説明

磁気記録媒体

【目的】 金属磁性粉を用いた塗布型の磁気記録媒体において、反転磁界分布(SFD)の点で優れたものとし、ひいては電磁変換特性に優れたものとする。
【構成】 鉄を主体とし、Alおよび/またはSiと希土類元素とを含有し、Alおよび/またはSiがFeに対して0.5〜5.0wt% 、希土類元素がFeに対して1〜10wt% である金属磁性粉を用いる。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は磁気記録媒体に関し、特に塗布型の磁気記録媒体に使用される鉄を主成分とする金属磁性粉の改良に関する。
【0002】
【従来の技術】磁気記録の高密度化が要望されており、このような要求に適した磁気記録媒体としては、保磁力が高く、しかも飽和磁化が大きいことが要求される。
【0003】このため、8ミリビデオやDAT等の磁気記録媒体では、鉄を主成分とし保磁力が高く、飽和磁化が大きい金属磁性粉が磁性層に用いられ、実用化されている。
【0004】また、さらに高い保磁力や飽和磁化を実現するため、種々の提案がなされている。
【0005】例えば、このようなものには、表面にSi化合物などの各種化合物を被着した金属磁性粉がある(特開昭59−159904号、同59−162205号、同62−156209号等)。
【0006】これらはいずれもγ−Fe23 やα−FeOOHの原料粒子のスラリーに各化合物の水溶液を添加し、原料粒子に化合物を被着したのち、還元反応を行ない金属磁性粉化したものである。 そして、複数の化合物を複合して被着するときには、各化合物の水溶液を別々に調製し、各化合物ごとに被着している。
【0007】また、特開昭53−140221号には、CoまたはCoとNiとを含有し、表面をケイ酸塩で被覆した針状晶含水酸化第二鉄粒子もしくは針状晶酸化第二鉄粒子を加熱還元し、さらに粒子表面にマグネタイト被膜を形成して針状晶合金磁性粒子を得る方法が開示されている。
【0008】さらに、特開昭55−161007号には、Fe(OH)2 を含むpH11以上の水溶液に水可溶性ケイ酸塩を添加し、その後酸化して針状晶ゲータイト粒子を生成させ、これから、さらに、針状晶ヘマタイト粒子を得、これを、さらに、加熱水蒸気と非還元性ガスとからなる雰囲気下で加熱焼成して高密度なヘマタイト粒子を得、さらに、これを加熱還元することにより、針状晶金属鉄磁性粒子粉末を得る方法が開示されている。
【0009】さらに、特開昭63−306526号公報には、金属磁性粉および/または窒化鉄磁性粉に、Al有機化合物、Ti有機化合物、Zr有機化合物およびSi有機化合物の少なくとも1種以上を含有する金属磁性粉が開示されている。
【0010】そして、特開昭64−57701号公報には、含水酸化鉄や酸化鉄に、Zr化合物およびAl化合物と、Ni化合物および/またはCu化合物をそれぞれ被着した後、還元して金属磁性粉を得る旨が開示されている。
【0011】さらに、特願昭63−84076号には、含水酸化鉄や酸化鉄にCo化合物ないしCoイオンを被着した後、還元した金属磁性粉が提案されている。
【0012】しかしながら、例えば8ミリビデオでは、さらに高い出力や、S/N、C/Nの改善等が要求されており、またデジタル用媒体として考えた場合には、これらの特性のさらなる向上が必要となる。
【0013】そのためには、媒体の残留磁化Brを高くしたり、角形比Br/Bmを大きくしたり、反転磁界分布(SFD)を小さくしたり、媒体であるテープの表面性を良くしてスペーシングロスを少なくすることが必要であり、この点の改善が望まれている。
【0014】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、反転磁界分布(SFD)が小さく、ひいては電磁変換特性に優れた磁気記録媒体を提供することにある。
【0015】
【課題を解決するための手段】このような目的は、下記(1)〜(4)の構成よって達成される。
