説明

磁気誘導システム及び磁場変調装置

【課題】 交流磁界発生のためのコイルや電源を要さずに誘導磁界を変調することができ、コストの低減及びシステムの小型化を可能とする磁気誘導システムを提供する。
【解決手段】 被誘導部材を誘導するための一定の磁界を発生する磁界発生部と、磁界発生部の周囲に配置され、磁界発生部が発生した磁界を遮蔽する状態、一部を遮蔽する状態、及び、遮蔽しない状態を選択的に実現する磁場変調装置と、を備え、磁場変調装置の動作により、磁界発生部が発生した磁界により形成される磁場を変調する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被誘導部材を、磁気を用いて誘導させる磁気誘導システム、及び、このシステムに用いられる磁場変調装置に関する。
【背景技術】
【0002】
磁界によって被誘導部材を誘導可能とする磁気誘導システムにおいて、被誘導部材の誘導のために発生させた誘導磁界に対して、変調した交流磁界を加えて制御することは、被誘導部材に振動を加えることができるため、被誘導部材と物体内部との接触抵抗を減らして誘導を補助する点で有用であると考えられている(特許文献1)。また、このように誘導磁界と交流磁界を併用することによって、被誘導部材の位置や方向を正確に検知することが検討されている。
【特許文献1】特開平4−22326
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上述の磁気誘導システムでは、誘導磁界と交流磁界を発生させるための装置がそれぞれ必要となるためコストが高くなり、システムが大型化する。とくに、誘導磁界の発生及び交流磁界の発生のためにそれぞれコイルを用いる場合は、両コイルに電流を供給するための電源がそれぞれ必要となる。さらに、インダクタンスの大きなコイルに変調電流を供給する場合には、コイル電流を供給する電源の容量や制御能力を大きくする必要があり、システムが高価かつ大型になり、消費電力が増加するという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題を解決するために、本発明の磁気誘導システムは、被誘導部材を誘導するための一定の磁界を発生する磁界発生部と、磁界発生部の周囲に配置され、磁界発生部が発生した磁界を遮蔽する状態、一部遮蔽する状態、及び、遮蔽しない状態を選択的に実現する磁場変調装置と、を備え、磁場変調装置の動作により、磁界発生部が発生した磁界により形成される磁場を変調することを特徴としている。
【0005】
上記磁場変調装置は、磁性流体が充填される充填容器と、充填容器内に充填される磁性流体の量を調整する調整機構と、を有し、調整機構の動作により、充填容器に充填される磁性流体の量を調整して、磁界発生部が発生した磁界を遮蔽する状態、一部遮蔽する状態、及び、遮蔽しない状態を選択的に実現することができる。
【0006】
上記磁場変調装置は、磁性部分と非磁性部分を備えた磁場変調部材、及び、磁場変調部材の磁性部分及び非磁性部分と磁界発生部との相対的な位置関係を変更する相対位置変更部材、を有し、相対位置変更部材の動作により、磁界発生部が発生した磁界を遮蔽する状態、一部遮蔽する状態、及び、遮蔽しない状態を選択的に実現することができる。
【0007】
上記磁場変調装置は、温度によって磁気特性が変化する磁性体を有する磁気シールド部材と、磁気シールド部材の温度を調整する温度調整部材と、を備え、温度調整部材の動作により、磁性体の磁気特性を制御して、磁界発生部が発生した磁界を遮蔽する状態、一部遮蔽する状態、及び、遮蔽しない状態を選択的に実現することができる。
【0008】
上記磁気シールド部材の磁性体は超電導体であり、温度調整部材の動作により磁気シールド部材の温度を変更することにより、磁性体の超電導状態及び非超電導状態を選択的に実現し、これにより磁界発生部が発生した磁界を遮蔽する状態、一部遮蔽する状態、及び、遮蔽しない状態を選択的に実現することができる。
【0009】
上記磁界発生部は、コイルと、コイルに対して、被誘導部材を誘導するための一定の磁界を発生するための電流を供給する電源と、を備えるとよい。
【0010】
本発明に係る磁場変調装置は、被誘導部材を誘導するための一定の磁界を発生する磁界発生部の周囲に配置され、磁界発生部が発生した磁界を遮蔽する状態、一部遮蔽する状態、及び、遮蔽しない状態を選択的に実現することにより、磁界発生部が発生した磁界により形成される磁場を変調することを特徴としている。
【発明の効果】
【0011】
