説明

神経成長因子の投与による禁断症状の治療方法

禁断症状を治療するために神経成長因子を投与する方法を提供する。禁断症状の治療に対して、神経成長因子を含む医薬組成物も提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、神経成長因子(NGF)の投与による種々の禁断症状の治療方法に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明は、精神病状の治療方法を提供する。該精神病状は、大うつ病、軽躁病、気分循環症、不安、双極性障害、不眠症および他の睡眠障害、多動、注意欠陥障害、慢性疲労症候群、月経前症候群(PMS)、月経前不快気分障害(PMDD)、および広場恐怖症を含み、患者の仕事、人間関係の維持、効率的な意思伝達、適正な思考、精神活動、および周囲環境を把握する能力に莫大な被害を及ぼす。
【0003】
これらの精神病状の中で最も一般的なものはうつ病であり、うつ病は、米国の身体障害の原因の第一位であり、若年死亡率および身体障害によって健康を何年間も失った原因としては心臓病についで第2位である(Regieretal.,ArchGenPsychiatry45:977(1988)。うつ病は複数の種類に分類されうる。大うつ病は最も深刻な種類であり、重度の、持続的な抑うつ、活力の低下に伴う日常行為への興味や満足感の喪失、睡眠習慣の変化、落ち着きのない行動、集中力維持の困難、食欲の喪失、罪悪感や絶望感、深刻な場合は幻覚、妄想、さらに自殺念慮のような精神病の症状によって特徴付けられる。大うつ病の診断には、患者が一定期間(2週間以上)の持続的な悲哀感、かつて、楽しみを感じていた行為への関心または満足感の喪失、罪悪感や絶望感、落ち着きのない行動、集中力維持の困難、または自殺念慮といった病歴を有していることが必要になる。うつ病の診断には、ベック抑うつ評価尺度、またうつ病のための他のスクリーンテストが有用であろう。
【0004】
大うつ病は、投薬および/またはカウンセリングによって治療されうる。抗うつ薬療法と心理療法とを組み合わせた場合、どちらか一方だけを行った場合よりもよい結果が得られることが複数の研究から明らかにされている(Elkinetal.,ArchGen.Psychiatry46:971(1989)。投与される薬剤には、三環系抗うつ薬、モノアミン酸化酵素阻害薬、選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRIs)、およびブプロピオン、レボキセチン、トラゾドン、ベンラファキシン、ミルタザピンといった他の新規抗うつ薬があるが、これらの薬剤に限定されるものではない。抗精神病の投薬は、妄想や幻覚といったより深刻な精神病の症状を有する患者に必要とされる。心理療法で特にうつ病の治療に効果的であると証明されているものには、対人関係療法、集団療法、認知行動療法がある。治療にあたる医師は、これらの薬剤と療法の正しい組み合わせの検証作業を頻繁に行う必要がある。不幸にも、大うつ病患者の最大30%は初期の抗うつ剤治療において顕著な効果を得られていない。多くの場合、もしある薬剤を投与したのち4〜6週間以内に患者の気分が改善しなければ、その薬剤は変えられるべきである(Potteretal.,N.Eng.J.Med.325:633(1991))。最後に、他の治療法で効果が得られない深刻なうつ症状や自殺行為のある人々の気分を改善させるために、電気ショック療法(ECT)が頻繁に用いられる。これは電流によって中枢神経系発作を起こさせる治療法である。しかしながら、ECTには長期持続性記憶障害のような深刻な副作用が伴う(Hymanetal.,MerksManualofMedicine,Chapter13page13(2000))。
【0005】
代替療法は、不安やうつ病を含む精神疾患などの慢性症状を管理するためのハーブ製品の使用を含む。加えて、セントジョンズワート(オトギリソウ)は補助抗うつ剤として近年米国で人気を得ている。アメリカ国立衛生研究所は近年、一日あたり50〜150mgのセルトラリン(ゾロフト)の摂取、一日あたり900〜1800mgのセントジョンズワートの摂取、および偽薬を摂取した場合の比較を300人の大うつ病患者に対して行うというオトギリソウ臨床実験に出資をした。この研究結果は、セントジョンズワートは中程度の大うつ病治療に対しては、偽薬と同等の効果しかないというものであった(NHINewsReleaseApril9,2002)。セントジョンズワートの副作用は軽度であり、主に胃腸部の症状や疲労がある。従って、当技術分野では、大うつ病の治療により効果的で副作用のより少ない代替治療が求められる。
【0006】
うつ病の2つ目の型は慢性の軽度のうつ病であり、気分変調症としても知られる。気分変調症では大体の場合、患者が活力、食欲、および睡眠の全般的な水準の低下、および自己評価の低下や絶望を2年以上の期間感じている。これらの症状は苦痛であり、患者にとっては日常生活を送る上で困難を有する。しかし、これらの症状は大うつ病においてみられる症状ほど深刻ではない。これらの症状の原因や持続は、次のような問題に起因することが多い:友人の喪失、仕事や家庭における大きな失望、長期的または慢性的な疾患、アルコールまたは薬物依存である。気分変調症の患者は、大うつ病を発症する危険性が高い。このことは二重うつ病と呼ばれる行動パターンを生じ、このパターンでは患者はほとんどの場合は軽度なうつ状態であり、定期的に大うつ病の症状を発症する。
【0007】
軽度の抑うつ障害の治療法として、良好な栄養摂取や適度で規則正しい睡眠のような健康上の習慣改善がある。また、アルコールおよび他の薬物使用の減量や、レクリエーションおよび創造的努力といった健康的な活動に携わることも、抑うつ気分の解消につながる。このような「抑うつ的な」気分が数週間以内に消えない場合は、大うつ病を患っている可能性があるので医師の診療を受けるべきである。
【0008】
最も深刻度の低いうつ病の型は、抑うつ気分である。これは悲哀、憂うつ、空虚感といった情動状態であり、それらは活力の欠落と関連していることがある。抑うつ気分は、大抵は不幸またはストレスの多い出来事に対する一時的な反応である。このような症状の治療法は、上記の軽度の抑うつ障害で述べたものと同様である。
【0009】
最後に、うつ病の診断は人生の段階に応じて異なる。老人性うつ病はこの一例である。高齢の患者で、身体の疼きや痛み、疲労、食欲の喪失、睡眠困難に過度な懸念を感じている場合、実際にはうつ病の二次的な情動を示している。多くの高齢患者はうつ病症状の兆候を認めないため、高齢者のうつ病は診断、治療されることが少ない。青年期におけるうつ病もまた、診察に注意が必要である。例えば、身体検査は抑うつ症状の他の医学的原因を除外するために用いられる。青年患者における持続的な悲哀、空虚感または怒りっぽい状態の病歴を評価するには、慎重な精神鑑定とともに、他の血縁者もうつ病歴があるかどうかに関する情報を取得することが必要となる。
