説明

磁界プローブを用いた電気機器の部分放電検出方法

【課題】プローブの校正をやり直すことなく、一度、校正すれば部分放電を精度良く検出できる。
【解決手段】電気機器本体10のアース端子に接続した接地線11に主磁界プローブ15aと補助磁界プローブ15bからなる磁界プローブ15を配置し、機器本体を課電しないで、校正パルスを接地線11に流し、補助磁界プローブ15bの出力が最も小さくなるように磁界プローブ15の位置を調整した後、主磁界プローブ15aを校正する。このとき得た校正値を記憶しておき、その後、機器本体を課電し、部分放電パルスを磁界プローブ15で捕捉し、再度、補助磁界プローブ15bの出力が最も小さくなるように磁界プローブ15の位置を調整し、校正時と同じ設置位置とした後、主磁界プローブ15aで捕捉した磁界信号を前記校正値から部分放電電荷量を算出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気機器で発生した部分放電を、磁界プローブを用いて検出する電気機器の部分放電検出方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
高圧の電気設備や機器に共通して発生する異常現象としては、製造時の不良や経年劣化の影響による部分放電の発生が挙げられる。一般的にモールド機器などに使用される絶縁材料内部に微小な空隙欠陥部(ボイド)や剥離部などがあると、運転時にその部分に電界が集中し、部分放電と呼ばれる微弱な放電が発生する。また、モールド絶縁体表面の汚損の影響によっても部分放電が発生することがある。
【0003】
特に、後者の場合には、汚損を除去すれば、部分放電は防止できるけれども、前者の場合の部分放電は、防止が困難であり、回復性はない。従って、部分放電が発生した状態で運転を継続すると、ボイドや剥離状態を進展させる恐れがあり、最終的には、絶縁破壊に至る危険性がある。
【0004】
このため、電気機器で発生する部分放電を検出する手段が種々開発されるようになってきた。その1つに磁界プローブを用いた電路の部分放電検出方法がある(特許文献1参照。)。
【0005】
この検出方法は、電路の近傍に磁界センサを設け、このセンサで検出した信号を周波数解析し、所定の周波数範囲の信号の周波数と該周波数毎に対応する信号の大きさのデータを求め、このうち、第一の閾値を超える大きさを有する信号のデータ数を積算し、該積算値が第二の閾値を超えた場合に部分放電が発生したと判断するものである。
【0006】
また、他の1つは、課電導体(接地導体)の近傍に磁界プローブを近づけ、検出した信号を周波数解析し、所定周波数範囲の各周波数信号レベルのデータを求め、レベル順の設定範囲のデータ平均値を求め、この平均値の大小に基づき部分放電の有無を判断するものである(特許文献2参照。)。
【0007】
上記何れの特許文献でも、バックグランドノイズの判別については、磁界プローブを電路などから一定の距離離間させた状態で事前にノイズの検出を行い、部分放電と検出信号との差分を算出するなどの処理を行って判定している。
【0008】
磁界プローブで検出されるノイズは2つ考えられる。1つは、空間を伝搬してくる磁界ノイズであり、もう1つは、接地線を流れる電流ノイズである。前記両特許文献とも、前者の磁界ノイズの判別について述べたものである。
【0009】
上記部分放電検出方法は、放電検出対象電路近傍に磁界プローブを設置して、磁界ノイズを検出する。図7は接地線近傍に磁界プローブを設置した例を示す概略構成説明図で、図7において、110は変圧器などの電気機器、111はブッシング、112は電力系統、113は架台、114は電気機器110に接続された接地線、115は磁界プローブ、116は検出器本体である。
【0010】
図7に示す接地線114の近傍に設置(配置)された磁界プローブ115で部分放電を検出して検出器本体116で部分放電が検出されるが、このとき、磁界プローブ115の設置の仕方(接地線114からの距離や向きなど)により信号出力の大きさが異なってくる。特に、接地線114からの距離によって信号出力の影響が大きく異なってくる問題がある。
【0011】
図8は磁界プローブの設置位置と接地線からの距離を変化(符号Aから符号Bへと変化)させた場合における磁界プローブの出力変化特性図で、横軸に接地線からの距離を、縦軸に(磁界プローブ出力/最大出力)*100[%]を取った場合の接地線からの距離の影響を表したものである。
【0012】
