説明

神経刺激の方法及びシステム

【課題】神経系をより正確に刺激することを可能ならしめる、神経刺激のための方法及びシステムに関し、特に、脊髄及び傍脊髄神経根神経節の制御された刺激を提供する。
【解決手段】電極の後根神経節の上、中又はその周辺への移植により、1つ又はそれ以上の後根神経節40を選択的に刺激及び/又は神経調節するための刺激システム100及びコンポーネント;1つ以上の後根神経節の選択的な神経刺激法並びに脊髄への神経刺激の適用方法;電極115の後根神経節の上、中又はその周辺への移植と薬剤とを組み合わせて、1つ以上の後根神経節を選択的に刺激及び/又は神経調節する方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願に関する相互参照
本出願は米国仮出願第60/608,357号(2004年9月8日出願)の利益を主張する。該出願の全てを本願発明に引用して組み込む。
【0002】
本発明は神経系をより正確に刺激することを可能ならしめる、神経刺激のための方法及びシステムに関する。特に、本発明は実施態様として、脊髄及び傍脊髄神経根神経節(spinal and paraspinal nerve root ganglion)の制御された刺激を提供するものである。一つの実施態様で、神経節は 後根神経節 (DRG)であり、もう一つの実施態様では、神経節は交感神経系の部分である。
【背景技術】
【0003】
痛みのコントロール(managing)のために特定の電気的なエネルギーを脊髄に適用することは、1960年代から活発に行われている。適用された電気的エネルギーと神経組織との相互作用に関する正確な理解は、完全には得られていないが、神経組織に電場を適用すると、刺激された神経組織に関連している身体領域から伝達された、ある種のタイプの痛みを効果的にマスクし得ることが知られている。具体的には、特定の電気パルスを慢性的な苦痛のある身体領域に関連した脊髄に適用することで、知覚障害、又はしびれ感やちくちく感のような主観的感覚を、苦痛のある身体部分に誘導することができる。このしびれ感により、脳への急性でない痛感覚の伝達を効果的に遮断することができる。
【0004】
電気エネルギーは、疼痛知覚の阻止における使用と同様、様々な運動障害、例えば、振戦、失調、痙縮等の状態(疾患)を管理するのにも用いることができる。運動脊髄神経、または腹側神経根からの神経組織は、筋肉/運動制御シグナルを伝達する。感覚神経組織、または神経後根からの神経組織は痛シグナルを伝達する。対応する神経後根および神経前根から「別々に」出る;しかしながら、その直後に、神経後根および神経前根は混じるか絡み合う。従って、一つの状態(疾患、condition)(例えば、痛み)の管理/制御を意図した電気刺激は、しばしば、隣接する神経組織内の伝達経路(例えば、運動神経)との不慮の干渉を来す。
【0005】
図1に示すように、先行技術の脊柱又は脊髄刺激装置(spinal column or spinal cord stimulator, SCS)は、一般に電気エネルギーを脊髄硬膜層32の外側に位置する、電極6を有する細長いパドル5または硬膜外電極アレイ(配列)を通して伝達する。脊髄硬膜層32は脊髄13を囲んでおり、脳脊髄液(CSF)を含有している。脊髄13は連続体であり、図には脊髄13の3つの脊髄レベル14が示されている。例示の目的で、脊髄レベル14は脊髄13の小区域(サブセクション)であり、後根及び前根が脊髄13に加わる部位である。末梢神経44 は、後根42、後根神経節40及び神経前根41に分割され、その各々が脊髄13に流れ込む。上行経路(感覚伝導路)92はレベル2とレベル1の間に、下行経路(descending pathway)94はレベル2とレベル3の間に図示されている。脊髄レベル14は、脊椎の椎体の記載に一般に用いられている、脊椎レベルに対応させることができる。簡単にするため、各レベルは、唯一つの側の神経を表し、正常な解剖学的構造は、脊髄のパドル5に直接隣接した側に図示されている神経と同様の構造を表す。
【0006】
一般にSCSは脊髄硬膜外空間に配置する。従来、多数の特許文献にSCSシステムが開示されている。SCSの配置と使用に関するさらなる詳細は、例えばUS Patent 6,319,241(該特許文献の全体を本願に引用して組み込む)に記載されている。通常、パドル5は幅が約8mmであって、長さは、刺激すべき脊髄レベルの数に応じて24〜60mmである。図示した電極パドル5は、従来通り、3つの脊髄レベル14を刺激するのに適合されている。これらの例示レベル、1、2及び3は、脊髄13に沿ったどの部分でもよい。このような方法で刺激パドル5を配置することにより、電極6が複数の神経、即ち、複数の脊髄レベルにある後根神経節40、前根41及び末梢神経41に及ぶことになる。
【0007】
パドル5は数レベルに及ぶので、発生した刺激エネルギー8は、1以上のレベルの1以上のタイプの神経組織を刺激するか、それらに適用される。さらに、これら、及び他の従来技術による、非特異的な刺激システムでは、目的とする刺激の標的を超えた範囲(脊髄や他の神経組織)にも刺激エネルギーが適用される。本明細書中、非特異的刺激とは、刺激エネルギーが、総合的かつ無差別に神経及び脊髄を含めて全脊髄レベルに提供されるという事実を指す。たとえ、単純に1レベルのみを刺激するために硬膜外電極のサイズを小さくしても、電極は、適用されたエネルギー8の範囲内で、あらゆる箇所(即ち、全神経線維や他の組織)に無差別に適用されることになる。その上、より大きい硬膜外電極アレイは、脳脊髄液(CSF)流を変化させ、その結果局所の神経興奮性状態を変えるかもしれない。
【0008】
その他、従来の神経刺激システムに関して興味深い取組みでは、硬膜外電極は、エネルギーを広範な種類の組織及び液体(即ち、脳脊髄液量は、軟膜の厚さがそうであるように脊椎に沿って変化する)を横切って適用しなければならないので、所望の量の神経刺激を与えるのに必要な刺激エネルギー量を正確に制御することが困難である、という問題点があった。その理由から、十分な刺激エネルギーが所望の刺激領域に到達するよう、増大量のエネルギーが必要であった。しかしながら、適用する刺激エネルギーの増加は、周辺の組織、構造または神経経路での有害な損傷を増加させる。
【0009】
標的組織の刺激を達成するためには、適用される電気エネルギーが適切に定義(明確化)され、非標的組織への望ましくないエネルギー適用は減少又は回避されなければならない。不適切に定義された電場は所望の状態(疾患)の制御/管理に無効であるばかりか、隣接する脊髄神経組織の適切な神経経路に対する不慮の干渉を起こしうる。従って、より正確な刺激エネルギーの送達(デリバリー)を可能にする刺激方法及び装置(システム)が求められている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0010】
一つの実施例(実施態様)では、後根神経節の近位に電極を移植し(埋込み);電極を活性化して後根神経節の一部(a portion)を刺激するか、電極を活性化して実質上、後根神経節のみを活性化することにより、後根神経節を刺激する方法を提供する。
【0011】
他の実施態様では、神経根神経節内に電極を移植し;電極を活性化して神経根神経節を活性化することにより、神経根神経節を刺激する方法を提供する。
【0012】
他の実施態様では、脊髄内に電極を移植し;電極を用いて刺激エネルギーを脊髄線維に供給することにより、脊髄を刺激する方法を提供する。
【0013】
他の実施態様では、後根神経節内に電極を移植し;電気的刺激(電気刺激)を電極から後根神経節内の神経組織に供給することにより後根神経節内の神経組織を調節(転調)する(modulating)方法を提供する。
【0014】
他の実施態様では、交換神経鎖の少なくとも一つの神経節の上流側の脊髄後根神経節を刺激し、交感神経鎖の少なくとも一つの神経節に関連した状態(疾患、condition)に影響を及ぼすことにより、交感神経鎖内の神経経路を調節する方法を提供する。
【0015】
さらに他の実施態様では、神経根神経節のみを刺激するよう適合されている電極;電極に連結されたシグナル発生装置;及びシグナル発生装置の出力をコントロールするためのコントローラ(制御装置)、を有する神経刺激システムを提供する。
【0016】
さらに他の実施態様では、脊髄硬膜を突刺(貫通、ピアス、piercing)し:電極を脊髄の髄内部分と接触する位置に配置することにより、脊髄を刺激する方法を提供する。
【0017】
さらに他の実施態様では、電極を、電極が活性化されたとき、電極が神経根神経節のみを刺激するように埋込むことにより、神経系を刺激する方法を提供する。
【0018】
さらに他の実施態様では、ある状態を治療(処置)するために神経組織を刺激する方法であって、刺激により状態を処置する脊髄レベルの後根神経節のみを刺激するよう埋込んだ電極を刺激することを含む方法を提供する。
【0019】
さらに他の実施態様では、2500オーム以上のインピーダンスを有する移植可能な1つ以上の電極に連結した1つ以上のスイッチ;1つ以上の移植可能な電極に刺激シグナルを供給するよう適合されたDC−DCコンバータ(変換装置);及びDC-DCコンバータの出力をコントロールするように設定されたコントローラを含むパルス発生装置を提供する。
【0020】
さらに他の実施態様では、近位のコネクタ;刺激部位で体内に埋込むよう設定された遠位の電極;近位コネクタと遠位電極を連結する電気(的)リード(線)(lead);刺激部位に近接した張力緩和(strain releaf)機構;及び刺激部位に近接した解剖学的構造内の固定化位置に近接した電気リードの動く量を減ずるよう適合された固定化エレメントを含む刺激コンポーネント(構成要素)を提供する。
【0021】
さらに他の実施態様では、近位のコネクタ;刺激部位で体内に埋込むよう設定された遠位の電極;近位コネクタと遠位電極を連結する電気リード;刺激部位に近接した張力緩和(張力緩和)機構;及び刺激部位に近接した解剖学的構造内の固定化位置に近接した電気リードの動く量を減ずるよう適合された固定化エレメントを含む刺激コンポーネント(構成要素)を提供する。
【0022】
さらに他の実施態様では、パルス発生装置;近位端がパルス発生装置に電気的に連結され、遠位端が微少(マイクロ)電極と連結するよう適合された可動性(柔軟な)の長体(elongate body)を有する電極コネクタ(ここで、微少電極リードは電極コネクタ遠位端に近接して連結されており、電気的にパルス発生装置に連結された遠位微小電極を有する)を含む刺激システムを提供する。
【0023】
さらに他の実施態様では、バッテリー;バッテリーとは分離しているパルス発生装置;バッテリーとパルス発生装置との間の電気的連結部材;近位でパルス発生装置に、遠位で微少電極に連結された微小電極リードを含む刺激システムを提供する。
【0024】
さらに他の実施態様では、遠位末端と近位末端とを有する本体(ボデー、body)であって、該本体を標的神経組織に埋込むよう選択された長さを有する本体;標的神経組織を通して貫通する(突刺す、ピアスする、piercing)ように適合された、本体遠位上のチップ(先端);及び標的神経組織のみを神経刺激するよう本体上に位置する電極構造を含む神経刺激コンポーネントを提供する。
【0025】
さらに他の実施態様では、標的の神経組織のみを神経刺激するような位置に電極を移植し;電極に連結(カップリング)されたシグナル発生装置から制御された刺激シグナルを供給することを含む、標的神経組織を神経刺激する方法を提供する。
【0026】
本明細書中で言及する全ての出版物や特許出願は、それぞれの出版物や特許出願が引用して組み込まれていると、具体的かつ個別に記載したと同程度に、引用して組み込む。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】図1は脊髄外部に位置し、脊髄の部分を刺激するための、従来の硬膜外電極配列(アレイ)を示している。
【図2】図2Aは、脊髄後根神経節に移植された実施態様の電極を示している。図2Bは図2Aの選択的刺激法が、いかに選択的な応答限界(閾値)をもたらしうるか、ということを示している。
【図3】図3Aは、本発明の、脊髄レベルの後根神経節 (DRG)に埋込まれた電極態様(電極 embodiment)を有する刺激システムを示している。図3Bはそれぞれの椎骨脊髄レベルの脊髄神経根を図示したものである。図3Cは図3Bの各神経根との関係で身体の様々な皮膚分節(デルマトーム)を示した図である。
【図4】図4Aは、単一電極、単一レベルの活性化パターンを示す図である。図4Bは図4Aの刺激パターンに対応する皮膚分節を例示する図である。
【図5】図5Aはレベルあたり単一電極、2レベル活性化パターンを示している。図5Bは図5Aの刺激パターンに対応する皮膚分節の例を示している。
【図6】図6Aは2電極、単一レベル活性化パターンを示している。図6Bは図6Aの刺激パターンに対応する皮膚分節の例を示している。
【図7】図7Aは単一電極レベル及び2電極レベル活性化パターンを示す図である。図7Bは図7Aの刺激パターンに対応する皮膚分節を例示する図である。
【図8】図8Aは電極が後根神経節に埋込まれている脊髄の断面図である。図8Bは図8Aにおいて、デリバリーカテーテル(delivery catheter)が除去され、電極が後根神経節に埋込まれている状態を示している。
【図9】図9Aは興味のあるレベルの中間線を横切るようなアプローチを用いて電極が後根神経節に埋込まれている脊髄の断面図である。図9Bは図9Aの電極が埋込まれているDRGの拡大図である。
【図10】図1OAは興味のあるレベルの中間線を横切るようなアプローチを用いて電極が神経根上膜(神経節外膜、nerve root epinurium)上又は内に埋込まれている脊髄の断面図である。図10Bは図10Aの埋込まれた電極の拡大図である。
【図11】図11は末梢神経に沿ったアプローチを用いる、他のDRG移植法を示す図である。
【図12】図12Aは図12Bに図示された電極及びアンカーのデザインを用いた移植方法を示す図である。図12Cは周囲の椎骨を用いる、別の係留(アンカー)法を示す図である。
【図13】図13Aは、DRGに埋込まれた図13Bに図示されている単極性(モノポーラー)刺激コンポーネント実施態様を示す図である。
【図14】図14Aは、DRGに埋込まれた図14Bに図示されている双極性(バイポーラー)刺激コンポーネント実施態様を示す図である。
【図15】図15Aはインピーデンスと電極表面積の関係を示すチャートである。図15Bは本発明の幾つかの実施態様に係る刺激コンポーネントのための代表的な電極面積を示すチャートである。
【図16】図16は、本発明の実施態様の電極を示す図である。
【図17】図17は、本発明の実施態様の電極を示す図である。
【図18】図18は、本発明の実施態様の電極を示す図である。
【図19】図19は、本発明の実施態様の電極を示す図である。
【図20】図20は、本発明の実施態様の電極を示す図である。図20Aは標的の神経組織に突刺し、固定するようにした電極の図である。図20Bは図20Aの電極と一緒に使用するように適合された固定リングを示す図である。図20Cは交感神経鎖内の神経節を刺激する位置にある貫通電極の実施態様を示す図である。図2ODは後根神経節を刺激する位置にある貫通電極の実施態様を示す図である。
【図21】図21はDRGに埋込まれた、被覆電極を示す図である。
【図22】図22は種々の数の刺激機構の上流にあるDRGを示す図である。
【図23】図23Aは図23Bに図示されている閾値調節装置を提供するための、組合せ刺激及び剤デリバリー電極を示す図である。図23C及び23Dは組合せた、刺激と薬剤デリバリー電極、及びシステムを示す図である。
【図24】図24は数種の薬剤及びその用途のリストである。
【図25】図25はC−線維活性の軽減を目的とした、Naチャネル及びCaチャネル阻害を示す図である。
【図26】図26はパルス発生装置の模式図である。
【図27】図27は電極コネクタの一実施態様の模式図である。
【図28】図28は他の実施態様のシングル(単一)パルス発生装置刺激システムを示す図である。
【図29】図29は、マスター・スレイブアレンジメントを有する、別の実施態様のマルチ(複数)パルス発生装置刺激システムを示す図である。
【図30】図30は脊髄レベルC1-C3の状態を治療するための刺激システムの実施態様を示す図である。
【図31】図31A及び31Bは、それぞれ、閾値下のシグナルを閾値以上に増大させるために、本発明の実施実施態様に従って刺激した結果を示す図である。
【図32】図32は交感神経系を示す図である。
【図33】図33は本発明の1実施態様の刺激系で神経調節(neuromodulate)された交感神経系の一部を示す図である。
【図34】図34は単一交感神経神経節と同脊髄レベルの単一後根神経節を直接刺激するために埋込まれた本発明の1実施態様を示す図である。
【図35】図35は脊髄を直接刺激するために埋込まれた本発明の1実施態様を示す図である。
【図36】図36は脊髄を直接刺激するために埋込まれた本発明の2つの実施態様を示す図である。
【図37】図37A-37Cは脊髄に電極を埋込む際に用いたシーリング(密閉)の実施態様を示す図である。
【図38】図38は脊椎及び後根神経節の様々な部位に適用される、他の本発明の刺激システムの実施態様をまとめて示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明の種々の実施態様の特徴や利点は、以下の詳細な説明や図面を参照することにより、より良く理解することができるであろう。