双極性障害
【0010】
双極性障害は、200万人以上のアメリカ人が一生のうちのあるポイントでかかる慢性疾患である。双極性障害は、男女とも等しくみられ、15歳から25歳の間に発症する。単極性の大うつ病と対照的に、双極性障害の発症率は世界的にばらつきが少ない。正確な原因は分かっていないが、これは気分をつかさどる脳の部位と関係があり、遺伝的要素が強い。アメリカ精神医学会の「精神疾患の分類と診断の手引」によると双極性障害には2つのタイプ、タイプIとタイプIIとがある。タイプ1(以前は躁うつ障害と言われていたもの)では、少なくとも1回以上の完全な躁病の発症が見られる。しかしながら、このタイプの患者は、大うつ病を発症することもある。タイプIIの障害では、「軽躁病」周期は、より弱い(深刻度の低い)躁病の症状を含み、少なくとも1回以上の大うつ病の発症と交互に起こる。患者の状態が急に悪化したときは、躁状態、うつ状態、もしくは混合状態にあると考えられる。躁病の状態は、気分高揚、多動、熱中行動、誇大な自己評価、注意散漫、睡眠欲求の現象、といった特徴がある。うつ状態では、自己評価の消失、引きこもり、悲哀感、および自殺の危険性がある。躁病とうつ病の発症はどちらも優勢になり得、数回にわたる気分変動、もしくは周期性の気分変動が起こる。どちらの状態でも、患者はアルコールや他の薬物を乱用する可能性があり、これは症状の悪化につながる。
【0011】
双極性障害の治療方法は患者の状態によって異なる。症状が深刻な期間は、症状を抑制するために入院が必要である。双極性障害の制御には、躁病、軽躁病、急速交代への転換の危険性を減らすために、気分安定剤(リチウム、バルプロ酸塩など)や抗うつ剤(ブプロピオンなど)の併用が効果的である。リチウムは躁病やうつ病の再発防止に効果的であるが、腎不全を引き起こす可能性があり、それを避けるため、慎重で医学的な監視とともに塩分摂取の継続、非ステロイド系抗炎症薬の回避、体重を減らすための食事療法など、全てが必要である。バルプロ酸塩はまた、吐き気、嘔吐、食欲不振、胸焼け、および下痢といった深刻な副作用を伴う。最後に、双極性障害の抑制のために抗うつ剤を使用する際には、全症状を寛解するために慎重な観察も不可欠である。従って、当技術分野では、現在の双極性障害の治療法で起こる深刻な副作用を軽減するためにより安全な治療が求められる。
【0012】
気分循環性障害は双極性障害と似ているが、さほど極端ではない。気分循環性障害の特徴は、軽度の気分消沈と興奮(軽躁病)との転換といった軽度な気分変調である。気分の変調はとても不規則で突然であるが、転換の深刻度は低い。気分循環症は双極性障害と同様に治療されるが、多くの場合はさほど積極的には治療されない。従って、当技術分野ではより安全な治療が求められる。
不安障害
【0013】
不安障害、パニック発作および広場恐怖症は、うつ病のような原発生気分障害の兆候として起こる疾患である。不安とは、患者の持続的で間断のないストレス知覚によって心に残る、心配や恐怖の感覚である。不安は、単収縮、悪寒、筋緊張、頭痛、発汗(寝汗など)、口内乾燥、嚥下困難といった様々な身体症状を伴う。ある人は彼らが不安になったときに、眩暈、速いまたは不規則な心拍数、呼吸数の増加、下痢、頻尿を感じる場合もある。疲労、苛立ち、睡眠困難、集中力の低下、性機能障害、および悪夢も一般的である。ストレスにより敏感であり、それゆえ不安障害を発症しやすいという場合もある。不安発作を発症する傾向は、遺伝性素因、また過去(幼少期など)のストレス体験に起因することがある。
【0014】
不安障害の治療には、差動血液や甲状腺機能の診断検査および心電図(EKG)がある。もし懸念すべき身体的兆候や症状がいずれも不安と関連がなければ、メンタルヘルスケアの専門家への照会が望ましい。不安の深刻な症状には、認知行動療法(CBT)などの心理療法と、神経系の抑制性神経伝達物質であるγ−アミノ酪酸(GABA)の活性を促進するベンゾジアゼピンの投薬の併用が最も効果的である。これらの治療に加え、イミプラミン、および選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)パロキセチンといった抗うつ剤の使用も、不安障害患者の抗不安に効果がある(Roccaetal.,ActaPsychiatrScand95:444(1997))。しかしながら、ベンゾジアゼピンを用いた治療には疲労、眠気、不安定が伴う。ベンゾジアゼピンによる継続的な治療は、しばしば患者の薬物依存を引き起こす。それゆえに、慎重な医学的観察が必要である。従って、当技術分野では、薬物依存がより少なく、また副作用と費用の少ない治療が求められる。
【0015】
パニック障害は、不安障害の一種であり、反復的かつ突発的な強い恐怖や不安の発作が特徴である。パニック発作は通常、特定の状況とは関連しておらず、たいてい発作開始から10分以内に「ピーク」に達する。パニック障害の正確な原因は分かっていないが、複数の生理学的要因と関連がある。パニック障害には、広場恐怖症を伴うことも伴わないこともある。しかし広場恐怖症は、パニック障害症例の3分の1で発症している。広場恐怖症は、人ごみや公共の場、特に発作がおこった場合にその場所からの迅速な退避や助けが得られないような場を避けるということが特徴である。広場恐怖症の発症には、学習行動や、以前パニック発作が起こった場所と発作との関連が見られる。これは広場恐怖症が、保護が得られない環境でパニック発作を経験した恐怖を反映するためである。パニック障害の罹患率は、人口の1.5から5%にものぼる(Cruz,etal)。パニック障害は子どもにも見られるが、発病の平均年齢は25歳である。パニック障害は、中高年者でも発症する。研究結果から、女性の発症は2倍〜3倍多いことが分かっている(Cruz,etal.)。
【0016】
パニック障害の症状には、息切れ、眩暈、動悸、悪寒、発汗、窒息、吐き気、しびれ、胸痛、ほてりまたは寒気、死の恐怖、制御不能になることへの恐怖、正気でなくなることへの恐怖などがある。広場恐怖所の症状には、そこからの避難が難しいような場所にいることへの不安、一人でいることへの恐怖、公共の場で制御を失うことへの恐怖、絶望感、孤立感などがある。どちらの障害の治療法も不安の治療と似ている。多くのパニック障害および広場恐怖症患者の治療において抗うつ剤が有効であり、パキシルといった選択的セロトニン再取り込み阻害薬も含まれる。行動療法もまた薬物療法と併せて用いられ、特定の状況に対する有害で曲解された解釈を再構築するためのリラクセーション療法、心地よい心的イメージ、認知行動療法などがある。上述のとおり、これらの治療法には薬物依存の可能性や有害な副作用、および費用といった欠点がある。従って、当技術分野では、パニック障害や広場恐怖症の治療に対して新しい方法の確立が求められる。