上記磁界プローブの代わりに、別の手段として高周波CTを使用して信号を検出する場合もあるが、この高周波CTによる信号検出方法は、設置手段の違いによる影響を殆んど受けずに磁界ノイズを検出できる利点があるけれども、以下のような問題がある。
【0013】
実フィールドにおける接地線は、インシュロックで配線を固定している場合や絶縁筒に収納されている場合が多々ある。このように構成された接地線に高周波CTを設置するには、一般に、高周波CTでは、分割型が使用されて、高周波CT内に接地線を貫通配置することが行われているために、接地線の固定を取外したり、絶縁筒の一部を破壊して高周波CTを配置しなければならない作業を伴う場合がある。
【0014】
また、接地線を被覆しているインシュロックを剥がすことにより、高周波CTの設置が可能な場合でも、高周波CTの設置作業に伴う時間が余分に費やされるという問題がある。
【0015】
この点では、磁界プローブの方が接地線に磁界プローブを近接(隣接)させることで信号を検出することができるため、高周波CTの設置作業に比較して容易に設置できるので優れている。
【0016】
ただし、接地線にインシュロックや絶縁筒があるため、磁界プローブを接地線に均一(常時一定)に密着させて設置することが難しく、信号検出出力の大きさが不安定となる問題がある。
【0017】
一般的には、部分放電が発生した場合、定量的な評価判定方法としては、部分放電の放電電荷量(大きさ)をpC[ピコクーロン]で表す手段が取られている。このため、検出した信号を電荷量に換算するためには、校正器(パルスジェネレータ)を使用した校正作業が必要である。次にこの校正作業について述べる。
【0018】
まず、高周波CTの場合は、高周波CTを信号検出対象電路(接地線)に設置しておき、停電中に校正器を対象電気機器に接続し校正信号を入力する。その時の信号出力の大きさを既知放電電荷量出力レベルとして把握しておく。その後、電気機器設備に受電し信号出力の大きさを検出し、事前に実施した校正作業により把握している既知放電電荷量出力レベルと比較して、実際に発生している部分放電の放電電荷量(大きさ)が何pC[ピコクーロン]であるかを算出する。なお、上記校正作業は通常1回実施すればよい。
【0019】
一方、磁界プローブの場合は、磁界プローブを放電検出対象電路(接地線など)の近傍に設置した状態で、電気機器設備を停電状態にて校正器(パルスジェネレータ)を対象電気機器に接続し校正信号を入力する。その際に磁界プローブ設置位置での検出信号出力の大きさを把握し校正値とする。その後、磁界プローブの設置位置を動かさず、設備に受電し、磁界プローブの信号出力の大きさを検出し、前記校正値を基に部分放電の電荷量(大きさ)が何pC[ピコクーロン]であるかを算出する。このとき、磁界プローブの設置位置が変更されると信号出力も変化するため、以上の部分放電の校正作業は、部分放電の検出を行う(磁界プローブを設置)毎に実施する必要がある。
【0020】
また、部分放電をトレンド監視(定期的な監視)する場合は、検出箇所毎に一度校正作業を行い、その後、定期的(例えば2ヶ月に一度など)に検出を行い部分放電のパルス波の電荷量(大きさ)や発生頻度の変動を監視する手法が一般的である。高周波CTでは既にデータ収集が行われているものもあるが、磁界プローブによる部分放電のトレンド監視手法は行われていない。
【0021】
この理由は、磁界プローブでは、元の電流信号の大きさが同じでも、磁界プローブ設置の仕方(状態)により信号出力の大きさが変化するために行われていない。このような問題を解決するには、毎回停電を取ってプローブの校正作業を実施すれば可能であるが、現実的には極めて難しい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0022】
【特許文献1】特開2005−283489号公報
【特許文献2】特開2002−323531号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0023】
高周波CTと比較して磁界プローブを用いた部分放電の検出は、磁界プローブの接地線への設置手段(特に接地線と磁界プローブ間距離の影響が大きい)により信号出力の大きさが異なるため、検出信号の信頼性に問題が生じる。特に実フィールドにおいて、インシュロックや絶縁筒が付帯している場合は、設置状況を一定(接地線への磁界センサ「磁界プローブ」隣接もしくは接地線との距離一定)とすることが難しい問題がある。
【0024】
