説明

磁気記録媒体

【課題】 電磁変換特性の優れた垂直磁気記録媒体を提供することを目的とする。
【解決手段】 非磁性支持体上に軟磁性粉末と結合剤とを含む軟磁性層と、強磁性粉末と結合剤とを含む磁性層と、をこの順に設けた垂直磁気記録媒体において、前記非磁性支持体と前記軟磁性層との間に非磁性粉末と結合剤とを含む非磁性層を設けたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、垂直磁気記録媒体に関し、更に詳しくは、高密度記録に優れた塗布型の磁気記録媒体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
磁気記録は、一般に記録媒体の面内方向の磁化を用いる方式が主流になっている。しかし、この面内方向の磁化を用いる方式では高記録密度化を図ろうとすると、記録媒体内の減磁界が増加するために一定以上の高記録密度を得ることは困難であった。
【0003】
このような記録密度の限界を越えるために、近年記録媒体の表面と垂直な方向の磁化を用いる垂直磁気記録方式が提案されている。この垂直磁気記録方式では高記録密度において記録媒体中の減磁界が少なくなる特性があり、本質的に高記録密度に適した記録方式といえる。特に最近では、塗布型のコストメリットと耐久性等の実用性の点から塗布膜型の垂直磁気記録媒体が注目されている。
【0004】
一般的に、媒体表面からの漏れ磁束を効率的に発生させるために非磁性支持体と垂直配向させた磁性層の間に高透磁率、低保磁力の軟磁性層を形成することは、例えば特許文献1〜3で開示されているように公知である。
【0005】
例えば、特許文献1では、非磁性支持体上に、磁性粉末および結合剤を含む長手方向に測定した保磁力が15.9kA/m(200Oe)以下の低保磁力層と、磁性粉末および結合剤を含む信号記録用の磁性層とが、この順に形成されてなり、上記の磁性層は、磁性粉末として、鉄または鉄を主体とする遷移元素と窒素を必須の構成元素とした、5〜50nmの平均粒子径および1〜2の平均軸比を有する本質的に球状ないし楕円状の窒化鉄系磁性粉末を含み、かつ、実質的に垂直配向されており、磁性層面に垂直方向に測定した保磁力が79.6〜318.4kA/m(1000〜4000Oe)、垂直方向に測定した角型が反磁界補正後で0.6〜0.9の範囲にあり、磁性層厚さが300nm以下であることを特徴とする磁気記録媒体が開示されている。
【0006】
特許文献2では、非磁性支持体上に軟磁性層と該軟磁性層に隣接して強磁性層を最上層になるように形成した磁気記録媒体において、該強磁性層は結合剤樹脂と強磁性六方晶フェライトを主体としたものであって該強磁性層の厚さをXμm、磁性層表面の最大高さSRと最大深さSRとの和(P−V)をYμmとしたとき0.1≦X+Y≦0.4であることを特徴とする磁気記録媒体が開示されている。
【0007】
特許文献3では、非磁性支持体上に低抗磁力層及びその上に隣接して設けられている準垂直配向磁性層の少なくとも2層からなる磁性層が形成されてなる磁気記録媒体において、該低抗磁力層は、平均粒径が200Å以下であって、キュリー温度が180℃以下で且つその抗磁力が1.59kA/m(20Oe)以下である磁性粉末と結合剤樹脂とを主体とし、該準垂直配向磁性層は、強磁性粉末と結合剤樹脂とを主体とし、該強磁性粉末は磁化容易軸が前記非磁性支持体の面に対して準垂直方向に磁場配向された強磁性金属粉末であり、かつ、その準垂直配向磁性層の厚さは0.5μm以下であることを特徴とする磁気記録媒体が開示されている。
【0008】
【特許文献1】特開2004−335019号公報
【特許文献2】特開平7−78332号公報
【特許文献3】特開平5−325174号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、これらの従来の技術では、最上層の磁性層の磁性粉末や、磁性層の厚さと粗さ形状との関係に特徴を持たせて、電磁変換特性を向上させようとするものであったり(特許文献1、2)、低抗磁力層(軟磁性層)の軟磁性粉末に特徴を持たせて、垂直配向時の下層の磁性粉末の配向、凝集による上層磁性層の表面性の劣化を防止するものではあるものの、その効果は十分とはいえなかった。
【0010】
本発明は、上記従来技術の欠点を解決し、電磁変換特性の優れた垂直磁気記録媒体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、塗布型の垂直記録媒体の構成について鋭意検討した結果、塗布型の垂直記録媒体を下記の構成につれば、電磁変換特性の良好な垂直磁気記録媒体が得られることを見出し、本発明をなすに至った。
【0012】
すなわち、非磁性支持体上に軟磁性粉末と結合剤とを含む軟磁性層と、強磁性粉末と結合剤とを含む磁性層と、をこの順に設けた垂直磁気記録媒体において、前記非磁性支持体と前記軟磁性層との間に非磁性粉末と結合剤とを含む非磁性層を設けたことを特徴とする。
【0013】
前記軟磁性層に含まれる非磁性粉末の割合が、軟磁性粉末に対して5重量部以下であることを特徴とする。
【0014】
前記軟磁性層に含まれる粉末が、実質的に軟磁性粉末のみであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