月経前症候群(PMS)
【0017】
女性の月経周期に伴う身体、感情および行動の変化は、うつ病や双極性障害といった精神疾患を悪化させることがある(後述)。これらの変化は月経前症候群(PMS)と呼ばれる。これは女性によっては規則的に起こり、時として深刻な症状を伴い、憂うつ感情、被刺激性、他の感情的および肉体的な変化といった特徴がある。これらの変化は、排卵後に始まり月経が開始するまで徐々に悪化していくのが一般的である。PMSは妊娠可能な時期にある女性の70%〜90%に見られる。女性の30〜40%は、日常生活に支障をきたす程の深刻なPMSの症状を患っている。様々な身体的および情動的症状は、PMSと関連している。定義によれば、このような症状は月経周期の後半(月経周期の初日から14日以降)に起こり、月経期間終了後、約7日間で消失する。PMSの症状は、頭痛、足首や足および手のむくみ、腰痛、けいれん性腹痛、乳房の圧痛、体重増加、腫脹、不安、混乱、気分の落ち込み、健忘、被刺激性、疲労、自己評価の低下、被害妄想などがあるが、これに限ったものではない。
【0018】
PMSの現在の治療法には、運動や、ビタミンB6、カルシウム、およびマグネシウムなどの栄養剤を用いた食事療法といった自己療法がある。さらに、頭痛、腰痛、月経痛、乳房の圧痛などの著しい痛みを伴う女性に対しては、プロスタグランジン阻害薬が処方されることもある。体液鬱滞による著しい体重増加が見られる女性に対しては、利尿剤が処方されることもある。中程度から重度の不安、被刺激性、または気分の落ち込みが見られる女性には、精神病の薬物治療および/または治療を用いることもある。最後に、経口避妊薬はPMS症状を軽減する。これらの治療法は多くの女性にとって苦痛を軽減するものであるが、当技術分野ではより効果的で副作用および費用の少ない治療法が、依然として求められる。
月経前不快気分障害(PMDD)
【0019】
女性のおよそ3〜4%は、仕事や社会生活機能に著しい支障をきたす深刻な月経前気分症状を患っている。これらの深刻な月経前症状は、月経前不快気分障害(PMDD)または月経中気分不快と診断される。PMDDの発生は20代後半および40代前半の女性で、少なくとも1人以上の子どもを出産している、大うつ病障害の家族歴がある、または産後うつ病か感情気分障害の既往歴がある女性に多い。PMDDはPMSとは次のような点で異なる。上述のような予測される月経前気分障害は、月経周期の後半というよりも複数の月経周期にわたって起こる。PMDD症状は、女性にとって正常な機能維持が困難になるほど深刻なこともあるため適切な診断が重要である。これらの症状は、すでにうつ病を発生している患者の場合、月経周期後半に自殺をする危険性を著しく高める。
【0020】
PMDDの治療法には、ホルモン作動薬療法(ゴナドトロピン放出ホルモン(GNRH)作動薬ロイプロリド)、およびセロトニン作動性の抗うつ剤療法(クロミプラミン、フルオキセチン、セルトラリン、シタロプラム)がある。これらの治療法は、PMDDの制御において有効性が実証されているが、月経周期を通じて継続的な薬物治療が必要であり、そのため副作用や費用が増加する。黄体期(例として月経前14日間)の間のみ薬を毎日投与するPMDDの間欠的治療法の研究があるが、現時点ではまだ実施されていない。従って、当技術分野では、PMDDおよびPMSの治療に対して、副作用や費用を軽減し、持続的な薬物治療を必要としない治療方法が求められる。
その他の心理的障害
【0021】
注意欠陥障害(ADD)は、最も一般的に診断される幼少期の心理的障害であり、学齢児童の3%から5%に見られる。症状には、発達上不適切な水準の注意、集中、行為、散漫性、および情動性などがある。注意欠陥障害は3つの下位分類がある:(1)混合型の注意欠陥/多動性障害、(2)不注意型が優勢の注意欠陥/多動性障害、(3)多動性・衝動性型が優勢の注意欠陥/多動性障害である。ADDの診断と治療の目覚しい進歩にも関わらず、この障害に対する治療には依然として大いに議論の余地がある。注意欠陥障害の原因は分かっていないものの、科学者たちはこの疾病の神経学的根拠を究明し、ADDに関与すると思われる遺伝子が特定されている。
【0022】
ADDの最も効果的な治療法では、デキセドリン(デキストロアンフェタミン)、リタリン(メチルフェニデート)、およびサイラート(マグネシウムペモリン)などの向精神剤を用いる。抗うつ剤(例えばアミトリプチリンまたはフルオキセチンなど)、精神安定剤(チオリダジンなど)、αアドレナリン作動薬(クロニジン)、およびカフェインもADD治療に用いられている。これらの薬物の欠点は、薬物がADDの子どもの認知的および感情的な発達に及ぼす作用に関する長期的な情報が欠落していることである。加えて、抗うつ剤、精神安定剤、カフェインなどの薬物療法は、ほとんど成果があがらない。随伴性マネジメント(タイムアウトなど)、認知行動療法(自己監視、言語的自己教示、問題解決戦略、および自己強化など)、親へのカウンセリング、個人精神療法等の心理学的療法を検討する大量の研究が行われてきた。これらの技術を用いた研究では入り交じった結果が得られており、心理学的治療介入を刺激剤と組み合わせる研究は行われていない。従って親は、症状を管理し、子どもの活力を建設的で教育的な方向に導くことが求められる。
うつ病、または他の精神病状の憎悪
【0023】
無治療ならば、うつ病または他の精神病状は、ある期間に渡って合併症を引き起こすことがあり、その期間はうつ病や精神病状の重症度に直接左右される。一般的には身体および情緒的健康問題のリスク増加があり、それらは内科的疾患増強による早死にを引き起こすことがある。同様に、慢性疲労症候群、便秘、緊張性頭痛、様々な睡眠障害といった身体および情緒的疾患は、患者の(不安や双極性障害を伴う)抑うつ状態を持続させる。うつ病はまた、タバコ依存および/または、アルコール乱用および/または、薬物に関連した問題の危険性を高める。最後に、大うつ病のような抑うつ障害患者が自殺をする危険性は15%にものぼる。従って当技術分野では、うつ病に対してより改善された治療法が求められており、それは他の身体的、情緒的、および薬物乱用疾患の改善につながるであろう。またその逆も同様であるといえる。
睡眠障害
【0024】
うつ病や他の精神病状のもう一つの二次的影響は、睡眠障害である。睡眠障害とは、入眠または安眠障害、不適切な時間の入眠、睡眠時間合計過多、または睡眠と関連した異常行動といった分断的な睡眠パターンである。100以上の異なる睡眠および覚醒障害がある。これらは4つの主な分類に分けられる:安眠および入眠に伴う疾患(不眠症など)、起きていることに伴う疾患(睡眠状態誤認など)、規則的な睡眠計画の実施に伴う疾患(ナルコレプシーのような睡眠過剰など)、および睡眠分断行動(夢中歩行など)である。不眠症と睡眠分断行動のどちらも、気分の落ち込みや不安といった心理的障害に苦しむ患者から直接的に生じうる。