【0029】
図1に脊髄外部に位置し、脊髄の部分を刺激するための、従来の硬膜外電極配列(アレイ)を示す。
【0030】
図2Aに、電極が脊髄後根神経節に移植された実施例(実施態様)を示す。
【0031】
図2Bに、図2Aの選択的刺激法が、いかに選択的な応答限界(閾値)をもたらしうるか、ということを示す。
【0032】
図3Aに、本発明の、脊髄レベルの後根神経節 (DRG)に埋込まれた電極態様(電極 embodiment)を有する刺激システムを示す。
【0033】
図3Bに、それぞれの椎骨脊髄レベルの脊髄神経根を図示する。
【0034】
図3Cに、図3Bの各神経根との関係で身体の様々な皮膚分節(デルマトーム)を示す。
【0035】
図4Aに、単一電極、単一レベルの活性化パターンを示す。
図4Bに、図4Aの刺激パターンに対応する皮膚分節を例示する。
【0036】
図5Aに、レベルあたり単一電極、2レベル活性化パターンを示す。
図5Bに、図5Aの刺激パターンに対応する皮膚分節の例を示す。
【0037】
図6Aに、2電極、単一レベル活性化パターンを示す。
図6Bに、図6Aの刺激パターンに対応する皮膚分節の例を示す。
【0038】
図7Aに、単一電極レベル及び2電極レベル活性化パターンを示す。
図7Bに、図7Aの刺激パターンに対応する皮膚分節を例示する。
【0039】
図8Aに、電極が後根神経節に埋込まれている脊髄の断面図を示す。
図8Bに、図8Aにおいて、デリバリーカテーテル(delivery catheter)が除去され、電極が後根神経節に埋込まれている状態を示す。
【0040】
図9Aに、興味のあるレベルの中間線を横切るようなアプローチを用いて電極が後根神経節に埋込まれている脊髄の断面図を示す。
図9Bに、図9Aの電極が埋込まれているDRGの拡大図を示す。
【0041】
図1OAに、興味のあるレベルの中間線を横切るようなアプローチを用いて電極が神経根上膜(神経節外膜、nerve root epinurium)上又は内に埋込まれている脊髄の断面図を示す。
図10Bに、図10Aの埋込まれた電極の拡大図を示す。
【0042】
図11に、末梢神経に沿ったアプローチを用いる、他のDRG移植法を示す。
【0043】
図12Aに、図12Bに図示された電極及びアンカーのデザインを用いた移植方法を示す。
【0044】
図12Cに、周囲の椎骨を用いる、別の係留(アンカー)法を示す。
【0045】
図13Aに、DRGに埋込まれた図13Bに図示されている単極性(モノポーラー)刺激コンポーネントの実施例(実施態様)を示す。
【0046】
図14Aに、DRGに埋込まれた図14Bに図示されている双極性(バイポーラー)刺激コンポーネントの実施例(実施態様)を示す。
【0047】
図15Aに、インピーデンスと電極表面積の関係を示す。
【0048】
図15Bに、本発明の幾つかの実施例(実施態様)に係る刺激コンポーネントのための代表的な電極面積を示す。
【0049】
図16-20に、様々な実施例(実施態様)の電極を示す。
【0050】
図20Aに、標的の神経組織に突刺し、固定するようにした電極を示す。
【0051】
図20Bに、図20Aの電極と一緒に使用するように適合された固定リングを示す。
【0052】
図20Cに、交感神経鎖内の神経節を刺激する位置に貫通電極がある実施例(実施態様)を示す。
【0053】
図2ODに、貫通電極が後根神経節を刺激する位置にある実施例(実施態様)を示す。
【0054】
図21に、DRGに埋込まれた、被覆電極を示す。
【0055】
図22に、種々の数の刺激機構の上流にあるDRGを示す。
【0056】
図23Aに、図23Bに図示されている閾値調節装置を提供するための、組合せ刺激及び剤デリバリー電極を示す。
【0057】
図23C及び23Dに、組合せた、刺激と薬剤デリバリー電極、及びシステムを示す。
【0058】
図24に、数種の薬剤及びその用途を示す。
【0059】
図25に、C−線維活性の軽減を目的とした、Naチャネル及びCaチャネル阻害を示す。
【0060】
図26に、パルス発生装置の模式図を示す。
【0061】
図27に、電極コネクタの一の実施例(実施態様)の模式図を示す。
【0062】
図28に、他の実施例(実施態様)のシングル(単一)パルス発生装置刺激システムを示す。
【0063】
図29に、マスター・スレイブアレンジメントを有する、別の実施例(実施態様)のマルチ(複数)パルス発生装置刺激システムを示す。
【0064】
図30に、脊髄レベルC1-C3の状態を治療するための刺激システムの実施態様を示す。
【0065】
図31A及び31Bに、それぞれ、閾値下のシグナルを閾値以上に増大させるために、本発明の実施例(実施態様)に従って刺激した結果を示す図である。
【0066】
図32に、交感神経系を示す。
【0067】
図33に、本発明の1実施例(実施態様)様の刺激系で神経調節(neuromodulate)された交感神経系の一部を示す。
【0068】
図34に、単一交感神経神経節と同脊髄レベルの単一後根神経節を直接刺激するために埋込まれた本発明の1つの実施例(実施態様)を示す。
【0069】
図35に、脊髄を直接刺激するために埋込まれた本発明の1つの実施例(実施態様)を示す。
【0070】
図36に、脊髄を直接刺激するために埋込まれた本発明の2つの実施例(実施態様)を示す。
【0071】
図37A-37Cに、脊髄に電極を埋込む際に用いたシーリング(密閉)の実施例(実施態様)を示す。
【0072】
図38に、脊椎及び後根神経節の様々な部位に適用される、他の本発明の刺激システムの実施例(実施態様)をまとめて示す。
【0073】
本発明は、直接及び特異的な神経刺激を可能にする、様々な実施態様の新規な刺激システムと方法を提供する。例えば、電極を神経根神経節に移植し、電極を活性化して神経根神経節を刺激することからなる、神経根神経節を刺激する方法を提供する。以下により詳細に説明するように、ある実施態様では神経根神経節は後根神経節であってよく、他の実施態様では神経根神経節は交感神経系、あるいは他の神経節又は他の組織の、神経根神経節であってよい。ある実施態様では、電極の移植(埋込)は神経根神経節の神経上膜(epinurium)を切開し、電極を開口部を通って神経節の内部空間又は束間空間に通すことを含む。
【0074】
別の実施態様では、活性な電極面を刺激エネルギーの神経節への送達に適切な位置に維持しつつ、電極本体の一部を神経節を完全に貫通させる。さらに本発明の他の実施態様に係る微少電極及び刺激システムでは、微少電極及び刺激パターンのサイズ、形及び位置を、標的神経組織を刺激し、他を除くよう選択する。他のさらなる実施態様では、電極刺激エネルギーを、標的組織又は領域を超えた場合、消散するか減じるように、標的神経組織に送達する。
【0075】
一度電極を所望の神経根神経節の上、内部又は隣接して(近辺に)配置すれば、活性化ステップは、プログラム可能な電気シグナルを電極にカップリングさせる(coupling)ことで進行する。1つの実施態様では、神経神経節に与えられる刺激エネルギー量は神経組織を選択的に刺激するのに充分である。特定の実施態様では、与えられた刺激エネルギーは標的DRG内の神経組織のみを刺激する。あるいはDRGを超える刺激エネルギーは近くの神経組織を刺激したり、調節したり又は影響を与えるのに十分なレベルより低い。
【0076】
電極が後根神経節に埋込まれた1つの例においては、無髄の直径が小さい線維(例えば、c−線維)よりも優先的に有髄の直径が大きい線維(例えばAβ及びAα線維)を活性化するように、刺激レベルを選択してもよい。さらなる実施態様では、神経組織を刺激するために電極を活性化するのに使われる刺激エネルギーは、神経組織を切断(ablate)、損傷さもなくば損傷させるために用いるエネルギーレベルより低く維持される。例えば、高周波経皮部分神経根切断の間、電極を後根神経節内に配置し、熱損傷が形成されるまで活性化し(即ち、電極チップ温度が約67℃)、対応する皮膚分節に部分的で一時的な感覚(知覚)喪失をもたらす。1つの実施態様では、DRGに与えられる刺激エネルギーレベルは、熱切断、RF切断又は他の神経根切断法の間に用いられるエネルギーレベルより低く維持される。
【0077】
組織刺激は、組織を通過する電流(current)が閾値に達したとき伝えられ(mediate)、この電流を受ける(経験する)細胞の脱分極を起こす。電流は、例えば、特定の表面積を有する2つの電極の間に電圧が与えられたとき生じる。刺激電極の極く近くにある電流密度は、重要なパラメーターである。例えば、電極面積1mmを通過する1mAの電流は、その近傍に、電極面積10mmを通過する10mAの電流と同じ電流密度(1mA/ mm)を有する。この例では、電極表面に近接した細胞は同じ刺激電流を受ける。表面積に比例して、大きい電極は大量の細胞を刺激することができ、小さい電極は少量の細胞を刺激することができるという違いがある。
【0078】
多くの場合、好ましい効果は神経組織の刺激又は可逆的なブロックである。本明細書中「ブロック」又は「遮断(blockade)」は、神経インパルス伝達の中断、変調、及び阻害を意味する。異常な調節は、経路の興奮、経路阻害の喪失をもたらし、最終的な結果として、認知又は応答の増大を引き起こしうる。治療(処置)手段は、シグナル伝達の遮断又は阻害的なフィードバックの刺激のいずれかに向けたものであってよい。電気刺激は、標的神経構造へのそのような刺激を供給すると共に、等しく重要なこととして全神経系の破壊を阻止する。加えて、電気刺激パラメーターは、利点が最大であり副作用が最小になるよう調節することができる。
【0079】
図2Aは本発明の実施態様である、刺激系100を示しており、電極115が脊髄後根神経節40に移植されている。例示の目的で、神経後根42及び神経前根41が脊髄13に合する位置、それぞれ42H及び41Iと表示、を脊髄レベル14、脊髄の小区域(サブセクション)13を用いて示している。末梢神経44は神経後根42と神経後根神経節40、及び神経前根41に分割される。簡単にするため、神経は一つの側のみを図示し、他の側は通常の解剖学的構造を有する。脊髄硬膜層32は脊髄13を囲み、脳脊髄液(CSF) で満たされている。明確にするため、脊髄鼓膜層実質32のみを、3つの脊髄13を囲み保護している実質-軟膜、クモ膜、及び硬膜−を代表する言葉として用いる。
【0080】
電極115は、神経根が運動神経を含む神経前根41と、感覚神経を含む神経根後根42に分裂した後、末梢神経44の中央に埋込まれていることに注意されたい。電極115はまた、硬膜層32の側面に埋込まれている。本発明の、1以上の電極を好都合に配置することで、周囲の神経組織を刺激せず、選択的に神経組織(神経根神経節など)を刺激することができる。この例では、後根神経節40は、神経前根44の運動神経、脊髄13の部分、脊髄レベル14又は末梢神経44に供給された殆ど無いか微少な刺激エネルギー量で刺激される。本発明の実施態様は、痛みのコントロールを与えるのに最も適する。なぜなら、後根神経節40を通る感覚(知覚)線維を、特異的に標的としうるからである。有利な本発明の実施態様では、痛みをコントロールするために、他の組織には影響を及ぼさずに、1つ以上の神経後根神経節に対して神経調節(neuromodulate)を行う。
【0081】
刺激システム100は、狭い面積で高いインピーダンスの微少電極を用いて神経組織を刺激するよう適合された、直接プログラム可能なパターンの刺激エネルギーを供給するパルス発生装置を含む。与えられる刺激レベルは、Aβ及びAα線維52が、c-線維54より優先的に刺激されるよう、選択する。本発明の実施態様で用いる刺激エネルギーレベルは、従来の非直接、非特異的刺激系よりも低い刺激エネルギーレベルを利用する。なぜなら、電極115が、有利に、後根神経節 40上、内、又は周囲に配置できるからである。従来のゲートコントロール理論に基づけば、より早い伝達Aβ及びAα線維52を、本発明の刺激法によって刺激することにより、線維52からのシグナル53が、アヘン製剤(opiates)を神経後根42と脊髄13の連結位置で放出される。この放出は連結部での応答閾値(限界)を上昇させる(上昇した閾値56)。後に到着するc-線維シグナル55は、高められた接合部閾値(junction threshold)56以下であり、検出されない。
【0082】
従って、本発明のある実施態様では脊髄、末梢神経系、及び/又は1以上の神経根神経節の選択的な刺激を提供する。本明細書中、1つの実施態様として用いる場合、選択的刺激とは刺激が実質上神経根神経節のみを神経調節するか、神経刺激することを意味する。1つの実施態様では、後根神経節の選択的刺激は、運動神経は刺激しないか調節(変調)されないままである。加えて、他の実施態様では選択的刺激は、髄鞘内で、A-有髄線維が、c−無髄線維に比較して優先的に刺激されるか神経調節されることを意味する。かくして、本発明の実施態様ではA-線維がc−線維より迅速に(ほぼ2倍の速度で)神経インパルスを運ぶという事実を有利に利用する。幾つかの本発明の実施態様は、A−線維をc−線維よりも優先的に刺激することを意図した刺激レベルを与えるよう適合されている。
【0083】
さらなる実施態様では、選択的な刺激はまた電極(薬剤で被覆されているか、それを運ぶように適合されている電極を含む。例えば、図21, 23 A, C 及び D)が、刺激の対象である組織又は他の神経系コンポーネントと密接に接していることを意味する。この側面は、本発明における有利な電極配置の利用に係る。以下に論ずる特定の例示の実施態様では、1つ以上の刺激電極を以下のように置く(1)神経根神経節の外側の鞘に対向してあるいは接して置く; (2)神経根神経節内に置く; (3)神経節束間空間内に置く;(4)脊髄部分と接する位置に置く;(5)硬膜外空間、硬膜、神経根上膜又は脊髄の一部を貫通するのに必要な位置に置く;(6)交感神経系の一部と接触する位置に置く(7)直接刺激の標的である神経組織と接触する位置に置く。
【0084】
さらに、本明細書に記載の選択的刺激又は神経調節のコンセプトは数多くの異なる構造に適用可能である。片側だけ(一側性の)(又は1つのレベルの1つの神経根神経節)、両側性(同レベルの2つの神経根神経節上又は内)、ユニレベル(同レベルの1以上の神経根神経節)又はマルチレベル(2以上のレベル各々の1以上の神経根神経節が刺激される)又は、上記の組合せであり、交感神経系の一部及び交感神経系のその部位の神経活性又は伝達に関連した1つ以上の後根神経根の刺激を含む。かくして、本発明の実施態様は、個別の又は重複する(overlapping)治療範囲を創造し、与えるために、広範な様々な刺激制御法の作出に利用できる。
【0085】
図3Aは髄レベルの後根神経節 (DRG)40に埋込まれた電極115を有する刺激システム100を示している。図は脊髄13の3つの代表的な脊髄レベル14(脊髄レベル1−3)を示している。末梢神経44は、後根神経節40と神経前根41に流れ込み、それぞれが脊髄13に流れ込んでいる。後角37、36も図示されている。明瞭化のため、硬膜32と完全な脊髄13は図示していないが、本願の他の箇所に記載され、またヒトに解剖学的に存在すると同様、存在している。これらの例にあるレベル1、2及び3は脊髄13に沿って存在する。簡単にするために、各レベルは神経の一側面のみを示している。
【0086】
レベル2を参照すると、上行路92がレベル2とレベル1の間に記載されており、下行路94がレベル2とレベル3の間に記載されている。レベル2のDRG40への刺激エネルギー又はシグナルの適用を、レベル2から路/経路92に向かうブロックシグナルの進行をブロックするのに用いることができる。さらに、レベル2部分への変調(modulation)適用は、効果的に他のレベル(ここでは、レベル1及び/又は3を用いる)からのニューロン路(neuron path)/経路が脳に至るのをブロックするのに有用であり得る。よって、同じく、本発明の1つの実施態様の装置及び/又は方法を用い、レベル2DRG 40に刺激を適用することで、有利に区内疼痛伝達経路をブロックしうる。3つの連続的なレベルについて例示したが、本発明のある実施態様を用いて、隣接した2以上のレベルを刺激することができ、さらには、別の実施態様では、隣接していない2以上のレベル、あるいはそれらの組合せを刺激することができることは理解されるであろう。
【0087】
図3Bはそれぞれの椎骨脊髄レベルを脊髄神経根に関係付けている。文字Cは、頸レベルの神経及び頸椎を指す。文字Tは胸レベルの胸椎及び神経を指す。文字Lは腰レベルの腰椎及び神経を指す。文字Sは仙骨レベルの仙椎及び神経を指す。図3Cは図3Bに記載した各神経根との関係で身体の様々な皮膚分節(デルマトーム)を示した図である。
【0088】
図4-7は、異なるレベル及び程度の痛みコントロールを与えるために、様々なコントロール条件下で活性化された神経系の1つの実施態様を示している。図4A、5A、6A及び7Aは全て、異なる活性化程度での刺激系を図示したものである。図4B、5B、6B及び7Bは対応する、影響された皮膚分節を図示したものである。
【0089】