非磁性支持体上に軟磁性粉末と結合剤とを含む軟磁性層と、強磁性粉末と結合剤とを含む磁性層と、をこの順に設けた垂直磁気記録媒体において、前記非磁性支持体と前記軟磁性層との間に非磁性粉末と結合剤とを含む非磁性層を設けることにより、従来、軟磁性層に配合されていた軟磁性粉末および結合剤以外の材料成分を軟磁性層から排除して、非磁性層に含ませることができるので、軟磁性における磁化の乱れを防止できる。また、非磁性層を設けることにより、非磁性支持体の表面突起を隠蔽することができる。これらの効果により、電磁変換特性の良好な垂直磁気記録媒体が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明の垂直磁気記録媒体は、非磁性支持体一方の主面上に、すくなくとも非磁性層、軟磁性層、磁性層をこの順に塗工、乾燥して形成することにより得られる。磁気ディスクとして使用する場合には、他方の主面上にも同様の層を形成することができる。磁気テープとして使用する場合には、他方の主面上にカーボンブラックを含むバック層を形成することができる。
【0017】
上記各層の形成に当たっては、グラビア塗布、ロール塗布、ブレード塗布、エクストルージョン塗布等の従来公知の塗工方法により行うことができる。非磁性層の上に軟磁性層を形成する方法としては、従来公知の方法により、非磁性層を塗工、乾燥して形成し、その上に軟磁性層を形成するウエットオンドライ方法で形成してもよいし、重層エクストルージョンダイを用いて、非磁性塗料と軟磁性塗料をほぼ同時に非磁性支持体上に吐出として非磁性層、軟磁性層を形成するウエットオンウエット方法で形成してもよい。軟磁性層の上に磁性層を形成する方法としては、重層エクストルージョンダイを用いて、軟磁性塗料と磁性塗料をほぼ同時に非磁性層上に吐出として軟磁性層、磁性層を形成するウエットオンウエット方法で形成してもよいし、軟磁性層を塗工、乾燥、平滑化処理した上で、ウエットオンドライ方法により塗工してもよい。しかし、軟磁性層を塗工、乾燥、平滑化処理した上で、ウエットオンドライ方法により塗工すると、磁性層と軟磁性層の界面が平滑になり、厚さ変動のない磁性層が得られるためにノイズが低下して電磁変換特性が向上するので、より好ましい。
【0018】
以下、本発明の構成要素について詳述する。
【0019】
<非磁性層>
非磁性層の厚さは、0.2μm以上1.5μm未満が好ましく、0.9μm以下がより好ましい。この範囲が好ましいのは、0.2μm未満では、非磁性支持体の表面突起を隠蔽する効果、耐久性の向上効果が小さくなり、また1.5μm以上になると、磁気テープの全厚が厚くなりすぎ、テープ1巻当りの記録容量が小さくなるためである。
【0020】
非磁性層に使用する非磁性粉末には、酸化チタン、酸化鉄、酸化アルミニウムなどがあるが、酸化鉄単独または酸化鉄と酸化アルミニウムの混合系が好ましく使用される。非磁性粉末の粒子形状は、球状、板状、針状、紡錘状のいずれでもよいが、針状、紡錘状の場合は、通常、長軸長50〜200nm、短軸長5〜100nmのものが好ましい。また、粒状の場合は粒径5〜200nm、より好ましくは5〜100nmのものが使用される。
【0021】
さらに、導電性改良の目的で、粒子径0.01〜0.1μmのカーボンブラックを添加することが好ましい。下塗層を平滑にかつ厚みムラを少なく塗布するには、上記の非磁性粉末およびカーボンブラックは粒度分布がシャープなものを用いるのがとくに好ましい。カーボンブラックの代わりに、平均粒子径10〜100nmの板状ITO(インジウム、スズ複合酸化物)粉末を用いてもよい。
【0022】
磁気記録媒体の温度・湿度膨張係数、弾性率、磁性層の平滑性制御のために、平均粒子径10〜100nmの非磁性板状粉末を添加しても良い。非磁性板状粉末としては、セリウムなどの希土類元素、ジルコニウム、珪素、チタン、マンガン、鉄なとの元素の酸化物または複合酸化物が用いられる。
【0023】
<軟磁性層>
高透磁率の微粒子(軟磁性粉末)を結合剤中に分散し塗工し、軟磁性層を形成することができる。軟磁性層の比透磁率は、記録磁化の安定化という観点から、20以上が好ましくは50以上がより好ましい。オーバーライト不良の観点から、軟磁性層の保磁力は11.9kA/m(150Oe)以下が好ましく、7.96kA/m(100Oe)以下がより好ましく、3.98kA/m(50Oe)以下がさらに好ましい。軟磁性層の厚さは0.001〜1μmの範囲が好ましく、0.003〜0.5μmの範囲がより好ましく、0.005〜0.2μmの範囲がさらに好ましい。この範囲が好ましいのは、0.001μm未満であるとキーパー層としての効果が発揮されにくくなる場合があり、1μmを超えるとオーバーライト不良の原因となる場合があるからである。
【0024】
軟磁性粉末としては、上記の条件を満たすものであれば特に制限はなく、マグネタイト、γ−Fe、Mn−Znフェライト、Ni−Znフェライトなどのフェライト系軟磁性粉末や、Fe、Ni、Coなどや、これらの合金の軟磁性粉末が好ましく用いられる。
【0025】
これらの軟磁性粉末は針状、粒状、板状、いずれでもかまわないが、Hを小さくするためには粒状が好ましい。これらの粉末には所定の原子以外にAl、Si、S,Sc、Ti、V,Cr、Cu,Y,Mo,Rh,Pd,Ag、Sn、Sb、Te、Ba、Ta、W、Re、Au、Hg、Pb、Bi、La、Ce、Pr、Nd、P,Co,Mn,Zn、Ni、Sr、B、Ge、Nbなどの原子を含んでも構わない。
