説明

磁気読取装置

【課題】不正磁気読取装置によって磁気記録媒体に記録された磁気データが盗まれることのない磁気読取装置を提供する。
【解決手段】磁気カードの挿入または排出を行うカード挿入口付近に異物があるか否かを検知する異物検知部と、カード挿入口付近に、異物から出される磁界を妨げるための妨害磁界を発生させる磁界発生部と、異物検知部が異物を検知したか否かを判定し、異物検知部が異物を検知したと判定した場合に、磁界発生部が発生させている妨害磁界の強度を変位させる制御部と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気情報記録媒体の磁気データ不正読み取り防止機能を備え、磁気情報記録媒体の磁気データを読取る磁気読取装置に関する。
【背景技術】
【0002】
現金自動支払機(以下、CD(Cash Dispenser)と称す)や現金自動預け払機(以下、ATM(Automated Teller Machine)と称す)などの現金取引処理装置や、さらにはカードや通帳など磁気情報が記録された媒体を利用して取引処理を行なう取引処理端末において、磁気ヘッドを備えた不正磁気読取装置を、元々の磁気読取装置の磁気情報記録媒体の挿入口に被せるように設置して、磁気ストライプの磁気情報を不正に取得するスキミングと呼ばれる犯罪Aがある。この対策として、取り付けられた不正磁気読取装置を検出する対策1、磁気情報記録媒体を間欠的に駆動して取込み、返却することによって不正磁気読取装置による磁気データの読み取りを困難にする対策2、磁界によって不正磁気読取装置を機能しないようにする対策3などの種々の技術が公開されている。
【0003】
このような技術の1つとして、磁気カード挿入・排出用のカードスロットの外側部分の領域に磁界を発生させ、不正磁気読取装置を妨害する磁気カード取引装置がある(例えば、特許文献1参照)。この磁気カード取引装置では、カードスロット外側に不正に磁気ヘッドが取り付けられたとしても、磁界発生手段による妨害磁界によって、不正な磁気ヘッドを用いて挿入あるいは排出される磁気カードが読取られてしまうことを阻止することができる。
【0004】
また、磁気情報記録媒体の挿入口周囲にループアンテナを設置し、挿入口前方の磁気情報読み取りを妨害する磁気読取装置がある(特許文献2参照)。この磁気読取装置では、磁気情報記録媒体の周囲を取り囲むように取り付けられたループアンテナと、ループアンテナから磁界を発生させるための発振器と、挿入口に挿入された磁気情報記録媒体を検出する媒体検出センサとを備え、媒体検出センサが磁気情報記録媒体を検出した場合に、発振器がループアンテナから磁界を発生させることにより、挿入口の前方における磁気情報記録媒体の磁気データ読み取りを妨害することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−67524号公報
【特許文献2】特開2005−266999号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した特許文献1では、磁界発生部がカードスロットの外側部分における磁気カードの磁気ストライプが通過する通過経路を含む領域に磁界を発生させているが、どのような磁界を発生させているのか具体的に開示されておらず、また、磁界発生部からの磁界を遮断するように不正磁気読取装置(例えば、磁性体の板等)が設置された場合、不正磁気読取装置に磁気データを読み取られてしまう場合があるという問題があった。
【0007】
また、図11に示すように、磁界の発生時期を磁気情報記録媒体の挿入時および排出時としている。従って、利用者が磁気情報記録媒体を挿入してから磁気情報記録媒体の挿入検知までの間(図11のA)、及び磁気情報記録媒体の排出後から利用者が磁気情報記録媒体を引き抜くまでの間(図11のB)は不正磁気読取装置に磁気情報を読取られてしまうという問題があった。
【0008】
また、特許文献2では、磁界発生部として挿入口の周囲を囲むように取り付けられたループアンテナを使用し、複数の周波数の磁界を発生させている。しかし、特許文献1の場合と同様に、磁界を遮断するように不正磁気読取装置が設置された場合には、不正磁気読取装置に磁気データを読み取られてしまうという問題があった。
【0009】