図4A、5A、6A及び7Aは2つの隣接する脊髄レベルの後根神経節40に埋込まれた3つの電極115を有する刺激システム100を図示したものである。簡単にするため、各脊髄レベルは後根神経節40、前根41及び末梢神経44を示している。例外は脊髄レベル3であり、追加的に後根神経節38、前根39及び末梢神経42を示している。3つの電極115は、コントローラ106によりチャネル1、2及び3に指定されている。各電極はコントローラ106の制御下、活性化されて調節エネルギー又はシグナルを供給する。神経根神経節に埋込まれる例示の電極は、図12A-13Bにさらに図示されている。レベル3は両側性電極配置の例でありレベル2は片(一)側性電極配置の例である。よって、例示の実施態様はマルチレベル、片側性、及び両側性刺激系である。刺激エネルギーはパルス発生装置(図示しないが、図26-29により詳細に記載されている)から、適当な神経刺激コントローラ106の制御下、与えられる。当業者は、広範な既知の神経刺激コントローラから任意のものを用いることができると認識するであろう。この点では例示していないが、このシステムには、種々の電極115、電極リード110及びコントローラ106間に適当な連結部が存在している。後述の図で、電極リード110をコントローラ106に連結する線(ライン)はコントローラ106から1つの電極115((図4A参照)又は1つ以上の電極115 (図5A参照) への伝達“刺激オン”を示す。
【0090】
「刺激オン」というシグナルは、広範囲に及ぶ刺激のパターンや程度の任意のものを指す。「刺激オン」シグナルは連続的または間欠的に与えられる振動電気シグナルであってよい。さらに、電極が1つ以上の神経節内又はそれに隣接して直接移植される場合、振動電気シグナルは1つの電極に与え、他には与えなくてもよく、その逆の場合もある。刺激する極、パルスの幅、振幅、刺激頻度(振動数)、その他制御可能な電気的及びシグナル因子を適宜調整し、所望の転調又は刺激結果を得るようにすることができる。
【0091】
振動性電気シグナルの適用は、電極115が配置されている神経鎖面を刺激する。この刺激は神経活性を増大又は減少させる。次いで、生理的異常により現れている症候が証明可能に減じられるまで、この振動電気シグナルの振動数を調節する。このステップは患者からのフィードバック、センサー又は他の生理的なパラメータ又は指標を利用して行うことができる。一度同定されたなら、その振動数が、理想的な振動数と考えられる。理想的な振動数が決定されれば、その振動数をコントローラーに保存し、振動電気シグナルをこの理想的な振動数に維持する。
【0092】
1つの具体例では振動電気シグナルを約0.5V〜約20 Vの間、又はそれ以上の電圧で操作する。より好ましくは、振動電気シグナルは約1 V〜約30 V、さらには〜40Vの間の電圧で処理する。微少(マイクロ)刺激のためには、1V〜約20Vの間で刺激することが好ましいが、その範囲は、電極の表面積のような因子に依存する。電極シグナル源を約10 Hz〜約1000 Hzの間の振動数で操作することが好ましい。電極シグナル源を約30 Hz〜約500 Hzの間の振動数で操作することがより好ましい。振動電気シグナルのパルスの幅は約25マイクロ秒から約500マイクロ秒の間であることが好ましい。振動電気シグナルのパルスの幅は約50マイクロ秒から約500マイクロ秒の間であることがより好ましい。
【0093】
振動電気シグナルの適用は以下の多くの異なる方法で得られる(これらに限定されない)。(1)単極刺激電極と大面積の非-刺激電極リターン電極;(2)数個の単極刺激電極と単一の大面積非-刺激電極リターン電極;(3)一対の密接した双曲(バイポーラー)電極;及び(4)数対の密接した双曲電極。他の構成も可能である。例えば、本発明の刺激電極(群)は、他の非刺激電極−リターン電極-と一緒に使用するか、又は刺激システムの一部がリターン電極の機能性を与えるよう適合させる、及び/又はそのように構成することができる。その一部がリターン電極の機能性を与えるよう適合され得る、及び/又は設定され得る刺激システムの部分には、限定されないが、バッテリーケーシング又はパルス発生装置ケーシングが含まれる。
【0094】
図の設定(構成)では、レベル3に位置する電極の1(即ち、チャネル#1「オン」)1つに与えられた刺激パターンが、身体各領域(即ち、陰影をつけた領域R1)における痛みをブロック/解除(除去)したことが示されている(図4B)。
【0095】
本発明の実施態様によれば、特定の皮膚分節分布を刺激し、どの電極又は電極の組合せ (薬物−コーティング又は−デリバリー電極)が、1つ以上の特定の痛み領域と最も密接な位置であるか、関連するかを明らかにすることができる。そのようにして、本発明の実施態様に係る刺激系は特定の痛みの範囲又は型につき「微調整された"fine tuned"」ものである。そのような試験で得られる結果は、特定のパテント(patent)あるいは特定のタイプの痛みのための1つ以上の刺激又は治療レジメ(即ち、被覆された電極からの治療薬の存在下、またはそれと組み合わせた一連の刺激)に用いることができる。これらの痛みの治療レジメは適当な電気的コントローラかコンピュータ制御システム(下記)にプログラムして、所望の治療レジメが遂行されたとき、刺激レジメのシステムコンポーネントの遂行を制御し、監視するよう治療プログラムを保存する。
【0096】
図5Aは、他の例であって、マルチチャンネル刺激システムと方法を使用した痛み除去の分布の例を示す。図の構成と刺激パターンにおいて、刺激パターンはレベル2と3にある各電極にチャネル#1と#2から与えられる。この刺激電極パターンは痛みのブロック/除去を身体の指摘領域 (即ち領域Rl、R2)に与える(図5B)。
【0097】
図6Aは、他の例であって、マルチチャンネル刺激システムと方法を使用した痛み除去の分布の例を示す。図の構成と刺激パターンにおいて、刺激パターンはレベル3にある両電極にチャネル#1と#3から与えられる。この刺激電極パターンは痛みのブロック/除去を身体の指摘領域 (即ち領域R3)に与える(図6B)。
【0098】
図7Aは、他の例であって、マルチチャンネル刺激システムと方法を使用した痛み除去の分布の例を示す。図の構成と刺激パターンにおいて、刺激パターンは、チャネル#1、#2及び#3からシステムの全電極に与えられる。この刺激電極パターンは痛みのブロック/除去を身体の指摘領域 (即ち領域R4)に与える(図7B)。図4A-7Bに図示した電極の配置とブロック領域パターンは、個々の必要性に応じ、例えば、図3Bや3Cに記載した身体の特定の部分を標的とする配置に関する情報を用いて改変しうることは理解できるであろう。
【0099】
本発明の微少電極(マイクロ電極)と刺激システムに関する実施態様は、本発明の移植法を用いて単独の神経根神経節に埋込みが可能である。本明細書に記載した移植法は以下のような(これらに限定されないが)多くの利点を有する。他の方法と同様、低リスクの経皮アクセス経路、薬剤被覆電極を用いた場合は神経根への薬剤の限定的な量の直接送達、及び優先的、選択的な神経線維刺激を可能にする電極配置。
【0100】
図8Aはある脊髄レベルの断面図である。末梢神経44、42は後根神経節40、38と神経前根41, 39に、それぞれ、に流入している。椎体70と2つの交感神経神経節62、63も図示さている。この実施態様の方法は、適当なカテーテル107を内側に、椎体 70に向けて末梢神経42 に沿って、後根神経節38に前進させることを含む。カテーテル107は蛍光透視法や他の適当な医学的イメージング法などの外部の画像診断法をガイダンスとして用いて進める。椎孔は 蛍光透視法で観察しうるよい目印であり、DRG38の位置決めに有用である。
【0101】
電極115は、後根神経節上膜に開口部を形成し、その開口部を通過して後根神経節の近位に移植されている。(図8 A、8B)。開口部は、カテーテル107の端、その先端に付けたチップ、カテーテル107内をワーキングチャネルで進む装置を用いる切断か、あるいは他の適当な内視鏡的又は侵襲性が最小の外科的方法で形成することができる。あるいは、電極本体又は遠位端に組織切断又は貫通(ピアス、cuttiing or piercing)装置を付け、組織への貫通を助けることができる(例えば、図20Aのチップ908参照)。カテーテル107を除去すると微少電極リード110が展開し、DRG 38に隣接した組織、生体構造又は骨に付着するか、係留(アンカー)するか固定され、電極115がDRG38から引き抜かれる可能性を減少する。下記の別法では、微少電極リード110を、電極の移植前に神経根神経節に固定化しておく。
【0102】
電極115は、DRG 38内にフィットするようにサイズと形を整えておくよう注意すべきである。典型的なDRGは、一般に球形(直径3-5mm)である。もちろん、ヒトにおけるDRGのサイズ範囲は、個体の年齢、性及び他のファクターに依存して様々である。電極の実施態様は、患者の具体的な解剖学的特徴に合わせたサイズ範囲で提供される。個人に対する適当なDRG電極態様の使用に際しては数多くのファクターを考慮する。
【0103】
DRG内における電極配置は、本明細書に記載の方法やシステムに適合させた体感覚性誘発電位(SSEP)のような神経診断テスト法や筋電図法(EMG)により、確認することができる。1つの例として、移植された電極(1又はそれ以上)を有するDRGレベルの上又は下の、感覚神経系内に感覚電極を配置する方法がある。電極を標的DRG内に移植する。テスト刺激をDRGに適用し、標的DRGの上及び下の感覚電極における電位を測定し、電極が標的 DRGに移植されていることを確認する。テスト刺激は0.4 v〜0.8v、50Hzか、用いた誘発電位測定法に応じて他の適当な刺激レベルである。この方法で、従来の蛍光透視法及び 装置を用いて、電極をDRG に向けて進め、内部に移植し、電極が正しく移植されたことを確認し、標的DRGを刺激することができる。
【0104】
DRG上、内、及び近くの位置に電極を操作するには、多種多様の方法が利用可能である。幾つかの方法を図8-10の脊髄馬尾部位の断面図に示した。これらの例では電極115はそれぞれの仙骨レベルの脊髄にある神経節の上又は内部に配されている。交感神経系神経節62、63も示されている。DRG 40と前根41は、末梢神経44に関連している。DRG38と前根39は末梢神経42と関連している。
【0105】
図8A及び8Bは適当なカテーテル107を用いた、DRG38への側面からのアプローチを示す図である。カテーテルは末梢神経42に隣接し、DRG 38に向けて内側へ進んでいる。DRG硬膜は側面でピアス(貫通)されており電極115は、DRG内側へ進む。その後、電極115はDRG内部に移植される。次に、図8Bでは、カテーテル107がDRG38から引き出され、電極リード110が展開している。電極リード110は椎体70に、適当な固定化法で係留(アンカー)される。次いで、リード110をパルス発生装置/コントローラに連結する(図示せず)。
【0106】
図9Aは、図8A及び8Bの解剖学的に同様の図である。図9Aは、興味のあるDRGより下方の中間線を横切る、別のDRG移植法を示している。カテーテル107は、蛍光透視ガイダンスの下、孔に向かい上方の経路を前進し、孔を用いてDRG内に入る。図9A及び9Bに示すように電極を後根神経節に移植することにより、後根神経節刺激法が提供される。ある実施態様の移植法は、電極部分を脊髄硬膜外空間を通って通過させることを含む。本発明のシステムにおける、神経根上膜72の上又は内部に配置された電極(図1OA及び10B)又は神経根の内部(即ち、図9A、B)にある。さらに、ある実施態様では、後根神経節上膜72に開口部を設け、電極をその開口部を通す(図9B参照)。
【0107】
図11は、もう1つの別の電極移植法にかかる脊髄13の断面図である。外部からDRGに接近し、DRG外膜72を貫通し内部に入る上記の方法とは対照的に、図11は末梢神経44の神経鞘内から、DRG 内側(interlascular)への接近法を例示する。図11は、部分的に切除し下方の神経束46を示した、神経鞘の断面図である。この例示の例では、開口部がDRG40の側面のポイント45の末梢神経44鞘に作成されている。微少電極115は神経44鞘に開口部45から、適当な内視鏡又は侵襲性が最小の外科的な方法で挿入される。次いで、電極115をDRG 40内部に進行させる。
【0108】
これらの例示の各実施態様から明らかなようにDRGに関連して電極を配置することにより電極を活性化し、選択的に感覚神経を刺激することが可能になる。加えて、本発明方法により電極を配置することにより電極を活性化し感覚神経を、DRG内で、又は近辺の前根内の運動神経を刺激することなく、刺激することができる。本明細書に記載したコントロールシステムは、無髄線維より優先的に有髄線維を刺激するようなレベルで刺激するように電極を活性化する、刺激レベルを提供する。
【0109】
さらに、以下により詳細に記載するように、図11は刺激治療を補助するために、又は他の治療上の利益を得るために、電極チップとシャフトが薬剤で被覆されていてもよい電極の実施態様を示している。図示するように、電極はチップコーティング130及びシャフトコーティング132を含む。各コーティング130、132は同一でも異なっていても良い。神経鞘を通して移植することの1つの利点は、被覆されたシャフトを好都合に前根41に近接して配置できるので、被覆シャフト132が神経前根41内で活性であるか、その神経活性に有益な薬剤を含有することができるということである。シャフトコーティング132は、神経鞘内の圧力に起因する炎症又はイリテイションを減少するよう選択することができる。
【0110】
図12A及び12Bは、電極115がDRG40に移植された後リード110を固定するための固定用フック172を有するアンカー体171の一例を示す。図12Aは脊髄13の一部の断面図であって、後根42、前根41、DRG40及び末梢神経44を示している。この例示の実施態様において、カテーテル70を、電極115、リード110及びアンカー171をDRG 40移植部位に関して操作するのに使っている。適当な部位が同定されれば、フック172をDRGの筋膜層に挿入する。フック172は、種々の形であってよく、外側DRG層又は外側DRG層内に、係合して固定するのに適した輪郭にする。図12Bはカテーテル70の遠位に取付けたアンカー体171とアンカーフック172の例を示す図である。カテーテル70を単独で、又は他の適当な外科的内視鏡又は最小限の侵襲性ツールと組み合わせてアンカー体171とフック172を操作することができる。同様にして、電極115、リード110を標的神経組織の上、中又は周辺に移動させることができる。他の電極の実施態様では 電極115のDRG上、中又は周辺への移植は、慢性的な摩擦と潰瘍形成を防止又は緩和するのに有用な柔軟性のある(flexible)チップを用いて行うことができる。
【0111】
あるいは、電極リード110又は他の支持構造あるいはアンカー構造を、隣接する骨構造、軟組織又は、別の周辺解剖学的構造に取付てもよい。加えて、リード110の近辺での動きを吸収し電極が移植部位から引き抜かれたり、除去されないようにする、固定化、係留又は結合構造を電極アンカー172の近辺位置に設けてもよい。係留及び他の緊張機構の目的は、電極を移植部位内の位置に維持するか、電極リード110の動きによりその位置から移動しないようにすることである(即ちリード110の動きは電極115は移植部位から引っ張るか電極の移植部位での位置を乱す)。電極の配置には様々な方法が利用可能であることは理解できることであり、そのような方法には、シングル(単数)/マルチ(複数)フック又はアンカーの経皮配置、脊椎アンカー又はポスト(柱)、微少縫合糸、セメント、ボンド、及び当該技術分野の当業者が既知の他の連結又は係留法が含まれる。また、本明細書に記載した刺激システムの実施態様における他のコンポーネントも、刺激部位の近位、又は電極移植部位近くに装着するのに適合し得ることは理解されるだろう。他のコンポーネントとして、例えば、刺激コントローラ、マスターコントローラ、スレーブコントローラ、パルス発生装置、薬剤貯蔵所、薬剤ポンプ及びバッテリーなどを挙げることができる。
【0112】
図12Cは電極リード110を電極移植部位を囲む骨組織に係留(アンカー)した例を示す。図12Cは脊髄13の部分の断面図であり、前根41、後根42及び後根神経節40を示す。図12Cはまた錐体周囲の骨を図示しており、椎体1110、棘突起1115、茎(pedicle)1120、薄膜1125、椎弓1130、横突起1135及び椎間(facet)1140などが示されている。電極115はDRG40に移植されており、電極リードは適当なアンカー111で位置に固定されている。アンカー111は、脊椎の骨性部分への任意の適当な固定化を表しており、それには、画鋲、ステープル、釘、セメント、外科又は整形外科の分野の当業者に既知の他の固定化手段が含まれる。張力緩和(緊張緩和)122はアンカー111とDRG40の間に存在する(図13A及び14A参照)。張力緩和122はDRG40内で電極115を動したり、DRG40から電極115を除去しうる動きを吸収するために使用する。この例示の実施態様では、張力緩和122は電極リード110のコイル状部分である。1つ以上の張力緩和122をアンカー111とDRG40の間、又はアンカー111と刺激システムのバッテリー又はコントローラ(図示せず)の間に配置することができる。
【0113】