【0025】
不眠症は、入眠困難、覚醒、間欠的覚醒、早朝覚醒のどの組み合わせでも起こり、次のような障害を引き起こす:精神生理学的な遅延睡眠期症候群、催眠剤依存性障害、および薬物依存性睡眠障害である。発症は、一過性(2〜3週間)または慢性である。不眠症に関連する一般的な要因は、気分の落ち込み、不安、ストレス、疾病、カフェイン、アルコールの乱用、薬剤、疾病、身体的不快、早寝や昼寝といった非生産的睡眠習慣である。不眠症の治療は、その原因に結び付いている。もし明らかな身体的または心理的要因(うつ病など)があれば、それが第一の治療の焦点である。
【0026】
睡眠分断行動とは、夜驚症、夢中歩行またはレム睡眠行動障害(夢とレム睡眠の欠落に関連する精神病の一種)などである。睡眠分断行動の症状は、抑うつ気分、不安、無気力、集中困難、被刺激性、日中疲労、眠気、および入眠困難である。また、睡眠分断行動の治療は、しばしばその原因と関連している。もし明らかな身体的または心理的要因があれば、それが第一の治療の焦点である。
緊張性頭痛
【0027】
緊張性頭痛は、最も一般的な頭痛の型の1つである。どの年齢でも起こりうるが、成人および青年期の若者に最も見られる。もし頭痛が数ヶ月以上に渡り、週に2回以上起こる場合は、病状は慢性とみなされる。緊張性頭痛は、首および頭皮筋肉の収縮によって起こる。この筋収縮の原因の1つは、ストレス、気分の落ち込み、または不安に対する反応である。頭部が同じ姿勢に固定されるような行為も、頭痛を引き起こす。他の原因として、眼精疲労、疲労、アルコール摂取、過度な喫煙、過度なカフェイン摂取、または副鼻腔感染症や鼻詰まり、過度の努力、風邪、インフルエンザなどのような病状がある。緊張性頭痛は脳内の構造的な病変には関連していない。現在の治療法は、症状の緩和と頭痛の再発防止を目的としている。ストレス管理は、不安または気分の落ち込みといった誘発因子の除去と抑制を目的とする。しかしながら、当技術分野では緊張性頭痛のより効果的な治療法が求められる。
慢性疲労症候群
【0028】
慢性疲労症候群は、休息によって緩和されず、また他の疾患に直接的に起因しない持続的および深刻な疲労や虚弱(疲労)の疾患である。近年の研究から、慢性疲労症候群は神経系経路の炎症によって起こり得、この炎症は何らかの免疫反応または自己免疫過程によって引き起こされるということが分かっている。慢性疲労症候群は、不十分または機能障害を起こした免疫反応によりウイルス性疾患が悪化したときに起こる。年齢、すでにある病気、ストレス、環境または遺伝的な気質、気分の落ち込みといった他の要因もまた、この疾患に影響を及ぼす。気分の落ち込みは慢性疲労症候群に間接的に関与しているとはいえ、それはこの疾患と関連した異常神経系症状につながる。慢性疲労症候群の患者の多くは、治療方法を改良につながる気分の落ち込みや他の心理的症状を患う。慢性疲労症候群の治療において、現時点で有効性が証明された治療法はない。治療案として、抗ウイルス剤、気分の落ち込みを治療する薬物療法、不安を治療する薬物療法、痛み、不快症状、熱を治療する薬物療法などもある。たとえ気分の落ち込みや不安が慢性疲労症候群に直接的に関連していないとしても、気分の落ち込みや他の心理的障害はこの疾患と相互・複雑に関係しており、それゆえ、当技術分野では、これらの障害の治療に対する新しい革新的方法を見出す必要がある。
便秘
【0029】
便秘は相対的な用語である。便が硬く、不定期で、排出に大きな努力を要するときに、その患者は便秘である。便秘は便の排出に伴う不快感を生じ、大きく幅の広い便の排出は肛門の粘膜内層の裂傷を引き起こし、特に子どもの場合は出血や裂肛の可能性を引き起こすことがある。便秘は、食事の変化、運動量の減少、腸の疾患、先天性疾患、薬物、脱水症状、気分の落ち込みや不安といった行動または心理的な問題、神経学的疾患などによって引き起こされる。気分の落ち込みや不安はまた、便秘の患者にとって悪化要素となる。
当技術分野では、便秘のような病状の二次的影響を克服するために、気分の落ち込みや不安障害の治療に焦点を当てることが必要である。
【0030】
患者は、(1)少なくとも12ヶ月間にわたり、緩下剤を服用していない患者が以下のうち2つ以上を訴える:週平均3回未満の排便、排便の少なくとも25%における過度ないきみ、排便の少なくとも25%における硬いもしくは粒状の便の排出、排便の少なくとも25%における残便感、または、(2)少なくとも12ヶ月間にわたり、患者の排便が週平均2回未満であるときに、慢性(長期にわたる)便秘を患っているとされる。
禁断症状
【0031】
物質関連障害は、単独の因子ではなく、社会的、生物学的および心理学的要因の組み合わせによって起こるとみられる。ストレスは禁断症状や常習行為の誘因となり得、問題となっている薬物の持続的または反復的な使用や、生理学的および/または心理学的原因の依存を伴う慢性のストレスは特にそうである。習慣化は、特に渇望される薬物がドーパミンや他の経路を介して幸福感や満足感をもたらす場合、依存度の高まりによって悪化する。禁断症状がうつ病を引き起こすとも言われているが、多くの場合うつ病は禁断症状や依存の前兆と考えられる。
【0032】
原因に関わらず、禁断症状は生化学過程を反映し、その過程というのは、理論上は、もし中断されると依存経路と関連する生理活性分子を調整することによって、分子もしくはサブ分子レベルにおいて相対的恒常性を回復するというような方法で、疾患の矯正につながる。したがって、禁断症状の治療に対して方法および組成物への要望が残されている。
神経成長因子
【0033】
神経成長因子(NGF)は、原型的な神経栄養因子、およびニューロトロフィンファミリーの一員であり、標的細胞における広範囲な反応を促進する。これらの反応には、神経細胞分化、ニューロンの生存維持、代謝活動の調整があるが、これに限らない。神経成長因子は、中枢神経系(CNS)において前脳基底部コリン作動性ニューロンの正常な発達および機能にとって不可欠であるよく特徴付けられた神経栄養要因である(Ghahnetal.,1983;ThoenenandEdgar,1985)。神経成長因子の適用における研究の中心分野は、前脳基底部コリン作動性ニューロンの萎縮もしくは損失による、加齢に関連した認知機能障害への適用である(Armstrongetal.,Neurobiol.Aging14:457−470(1993))。例えば、NGFの脳室内注入は、加齢ラットにおいてコリン作動性ニューロン萎縮を減らし、空間学習や記憶維持を向上することが研究から示されている。(Scalietal.,NeurosciLett170:117−120(1994);Markowskaetal.,J.Neurosci14:4815−4825(1994))。加齢げっ歯類の前脳基底部内のNGF受容器官に対する免疫反応の減少を示す研究により、神経成長因子は、空間学習および記憶維持に関連していると見られる(Fischeretal.,Neurobiol.Aging13:9−23(1992))。NGFの治療的利用の一例として、アルツハイマー型老年性痴呆(SDAT)患者へのNGF投与がある。このような治療の問題点は、頭蓋内手術を要する生理学的に関連する量および治療において、NGFが血液脳関門を通過しないということである(Kordoweretal.,Exp.Neurol.124:21−30(1993)。抗トランスフェリン受容体抗体(OX−26)に共有結合しているNGFから構成される新手の搬送方式は、血液脳関門を通過できる。