本発明の目的は、磁界を遮断するように不正磁気読取装置が設置された場合であっても、不正磁気読取装置によって磁気記録媒体に記録された磁気データが盗まれることのない磁気読取装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した目的を達成するために、本発明にかかる磁気読取装置は、磁気カードの挿入または排出を行うカード挿入口付近に異物があるか否かを検知する異物検知部と、前記カード挿入口付近に、前記異物から出される磁界を妨げるための妨害磁界を発生させる磁界発生部と、前記異物検知部が前記異物を検知したか否かを判定し、前記異物検知部が前記異物を検知したと判定した場合に、前記磁界発生部が発生させている前記妨害磁界の強度を変位させる制御部と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、磁界を遮断するように不正磁気読取装置が設置された場合であっても、不正磁気読取装置によって磁気記録媒体に記録された磁気データが盗まれることのない磁気読取装置を提供することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本実施形態にかかる磁気読取装置の主要部の構成を示すブロック図である。
【図2】(a)本実施形態にかかる磁気読取装置の内部構造を示す概略図である。(b)挿入口とコアとの位置関係を示す図である。(c)挿入口の上下にループアンテナを配置した場合の礼を示す図である。
【図3】(a)磁気読取装置の電源投入後の初期動作の処理手順を示すフローチャートである。(b)異物検知処理の処理手順を示すフローチャートである。
【図4】本実施形態にかかる磁気読取装置がカードの取込動作、または読取動作を行う場合の処理手順を示すフローチャートである。
【図5】本実施形態にかかる磁気読取装置がカードの返却動作を行う場合の処理手順を示すフローチャートである。
【図6】磁界発生部に対してループアンテナに流す電流を増大させるように制御し、発生磁界を大きくする様子を示す図である。
【図7】異物検知部が異物を検知した場合に、磁界制御部が周波数を変化させる様子を示す図である。
【図8】電流計を設置した磁気読取装置の主要部の構成を示すブロック図である。
【図9】コアを設置しない場合におけるカードの取込動作および読取動作の処理手順を示すフローチャートである。
【図10】(a)磁界発生部が挿入口の前面側に対して常に発生させる磁界のタイミングチャートである。(b)図9に示したフローチャートの処理を行った場合に磁界発生部が発生させる磁界のタイミングチャートである。
【図11】従来技術による磁界の発生時期を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図1から図11を参照して、本発明にかかる磁気読取装置の実施の形態を詳細に説明する。
【0014】
図1は、本実施形態にかかる磁気読取装置1の主要部の構成を示すブロック図である。磁気読取装置1は、本体の動作を制御する制御部(CPU)2と、本体に挿入された磁気カードに記録されている磁気データを読み取る磁気情報読取部3と、本体に挿入されたカードを搬送するカード搬送路4と、カード搬送路4におけるカードの位置を検出するカード位置センサ5と、磁気情報読取部3で読取った磁気情報を記憶するメモリ6と、上位装置との接続部であるホストインターフェイス7と、本体前面部に設置されたカード挿入口ユニット24と、カード挿入口ユニット24内に設置され、磁界を発生させる磁界発生部8と、磁界発生部8の動作を制御する磁界制御部9と、カード挿入口ユニット24内に設置され、磁気読取装置1の外側に設置された異物を検知する異物検知部10と、異物検知部10の動作を制御する異物検知制御部11と、カードの搬送を制御するカード搬送制御部40と、利用者を検知するための顧客検知センサ50と、を含んで構成されている。
【0015】
図2(a)は、本実施形態にかかる磁気読取装置1の内部構造を示す概略図である。図2(a)において、符号21は磁気カード(以下、カード21と言う。)である。磁気読取装置1本体の前面には、カード21を挿入する挿入口22が形成されている。挿入口22の近くには、挿入口22に挿入されたカード21を検出する挿入検知センサ23が設けられている。この挿入検知センサ23は、押圧センサであり、挿入口22から挿入されたカード21によって押圧される位置に配置されている。