(1)非磁性支持体上に鉄を主体とする金属磁性粉を含む磁性層を有する磁気記録媒体において、前記鉄を主体とする金属磁性粉が、少なくとも、Feに対して0.5〜5.0wt% の、Alおよび/またはSiと、Feに対して1〜10wt% のYを含む希土類元素とを含有することを特徴とする磁気記録媒体。
【0016】(2)前記鉄を主体とする金属磁性粉は、さらにFeに対して6〜20wt% のCoを含有する上記(1)に記載の磁気記録媒体。
【0017】(3)前記鉄を主体とする金属磁性粉は、含水酸化鉄を生成した後にAlおよび/またはSiと希土類元素とを導入し、還元性雰囲気中で還元して得られた上記(1)または(2)に記載の磁気記録媒体。
【0018】(4)前記鉄を主体とする金属磁性粉は、長軸が0.08〜0.30μm 、軸比が4〜15である上記(1)ないし(3)のいずれかに記載の磁気記録媒体。
【0019】
【具体的構成】以下、本発明の具体的構成について詳細に説明する。本発明では、磁性層に、鉄を主体とする金属磁性粉を用いる。この金属磁性粉は、さらに、Alおよび/またはSiとYを含む希土類元素とを含有する。
【0020】そして、Alおよび/またはSiは、Feに対して0.5〜5.0wt% の含有量とし、特に、Feに対して、1.0〜5.0wt% の含有量とすることが好ましい。また、Yを含む希土類元素は、Feに対して1〜10wt% 、好ましくは1〜5wt% の含有量とすればよい。
【0021】このような金属磁性粉を用いることによって、本発明の効果が得られる。
【0022】なお、上記の添加元素の含有量は、元素としての換算量である。
【0023】上記金属磁性粉において、Alおよび/またはSiの含有量を上記範囲とすることによって、高特性を得ることができる。Alおよび/またはSiの含有量が0.5wt% 未満となると、還元したときの粒子形状がくずれてしまい、5.0wt% をこえると、磁気特性が低下する。
【0024】また、希土類元素の含有量を上記範囲とすることによって、高特性を得ることができる。希土類元素の含有量が1wt% 未満となると、この元素添加の実効が得られず、10wt% をこえると、逆に磁気特性が低下してしまい、出力等の電磁変換特性が低下してしまう。
【0025】また、本発明では、さらにCoを含有することが好ましく、Coの含有量は、Feに対して6〜20wt% 、好ましくは6〜15wt% とすればよい。
【0026】Coを含有させることによって本発明の効果、特に出力等の電磁変換特性が向上する。Coの含有量が小さくなりすぎると、Co添加の実効が得られず、Coの含有量が大きくなりすぎると、Coが析出し、かえって磁気特性が低下してしまい、出力等の電磁変換特性も悪くなる。
【0027】本発明における金属磁性粉は、好ましくは、含水酸化鉄を生成した後にAlおよび/またはSiと希土類元素とを導入し、還元性雰囲気中で還元して得られたものである。このような製法を採ることによって、本発明の効果が向上する。
【0028】また、Coを導入する場合は、Alおよび/またはSiと希土類元素とを導入する前とすることが好ましく、これにより本発明の効果が向上する。
【0029】本発明に用いる含水酸化鉄は、例えば、α−FeOOH(Goethite) 、β−FeOOH(Akaganite) ,γ−FeOOH(Lepidocrocite) 等のオキシ水酸化鉄である。
【0030】このような含水酸化鉄は、第二鉄塩水溶液とアルカリ水溶液とを反応させて水酸化第二鉄を含有する水溶液を得、これを空気酸化等により酸化して得られたものであることが好ましい。この際、第二鉄塩水溶液にNi塩や、Ca塩、Ba塩、Sr塩等の周期表2A族の塩、Cr塩、Zn塩などを共存させてもよく、このような塩を適宜選択して用いることによって粒子形状(軸比)などをコントロールすることができる。
【0031】第二鉄塩としては、塩化第二鉄、硫酸第二鉄等が好ましい。