図13A-14Bは本発明の単極又は双極刺激コンポーネントの実施態様を示す。図13Aは単極パルス発生装置に連結するように適合された近位コネクタ126Aを有する単極刺激コンポーネントを示している。遠位電極115は刺激部位で体内に移植されるよう形成されている。遠位電極は単極電極115A(図13B)又は双極電極115B(図14B)であってよい。電極のサイズは神経根神経節に移植するような大きさであり、選択された神経根により異なる。追加の実施態様では電極リードと電極は神経鞘内を神経根神経節に向けて進むのに適合され、大きさを選択されている。電極又はそれらのケーシングは免疫応答を引き起こす危険性(機会)を減ずるために無害な材料(シリコン、金属又はプラスチック)により形成される。電極は、MRI及び他の走査法(本明細書中に記載のラジオーオパーク(radio-oopaque)材料を用いる装置を含む)に適するものとすべきである。
【0114】
図13Aに戻ると、電気リード110は近位コネクタ126Aと遠位電極115を連結している。張力緩和機構122は刺激部位近くに連結されている。図示した張力緩和機構は電気リード110をコイル状にして形成されたものである。他の周知の張力緩和法と装置も使用しうる。固定化位置に近い電気リードの動き量を減少するよう適合された固定化エレメント124は、刺激部位の解剖学的構造の内部に、上に、又は通って配置される。本発明で用いる微少電極や微少リードは非常に小さく、1mm以下、多くの場合、0.5mm以下の極細く柔軟なワイヤを含んでいるので、微少リード110や微少電極115への張力や力の伝達を低下させるか最小にするためには複数エレメントが提供される。代表的な電極及びリードの大きさは以下により詳しく記載している(図15A、15B)。ある実施態様では張力と動きは固定化エレメント124、張力緩和122及び電極アンカー117 (もしあれば) により吸収されるか軽減される。固定化エレメント124は、例えば、ループ又は成形アイレット(小穴)であってよい。固定化エレメントは縫い込まれている、画鋲止め、ねじ止め、ステープル止め、粘着剤を用いて結合されているか、本明細書に記載の身体内にエレメントを確実に固定化するための当業者既知の他の方法を用いて連結されていて良い。
【0115】
1つの具体的な移植実施態様では、電極移植方法は、微少電極及び微少リードのサイズの小ささと繊細さを考慮して改変してよい。従って、最初は大きい力で作用した後、軽い力を作用する。このようにして、小さい微少電極と微小電極リード材料は、大きい力による操作の間は存在しない。本発明の電極をDRG内に移植する場合を例として考慮する。1つの例示の実施態様では、固定化エレメント124は、電極115を通過させるような大きさのループ状である。強い力で固定化エレメントを選択したDRG刺激部位に隣接した椎孔内に固定化エレメントを係留又はさもなくば固定化(即ち、接着) する。一般に固定化部位は、刺激部位に対して実際上、できるだけ近くする。1つの具体的な実施態様では固定化部位は、刺激部位から3cm〜5cmの位置である。場合により、ループに取り付けたガイドワイアは、位置に止まり電極とリードをループ、従って、移植部位に導くのに用いられる。電極とリードをループ(ガイドワイアを用いて、又は用いずに)に通す。次いで、電極をDRG上又は中に移植する。場合により、抗張力装置122は、移植部位内の電極と固定化エレメント124の間にする。1つの例示の実施態様では、複数のループを含有する微少電極リードの断面を抗張力装置122として用いる。最後に、微少電極リードを、適当なロック装置(locking device)を用いてループに固定化する。上記の方法は、単に1つの方法を例示したにすぎず、上記のステップは、使用した個別の移植方法に応じて様々な順番で実施するか、変更できることは理解できるであろう。
【0116】
幾つかの実施態様では、遠位電極115の近くにアンカー機構を供給することができる。アンカー機構としては、例えば、図13B及び14Bに記載のアンカー117が挙げられる。さらに他の実施態様ではアンカー機構は遠位電極115を刺激部位内に係留するよう適合される。例えば、 アンカー機構は移植の間、電極体118に対して平らに配する(詰める)、次いで神経根神経節から神経根神経節内に配備し、神経根壁内に係留し、電極を支持し電極の移動又は引き抜きを防ぐ。ある実施態様では、アンカー機構と遠位電極を一体的に形成し、他の実施態様では別々のコンポーネントである。ある実施態様では、アンカー機構はポリマー又はシリコンで形成される。
【0117】
選択的神経刺激には、より小さい電極も使用できる。小さい電極ほど衝撃が少なく望ましくない動きを受けにくいと考えられる。しかしながら、電極表面積が小さくなるほど、電極のインピーダンスは増大する(図15A)。従って、ある電極態様は、従来の刺激電極より遙かに大きいインピーダンスを有する。1つの実施態様では、本発明の微小電極のインピーダンスは2500Ω以上である。このインピーダンスにおける相違は、本明細書に記載の微小電極を駆動するための、刺激システムの動作における要求、パルス発生装置等に衝撃を与える。
【0118】
遠位電極は、神経根神経節内に移植し直接刺激するのに適する広範な種々の構成、形、大きさのであってよい。例えば、遠位電極115はリード110に装着した導電性材料のリングであってよい。あるいは、遠位電極115は、電極リードの非絶縁性ループで形成することができる。ループ状の電極はリード110に連結しなければならないリングとは異なり、ループはリードで形成することができ連結が不要であるため、魅力的で、摩耗性が改善されている。さらに他の実施態様では、電極はリードの非絶縁部分であって良い。
【0119】
構成に関係なく、本発明の電極は、例えば、後根神経節又は交感神経系の神経節のような神経節の中、上又は周囲に移植するのに適合させ、大きさが決められる。電極のサイズは移植方法及び標的神経節のサイズにより異なることは理解されるであろう。DRGの直径は3-5mmにすぎないので、DRG硬膜を通して移植される電極(即ち図9A)は、5 mm以下であってよい。一方、末梢神経鞘に沿って移植するよう適合された電極(即ち、図11)は、硬膜を通る電極より長くてよいが、神経鞘内を遠位に進んでDRGに到達しなければならないので、他の設計上の制約がある。本発明の電極態様の大きさは、例えば、移植部位の解剖学的大きさと同様、移植法に基づく移植部位の大きさに応じて改変することができることは、理解できるであろう。
【0120】
図15Bは、直径0.25mm〜1 mm、幅0.25mm 又は0.5 mmのワイヤで形成される電極表面積の例を示す。従って、本発明の実施態様は、0.5 mm2未満の遠位電極表面積を与える。他の実施態様では、遠位電極表面積は1mm2未満である。さらに他の実施態様では遠位電極表面積は3 mm2未満である。
【0121】
本発明の電極のサイズは、幅約8mmで、長さ24〜60mmの従来のパドル(図1)とは対照的である。その結果、従来の刺激電極は電極表面積が本発明の電極態様大きい。従来の電極は、10−12ボルトのパルス発生装置を用いて発生される刺激シグナルで操作される、500〜1800Ωのオーダーのインピーダンスを有する考えられる。対照的に、本発明の刺激電極態様は、2kΩ又は約2500 Ωm、2kΩ〜lOkΩ又はそれ以上、さらにはlOkΩ〜20kΩの範囲のオーダーのインピーダンスさえ有する。以下により詳細に記載するように、本発明のあるパルス発生装置の実施態様では、従来の刺激システムを超える範囲のDC-DC変換により産生される電圧で操作する。
【0122】
電極は柔軟で、長期使用の間、材料破壊がなく疲労特性に優れた材料から作られる。電極材料は、生体適合性(バイオコンパチブル)材料又はさもなくば生体適合性が改善されるように被覆または処理されるべきである。加えて、電極材料は、移植ステップ(段階)の間に電極を配置するのに使用される蛍光透視法のようなイメージングシステムに対して不透明である必要がある。適当な材料の例には、Pt、Au、NiTi、PtIr及び合金、並びにその組合せを挙げることができるが、これらに限定されない。電極は、移植又は刺激部位での炎症を避けるためにステロイドイルーディングコーティング(steroid eluding coating)をしてもよい。
【0123】
小さい表面積を使用するので、低い電流で高電流密度を達成でき、DRGの刺激に必要な全エネルギーが劇的に減少される。微少電極を用いる1つの利点は、電極のごく周辺の僅かな量の組織しか刺激されないということである。微小電極使用に係るもう1つの利点は、バッテリサイズが減少されるので、対応するパルス発生装置も小さくなることである。
【0124】
上記の移植可能な電極に加えて、選択的に神経根神経節を刺激するための代替的な電極態様も使用可能である。図16は、導電性リング205、207が後根神経節40のいずれかの端に位置している例を示す 。活性化されると、リング205、206は容量的に合わさって刺激エネルギーをDRG40に供給する。図17は、容量性プレート210、212がDRG硬膜に結合した、他の容量性の刺激構成を図示している。本発明の実施態様は、一対の容量性プレートに限定されず、一対以上を使用することができる。図18は、DRG40の硬膜に結合した、2対の容量性プレートを示す。一対はプレート210、212を有し、他の対はプレート214ともう1つのプレートを有する(図示せず)。プレートを直接硬膜に結合させる別の方法では、プレートをDRG硬膜の周囲に滑り込ませ、それと関連させるよう適合させた電極サポートエレメント230に連結する。一度電極サポートエレメント230がDRGについて配置されれば、プレートは選択的にDRGを刺激するよう、適切に配置される。本発明は単に容量性にカップル(組み合わせた)刺激エネルギーに限定されない。図20は、ワイヤ235がDRG40の周囲に巻かれ、誘導的に刺激エネルギーを神経根神経節に供給するコイル236を作出する実施態様を示す。議論の目的で、これらの実施態様はDRGの刺激との関係で既述した。本明細書に記載した技術及び構造は、また、他の神経根神経節、他の神経構造又は他の解剖学的構造の刺激に用いることができることは理解できるであろう。
【0125】
図2OA及び2OBは神経組織を通して移植するよう適合された他の電極の実施態様を示す。貫通電極900は、本体902、遠位末端904及び近位末端906を有する。電極表面又はコンポーネント912適当なリード914を介して、パルス発生装置/コントローラ(図示せず)からは刺激シグナルとエネルギーを受ける。遠位末端904は標的神経組織を貫通するよう適合されたチップ908を有する。さらに電極体902を標的神経組織に固定するため、1以上のアンカー910が遠位末端に設けられている。固定化リング920(図20B)は、電極本体902 を、標的神経組織に、又はそれに関連するよう設けられる。アンカー910は神経組織を通して挿入する間電極902に対して第一の、又は詰込んだ位置に置き、次いで、第2の、電極本体902からの展開位置に動かすことができる。展開位置(図20A、2OC及び20D)において、アンカー910は、電極900が神経組織から動くことを阻止する。多くの代替アンカー構造も可能である。アンカー910は円形パターンに配列された個々の柱(ストラット)であるか、それらの間に傘構造と同様の材質が存在するストラットであってよい、アンカー910はまた単独アンカーでも良い。
【0126】
電極900は、標的神経組織を完全に通過し、電極912を標的神経組織部位内に位置させるよう適合した本体902を有する。この例示の実施態様では、次いで、電極本体902はDRG 40内(図20D)か交感神経鎖の神経節(図20C)内にぴったり合うように適合される。所望の刺激又は調節(変調)レベルを得るために、電極912は電極本体902のどの場所に位置しても良い。さらに電極912は電極912により生じる調節又は刺激エネルギーパターンが標的神経組織内に止まるか、その内部でのみ消散するように配置することができる。
【0127】
固定リング920は電極本体902を標的神経組織内かそれに関連して配置するよう保持するために用いる。固定リング920は輪922を有するリング状である。ある実施態様では内側表面942は電極本体902を係合(engage)し保持するための摩擦係止表面として用いる。他の実施態様では内側表面942は電極本体を固定するよう表面処理されている。さらに他の実施態様では内側表面942は機械的に電極本体902を嵌め込み保持するように適合されている。固定リング920は電極本体902と標的神経組織の表面に固定され電極が引き抜かれたり移動するのを避けるために、適当な伸縮性又は非伸縮性の材料で形成されている、固定リング920は、リング920を電極本体902及び組織外層に接着するか機械的に付着させるよう生体適合性材料で形成されている。固定リング920は電極900を標的神経組織内に移植する間又はその後に存在させる。1つの別の実施態様では固定リング920はDRG外層に固定され、電極900上の係合特徴に係合する位置に相補的な係合構造(特徴)を有する。電極本体902は、固定リング輪922を通ってDRG40内に入り、相補的な係合構造が係合し、さらに電極本体902のDRG内でのさらに遠方への動きが止まるまで前進する。相補的な係合構造は電極900内のDRGや他の神経節などの神経組織への配置を助けるために、単独で、又はアンカー910と一緒に用いることができる。
【0128】
図2OC及び2ODは脊髄13の断面図であり、標的神経組織を通して移植するよう適合した電極態様を示す。脊髄セクション14の様々な部位のさらなる詳細については図38に関連して後述する。これらの図には、末梢神経44と神経根41/42内における例示の感覚経路52/54と運動経路41Pと、脊髄への流入が図示されている。他の移植部位と刺激の代替法は米国特許6,871,099号に記載されており、それを引用して本明細書に組み込む。
【0129】
図2OCの例示の実施態様では、電極900は標的神経組織内の非中央位置にある。この実施態様では、標的神経組織は交感神経鎖990内の神経節992である。具体的な交感神経鎖内の標的神経組織の例は図32及び33に関連して後述する。電極912は電極本体902上、又は内に、電極本体902が神経節992を通過し固定リング920内に座すとき、電極912が神経節992の内部の所望の位置にあるように配置される。例えば、電極本体902の長さを変える、標的神経組織への挿入角度を変える、又は標的神経組織への初期挿入位置を変えることで、他の電極912を標的神経組織内に配置することも可能である。
【0130】
図2ODの例示の実施態様で電極900は標的神経組織の、概ね中央位置を維持するよう配置されている。この実施態様では 、標的神経組織はDRG40である。電極912は、電極本体902が固定リング920に座し電極912がDRG40のほぼ真ん中又は中央に位置するように電極本体902上又は内に配置される。上と同様、固定リング920及びフラットアンカー911は電極900をDRG 40内の所望の位置に固定する。フラット又はフラップアンカー911は、アンカー910と同様の機能性を与える。アンカー911は曲ったアンカー910より、むしろフラットアンカーを有する。
【0131】
ある実施態様では刺激電極チップを薬剤で被覆する。図21に例示した実施態様ではコーティング130はDRG40内の電極の部分を覆っている。他の実施態様では所望の臨床上の成果を上げるよう電極のより少ないか多い部分、又は他の移植コンポーネントが適切に被覆される。図21はまた電極シャフト、又はDRG外部の電極の被覆130を示す。コーティング132は、コーティング130と同様又は別であってよい。例えばチップコーティング130は遠位コーティング(DRGを効果的に刺激するのを助ける剤を含有する)を有している。チップコーティング130は、電極周囲での線維性増殖を阻止する薬剤を含有するさらに近位コーティング部位(即ち、電極の硬膜貫通(ピアス)位置に近く)を有していて良い。さらなる実施態様ではシャフトコーティング132も、電極近くでの線維性増殖を阻止する剤を含有していて良い。さらに、シャフトコーティング132は、前根(即ち、図11の移植法)又は末梢神経鞘内の組織と相互作用する薬剤を提供するということに基づいて選択することができる。
【0132】
コーティングとして用いられる薬剤により得られる所望の臨床成果の例には、限定的ではないが、瘢痕組織の発展の減少、電極上の組織増殖や形成の阻止、抗炎症、チャネルブロック剤及びその組合せ又は、痛み、神経学的病変の治療に有用な他の既知の薬剤が挙げられる。他の実施態様では、薬剤は体内に入ると、時間をかけて一定レベルの薬剤を放出させるような他の化合物を含有していても良い(即ち、時間放出薬剤)。ある実施態様では、薬剤 は抗炎症剤、鎮痛剤、COX阻害剤、PGE2阻害剤、それらの組合せ及び/又は術後の病理学的な疼痛変化を阻止するのに適した他の薬剤である。その他の使用可能な適当な薬剤は、 心内リード(cardiac leads)の被覆に使用されるものであり、ステロイドイルーディング心臓内リード又は他の移植可能な装置を被覆するのに用いられる他の剤である。
【0133】
本発明の実施態様は、刺激を与えるのに用いる電極から薬剤を放出しながら神経根神経節又は他の神経学的構造を直接刺激することを含む。1つの実施態様では、薬剤は、電極を活性化する前に放出される。他の実施態様では薬剤は電極活性後、又は活性中に放出される。さらに他の実施態様では薬剤は神経根神経節を刺激している間、神経根神経節内で薬理学的に活性である。本発明の実施態様は、刺激される神経コンポーネントの具体的な必要性に適合させるよう改変及び修飾されることは理解できるであろう。例えば、本発明の実施態様は、適当な薬剤、薬剤放出パターン及び量、並びに刺激パターン及びレベルを用いて後根神経節又は交感神経系の神経根神経節を直接刺激するのに使用される。