本発明によると、交流磁界発生のための電流を供給する電源を用いる必要のない磁気誘導システムを提供することにより、大きなインダクタンスを有する磁界発生部材に電流を供給する必要がある場合であっても、コストの低減及びシステムの小型化を可能とする磁気誘導システムを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明に係る実施形態を、図面を参照しつつ詳しく説明する。
<第1実施形態>(図1、図2)
第1実施形態は、本発明に係る磁気誘導システムを構成する磁場変調装置を、磁性流体の充填量を変動させることにより実現したものである。図1に示すように、第1実施形態に係る磁気誘導システムは、磁界発生部10と、磁場変調装置30と、を備える。
【0013】
磁界発生部10は、内部に磁性体(例えば、純鉄、鉄合金、プラチナマグネット、希土類磁石、金属磁石などの磁石)を挿通させた閉磁路型のコイル11と、このコイル11に電流を供給する電源12(図2)と、を備える。電源12は制御部20によりその動作が制御される。制御部20には入力部25が接続され、この入力部25を操作することにより、操作者が所望する磁界の大きさに対応する量の電流がコイル11に流れて一定の磁界が形成される。なお、磁界発生部10は、永久磁石を用いることにより、コイル11及び電源12を用いない構成とすることもでき、これによりシステムの小型化及びコストダウンを図ることができる。永久磁石としては、例えば、ネオジウム磁石(ネオジム、鉄、ホウ素を主成分とした希土類磁石)、ネオジウム磁石以外の希土類磁石(例えばサマリウムを含む希土類磁石)、及び、これら以外の磁石(例えば、純鉄、鉄合金、プラチナマグネット、テルビウム・ディスプロシウム・鉄合金、フェライト、アルニコ、コバルト・フェライト)がある。
【0014】
磁場変調装置30は、磁性流体充填容器31と、磁性流体タンク32と、を備える。磁性流体充填容器31は、非磁性材料(例えば非磁性ステンレスやチタン合金)からなり、内部に磁界発生部10を収容する中空の略直方体形状を備えている。磁性流体充填容器31を構成する面は、その内部に、磁性流体を充填可能なように互いに連通した充填空間31aが形成されている。磁性流体タンク32は中空の略直方体形状の容器であって、内部に磁性流体80が貯蔵される。
【0015】
磁性流体充填容器31の充填空間31aと磁性流体タンク32は、3本の流通管61、62、63により互いに連結され、磁性流体タンク32内の磁性流体80を所望量だけ充填空間31a内に充填したり、充填空間31aから磁性流体80を所望量だけ排出して磁性流体タンク32に戻したりできる。すなわち、磁性流体充填容器31は、磁性流体充填容器31側から順に配置された電磁弁41及びポンプ51を介して、磁性流体を磁性流体充填容器31に注入充填するための流通管61により、磁性流体タンク32と接続されている。また、磁性流体充填容器31は、磁性流体充填容器31側から順に配置された流量センサ72、ポンプ52、及び、電磁弁42を介して、磁性流体を磁性流体充填容器31から排出の流通管62により、磁性流体タンク32と接続されている。さらに、磁性流体充填容器31は、磁性流体充填容器31側から順に配置された流量センサ73および電磁弁43を介して、磁性流体充填容器31から磁性流体タンク32までの配管中の空気の排気、及び、充填空間31aからオーバーフローした磁性流体80を磁性流体タンク32へ排出するための流通管63により、磁性流体タンク32と接続されている。また、磁性流体タンク32は、空気抜きポート32aを備えている。なお、以上のような配管は、溶接、又は、オーリングや金属ガスケットなどを介したボルト・ナット締めにより構成する。電磁弁41〜43、ポンプ51、52、流量センサ72、73、及び磁性流体タンク32によって、磁性流体充填容器31内に充填される磁性流体80の量を調整する調整機構が構成される。電磁弁41〜43、ポンプ51、52、及び、流量センサ72、73はそれぞれ制御部20に接続されている。この制御部20は入力部25に接続されており、入力部25の操作により、磁場変調装置30は操作者の所望する動作を行う。なお、電磁弁41〜43に代えて、ニューマチックバルブを用いることもできる。
【0016】
磁性流体80は、例えば表面を界面活性剤で覆った強磁性微粒子を溶媒中に高濃度(例えば50%程度)で安定に分散させたものを用いてもよい。強磁性微粒子としては、例えば、マグネタイト若しくはマンガン−亜鉛系複合フェライト、又は、コバルト、鉄、若しくはニッケルを含む金属磁性コロイドを用いることができる。界面活性剤としては、例えば、オレイン酸などの長鎖不飽和脂肪酸を使うことができる。さらに、溶媒としては、例えば、水、炭化水素オイル、フッ素系オイルを使用することができる。