【0016】
また、カード21を挟持して搬送する一対の搬送ローラ25〜28がカード21の搬送方向に並べられている。磁気読取装置1は、カード搬送路4として、これらの搬送ローラ25〜28により、カード21の搬送路を形成している。一対の搬送ローラ25〜28は、それぞれ一方がモータの回転力が伝達される駆動ローラであり、他方がこの駆動ローラに従動して回転する従動ローラである。搬送ローラ25〜28を駆動するモータ(不図示)は、1つである。
【0017】
カード搬送制御部40は、このモータの回転(回転方向、回転速度を含む)、停止を制御することにより、カード21の取り込み、およびカードの排出(返却)を行う。磁気情報読取部3は、搬送ローラ25〜28により形成されたカード搬送路4を搬送されているカード21の磁気ストライプに記録されている磁気情報を読み取る磁気ヘッド29を有している。また、カード21の有無を検出するセンサ30〜33がカード21の搬送路に沿って並べられている。センサ30〜33の配置間隔は、カード21の搬送方向の長さよりも短い。センサ30〜33は、発光部と受光部(いずれも不図示)とからなる光センサであり、搬送路を挟んで発光部と受光部とを対向させて配置している。
【0018】
センサ30は、挿入口22に最も近い搬送ローラ25にカード21が挟持されたことを検出するためのものである。また、センサ33は、本体に挿入されたカード21が、カード21を一時的に保持する貯留部(不図示)に達したことを検出するためのものである。センサ31、32は、カード搬送路4を搬送されているカード21の位置を検出するためのものである。挿入検知センサ23、およびセンサ30〜33の検出結果により、本体にカード21が挿入されているかどうか、および搬送路におけるカード21の位置を検出する。また、磁気ヘッド29とセンサ33との配置間隔は、カード21の搬送方向の長さよりも少し長くしているので、カード21が貯留部に達した際、すなわちカード21の先端がセンサ33に検出される位置に達した際には、磁気データ読取部3がカード21 に記録されている磁気データの読み取りを完了している。
【0019】
なお、磁気読取装置1の前面には、異物検知センサ36が設けられ、挿入口22の前に異物が設置された場合に、異物を検知した旨の信号(検知信号)を制御部2に対して出力する。
【0020】
磁気読取装置1の前面には、挿入口22の周囲を囲むようにコア34が設置されている。図2(a)のうちの左部分の図は、コア34が挿入口22の周囲を囲む様子を示す図である。挿入口22には、その周囲を囲むように、ループアンテナ35(導体を1回または複数回ループ状に巻いたアンテナ)が設けられている。コア34の素材はフェライト等の透磁率が大きい素材である。図2(b)は、挿入口22とコア34との位置関係を示す図である。図2(b)に示すように、コア34は挿入口22の周囲を囲み、ループアンテナ35の後方(磁気読取装置1の磁気ヘッド29側)を覆うような形状をしている。ループアンテナ35は、コア34を囲むように設けられている。ループアンテナ35の両端に磁界制御部9から駆動信号が印加されると、ループアンテナ35は、挿入口22周辺に磁界を発生させる。この磁界は、挿入口22の前面に取り付けられた不正磁気情報読取装置による磁気カード21の磁気情報の窃取を妨害する。
【0021】
コア34は、図2(a)に示したようにL字型(または逆L字型)の形状で配置され、ループアンテナ35から磁気読取装置1の内部方向に放射される磁界を吸収し、挿入口22側へ放射する。したがって、コア34を設けたことによって、ループアンテナ35から放射されている磁界が磁気読取装置1の内部に及ぼす影響を抑えることができる。すなわち、挿入口22から挿入されて搬送路上を搬送されるカード21や磁気ヘッド29に対する磁界の影響を抑えることができるので、磁気ヘッド29は、磁界の影響を受けることなくカード21の磁気情報を読み取ることができる。
【0022】
また、コア34は上述した形状で配置されているので、挿入口22の前面側に放射される磁界を大きくすることが出来る。また、このようなコア34を常設することによって、図10(a)に示すように、挿入口22の前面側に対して磁界を常に発生させておくことが可能である。さらに、後述するように、ループアンテナ35から放射させる磁界を変化させて大きくすることが出来るので、ループアンテナ35に流す電流を小さくすることが可能となり、磁気読取装置1本体が消費する電力を抑えることができる。