このため、部分放電の放電電荷量(大きさ)を算出する場合、鉄心を有するため接地線電流により発生する磁界を安定して検出できる高周波CTでは、一度校正作業をすれば検出時の高周波CTの設置状況が異なっても、高周波CTが接地線を貫通していれば、検出結果に影響を及ぼすことは無い。
【0025】
しかし、磁界プローブの場合は、設置状況が変わると、例えば、図8に示すように、磁界プローブの設置位置が、接地線から「符号A」から「符号B」に変化すると検出出力が「80%」から「58%」に減衰するため、磁界プローブを設置するたびに、その都度、磁界プローブの校正を行わないと部分放電の放電電荷量を算出することができない問題を持っている。
【0026】
よって、磁界プローブを使用して部分放電をトレンド監視する場合には、部分放電の放電電荷量で判断するため、その都度、磁界プローブを校正する必要がある。
【0027】
さらに、磁界プローブにより部分放電を検出する時、部分放電以外の電流ノイズが同時に検出される場合があり、この電流ノイズを誤って部分放電と判断してしまうことがある。
【0028】
本発明の目的は、上記の事情に鑑みてなされたもので、主磁界プローブと補助磁界プローブから磁界プローブを構成し、補助磁界プローブは主磁界プローブに比較して小型小面積に形成し、補助磁界プローブの出力が最も小さくなる位置に調整することにより、補助磁界プローブの縦中心線軸と接地線の中心線とが一致し、これにより、主磁界プローブの設置位置が一定となることで校正を再度やり直すことなく、精度良くかつ確実に部分放電の電荷量を求められ、部分放電を検出することができるようにした磁界プローブを用いた電気機器の部分放電検出方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0029】
上記の課題を達成するために、請求項1に係る発明は、部分放電検出対象の電気機器本体と、この電気機器本体のアース端子に接続される接地線と、接地線に流れる電流ノイズと機器本体からの部分放電パルス電流により発生する磁界信号を捕捉する磁界プローブとを設け、この磁界プローブで捕捉された磁界信号を処理して部分放電を検出する方法において、
前記磁界プローブを主磁界プローブと補助磁界プローブで構成し、補助磁界プローブを主磁界プローブの形状の大きさに比較して小型に形成して、磁界プローブを接地線に設置した後、
前記電気機器本体への課電を停止した後、プローブ校正用パルス電流を前記接地線に流し、これにより発生した磁界信号を、主及び補助磁界プローブが捕捉した後、補助磁界プローブが捕捉した磁界信号出力が最も小さくなるように磁界プローブの設置位置を調整した後に、
主磁界プローブが捕捉した磁界信号出力の大きさを求める信号処理を行って磁界プローブの校正を終了した後、
前記電気機器本体へ課電を行い、部分放電パルスによる磁界信号を、主及び補助磁界プローブが捕捉した後、補助磁界プローブが捕捉した磁界信号出力が最も小さくなるように磁界プローブの設置位置を調整した後に、主磁界プローブが、捕捉した磁界信号出力の大きさを求める信号処理を行って部分放電の電荷量を求め、部分放電を検出することを特徴とするものである。
【0030】
請求項2に係る発明は、請求項1において、前記主及び補助磁界プローブが捕捉した磁界信号出力を、フィルタを通して電流ノイズ成分をカットすることを特徴とするものである。
【0031】
請求項3に係る発明は、請求項1又は請求項2において、前記フィルタは、ハイパスフィルタ又はバンドパスフィルタからなることを特徴とするものである。
【0032】
請求項4に係る発明は、請求項1において、前記主及び補助磁界プローブが捕捉した磁界信号出力を切換器により切換えて出力することを特徴とするものである。
【0033】
請求項5に係る発明は、請求項1において、前記主磁界プローブと補助磁界プローブとの距離を一定に保持するように一体化させたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0034】
本発明によれば、磁界プローブを使用して部分放電の電荷量(大きさ)を検出する場合に、従来は、接地線から磁界プローブを離して設置するたびに磁界プローブの校正を実施する必要があったが、
本発明では、補助磁界プローブの出力が最も小さくなる位置を調整することにより、主磁界プローブの設置位置が一定となることで校正を再度やり直すことなく、部分放電の電荷量(大きさ)を精度良くかつ確実に検出することができる利点がある。
【0035】