【0134】
図22を参照すると、図は様々な刺激機構を示す。これらの様々な機構は痛みを強める(potentate)間、それらの各々は一次知覚性ニューロンに作用する。この細胞の一次モジュレーターは、その細胞体、DRG40である。本発明の1つの側面は、DRG40の神経系内での解剖学的配置をうまく利用し他の治療手段を補償することである。他の実施態様では本明細書に記載のDRG40刺激を一次知覚ニューロンに対して作用する物質と一緒に用いることである。示したように他のメカニズムは例示の組織損傷に対し、DRG細胞体40よりも近い。異なる方法で、DRG40は他の痛みメカニズムの上流(即ち脳/脊髄13により近く)であってもよい。このように、これは上流DRG刺激の、他の痛みシグナルをブロック及び/又は軽減するための方法に係るもう一つの例を示している。
【0135】
電気生理学的研究は、プロスタグランディンE2(PGE2)(COX酵素により産生される)が、TTX-R Na+チャネルの活性化に必要な膜脱分極の程度を減じることにより部分的に、DRGニューロンの興奮性を増大すると示唆している。これはニューロンを同時発火させ個々がスパイキングしやすくする(より強い痛覚に翻訳される)。また、ここでは他のプロ-炎症剤(Vanilloid Receptor [VRl]に対するブラジキニン(Bradykinin)、カプサイチン(Capsaicin))が、TTX-R NA+チャネルに集中して影響するかを個別に示している。鎮痛作用部位もTTX-R Na+チャネル調節の上流にある。本発明の実施態様は、疼痛(痛み)経路と神経科学の側面を有利に利用し、電気刺激が薬剤と関連している(カップル)(電気刺激のみ、又は薬剤と一緒に) DRGニューロンの電気生理学的な興奮性を調節し刺激システムの効率を最適化している。
【0136】
種々の投与経路を利用する多くの他の利用可能な薬理学的遮断薬や他の治療薬を、特異的、直接的な神経根神経節、後根神経節、脊髄又は末梢神経系の刺激と組み合わせて用いることにより、電気的調節と薬理学的調節の相乗効果(相互作用)を得ることが可能である。薬理学的遮断薬としては、例えば、Na+チャネルブロッカー、Ca++チャネルブロッカー、NMDAレセプターブロッカー、及びオピオイド鎮痛薬(opoid analgesics)を挙げることができる。図23A及び23Bは、刺激及び薬剤デリバリーを組み合わせた電極を示す。先端の双極電極115Bと、移植の間、硬膜を貫通するために先端の形が斜めになったコーティング130に着目されたい。電極チップはDRG上膜72内にあり、c-線維55応答を調節及び/又は影響するのに良い位置にある。図では丸はNa+イオンを、黒三角はNa+チャネルブロッカー(例えばダイランチン-[フェニトイン]、テグレトール-[カルバマゼピン]又は他の既知のNa+チャネルブロッカー)を表す。コーティング130から薬剤が放出されると、c-線維55上のレセプターがブロックされ、応答閾値以下のc-ファイバーの応答がブロックされる(図23B)。c-線維 の応答が低下すると、より直径が大きいA-線維が優先的に刺激されるか、A-線維の応答が図22Bの閾値以上になる。
【0137】
本発明はまた、多くの有利な併用両方の実施態様を提供する。例えば、電極115Bの刺激を減少するにもかかわらず一層の、臨床上有意な効果を達成するようなやり方で、薬剤が後根神経節内で作用するか、あるいは、後根神経節に影響するように、投与することができる。あるいは、刺激が与える効果が、薬剤不在時に比較してより増大するようなやり方で、薬剤が後根神経節内で作用するか、あるいは、後根神経節に影響するように、投与することができる。具体的な1つの実施態様として、薬剤導入後、c-線維レセプターが効果的にブロックされ、チャネル遮断薬の存在下で用いうるより高レベルの刺激が使用できるよう、チャネルブロッカーである。幾つかの実施態様では、薬剤は刺激前に放出される。他の実施態様では薬剤は刺激の間又は後に放出されるか、その組合せである。例えば治療法が提供される。薬剤を単独投与する、刺激を単独で与える、刺激を薬剤存在下で与える、あるいは刺激を薬剤投与後、刺激パターンの適用前に薬剤が所望の薬理効果を導入するのに十分な時間を設けるよう、薬剤投与後一定間隔をあけて刺激する、という治療方法が得られる。本発明の刺激システムと刺激パターンの実施態様により、薬剤コーティングと電気刺激を組み合わせた本発明の微小電極を用いてC-線維及びAβ-線維閾値の微調整ができる。代表的な薬剤として、限定的ではないがNa+チャネル阻害剤、フェニトイン(Phenytoin)、カルマバゼピン(Carbamazapine)、リドカイン(Lidocaine)GDNF、オピエート(アヘン製剤、Opiates)、バイコディン(Vicodin)、ウルトラム(Ultram)及びモルフィネ(Morphine)等がある。
【0138】
図23C及び23Dは神経刺激及び薬剤デリバリーシステムの組合せの他の実施態様を示す図である。これらの操作に適したコントローラ及びパルス発生装置の詳細を、図26〜29を参照して追加記述する。ポンプと貯留デリバリーシステム(reservoir delivery systems)の組合せを用いて説明するが、薬剤を貯蔵部から電極へ移動させるためのポンプ、デリバリー前に薬剤を貯蔵しておく貯蔵部は、協同(協調)的に操作される分離した2つのコンポーネントであってもよいことは理解できる。ポンプと貯蔵部は、送達すべき特定の薬剤の制御された送達に適した任意のものである。適当なポンプには、対象内への全移植に適合されており、痛みの処理のため、又はその他の本願明細書に記載の医薬のための製剤の送達に適した任意のものである。一般に、ポンプ及び貯蔵部は、操作可能に連結したポンプシステム、例えば浸透圧ポンプシステム、蒸気圧ポンプシステム、電気分解ポンプシステム、電気化学ポンプシステム、発泡ポンプシステム、圧電性ポンプシステム又は電気機械的ポンプシステムの作用により、貯蔵部(ポンプのハウジング、又はポンプと連通している分離容器により定義される)からの薬剤を移動させる移植可能な装置を意味する、薬剤デリバリー装置である。適当なポンプに関する詳細はUS特許第3,845,770号; 第3,916,899号;第4,298,003号及び第6,835,194号(その各々の全体を引用して本明細書に組み込む)から得ることができる。
【0139】
図23Cは薬剤貯蔵部とポンプ195からの薬剤のデリバリーをコントロールするよう適合した、コントローラとパルス発生装置105Bを組み合わせたシステムを示す。薬剤貯蔵部及びポンプ195から押し出された薬剤は専用の導管を通り、共通供給部(common supply) 110F、張力緩和122Fを通り、薬剤及び刺激電極2310へ移動する。共通供給部11OFは、コントローラ105Bからの電極コントロール及びパワーシグナル、並びにポンプ195から送達された薬剤とを含有する単一の線又は2つの線が一緒になっているラインであってよい。構成とは無関係に、電極2310をコントローラ105Bとポンプ195とに連結するのに、単一の線が用いられるので、共通供給部110Fは、移植ステップを単純にする。
【0140】
神経刺激と薬剤デリバリー電極2310の組合せは、標的神経組織内に嵌合(フィット)するよう適合させた本体2312を含む。図示した実施態様では、電極本体2310は、DRG40内に嵌合するよう適合されている。電極2318は電極本体2312上又は内に位置するか、電極本体2312である。電極2318は、共通供給部110Fを介してパルス発生装置105Bから共通供給部110Fを介してシグナル及び出力(power)を受け取る。所望の刺激及び調節レベルを得るために、電極2318は電極本体2312上の任意の位置にあってよい。加えて、電極2318は、電極により発生される調節及び刺激エネルギーパターンが、標的神経組織内に止まるか、あるいはその中だけで蒸散するよう配置される。この例示の実施態様では、電極2318は、標的神経組織内の概ね中心部に止まるよう配置されている。この実施態様では標的神経組織はDRG40である。電極2318は電極本体2312上又は内に、電極2310が固定リング (以下に記載)内に座したとき電極2318がDRGのほぼ真ん中又は中心の真ん中にあるように置かれる。
【0141】
固定リング2315は、電極本体2312を、DRG40の内部又はそれと関連して置くために用いる。固定リング2315は、適当な弾性又は非弾性材料で作成され、電極が引き抜かれるか外れるのを防止するよう、電極本体2312と外部DRG層に固定されていてよい。固定リング 2315はリング2315を電極本体902及びDRG外層に接着するか機械的に付着させるよう生体適合性材料で形成されていてもよい。固定リング2315は電極2310をDRGに移植する間又はその後に存在させる。1つの別の実施態様では固定リングはDRG外層に固定され、電極2310上の係合特徴に係合する位置に相補的な係合構造を有する。電極本体2312は、固定リング2315を通ってDRG40内に入り、相補的な係合構造が係合し、さらに電極本体2312のDRG内でのさらに遠方への動きが止まるまで前進する。相補的な係合構造はDRG内に配置するよう意図している電極2310がDRGを貫通するのを防ぐ。
【0142】
電極本体2312内には、共通供給部110Fの薬剤を含有する部位から遠位の開口部2316に伝達するための導管(conduit)又は管(lumen、図示せず)が、少なくとも1つある。操作に際しては、ポンプ/貯蔵部195内の薬剤(群)は、コントローラ105Bのコントロール下、共通供給部110Fから電極本体2312を通り、遠位開口部2316からDRG内側へとデリバーされる。遠位開口部2316の実施態様では移植する間DRGに穿刺するために使われる斜めの端を有することに注意されたい。
【0143】
図23Dは神経刺激、薬剤デリバリーシステムと電極の組合せの他の幾つかの実施態様を示す。
【0144】
コントローラ、パルス発生装置及びバッテリー105Bの組合わせを使用する図23Cと対照的に図23Dの構成(configuration)は図28及び29に記載されていると同様の分散型システムを提供する。パルス発生装置とコントローラ105C 及び薬剤貯蔵部とポンプ2395は、それぞれ、適当な連結2307及び2305を用いてバッテリー2830から電力を受け取る。薬剤貯蔵部とポンプ2395はコントローラ/発生装置105Cとは独立に操作される、それ自身のコントローラを有する、コントローラ/発生装置105C (即ちマスター/スレイブ関係で)のコントロール下で操作される自身のコントローラを有するか、コントローラ/発生装置105Cのコントロール下で操作され得る。電極912はリード110を介して発生装置105cから刺激パワーを受け取る。潅流ポート928は電極本体902内の1つ以上の導管(図示せず)を介して導管から薬剤 貯蔵部とポンプ 2395に連結されている。
【0145】
電極900Aの実施態様は図20Aの電極900に似ている。電極900Aも電極本体902内の潅流ポート928を有し、それらは導管2396を介してポンプと貯蔵部2395内容物と連絡されている。電極本体902は標的神経組織を通して移植するに十分な長さを有する。図では、概ねDRG 40のほぼ中央に移植されているが、電極本体902は、異なるサイズの標的神経組織又は標的神経組織の異なる位置に移植するよう、より長く、あるいはより短くてもよいことは理解できるであろう。例えば図2OCは交感神経鎖の神経節内の非中心位置に移植された電極900を示している。電極900Aはチップ908とアンカー910を有する近位末端904を含む。固定リング920 (上記)は電極本体902をDRG 40に、またはそれに関連して固定するために提供される。アンカー910はDRGを通して挿入する間電極902に対して第一の、又は詰め込み位置に置き、次いで、第2の、電極本体902からの展開位置に動かすことができる。展開位置(図23D)において、アンカー910は、電極900AがDRG40から動くことを阻止する。多くの代替アンカー構造も可能である。アンカー910は円形パターンに配列された個々の柱(ストラット)であるか、それらの間に傘構造と同様の材質が存在するストラットであってよい、アンカー910はまた単独アンカーでも良い。
【0146】
電極912と潅流ポート928は電極本体902に沿って、神経刺激及び薬剤のデリバリーに適した任意の位置にあってよい。図示した実施態様では電極912はDRG内のほぼ中心にあり、潅流ポート928は電極本体902の遠位末端に位置する。他の構成も可能であり、より多数又は少数の電極及び潅流ポートを他の実施態様で用いることができる。例えば、潅流ポート 928はDRGの中心近くに位置させることができ、電極912はDRGを超えて、周辺組織へ入り込んで伝達される刺激エネルギーを最小限にするように、電極本体902のどこかに配置することができる。DRG 40又は他の標的神経組織内に刺激エネルギーが残存する(即ち、完全にその中で減衰する)よう、電極本体902に沿って1つ以上の電極912を位置させることができる。
【0147】
1つの具体的な実施態様では、遠位チップ908は硬膜層を貫通、電極本体902をDRGに通すためのアクセスを作成するのに適した先端を有する。先端908はDRGを通りアンカー910がチップ908により形成された開口部を通り抜けるまで前進する(図23D)。一度アンカー910がDRGを通り先に伸びると電極本体902を少し引きアンカー910をDRG硬膜に係合させる。その後、固定リング920を電極本体902周辺まで、DRG40の外層に向けて進める。DRG 40内に移植されると、アンカー910と固定リング920を用いて電極900Aを配置させる。他の実施態様では、アンカー910なしに固定リング920を用いることができる。他の実施態様では、アンカー910を固定リング920を用いないか、固定リング920の代わりに、電極本体902をDRG内又はDRG近くに固定するよう適合された他のアンカーセットを用いる。
【0148】
図24は、数種類の注入薬剤を示した表である。薬剤は左側にリストされている。右方向に、黒丸と白丸は、個々の薬剤を特定のタイプの痛み又は疾患に用いる上での、支持レベルを示している。黒丸は、対照臨床試験又は幾つかの非盲検による証明及び一般的な容認及び用途を示す。白丸は、広範でない証明によることを示す。例えば、下肢静止不能症候群(RLS)の治療には、ゼンゾジアゼピンは一般的な容認又は用途を有し、ガバペンチンはより少ない証明に基づいている。これらの、及び他の薬剤は身体に適用され、本発明の実施態様により、単独で、または本発明の実施態様により提供される刺激と組み合わせて、協同的に神経組織に薬理学的結果を与えることができる。幾つかの実施態様では、薬剤は刺激部位に提供され、他の実施態様では1つ以上の薬剤をでリバーするよう適合された刺激電極態様を用いて、薬剤は提供される。
【0149】
以下の具体的な実施例を考慮されたい。侵害受容器(nociceptor)は特定の電位依存性ナトリウムチャネルサブクラスを発現する。これらのTTX-R Na+チャネル は、小直径感覚ニューロン(即ち、c-線維)内での作用ポテンシャル狙撃率と長さに有意に貢献していると考えられる。本発明の実施態様により、相乗的に神経刺激能力を改善するのに適当なチャネルブロッカーが提供される。例えば、薬剤とチャネルが直接接触するよう、刺激と薬剤放出の組合せをNaチャネル ブロッカーを後根神経節群束間空間内、c-線維に隣接して、又は薬理学的に活性な位置にに直接提供するのに使用できる。
【0150】
本発明の実施態様はまた、イオンチャネルを選択的かつ直接の刺激と組み合わせた薬剤の標的としての神経系におけるイオンチャネルの有利な利用を可能にする。Na+チャネルとガバペンチン感受性Ca2+チャネルは、神経損傷後アップレギュレーションされる。チャネルブロッカーはc-線維神経興奮性を抑制する。痛み経路に沿って分布するNa+及びCa+チャネルは図25に図示されている。本発明の実施態様は、後根神経節群(DRG)の特定の解剖学及び特徴を、薬剤の薬効を向上するのにうまく利用している。1つの具体例では、DRGはTTX-感受性NA+チャネル (Navl.3)、TTX-耐性Na+チャネル (1.8,1.9)及びガバペンチン感受性Ca2+チャネルを含有している。図25は多くの後根神経節、末梢神経系及び脊髄求心性痛み経路を示している。神経因性痛みを伴う慢性的な神経障害後の電圧-依存性Na+ 及びCa2+チャネルサブユニットにおける変化に注意されたい。加えて、神経根神経節神経細胞体内でのNavl.3チャネル及びNa+チャネル 3(Nav 3)及びCa2+チャネル2-1(Cav 2 -1)サブユニットの発現、及び脊髄後角37内の二次侵害受容器ニューロン内でのNavl .3発現の増大がある。テトラドトキシン耐性Na+チャネルサブユニットNav 1.8及びNav 1.9も、後根神経節神経細胞体から末梢軸索と傷害部位の痛み受容体に再分配される。これらの変化は突発性の異所性放出(放電)をもたらし、感覚異常、痛覚過敏、及び異痛症などに至る機械的活性化を低下させ得る。
【0151】
本発明の一面では、これらのチャネルは、本発明の系及び刺激法の実施態様により与えられる刺激の標的である。刺激は、電気刺激のみ、直接又はDRGを経てデリバーされた薬剤、電気刺激と組み合わせて直接又はDRGを経てデリバーされた薬剤、又は痛み経路のどこかでの薬剤デリバリーと組み合わせたDRG内での電気刺激を含む。1つの特定の実施態様において、痛み経路のどこかでの薬剤デリバリーは、刺激される後根神経節又は神経根神経節の上流である。他の実施態様において、痛み経路のどこかでの薬剤デリバリーは、後根神経節の下流である。他の具体的な実施態様において、刺激は交感神経系内神経節及び神経節から生じたブロックシグナルの上流又はさもなくばそれに影響する位置にある後根神経節に与えられる。
