神経変性障害を治療するのに有用な化合物
【課題】神経変性障害を治療し、またはその重篤度を減ずるのに有用な化合物を提供する。
【解決手段】下記一般式I

で表される化合物、またはそれを含有する組成物を患者に投与することを含む方法。前記方法は、例えばアルツハイマー病を治療し、またはその重篤度を減ずるのに有用である。
【解決手段】下記一般式I

で表される化合物、またはそれを含有する組成物を患者に投与することを含む方法。前記方法は、例えばアルツハイマー病を治療し、またはその重篤度を減ずるのに有用である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、2005年5月17日出願の米国特許仮出願第60/681,662号の優先権を主張する。
【0002】
本発明は、神経変性障害を治療し、またはその重篤度を減ずるのに有用な医薬として活性な化合物に関する。
【背景技術】
【0003】
長い形のアミロイドβペプチド、具体的にはAβ(1−42)のアルツハイマー病における中心的な役割は、様々な病理組織学的、遺伝学的、および生化学的研究によって確立している。Selkoe,DJ,Physiol.Rev.2001,81:741−766,Alzheimer’s disease:genes,proteins,and therapy、およびYounkin SG,J Physiol Paris.1998,92:289−92,The role of A beta 42 in Alzheimer’s diseaseを参照のこと。具体的に言うと、Aβ(1−42)の脳への沈着は、すべての形のアルツハイマー病の早期の不変的な特性であることが見い出されている。実際に、これは、アルツハイマー病の診断が可能となる前、およびA−βのより短い主要な形であるAβ(1−40)が沈着する前に起こる。Parvathy Sら、Arch Neurol.2001,58:2025−32,Correlation between Abetax−40−,Abetax−42−,and Abetax−43−containing amyloid plaques and cognitive declineを参照のこと。疾患の病因へのAβ(1−42)の別の関与は、早期発症型家族性アルツハイマー病を伴うプレセニリン(γセクレターゼ)遺伝子における突然変異は、一様にAβ(1−42)レベルの増加をもたらすという観察に由来する。Ishii Kら、Neurosci Lett.1997,228:17−20,Increased A beta 42(43)−plaque deposition in early−onset familial Alzheimer’s disease brains with the deletion of exon 9 and the missense point mutation (H163R)in the PS−1 geneを参照のこと。アミロイド前駆体タンパク質APPにおけるさらなる突然変異によって、全Aβが上昇し、場合によってはAβ(1−42)のみが上昇する。Kosaka Tら、Neurology,48:741−5,The beta APP717 Alzheimer mutation increases the percentage of plasma amyloid−beta protein ending at A beta42(43)を参照のこと。様々なAPP突然変異が、沈着APの種類、量、および部位に影響を及ぼす可能性があるが、脳実質における優勢な初期の沈着種は、長いAβであることが見い出されている(Mann)。Mann DMら、Am J Pathol.1996,148:1257−66,Predominant deposition of amyloid−beta 42(43)in plaques in cases of Alzheimer’s disease and hereditary cerebral hemorrhage associated with mutations in the amyloid precursor protein geneを参照のこと。
【0004】
Aβの早期沈着物では、沈着タンパク質の大部分が非晶質または散在性プラークの形である場合、Aβは実質的にすべて、長い形である。Gravina SAら、J Biol Chem,270:7013−6,Amyloid beta protein (A beta)in Alzheimer’s disease brain.Biochemical and immunocytochemical analysis with antibodies specific for forms ending at A beta 40 or A beta 42(43);Iwatsubo Tら、Am J Pathol.1996,149:1823−30,Full−length amyloid−beta (1−42(43))and amino−terminally modified and truncated amyloid−beta 42(43)deposit in diffuse plaques;およびRoher AEら、Proc Nall Acad Sci U S A.1993,90:10836−40,beta−Amyloid−(1−42)is a major component of cerebrovascular amyloid deposits:implications for the pathology of Alzheimer diseaseを参照のこと。次いで、Aβ(1−42)のこれらの初期沈着は、長短の両方の形のAβのその後の沈着をもたらすことができる。Tamaoka Aら、Biochem Biophys Res Commun.1994,205:834−42,Biochemical evidence for the long−tail form (A beta 1−42/43)of amyloid beta protein as a seed molecule in cerebral deposits of Alzheimer’s diseaseを参照のこと。
【0005】
Aβを発現する遺伝子導入動物において、沈着は、Aβ(1−42)レベルの上昇を伴ったが、沈着のパターンは、Aβ(1−42)が早期に沈着し、続いてAβ(1−40)が沈着するヒトの疾患で見られるパターンと同様である。Rockenstein Eら、J Neurosci Res.2001,66:573−82,Early formation of mature amyloid−beta protein deposits in a mutant APP transgenic model depends on levels of Abeta(1−42);およびTerai Kら、Neuroscience 2001,104:299−310,beta−Amyloid deposits in transgenic mice expressing human beta−amyloid precursor protein have the same characteristics as those in Alzheimer’s diseaseを参照のこと。同様な沈着パターンおよびタイミングは、Aβ発現が増大し、沈着が促進するダウン症候群患者に見られる。Iwatsubo Tら、Ann Neurol.1995,37:294−9,Amyloid beta protein (A beta)deposition:A beta 42(43)precedes A beta 40 in Down syndromeを参照のこと。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、Aβ(1−42)を選択的に減らすことが、すべての形態のAβのアミロイドを形成する潜在能力を低減し、Aβの新しい沈着物の形成を遅延または止め、可溶型毒性オリゴマーのAβの形成を抑制し、それによって神経変性の進行を遅延または停止させるための疾患特異的方法として浮上してきた。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本明細書に記載するように、本発明は、神経変性障害を治療し、またはその重篤度を減ずるのに有用な化合物を提供する。本発明は、このような障害を治療し、またはその重篤度を減ずる方法であって、本発明の化合物またはその組成物を患者に投与することを含む方法も提供する。前記方法は、例えば、アルツハイマー病を治療し、またはその重篤度を減ずるのに有用である。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】クロマトグラフィーのフラクションsat14−9およびsatl4−10の1H NMRスペクトルを示す図である。
【図2】クロマトグラフィーのフラクションsat14−11およびsat14−12の1H NMRスペクトルを示す図である。
【図3】クロマトグラフィーのフラクションsatl5−1およびat15−2の1H NMRスペクトルを示す図である。
【図4】クロマトグラフィーのフラクションsat15−4およびsat15−5の1H NMRスペクトルを示す図である。
【図5】sat15−5のC−18逆相HPLCクロマトグラム分離の拡大図(ただし、数字の1〜5は、フラクションsat16−1〜sat16−9の時間窓に対応する)である。
【図6】純度98%の化合物6に対応するフラクションsat16−3の1H NMRスペクトルを示す図である。
【図7】単離プロトコル2の概要を示すフローチャート図である。
【図8】半分取HPLC後のブラックコホッシュ抽出物のHPLCトレースを示す図である。
【図9】デアシルの小ピークを示す化合物6のHPLCトレースを示す図である。
【図10】化合物6のHPLCトレースを示す図である。
【図11】デアシル−化合物6の質量スペクトルを示す図である。
【図12】デアシル−化合物6の1H NMRを示す図である。
【図13】化合物6のHPLCトレースを示す図である。
【図14】化合物6の1H NMR (CD3OD)を示す図である。
【図15】化合物6の質量スペクトルを示す図である。
【図16】プロトコル2に従って単離され、205nmで検出された化合物6のHPLCトレースを示す図である。
【図17】プロトコル2に従って単離され、230nmで検出された化合物6のHPLCトレースを示す図である。
【図18】ELSDで検出された化合物6のHPLCを示す図である。
【図19】プロトコル2に従って単離された化合物6の1H NMRスペクトルを示す図である。
【図20】プロトコル2に従って単離された化合物6の質量スペクトルを示す図である。
【図21】IP−MSで決定された、化合物6のアミロイドβ(1−40)、(1−42)、(1−37)、(1−38)、および(1−39)の相対量に及ぼす効果を示す図である。
【図22】IP−MSで決定された、化合物6の野生型および717変異型の細胞におけるアミロイドβ(1−40)、(1−42)、(1−37)、(1−38)、および(1−39)の量に及ぼす効果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
1.本発明の化合物の一般的説明:
一実施形態によれば、本発明は、式Iの化合物:
【0010】
【化1】

またはその医薬上許容される塩
[式中、
環A、環B、環C、環D、および環Eは、各々独立して、飽和、部分不飽和、または芳香族であり、
Gは、S、CH2、NR、またはOであり、
R1およびR2は、各々独立して、ハロゲン、R、OR、適宜保護されたヒドロキシル基、SR、適宜保護されたチオール基、N(R)2、または適宜保護されたアミノ基であるか、あるいはR1とR2が一緒になって、窒素、酸素、または硫黄から独立して選択された0〜2個のヘテロ原子を有する3〜7員の飽和環、部分不飽和環、またはアリール環を形成し、
Rは、各々独立して、水素、所望により置換されたC1〜6脂肪族基、あるいは所望により置換された、窒素、酸素、または硫黄から独立して選択された0〜4個のヘテロ原子を有する3〜8員の飽和環、部分不飽和環、またはアリール環であり、
ここで、同じ窒素原子上の2つのRが前記窒素原子と所望により一緒になって、窒素、酸素、または硫黄から独立して選択された1〜4個のヘテロ原子を有する3〜8員の飽和環、部分不飽和環、またはアリール環を形成し、
nは0〜2であり、
R3、R4、R7、およびR8は、各々独立して、ハロゲン、R、OR、適宜保護されたヒドロキシル基、SR、適宜保護されたチオール基、SO2R、OSO2R、N(R)2、適宜保護されたアミノ基、NR(CO)R、NR(CO)(CO)R、NR(CO)N(R)2、NR(CO)OR、(CO)OR、O(CO)R、(CO)N(R)2、またはO(CO)N(R)2から選択され、
mは0〜2であり、
R5は、T−C(R’)3、T−C(R’)2C(R”)3、R、OR、適宜保護されたヒドロキシル基、SR、適宜保護されたチオール基、SO2R、OSO2R、N(R)2、適宜保護されたアミノ基、NR(CO)R、NR(CO)(CO)R、NR(CO)N(R)2、NR(CO)OR、(CO)OR、O(CO)R、(CO)N(R)2、またはO(CO)N(R)2であるか、あるいは
R5がT−C(R’)3またはT−C(R’)2C(R”)3である場合、R6とR5のR’基とは所望により一緒になって、窒素、酸素、または硫黄から独立して選択された0〜2個のヘテロ原子を有する3〜8員の飽和環、部分不飽和環、またはアリール環を形成し、
Tは、各々独立して、原子価結合、あるいは所望により置換された直鎖または分枝状の飽和または不飽和のC1〜6アルキリデン鎖であり、ここで、Tのメチレン単位は2個まで、−O−、−N(R)−、−S−、−C(O)−、−S(O)−、または−S(O)2−によって所望によりかつ独立に置換され、
R’およびR”は、各々独立して、R、OR、SR、SO2R、OSO2R、N(R)2、NR(CO)R、NR(CO)(CO)R、NR(CO)N(R)2、NR(CO)OR、(CO)OR、O(CO)R、(CO)N(R)2、またはO(CO)N(R)2から選択され、
R6は、ハロゲン、R、OR、SR、SO2R、OSO2R、N(R)2、NR(CO)R、NR(CO)(CO)R、NR(CO)N(R)2、NR(CO)OR、(CO)OR、O(CO)R、(CO)N(R)2、またはO(CO)N(R)2であり、
R9およびR9’は、各々独立して、ハロゲン、R、OR、SR、またはN(R)2から選択され、あるいはR1とR2とは一緒になって、窒素、酸素、または硫黄から独立して選択された0〜2個のヘテロ原子を有する3〜7員の飽和環、部分不飽和環、またはアリール環を形成し、
Qは、原子価結合、あるいは所望により置換された直鎖または分枝状の飽和または不飽和のC1〜6アルキリデン鎖であり、ここで、Qのメチレン単位は2個まで、−O−、−N(R)−、−S−、−C(O)−、−S(O)−、または−S(O)2−によって所望によりかつ独立に置換され、
R10は、R、適宜保護されたヒドロキシル基、適宜保護されたチオール基、適宜保護されたアミノ基、所望により置換された、窒素、酸素、または硫黄から独立して選択された0〜4個のヘテロ原子を有する3〜8員の飽和単環式環、部分不飽和単環式環、またはアリール単環式環、所望により置換された、窒素、酸素、または硫黄から独立して選択された0〜4個のヘテロ原子を有する8〜10員の飽和二環式環、部分不飽和二環式環、またはアリール二環式環、検出可能な部分、ポリマー残基、ペプチド、あるいは糖含有または糖様部分である]
を提供する。
【0011】
他の実施形態によれば、本発明は、式Iの化合物:
【0012】
【化2】

またはその医薬上許容される塩
[式中、
環A、環B、環C、環D、および環Eは、各々独立して、飽和、部分不飽和、または芳香族であり、
Gは、S、CH2、NR、またはOであり、
R1およびR2は、各々独立して、ハロゲン、R、OR、適宜保護されたヒドロキシル基、SR、適宜保護されたチオール基、N(R)2、または適宜保護されたアミノ基であるか、あるいはR1とR2が一緒になって、窒素、酸素、または硫黄から独立して選択された0〜2個のヘテロ原子を有する3〜7員の飽和環、部分不飽和環、またはアリール環を形成し、
Rは、各々独立して、水素、所望により置換されたC1〜6脂肪族基、あるいは所望により置換された、窒素、酸素、または硫黄から独立して選択された0〜4個のヘテロ原子を有する3〜8員の飽和環、部分不飽和環、またはアリール環であり、
ここで、同じ窒素原子上の2つのRが前記窒素原子と所望により一緒になって、窒素、酸素、または硫黄から独立して選択された1〜4個のヘテロ原子を有する3〜8員の飽和環、部分不飽和環、またはアリール環を形成し、
nは0〜2であり、
R3、R4、R7、およびR8は、各々独立して、ハロゲン、R、OR、適宜保護されたヒドロキシル基、SR、適宜保護されたチオール基、SO2R、OSO2R、N(R)2、適宜保護されたアミノ基、NR(CO)R、NR(CO)(CO)R、NR(CO)N(R)2、NR(CO)OR、(CO)OR、O(CO)R、(CO)N(R)2、またはO(CO)N(R)2から選択され、
mは0〜2であり、
R5は、T−C(R’)3、T−C(R’)2C(R”)3、R、OR、適宜保護されたヒドロキシル基、SR、適宜保護されたチオール基、SO2R、OSO2R、N(R)2、適宜保護されたアミノ基、NR(CO)R、NR(CO)(CO)R、NR(CO)N(R)2、NR(CO)OR、(CO)OR、O(CO)R、(CO)N(R)2、またはO(CO)N(R)2であるか、あるいは
R5がT−C(R’)3またはT−C(R’)2C(R”)3である場合、R6とR5のR’基とは所望により一緒になって、窒素、酸素、または硫黄から独立して選択された0〜2個のヘテロ原子を有する3〜8員の飽和環、部分不飽和環、またはアリール環を形成し、
Tは、各々独立して、原子価結合、あるいは所望により置換された直鎖または分枝状の飽和または不飽和のC1〜6アルキリデン鎖であり、ここで、Tのメチレン単位は2個まで、−O−、−N(R)−、−S−、−C(O)−、−S(O)−、または−S(O)2−によって所望によりかつ独立に置換され、
R’およびR”は、各々独立して、R、OR、SR、SO2R、OSO2R、N(R)2、NR(CO)R、NR(CO)(CO)R、NR(CO)N(R)2、NR(CO)OR、(CO)OR、O(CO)R、(CO)N(R)2、またはO(CO)N(R)2から選択され、
R6は、ハロゲン、R、OR、SR、SO2R、OSO2R、N(R)2、NR(CO)R、NR(CO)(CO)R、NR(CO)N(R)2、NR(CO)OR、(CO)OR、O(CO)R、(CO)N(R)2、またはO(CO)N(R)2であり、
R9およびR9’は、各々独立して、ハロゲン、R、OR、SR、またはN(R)2から選択され、あるいはR1とR2が一緒になって、窒素、酸素、または硫黄から独立して選択された0〜2個のヘテロ原子を有する3〜7員の飽和環、部分不飽和環、またはアリール環を形成し、
Qは、原子価結合、あるいは所望により置換された直鎖または分枝状の飽和または不飽和のC1〜6アルキリデン鎖であり、ここで、Qのメチレン単位は2個まで、−O−、−N(R)−、−S−、−C(O)−、−S(O)−、または−S(O)2−によって所望によりかつ独立に置換されており、
R10は、R、適宜保護されたヒドロキシル基、適宜保護されたチオール基、適宜保護されたアミノ基;所望により置換された、窒素、酸素、または硫黄から独立して選択された0〜4個のヘテロ原子を有する3〜8員の飽和単環式環、部分不飽和単環式環、またはアリール単環式環、所望により置換された、窒素、酸素、または硫黄から独立して選択された0〜4個のヘテロ原子を有する8〜10員の飽和二環式環、部分不飽和二環式環、またはアリール二環式環、検出可能な部分、ポリマー残基、ペプチド、あるいは糖含有または糖様部分である。
ただし、前記化合物が
【0013】
【化3】

以外であることを条件とする]
を提供する。
【0014】
2.定義:
本発明の化合物としては、上記で全体的に記載されるものが挙げられるが、さらに本明細書に開示する実施形態、下位実施形態、および種によって例示される。本明細書では、別段の示唆のない限り、下記の定義を適用するものとする。本発明の目的のために、化学元素は、元素周期表(CAS版、Handbook of Chemistry and Physics、第75版)に従って特定される。さらに、有機化学の一般原理は、「Organic Chemistry」、Thomas Sorrell,University Science Books,Sausalito:1999、および「March’s Advanced Organic Chemistry」、第5編:Smith,M.B.and March,J.編集、John Wiley & Sons,New York:2001に記載され、その内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0015】
上記で全体的に定義するように、環A、環B、環C、環D、および環Eは、各々独立して、飽和、部分不飽和、または芳香族である。本発明の化合物は、化学的に可能な化合物として考えられることを理解されたい。したがって、環A、環B、環C、環D、および環Eのいずれかのいずれかが不飽和である場合、その環上のいくつかの置換基は、原子価の一般規則を満たすために存在しないことを当業者は理解されよう。例えば、環Dが、環Dと環Eの間の結合が不飽和である場合、R6は存在しない。あるいは、環Dが、環Dと環Cの間の結合が不飽和である場合、R8およびR3は存在しない。環A、環B、環C、環D、および環Eのいずれかの飽和と不飽和の組合せはすべて、本発明によって考えられる。したがって、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R9’、およびQR10がそれぞれ、存在するかまたは存在しないという要件は、原子価の一般規則を満たすために、かつ環A、環B、環C、環D、および環Eのいずれかの飽和または不飽和の程度に応じて考えられる。
【0016】
本明細書に記載するように、本発明の化合物は、1つまたは複数の置換基で所望により置換されてもよく、このようなものは、上記で全体的に記載され、または本発明の特定のクラス、下位クラス、および種によって例示される。語句「所望により置換された」は、語句「置換または非置換の」と同義で使用されることを理解されたい。一般に、用語「置換された」は、用語「所望により」が前に付いているにせよ付いていないにせよ、所与の構造の水素基の、指定の置換基の基による置換を意味する。別段の示唆のない限り、所望により置換された基は、基の置換可能な各位置のそれぞれにおいて置換基を有することができ、任意の所与の構造において1つを超える位置が指定の基から選択された1つを超える置換基で置換され得る場合、置換基はあらゆる位置で同じでも異なってもよい。本発明で想定される置換基の組合せは、好ましくは安定または化学的に可能な化合物の形成をもたらすものである。
【0017】
本明細書では、用語「安定な」は、本明細書に開示する目的の1つまたは複数のための、生成、検出、好ましくは回収、精製、および使用を可能にする条件に曝されたとき実質的には変更されない化合物を意味する。いくつかの実施形態では、安定な化合物または化学的に可能な化合物は、水分の非存在下、または他の化学反応性の高い条件下で、40℃以下の温度で少なくとも1週間維持されたとき、実質的には変更されない化合物である。
【0018】
本明細書では、用語「脂肪族の」または「脂肪族基」は、完全に飽和であり、または1つもしくは複数の不飽和単位を含む直鎖(すなわち、非分枝状)または分枝状の置換または非置換の炭化水素鎖、あるいは完全に飽和であり、または1つもしくは複数の不飽和単位を含むが芳香族でなく(本明細書では、「炭素環」、「脂環式の」、または「シクロアルキル」とも呼ばれる)、分子残部への結合が一点だけである単環式炭化水素または二環式炭化水素を意味する。別段の指定のない限り、脂肪族基は、1〜20個の脂肪族炭素原子を含む。いくつかの実施形態では、脂肪族基は、1〜6個の脂肪族炭素原子を含む。さらに他の実施形態では、脂肪族基は、1〜4個の脂肪族炭素原子を含む。いくつかの実施形態では、「脂環式の」(または「炭素環」もしくは「シクロアルキル」)は、完全に飽和され、または1つもしくは複数の不飽和単位を含むが芳香族でなく、分子残部への結合が一点だけであり、ここで前記二環式環系の任意の個々の環が3〜7員を有する単環式C3〜C8炭化水素または二環式C8〜C12炭化水素を意味する。適切な脂肪族基としては、(シクロアルキル)アルキル、(シクロアルケニル)アルキル、または(シクロアルキル)アルケニルなど、線状または分枝状の置換または非置換のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、およびそれらのハイブリッドが挙げられるが、これらに限定されない。他の実施形態では、脂肪族基は、ジェミナル水素原子2個を、−O−(直鎖または分枝状のアルキレンまたはアルキリデン)−O−などのオキソ(2価のカルボニル酸素原子=O)または環形成置換基で置換して、アセタールまたはケタールを形成することができる。
【0019】
いくつかの実施形態では、脂肪族基の例としては、エチニル、2−プロピニル、1−プロペニル、2−ブテニル、1,3−ブタジエニル、2−ペンテニル、ビニル(エテニル)、アリル、イソプロペニル、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、イソペンチル、sec−ペンチル、neo−ペンチル、tert−ペンチル、シクロペンチル、ヘキシル、イソヘキシル、sec−ヘキシル、シクロヘキシル、2−メチルペンチル、tert−ヘキシル、2,3−ジメチルブチル、3,3−ジメチルブチル、1,3−ジメチルブチル、および2,3−ジメチルブタ−2−イルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0020】
用語「ハロアルキル」、「ハロアルケニル」、および「ハロアルコキシ」は、場合によっては1つまたは複数のハロゲン原子で置換されているアルキル、アルケニル、またはアルコキシを意味する。用語「ハロゲン」は、F、Cl、Br、またはIを意味する。このような「ハロアルキル」基、「ハロアルケニル」基、および「ハロアルコキシ」基は、2つ以上のハロ置換基を有することができ、これらのハロ置換基は、同じハロゲンでもよく、またはそうでなくてもよく、同じ炭素原子上にあってもよく、またはそうでなくてもよい。例としては、クロロメチル、パーヨードメチル、3,3−ジクロロプロピル、1,3−ジフルオロブチル、トリフルオロメチル、および1−ブロモ−2−クロロプロピルが挙げられる。
【0021】
本明細書では、用語「ヘテロ環」、「ヘテロシクリル」、「ヘテロシクロ脂肪族の」、または「ヘテロ環式」は、1つまたは複数の環員が独立して選択されたヘテロ原子である非芳香族の単環式、二環式、または三環式の環系を意味する。いくつかの実施形態では、「ヘテロ環」、「ヘテロシクリル」、「ヘテロシクロ脂肪族の」、または「ヘテロ環式」基は、3〜14個の環員を有し、1つまたは複数の環員は、酸素、硫黄、窒素、またはリンから独立して選択されたヘテロ原子であり、系中の各環は3〜7個の環員を含む。
【0022】
用語「ヘテロ原子」は、酸素、硫黄、窒素、リン、またはケイ素の(窒素、硫黄、リン、またはケイ素の酸化された形;任意の塩基性窒素の四級化された形、あるいは;ヘテロ環式環の置換可能な窒素、例えば(3,4−ジヒドロ−2H−ピロリルにおけるような)N、(ピロリジニルにおけるような)NH、または(N−置換ピロリジニルにおけるような)NR+を含めて)1つまたは複数を意味する。
【0023】
本明細書では、用語「不飽和の」は、部分が1つまたは複数の不飽和単位を有することを意味する。
【0024】
本明細書では、用語「アルコキシ」または「チオアルキル」は、酸素(「アルコキシ」)原子または硫黄(「チオアルキル」)原子を介して炭素主鎖に結合している、先に定義したアルキル基を意味する。
【0025】
単独で、または「アラルキル」、「アラルコキシ」もしくは「アリールオキシアルキル」のようにより大きな部分の一部分として用いられる用語「アリール」は、系中の少なくとも1つの環が芳香族であり、系中の各環が3〜7個の環員を含み、合計5〜14個の環員を有する単環式、二環式、および三環式の環系を意味する。用語「アリール」は、用語「アリール環」と同義で使用することができる。用語「アリール」は、本明細書の下記に定義するヘテロアリール環系も意味する。
【0026】
単独で、または「ヘテロアラルキル」もしくは「ヘテロアリールアルコキシ」のようにより大きな部分の一部分として用いられる用語「ヘテロアリール」は、系中の少なくとも1つの環が芳香族であり、系中の少なくとも1つの環が1つまたは複数のヘテロ原子を含み、系中の各環が3〜7個の環員を含み、合計5〜14個の環員を有する単環式、二環式、および三環式の環系を意味する。用語「ヘテロアリール」は、用語「ヘテロアリール環」または用語「ヘテロ芳香族」と同義で使用することができる。
【0027】
アリール基(アラルキル、アラルコキシ、アリールオキシアルキルなどを含む)またはヘテロアリール基(ヘテロアラルキルおよびヘテロアリールアルコキシなどを含む)は、1つまたは複数の置換基を含むことができる。アリール基またはヘテロアリール基の不飽和炭素原子上の適切な置換基は、ハロゲン;N3、CN、R°;OR°;SR°;1,2−メチレン−ジオキシ;1,2−エチレンジオキシ;R°で所望により置換されたフェニル(Ph);R°で所望により置換された−O(Ph);R°で所望により置換された(CH2)1〜2(Ph);R°で所望により置換されたCH=CH(Ph);NO2;CN;N(R°)2;NR°(O)R°;NR°(O)N(R°)2;NR°O2R°;−NR°R°(O)R°;NR°NR°C(O)N(R°)2;NR°NR°CO2R°;C(O)C(O)R°;C(O)CH2C(O)R°;CO2R°;C(O)R°;C(O)N(R°)2;OC(O)N(R°)2;S(O)2R°;SO2N(R°)2;S(O)R°;NR°SO2N(R°)2;NR°SO2R°;C(=S)N(R°)2;C(=NH)−N(R°)2;または(CH2)0〜2NHC(O)R°(式中、R°はそれぞれ独立に出現するたびに、水素、所望により置換されたC1〜6脂肪族、5〜6員の非置換ヘテロアリールもしくはヘテロ環式環、フェニル、O(Ph)、またはCH2(Ph)から選択され、あるいは上記の定義にもかかわらず、R°は同じ置換基または異なる置換基上で独立に2個出現するとき、R°基がそれぞれ結合している原子と一緒になって、窒素、酸素、または硫黄から独立して選択された0〜4個のヘテロ原子を有する3〜8員のシクロアルキル、ヘテロシクリル、アリール、またはヘテロアリール環を形成する)から選択される。R°の脂肪族基上の所望による置換基は、N3、CN、NH2、NH(C1〜4脂肪族)、N(C1〜4脂肪族)2、ハロゲン、C1〜4脂肪族、OH、O(C1〜4脂肪族)、NO2、CN、CO2H、CO2(C1〜4脂肪族)、O(ハロC1〜4脂肪族)、またはハロC1〜4脂肪族(式中、R°の上記のC1〜4脂肪族基はそれぞれ、非置換である)から選択される。
【0028】
脂肪族基、もしくはヘテロ脂肪族基、または非芳香族ヘテロ環式環は、1つまたは複数の置換基を含むことができる。脂肪族基もしくはヘテロ脂肪族基、または非芳香族ヘテロ環式環の飽和炭素上の適切な置換基は、アリール基またはヘテロアリール基の不飽和炭素について上記に列挙するものから選択され、さらに下記の=O、=S、=NNHR*、=NN(R*)2、=NNHC(O)R*、=NNHCO2(アルキル)、=NNHSO2(アルキル)、または=NR*(式中、R*は、各々独立して、水素、または所望により置換されたC1〜6脂肪族から選択される)が挙げられる。R*の脂肪族基上の所望による置換基は、NH2、NH(C1〜4脂肪族)、N(C1〜4脂肪族)2、ハロゲン、C1〜4脂肪族、OH、O(C1〜4脂肪族)、NO2、CN、CO2H、CO2(C1〜4脂肪族)、O(ハロC1〜4脂肪族)、またはハロ(C1〜4脂肪族)(式中、R*の上記のC1〜4脂肪族基はそれぞれ、非置換である)から選択される。
【0029】
非芳香族ヘテロ環式環の窒素上の所望による置換基は、R+、N(R+)2、C(O)R+、CO2R+、C(O)C(O)R+、C(O)CH2C(O)R+、SO2R+、SO2N(R+)2、C(=S)N(R+)2、C(=NH)−N(R+)2、またはNR+SO2R+(式中、R+は、水素、所望により置換されたC1〜6脂肪族、所望により置換されたフェニル、所望により置換されたO(Ph)、所望により置換されたCH2(Ph)、所望により置換された(CH2)1〜2(Ph);所望により置換されたCH=CH(Ph);または酸素、窒素、もしくは硫黄から独立して選択された1〜4個のヘテロ原子を有する5〜6員の非置換ヘテロアリールもしくはヘテロ環式環であり、あるいは上記の定義にもかかわらず、R+は同じ置換基または異なる置換基上で独立に2個出現するとき、R+基がそれぞれ結合している原子と一緒になって、窒素、酸素、または硫黄から独立して選択された0〜4個のヘテロ原子を有する3〜8員のシクロアルキル、ヘテロシクリル、アリール、またはヘテロアリール環を形成する)から選択される。R+の脂肪族基またはフェニル環上の所望による置換基は、NH2、NH(C1〜4脂肪族)、N(C1〜4脂肪族)2、ハロゲン、C1〜4脂肪族、OH、O(C1〜4脂肪族)、NO2、CN、CO2H、CO2(C1〜4脂肪族)、O(ハロC1〜4脂肪族)、またはハロ(C1〜4脂肪族)(式中、R+の上記のC1〜4脂肪族基のそれぞれ、非置換である)から選択される。
【0030】
上記に詳述するように、いくつかの実施形態では、独立に2個出現するR°(またはR+、または本明細書に同様に定義する他の任意の変数)は変数がそれぞれ結合している原子と一緒になって、窒素、酸素、または硫黄から独立して選択された0〜4個のヘテロ原子を有する3〜8員のシクロアルキル環、ヘテロシクリル環、アリール環、またはヘテロアリール環を形成する。独立に2個出現するR°(またはR+、または本明細書に同様に定義する他の任意の変数)が、変数がそれぞれ結合している原子と一緒になって形成される環の例としては、下記のa)同じ原子に結合し、その原子と一緒になって、環、例えばN(R°)2を形成する(出現するR°が両方とも、窒素原子と一緒になって、ピペリジン−1−イル、ピペラジン−1−イル、またはモルホリン−4−イル基を形成する)、独立に2個出現するR°(またはR+、または本明細書に同様に定義する他の任意の変数)、およびb)異なる原子に結合し、それらの原子の両方と一緒になって、環を形成する、例えばフェニル基が2個出現するOR°
【0031】
【化4】