【0023】
なお、以下の説明では、コア34を囲むようにしてループアンテナ35が配置されているが、図2(c)に示すように、挿入口22の上下(または左右等の対称な位置)にループアンテナ35を配置することとしてもよい。この場合、ループアンテナ35の数に応じて磁界発生部8を複数設け、コア34を囲むようにしてループアンテナ35を配置した場合に比べて大きい磁界を発生させるため、より効果的に不正磁気読取装置を妨害することが出来る。さらには、図2(c)に示す場合において、磁界制御部9が、複数の磁界発生部8から周波数が各々異なる磁界を発生させるように設定してもよい。この場合、周波数の低い磁界は鉄損によって失われるエネルギーが小さくなり、より効果的に不正磁気読取装置を妨害することが出来る。
【0024】
次に、本実施形態にかかる磁気読取装置1の動作について説明する。図3(a)は、磁気読取装置1の電源投入後の初期動作の処理手順を示すフローチャートである。電源投入後、磁気読取装置1の磁界制御部9は磁界発生部8を駆動し、挿入口22の周辺に磁界を発生させる(ステップS1)。さらに、磁気読取装置1の異物検知制御部11は異物検知センサ36を駆動し(ステップS2)、異物検知処理を開始する。
【0025】
図3(b)は、異物検知処理の処理手順を示すフローチャートである。図3(b)に示すように、異物検知処理では、まず、異物検知制御部11は、異物検知センサ36が異物を検知したか否かを判定する(ステップS31)。そして、異物検知制御部11は、異物検知センサ36が異物を検知したと判定した場合(ステップS31;Yes)、磁界制御部9は、図6に示すように、磁界発生部8に対してループアンテナ35に流す電流を増大させるように制御し、発生磁界を大きくする(ステップS32)。一方、異物検知制御部11は、異物検知センサ36が異物を検知していないと判定した場合(ステップS31;No)、そのまま待機する。
【0026】
その後、異物検知制御部11は、異物検知センサ36が異物を検知しなくなったか否かを判定し(ステップS33)、異物検知センサ36が異物を検知しなくなったと判定した場合(ステップS33;No)、磁界制御部9は、ループアンテナ35に流す電流を元に戻すように磁界発生部8を制御し(ステップS34)、処理を終了させる。なお、異物検知センサ36が異物を検知していると判定した場合(ステップS33;Yes)、磁界制御部9は、ループアンテナ35に流す電流の大きさを維持させる。このステップS34が終了すると、図3(a)、図3(b)に示した全ての処理が終了する。
【0027】
図6に示す例では、磁界発生部8は、異物検知センサ36が異物を検知する前の駆動電流の値P1に比べ、より大きい値P2となるように駆動電流を増大させ、その後、異物検知センサ36が異物を検知しなくなると、磁界発生部8は、異物検知センサ36が異物を検知する前の元の駆動電流の値P1となるように駆動電流を減少させている。このように、異物検知センサ36が異物を検知した場合に磁界を大きくすることによって、挿入口22の前方に不正磁気読取装置(例えば、磁性体の異物)が置かれた場合であっても、その不正磁気読取装置による磁気読取装置1に対するスキミング等の不正行為を妨害することが出来る。
【0028】
図4は、本実施形態にかかる磁気読取装置1がカード21の取込動作、または読取動作を行う場合の処理手順を示すフローチャートである。以下、このフローチャートに沿って説明するが、磁気読取装置1では、挿入検知センサ23及びセンサ30〜33によって、カード21が検出されていない状態であるものとする。また、磁界発生部8は、ループアンテナ35に駆動電流を流しており、ループアンテナ35からは磁界を放射しているものとする。
【0029】
図4に示すように、制御部2は、挿入検知センサ23がカード21を検知したか否かを判定し(ステップS41)、挿入検知センサ23がカード21を検知したと判定すると(ステップS41;Yes)、カード21が挿入されたと判定し、カード搬送制御部40は、搬送ローラ25〜28の回転を開始させる(ステップS42)。一方、制御部2は、挿入検知センサ23がカード21を検知していないと判定すると(ステップS41;No)、そのまま待機する。
【0030】
