説明

神経因性疼痛、感情および注意障害、統合失調症、耳鳴、近視および他の眼障害の処置のための置換アミノアルカンホスホン酸

【課題】神経因性疼痛、感情および注意障害、統合失調症、耳鳴、近視および他の眼障害を治療する化合物を提供する。
【解決手段】神経因性疼痛、感情および注意障害、統合失調症、耳鳴、近視および他の眼障害の処置における置換アミノアルカンホスホン酸、{[(7−ニトロ−2,3−ジオキソ−1,2,3,4−テロラヒドロ−キノキサリン−5−イルメチル)−アミノ]−メチル}−ホスホン酸、(R)−N−(2,3−ジオキソ−7−ニトロ−1,2,3,4−テトラヒドロキノキサリン−5−イルメチル)−α−(エチルアミノ)−エチルホスホン酸、または(S)−N−(7−ブロモ−2,3−ジオキソ−1,2,3,4−テトラヒドロキノキサリン−5−イルメチル)−α−アミノエチルホスホン酸の遊離または医薬状許容される塩、の使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、置換アミノアルカンホスホン酸の新規医薬的使用に関する。
【0002】
さらに特に、本発明は、式I
【化1】

〔式中、
は、ヒドロキシまたは(C1−4)アルキルであり、
は、(C1−4)アルキルであり、
は、水素、(C1−4)アルキル、フッ素、塩素、臭素、トリフルオロメチル、シアノまたはニトロであり、そして
Xは、(C1−6)アルキレン、(C1−6)アルキリデン、(C1−6)アルキレン(C3−6)シクロアルキレンまたは(C1−6)アルキレン−(C3−6)シクロアルキリデンである。〕
で示される化合物および医薬上許容されるそれらの塩(以後、本明細書において「当該化合物」という)の新規医薬的使用に関する。
【背景技術】
【0003】
「当該化合物」ならびにそれらの製造方法は、たとえばWO 98/17672から既知である。
【0004】
本願は、また、興奮性アミノ酸レセプター、たとえばAMPAレセプター、NMDA、カイニン酸(kainate)レセプターおよびNMDAレセプターのグリシン結合部位の遮断に応答する病状、たとえば神経変性障害、卒中、癲癇、不安および疼痛の処置のための化合物の使用を開示している。
【発明の概要】
【0005】
本発明にしたがって、今回、驚くべきことに、「当該化合物」が神経因性疼痛の処置において有用であることが見いだされた。
【0006】
神経因性疼痛の処置における「当該化合物」の活性は、たとえば、ラットの神経因性疼痛の以下のモデルにおいて証明される。
【0007】
ウィスター(Wistar)ラットを、エンフルランで麻酔し、そして片方の大腿の正中を上に向かって小さく切開して座骨神経を露出させる。この神経を結合組織から除去し、そして7−0シルク縫合糸を3/8湾曲リバースカッティングミニニードルで神経の中へ通し、そして神経の太さの1/3〜1/2が結紮内に保持されるようにしっかりと結紮する。筋肉と皮膚を縫合糸とクリップで閉じ、そして傷口に抗生物質粉末を振りかける。この手順により機械的痛覚過敏が提供され、これは2〜3日以内に発症し、そして少なくとも4週間維持される。機械的痛覚過敏は、V字型プローブ(面積 1.75mm)および250gのカットオフ閾値を有するアナルゲシメーター(analgesymeter)(Ugo-Basile)を用いて脚に適用される漸増圧迫刺激に対して、同側(結紮)および対側(非結紮)の両脚について、脚引っ込め閾値(paw withdrawal threshold)を測定することにより評価する。
【0008】
エンドポイントは、疼痛応答(悶え、啼鳴または脚引っ込め)の最初の徴候として受け止められる。痛覚過敏は、同側および対側の引っ込め閾値の差により示される。投与された化合物による確立された痛覚過敏の反転を、処置群あたり6匹の動物を用いて、施術後12〜14日目に測定する。脚引っ込め閾値を、薬物またはビヒクル投与前、および薬物またはビヒクル投与後6時間までに測定する。薬物処置下動物と時間を合わせてビヒクル処置した動物を比較するANOVA、続いてTukey's HSD検定を用いて、引っ込め閾値についての統計分析を行う。
【0009】