【0032】またアルカリとしてはNaOH、NH4 OH、(NH42 CO3 、Na2 CO3 等が好ましい。また、Ni塩としては塩化ニッケル等、Ca塩、Ba塩、Sr塩としては、それぞれ、塩化カルシウム、塩化バリウム、塩化ストロンチウム、塩化クロム、塩化亜鉛等の塩化物が好ましい。
【0033】上記のような含水酸化鉄を出発材料とし、このスラリーを用いて次の操作を行なう。
【0034】このときのスラリー中の含水酸化鉄の含有量は5〜20wt% 程度とする。
【0035】また、本発明において、Coを導入する場合は前記のように、Alおよび/またはSi、希土類元素を導入する前とするが、具体的には硫酸コバルト、塩化コバルト等のCo化合物を用い、この水溶液を前記の含水酸化鉄のスラリーに攪拌混合することによる。Co化合物の水溶液の濃度は0.5〜1.5M程度とすればよい。
【0036】次に、Alおよび/またはSiを導入するが、以下のように行なう。
【0037】すなわち、好ましくはCoを含有する含水酸化鉄のスラリーを調製したのち、このスラリーにAl化合物および/またはSi化合物を含有する水溶液と、希土類元素の化合物を含有する水溶液とを各々添加し、攪拌混合すればよい。
【0038】Al化合物、Si化合物を含有する水溶液の濃度は、0.5〜1.5Mとすればよく、いずれか一方の化合物のみを含有するものであってもよく、両方の化合物を含有する場合は合計量で上記範囲とすればよい。
【0039】用いるAl化合物としてはアルミン酸ナトリウム、メタアルミン酸ナトリウム等があり、Si化合物としてはケイ酸ナトリウム等がある。
【0040】本発明において導入するのが好ましい希土類元素としては、Nd、Sm、Gd、Dy、La、Y等が挙げられる。
【0041】上記の水溶液を調製するのに用いられる希土類元素の化合物としては、塩化ネオジウム、塩化サマリウム、塩化ガドリニウム、塩化ジスプロシウム、塩化ランタン、塩化イットリウム等の塩化物、硝酸ネオジウム、硝酸ガドリニウム等の硝酸塩などが挙げられる。
【0042】このような水溶液の濃度は0.5〜1.5M程度とすればよい。また2種以上の希土類元素を併用してもよい。
【0043】本発明においては、上記のように、Alおよび/またはSiを含有する水溶液と希土類元素を含有する水溶液とを別々に調製して添加することが好ましいが、場合によってはAlおよび/またはSiと希土類元素とを含有する水溶液を調製して添加してもよい。
【0044】また、別々に調製して添加する態様においては、両液を同時に添加してもよく、一方の液を添加したのち他方の液を添加するものとしてもよい。後者の方法を採る場合Alおよび/またはSiを含有する水溶液を先に、希土類元素を含有する水溶液をその後添加する方が好ましい。
【0045】本発明では、このようにして、Alおよび/またはSiと希土類元素、さらに好ましくは、Coを含有する含水酸化鉄を得る。
【0046】本発明においては、このようにして得られたAlおよび/またはSiと希土類元素等を含有する含水酸化鉄を還元する。
【0047】還元は、還元性雰囲気中で加熱しながら行なうことが好ましい。
【0048】還元性雰囲気としては一般に水素ガス雰囲気とすることが好ましく、水素ガスの流量は適宜選択することができる。また、加熱温度は400〜550℃程度とすればよく、5〜8時間程度行なうことが好ましい。
【0049】本発明では、前記のとおり、Alおよび/またはSiを導入しているので加熱還元の際の焼結を防止することができる。
【0050】このようにして得られた金属磁性粉は、鉄を主成分とするもので、前記の含有量で、Alおよび/またはSiと希土類類元素を、さらに好ましくはCoを含有するものである。
【0051】この場合、これらの添加元素は、Coを除いて磁性粉の粉体表面付近に主に存在すると考えられる。なお、Coは粉体内部に、あるいは粉体内部と粉体表面の両方に存在すると考えられる。
【0052】また、これらの添加元素は、添加した化合物の形のままで、あるいは酸化物や水酸化物等となって、さらには合金等を形成して存在していると考えられる。また、これらの添加元素はこれらの状態が混在したものであってもよい。