【0017】
つづいて、第1実施形態に係る磁気誘導システムの動作について説明する。あらかじめ磁性流体80を貯蔵した磁性流体タンク32から、磁性流体充填容器31への磁性流体80の注入、充填は次のように行う。まず、電磁弁42を閉じた状態で、電磁弁41と電磁弁43を開ける。これによって、流通管61及び63により磁性流体充填容器31と磁性流体タンク32が連通した状態とする。ここで、ポンプ51を動作させて磁性流体タンク32内の磁性流体80を吸引すると、この磁性流体80は、流通管61を通じて、磁性流体タンク32から磁性流体充填容器31へ注入される。磁性流体充填容器31に磁性流体80が完全に充填されると、余剰の磁性流体80が流通管63を通じて排出され始める。流量センサ73が、流通管63に磁性流体80が流れていることを検知すると、制御部20の制御により、電磁弁41と電磁弁43は閉じられ、ポンプ51は停止され、磁性流体タンク32から磁性流体充填容器31への磁性流体80の注入は停止される。
【0018】
一方、磁性流体80を磁性流体充填容器31から排出する動作は以下のように行う。まず、電磁弁43および電磁弁42を開けて、流通管62と流通管63により、磁性流体充填容器31と磁性流体タンク32が連通した状態とする。つづいて、ポンプ52を動作させることにより、磁性流体充填容器31内の磁性流体80を吸引して、磁性流体タンク32に排出する。磁性流体80がすべて磁性流体充填容器31から磁性流体タンク32へ排出されると、流通管62内に磁性流体80が流通しない状態となる。流量センサ72が、磁性流体80が流通管62を流れていないことを検知すると、制御部20の制御により、ポンプ52は停止され、電磁弁43と電磁弁42は閉じられ、磁性流体充填容器31から磁性流体タンク32への磁性流体80の排出は停止される。
【0019】
以上の注入、充填、及び排出の動作により、磁界発生部10が発生した磁界(磁場)を減少又は変調させることができる。すなわち、磁性流体充填容器31に磁性流体80が充填されている状態では、磁性流体80が磁気シールド(遮蔽)の働きをするため、磁界発生部10が発生する磁界(磁性流体充填容器31の外部に配置される被誘導部材(例えば磁気アンカー、磁性体を備えた内視鏡)に作用させる磁界)は減少する。これに対して、磁性流体充填容器31中の磁性流体80を排出してその量を減少させていくと、磁気シールドの効果が低減するため、磁界発生部10が発生する磁界の減少量が少なくなり、磁性流体充填容器31内の磁性流体80がすべて排出されると磁界発生部10が発生する磁界は減少することなく、磁性流体充填容器31の外部に至る。
【0020】
このように磁性流体充填容器31内の磁性流体80の量を調整することにより、磁界発生部10が発生した磁界を遮蔽する状態(完全に遮蔽する状態)と、一部だけを遮蔽する状態と、遮蔽しない状態(まったく遮蔽しない状態)と、を選択的に実現することができる。よって、磁界発生部10が発生する磁界を所望量だけ減少させることができるとともに、磁性流体充填容器31に磁性流体80を充填する動作と、磁性流体充填容器31から排出する操作を、一定周期で行うことにより、磁界発生部10で発生させる磁気誘導用主磁界に、変調を加えることができる。
【0021】
第1実施形態の変形例として、磁性流体充填容器31を例えばゴムなどの柔軟な部材で構成してもよい。この場合、磁性流体充填容器31の一部に磁性流体が充填された状態で、磁性流体充填容器31に外部から圧力を加える状態と圧力を開放する状態を、一定周期で行うことにより、磁性流体充填容器31の形状を、一定周期で変化させることにより、磁界発生部10で発生させる磁気誘導用主磁界に、変調を加えることができる。
<第2実施形態>(図3、図4)
第2実施形態は、本発明に係る磁気誘導システムを構成する磁場変調装置を、磁性体シート部及び非磁性体シート部を備える磁場変調シート(磁場変調部材)140を移動させることにより実現したものである。図3に示すように、第2実施形態に係る磁気誘導システムは、磁界発生部10と、磁場変調装置130と、を備える。なお、磁界発生部10については第1実施形態と同様であるため、重複した説明は省略する。
【0022】