このモデルにおいて、「当該化合物」は、10mg/kg(経口)で有意に神経因性機械的痛覚過敏を反転させる。{[(7−ニトロ−2,3−ジオキソ−1,2,3,4−テトラヒドロ−キノキサリン−5−イルメチル)−アミノ]−メチル}−ホスホン酸で、たとえば、35%の神経因性機械的痛覚過敏の反転最大値が10mg/kg(経口)の投与の3時間後に達成される。
【0010】
神経因性疼痛の処置における式Iの「当該化合物」の活性は、臨床試験、たとえば糖尿病性ニューロパシーを有する患者における慢性疼痛の処置における化合物の効果を評価する以下の試験において確認される。
【0011】
患者を無作為化し、1:1の比率で2400mg/日の化合物またはプラセボを投与する。
【0012】
試験は、前−無作為化相(Pre-randomization Phase)(1週間)および二重盲検相(5週間)から成る。二重盲検相は、3つの期間:1週間のタイトレーション期間(Titration Period)、3週間の維持期間および1週間の追跡期間から成る。
【0013】
1週間の前無作為化相の間、患者の適格性を評価する。すべての登録/排除基準を満たす患者を、二重盲検相における化合物群またはプラセボ群のいずれかに無作為化する。1週間のタイトレーション期間の間、試験薬を、800mg/日(1日2回投与)から2400mg/日(1日2回投与)に漸増する。次いで、1週間のタイトレーション期間を終えた患者は、3週間の維持期間に移行する。次いで、3週間の維持期間を終えたか、または時期を早めて二重盲検処置を中止した患者は、1週間の追跡期間に移行する。追跡期間への移行後に、試験薬は完全に消失する。二重盲検相の間、連続的効果および安全性評価を得る。
【0014】
真性糖尿病(diabetes mellitus)(IまたはII型)の臨床的診断および糖尿病性ニューロパシーに関連する疼痛の病歴を試験参加前に6ヶ月〜3年間有する18〜65才の年齢の120名の男性および女性外来患者を、化合物またはプラセボに1:1にて無作為化する。
【0015】
維持期間終了時の短文型マクギル疼痛問診票(Short-Form McGill Pain Questionnaire)(SF−MPQ)の総合スコアを、一次効力パラメーターとして使用する。無作為化処置の開始から維持期間の終了時まで平均週疼痛重度の評点(患者疼痛日誌)、タイトレーションおよび維持期間中の救命薬(rescue medication)の使用、および追跡期間中の平均疼痛重度の評点(リバウンド疼痛)を、二次効力パラメーターとして使用する。
【0016】
維持期間終了時のSF−MPQ総合疼痛スコアを、共変量としてベースラインSF−MPQ総合疼痛スコアを用いることによって処置後スコアに処置の効果を合わせた共分散モデルの解析により解析する。平均週疼痛重度(average weekly pain severity)を、共変量として前−無作為化相中の処置週および平均疼痛重度評点を用いる反復測定とともに共分散モデルの分析を用いて解析する。二重盲検相中の救命薬の使用を、施設を規制するCochran−Mantel−Haenszel試験を用いて解析する。追跡期間中の平均疼痛重度評点(リバウンド疼痛)を、共変量として前−無作為化相中の平均疼痛重度評点で、追跡期間の平均疼痛重度評点に対する処置の効果に合わせた共分散モデルの解析を用いて解析する。
【0017】
この試験において、「当該化合物」、さらに特に{[(7−ニトロ−2,3−ジオキソ−1,2,3,4−テトラヒドロ−キノキサリン−5−イルメチル)−アミノ]−メチル}−ホスホン酸は、維持期間および追跡期間においてプラセボに対して疼痛重度評点を統計学的有意に低減化することが見いだされた。
【0018】
したがって、「当該化合物」は、三叉神経およびヘルペス性神経痛、糖尿病性神経因性疼痛、片頭痛、灼熱痛、ならびに腕神経叢裂離のような求心路遮断症候群(deafferentation syndrome)を含む、神経因性疼痛および関連する痛覚過敏の処置において有用である。
【0019】
本発明のさらなる態様において、驚くべきことに、当該化合物が、また、感情および注意障害(感情および注意障害)の処置に有用であることが見いだされた。
【0020】
