説明

磁気記録装置、および磁気記録装置の読取データ信号における非対称性の影響を少なくとも低減する方法および装置

【課題】磁気記録装置における非対称性を測定して補正するための非対称補償器を提供する。
【解決手段】磁気記録装置は、読取ヘッドと、非対称補償器と、データデコーダと、アナログデジタル変換器とを備える。読取ヘッドは、読取データ信号を生成するが、その信号には非対称性による潜在的なエラーが含まれている。読取データ信号は、非対称補償器によって処理されて補償されたデータ信号となる。非対称補償器は、フィードフォワード式に接続された、2の累乗平方装置と、ガンマ増幅器と、加算接合器とを含む。ガンマ増幅器は、正の孤立パルスについては正パルスおよびアンダーシュートの振幅に関連し、負の孤立パルスについては負パルスおよびオーバーシュートの振幅に関連する方法を用いる。この方法はさらに、加重平均における確率および加重値に関連し、周波数による変動を補償する。この方法は、アナログ領域およびデジタル領域のどちらでも実行できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
この発明は、一般に磁気記録装置に関する。より具体的には、この発明は、磁気記録装置における非対称性の測定および補正に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
磁気記録装置においては、記録媒体に符号化された信号を読取るために磁気抵抗ヘッドが一般的に使用される。記録媒体は、ディスクまたはテープを含む多くの形態を取り得る。信号は、デジタル形式である場合が多い。記録媒体には、一連の磁束の変化としてのデジタル情報が格納される。一方の磁束方向は論理1と呼ばれ、他方の磁束方向は論理0と呼ばれる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
磁気抵抗ヘッドにより記録媒体から信号が読取られているとき、読取ヘッドが、一方の磁束方向には正の電圧パルス、他方の磁束方向には負の電圧パルスを発生させる。あいにく、それらパルスの振幅は一致しないことがある。これは、読取ヘッドにおける非対称性として知られている。非対称の量は、ヘッド毎に異なる。このような非対称性によって、望ましくない読取エラーが生じる可能性がある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
発明の概要
磁気記録装置における非対称性を測定して補正するための非対称補償器が開示される。磁気記録装置は、読取ヘッドと、非対称補償器と、データデコーダと、アナログデジタル変換器とを含む。読取ヘッドは、読取データ信号を生成するが、その信号には非対称性による潜在的なエラーが含まれている。読取データ信号は、非対称補償器によって処理されて補償されたデータ信号となる。非対称補償器は、フィードフォワード式に接続された、2の累乗平方装置と、ガンマ増幅器と、加算接合器とを含む。ガンマ増幅器は、正の孤立パルスについては正パルスおよびアンダーシュートの振幅に関連し、負の孤立パルスについては負パルスおよびオーバーシュートの振幅に関連する方法を用いる。この方法はさらに、加重平均における確率および加重値に関連し、周波数による変動を補償する。この方法は、アナログ領域およびデジタル領域のどちらでも実行できる。
【0005】
添付の図面は、この明細書に組込まれてその一部を構成するものであり、この発明の1つまたは複数の実施例を示す。また、詳細な説明とともに、この発明の原理および具体的な実現化例を明らかにする役割を果たす。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
発明の詳細な説明
ここでは、この発明の各種実施例を、磁気記録装置における非対称性の測定および補正に関連して説明する。当業者には、下記のこの発明の詳細な説明が単なる例証であり、いかなる制限も意図するものではないことが理解されるであろう。この開示によって恩恵を受けるそうした当業者であれば、この発明の他の実施例も容易に思い浮かぶであろう。以下に、添付の図面に例示されたこの発明の具体的な実現化例を詳細に説明する。図面および以下の詳細な説明の全体を通して、同一または類似の構成要素を指す場合、同一の参照
符号が使用される。
【0007】
わかりやすくするために、ここで説明する具体的な実現化例の典型的な特徴について、一部の図示および説明を省略している。当然のことながら、そのような実現化例の開発において、開発者の具体的な目標を達成するためには、用途や事業に関する制約への準拠など、その実現化例にかかわる多数の決定を下す必要があり、その具体的な目標は、実現化例や開発者によって異なることが理解されるであろう。さらに、そのような開発に向けた取組みが、複雑化して時間のかかるものとなる可能性があるが、それでも、この開示によって恩恵を受ける当業者にとっては、典型的な技術上の作業であることがわかるであろう。
