が小さく、ガイド棒汚れも良好であり、且つ再生出力も大きい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁性支持体上に、強磁性微粉末を結合剤中に分散した少なくとも1層の磁性層を有する磁気記録媒体であって、
該強磁性微粉末が粒状又は回転楕円状の粒子形状を有し、粒子径が5〜50nm、飽和磁化が50〜150emu/gの窒化鉄系磁性粉末であり、
該結合剤はポリオール、重量平均分子量500以下の短鎖ジオール及び有機ポリイソシアネートを用いて得られたポリウレタン樹脂を含み、該短鎖ジオールが脂環族多環式構造及び/又はスピロ構造を有するジオールであり、該脂環族多環式構造及び該スピロ構造の濃度がウレタン基濃度に対して1.0〜2.0の比率で存在することを特徴とする
磁気記録媒体。
【請求項2】
非磁性支持体上に、少なくとも1層の非磁性微粉末を結合剤(1)中に分散した少なくとも1層の非磁性層を有し、該非磁性層の上に強磁性微粉末を結合剤(2)中に分散した少なくとも1層の磁性層を有する磁気記録媒体において、
該強磁性微粉末が粒状又は回転楕円状の粒子形状を有し、粒子径が5〜50nm、飽和磁化が50〜150emu/gの窒化鉄系磁性粉末であり、
少なくとも結合剤(2)はポリオール、重量平均分子量500以下の短鎖ジオール及び有機ポリイソシアネートを用いて得られたポリウレタン樹脂を含み、該短鎖ジオールが脂環族多環式構造及び/又はスピロ構造を有するジオールであり、該脂環族多環式構造及び該スピロ構造の濃度がウレタン基濃度に対して1.0〜2.0の比率で存在することを特徴とする
磁気記録媒体。
【請求項3】
該脂環族多環式構造又は該スピロ構造が下記の(1)〜(3)よりなる群から選ばれた少なくとも1種の構造を含む請求項1又は2に記載の磁気記録媒体。
【化1】


【公開番号】特開2007−265487(P2007−265487A)
【公開日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−87099(P2006−87099)
【出願日】平成18年3月28日(2006.3.28)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】