【0053】このことは、ESCA等によって確認することができる。
【0054】また、各元素の含有量は、前記のとおりであるが、ICP発光分析によって確認することができる。
【0055】また、本発明では、上記のような製法を採ることによって粒度分布の良い金属磁性粉を得ることができ、本発明の効果を得る上で好ましい。
【0056】本発明で得られる金属磁性粉は針状、粒状、紡鍾状のものであり、8ミリビデオテープに用いるときは針状、紡鍾状のものとすることが好ましい。粉体の長軸は平均で0.08〜0.30μm 、短軸は平均で0.015〜0.04μm であり、軸比は平均で4〜15であることが好ましい。
【0057】こらはTEM写真等によって確認することができる。
【0058】また、金属磁性粉は、保磁力(Hc)が1500〜1800Oe程度、飽和磁束密度(σS )が110〜140emu/g 程度、BET法による比表面積が50〜65m2/g程度のものである。
【0059】また、金属磁性粉は、表面に酸化被膜を有するものであってもよい。
【0060】このような酸化被膜をもつ金属磁性粉を用いた磁気記録媒体は、温度、湿度等の外部環境による磁束密度の低下、磁性層のサビの発生による特性劣化に有利である。
【0061】本発明では、通常このような金属磁性粉のみを用いて磁性層を形成するが、もし必要であるならば、他の磁性粉、例えば金属磁性粉や酸化物磁性粉等を50重量%以下併用してもよい。
【0062】金属磁性粉を磁性塗料とする際に用いるバインダーは熱可塑性バインダー、熱硬化性バインダー、電子線硬化性バインダー等を用いることができる。
【0063】そして、金属磁性粉とバインダーとの混合比は、金属磁性粉の重量をWM 、バインダーの重量をWB とした場合、WM /WB が3/1〜10/1程度とする。
【0064】いずれのバインダーを用いる場合においても、必要に応じて各種帯電防止剤、潤滑剤、分散剤、研磨剤、塗膜強度補強添加剤等を用途に合わせて使用することが有効である。
【0065】なお、磁性層の厚さは、0.5〜6μm 程度とする。 特に、8ミリビデオテープの場合は、2.0〜3.5μm 程度が好ましい。
【0066】このような磁性層を塗設する非磁性支持体は、従来公知の材質のいずれであってもよい。 そして、本発明の媒体は、支持体の一方の面または両面にこのような磁性層を有するものである。
【0067】なお、必要に応じ、下地層、バックコート層等が設けられていてもよい。
【0068】本発明の磁気記録媒体は、種々のものであってよい。
【0069】このようにして得られる媒体は、保磁力(Hc)が1450〜1700Oe程度、残留磁化(Br)が2000〜2700G程度、角形比(Br/Bm)が0.75〜0.9程度、配向度(OR)が1.5〜3.0程度、反転磁界分布(SFD)が0.35〜0.55程度であり、磁気特性に優れたものとなる。そして、高周波帯域における出力も高く、電磁変換特性に優れたものとなる。
【0070】
【実施例】以下、本発明の具体的実施例を示し、本発明をさらに詳細に説明する。
実施例1FeCl2 ・4H2 O 1000g を45℃に保温した20リットルのH2 Oに溶融させ、この溶液に、あらかじめCaCl2 をCa量がFeに対して0.5重量%になるよう100mlのH2 Oに溶解した溶液を加え30分間攪拌混合した。次にNaOH300g を1000mlのH2 Oに溶解させた45℃の水溶液を、この溶液に徐々に添加していき、終了後60分間攪拌混合した。このものの温度を70℃まで上げ、50リットル/分の流量で空気の空気を吹き込みながら6時間攪拌を続けた。その後室温まで放冷し、水洗、濾過し、60℃で24時間乾燥して含水酸化鉄を得た。
【0071】得られた含水酸化鉄100g を6リットルのH2 O中に投入して攪拌混合し、これにケイ酸ナトリウム(Na2 SiO3 )をSi量がFeに対して1.0重量%、アルミン酸ナトリウム(Na3 AlO3 )をAl量がFeに対して2.0重量%になるように溶解した1リットルの水溶液と塩化ネオジウム(NdCl3 ・6H2 O)をFeに対して2.5重量%になるように溶解した1リットルの水溶液を加え、十分攪拌した後、濾別、洗浄、乾燥を行なった。