【0026】
これらの軟磁性粉末の比表面積はSBETで10〜100m/gが好ましく、40〜70m/gがより好ましい。10〜100m/gの範囲を外れると良好な表面性が得られにくく好ましくない。平均粒子径は0.01〜1μm、かさ密度は0.4以上、1.5以下、吸着水分は0.1%以上、2%以下、DBP吸油量は5〜100ml/100g、PHは3以上10以下が好ましい。
【0027】
また、軟磁性粉末の粒子表面をAl、SiO、TiO、ZrO,SnO、Sb,ZnOで表面処理することが好ましい。特に、分散性に好ましいのはAlO3、SiO、TiO、ZrO、であるが、更に好ましいのはAl、SiO、ZrOである。
【0028】
軟磁性層に用いられる結合剤としては、磁性層や非磁性層に用いられる結合剤と同様の結合剤を用いることができる。結合剤の含有量は、軟磁性粉末100質量部に対して、7〜50質量部が好ましく、10〜35質量部がより好ましい。
【0029】
軟磁性層には、強磁性層に導電性及び表面潤滑性を付与するために、必要に応じてカーボンブラック及び固形潤滑剤などの非磁性粉末を含ませてもよい。このようなカーボンブラック及び固形潤滑剤としては、磁性層に含ませるものと同様のものを使用することができる。また、軟磁性層は、カーボンブラックや固形潤滑剤以外の酸化鉄、酸化アルミニウムなどの非磁性粉末を含有してもよい。このような非磁性粉末を含有することにより、軟磁性層と磁性層との密着性を向上させることができる。
【0030】
軟磁性層に含ませる非磁性粉末は、軟磁性粉末に対して、5重量部以下が好ましい。この範囲が好ましいのは5重量部を超えると、軟磁性層中の磁化の乱れによりノイズが増加する場合があるからである。磁性層の電磁変換特性の向上の観点からは、軟磁性層には軟磁性粉末と結合剤以外に、上記のような非磁性粉末を含ませないことが好ましい。
【0031】
軟磁性層には、潤滑剤を含ませてもよい、潤滑剤としては、磁性層や非磁性層に用いられる潤滑剤と同様の潤滑剤を用いることができる。
【0032】
軟磁性層の形成に当たっては、軟磁性塗料をウェットオンドライまたは、ウェットオンウェット方法により非磁性層上に塗工する。塗工後、乾燥の前に、長手方向に磁場配向してもよい。磁場配向は従来公知の方法により行うことができ、同極の永久磁石を対向させた反発磁場や、ソレノイドコイルを用いることができる。配向磁場強度は、使用する軟磁性粉末の保磁力の3倍以上の外部磁場を掛けることが好ましい。
【0033】
軟磁性層の上に磁性層を形成する方法としては、重層エクストルージョンダイを用いて、軟磁性塗料と磁性塗料をほぼ同時に非磁性層上に吐出として軟磁性層、磁性層を形成するウエットオンウエット方法で形成してもよいし、軟磁性層を塗工、乾燥、平滑化処理した上で、ウエットオンドライ方法により塗工してもよい。しかし、軟磁性層を塗工、乾燥、平滑化処理した上で、ウエットオンドライ方法により塗工すると、磁性層と軟磁性層の界面が平滑になり、厚さ変動のない磁性層が得られるためにノイズが低下して電磁変換特性が向上するので、より好ましい。平滑化処理としては、カレンダ加工処理が好ましい。
【0034】
カレンダ加工ロールとしてはエポキシ、ポリエステル、ナイロン、ポリイミド、ポリアミド、ポリイミドアミド等の耐熱性のあるプラスチックロール(カーボン、金属やその他の無機化合物を練り込んで有るものでもよい)と金属ロールの組合わせ(3ないし7段の組合せ)、または金属ロールどうしで処理することもできる。処理温度は、好ましくは70℃以上、さらに好ましくは80℃以上であり、その線圧力は好ましくは196kN/m(200kg/cm)以上、さらに好ましくは294kN/m(300kg/cm)以上であり、その速度は20〜700m/分の範囲である。カレンダ加工処理を行うことにより、非磁性層、軟磁性層の空隙率を制御し、磁性層を形成する際の磁性塗料中に含まれる溶媒の下塗層への染み込みを制御することができ、均一で平滑な磁性層を形成することができる。
【0035】
<磁性層>
磁性層の厚さは、300nm以下、とくに10〜300nm が好ましく、20〜300nmがより好ましく、30〜250nmが最も好ましい。垂直記録の場合、長手記録の場合に比べ、磁性層厚さに起因する記録減磁の影響は少ないが、磁化容易軸は実質的に垂直方向でも、面内にもある程度磁化容易軸は分散しているため、300nmを超えると記録減磁の影響を受けやすくなる。10nm未満では均一な磁性層が得られにくく、また再生出力が小さくなる。
【0036】
本発明においては、上述したような特異な形状と相まって、磁性粉末の平均粒子サイズが5〜50nmと極めて微粒子であるため、このような薄層領域で垂直配向しても、良好な磁性層の表面平滑性が得られる。
【0037】
磁気テープとした場合、磁性層の垂直方向の保磁力は79.6〜318.4kA/m(1000〜4000Oe)であり、好ましくは119.4〜318.4kA/m(1500〜4000Oe) である。79.6kA/m未満となると、垂直記録であっても、磁化容易軸の磁性層内での分散に起因する反磁界による記録減磁の影響を受けやすくなり、また318.4kA/m を超えると、磁気ヘッドによる記録が困難になる。