で置換され、これらの2個出現するR°はそれらが結合している酸素原子と一緒になって、6員の酸素含有縮合環:
【0032】
【化5】

を形成する独立に2個出現するR°(またはR+、または本明細書に同様に定義する他の任意の変数)が挙げられるが、これらに限定されない。独立に2個出現するR°(またはR+、または本明細書に同様に定義する他の任意の変数)が、変数がそれぞれ結合している原子と一緒になる場合、様々な他の環が形成され得ること、上記に詳述する例に限定されるものではないことを理解されたい。
【0033】
本明細書では、用語「検出可能な部分」は、用語「標識」と同義で使用され、任意の検出可能な部分、例えば一次標識および二次標識に関する。放射性同位体(例えば、32P、33P、35S、または14C)、質量タグ、および蛍光標識などの一次標識は、さらなる修飾なしに検出することができる信号生成レポーター基である。
【0034】
本明細書では、用語「二次標識」は、検出可能な信号を生成するための第2の中間体の存在を必要とするビオチンや様々なタンパク質抗原などの部分を意味する。ビオチンの場合、第2の中間体としては、ストレプトアビジン−酵素のコンジュゲートが挙げられる。抗原標識の場合、第2の中間体としては、抗体−酵素のコンジュゲートが挙げられる。いくつかの蛍光基は、無放射蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)のプロセスでエネルギーを別の基に移動させ、第2の基が検出された信号を生成するので二次標識として働く。
【0035】
本明細書では、用語「蛍光標識」、「蛍光色素」、および「蛍光体」は、定義された励起波長において光エネルギーを吸収し、異なる波長において光エネルギーを発する部分を意味する。蛍光標識の例としては、Alexa Fluor色素(Alexa Fluor 350、Alexa Fluor 488、Alexa Fluor 532、Alexa Fluor 546、Alexa Fluor 568、Alexa Fluor 594、Alexa Fluor 633、Alexa Fluor 660、およびAlexa Fluor 680)、AMCA、AMCA−S、BODIPY色素(BODIPY FL、BODIPY R6G、BODIPY TMR、BODIPY TR、BODIPY 530/550、BODIPY 558/568、BODIPY 564/570、BODIPY 576/589、BODIPY 581/591、BODIPY 630/650、BODIPY 650/665)、カルボキシローダミン6G、カルボキシ−X−ローダミン(ROX)、カスケードブルー、カスケードイエロー、クマリン343、シアニン色素(Cy3、Cy5、Cy3.5、Cy5.5)、ダンシル、ダポキシル、ジアルキルアミノクマリン、4’,5’−ジクロロ−2’,7’−ジメトキシ−フルオレセイン、DM−NERF、エオシン、エリトロシン、フルオレセイン、FAM、ヒドロキシクマリン、IRDye(IRD40、IRD 700、IRD 800)、JOE、リッサミンローダミンB、マリーナブルー、メトキシクマリン、ナフトフルオレセイン、オレゴングリーン488、オレゴングリーン500、オレゴングリーン514、パシフィックブルー、PyMPO、ピレン、ローダミンB、ローダミン6G、ローダミングリーン、ローダミンレッド、Rhodol Green、2’,4’,5’,7’−テトラ−ブロモスルホン−フルオレセイン、テトラメチル−ローダミン(TMR)、カルボキシテトラメチルローダミン(TAMRA)、テキサスレッド、テキサスレッド−Xが挙げられるが、これらに限定されない。
【0036】
本明細書では、用語「質量タグ」は、質量分析(MS)検出技法を使用して、その質量に基づいて独自に検出可能な任意の部分を意味する。質量タグの例としては、N−[3−[4’−[(p−メトキシテトラフルオロベンジル)オキシ]フェニル]−3−メチルグリセロニル]イソニペコチン酸、4’−[2,3,5,6−テトラフルオロ−4−(ペンタフルオロフェノキシル)]メチルアセトフェノン、およびそれらの誘導体などの電気泳動放出タグが挙げられる。これらの質量タグの合成および有用性は、米国特許第4,650,750号、第4,709,016号、第5,360,8191号、第5,516,931号、第5,602,273号、第5,604,104号、第5,610,020号、および第5,650,270号に記載されている。質量タグの他の例としては、ヌクレオチド、ジデオキシヌクレオチド、様々な長さと塩基組成のオリゴヌクレオチド、オリゴペプチド、オリゴ糖、および様々な長さとモノマー組成の他の合成ポリマーが挙げられるが、これらに限定されない。適切な質量範囲(100〜2000ダルトン)の多種多様な中性有機分子と荷電有機分子(生体分子または合成化合物)も、質量タグとして使用することができる。
【0037】
本明細書では、用語「基材」は、本発明の化合物の官能化末端基が結合することができる任意の材料または高分子複合体を意味する。一般的に使用される基材の例としては、ガラス表面、シリカ表面、プラスチック表面、金属表面、金属コーティングまたは化学コーティングを含む表面、メンブラン(例えば、ナイロン、ポリスルホン、シリカ)、マイクロビーズ(例えば、ラテックス、ポリスチレン、または他のポリマー)、多孔性ポリマーマトリックス(例えば、ポリアクリルアミドゲル、多糖、ポリメタクリラート)、高分子複合体(例えば、タンパク質、多糖)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0038】
別段の記載のない限り、本明細書に示す構造は、構造のすべての異性体(例えば、鏡像異性体、ジアステレオマー、および幾何(または配座)異性体)、例えば各不斉中心に対する立体配置RとS、二重結合異性体(Z)と(E)、および配座異性体(Z)と(E)を包含することも意味する。したがって、本化合物の単一の立体化学異性体、ならびに鏡像異性体、ジアステレオマー、および幾何(または配座)異性体の混合物は、本発明の範囲内である。
【0039】
別段の記載のない限り、本発明の化合物の互変異性体はすべて、本発明の範囲内である。
【0040】
さらに、別段の記載のない限り、本明細書に示す構造は、1つまたは複数の同位体標識原子の存在下でのみ異なる化合物を含むことも意味する。例えば、水素を重水素もしくはトリチウムで置換、または炭素を13C−もしくは14C−標識炭素で置換した点以外は本構造を有する化合物は、本発明の範囲内である。このような化合物は、例えば生物検定の分析ツールまたはプローブとして有用である。
【0041】
3.例示化合物の説明:
上記で全体的に定義するように、式IのG部分は、S、CH2、NR、またはOである。いくつかの実施形態では、式IのG部分はOである。
【0042】
上記で全体的に定義するように、式IのR1およびR2は、各々独立して、ハロゲン、R、OR、適宜保護されたヒドロキシル基、SR、適宜保護されたチオール基、N(R)2、または適宜保護されたアミノ基であるか、あるいはR1とR2は一緒になって、窒素、酸素、または硫黄から独立して選択された0〜2個のヘテロ原子を有する3〜7員の飽和環、部分不飽和環、またはアリール環を形成する。いくつかの実施形態では、式IのR1およびR2は、各々独立して、RまたはORである。他の実施形態では、式IのR1およびR2は、各々独立して、Rであり、ここで、Rは水素または所望により置換されたC1〜6脂肪族基である。本発明の別の態様によれば、式IのR1とR2は一緒になって、窒素、酸素、または硫黄から独立して選択された0〜2個のヘテロ原子を有する3〜6員の飽和環、部分不飽和環、またはアリール環を形成する。本発明のさらに別の態様は、式Iの化合物(式中、R1とR2が一緒になって、3〜6員の飽和炭素環式環を形成する)を提供する。他の実施形態では、式IのR1とR2が一緒になって、シクロプロピル環を形成する。
【0043】
いくつかの実施形態では、式Iのn部分は、0〜1である。他の実施形態では、式Iのn部分は1である。
【0044】
上記で全体的に定義するように、式IのR5基は、R5である、T−C(R’)3、T−C(R’)2C(R”)3、R、OR、適宜保護されたヒドロキシル基、SR、適宜保護されたチオール基、SO2R、OSO2R、N(R)2、適宜保護されたアミノ基、NR(CO)R、NR(CO)(CO)R、NR(CO)N(R)2、NR(CO)OR、(CO)OR、O(CO)R、(CO)N(R)2、またはO(CO)N(R)2であり、ここで、Tは、各々独立して、原子価結合、あるいは所望により置換された直鎖または分枝状の飽和または不飽和のC1〜6アルキリデン鎖であり、Tのメチレン単位は2個まで、−O−、−N(R)−、−S−、−C(O)−、−S(O)−、または−S(O)2−によって所望によりかつ独立に置換されている。いくつかの実施形態では、Tは、各々独立して、原子価結合、あるいは直鎖または分枝状のC1〜4アルキリデン鎖であり、ここで、Tのメチレン単位1個は、−O−、−N(R)−、または−S−で所望により置換されている。他の実施形態では、Tは、各々独立して、原子価結合、あるいは直鎖または分枝状のC1〜4アルキリデン鎖である。さらに別の実施形態では、Tはそれぞれ、原子価結合である。
【0045】
式IのR5基がT−C(R’)3またはT−C(R’)2C(R”)3である場合、R’およびR”は、各々独立して、R、OR、SR、SO2R、OSO2R、N(R)2、NR(CO)R、NR(CO)(CO)R、NR(CO)N(R)2、NR(CO)OR、(CO)OR、O(CO)R、(CO)N(R)2、またはO(CO)N(R)2から選択される。いくつかの実施形態では、R’およびR”は、各々独立して、R、OR、OC(O)R、SR、またはN(R)2である。他の実施形態では、R’およびR”は、各々独立して、R、OR、またはOC(O)Rである。R’基およびR”基の例としては、水素、CH3、OH、およびOC(O)CH3が挙げられる。
【0046】
上記で全体的に定義するように、R5がT−C(R’)3またはT−CH(R’)C(R”)3である場合、R6とR5のR’基とは所望により一緒になって、窒素、酸素、または硫黄から独立して選択された0〜2個のヘテロ原子を有する3〜8員の飽和環、部分不飽和環、またはアリール環を形成する。いくつかの実施形態では、R5は、T−C(R’)3またはT−C(R’)2C(R”)3であり、R6とR5のR’基とは一緒になって、窒素、酸素、または硫黄から独立して選択された1〜2個のヘテロ原子を有する5〜7員の飽和環を形成する。他の実施形態では、R5は、T−C(R’)3またはT−C(R’)2C(R”)3であり、R6とR5のR’基とは一緒になって、1個の酸素原子を有する6員飽和環を形成する。このような化合物は、Tが原子価結合である場合、式IIa(R5がT−C(R’)3の場合)およびIIb(R5がT−C(R’)2C(R”)3の場合):
【0047】
【化6】

[式中、R’、R”、R1、R2、R3、R4、R7、R8、R9、R9’、Q、およびR10はそれぞれ、上記で全体的に定義する通りであり、本明細書の上記で定義するクラスおよび下位クラスと同様である]
を有する。
【0048】
上記で全体的に定義するように、式IのR5基は、とりわけ適宜保護されたヒドロキシル基、適宜保護されたチオール基、または適宜保護されたアミノ基である。ヒドロキシル保護基は、当技術分野でよく知られており、参照によりその全体が本明細書に組み込まれるProtecting Groups in Organic Synthesis,T.W.Greene and P.G.M.Wuts、第3版、John Wiley & Sons,1999に詳述されているものが挙げられる。さらに、式IのR5基の適宜保護されたヒドロキシル基の例としては、エステル、アリルエーテル、エーテル、シリルエーテル、アルキルエーテル、アリールアルキルエーテル、およびアルコキシアルキルエーテルが挙げられるが、これらに限定されない。このようなエステルの例としては、ギ酸エステル、酢酸エステル、炭酸エステル、およびスルホン酸エステルが挙げられる。具体例としては、ギ酸エステル、ベンゾイルギ酸エステル、クロロ酢酸エステル、トリフルオロ酢酸エステル、メトキシ酢酸エステル、トリフェニルメトキシ酢酸エステル、p−クロロフェノキシ酢酸エステル、3−フェニルプロピオン酸エステル、4−オキソペンタン酸エステル、4,4−(エチレンジチオ)ペンタン酸エステル、ピバロエート(トリメチルアセチル)、クロトン酸エステル、4−メトキシ−クロトン酸エステル、安息香酸エステル、p−ベニル安息香酸エステル(benylbenzoate)、2,4,6−トリメチル安息香酸エステル;メチル、9−フルオレニルメチル、エチル、2,2,2−トリクロロエチル、2−(トリメチルシリル)エチル、2−(フェニルスルホニル)エチル、ビニル、アリル、およびp−ニトロベンジルなどの炭酸エステルが挙げられる。このようなシリルエーテルの例としては、トリメチルシリル、トリエチルシリル、t−ブチルジメチルシリル、t−ブチルジフェニルシリル、トリイソプロピルシリル、および他のトリアルキルシリルエーテルが挙げられる。アルキルエーテルとしては、メチル、ベンジル、p−メトキシベンジル、3,4−ジメトキシベンジル、トリチル、t−ブチル、アリル、およびアリルオキシカルボニルエーテル、または誘導体が挙げられる。アルコキシアルキルエーテルとしては、メトキシメチル、メチルチオメチル、(2−メトキシエトキシ)メチル、ベンジルオキシメチル、β−(トリメチルシリル)エトキシメチル、およびテトラヒドロピラニルエーテルなどのアセタールが挙げられる。アリールアルキルエーテルの例としては、ベンジル、p−メトキシベンジル(MPM)、3,4−ジメトキシベンジル、O−ニトロベンジル、p−ニトロベンジル、p−ハロベンジル、2,6−ジクロロベンジル、p−シアノベンジル、2−ピコリル、および4−ピコリルが挙げられる。
【0049】
チオール保護基は、当技術分野でよく知られており、参照によりその全体が本明細書に組み込まれるProtecting Groups in Organic Synthesis,T.W.Greene and P.G.M.Wuts、第3版、John Wiley & Sons,1999に詳述されているものが挙げられる。式IのR5部分の適宜保護されたチオール基としては、ジスルフィド、チオエーテル、シリルチオエーテル、チオエステル、チオカーボナート、チオカーバマートなどが挙げられるが、これらに限定されない。このような基の数例としては、アルキルチオエーテル、ベンジルチオエーテル、置換ベンジルチオエーテル、トリフェニルメチルチオエーテル、トリクロロエトキシカルボニルなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0050】
本発明の別の態様によれば、式IのR5部分は、中性条件下、例えばAgNO3、HgCl2などで除去可能なチオール保護基である。他の中性条件としては、適切な還元剤を使用する還元が挙げられる。適切な還元剤としては、ジチオスレイトール(DTT)、メルカプトエタノール、ジチオナイト、還元グルタチオン、還元グルタレドキシン、還元チオレドキシン、トリスカルボキシエチルホスフィン(TCEP)などの置換ホスフィン、および他の任意のぺプチドもしくは有機ベース還元剤、または当業者に知られている他の試薬が挙げられる。本発明のさらに別の態様によれば、式IのR5部分は、「光開裂可能な」チオール保護基である。このような適切なチオール保護基は、当技術分野で知られており、ニトロベンジル基、テトラヒドロピラニル(THP)基、トリチル基、−CH2SCH3(MTM)、ジメチルメトキシメチル、または−CH2−S−S−ピリジン−2−イルが挙げられるが、これらに限定されない。当業者なら、本明細書に記載する適切なヒドロキシル保護基の多くも、チオール保護基として適切であることを理解されよう。
【0051】
いくつかの実施形態では、式IのR5基は、適宜保護されたアミノ基である。アミノ保護基は、当技術分野でよく知られており、参照によりその全体が本明細書に組み込まれるProtecting Groups in Organic Synthesis,T.W.Greene and P.G.M.Wuts、第3版、John Wiley & Sons,1999に詳述されているものが挙げられる。前記R5部分の適宜保護されたアミノ基としては、さらにアラルキルアミン、カルバマート、環状イミド、アリルアミン、アミドなどが挙げられるが、これらに限定されない。このような基の例としては、t−ブチルオキシカルボニル(BOC)、エチルオキシカルボニル、メチルオキシカルボニル、トリクロロエチルオキシカルボニル、アリルオキシカルボニル(Alloc)、ベンジルオキソカルボニル(CBZ)、アリル、フタルイミド、ベンジル(Bn)、フルオレニルメチルカルボニル(Fmoc)、ホルミル、アセチル、クロロアセチル、ジクロロアセチル、トリクロロアセチル、フェニルアセチル、トリフルオロアセチル、ベンゾイルなどが挙げられる。いくつかの実施形態では、R5部分のアミノ保護基はフタルイミドである。さらに別の実施形態では、R5部分のアミノ保護基は、tert−ブチルオキシカルボニル(BOC)基である。
【0052】
上記で全体的に定義するように、式IのQ基は、原子価結合、あるいは所望により置換された直鎖または分枝状の飽和または不飽和のC1〜4アルキリデン鎖であり、ここで、Qのメチレン単位は2個まで、−O−、−N(R)−、−S−、−C(O)−、−S(O)−、または−S(O)2−によって所望によりかつ独立に置換されている。いくつかの実施形態では、Qは、所望により置換された直鎖または分枝状の飽和または不飽和のC1〜2アルキリデン鎖であり、ここで、Qのメチレン単位は1個まで、−O−、−N(R)−、または−S−によって所望により置換されている。他の実施形態では、Qは−O−である。
【0053】
上記で全体的に定義するように、式IのR10基は、R、適宜保護されたヒドロキシル基、適宜保護されたチオール基、適宜保護されたアミノ基、所望により置換された、窒素、酸素、または硫黄から独立して選択された0〜4個のヘテロ原子を有する3〜8員の飽和単環式環、部分不飽和単環式環、またはアリール単環式環、所望により置換された、窒素、酸素、または硫黄から独立して選択された0〜4個のヘテロ原子を有する8〜10員の飽和二環式環、部分不飽和二環式環、またはアリール二環式環、検出可能な部分、ポリマー残基、ペプチド、あるいは糖含有基または糖様基である。
【0054】
いくつかの実施形態では、式IのR10基は、糖含有基である。このような糖含有基は当業者に周知であり、「Essentials of Glycobiology」、Varki,A.ら編、Cold Spring Harbor Laboratory Press.Cold Spring Harbor,N.Y.2002に詳述されているものが挙げられる。いくつかの実施形態では、式IのR10基は、配糖体である。R10基の例としては、アラビノピラノシドおよびキシロピラノシドが挙げられる。いくつかの実施形態では、式IのR10基はキシロピラノシドである。いくつかの実施形態では、式IのR10基はアラビノピラノシドである。さらに別の実施形態では、式IのR10基は
【0055】
【化7】

である。別の実施形態によれば、式IのR10基は
【0056】
【化8】

である。さらに別の実施形態は、式Iの化合物(式中、R10は
【0057】
【化9】

である)を提供する。
【0058】
本発明の別の態様によれば、式IのR10基は、擬似糖である。このような擬似糖は当業者に周知であり、「Essentials of Glycobiology」に詳述されているものが挙げられる。例えば、本発明によって考えられる擬似糖基としては、シクリトールなどが挙げられる。いくつかの実施形態では、R10はシクリトール部分であり、前記シクリトールは、IUPAC規約で定義されるように3個以上の各環原子上にヒドロキシル基を1個含むシクロアルカンである。他の実施形態では、このようなシクリトール部分としては、シロイノシトールなどのイノシトールが挙げられる。
【0059】
さらに、式IのR10基の適切な糖様部分としては、非環式の糖基が挙げられる。このような基の数例としては、線状のアルキトールおよびエリトリトールなどが挙げられる。糖基は、環状または非環式の形で存在できることを理解されたい。したがって、糖基の非環式の形は、本発明によって式IのR10基の適切な糖様部分として考えられる。
【0060】
いくつかの実施形態では、式IのR10基は検出可能な部分である。他の実施形態では、式IのR10基は、本明細書の上記に定義するように蛍光標識、蛍光色素、または蛍光体である。
【0061】
本発明の別の態様によれば、式IのR10基はポリマー残基である。ポリマー残基は、当技術分野でよく知られており、「Chemistry of Protein Conjugation and Cross−Linking」、Shan S.Wong,CRC Press.Boca Raton,Florida.1991に詳述されるものが挙げられる。式IのR10基の適切なポリマー残基としては、PEGなどのポリ(アルキレンオキシド)、ポリ(アミノ酸)、および本発明の化合物とコンジュゲートすることができる他のポリマー残基が挙げられる。
【0062】
上記で全体的に定義するように、式IのR10基は、とりわけ、適宜保護されたヒドロキシル基、適宜保護されたチオール基、または適宜保護されたアミノ基である。ヒドロキシル保護基は、当技術分野でよく知られており、参照によりその全体が本明細書に組み込まれるProtecting Groups in Organic Synthesis,T.W.Greene and P.G.M.Wuts、第3版、John Wiley & Sons,1999に詳述されているものが挙げられる。式IのR10基の適切なヒドロキシル保護基の例としては、さらにエステル、アリルエーテル、エーテル、シリルエーテル、アルキルエーテル、アリールアルキルエーテル、およびアルコキシアルキルエーテルが挙げられるが、これらに限定されない。このようなエステルの例としては、ギ酸エステル、酢酸エステル、炭酸エステル、およびスルホン酸エステルが挙げられる。具体的例としては、ギ酸エステル、ベンゾイルギ酸エステル、クロロ酢酸エステル、トリフルオロ酢酸エステル、メトキシ酢酸エステル、トリフェニルメトキシ酢酸エステル、p−クロロフェノキシ酢酸エステル、3−フェニルプロピオン酸エステル、4−オキソペンタン酸エステル、4,4−(エチレンジチオ)ペンタン酸エステル、ピバロエート(トリメチルアセチル)、クロトン酸エステル、4−メトキシ−クロトン酸エステル、安息香酸エステル、p−ベニル安息香酸エステル(benylbenzoate)、2,4,6−トリメチル安息香酸エステル;メチル、9−フルオレニルメチル、エチル、2,2,2−トリクロロエチル、2−(トリメチルシリル)エチル、2−(フェニルスルホニル)エチル、ビニル、アリル、およびp−ニトロベンジルなどの炭酸エステルが挙げられる。このようなシリルエーテルの例としては、トリメチルシリル、トリエチルシリル、t−ブチルジメチルシリル、t−ブチルジフェニルシリル、トリイソプロピルシリル、および他のトリアルキルシリルエーテルが挙げられる。アルキルエーテルとしては、メチル、ベンジル、p−メトキシベンジル、3,4−ジメトキシベンジル、トリチル、t−ブチル、アリル、およびアリルオキシカルボニルエーテル、または誘導体が挙げられる。アルコキシアルキルエーテルとしては、メトキシメチル、メチルチオメチル、(2−メトキシエトキシ)メチル、ベンジルオキシメチル、β−(トリメチルシリル)エトキシメチル、およびテトラヒドロピラニルエーテルなどのアセタールが挙げられる。アリールアルキルエーテルの例としては、ベンジル、p−メトキシベンジル(MPM)、3,4−ジメトキシベンジル、O−ニトロベンジル、p−ニトロベンジル、p−ハロベンジル、2,6−ジクロロベンジル、p−シアノベンジル、2−ピコリル、および4−ピコリルが挙げられる。
【0063】
チオール保護基は、当技術分野でよく知られており、参照によりその全体が本明細書に組み込まれるProtecting Groups in Organic Synthesis,T.W.Greene and P.G.M.Wuts、第3版、John Wiley & Sons,1999に詳述されているものが挙げられる。式IのR10部分の適切なチオール保護基としては、ジスルフィド、チオエーテル、シリルチオエーテル、チオエステル、チオカーボナート、チオカーバマートなどが挙げられるが、これらに限定されない。このような基の数例としては、アルキルチオエーテル、ベンジルチオエーテル、置換ベンジルチオエーテル、トリフェニルメチルチオエーテル、トリクロロエトキシカルボニルなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0064】
本発明の別の態様によれば、式IのR10部分は、中性条件下、例えばAgNO3、HgCl2などで除去可能なチオール保護基である。他の中性条件としては、適切な還元剤を使用する還元が挙げられる。適切な還元剤としては、ジチオスレイトール(DTT)、メルカプトエタノール、ジチオナイト、還元グルタチオン、還元グルタレドキシン、還元チオレドキシン、トリスカルボキシエチルホスフィン(TCEP)などの置換ホスフィン、および他の任意のペプチドもしくは有機ベースの還元剤、または当業者に知られている他の試薬が挙げられる。本発明のさらに別の態様によれば、式IのR10部分は、「光開裂可能な」チオール保護基である。このような適切なチオール保護基は、当技術分野で知られており、ニトロベンジル基、テトラヒドロピラニル(THP)基、トリチル基、−CH2SCH3(MTM)、ジメチルメトキシメチル、または−CH2−S−S−ピリジン−2−イルが挙げられるが、これらに限定されない。当業者なら、本明細書に記載する適切なヒドロキシル保護基の多くも、チオール保護基として適切であることを理解されよう。
【0065】
いくつかの実施形態では、式IのR10基は、適宜保護されたアミノ基である。アミノ保護基は、当技術分野でよく知られており、参照によりその全体が本明細書に組み込まれるProtecting Groups in Organic Synthesis,T.W.Greene and P.G.M.Wuts、第3版、John Wiley & Sons,1999に詳述されているものが挙げられる。前記R10部分の適切なアミノ保護基としては、さらにアラルキルアミン、カルバマート、環状イミド、アリルアミン、アミドなどが挙げられるが、これらに限定されない。このような基の例としては、t−ブチルオキシカルボニル(BOC)、エチルオキシカルボニル、メチルオキシカルボニル、トリクロロエチルオキシカルボニル、アリルオキシカルボニル(Alloc)、ベンジルオキソカルボニル(CBZ)、アリル、フタルイミド、ベンジル(Bn)、フルオレニルメチルカルボニル(Fmoc)、ホルミル、アセチル、クロロアセチル、ジクロロアセチル、トリクロロアセチル、フェニルアセチル、トリフルオロアセチル、ベンゾイルなどが挙げられる。いくつかの実施形態では、R10部分のアミノ保護基はフタルイミドである。さらに別の実施形態では、R10部分のアミノ保護基は、tert−ブチルオキシカルボニル(BOC)基である。
【0066】
いくつかの実施形態では、本発明は、式Iの化合物であって、下記:
【0067】
【化10】

の任意の1つ、2つ、または3つ全部、およびそれらの各立体異性体以外の化合物を提供する。
【0068】
上記で全体的に記載されるように、本発明は、式Iの化合物:
【0069】
【化11】

またはその医薬上許容される塩(式中、各変数は、上記で定義され、本明細書の上記で定義するクラスおよび下位クラスで定義される)を提供する。いくつかの実施形態では、本発明は、式I−aで示される立体化学を有する式Iの化合物:
【0070】
【化12】

またはその医薬上許容される塩(式中、各変数は、上記で定義され、式Iの化合物に関して本明細書で定義するクラスおよび下位クラスで定義される)を提供する。
【0071】
いくつかの実施形態では、式IのR1基とR2基は一緒になって、窒素、酸素、または硫黄から独立して選択された0〜2個のヘテロ原子を有する3〜7員の飽和環、部分不飽和環、またはアリール環を形成する。他の実施形態では、式IのR1基とR2基は一緒になって、窒素、酸素、または硫黄から独立して選択された0〜2個のヘテロ原子を有する3〜6員の飽和環を形成する。さらに別の実施形態では、式IのR1基とR2基は一緒になって、3〜6員の飽和炭素環式環を形成する。本発明のさらに別の態様によれば、式I−bの化合物:
【0072】
【化13】

またはその医薬上許容される塩(式中、各変数は、上記で定義され、式Iの化合物に関して本明細書の上記で定義するクラスおよび下位クラスで定義される)が提供される。他の実施形態では、本発明は、式I−cの化合物:
【0073】
【化14】

またはその医薬上許容される塩(式中、各変数は、上記で定義され、式Iの化合物に関して本明細書の上記で定義するクラスおよび下位クラスで定義される)を提供する。
【0074】
上記で全体的に定義するように、環A、環B、環C、環D、および環Eは、各々独立して、飽和、部分不飽和、または芳香族である。いくつかの実施形態では、環Bは不飽和であり、R1およびR2は存在せず、したがって式IIの化合物:
【0075】
【化15】

またはその医薬上許容される塩(式中、各変数は、上記で定義され、式Iの化合物に関して本明細書の上記で定義するクラスおよび下位クラスで定義される)を形成する。
【0076】
いくつかの実施形態では、式IIのn基は0〜1であり、式IIのG基は酸素である。
【0077】
別の態様によれば、本発明は、式II−aの化合物:
【0078】
【化16】

またはその医薬上許容される塩(式中、各変数は、上記で定義され、式Iの化合物に関して本明細書の上記で定義するクラスおよび下位クラスで定義される)を提供する。
【0079】
いくつかの実施形態では、式II−aのn基は0〜1であり、式II−aのG基は酸素である。
【0080】
他の実施形態では、環Bと環Dは両方とも不飽和であり、R1、R2、およびR6は存在せず、したがって式IIIの化合物I:
【0081】
【化17】

またはその医薬上許容される塩(式中、各変数は、上記で定義され、式Iの化合物に関して本明細書の上記で定義するクラスおよび下位クラスで定義される)を形成する。
【0082】
いくつかの実施形態では、式IIIのn基は0〜1であり、式IIIのG基は酸素である。
【0083】
別の実施形態によれば、本発明は、式IVの化合物:
【0084】
【化18】

またはその医薬上許容される塩(式中、各変数は、上記で定義され、式Iの化合物に関して本明細書の上記で定義するクラスおよび下位クラスで定義される)を提供する。本明細書では、
【0085】
【化19】

は単結合または二重結合を示す。
【0086】
【化20】

が二重結合を示す場合、R6は存在しないことを当業者は理解されよう。一方、
【0087】
【化21】

が単結合を示す場合、R6は存在する。したがって、いくつかの実施形態では、
【0088】
【化22】

は二重結合を示し、R6は存在しない。他の実施形態では、
【0089】
【化23】

は単結合を示し、R6は上記に定義する通りである。
【0090】
別の態様によれば、本発明は、式IV−aの化合物:
【0091】
【化24】

またはその医薬上許容される塩(式中、各変数は、上記で定義され、式Iの化合物に関して本明細書の上記で定義するクラスおよび下位クラスで定義される)を提供する。
【0092】
いくつかの実施形態では、式IV−aのG基は酸素である。他の実施形態では、式IV−aのR4基は、R、OR、または適宜保護されたヒドロキシル基である。さらに別の実施形態では、式IV−aのR4基はRである。
【0093】
本発明のさらに別の態様は、式IV−bの化合物:
【0094】
【化25】

またはその医薬上許容される塩(式中、各変数は、上記で定義され、式Iの化合物に関して本明細書の上記で定義するクラスおよび下位クラスで定義される)に関する。
【0095】
いくつかの実施形態では、式IV−bのR1とR2基は一緒になって、窒素、酸素、または硫黄から独立して選択された0〜2個のヘテロ原子を有する3〜7員の飽和環、部分不飽和環、またはアリール環を形成する。他の実施形態では、式IV−bのR1とR2基は一緒になって、窒素、酸素、または硫黄から独立して選択された0〜2個のヘテロ原子を有する3〜6員の飽和環を形成する。さらに別の実施形態では、式IV−bのR1とR2基は一緒になって、3〜6員の飽和炭素環式環を形成する。本発明のさらに別の態様によれば、式IV−cの化合物:
【0096】
【化26】

またはその医薬上許容される塩(式中、各変数は、上記で定義され、式Iの化合物に関して本明細書の上記で定義するクラスおよび下位クラスで定義される)が提供される。
【0097】
いくつかの実施形態では、式IV−cのR7基は−OHである。
【0098】
本発明のさらに別の態様によれば、式IV−dの化合物:
【0099】
【化27】

またはその医薬上許容される塩(式中、各変数は、上記で定義され、式Iの化合物に関して本明細書の上記で定義するクラスおよび下位クラスで定義される)が提供される。
【0100】
いくつかの実施形態では、式IV−dのR7基は−OHである。
【0101】
本発明の化合物例を下記の表1に示す。
表1.式Iの化合物例
【0102】
【化28−1】