なお、上述したステップS42の処理では、搬送ローラ25〜28は、挿入されたカード21を本体内部に取り込む方向(以下、正方向と言う。)に回転する。この後、カード搬送制御部40は、カード21を貯留部まで一定速度で搬送させる。カード搬送制御部40がカード21を貯留部へ搬送しているときに、磁気ヘッド29がカード21の磁気ストライプに当接し、磁気情報読取部3は、このカード21に記録されている磁気データを読み取る(ステップS43)。
【0031】
制御部2は、搬送ローラ28の隣に配置されたセンサ33がカード21を検出したか否かを判定し(ステップS44)、搬送ローラ28の隣に配置されたセンサ33がカード21を検出したと判定した場合(ステップS44;Yes)、搬送されたカード21が後端に達したと判定し、カード搬送制御部40は、搬送ローラの回転を停止させる(ステップS45)。一方、搬送ローラ28の隣に配置されたセンサ33がカード21を検出していないと判定した場合(ステップS44;No)、そのまま待機する。このステップS45が終了すると、図4に示した全ての処理が終了する。
【0032】
次に、貯留部に貯留したカード21を利用者に返却するときの動作(カード返却動作) について説明する。図5は、本実施形態にかかる磁気読取装置1がカード21の返却動作を行う場合の処理手順を示すフローチャートである。
【0033】
まず、カード搬送制御部40は、搬送ローラ25〜28の回転を開始する(ステップS51)。ステップS51では、カード搬送制御部40は、搬送ローラ25〜28を、カード21を貯留部から挿入口22へ搬送する方向(以下、逆方向と言う。)に回転させ、カード21が一定速度で挿入口22まで搬送される。このときも、磁界制御部9は、磁界発生部8に対してループアンテナ35から妨害磁界を放射させるように制御している。制御部2は、搬送ローラ25の隣に配置されたセンサ30がカード21の後端を検出したか否かを判定する(ステップS52)。
【0034】
そして、制御部2が、搬送ローラ25の隣に配置されたセンサ30がカード21の後端を検出したと判定した場合(ステップS52;Yes)、カード搬送制御部40は、逆方向に回転されている搬送ローラ25〜28の回転を停止させる(ステップS53)。一方、制御部2が搬送ローラ25の隣に配置されたセンサ30がカード21の後端を検出していないと判定した場合(ステップS52;No)、そのまま待機する。なお、ここでは、カード21の先端および後端を、カード21の搬送方向に基づいて説明しているため、上述したカード21の取込動作および読取動作時におけるカード21の後端が、このカード返却時におけるカード21の先端となっている。
【0035】
制御部2は、センサ30がカード21を検出している状態からカード21を検出していない状態に変化したか否かを判定し(ステップS53)、センサ30がカード21を検出している状態からカード21を検出していない状態に変化した、すなわちセンサ30がカード21の後端を検出したと判定した場合(ステップS53;Yes)、カード搬送制御部40は、搬送ローラ25〜28を停止させてカード21の搬送が停止する(ステップS54)。一方、制御部2は、センサ30がカード21の後端を検出していないと判定した場合(ステップS53;No)、そのまま待機する。これらの処理においては、カード21は搬送ローラ25に挟持されており、また、その先端部分が挿入口22から外側に突出している。したがって、利用者は、挿入口22から突出しているカード21の先端部分をつかんで抜き取ることができる。
【0036】
制御部2は、挿入検知センサ23がカード21を検出している状態からカード21を検出していない状態に変化したか否かを判定し(ステップS55)、挿入検知センサ23がカード21を検出している状態からカード21を検出していない状態に変化した、すなわちカード21が抜き取られたと判定した場合(ステップS55;Yes)、制御部2は、処理を終了させる。一方、制御部2は、カード21が抜き取られていないと判定した場合(ステップS55;No)、そのまま待機する。このステップS55の処理が終了すると、図5に示した全ての処理が終了する。
【0037】
上述した実施の形態においては、ループアンテナ35に対して流す電流値を増大させることによってループアンテナ35に生じさせる磁界を変化させることとしたが、異物検知部9が異物を検知した場合に、磁界制御部9が発生させる駆動電流の周波数を変化させることとしてもよい。