【0034】
これらの近年の神経成長因子の適用にも関わらず、他の神経障害を治療するためのNGF使用に対しては依然要望がある。さらに、うつ病、不安、双極性障害といった障害の治療に対する向精神薬の普及についての懸念も増している。したがって、当技術分野では、比較的安価で副作用が伴うことがなく安全で投与が容易である、より安全な化合物の投与による様々な心理障害の改良された治療への要望が残されている。
【発明の概要】
【0035】
本発明は、神経成長因子を投与することによって精神病状を治療する方法を提供する。具体的に、本発明は、精神病状の症状、例えばうつ病、双極性障害、不安障害、パニック発作、広場恐怖症、注意欠陥症候群および月経中不快気分を、精神病状の一つ以上の症状を治療することに有効である投与量で神経成長因子を、それを必要とする患者に対して投与することによって、緩和する方法を備える。
【0036】
本発明の方法は、うつ病、双極性障害、不安障害、パニック発作、広場恐怖症、注意欠陥症候群、月経中不快気分、月経前不快気分障害(PMDD)および月経前症候群(PMS)等の精神病状を患う患者に対して神経成長因子を有効な投与量で投与することを備える。神経成長因子は、好ましくは一日0.001〜10マイクログラムの投与量で投与され、また好ましくは液体溶媒として調製され、約0.04マイクログラムの濃度で単一の液滴として提供される。神経成長因子の単一の液滴は0.001〜1マイクログラム範囲内である。より好ましくは、神経成長因子組成物の一液滴は各液滴につき0.02マイクログラムである。神経成長因子組成物は、より好ましくは一日に約0.05〜1マイクログラムの投与量、更に好ましくは一日に約0.01〜0.1マイクログラムの投与量で投与される。投与の好ましい経路は舌下であるが、他の経路、例えば頬側、経口飲薬、皮下、皮内、および静脈注射も効果があると期待される。
【0037】
本発明は、必要とする患者に神経成長因子を投与することによる合弁症の結果として発生する睡眠障害、慢性疲労症候群、緊張性頭痛および便秘の身体的な不快感からなる群から選択される精神病状の症状を緩和する方法も提供する。該神経成長因子は、一日に0.001〜10マイクログラムの投与量で、好ましくは液体溶媒に調製され、単一の液滴として約0.04マイクログラムの濃度で提供される。神経成長因子の単一の液滴は0.001〜1マイクログラムの範囲内にある。より好ましくは、神経成長因子組成物の一液滴は各液滴につき0.02マイクログラムの量である。より好ましくは神経成長因子組成物は一日に約0.05〜1マイクログラム範囲の量、または更に好ましくは一日に約0.01〜0.1マイクログラム範囲の量で投与される。投与の好ましい経路は舌下であるが、他の経路、例えば頬側、経口飲薬、皮下、皮内、および静脈注射も効果があると期待される。
【0038】
本発明は、神経成長因子(NGF)またはそのサブユニットの有効な投与量で投与することによって、糖類、炭水化物、アルコール、ニコチン、コカイン、アンフェタミン、アヘン剤と非アヘン鎮痛剤および他の処方薬等の禁断症状を含み、依存症に関連するものを含む禁断症状を緩和するための医薬組成物および方法も提供する。特に好ましくは、NGFのβサブユニットの使用である。好ましくは、該神経成長因子は、一日に0.001〜10マイクログラムの投与量で、好ましくは液体溶媒に調製され、単一の液滴として約0.04マイクログラムの濃度で提供される。神経成長因子の単一の液滴は0.001〜1マイクログラムの範囲内にある。より好ましくは、神経成長因子組成物の一液滴は各液滴につき0.02マイクログラムの量である。より好ましくは神経成長因子組成物は一日に約0.05〜1マイクログラム範囲の量、または更に好ましくは一日に約0.01〜0.1マイクログラム範囲の量で投与される。投与の好ましい経路は舌下であるが、他の経路、例えば頬側、経口飲薬、皮下、皮内、および静脈注射も効果があると期待される。
【0039】
本発明はうつ病、双極性障害、不安障害、パニック発作、広場恐怖症、注意欠陥症候群、月経前症候群(PMS)、月経前不快気分障害(PMDD)、月経中不快気分および禁断症状からなる群から選択される精神病状の症状を緩和するために対象または患者に投与する医薬組成物も提供され、神経成長因子は、前記精神病状の1以上の症状を治療するために有効な投与量とされる。一態様において、組成物は、薬学的に許容可能な担体、賦形剤または希釈剤を更に含む。好ましくは、神経成長因子組成物は、一日に0.001〜10マイクログラムの投与量で投与され、好ましくは液体溶媒に調製され、単一の液滴として約0.04マイクログラムの濃度で提供される。神経成長因子の単一の液滴は0.001〜1マイクログラムの範囲内にある。より好ましくは、神経成長因子組成物の一液滴は各液滴につき0.02マイクログラムの量である。より好ましくは神経成長因子組成物は一日に約0.05〜1マイクログラム範囲の量、または更に好ましくは一日に約0.01〜0.1マイクログラム範囲の量で投与される。投与の好ましい経路は舌下であるが、他の経路、例えば頬側、経口飲薬、皮下、皮内、および静脈注射も効果があると期待される。
【0040】
本発明は便秘を患う患者に神経成長因子を有効な投与量で投与することを含む方法も提供する。一実施態様においては便秘は慢性の便秘である。好ましくは該神経成長因子は、一日に0.001〜10マイクログラムの投与量で投与され、好ましくは液体溶媒に調製され、単一の液滴として約0.04マイクログラムの濃度で提供される。神経成長因子の単一の液滴は0.001〜1マイクログラムの範囲内にある。より好ましくは、神経成長因子組成物の一液滴は各液滴につき0.02マイクログラムの量である。より好ましくは神経成長因子組成物は一日に約0.05〜1マイクログラム範囲の量、または更に好ましくは一日に約0.01〜0.1マイクログラム範囲の量で投与される。投与の好ましい経路は舌下であるが、他の経路、例えば頬側、経口飲薬、皮下、皮内、および静脈注射も効果があると期待される。
【0041】