磁場変調装置130は、磁場変調シート140、ガイドローラ151、及びガイドローラ152を有する。磁場変調シート140は、略長方形状のシートであって、その長手方向の両端部がガイドローラ151及びガイドローラ152に巻き回され、ガイドローラ151とガイドローラ152との間で伸張した部分がコイル11の磁極面11aに対向するように配置される。この磁場変調シート140は、その長手方向中央の境界線145において、磁性体シート部(磁性部分)141と、非磁性体シート部(非磁性部分)142と、が結合されて構成されている。磁場変調シート140の幅は、磁極面11aの幅よりも大きいことが好ましく、磁場変調シート140の長手方向における磁性体シート部141と非磁性体シート部142の長さも、磁極面11aの長さより大きいことが好ましい。
【0023】
磁場変調シート140は、その長手方向に、複数の長手方向中央の境界線145をもち、一定方向にシートを移動させただけでも、磁性体シート部(磁性部分)141と、非磁性体シート部(非磁性部分)142と、が交互に磁極面11aの前面に現れるようにしてもよい。
【0024】
磁場変調シート140は、略長方形状の非磁性のシート(例えば、プラスチック、布)の半分に、磁性材料を溶融させた樹脂や液体を塗布又は噴霧した後に、乾燥させることにより、この塗布部分を磁性体シート部141とし、それ以外を非磁性体シート部142としたものである。磁性体シート部141に用いる磁性体としては、例えば、マンガン−亜鉛系などの軟磁性複合フェライト、Fe−Si−B−Nb−Cu、Fe−Co−Si−B−Nb−Cuなどの軟磁性アモルファス、又は、パーマロイなどのFe−Ni合金がある。
【0025】
磁場変調シート140は、上述の構成に代えて、磁性材料を含む薄い帯状体と、非磁性材料(例えばプラスチック、ゴム)からなる薄い帯状体と、を柔軟な非磁性のシート(例えば、プラスチック、ゴム、布)上に、接着剤(例えばエポキシ系接着剤)を用いて張り合わせて構成してもよい。また、このような磁性材料を含む薄い帯状体を積層させて磁性体シート部を構成すると、その厚さ方向の電気抵抗を増加させ、渦電流による損失を低減させることができる。この薄状体は、磁性材料が金属(例えばパーマロイ)であれば機械加工によって製造でき、アモルファスやフェライトであれば、溶媒(例えばプラスチック、ゴム材料)に高濃度に分散させて一体成型することができる。さらにまた、磁場変調シート140の長手方向にそって、磁性体シート部141と非磁性体シート部142を交互に配置して、磁場変調シート140を構成することもできる。この構成によれば、磁場変調シート140を一方向に一定速度で移動することによって、一定周期の変調を行うことができる。
【0026】
ガイドローラ151及びガイドローラ152は、モータ161及びモータ162によりそれぞれ回転駆動される。このモータ161及びモータ162は、制御部120によりその動作が制御される。制御部120は、入力部125の操作に応じて、モータ161又はモータ162に対して回転動作をするように制御信号を出力する。このような制御によって磁場変調シート140はその長手方向に移動することができる。すなわち、磁場変調シート140とコイル11の磁極面11aとの相対位置関係を変更することができる。よって、磁極面11aに対向する位置に、磁場変調シート140のうち操作者が所望する部分が配置される。
【0027】
以上の構成の磁場変調シート140をその長手方向に移動させることにより、磁界発生部10が発生した磁界を減少又は変調することができる。すなわち、磁性体シート部141を磁極面11aに対向して配置した状態では、磁性体シート部141が磁気シールドの働きをするため、磁界発生部10が発生する磁界(コイル11に対して磁場変調シート140より外側に配置される被誘導部材に作用させる磁界)は減少する。これに対して、磁場変調シート140を移動させることにより、磁極面11aに対向する位置に非磁性体シート部142を配置すると、磁界発生部10が発生する磁界は減少することなく磁場変調シート140の外側に至る。
【0028】
このように、磁場変調シート140を移動させることにより、磁界発生部10が発生する磁界を所望量だけ減少させることができるとともに、磁性体シート部141を磁極面11aに対向させる動作と、非磁性体シート部142を磁極面11aに対向させる動作を、一定周期で行うことにより、磁界発生部10で発生させる磁気誘導用主磁界に、変調を加えることができる。
【0029】
第2実施形態の変形例として、磁場変調シート140に代えて、磁性体部分と非磁性部分に分けられた円板状部材を用い、これを回転させることによって磁場を変調することもできる。
【0030】