また、本発明によれば、磁界プローブを使用して部分放電をトレンド監視する場合、従来では毎回設備を停止して磁界プローブの校正を行う必要があったため、トレンド監視が実施できなかったが、一度の磁界プローブの校正で可能となるために、この不具合を解消してトレンド監視の実施を可能とすることができるようにした。また、フィルタで電流ノイズをカットすることにより、電流ノイズを誤って部分放電と判断することなく精度良く検出が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の実施例1を示す部分放電検出対象の電気機器本体の概略構成及び磁界と磁界プローブの関係説明図。
【図2】接地線に主磁界及び補助磁界プローブからなる磁界プローブを設けて、補助磁界プローブの出力を最小としたときに、接地線と磁界プローブの距離は一定となり、これにより出力が距離の影響を受けないことを示す磁界プローブの出力変化特性図。
【図3】実施例1における主磁界及び補助磁界による磁界プローブを一体型に形成した磁界プローブの斜視図。
【図4】実施例1における信号処理ブロック図。
【図5】校正パルス、整流器ノイズ、部分放電パルスを示す波形図。
【図6】実フィールドにおける周波数測定結果を示す特性図。
【図7】電気機器の接地線に磁界プローブを設置したときの概略構成説明図。
【図8】磁界プローブで電流ノイズ信号等を検出したときの接地線からの距離の影響を示す磁界プローブの出力変化特性図。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【実施例1】
【0038】
図1は本発明の実施例1を示す部分放電検出対象の電気機器本体の概略構成及び磁界と磁界プローブの関係説明図で、この実施例1では電流ノイズとして整流器ノイズの場合について述べる。
【0039】
まず、磁界信号Hの処理について図1について説明する。図1において、10は部分放電検出対象の電気機器本体で、この電気機器本体10からは電路(以下接地線と称す)11が図示しないアース端子に接続されている。なお、12はライン側導体、13,14はブッシングである。
【0040】
15は、接地線11の軸方向に沿って設置した磁界捕捉面積が大きい大型形状の主磁界プローブ15a及び磁界捕捉面積が小さい小型形状の補助磁界プローブ15bからなる磁界プローブで、主磁界プローブ15aは、接地線11の軸方向の図示右側に距離「La」を隔てて設置される。また、補助磁界プローブ15bは、接地線11の図示奥側に補助磁界プローブ15bの縦中心線が接地線11の中心線と一致するように設置する。
【0041】
図3は、主磁界プローブ15aと補助磁界プローブ15bとを、上記設置位置のまま、クランク状に折曲した構成部材151内に一体的に構成して、接地線11に配置した一体型磁界プローブ本体152の斜視図を示すものである。これにより、補助磁界プローブ15bの縦中心線が接地線11の中心線と一致するとき、主磁界プローブ15aと接地線11の距離は、「La」となる構成である。
【0042】
図2は、主磁界プローブ15aの出力変化特性図で、この出力変化特性図は、補助磁界プローブ15bの出力が最小(距離L1の位置)となるように接地線11との位置を調整することにより、主磁界プローブ15aの距離「La」が一定とになり、出力が距離の影響を受けないものである。ここで、接地線11にパルス電流iが流れると、図1に示すように磁界信号Hが発生し、主磁界プローブ15aで磁界信号Haが、補助磁界プローブ15bで磁界信号Hbがそれぞれ検出されて出力される。
【0043】
まず、上記のように構成した磁界プローブ15を使用して部分放電を検出するに当たり、図4に示す信号処理ブロック図について述べる。
【0044】
この信号処理ブロックは、磁界プローブ15(152)を構成する主磁界プローブ15a,補助磁界プローブ15bと、主磁界プローブ15aと補助磁界プローブ15bの出力を切換える切換器16と、切換器16で切換えられたどちらかの出力を増幅するアンプ17と、増幅された信号が供給されるハイパスフィルタ18と、ハイパスフィルタ18で電流ノイズをカットし、ハイパスフィルタ18を通過した校正パスル電流が供給される信号処理部19と、この信号処理部19で校正パルス電流から信号出力の大きさが求められて記憶される記憶部20と、記憶された信号出力の大きさから部分放電であるかを判定する判定部21と、信号の大きさや判定結果が表示される表示部22とから構成されている。
【0045】
次に、上記のように構成された実施例1により磁界プローブの校正を行う作用について述べる。
【0046】