【化28−2】

【0103】
式IVaの化合物例を下記の表2に示す。
【0104】
【化29】

【0105】
4.本化合物を提供する一般方法:
本発明の化合物は、一般に、類似化合物に関して当業者に知られている合成および/または半合成の方法、ならびに下記の実施例で詳述する方法で調製または単離することができる。
活性成分の単離
【0106】
ブラックコホッシュ根(別名シミシフーガ・ラセモサ(cimicifuga racemosa)またはアクタエア・ラセモサ(actaea racemosa))から、いくつかの本発明の化合物を単離し、これらの化合物の構造を明らかにした。ブラックコホッシュ根抽出物、粉末、およびカプセルが、閉経期および婦人科の様々な障害の治療用に市販されている。しかし、意外にも、ブラックコホッシュ根中に存在するいくつかの化合物は、アミロイドβペプチド産生を調節および/または阻害する上で有用であることが見い出された。具体的には、ブラックコホッシュ根からいくつかの化合物を単離し、同定した。これらの化合物は、アミロイドβペプチド産生、特にアミロイドβペプチド(1−42)を調節および/または阻害する上で有用である。このような化合物は、式Iに包含される。これらの化合物は、根中に一般的に見られる他の化合物を実質的に含まない形で単離され、利用され得る。あるいは、抽出物は根から調製することができ、前記抽出物は本発明の化合物中に濃縮されている。
【0107】
本明細書の上記に記載するように、いくつかの本発明の化合物を、培養または野生のブラックコホッシュ根および根茎の標準的抽出物から単離する。本化合物を、培養中に成長した植物根組織または培養植物組織の培地からも単離できることも考えられる。培養中の植物根組織を成長させるこのような方法は、当業者に周知であり、参照によりその全体が本明細書に組み込まれるHairy Roots,Culture and Applications、Pauline M.Doran,published by Harwood Academic Publishers,Amsterdam,The Netherlands.Copyright 1997 OPA (Overseas Publishers Association)Amsterdam B.V.ISBN 90−5702−117−Xに記載されるものが挙げられる。
【0108】
あるいは、本発明の化合物は、ブラックコホッシュおよび関連するシミシフーガ種の根および根茎からであろうと、または地上部からであろうと、これらの植物の抽出物中に見られる他の化合物を出発材料とする半合成方法で調製することができる。これは、単離された化合物、または抽出物フラクション、または化合物の混合物の化学的または生物的な形質転換によって実現することができる。化学的な形質転換は、温度、pH、および/または様々な溶媒での処理の操作によって実現することができるが、これらに限定されない。生物的な形質転換は、単離された化合物、または抽出物フラクション、または化合物の混合物を植物組織、植物組織抽出物、他の微生物有機体、または任意の有機体から単離された酵素で処理することによって実現することができるが、これらに限定されない。
【0109】
いくつかの実施形態では、本発明は、少なくとも10重量%の本発明の化合物を含むブラックコホッシュ根の抽出物を提供する。他の実施形態では、本発明は、約10重量%〜約50重量%の本発明の化合物を含むブラックコホッシュ根の抽出物を提供する。さらに別の実施形態では、本発明は、約10重量%〜約50重量%の本発明の化合物を含み、アクテインを実質的に含まないブラックコホッシュ根の抽出物を提供する。
【0110】
別の実施形態によれば、本発明は、ブラックコホッシュ根に見られる他の化合物を実質的に含まない式Iの化合物を提供する。本明細書では、用語「実質的に含まない」は、化合物は、ブラックコホッシュ根またはその抽出物に見られる化合物に比べて有意に高い比率の式Iの化合物で構成されていることを意味する。いくつかの実施形態では、本発明は、約1重量パーセント〜約99重量パーセントの量の式Iの化合物を提供する。いくつかの実施形態では、式Iの化合物は、約80%より高い化学的純度で提供される。他の実施形態では、式Iの化合物は、約90%より高い化学的純度で提供される。他の実施形態では、式Iの化合物は、HPLCクロマトグラムの全面積に対して、約10.0面積パーセントHPLC以下のブラックコホッシュ根の他の成分を含有する。他の実施形態では、式Iの化合物は、HPLCクロマトグラムの全面積に対して、約8.0面積パーセントHPLC以下、さらに別の実施形態では約3面積パーセント以下のブラックコホッシュ根の他の成分を含有する。
【0111】
下記に記載するように、本発明の化合物がブラックコホッシュ根中に通常は見られる他の化合物を実質的に含まない形であるかどうかを決定する方法は、当業者に知られている。ブラックコホッシュ根から以前に単離、同定された化合物としては、アクテオール、アセチルアクテオール、26−デオキシアクテオール、シミゲノール、アクテイン、26−デオキシアクテイン、およびシミシフゴシドを含めて、いくつかのシクロアルタノール系トリテルペンが挙げられる。(E)−イソフェルラ酸およびイソフラボンであるホルモノネチンも単離され、同定された。これらの化合物の代表例は、下記の構造:
【0112】
【化30】

を有する。
【0113】
したがって、本発明の別の実施形態は、アクテオール、アセチルアクテオール、26−デオキシアクテオール、シミゲノール、アクテイン、26−デオキシアクテイン、およびシミシフゴシドの1つまたは複数を実質的に含まない式Iの化合物を提供する。いくつかの実施形態では、本発明は、アクテオール、アセチルアクテオール、26−デオキシアクテオール、シミゲノール、アクテイン、26−デオキシアクテイン、およびシミシフゴシドを実質的に含まない式Iの化合物を提供する。
【0114】
別の実施形態によれば、本発明は、アクテオール、アセチルアクテオール、26−デオキシアクテオール、シミゲノール、アクテイン、26−デオキシアクテイン、およびシミシフゴシドの1つまたは複数の量を減少させた、式Iの化合物中に濃縮されたブラックコホッシュ根の抽出物を提供する。さらに別の実施形態によれば、本発明は、アクテオール、アセチルアクテオール、26−デオキシアクテオール、シミゲノール、アクテイン、26−デオキシアクテイン、およびシミシフゴシドのそれぞれの量を減少させた、式Iの化合物中に濃縮されたブラックコホッシュ根の抽出物を提供する。
【0115】
ブラックコホッシュ根の個々の活性成分を抽出、単離、および/または精製するための様々な技法が、当技術分野でよく知られている。本発明は、本明細書に記載するような活性成分を同定することも、このような成分を本明細書に記載する本発明の組成物に組み込むことも包含する。
【0116】
ブラックコホッシュ抽出物の個々の活性成分は、本明細書に記載するように同定することができ、当技術分野で知られている任意の技法を使用して単離および/または精製することができる。活性成分は、任意の形の根自体、またはとりわけ本発明の抽出物の混合物もしくは市販の抽出物の滲出液からから精製することができる。精製で使用することができる様々な技法としては、濾過、選択的沈殿、有機溶媒による抽出、水性溶媒による抽出、カラムクロマトグラフィー(シリカゲル)、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)、および当業者に知られている他の方法が挙げられる。
【0117】
いくつかの実施形態によれば、本抽出物は、ブラックコホッシュ根の単離フラクションを使用するものである。単離フラクションは、根自体から、例えばクロマトグラフィーによる手段、蒸留、沈殿、抽出、濾過、または他の方式で取り出された、副次的な量の根物質を意味する。他の実施形態では、根抽出物およびフラクションをクロマトグラフィー、蒸留、沈殿、または抽出によってそれから取り出す。このような抽出および単離の技法は当業者に周知である。これらの技法のいくつかの詳細は、下記の実施例のセクションに記載されている。
【0118】
本発明の他の実施形態によれば、活性な化合物の存在および純度は、数件名を挙げれば、核磁気分光法(NMR)、質量分光法、赤外分光法(IR)、紫外可視分光法、元素分析法、および旋光分析法、屈折計法などを含めて、化学的方法によって評価する。このような分析方法は当業者に知られている。他の実施形態では、ブラックコホッシュ根から単離された活性な化合物の化学構造を、数件名を挙げれば、NMR、質量分光法、赤外分光法(IR)、紫外可視分光法、元素分析法、旋光分析法、屈折計法、およびX線結晶構造解析法などを含めて、当業者に知られている方法で決定する。
【0119】
いくつかの例示的実施形態を、本明細書の上記に記載するが、当業者が一般に利用可能な方法によって適切な出発材料を使用して、一般に上記で全体的に記載される方法に従って、本発明の根抽出物を調製できることを理解されたい。
【0120】
5.使用、製剤、および投与
医薬上許容される組成物
本発明の別の態様によれば、本明細書に記載する化合物のいずれかを含み、医薬上許容される担体、アジュバント、またはビヒクルを所望により含む医薬上許容される組成物が提供される。いくつかの実施形態では、これらの組成物は、さらに1つまたは複数の追加の治療剤を所望により含む。
【0121】
本発明の化合物のいくつかは、治療のため遊離の形で、または適切な場合にその医薬上許容される塩として存在できることも理解されよう。
【0122】
本明細書では、用語「医薬上許容される塩」は、良好な医学的判断の範囲内で、過度の毒性、刺激、アレルギー応答などがなくヒトおよび下等動物の組織と接触させて使用するのに適しており、適切な利益/危険比に相応するそれらの塩を意味する。「医薬上許容される塩」は、レシピエントに投与すると、直接的または間接的に本発明の化合物、または医薬として活性なその代謝物もしくは残基になることができる本発明の化合物の非毒性の任意の塩またはエステルの塩を意味する。本明細書では、用語「医薬として活性なその代謝物または残基」はその代謝物または残基も本発明による医薬として活性な化合物であることを意味する。
【0123】
医薬上許容される塩は、当技術分野でよく知られている。例えば、S.M.Bergeらは、参照により本明細書に組み込まれるJ.Pharmaceutical Sciences,1977,66,1−19に医薬上許容される塩を詳述する。本発明の化合物の医薬上許容される塩としては、適切な無機酸、有機酸、および塩基に由来するものが挙げられる。医薬上許容される無毒性の酸付加塩の例は、塩酸、臭化水素酸、リン酸、硫酸、および過塩素酸などの無機酸、または酢酸、シュウ酸、マレイン酸、酒石酸、クエン酸、コハク酸、もしくはマロン酸などの有機酸を用いて、あるいはイオン交換など当技術分野で使用される他の方法を使用することによって形成された、アミノ基の塩である。他の医薬上許容される塩としては、アジピン酸塩、アルギン酸塩、アスコルビン酸塩、アスパラギン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、安息香酸塩、重硫酸塩、ホウ酸塩、酪酸塩、ショウノウ酸塩、カンファースルホン酸塩、クエン酸塩、シクロペンタンプロピオン酸塩、ジグルコン酸塩、ドデシル硫酸塩、エタンスルホン酸塩、ギ酸塩、フマル酸塩、グルコヘプトン酸塩、グリセロリン酸塩、グルコン酸塩、ヘミ硫酸塩、ヘプタン酸塩、ヘキサン酸塩、ヨウ化水素酸塩、2−ヒドロキシ−エタンスルホン酸塩、ラクトビオン酸塩、乳酸塩、ラウリン酸塩、ラウリル硫酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、マロン酸塩、メタンスルホン酸塩、2−ナフタレンスルホン酸塩、ニコチン酸、硝酸塩、オレイン酸塩、シュウ酸塩、パルミチン酸塩、パモ酸塩、ペクチン酸塩、過硫酸塩、3−フェニルプロピオン酸塩、リン酸塩、ピクリン酸塩、ピバル酸塩、プロピオン酸塩、ステアリン酸塩、コハク酸塩、硫酸塩、酒石酸塩、チオシアン酸塩、p−トルエンスルホン酸塩、ウンデカン酸塩、吉草酸塩などが挙げられる。適切な塩基に由来する塩としては、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、およびN+(C1〜4アルキル)4塩が挙げられる。本発明は、本明細書に開示する化合物の任意の塩基性窒素含有基を四級化することも考慮する。このような四級化によって、水溶性、油溶性、または分散性の生成物を得ることができる。代表的なアルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩としては、ナトリウム、リチウム、カリウム、カルシウム、マグネシウムなどが挙げられる。さらに医薬上許容される塩としては、適切な場合には、ハライド、ヒドロキシド、カルボキシラート、スルファート、ホスファート、ニトラート、低級アルキルスルホナート、およびアリールスルホナートなどの対イオンを使用して形成された無毒性のアンモニウム、第四級アンモニウム、およびアミンカチオンが挙げられる。
【0124】
本発明の組成物は、さらに、医薬上許容される担体、アジュバント、またはビヒクルを含むことができ、本明細書では、所望の特定剤形に適したすべての溶媒、希釈剤、または他の液体ビヒクル、分散もしくは懸濁助剤、界面活性剤、等張剤、粘稠化もしくは乳化剤、防腐剤、固形結合剤、滑沢剤などが挙げられる。Remington’s Pharmaceutical Sciences、第16版、E.W.Martin (Mack Publishing Co.,Easton,Pa.,1980)は、医薬上許容される組成物を製剤する上で使用される様々な担体、およびその周知の調製技法を開示する。任意の従来の担体媒体は、任意の望ましくない生物的効果を生じること、またはその他の方法で、医薬上許容される組成物の他の任意の成分と有害に相互作用することなどによって本発明の化合物と適合しない場合を除いて、その使用は、本発明の範囲内であると考えられる。医薬上許容される担体として働くことができる材料のいくつかの例としては、イオン交換体、アルミナ、ステアリン酸アルミニウム、レシチン、ヒト血清アルブミンなどの血清タンパク質、ホスファートなどの緩衝剤物質、グリシン、ソルビン酸もしくはソルビン酸カリウム、飽和植物脂肪酸の部分グリセリド混合物、水、硫酸プロタミン、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素カリウム、塩化ナトリウム、亜鉛塩などの塩または電解質、コロイダルシリカ、三ケイ酸マグネシウム、ポリビニルピロリドン、ポリアクリラート、ワックス、ポリエチレン−ポリオキシプロピレン−ブロックポリマー、羊毛脂、ラクトース、グルコース、およびスクロースなどの糖;トウモロコシデンプンやジャガイモデンプンなどのデンプン;カルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロース、および酢酸セルロースなどのセルロースおよびその誘導体;トラガカント末;麦芽;ゼラチン;タルク;カカオ脂や坐剤ワックスなどの賦形剤;落花生油、綿実油;サフラワー油;ゴマ油;オリーブ油;トウモロコシ油、および大豆油などの油;プロピレングリコールまたはポリエチレングリコールなどのグリコール;オレイン酸エチルやラウリン酸エチルなどのエステル;寒天;水酸化マグネシウムや水酸化アルミニウムなどの緩衝剤;アルギン酸;発熱物質を含まない水;等張性生理食塩水;リンゲル液;エチルアルコール、リン酸緩衝溶液が挙げられるが、これらに限定されず、ラウリル硫酸ナトリウムやステアリン酸マグネシウムなど他の非毒性の相溶性滑沢剤、ならびに着色剤、放出剤、コーティング剤、甘味剤、矯味剤、芳香剤、防腐剤、および酸化防止剤も、製剤者の判断に従って、組成物中に存在することができる。
【0125】
本発明によって提供される組成物は、併用療法で使用することができる。すなわち、本組成物を、1つまたは複数の他の所望の治療剤または医療手順と同時に、それより先に、またはその後に投与することができる。併用レジメンで使用する治療法(治療剤または手順)の特定の組合せは、所望の治療剤および/または手順の適合性、ならびに実現されるべき所望の治療効果を考慮に入れる。使用する療法は、同じ障害に対して所望の効果(例えば、本明細書に記載する化合物を、同じ障害を治療するために使用する別の治療剤と同時に投与することができる)を実現でき、または異なる効果(例えば、任意の副作用の制御)を実現できることも理解されよう。
【0126】
例えば、周知の有用な神経変性障害治療剤を、本発明の組成物と組み合わせて、アルツハイマー病などの神経変性障害を治療することができる。このような周知の有用な神経変性障害治療剤の例としては、ドネペジル、メマンチン(およびNMDA阻害剤のような関連化合物)、エクセロン(Exelon)(登録商標)を含めて、アセチルコリンエステラーゼ阻害剤などのアルツハイマー病治療剤;L−DOPA/カルビドパ、エンタカポン、ロピンロール、プラミペキソール、ブロモクリプチン、ペルゴリド、トリヘキセフェンジル、およびアマンタジンなどのパーキンソン病治療剤;βインターフェロン(例えば、Avonex(登録商標)およびRebif(登録商標))、Copaxone(登録商標)、およびミトキサントロンなどの多発性硬化症(MS)治療剤;リルゾール、ならびに抗パーキンソン剤が挙げられるが、これらに限定されない。神経変性障害を治療するのに有用な最新療法のより包括的な考察については、参照によりその内容全体が本明細書に組み込まれるhttp://www.fda.govのFDA承認薬リスト、およびMerck Manual、第17版、1999を参照のこと。
【0127】
他の実施形態では、本発明の化合物を、アルツハイマー病などの神経変性障害の有用な他の治療剤と組み合わせる。このような治療剤としては、β−セクレターゼ阻害剤、γ−セクレターゼ阻害剤、凝集阻害剤、金属キレート剤、酸化防止剤、および神経保護薬が挙げられる。
【0128】
本明細書では、用語「組合せ」、「組み合わせた」、および関連用語は、本発明による治療剤の同時投与または連続投与を意味する。例えば、本発明の化合物と別の治療剤を、別々の単位投与剤形でまたは一緒に単回投与剤形で同時投与または連続投与することができる。したがって、本発明は、式Iの化合物、追加の治療剤、および医薬上許容される担体、アジュバント、またはビヒクルを含む単回投与剤形を提供する。
【0129】
本発明の阻害剤と組み合わせることもできる治療剤の他の例としては、アルブテロールやSingulair(登録商標)などの喘息治療剤;ジプレキサ、リスパダール、セロクエル、およびハロペリドールなどの統合失調症治療剤;コルチコステロイド、TNF遮断薬、IL−1 RA、アザチオプリン、シクロホスファミド、およびスルファサラジンなどの抗炎症剤;シクロスポリン、タクロリムス、ラパマイシン、ミコフェノール酸モフェチル、インターフェロン、コルチコステロイド、シクロホスファミド、アザチオプリン、およびスルファサラジンなどの免疫調節剤および免疫抑制剤;アセチルコリンエステラーゼ阻害剤、MAO阻害剤、インターフェロン、抗痙攣薬、イオンチャンネル遮断薬などの神経栄養因子;β遮断薬、ACE阻害剤、利尿剤、ニトラート、カルシウムチャネル阻害薬、およびスタチンなどの心血管疾患治療剤;コルチコステロイド、コレスチラミン、インターフェロン、および抗ウイルス剤などの肝疾患治療剤;コルチコステロイド、抗白血病薬、および増殖因子などの血液障害治療剤;ならびにγ−グロブリンなどの免疫不全障害治療剤が挙げられるが、これらに限定されない。
【0130】
本発明の組成物に存在する追加の治療剤の量は、その治療剤を唯一の活性剤として含む組成物として通常投与するはずの量以下である。いくつかの実施形態では、唯一の治療活性剤としてその治療薬を含有する本組成物中の追加の治療剤の量は、組成物中に通常存在する量の約50%〜100%の範囲である。
【0131】
代替の実施形態では、追加の治療剤を含有しない組成物を利用する本発明の方法は、前記患者に追加の治療剤を別々に投与する追加の工程を含む。これらの追加の治療剤を別々に投与する場合、本発明の組成物の投与の前、それと連続的に、またはその後に患者に投与することができる。
【0132】
本発明の医薬上許容される組成物を、ヒトおよび他の動物に、治療対象の障害の重篤度に応じて、経口投与、直腸投与、非経口投与、大槽内投与、腟内投与、腹腔内投与、局所投与(粉剤、軟膏剤、または滴剤などによる)、口腔内投与、経口噴霧剤または経鼻噴霧剤などとして投与することができる。いくつかの実施形態では、被検者の体重/日、1回または複数回/日の用量レベルとして、約0.01mg/kg〜約50mg/kg、好ましくは約1mg/kg〜約25mg/kgの本発明の化合物を経口投与または非経口投与して、所望の治療効果を得ることができる。
【0133】
経口投与用の液体剤形としては、医薬上許容される乳剤、マイクロエマルジョン、液剤、懸濁剤、シロップ剤、およびエリキシル剤が挙げられるが、これらに限定されない。活性な化合物に加えて、液体剤形は、一般的に当技術分野で使用される不活性な希釈剤、例えば水または他の溶媒、可溶化剤、および乳化剤など(エチルアルコール、イソプロピルアルコール、炭酸エチル、酢酸エチル、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ジメチルホルムアミド、油(具体的には、綿実油、落花生油、トウモロコシ油、胚油、オリーブ油、ヒマシ油、およびゴマ油)、グリセロール、テトラヒドロフルフリルアルコール、ポリエチレングリコール、およびソルビタンの脂肪酸エステル、ならびにそれらの混合物など)を含有することができる。不活性な希釈剤に加えて、経口組成物は、湿潤剤、乳化剤、懸濁化剤、甘味剤、矯味剤、および芳香剤などのアジュバントも含むことができる。
【0134】
注射製剤、例えば無菌の水性または油性懸濁注射剤は、知られている技術に従って、適切な分散剤または湿潤剤、および懸濁化剤を使用して製剤することができる。無菌の注射製剤は、非経口的に許容できる無毒性希釈剤もしくは溶媒中の無菌注射液剤、懸濁剤、または乳剤、例えば1,3−ブタンジオール溶液とすることもできる。使用することができる許容できるビヒクルおよび溶媒の中で、水、リンゲル液、U.S.P.、および等張食塩水が有用である。さらに、無菌の不揮発性油を、通常溶媒または懸濁媒体として使用する。この目的には、合成のモノグリセリドまたはジグリセリドを含めて、任意の無菌不揮発性油を使用することができる。さらに、オレイン酸などの脂肪酸を注射液の調製で使用する。
【0135】
この注射製剤を、例えば細菌保持フィルターを用いて濾過すること、または使用前に無菌の水もしくは他の無菌の注射用媒体に溶解または分散させることができる無菌の固体組成物の形の滅菌剤を組み込むことによって滅菌することができる。
【0136】
本発明の化合物の効果を延長するために、皮下注射または筋肉内注射による化合物の吸収を遅らせることが望ましい場合が多い。これは、低水溶性の結晶質または非晶質の材料からなる液体懸濁剤を使用することによって実施することができる。このとき、化合物の吸収速度は、その溶解速度に依存し、この溶解速度は結晶のサイズおよび結晶形に依存することができる。あるいは、非経口投与剤形の化合物の遅延吸収は、化合物を油性ビヒクルに溶解または懸濁することによって実施される。デポー注射剤形は、ポリラクチド−ポリグリコリドなどの生分解性ポリマー中に化合物のマイクロカプセルマトリックスを形成することによって作製される。化合物とポリマーの比、および使用する特定のポリマーの性質に応じて、化合物の放出速度を制御することができる。他の生分解性ポリマーの例としては、ポリ(オルトエステル)およびポリ(無水物)が挙げられる。デポー注射製剤は、体組織に適合するリポソームまたはマイクロエマルジョン中に化合物を捕捉することによっても調製される。
【0137】
直腸投与または腟内投与用の組成物は、好ましくは、本発明の化合物を、カカオ脂、ポリエチレングリコールなど、適切な非刺激性の賦形剤または担体混合することによって調製することができる坐剤、あるいは周囲温度においては固体であるが体温においては液体であり、したがって直腸または膣腔で溶融し、活性な化合物を放出する坐剤ワックスである。
【0138】
経口投与用の固体剤形としては、カプセル剤、錠剤、丸剤、粉末、および顆粒剤が挙げられる。このような固体剤形では、活性な化合物を、クエン酸ナトリウムもしくは第二リン酸カルシウムなど、少なくとも1つの医薬上許容される不活性な賦形剤もしくは担体、ならびに/またはa)デンプン、ラクトース、スクロース、グルコース、マンニトール、およびケイ酸などの充填剤または延長剤、b)例えば、カルボキシメチルセルロース、アルギナート、ゼラチン、ポリビニルピロリジノン、スクロース、およびアカシアなどの結合剤、c)グリセロールなどの保湿剤、d)寒天、炭酸カルシウム、ジャガイモもしくはタピオカデンプン、アルギン酸、いくつかのケイ酸、および炭酸ナトリウムなどの崩壊剤、e)パラフィンなどの溶解遅延剤、f)第四級アンモニウム化合物などの吸収促進剤、g)例えば、セチルアルコールやモノステアリン酸グリセロールなどの湿潤剤、h)カオリンやベントナイト粘土などの吸収剤、およびi)タルク、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、固体ポリエチレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウムなどの滑沢剤、ならびにそれらの混合物などと混合する。カプセル剤、錠剤、および丸剤の場合、剤形は緩衝剤も含むことができる。
【0139】
同様なタイプの固体組成物は、ラクトースまたは乳糖のような賦形剤、および高分子量ポリエチレングリコールなどを使用して、軟質および硬質の充填ゼラチンカプセル剤中の充填剤としても使用することができる。錠剤、糖衣錠、カプセル剤、丸剤、および顆粒剤の固体剤形は、腸溶性コーティングおよび製剤技術において周知の他のコーティングなどのコーティングおよびシェルを用いて調製することができる。これらの固体剤形は、不透明化剤を所望により含有することができ、活性成分のみまたはそれを優先的に、腸管のある部位で、所望により遅延放出する組成物とすることもできる。使用することができる包埋組成物の例としては、ポリマーの物質およびワックスが挙げられる。同様なタイプの固体組成物は、ラクトースまたは乳糖のような賦形剤、および高分子量ポリエチレングリコールなどを使用して、軟質および硬質の充填ゼラチンカプセル剤中の充填剤としても使用することができる。
【0140】
活性な化合物は、上記に指摘した1つまたは複数の賦形剤と共にマイクロカプセル化した形とすることもできる。錠剤、糖衣錠、カプセル剤、丸剤、および顆粒剤の固体剤形は、腸溶性コーティング、放出制御コーティング、および製剤技術において周知の他のコーティングなどのコーティングおよびシェルを用いて調製することができる。このような固体剤形では、活性な化合物をスクロース、ラクトース、またはデンプンなどの少なくとも1つの不活性な希釈剤と混和することができる。このような剤形は、通常の慣行通りに、不活性な希釈剤以外の追加の物質、例えばステアリン酸マグネシウムや微結晶セルロースなどの打錠用滑沢剤および他の打錠助剤も含むことができる。カプセル剤、錠剤、および丸剤の場合、剤形は緩衝剤も含むことができる。これらは、不透明化剤を所望により含有することができ、活性成分のみまたはそれを優先的に、腸管のある部位で、所望により遅延方式で放出する組成物とすることもできる。使用することができる包埋組成物の例としては、ポリマーの物質およびワックスが挙げられる。
【0141】
本発明の化合物の局所または経皮投与のための剤形としては、軟膏剤、ペースト剤、クリーム剤、ローション剤、ゲル剤、散剤、溶液剤、スプレー剤、吸入剤、または貼付剤が挙げられる。必要とされ得る場合には、活性成分を、無菌条件下で、医薬上許容される担体、および任意の必要とされる防腐剤または緩衝剤と混和する。眼用製剤、点耳剤、および点眼剤も、本発明の範囲内であると考えられる。さらに、本発明では、化合物の体へのデリバリー制御をもたらす利点を追加する経皮貼付剤の使用も考えられる。このような剤形は、化合物を適切な媒体に溶解または分配することによって作製することができる。吸収促進剤を使用して、皮膚を通過する化合物の流入を増大させることもできる。この速度は、速度制御メンブランを設けることによって、あるいは化合物をポリマーマトリックスまたはゲルに分散することによって制御することができる。
【0142】
いくつかの実施形態では、本発明は、式Iの化合物を約1重量パーセント〜約99重量パーセントの量で含有する組成物を提供する。他の実施形態では、式Iの化合物を含有する組成物は、HPLCクロマトグラムの全面積に対して、HPLCで約10.0面積パーセント以下のブラックコホッシュ根の他の成分を含有する。他の実施形態では、式Iの化合物を含有する組成物は、HPLCクロマトグラムの全面積に対して、HPLCで約8.0面積パーセント以下、さらに別の実施形態では約3面積パーセント以下のブラックコホッシュ根の他の成分を含有する。
【0143】
化合物および医薬上許容される組成物の使用
本発明の化合物は、患者においてアミロイドβ(1−42)ペプチド産生を調節および/または阻害するのに有用である。したがって、本発明の化合物は、患者においてアミロイドβ(1−42)ペプチド産生を伴う障害を治療し、またはその重篤度を減ずるのに有用である。
【0144】
本発明の方法による化合物、抽出物、および組成物は、神経変性障害を治療し、またはその重篤度を減ずるのに有効な任意の量および任意の投与経路を用いて投与することができる。正確な必要量は、被検者の種、年齢、および全身状態、感染の重篤度、特定の作用剤、その投与モードなどに応じて、被検者ごとに異なる。
【0145】
いくつかの実施形態では、本発明は、患者においてアミロイドβ(1−42)ペプチド産生を調節および/または阻害する方法であって、前記患者に、式Iの化合物、または前記化合物を含む医薬上許容される組成物を投与することを含む方法を提供する。他の実施形態では、本発明は、患者においてアミロイドβ(1−42)ペプチド産生を選択的に調節および/または阻害する方法であって、前記患者に、式Iの化合物、またはその医薬上許容される組成物を投与することを含む方法を提供する。さらに別の実施形態では、本発明は、患者においてアミロイドβ(1−42)ペプチドレベルを低減する方法であって、前記患者に、式Iの化合物、またはその医薬上許容される組成物を投与することを含む方法を提供する。他の実施形態では、本発明は、細胞におけるアミロイドβ(1−42)ペプチドレベルを低減する方法であって、前記細胞を式Iの化合物と接触させることを含む方法を提供する。別の実施形態は、細胞におけるアミロイドβ(1−40)ペプチドレベルを実質的に低減することなく、細胞におけるアミロイドβ(1−42)を低減する方法であって、前記細胞を式Iの化合物と接触させることを含む方法を提供する。さらに別の実施形態は、細胞におけるアミロイドβ(1−42)を低減し、細胞におけるアミロイドβ(1−37)およびアミロイドβ(1−39)の少なくとも一方を増大させる方法であって、前記細胞を式Iの化合物と接触させることを含む方法を提供する。
【0146】
本明細書では、用語「低減している」または「低減する」は、式Iの化合物を投与しない場合のアミロイドβの量と比較して、式Iの化合物を投与することによって実現されたアミロイドβの相対低下量を意味する。例として、アミロイドβ(1−42)の低減は、式Iの化合物の存在下でアミロイドβ(1−42)の量は、式Iの化合物が存在しない場合のアミロイドβ(1−42)の量より少ないことを意味する。
【0147】
さらに別の実施形態では、本発明は、患者においてアミロイドβ(1−42)ペプチドレベルを選択的に低減する方法であって、前記患者に、式Iの化合物、またはその医薬上許容される組成物を投与することを含む方法を提供する。いくつかの実施形態では、本発明は、患者においてアミロイドβ(1−40)ペプチドレベルを実質的に低減することなく、アミロイドβ(1−42)ペプチドレベルを低減する方法であって、前記患者に、式Iの化合物、またはその医薬上許容される組成物を投与することを含む方法を提供する。
【0148】
いくつかの実施形態では、本発明は、患者においてアミロイドβ(1−42)ペプチドレベルを低減し、アミロイドβ(1−37)およびアミロイドβ(1−39)の少なくとも一方を増大させる方法であって、前記患者に、式Iの化合物、またはその医薬上許容される組成物を投与することを含む方法を提供する。
【0149】
本明細書では、アミロイドβの量に関する用語「増大している」または「増大する」は、式Iの化合物を投与しない(または細胞を式Iの化合物と接触させない)場合のアミロイドβの量と比較して、式Iの化合物を投与する(または細胞を式Iの化合物と接触させる)ことによって実現されたアミロイドβの相対増加量を意味する。例として、アミロイドβ(1−37)の増大は、式Iの化合物の存在下でアミロイドβ(1−37)の量は、式Iの化合物が存在しない場合のアミロイドβ(1−37)の量より多いことを意味する。例えば、アミロイドβ(1−37)およびアミロイドβ(1−39)のどちらかの相対量は、アミロイドβ(1−37)およびアミロイドβ(1−39)のどちらかの産生を増大させること、またはより長いアミロイドβペプチド、例えばアミロイドβ(1−40)および/またはアミロイドβ(1−42)の産生を低減することによって増大させることができる。さらに、本明細書では、アミロイドβの量に関する用語「増大している」または「増大する」は、式Iの化合物を投与することによって実現されたアミロイドβの絶対増加量を意味することを理解されたい。
【0150】
アミロイドβペプチドの全比率は、アミロイドβ(1−42)の選択的低減が特に有利である場合に重要であることを当業者は理解されよう。いくつかの実施形態では、本化合物は、アミロイドβ(1−42)ペプチドとアミロイドβ(1−40)ペプチドの全比率を低減する。したがって、本発明の別の態様は、患者においてアミロイドβ(1−42)ペプチドとアミロイドβ(1−40)ペプチドの比率を低減する方法であって、前記患者に、式Iの化合物、またはその医薬上許容される組成物を投与することを含む方法を提供する。いくつかの実施形態では、アミロイドβ(1−42)ペプチドとアミロイドβ(1−40)ペプチドの比率は、約0.1〜約0.4の範囲から約0.05〜約0.08の範囲に低減される。
【0151】
他の実施形態では、本発明は、細胞におけるアミロイドβ(1−42)ペプチドとアミロイドβ(1−40)ペプチドの比率を低減する方法であって、細胞を式Iの化合物と接触させることを含む方法を提供する。いくつかの実施形態では、アミロイドβ(1−42)ペプチドとアミロイドβ(1−40)ペプチドの比率は、約0.1〜約0.4の範囲から約0.05〜約0.08の範囲に低減される。
【0152】
一態様によれば、本発明は、アミロイドβ(1−42)ペプチドに関連する障害を治療し、またはその重篤度を減ずる方法であって、前記患者に、式Iの化合物、またはその医薬上許容される組成物を投与することを含む方法を提供する。このような障害としては、アルツハイマー病、パーキンソン病、およびダウン症候群などの神経変性障害が挙げられる。
【0153】
他の実施形態では、本発明は、患者においてアルツハイマー病を治療し、またはその重篤度を減ずる方法であって、前記患者に、式Iの化合物、またはその医薬上許容される組成物を投与することを含む方法を提供する。
【0154】
特定の理論に拘泥するものではないが、本化合物は、アミロイドβ(1−42)レベルを選択的に低減する、γ−セクレターゼの調節物質であると考えられる。したがって、本発明の別の実施形態は、患者においてγ−セクレターゼを調節する方法であって、前記患者に、式Iの化合物、またはその医薬上許容される組成物を投与することを含む方法を提供する。いくつかの実施形態では、本化合物はγ−セクレターゼの阻害剤である。前記方法は、γ−セクレターゼに関連する任意の障害を治療し、またはその重篤度を減ずるのに有用である。このような障害は限定されないが、神経変性障害、例えばアルツハイマー病が挙げられる。
【0155】
本発明の化合物は、投与を容易にし、用量を均一にするために、好ましくは投与単位形態で製剤される。本明細書では、「投与単位形態」という表現は、治療対象の患者に適した物理的に別々の作用剤単位を意味する。しかし、本発明の化合物および組成物の1日の総使用量は、担当医によって良好な医学的判断の範囲内で決定されることは理解されよう。ある特定の患者または生物のための特定の有効用量レベルは、治療対象の障害および障害の重篤度;使用する特定の化合物の活性;使用する特定の組成物;患者の年齢、体重、全身的健康状態、性別、および食事;使用する特定の化合物の投与回数、投与経路、および排泄速度;治療期間;使用する特定の化合物と組み合わせて、または同時に使用する薬剤、ならびに医療分野で周知の同様な要因などの様々な要因に依存する。本明細書では、用語「患者」は、動物、好ましくは哺乳類、最も好ましくはヒトを意味する。
【実施例】
【0156】
下記に記載する分離プロトコルで利用するブラックコホッシュ抽出物は、Boehringer Ingelheim Nutriceuticalsから特別注文で入手した。この抽出物は、約50%エタノール水溶液を使用して、根粉末を抽出し、次いでほぼ乾固濃縮するUSP調製のブラックコホッシュ抽出物と実質的に等価である。
【0157】
本明細書では、下記に記載する化合物番号は、下記の化合物に対応する。
化合物1:β−D−キシロピラノシド、(3,12,16,23R,24R,25S,26S)−12−(アセチルオキシ)−16,23:23,26:24,25−トリエポキシ−26−ヒドロキシ−9,19−シクロラノスタン−3−イル。
別名「アクテイン」。C37H56O11;分子量:676.83;登録番号18642−44−9。
【0158】
【化31】