第2実施形態の別の変形例として、磁場変調シート140に代えて、厚みのある積層珪素鋼板を使用することにより、これを磁極面11aに対向させる動作と、取り除く動作を繰り返すことによって、より遮蔽効果を大きくした磁場の変調を行うこともできる。
<第3実施形態>(図5、図6)
第3実施形態は、本発明に係る磁気誘導システムを構成する磁場変調装置を、温度により磁気特性が変化するコイルを用いて実現したものである。図5に示すように、第3実施形態に係る磁気誘導システムは、磁界発生部210と、磁場変調装置230と、を備える。
【0031】
磁界発生部210は、一定温度以下となると電気抵抗がゼロとなる超電導コイル(超電導体)(例えば、NbTi、Nb3Sn)211と、この超電導コイル211に電流を供給する電源212(図6)と、を備える。電源212は制御部220によりその動作が制御される。制御部220には入力部225が接続され、この入力部225を操作することにより、操作者が所望する磁界の大きさに対応する量の電流を超電導コイル211に供給することができ、この電流量に応じた磁界が形成される。なお、磁界発生部210は、超電導コイル211及び電源212に代えて、超電導バルク永久磁石(例えば、ビスマス・ストロンチウム・カルシウム・銅の化合物からなる超電導バルク永久磁石)でもよい。
【0032】
磁場変調装置230は、真空容器231、ヒータ(温度調整部材)240、シールド容器(磁気シールド部材)232、及び、冷凍機250を備える。真空容器231は、内部を真空断熱状態に保持することのできる材料(例えば、非磁性ステンレス、アルミニウム、チタン、FRP(繊維強化プラスチック))からなる中空容器であって、内部に磁界発生部210が収容される。磁界発生部210は、熱輻射による外部からの熱進入を防ぐためにシールド容器232内に収容された状態で、真空容器231内に収容される。シールド容器232は、超電導コイル211と比較して高い温度から超電導特性を示す材料(例えば、イットリウム・バリウム・銅・酸素の化合物)からなる中空容器であって、上面外側にヒータ240が固定されている。このヒータ240には、導線241を介して、電源242が接続されており、この電源242から供給される電流量により、ヒータ240の温度を制御することができる。電源242は制御部220に接続されており、入力部を操作することによって、ヒータ240に供給する電流量を制御することができる。なお、ヒータ240に供給する電力が冷凍機250の冷凍能力よりも小さな電力であり、かつ、シールド容器232の全体の熱容量が十分に大きければ、超電導コイル211は永続的に超電導状態を保つことができる。
【0033】
冷凍機250は、モータ部251と、モータ部251から延びるシリンダ252と、シリンダ252の先端に固定された第1ステージ253と、第1ステージ253からさらに延びるシリンダ254と、シリンダ254の先端に固定され、その上面に超電導コイル211が固定される第2ステージ255と、を備える。第2ステージ255は、シールド容器232内に収容され、超電導コイル211を冷却して超電導状態を実現することができる。導線241は、高温超電導体(例えば、イットリウム・バリウム・銅・酸素の化合物)からなる電流導入端子であって、これの一部をシリンダ252の外周に密着するように配置すると、導線241から超電導コイル211への熱の侵入量を低減するとともに、導線241による発熱を避けることができるため好ましい。
【0034】
第3実施形態に係る磁気誘導システムにおいては、ヒータ240に電流を供給しない状態では、シールド容器232は超電導状態を保持している。このとき、磁界発生部210が発生する磁界(真空容器231を構成する面のうちヒータ240に近い面231aの外側に配置される被誘導部材に作用させる磁界)は、シールド容器232により低減される。これに対して、ヒータ240に、シールド容器232の一部が瞬間的に超電導状態を喪失する程度のパルス電流を加えると、磁界発生部210から外部に作用する磁界は、瞬間的に増加する。
【0035】
このようにヒータ240へ供給する電流量を調整することにより、磁界発生部210が発生する磁界を所望量だけ減少させることができるとともに、ヒータ240への電流の供給及び停止を、一定周期で行うことにより、磁界発生部210で発生させる磁気誘導用主磁界に、変調を加えることができる。
【0036】
シールド容器232は、磁気シールドとラジエーションシールドに分離して構成することもできる。
【0037】