双極性障害、たとえば躁鬱病、極端な精神状態、たとえば躁病を含む感情障害(affective disorder)の処置における「当該化合物」の活性が、たとえば、精神運動刺激効果を反転させる薬物の検出に適した以下の試験において証明される。
【実施例】
【0021】
試験例1:NMDA−アンタゴニスト誘導性自発運動:
250〜310gの体重の雄性ウィスター・キョウト・ラット(Wistar Kyoto rat)(Iffa Credo, Lyon, France)を使用する。原則として、4つの処置群を形成する:1)「当該化合物」(用量 1、3または10mg/kg)、続いて競合的NMDAレセプターアンタゴニスト (S)−2−アミノ−3−(2'−クロロ−5−ホスホノメチル−ビフェニル−3−イル)−プロピオン酸(以後、SDZ 220−581という。)(10mg/kg)、2)溶媒での前処置、続いてSDZ 220−581(10mg/kg)、3)溶媒、続いて溶媒、4)「当該化合物」(1、3、10mg/kg)、続いて溶媒。ラットを、これらの前処置群に無作為に振り分ける(n=10/用量群)。SDZ 220−581の15分前に、薬物を皮下(s.c.)に投与する。SDZ 220−581を動物に投与した直後に、それらを活動モニター(activity monitor)に60分間置く。自発運動を最初の30分間にわたって分析する。
【0022】
自発運動を、閉回路(closed circuit)デジタルビデオカメラ(WV-BP.330/GE, Panasonic, Osaka, Japan)を用いるビデオトラッキングシステム(VideoMot2, TSE Technical and Scientific Equipment GmbH, Bad Hombourg, Germany)により記録する。カメラからのビデオ−シグナルをデジタル化し、そしてデータ解析のために使用する。動物を、通常の12/12時間の昼夜サイクルに置き、06:00時に照明をつける。実験を、薄暗い明かりをつけた室内で07:00時〜15:00時に行う。動物を、灰色の塩化ポリビニル製の円形観察台(round arena)(直径42cm、高さ32cm)に置く。4匹の動物(観察台につき1匹)を同時に記録できるようにカメラを設置する。
【0023】
この試験において、「当該化合物」(1〜10mg/kg、s.c.)は、30分間の任意の時間において、ビヒクル処置動物と比べて自発運動を有意に変化させない。しかしながら、競合的NMDAレセプターアンタゴニスト SDZ 220−581(10mg/kg、s.c.)は、強力な自発運動応答を誘導する。したがって、対照動物は30分間に約8〜10m歩行するのに対して、SDZ 220−581−処置動物は約30m歩行した。この自発運動応答は、「当該化合物」により用量依存的に減少する。{[(7−ニトロ−2,3−ジオキソ−1,2,3,4−テトラヒドロ−キノキサリン−5−イルメチル)−アミノ]−メチル}−ホスホン酸(10mg/kg)により、NMDA−アンタゴニスト SDZ 220−581の効果は正規化される。
【0024】
試験例2:NMDA−チャネルブロッカー誘導性頭部揺動(swaying)および回旋(circling):
成体雄性ウィスター・キョウト・ラット(340〜380g;Iffa Credo, Lyon, France)を使用する。動物を以下の処置群に無作為化する(群ごとにn=10):「当該化合物」(用量 0、3または10mg/kg)、続いてフェンシクリジン(PCP;NMDAチャネルブロッカー、用量 0または10mg/kg)。化合物(t=−15分)およびPCP(t=0分)を、1ml/kgの量で皮下投与する。PCP後0から30分にわたる動物の挙動のビデオ記録は、動物の前処置について知らされていない観察者により評点される。頭部揺動(左右に少なくとも2cm反復的に頭部を揺り動かすこと)および回旋(前脚を用いて向きを変えるが、後脚は、おおよそもとの位置のままであること)を、存在(1)または不存在(0)のように、5分ごとに1分間評点する。個々の動物についてスコアを合計し、そして群のスコアを統計的解析(ボンフェローニ(Bonferroni)補正t−検定)に使用する。
【0025】