化合物2:シミゲノール 3−β−D−キシロピラノシド;C35H56O9、分子量:620.81;登録番号27994−11−2。
【0159】
【化32】

化合物3:シミゲノール 3−α−L−アラビノシド。C35H56O9、分子量:620.81;登録番号256925−92−5。
【0160】
【化33】

化合物4:24−O−アセチルヒドロシェングマノール 3−β−D−キシロピラノシド。C37H60O11、分子量:680.87;登録番号78213−32−8。
【0161】
【化34】

化合物5:24−O−アセチルヒドロシェングマノール 3−α−L−アラビノピラノシド。C37H60O11、分子量:680.87。
【0162】
【化35】

化合物6:24−O−アセチルヒドロシェングマノール 3−β−D−キシロピラノシド(δ−16,17)−エノールエーテル。C37H58O10、分子量:662.85。
【0163】
【化36】

化合物7:24−O−アセチルヒドロシェングマノール 3−α−L−アラビノピラノシド(δ−16,17)−エノールエーテル。C37H58O10、分子量:662.85。
【0164】
【化37】

化合物8:24−エピ−24−O−アセチルヒドロシェングマノール 3−β−D−キシロピラノシド。C37H60O11、分子量:680.87。
【0165】
【化38】

化合物9:24−エピ−24−O−アセチルヒドロシェングマノール 3−β−D−キシロピラノシド (δ−16,17)−エノールエーテル。C37H58O10、分子量:662.85。
【0166】
【化39】

【0167】
単離プロトコル1
フラッシュカラムクロマトグラフィー
ブラックコホッシュ抽出物(15.6g)を150mlのメタノール−水(4:1(v/v))混合物に25℃で懸濁した。メカニカルスターラを使用して、得られたスラリーをこの温度で30分間激しく撹拌し、茶色乳濁液を得た。撹拌を継続しながら、この乳濁液に、51gのシリカゲル(ICN シリカ 32−63 60Å)を添加した。ロータリーエバポレータを使用して、混合物を真空中25℃で、非常に均質なベージュ−茶色粉末が得られるまで濃縮した。この材料を、長さ60cm、内径50mmのガラスカラムを使用するシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ICN シリカ 32−63 60Å)にかけた。
【0168】
カラムクロマトグラフィーの調製では、シリカゲルを500mlのジクロロメタン−メタノール(20:1)混合物に注ぎ込み、得られたスラリーをガラスカラムに注ぎ入れた。シリカゲルを30分間静置し、厚さ1cmの砂層をのせる。続いて、シリカ上に吸収させた抽出物をジクロロメタン−メタノール(20:1)混合物に注ぎ込み、得られたスラリーをカラム上部の砂層に注ぎ込んだ。次いで、シリカカラムを、0.4バールの圧力(アルゴン)下に下記の溶媒混合物で溶出した。
1.0mlのジクロロメタン−メタノール(20:1)、続いて
770mlのジクロロメタン−メタノール(10:1)、続いて
800mlのジクロロメタン−メタノール(7:1)、続いて
550mlのジクロロメタン−メタノール(5:1)。
【0169】
8個の200mlのフラクション(sat14−0〜sat14−7と名付ける)を回収し、続いて11個の100−mlのフラクション(sat14−8〜sat14−18と名付ける)を回収した。薄層クロマトグラフィー(TLC)で、Bakerflexシリカプレートを使用し、ジクロロメタン−メタノール(5:1)溶媒混合物で溶出して、すべてのフラクションを分析した。展開後、シリカゲルプレートを、アニスアルデヒド染色液で染色した。TLC分析の結果に基づいて、フラクションsat14−9〜sat14−12を真空下、25℃で蒸発乾固し、これらのフラクション試料10mgを、1H−NMR分光法で溶媒としてCD3ODを使用して分析した。図1および2をそれぞれ参照のこと。スペクトルを、2.53ppmにおけるブロードな多重線および4.86ppmにおける2.2Hz二重線の存在に関して分析した。というのは、これらのシグナルは、化合物7および6に特徴的だからである。さらに、これらの4つの試料のdqf−COSYスペクトルから、2.53および4.86ppmにおけるシグナルは、実際に化合物7および6に帰属することが確認された。フラクションsat14−10の1H−NMRスペクトルから、この試料は最高濃度の化合物7および6を含有しているという結論が得られ、わずかに少ない量のこれらの化合物をフラクション14−9で検出することができた。フラクションsat14−11では、微量の7および6が含有されているようであったが、フラクションsat14−12では、これらの化合物を検出することはできなかった。これらの結果に基づいて、フラクションsat14−10を選択し、さらにHPLC精製した。あるいは、フラクションsat14−9を使用して、必要に応じて追加の量の化合物4〜7を得ることができた。
【0170】
フラクションsat14−10の主成分は、アクテイン(1)(JNP 2002,65,601−605)であり、このフラクションのメタノール溶液から結晶化した。再結晶によって、純度の高いアクテインが得られた。フラクションsat14−11の主成分はシミゲノールβ−D−キシロピラノシド(2)およびシミゲノールα−L−アラビノシド(3)であり、このフラクションからおよそ2:1の混合物として結晶化した(JNP 2000,65,905−910および1391−1397)。
【0171】
C−18カラム逆相HPLC分画
フラクションsat14−10を3.5mlのメタノールに溶解した。この溶液を、HPLCで、SUPELCO Discovery RP−18カラム(長さ25cm、内径10mm)と、自動注入装置および190〜400nmの波長の検出に使用されるダイオードアレイ検出器を含むAGILENT 1100シリーズHPLCシステムとを使用して分画した。最初の2分間はメタノール中30%(v/v)の水で始め、続いて含水率を直線的に下げ、20分間で100%メタノールにする溶媒グラジエントを利用した。100%メタノールで2分後に、含水率を30%に上げ、その濃度でさらに8分間維持した。sat14−10の試料全体を分離するには、35μlずつ100回注入する必要があった。9個のフラクションを回収し、sat15−1〜sat15−9と名付けた。図3および4をそれぞれ参照のこと。化合物4〜7は、フラクションsat15−1、15−2、15−4、および15−5で溶出された。フラクションsat15−1、15−2、15−4、および15−5の1H NMRスペクトルを図4aおよび4bに示す。
【0172】
6、4、および9を単離するためのC−8カラム逆相HPLC分画
フラクションsat15−5を1.5mlのメタノールに溶解した。この溶液を、HPLCで、SUPELCO supelcosil LC−8カラム(長さ25cm、内径10mm)および上記に記載するAGILENT 1100シリーズHPLCシステムを使用して分画した。最初の2分間はメタノール中40%(v/v)の水で始め、続いて含水率を直線的に下げ、20分間で100%メタノールにする溶媒グラジエントを利用した。100%メタノールで2分後に、含水率を40%に上げ、その濃度でさらに8分間維持した。sat15−5の試料全体を分離するには、30μlずつ50回注入する必要があった。5個のフラクションを回収し、sat16−1〜sat16−5と名付けた(図5)。フラクションsat16−3では化合物6が溶出され、フラクションsat16−1では化合物4が溶出された。フラクションsat15−5では、純度の高い9が少量得られた。図6は、得られた6(9.8mg、純度98%)の1H NMRスペクトルを示す。
【0173】
8を単離するためのC−8 カラム逆相HPLC分画
フラクションsat15−8を0.65mlのメタノールに溶解した。この溶液を、HPLCで、SUPELCO supelcosil LC−8カラム(長さ25cm、内径10mm)および上記に記載するAGILENT 1100シリーズHPLCシステムを使用して分画した。最初の2分間はメタノール中40%(v/v)の水で始め、続いて含水量を直線的に下げ、20分間で100%メタノールにする溶媒グラジエントを利用した。100%メタノールで2分後に、含水率を40%に上げ、その濃度でさらに8分間維持した。7個のフラクションを回収し、sat18−1〜sat18−7と名付けた。フラクションsat18−6では化合物8が溶出された。NOESYスペクトルを含めて、NMR分光法分析によって、化合物8のメタノール溶液は、対応するケトンと相互変換することがわかった。希薄なメタノール溶液は、ケトン型約4%およびヘミアセタール型96%を含有する。
【0174】
7および5を単離するためのC−8 カラム逆相HPLC分画
フラクションsat15−2を0.5mlのメタノールに溶解した。この溶液を、HPLCで、SUPELCO supelcosil LC−8カラム(長さ25cm、内径10mm)および上記に記載するAGILENT 1100シリーズHPLCシステムを使用して分画した。最初の2分間はメタノール中40%(v/v)の水で始め、続いて含水率を直線的に下げ、20分間で100%メタノールにする溶媒グラジエントを利用した。100%メタノールで2分後に、含水率を40%に上げ、その濃度でさらに8分間維持した。5個のフラクションを回収し、sat19−3〜sat19−7と名付けた。フラクションsat19−7では純度の高い化合物7が得られ、フラクションsat19−5では純度の高い化合物5が得られた。
【0175】
単離プロトコル2
化合物6を単離するための単離/精製の代替プロトコルを、下記に記載する。当業者は、化合物6を単離しながら、この方法で本発明の他の化合物を濃縮および/または単離することを理解されよう。この単離方法の要約を図7に示す。
【0176】
この精製プロトコルでは、下記の装置を利用した。
(a)ダイオードアレイ検出器(DAD)を備えたHitachi HPLCシステム
(b)LC ReSponder(商標)アプリケーションソフトウェアを使用する、PCリモートコントローラを備えたNova Prep(商標)8000半分取HPLC
(c)Hitachi UV検出器L−7400
(d)Sedex 55 蒸発光散乱(ELSD)検出器
(e)75L Biotageシリカカラム(KP−Sil;P/N FKO−1107−19073;Lot 027075L)
(f)75L Biotage C18カラム(Bakerbond、40μ)
(g)75S Biotage C18カラム(Vydac、40μ)
(h)分析HPLCカラム:Phenomenex Luna C18、3μ、4.6×100mm
(i)半分取HPLCカラム:Phenomenex Luna C8 HPLCカラム、20×250mm
(j)半分取HPLCカラム:YMC AQ C18 HPLCカラム、21.2×250mm;および
(k)分取HPLC カラム:ES Industries C18 分取HPLC カラム;5×25cm。
【0177】
化合物6の純度を決定するために利用された分析方法は、以下の通りである。
カラム: Phenomenex Luna C18、3μ、4.6×100mm
移動相: A.35%アセトニトリル;B.0.05%酢酸を含有する30%
NANOPURE水;およびC.35%MeOHの定組成溶離
流量: 1mL/分
検出: 205、230nm、DAD;およびELSD
実行時間: 8分
カラム温度: 32℃
この方法を用いて、抽出物、フラクション、および最終生成物を分析した。化合物6は、これらの条件下で約5.5分で溶出する。
【0178】
50 gの粗ブラックコホッシュ抽出物(「BCE」)をBiotageシリカカートリッジ(7.5×30cm)で分画した。ロードした後、カートリッジを5%MeOH/DCM(10L)および10%MeOH/DCM(5L)で溶出し、500mlのフラクションを回収した。流量は150〜200ml/分であった。HPLC (230nmにおけるUV)によって、化合物6は、フラクション23(2.6g)および24(2.3g)に存在することが明らかになった。フラクション23(F23)を選択し、さらに半分取C8カラムで精製した。
【0179】
10回実行して、約10mgの化合物6を得た。0.3mlのMeOHにとかした50mgのF23をPhenomenex Luna C−8(21.2×250mm、10μ、100A)半分取カラムにロードした。205nmにおいてUVモニタリングを行いながら、カラムを70%MeOH/H2O(流量9.9mL/分)で溶出した。半分取HPLCトレース(図8)で示される35分および38分における溶出ピークを別々に回収した。
【0180】
10回の実行で35分のピークについて回収されたフラクションを貯蔵し、溶媒を周囲温度で蒸発させた。得られた固体を凍結乾燥器で乾燥して、10.3mgの化合物6(2609−165−7)を得た。個々のフラクションのHPLC(図10)では主ピークが1つのみ示されているだけであるが、生成物2609−165−7のHPLC(図9)によって、保持時間(RT)4.5分の極性不純物ピーク(11.3%)が明らかになった。化合物6が、プロセス中により極性の高い化合物に徐々に変換したことは明らかである。m/z 643において強度の高い[M+Na]+ピークを示すSSI−MS(図11)、およびアセチルメチルの一重線が存在していない、4.5分において単離された不純物のプロトンNMR(図12)から明らかなように、より極性の高い化合物は、化合物6の脱アセチル誘導体であることが見い出された。
【0181】
化合物6に関するいくつかの安定性実験から、脱アセチルが、わずかに塩基性であるMeOH溶液中で起こったことが示唆された。しかし、これは、わずかに酸性である溶液で安定であった。したがって、2609−165−7を、Luna C8カラムで、0.05%AcOHを含有する70%MeOH/ 30%水を溶出液として使用し、再処理して、3.4mgの化合物6(2609−172−11)を得た。2609−172−11のHPLCクロマトグラムを図13に示す。プロトンNMR(CD3OD中)およびSSI−MSを図14および15に示す。
【0182】
別の方法では、ビーカー中で、250gのブラックコホッシュ抽出物(BCE)と1250mLのMeOHを室温で1時間撹拌した。固体はすべて溶解したわけではないが、濾液のHPLC分析によって、出発の抽出物中の化合物6はすべて溶解した(約250mg)ことが示唆された。それにもかかわらず、5Lの丸底フラスコ中で、濾過されていない混合物を750gのシリカゲル(ICN、60〜200μ)に添加した。ロータリーエバポレータでMeOHを真空下に除去して、乾燥粉末(重量1100g、残留MeOH 9%)を得た。
【0183】
シリカ調製物で乾燥させたBCEを、それぞれ約270gに4分割した。混合物をSIMにロードし、最初に500〜600mLの塩化メチレンで洗浄して、非極性物および残留MeOHを除去した。SIMを75Lのシリカカラム(KP−Sil;P/N FK0−1107−19073;Lot 027075L;7.5×25cm、または1750mL)に接続した。主カラムを60psiでラジアル圧縮した。アセトンを用いて、流量100mL/分で系を溶出し、500〜1000mLのフラクションを回収した。化合物6を溶出した後、カラムを1.0LのMeOHで洗浄し、2Lのアセトンで再平衡化した。化合物6は、カラムからアセトン約900〜1000mLでフラクション1および2に溶出された後、主にフラクション3(1000mL)に溶出されたことが観察された。最初の4回の実行によって、約224mgの化合物6が得られた。シリカBiotage用の出発材料の第2のバッチを、100gのBCEおよび500mLのMeOHおよび300gのシリカから調製した。この出発材料の最初の4回と同様に、追加のBiotageの実行を2回(5および6)を行って、さらに93mgの化合物6を得た。6回の実行による生成貯蔵物を合わせて、減圧下で蒸発乾固した。
【0184】
シリカBiotageに由来の乾燥した固体(90g)を720mLのMeOHに溶解し、撹拌しながら、480mLのH2Oを徐々に添加した。若干の暗色タール様固体が沈殿し、フィルターで除去した。曇った濾液を、75Lの(7.5×25cm)Bakerbond 60Å、40μBiotage C18カラムにロードした。ロードした後、化合物6の検査で陰性であったが、カラムを5Lの60%(v/v)MeOH/H2Oと、続いて4Lの70%MeOH/H2Oで洗浄し、次いで4Lの80%MeOH/H2Oを使用して、化合物6を溶出した。溶出した後、カラムを2LのMeOHで洗浄した。流量は、全体を通して約60mL/分であった。化合物6の分解を防止するために、MeOH/H2O移動相には0.05%の酢酸が含まれた。生成貯蔵物(4L)を、基本的にすべてのMeOHが除去されるまで減圧下で濃縮し、得られた沈殿固体をブフナー漏斗上で回収し、高真空を用いて、室温で乾燥した。
【0185】
最初の大規模C18供給調製物から、濾過によって除去された、約32mgの化合物6を含有するタール様固体を、約22mgの化合物6を含有する大規模実験の2LのMeOH洗液に溶解した。混合物を蒸発させて1Lにし、0.67Lの水と混合した。若干のタール様固体が沈殿し、これをフィルター上で回収し、200mLのMeOHに溶解し、134mLの水と混合した。この混合物も濾過して、少量のタール物質を除去し、濾液を最初の濾液と合わせて、75S(7.5×9.0cm;400mL)Vydac 300Å、40μ Biotage C18カラムにロードした。カラムを1Lの60%MeOH/H2Oおよび2Lの70%MeOH/H2Oで洗浄し、1Lの80%MeOH/H2Oで溶出した(移動相も0.05%の酢酸を含有)。生成貯蔵物を蒸発させて、固体を、大規模Biotage実験と同様に、濾過によって回収した。
【0186】
C18 Biotageカラムに由来の最初の生成貯蔵物(16.69g)を、70mLのMeOHと混合した。混合物を音波処理し、沈殿物を濾過によって除去した。0.05%AcOHを含有する70%MeOH/30%水を溶離液として使用して流量177mL/分で、濾液をES Industries Chromegabond WR C18カラムのクロマトグラフ(5回実行、14mLずつ)にかけた。各実行における6〜14分のフラクションを合わせ、蒸発させてMeOHを除去する。MeOHを除去した後の沈殿物を遠心で回収し、凍結乾燥器で乾燥して、6.6gの乾燥した固体2609−173−16 (化合物6、3.2%)を得た。
【0187】
C18 Biotageカラムに由来の第2の生成貯蔵物(4.3g)を、同様な方式で処理して、2.0gの乾燥した固体2609−173−27(化合物6、3.06%)を得た。2609−173−16と2609−176−27を合わせて、8.6gの2609−174−6を得た。
【0188】
0.1%AcOHを含有するMeOH(1.3mL)に、2609−174−6(400mg)を溶解した。溶液をPhenomenex Luna C8カラムにロードし、0.05%のAcOHを含有する68%MeOH/32%水を用いて、流量24mL/分で溶出した。
【0189】
分析HPLCに基づいて、各実行(全22回実行)における15.8〜19.8分のフラクションを合わせ、蒸発させてMeOHを除去し、凍結乾固して、2609−174−28 (1.4 g、12.6%の化合物6を含有)を得た。2609−174−28を使用して、化合物6をYMC−AQ C18カラムで最終単離した。実行を合計28回行った。
【0190】
0.1%AcOHを含有する0.25mLのMeOHに、2609−174−28(50mg)を溶解した。溶液をYMC AQ C18カラムに注入した。カラムを、0.05% AcOHを含有する70% MeOH/30%水を用いて9.9mL/分で溶出した。分析HPLCプロファイルに基づいて、28回の実行から典型的に48.4〜50.4分のフラクションを選択し、貯蔵し、蒸発させ、凍結乾燥させて、化合物6(2609−176−30、85mg)を得た。
【0191】
48.4分直前に回収され、主に化合物6を含有するフラクションも合わせ、乾燥して、2609−176−35(50mg)を得た。同じカラムと移動相を使用して、2609−176−35を再処理(3回実行)して、別のロットの化合物6を得た。これを2609−176−30と合わせて、102mgの生成物(2609−177−10)(クロマトグラフィー純度:約95%)を得た。化合物6(2609−176−10)のHPLCクロマトグラム(205、230nmにおけるUV、およびELSD)およびプロトンNMRスペクトルをそれぞれ、図16、17、18、および19に示す。2609−176−10のプロトンNMRは、化合物6の標準試料のプロトンNMRに一致した。化合物6のSSI−MS(図20)から、m/z 685における強度の高い[M+Na]+ピークは、化合物6の分子式C37H58O10に一致することがわかった。
【0192】
生物検定
A.式Iの化合物のAβ−42を阻害する能力を決定するための検定
本発明の化合物、および前記化合物を含む抽出物を、アミロイドβ(1−42)ペプチドの阻害剤をin vitroまたはin vivoで検定することができる。このような検定方法は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる米国特許第6,649,196号に詳細に記載されている。
【0193】
本発明の化合物は、米国特許第6,649,196号に記載されているのと実質的に同じ方式で行われる細胞に基づく検定に従って、アミロイドβ(1−42)ペプチドを選択的に低減することが見い出された。
【0194】
B.式Iの化合物の全Aβ比率に影響を及ぼす能力を決定するための検定
本発明の化合物を、参照によりその全体が本明細書に組み込まれるWangら、J.Biol.Chem.1996,50:31894−31902,The Profile of Soluble Amyloid β Protein in Cultured Cell Mediaによって記載されている検定プロトコルと実質的に同様な検定プロトコルを使用して検定して、in vitroでのアミロイドβ(1−42)ペプチドの全比率に及ぼす効果を決定した。この検定は、免疫沈殿法および質量分析法(IP−MS)を用いてアミロイドβタンパク質を定量する。例として化合物6を用いて、この化合物がアミロイドβ(1−42)ペプチドを低減する一方、アミロイドβ(1−37)ペプチドおよびアミロイドβ(1−39)ペプチドを増大させることが見い出された。これらの結果を図21に示す。
【0195】
化合物6はまた、Wangら、7W細胞(APPwt)および7PA2細胞(APPV717F)に記載されている方法に従って検定された。APP717突然変異は、アミロイドβ(1−42)ペプチドの相対量を増大させる。この検定では、化合物6は、アミロイドβ(1−42)ペプチドを低減する一方、アミロイドβ(1−39)ペプチドを増大させることがわかった。これらの結果を図22に示す。
【0196】
本発明のいくつかの実施形態について述べてきたが、基本的例を変更して、本発明の化合物および方法を利用する他の実施形態を提供できることは明らかである。したがって、本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲によって定義されるものであって、例として示された特定の実施形態によって定義されるものではないことを理解されたい。
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、2005年5月17日出願の米国特許仮出願第60/681,662号の優先権を主張する。
【0002】
本発明は、神経変性障害を治療し、またはその重篤度を減ずるのに有用な医薬として活性な化合物に関する。
【背景技術】
【0003】
長い形のアミロイドβペプチド、具体的にはAβ(1−42)のアルツハイマー病における中心的な役割は、様々な病理組織学的、遺伝学的、および生化学的研究によって確立している。Selkoe,DJ,Physiol.Rev.2001,81:741−766,Alzheimer’s disease:genes,proteins,and therapy、およびYounkin SG,J Physiol Paris.1998,92:289−92,The role of A beta 42 in Alzheimer’s diseaseを参照のこと。具体的に言うと、Aβ(1−42)の脳への沈着は、すべての形のアルツハイマー病の早期の不変的な特性であることが見い出されている。実際に、これは、アルツハイマー病の診断が可能となる前、およびA−βのより短い主要な形であるAβ(1−40)が沈着する前に起こる。Parvathy Sら、Arch Neurol.2001,58:2025−32,Correlation between Abetax−40−,Abetax−42−,and Abetax−43−containing amyloid plaques and cognitive declineを参照のこと。疾患の病因へのAβ(1−42)の別の関与は、早期発症型家族性アルツハイマー病を伴うプレセニリン(γセクレターゼ)遺伝子における突然変異は、一様にAβ(1−42)レベルの増加をもたらすという観察に由来する。Ishii Kら、Neurosci Lett.1997,228:17−20,Increased A beta 42(43)−plaque deposition in early−onset familial Alzheimer’s disease brains with the deletion of exon 9 and the missense point mutation (H163R)in the PS−1 geneを参照のこと。アミロイド前駆体タンパク質APPにおけるさらなる突然変異によって、全Aβが上昇し、場合によってはAβ(1−42)のみが上昇する。Kosaka Tら、Neurology,48:741−5,The beta APP717 Alzheimer mutation increases the percentage of plasma amyloid−beta protein ending at A beta42(43)を参照のこと。様々なAPP突然変異が、沈着APの種類、量、および部位に影響を及ぼす可能性があるが、脳実質における優勢な初期の沈着種は、長いAβであることが見い出されている(Mann)。Mann DMら、Am J Pathol.1996,148:1257−66,Predominant deposition of amyloid−beta 42(43)in plaques in cases of Alzheimer’s disease and hereditary cerebral hemorrhage associated with mutations in the amyloid precursor protein geneを参照のこと。
【0004】
Aβの早期沈着物では、沈着タンパク質の大部分が非晶質または散在性プラークの形である場合、Aβは実質的にすべて、長い形である。Gravina SAら、J Biol Chem,270:7013−6,Amyloid beta protein (A beta)in Alzheimer’s disease brain.Biochemical and immunocytochemical analysis with antibodies specific for forms ending at A beta 40 or A beta 42(43);Iwatsubo Tら、Am J Pathol.1996,149:1823−30,Full−length amyloid−beta (1−42(43))and amino−terminally modified and truncated amyloid−beta 42(43)deposit in diffuse plaques;およびRoher AEら、Proc Nall Acad Sci U S A.1993,90:10836−40,beta−Amyloid−(1−42)is a major component of cerebrovascular amyloid deposits:implications for the pathology of Alzheimer diseaseを参照のこと。次いで、Aβ(1−42)のこれらの初期沈着は、長短の両方の形のAβのその後の沈着をもたらすことができる。Tamaoka Aら、Biochem Biophys Res Commun.1994,205:834−42,Biochemical evidence for the long−tail form (A beta 1−42/43)of amyloid beta protein as a seed molecule in cerebral deposits of Alzheimer’s diseaseを参照のこと。
【0005】
Aβを発現する遺伝子導入動物において、沈着は、Aβ(1−42)レベルの上昇を伴ったが、沈着のパターンは、Aβ(1−42)が早期に沈着し、続いてAβ(1−40)が沈着するヒトの疾患で見られるパターンと同様である。Rockenstein Eら、J Neurosci Res.2001,66:573−82,Early formation of mature amyloid−beta protein deposits in a mutant APP transgenic model depends on levels of Abeta(1−42);およびTerai Kら、Neuroscience 2001,104:299−310,beta−Amyloid deposits in transgenic mice expressing human beta−amyloid precursor protein have the same characteristics as those in Alzheimer’s diseaseを参照のこと。同様な沈着パターンおよびタイミングは、Aβ発現が増大し、沈着が促進するダウン症候群患者に見られる。Iwatsubo Tら、Ann Neurol.1995,37:294−9,Amyloid beta protein (A beta)deposition:A beta 42(43)precedes A beta 40 in Down syndromeを参照のこと。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、Aβ(1−42)を選択的に減らすことが、すべての形態のAβのアミロイドを形成する潜在能力を低減し、Aβの新しい沈着物の形成を遅延または止め、可溶型毒性オリゴマーのAβの形成を抑制し、それによって神経変性の進行を遅延または停止させるための疾患特異的方法として浮上してきた。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本明細書に記載するように、本発明は、神経変性障害を治療し、またはその重篤度を減ずるのに有用な化合物を提供する。本発明は、このような障害を治療し、またはその重篤度を減ずる方法であって、本発明の化合物またはその組成物を患者に投与することを含む方法も提供する。前記方法は、例えば、アルツハイマー病を治療し、またはその重篤度を減ずるのに有用である。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】クロマトグラフィーのフラクションsat14−9およびsatl4−10の1H NMRスペクトルを示す図である。
【図2】クロマトグラフィーのフラクションsat14−11およびsat14−12の1H NMRスペクトルを示す図である。
【図3】クロマトグラフィーのフラクションsatl5−1およびat15−2の1H NMRスペクトルを示す図である。
【図4】クロマトグラフィーのフラクションsat15−4およびsat15−5の1H NMRスペクトルを示す図である。
【図5】sat15−5のC−18逆相HPLCクロマトグラム分離の拡大図(ただし、数字の1〜5は、フラクションsat16−1〜sat16−9の時間窓に対応する)である。
【図6】純度98%の化合物6に対応するフラクションsat16−3の1H NMRスペクトルを示す図である。
【図7】単離プロトコル2の概要を示すフローチャート図である。
【図8】半分取HPLC後のブラックコホッシュ抽出物のHPLCトレースを示す図である。
【図9】デアシルの小ピークを示す化合物6のHPLCトレースを示す図である。
【図10】化合物6のHPLCトレースを示す図である。
【図11】デアシル−化合物6の質量スペクトルを示す図である。
【図12】デアシル−化合物6の1H NMRを示す図である。
【図13】化合物6のHPLCトレースを示す図である。
【図14】化合物6の1H NMR (CD3OD)を示す図である。
【図15】化合物6の質量スペクトルを示す図である。
【図16】プロトコル2に従って単離され、205nmで検出された化合物6のHPLCトレースを示す図である。
【図17】プロトコル2に従って単離され、230nmで検出された化合物6のHPLCトレースを示す図である。
【図18】ELSDで検出された化合物6のHPLCを示す図である。
【図19】プロトコル2に従って単離された化合物6の1H NMRスペクトルを示す図である。
【図20】プロトコル2に従って単離された化合物6の質量スペクトルを示す図である。
【図21】IP−MSで決定された、化合物6のアミロイドβ(1−40)、(1−42)、(1−37)、(1−38)、および(1−39)の相対量に及ぼす効果を示す図である。
【図22】IP−MSで決定された、化合物6の野生型および717変異型の細胞におけるアミロイドβ(1−40)、(1−42)、(1−37)、(1−38)、および(1−39)の量に及ぼす効果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
1.本発明の化合物の一般的説明:
一実施形態によれば、本発明は、式Iの化合物:
【0010】
【化1】

またはその医薬上許容される塩
[式中、
環A、環B、環C、環D、および環Eは、各々独立して、飽和、部分不飽和、または芳香族であり、
Gは、S、CH2、NR、またはOであり、
R1およびR2は、各々独立して、ハロゲン、R、OR、適宜保護されたヒドロキシル基、SR、適宜保護されたチオール基、N(R)2、または適宜保護されたアミノ基であるか、あるいはR1とR2が一緒になって、窒素、酸素、または硫黄から独立して選択された0〜2個のヘテロ原子を有する3〜7員の飽和環、部分不飽和環、またはアリール環を形成し、
Rは、各々独立して、水素、所望により置換されたC1〜6脂肪族基、あるいは所望により置換された、窒素、酸素、または硫黄から独立して選択された0〜4個のヘテロ原子を有する3〜8員の飽和環、部分不飽和環、またはアリール環であり、
ここで、同じ窒素原子上の2つのRが前記窒素原子と所望により一緒になって、窒素、酸素、または硫黄から独立して選択された1〜4個のヘテロ原子を有する3〜8員の飽和環、部分不飽和環、またはアリール環を形成し、
nは0〜2であり、
R3、R4、R7、およびR8は、各々独立して、ハロゲン、R、OR、適宜保護されたヒドロキシル基、SR、適宜保護されたチオール基、SO2R、OSO2R、N(R)2、適宜保護されたアミノ基、NR(CO)R、NR(CO)(CO)R、NR(CO)N(R)2、NR(CO)OR、(CO)OR、O(CO)R、(CO)N(R)2、またはO(CO)N(R)2から選択され、
mは0〜2であり、
R5は、T−C(R’)3、T−C(R’)2C(R”)3、R、OR、適宜保護されたヒドロキシル基、SR、適宜保護されたチオール基、SO2R、OSO2R、N(R)2、適宜保護されたアミノ基、NR(CO)R、NR(CO)(CO)R、NR(CO)N(R)2、NR(CO)OR、(CO)OR、O(CO)R、(CO)N(R)2、またはO(CO)N(R)2であるか、あるいは
R5がT−C(R’)3またはT−C(R’)2C(R”)3である場合、R6とR5のR’基とは所望により一緒になって、窒素、酸素、または硫黄から独立して選択された0〜2個のヘテロ原子を有する3〜8員の飽和環、部分不飽和環、またはアリール環を形成し、
Tは、各々独立して、原子価結合、あるいは所望により置換された直鎖または分枝状の飽和または不飽和のC1〜6アルキリデン鎖であり、ここで、Tのメチレン単位は2個まで、−O−、−N(R)−、−S−、−C(O)−、−S(O)−、または−S(O)2−によって所望によりかつ独立に置換され、
R’およびR”は、各々独立して、R、OR、SR、SO2R、OSO2R、N(R)2、NR(CO)R、NR(CO)(CO)R、NR(CO)N(R)2、NR(CO)OR、(CO)OR、O(CO)R、(CO)N(R)2、またはO(CO)N(R)2から選択され、
R6は、ハロゲン、R、OR、SR、SO2R、OSO2R、N(R)2、NR(CO)R、NR(CO)(CO)R、NR(CO)N(R)2、NR(CO)OR、(CO)OR、O(CO)R、(CO)N(R)2、またはO(CO)N(R)2であり、
R9およびR9’は、各々独立して、ハロゲン、R、OR、SR、またはN(R)2から選択され、あるいはR1とR2とは一緒になって、窒素、酸素、または硫黄から独立して選択された0〜2個のヘテロ原子を有する3〜7員の飽和環、部分不飽和環、またはアリール環を形成し、
Qは、原子価結合、あるいは所望により置換された直鎖または分枝状の飽和または不飽和のC1〜6アルキリデン鎖であり、ここで、Qのメチレン単位は2個まで、−O−、−N(R)−、−S−、−C(O)−、−S(O)−、または−S(O)2−によって所望によりかつ独立に置換され、
R10は、R、適宜保護されたヒドロキシル基、適宜保護されたチオール基、適宜保護されたアミノ基、所望により置換された、窒素、酸素、または硫黄から独立して選択された0〜4個のヘテロ原子を有する3〜8員の飽和単環式環、部分不飽和単環式環、またはアリール単環式環、所望により置換された、窒素、酸素、または硫黄から独立して選択された0〜4個のヘテロ原子を有する8〜10員の飽和二環式環、部分不飽和二環式環、またはアリール二環式環、検出可能な部分、ポリマー残基、ペプチド、あるいは糖含有または糖様部分である]
を提供する。
【0011】
他の実施形態によれば、本発明は、式Iの化合物:
【0012】
【化2】