本発明は便秘を治療するために対象または患者に投与する医薬組成物も提供し、神経成長因子はその便秘を治療するために有効な投与量である。一実施態様において、便秘は慢性の便秘である。一実施態様において組成物は、更に薬学的に許容可能な担体、賦形剤または希釈剤を備える。神経成長因子組成物は、一日に0.001〜10マイクログラムからの投与量で投与され、好ましくは液体溶媒に調製され、単一の液滴として約0.04マイクログラムの濃度で提供される。神経成長因子の単一の液滴は0.001〜1マイクログラムの範囲内にある。より好ましくは、神経成長因子組成物の一液滴は各液滴につき0.02マイクログラムの量である。より好ましくは神経成長因子組成物は一日に約0.05〜1マイクログラム範囲の量、または更に好ましくは一日に約0.01〜0.1マイクログラム範囲の量で投与される。組成物の投与において好ましい経路は舌下であるが、他の経路、例えば頬側、経口飲薬、皮下、皮内、および静脈注射も効果があると期待される。
【発明を実施するための形態】
【0042】
本発明は、神経成長因子(NGF)またはそのサブユニット、特にNGFのβサブユニットを有効な投与量で投与することによって、糖類、炭水化物、アルコール、ニコチン、コカイン、アンフェタミン、アヘン剤と非アヘン鎮痛剤等の禁断症状を含み、依存症に関連するものを含む禁断症状を緩和するための方法も提供する。神経成長因子は、Sigmaのような供給者に市販される。特に好ましくは、SigmaおよびEMDBiosciencesから入手可能な組換えにより生成されるNGFのβサブユニットが使用される。好ましくは、神経成長因子は、一日に0.001〜10マイクログラムの投与量で投与され、好ましくは液体溶媒に調製され、単一の液滴として約0.04マイクログラムの濃度で提供される。神経成長因子の単一の液滴は0.001〜1マイクログラムの範囲内にある。より好ましくは、神経成長因子組成物の一液滴は各液滴につき0.02マイクログラムの量である。より好ましくは神経成長因子組成物は一日に約0.05〜1マイクログラム範囲の量、または更に好ましくは一日に約0.01〜0.1マイクログラム範囲の量で投与される。投与の好ましい経路は舌下であるが、他の経路、例えば頬側、経口飲薬、皮下、皮内、および静脈注射も効果があると期待される。
【0043】
本発明は、必要とする患者に神経成長因子を投与することによる精神病状の合弁症の結果として発生する睡眠障害、慢性疲労症候群、緊張性頭痛および便秘の身体的な不快感からなる群から選択される精神病状の症状を緩和する方法も提供する。該神経成長因子は、一日に0.001〜10マイクログラムの投与量で、好ましくは液体溶媒に調製され、単一の液滴として約0.04マイクログラムの濃度で備えられる。神経成長因子の単一の液滴は0.001〜1マイクログラムの範囲内にある。より好ましくは、神経成長因子組成物の一液滴は各液滴につき0.02マイクログラムの量である。より好ましくは神経成長因子組成物は一日に約0.05〜1マイクログラム範囲の量、または更に好ましくは一日に約0.01〜0.1マイクログラム範囲の量で投与される。投与の好ましい経路は舌下であるが、他の経路、例えば頬側、経口飲薬、皮下、皮内、および静脈注射も効果があると期待される。
【0044】
本発明は局所的に、舌下に、または皮下に神経成長因子を少量で投与することによって大うつ病の病状を患う患者を治療する方法を提供する。本発明の方法は、気分変調症を治療することに有用であり、日常の行為を行うことにおける不安および困難といった症状を治療することを含むがそれに限られない。本発明の方法は、老人性うつ病および青年期うつ病を含むがそれに限られない抑うつ気分を治療することに有用である。その場合は、本発明の方法は悲しみ、落ち込みまたは虚無感の感覚、食欲の喪失、身体の疼痛および痛み、ならびに睡眠の困難を緩和する。
【0045】
本発明は局所的に、舌下に、または皮下に神経成長因子を少量で投与することによって双極性障害の病状を患う患者を治療する方法を提供する。本発明の方法はタイプI双極性障害を治療することに有用であり、高揚した気分、多動、活動への過度参加、自己評価の増長、少量の睡眠で済むこと、および憂うつ段階において自己評価の喪失、引きこもり、悲しみ、冷汗および自殺の危険性等の躁病症状を治療することを含むがそれに限られない。治療において、神経成長因子を使用する治療の対象となる障害はタイプII双極性障害および注意欠陥障害(ADD)を含む。
【0046】
本発明は、ヒトに少量の神経成長因子を局所的に、舌下に、または皮下に投与することによって、うつ病または他の精神病状の合弁症の結果として発生する、双極性障害、不安障害、パニック発作、広場恐怖症または注意欠陥症候群のような様々な障害を治療する方法も提供する。これらの方法はPMS、PMDD、様々な睡眠障害、慢性疲労症候群、緊張性頭痛および便秘に関連する症状を治療することに有用である。その場合、本発明の方法は憂うつの感覚、被刺激性、不快、疲労、鼓腸および冷汗(寝汗)を緩和させる。
【0047】
本発明は、ヒトに少量の神経成長因子を局所的に、舌下に、または皮下に投与することによって様々な不安障害を治療する方法も提供する。これらの方法はパニック障害および広場恐怖症を治療することにも有用であり、息切れ、目まい、動悸、悪寒、発汗、窒息、吐き気、胸痛、ほてりまたは寒け、死の恐怖、理性を失う恐怖、しびれ、狂気の恐怖、孤立感覚、無力の感覚、特に逃避または援助が直ぐに得られない場合に人込みの回避を含むがそれに限られない。
【0048】
下記の実施例は、精神病状の治療に対して、また具体的にうつ病、不安障害および月経中不快気分を治療する好ましい方法に関して、本発明の方法を例示する。具体的に、これらの様々な心理的障害を治療するには神経成長因子が使用された。神経成長因子は蛇の毒に由来し、具体的にVipearalebotinaであって、Sigma,Inc.から購入されたか、または他の場合はEMDBiosciencesから獲得された組換え生成のNGFのβサブユニットの一片であった。当業者は下記の実施例を検討すると、本発明において多数の改善点およびさらなる態様が明らかである。
【0049】
下記の実施例は、様々な精神病状、また具体的にうつ病、様々な不安障害、パニック発作、広場恐怖症または双極性障害の治療に関して、本発明の方法を例示する。さらに、実施例は、上記に精神病状の合併症として発生する、PMS、PMDD、緊張性頭痛、睡眠障害、便秘および禁断症状に関連する様々な症状の治療に関して、本発明の方法を例示する。当業者は下記の実施例を検討すると、本発明において多数の改善点およびさらなる態様が明らかである。
EXAMPLEI
実施例I
【0050】
51歳の女性の患者はパニック発作及び広場恐怖症の15年間の病歴を有し、買物または他の社会的な機能などの日常の行為を行えない状態で診断を受けた。神経成長因子の治療を毎日舌下投与により1滴(0.04μg/滴)の頻度及び投与量で約3週間実施した。投与頻度は「必要に応じて」という程度に減少され患者は毎月NGFの1滴(0.05ml)(0.008μg/滴)を投与によって治療されていた。治療の最初6ヶ月は彼女はますます毎週スーパーへ行く事、教会の活動に出席する事及び他の市民向けの行事に出席する事を含めて買物のような日常の行為を行えるようになっていった。