この試験において、PCP(10mg/kg、s.c.)は、弱い頭部揺動および回旋を誘導する。「当該化合物」(3および10mg/kg、s.c.)での前処置は、PCP(P<0.05)に対するこれらの挙動応答を有意に促進する。
【0026】
NMDA−アンタゴニスト誘導性自発運動応答は、躁病様状態を反映している。この活性の遮断は、抗躁病活性を示す。さらに、頭部揺動および回旋の促進は、行動に関する脱抑制(=抗不安−/抗鬱−様)および社会指向性活性(sociotropic activity)を示唆する。したがって、「当該化合物」は、双極性障害、たとえば躁鬱精神病、極端な精神状態、たとえば行動の安定化が望まれる躁病および過度の気分変動を含む感情障害の処置において有用である。さらに、「当該化合物」は、ADHD(注意欠陥多動性障害)および他の注意障害、たとえば自閉症、不安状態、全般性不安および広場恐怖、ならびに引きこもり(social withdrawal)により特徴づけられる行動状態、たとえば陰性症状に適用される。
【0027】
本発明のさらなる態様において、驚くべきことに、「当該化合物」は、また、統合失調症(schibophrenia)、および他の適応症、たとえばパーキンソン病における精神病様徴候の処置において有用であることが見いだされた。
【0028】
「当該化合物」の抗統合失調症活性は、標準的試験、たとえばアンフェタミン誘導性自発運動亢進試験において示される。アンフェタミン誘導性自発運動亢進の遮断は、抗統合失調症活性のためのスクリーニングパラダイムとしてよく知られている。
【0029】
215〜315gの体重の雄性ウィスターラット(Iffa Credo, Lyon, France)を使用する。原則として、4つの処置群が形成される:1)「当該化合物」(用量 1、3または10mg/kg)、続いてアンフェタミン(1mg/kg)、2)溶媒での前処置、続いてアンフェタミン(1mg/kg)、3)溶媒、続いて溶媒、4)化合物(10mg/kg)、続いて溶媒。ラットを、これらの前処置群(n=10/用量群)に無作為に振り分ける。アンフェタミンの15分前に、薬物を皮下(s.c.)に投与する。動物にアンフェタミンを投与した直後に、それらを活動モニター(activity monitor)に60分間置く。自発運動を最初の30分間にわたって分析する。
【0030】
自発運動を、閉回路(closed circuit)デジタルビデオカメラ(WV-BP.330/GE, Panasonic, Osaka, Japan)を用いるビデオトラッキングシステム(VideoMot2, TSE Technical and Scientific Equipment GmbH, Bad Hombourg, Germany)により記録する。カメラからのビデオ−シグナルをデジタル化し、そしてデータ解析のために使用する。動物を、通常の12/12時間の昼夜サイクルに置き、06:00時に照明をつける。実験を、薄暗い明かりをつけた室内で07:00時〜15:00時に行う。動物を、灰色の塩化ポリビニル製の円形観察台(round arena)(直径42cm、高さ32cm)に置く。4匹の動物(観察台につき1匹)を同時に記録できるようにカメラを設置する。
【0031】
アンフェタミンを1mg/mlとして生理食塩水に溶かし、そして1ml/kgの用量で皮下に投与する。化合物を数滴のNaOH(0.1N)に溶かし、そしてさらに10、3および1mg/mlの溶液を得るのに必要とされる生理食塩水で希釈する。それを1ml/kgの用量で皮下に投与する。
【0032】
群間の比較を、ボンフェローニ(Bonferroni)手順を用いる多重検定のための補正Student’s t−検定で行う。
【0033】
この試験において、「当該化合物」は、約1mg〜約10mg/kg(皮下)の用量でアンフェタミン誘導性自発運動を減少させる。
【0034】
本発明のいっそうさらなる態様において、驚くべきことに、「当該化合物」は、また、耳鳴の処置に置いても有用であることが見いだされた。
【0035】
「当該化合物」の耳鳴における活性は、標準的試験、たとえばサリチレート誘導耳鳴モデルにおいて示される。
【0036】