またはその医薬上許容される塩
[式中、
環A、環B、環C、環D、および環Eは、各々独立して、飽和、部分不飽和、または芳香族であり、
Gは、S、CH2、NR、またはOであり、
R1およびR2は、各々独立して、ハロゲン、R、OR、適宜保護されたヒドロキシル基、SR、適宜保護されたチオール基、N(R)2、または適宜保護されたアミノ基であるか、あるいはR1とR2が一緒になって、窒素、酸素、または硫黄から独立して選択された0〜2個のヘテロ原子を有する3〜7員の飽和環、部分不飽和環、またはアリール環を形成し、
Rは、各々独立して、水素、所望により置換されたC1〜6脂肪族基、あるいは所望により置換された、窒素、酸素、または硫黄から独立して選択された0〜4個のヘテロ原子を有する3〜8員の飽和環、部分不飽和環、またはアリール環であり、
ここで、同じ窒素原子上の2つのRが前記窒素原子と所望により一緒になって、窒素、酸素、または硫黄から独立して選択された1〜4個のヘテロ原子を有する3〜8員の飽和環、部分不飽和環、またはアリール環を形成し、
nは0〜2であり、
R3、R4、R7、およびR8は、各々独立して、ハロゲン、R、OR、適宜保護されたヒドロキシル基、SR、適宜保護されたチオール基、SO2R、OSO2R、N(R)2、適宜保護されたアミノ基、NR(CO)R、NR(CO)(CO)R、NR(CO)N(R)2、NR(CO)OR、(CO)OR、O(CO)R、(CO)N(R)2、またはO(CO)N(R)2から選択され、
mは0〜2であり、
R5は、T−C(R’)3、T−C(R’)2C(R”)3、R、OR、適宜保護されたヒドロキシル基、SR、適宜保護されたチオール基、SO2R、OSO2R、N(R)2、適宜保護されたアミノ基、NR(CO)R、NR(CO)(CO)R、NR(CO)N(R)2、NR(CO)OR、(CO)OR、O(CO)R、(CO)N(R)2、またはO(CO)N(R)2であるか、あるいは
R5がT−C(R’)3またはT−C(R’)2C(R”)3である場合、R6とR5のR’基とは所望により一緒になって、窒素、酸素、または硫黄から独立して選択された0〜2個のヘテロ原子を有する3〜8員の飽和環、部分不飽和環、またはアリール環を形成し、
Tは、各々独立して、原子価結合、あるいは所望により置換された直鎖または分枝状の飽和または不飽和のC1〜6アルキリデン鎖であり、ここで、Tのメチレン単位は2個まで、−O−、−N(R)−、−S−、−C(O)−、−S(O)−、または−S(O)2−によって所望によりかつ独立に置換され、
R’およびR”は、各々独立して、R、OR、SR、SO2R、OSO2R、N(R)2、NR(CO)R、NR(CO)(CO)R、NR(CO)N(R)2、NR(CO)OR、(CO)OR、O(CO)R、(CO)N(R)2、またはO(CO)N(R)2から選択され、
R6は、ハロゲン、R、OR、SR、SO2R、OSO2R、N(R)2、NR(CO)R、NR(CO)(CO)R、NR(CO)N(R)2、NR(CO)OR、(CO)OR、O(CO)R、(CO)N(R)2、またはO(CO)N(R)2であり、
R9およびR9’は、各々独立して、ハロゲン、R、OR、SR、またはN(R)2から選択され、あるいはR1とR2が一緒になって、窒素、酸素、または硫黄から独立して選択された0〜2個のヘテロ原子を有する3〜7員の飽和環、部分不飽和環、またはアリール環を形成し、
Qは、原子価結合、あるいは所望により置換された直鎖または分枝状の飽和または不飽和のC1〜6アルキリデン鎖であり、ここで、Qのメチレン単位は2個まで、−O−、−N(R)−、−S−、−C(O)−、−S(O)−、または−S(O)2−によって所望によりかつ独立に置換されており、
R10は、R、適宜保護されたヒドロキシル基、適宜保護されたチオール基、適宜保護されたアミノ基;所望により置換された、窒素、酸素、または硫黄から独立して選択された0〜4個のヘテロ原子を有する3〜8員の飽和単環式環、部分不飽和単環式環、またはアリール単環式環、所望により置換された、窒素、酸素、または硫黄から独立して選択された0〜4個のヘテロ原子を有する8〜10員の飽和二環式環、部分不飽和二環式環、またはアリール二環式環、検出可能な部分、ポリマー残基、ペプチド、あるいは糖含有または糖様部分である。
ただし、前記化合物が
【0013】
【化3】

以外であることを条件とする]
を提供する。
【0014】
2.定義:
本発明の化合物としては、上記で全体的に記載されるものが挙げられるが、さらに本明細書に開示する実施形態、下位実施形態、および種によって例示される。本明細書では、別段の示唆のない限り、下記の定義を適用するものとする。本発明の目的のために、化学元素は、元素周期表(CAS版、Handbook of Chemistry and Physics、第75版)に従って特定される。さらに、有機化学の一般原理は、「Organic Chemistry」、Thomas Sorrell,University Science Books,Sausalito:1999、および「March’s Advanced Organic Chemistry」、第5編:Smith,M.B.and March,J.編集、John Wiley & Sons,New York:2001に記載され、その内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0015】
上記で全体的に定義するように、環A、環B、環C、環D、および環Eは、各々独立して、飽和、部分不飽和、または芳香族である。本発明の化合物は、化学的に可能な化合物として考えられることを理解されたい。したがって、環A、環B、環C、環D、および環Eのいずれかのいずれかが不飽和である場合、その環上のいくつかの置換基は、原子価の一般規則を満たすために存在しないことを当業者は理解されよう。例えば、環Dが、環Dと環Eの間の結合が不飽和である場合、R6は存在しない。あるいは、環Dが、環Dと環Cの間の結合が不飽和である場合、R8およびR3は存在しない。環A、環B、環C、環D、および環Eのいずれかの飽和と不飽和の組合せはすべて、本発明によって考えられる。したがって、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R9’、およびQR10がそれぞれ、存在するかまたは存在しないという要件は、原子価の一般規則を満たすために、かつ環A、環B、環C、環D、および環Eのいずれかの飽和または不飽和の程度に応じて考えられる。
【0016】
本明細書に記載するように、本発明の化合物は、1つまたは複数の置換基で所望により置換されてもよく、このようなものは、上記で全体的に記載され、または本発明の特定のクラス、下位クラス、および種によって例示される。語句「所望により置換された」は、語句「置換または非置換の」と同義で使用されることを理解されたい。一般に、用語「置換された」は、用語「所望により」が前に付いているにせよ付いていないにせよ、所与の構造の水素基の、指定の置換基の基による置換を意味する。別段の示唆のない限り、所望により置換された基は、基の置換可能な各位置のそれぞれにおいて置換基を有することができ、任意の所与の構造において1つを超える位置が指定の基から選択された1つを超える置換基で置換され得る場合、置換基はあらゆる位置で同じでも異なってもよい。本発明で想定される置換基の組合せは、好ましくは安定または化学的に可能な化合物の形成をもたらすものである。
【0017】
本明細書では、用語「安定な」は、本明細書に開示する目的の1つまたは複数のための、生成、検出、好ましくは回収、精製、および使用を可能にする条件に曝されたとき実質的には変更されない化合物を意味する。いくつかの実施形態では、安定な化合物または化学的に可能な化合物は、水分の非存在下、または他の化学反応性の高い条件下で、40℃以下の温度で少なくとも1週間維持されたとき、実質的には変更されない化合物である。
【0018】
本明細書では、用語「脂肪族の」または「脂肪族基」は、完全に飽和であり、または1つもしくは複数の不飽和単位を含む直鎖(すなわち、非分枝状)または分枝状の置換または非置換の炭化水素鎖、あるいは完全に飽和であり、または1つもしくは複数の不飽和単位を含むが芳香族でなく(本明細書では、「炭素環」、「脂環式の」、または「シクロアルキル」とも呼ばれる)、分子残部への結合が一点だけである単環式炭化水素または二環式炭化水素を意味する。別段の指定のない限り、脂肪族基は、1〜20個の脂肪族炭素原子を含む。いくつかの実施形態では、脂肪族基は、1〜6個の脂肪族炭素原子を含む。さらに他の実施形態では、脂肪族基は、1〜4個の脂肪族炭素原子を含む。いくつかの実施形態では、「脂環式の」(または「炭素環」もしくは「シクロアルキル」)は、完全に飽和され、または1つもしくは複数の不飽和単位を含むが芳香族でなく、分子残部への結合が一点だけであり、ここで前記二環式環系の任意の個々の環が3〜7員を有する単環式C3〜C8炭化水素または二環式C8〜C12炭化水素を意味する。適切な脂肪族基としては、(シクロアルキル)アルキル、(シクロアルケニル)アルキル、または(シクロアルキル)アルケニルなど、線状または分枝状の置換または非置換のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、およびそれらのハイブリッドが挙げられるが、これらに限定されない。他の実施形態では、脂肪族基は、ジェミナル水素原子2個を、−O−(直鎖または分枝状のアルキレンまたはアルキリデン)−O−などのオキソ(2価のカルボニル酸素原子=O)または環形成置換基で置換して、アセタールまたはケタールを形成することができる。
【0019】
いくつかの実施形態では、脂肪族基の例としては、エチニル、2−プロピニル、1−プロペニル、2−ブテニル、1,3−ブタジエニル、2−ペンテニル、ビニル(エテニル)、アリル、イソプロペニル、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、イソペンチル、sec−ペンチル、neo−ペンチル、tert−ペンチル、シクロペンチル、ヘキシル、イソヘキシル、sec−ヘキシル、シクロヘキシル、2−メチルペンチル、tert−ヘキシル、2,3−ジメチルブチル、3,3−ジメチルブチル、1,3−ジメチルブチル、および2,3−ジメチルブタ−2−イルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0020】
用語「ハロアルキル」、「ハロアルケニル」、および「ハロアルコキシ」は、場合によっては1つまたは複数のハロゲン原子で置換されているアルキル、アルケニル、またはアルコキシを意味する。用語「ハロゲン」は、F、Cl、Br、またはIを意味する。このような「ハロアルキル」基、「ハロアルケニル」基、および「ハロアルコキシ」基は、2つ以上のハロ置換基を有することができ、これらのハロ置換基は、同じハロゲンでもよく、またはそうでなくてもよく、同じ炭素原子上にあってもよく、またはそうでなくてもよい。例としては、クロロメチル、パーヨードメチル、3,3−ジクロロプロピル、1,3−ジフルオロブチル、トリフルオロメチル、および1−ブロモ−2−クロロプロピルが挙げられる。
【0021】
本明細書では、用語「ヘテロ環」、「ヘテロシクリル」、「ヘテロシクロ脂肪族の」、または「ヘテロ環式」は、1つまたは複数の環員が独立して選択されたヘテロ原子である非芳香族の単環式、二環式、または三環式の環系を意味する。いくつかの実施形態では、「ヘテロ環」、「ヘテロシクリル」、「ヘテロシクロ脂肪族の」、または「ヘテロ環式」基は、3〜14個の環員を有し、1つまたは複数の環員は、酸素、硫黄、窒素、またはリンから独立して選択されたヘテロ原子であり、系中の各環は3〜7個の環員を含む。
【0022】
用語「ヘテロ原子」は、酸素、硫黄、窒素、リン、またはケイ素の(窒素、硫黄、リン、またはケイ素の酸化された形;任意の塩基性窒素の四級化された形、あるいは;ヘテロ環式環の置換可能な窒素、例えば(3,4−ジヒドロ−2H−ピロリルにおけるような)N、(ピロリジニルにおけるような)NH、または(N−置換ピロリジニルにおけるような)NR+を含めて)1つまたは複数を意味する。
【0023】
本明細書では、用語「不飽和の」は、部分が1つまたは複数の不飽和単位を有することを意味する。
【0024】
本明細書では、用語「アルコキシ」または「チオアルキル」は、酸素(「アルコキシ」)原子または硫黄(「チオアルキル」)原子を介して炭素主鎖に結合している、先に定義したアルキル基を意味する。
【0025】
単独で、または「アラルキル」、「アラルコキシ」もしくは「アリールオキシアルキル」のようにより大きな部分の一部分として用いられる用語「アリール」は、系中の少なくとも1つの環が芳香族であり、系中の各環が3〜7個の環員を含み、合計5〜14個の環員を有する単環式、二環式、および三環式の環系を意味する。用語「アリール」は、用語「アリール環」と同義で使用することができる。用語「アリール」は、本明細書の下記に定義するヘテロアリール環系も意味する。
【0026】
単独で、または「ヘテロアラルキル」もしくは「ヘテロアリールアルコキシ」のようにより大きな部分の一部分として用いられる用語「ヘテロアリール」は、系中の少なくとも1つの環が芳香族であり、系中の少なくとも1つの環が1つまたは複数のヘテロ原子を含み、系中の各環が3〜7個の環員を含み、合計5〜14個の環員を有する単環式、二環式、および三環式の環系を意味する。用語「ヘテロアリール」は、用語「ヘテロアリール環」または用語「ヘテロ芳香族」と同義で使用することができる。
【0027】
アリール基(アラルキル、アラルコキシ、アリールオキシアルキルなどを含む)またはヘテロアリール基(ヘテロアラルキルおよびヘテロアリールアルコキシなどを含む)は、1つまたは複数の置換基を含むことができる。アリール基またはヘテロアリール基の不飽和炭素原子上の適切な置換基は、ハロゲン;N3、CN、R°;OR°;SR°;1,2−メチレン−ジオキシ;1,2−エチレンジオキシ;R°で所望により置換されたフェニル(Ph);R°で所望により置換された−O(Ph);R°で所望により置換された(CH2)1〜2(Ph);R°で所望により置換されたCH=CH(Ph);NO2;CN;N(R°)2;NR°(O)R°;NR°(O)N(R°)2;NR°O2R°;−NR°R°(O)R°;NR°NR°C(O)N(R°)2;NR°NR°CO2R°;C(O)C(O)R°;C(O)CH2C(O)R°;CO2R°;C(O)R°;C(O)N(R°)2;OC(O)N(R°)2;S(O)2R°;SO2N(R°)2;S(O)R°;NR°SO2N(R°)2;NR°SO2R°;C(=S)N(R°)2;C(=NH)−N(R°)2;または(CH2)0〜2NHC(O)R°(式中、R°はそれぞれ独立に出現するたびに、水素、所望により置換されたC1〜6脂肪族、5〜6員の非置換ヘテロアリールもしくはヘテロ環式環、フェニル、O(Ph)、またはCH2(Ph)から選択され、あるいは上記の定義にもかかわらず、R°は同じ置換基または異なる置換基上で独立に2個出現するとき、R°基がそれぞれ結合している原子と一緒になって、窒素、酸素、または硫黄から独立して選択された0〜4個のヘテロ原子を有する3〜8員のシクロアルキル、ヘテロシクリル、アリール、またはヘテロアリール環を形成する)から選択される。R°の脂肪族基上の所望による置換基は、N3、CN、NH2、NH(C1〜4脂肪族)、N(C1〜4脂肪族)2、ハロゲン、C1〜4脂肪族、OH、O(C1〜4脂肪族)、NO2、CN、CO2H、CO2(C1〜4脂肪族)、O(ハロC1〜4脂肪族)、またはハロC1〜4脂肪族(式中、R°の上記のC1〜4脂肪族基はそれぞれ、非置換である)から選択される。
【0028】
脂肪族基、もしくはヘテロ脂肪族基、または非芳香族ヘテロ環式環は、1つまたは複数の置換基を含むことができる。脂肪族基もしくはヘテロ脂肪族基、または非芳香族ヘテロ環式環の飽和炭素上の適切な置換基は、アリール基またはヘテロアリール基の不飽和炭素について上記に列挙するものから選択され、さらに下記の=O、=S、=NNHR*、=NN(R*)2、=NNHC(O)R*、=NNHCO2(アルキル)、=NNHSO2(アルキル)、または=NR*(式中、R*は、各々独立して、水素、または所望により置換されたC1〜6脂肪族から選択される)が挙げられる。R*の脂肪族基上の所望による置換基は、NH2、NH(C1〜4脂肪族)、N(C1〜4脂肪族)2、ハロゲン、C1〜4脂肪族、OH、O(C1〜4脂肪族)、NO2、CN、CO2H、CO2(C1〜4脂肪族)、O(ハロC1〜4脂肪族)、またはハロ(C1〜4脂肪族)(式中、R*の上記のC1〜4脂肪族基はそれぞれ、非置換である)から選択される。
【0029】
非芳香族ヘテロ環式環の窒素上の所望による置換基は、R+、N(R+)2、C(O)R+、CO2R+、C(O)C(O)R+、C(O)CH2C(O)R+、SO2R+、SO2N(R+)2、C(=S)N(R+)2、C(=NH)−N(R+)2、またはNR+SO2R+(式中、R+は、水素、所望により置換されたC1〜6脂肪族、所望により置換されたフェニル、所望により置換されたO(Ph)、所望により置換されたCH2(Ph)、所望により置換された(CH2)1〜2(Ph);所望により置換されたCH=CH(Ph);または酸素、窒素、もしくは硫黄から独立して選択された1〜4個のヘテロ原子を有する5〜6員の非置換ヘテロアリールもしくはヘテロ環式環であり、あるいは上記の定義にもかかわらず、R+は同じ置換基または異なる置換基上で独立に2個出現するとき、R+基がそれぞれ結合している原子と一緒になって、窒素、酸素、または硫黄から独立して選択された0〜4個のヘテロ原子を有する3〜8員のシクロアルキル、ヘテロシクリル、アリール、またはヘテロアリール環を形成する)から選択される。R+の脂肪族基またはフェニル環上の所望による置換基は、NH2、NH(C1〜4脂肪族)、N(C1〜4脂肪族)2、ハロゲン、C1〜4脂肪族、OH、O(C1〜4脂肪族)、NO2、CN、CO2H、CO2(C1〜4脂肪族)、O(ハロC1〜4脂肪族)、またはハロ(C1〜4脂肪族)(式中、R+の上記のC1〜4脂肪族基のそれぞれ、非置換である)から選択される。
【0030】
上記に詳述するように、いくつかの実施形態では、独立に2個出現するR°(またはR+、または本明細書に同様に定義する他の任意の変数)は変数がそれぞれ結合している原子と一緒になって、窒素、酸素、または硫黄から独立して選択された0〜4個のヘテロ原子を有する3〜8員のシクロアルキル環、ヘテロシクリル環、アリール環、またはヘテロアリール環を形成する。独立に2個出現するR°(またはR+、または本明細書に同様に定義する他の任意の変数)が、変数がそれぞれ結合している原子と一緒になって形成される環の例としては、下記のa)同じ原子に結合し、その原子と一緒になって、環、例えばN(R°)2を形成する(出現するR°が両方とも、窒素原子と一緒になって、ピペリジン−1−イル、ピペラジン−1−イル、またはモルホリン−4−イル基を形成する)、独立に2個出現するR°(またはR+、または本明細書に同様に定義する他の任意の変数)、およびb)異なる原子に結合し、それらの原子の両方と一緒になって、環を形成する、例えばフェニル基が2個出現するOR°
【0031】
【化4】

で置換され、これらの2個出現するR°はそれらが結合している酸素原子と一緒になって、6員の酸素含有縮合環:
【0032】
【化5】

を形成する独立に2個出現するR°(またはR+、または本明細書に同様に定義する他の任意の変数)が挙げられるが、これらに限定されない。独立に2個出現するR°(またはR+、または本明細書に同様に定義する他の任意の変数)が、変数がそれぞれ結合している原子と一緒になる場合、様々な他の環が形成され得ること、上記に詳述する例に限定されるものではないことを理解されたい。
【0033】
本明細書では、用語「検出可能な部分」は、用語「標識」と同義で使用され、任意の検出可能な部分、例えば一次標識および二次標識に関する。放射性同位体(例えば、32P、33P、35S、または14C)、質量タグ、および蛍光標識などの一次標識は、さらなる修飾なしに検出することができる信号生成レポーター基である。
【0034】
本明細書では、用語「二次標識」は、検出可能な信号を生成するための第2の中間体の存在を必要とするビオチンや様々なタンパク質抗原などの部分を意味する。ビオチンの場合、第2の中間体としては、ストレプトアビジン−酵素のコンジュゲートが挙げられる。抗原標識の場合、第2の中間体としては、抗体−酵素のコンジュゲートが挙げられる。いくつかの蛍光基は、無放射蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)のプロセスでエネルギーを別の基に移動させ、第2の基が検出された信号を生成するので二次標識として働く。
【0035】
本明細書では、用語「蛍光標識」、「蛍光色素」、および「蛍光体」は、定義された励起波長において光エネルギーを吸収し、異なる波長において光エネルギーを発する部分を意味する。蛍光標識の例としては、Alexa Fluor色素(Alexa Fluor 350、Alexa Fluor 488、Alexa Fluor 532、Alexa Fluor 546、Alexa Fluor 568、Alexa Fluor 594、Alexa Fluor 633、Alexa Fluor 660、およびAlexa Fluor 680)、AMCA、AMCA−S、BODIPY色素(BODIPY FL、BODIPY R6G、BODIPY TMR、BODIPY TR、BODIPY 530/550、BODIPY 558/568、BODIPY 564/570、BODIPY 576/589、BODIPY 581/591、BODIPY 630/650、BODIPY 650/665)、カルボキシローダミン6G、カルボキシ−X−ローダミン(ROX)、カスケードブルー、カスケードイエロー、クマリン343、シアニン色素(Cy3、Cy5、Cy3.5、Cy5.5)、ダンシル、ダポキシル、ジアルキルアミノクマリン、4’,5’−ジクロロ−2’,7’−ジメトキシ−フルオレセイン、DM−NERF、エオシン、エリトロシン、フルオレセイン、FAM、ヒドロキシクマリン、IRDye(IRD40、IRD 700、IRD 800)、JOE、リッサミンローダミンB、マリーナブルー、メトキシクマリン、ナフトフルオレセイン、オレゴングリーン488、オレゴングリーン500、オレゴングリーン514、パシフィックブルー、PyMPO、ピレン、ローダミンB、ローダミン6G、ローダミングリーン、ローダミンレッド、Rhodol Green、2’,4’,5’,7’−テトラ−ブロモスルホン−フルオレセイン、テトラメチル−ローダミン(TMR)、カルボキシテトラメチルローダミン(TAMRA)、テキサスレッド、テキサスレッド−Xが挙げられるが、これらに限定されない。
【0036】
本明細書では、用語「質量タグ」は、質量分析(MS)検出技法を使用して、その質量に基づいて独自に検出可能な任意の部分を意味する。質量タグの例としては、N−[3−[4’−[(p−メトキシテトラフルオロベンジル)オキシ]フェニル]−3−メチルグリセロニル]イソニペコチン酸、4’−[2,3,5,6−テトラフルオロ−4−(ペンタフルオロフェノキシル)]メチルアセトフェノン、およびそれらの誘導体などの電気泳動放出タグが挙げられる。これらの質量タグの合成および有用性は、米国特許第4,650,750号、第4,709,016号、第5,360,8191号、第5,516,931号、第5,602,273号、第5,604,104号、第5,610,020号、および第5,650,270号に記載されている。質量タグの他の例としては、ヌクレオチド、ジデオキシヌクレオチド、様々な長さと塩基組成のオリゴヌクレオチド、オリゴペプチド、オリゴ糖、および様々な長さとモノマー組成の他の合成ポリマーが挙げられるが、これらに限定されない。適切な質量範囲(100〜2000ダルトン)の多種多様な中性有機分子と荷電有機分子(生体分子または合成化合物)も、質量タグとして使用することができる。
【0037】
本明細書では、用語「基材」は、本発明の化合物の官能化末端基が結合することができる任意の材料または高分子複合体を意味する。一般的に使用される基材の例としては、ガラス表面、シリカ表面、プラスチック表面、金属表面、金属コーティングまたは化学コーティングを含む表面、メンブラン(例えば、ナイロン、ポリスルホン、シリカ)、マイクロビーズ(例えば、ラテックス、ポリスチレン、または他のポリマー)、多孔性ポリマーマトリックス(例えば、ポリアクリルアミドゲル、多糖、ポリメタクリラート)、高分子複合体(例えば、タンパク質、多糖)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0038】
別段の記載のない限り、本明細書に示す構造は、構造のすべての異性体(例えば、鏡像異性体、ジアステレオマー、および幾何(または配座)異性体)、例えば各不斉中心に対する立体配置RとS、二重結合異性体(Z)と(E)、および配座異性体(Z)と(E)を包含することも意味する。したがって、本化合物の単一の立体化学異性体、ならびに鏡像異性体、ジアステレオマー、および幾何(または配座)異性体の混合物は、本発明の範囲内である。
【0039】
別段の記載のない限り、本発明の化合物の互変異性体はすべて、本発明の範囲内である。
【0040】
さらに、別段の記載のない限り、本明細書に示す構造は、1つまたは複数の同位体標識原子の存在下でのみ異なる化合物を含むことも意味する。例えば、水素を重水素もしくはトリチウムで置換、または炭素を13C−もしくは14C−標識炭素で置換した点以外は本構造を有する化合物は、本発明の範囲内である。このような化合物は、例えば生物検定の分析ツールまたはプローブとして有用である。
【0041】
3.例示化合物の説明:
上記で全体的に定義するように、式IのG部分は、S、CH2、NR、またはOである。いくつかの実施形態では、式IのG部分はOである。
【0042】
上記で全体的に定義するように、式IのR1およびR2は、各々独立して、ハロゲン、R、OR、適宜保護されたヒドロキシル基、SR、適宜保護されたチオール基、N(R)2、または適宜保護されたアミノ基であるか、あるいはR1とR2は一緒になって、窒素、酸素、または硫黄から独立して選択された0〜2個のヘテロ原子を有する3〜7員の飽和環、部分不飽和環、またはアリール環を形成する。いくつかの実施形態では、式IのR1およびR2は、各々独立して、RまたはORである。他の実施形態では、式IのR1およびR2は、各々独立して、Rであり、ここで、Rは水素または所望により置換されたC1〜6脂肪族基である。本発明の別の態様によれば、式IのR1とR2は一緒になって、窒素、酸素、または硫黄から独立して選択された0〜2個のヘテロ原子を有する3〜6員の飽和環、部分不飽和環、またはアリール環を形成する。本発明のさらに別の態様は、式Iの化合物(式中、R1とR2が一緒になって、3〜6員の飽和炭素環式環を形成する)を提供する。他の実施形態では、式IのR1とR2が一緒になって、シクロプロピル環を形成する。
【0043】
いくつかの実施形態では、式Iのn部分は、0〜1である。他の実施形態では、式Iのn部分は1である。
【0044】
上記で全体的に定義するように、式IのR5基は、R5である、T−C(R’)3、T−C(R’)2C(R”)3、R、OR、適宜保護されたヒドロキシル基、SR、適宜保護されたチオール基、SO2R、OSO2R、N(R)2、適宜保護されたアミノ基、NR(CO)R、NR(CO)(CO)R、NR(CO)N(R)2、NR(CO)OR、(CO)OR、O(CO)R、(CO)N(R)2、またはO(CO)N(R)2であり、ここで、Tは、各々独立して、原子価結合、あるいは所望により置換された直鎖または分枝状の飽和または不飽和のC1〜6アルキリデン鎖であり、Tのメチレン単位は2個まで、−O−、−N(R)−、−S−、−C(O)−、−S(O)−、または−S(O)2−によって所望によりかつ独立に置換されている。いくつかの実施形態では、Tは、各々独立して、原子価結合、あるいは直鎖または分枝状のC1〜4アルキリデン鎖であり、ここで、Tのメチレン単位1個は、−O−、−N(R)−、または−S−で所望により置換されている。他の実施形態では、Tは、各々独立して、原子価結合、あるいは直鎖または分枝状のC1〜4アルキリデン鎖である。さらに別の実施形態では、Tはそれぞれ、原子価結合である。
【0045】
式IのR5基がT−C(R’)3またはT−C(R’)2C(R”)3である場合、R’およびR”は、各々独立して、R、OR、SR、SO2R、OSO2R、N(R)2、NR(CO)R、NR(CO)(CO)R、NR(CO)N(R)2、NR(CO)OR、(CO)OR、O(CO)R、(CO)N(R)2、またはO(CO)N(R)2から選択される。いくつかの実施形態では、R’およびR”は、各々独立して、R、OR、OC(O)R、SR、またはN(R)2である。他の実施形態では、R’およびR”は、各々独立して、R、OR、またはOC(O)Rである。R’基およびR”基の例としては、水素、CH3、OH、およびOC(O)CH3が挙げられる。
【0046】
上記で全体的に定義するように、R5がT−C(R’)3またはT−CH(R’)C(R”)3である場合、R6とR5のR’基とは所望により一緒になって、窒素、酸素、または硫黄から独立して選択された0〜2個のヘテロ原子を有する3〜8員の飽和環、部分不飽和環、またはアリール環を形成する。いくつかの実施形態では、R5は、T−C(R’)3またはT−C(R’)2C(R”)3であり、R6とR5のR’基とは一緒になって、窒素、酸素、または硫黄から独立して選択された1〜2個のヘテロ原子を有する5〜7員の飽和環を形成する。他の実施形態では、R5は、T−C(R’)3またはT−C(R’)2C(R”)3であり、R6とR5のR’基とは一緒になって、1個の酸素原子を有する6員飽和環を形成する。このような化合物は、Tが原子価結合である場合、式IIa(R5がT−C(R’)3の場合)およびIIb(R5がT−C(R’)2C(R”)3の場合):
【0047】
【化6】