【0008】
最初に図1を参照して、読取られた2つの孤立パルスに関して、振幅とサンプルとを対比させたグラフを示す。このグラフは、単に説明を目的とした例に過ぎない。実際の値は状況によって変わる。左側の、サンプル0から600付近のシーケンスは正パルスに対するものであり、右側の、サンプル600から1200付近のシーケンスは負パルスに対するものである。最良の結果を得るために、これらのパルスの間には十分な時間間隔を空けて、一方のパルスが他方のパルスに影響を及ぼさないようにしている。その時間の長さは状況によって異なる。図示したように、パルスを厳密に孤立させる必要はない。理論的には、正パルスの理想は、振幅0で始まって、瞬時に正の振幅まで立上がり、それから振幅0に戻ることである。しかし、このような理想は、実際にはまず得られない。図1は、こうした理想ではなく、もっと現実的な事例を示している。図示のとおり、正パルスは実際には、振幅0に戻る前に負の振幅を示す。この現象は、アンダーシュートとして知られている。同様に、負のパルスはオーバーシュートを示す。正パルスの正の振幅は、Xpと表示し、アンダーシュートの振幅はSnと表示している。それに対応して、負パルスの負の振幅はXnと表示し、オーバーシュートの振幅はSpと表示している。図示の例では、負パルスの大きさは正パルスの大きさを上回っている。これは、上記の非対称性の例を図で表わしたものである。しきい値レベルが対称である場合、この読取られた非対称性によってデータエラーが生じることがある。さらに、オーバーシュートの大きさは、アンダーシュートの大きさを上回っている。図1に示すパルスは、互いに影響し合わないよう十分に間隔を空けたものが選択されていることを想起されたい。これは、試験または実証を目的としている。現実のデータの状況においては、パルスは大抵もっと接近していると思われる。すなわち、周波数がもっと高い。周波数が上がると、最初のパルスのオーバーシュートまたはアンダーシュートは、状況により、次のパルスまたは次のいくつかのパルスと重なることがある。アンダーシュートは、正パルスを引下げて、負パルスを押下げる傾向がある。オーバーシュートはその逆の傾向がある。しきい値レベルによっては、これでデータエラーが発生することがある。この発明によれば、この大きさの違いを補償する方法および装置を用いて、データエラーを低減または排除することができる。
【0009】
図2に、この発明に従う磁気記録装置(装置)10のブロック図を示す。わかりやすくするため、以下の記述に関連するブロックのみ図示している。それ以外のブロックは、要求または必要に応じて追加できる。装置10は、磁気抵抗読取ヘッド(ヘッド)12と、非対称補償器(補償器)14と、データデコーダ(デコーダ)16とを含む。ヘッド12の設計および製造は従来通りでもよく、また典型的には、非対称の形状を呈すると予測される。しかしながら、たとえ非対称でなかったとしても、装置10は適正に動作する。補償器14については、以下にさらに詳細に開示する。補償器14は、別個のブロックとせず、ヘッド12、デコーダ16、またはその両方と一体化することもできる。補償器14は、読取られたデータ信号を入力として取込み、補償されたデータ信号を出力として生成する。読取データ信号は、ヘッド12によってもたらされる非対称性を有する。補償データ信号では、その非対称性が少なくとも減少している。データエラーを大幅に削減するために、この非対称性を完全に取除く必要はない。デコーダ16も、設計および製造は従来
通りでも構わない。一般に、デコーダ16は補償されたデータ信号から符号化されたデジタルデータを読取る。図2には図示していないが、装置10にはアナログデジタル(A/D)変換器が含まれる。A/D変換器の位置は、設計に応じて選択される。A/D変換器は、ヘッド12、補償器14、デコーダ16のいずれかと一体化してもよい。A/D変換器は、ヘッド12と補償器14との間、または補償器14とデコーダ16との間に位置する別個のブロックであってもよい。さらに、A/D変換器は、上記を組合せた構成であってもよい。信号の形状およびブロックの動作は、A/D変換器の選択位置によって少なくともある程度決まる。
【0010】