慢性的なサリチレートの曝露は、耳鳴の発症に関連する、ラット下丘(IC)においてグルタミン酸 デカルボキシラーゼ(GAD)発現のアップレギュレーションを引き起こすことが示された[C.A. Bauer et al., Hearing Research 147 (2000) 175-182]。
さらに、パッチクランプ記録技術[D. Peruzzi et al. Neuroscience 101 (2000) 403-416, X. Lin et al., Journal of Neurophysiology 79 (1998) 2503-2512]および単一ニューロン記録[J.J. Eggermont and M. Kenmochi, Hearing Research 117 (1998) 149-160]を用いる聴覚ニューロン(auditory neuron)からの電気生理学的記録は、ニューロンの興奮性がサリチレートおよびキニーネ処置の後に変化していることを示した。
【0037】
サリチレートまたはキニーネの投与は、細胞外電気生理学的記録技術により測定される聴覚ニューロンの発火率(firing rate)増加を引き起こす。インビトロ電気生理学的記録技術を用いるサリチレートでの灌流は、記録されたニューロンの興奮性を増大させる。約1nM〜100μMの濃度での「当該化合物」の投与は、サリチレートの作用を反転させた。
【0038】
上記の適応症の処置のために、適当な用量は、もちろん、たとえば使用される化合物、宿主、投与様式ならびに処置される病状の性質および重度に依存して変動する。しかしながら、一般に、動物における満足な結果が、約1〜約50mg/kg(動物の体重)の1日用量で得られることが示される。比較的大型の哺乳類、たとえばヒトにおいて、適用される本発明の化合物の1日用量は約10〜約1000mgの範囲であり、これは、簡便には、たとえば、1日4回までの分割用量で投与される。
【0039】
本発明のさらなる態様において、驚くべきことに、「当該化合物」は、また、近視および他の眼障害の処置において有用であることが見いだされた。
【0040】
かかる障害としては、加齢性黄斑変性症、糖尿病性網膜症、嚢胞様黄斑浮腫(CME)、病的近視、レーバー遺伝性視神経萎縮、網膜色素変性症、および他の遺伝性網膜変性が挙げられるが、これらに限定されるわけではない。
【0041】
「当該化合物」の近視に対する活性は、標準的試験、たとえば実験的近視を約0.1〜約1mg/kgの点眼薬の投与でニワトリにおいて引き起こすR.A. Stoneら[Proc. Natl. Acad. Sci. (USA) 86, 704-706 (1989)]によるモデルにおいて示される。
【0042】
記載された眼障害における効果は、たとえば以下の動物モデルにおいて確立され得る。
【0043】
1)マウスにおける続発性型緑内障の自然発生的発症(たとえば色素散乱、閉塞隅角または隅角発育不全)(たとえば、限定されるわけではないが、Anderson et al., BMC Genetics 2001; 2:1, Chang et al., Nature Genetics 1999; 21: 405-409、John et al., Invest. Ophthalmol. Vis. Sci. 1998; 39: 951-962, Sheldon et al., Lab. Animal Sci. 1995; 15:508-518において記載されたDBA/2J、DBA/2Nnia、およびAKXD28/Ty種マウス)。
【0044】
2)網膜変性のための遺伝的動物モデル、たとえばrdマウス(Li et al., Invest. Ophthalmol. Vis. Sci. 2001 ; 42: 2981-2989において記載されたようなもの)、Rpe65−欠損マウス(Van Hooser et al., PNAS 2000. ; 97: 8623-8628)、RCSラット(Faktorovich et al., Nature 1990; 347:83-86)、rdsマウス(Ali et al., Nature Genetics 2000, 25 : 306-310)、rcd1イヌ(Suber et al., PNAS 1993; 90: 3968-3972)。