[式中、R’、R”、R1、R2、R3、R4、R7、R8、R9、R9’、Q、およびR10はそれぞれ、上記で全体的に定義する通りであり、本明細書の上記で定義するクラスおよび下位クラスと同様である]
を有する。
【0048】
上記で全体的に定義するように、式IのR5基は、とりわけ適宜保護されたヒドロキシル基、適宜保護されたチオール基、または適宜保護されたアミノ基である。ヒドロキシル保護基は、当技術分野でよく知られており、参照によりその全体が本明細書に組み込まれるProtecting Groups in Organic Synthesis,T.W.Greene and P.G.M.Wuts、第3版、John Wiley & Sons,1999に詳述されているものが挙げられる。さらに、式IのR5基の適宜保護されたヒドロキシル基の例としては、エステル、アリルエーテル、エーテル、シリルエーテル、アルキルエーテル、アリールアルキルエーテル、およびアルコキシアルキルエーテルが挙げられるが、これらに限定されない。このようなエステルの例としては、ギ酸エステル、酢酸エステル、炭酸エステル、およびスルホン酸エステルが挙げられる。具体例としては、ギ酸エステル、ベンゾイルギ酸エステル、クロロ酢酸エステル、トリフルオロ酢酸エステル、メトキシ酢酸エステル、トリフェニルメトキシ酢酸エステル、p−クロロフェノキシ酢酸エステル、3−フェニルプロピオン酸エステル、4−オキソペンタン酸エステル、4,4−(エチレンジチオ)ペンタン酸エステル、ピバロエート(トリメチルアセチル)、クロトン酸エステル、4−メトキシ−クロトン酸エステル、安息香酸エステル、p−ベニル安息香酸エステル(benylbenzoate)、2,4,6−トリメチル安息香酸エステル;メチル、9−フルオレニルメチル、エチル、2,2,2−トリクロロエチル、2−(トリメチルシリル)エチル、2−(フェニルスルホニル)エチル、ビニル、アリル、およびp−ニトロベンジルなどの炭酸エステルが挙げられる。このようなシリルエーテルの例としては、トリメチルシリル、トリエチルシリル、t−ブチルジメチルシリル、t−ブチルジフェニルシリル、トリイソプロピルシリル、および他のトリアルキルシリルエーテルが挙げられる。アルキルエーテルとしては、メチル、ベンジル、p−メトキシベンジル、3,4−ジメトキシベンジル、トリチル、t−ブチル、アリル、およびアリルオキシカルボニルエーテル、または誘導体が挙げられる。アルコキシアルキルエーテルとしては、メトキシメチル、メチルチオメチル、(2−メトキシエトキシ)メチル、ベンジルオキシメチル、β−(トリメチルシリル)エトキシメチル、およびテトラヒドロピラニルエーテルなどのアセタールが挙げられる。アリールアルキルエーテルの例としては、ベンジル、p−メトキシベンジル(MPM)、3,4−ジメトキシベンジル、O−ニトロベンジル、p−ニトロベンジル、p−ハロベンジル、2,6−ジクロロベンジル、p−シアノベンジル、2−ピコリル、および4−ピコリルが挙げられる。
【0049】
チオール保護基は、当技術分野でよく知られており、参照によりその全体が本明細書に組み込まれるProtecting Groups in Organic Synthesis,T.W.Greene and P.G.M.Wuts、第3版、John Wiley & Sons,1999に詳述されているものが挙げられる。式IのR5部分の適宜保護されたチオール基としては、ジスルフィド、チオエーテル、シリルチオエーテル、チオエステル、チオカーボナート、チオカーバマートなどが挙げられるが、これらに限定されない。このような基の数例としては、アルキルチオエーテル、ベンジルチオエーテル、置換ベンジルチオエーテル、トリフェニルメチルチオエーテル、トリクロロエトキシカルボニルなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0050】
本発明の別の態様によれば、式IのR5部分は、中性条件下、例えばAgNO3、HgCl2などで除去可能なチオール保護基である。他の中性条件としては、適切な還元剤を使用する還元が挙げられる。適切な還元剤としては、ジチオスレイトール(DTT)、メルカプトエタノール、ジチオナイト、還元グルタチオン、還元グルタレドキシン、還元チオレドキシン、トリスカルボキシエチルホスフィン(TCEP)などの置換ホスフィン、および他の任意のぺプチドもしくは有機ベース還元剤、または当業者に知られている他の試薬が挙げられる。本発明のさらに別の態様によれば、式IのR5部分は、「光開裂可能な」チオール保護基である。このような適切なチオール保護基は、当技術分野で知られており、ニトロベンジル基、テトラヒドロピラニル(THP)基、トリチル基、−CH2SCH3(MTM)、ジメチルメトキシメチル、または−CH2−S−S−ピリジン−2−イルが挙げられるが、これらに限定されない。当業者なら、本明細書に記載する適切なヒドロキシル保護基の多くも、チオール保護基として適切であることを理解されよう。
【0051】
いくつかの実施形態では、式IのR5基は、適宜保護されたアミノ基である。アミノ保護基は、当技術分野でよく知られており、参照によりその全体が本明細書に組み込まれるProtecting Groups in Organic Synthesis,T.W.Greene and P.G.M.Wuts、第3版、John Wiley & Sons,1999に詳述されているものが挙げられる。前記R5部分の適宜保護されたアミノ基としては、さらにアラルキルアミン、カルバマート、環状イミド、アリルアミン、アミドなどが挙げられるが、これらに限定されない。このような基の例としては、t−ブチルオキシカルボニル(BOC)、エチルオキシカルボニル、メチルオキシカルボニル、トリクロロエチルオキシカルボニル、アリルオキシカルボニル(Alloc)、ベンジルオキソカルボニル(CBZ)、アリル、フタルイミド、ベンジル(Bn)、フルオレニルメチルカルボニル(Fmoc)、ホルミル、アセチル、クロロアセチル、ジクロロアセチル、トリクロロアセチル、フェニルアセチル、トリフルオロアセチル、ベンゾイルなどが挙げられる。いくつかの実施形態では、R5部分のアミノ保護基はフタルイミドである。さらに別の実施形態では、R5部分のアミノ保護基は、tert−ブチルオキシカルボニル(BOC)基である。
【0052】
上記で全体的に定義するように、式IのQ基は、原子価結合、あるいは所望により置換された直鎖または分枝状の飽和または不飽和のC1〜4アルキリデン鎖であり、ここで、Qのメチレン単位は2個まで、−O−、−N(R)−、−S−、−C(O)−、−S(O)−、または−S(O)2−によって所望によりかつ独立に置換されている。いくつかの実施形態では、Qは、所望により置換された直鎖または分枝状の飽和または不飽和のC1〜2アルキリデン鎖であり、ここで、Qのメチレン単位は1個まで、−O−、−N(R)−、または−S−によって所望により置換されている。他の実施形態では、Qは−O−である。
【0053】
上記で全体的に定義するように、式IのR10基は、R、適宜保護されたヒドロキシル基、適宜保護されたチオール基、適宜保護されたアミノ基、所望により置換された、窒素、酸素、または硫黄から独立して選択された0〜4個のヘテロ原子を有する3〜8員の飽和単環式環、部分不飽和単環式環、またはアリール単環式環、所望により置換された、窒素、酸素、または硫黄から独立して選択された0〜4個のヘテロ原子を有する8〜10員の飽和二環式環、部分不飽和二環式環、またはアリール二環式環、検出可能な部分、ポリマー残基、ペプチド、あるいは糖含有基または糖様基である。
【0054】
いくつかの実施形態では、式IのR10基は、糖含有基である。このような糖含有基は当業者に周知であり、「Essentials of Glycobiology」、Varki,A.ら編、Cold Spring Harbor Laboratory Press.Cold Spring Harbor,N.Y.2002に詳述されているものが挙げられる。いくつかの実施形態では、式IのR10基は、配糖体である。R10基の例としては、アラビノピラノシドおよびキシロピラノシドが挙げられる。いくつかの実施形態では、式IのR10基はキシロピラノシドである。いくつかの実施形態では、式IのR10基はアラビノピラノシドである。さらに別の実施形態では、式IのR10基は
【0055】
【化7】

である。別の実施形態によれば、式IのR10基は
【0056】
【化8】

である。さらに別の実施形態は、式Iの化合物(式中、R10は
【0057】
【化9】

である)を提供する。
【0058】
本発明の別の態様によれば、式IのR10基は、擬似糖である。このような擬似糖は当業者に周知であり、「Essentials of Glycobiology」に詳述されているものが挙げられる。例えば、本発明によって考えられる擬似糖基としては、シクリトールなどが挙げられる。いくつかの実施形態では、R10はシクリトール部分であり、前記シクリトールは、IUPAC規約で定義されるように3個以上の各環原子上にヒドロキシル基を1個含むシクロアルカンである。他の実施形態では、このようなシクリトール部分としては、シロイノシトールなどのイノシトールが挙げられる。
【0059】
さらに、式IのR10基の適切な糖様部分としては、非環式の糖基が挙げられる。このような基の数例としては、線状のアルキトールおよびエリトリトールなどが挙げられる。糖基は、環状または非環式の形で存在できることを理解されたい。したがって、糖基の非環式の形は、本発明によって式IのR10基の適切な糖様部分として考えられる。
【0060】
いくつかの実施形態では、式IのR10基は検出可能な部分である。他の実施形態では、式IのR10基は、本明細書の上記に定義するように蛍光標識、蛍光色素、または蛍光体である。
【0061】
本発明の別の態様によれば、式IのR10基はポリマー残基である。ポリマー残基は、当技術分野でよく知られており、「Chemistry of Protein Conjugation and Cross−Linking」、Shan S.Wong,CRC Press.Boca Raton,Florida.1991に詳述されるものが挙げられる。式IのR10基の適切なポリマー残基としては、PEGなどのポリ(アルキレンオキシド)、ポリ(アミノ酸)、および本発明の化合物とコンジュゲートすることができる他のポリマー残基が挙げられる。
【0062】
上記で全体的に定義するように、式IのR10基は、とりわけ、適宜保護されたヒドロキシル基、適宜保護されたチオール基、または適宜保護されたアミノ基である。ヒドロキシル保護基は、当技術分野でよく知られており、参照によりその全体が本明細書に組み込まれるProtecting Groups in Organic Synthesis,T.W.Greene and P.G.M.Wuts、第3版、John Wiley & Sons,1999に詳述されているものが挙げられる。式IのR10基の適切なヒドロキシル保護基の例としては、さらにエステル、アリルエーテル、エーテル、シリルエーテル、アルキルエーテル、アリールアルキルエーテル、およびアルコキシアルキルエーテルが挙げられるが、これらに限定されない。このようなエステルの例としては、ギ酸エステル、酢酸エステル、炭酸エステル、およびスルホン酸エステルが挙げられる。具体的例としては、ギ酸エステル、ベンゾイルギ酸エステル、クロロ酢酸エステル、トリフルオロ酢酸エステル、メトキシ酢酸エステル、トリフェニルメトキシ酢酸エステル、p−クロロフェノキシ酢酸エステル、3−フェニルプロピオン酸エステル、4−オキソペンタン酸エステル、4,4−(エチレンジチオ)ペンタン酸エステル、ピバロエート(トリメチルアセチル)、クロトン酸エステル、4−メトキシ−クロトン酸エステル、安息香酸エステル、p−ベニル安息香酸エステル(benylbenzoate)、2,4,6−トリメチル安息香酸エステル;メチル、9−フルオレニルメチル、エチル、2,2,2−トリクロロエチル、2−(トリメチルシリル)エチル、2−(フェニルスルホニル)エチル、ビニル、アリル、およびp−ニトロベンジルなどの炭酸エステルが挙げられる。このようなシリルエーテルの例としては、トリメチルシリル、トリエチルシリル、t−ブチルジメチルシリル、t−ブチルジフェニルシリル、トリイソプロピルシリル、および他のトリアルキルシリルエーテルが挙げられる。アルキルエーテルとしては、メチル、ベンジル、p−メトキシベンジル、3,4−ジメトキシベンジル、トリチル、t−ブチル、アリル、およびアリルオキシカルボニルエーテル、または誘導体が挙げられる。アルコキシアルキルエーテルとしては、メトキシメチル、メチルチオメチル、(2−メトキシエトキシ)メチル、ベンジルオキシメチル、β−(トリメチルシリル)エトキシメチル、およびテトラヒドロピラニルエーテルなどのアセタールが挙げられる。アリールアルキルエーテルの例としては、ベンジル、p−メトキシベンジル(MPM)、3,4−ジメトキシベンジル、O−ニトロベンジル、p−ニトロベンジル、p−ハロベンジル、2,6−ジクロロベンジル、p−シアノベンジル、2−ピコリル、および4−ピコリルが挙げられる。
【0063】
チオール保護基は、当技術分野でよく知られており、参照によりその全体が本明細書に組み込まれるProtecting Groups in Organic Synthesis,T.W.Greene and P.G.M.Wuts、第3版、John Wiley & Sons,1999に詳述されているものが挙げられる。式IのR10部分の適切なチオール保護基としては、ジスルフィド、チオエーテル、シリルチオエーテル、チオエステル、チオカーボナート、チオカーバマートなどが挙げられるが、これらに限定されない。このような基の数例としては、アルキルチオエーテル、ベンジルチオエーテル、置換ベンジルチオエーテル、トリフェニルメチルチオエーテル、トリクロロエトキシカルボニルなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0064】
本発明の別の態様によれば、式IのR10部分は、中性条件下、例えばAgNO3、HgCl2などで除去可能なチオール保護基である。他の中性条件としては、適切な還元剤を使用する還元が挙げられる。適切な還元剤としては、ジチオスレイトール(DTT)、メルカプトエタノール、ジチオナイト、還元グルタチオン、還元グルタレドキシン、還元チオレドキシン、トリスカルボキシエチルホスフィン(TCEP)などの置換ホスフィン、および他の任意のペプチドもしくは有機ベースの還元剤、または当業者に知られている他の試薬が挙げられる。本発明のさらに別の態様によれば、式IのR10部分は、「光開裂可能な」チオール保護基である。このような適切なチオール保護基は、当技術分野で知られており、ニトロベンジル基、テトラヒドロピラニル(THP)基、トリチル基、−CH2SCH3(MTM)、ジメチルメトキシメチル、または−CH2−S−S−ピリジン−2−イルが挙げられるが、これらに限定されない。当業者なら、本明細書に記載する適切なヒドロキシル保護基の多くも、チオール保護基として適切であることを理解されよう。
【0065】
いくつかの実施形態では、式IのR10基は、適宜保護されたアミノ基である。アミノ保護基は、当技術分野でよく知られており、参照によりその全体が本明細書に組み込まれるProtecting Groups in Organic Synthesis,T.W.Greene and P.G.M.Wuts、第3版、John Wiley & Sons,1999に詳述されているものが挙げられる。前記R10部分の適切なアミノ保護基としては、さらにアラルキルアミン、カルバマート、環状イミド、アリルアミン、アミドなどが挙げられるが、これらに限定されない。このような基の例としては、t−ブチルオキシカルボニル(BOC)、エチルオキシカルボニル、メチルオキシカルボニル、トリクロロエチルオキシカルボニル、アリルオキシカルボニル(Alloc)、ベンジルオキソカルボニル(CBZ)、アリル、フタルイミド、ベンジル(Bn)、フルオレニルメチルカルボニル(Fmoc)、ホルミル、アセチル、クロロアセチル、ジクロロアセチル、トリクロロアセチル、フェニルアセチル、トリフルオロアセチル、ベンゾイルなどが挙げられる。いくつかの実施形態では、R10部分のアミノ保護基はフタルイミドである。さらに別の実施形態では、R10部分のアミノ保護基は、tert−ブチルオキシカルボニル(BOC)基である。
【0066】
いくつかの実施形態では、本発明は、式Iの化合物であって、下記:
【0067】
【化10】

の任意の1つ、2つ、または3つ全部、およびそれらの各立体異性体以外の化合物を提供する。
【0068】
上記で全体的に記載されるように、本発明は、式Iの化合物:
【0069】
【化11】

またはその医薬上許容される塩(式中、各変数は、上記で定義され、本明細書の上記で定義するクラスおよび下位クラスで定義される)を提供する。いくつかの実施形態では、本発明は、式I−aで示される立体化学を有する式Iの化合物:
【0070】
【化12】

またはその医薬上許容される塩(式中、各変数は、上記で定義され、式Iの化合物に関して本明細書で定義するクラスおよび下位クラスで定義される)を提供する。
【0071】
いくつかの実施形態では、式IのR1基とR2基は一緒になって、窒素、酸素、または硫黄から独立して選択された0〜2個のヘテロ原子を有する3〜7員の飽和環、部分不飽和環、またはアリール環を形成する。他の実施形態では、式IのR1基とR2基は一緒になって、窒素、酸素、または硫黄から独立して選択された0〜2個のヘテロ原子を有する3〜6員の飽和環を形成する。さらに別の実施形態では、式IのR1基とR2基は一緒になって、3〜6員の飽和炭素環式環を形成する。本発明のさらに別の態様によれば、式I−bの化合物:
【0072】
【化13】

またはその医薬上許容される塩(式中、各変数は、上記で定義され、式Iの化合物に関して本明細書の上記で定義するクラスおよび下位クラスで定義される)が提供される。他の実施形態では、本発明は、式I−cの化合物:
【0073】
【化14】

またはその医薬上許容される塩(式中、各変数は、上記で定義され、式Iの化合物に関して本明細書の上記で定義するクラスおよび下位クラスで定義される)を提供する。
【0074】
上記で全体的に定義するように、環A、環B、環C、環D、および環Eは、各々独立して、飽和、部分不飽和、または芳香族である。いくつかの実施形態では、環Bは不飽和であり、R1およびR2は存在せず、したがって式IIの化合物:
【0075】
【化15】

またはその医薬上許容される塩(式中、各変数は、上記で定義され、式Iの化合物に関して本明細書の上記で定義するクラスおよび下位クラスで定義される)を形成する。
【0076】
いくつかの実施形態では、式IIのn基は0〜1であり、式IIのG基は酸素である。
【0077】
別の態様によれば、本発明は、式II−aの化合物:
【0078】
【化16】

またはその医薬上許容される塩(式中、各変数は、上記で定義され、式Iの化合物に関して本明細書の上記で定義するクラスおよび下位クラスで定義される)を提供する。
【0079】
いくつかの実施形態では、式II−aのn基は0〜1であり、式II−aのG基は酸素である。
【0080】
他の実施形態では、環Bと環Dは両方とも不飽和であり、R1、R2、およびR6は存在せず、したがって式IIIの化合物I:
【0081】
【化17】

またはその医薬上許容される塩(式中、各変数は、上記で定義され、式Iの化合物に関して本明細書の上記で定義するクラスおよび下位クラスで定義される)を形成する。
【0082】
いくつかの実施形態では、式IIIのn基は0〜1であり、式IIIのG基は酸素である。
【0083】
別の実施形態によれば、本発明は、式IVの化合物:
【0084】
【化18】

またはその医薬上許容される塩(式中、各変数は、上記で定義され、式Iの化合物に関して本明細書の上記で定義するクラスおよび下位クラスで定義される)を提供する。本明細書では、
【0085】
【化19】

は単結合または二重結合を示す。
【0086】
【化20】

が二重結合を示す場合、R6は存在しないことを当業者は理解されよう。一方、
【0087】
【化21】

が単結合を示す場合、R6は存在する。したがって、いくつかの実施形態では、
【0088】
【化22】

は二重結合を示し、R6は存在しない。他の実施形態では、
【0089】
【化23】

は単結合を示し、R6は上記に定義する通りである。
【0090】
別の態様によれば、本発明は、式IV−aの化合物:
【0091】
【化24】

またはその医薬上許容される塩(式中、各変数は、上記で定義され、式Iの化合物に関して本明細書の上記で定義するクラスおよび下位クラスで定義される)を提供する。
【0092】
いくつかの実施形態では、式IV−aのG基は酸素である。他の実施形態では、式IV−aのR4基は、R、OR、または適宜保護されたヒドロキシル基である。さらに別の実施形態では、式IV−aのR4基はRである。
【0093】
本発明のさらに別の態様は、式IV−bの化合物:
【0094】
【化25】

またはその医薬上許容される塩(式中、各変数は、上記で定義され、式Iの化合物に関して本明細書の上記で定義するクラスおよび下位クラスで定義される)に関する。
【0095】
いくつかの実施形態では、式IV−bのR1とR2基は一緒になって、窒素、酸素、または硫黄から独立して選択された0〜2個のヘテロ原子を有する3〜7員の飽和環、部分不飽和環、またはアリール環を形成する。他の実施形態では、式IV−bのR1とR2基は一緒になって、窒素、酸素、または硫黄から独立して選択された0〜2個のヘテロ原子を有する3〜6員の飽和環を形成する。さらに別の実施形態では、式IV−bのR1とR2基は一緒になって、3〜6員の飽和炭素環式環を形成する。本発明のさらに別の態様によれば、式IV−cの化合物:
【0096】
【化26】

またはその医薬上許容される塩(式中、各変数は、上記で定義され、式Iの化合物に関して本明細書の上記で定義するクラスおよび下位クラスで定義される)が提供される。
【0097】
いくつかの実施形態では、式IV−cのR7基は−OHである。
【0098】
本発明のさらに別の態様によれば、式IV−dの化合物:
【0099】
【化27】

またはその医薬上許容される塩(式中、各変数は、上記で定義され、式Iの化合物に関して本明細書の上記で定義するクラスおよび下位クラスで定義される)が提供される。
【0100】
いくつかの実施形態では、式IV−dのR7基は−OHである。
【0101】
本発明の化合物例を下記の表1に示す。
表1.式Iの化合物例
【0102】
【化28−1】

【化28−2】

【0103】
式IVaの化合物例を下記の表2に示す。
【0104】
【化29】

【0105】
4.本化合物を提供する一般方法:
本発明の化合物は、一般に、類似化合物に関して当業者に知られている合成および/または半合成の方法、ならびに下記の実施例で詳述する方法で調製または単離することができる。
活性成分の単離
【0106】
ブラックコホッシュ根(別名シミシフーガ・ラセモサ(cimicifuga racemosa)またはアクタエア・ラセモサ(actaea racemosa))から、いくつかの本発明の化合物を単離し、これらの化合物の構造を明らかにした。ブラックコホッシュ根抽出物、粉末、およびカプセルが、閉経期および婦人科の様々な障害の治療用に市販されている。しかし、意外にも、ブラックコホッシュ根中に存在するいくつかの化合物は、アミロイドβペプチド産生を調節および/または阻害する上で有用であることが見い出された。具体的には、ブラックコホッシュ根からいくつかの化合物を単離し、同定した。これらの化合物は、アミロイドβペプチド産生、特にアミロイドβペプチド(1−42)を調節および/または阻害する上で有用である。このような化合物は、式Iに包含される。これらの化合物は、根中に一般的に見られる他の化合物を実質的に含まない形で単離され、利用され得る。あるいは、抽出物は根から調製することができ、前記抽出物は本発明の化合物中に濃縮されている。
【0107】
本明細書の上記に記載するように、いくつかの本発明の化合物を、培養または野生のブラックコホッシュ根および根茎の標準的抽出物から単離する。本化合物を、培養中に成長した植物根組織または培養植物組織の培地からも単離できることも考えられる。培養中の植物根組織を成長させるこのような方法は、当業者に周知であり、参照によりその全体が本明細書に組み込まれるHairy Roots,Culture and Applications、Pauline M.Doran,published by Harwood Academic Publishers,Amsterdam,The Netherlands.Copyright 1997 OPA (Overseas Publishers Association)Amsterdam B.V.ISBN 90−5702−117−Xに記載されるものが挙げられる。
【0108】
あるいは、本発明の化合物は、ブラックコホッシュおよび関連するシミシフーガ種の根および根茎からであろうと、または地上部からであろうと、これらの植物の抽出物中に見られる他の化合物を出発材料とする半合成方法で調製することができる。これは、単離された化合物、または抽出物フラクション、または化合物の混合物の化学的または生物的な形質転換によって実現することができる。化学的な形質転換は、温度、pH、および/または様々な溶媒での処理の操作によって実現することができるが、これらに限定されない。生物的な形質転換は、単離された化合物、または抽出物フラクション、または化合物の混合物を植物組織、植物組織抽出物、他の微生物有機体、または任意の有機体から単離された酵素で処理することによって実現することができるが、これらに限定されない。
【0109】
いくつかの実施形態では、本発明は、少なくとも10重量%の本発明の化合物を含むブラックコホッシュ根の抽出物を提供する。他の実施形態では、本発明は、約10重量%〜約50重量%の本発明の化合物を含むブラックコホッシュ根の抽出物を提供する。さらに別の実施形態では、本発明は、約10重量%〜約50重量%の本発明の化合物を含み、アクテインを実質的に含まないブラックコホッシュ根の抽出物を提供する。
【0110】
別の実施形態によれば、本発明は、ブラックコホッシュ根に見られる他の化合物を実質的に含まない式Iの化合物を提供する。本明細書では、用語「実質的に含まない」は、化合物は、ブラックコホッシュ根またはその抽出物に見られる化合物に比べて有意に高い比率の式Iの化合物で構成されていることを意味する。いくつかの実施形態では、本発明は、約1重量パーセント〜約99重量パーセントの量の式Iの化合物を提供する。いくつかの実施形態では、式Iの化合物は、約80%より高い化学的純度で提供される。他の実施形態では、式Iの化合物は、約90%より高い化学的純度で提供される。他の実施形態では、式Iの化合物は、HPLCクロマトグラムの全面積に対して、約10.0面積パーセントHPLC以下のブラックコホッシュ根の他の成分を含有する。他の実施形態では、式Iの化合物は、HPLCクロマトグラムの全面積に対して、約8.0面積パーセントHPLC以下、さらに別の実施形態では約3面積パーセント以下のブラックコホッシュ根の他の成分を含有する。
【0111】
下記に記載するように、本発明の化合物がブラックコホッシュ根中に通常は見られる他の化合物を実質的に含まない形であるかどうかを決定する方法は、当業者に知られている。ブラックコホッシュ根から以前に単離、同定された化合物としては、アクテオール、アセチルアクテオール、26−デオキシアクテオール、シミゲノール、アクテイン、26−デオキシアクテイン、およびシミシフゴシドを含めて、いくつかのシクロアルタノール系トリテルペンが挙げられる。(E)−イソフェルラ酸およびイソフラボンであるホルモノネチンも単離され、同定された。これらの化合物の代表例は、下記の構造:
【0112】
【化30】