【0038】
図7は、異物検知部10が異物を検知した場合に、磁界制御部9が周波数を変化させる様子を示す図である。図7に示すように、異物検知部10が異物を検知すると、磁界制御部9はループアンテナ35への駆動電流の周波数の値をF2からF2よりも低いF1に設定する。このように駆動電流の周波数の値をF2からF2よりも低いF1に設定することによって、ループアンテナ35から発生する磁界の周波数が低くなる。したがって、挿入口22の前に置かれた異物が磁性体であった場合、鉄損によって失われるエネルギーが小さくなり、挿入口22の前方に設置された不正磁気読取装置による磁気読取装置1に対するスキミング等の不正行為を妨害することが出来る。
【0039】
また、上記実施形態では異物検知センサ36を設けたが、これに変えてループアンテナ35の電流値を計測する電流計12を設置しても良い。図8は、電流計12を設置した磁気読取装置1の主要部の構成を示すブロック図である。ループアンテナ35を流れる電流値を電流計12で計測することにより、ループアンテナ35の前面に鉄板やフェライト等の透磁率が高い異物が取り付けられたことを検出する。透磁率の高い異物が取り付けられると、ループアンテナ35のインダクタンスが変化する。この結果、透磁率の高い異物が取り付けられてない場合に比べて電流値が変化する。この場合、磁界制御部9は、計測された電流値があらかじめ定められた範囲内であるか否かを判定し、計測された電流値があらかじめ定められた範囲内ではないと判定した場合は、磁界制御部9は異物が取り付けられたと判断し、駆動電流を増やしてループアンテナ35から発生させる磁界を大きくすることが可能となる。
【0040】
さらに、上述した実施の形態においては、コア34を用いて、磁気ヘッド29によるカード21の磁気情報の読み取りが妨害されることを防いでいるが、コア34を設置しない構成としても良い。図2(a)に示したようなコア34を設置しない場合、ループアンテナ35からの磁界が磁気ヘッド29側に放射されることを物理的に防ぐことはできない。しかし、カード21の取り込みや読取動作を行う際に、磁界制御部9が発生させている磁界を変化させることによって、ループアンテナ35から放射される磁界によって磁気ヘッド29がカード21の読取動作を行う際の影響を防ぐことが可能となる。
【0041】
図9は、コア34を設置しない場合におけるカード21の取込動作および読取動作の処理手順を示すフローチャートである。以下、このフローチャートに沿って説明するが、磁気読取装置1は、挿入検知センサ23及びセンサ30〜33においてカード21が検出されていない状態であるものとする。また、磁界発生部8は、ループアンテナ35に駆動電流を流しており、ループアンテナ35からは磁界を放射しているものとする。
【0042】
図9に示すように、制御部2は、挿入検知センサ23がカード21を検知したか否かを判定する(ステップS91)。そして、制御部2は、挿入検知センサ23がカード21を検知したと判定した場合(ステップS91;Yes)、カード21が挿入されたと判定し、カード搬送制御部40は、搬送ローラ25〜28が正方向に回転を開始するように制御する(ステップS92)。この後、カード搬送制御部40は、カード21を貯留部まで一定速度で搬送し、カード搬送制御部40がカード21を貯留部まで搬送しているときに、センサ30〜33上を通過する。
【0043】
制御部2は、磁気ヘッド29より挿入口22に近い側に設置されたセンサ31がカード21を検出したか否かを判定し(ステップS93)、磁気ヘッド29より挿入口22に近い側に設置されたセンサ31がカード21を検出したと判定した場合(ステップS93;Yes)、ループアンテナ35への駆動信号を停止させ、磁界の発生を停止させる(ステップS94)。センサ31と挿入口22の距離はカード21よりも長くなっているため、磁界発生を停止しても、挿入口22の前に設置された不正磁気読取装置に磁気情報を読取られることは無い。一方、磁気ヘッド29より挿入口22に近い側に設置されたセンサ31がカード21を検出していないと判定した場合(ステップS93;No)、そのまま待機する。
【0044】