上記のように構成した磁界プローブ15(152)を接地線11に設置し、部分放電検出対象とする電気機器本体10の停電をとり、切換器16を補助磁界プローブ15b側に切換え接続してから、校正器(パルスジェネレータ)を電気機器本体10に接続してプローブ校正用パルス(以下校正パルス)を接地線11に流す。
【0047】
すると、磁界プローブ15(152)には、図5(a),(b)に示すように、校正パルスのみ又は校正パルスと電流ノイズによる磁界信号(a)又は(a)+(b)が検出される。磁界信号(a),(b)は、補助磁界プローブ15bで捕捉され切換器16を経由してアンプ17に送られて信号が増幅される。増幅された信号は、ハイパスフィルタ18に送られて以下のように信号は処理される。
【0048】
接地線11に流れる校正パルスと電流ノイズの主な周波数成分は、実フィールドでの周波数測定結果より図6に示すように、電流ノイズはf2以下のkHz帯で、校正パルスはf1以上のMHz帯が主成分となる。(校正パルスは、あらかじめ部分放電検出を想定した周波数成分MHz帯に合わせて設定されている。)
ここで、ハイパスフィルタ18の設定周波数がf2となっているため、電流ノイズが存在してもカットされ、ハイパスフィルタ18の出力には、信号出力(a)(校正パルス)のみを通して出力される。
【0049】
ハイパスフィルタ18から出力された信号出力(a)は、信号処理部18に送られて、この信号処理部18で信号出力(a)の大きさ「Hk」が最も小さくなるように補助磁界プローブ15bの設置位置を調整する。すなわち、補助磁界プローブ15bの縦中心線と接地線11の中心線と一致させる。
【0050】
このことについて以下説明する。図1に示す実施例1の磁界と磁界プローブの関係説明図において、接地線11の図示右側(主磁界プローブ15a側)で捕捉される磁界信号Hは、奥から手前の向きであり、一方、図示左側は手前から奥の向きになり、 この向きの異なる両磁界信号を、補助磁界プローブ15bで捕捉し磁界信号Hbを送出する。
【0051】
よって、磁界信号Hbの出力は、補助磁界プローブ15bの縦中心線が接地線11の中心線と一致するように補助磁界プローブ15bを配置すると、向きの異なる両磁界信号が最も多く打ち消し合うために、最も出力が小さくなる。このとき、接地線11と主磁界プローブ15aとの距離が丁度「La」一定となる。この設置位置に磁界プローブ15(152)を調整し動かさないようにする。
【0052】
次に切換器16を主磁界プローブ15a側に切り換える。上記と同様に、主磁界プローブ15aの出力信号が切換器16を経由してアンプ17、ハイパスフィルタ18から信号処理部19に送られる。ここでの処理で信号出力の大きさ「Hk」を求め、その後、求めた信号出力の大きさ「Hk」を利用して部分放電電荷量(大きさ)を求める。
【0053】
例えば、校正パルスを100[pC]としたならば、このときの大きさ「Hk」のデータを求めておく。このデータは記憶部20に送られ、記憶保存される。また、そのデータは、表示部22に送られて適宜画面に表示される。上記のようにして主磁界プローブ15aの校正データが得られたなら、校正器を取り外す。
【0054】
次に部分放電の検出を実施するには、部分放電検出対象とする電気機器本体10を課電する。この課電により、電気機器本体10から部分放電パルスが発生したとすると、部分放電パルスのみ又は部分放電パルスと電流ノイズとによる磁界信号Hが発生する。
【0055】
磁界信号Hは、磁界プローブ15aまたは補助磁界プローブ15bでそれぞれ検出され、出力に磁界信号Ha,Hbを得る。その磁界信号Ha,Hbは、切換器16を介してどちらかの信号がアンプ17に送られて増幅された後に、ハイパスフィルタ18に送られる。
【0056】
部分放電パルスと電流ノイズの主な周波数成分は、実フィールドでの周波数測定結果より図6に示すように、電流ノイズがf2以下となり、部分放電パルスはf1以上である。
【0057】
ここで、ハイパスフィルタ18の設定周波数がf2となっているため、電流ノイズが存在してもカットされ、ハイパスフィルタ18の出力には、部分放電パルスのみを通した信号出力が得られる。得られた信号出力は信号処理部19に送られ、ここで部分放電パルスの大きさ「Hpd」(図5)が求められ、最終的に部分放電の電荷量(大きさ)が下記のようにして求められる。
【0058】
処理「1」
校正時に求めておいた信号出力の大きさ「Hk」を使用して、部分放電の電荷量=100×Hpd/Hk[pC]の式から部分放電の電荷量が求められる。
【0059】