を有する。
【0113】
したがって、本発明の別の実施形態は、アクテオール、アセチルアクテオール、26−デオキシアクテオール、シミゲノール、アクテイン、26−デオキシアクテイン、およびシミシフゴシドの1つまたは複数を実質的に含まない式Iの化合物を提供する。いくつかの実施形態では、本発明は、アクテオール、アセチルアクテオール、26−デオキシアクテオール、シミゲノール、アクテイン、26−デオキシアクテイン、およびシミシフゴシドを実質的に含まない式Iの化合物を提供する。
【0114】
別の実施形態によれば、本発明は、アクテオール、アセチルアクテオール、26−デオキシアクテオール、シミゲノール、アクテイン、26−デオキシアクテイン、およびシミシフゴシドの1つまたは複数の量を減少させた、式Iの化合物中に濃縮されたブラックコホッシュ根の抽出物を提供する。さらに別の実施形態によれば、本発明は、アクテオール、アセチルアクテオール、26−デオキシアクテオール、シミゲノール、アクテイン、26−デオキシアクテイン、およびシミシフゴシドのそれぞれの量を減少させた、式Iの化合物中に濃縮されたブラックコホッシュ根の抽出物を提供する。
【0115】
ブラックコホッシュ根の個々の活性成分を抽出、単離、および/または精製するための様々な技法が、当技術分野でよく知られている。本発明は、本明細書に記載するような活性成分を同定することも、このような成分を本明細書に記載する本発明の組成物に組み込むことも包含する。
【0116】
ブラックコホッシュ抽出物の個々の活性成分は、本明細書に記載するように同定することができ、当技術分野で知られている任意の技法を使用して単離および/または精製することができる。活性成分は、任意の形の根自体、またはとりわけ本発明の抽出物の混合物もしくは市販の抽出物の滲出液からから精製することができる。精製で使用することができる様々な技法としては、濾過、選択的沈殿、有機溶媒による抽出、水性溶媒による抽出、カラムクロマトグラフィー(シリカゲル)、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)、および当業者に知られている他の方法が挙げられる。
【0117】
いくつかの実施形態によれば、本抽出物は、ブラックコホッシュ根の単離フラクションを使用するものである。単離フラクションは、根自体から、例えばクロマトグラフィーによる手段、蒸留、沈殿、抽出、濾過、または他の方式で取り出された、副次的な量の根物質を意味する。他の実施形態では、根抽出物およびフラクションをクロマトグラフィー、蒸留、沈殿、または抽出によってそれから取り出す。このような抽出および単離の技法は当業者に周知である。これらの技法のいくつかの詳細は、下記の実施例のセクションに記載されている。
【0118】
本発明の他の実施形態によれば、活性な化合物の存在および純度は、数件名を挙げれば、核磁気分光法(NMR)、質量分光法、赤外分光法(IR)、紫外可視分光法、元素分析法、および旋光分析法、屈折計法などを含めて、化学的方法によって評価する。このような分析方法は当業者に知られている。他の実施形態では、ブラックコホッシュ根から単離された活性な化合物の化学構造を、数件名を挙げれば、NMR、質量分光法、赤外分光法(IR)、紫外可視分光法、元素分析法、旋光分析法、屈折計法、およびX線結晶構造解析法などを含めて、当業者に知られている方法で決定する。
【0119】
いくつかの例示的実施形態を、本明細書の上記に記載するが、当業者が一般に利用可能な方法によって適切な出発材料を使用して、一般に上記で全体的に記載される方法に従って、本発明の根抽出物を調製できることを理解されたい。
【0120】
5.使用、製剤、および投与
医薬上許容される組成物
本発明の別の態様によれば、本明細書に記載する化合物のいずれかを含み、医薬上許容される担体、アジュバント、またはビヒクルを所望により含む医薬上許容される組成物が提供される。いくつかの実施形態では、これらの組成物は、さらに1つまたは複数の追加の治療剤を所望により含む。
【0121】
本発明の化合物のいくつかは、治療のため遊離の形で、または適切な場合にその医薬上許容される塩として存在できることも理解されよう。
【0122】
本明細書では、用語「医薬上許容される塩」は、良好な医学的判断の範囲内で、過度の毒性、刺激、アレルギー応答などがなくヒトおよび下等動物の組織と接触させて使用するのに適しており、適切な利益/危険比に相応するそれらの塩を意味する。「医薬上許容される塩」は、レシピエントに投与すると、直接的または間接的に本発明の化合物、または医薬として活性なその代謝物もしくは残基になることができる本発明の化合物の非毒性の任意の塩またはエステルの塩を意味する。本明細書では、用語「医薬として活性なその代謝物または残基」はその代謝物または残基も本発明による医薬として活性な化合物であることを意味する。
【0123】
医薬上許容される塩は、当技術分野でよく知られている。例えば、S.M.Bergeらは、参照により本明細書に組み込まれるJ.Pharmaceutical Sciences,1977,66,1−19に医薬上許容される塩を詳述する。本発明の化合物の医薬上許容される塩としては、適切な無機酸、有機酸、および塩基に由来するものが挙げられる。医薬上許容される無毒性の酸付加塩の例は、塩酸、臭化水素酸、リン酸、硫酸、および過塩素酸などの無機酸、または酢酸、シュウ酸、マレイン酸、酒石酸、クエン酸、コハク酸、もしくはマロン酸などの有機酸を用いて、あるいはイオン交換など当技術分野で使用される他の方法を使用することによって形成された、アミノ基の塩である。他の医薬上許容される塩としては、アジピン酸塩、アルギン酸塩、アスコルビン酸塩、アスパラギン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、安息香酸塩、重硫酸塩、ホウ酸塩、酪酸塩、ショウノウ酸塩、カンファースルホン酸塩、クエン酸塩、シクロペンタンプロピオン酸塩、ジグルコン酸塩、ドデシル硫酸塩、エタンスルホン酸塩、ギ酸塩、フマル酸塩、グルコヘプトン酸塩、グリセロリン酸塩、グルコン酸塩、ヘミ硫酸塩、ヘプタン酸塩、ヘキサン酸塩、ヨウ化水素酸塩、2−ヒドロキシ−エタンスルホン酸塩、ラクトビオン酸塩、乳酸塩、ラウリン酸塩、ラウリル硫酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、マロン酸塩、メタンスルホン酸塩、2−ナフタレンスルホン酸塩、ニコチン酸、硝酸塩、オレイン酸塩、シュウ酸塩、パルミチン酸塩、パモ酸塩、ペクチン酸塩、過硫酸塩、3−フェニルプロピオン酸塩、リン酸塩、ピクリン酸塩、ピバル酸塩、プロピオン酸塩、ステアリン酸塩、コハク酸塩、硫酸塩、酒石酸塩、チオシアン酸塩、p−トルエンスルホン酸塩、ウンデカン酸塩、吉草酸塩などが挙げられる。適切な塩基に由来する塩としては、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、およびN+(C1〜4アルキル)4塩が挙げられる。本発明は、本明細書に開示する化合物の任意の塩基性窒素含有基を四級化することも考慮する。このような四級化によって、水溶性、油溶性、または分散性の生成物を得ることができる。代表的なアルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩としては、ナトリウム、リチウム、カリウム、カルシウム、マグネシウムなどが挙げられる。さらに医薬上許容される塩としては、適切な場合には、ハライド、ヒドロキシド、カルボキシラート、スルファート、ホスファート、ニトラート、低級アルキルスルホナート、およびアリールスルホナートなどの対イオンを使用して形成された無毒性のアンモニウム、第四級アンモニウム、およびアミンカチオンが挙げられる。
【0124】
本発明の組成物は、さらに、医薬上許容される担体、アジュバント、またはビヒクルを含むことができ、本明細書では、所望の特定剤形に適したすべての溶媒、希釈剤、または他の液体ビヒクル、分散もしくは懸濁助剤、界面活性剤、等張剤、粘稠化もしくは乳化剤、防腐剤、固形結合剤、滑沢剤などが挙げられる。Remington’s Pharmaceutical Sciences、第16版、E.W.Martin (Mack Publishing Co.,Easton,Pa.,1980)は、医薬上許容される組成物を製剤する上で使用される様々な担体、およびその周知の調製技法を開示する。任意の従来の担体媒体は、任意の望ましくない生物的効果を生じること、またはその他の方法で、医薬上許容される組成物の他の任意の成分と有害に相互作用することなどによって本発明の化合物と適合しない場合を除いて、その使用は、本発明の範囲内であると考えられる。医薬上許容される担体として働くことができる材料のいくつかの例としては、イオン交換体、アルミナ、ステアリン酸アルミニウム、レシチン、ヒト血清アルブミンなどの血清タンパク質、ホスファートなどの緩衝剤物質、グリシン、ソルビン酸もしくはソルビン酸カリウム、飽和植物脂肪酸の部分グリセリド混合物、水、硫酸プロタミン、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素カリウム、塩化ナトリウム、亜鉛塩などの塩または電解質、コロイダルシリカ、三ケイ酸マグネシウム、ポリビニルピロリドン、ポリアクリラート、ワックス、ポリエチレン−ポリオキシプロピレン−ブロックポリマー、羊毛脂、ラクトース、グルコース、およびスクロースなどの糖;トウモロコシデンプンやジャガイモデンプンなどのデンプン;カルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロース、および酢酸セルロースなどのセルロースおよびその誘導体;トラガカント末;麦芽;ゼラチン;タルク;カカオ脂や坐剤ワックスなどの賦形剤;落花生油、綿実油;サフラワー油;ゴマ油;オリーブ油;トウモロコシ油、および大豆油などの油;プロピレングリコールまたはポリエチレングリコールなどのグリコール;オレイン酸エチルやラウリン酸エチルなどのエステル;寒天;水酸化マグネシウムや水酸化アルミニウムなどの緩衝剤;アルギン酸;発熱物質を含まない水;等張性生理食塩水;リンゲル液;エチルアルコール、リン酸緩衝溶液が挙げられるが、これらに限定されず、ラウリル硫酸ナトリウムやステアリン酸マグネシウムなど他の非毒性の相溶性滑沢剤、ならびに着色剤、放出剤、コーティング剤、甘味剤、矯味剤、芳香剤、防腐剤、および酸化防止剤も、製剤者の判断に従って、組成物中に存在することができる。
【0125】
本発明によって提供される組成物は、併用療法で使用することができる。すなわち、本組成物を、1つまたは複数の他の所望の治療剤または医療手順と同時に、それより先に、またはその後に投与することができる。併用レジメンで使用する治療法(治療剤または手順)の特定の組合せは、所望の治療剤および/または手順の適合性、ならびに実現されるべき所望の治療効果を考慮に入れる。使用する療法は、同じ障害に対して所望の効果(例えば、本明細書に記載する化合物を、同じ障害を治療するために使用する別の治療剤と同時に投与することができる)を実現でき、または異なる効果(例えば、任意の副作用の制御)を実現できることも理解されよう。
【0126】
例えば、周知の有用な神経変性障害治療剤を、本発明の組成物と組み合わせて、アルツハイマー病などの神経変性障害を治療することができる。このような周知の有用な神経変性障害治療剤の例としては、ドネペジル、メマンチン(およびNMDA阻害剤のような関連化合物)、エクセロン(Exelon)(登録商標)を含めて、アセチルコリンエステラーゼ阻害剤などのアルツハイマー病治療剤;L−DOPA/カルビドパ、エンタカポン、ロピンロール、プラミペキソール、ブロモクリプチン、ペルゴリド、トリヘキセフェンジル、およびアマンタジンなどのパーキンソン病治療剤;βインターフェロン(例えば、Avonex(登録商標)およびRebif(登録商標))、Copaxone(登録商標)、およびミトキサントロンなどの多発性硬化症(MS)治療剤;リルゾール、ならびに抗パーキンソン剤が挙げられるが、これらに限定されない。神経変性障害を治療するのに有用な最新療法のより包括的な考察については、参照によりその内容全体が本明細書に組み込まれるhttp://www.fda.govのFDA承認薬リスト、およびMerck Manual、第17版、1999を参照のこと。
【0127】
他の実施形態では、本発明の化合物を、アルツハイマー病などの神経変性障害の有用な他の治療剤と組み合わせる。このような治療剤としては、β−セクレターゼ阻害剤、γ−セクレターゼ阻害剤、凝集阻害剤、金属キレート剤、酸化防止剤、および神経保護薬が挙げられる。
【0128】
本明細書では、用語「組合せ」、「組み合わせた」、および関連用語は、本発明による治療剤の同時投与または連続投与を意味する。例えば、本発明の化合物と別の治療剤を、別々の単位投与剤形でまたは一緒に単回投与剤形で同時投与または連続投与することができる。したがって、本発明は、式Iの化合物、追加の治療剤、および医薬上許容される担体、アジュバント、またはビヒクルを含む単回投与剤形を提供する。
【0129】
本発明の阻害剤と組み合わせることもできる治療剤の他の例としては、アルブテロールやSingulair(登録商標)などの喘息治療剤;ジプレキサ、リスパダール、セロクエル、およびハロペリドールなどの統合失調症治療剤;コルチコステロイド、TNF遮断薬、IL−1 RA、アザチオプリン、シクロホスファミド、およびスルファサラジンなどの抗炎症剤;シクロスポリン、タクロリムス、ラパマイシン、ミコフェノール酸モフェチル、インターフェロン、コルチコステロイド、シクロホスファミド、アザチオプリン、およびスルファサラジンなどの免疫調節剤および免疫抑制剤;アセチルコリンエステラーゼ阻害剤、MAO阻害剤、インターフェロン、抗痙攣薬、イオンチャンネル遮断薬などの神経栄養因子;β遮断薬、ACE阻害剤、利尿剤、ニトラート、カルシウムチャネル阻害薬、およびスタチンなどの心血管疾患治療剤;コルチコステロイド、コレスチラミン、インターフェロン、および抗ウイルス剤などの肝疾患治療剤;コルチコステロイド、抗白血病薬、および増殖因子などの血液障害治療剤;ならびにγ−グロブリンなどの免疫不全障害治療剤が挙げられるが、これらに限定されない。
【0130】
本発明の組成物に存在する追加の治療剤の量は、その治療剤を唯一の活性剤として含む組成物として通常投与するはずの量以下である。いくつかの実施形態では、唯一の治療活性剤としてその治療薬を含有する本組成物中の追加の治療剤の量は、組成物中に通常存在する量の約50%〜100%の範囲である。
【0131】
代替の実施形態では、追加の治療剤を含有しない組成物を利用する本発明の方法は、前記患者に追加の治療剤を別々に投与する追加の工程を含む。これらの追加の治療剤を別々に投与する場合、本発明の組成物の投与の前、それと連続的に、またはその後に患者に投与することができる。
【0132】
本発明の医薬上許容される組成物を、ヒトおよび他の動物に、治療対象の障害の重篤度に応じて、経口投与、直腸投与、非経口投与、大槽内投与、腟内投与、腹腔内投与、局所投与(粉剤、軟膏剤、または滴剤などによる)、口腔内投与、経口噴霧剤または経鼻噴霧剤などとして投与することができる。いくつかの実施形態では、被検者の体重/日、1回または複数回/日の用量レベルとして、約0.01mg/kg〜約50mg/kg、好ましくは約1mg/kg〜約25mg/kgの本発明の化合物を経口投与または非経口投与して、所望の治療効果を得ることができる。
【0133】
経口投与用の液体剤形としては、医薬上許容される乳剤、マイクロエマルジョン、液剤、懸濁剤、シロップ剤、およびエリキシル剤が挙げられるが、これらに限定されない。活性な化合物に加えて、液体剤形は、一般的に当技術分野で使用される不活性な希釈剤、例えば水または他の溶媒、可溶化剤、および乳化剤など(エチルアルコール、イソプロピルアルコール、炭酸エチル、酢酸エチル、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ジメチルホルムアミド、油(具体的には、綿実油、落花生油、トウモロコシ油、胚油、オリーブ油、ヒマシ油、およびゴマ油)、グリセロール、テトラヒドロフルフリルアルコール、ポリエチレングリコール、およびソルビタンの脂肪酸エステル、ならびにそれらの混合物など)を含有することができる。不活性な希釈剤に加えて、経口組成物は、湿潤剤、乳化剤、懸濁化剤、甘味剤、矯味剤、および芳香剤などのアジュバントも含むことができる。
【0134】
注射製剤、例えば無菌の水性または油性懸濁注射剤は、知られている技術に従って、適切な分散剤または湿潤剤、および懸濁化剤を使用して製剤することができる。無菌の注射製剤は、非経口的に許容できる無毒性希釈剤もしくは溶媒中の無菌注射液剤、懸濁剤、または乳剤、例えば1,3−ブタンジオール溶液とすることもできる。使用することができる許容できるビヒクルおよび溶媒の中で、水、リンゲル液、U.S.P.、および等張食塩水が有用である。さらに、無菌の不揮発性油を、通常溶媒または懸濁媒体として使用する。この目的には、合成のモノグリセリドまたはジグリセリドを含めて、任意の無菌不揮発性油を使用することができる。さらに、オレイン酸などの脂肪酸を注射液の調製で使用する。
【0135】
この注射製剤を、例えば細菌保持フィルターを用いて濾過すること、または使用前に無菌の水もしくは他の無菌の注射用媒体に溶解または分散させることができる無菌の固体組成物の形の滅菌剤を組み込むことによって滅菌することができる。
【0136】
本発明の化合物の効果を延長するために、皮下注射または筋肉内注射による化合物の吸収を遅らせることが望ましい場合が多い。これは、低水溶性の結晶質または非晶質の材料からなる液体懸濁剤を使用することによって実施することができる。このとき、化合物の吸収速度は、その溶解速度に依存し、この溶解速度は結晶のサイズおよび結晶形に依存することができる。あるいは、非経口投与剤形の化合物の遅延吸収は、化合物を油性ビヒクルに溶解または懸濁することによって実施される。デポー注射剤形は、ポリラクチド−ポリグリコリドなどの生分解性ポリマー中に化合物のマイクロカプセルマトリックスを形成することによって作製される。化合物とポリマーの比、および使用する特定のポリマーの性質に応じて、化合物の放出速度を制御することができる。他の生分解性ポリマーの例としては、ポリ(オルトエステル)およびポリ(無水物)が挙げられる。デポー注射製剤は、体組織に適合するリポソームまたはマイクロエマルジョン中に化合物を捕捉することによっても調製される。
【0137】
直腸投与または腟内投与用の組成物は、好ましくは、本発明の化合物を、カカオ脂、ポリエチレングリコールなど、適切な非刺激性の賦形剤または担体混合することによって調製することができる坐剤、あるいは周囲温度においては固体であるが体温においては液体であり、したがって直腸または膣腔で溶融し、活性な化合物を放出する坐剤ワックスである。
【0138】
経口投与用の固体剤形としては、カプセル剤、錠剤、丸剤、粉末、および顆粒剤が挙げられる。このような固体剤形では、活性な化合物を、クエン酸ナトリウムもしくは第二リン酸カルシウムなど、少なくとも1つの医薬上許容される不活性な賦形剤もしくは担体、ならびに/またはa)デンプン、ラクトース、スクロース、グルコース、マンニトール、およびケイ酸などの充填剤または延長剤、b)例えば、カルボキシメチルセルロース、アルギナート、ゼラチン、ポリビニルピロリジノン、スクロース、およびアカシアなどの結合剤、c)グリセロールなどの保湿剤、d)寒天、炭酸カルシウム、ジャガイモもしくはタピオカデンプン、アルギン酸、いくつかのケイ酸、および炭酸ナトリウムなどの崩壊剤、e)パラフィンなどの溶解遅延剤、f)第四級アンモニウム化合物などの吸収促進剤、g)例えば、セチルアルコールやモノステアリン酸グリセロールなどの湿潤剤、h)カオリンやベントナイト粘土などの吸収剤、およびi)タルク、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、固体ポリエチレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウムなどの滑沢剤、ならびにそれらの混合物などと混合する。カプセル剤、錠剤、および丸剤の場合、剤形は緩衝剤も含むことができる。
【0139】
同様なタイプの固体組成物は、ラクトースまたは乳糖のような賦形剤、および高分子量ポリエチレングリコールなどを使用して、軟質および硬質の充填ゼラチンカプセル剤中の充填剤としても使用することができる。錠剤、糖衣錠、カプセル剤、丸剤、および顆粒剤の固体剤形は、腸溶性コーティングおよび製剤技術において周知の他のコーティングなどのコーティングおよびシェルを用いて調製することができる。これらの固体剤形は、不透明化剤を所望により含有することができ、活性成分のみまたはそれを優先的に、腸管のある部位で、所望により遅延放出する組成物とすることもできる。使用することができる包埋組成物の例としては、ポリマーの物質およびワックスが挙げられる。同様なタイプの固体組成物は、ラクトースまたは乳糖のような賦形剤、および高分子量ポリエチレングリコールなどを使用して、軟質および硬質の充填ゼラチンカプセル剤中の充填剤としても使用することができる。
【0140】
活性な化合物は、上記に指摘した1つまたは複数の賦形剤と共にマイクロカプセル化した形とすることもできる。錠剤、糖衣錠、カプセル剤、丸剤、および顆粒剤の固体剤形は、腸溶性コーティング、放出制御コーティング、および製剤技術において周知の他のコーティングなどのコーティングおよびシェルを用いて調製することができる。このような固体剤形では、活性な化合物をスクロース、ラクトース、またはデンプンなどの少なくとも1つの不活性な希釈剤と混和することができる。このような剤形は、通常の慣行通りに、不活性な希釈剤以外の追加の物質、例えばステアリン酸マグネシウムや微結晶セルロースなどの打錠用滑沢剤および他の打錠助剤も含むことができる。カプセル剤、錠剤、および丸剤の場合、剤形は緩衝剤も含むことができる。これらは、不透明化剤を所望により含有することができ、活性成分のみまたはそれを優先的に、腸管のある部位で、所望により遅延方式で放出する組成物とすることもできる。使用することができる包埋組成物の例としては、ポリマーの物質およびワックスが挙げられる。
【0141】
本発明の化合物の局所または経皮投与のための剤形としては、軟膏剤、ペースト剤、クリーム剤、ローション剤、ゲル剤、散剤、溶液剤、スプレー剤、吸入剤、または貼付剤が挙げられる。必要とされ得る場合には、活性成分を、無菌条件下で、医薬上許容される担体、および任意の必要とされる防腐剤または緩衝剤と混和する。眼用製剤、点耳剤、および点眼剤も、本発明の範囲内であると考えられる。さらに、本発明では、化合物の体へのデリバリー制御をもたらす利点を追加する経皮貼付剤の使用も考えられる。このような剤形は、化合物を適切な媒体に溶解または分配することによって作製することができる。吸収促進剤を使用して、皮膚を通過する化合物の流入を増大させることもできる。この速度は、速度制御メンブランを設けることによって、あるいは化合物をポリマーマトリックスまたはゲルに分散することによって制御することができる。
【0142】
いくつかの実施形態では、本発明は、式Iの化合物を約1重量パーセント〜約99重量パーセントの量で含有する組成物を提供する。他の実施形態では、式Iの化合物を含有する組成物は、HPLCクロマトグラムの全面積に対して、HPLCで約10.0面積パーセント以下のブラックコホッシュ根の他の成分を含有する。他の実施形態では、式Iの化合物を含有する組成物は、HPLCクロマトグラムの全面積に対して、HPLCで約8.0面積パーセント以下、さらに別の実施形態では約3面積パーセント以下のブラックコホッシュ根の他の成分を含有する。
【0143】
化合物および医薬上許容される組成物の使用
本発明の化合物は、患者においてアミロイドβ(1−42)ペプチド産生を調節および/または阻害するのに有用である。したがって、本発明の化合物は、患者においてアミロイドβ(1−42)ペプチド産生を伴う障害を治療し、またはその重篤度を減ずるのに有用である。
【0144】
本発明の方法による化合物、抽出物、および組成物は、神経変性障害を治療し、またはその重篤度を減ずるのに有効な任意の量および任意の投与経路を用いて投与することができる。正確な必要量は、被検者の種、年齢、および全身状態、感染の重篤度、特定の作用剤、その投与モードなどに応じて、被検者ごとに異なる。
【0145】
いくつかの実施形態では、本発明は、患者においてアミロイドβ(1−42)ペプチド産生を調節および/または阻害する方法であって、前記患者に、式Iの化合物、または前記化合物を含む医薬上許容される組成物を投与することを含む方法を提供する。他の実施形態では、本発明は、患者においてアミロイドβ(1−42)ペプチド産生を選択的に調節および/または阻害する方法であって、前記患者に、式Iの化合物、またはその医薬上許容される組成物を投与することを含む方法を提供する。さらに別の実施形態では、本発明は、患者においてアミロイドβ(1−42)ペプチドレベルを低減する方法であって、前記患者に、式Iの化合物、またはその医薬上許容される組成物を投与することを含む方法を提供する。他の実施形態では、本発明は、細胞におけるアミロイドβ(1−42)ペプチドレベルを低減する方法であって、前記細胞を式Iの化合物と接触させることを含む方法を提供する。別の実施形態は、細胞におけるアミロイドβ(1−40)ペプチドレベルを実質的に低減することなく、細胞におけるアミロイドβ(1−42)を低減する方法であって、前記細胞を式Iの化合物と接触させることを含む方法を提供する。さらに別の実施形態は、細胞におけるアミロイドβ(1−42)を低減し、細胞におけるアミロイドβ(1−37)およびアミロイドβ(1−39)の少なくとも一方を増大させる方法であって、前記細胞を式Iの化合物と接触させることを含む方法を提供する。
【0146】
本明細書では、用語「低減している」または「低減する」は、式Iの化合物を投与しない場合のアミロイドβの量と比較して、式Iの化合物を投与することによって実現されたアミロイドβの相対低下量を意味する。例として、アミロイドβ(1−42)の低減は、式Iの化合物の存在下でアミロイドβ(1−42)の量は、式Iの化合物が存在しない場合のアミロイドβ(1−42)の量より少ないことを意味する。
【0147】
さらに別の実施形態では、本発明は、患者においてアミロイドβ(1−42)ペプチドレベルを選択的に低減する方法であって、前記患者に、式Iの化合物、またはその医薬上許容される組成物を投与することを含む方法を提供する。いくつかの実施形態では、本発明は、患者においてアミロイドβ(1−40)ペプチドレベルを実質的に低減することなく、アミロイドβ(1−42)ペプチドレベルを低減する方法であって、前記患者に、式Iの化合物、またはその医薬上許容される組成物を投与することを含む方法を提供する。
【0148】
いくつかの実施形態では、本発明は、患者においてアミロイドβ(1−42)ペプチドレベルを低減し、アミロイドβ(1−37)およびアミロイドβ(1−39)の少なくとも一方を増大させる方法であって、前記患者に、式Iの化合物、またはその医薬上許容される組成物を投与することを含む方法を提供する。
【0149】
本明細書では、アミロイドβの量に関する用語「増大している」または「増大する」は、式Iの化合物を投与しない(または細胞を式Iの化合物と接触させない)場合のアミロイドβの量と比較して、式Iの化合物を投与する(または細胞を式Iの化合物と接触させる)ことによって実現されたアミロイドβの相対増加量を意味する。例として、アミロイドβ(1−37)の増大は、式Iの化合物の存在下でアミロイドβ(1−37)の量は、式Iの化合物が存在しない場合のアミロイドβ(1−37)の量より多いことを意味する。例えば、アミロイドβ(1−37)およびアミロイドβ(1−39)のどちらかの相対量は、アミロイドβ(1−37)およびアミロイドβ(1−39)のどちらかの産生を増大させること、またはより長いアミロイドβペプチド、例えばアミロイドβ(1−40)および/またはアミロイドβ(1−42)の産生を低減することによって増大させることができる。さらに、本明細書では、アミロイドβの量に関する用語「増大している」または「増大する」は、式Iの化合物を投与することによって実現されたアミロイドβの絶対増加量を意味することを理解されたい。
【0150】
アミロイドβペプチドの全比率は、アミロイドβ(1−42)の選択的低減が特に有利である場合に重要であることを当業者は理解されよう。いくつかの実施形態では、本化合物は、アミロイドβ(1−42)ペプチドとアミロイドβ(1−40)ペプチドの全比率を低減する。したがって、本発明の別の態様は、患者においてアミロイドβ(1−42)ペプチドとアミロイドβ(1−40)ペプチドの比率を低減する方法であって、前記患者に、式Iの化合物、またはその医薬上許容される組成物を投与することを含む方法を提供する。いくつかの実施形態では、アミロイドβ(1−42)ペプチドとアミロイドβ(1−40)ペプチドの比率は、約0.1〜約0.4の範囲から約0.05〜約0.08の範囲に低減される。
【0151】
他の実施形態では、本発明は、細胞におけるアミロイドβ(1−42)ペプチドとアミロイドβ(1−40)ペプチドの比率を低減する方法であって、細胞を式Iの化合物と接触させることを含む方法を提供する。いくつかの実施形態では、アミロイドβ(1−42)ペプチドとアミロイドβ(1−40)ペプチドの比率は、約0.1〜約0.4の範囲から約0.05〜約0.08の範囲に低減される。
【0152】
一態様によれば、本発明は、アミロイドβ(1−42)ペプチドに関連する障害を治療し、またはその重篤度を減ずる方法であって、前記患者に、式Iの化合物、またはその医薬上許容される組成物を投与することを含む方法を提供する。このような障害としては、アルツハイマー病、パーキンソン病、およびダウン症候群などの神経変性障害が挙げられる。
【0153】
他の実施形態では、本発明は、患者においてアルツハイマー病を治療し、またはその重篤度を減ずる方法であって、前記患者に、式Iの化合物、またはその医薬上許容される組成物を投与することを含む方法を提供する。
【0154】
特定の理論に拘泥するものではないが、本化合物は、アミロイドβ(1−42)レベルを選択的に低減する、γ−セクレターゼの調節物質であると考えられる。したがって、本発明の別の実施形態は、患者においてγ−セクレターゼを調節する方法であって、前記患者に、式Iの化合物、またはその医薬上許容される組成物を投与することを含む方法を提供する。いくつかの実施形態では、本化合物はγ−セクレターゼの阻害剤である。前記方法は、γ−セクレターゼに関連する任意の障害を治療し、またはその重篤度を減ずるのに有用である。このような障害は限定されないが、神経変性障害、例えばアルツハイマー病が挙げられる。
【0155】
本発明の化合物は、投与を容易にし、用量を均一にするために、好ましくは投与単位形態で製剤される。本明細書では、「投与単位形態」という表現は、治療対象の患者に適した物理的に別々の作用剤単位を意味する。しかし、本発明の化合物および組成物の1日の総使用量は、担当医によって良好な医学的判断の範囲内で決定されることは理解されよう。ある特定の患者または生物のための特定の有効用量レベルは、治療対象の障害および障害の重篤度;使用する特定の化合物の活性;使用する特定の組成物;患者の年齢、体重、全身的健康状態、性別、および食事;使用する特定の化合物の投与回数、投与経路、および排泄速度;治療期間;使用する特定の化合物と組み合わせて、または同時に使用する薬剤、ならびに医療分野で周知の同様な要因などの様々な要因に依存する。本明細書では、用語「患者」は、動物、好ましくは哺乳類、最も好ましくはヒトを意味する。
【実施例】
【0156】
下記に記載する分離プロトコルで利用するブラックコホッシュ抽出物は、Boehringer Ingelheim Nutriceuticalsから特別注文で入手した。この抽出物は、約50%エタノール水溶液を使用して、根粉末を抽出し、次いでほぼ乾固濃縮するUSP調製のブラックコホッシュ抽出物と実質的に等価である。
【0157】
本明細書では、下記に記載する化合物番号は、下記の化合物に対応する。
化合物1:β−D−キシロピラノシド、(3,12,16,23R,24R,25S,26S)−12−(アセチルオキシ)−16,23:23,26:24,25−トリエポキシ−26−ヒドロキシ−9,19−シクロラノスタン−3−イル。
別名「アクテイン」。C37H56O11;分子量:676.83;登録番号18642−44−9。
【0158】
【化31】

化合物2:シミゲノール 3−β−D−キシロピラノシド;C35H56O9、分子量:620.81;登録番号27994−11−2。
【0159】
【化32】

化合物3:シミゲノール 3−α−L−アラビノシド。C35H56O9、分子量:620.81;登録番号256925−92−5。
【0160】
【化33】

化合物4:24−O−アセチルヒドロシェングマノール 3−β−D−キシロピラノシド。C37H60O11、分子量:680.87;登録番号78213−32−8。
【0161】
【化34】

化合物5:24−O−アセチルヒドロシェングマノール 3−α−L−アラビノピラノシド。C37H60O11、分子量:680.87。
【0162】
【化35】

化合物6:24−O−アセチルヒドロシェングマノール 3−β−D−キシロピラノシド(δ−16,17)−エノールエーテル。C37H58O10、分子量:662.85。
【0163】
【化36】

化合物7:24−O−アセチルヒドロシェングマノール 3−α−L−アラビノピラノシド(δ−16,17)−エノールエーテル。C37H58O10、分子量:662.85。
【0164】
【化37】

化合物8:24−エピ−24−O−アセチルヒドロシェングマノール 3−β−D−キシロピラノシド。C37H60O11、分子量:680.87。
【0165】
【化38】

化合物9:24−エピ−24−O−アセチルヒドロシェングマノール 3−β−D−キシロピラノシド (δ−16,17)−エノールエーテル。C37H58O10、分子量:662.85。
【0166】
【化39】