【0038】
また、この磁性層の垂直方向の角形(B/B)としては、反磁界補正後で0.6〜0.9であり、とくに好ましくは0.65〜0.9であり、実質的に垂直方向に磁化容易軸を有している。
【0039】
さらに、垂直方向の飽和磁束密度と厚さの積は、0.001〜0.1μTm、好ましくは0.0015〜0.08μTmである。0.001μTm 未満では、再生出力が小さく、0.1μTmを超えると、垂直記録であっても、目的とする短波長域で高い出力を得にくくなる傾向がある。
【0040】
磁性層の平均面粗さRは1.0〜3.2nmであって、磁性層の凹凸の中心値をP0、最大の凸量をP 1 としたとき、(P1−P0)が10〜30nmで、第20 番目の凸量をP20としたとき、(P1−P20)が5nm以下であれば、磁気ヘッドとのコンタクトが良くなり、高い再生出力が得られる。
【0041】
磁性層には、導電性と表面潤滑性の向上を目的に、従来公知のカーボンブラックを含ませるのが好ましい。このカーボンブラックとしては、アセチレンブラック、ファーネスブラック、サーマルブラックなどを使用できる。平均粒子径が5〜200nmのものが好ましく、10〜100nmのものがより好ましい。5nm未満となると、カーボンブラックの分散が難しくなり、200nmを超えると、多量のカーボンブラックを含ませることが必要になり、いずれの場合も表面が粗くなり、出力低下の原因になりやすい。
【0042】
カーボンブラックの含有量は、磁性粉末に対して、0.2〜5重量% が好ましく、0.5〜4重量% がより好ましい。0.2重量% 未満では、効果が小さくなり、5重量%を超えると、磁性層の表面が粗くなりやすい。
【0043】
磁性層には、強磁性粉末として、窒化鉄系磁性粉末、Co系磁性粉末、またはバリウムフェライト系磁性粉末を含ませることが好ましい。これらの磁性粉末は結晶磁気異方性を有するため、配向時に磁化容易軸が垂直方向に揃うだけで磁性粉末の回転運動が少ないことから、磁性層の表面平滑性が劣化せず、高密度記録に適した優れた表面平滑性を有する磁性層が得られる。また、これらの強性粉末及は高保磁力及び高飽和磁化を有するため高密度記録に適している。
【0044】
上記強磁性粉末は、5〜50nmの粒径(板径)及び1〜2の軸比(板状比)を有することが好ましい。特に、窒化鉄系磁性粉末、Co系磁性粉末を強磁性粉末として用いると、微粒子で異方性の小さい粒状であるため、強磁性粉末の含率を高くすることができるとともに、配向処理時の強磁性粉末の回転運動による強磁性層の表面性の低下を抑えることができる。
【0045】
上記磁性層は前記強磁性粉末を40〜90重量%含有することが好ましい。上記強磁性粉末は粒状の形状を有するため、高い磁性粉末含率を有する強磁性層を形成することができる。
【0046】
<結合剤>
磁性層、軟磁性層、非磁性層に用いられる結合剤としては、塩化ビニル樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体樹脂、塩化ビニル−ビニルアルコール共重合体樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル−ビニルアルコール共重合体樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸共重合体樹脂、塩化ビニル−水酸基含有アルキルアクリレート共重合体樹脂、ニトロセルロースなどのセルロース系樹脂の中から選ばれる少なくとも1種と、ポリウレタン樹脂とを組み合わせたものなどが挙げられる。
【0047】
これらの樹脂の中でも、塩化ビニル−水酸基含有アルキルアクリレート共重合体樹脂とポリウレタン樹脂を併用するのが好ましい。
【0048】
ポリウレタン樹脂には、ポリエステルポリウレタン樹脂、ポリエーテルポリウレタン樹脂、ポリエーテルポリエステルポリウレタン樹脂、ポリカーボネートポリウレタン樹脂、ポリエステルポリカーボネートポリウレタン樹脂などがある。
【0049】
このような結合剤は、官能基として、−COOH、−SOM、−OSOM、−P=O(OM)、−O−P=O(OM)〔これらの式中、Mは水素原子、アルカリ金属塩基またはアミン塩を示す〕、−OH、−NR、−N〔これらの式中、R、R、R、R、Rは水素または炭化水素基を示す〕、エポキシ基などを有しているものが、好ましく用いられる。
【0050】
このような結合剤を使用すると、磁性粉末などの分散性が向上するためである。2種以上の樹脂を併用する場合には、官能基の極性を一致させるのが好ましく、中でも、−SOM基同士の組み合わせが好ましい。
【0051】
これらの結合剤は、磁性粉末や軟磁性粉末、非磁性粉末100重量部に対して、通常は、7〜50重量部、好ましくは10〜35重量部の範囲で使用するのがよい。とくに、塩化ビニル系樹脂とポリウレタン樹脂を併用する場合は、塩化ビニル系樹脂5〜30重量部とポリウレタン樹脂2〜20重量部とを併用するのが好ましい。
【0052】
また、これらの結合剤とともに、結合剤中に含まれる官能基などと結合させて架橋する熱硬化性の架橋剤を併用するのが好ましい。
【0053】