【0152】
本発明の方法及び系の他の実施態様は、脊髄内の神経学的組織の修復に用いるか、修復を補助するのに用いることができる。
【0153】
本発明の他の側面では後根神経節群の神経節を選択的に神経刺激し、神経学的損傷の修復のための方法及びシステムを提供する。例えば、電気刺激をDRGに、DRGの一部又はDRGの近くに選択的に、薬剤の存在下又は不在下で投与し、神経学的組織の再生を促すか亢進する。
【0154】
本発明の態様で薬剤を供給する具体的な実施態様では、Neumann S, Bradke F, Tessier-Lavigne M, Basbaum AIにより示唆された機構(表題:"Regeneration of Sensory Axons Within the Injured Spinal Cord Induced by Intra神経節ic cAMP Elevation, (Neuron. 2002 Jun 13;34(6):885-93参照。その全体を本明細書に引用して組み込む))を用いて感覚神経軸索の再生のために神経節内cAMP上昇を誘導するための方法及び/又はシステムが提供される。Neuman らの研究は、神経節内db-cAMP注入後、感覚神経細胞のインビボでの中心ブランチの再生を証明した。db-cAMP-注入動物の傷害部位の横断面には再生する線維が現れている。薬剤のデリバリーに適合させた神経刺激電極を 神経節内db-cAMPデリバリーに用いうる。db-cAMPの神経節内デリバリーは本明細書に記載した薬剤デリバリーのための方法の任意の方法を用いて達成できる。そのような方法は、例えば電極本体又は一部のコーティング又は適切な位置にある潅流ポートの使用を含む。
【0155】
図26は本発明の一側面に係るパルス発生装置105を示す。従来のパルス発生装置と同様、通信エレクトロニック102は、指示を受け取るためのレシーバと情報を伝達するためのトランスミッターとを有する。1つの実施態様では、レシーバとトランスミッタは身体に移植可能であり、経皮的に情報を受け取り、伝達することができるよう適合されている。対照(コントロール)エレクトロニック106はプログラムメモリ103.1、パラメータ及びアルゴリズムメモリ103.2、及びデータメモリ103.3等の通常の特徴を有するマイクロコントローラ103を含む。バッテリー130も提供され、パルス発生装置と一緒に又は、その中に位置している(即ち図27)か、パルス発生装置とは離れた位置に移植される(即ち図28)。スイッチ109はDC-DCコンバータ113からの刺激エネルギーと刺激部位(即ち、電極はSTIMl - STIM4に位置)を、マイクロコントローラ103のコントロール下に連結するように供給される。
【0156】
プログラム可能なパラメーターはコミュニケーション電極102から受信した経皮RF テレメトリー情報により調節される。テレメトリー情報は、コントロールエレクトロニックにより解読されパルス発生装置105出力を必要に応じて調節するために使用される。パルス発生装置の出力又は刺激プログラムはダイナミック(動的)に改変されても良い。痛みはしばしば、歩行、身体を曲げる、座るなどの活動に関連している。活動レベルセンサーは、活動の量又は減少を検出するのに用いられる。活動レベルは、適当な刺激レベルを決定するために刺激プログラムを動的に改変するためにインプットすることができる。代替的に、又は付加的に、種々の予めプログラムされた刺激アルゴリズムに基づいて個々の患者のために、その患者の具体的な活動パターンに基づいてデザインすることができる。予めプログラムされた刺激アルゴリズムは本明細書に記載された刺激系により使用するために適当なメディア内に保存しうる。従来的な経皮プログラミング方法も、刺激アルゴリズムをアップデートし改変し、又は除くために使用することができる。
【0157】
痛みはしばしば立ったり横たわった姿勢に関係している。位置センサーは患者の姿勢を検出するために用いられる。患者の姿勢は、刺激プログラムを適当な刺激レベルを決定するために、動的な改変用に、刺激コントロールシステムにインプットすることができる。そのようなセンサーの1つの例は、複数軸加速度計である。従来の3又は4軸の加速度計は患者に移植するか、患者上に維持し、姿勢、活動レベル、活動の長さ、又はその他の患者の状態に関する指標を得ることができる。検出された患者の状態の指標は、次いで、刺激レベルとパターンを決定するのに使用することができる。人の上に又は中に置くか移植されると、位置センサーは、配置されるか調整される。調整(calibration)はセンサーが正しく人の向きと活動レベルを認識することを補助する。
【0158】
場合により位置(ポジション)センサー108は移植可能な発生装置と同じ生体ハウジング内にあってもよい。所望により、位置センサーは身体上のどこか、移植位置内に配置するか、ヒトの外側に着装していてもよい。位置及び/又は活動センサー108からの位置情報は直接連結又は経皮トランスミッションを含む適当な手段を用いてパルス発生装置105に提供される。多くの実施態様が適するが、例えば(本発明はそれに限定されない)、好ましい方法では、患者の状態、少なくとも、人が垂直又は横になっているかを感知する能力を決定するために、1つ以上の加速度計を使用する。加えて、位置センサーは、歩行とランニングの相違のような活動又は活動レベルの指標を与えるよう適合されている。他の実施態様では、位置センサー108は例えば、術後の理学療法を受けている身体の特定の部分又は四肢の特定の動きを検出するために、特定の身体部分の活動のような特異的な動きを感知する位置に配置することができる。この位置センサー態様を用い、人が理学療法に関連した活動を始めるとき、センサーはそのような活動を検出し、適当な刺激を与える。さらなる代替法では、位置及び/又は活動センサーは1つ以上の複数軸活動度計を含む。
【0159】
上記の通り、本発明の微少電極態様の電極サイズ及び表面積は、本明細書に記載の方法で移植できるように、従来の刺激電極よりかなり小さい。上記のように、電極サイズがより小さいことは、電気インピーダンスをより大きくし、十分な刺激電流を微少電極に提供するために電圧15ボルト以上、約20ボルト以上、または40ボルトまでもの電圧が必要になる。従来のパルス発生装置は従来の神経刺激系のための3vバッテリーから12vまでの電圧を得るために、容量性スイッチ配列を使用する。従来の容量性システムで用いるスイッチが起こす大きい電気損失により、それらは本発明の微小電極を駆動するのに十分な電流を供給することができないと考えられる。従って、パルス発生装置105は、バッテリー電圧を本明細書に記載の刺激系を操作するのに必要な範囲まで上げるためにDC-DCコンバータを用いて増大するという点で、従来のパルス発生装置から区別する。
【0160】
本発明の1つのパルス発生装置の実施態様では、少なくとも1つの移植可能な、2,500 オーム以上のインピーダンスを有する電極に連結された少なくとも1つのスイッチ109が含まれる。また、DC-DCコンバータ113の出力をコントロールするよう構成されたコントローラ103のコントロール下、少なくとも1つの移植可能な電極に刺激シグナルを供給するよう適合されたDC-DCコンバータも含まれる。さらに、パルス発生装置、1つ以上のスイッチ、DC-DCコンバータ及びコントローラは身体内に移植可能である。他の側面ではコントローラ103は痛みシグナルをブロックするためのアルゴリズムに従い、刺激シグナルを送達するためにDC-DCコンバータ113の出力をコントロールする。1つの側面でDC-DCコンバータは0ボルトから30ボルトの電圧を提供するように構成されている。他の側面では DC-DCコンバータは、0ボルトから40ボルトの電圧を提供するよう構成されている。
【0161】
図27は本発明の電極コネクタを示す。電極コネクタ120はパルス発生装置105Aと電極コネクタ126と結合するよう適合された遠位末端121と連結するための近位末端123とを有する。電極コネクタ遠位端121は幾つの微少電極115を用いるかに応じて、複数の微少電極リード110/コネクタ126と連結するように適合されている。場合により、ある実施態様では、電極コネクタ120の一部をリターン電極としてもよい。
【0162】
従来の刺激系では、刺激電極リードは直接パルス発生装置に連結されているので、移植ステップは複数のリードをパルス発生装置から各電極へ、トンネルを掘って進めることを含む。この方法は、パルス発生装置内に多くの連結点を設けることになり、その各々をシールし潜在的な浪費の源となるという点でさらなる短所である、対照的に、本発明の実施態様では、従来のトンネル掘りステップを除去しうる、微少リード110と微少電極115 を使う。従来の複数電極とそれらのリードのトンネル化ではなく、電極コネクタ120はパルス発生装置が移植された部位と、微少電極が移植される1つ以上の刺激部位との間の距離を橋架けるのに用いられる柔軟な電気的コネクタである。電極コネクタは第1の解剖学的部位に移植されたパルス発生装置から第2の解剖学的部位に移植された微少電極とを連結するのに充分な長さを有する。
【0163】
パルス発生装置105Aは、電極コネクタに対して一個の連結ポイントを有する点で、各刺激電極と複数の連結ポイントを有する従来のパルス発生装置と異なる。細い微少リードと微少電極をこのように移植し電極コネクタ 120ではるかに短くなった距離を橋渡しするという点で有利である。微少電極リード110は、電極コネクタ遠位末端121と神経根神経節移植部位の微少電極115を橋渡しする。
【0164】
図27はまた刺激コンポーネントを図示している。刺激コンポーネントは近位コネクタ126、身体の刺激部位に移植するよう構成された遠位電極115と、近位コネクタ及び遠位電極に連結された電極リード110を含む。遠位電極は例えば単極性電極か二極性電極であってよい。ある実施態様では張力緩和機構を刺激部位及び/又は固定化エレメントの近くに配置し、刺激部位近くの解剖学的構造内の固定化点に近位の電気リードの運動量を減少することができる(例えば図12A/B、13A、14A参照)。近位コネクタ126は電極コネクタ遠位末端121に連結するよう適合されている。
【0165】
さらに他の実施態様では刺激コンポーネントは、また、遠位電極 (例えば、図13B、14B中の変形可能なアンカー117)の近くにアンカー機構を含んでいて良い。幾つかの実施態様では、アンカー機構は遠位電極を刺激部位ないに係留し、そして場合により遠位電極と一緒に一体的に形成してもよい。アンカー機構はポリマー、シリコン、又は他の伸縮性で生体適合性の材料であってよい。幾つかの実施態様ではアンカー機構及び/又は電極本体を、ラジオーオパーク(radio-oopaque)材料を含有するよう適合させた曲り易い、生物適合性材料で作成する。適当な生物適合性材料は、ラジオ不透過性(opacity)の生物適合性の高分子生物材料、又は通常、重い原子の非毒性の塩又はオキシド等の他の「造影剤」を加えてラジオ不透過性にした高分子生物材料であってよい。
【0166】
図28は本発明の他の刺激システムの実施態様を示す。図示した実施態様ではパルス発生装置2806は、4つの個別にコントロールされた微少電極115が4つの別々の神経根神経節(ここでは後根神経節DRGlからDRG4)に移植されている。図28の革新的な刺激システムは従来の刺激システムと異なり、バッテリー2830はパルス発生装置2806と分離している。バッテリーの出力を運搬するのに適した電気的連結(例えばワイヤ2804)がバッテリー2830からパルス発生装置2806に伸びている。微少電極リード110はコネクタ2812を用いて、近位にパルス発生装置2806、遠位に微少電極115と連結されている。パルス発生装置2806は先に記載したパルス発生装置態様、例えば電圧0ボルト〜30ボルト、電圧0ボルト〜40ボルト又は本明細書記載の微小電極を駆動するのに適当な他の範囲の電圧を提供するように構成されたDC-DCコンバータなど、と同様の機能性を有する。バッテリー2830、バッテリーとは分離したパルス発生装置2806、電気連結2804、微少電極リード110及び微少電極115は、身体に移植するのに適合されている。
【0167】
追加の実施態様の局所パルス発生装置2806は、コンパクトなサイズで、パルス発生装置2806を刺激部位の近くに移植することが可能である。局所パルス発生装置2806を微少電極115の移植部位により近接して移植することは、より短い微少電極リード110を使用することを可能にするという点で望ましい。パルス発生装置2806の実施態様は、刺激すべき脊髄レベル、偏頭痛の解消のためには、C1-C3レベル近辺の上方背部、に近い背部への移植を可能にするのに十分な小ささである(図30)。具体的な実施態様では、パルス発生装置2806 の全容積は200 mm3より小さい。他の具体的な実施態様では、パルス発生装置2806の少なくとも1つの寸法は2mm 以下であるか、パルス発生装置2806の少なくとも1つの寸法は10 mm以下である。
【0168】
多重パルス発生装置システムの1つの実施態様を図29に示す。多重パルス発生装置態様は図28のシステムと同様であるが、第2のパルス発生装置2806Bが第1のパルス発生装置2806Aの連結点2810に、コネクタ2814を使用して連結されている。前記のシステムと同様第2パルス発生装置2806Bはバッテリー2830と分離している。加えて、微少電極リード110がコネクタ2812を用いて、近位では第2パルス発生装置2806Bに、遠位では微少電極115を連結している。微少電極115は神経根神経節、ここでは後根神経節群(DRG5-DRG8)の移植部位に移植されている。図29は別々の移植部位にある8つの移植電極を示しており、該部位は後根神経節、交感神経系の神経根神経節、又は体内の他のo市べき部位を含む。
【0169】
1つの側面ではパルス発生装置2806と第2パルス発生装置2806Bは独立してプログラムし得ることを理解できるであろう。他の側面ではパルス発生装置2806Aと第2パルス発生装置2806Bは、マスター−スレイブ(master-slave)構成に適合している。多くの強調(共同)刺激パターンが、パルス発生装置又はシステム中の全電極の各電極に可能である。さらに他の側面では1つの微少電極の活性化は第2微少電極の活性化と協調している。1つの具体的な側面では微少電極と第2微少電極は、同じパルス発生装置で活性化される。他の具体的な側面では、微少電極はパルス発生装置2806Aにより、第2微少電極は第2パルス発生装置2806Bにより、協調的なやりかたで活性化され治療的な成果を上げる。例えば、微少電極は、第2微少電極が活性であるとき活性であるか、微少電極は第2微少電極が活性であるとき不活性である。さらに他の実施態様では、微少電極は、後根神経節に移植され、第2微少電極は交感神経系の神経根神経節に移植される。図27及び28のシステムは、上で図3-7に関して記載したと同様に構成されていることは理解できるだろう。
【0170】
本発明のさらなる側面では、本発明の具体的な実施態様を用いて、頭痛、偏頭痛等の治療のために、直接刺激を単独で供給するか、本明細書に記載の放出された治療剤と併用して供給することができる。従って、本発明の実施態様を用いて直接、選択的なDRG、骨髄及び/又は末梢神経系刺激(刺激単独又は本明細書に記載の治療剤と組合せて)を、C1-C3レベルの全体、一部又は組合せに対して、頭痛、偏頭痛又は他のそれに対する関連する状態の解消のために与えることができる。ある疾患を治療するために、ある脊髄レベルの後根神経節のみを刺激するために移植された電極を刺激することにより、神経組織を刺激し、該疾患を治療する方法を提供する。図30に示すように、骨髄レベルはCl、C2又はC3を含み、疾患は頭痛、又はより具体的には偏頭痛である。
【0171】
他の側面では、本発明の実施態様は糖尿病性ニューロパシーの治療のために知覚の増強をもたらす。一つの実施態様では、本明細書記載の方法を用いたDRG5、脊髄及び/又は末梢神経系の直接刺激を与え、刺激するか、さもなくばある型の確率共鳴を生じさせ、神経学的刺激を高める、増大する又は追加の神経学的刺激を与える。確率共鳴はシステムにノイズを付加しシグナルの明瞭さを向上する。例えば、直接神経刺激の適当なDRG、DRG群、脊髄及び/又は末梢神経系への導入は、例えば前庭バランスの改善、又は糖尿病性ニューロパシーにより誘発される状態の改善又は緩和等をもたらしうる。追加(付加)神経刺激(刺激のみ、又は治療剤との併用)は、例えば、損傷された、不適切に機能する、又はさもなくば糖尿病性ニューロパシーで傷害された神経線維の神経線維機能の改善に使用できる。例示の刺激パターンとして、本明細書に記載の閾値以下のシグナル(図31A)を上昇させ、閾値レベル(図31B)又はそれ以上にするための直接刺激法(図31A)を挙げることができる。
【0172】
本発明の他の実施態様では、1つ以上の刺激電極を、交感神経鎖に沿った特異的な位置に移植することにより生理学的疾患を治療する方法を提供する。好ましくは、本発明は、種々の生理学的疾患又は病理学的状態を治療的に治療する方法であって、身体の罹患している側の交感神経鎖に沿って予め定めた部位に隣接して又は該部位と連通させて、あるいは臨床的に指摘されていれば、両方に、電極を外科的に移植することを含む方法を提供する。図32は、自律神経系の模式図であり、幾つかの神経根神経節を含む交感神経線維、副交感神経線維が示されている。