【0072】このようにして得られた含水酸化鉄を50g 採取し、温度450℃、水素流量1リットル/minで6時間かけて還元した。次いで室温まで冷却した後、トルエン溶液に10分間空気を吹き込みながら浸漬して風乾し、金属磁性粉を得た。これを金属磁性粉No. 1とする。
【0073】得られた金属磁性粉No. 1はTEM写真から、平均長軸長(L)=0.14μm 、軸比(Lw)=7であった。また、Feに対するSi量(Si/Fe)=0.97重量%、Feに対するAl量(Al/Fe)=1.92重量%、Feに対するNd量(Nd/Fe)=2.3重量%であった。
【0074】なお、金属磁性粉No. 1におけるSi量、Al量、Nd量はICP発光分析により求めた。
【0075】また、ESCA等の結果から、Ca、Si、Al、Ndは主に粉体表面に存在していることがわかった。
【0076】また、Ca量はICP発光分析によって求めてFeに対して0.47重量%であった。
【0077】金属磁性粉サンプルNo. 1において、ケイ酸ナトリウム、アルミン酸ナトリウムおよび塩化ネオジウムを添加する前に、塩化コバルトをCo量がFeに対して18.0重量%となるように溶解した1リットルの水溶液を添加するほかは、同様にして金属磁性粉末サンプルNo. 2(L=0.15μm 、L/W=6、Co/Fe=17.48重量%)を得た。
【0078】なお、金属磁性粉サンプルNo. 2において、Ca量、Si量、Al量、Nd量はサンプルNo. 1と同様であり、Co量も、これと同様にして求めた。
【0079】またESCA等の結果から、Coは主に粉体内部に多く存在していることがわかった。
【0080】金属磁性粉サンプルNo. 2において、Ca、Si、Al、Nd、Coの添加を表1に示すようにかえて、金属磁性粉サンプルNo. 3〜No. 14を得た。
【0081】このようにして得られた金属磁性粉No. 1〜No. 14をそれぞれ用いて下記に示される配合比で磁性塗料を調製した。
【0082】
金属磁性粉 100重量部 塩化ビニル−水酸基含有メタクリル酸エステル系共重合体 (重合度約400、極性基含有) 11.7重量部 ポリウレタン樹脂 (分子量約40,000、極性基含有) 5重量部 Al23 3重量部 アニオン界面活性剤 2重量部 ステアリン酸 2重量部 メチルエチルケトン 80重量部 トルエン 80重量部 シクロヘキサノン 40重量部
【0083】これらの磁性塗料に硬化剤としてコロネートLを樹脂成分に対して10重量部添加したものをそれぞれ用い、10μm のポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム上に塗布し、4000Gの配向磁界を印加して乾燥した。
【0084】次いでカレンダ処理を行ない、60℃で24時間熱硬化を行なった。磁性層の最終厚みは2.7μm とした。これをスリッターにより8mm幅に切断してテープサンプルを得た。用いた金属磁性粉に応じて、テープサンプルNo. 1〜No. 14とする。
【0085】以上の金属磁性粉、No. 1〜No. 14について、L、L/W、BET法による比表面積、保磁力(Hc)、飽和磁束密度(σS )を、またテープサンプルNo. 1〜No. 14について、保磁力(Hc)、残留磁化(Br)、角形比(Br/Bm)、配向度(OR)、反転磁界分布(SFD)、7MHz における出力を求めた。
【0086】このなかで、反転磁界分布(SFD)は以下のようにして求めたものである。
【0087】反転磁界分布(SFD)VSMで10kOe の磁界を印加したときの微分曲線(Hc分布)の半値巾(△Hc)とHcとから、(△Hc/Hc)をSFDとして求めた。
【0088】結果を表1、表2に示す。
【0089】
【表1】


【0090】
【表2】