このような架橋剤としては、トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートなどや、これらのイソシアネート類とトリメチロールプロパンなどの水酸基を複数個有するものとの反応生成物、上記イソシアネート類の縮合生成物などの各種のポリイソシアネートが好ましく用いられる。
【0054】
これらの架橋剤は、結合剤100重量部に対して、通常1〜50重量部の割合で用いられる。より好ましくは15〜35重量部である。
【0055】
また、上記のような熱硬化性の架橋剤の代わりに、放射線硬化性樹脂を用いてもよい。放射線硬化性樹脂としては、アクリルモノマー、アクリルオリゴマーが用いられる。放射線硬化性樹脂は、分子内に2個以上の二重結合を有し、且つ二重結合1個当りの重量平均分子量が50〜300であることが好ましい。下塗層に放射線硬化性樹脂を用いる場合は、下塗層に含まれる放射線硬化性樹脂の割合は、結合剤と放射線硬化性樹脂の合計量に対して5〜30wt%であることが好ましい。
【0056】
<有機溶剤>
本発明において、磁性塗料、軟磁性塗料、非磁性塗料の製造に使用される有機溶剤としては、たとえば、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、メチルイソブチルケトンなどのケトン系溶剤、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどのエーテル系溶剤、酢酸エチル、酢酸ブチルなどの酢酸エステル系溶剤、エチレングリコール、プロピレングリコール、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルなどのグリコール系溶剤、などが挙げられる。これらの有機溶剤は、単独でまたは混合して使用され、またトルエンなどと混合して使用される。
【0057】
本発明において、磁性塗料、軟磁性塗料、非磁性塗料の製造に使用される添加剤には、研磨剤、潤滑剤、分散剤が使用できる。
【0058】
<研磨剤他>
磁性層、非磁性層に含ませる研磨剤としては、α−アルミナ、β−アルミナ、炭化ケイ素、酸化クロム、酸化セリウム、α−酸化鉄、コランダム、人造ダイアモンド、窒化珪素、炭化珪素、チタンカーバイト、酸化チタン、二酸化珪素、窒化ホウ素など、主としてモース硬度6以上のものが単独または組み合わせて使用できる。これらの研磨剤の粒子サイズとしては、通常、平均粒子径で10〜200nmであるのが好ましい。
【0059】
また、磁性塗料、非磁性塗料には、必要により、導電性と表面潤滑性の向上を目的に、従来公知のカーボンブラックを添加してもよい。カーボンブラックには、アセチレンブラック、ファーネスブラック、サーマルブラックなどを使用できる。平均粒子径が10〜100nmのものが好ましい。この範囲が好ましいのは、平均粒子径が10nm未満になると、カーボンブラックの分散が難しく、100nmを超えると、多量のカーボンブラックを添加する必要があり、いずれも表面が粗くなり、出力低下の原因になるためである。また、必要により、平均粒子径の異なるカーボンブラックを2種以上用いてもよい。
【0060】
<潤滑剤>
磁性塗料、軟磁性塗料、非磁性塗料には、塗料中に含まれる全粉体に対して、0.5〜5重量%の脂肪酸、0.2〜3重量%の脂肪酸のエステル、0.5〜5.0重量%の脂肪酸アミドを含有させることが好ましい。上記範囲の脂肪酸の添加が好ましいのは、0.5重量%未満では、摩擦係数低減効果が小さく、5重量%を超えると、強靭性が失われるおそれがあるからである。
【0061】
上記範囲の脂肪酸のエステル添加が好ましいのは、0.2重量%未満では、摩擦係数低減効果が小さく、3重量%を超えると、磁性層への移入量が多すぎるため、テープとヘッドが貼り付くなどの副作用を生じるおそれがあるためである。上記の範囲の脂肪酸アミド添加が好ましいのは、0.5重量%未満ではヘッド/磁性層界面での直接接触が起こり焼き付き防止効果が小さく、5.0重量%を超えるとブリードアウトしてドロップアウトなどの欠陥が発生する恐れがあるからである。脂肪酸としては、炭素数10以上の脂肪酸を用いるのが好ましい。炭素数10以上の脂肪酸は、直鎖、分岐、シス・トランスなどの異性体のいずれでもよいが、潤滑性能にすぐれる直鎖型が好ましい。この脂肪酸には、ラウリン酸、ミリスチン酸、ステアリン酸、パルミチン酸、ベヘン酸、オレイン酸、リノール酸などがある。これらの中でも、ミリスチン酸、ステアリン酸、パルミチン酸などが好ましい。
【0062】
脂肪酸エステルとしては、前記脂肪酸のエステルを用いるのが好ましい。脂肪酸アミドとしては、パルミチン酸、ステアリン酸などの炭素数が10以上の脂肪酸アミドが使用可能である。
【0063】
<分散剤>
磁性粉末、軟磁性粉末、研磨材やカーボンブラックなどの添加剤を良好に分散させるために分散剤を使用することができる。このような分散剤としては、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、オレイン酸、エライジン酸、リノール酸、リノレン酸、ステアロール酸などの炭素数12〜18個の脂肪酸〔RCOOH(Rは炭素数11〜17個のアルキル基またはアルケニル基)〕、上記脂肪酸のアルカリ金属またはアルカリ土類金属からなる金属石けん、上記脂肪酸エステルのフッ素を含有した化合物、上記脂肪酸のアミド、ポリアルキレンオキサイドアルキルリン酸エステル、レシチン、トリアルキルポリオレフィンオキシ第四級アンモニウム塩(アルキルは炭素数1〜5個、オレフィンはエチレン、プロピレンなど)、硫酸塩、スルホン酸塩、りん酸塩、銅フタロシアニンなどの従来公知の各種の分散剤を、いずれも使用することができる。これらは、単独でも組み合わせて使用してもよい。分散剤は、いずれの層でも、結合剤樹脂100重量部に対し、通常0.5〜20重量部の範囲で添加される。