実施例II
【0051】
本実施例においては59歳の女性の患者は不安発作の病歴を有していた。患者は一日1回NGFを1滴(0.05ml)(0.02μg/滴)舌下に投与することにより治療された。患者の不安発作は鎮まり全体的な気分が改善された。患者は6ヶ月以上治療を受けてきた。
実施例III
【0052】
42歳の女性は彼女の医師により不安、パニック障害及びほてりと診断された。NGFの治療を舌下投与による一日1滴(0.05ml)(0.04μg/滴)の頻度及び投与量で開始した。治療の1週間後、彼女の不安、パニック発作の頻度が減少し、全体的な気分が改善したが、ほてりは継続していた。NGFの投与量を2滴(0.05ml)(0.04μg/滴)の頻度および投与量に増量すると、患者は更に不安、パニック発作およびほてりが少なくなった。
実施例IV
【0053】
うつ病および不安を患う78歳女性は舌下投与によるNGF治療を一日1滴(0.05ml)(0.02μg/滴)の頻度で受けた。治療の30日後、うつ病症状はNGF投与後緩和されたが不安の方は改善がみられなかった。患者の治療は継続されている。
実施例V
【0054】
臨床的鬱病と彼女の医師に診断された61歳の女性患者(Beckスコア20;Hamiltonスコア19)は当初脳卒中治療の為に本発明者のラボにて開発された複雑な医療療法が受けさせられた。神経成長因子はこの医療療法の一部となる。患者はこの治療後憂うつが少なくなったが4週間後うつ病が戻ってきた。複雑な治療は停止された。その代わりに神経成長因子のみが一日1滴(0.05ml)(0.04μg/滴)の投与量で舌下に投与された。2週間の治療後、患者の憂うつはBeckスコア13とHamiltonスコア6に示されるように低下した。さらに患者はNGF治療以前の便秘の程度と比較し、便秘の程度が低下した事に気が付いた。
実施例VI
【0055】
臨床的鬱病と不安を患った47歳女性は、神経成長因子の治療において、一日1滴(0.05ml)(0.04μg/滴)の投与量で舌下投与された。2週間の治療後、患者の感情の状態が改善されたが疲労は変わらなかった。患者の治療は継続されている。
実施例VII
【0056】
48歳女性患者は、1週間の月経周期においてうつ病、被刺激性、頻繁な頭痛、不安定な睡眠およびほてりの診断を受けた。患者は1ヶ月の慢性的な不安も報告した。患者は神経成長因子を90日間、一日1滴(0.05ml)(0.02μg/滴)の投与量で舌下投与された。NFG治療を開始後、患者の最初の月経周期(約1ヶ月)の後で再診断された。NGF治療の元で月経周期中は被刺激性および憂うつが少なくなった。加えて患者の睡眠が改善され頭痛はなくほてりも消えた。慢性的な1ヶ月にあたる不安が改善された。患者は必要に応じてNGFの治療を続ける。
実施例VIII
【0057】
患者の顧客の自殺によって50歳女性患者は重度の状況不安およびうつ病と診断された。患者は1滴(0.05ml)(0.02μg/液滴)の投与量の神経成長因子を2ヶ月舌下に投与された。NGF治療はある程度、彼女の不安を軽減させた。
実施例IX
【0058】
彼女の医師にうつ病および不安の診断を受けた50歳女性患者は以前パキシル、最近はProzacおよびXanaxにより治療された。Prozac治療は中止され当時患者Beckスコアは26であった。患者はNGFの治療において一日1滴(0.05ml)(0.02μg/滴)の投与量で舌下投与された。2週間のNGF治療後患者は気分および不安の改善が認められ、Beckスコアは11に低下した。NGF治療の継続により患者はXanaxへの依存が低下された。
(一日1錠から一日4分の3錠への低下)
実施例X
【0059】
多発性硬化を患う50歳女性患者はNGF治療を受けた。この患者は車いすに束縛されたために幼少期から通常より重度の便秘の病歴も患った。神経成長因子の治療なしで7日から10日に1回の排便があった。患者はNGFの治療において一日1滴(0.05ml)(0.02μg/滴)の投与量で舌下投与され、患者は毎日排便1回であった。
実施例XI
【0060】
彼女の医師によりほてりおよび月経中不快気分の診断を受けた女性患者は毎晩2回から3回舌下投与によりNGFを2滴(0.05ml/滴)(0.02μg/滴)の投与量で投与された。その後患者の日中のほてりはNGF治療以前に比較し頻度が半分になりほてり自体もより軽度になった。治療のおかげで彼女の悲しみおよび号泣発作も消えた。全体的には彼女は2週間の治療後に感情が改善された。
実施例XII
【0061】
幼少期から慢性の便秘の病歴があった48歳の女性患者は一日2回舌下にNGFを1滴(0.05ml/滴;0.02μg/滴)といった頻度でNGF治療を開始した。1週間後反応が認められなかったため投与量は一日3回舌下に1滴(0.05ml/滴;0.02μg/滴)に増量された。増量された投与量の2日後、長年で初めてかん腸剤、緩下剤なしで通常の排便ができた。患者はさらに2週間、毎日舌下にNGFの3滴(0.05ml/滴;0.02μg/滴)の投与量を続けた。その後だんだん投与の頻度を減らしはじめ、まず一日2回NGF1滴、次に一日1滴、その後必要に応じての頻度にした。患者は現在NGFを含めて薬の必要がなく毎日の排便を報告している。またこの患者はNGF治療に対して有害反応は認められない。(例えば便失禁)
実施例XIII
【0062】
毎日の便秘を患う6ヶ月の男児は一日一回舌下にNGFを1滴(0.05ml/滴;0.02μg/滴)投与する治療が開始された。4日後、患者の便秘がなくなった。(食生活が変わらず)毎日のNGF治療で3週間後毎日1滴の必要がなくなり2週間の期間で引き離した。またこの患者はNGF治療に対して有害反応は認められない。(例えば便失禁)
実施例XIV
【0063】
多発性硬化および慢性の便秘の40年間の病歴のある63歳女性は毎日2回、1ヶ月間舌下にNGFを1滴(0.05ml/滴;0.02μg/滴)投与することにより症状が軽減された。患者は毎日または1日おきに1年以上改善された状態を維持するためにNGFの1滴(0.05ml/滴;0.02μg/滴)の使用を続けている。またこの患者はNGF治療に対して有害反応は認められない。(例えば便失禁)
実施例XV
【0064】
患者によると「長い期間」にわたって慢性の便秘を患う88歳女性は毎日2回舌下に1滴(0.05ml/滴;0.02μg/滴)を投与するNGF治療を開始した。3日以内で緩和した事が報告された。現在は必要に応じてNGF1滴(0.05ml/滴;0.02μg/滴)を摂取している。また、この患者はNGF治療に対して有害反応は認められない。(例えば便失禁)
実施例XVI
【0065】