【0045】
3)
− マウス(Wenzel et al., Invest. Ophthalmol. Vis. Sci. 2001; 42: 1653-1659において記載されたようなもの)またはラット(Faktorovich et al., J. Neurosci: 1992; 12: 3554-3567)における光曝露
− N−メチル−N−ニトロソウレア(Kiuchi et al., Exp. Eye Res. 2002; 74: 383-392)またはヨウ化ナトリウム(Sorsby & Harding, Vision Res. 1962; 2: 139-148)の投与
により引き起こされる実験的網膜変性。
【0046】
4)
− マウス(Levkovitch-Verbin et al., Invest. Ophthalmol. Vis. Sci. 2000; 41: 4169-4174)およびラット(Yoles and Schwartz, Exp. Neurol. 1998; 153:1-7)における視神経(ON)挫滅による
− ラット(Martin et al., Invest. Ophthalmol. Vis. Sci. 2002; 43: 2236-2243, Solomon et al. J. Neurosci. Methods 1996; 70:21-25において記載されたようなもの)におけるON離断による
− 眼血管結紮(ophthalmic vessel ligature)(Lafuente et al., Invest. Ophthalmol. Vis. Sci. 2001; 42:2074-2084において記載されたようなもの)または前房のカニュレーション(Buchi et al., Ophthalmologica 1991; 203:138-147)後のラットにおける実験的一過性(急性)網膜虚血による
− ラット(Stokely at al., Invest. Ophthalmol. Vis. Sci. 2002; 43: 3223-3230)またはウサギ(Takei et al., Graefes Arch. Clin. Exp. Ophthalmol 1993; 231:476-481)における眼内エンドセリン−1注射による
視神経(ON)損傷のための実験的モデル。
【0047】
近視および他の眼障害の処置のために、適当な用量は、もちろん、たとえば、使用される化合物、宿主、投与様式ならびに近視の性質および重度に依存して変動する。しかしながら、一般に、満足な結果が約0.01〜約1mg/kg(動物の体重)の1日用量で得られることが示される。比較的大型の動物、たとえばヒトにおいて、適用される本発明の化合物の1日用量は、約0.25〜約10mgの範囲であり、これは、簡便には、たとえば1日4回目での分割用量で投与される。
【0048】
上記の適用のために、「当該化合物」は、任意の常法で、たとえば経口的に、たとえば錠剤またはカプセル剤の形態で、あるいは非経腸的に、たとえば注射溶液または懸濁液の形態で投与され得る。
【0049】
近視および他の眼障害の処置のために、「当該化合物」は、眼内または眼周囲に、たとえば点眼薬、眼用懸濁液または軟膏、結膜下、眼周囲、球後または硝子体内注射として、場合によっては遅延放出デバイス、たとえば結膜インサート、マイクロスフェアーまたは他の眼周囲または眼内デポーデバイスを用いて局所的に投与され得る。
【0050】
「当該化合物」は、好ましくは、約0.002〜約0.02%の眼科用溶液で目に局所的に適用される。眼用ビヒクルは、化合物が角膜および目の内部領域に浸透するのに十分な時間、化合物が眼表面に接触して維持されるものである。医薬上許容される眼用ビヒクルは、たとえば軟膏、植物油、または封入材料(encapsulating material)であり得る。
【0051】