【0064】
本発明においては、上記した磁性粉末および結合剤とともに、有機溶剤や上記の添加剤成分などを使用して、前記方法で分散処理して磁性塗料を製造したのち、この磁性塗料を使用して、常法に準じて、非磁性支持体上に塗布し、乾燥して、磁性層を形成し、所要の処理工程を経ることにより、磁気記録媒体を製造する。
【0065】
ここで、磁性層の厚さは、10〜150nmの範囲が好ましく、20〜100nmの範囲がより好ましく、30〜70nmの範囲が最も好ましい。この範囲が好ましいのは、10nm未満では得られる出力が小さいのと、均一な磁性層を塗布するのが困難であり、150nmを超えると、短波長信号の分解能が悪くなる場合があるからである。短波長記録特性をさらに向上させるには、磁性層の厚さは20〜100nmであるのがより好ましく、30〜70nmが最も好ましい。
【0066】
本発明において、上記の磁性層は、下塗り層を介して形成するのが好ましい。また、この磁性層の上に、必要により、磁性層の保護などのため、トップコート層(最上層非磁性層)を設けてもよい。さらに、上記の磁性層は、磁気記録媒体の容量を大きくするために、非磁性支持体の両面側に形成してもよい。一方、非磁性支持体の片面にのみ磁性層を形成する場合は、通常は、その背面側にバックコート層を形成するのが好ましい。
【0067】
<非磁性支持体>
非磁性支持体の厚さは、用途によって異なるが、通常は、1.5〜11μmのものが使用される。非磁性支持体の厚さは、より好ましくは2〜7μmである。この範囲の厚さの非磁性支持体が使用されるのは、1.5μm未満となると、製膜が難しくなり、またテープ強度が小さくなるためであり、11μmを超えると、テープ全厚が厚くなり、テープ1巻あたりの記録容量が小さくなるためである。
【0068】
非磁性支持体の長手方向のヤング率としては、5.8GPa(590kg/mm)以上が好ましく、7.1GPa(720kg/mm)以上がより好ましい。非磁性支持体の長手方向のヤング率が5.8GPa以上がよいのは、長手方向のヤング率が5.8GPa未満では、テープ走行が不安定になるためである。
【0069】
ヘリキャルスキャンタイプでは、長手方向のヤング率(MD)/幅方向のヤング率(TD)は、0.6〜0.8の範囲が好ましく、0.65〜0.75の範囲がより好ましい。長手方向のヤング率/幅方向のヤング率が、上記範囲がよいのは、0.6未満または0.8を超えると、メカニズムは現在のところ不明であるが、磁気ヘッドのトラックの入り側から出側間の出力のばらつき(フラットネス)が大きくなるためである。このばらつきは、長手方向のヤング率/幅方向のヤング率が0.7付近で最小になる。
【0070】
また、リニアレコーディングタイプでは、長手方向のヤング率/幅方向のヤング率は、理由は明らかではないが、0.7〜1.3が好ましい。
【0071】
非磁性支持体の幅方向の温度膨張係数は、−10〜10×10−6、湿度膨張係数は、0〜10×10−6が好ましい。この範囲が好ましいのは、この範囲をはずれると、温度・湿度の変化によりオフトラックが生じエラーレートが大きくなるからである。
【0072】
以上のような特性を満足する非磁性支持体としては、たとえば、二軸延伸のポリエチレンテレフタレートフイルム、ポリエチレンナフタレートフイルム、芳香族ポリアミドフィルム、芳香族ポリイミドフィルムなどが挙げられる。
【0073】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。なお、実施例および比較例中の部は、重量部である。また、実施例および比較例中の平均粒子径は、数平均粒子径である。
【実施例1】
【0074】
<1.非磁性塗料成分>
(1.1)非磁性塗料成分1
針状酸化鉄 80部
カーボンブラック 17部
粒状アルミナ粉末 3部
塩化ビニル−ヒドロキシプロピルアクリレート共重合体 9部
(含有−SO3 Na基:0.7×10−4当量/g)
ポリエステルポリウレタン樹脂 7部
ガラス転移温度:40℃、含有−SONa基:1×10−4当量/g
フェニルホスホン酸 1部
トルエン 64部
シクロヘキサノン 60部
メチルエチルケトン 58部
(1.2)非磁性塗料成分2
ミリスチン酸 2.0部
ステアリン酸ブチル 1.5部
シクロヘキサノン 50部
トルエン 50部
(1.3)非磁性塗料成分3
ポリイソシアネート 7部
シクロヘキサノン 10部
トルエン 10部
<2.軟磁性塗料成分>
(2.1)軟磁性塗料成分1
マグネタイト 100部
塩化ビニル−ヒドロキシプロピルアクリレート共重合体 18部
ポリエステルポリウレタン樹脂 4.8部
フェニルホスホン酸 2.7部
トルエン 88部
シクロヘキサノン 82部
メチルエチルケトン 19部
(2.2)軟磁性塗料成分2
シクロヘキサノン 66部
トルエン 66部
(2.3)軟磁性塗料成分3
ステアリン酸ブチル 1.0部