【0173】
従って、本発明の実施態様は、本発明の特異的DRG刺激を用いる上流刺激と、DRG刺激の下流に作用するもう一つの刺激を併用することで、他の神経刺激法と一緒に使用できる。本明細書中、上流及び下流とは、脳により近い側の経路(即ち、上流)又は脳からより遠い経路(即ち下流)を意味する。例えば、幾つかの刺激法が、Rezaiの米国公開特許2002/0116030及び米国特許6,438,423、及びDobakの米国公開特許2003/0181958に記載されている。これらを引用して本明細書に組み込む。具体的な側面では、本発明の実施態様はRezaiの記載(即ち、適当なDRG刺激又は神経根神経節への直接の移植)に従い、電気的、及び併用(即ち、薬剤との併用)によって、交感神経鎖の刺激を与えるのに使用される。代替的に又は付加的に、本発明の、一つ以上のDRGの特異的、直接的な刺激を与える本発明の実施態様は、Rezaiが記載した刺激法(即ち、交感神経鎖の一つ以上のRezaiの方法を用いる、従来法による交感神経の刺激)と併用することができる。
【0174】
図33は、関連するDRGの直接刺激を用いる交感神経鎖の直接刺激を用いる交感神経鎖の神経刺激のために、本発明の実施態様がどれほど有利に利用可能かを示す図である。本発明のこの側面は、本明細書中に記載の交感神経系をコントロールするためにDRG刺激を指示するゲートコントロール理論と連結し、DRGを交感神経鎖に関して解剖学的に配置する点で有利である。このように、本発明の選択的な神経刺激法は例えば、体重のコントロール、ホルモン調節、血管灌流等に関する治療手段を提供し、及び/又はそれを増強するのに有利に使用できる。さらなる別の実施態様として、臓器系自律神経転調(変調)を与えるための特異的な刺激を挙げることができる。交感神経鎖に関連した部位(群)の上流における適当なDRGを刺激するための本発明の刺激電極及び本発明の刺激システムを移植することにより、本発明の電気的及び/又は薬剤刺激法を用いて、関連したシステムを制御(コントロール)、変調(調節)させるかそれに影響を与えることができる。
【0175】
具体的な例として、脊髄レベル13.3に関連したDRG 40を刺激することにより、交感神経鎖のホルモン調節に関連した部位を変化させ、改変し、影響を与え、又は制御しうる。同様に、脊髄レベル13.2及び/又は13.1に関連したDRG 40を刺激することにより、交感神経鎖の胃腸菅、又は尿失禁(即ち、膀胱、 尿道、前立腺など)に関連した部位を変化させ、改変し、影響を与え、又は制御しうる。加えて本明細書に記載した直接刺激法は交感神経系の個々の神経神経節を直接刺激するのに用いることができる。そのような神経節として、例えば、腹腔神経節、上腸間膜神経節、下腸間膜神経節及びその他の図32、33に列挙した神経節、並びに当業者既知のものを挙げることができる。刺激システム、パルス発生装置及び微少電極、並びに他のコンポーネントは、神経節の直接刺激、神経節内への移植又は神経節に至る神経鞘隣接部位内への移植を可能にするための必要性に応じて改変されたりサイズ調節されていてよいことは理解できる。図34はDRG38の微少電極115、並びに適切にサイズ調節された微少電極115であって、交感神経根神経節63に移植された電極による組合せ直接刺激の例を示す。図34の電極は、所望の臨床成果又は他の所望の結果を得るために独立で、又は協調して刺激することができる。DRG内での電極配置に関する上記議論と同様、交感神経鎖に関する電極配置も、必要に応じて、鎖の隣接位置又は鎖から離れた位置に、一側性、両側性であってよい。
【0176】
本発明の1つの側面は交感神経系の神経経路を変調(調節,modulate)する方法であって、交感神経鎖の少なくとも1つの神経節上流の脊髄後根神経節を刺激して、交感神経査の少なくとも1つの神経節に関連した状態に影響を及ぼす方法を提供する。1つの具体例では脊髄後根神経節の刺激は、交感神経鎖に沿った少なくとも1つの神経節に関連した身体システムの機能的活性化に影響を及ぼす、交感神経鎖に沿った少なくとも1つの神経節に関連した臓器(器官)の機能的活性化に影響を及ぼす、又は交感神経鎖に沿った少なくとも1つの神経節に関連した身体システムの機能阻害に影響を及ぼすために、交感神経鎖の少なくとも1つの神経節の上流の脊髄後根神経節を刺激することを含む。具体的に実施提要では、交感神経鎖の神経節は頚部神経節、胸部神経節、又は腰部神経節である。
【0177】
他の側面では、交感神経系の神経経路を変調する方法は脊髄後根神経節上膜に暴露された電極を用いて刺激を適用することを含む。他の側面では、刺激の適用は後根神経節内に移植された電極を用いて行われる。あるいは、別法として、又は付加的に、交感神経鎖に沿った少なくとも1つの神経節に暴露された電極を用いて、又はその少なくとも1つの神経節内に移植された電極を用いて、又は交感神経鎖に沿って刺激を適用することにより、少なくとも1つの神経節に刺激を適用することができる。
【0178】
図35、36及び38は、本明細書に記載の刺激システム、方法及び微小電極の具体的態様を脊髄の直接刺激のために有利に利用する方法を示すものである。当業者ならば上記のパルス発生装置、バッテリー及び刺激システムコンポーネントを用いて本明細書記載の脊髄電極を駆動することができることを理解するだろう。図35に示すように、微少電極115は硬膜外スペース26を通過し硬膜物質32を通って、脊髄13内に進む。例示の実施態様では、電極13は脊髄13内に、椎体 70内のアンカー124を用い張力緩和エレメント122(即ち、微少電極リード110のコイル)と共に配置されている。図36は直接刺激のために脊髄13に移植されている2つの電極を示す。場合により、または付加的に、図37A,B,Cに関して以下に詳述するように,アンカー及びシールも供給することができる。例示の実施態様は脊髄内に深く移植された電極を示すが、電極は表面に埋込んでもよい。例えば、電極は外面を、丁度、深さ1 mm、2 mm〜12 mm、又は所望の刺激を達成するに必要な深さ、穿刺するように配置する。
【0179】
本発明の実施態様は脊髄を刺激する方法であって、電極を脊髄に移植し、電極を用いて刺激エネルギーを脊髄線維に供給することを含む方法を提供する。1つの側面で、電極を用い、刺激エネルギーを、脊髄線維を切断(ablate)するか、あるいは損傷するようなエネルギーレベル以下のレベルで脊髄に与えられる。具体的な実施態様では、脊髄微小電極は楔状束、薄束、皮質脊髄路、上行神経経路、及び/又は下行神経経路に移植される。
【0180】
他の具体的な実施態様では、脊髄の刺激は、脊髄硬膜実質を貫通し、電極を脊髄の髄内部分に接触させることを含む。加えて、脊髄の髄内の部分は楔状束、薄束、皮質脊髄路を含んでいて良い。また、付加的に、場合により、電極は脊髄の髄内の一部に移植することができ、それは、上肢(端)、下肢(端)、上部脊髄疼痛伝達経路、又は下部脊髄疼痛伝達経路、からの痛みをコントロールする髄内の部位に移植することができる。付加的に、場合により、電極は、臓器(例えば、自律的な膀胱刺激)のコントロール又は他の身体機能に影響を及ぼす脊髄の髄内部分に、それを直接刺激するよう移植することができる。
【0181】
図37A-37Cは電極移植ステップの間に硬膜が突刺されたのちの脊髄硬膜32のシール法を示す。1つの側面では本発明は開口部を脊髄硬膜に設け、電極を開口部を通って脊髄硬膜 に至らしめ、脊髄硬膜32の開口部をシールする方法を提供する。加えて、電極3715の遠位に傷つけないアンカー3717を置き、移植後、電極の脊髄13内での位置維持を助けると共に、その引き抜きに抗する。アンカー3717は任意の適当な、柔軟で周辺の脳脊髄液を汚染しない生体適合性材料で形成されていて良い。図37Aでは、単一の線維シール3710 が硬膜32の内壁に対向するアンカー3717の遠位に配置されている。シール3710、3720及び3725のための適当なシール材料としては、例えば、組織接着剤、合成線維、ゲルフォーム、ハイドロゲル、親水性ポリマー又は他のシーリングに適したファブリック特性を有する材料を挙げることができる。ここに記載した各シールはアンカー3717とは別個に、又は一体に形成されていて良い。図37Bは、シール3720が硬膜32の外壁に供給されている図である。図37Cは2つのシールの使用例である。シール3725は硬膜内壁に対向しシール3720は硬膜外壁に対向している。シール3720、3725のための適当なシール材料としては、血管縫合パッド、ポリウレタン、フッ素化ポリマー、PLA/PGLAのような生物分解性ポリマーを挙げることができる。ここに記載したシールは電極移植の間に硬膜に形成されたホールを通ってのGSF漏出を防ぐ。別の実施態様では、移植後、硬膜を通過するコンポーネント(デザインに応じて微少電極シャフト又は微少電極リード)は、シール3717、 3720と嵌合し、硬膜のシーリングを助けるような素材又は表面を有する。1つの具体的な実施態様では、シール3720は血管縫合パッドのようなファブリックパッドであり、シール3725はポリマー又は組織接着剤の形であってよい。
【0182】
図38は神経系への刺激と電極の配置に関する多くの特異的な標的を例示し、要約した図である。脊髄の一側のみの神経を示している。図38は所望の刺激、神経応答、又は疾患の治療に応じた、幾つかの異なる微少電極の配置場所を示している。本発明の実施態様においては、適当に小さいサイズの微少電極を使用することにより、本明細書に記載した具体的な実施態様に加えて、数多くの特異的な神経系の位置、選択的な刺激が可能となる。微少電極は以下の位置に図示されている。DRG 硬膜内(1)、硬膜を通してDRG内(2A)、末梢神経鞘を縦走してDRG内(2B)。脊髄は電極を上行路92、下行路94又は線維96に移植することにより刺激しうる。脊髄の刺激はまた、微少電極を楔状束3、薄束4又は皮質脊髄路5等特殊な脊髄領域に移植することによっても達成される。さらに、電極は神経根の入口近く、例えば後根42H及び前根41Hにおいて脊髄に移植することができる。本発明の実施態様は、また、微少電極の配置を可能にし、直接刺激は、身体機能に影響し及び/又はそれをコントロールするのに有利に配置し、適用することができる。
【0183】
ある実施態様では、直接刺激は1つ以上の電極を標的神経組織に接触させて配置することにより、刺激又は調節エネルギーを神経組織に適用することを意味する。幾つかの具体的な実施態様では、標的神経組織との接触は、電極の神経神経節上、又は内への配置を意味する。他の実施態様では、1つ以上の電極を、1つ以上の神経神経節に、該神経神経節と接触させず、隣接して配置する。神経神経節と接触せずに電極を配置するとは、電極 を神経神経節のみを優先的に刺激するような電極配置を指す。神経神経節のみを優先的に刺激するとは、神経刺激又は調節エネルギーが介在する生理学的構造や組織を通過することのない、電極配置や標的神経組織へのエネルギーデリバリーを意味する。
【0184】
本明細書に記載した、本発明の刺激システム及び方法の幾つかの利点は、現存の従来技術による刺激システムとの対比で明らかになるであろう。それらは、例えば、米国特許第6,259,952号、米国特許第6,319,241号及び米国特許第6,871,099号に記載されており、それらを本明細書に引用して組み込む。
【0185】
例えば、従来の後根神経節の刺激のために錐体に移植された刺激電極について考察する。そのように配置された電極が供給する刺激エネルギーは周囲の骨構造により減衰又は吸収される。その結果、このシステムが供給する初期刺激エネルギーは、後根神経節で所望の刺激レベルを達成するに十分な残存エネルギーを有するよう、骨を通過する際の伝搬損失を補償する大きいエネルギーでなければならない。この従来システムの刺激エネルギー は、介在する生理学的構造、例えば、脊髄、末梢神経、後根、前根、及び周囲組織、軟骨及び筋肉にも非特異的に適用される。これらの介在する生理学的構造は刺激エネルギーにさらされ、望ましくない結果を招きうる。加えて、これらの生理学的構造は、エネルギーが所望の神経組織に到達する前に減衰または吸収されるか、そうなるかもしれない。
【0186】
(a)脊髄硬膜と脊髄との間、及び(b)末梢神経内に配置された従来の刺激電極の例につい考察する。これらの位置からの後根神経節の神経刺激は、上記の例と同様に複雑である。電極が供給する刺激エネルギーは、数多くの周辺生理学的構造を通過するか、それにより吸収されるはずである。位置(a)の電極により供給される刺激エネルギーの一部は、例えば、周辺の後根鞘、脳脊髄液、及び脊髄により減衰されるか、吸収される。このシステムで供給される刺激エネルギーは、後根神経節で所望の刺激レベルを達成するに十分な残存エネルギーを有するよう、後根鞘、脳脊髄液、及び脊髄保護層(即ち、脊髄膜炎:軟膜、くも膜及び硬膜)を通過する際の伝搬損失を補償する大きいエネルギーでなければならない。刺激エネルギーはまた、脊髄に非特異的に適用される。位置(b)の電極により供給される刺激エネルギーの一部は、例えば、運動神経束を含む末梢神経束により減衰されるか、吸収される。このシステムで供給される刺激エネルギーは、後根神経節で所望の刺激レベルを達成するに十分な残存エネルギーを有するよう、末梢神経束を通過する際の伝搬損失を補償する大きいエネルギーでなければならない。刺激エネルギーはまた、脊髄に非特異的に適用される。本発明と異なり、(b)位置から供給される刺激エネルギーはまた末梢神経内の運動神経にも刺激エネルギーを適用する。上記位置(a)及び(b)の電極の各々には刺激エネルギーに暴露され望ましくない結果を起こす、介在生理学的構造を有する。加えて、介在する生理学的構造は、刺激エネルギーに暴露され、該エネルギーが所望の神経組織に到達する前にをれを減衰し、吸収する可能性がある。
【0187】
本発明の実施例では、標的神経組織内又はその近位に配置した1つ以上の電極から刺激エネルギーを提供する。電極配置の綿密性(intimate nature)により、実質上、匹敵する神経刺激レベルを少ないエネルギーを用いて達成できる。本発明の方法では、より低レベルの電力を使用できる理由の1つは、介在生理学的組織の刺激エネルギーへの暴露による減衰性損失がないことにある。従来のシステムは、熱発生の懸念があり、従来の刺激システムによれば介在組織と標的組織が刺激エネルギーに曝されるので、熱による組織損傷の可能性がある。多くの従来の刺激システムが、コントロール又はフィードバックのために組織温度を供給するか、利用している。組織温度は、それらは周辺組織又は介在構造の温度を実質上又は測定可能に昇温するに充分なエネルギーを供給するので、これらの従来システムにとって有用なパラメータである。これら従来の刺激システムは、熱損傷法(heat lesioning procedures、即ち以下の45C)で使用される致死的な熱以下の平均温度に維持しながら、周辺組織の温度を数十度(℃)、上昇させる。
【0188】
標的及び周辺組織の両方の温度を上げるシステムと対照的に、本発明の実施態様では、標的組織の温度を測定可能な量上昇させないか、1℃以下上昇させると考えられる。本発明の幾つかの実施態様で使用する刺激レベルは(a)ミリワットの範囲内;(b)ミリジュールの範囲内及び/又は(c)マイクロジュールの範囲内である。また、本発明の幾つかの実施態様で使用する刺激レベルは十分に低く、電極周囲の組織が影響されないか、温度上昇は5℃より少ない、又は1℃より少ないと考えられる。さらに、本発明の他の実施態様で使用する刺激エネルギーレベルは十分に低く、周辺組織と他の生理学的構造の温度が従来の温度測定法を用いて測定可能な量以下であるか、1℃以下であると考えられる。本発明の実施態様により供給される刺激エネルギーレベルは、実質上、従来の、周辺組織の温度を測定可能に上昇させるか、熱焼灼(thermal ablation)及び熱損傷に達するレベルで操作する従来の刺激システムの場合より低いことは理解できるであろう。
【0189】
本発明の具体的な刺激法の実施態様は、記載した刺激法を達成するために、単独で用いることができるか、以下の文献に記載の刺激法及びシステムを有する上流又は下流構成と組合せて使用できる。米国特許第5,948,007号(Starkebaum)、米国特許第5,417,719号(Hull)、米国特許第6,658,302号(Kuzma)、米国特許第6,606,521号(Paspa)、及び米国特許第5,938,690号(Law)。これら文献はその全体を引用して本願に組み込む。
【0190】
本発明の好ましい実施態様について記載したが当業者ならばそれら実施態様は例示に過ぎないことを理解するであろう。当業者ならば、本発明を逸脱することなく多くの改変、変更及び置換をなしうる。ここに記載した本発明の実施態様の様々な代替物が発明の実用化に利用できることは理解されるべきである。以下のクレームは本発明の範囲を定義し、それらクレームの範囲内の方法や構造及びそれらの同等物を包含することを意図している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
後根神経節を刺激する方法であって、
電極を神経根神経節近位に移植し、
後根神経節の一部を刺激するために電極を活性化することを含む方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3A】
image rotate