図3に、この発明に従う図2の非対称補償器14の機能ブロック図を示す。図示のとおり、補償器14は、フィードフォワードの構成で接続された、2の累乗平方装置(平方装置)18と、ガンマ(γ)増幅器20と、加算接合器22とを含む。補償器14は、アナログ領域またはデジタル領域でも動作できる。補償器は、FPGA、DSPまたはASICを含む数多くの形態を取ることができる。下記の説明で使用される用語「ガンマ増幅器」は、以下に挙げる4つの数式に従って動作する増幅器を指す。これらの数式は、ピークの不一致ならびにアンダーシュートおよびオーバーシュートの潜在的な影響を考慮に入れて立てたものである。この発明によれば、変数γの最適解は、以下のとおりである。
【0011】
【数1】

【0012】
この発明の実施例および用途を提示し、説明してきたが、この発明の開示によって恩恵を受ける当業者にとって、ここで示す発明概念を逸脱することなく、上記以外にさらに多くの変形が可能であることは明白であろう。したがって、この発明は、前掲の特許請求の範囲の意図を除き、制限を受けないものとする。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】2つの孤立した読取パルスの振幅とサンプルとを対比させたグラフの図である。
【図2】この発明に従う磁気記録装置のブロック図である。
【図3】この発明に従う、図2の非対称補償器の機能ブロック図である。
【符号の説明】
【0014】
12 読取ヘッド
14 非対称補償器
16 データデコーダ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁気記録装置であって、
磁気媒体上の磁束を読取るための読取ヘッドを含み、読取ヘッドの出力から読取データ信号が送信され、
読取データ信号における非対称性の影響を少なくとも低減するための非対称補償器をさらに含み、非対称補償器の入力は読取ヘッドの出力に接続され、非対称補償器はガンマ増幅器を含み、非対称補償器の出力から、補償されたデータ信号が送信され、
補償されたデータ信号から符号化されたデータを読取るためのデータデコーダをさらに含み、データデコーダの入力は非対称補償器の出力に接続され、
アナログデータをデジタルデータに変換するためのアナログデジタル(A/D)変換器をさらに含む、磁気記録装置。
【請求項2】
非対称補償器はデジタル領域で動作する、請求項1に記載の磁気記録装置。
【請求項3】
非対称補償器はアナログ領域で動作する、請求項1に記載の磁気記録装置。
【請求項4】
非対称補償器は、
入力および出力を有する2の累乗平方装置と、
第1の入力と、第2の入力と、出力とを有する加算接合器とをさらに含み、
2の累乗平方装置の入力は非対称補償器の入力および加算接合器の第2の入力に接続され、2の累乗平方装置の出力はガンマ増幅器の入力に接続され、ガンマ増幅器の出力は加算接合器の第1の入力に接続され、加算接合器の出力は非対称補償器の出力に接続される、請求項1に記載の磁気記録装置。
【請求項5】
磁気記録装置の読取データ信号における非対称性の影響を少なくとも低減するための方法であって、
読取データ信号を受信するステップと、
磁気記録装置の非対称補償器において読取データ信号を処理して補償されたデータ信号にするステップとを含み、非対称補償器はガンマ増幅器を含み、
補償されたデータ信号を送信するステップをさらに含む、方法。
【請求項6】
処理はアナログ領域で行なわれる、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
処理はデジタル領域で行なわれる、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
磁気記録装置の読取データ信号における非対称性の影響を少なくとも低減するための装置であって、
読取データ信号を受信するための手段と、
磁気記録装置の非対称補償器において読取データ信号を処理して補償されたデータ信号にするための手段と、
補償されたデータ信号を送信するための手段とを含む、装置。
【請求項9】
処理はアナログ領域で行なわれる、請求項8に記載の装置。
【請求項10】
処理はデジタル領域で行なわれる、請求項8に記載の装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2007−12257(P2007−12257A)
【公開日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2006−180020(P2006−180020)
【出願日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【出願人】(506224883)サータンス・リミテッド・ライアビリティ・カンパニー (2)
【氏名又は名称原語表記】CERTANCE LLC
【Fターム(参考)】