ポリイソシアネート 3.6部
シクロヘキサノン 21部
トルエン 21部
<3.磁性塗料成分>
(3.1)混練工程成分
磁性粉末(Y−N−Fe) 100部
Y/Fe:5.3at%、
N/Fe:10.8at%
σs:135.2A・m2/kg
Hc:226.9kA/m
平均粒子径:20nm、軸比:1.1
塩化ビニル系共重合体 23.2部
日本ゼオン社製MR−555
ポリエステルポリウレタン樹脂 6.4部
含有−SONa基:1.0×10-4当量/g
フェニルホスホン酸 6部
トルエン 132部
シクロヘキサノン 124部
メチルエチルケトン 7.4部
(3.2)希釈工程成分
トルエン 175部
シクロヘキサノン 175部
(3.3)配合工程成分
ポリイソシアネート 4.6部
トルエン 6.5部
シクロヘキサノン 6.5部
上記の非磁性塗料成分において(1.1)非磁性塗料成分1を回分式ニーダで混練したのち、(1.2)非磁性塗料成分2を加えて攪拌の後サンドミルで滞留時間を60分として分散処理を行い、これに(1.3)非磁性塗料成分3を加え攪拌・濾過した後、非磁性塗料とした。
【0075】
これとは別に、上記の軟磁性塗料の成分において(2.1)軟磁性塗料成分1を予め高速混合しておき、その混合粉末を連続式2軸混練機で混練し、さらに(2.2)軟磁性塗料成分2を加え連続式2軸混練機で少なくとも2段階以上に分けて希釈を行い、サンドミルで滞留時間を45分として分散し、これに(2.3)軟磁性塗料成分3を加え攪拌・ろ過後、軟磁性塗料とした。
【0076】
さらに、これとは別に、上記の磁性塗料の成分において(3.1)の混練工程成分を予め高速混合しておき、その混合粉末を連続式2軸混練機で混練し、さらに(3.2)の希釈工程成分を加え連続式2軸混練機で少なくとも2段階以上に分けて希釈を行い、サンドミルで滞留時間を45分として分散し、これに(3.3)の配合工程成分を加え攪拌・ろ過後、磁性塗料とした。
【0077】
上記の非磁性塗料と軟磁性塗料を、乾燥、カレンダ後の厚さがそれぞれ0.9μm、0.2μmになるように、厚さ5μmのポリエチレンテレフタレート支持体上にエクストルージョン型コータを用いて非磁性層、軟磁性層の順に同時重層塗布を行った。乾燥後、金属ロールのみから構成される7段のカレンダーで処理温度100 ℃、線圧力196kN/m(200kg/cm)の条件で平滑化処理し、シートをコアに巻いた状態のまま60℃にて48時間エージングした。エージング後、上記の磁性塗料を乾燥後の厚さが0.05μmになるように軟磁性層上に逐次塗布し、磁性層がまだ湿潤状態にあるうちに磁場強度5KGの中を通過させて垂直配向処理を行い、乾燥させた。乾燥後、前記カレンダー処理を行い、磁気シートを得た。
【0078】
<4.バックコート層用塗料成分>
カーボンブラック(平均粒子径:25nm) 87部
カーボンブラック(平均粒子径:350nm) 10部
粒状アルミナ粉末(平均粒子径:80nm) 3部
ニトロセルロース 45部
ポリウレタン樹脂(−SO Na基含有) 30部
シクロヘキサノン 260部
トルエン 260部
メチルエチルケトン 525部
上記バックコート層用塗料成分をサンドミルで滞留時間45分として分散した後、ポリイソシアネート15部を加えてバックコート層用塗料を調整してろ過後、上記で作製した磁気シートの磁性層の反対面に、乾燥、カレンダ後の厚みが0.5μmとなるように塗布し、乾燥した。
【0079】
このようにして得られた磁気シートを金属ロールからなる7段カレンダで、処理温度100℃、線圧力200kg/cm(196kN/m)の条件で平滑化処理し、磁気シートをコアに巻いた状態で60℃にて48時間エージングし、実施例1のバック層付き評価用の磁気シートを得た。
【実施例2】
【0080】
非磁性塗料を非磁性支持体上に塗布乾燥させカレンダー処理を行った後で、軟磁性塗料を逐次塗布、カレンダー処理を行い、さらに、軟磁性層上に磁性塗料を逐次塗布したこと以外は、実施例1と同様にして実施例2のバック層付き評価用の磁気シートを得た。
【実施例3】
【0081】
非磁性塗料を非磁性支持体上に塗布乾燥させカレンダー処理を行った後で、エージングを行い、その後、軟磁性塗料と磁性塗料を非磁性層上に同時重層塗布したこと以外は、実施例1と同様にして実施例3のバック層付き評価用の磁気シートを得た。
【実施例4】
【0082】
非磁性塗料と軟磁性塗料と磁性塗料を非磁性支持体上に三層同時重層塗布したこと以外は、実施例1と同様にして実施例4のバック層付き評価用の磁気シートを得た。
【実施例5】
【0083】
(2.1)軟磁性塗料成分1にカーボンブラックを3部添加して作製したこと以外は、実施例1と同様にして実施例5のバック層付き評価用の磁気シートを得た。
【実施例6】
【0084】
(2.1)軟磁性塗料成分1にカーボンブラックを5部添加して作製したこと以外は、実施例1と同様にして実施例6のバック層付き評価用の磁気シートを得た。
【実施例7】
【0085】
(2.1)軟磁性塗料成分1にカーボンブラックを6部添加して作製したこと以外は、実施例1と同様にして実施例7のバック層付き評価用の磁気シートを得た。
【実施例8】
【0086】
磁性粉末として、バリウムフェライト磁性粉末(保磁力:144.1kA/m、飽和磁化:38.8Am2/kg、平均長軸径:22nm、板状比:1)を同量使用したこと以外は、実施例1と同様にして実施例8のバック層付き評価用の磁気シートを得た。