【図3B】
image rotate

【図3C】
image rotate

【図4A】
image rotate

【図4B】
image rotate

【図5A】
image rotate

【図5B】
image rotate

【図6A】
image rotate

【図6B】
image rotate

【図7A】
image rotate

【図7B】
image rotate

【図8A】
image rotate

【図8B】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12A】
image rotate

【図12B】
image rotate

【図12C】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15A】
image rotate

【図15B】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate

【図20−AB】
image rotate

【図20C】
image rotate

【図20D】
image rotate

【図21】
image rotate

【図22】
image rotate

【図23−AB】
image rotate

【図23−CD】
image rotate

【図24】
image rotate

【図25】
image rotate

【図26】
image rotate

【図27】
image rotate

【図28】
image rotate

【図29】
image rotate

【図30】
image rotate

【図31】
image rotate

【図32】
image rotate

【図33】
image rotate

【図34】
image rotate

【図35】
image rotate

【図36】
image rotate

【図37】
image rotate

【図38】
image rotate


【公開番号】特開2012−236071(P2012−236071A)
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−177169(P2012−177169)
【出願日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【分割の表示】特願2007−531323(P2007−531323)の分割
【原出願日】平成17年9月7日(2005.9.7)
【出願人】(507075624)スパイナル・モデュレーション・インコーポレイテッド (10)
【氏名又は名称原語表記】SPINAL MODULATION INC.
【Fターム(参考)】