上記の適応症に適した化合物としては、{[(7−ニトロ−2,3−ジオキソ−1,2,3,4−テトラヒドロ−キノキサリン−5−イルメチル)−アミノ]−メチル}−ホスホン酸、(R)−N−(2,3−ジオキソ−7−ニトロ−1,2,3,4−テトラヒドロキノキサリン−5−イルメチル)−α−(エチルアミノ)−エチルホスホン酸、(S)−N−(7−ブロモ−2,3−ジオキソ−1,2,3,4−テトラヒドロキノキサリン−5−イルメチル)−α−アミノエチルホスホン酸およびそれらの医薬上許容される塩が挙げられる。
【0052】
本発明は、また、神経因性疼痛、感情および注意障害、統合失調症、耳鳴、近視および他の眼障害の処置において使用するための、少なくとも1種の医薬担体または希釈剤とともに式Iの化合物を含んでなる医薬組成物を提供する。かかる組成物は、慣用的方法で製造され得る。神経因性疼痛、感情および注意障害、統合失調症および耳鳴の処置のための単位用量形態は、たとえば約2.5mg〜約500mgの式Iの化合物を含有し得る。近視および他の眼障害の処置のための単位用量形態は、たとえば約0.05mg〜約5mgの式Iの化合物を含有し得る。
【0053】
本発明は、さらに、神経因性疼痛、感情および注意障害、統合失調症、耳鳴、近視および他の眼障害の処置のための医薬組成物の製造のための式Iの化合物の使用を提供する。
【0054】
本発明は、さらに、神経因性疼痛、感情および注意障害、統合失調症、耳鳴、近視および他の眼障害の処置方法であって、かかる処置を必要としている対象において、当該対象に式Iの化合物の治療上有効量を投与することを含んでなる方法を提供する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
神経因性疼痛、感情および注意障害、統合失調症、耳鳴、近視および他の眼障害の処置のための、遊離または医薬上許容される塩の形態の、式I
【化1】

〔式中、
は、ヒドロキシまたは(C1−4)アルキルであり、
は、(C1−4)アルキルであり、
は、水素、(C1−4)アルキル、フッ素、塩素、臭素、トリフルオロメチル、シアノまたはニトロであり、そして
Xは、(C1−6)アルキレン、(C1−6)アルキリデン、(C1−6)アルキレン(C3−6)シクロアルキレンまたは(C1−6)アルキレン(C3−6)シクロアルキリデンである。〕
で示される化合物の使用。
【請求項2】
式Iの化合物が、遊離または医薬上許容される塩の形態の、{[(7−ニトロ−2,3−ジオキソ−1,2,3,4−テトラヒドロ−キノキサリン−5−イルメチル)−アミノ]−メチル}−ホスホン酸、(R)−N−(2,3−ジオキソ−7−ニトロ−1,2,3,4−テトラヒドロキノキサリン−5−イルメチル)−α−(エチルアミノ)−エチルホスホン酸または(S)−N−(7−ブロモ−2,3−ジオキソ−1,2,3,4−テトラヒドロキノキサリン−5−イルメチル)−α−アミノエチルホスホン酸である、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
神経因性疼痛、感情および注意障害、統合失調症、耳鳴、近視および他の眼障害の処置において使用するための、活性剤として遊離または医薬上許容される塩の形態の請求項1に記載の式Iの化合物を含む医薬組成物。
【請求項4】
神経因性疼痛、感情および注意障害、統合失調症、耳鳴、近視および他の眼障害の処置のための医薬組成物の製造のための、遊離または医薬上許容される塩の形態の、請求項1に記載の式Iの化合物の使用。
【請求項5】
神経因性疼痛、感情および注意障害、統合失調症、耳鳴、近視および他の眼障害の処置方法であって、かかる処置を必要としている対象において、当該対象に、遊離または医薬上許容される塩の形態の式Iの化合物の治療上有効量を投与することを含んでなる方法。

【公開番号】特開2009−137995(P2009−137995A)
【公開日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−12152(P2009−12152)
【出願日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【分割の表示】特願2004−500885(P2004−500885)の分割
【原出願日】平成15年4月29日(2003.4.29)
【出願人】(597011463)ノバルティス アクチエンゲゼルシャフト (942)
【Fターム(参考)】