【0091】表1、表2より本発明の効果は明らかである。このなかでCo添加により、本発明のサンプルでは、さらなる出力向上の効果がみられる。なお、金属磁性粉No. 1において、Al、Siのいずれも添加しないものの作製を試みたが、焼結してしまい針状のものが得られなかった。
【0092】実施例2実施例1の金属磁性粉No. 3において、CaCl2 のかわりにBaCl2 をBa量がFeに対して0.3重量%になるように添加し、塩化ネオジウムをNd量がFeに対して1.5重量%となるように添加する以外は、同様にして金属磁性粉No. 21を得た。
【0093】各添加元素は実施例1のものと同様にCoを除いては粉体表面に存在し、Nd/Fe=1.4重量%、Si/Fe=0.98重量%、Al/Fe=1.92重量%、Co/Fe=6.42重量%、Ba/Fe=0.27重量%であった。なお、Coは表面と内部の両方に存在していた。
【0094】また、金属磁性粉サンプルNo. 21において、Ba、Si、Al、Nd、Coの添加を、表3に示すようにかえるほかは同様にして、金属磁性粉サンプルNo.22〜No. 32を得た。
【0095】さらに、これらの金属磁性粉サンプルNo. 22〜No. 32をそれぞれ用い、実施例1と同様にして、テープサンプルNo. 22〜No. 32を作製した。
【0096】これらの金属磁性粉サンプルおよびテープサンプルについて、実施例1と同様に特性を求めた。結果を表3、表4に示す。
【0097】
【表3】


【0098】
【表4】


【0099】表3、表4から本発明の効果は明らかである。
【0100】実施例3実施例1の金属磁性粉サンプルNo. 3において、塩化ネオジウムのかわりに、塩化ガドリニウム、塩化ジスプロシウム、塩化ランタン、塩化イットリウムを、各々用いるほかは同様にして、表5に示すように、金属磁性粉サンプルNo. 41〜No. 44を得た。また、塩化ネオジウムと塩化ガドリニウムを併用した金属磁性粉サンプルNo. 45を得た(表5)。
【0101】さらに、これらの金属磁性粉サンプルNo. 41〜No. 45をそれぞれ用いて、同様にテープサンプルNo. 41〜No. 45を得た。
【0102】これらの金属磁性粉サンプルNo. 41〜No. 45およびテープサンプルNo. 41〜No. 45について、実施例1と同様に特性を求めた。実施例1のサンプルNo. 14とともに、結果を表5、表6に示す。
【0103】
【表5】


【0104】
【表6】


【0105】表5、表6より、本発明の効果は明らかである。
【0106】
【発明の効果】本発明によれば、SFDの点で優れ、ひいては高周波帯域で出力が高いなど電磁変換特性に優れる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 非磁性支持体上に鉄を主体とする金属磁性粉を含む磁性層を有する磁気記録媒体において、前記鉄を主体とする金属磁性粉が、少なくとも、Feに対して0.5〜5.0wt% の、Alおよび/またはSiと、Feに対して1〜10wt% のYを含む希土類元素とを含有することを特徴とする磁気記録媒体。
【請求項2】 前記鉄を主体とする金属磁性粉は、さらにFeに対して6〜20wt% のCoを含有する請求項1に記載の磁気記録媒体。
【請求項3】 前記鉄を主体とする金属磁性粉は、含水酸化鉄を生成した後にAlおよび/またはSiと希土類元素とを導入し、還元性雰囲気中で還元して得られた請求項1または2に記載の磁気記録媒体。
【請求項4】 前記鉄を主体とする金属磁性粉は、長軸が0.08〜0.30μm 、軸比が4〜15である請求項1ないし3のいずれかに記載の磁気記録媒体。

【公開番号】特開平6−36265
【公開日】平成6年(1994)2月10日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平4−208482
【出願日】平成4年(1992)7月13日
【出願人】(000003067)ティーディーケイ株式会社 (7,238)