何匹かの犬および猫も便秘に対して毎日1回または2回舌下または皮下注射によりNGFを1滴(0.05ml/滴;0.02μg/滴)投与し、実施例XII−XVに記載されたヒトの患者と同様に治療を無事に受けた。また、この患者はNGF治療に対して有害反応は認められない。(例えば便失禁)
実施例XVII
【0066】
甘味の禁断症状を持つ84歳開業医はNGF治療を受け、一日3回舌下に組み換え生成のヒトNGFβサブユニット(EMDBiosciences)(0.05ml/滴;0.02μg/滴)1滴が投与された。5日後彼は禁断症状の低下に気付き、2週間後には完全に消えた。NGF治療を停止し3週間が経っても禁断症状は限られたまたはなかった。治療には関係ないが彼はコーヒー摂取量も低下したと報告した。彼は療法の結果に満足した。有害事象はなかった。
実施例XVIII
【0067】
エタノールの禁断症状を長い間有した73歳の男性は毎日3回舌下に組み換え生成のヒトNGFβサブユニット(EMDBiosciences)(0.05ml/滴;0.02μg/滴)1滴が投与された。最初2日から3日に食事前の飲み物の欲求が低下したことに気が付いた。継続的に投与されることによって彼は利点の喪失なしにNGF液滴投与の頻度を低下させる事ができた。NGF治療のほぼ1年後、彼はたまにはソーシャルドリンクを飲むが以前のような禁断症状はない。
実施例XIX
【0068】
40代の確認されたアルコール依存症のある女性は毎日2回舌下に組み換え生成のヒトNGFβサブユニット(EMDBiosciences)(0.05ml/滴;0.02μg/滴)1滴が投与された。彼女はその治療をきちんと受ける限り最小限の努力でアルコールを避ける事ができたことに気が付いた。しかし、夕方の2滴目を逃すと夜にアルコールを飲み始めた。朝方に2滴を摂取してみたら1日中夕方の投与なしに禁断症状を低下させるか完全に抑制できた。
実施例XX
【0069】
処方鎮痛剤への依存症を持つ看護士は従来療法により解決されない彼女の問題に対して助けを求めていた。毎日2回舌下に組み換え生成のヒトNGFβサブユニット(EMDBiosciences)(0.05ml/滴;0.02μg/滴)1滴が投与された1週間後に、彼女は4日間以内に禁断症状の大幅な低下を認め、2週間後は完全になくなった。彼女は、1年以上禁断症状なしでいる。
実施例XXI
【0070】
アルコール禁断症状をもつ61歳の女性は毎日2回舌下に組み換え生成のヒトNGFβサブユニット(EMDBiosciences)(0.05ml/滴;0.02μg/滴)1滴が投与され1週間以内にアルコールの欲求が非常に低下したことに気が付いた。その投与量で6週間続けて禁断症状はなかった。治療を停止して2週間以内に彼女は毎晩1杯か2杯の飲み物を飲んで彼女の禁断症状に気が付いてNGF治療を再開した。NGF治療の再開に伴いアルコールの禁断症状が低下したがNGFを摂取することをまた停止するとまた禁断症状が再発した。
実施例XXII
【0071】
何人かの患者は食物の禁断症状を乗り越えて体重を減らす為に本明細者に記載されたようにNGFの液滴を使用したことがある。その結果は僅かな進歩から大幅な体重の減量まで様々である。体重の減量がなかった患者は従順でなかった点が問題であったと報告した。
実施例XXIII
【0072】
NGF投与は検証されたアルコール消費動物モデル(Pラット)において試験され舌下に1滴(0.05ml/滴;0.02μg/滴)または2滴の投与量で組換え生成のヒトNGFβサブユニット(EMDBiosciences)を投与することによって、初回投与の2時間後エタノール消費において統計的に有意に低下した結果となったことを示した。
【0073】
本発明の実装においては多数の修正および変更が当業者には、本明細書に記載の好ましい実施形態を考慮した上で発想されることを期待する。したがって、本発明の範囲に対する制限は添付された請求項に記載されたもののみとする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
禁断症状を緩和することに有効な投与量で神経成長因子を、それを必要とする対象に投与することを含む禁断症状を緩和する方法。
【請求項2】
前記禁断症状は糖類、炭水化物、アルコール、ニコチン、コカイン、アンフェタミン、アヘン剤および非アヘン鎮痛剤の禁断症状からなる群から選択される請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記神経成長因子は舌下、頬側、経口飲薬、皮下、皮内、または静脈注射からなる群から選択される様式によって投与される請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記神経成長因子は舌下で投与される請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記神経成長因子は一日に0.001〜1マイクログラムの毎日投与量で投与される請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記神経成長因子は一日に0.01〜0.1マイクログラムの毎日投与量で投与される請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記神経成長因子は神経成長因子のβサブユニットである請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記禁断症状を治療することに有効な投与量の神経成長因子を含む禁断症状を緩和する医薬組成物。
【請求項9】
前記禁断症状は糖類、炭水化物、アルコール、ニコチン、コカイン、アンフェタミン、アヘン剤および非アヘン鎮痛剤の禁断症状からなる群から選択される請求項8に記載の医薬組成物。
【請求項10】
前記組成物は薬学的に許容可能な担体、賦形剤または希釈剤を更に含む請求項8に記載の医薬組成物。
【請求項11】
各投与単位に0.001〜10マイクログラムを含む請求項8に記載の医薬組成物。
【請求項12】
各投与単位に0.05〜1マイクログラムを含む請求項8に記載の医薬組成物。
【請求項13】
各投与単位に0.01〜0.1マイクログラムを含む請求項8に記載の医薬組成物。
【請求項14】
前記神経成長因子はNGFのβサブユニットである請求項8に記載の医薬組成物。

【公表番号】特表2013−506666(P2013−506666A)
【公表日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−532076(P2012−532076)
【出願日】平成22年7月30日(2010.7.30)
【国際出願番号】PCT/US2010/043957
【国際公開番号】WO2011/043858
【国際公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【出願人】(512066174)ビーチ ツリー ラボ、インコーポレイテッド (1)
【Fターム(参考)】