その後、磁気ヘッド29がカード21の磁気ストライプに当接し、磁気情報読取部3は、このカード21に記録されている磁気データを読み取る(ステップS95)。制御部2は、搬送ローラ28の隣に配置されたセンサ33がカード21を検出したか否かを判定し(ステップS96)、センサ33がカード21を検出したと判定した場合(ステップS96;Yes)、カード21が後端に達したと判定し、カード搬送制御部40は、搬送ローラの回転を停止させる(ステップS97)。その後、磁界発生部8は、制御部2からの指示に応じてループアンテナ35への駆動信号を印加し、ループアンテナ35は再び磁界を発生させる(ステップS98)。カード返却動作については、図5に示したフローチャートと同様の処理を行うためここではその説明を省略する。
【0045】
図10(b)は、図9に示したフローチャートの処理を行った場合における磁界発生のタイミングチャートである。図10(b)に示すように、センサ31がカード21の先端を検知した場合に、磁界制御部9はループアンテナ35から発生する磁界を停止させ、その後、センサ33がカード21の後端を検知した場合に、再び磁界制御部9はループアンテナ35から磁界を発生させている。このように、コア34が設置されていない場合であっても、磁気ヘッド29がカード21の磁気データを読み取る間(センサ31およびセンサ33によってカード21が検知されている間)のみループアンテナ35から発生する磁界を停止させるので、カード21が挿入される際またはカード21が排出される際の不正磁気読取装置による磁気読取装置1に対するスキミング等の不正行為を妨害することが出来る。
【0046】
このように、異物検知部10が、カード21の挿入または排出を行う挿入口22付近に不正磁気読取装置があるか否かを検知し、挿入口22付近に、不正磁気読取装置から出される磁界を妨げるための妨害磁界を発生させる磁界発生部8と、磁界制御部9が、異物検知部10が不正磁気読取装置を検知したか否かを判定し、異物検知部10が不正磁気読取装置を検知したと判定した場合に、磁界発生部8が発生させている妨害磁界の強度を変位させるので、磁界を遮断するように不正磁気読取装置が設置された場合であっても、不正磁気読取装置によって磁気記録媒体に記録された磁気データが盗まれることがない。
【0047】
例えば、磁性体の板を用いて磁界を遮断する不正磁気読取装置が磁気読取装置周辺に設置された場合であっても、異物検知部10が不正磁気読取装置を検出し、磁界発生部8から発生させる磁界を大きくするので、不正磁気読取装置を妨害することが出来る。また、異物検知部10が不正磁気読取装置を検出したタイミングで磁界を大きく変位させているので、カード21が挿入されてからカード21の挿入を検知するまでの間に、不正磁気読取装置によってカード21の磁気データが盗まれることもない。
【0048】
さらに、図2(c)に示したように、磁界発生部8を複数設け、異物検知部10が不正時期読取装置等の異物を検知した際に複数の磁界発生部から各々磁界を発生させるように構成したので、上述したような不正磁気読取装置が設置された場合であっても、異物検知部10が不正磁気読取装置を検出し、複数の磁界発生部8から磁界を発生させることで、発生させる磁界を大きくし、不正磁気読取装置を妨害することが出来る。
【0049】
また、磁界制御部9は、異物検知部10で異物を検知した際に、発生させた磁界の周波数を変位させるので、上述したような不正磁気読取装置が設置された場合に、鉄損によって失われるエネルギーが小さくなるように周波数を変位させ、不正磁気読取装置を妨害することが出来る。
【0050】
さらに、複数の磁界発生部8から発生させる磁界の周波数が各々異なるように設定されているので、例えば、磁性体の板を用いて磁界を遮断する不正磁気読取装置が設置された際、周波数の低い磁界は鉄損によって失われるエネルギーが小さくなり、不正磁気読取装置を妨害することが出来る。
【0051】
また、異物検知部10が異物を検知したときのみ、磁界発生部8から磁界を発生させるので、不正磁気読取装置が設置された状態にある場合に、カード21に記録された磁気情報の盗難を妨害することが出来る。また、不正磁気読取装置が設置されていない場合には、磁界を発生させることがないため、電力を無駄に消費することもない。
【0052】