以上が校正実施後、磁界プローブ15(152)を動かさなかった場合である。もし、磁界プローブ15(152)を設置し直す場合には、切換器16を補助磁界プローブ15b側として出力が最も小さくなるように補助磁界プローブ15bの位置を調整し、その後、切換器16を主磁界プローブ15a側に切換えて磁界信号Haを検出し、同様に部分放電電荷量を求める。
【0060】
従来では、磁界プローブの設置位置が変化すると、磁界プローブの校正をやり直さないと部分放電電荷量が算出できないが、この実施例1では補助磁界プローブ15bの出力が最も小さくなるように位置を調整することにより、主磁界プローブ15aの設置位置が一定となることで校正を再度やり直すことなく部分放電電荷量の算出が可能となる。
【0061】
上記説明は信号処理部19の処理「1」の場合であるが、処理「2」としては、ハイパスフィルタ18の出力から抽出されたパルス波の一定時間内の個数を部分放電の電荷量毎にカウントしてデータを得、得られたデータは、判定部21に送られ、判定部21では「電荷量×個数」の総和Σが閾値以上のとき、部分放電が発生したと判断するとともに、表示部22に送られて画面に表示される。そして、トレンド監視する場合は、「電荷量(大きさ)と個数」の変動から部分放電と判断する。
【0062】
なお、上記ハイパスフィルタ18は、電流ノイズがカット可能なバンドパスフィルタで構成しても良い。また、上記切換器16を使用せず、アンプ17、ハイパスフィルタ18を2台づつ使用する構成としても良い。
【符号の説明】
【0063】
10…電気機器本体
11…接地線
15…磁界プローブ
15a…主磁界プローブ
15b…補助磁界プローブ
16…切換器
17…アンプ
18…ハイパスフィルタ
19…信号処理部
20…記憶部
21…判定部
22…表示部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
部分放電検出対象の電気機器本体と、この電気機器本体のアース端子に接続される接地線と、接地線に流れる電流ノイズと機器本体からの部分放電パルス電流により発生する磁界信号を捕捉する磁界プローブとを設け、この磁界プローブで捕捉された磁界信号を処理して部分放電を検出する方法において、
前記磁界プローブを主磁界プローブと補助磁界プローブで構成し、補助磁界プローブを主磁界プローブの形状の大きさに比較して小型に形成して、磁界プローブを接地線に設置した後、
前記電気機器本体への課電を停止した後、プローブ校正用パルス電流を前記接地線に流し、これにより発生した磁界信号を、主及び補助磁界プローブが捕捉した後、補助磁界プローブが捕捉した磁界信号出力が最も小さくなるように磁界プローブの設置位置を調整した後に、
主磁界プローブが捕捉した磁界信号出力の大きさを求める信号処理を行って磁界プローブの校正を終了した後、
前記電気機器本体へ課電を行い、部分放電パルスによる磁界信号を、主及び補助磁界プローブが捕捉した後、補助磁界プローブが捕捉した磁界信号出力が最も小さくなるように磁界プローブの設置位置を調整した後に、主磁界プローブが、捕捉した磁界信号出力の大きさを求める信号処理を行って部分放電の電荷量を求め、部分放電を検出することを特徴とする磁界プローブを用いた電気機器の部分放電検出方法。
【請求項2】
前記主及び補助磁界プローブが捕捉した磁界信号出力を、フィルタを通して電流ノイズ成分をカットすることを特徴とする請求項1記載の磁界プローブを用いた電気機器の部分放電検出方法。
【請求項3】
前記フィルタは、ハイパスフィルタ又はバンドパスフィルタからなることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の磁界プローブを用いた電気機器の部分放電検出方法。
【請求項4】
前記主及び補助磁界プローブが捕捉した磁界信号出力を切換器により切換えて出力することを特徴とする請求項1記載の磁界プローブを用いた電気機器の部分放電検出方法。
【請求項5】
前記主磁界プローブと補助磁界プローブとの距離を一定に保持するように一体化させたことを特徴とする請求項1記載の磁界プローブを用いた電気機器の部分放電検出方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−252780(P2011−252780A)
【公開日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−126403(P2010−126403)
【出願日】平成22年6月2日(2010.6.2)
【出願人】(000222037)東北電力株式会社 (228)
【出願人】(000006105)株式会社明電舎 (1,739)
【Fターム(参考)】