【実施例9】
【0087】
磁性粉末として、Co系磁性粉末(保磁力:127.0kA/m、飽和磁化:110.0Am2/kg、平均粒径:20nm、板状比:1.1)を同量使用したこと以外は、実施例1と同様にして実施例9のバック層付き評価用の磁気シートを得た。
【0088】
比較例
(比較例1)
非磁性層を設けないで作製したこと以外は、実施例1と同様にして比較例1のバック層付き評価用の磁気シートを得た。
(比較例2)
(2.1)軟磁性塗料成分1にカーボンブラックを3部添加して作製したこと以外は、比較例1と同様にして比較例2のバック層付き評価用の磁気シートを得た。
(比較例3)
(2.1)軟磁性塗料成分1にカーボンブラックを6部添加して作製したこと以外は、比較例1と同様にして比較例3のバック層付き評価用の磁気シートを得た。
【0089】
<磁性層の表面粗さ>
ZYGO社製の汎用三次元表面構造解析装置「NewView5000」で、走査型白色光干渉法により、Scan Lengthを5umで測定した。なお、測定視野は54.2um×72.2um
磁性層の中心線平均粗さはRとして求めた。
【0090】
<電磁変換特性>
電磁変換特性の評価には、電磁誘導型ヘッド(トラック幅:25μm、ギャップ長:0.23μm)とMRヘッド(ギャップ長:0.17μm)とを装着したドラムテスターを用いた。このドラムテスターの回転ドラムに、測定試料として約60cmの長さの磁気テープを巻きつけ、誘導型ヘッドで信号を記録し、MRヘッドで信号を再生した。この両ヘッドは回転ドラムに対し異なる場所に設置されており、両ヘッドを上下方向に操作することでトラッキングを合わせることができる。データ信号の出力及びノイズは、ファンクションジェネレータにより、短波長領域の再生出力の評価のため波長0.1μmの矩形波の信号を磁気テープに書き込み、MRヘッドで再生したときの出力をスペクトラムアナライザに読み込んで測定した。0.4μmのキャリア値を媒体出力Cとした。また0.4μmの矩形波を書き込んだときに、記録波長0.4μm以上に相当するスペクトルの成分から、出力及びシステムノイズを差し引いた値の積分値をノイズ値Nとして用いた。更に両者の比をとってC/Nとし、C、N、C/Nともに比較例1のテープの値を基準として、それとの相対値を求めた。
【0091】
<表面電気抵抗>
作製した磁気シートの長手方向から、幅12.65mm、長さ150mmの試料を準備し、二つの電極棒(断面が半径10mmの四分円)を試料の幅と等しい距離だけ離して置き,試料をその長さ方向が電極と直角になるように,かつ測定面が電極に接するように置いた。次に張力が5N/mmとなるように,試料の両端に荷重を加え,両電極間の電気抵抗(Ω/sq)を測定した。
【0092】
表1に評価結果を示した。
【0093】
【表1】

【0094】
表1から分るように、本発明に係る、実施例1〜9は非磁性層が0.9μmあるため、非磁性支持体の表面突起の影響を受けることがなく、その結果、磁性層のRaが小さく、出力(C)が大きいことがわかる。
【0095】
また、実施例1、2は、実施例3,4に比べ、磁性層を逐次塗布したことによる軟磁性層と磁性層の界面平滑化のため、ノイズが明らかに小さい。
【0096】
実施例1、5、6、7から軟磁性層中の非磁性粉末の含有量が少ないほど、ノイズが小さいことが明らかである。
【0097】
また、請求項を満たさない比較例1〜3はいずれも、非磁性層を有しないために、非磁性支持体の表面突起が影響して磁性層のRaが大きくなっている。その結果、スペーシングロスが大きくなって出力(C)が小さくなり、その結果C/Nが小さい。また、比較例1はカーボンブラックを含まないために、C/Nは比較的良好であるものの、電気抵抗が大きく、帯電による貼り付きや塵埃の付着などの問題が発生する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
非磁性支持体上に軟磁性粉末と結合剤とを含む軟磁性層と、強磁性粉末と結合剤とを含む磁性層と、をこの順に設けた垂直磁気記録媒体において、前記非磁性支持体と前記軟磁性層との間に非磁性粉末と結合剤とを含む非磁性層を設けたことを特徴とする垂直磁気記録媒体。
【請求項2】
前記軟磁性層に含まれる非磁性粉末の割合が、軟磁性粉末に対して5重量部以下であることを特徴とする請求項1に記載の垂直磁気記録媒体。
【請求項3】
前記軟磁性層に含まれる粉末が、実質的に軟磁性粉末のみであることを特徴とする請求項1に記載の垂直磁気記録媒体。
【請求項4】
前記磁性層が、軟磁性塗料を塗工、乾燥、平滑化して前記軟磁性層を形成した後で設けられたものであることを特徴とする請求項1ないし3に記載の垂直磁気記録媒体。

【公開番号】特開2010−27123(P2010−27123A)
【公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−185596(P2008−185596)
【出願日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【出願人】(000005810)日立マクセル株式会社 (2,366)
【Fターム(参考)】