上述した実施の形態においては、異物検知部10が不正磁気読取装置を検出し、磁界制御部9が、磁界発生部8が発生させる磁界の大きさを制御しているが、例えば、顧客検知センサ50が、赤外線等によって利用者を検知した場合に、磁界制御部9が、磁界発生部8が発生させる磁界を大きくするように変位させてもよい。この場合、利用者がカード21を磁気読取装置1に近づけた際(磁気読取装置1に挿入する前)における不正磁気読取装置によるカード21の磁気情報の盗難を妨害することが出来る。
【0053】
なお、本発明は、上記実施の形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化することができる。また、上記実施の形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成することができる。例えば、実施の形態に示される全構成要素からいくつかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施の形態にわたる構成要素を適宜組み合わせても良い。
【符号の説明】
【0054】
1…磁気読取装置
2…制御部(CPU)
3…磁気情報読取部
4…カード搬送路
5…カード位置センサ
6…メモリ
7…ホストインターフェイス
8…磁界発生部
9…磁界制御部
10…異物検知部
11…異物検知制御部
12…電流計
21…磁気カード
22…カード挿入口
23…カード挿入検知センサ
24…カード挿入口ユニット
29…磁気ヘッド
34…磁性体コア
35、35a、35b…ループアンテナ
36…異物検知センサ
40…カード搬送制御部
50…顧客検知センサ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁気カードの挿入または排出を行うカード挿入口付近に異物があるか否かを検知する異物検知部と、
前記カード挿入口付近に、前記異物から出される磁界を妨げるための妨害磁界を発生させる磁界発生部と、
前記異物検知部が前記異物を検知したか否かを判定し、前記異物検知部が前記異物を検知したと判定した場合に、前記磁界発生部が発生させている前記妨害磁界の強度を変位させる制御部と、
を備えることを特徴とする磁気読取装置。
【請求項2】
前記磁界発生部が前記カード挿入口付近に複数設けられ、
前記制御部は、前記異物検知部が前記異物を検知した場合に、それぞれの前記磁界発生部が発生させる前記妨害磁界の強度を変位させる、
ことを特徴とする請求項1に記載の磁気読取装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記異物検知部が前記異物を検知したと判定した場合において、前記磁界発生部が発生させている前記妨害磁界の強度を大きくするように前記磁界の強度を変位させる、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の磁気読取装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記異物検知部が前記異物を検知したと判定した場合において、前記磁界発生部が発生させている前記妨害磁界の周波数を変位させる、
ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の磁気読取装置。
【請求項5】
前記磁界発生部が発生させている前記妨害磁界が、前記磁気読取装置の内部方向に放射される磁界を吸収する部材が設けられている、
ことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の磁気読取装置。
【請求項6】
利用者を検知する検知部をさらに備え、
前記制御部は、前記検知部が前記利用者を検知した場合に、前記磁界発生部が発生させている前記妨害磁界の強度を変位させる、
ことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の磁気読取装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−192182(P2011−192182A)
【公開日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−59650(P2010−59650)
【出願日】平成22年3月16日(2010.3.16)
【出願人】(504373093)日立オムロンターミナルソリューションズ株式会社 (1,225)
【Fターム(参考)】