本発明について上記実施形態を参照しつつ説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、改良の目的または本発明の思想の範囲内において改良または変更が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の第1実施形態に係る磁気誘導システムの構成を示す図である。
【図2】本発明の第1実施形態に係る磁気誘導システムの制御系統の構成を示すブロック図である。
【図3】(a)は本発明の第2実施形態に係る磁気誘導システムの構成を示す底面図であり、(b)は(a)の側面図である。
【図4】本発明の第2実施形態に係る磁気誘導システムの制御系統の構成を示すブロック図である。
【図5】本発明の第3実施形態に係る磁気誘導システムの構成を示す図である。
【図6】本発明の第3実施形態に係る磁気誘導システムの制御系統の構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0039】
10 磁界発生部
11 コイル
12 電源
30 磁場変調装置
31 磁性流体充填容器(充填容器)
80 磁性流体
130 磁場変調装置
140 磁場変調シート(磁場変調部材)
141 磁性体シート部(磁性部分)
142 非磁性体シート部(非磁性部分)
210 磁界発生部
230 磁場変調装置
232 シールド容器(磁気シールド部材)
240 ヒータ(温度調整部材)



【特許請求の範囲】
【請求項1】
被誘導部材を誘導するための一定の磁界を発生する磁界発生部と、
前記磁界発生部の周囲に配置され、前記磁界発生部が発生した磁界を遮蔽する状態、一部遮蔽する状態、及び、遮蔽しない状態を選択的に実現する磁場変調装置と、を備え、
前記磁場変調装置の動作により、前記磁界発生部が発生した磁界により形成される磁場を変調することを特徴とする磁気誘導システム。
【請求項2】
前記磁場変調装置は、磁性流体が充填される充填容器と、前記充填容器内に充填される前記磁性流体の量を調整する調整機構と、を有し、前記調整機構の動作により、前記充填容器に充填される前記磁性流体の量を調整して、前記磁界発生部が発生した磁界を遮蔽する状態、一部遮蔽する状態、及び、遮蔽しない状態を選択的に実現する請求項1記載の磁気誘導システム。
【請求項3】
前記磁場変調装置は、磁性部分と非磁性部分を備えた磁場変調部材、及び前記磁場変調部材の磁性部分及び非磁性部分と前記磁界発生部との相対的な位置関係を変更する相対位置変更部材、を有し、前記相対位置変更部材の動作により、前記磁界発生部が発生した磁界を遮蔽する状態、一部遮蔽する状態、及び、遮蔽しない状態を選択的に実現する請求項1記載の磁気誘導システム。
【請求項4】
前記磁場変調装置は、温度によって磁気特性が変化する磁性体を有する磁気シールド部材と、前記磁気シールド部材の温度を調整する温度調整部材と、を備え、前記温度調整部材の動作により、前記磁性体の磁気特性を制御して、前記磁界発生部が発生した磁界を遮蔽する状態、一部遮蔽する状態、及び、遮蔽しない状態を選択的に実現する請求項1記載の磁気誘導システム。
【請求項5】
前記磁気シールド部材の磁性体は超電導体であり、前記温度調整部材の動作により前記磁気シールド部材の温度を変更することにより、前記磁性体の超電導状態及び非超電導状態を選択的に実現し、これにより前記磁界発生部が発生した磁界を遮蔽する状態、一部遮蔽する状態、及び、遮蔽しない状態を選択的に実現する請求項4記載の磁気誘導システム。
【請求項6】
前記磁界発生部は、コイルと、前記コイルに対して、被誘導部材を誘導するための一定の磁界を発生するための電流を供給する電源と、を備える請求項1〜5のいずれか1項記載の磁気誘導システム。
【請求項7】
被誘導部材を誘導するための一定の磁界を発生する磁界発生部の周囲に配置され、
前記磁界発生部が発生した磁界を遮蔽する状態、一部遮蔽する状態、及び、遮蔽しない状態を選択的に実現することにより、前記磁界発生部が発生した磁界により形成される磁場を変調することを特徴とする磁場変調装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−167265(P2007−167265A)
【公開日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−367430(P2005−367430)
【出願日】平成17年12月21日(2005.12.21)
【出願人】(590001452)国立がんセンター総長 (80)
【出願人】(502336117)株式会社玉川製作所 (10)
【出願人】(000000527)ペンタックス株式会社 (1,878)
【Fターム(参考)】