【0167】
単離プロトコル1
フラッシュカラムクロマトグラフィー
ブラックコホッシュ抽出物(15.6g)を150mlのメタノール−水(4:1(v/v))混合物に25℃で懸濁した。メカニカルスターラを使用して、得られたスラリーをこの温度で30分間激しく撹拌し、茶色乳濁液を得た。撹拌を継続しながら、この乳濁液に、51gのシリカゲル(ICN シリカ 32−63 60Å)を添加した。ロータリーエバポレータを使用して、混合物を真空中25℃で、非常に均質なベージュ−茶色粉末が得られるまで濃縮した。この材料を、長さ60cm、内径50mmのガラスカラムを使用するシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ICN シリカ 32−63 60Å)にかけた。
【0168】
カラムクロマトグラフィーの調製では、シリカゲルを500mlのジクロロメタン−メタノール(20:1)混合物に注ぎ込み、得られたスラリーをガラスカラムに注ぎ入れた。シリカゲルを30分間静置し、厚さ1cmの砂層をのせる。続いて、シリカ上に吸収させた抽出物をジクロロメタン−メタノール(20:1)混合物に注ぎ込み、得られたスラリーをカラム上部の砂層に注ぎ込んだ。次いで、シリカカラムを、0.4バールの圧力(アルゴン)下に下記の溶媒混合物で溶出した。
1.0mlのジクロロメタン−メタノール(20:1)、続いて
770mlのジクロロメタン−メタノール(10:1)、続いて
800mlのジクロロメタン−メタノール(7:1)、続いて
550mlのジクロロメタン−メタノール(5:1)。
【0169】
8個の200mlのフラクション(sat14−0〜sat14−7と名付ける)を回収し、続いて11個の100−mlのフラクション(sat14−8〜sat14−18と名付ける)を回収した。薄層クロマトグラフィー(TLC)で、Bakerflexシリカプレートを使用し、ジクロロメタン−メタノール(5:1)溶媒混合物で溶出して、すべてのフラクションを分析した。展開後、シリカゲルプレートを、アニスアルデヒド染色液で染色した。TLC分析の結果に基づいて、フラクションsat14−9〜sat14−12を真空下、25℃で蒸発乾固し、これらのフラクション試料10mgを、1H−NMR分光法で溶媒としてCD3ODを使用して分析した。図1および2をそれぞれ参照のこと。スペクトルを、2.53ppmにおけるブロードな多重線および4.86ppmにおける2.2Hz二重線の存在に関して分析した。というのは、これらのシグナルは、化合物7および6に特徴的だからである。さらに、これらの4つの試料のdqf−COSYスペクトルから、2.53および4.86ppmにおけるシグナルは、実際に化合物7および6に帰属することが確認された。フラクションsat14−10の1H−NMRスペクトルから、この試料は最高濃度の化合物7および6を含有しているという結論が得られ、わずかに少ない量のこれらの化合物をフラクション14−9で検出することができた。フラクションsat14−11では、微量の7および6が含有されているようであったが、フラクションsat14−12では、これらの化合物を検出することはできなかった。これらの結果に基づいて、フラクションsat14−10を選択し、さらにHPLC精製した。あるいは、フラクションsat14−9を使用して、必要に応じて追加の量の化合物4〜7を得ることができた。
【0170】
フラクションsat14−10の主成分は、アクテイン(1)(JNP 2002,65,601−605)であり、このフラクションのメタノール溶液から結晶化した。再結晶によって、純度の高いアクテインが得られた。フラクションsat14−11の主成分はシミゲノールβ−D−キシロピラノシド(2)およびシミゲノールα−L−アラビノシド(3)であり、このフラクションからおよそ2:1の混合物として結晶化した(JNP 2000,65,905−910および1391−1397)。
【0171】
C−18カラム逆相HPLC分画
フラクションsat14−10を3.5mlのメタノールに溶解した。この溶液を、HPLCで、SUPELCO Discovery RP−18カラム(長さ25cm、内径10mm)と、自動注入装置および190〜400nmの波長の検出に使用されるダイオードアレイ検出器を含むAGILENT 1100シリーズHPLCシステムとを使用して分画した。最初の2分間はメタノール中30%(v/v)の水で始め、続いて含水率を直線的に下げ、20分間で100%メタノールにする溶媒グラジエントを利用した。100%メタノールで2分後に、含水率を30%に上げ、その濃度でさらに8分間維持した。sat14−10の試料全体を分離するには、35μlずつ100回注入する必要があった。9個のフラクションを回収し、sat15−1〜sat15−9と名付けた。図3および4をそれぞれ参照のこと。化合物4〜7は、フラクションsat15−1、15−2、15−4、および15−5で溶出された。フラクションsat15−1、15−2、15−4、および15−5の1H NMRスペクトルを図4aおよび4bに示す。
【0172】
6、4、および9を単離するためのC−8カラム逆相HPLC分画
フラクションsat15−5を1.5mlのメタノールに溶解した。この溶液を、HPLCで、SUPELCO supelcosil LC−8カラム(長さ25cm、内径10mm)および上記に記載するAGILENT 1100シリーズHPLCシステムを使用して分画した。最初の2分間はメタノール中40%(v/v)の水で始め、続いて含水率を直線的に下げ、20分間で100%メタノールにする溶媒グラジエントを利用した。100%メタノールで2分後に、含水率を40%に上げ、その濃度でさらに8分間維持した。sat15−5の試料全体を分離するには、30μlずつ50回注入する必要があった。5個のフラクションを回収し、sat16−1〜sat16−5と名付けた(図5)。フラクションsat16−3では化合物6が溶出され、フラクションsat16−1では化合物4が溶出された。フラクションsat15−5では、純度の高い9が少量得られた。図6は、得られた6(9.8mg、純度98%)の1H NMRスペクトルを示す。
【0173】
8を単離するためのC−8 カラム逆相HPLC分画
フラクションsat15−8を0.65mlのメタノールに溶解した。この溶液を、HPLCで、SUPELCO supelcosil LC−8カラム(長さ25cm、内径10mm)および上記に記載するAGILENT 1100シリーズHPLCシステムを使用して分画した。最初の2分間はメタノール中40%(v/v)の水で始め、続いて含水量を直線的に下げ、20分間で100%メタノールにする溶媒グラジエントを利用した。100%メタノールで2分後に、含水率を40%に上げ、その濃度でさらに8分間維持した。7個のフラクションを回収し、sat18−1〜sat18−7と名付けた。フラクションsat18−6では化合物8が溶出された。NOESYスペクトルを含めて、NMR分光法分析によって、化合物8のメタノール溶液は、対応するケトンと相互変換することがわかった。希薄なメタノール溶液は、ケトン型約4%およびヘミアセタール型96%を含有する。
【0174】
7および5を単離するためのC−8 カラム逆相HPLC分画
フラクションsat15−2を0.5mlのメタノールに溶解した。この溶液を、HPLCで、SUPELCO supelcosil LC−8カラム(長さ25cm、内径10mm)および上記に記載するAGILENT 1100シリーズHPLCシステムを使用して分画した。最初の2分間はメタノール中40%(v/v)の水で始め、続いて含水率を直線的に下げ、20分間で100%メタノールにする溶媒グラジエントを利用した。100%メタノールで2分後に、含水率を40%に上げ、その濃度でさらに8分間維持した。5個のフラクションを回収し、sat19−3〜sat19−7と名付けた。フラクションsat19−7では純度の高い化合物7が得られ、フラクションsat19−5では純度の高い化合物5が得られた。
【0175】
単離プロトコル2
化合物6を単離するための単離/精製の代替プロトコルを、下記に記載する。当業者は、化合物6を単離しながら、この方法で本発明の他の化合物を濃縮および/または単離することを理解されよう。この単離方法の要約を図7に示す。
【0176】
この精製プロトコルでは、下記の装置を利用した。
(a)ダイオードアレイ検出器(DAD)を備えたHitachi HPLCシステム
(b)LC ReSponder(商標)アプリケーションソフトウェアを使用する、PCリモートコントローラを備えたNova Prep(商標)8000半分取HPLC
(c)Hitachi UV検出器L−7400
(d)Sedex 55 蒸発光散乱(ELSD)検出器
(e)75L Biotageシリカカラム(KP−Sil;P/N FKO−1107−19073;Lot 027075L)
(f)75L Biotage C18カラム(Bakerbond、40μ)
(g)75S Biotage C18カラム(Vydac、40μ)
(h)分析HPLCカラム:Phenomenex Luna C18、3μ、4.6×100mm
(i)半分取HPLCカラム:Phenomenex Luna C8 HPLCカラム、20×250mm
(j)半分取HPLCカラム:YMC AQ C18 HPLCカラム、21.2×250mm;および
(k)分取HPLC カラム:ES Industries C18 分取HPLC カラム;5×25cm。
【0177】
化合物6の純度を決定するために利用された分析方法は、以下の通りである。
カラム: Phenomenex Luna C18、3μ、4.6×100mm
移動相: A.35%アセトニトリル;B.0.05%酢酸を含有する30%
NANOPURE水;およびC.35%MeOHの定組成溶離
流量: 1mL/分
検出: 205、230nm、DAD;およびELSD
実行時間: 8分
カラム温度: 32℃
この方法を用いて、抽出物、フラクション、および最終生成物を分析した。化合物6は、これらの条件下で約5.5分で溶出する。
【0178】
50 gの粗ブラックコホッシュ抽出物(「BCE」)をBiotageシリカカートリッジ(7.5×30cm)で分画した。ロードした後、カートリッジを5%MeOH/DCM(10L)および10%MeOH/DCM(5L)で溶出し、500mlのフラクションを回収した。流量は150〜200ml/分であった。HPLC (230nmにおけるUV)によって、化合物6は、フラクション23(2.6g)および24(2.3g)に存在することが明らかになった。フラクション23(F23)を選択し、さらに半分取C8カラムで精製した。
【0179】
10回実行して、約10mgの化合物6を得た。0.3mlのMeOHにとかした50mgのF23をPhenomenex Luna C−8(21.2×250mm、10μ、100A)半分取カラムにロードした。205nmにおいてUVモニタリングを行いながら、カラムを70%MeOH/H2O(流量9.9mL/分)で溶出した。半分取HPLCトレース(図8)で示される35分および38分における溶出ピークを別々に回収した。
【0180】
10回の実行で35分のピークについて回収されたフラクションを貯蔵し、溶媒を周囲温度で蒸発させた。得られた固体を凍結乾燥器で乾燥して、10.3mgの化合物6(2609−165−7)を得た。個々のフラクションのHPLC(図10)では主ピークが1つのみ示されているだけであるが、生成物2609−165−7のHPLC(図9)によって、保持時間(RT)4.5分の極性不純物ピーク(11.3%)が明らかになった。化合物6が、プロセス中により極性の高い化合物に徐々に変換したことは明らかである。m/z 643において強度の高い[M+Na]+ピークを示すSSI−MS(図11)、およびアセチルメチルの一重線が存在していない、4.5分において単離された不純物のプロトンNMR(図12)から明らかなように、より極性の高い化合物は、化合物6の脱アセチル誘導体であることが見い出された。
【0181】
化合物6に関するいくつかの安定性実験から、脱アセチルが、わずかに塩基性であるMeOH溶液中で起こったことが示唆された。しかし、これは、わずかに酸性である溶液で安定であった。したがって、2609−165−7を、Luna C8カラムで、0.05%AcOHを含有する70%MeOH/ 30%水を溶出液として使用し、再処理して、3.4mgの化合物6(2609−172−11)を得た。2609−172−11のHPLCクロマトグラムを図13に示す。プロトンNMR(CD3OD中)およびSSI−MSを図14および15に示す。
【0182】
別の方法では、ビーカー中で、250gのブラックコホッシュ抽出物(BCE)と1250mLのMeOHを室温で1時間撹拌した。固体はすべて溶解したわけではないが、濾液のHPLC分析によって、出発の抽出物中の化合物6はすべて溶解した(約250mg)ことが示唆された。それにもかかわらず、5Lの丸底フラスコ中で、濾過されていない混合物を750gのシリカゲル(ICN、60〜200μ)に添加した。ロータリーエバポレータでMeOHを真空下に除去して、乾燥粉末(重量1100g、残留MeOH 9%)を得た。
【0183】
シリカ調製物で乾燥させたBCEを、それぞれ約270gに4分割した。混合物をSIMにロードし、最初に500〜600mLの塩化メチレンで洗浄して、非極性物および残留MeOHを除去した。SIMを75Lのシリカカラム(KP−Sil;P/N FK0−1107−19073;Lot 027075L;7.5×25cm、または1750mL)に接続した。主カラムを60psiでラジアル圧縮した。アセトンを用いて、流量100mL/分で系を溶出し、500〜1000mLのフラクションを回収した。化合物6を溶出した後、カラムを1.0LのMeOHで洗浄し、2Lのアセトンで再平衡化した。化合物6は、カラムからアセトン約900〜1000mLでフラクション1および2に溶出された後、主にフラクション3(1000mL)に溶出されたことが観察された。最初の4回の実行によって、約224mgの化合物6が得られた。シリカBiotage用の出発材料の第2のバッチを、100gのBCEおよび500mLのMeOHおよび300gのシリカから調製した。この出発材料の最初の4回と同様に、追加のBiotageの実行を2回(5および6)を行って、さらに93mgの化合物6を得た。6回の実行による生成貯蔵物を合わせて、減圧下で蒸発乾固した。
【0184】
シリカBiotageに由来の乾燥した固体(90g)を720mLのMeOHに溶解し、撹拌しながら、480mLのH2Oを徐々に添加した。若干の暗色タール様固体が沈殿し、フィルターで除去した。曇った濾液を、75Lの(7.5×25cm)Bakerbond 60Å、40μBiotage C18カラムにロードした。ロードした後、化合物6の検査で陰性であったが、カラムを5Lの60%(v/v)MeOH/H2Oと、続いて4Lの70%MeOH/H2Oで洗浄し、次いで4Lの80%MeOH/H2Oを使用して、化合物6を溶出した。溶出した後、カラムを2LのMeOHで洗浄した。流量は、全体を通して約60mL/分であった。化合物6の分解を防止するために、MeOH/H2O移動相には0.05%の酢酸が含まれた。生成貯蔵物(4L)を、基本的にすべてのMeOHが除去されるまで減圧下で濃縮し、得られた沈殿固体をブフナー漏斗上で回収し、高真空を用いて、室温で乾燥した。
【0185】
最初の大規模C18供給調製物から、濾過によって除去された、約32mgの化合物6を含有するタール様固体を、約22mgの化合物6を含有する大規模実験の2LのMeOH洗液に溶解した。混合物を蒸発させて1Lにし、0.67Lの水と混合した。若干のタール様固体が沈殿し、これをフィルター上で回収し、200mLのMeOHに溶解し、134mLの水と混合した。この混合物も濾過して、少量のタール物質を除去し、濾液を最初の濾液と合わせて、75S(7.5×9.0cm;400mL)Vydac 300Å、40μ Biotage C18カラムにロードした。カラムを1Lの60%MeOH/H2Oおよび2Lの70%MeOH/H2Oで洗浄し、1Lの80%MeOH/H2Oで溶出した(移動相も0.05%の酢酸を含有)。生成貯蔵物を蒸発させて、固体を、大規模Biotage実験と同様に、濾過によって回収した。
【0186】
C18 Biotageカラムに由来の最初の生成貯蔵物(16.69g)を、70mLのMeOHと混合した。混合物を音波処理し、沈殿物を濾過によって除去した。0.05%AcOHを含有する70%MeOH/30%水を溶離液として使用して流量177mL/分で、濾液をES Industries Chromegabond WR C18カラムのクロマトグラフ(5回実行、14mLずつ)にかけた。各実行における6〜14分のフラクションを合わせ、蒸発させてMeOHを除去する。MeOHを除去した後の沈殿物を遠心で回収し、凍結乾燥器で乾燥して、6.6gの乾燥した固体2609−173−16 (化合物6、3.2%)を得た。
【0187】
C18 Biotageカラムに由来の第2の生成貯蔵物(4.3g)を、同様な方式で処理して、2.0gの乾燥した固体2609−173−27(化合物6、3.06%)を得た。2609−173−16と2609−176−27を合わせて、8.6gの2609−174−6を得た。
【0188】
0.1%AcOHを含有するMeOH(1.3mL)に、2609−174−6(400mg)を溶解した。溶液をPhenomenex Luna C8カラムにロードし、0.05%のAcOHを含有する68%MeOH/32%水を用いて、流量24mL/分で溶出した。
【0189】
分析HPLCに基づいて、各実行(全22回実行)における15.8〜19.8分のフラクションを合わせ、蒸発させてMeOHを除去し、凍結乾固して、2609−174−28 (1.4 g、12.6%の化合物6を含有)を得た。2609−174−28を使用して、化合物6をYMC−AQ C18カラムで最終単離した。実行を合計28回行った。
【0190】
0.1%AcOHを含有する0.25mLのMeOHに、2609−174−28(50mg)を溶解した。溶液をYMC AQ C18カラムに注入した。カラムを、0.05% AcOHを含有する70% MeOH/30%水を用いて9.9mL/分で溶出した。分析HPLCプロファイルに基づいて、28回の実行から典型的に48.4〜50.4分のフラクションを選択し、貯蔵し、蒸発させ、凍結乾燥させて、化合物6(2609−176−30、85mg)を得た。
【0191】
48.4分直前に回収され、主に化合物6を含有するフラクションも合わせ、乾燥して、2609−176−35(50mg)を得た。同じカラムと移動相を使用して、2609−176−35を再処理(3回実行)して、別のロットの化合物6を得た。これを2609−176−30と合わせて、102mgの生成物(2609−177−10)(クロマトグラフィー純度:約95%)を得た。化合物6(2609−176−10)のHPLCクロマトグラム(205、230nmにおけるUV、およびELSD)およびプロトンNMRスペクトルをそれぞれ、図16、17、18、および19に示す。2609−176−10のプロトンNMRは、化合物6の標準試料のプロトンNMRに一致した。化合物6のSSI−MS(図20)から、m/z 685における強度の高い[M+Na]+ピークは、化合物6の分子式C37H58O10に一致することがわかった。
【0192】
生物検定
A.式Iの化合物のAβ−42を阻害する能力を決定するための検定
本発明の化合物、および前記化合物を含む抽出物を、アミロイドβ(1−42)ペプチドの阻害剤をin vitroまたはin vivoで検定することができる。このような検定方法は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる米国特許第6,649,196号に詳細に記載されている。
【0193】
本発明の化合物は、米国特許第6,649,196号に記載されているのと実質的に同じ方式で行われる細胞に基づく検定に従って、アミロイドβ(1−42)ペプチドを選択的に低減することが見い出された。
【0194】
B.式Iの化合物の全Aβ比率に影響を及ぼす能力を決定するための検定
本発明の化合物を、参照によりその全体が本明細書に組み込まれるWangら、J.Biol.Chem.1996,50:31894−31902,The Profile of Soluble Amyloid β Protein in Cultured Cell Mediaによって記載されている検定プロトコルと実質的に同様な検定プロトコルを使用して検定して、in vitroでのアミロイドβ(1−42)ペプチドの全比率に及ぼす効果を決定した。この検定は、免疫沈殿法および質量分析法(IP−MS)を用いてアミロイドβタンパク質を定量する。例として化合物6を用いて、この化合物がアミロイドβ(1−42)ペプチドを低減する一方、アミロイドβ(1−37)ペプチドおよびアミロイドβ(1−39)ペプチドを増大させることが見い出された。これらの結果を図21に示す。
【0195】
化合物6はまた、Wangら、7W細胞(APPwt)および7PA2細胞(APPV717F)に記載されている方法に従って検定された。APP717突然変異は、アミロイドβ(1−42)ペプチドの相対量を増大させる。この検定では、化合物6は、アミロイドβ(1−42)ペプチドを低減する一方、アミロイドβ(1−39)ペプチドを増大させることがわかった。これらの結果を図22に示す。
【0196】
本発明のいくつかの実施形態について述べてきたが、基本的例を変更して、本発明の化合物および方法を利用する他の実施形態を提供できることは明らかである。したがって、本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲によって定義されるものであって、例として示された特定の実施形態によって定義されるものではないことを理解されたい。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式I:
【化1】

[式中:
環A、環B、環C、環D、および環Eは、各々独立して、飽和、部分不飽和、または芳香族であり;
Gは、S、CH2、NR、またはOであり;
R1およびR2は、各々独立して、ハロゲン、R、OR、適宜保護されたヒドロキシル基、SR、適宜保護されたチオール基、N(R)2、または適宜保護されたアミノ基であるか、あるいはR1とR2が一緒になって、窒素、酸素、または硫黄から独立して選択された0〜2個のヘテロ原子を有する3〜7員の飽和環、部分不飽和環、またはアリール環を形成し;
Rは、各々独立して、水素、置換されていてもよいC1〜6脂肪族基、あるいは置換されていてもよい、窒素、酸素、または硫黄から独立して選択された0〜4個のヘテロ原子を有する3〜8員の飽和環、部分不飽和環、またはアリール環であり;
ここで、同じ窒素原子上の2つのRは該窒素原子と一緒になって、窒素、酸素、または硫黄から独立して選択された1〜4個のヘテロ原子を有する3〜8員の飽和環、部分不飽和環、またはアリール環を形成してもよい;
nは0〜2であり;
R3、R4、R7、およびR8は、各々独立して、ハロゲン、R、OR、適宜保護されたヒドロキシル基、SR、適宜保護されたチオール基、SO2R、OSO2R、N(R)2、適宜保護されたアミノ基、NR(CO)R、NR(CO)(CO)R、NR(CO)N(R)2、NR(CO)OR、(CO)OR、O(CO)R、(CO)N(R)2、またはO(CO)N(R)2から選択され;
mは0〜2であり;
R5は、T−C(R’)3、T−C(R’)2C(R”)3、R、OR、適宜保護されたヒドロキシル基、SR、適宜保護されたチオール基、SO2R、OSO2R、N(R)2、適宜保護されたアミノ基、NR(CO)R、NR(CO)(CO)R、NR(CO)N(R)2、NR(CO)OR、(CO)OR、O(CO)R、(CO)N(R)2、またはO(CO)N(R)2であるか、あるいは
R5がT−C(R’)3またはT−C(R’)2C(R”)3である場合、R6とR5のR’基とは一緒になって、窒素、酸素、または硫黄から独立して選択された0〜2個のヘテロ原子を有する3〜8員の飽和環、部分不飽和環、またはアリール環を形成してもよい;
Tは、各々独立して、原子価結合、あるいは置換されていてもよい直鎖または分枝状の飽和または不飽和のC1〜6アルキリデン鎖であり、ここで、Tのメチレン単位は2個まで、−O−、−N(R)−、−S−、−C(O)−、−S(O)−、または−S(O)2−によって独立して置換されていてもよい;
R’およびR”は、各々独立して、R、OR、SR、SO2R、OSO2R、N(R)2、NR(CO)R、NR(CO)(CO)R、NR(CO)N(R)2、NR(CO)OR、(CO)OR、O(CO)R、(CO)N(R)2、またはO(CO)N(R)2から選択され;
R6は、ハロゲン、R、OR、SR、SO2R、OSO2R、N(R)2、NR(CO)R、NR(CO)(CO)R、NR(CO)N(R)2、NR(CO)OR、(CO)OR、O(CO)R、(CO)N(R)2、またはO(CO)N(R)2であり;
R9およびR9’は、各々独立して、ハロゲン、R、OR、SR、またはN(R)2から選択され、あるいはR9とR9’とは一緒になって、窒素、酸素、または硫黄から独立して選択された0〜2個のヘテロ原子を有する3〜7員の飽和環、部分不飽和環、またはアリール環を形成し;
Qは、原子価結合、あるいは置換されていてもよい直鎖または分枝状の飽和または不飽和のC1〜6アルキリデン鎖であり、ここで、Qのメチレン単位は2個まで、−O−、−N(R)−、−S−、−C(O)−、−S(O)−、または−S(O)2−によって独立して置換されていてもよい;
R10は、R、適宜保護されたヒドロキシル基、適宜保護されたチオール基、適宜保護されたアミノ基、置換されていてもよい、窒素、酸素、または硫黄から独立して選択された0〜4個のヘテロ原子を有する3〜8員の飽和単環式環、部分不飽和単環式環、またはアリール単環式環、置換されていてもよい、窒素、酸素、または硫黄から独立して選択された0〜4個のヘテロ原子を有する8〜10員の飽和二環式環、部分不飽和二環式環、またはアリール二環式環、検出可能な部分、ポリマー残基、ペプチド、あるいは糖含有または糖様部分である]
で示される化合物またはその医薬上許容される塩;ただし、
【化2】

以外の化合物である。
【請求項2】
GがOであり;および
R1およびR2が、各々独立して、RまたはORである、ところの請求項1記載の化合物。
【請求項3】
R1およびR2が、各々独立して、Rであり、ここでRが水素または置換されていてもよいC1−6脂肪族基である、ところの請求項2記載の化合物。
【請求項4】
R1およびR2が一緒になって窒素、酸素または硫黄より独立して選択された0−2個のヘテロ原子を有する、3−6員の飽和環、部分不飽和環、またはアリール環を形成する、ところの請求項2記載の化合物。
【請求項5】
R5がT−C(R’)3またはT−C(R’)2C(R”)3であり;
Tが、各々独立して、原子価結合、あるいは直鎖または分枝状のC1〜4アルキリデン鎖であり、ここで、Tの1個のメチレン単位が、−O−、−N(R)−、または−S−によって置換されていてもよく;
R’およびR”が、各々独立して、R、OR、OC(O)R、SR、またはN(R)2である、ところの請求項1記載の化合物。
【請求項6】
R5がT−C(R’)3またはT−C(R’)2C(R”)3であり;R6およびR5上のR’基が一緒になって窒素、酸素または硫黄より独立して選択された1−2個のヘテロ原子を有する5−7員の飽和環を形成する、ところの請求項5記載の化合物。
【請求項7】
式IIaまたはIIb:
【化3】

の化合物である、ところの請求項6記載の化合物。
【請求項8】
Qが置換されていてもよい直鎖または分枝状の飽和または不飽和のC1〜2アルキリデン鎖であり、ここで、Qの1個までのメチレン単位が、−O−、−N(R)−、または−S−によって置換されていてもよく;および
R10がグリコシドである、ところの請求項1記載の化合物。
【請求項9】
Qが−O−であり、R10がアラビノピラノシドまたはキシロピラノシドである、ところの請求項1記載の化合物。
【請求項10】
式I−a:
【化4】

で示される化合物またはその医薬上許容される塩である、ところの請求項1記載の化合物。
【請求項11】
式I−bまたはI−c:
【化5】

で示される化合物またはその医薬上許容される塩である、ところの請求項1記載の化合物。
【請求項12】
式IIまたはII−a:
【化6】

で示される化合物またはその医薬上許容される塩である、ところの請求項1記載の化合物。
【請求項13】
式IV:
【化7】

で示される化合物またはその医薬上許容される塩である、ところの請求項1記載の化合物。
【請求項14】
式IV−aまたはIV−b:
【化8】

で示される化合物またはその医薬上許容される塩である、ところの請求項13記載の化合物。
【請求項15】
R1およびR2が一緒になって3−6員の飽和炭素環式環を形成し、R7が−OHである、ところの請求項14記載の化合物。
【請求項16】
【化9】

から選択される、ところの請求項1記載の化合物。
【請求項17】
【化10】

から選択される、ところの請求項13載の化合物。
【請求項18】
ブラックコホッシュ根に存在する他の化合物を実質的に含まない、ところの請求項1記載の化合物。
【請求項19】
実質的に1種または複数のアクテオール、アセチルアクテオール、26−デオキシアクテオール、シミゲノール、アクテイン、26−デオキシアクテイン、またはシミシフゴシドを含まない、ところの請求項18記載の化合物。
【請求項20】
請求項1に記載の化合物、および医薬上許容される担体、アジュバントまたはビヒクルを含む、組成物。
【請求項21】
請求項18に記載の化合物、および医薬上許容される担体、アジュバントまたはビヒクルを含む、組成物。
【請求項22】
少なくとも10重量%の請求項1に記載の化合物を含む、ところのブラックコホッシュ根の抽出物。
【請求項23】
約10重量%ないし約50重量%の請求項1に記載の化合物を含む、ところの請求項21記載の抽出物。
【請求項24】
請求項20に記載の組成物を患者に投与することを含む、患者でのアミロイド−βペプチドの産生を阻害する方法。
【請求項25】
請求項21に記載の組成物を患者に投与することを含む、患者でのアミロイド−β(1−42)ペプチドの産生を阻害する方法。
【請求項26】
アミロイド−β(1−42)ペプチドの濃度を減らし、アミロイド−β(1−40)ペプチドの濃度を実質的に減らさない、ところの請求項25記載の方法。
【請求項27】
少なくとも1つのアミロイド−β(1−37)およびアミロイド−β(1−39)の濃度が増加する、ところの請求項25記載の方法。
【請求項28】
アミロイドβ(1−42)ペプチドに関連する障害の重篤度を治療し、または減ずる方法であって、患者に請求項20に記載の医薬上許容される組成物を投与することを含む、方法。
【請求項29】
障害がアルツハイマー病、パーキンソン病、およびダウン症候群である、ところの請求項28記載の方法。
【請求項30】
患者でのアミロイド−β(1−42)ペプチドの濃度を減少させる方法であって、その患者に請求項20に記載の医薬上許容される組成物を投与することを含む、方法。
【請求項31】
細胞中のアミロイド−β(1−42)ペプチドの濃度を減少させる方法であって、該細胞を請求項1に記載の化合物と接触させることを含む、方法。
【請求項1】
式I:
【化1】

[式中:
環A、環B、環C、環D、および環Eは、各々独立して、飽和、部分不飽和、または芳香族であり;
Gは、S、CH2、NR、またはOであり;
R1およびR2は、各々独立して、ハロゲン、R、OR、適宜保護されたヒドロキシル基、SR、適宜保護されたチオール基、N(R)2、または適宜保護されたアミノ基であるか、あるいはR1とR2が一緒になって、窒素、酸素、または硫黄から独立して選択された0〜2個のヘテロ原子を有する3〜7員の飽和環、部分不飽和環、またはアリール環を形成し;
Rは、各々独立して、水素、置換されていてもよいC1〜6脂肪族基、あるいは置換されていてもよい、窒素、酸素、または硫黄から独立して選択された0〜4個のヘテロ原子を有する3〜8員の飽和環、部分不飽和環、またはアリール環であり;
ここで、同じ窒素原子上の2つのRは該窒素原子と一緒になって、窒素、酸素、または硫黄から独立して選択された1〜4個のヘテロ原子を有する3〜8員の飽和環、部分不飽和環、またはアリール環を形成してもよい;
nは0〜2であり;
R3、R4、R7、およびR8は、各々独立して、ハロゲン、R、OR、適宜保護されたヒドロキシル基、SR、適宜保護されたチオール基、SO2R、OSO2R、N(R)2、適宜保護されたアミノ基、NR(CO)R、NR(CO)(CO)R、NR(CO)N(R)2、NR(CO)OR、(CO)OR、O(CO)R、(CO)N(R)2、またはO(CO)N(R)2から選択され;
mは0〜2であり;
R5は、T−C(R’)3、T−C(R’)2C(R”)3、R、OR、適宜保護されたヒドロキシル基、SR、適宜保護されたチオール基、SO2R、OSO2R、N(R)2、適宜保護されたアミノ基、NR(CO)R、NR(CO)(CO)R、NR(CO)N(R)2、NR(CO)OR、(CO)OR、O(CO)R、(CO)N(R)2、またはO(CO)N(R)2であるか、あるいは
R5がT−C(R’)3またはT−C(R’)2C(R”)3である場合、R6とR5のR’基とは一緒になって、窒素、酸素、または硫黄から独立して選択された0〜2個のヘテロ原子を有する3〜8員の飽和環、部分不飽和環、またはアリール環を形成してもよい;
Tは、各々独立して、原子価結合、あるいは置換されていてもよい直鎖または分枝状の飽和または不飽和のC1〜6アルキリデン鎖であり、ここで、Tのメチレン単位は2個まで、−O−、−N(R)−、−S−、−C(O)−、−S(O)−、または−S(O)2−によって独立して置換されていてもよい;
R’およびR”は、各々独立して、R、OR、SR、SO2R、OSO2R、N(R)2、NR(CO)R、NR(CO)(CO)R、NR(CO)N(R)2、NR(CO)OR、(CO)OR、O(CO)R、(CO)N(R)2、またはO(CO)N(R)2から選択され;
R6は、ハロゲン、R、OR、SR、SO2R、OSO2R、N(R)2、NR(CO)R、NR(CO)(CO)R、NR(CO)N(R)2、NR(CO)OR、(CO)OR、O(CO)R、(CO)N(R)2、またはO(CO)N(R)2であり;
R9およびR9’は、各々独立して、ハロゲン、R、OR、SR、またはN(R)2から選択され、あるいはR9とR9’とは一緒になって、窒素、酸素、または硫黄から独立して選択された0〜2個のヘテロ原子を有する3〜7員の飽和環、部分不飽和環、またはアリール環を形成し;
Qは、原子価結合、あるいは置換されていてもよい直鎖または分枝状の飽和または不飽和のC1〜6アルキリデン鎖であり、ここで、Qのメチレン単位は2個まで、−O−、−N(R)−、−S−、−C(O)−、−S(O)−、または−S(O)2−によって独立して置換されていてもよい;
R10は、R、適宜保護されたヒドロキシル基、適宜保護されたチオール基、適宜保護されたアミノ基、置換されていてもよい、窒素、酸素、または硫黄から独立して選択された0〜4個のヘテロ原子を有する3〜8員の飽和単環式環、部分不飽和単環式環、またはアリール単環式環、置換されていてもよい、窒素、酸素、または硫黄から独立して選択された0〜4個のヘテロ原子を有する8〜10員の飽和二環式環、部分不飽和二環式環、またはアリール二環式環、検出可能な部分、ポリマー残基、ペプチド、あるいは糖含有または糖様部分である]
で示される化合物またはその医薬上許容される塩;ただし、
【化2】

以外の化合物である。
【請求項2】
GがOであり;および
R1およびR2が、各々独立して、RまたはORである、ところの請求項1記載の化合物。
【請求項3】
R1およびR2が、各々独立して、Rであり、ここでRが水素または置換されていてもよいC1−6脂肪族基である、ところの請求項2記載の化合物。
【請求項4】
R1およびR2が一緒になって窒素、酸素または硫黄より独立して選択された0−2個のヘテロ原子を有する、3−6員の飽和環、部分不飽和環、またはアリール環を形成する、ところの請求項2記載の化合物。
【請求項5】
R5がT−C(R’)3またはT−C(R’)2C(R”)3であり;
Tが、各々独立して、原子価結合、あるいは直鎖または分枝状のC1〜4アルキリデン鎖であり、ここで、Tの1個のメチレン単位が、−O−、−N(R)−、または−S−によって置換されていてもよく;
R’およびR”が、各々独立して、R、OR、OC(O)R、SR、またはN(R)2である、ところの請求項1記載の化合物。
【請求項6】
R5がT−C(R’)3またはT−C(R’)2C(R”)3であり;R6およびR5上のR’基が一緒になって窒素、酸素または硫黄より独立して選択された1−2個のヘテロ原子を有する5−7員の飽和環を形成する、ところの請求項5記載の化合物。
【請求項7】
式IIaまたはIIb:
【化3】

の化合物である、ところの請求項6記載の化合物。
【請求項8】
Qが置換されていてもよい直鎖または分枝状の飽和または不飽和のC1〜2アルキリデン鎖であり、ここで、Qの1個までのメチレン単位が、−O−、−N(R)−、または−S−によって置換されていてもよく;および
R10がグリコシドである、ところの請求項1記載の化合物。
【請求項9】
Qが−O−であり、R10がアラビノピラノシドまたはキシロピラノシドである、ところの請求項1記載の化合物。
【請求項10】
式I−a:
【化4】

で示される化合物またはその医薬上許容される塩である、ところの請求項1記載の化合物。
【請求項11】
式I−bまたはI−c:
【化5】

で示される化合物またはその医薬上許容される塩である、ところの請求項1記載の化合物。
【請求項12】
式IIまたはII−a:
【化6】

で示される化合物またはその医薬上許容される塩である、ところの請求項1記載の化合物。
【請求項13】
式IV:
【化7】

で示される化合物またはその医薬上許容される塩である、ところの請求項1記載の化合物。
【請求項14】
式IV−aまたはIV−b:
【化8】

で示される化合物またはその医薬上許容される塩である、ところの請求項13記載の化合物。
【請求項15】
R1およびR2が一緒になって3−6員の飽和炭素環式環を形成し、R7が−OHである、ところの請求項14記載の化合物。
【請求項16】
【化9】

から選択される、ところの請求項1記載の化合物。
【請求項17】
【化10】

から選択される、ところの請求項13載の化合物。
【請求項18】
ブラックコホッシュ根に存在する他の化合物を実質的に含まない、ところの請求項1記載の化合物。
【請求項19】
実質的に1種または複数のアクテオール、アセチルアクテオール、26−デオキシアクテオール、シミゲノール、アクテイン、26−デオキシアクテイン、またはシミシフゴシドを含まない、ところの請求項18記載の化合物。
【請求項20】
請求項1に記載の化合物、および医薬上許容される担体、アジュバントまたはビヒクルを含む、組成物。
【請求項21】
請求項18に記載の化合物、および医薬上許容される担体、アジュバントまたはビヒクルを含む、組成物。
【請求項22】
少なくとも10重量%の請求項1に記載の化合物を含む、ところのブラックコホッシュ根の抽出物。
【請求項23】
約10重量%ないし約50重量%の請求項1に記載の化合物を含む、ところの請求項21記載の抽出物。
【請求項24】
請求項20に記載の組成物を患者に投与することを含む、患者でのアミロイド−βペプチドの産生を阻害する方法。
【請求項25】
請求項21に記載の組成物を患者に投与することを含む、患者でのアミロイド−β(1−42)ペプチドの産生を阻害する方法。
【請求項26】
アミロイド−β(1−42)ペプチドの濃度を減らし、アミロイド−β(1−40)ペプチドの濃度を実質的に減らさない、ところの請求項25記載の方法。
【請求項27】
少なくとも1つのアミロイド−β(1−37)およびアミロイド−β(1−39)の濃度が増加する、ところの請求項25記載の方法。
【請求項28】
アミロイドβ(1−42)ペプチドに関連する障害の重篤度を治療し、または減ずる方法であって、患者に請求項20に記載の医薬上許容される組成物を投与することを含む、方法。
【請求項29】
障害がアルツハイマー病、パーキンソン病、およびダウン症候群である、ところの請求項28記載の方法。
【請求項30】
患者でのアミロイド−β(1−42)ペプチドの濃度を減少させる方法であって、その患者に請求項20に記載の医薬上許容される組成物を投与することを含む、方法。
【請求項31】
細胞中のアミロイド−β(1−42)ペプチドの濃度を減少させる方法であって、該細胞を請求項1に記載の化合物と接触させることを含む、方法。
【図1】


【図2】


【図3】


【図4】


【図5】


【図6】


【図7】


【図8】


【図9】


【図10】


【図11】


【図12】


【図13】


【図14】


【図15】


【図16】


【図17】


【図18】


【図19】


【図20】


【図21】


【図22】




【図2】


【図3】


【図4】


【図5】


【図6】


【図7】


【図8】


【図9】


【図10】


【図11】


【図12】


【図13】


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【図15】


【図16】


【図17】


【図18】


【図19】


【図20】


【図21】


【図22】


【公開番号】特開2013−82718(P2013−82718A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−271621(P2012−271621)
【出願日】平成24年12月12日(2012.12.12)
【分割の表示】特願2008−512454(P2008−512454)の分割
【原出願日】平成18年5月16日(2006.5.16)
【出願人】(507380300)サトリ・ファーマシューティカルズ・インコーポレイテッド (4)
【氏名又は名称原語表記】SATORI PHARMACEUTICALS, INC.
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−271621(P2012−271621)
【出願日】平成24年12月12日(2012.12.12)
【分割の表示】特願2008−512454(P2008−512454)の分割
【原出願日】平成18年5月16日(2006.5.16)
【出願人】(507380300)サトリ・ファーマシューティカルズ・インコーポレイテッド (4)
【氏名又は名称原語表記】SATORI PHARMACEUTICALS, INC.
【Fターム(参考)】
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